(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-15
(45)【発行日】2022-06-23
(54)【発明の名称】シクロオレフィンポリマーと金属の接合方法、およびバイオセンサの製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 65/02 20060101AFI20220616BHJP
G01N 27/327 20060101ALI20220616BHJP
【FI】
B29C65/02
G01N27/327 353Z
(21)【出願番号】P 2019559630
(86)(22)【出願日】2018-12-10
(86)【国際出願番号】 JP2018045352
(87)【国際公開番号】W WO2019117092
(87)【国際公開日】2019-06-20
【審査請求日】2021-07-06
(31)【優先権主張番号】P 2017237059
(32)【優先日】2017-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】392022570
【氏名又は名称】サムコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】特許業務法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】舩橋 理佐
(72)【発明者】
【氏名】橋本 泰知
(72)【発明者】
【氏名】寺井 弘和
(72)【発明者】
【氏名】三宅 史夏
【審査官】神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-056308(JP,A)
【文献】国際公開第2015/038767(WO,A1)
【文献】特開2016-130354(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 19/00
B81B 1/00-7/04
B23K 20/00-20/26
B29C 65/00-65/82
G01N 27/327
G01N 37/00
JSTplus/JSTChina/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シクロオレフィンポリマーにより形成された第1被接合面を有する第1部材と、金属により形成された第2被接合面を有する第2部材を接合する方法であって、
前記第1被接合面および前記第2被接合面を、H
2OプラズマおよびO
2プラズマのうちの少なくとも一方に曝す工程と、
前記第1被接合面と前記第2被接合面を合わせる工程と、
合わせられた前記第1被接合面と前記第2被接合面に熱を加える工程と
を備え
、
前記熱を加える工程における加熱温度が、90℃以上、且つ、150℃以下の温度範囲にある、接合方法。
【請求項2】
前記熱を加える工程において、合わせられた
前記第1被接合面と前記第2被接合面に圧力を加え
る、請求項1に記載の接合方法。
【請求項3】
シクロオレフィンポリマーにより形成されるとともに凹部が形成された第1被接合面を有するカバープレートと、電極となる金属膜が形成された第2被接合面を有する電極プレートと、を準備する工程と、
前記第1被接合面および前記第2被接合面を、H
2OプラズマおよびO
2プラズマのうちの少なくとも一方に曝す工程と、
前記第1被接合面と前記第2被接合面を合わせる工程と、
合わせられた前記第1被接合面と前記第2被接合面に熱を加える工程と
を備え
、
前記熱を加える工程における加熱温度が、90℃以上、且つ、150℃以下の温度範囲にある、バイオセンサの製造方法。
【請求項4】
前記熱を加える工程において、合わせられた
前記第1被接合面と前記第2被接合面に圧力を加え
る、請求項3に記載のバイオセンサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シクロオレフィンポリマー(COP)と金属を接合する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療現場等において、血液等の生体サンプルにおける特定の生体物質の含有量(例えば血糖値)を測定するにあたって、バイオセンサと呼ばれる測定装置が用いられるようになってきている。バイオセンサは、酵素反応や抗原抗体反応等のような、特定の生体物質と特定の化学物質(反応物質)の間に生じる鋭敏な反応を利用して、生体サンプルにおける特定の生体物質の含有量を特定するものである。
【0003】
例えば特許文献1に記載のバイオセンサは、絶縁材料により形成された長尺平板状の基材の主面上に、金属の薄膜から成る複数の線状の電極が形成された電極プレートを備える。各電極は、電極プレートの長尺方向に沿って延在しており、その延在途中の所定位置に、検出するべき生体物質に応じた反応物質が配設される。
【0004】
電極プレートにおける電極が配設されている側の主面には、その一方の端部付近を除くほぼ全体を覆うようにスペーサとしての両面テープが貼着され、該両面テープの他方の粘着面にカバープレートが貼着される。つまり、両面テープおよびカバープレートは、電極プレートの主面の一方の端部(すなわち、電極の端部)を露出させつつ、それ以外の部分を全体的に覆うように配設される。カバープレート等から露出している電極部分は、外部からの電圧の印加を受ける端子部分を形成する。
【0005】
電極プレートとカバープレートの間に設けられるスペーサは、電極プレートの長尺方向の途中で分断されており、該分断された部分において、電極プレートとカバープレートの間に、電極および反応物質に対して露出した細長い空間(すなわち、電極プレートの短尺方向に延在する細長い空間)が形成されるようになっている。この空間が、生体サンプルを保持するためのサンプル保持空間を形成する。
【0006】
このバイオセンサを用いて生体サンプルに含まれる生体物質の含有量を測定する場合、まず、サンプル保持空間に生体サンプル(典型的には、血液)を導入する。すると、該生体サンプルに含まれる特定の生体物質が反応物質と反応して、特定の物質が生成される。このとき、バイオセンサの端部に露出している電極部分(端子部分)から所定の電圧を印加すると、反応により生成された物質の量に応じた電流が電極間に流れる。この電流量を測定することで、該物質の量、ひいては、生体サンプルに含まれる生体物質の量(例えば、血液中のグルコース濃度)を特定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
バイオセンサにおいては、少ない量の生体サンプルで正確な測定を実現することが求められる。必要最小限の生体サンプルを電極および反応物質に接触させつつ、これらに接触しない余剰の生体サンプル量を少なくするためには、バイオセンサの厚み方向におけるサンプル保持空間の寸法を小さくすることが好ましい。
【0009】
ところが、特許文献1に記載のバイオセンサでは、バイオセンサの厚み方向におけるサンプル保持空間の寸法を、スペーサとなる両面テープの厚みよりも小さくすることができない。
【0010】
また、一般にバイオセンサは一回の測定で使い捨てされるものであるため、製造コストをできるだけ抑える必要もある。ところが、特許文献1に記載のバイオセンサのように、一対のプレートを、両面テープを介して一体化する構成では、部品点数および製造工程数が多く、製造コストを十分に抑えることが難しい。
【0011】
これらの問題を回避するためには、例えば、カバープレートに溝を形成しておき、該カバープレートを電極プレートに直接接合して、該溝によりサンプル保持空間が形成されるものとすることが考えられる。こうすると、溝の深さを十分に小さいものとすることで、バイオセンサの厚み方向におけるサンプル保持空間の寸法を十分に小さいものとすることができる。また、電極プレートとカバープレートを直接接合するのであれば、スペーサを用いる場合に比べて、部品点数および製造工程数が少なくなり、製造コストを抑えることも可能となる。
【0012】
ところが、近年においてカバープレートの形成材料として好適に用いられるシクロオレフィンポリマー(COP)は、疎水性樹脂であるため、他部材に対する接着性が低い。したがって、COPから成るカバープレートを金属膜が形成された電極プレートに直接接合することは従来の技術では成し得ることができなかった。
【0013】
本発明はこのような課題を解決するために成されたものであり、その目的とするところは、COPにより形成される被接合面と、金属により形成される被接合面を、直接接合することができる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために成された本発明は、
シクロオレフィンポリマー(COP)により形成された第1被接合面を有する第1部材と、金属により形成された第2被接合面を有する第2部材を接合する方法であって、
前記第1被接合面および前記第2被接合面を、H2OプラズマおよびO2プラズマのうちの少なくとも一方に曝す工程と、
前記第1被接合面と前記第2被接合面を合わせる工程と、
を備える。
【0015】
この方法によると、COPにより形成された第1被接合面と、金属により形成された第2被接合面を、直接接合することができる。その理由は、次のように考えられる。まず、H2OプラズマおよびO2プラズマのうちの少なくとも一方に曝されることによって、COPにより形成された第1被接合面に、親水性の官能基(ヒドロキシ基やカルボキシ基)が修飾される。また、H2OプラズマおよびO2プラズマのうちの少なくとも一方に曝されることによって、金属により形成された第2被接合面にも、親水性の官能基が付与される。そして、これらの被接合面が合わせられることによって、両被接合面の官能基の間で脱水反応が生じて両官能基の間に共有結合が形成される。これにより、両被接合面が直接接合される。
【0016】
上記本発明において、
前記第1被接合面と前記第2被接合面を合わせる工程の後に、
合わせられた両被接合面に圧力および熱を加える工程
を追加してもよい。
【0017】
上記の方法において、第2被接合面を形成する金属の一例としては、例えば、Ru(ルテニウム)、Ni-W(ニッケル-タングステン)、Au(金)、Al(アルミニウム)、Cu(銅)、等が挙げられる。また、金属は、前記金属の微粒子を溶媒に分散させたナノインク(ナノペースト)を基材に塗布または印刷して形成されたものであってもよい。
【0018】
また、別の態様に係る本発明は、
バイオセンサの製造方法であって、
シクロオレフィンポリマー(COP)により形成されるとともに凹部が形成された第1被接合面を有するカバープレートと、電極となる金属膜が形成された第2被接合面を有する電極プレートと、を準備する工程と、
前記第1被接合面および前記第2被接合面を、H2OプラズマおよびO2プラズマのうちの少なくとも一方に曝す工程と、
前記第1被接合面と前記第2被接合面を合わせる工程と、
を備える。
【0019】
この方法によると、COPにより形成された第1被接合面と、電極となる金属膜が形成された第2被接合面を、直接接合して、カバープレートと電極プレートを一体化することができる。したがって、両プレートを一体化するための両面テープ等の部材が不要となり、バイオセンサの製造コストを抑えることができる。このバイオセンサにおいては、カバープレートに形成される凹部の深さを調整することによって、バイオセンサの厚み方向におけるサンプル保持空間の寸法を任意のものにすることができる。
【0020】
特に、この方法においては、第1被接合面がH2OプラズマおよびO2プラズマの少なくとも一方で処理されることによって、ここに形成されている凹部(すなわち、サンプル保持空間を形成する凹部)が親水化される。したがって、サンプル保持空間にサンプルが容易に流入することができる。これにより、少量のサンプルで迅速かつ正確な測定を行うことができる。
【0021】
この方法においても、
前記第1被接合面と前記第2被接合面を合わせる工程の後に、
合わせられた両被接合面に圧力および熱を加える工程
を追加してもよい。
【0022】
また、別の態様に係る本発明は、
バイオセンサであって、
シクロオレフィンポリマー(COP)により形成されるとともに、一方の主面に凹部が形成されたカバープレートと、
一方の主面に電極となる金属膜が形成され、該一方の主面が、前記カバープレートにおける前記凹部が形成されている側の主面と直接接合されている電極プレートと、
を備える。
【0023】
このバイオセンサによると、カバープレートと電極プレートが直接接合されているので、両プレートを一体化するための両面テープ等の部材が不要となり、低コストで製造することができる。また、カバープレートに形成される凹部の深さを調整することによって、バイオセンサの厚み方向におけるサンプル保持空間の寸法を任意のものにすることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によると、COPにより形成された被接合面と、金属により形成された被接合面を、直接接合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】バイオセンサの構成およびその使用態様を説明するための図。
【
図3A】バイオセンサの製造に係る第1の処理の流れを示す図。
【
図3B】バイオセンサの製造に係る第2の処理の流れを示す図。
【
図4】実施例1,2及び参考例1~3に係るプラズマ処理の条件を示す図。
【
図5】実施例1,2及び参考例1~3における接合結果の評価をまとめた表を示す図。
【
図6】実施例3,4に係るプラズマ処理の条件を示す図。
【
図7】実施例3,4の処理条件を説明するための図。
【
図8】実施例3,4及び比較例1~3における接合の可否をまとめた表を示す図。
【
図9】プラズマ処理後の純水接触角の測定結果をまとめた表を示す図。
【
図10】温度・圧力条件が異なる場合の接合の可否をまとめた表を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0027】
<1.バイオセンサ>
<1-1.バイオセンサの構成>
本発明に係るバイオセンサの構成について、
図1を参照しながら説明する。
図1は、バイオセンサ8の構成およびその使用態様を説明するための図である。
【0028】
バイオセンサ8は、カバープレート81と、これと直接接合される電極プレート82とを備える。
【0029】
カバープレート81は、長尺な矩形平板状のプレートであって、シクロオレフィンポリマー(COP)から形成される。カバープレート81の一方の主面810には、カバープレート81の短尺方向に延在するとともに両端がカバープレート81の両側面に開口する溝(凹部)811が、形成されている。
【0030】
電極プレート82は、基材となるベースプレート821を備える。ベースプレート821は、長尺方向の長さがカバープレート81よりも僅かに長い以外は、カバープレート81と略同一形状の平板矩形状の部材であり、絶縁性を有する材料(例えば、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ガラス、COP、等)により形成される。
【0031】
ベースプレート821の一方の主面には、金属の薄膜から成る複数本(図の例では2本)の線状の電極822,822が形成される。各電極822は、ベースプレート821の長尺方向の全体に亘って延在するものとされる。各電極822となる金属としては、典型的には、Ru(ルテニウム)、Ni-W(ニッケル-タングステン)、Au(金)、Ag(銀)、Al(アルミニウム)、Cu(銅)等が想定される。もっとも、これら以外の金属が電極822とされてもよい。また、各電極822は、前記金属の微粒子を溶媒に分散させたナノインク(ナノペースト)をベースプレート821に塗布または印刷して形成されたものであってもよい。
【0032】
電極822の延在途中の所定位置(凹部811と対応する部分)には、測定するべき生体物質に応じた反応物質823が配設される。
【0033】
バイオセンサ8は、カバープレート81における凹部811が形成されている側の主面810と、電極プレート82における、電極822,822が配設されている側の主面820とが、直接接合されることにより形成される(両プレート81,82を接合する態様については後に説明する)。
【0034】
上記のとおり、カバープレート81は、長尺方向の長さが電極プレート82よりも僅かに短い。したがって、両プレート81,82が接合された状態において、カバープレート81は、電極プレート82の主面820の一方の端部分(すなわち、各電極822の端部分)を露出させつつ、それ以外の部分を全体的に覆うことになる。カバープレート81から露出している各電極822の端部分は、外部からの電圧の印加を受ける端子部分801を形成する。
【0035】
また、両プレート81,82が接合された状態において、カバープレート81における凹部811が形成されている部分において、両プレート81,82の間に、各電極822および反応物質823に対して露出した細長い空間(すなわち、バイオセンサ8の短尺方向に延在する細長い空間)が形成される。この空間が、生体サンプルを保持するためのサンプル保持空間802を形成する。
【0036】
<1-2.バイオセンサの使用態様>
次に、バイオセンサ8の使用態様について、引き続き
図1を参照しながら説明する。
【0037】
まず、バイオセンサ8の端子部分801を、外部装置9の開口91から差し入れる。そして、この状態で、生体サンプル(例えば、血液)を、バイオセンサ8のサンプル保持空間802に流入させる。すると、該生体サンプルに含まれる特定の生体物質が反応物質823と反応して特定の物質が生成される。
【0038】
外部装置9は、バイオセンサ8の端子部分801(具体的には各電極822,822の間)に所定の電圧を印加するとともに、このときに各電極822,822の間に流れる電流量を測定する。該測定された電流量に基づいて、反応により生成された物質の量(ひいては、生体サンプルに含まれる生体物質の量)が特定される。
【0039】
<2.接合の態様>
<2-1.プラズマ処理装置>
次に、バイオセンサ8を製造する方法について説明する。該方法について具体的に説明する前に、該方法において用いられるプラズマ処理装置の構成を、
図2を参照しながら説明する。
図2は、プラズマ処理装置100の概略構成を示す図である。
【0040】
プラズマ処理装置100(サムコ株式会社製、製品名:AQ-2000)は、平行平板型(容量結合型)プラズマ処理装置であって、内部に処理空間を形成する処理チャンバー1と、処理チャンバー1の内部にガスを供給するガス供給部2と、処理チャンバー1の内部に上下に対向配置された一対の電極3,4を備える。また、プラズマ処理装置100は、これが備える各要素を制御する制御部5を備える。
【0041】
処理チャンバー1には、その内部にガスを導入するためのガス導入口11、および、処理チャンバー1の内部からガスを排気するための排気口12が設けられている。ガス導入口11にはガス供給部2が接続されている。また、排気口12には、バルブ121および真空ポンプ122が介挿された配管123が接続されている。また、処理チャンバー1には、その内部に被処理物を搬入するための搬出入口(図示省略)及びこれを塞ぐロードロック(図示省略)が設けられている。
【0042】
ガス供給部2は、水を供給する水供給源21と、酸素ガスを供給する酸素ガス供給源22を備える。各供給源21,22は、配管210,220を介して、ガス導入口11に接続されている。水供給源21と接続されている配管210には、水を気化して水蒸気とするヴェーパライザ(気化装置)211、マスフローコントローラ212、および、バルブ213が介挿されている。一方、酸素ガス供給源22と接続されている配管220には、マスフローコントローラ221およびバルブ222が介挿されている。
【0043】
処理チャンバー1の内部に上下に対向配置された一対の電極3,4のうち、下側の電極(下部電極)3の上面は、被処理物を載置する載置面となる。該上面には被処理物を固定するための静電チャック等が設けられる(図示省略)。また、下部電極3は接地される。一方、上側の電極(上部電極)4には、コンデンサ41を介して高周波電源42が接続される。
【0044】
制御部5は、パーソナルコンピュータ等をハードウエア資源とし、該パーソナルコンピュータにインストールされた専用の制御・処理ソフトウエアを実行することにより、各種の機能要素が具現化される。また、制御部5には、液晶ディスプレイ等から成る表示部と、マウス、キーボード、タッチパネル等から構成される入力部が接続されている(図示省略)。
【0045】
制御部5は、気化装置211、各マスフローコントローラ212,221、および、各バルブ213,222、と電気的に接続されており、処理チャンバー1の内部へ導入するガスの種類、ガスの流量、ガスの導入および停止のタイミング、等をそれぞれ制御する。また、制御部5は、バルブ121、および、ポンプ122と電気的に接続されており、処理チャンバー1の内部からのガスの排出および停止のタイミング、等をそれぞれ制御する。また、制御部5は、高周波電源42と電気的に接続されており、上部電極4に高周波電力を投入するタイミング、電力値、等を制御する。
【0046】
<2-2.処理の流れ>
バイオセンサ8を製造する方法について、
図3Aを参照しながら説明する。
図3Aは、バイオセンサ8の製造に係る処理の流れを示す図である。
【0047】
ステップS1:はじめに、カバープレート81と電極プレート82を準備する。各プレート81,82の具体的な構成は上述したとおりである。
【0048】
ステップS2:次に、カバープレート81における凹部811が形成されている側の主面810と、電極プレート82における電極822が形成されている側の主面820を接合する。以下において、ステップS2の処理について具体的に説明する。なお、以下の説明では、カバープレート81における電極プレート82と接合される側の主面810を「第1被接合面810」と呼び、電極プレート82におけるカバープレート81と接合される側の主面820を「第2被接合面820」と呼ぶ。
【0049】
ステップS21:まず、カバープレート81の第1被接合面810と、電極プレート82の第2被接合面820を、H2OプラズマあるいはO2プラズマで処理する。この処理は例えば上述したプラズマ処理装置100を用いて行われる。
【0050】
この場合、まず、図示しない搬入口を介してカバープレート81と電極プレート82を処理チャンバー1の内部に搬入し、各プレート81,82を、各々の被接合面810,820が上を向くような姿勢で、下部電極3に載置して、静電チャックで固定する。
【0051】
続いて、処理チャンバー1の内部にH2OプラズマあるいはO2プラズマを形成する。具体的には、搬入口を閉鎖して処理チャンバー1の内部を閉鎖空間とした後、ガス供給部2が、該内部への水蒸気あるいは酸素ガスの導入を開始する。これと同時に、該内部の排気を行って、該内部を所定の圧力に維持する。ここで、プラズマ処理中の処理チャンバー1内の圧力は、大気圧よりも低く維持することが好ましい。特に、プラズマ処理中の圧力が大気圧以上になるとH2Oプラズマの生成時の温度が100℃以上になるため、シクロオレフィンポリマーにより形成された第1被接合面が変形したり劣化したりする傾向がある。従って、プラズマ処理中の圧力は、0.1Paから2000Paの範囲に維持することがより好ましい。
【0052】
続いて、上部電極4に高周波電源42から高周波電力を投入する。すると、処理チャンバー1の内部に導入されているガスがプラズマ化されてプラズマが生成される。いうまでもなく、処理チャンバー1の内部に水蒸気が導入されている場合は処理チャンバー1にH2Oプラズマ(水プラズマ)が生成され、処理チャンバー1の内部に酸素ガスが導入されている場合はO2プラズマ(酸素プラズマ)が生成される。下部電極3に載置された各プレート81,82の被接合面810,820が、処理チャンバー1内に生成されたプラズマに曝されることにより、各被接合面810,820のプラズマ処理が進行する。
【0053】
プラズマ処理が開始されてから所定の処理時間が経過すると、ガス供給部2が処理チャンバー1の内部への水蒸気あるいは酸素ガスの導入を停止するとともに、高周波電源42から上部電極4への高周波電力の供給を停止して、プラズマ処理を終了する。その後、処理チャンバー1の内部が大気圧に戻され、各プレート81,82が処理チャンバー1から搬出される。
【0054】
ステップS22:続いて、プラズマ処理が施された両プレート81,82の被接合面810,820を合わせる。
【0055】
ステップS21~ステップS22の処理によって、両被接合面810,820が直接接合される。その理由は、次のように考えられる。まず、ステップS21のプラズマ処理によって、第1被接合面810に、親水性の官能基(ヒドロキシ基やカルボキシ基)が修飾される。また、第2被接合面820にも、親水性の官能基が付与される。そして、プラズマ処理を施された両被接合面810,820が、ステップS22で合わせられた状態とされると、両被接合面810,820の官能基が水素結合を形成できる距離まで近づく。これによって、両被接合面810,820の官能基の間で脱水反応が生じて両官能基の間に共有結合が形成される。これにより、両被接合面810,820が直接接合される。
【0056】
カバープレート81の第1被接合面810と、電極プレート82の第2被接合面820が直接接合されることによって、バイオセンサ8が得られる。
【0057】
なお、ステップS22の処理を行った後、両被接合面810,820に圧力及び熱を加える工程を行ってもよい。この場合、バイオセンサ8の製造に係る処理の流れは
図3Bに示すとおりとなる。すなわち、この場合の流れは
図3AにおけるステップS2がステップS2Bとなり、ステップS2BはステップS22の後にステップS23が付加されたものとなる。以下、ステップS23について説明する。
【0058】
ステップS23:ステップS22に続いて、合わせられた両被接合面810,820に圧力および熱を加える。すなわち、両被接合面810,820を加圧しつつ加熱する。この工程は具体的には例えば、図7(b)に例示されるように、一対のヒータ71a,71bと一対の金属ブロック72a,72bを用いて次のように行うことができる。すなわち、一方のヒータ71aの上に載置された金属ブロック72aの上に、対象物(ここでは、各被接合面810,820が合わせられた一対のプレート81,82)を載置する。そして、その上に、他方のヒータ71bおよび他方の金属ブロック72bをこの順に載置する。そして、上側の金属ブロック72bを下側の金属ブロック72aに向けて付勢部材73で付勢することで、これらの間に挟まれた対象物を加圧する。また、一対のヒータ71a,71bを所定温度に温調することで、これらの間に挟まれた対象物を加熱する。
【0059】
このとき、両被接合面810,820に加える圧力は例えば、400(N/cm2)以上、且つ、2400(N/cm2)以下とすることができる。例えば該圧力を1600(N/cm2)とする場合、両被接合面810,820の加熱温度は、90℃以上、且つ、150℃以下とすればよく、特に、95℃以上、且つ、150℃以下とすることが好ましい。また、加熱および加圧を行う時間は、例えば、5分とすることができる。
【0060】
ステップS21~ステップS23の処理によっても、両被接合面810,820が直接接合される。その理由は、次のように考えられる。まず、ステップS21のプラズマ処理によって、第1被接合面810に、親水性の官能基(ヒドロキシ基やカルボキシ基)が修飾される。また、第2被接合面820にも、親水性の官能基が付与される。そして、プラズマ処理を施された両被接合面810,820が、ステップS22で合わせられた状態とされて、ステップS23で圧力が加えられると、両被接合面810,820の官能基が水素結合を形成できる距離まで近づく。さらにここで熱が加えられることによって、両被接合面810,820の官能基の間で脱水反応が生じて両官能基の間に共有結合が形成される。これにより、両被接合面810,820が直接接合される。
【0061】
カバープレート81の第1被接合面810と、電極プレート82の第2被接合面820が直接接合されることによって、バイオセンサ8が得られる。
【0062】
<3.実施例>
<実施例1>
COPサンプル(サイズ:15mm×10mm、厚み:0.5mm)(日本ゼオン製、製品名:ZEONOR1060R)と、チタンウエハの表面にスパッタ法で金薄膜を設けた金属サンプル(サイズ:15mm×10mm、金薄膜部分の平均粗さRa:1.332nm)を準備した。COPサンプルの一方の主面、および、金属サンプルの金属膜が形成されている側の主面を、H
2Oプラズマで処理した。処理条件は
図4に示される通りであり、高周波電力パワーを100W、水蒸気の流量を20sccm、処理チャンバー内の圧力を5Pa、処理時間を80秒、とした。また、プラズマ処理装置の処理モードはPEモードとした。
【0063】
次に、金属サンプルにおけるH2Oプラズマ処理された主面と、COPサンプルにおけるH2Oプラズマ処理された主面を合わせた。具体的には金属サンプルの主面とCOPサンプルの主面が、10mm×10mmの正方形領域で重なるようにして合わせた。
次に、引っ張り試験機により、金属サンプルの他の主面と、COPサンプルの他の主面とを同時に引っ張ることで接合面の強度を3回測定してその平均値を求めた。
【0064】
<参考例1>
実施例1で作成した接合サンプルを常温(24℃)で加圧して実施例1と同じ方法で接合強度の平均値を求めた。接合サンプルの加圧は、金属製の第1ブロックの上に接合サンプルを載置し、接合サンプルの上に金属製の第2ブロックを乗せ、第2ブロックの上面を油圧式のシリンダーで加圧して行った。加圧条件は4900(N/cm2)で10分間とした。
【0065】
<実施例2>
COPサンプル(サイズ:15mm×10mm、厚み:50μm)(日本ゼオン製、製品名:ZEONORZF14-050)を用いた以外は実施例1と同様にして接合強度の平均値を求めた。
【0066】
<参考例2>
COPサンプル(サイズ:15mm×10mm、厚み:50μm)(日本ゼオン製、製品名:ZEONORZF14-050)と、シリコンウエハの表面に蒸着法でアルミニウム薄膜(薄膜の厚さ:300nm、アルミニウム薄膜部分の平均粗さRa:5.462nm)を設けた金属サンプルを用いた以外は参考例1と同様にして接合強度の平均値を求めた。
【0067】
<参考例3>
シリコンウエハの表面に蒸着法で銅薄膜(薄膜の厚さ:1μm、銅薄膜部分の平均粗さRa:3.032nm)を設けた金属サンプルを用いた以外は参考例2と同様にして接合強度の平均値を求めた。
【0068】
以上のようにして作製した実施例1,2及び参考例1~3における接合結果の評価をまとめた表を
図5に示す。加圧を行わない実施例1,2でも、十分接合されることが確認された。
【0069】
<実施例3>
COPサンプル61として、矩形のCOPフィルム片(サイズ:10mm×20mm、厚み:0.5mm)を3枚準備した。また、3種類の金属サンプル(第1金属サンプル62a、第2金属サンプル62b、および、第3金属サンプル62c)を準備した。第1金属サンプル62aは、PETにより形成されたフィルム片(サイズ:10mm×20mm)の一方の主面の全体に、Ru(ルテニウム)の薄膜を形成したものである。第2金属サンプル62bは、PETにより形成されたフィルム片(サイズ:10mm×20mm)の一方の主面の全体に、Ni-W(ニッケル-タングステン)の薄膜を形成したものである。第3金属サンプル62cは、PETにより形成されたフィルム片(サイズ:10mm×20mm)の一方の主面の全体に、Au(金)の薄膜を形成したものである。
【0070】
3枚のCOPサンプル61の一方の主面、および、3種類の金属サンプル62a,62b,62cにおける金属膜が形成されている側の主面を、H
2Oプラズマで処理した。処理条件は
図6に示される通りであり、高周波電力パワーを100W、水蒸気の流量を20sccm、処理チャンバー内の圧力を5Pa、処理時間を40秒、とした。また、プラズマ処理装置として、サムコ社製プラズマ処理装置(製品名:AQ-2000)を用いた(処理モードはPEモード)。
【0071】
次に、第1金属サンプル62aにおける、H
2Oプラズマで処理された側の主面と、COPサンプル61におけるH
2Oプラズマで処理された側の主面を合わせた。具体的には、
図7(a)に示されるように、第1金属サンプル62aの該主面とCOPサンプル61の該主面が、10mm×10mmの正方形領域で重なるようにして合わせた。第2金属サンプル62bおよび第3金属サンプル62cについても同様にして、H
2Oプラズマで処理された側の主面をCOPサンプル61におけるH
2Oプラズマで処理された側の主面と合わせた。
【0072】
次に、COPサンプル61と各金属サンプル62a,62b,62cの主面同士が合わされたサンプル対(第1金属サンプル62aとCOPサンプル61が合わせられた第1サンプル対60a、第2金属サンプル62bとCOPサンプル61が合わせられた第2サンプル対60b、および、第3金属サンプル62cとCOPサンプル61が合わせられた第3サンプル対60cの各々)を、加圧しつつ加熱した。
【0073】
具体的には、各サンプル対60a,60b,60cをSiO
2の薄板で挟み、これを、
図7(b)に示される装置を用いて、加熱しつつ加圧した。すなわち、SiO
2の薄板で挟まれた各サンプル対60a,60b,60cを、第1金属ブロック72a(第1ヒータ71a上に載置された第1金属ブロック72a)の上に載置し、その上に、第2ヒータ71bおよび第2金属ブロック72bをこの順で載置した。第2金属ブロック72bは、第1金属ブロック72aに立設された一対のガイドポール74,74に沿って昇降可能に設けられるとともに、一対の付勢部材73,73によって、第1金属ブロック72aに向けて所定の荷重で付勢されている。各付勢部材73は例えば、第2金属ブロック72bに上側から貫通され、下端において、第1金属ブロック72aに設けられたねじ穴と螺合するネジ部材により形成される。この場合、各付勢部材73の上端に加えるトルクによって、サンプル対60a,60b,60cに付加される圧力の大きさを調整することができる。ここでは、両ヒータ71a,71bの温度を100℃とし、サンプル対60a,60b,60cに付加する圧力を1600(N/cm
2)とした。また、加熱および加圧の時間は、5分とした。
【0074】
実施例3に係る一連の処理を施された3組のサンプル対60a,60b,60cにおいて、COPサンプル61と各金属サンプル62a,62b,62cが接合されているか否かを目視により確認した。その結果、
図8の表に示されるように、第1サンプル対60a、第2サンプル対60b、および、第3サンプル対60cの全てにおいて、COPサンプル61と金属サンプル62a,62b,62cが接合されていることが確認できた。
【0075】
上記のとおり、COPサンプル61と各金属サンプル62a,62b,62cが接合される理由は、プラズマ処理によって、各サンプル61,62a,62b,62cの被接合面に親水性の官能基が形成され、加熱および加圧によって両被接合面の官能基の間に共有結合が形成されるためと考えられる。これを検証するべく、上記の処理条件でH
2Oプラズマ処理を施された後の各サンプル61,62a,62b,62cの被接合面の純水接触角を測定したところ、
図9に示される測定結果が得られた。ここから、H
2Oプラズマで処理を施されることによって、各サンプル61,62a,62b,62cの被接合面が親水化していること(被接合面に親水性の官能基が生成されている)ことが明らかになった。
【0076】
<実施例4>
実施例3と同じサンプル61,62a,62b,62cを、O
2プラズマで処理し、上記と同様にして各サンプルの主面の一部を合わせて3組のサンプル対60a,60b,60cとし、これらを加圧しつつ加熱した。ただし、プラズマ処理の条件は、ガスの種類を水蒸気から酸素に変更した以外は、実施例3と同じものとした(
図6)。また、加熱および加圧の条件は実施例3と同じものとした。
【0077】
実施例4に係る一連の処理を施された3組のサンプル対60a,60b,60cにおいて、COPサンプル61と各金属サンプル62a,62b,62cが接合されているか否かを目視により確認した。その結果、
図8の表に示されるように、第1サンプル対60a、第2サンプル対60b、および、第3サンプル対60cの全てにおいて、COPサンプル61と金属サンプル62a,62b,62cが接合されていることが確認できた。
【0078】
また、ここでも、上記の処理条件でO
2プラズマ処理を施された後の各サンプル61,62a,62b,62cの純水接触角を測定したところ、
図9に示される測定結果が得られた。ここから、O
2プラズマで処理を施されることによって、各サンプル61,62a,62b,62cの被接合面が親水化していること(被接合面に親水性の官能基が生成されている)ことが明らかになった。
【0079】
<比較実験1>
比較例1:実施例3において、H2Oプラズマ処理を行わなかった。すなわち、実施例3と同じサンプル61,62a,62b,62cを、何らのプラズマ処理もすることなく、上記と同様にして主面の一部を合わせて3組のサンプル対60a,60b,60cとし、これらを加圧しつつ加熱した。ただし、加圧および加熱の条件は実施例3と同じものとした。
【0080】
比較例2:実施例3において、加熱および加圧を行わなかった。すなわち、実施例3と同じサンプル61,62a,62b,62cを、H2Oプラズマで処理し、上記と同様にして主面の一部を合わせて3組のサンプル対60a,60b,60cとして加熱および加圧は行わなかった。ただし、プラズマ処理の条件は実施例3と同じものとした。
【0081】
比較例3:実施例4において、加熱および加圧を行わなかった。すなわち、実施例4と同じサンプル61,62a,62b,62cを、O2プラズマで処理し、上記と同様にして主面の一部を合わせて3組のサンプル対60a,60b,60cとして加熱および加圧は行わなかった。ただし、プラズマ処理の条件は実施例4と同じものとした。
【0082】
比較例1~3に係る各処理を施された3組のサンプル対60a,60b,60cにおいて、COPサンプル61と各金属サンプル62a,62b,62cが接合されているか否かを目視により確認した。その結果、
図8の表に示されるように、比較例1~3のいずれにおいても、COPサンプル61と金属サンプル62a,62b,62cは接合されなかった。
【0083】
<比較実験2>
実施例3と同じCOPサンプル61(矩形のCOPフィルム片(サイズ:10mm×20mm、厚み:0.5mm))と、実施例3と同じ第1金属サンプル62a(PETにより形成されたフィルム片(サイズ:10mm×20mm)の一方の主面の全体に、Ruの薄膜を形成したもの)をそれぞれ複数枚準備した。そして、各COPサンプル61の一方の主面、および、各第1金属サンプル62aにおける金属膜が形成されている側の主面を、H
2
Oプラズマで処理した。ただし、プラズマ処理の処理条件は実施例3と同じものとした。続いて、実施例3と同様、各第1金属サンプル62aにおける、H
2
Oプラズマで処理された側の主面と、各COPサンプル61におけるH
2
Oプラズマで処理された側の主面を合わせた(
図7(a)参照)。そして、第1金属サンプル62aとCOPサンプル61の主面同士が合わせられた各サンプル対(第1サンプル対60a)を、実施例3と同じ方法で加圧しつつ加熱した(
図7(b)参照)。ただし、ここでは、一対のヒータ71a,71bの温度および各付勢部材73の上端に加えるトルクを調整することで、複数のサンプル対60aの各々に対して、それぞれ異なる温度・圧力条件で、加熱および加圧を施した。また、加熱および加圧の時間は、全て5分とした。
【0084】
それぞれ異なる温度・圧力条件で、加熱および加圧が施された各サンプル対60aにおいて、COPサンプル61と第1金属サンプル62aが接合されているか否かを目視により確認した。その結果をまとめた表が
図10に示されている。ここに示されるように、例えば、付加する圧力が400(N/cm
2)の場合は、100℃以上の加熱で接合が実現され、付加する圧力が2400(N/cm
2)の場合は、85℃以上の加熱で接合が実現された。つまり、付加する圧力が高くなるほど、低い加熱温度で接合が実現される(別の見方をすると、加熱温度が高くなるほど、低い圧力で接合が実現される)ことがわかった。
【0085】
また例えば付加する圧力が1600(N/cm2)の場合、90℃以上の加熱で接合が実現された。ただし、この場合に、加熱温度を150℃まで高めてしまうと、接合は実現されるものの、COPサンプル61が変形することが確認されている。したがって、付加する圧力が1600(N/cm2)の場合、適切な温度範囲は、90℃以上、且つ、150℃以下ということができる。特に、加熱温度を95℃以上、且つ、150℃以下とすることで、COPサンプル61を変形させることなく、十分に強固な接合を実現することができる。
【0086】
<4.変形例>
上記の実施形態では、本発明に係る方法を適用してカバープレート81と電極プレート82を接合して、バイオセンサ8を得る方法について説明したが、本発明に係る方法の適用範囲はこれに限るものではなく、COPにより形成された被接合面を有する部材と、金属により形成された被接合面を有する部材を接合する場合に広く用いることができる。
【0087】
また、上記の実施形態では、本発明に係る方法を適用してCOPにより形成される被接合面(第1被接合面810)と、電極となる金属(Ru、Ni-W、Au、銀、等)により形成される被接合面(第2被接合面820)とを接合していたが、本発明に係る方法を用いれば、電極となる金属以外の各種の金属により形成される被接合面と、COPにより形成される被接合面とを接合することもできる。
【0088】
また、上記の実施形態では、プラズマ処理装置100において、被処理物が載置される下部電極3が接地されるとともに上部電極4に高周波電源42が接続されており、各プレート81,82に対して、PE(Plasma Etching)モードによるプラズマ処理を行っていたが、被処理物が載置される下部電極3に高周波電源を接続するとともに上部電極4を接地して、RIE(Reactive Ion Etching)モードによるプラズマ処理を行ってもよい。
【0089】
また、上記の実施形態に係るステップS2では、第1被接合面810と第2被接合面820を、H2OプラズマあるいはO2プラズマで処理していたが、H2OプラズマあるいはO2プラズマの少なくとも一方を含む混合プラズマ等で処理してもよい。例えば、H2OプラズマとO2プラズマの混合プラズマで処理してもよいし、H2Oプラズマ(あるいはO2プラズマ)に、窒素(N2)、アンモニア(NH3)、水素(H2)、アルゴン(Ar)、ヘリウム(He)、等の各種のガスが混合された雰囲気で処理してもよい。
【0090】
また、上記の実施形態に係るステップS23では、合わせられた両被接合面810,820に対する加熱と加圧は同時に行われていたが、場合によっては、加熱した後に加圧してもよいし、加圧した後に加熱してもよい。
【符号の説明】
【0091】
8…バイオセンサ
801…端子部分
802…サンプル保持空間
81…カバープレート
810…第1被接合面
811…凹部
82…電極プレート
820…第2被接合面
821…ベースプレート
822…電極
823…反応物質
100…プラズマ処理装置
71a,71b…ヒータ
72a,72b…金属ブロック
73…付勢部材
74…ガイドポール