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特許7089806悪性B細胞を特異的に認知する抗体またはその抗原結合断片、これを含むキメラ抗原受容体及びその用途
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-15
(45)【発行日】2022-06-23
(54)【発明の名称】悪性B細胞を特異的に認知する抗体またはその抗原結合断片、これを含むキメラ抗原受容体及びその用途
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20220616BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20220616BHJP
   C07K 16/30 20060101ALI20220616BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20220616BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20220616BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20220616BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220616BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20220616BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20220616BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20220616BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20220616BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220616BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20220616BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220616BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220616BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20220616BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C12N15/63 Z
C07K16/30
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C07K19/00
C12N15/62 Z
A61K35/12
A61P37/06
A61P43/00 105
A61P29/00
A61K39/395 Z
A61P35/00
C12P21/08
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020530356
(86)(22)【出願日】2018-12-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-18
(86)【国際出願番号】 KR2018015445
(87)【国際公開番号】W WO2019112347
(87)【国際公開日】2019-06-13
【審査請求日】2020-06-02
(31)【優先権主張番号】10-2017-0166969
(32)【優先日】2017-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】515286542
【氏名又は名称】アブクロン・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ABCLON INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】イ,ジョン ソ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ギュ テ
(72)【発明者】
【氏名】コ,ポン グク
(72)【発明者】
【氏名】キム,キ ヒュン
【審査官】進士 千尋
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/139487(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/066136(WO,A2)
【文献】特表2008-546647(JP,A)
【文献】特表2016-520074(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含むヒト化抗-CD19抗体またはその抗原結合断片:
(i)次の重鎖CDR(Complementarity determining region)アミノ酸配列を含む重鎖可変領域:配列番号1のCDRH1、配列番号2のCDRH2、及び配列番号3のCDRH3;並びに次の軽鎖CDRアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域:配列番号4のCDRL1、配列番号5のCDRL2、及び配列番号6のCDRL3;
(ii)次の重鎖CDR(Complementarity determining region)アミノ酸配列を含む重鎖可変領域:配列番号1のCDRH1、配列番号2のCDRH2、及び配列番号3のCDRH3;並びに次の軽鎖CDRアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域:配列番号4のCDRL1、配列番号5のCDRL2、及び配列番号40のCDRL3;
(iii)次の重鎖CDR(Complementarity determining region)アミノ酸配列を含む重鎖可変領域:配列番号1のCDRH1、配列番号2のCDRH2、及び配列番号3のCDRH3;並びに次の軽鎖CDRアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域:配列番号4のCDRL1、配列番号5のCDRL2、及び配列番号41のCDRL3;
(iv)次の重鎖CDR(Complementarity determining region)アミノ酸配列を含む重鎖可変領域:配列番号1のCDRH1、配列番号2のCDRH2、及び配列番号30のCDRH3;並びに次の軽鎖CDRアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域:配列番号4のCDRL1、配列番号36のCDRL2、及び配列番号40のCDRL3;
(v)次の重鎖CDR(Complementarity determining region)アミノ酸配列を含む重鎖可変領域:配列番号1のCDRH1、配列番号2のCDRH2、及び配列番号31のCDRH3;並びに次の軽鎖CDRアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域:配列番号4のCDRL1、配列番号5のCDRL2、及び配列番号40のCDRL3;
(vi)次の重鎖CDR(Complementarity determining region)アミノ酸配列を含む重鎖可変領域:配列番号1のCDRH1、配列番号2のCDRH2、及び配列番号32のCDRH3;並びに次の軽鎖CDRアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域:配列番号4のCDRL1、配列番号37のCDRL2、及び配列番号40のCDRL3;
(vii)次の重鎖CDR(Complementarity determining region)アミノ酸配列を含む重鎖可変領域:配列番号1のCDRH1、配列番号2のCDRH2、及び配列番号33のCDRH3;並びに次の軽鎖CDRアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域:配列番号4のCDRL1、配列番号38のCDRL2、及び配列番号40のCDRL3;
(viii)次の重鎖CDR(Complementarity determining region)アミノ酸配列を含む重鎖可変領域:配列番号1のCDRH1、配列番号2のCDRH2、及び配列番号34のCDRH3;並びに次の軽鎖CDRアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域:配列番号4のCDRL1、配列番号39のCDRL2、及び配列番号40のCDRL3;または
(ix)次の重鎖CDR(Complementarity determining region)アミノ酸配列を含む重鎖可変領域:配列番号1のCDRH1、配列番号2のCDRH2、及び配列番号35のCDRH3;並びに次の軽鎖CDRアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域:配列番号4のCDRL1、配列番号5のCDRL2、及び配列番号40のCDRL3。
【請求項2】
前記重鎖可変領域及び前記軽鎖可変領域は、それぞれ以下を含むことを特徴とする、請求項1に記載のヒト化抗-CD19抗体またはその抗原結合断片:
(i)配列番号7及び8の配列
(ii)配列番号42及び43の配列
(iii)配列番号46及び47の配列
(iv)配列番号50及び51の配列
(v)配列番号54及び55の配列
(vi)配列番号58及び59の配列
(vii)配列番号62及び63の配列
(viii)配列番号66及び67の配列;または
(ix)配列番号70及び71の配列
【請求項3】
請求項1または2のヒト化抗-CD19抗体またはその抗原結合断片をエンコーディングする核酸分子。
【請求項4】
請求項3の核酸分子を含む組換えベクター。
【請求項5】
請求項4の組換えベクターに形質転換された宿主細胞。
【請求項6】
以下を含むCD19特異的キメラ抗原受容体:
(a)ヒト化抗-CD19抗体またはその抗原結合断片を含む細胞外ドメイン(Extracellular domain);
(b)膜横断ドメイン(transmembrane domain);及び
(c)細胞内信号伝達ドメイン、
ここで前記ヒト化抗-CD19抗体またはその抗原結合断片は以下を含む:
(i)次の重鎖CDR(Complementarity determining region)アミノ酸配列を含む重鎖可変領域:配列番号1のCDRH1、配列番号2のCDRH2、及び配列番号3のCDRH3;並びに次の軽鎖CDRアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域:配列番号4のCDRL1、配列番号5のCDRL2、及び配列番号6のCDRL3;
(ii)次の重鎖CDR(Complementarity determining region)アミノ酸配列を含む重鎖可変領域:配列番号1のCDRH1、配列番号2のCDRH2、及び配列番号3のCDRH3;並びに次の軽鎖CDRアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域:配列番号4のCDRL1、配列番号5のCDRL2、及び配列番号40のCDRL3;
(iii)次の重鎖CDR(Complementarity determining region)アミノ酸配列を含む重鎖可変領域:配列番号1のCDRH1、配列番号2のCDRH2、及び配列番号3のCDRH3;並びに次の軽鎖CDRアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域:配列番号4のCDRL1、配列番号5のCDRL2、及び配列番号41のCDRL3;
(iv)次の重鎖CDR(Complementarity determining region)アミノ酸配列を含む重鎖可変領域:配列番号1のCDRH1、配列番号2のCDRH2、及び配列番号30のCDRH3;並びに次の軽鎖CDRアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域:配列番号4のCDRL1、配列番号36のCDRL2、及び配列番号40のCDRL3;
(v)次の重鎖CDR(Complementarity determining region)アミノ酸配列を含む重鎖可変領域:配列番号1のCDRH1、配列番号2のCDRH2、及び配列番号31のCDRH3;並びに次の軽鎖CDRアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域:配列番号4のCDRL1、配列番号5のCDRL2、及び配列番号40のCDRL3;
(vi)次の重鎖CDR(Complementarity determining region)アミノ酸配列を含む重鎖可変領域:配列番号1のCDRH1、配列番号2のCDRH2、及び配列番号32のCDRH3;並びに次の軽鎖CDRアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域:配列番号4のCDRL1、配列番号37のCDRL2、及び配列番号40のCDRL3;
(vii)次の重鎖CDR(Complementarity determining region)アミノ酸配列を含む重鎖可変領域:配列番号1のCDRH1、配列番号2のCDRH2、及び配列番号33のCDRH3;並びに次の軽鎖CDRアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域:配列番号4のCDRL1、配列番号38のCDRL2、及び配列番号40のCDRL3;
(viii)次の重鎖CDR(Complementarity determining region)アミノ酸配列を含む重鎖可変領域:配列番号1のCDRH1、配列番号2のCDRH2、及び配列番号34のCDRH3;並びに次の軽鎖CDRアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域:配列番号4のCDRL1、配列番号39のCDRL2、及び配列番号40のCDRL3;または
(ix)次の重鎖CDR(Complementarity determining region)アミノ酸配列を含む重鎖可変領域:配列番号1のCDRH1、配列番号2のCDRH2、及び配列番号35のCDRH3;並びに次の軽鎖CDRアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域:配列番号4のCDRL1、配列番号5のCDRL2、及び配列番号40のCDRL3。
【請求項7】
前記重鎖可変領域及び前記軽鎖可変領域は、それぞれ以下を含むことを特徴とする、請求項6に記載のCD19特異的キメラ抗原受容体:
(i)配列番号7及び8の配列
(ii)配列番号42及び43の配列
(iii)配列番号46及び47の配列
(iv)配列番号50及び51の配列
(v)配列番号54及び55の配列
(vi)配列番号58及び59の配列
(vii)配列番号62及び63の配列
(viii)配列番号66及び67の配列;または
(ix)配列番号70及び71の配列
【請求項8】
請求項6または7のキメラ抗原受容体を発現するエフェクター細胞。
【請求項9】
請求項8のエフェクター細胞を含むCD19を発現する細胞と関連した疾患、自己免疫疾患または炎症疾患の予防または治療用薬剤学的組成物。
【請求項10】
請求項6または7のキメラ抗原受容体をエンコーディングする核酸分子。
【請求項11】
請求項10の核酸分子を含む組換えベクター。
【請求項12】
請求項11の組換えベクターに形質転換された宿主細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は2017年12月6日付で大韓民国特許庁に提出された大韓民国特許出願第10-2017-0166969号に対して優先権を主張し、前記特許出願の開示事項は本明細書に参照として挿入される。
【0002】
本発明は、悪性B細胞を標的して癌を治療する用途の新規な抗体またはその抗原結合断片、これを含むキメラ抗体受容体及びこれらの用途に関するものである。
【背景技術】
【0003】
悪性B細胞(B cell malignancy)は私達の体の兔疫系を構成する細胞系列のうち、B細胞で生じる腫瘍をいう。このような悪性B細胞は正常な兔疫系を破壊するため、外部から侵入する抗原に対する免疫性を落として患者を死亡に至るようにする。例えば、悪性B細胞のうちの1つである急性リンパ球性白血病(Acute Lymphocytic Leukemia、ALL)はリンパ球系白血球が悪性細胞に変わって骨髄で増殖し、末梢血液に広まって、肝、脾臓、リンパ系、大脳、小脳、脊髄などを侵犯する疾病である。このような急性リンパ球性白血病を治療する方法に、化学療法(chemotherapy)、標的治療法(targeted therapy)、同種幹細胞移植(allogeneic stem cell transplantation)が代表的であり、その治療法が向上して小児患者の生存率は85%を上回っている。しかしながら、相変らず既存の治療剤に未反応する患者あるいは再発患者が発生しており、小児癌死亡の最も大きい原因となっている。
【0004】
急性リンパ球性白血病だけでなく、悪性B細胞から発生する大部分のリンパ腫/白血病(lymphoma/leukemia)は細胞の表面にCD19抗原を発現するので、これに基づいてCD19抗原を認識する多様な治療法が試みられている。このようなCD19標的治療剤分野のうち、CAR-T治療剤は既存治療に不応する急性白血病患者を対象に標的細胞の細胞毒性を活性化させることによって細胞死滅を誘導する機作を通じて血液癌治療に活用されており、これを通じて高い完治率(30人のうち、27人完治)の臨床試験結果が報告された。しかしながら、既存のCD19CAR-T治療剤は高い反応率にもかかわらず、治療剤を投与した患者の10-20%で耐性が生じる問題点が報告されている(Maude et
al., N Eng J Med、 2014、371:1507; Topp et al., J Clin Oncol、2014、32:4134)。したがって、既存に使われるCD19標的抗体とは異なる部位に結合する新規な抗体の発掘が必要である。
【0005】
このような背景下に本発明者らは、悪性B細胞のうち、CD19を発現するB細胞を選択的に認識する抗体断片を開発して、開発された抗体が既存に使われているFMC63とは異なる部位のCD19に結合して相異するエピトープを有する抗体であることを確認した。また、開発された抗体断片を発現するキメラ抗原受容体を発現する細胞毒性T細胞が細胞毒性活性を保有していることを確認した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは既存のCD19特異的なCAR-T治療剤に対して耐性が生じる問題を解決するために、CD19の他のエピトープに結合する新規な抗体及びこれを用いたキメラ抗原受容体を開発しようと努力した。その結果、本発明のCD19_12.18抗体及びこれらの変異体が既存のFMC63抗体とは異なるCD19のエピトープ領域に結合することを確認し、本発明を完成した。
【0007】
したがって、本発明の目的は新規な抗-CD19抗体またはその抗原結合断片を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、抗-CD19抗体またはその抗原結合断片を含む細胞外ドメイン(extracellular domain)、膜横断ドメイン(transmembrane domain)、及び細胞内信号伝達ドメインを含むキメラ抗原受容体を提供することにある。
【0009】
本発明の更に他の目的は、前記キメラ抗原受容体を発現する細胞を提供することにある。
【0010】
本発明の更に他の目的は、前記キメラ抗原受容体を発現する細胞を含む薬剤学的組成物を提供することにある。
【0011】
本発明の更に他の目的は、前記抗体、その抗原結合断片、またはキメラ抗原受容体をエンコーディングする核酸分子を提供することにある。
【0012】
本発明の更に他の目的は、前記抗体、その抗原結合断片、またはキメラ抗原受容体をエンコーディングする核酸分子を含む再組合せベクターを提供することにある。
【0013】
本発明の更に他の目的は、前記再組合せベクターに形質転換された宿主細胞を提供することにある。
【0014】
本発明の他の目的及び利点は、下記の発明の詳細な説明、請求範囲、及び図面により、さらに明確になる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本明細書では、下記の第1項乃至代42項の発明が請求される。
【0016】
1.以下を含む抗-CD19抗体またはその抗原結合断片:
(a)次の重鎖にCDR(Complementarity determining region)アミノ酸配列を含む重鎖に可変領域:配列番号1のCDRH1及び配列番号2のCDRH2;及び
(b)次の軽鎖にCDRアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域:配列目録第4配列のCDRL1。
【0017】
2.第1項において、前記重鎖可変領域は配列番号3、30乃至35のうち、いずれか1つのアミノ酸配列を含むCDRH3を追加的に含むものである、抗-CD19抗体またはその抗原結合断片。
【0018】
3.第1項において、前記軽鎖可変領域は、配列番号5、36乃至39のうち、いずれか1つのアミノ酸配列を含むCDRL2を追加的に含むものである、抗-CD19抗体またはその抗原結合断片。
【0019】
4.第1項において、前記軽鎖可変領域は、配列番号6、40、及び41のうち、いずれか1つのアミノ酸配列を含むCDRL3を追加的に含むものである、抗-CD19抗体またはその抗原結合断片。
【0020】
5.第1項乃至第4項のうち、いずれか一項において、前記重鎖可変領域は、配列番号7、42、46、50、54、58、62、66、及び70のうち、いずれか1つのアミノ酸配列を含むものである、抗-CD19抗体またはその抗原結合断片。
【0021】
6.第1項乃至第4項のうち、いずれか一項において、前記軽鎖可変領域は、配列番号8、43、47、51、55、59、63、67、及び71のうち、いずれか1つのアミノ酸配列を含むものである、抗-CD19抗体またはその抗原結合断片。
【0022】
7.CD19に特異的に結合し、配列番号92のアミノ酸配列のT51、S53、E55、L58、K59、及びK63からなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸残基に結合する抗体またはその抗原結合断片のCD19に対する結合を遮断する抗-CD19抗体またはその抗原結合断片。
【0023】
8.第7項において、前記抗体またはその抗原結合断片はCD19に特異的に結合し、配列番号92のアミノ酸配列のT51、S53、E55、L58、K59、及びK63からなる群より選択される少なくとも2つ以上のアミノ酸残基に結合する抗体またはその抗原結合断片のCD19に対する結合を遮断するものである、抗-CD19抗体または抗原結合断片。
【0024】
9.第7項において、前記抗体またはその抗原結合断片はCD19に特異的に結合し、配列番号92のアミノ酸配列のT51、S53、E55、L58、K59、及びK63からなる群より選択される少なくとも3個以上のアミノ酸残基に結合する抗体またはその抗原結合断片のCD19に対する結合を遮断するものである、抗-CD19抗体または抗原結合断片。
【0025】
10.第7項において、前記抗体またはその抗原結合断片はCD19に特異的に結合し、配列番号92のアミノ酸配列のL58、K59、及びK63からなる群より選択される少なくとも1つ以上のアミノ酸残基に結合する抗体またはその抗原結合断片のCD19に対する結合を遮断するものである、抗-CD19抗体または抗原結合断片。
【0026】
11.第7項において、前記抗体またはその抗原結合断片はCD19に特異的に結合し、配列番号92のアミノ酸配列のL58、K59、及びK63からなる群より選択される少なくとも2つ以上のアミノ酸残基に結合する抗体またはその抗原結合断片のCD19に対する結合を遮断するものである、抗-CD19抗体または抗原結合断片。
【0027】
12.第7項において、前記抗体またはその抗原結合断片はCD19に特異的に結合し、配列番号92のアミノ酸配列のT51、S53、E55、L58、K59、及びK63からなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸残基に結合するものである、抗-CD19抗体またはその抗原結合断片。
【0028】
13.第7項において、前記抗体またはその抗原結合断片はCD19に特異的に結合し、配列番号92のアミノ酸配列のT51、S53、E55、L58、K59、及びK63からなる群より選択される少なくとも2つ以上のアミノ酸残基に結合するものである、抗-CD19抗体またはその抗原結合断片。
【0029】
14.第7項において、前記抗体またはその抗原結合断片はCD19に特異的に結合し、配列番号92のアミノ酸配列のT51、S53、E55、L58、K59、及びK63からなる群より選択される少なくとも3個以上のアミノ酸残基に結合するものである、抗-CD19抗体またはその抗原結合断片。
【0030】
15.第7項において、前記抗体またはその抗原結合断片はCD19に特異的に結合し、配列番号92のアミノ酸配列のL58、K59、及びK63からなる群より選択される少なくとも1つ以上のアミノ酸残基に結合するものである、抗-CD19抗体またはその抗原結合断片。
【0031】
16.第7項において、前記抗体またはその抗原結合断片はCD19に特異的に結合し、配列番号92のアミノ酸配列のL58、K59、及びK63からなる群より選択される少なくとも2つ以上のアミノ酸残基に結合するものである、抗-CD19抗体またはその抗原結合断片。
【0032】
17.第7項において、前記抗体またはその抗原結合断片は第1項乃至第6項のうちのいずれか一項の抗体またはその抗原結合断片である、抗-CD19抗体またはその抗原結合断片。
【0033】
18.第1項乃至第17項のうち、いずれか一項において、前記抗体またはその抗原結合断片はFMC63抗体が結合するエピトープに結合しないものである、抗-CD19抗体またはその抗原結合断片。
【0034】
19.第18項において、前記抗体またはその抗原結合断片はヒト抗体またはヒト化された抗体である、抗-CD19抗体または抗原結合断片。
【0035】
20.第18項において、前記抗体またはその抗原結合断片はscFvである、抗-CD19抗体または抗原結合断片。
【0036】
21.第1項乃至第20項のうち、いずれか一項の抗体またはその抗原結合断片をエンコーディングする核酸分子。
【0037】
22.第21項の核酸分子を含む再組合せベクター。
【0038】
23.第22項の再組合せベクターに形質転換された宿主細胞。
【0039】
24.次を含むCD19特異的キメラ抗原受容体:
(a)第1項の抗-CD19抗体またはその抗原結合断片を含む細胞外ドメイン(Extracellular domain);
(b)膜横断ドメイン(transmembrane domain);及び
(c)細胞内信号伝達ドメイン。
【0040】
25.第24項において、前記膜横断ドメインは、T-細胞受容体、CD27、CD28、CD3エプシロン、CD45、CD4、CD5、CD8(CD8α)、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、及びCD154のアルファ、ベータ、またはゼタ鎖からなる群より選択された蛋白質の膜横断ドメインである、CD19特異的キメラ抗原受容体。
【0041】
26.第24項において、前記細胞内信号伝達ドメインはCD3ζ(CD3ゼタ)鎖から由来したドメインである、キメラ抗原受容体。
【0042】
27.第24項において、前記細胞内信号伝達ドメインは、OX40(CD134)、CD2、CD27、CD28、CDS、ICAM-1、LFA-1(CD11a/CD18)、及び4-1BB(CD137)からなる群より選択された共同刺激分子(costimulatory molecule)を追加的に含むものである、キメラ抗原受容体。
【0043】
28.第24項乃至第27項のうち、いずれか一項のキメラ抗原受容体を発現する細胞。
【0044】
29.第28項において、前記細胞は、樹状細胞、キラー樹状細胞、肥満細胞、NK-細胞、B-細胞または炎症性T-リンパ球、細胞毒性T-リンパ球、調節T-リンパ球またはヘルパーT-リンパ球からなる群より選択された免疫細胞である、キメラ抗原受容体を発現する細胞。
【0045】
30.第1項乃至第20項のうち、いずれか一項の抗体またはその抗原結合断片を含むCD19を発現する細胞と関連した疾患、自己免疫疾患、または炎症疾患の予防または治療用薬剤学的組成物。
【0046】
31.第30項において、前記CD19を発現する細胞と関連した疾患は、慢性リンパ球性白血病(chronic lymphocytic leukemia、CLL)、急性リンパ球性白血病(acute lymphocytic leukemia、ALL)、前リンパ球性白血病(pro-lymphocytic leukemia)、毛細胞白血病(hairy cell leukemia)、一般急性リンパ球性白血病(common acute lymphocytic leukemia、CALLA)、Null-acute lymphoblastic leukemia、非-ホジキンリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(diffuse large B cell lymphoma、DLBCL)、多発性骨髄腫、濾胞性リンパ腫(follicular lymphoma)、脾臓リンパ腫(splenic
lymphoma)、辺縁帯リンパ腫(marginal zone lymphoma)、マントル細胞リンパ腫(mantle cell lymphoma)、低危険群B細胞リンパ腫(indolent B cell lymphoma)、及びホジキンリンパ腫(Hodgkin lymphoma)からなる群より選択されたB細胞悪性腫瘍(B cell
malignancy)である、薬剤学的組成物。
【0047】
32.第30項において、前記自己免疫疾患または炎症疾患は、多発性硬化症、リューマチ性関節炎、及び全身性紅斑性ループス(systemic lupus erythematosus、SLE)からなる群より選択された疾患である、薬剤学的組成物。
【0048】
33.第28項または第29項の細胞を含むCD19を発現する細胞と関連した疾患、自己免疫疾患、または炎症疾患の予防または治療用薬剤学的組成物。
【0049】
34.第33項において、前記CD19を発現する細胞と関連した疾患は、慢性リンパ球性白血病(chronic lymphocytic leukemia、CLL)、急性リンパ球性白血病(acute lymphocytic leukemia、ALL)、前リンパ球性白血病(pro-lymphocytic leukemia)、毛細胞白血病(hairy cell leukemia)、一般急性リンパ球性白血病(common acute lymphocytic leukemia、CALLA)、Null-acute lymphoblastic leukemia、非-ホジキンリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(diffuse large B cell lymphoma、DLBCL)、多発性骨髄腫、濾胞性リンパ腫(follicular lymphoma)、脾臓リンパ腫(splenic
lymphoma)、辺縁帯リンパ腫(marginal zone lymphoma)、マントル細胞リンパ腫(mantle cell lymphoma)、低危険群B細胞リンパ腫(indolent B cell lymphoma)、及びホジキンリンパ腫(Hodgkin lymphoma)からなる群より選択されたB細胞悪性腫瘍(B cell
malignancy)である、薬剤学的組成物。
【0050】
35.第33項において、前記自己免疫疾患または炎症疾患は、多発性硬化症、リューマチ性関節炎、及び全身性紅斑性ループス(systemic lupus erythematosus、SLE)からなる群より選択された疾患である、薬剤学的組成物。
【0051】
36.第24項乃至第27項のキメラ抗原受容体をエンコーディングする核酸分子。
【0052】
37.第36項の核酸分子を含む再組合せベクター。
【0053】
38.第37項の再組合せベクターに形質転換された宿主細胞。
【0054】
39.第30項乃至35項のうち、いずれか一項の組成物を治療を必要とする対象体に投与する段階を含むCD19を発現する細胞と関連した疾患、自己免疫疾患、または炎症疾患の治療方法。
【0055】
40. 第39項において、前記CD19を発現する細胞と関連した疾患は、慢性リンパ球性白血病(chronic lymphocytic leukemia、CLL)、急性リンパ球性白血病(acute lymphocytic leukemia、ALL)、前リンパ球性白血病(pro-lymphocytic leukemia)、毛細胞白血病(hairy cell leukemia)、一般急性リンパ球性白血病(commonacute lymphocytic leukemia、CALLA)、Null-acute lymphoblastic leukemia、非-ホジキンリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(diffuse large B cell lymphoma、DLBCL)、多発性骨髄腫、濾胞性リンパ腫(follicular lymphoma)、脾臓リンパ腫(splenic
lymphoma)、辺縁帯リンパ腫(marginal zone lymphoma)、マントル細胞リンパ腫(mantle cell lymphoma)、低危険群B細胞リンパ腫(indolent B cell lymphoma)、及びホジキンリンパ腫(Hodgkin lymphoma)からなる群より選択されたB細胞悪性腫瘍(B cell
malignancy)である、治療方法。
【0056】
41.第39項において、前記自己免疫疾患または炎症疾患は、多発性硬化症、リューマチ性関節炎、及び全身性紅斑性ループス(systemic lupus erythematosus、SLE)からなる群より選択された疾患である、治療方法。
【0057】
42.第39項において、前記対象体は哺乳動物またはヒトである、治療方法。
【0058】
本発明の一態様によれば、本発明は以下を含む抗-CD19抗体またはその抗原結合断片を提供する:
(a)次の重鎖CDR(Complementarity determining region)アミノ酸配列を含む重鎖可変領域:配列番号1のCDRH1及び配列番号2のCDRH2;及び
(b)次の軽鎖CDRアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域:配列目録第4配列のCDRL1。
【0059】
本発明の一具現例で、前記重鎖可変領域は、配列番号3、30乃至35のうち、いずれか1つのアミノ酸配列を含むCDRH3を追加的に含む。
【0060】
本発明の他の具現例で、前記軽鎖可変領域は、配列番号5、36乃至39のうち、いずれか1つのアミノ酸配列を含むCDRL2を追加的に含む。
【0061】
本発明の更に他の具現例で、前記軽鎖可変領域は、配列番号6、40、及び41のうち、いずれか1つのアミノ酸配列を含むCDRL3を追加的に含む。
【0062】
本発明の具体的な具現例で、前記重鎖可変領域は、配列番号7、42、46、50、54、58、62、66、及び70のうち、いずれか1つのアミノ酸配列を含む。
【0063】
本発明の他の具体的な具現例で、前記軽鎖可変領域は、配列番号8、43、47、51、55、59、63、67、及び71のうち、いずれか1つのアミノ酸配列を含む。
【0064】
本発明の他の一態様によれば、本発明はCD19に特異的に結合し、配列番号92のアミノ酸配列のT51、S53、E55、L58、K59、及びK63からなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸残基に結合する抗体または抗原結合断片のCD19に対する結合を遮断する抗-CD19抗体またはその抗原結合断片を提供する。前記配列番号92のアミノ酸配列はhuman B lymphocyte antigen CD19のアミノ酸配列で、UniProtKBのID:P15391として公知されている。
【0065】
本発明の前記抗体または抗原結合断片はCD19に特異的に結合し、配列番号92のアミノ酸配列のT51、S53、E55、L58、K59、及びK63からなる群より選択される少なくとも2つ以上のアミノ酸残基に結合する抗体または抗原結合断片のCD19に対する結合を遮断する。
【0066】
本発明の前記抗体または抗原結合断片はCD19に特異的に結合し、配列番号92のアミノ酸配列のT51、S53、E55、L58、K59、及びK63からなる群より選択される少なくとも3個以上のアミノ酸残基に結合する抗体または抗原結合断片のCD19に対する結合を遮断する。
【0067】
本発明の前記抗体または抗原結合断片はCD19に特異的に結合し、配列番号92のアミノ酸配列のL58、K59、及びK63からなる群より選択される少なくとも1つ以上のアミノ酸残基に結合する抗体または抗原結合断片のCD19に対する結合を遮断する。
【0068】
本発明の前記抗体または抗原結合断片はCD19に特異的に結合し、配列番号92のアミノ酸配列のL58、K59、及びK63からなる群より選択される少なくとも2つ以上のアミノ酸残基に結合する抗体または抗原結合断片のCD19に対する結合を遮断する。
【0069】
本発明の一具現例で、前記抗体または抗原結合断片はCD19に特異的に結合し、配列番号92のアミノ酸配列のT51、S53、E55、L58、K59、及びK63からなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸残基に結合する。
【0070】
本発明の他の一具現例で、前記抗体または抗原結合断片はCD19に特異的に結合し、配列番号92のアミノ酸配列のT51、S53、E55、L58、K59、及びK63からなる群より選択される少なくとも2つ以上のアミノ酸残基に結合する。
【0071】
本発明の更に他の一具現例で、前記抗体または抗原結合断片はCD19に特異的に結合し、配列番号92のアミノ酸配列のT51、S53、E55、L58、K59、及びK63からなる群より選択される少なくとも3個以上のアミノ酸残基に結合する。
【0072】
本発明の具体的な具現例で、前記抗体または抗原結合断片はCD19に特異的に結合し、配列番号92のアミノ酸配列のL58、K59、及びK63からなる群より選択される少なくとも1つ以上のアミノ酸残基に結合する。
【0073】
本発明の他の具体的な具現例で、前記抗体または抗原結合断片はCD19に特異的に結合し、配列番号92のアミノ酸配列のL58、K59、及びK63からなる群より選択される少なくとも2つ以上のアミノ酸残基に結合する。
【0074】
本発明の一実施例で確認したように、本発明の抗-CD19抗体またはその抗原結合断片(e.g.CD19_12.18)は前述した配列番号92のアミノ酸配列からなるhCD19のT51、S53、E55、L58、K59、及びK63アミノ酸残基を各々変形したmtCD19(T51V)、mtCD19(S53C)、mtCD19(E55D)、mtCD19(L58F)、mtCD19(K59E)、及びmtCD19(K63N)に対して結合力の減少を示した。前記の結果から本発明の抗-CD19抗体またはその抗原結合断片は前記6個のアミノ酸残基をCD19に対する結合において主要なkey residueとして有することを確認した。また、その中でもL58、K59、及びK63を変形させたmutant hCD19に対して結合力が顕著に減少するという点でL58、K59、及びK63のアミノ酸残基がCD19結合に一層重要なkey residueであることを確認した。したがって、本発明の抗-CD19抗体またはその抗原結合断片は配列番号92のアミノ酸配列からなるhCD19のT51、S53、E55、L58、K59、及びK63からなる群より選択される少なくとも1つ、2つ、または3個以上のアミノ酸残基に結合する。より具体的には、本発明の抗-CD19抗体またはその抗原結合断片は配列番号92のアミノ酸配列からなるhCD19のL58、K59、及びK63からなる群より選択される少なくとも1つ、または2つ以上のアミノ酸残基に結合する。その結果、本発明の抗-CD19抗体またはその抗原結合断片は配列番号92のアミノ酸配列からなるhCD19のT51、S53、E55、L58、K59、及びK63からなる群より選択される抗体または抗原結合断片の少なくとも1つ、2つ、または3個以上のアミノ酸残基に結合する抗体または抗原結合断片のCD19に対する結合を遮断する。より詳しくは、本発明の抗-CD19抗体またはその抗原結合断片は配列番号92のアミノ酸配列からなるhCD19のL58、K59、及びK63からなる群より選択される少なくとも1つ、または2つ以上のアミノ酸残基に結合する抗体または抗原結合断片のCD19に対する結合を遮断する。
【0075】
また、本発明の一具現例において、本発明のCD19_12.18抗体またはこれらの変異体は従来のキメラ抗原受容体に使われる抗体であるFMC63のエピトープと異なるCD19のエピトープに結合し、互いに同一なエピトープを有するか、または同一なエピトープに対して競争的に結合する。
【0076】
本発明の実施例で確認したように、配列番号92のアミノ酸配列からなるhCD19のT51、S53、E55、L58、K59、及びK63アミノ酸残基を各々変形したmtCD19(T51V)、mtCD19(S53C)、mtCD19(E55D)、mtCD19(L58F)、mtCD19(K59E)、及びmtCD19(K63N)に対して本発明の抗-CD19抗体または抗原結合断片の結合力が格段に低下したが、FMC63抗体の場合、結合力が完全に維持された。また、本発明の抗体またはその抗原結合断片はmtCD19(H218R/KSS)にも正常に結合したが、FMC63抗体は前記mtCD19(H218R/KSS)に対して結合力が大きく低下した。したがって、本発明の抗-CD19抗体またはその抗原結合断片はFMC63抗体が結合するエピトープには結合しない。
【0077】
本発明の他の実施例によれば、本発明のCD19_12.18抗体の変異体(i.e.CD19_1218.81抗体をELISAプレートにコーティングし、CD19-ECD-CkまたはCD19-ECD-Ck及びCD19_1218抗体を加えてcompetitive ELISAを遂行した結果、CD19_1218抗体が存在する場合、CD19_1218.81抗体とCD19-ECD-Ckに競争的に結合する結果、結合されたCD19-ECD-Ckの量が低下することを確認した。したがって、本発明の抗-CD19抗体及びこれらの変異体は互いに同一なエピトープを有するか、または同一なエピトープに対して競争的に結合する。
本発明で、前記抗体または抗原結合断片はヒト抗体であるか、またはヒト化されたものでありうる。また、本発明で前記抗体または抗原結合断片はscFvであろうるが、これに限定されるのではない。
【0078】
本発明で、前記抗体または抗原結合断片は、CDRグラフティング(CDR grafting)方法を用いてマウスで開発した既存の抗体の相補性決定部位(complementarity determining regions、CDRs)を既存の抗体のフレームワーク領域(framework region)より安定したフレームワーク領域(framework region)に移植した。“CDRグラフティング”とは、マウス単一クローン抗体をヒト患者に使用時、免疫反応が引き起こされて 中和(neutralization)される問題点を解決するために開発された方法であって、非-ヒト抗体(non-human antibody)をヒト化(humanization)する最も代表的な方法である。即ち、CDRグラフティングは動物抗体のCDR部位をヒト抗体のフレームワーク(framework)に移植するものである。
【0079】
本明細書で、前記発明の一態様に従う抗体はCD19_12.18抗体またはその変異体である。具体的に、前記CD19_12.18抗体の変異体はhzCD19_1218.81、hzCD19_1218.82、hzCD19_1218.81.12、hzCD19_1218.81.17、hzCD19_1218.81.52、hzCD19_1218.81.55、hzCD19_1218.81.64、またはhzCD19_1218.81.79であり、これらのCDR及び軽鎖可変領域または重鎖可変領域に対するアミノ酸配列及びヌクレオチド配列は本願明細書及び添付の配列目録に記載されている。
【0080】
本明細書で、“FMC63”抗体はムリン抗-CD19単一クローン抗体の一例である(Nicholson et al., Molecular Immunology、34(16-17): 1157-1165 (1997))。FMC63単一クローン抗体の可変領域は臨床試験で試験されたCARに使われてきた(例えば、文献[Kochenderfer et al., Nature Review Clinical Oncol., 10(5); 267-276 (2013); Porter et al., New Eng. J. Med., 365(8): 725-733 (2011); Kalos et al., Science Translational Medicine、3(95): 95ra73 (2011); Kochenderfer et al., Blood、116(20): 4099-4102 (2010); and Kochenderfer et al., Blood、119(12): 2709-2720 (2012)]参照)。
【0081】
本明細書で、用語“抗体(antibody)”はCD19に対する特異抗体であって、完全な抗体形態だけでなく、抗体分子の抗原結合断片(antigen binding fragment)を含む。
【0082】
完全な抗体は2つの全長の軽鎖及び2つの全長の重鎖を有する構造であり、各々の軽鎖は重鎖とジスルフィド結合により連結されている。重鎖不変領域は、ガンマ(γ)、ミュー(μ)、アルファ(α)、デルタ(δ)、及びエプシロン(ε)タイプを有し、サブクラスにガンマ1(γ1)、ガンマ2(γ2)、ガンマ3(γ3)、ガンマ4(γ4)、アルファ1(α1)、及びアルファ2(α2)を有する。軽鎖の不変領域はカッパ(κ)及びラムダ(λ)タイプを有する。
【0083】
本明細書で、用語“抗原結合断片(antigen binding fragment)”は抗原結合機能を保有している断片を意味し、Fab、F(ab’)、F(ab’)2及びFvなどを含む。抗体断片のうち、Fab(fragment antigen binding)は軽鎖及び重鎖の可変領域と軽鎖の不変領域及び重鎖の最初の不変領域(CH1)を有する構造で、1つの抗原結合部位を有する。Fab’は重鎖CH1ドメインのC-末端に1つ以上のシステイン残基を含むヒンジ領域(hinge region)を有するという点でFabと差がある。F(ab’)2抗体はFab’のヒンジ領域のシステイン残基がジスルフィド結合をなしながら生成される。Fvは重鎖可変部位及び軽鎖可変部位のみを有している最小の抗体片で、Fv断片を生成する再組合せ技術は当業界に公知されている。二重鎖Fv(two-chain Fv)は非共有結合により重鎖可変部位と軽鎖可変部位が連結されており、単鎖Fv(single-chin variable fragment、scFv)は一般的にペプチドリンカーを通じて重鎖の可変領域と単鎖の可変領域が共有結合により連結されるか、またはC-末端で直ぐに連結されているので、二重鎖Fvのようにダイマーのような構造をなすことができる。このような抗体断片は蛋白質加水分解酵素を用いて得ることができ(例えば、全体抗体をパパインに制限切断すればFabを得ることができ、ペブシンに切断すればF(ab’)2断片を得ることができる)、または遺伝子再組合技術により製作することができる。
【0084】
したがって、本発明で抗体は具体的に単一クローン抗体、多特異的抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、単鎖Fvs(scFv)、単鎖抗体、Fab断片、F(ab’)断片、ジスルフィド-結合Fvs(sdFv)、及び抗-イディオタイプ(抗-ID)抗体、そして前記抗体のエピトープ-結合断片などを含むが、これに限定されるのではない。
【0085】
本明細書で、用語“重鎖”は、抗原に特異性を与えるための充分の可変領域配列を有するアミノ酸配列を含む可変領域ドメインVH及び3個の不変領域ドメインCH1、CH2、及びCH3を含む全長の重鎖及びその断片を全て意味する。また、本明細書で、用語“軽鎖”は抗原に特異性を与えるための充分の可変領域配列を有するアミノ酸配列を含む可変領域ドメインVL及び不変領域ドメインCLを含む全長の軽鎖及びその断片を全て意味する。
【0086】
本明細書で、用語“可変領域(variable region)”または“可変ドメイン(variable domain)”は抗体を抗原に結合させることと関連する抗体重鎖または軽鎖のドメインを意味する。Native抗体の重鎖及び軽鎖の可変ドメイン(各々VH及びVL)は一般的に類似の構造を有し、各ドメインは4個の保存されたフレームワーク領域(framework regions、FR)及び3個の超可変領域(hypervariable regions、HVR)を含む。(Kindt et al., Kuby Immunology、 第6版、W.H. Freeman and Co., page 91 (2007))。
【0087】
本明細書で、用語“CDR(complementarity determining region)”は免疫グロブリン重鎖及び軽鎖の高可変領域(hypervariable region)のアミノ酸配列を意味する(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest、4th Ed., U.S. Department of Health and Human Services、National Institutes of Health (1987))。重鎖(CDRH1、CDRH2、及びCDRH3)及び軽鎖(CDRL1、CDRL2、及びCDRL3)には各々3個のCDRsが含まれている。CDRは抗体が抗原またはエピトープに結合することに当たって主要な接触残基を提供する。
【0088】
本明細書で、用語“フレームワーク(Framework)”または“FR”は超可変領域(hypervariable region、HVR)残基の以外の可変ドメイン残基を示す。可変ドメインのFRは一般的に4個のFRドメインFR1、FR2、FR3、及びFR4で構成される。したがって、HVR及びFR配列は一般的にVHで次の順序で表れる:
FRH1(Framework region 1 of Heavy chain)-CDRH1 (complementarity determining region 1 of Heavy chain)-FRH2-CDRH2-FRH3-CDRH3-FRH4;
また、HVR及びFR配列は一般的にVL(または、Vk)で次の順序で表れる:
FRL1(Framework region 1 of Light chain)-CDRL1(complementarity determining region 1 of Light chain)-FRL2-CDRL2-FRL3-CDRL3-FRL4.
本明細書で、用語“特異的に結合する”またはこのようなことは、抗体またはその抗原結合断片、またはscFvのような異なる構成物が生理的条件下で比較的安定した抗原と複合体を形成するということを意味する。特異的結合は少なくとも約1x10-6M以下の平衡解離定数(例えば、これより小さいKDはより堅い結合を示す)に特性化できる。2つの分子が特異的に結合するか否かを決定する方法は当業界によく知られており、例えば平衡透析、表面プラスモン共鳴などを含む。
【0089】
本明細書で、用語“親和度(Affinity)”は分子(例えば、抗体)の単一結合部位とその結合パートナー(例えば、抗原)との間の非共有相互作用の総合の強度を意味する。異に明示しない限り、“結合親和力(binding affinity)”は結合対(例えば、抗体及び抗原)の構成員間の1:1相互作用を反映する内因性(intrinsic)結合親和力を示す。分子XとそのパートナーYの親和度は一般的に解離定数(Kd)で示すことができる。親和度は本願に記述されていることを含んで当業界に公知されている通常的な方法により測定できる。
【0090】
また、本明細書で、用語“ヒト抗体(human antibody)”または“ヒト化抗体(humanized antibody)”はヒトまたはヒト細胞により生成された抗体、またはヒト抗体レパートリー(repertoires)または他のヒト抗体コーディング配列を用いる非ヒト根源から由来した抗体のアミノ酸配列に相応するアミノ酸配列を保有する。
本明細書で、用語、“キメラ(chimeric)抗体”は重鎖及び/又は軽鎖の一部が特定根源(source)または種(species)から由来し、重鎖及び/又は軽鎖の残りが相異する根源または種から由来した抗体を意味する。
【0091】
本発明の抗-CD19抗体またはその抗原結合断片は、CD19を特異的に認識することができる範囲内で添付した配列目録に記載されたアミノ酸配列の変異体を含むことができる。例えば、抗体の結合親和度及び/又はその他の生物学的特性を改善させるために抗体のアミノ酸配列に変化を与えることができる。このような変形は、例えば抗体のアミノ酸配列残基の欠失、挿入及び/又は置換を含む。
【0092】
このようなアミノ酸変異はアミノ酸側鎖置換体の相対的類似性、例えば、疏水性、親水性、電荷、サイズなどに基づいてなされる。アミノ酸側鎖置換体のサイズ、形態、及び種類に対する分析により、アルギニン、リジンとヒスチジンは、全て正電荷を帯びた残基であり;アラニン、グライシンとセリンは類似のサイズを有し;フェニルアラニン、トリプトファンとチロシンは類似の形態を有することが分かる。したがって、このような考慮事項に基づいて、アルギニン、リジンとヒスチジン;アラニン、グライシンとセリン;そしてフェニルアラニン、トリプトファンとチロシンは生物学的に機能均等物ということができる。
【0093】
変異の導入に当たって、アミノ酸の疏水性インデックス(hydropathic index)が考慮できる。各々のアミノ酸は疏水性と電荷によって疏水性インデックスが与えられている:イソロイシン(+4.5);バリン(+4.2);ロイシン(+3.8);フェニルアラニン(+2.8);システイン/シスタイン(+2.5);メチオニン(+1.9);アラニン(+1.8);グライシン(-0.4);トレオニン(-0.7);セリン(-0.8);トリプトファン(-0.9);チロシン(-1.3);プロリン(-1.6);ヒスチジン(-3.2);グルタメート(-3.5);グルタミン(-3.5);アスパルテート(-3.5);アスパラギン(-3.5);リジン(-3.9);及びアルギニン(-4.5)。
【0094】
蛋白質の相互的な生物学的機能(interactive biological function)を与えることに当たって、疏水性アミノ酸インデックスは非常に重要である。類似の疏水性インデックスを有するアミノ酸に置換しなければ類似の生物学的活性が保有できないということは公知の事実である。疏水性インデックスを参照して変異を導入させる場合、好ましくは、±2以内、より好ましくは±1以内、より好ましくは±0.5以内の疏水性インデックス差を示すアミノ酸の間で置換を行う。
【0095】
一方、類似の親水性値(hydrophilicity value)を有するアミノ酸の間の置換が均等な生物学的活性を有する蛋白質をもたらすということもよく知られている。米国特許第4,554,101号に開示されたように、次の親水性値が各々のアミノ酸残基に与えられている:アルギニン(+3.0);リジン(+3.0);アスパルテート(+3.0±1);グルタメート(+3.0±1);セリン(+0.3);アスパラギン(+0.2);グルタミン(+0.2);グライシン(0);トレオニン(-0.4);プロリン(-0.5±1);アラニン(-0.5);ヒスチジン(-0.5);システイン(-1.0);メチオニン(-1.3);バリン(-1.5);ロイシン(-1.8);イソロイシン(-1.8);チロシン(-2.3);フェニルアラニン(-2.5);トリプトファン(-3.4)。
【0096】
親水性値を参照して変異を導入させる場合、好ましくは±2以内、より好ましくは±1以内、より好ましくは±0.5以内の親水性値の差を示すアミノ酸の間で置換を行う。
【0097】
分子の活性を全体的に変更させない蛋白質でのアミノ酸交換は当該分野に公知されている(H. Neurath、R.L.Hill、The Proteins、Academic Press、New York、 1979)。最も通常的に起こる交換は、アミノ酸残基Ala/Ser、Val/Ile、Asp/Glu、Thr/Ser、Ala/Gly、Ala/Thr、Ser/Asn、Ala/Val、Ser/Gly、Thy/Phe、Ala/Pro、Lys/Arg、Asp/Asn、Leu/Ile、Leu/Val、Ala/Glu、Asp/Gly間の交換である。
【0098】
本発明の一具現例によれば、本発明の抗-CD19抗体またはその抗原結合断片は前述した配列番号1乃至3、配列番号30乃至35のうちより選択されたアミノ酸配列を含む1以上のCDRを含む重鎖可変領域;及び配列番号4乃至6、配列番号36乃至41のうちより選択されたアミノ酸配列を含む1以上のCDRを含む軽鎖可変領域を含む単一クローン抗体、多特異的抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、単鎖Fvs(scFv)、単鎖抗体、Fab断片、F(ab’)断片、ジスルフィド-結合Fvs(sdFV)、及び抗-イディオタイプ(抗-Id)抗体、そして、前記抗体のエピトープ-結合断片などを含むが、これに限定されるのではない。
【0099】
本発明の他の一具現例で、本発明の抗-CD19抗体またはその抗原結合断片は前述した配列番号7、42、46、50、54、58、62、66、及び70のうち、いずれか1つのアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。
【0100】
本発明の更に他の一具現例で、本発明の抗-CD19抗体またはその抗原結合断片は前述した配列番号8、43、47、51、55、59、63、67、及び71のうち、いずれか1つのアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0101】
本発明の他の具現例で本発明の抗-CD19抗体またはその抗原結合断片は抗-CD19scFvである。
【0102】
本発明の具体的な具現例で、前記抗体またはその抗原結合断片に含まれる重鎖可変領域及び軽鎖可変領域は(Gly-Ser)n、(Gly2-Ser)n、(Gly3-Ser)n、または(Gly4-Ser)nリンカーにより連結される。ここで、nは1乃至6の整数であり、具体的には3乃至4であるが、これに限定されるのではない。前記scFvの軽鎖可変領域及び重鎖可変領域は、例えば次の配向により存在することができる:軽鎖可変領域-リンカー-重鎖可変領域;または重鎖可変領域-リンカー-軽鎖可変領域。
【0103】
一方、本発明の抗体CDR配列は従来の抗-CD19抗体またはこれらを含むキメラ抗原受容体のCDR配列と比較して相同性(similarity)が非常に低くて、その配列の独特性がある。例えば、本発明のCD19_12.18抗体に対してncbiウェブサイトでBLAST検索した結果、相同性が最も高いと出た米国特許第9074002号に開示された抗体(配列目録第29配列)は、本発明のCD19_12.18抗体とCDR配列相同性が81.7%に過ぎず、さらに米国特許第9074002号に記載された抗体はProtein Tyrosine Phosphatase 1B(PTP1B)に結合する抗体であって、本発明の抗体とそのターゲットが相異する。
【0104】
本発明の他の一態様によれば、本発明は上記の抗-CD19抗体またはその抗原結合断片をエンコーディングする核酸分子を提供する。
【0105】
本発明の一具現例によれば、前記核酸分子は抗-CD19抗体またはその抗原結合断片をエンコーディングする核酸分子は、配列番号10乃至12のヌクレオチド配列からなる群より選択された1以上のCDRをエンコーディングするヌクレオチド配列及び配列番号13乃至15のヌクレオチド配列からなる群より選択された1以上のCDRをエンコーディングするヌクレオチド配列を含む。
【0106】
本発明の他の一具現例によれば、前記核酸分子は配列番号16、44、48、52、56、60、64、68、及び72からなる群より選択されるヌクレオチド配列を含む、重鎖可変領域をエンコーディングするヌクレオチド配列を含む。
【0107】
本発明の更に他の一具現例によれば、前記核酸分子は配列番号17、45、49、53、57、61、65、69、及び73からなる群より選択されるヌクレオチド配列を含む、重鎖可変領域をエンコーディングするヌクレオチド配列を含む。
【0108】
本発明の更に他の一具現例によれば、前記核酸分子は配列目録第18配列を含む抗体または抗原結合断片をエンコーディングするヌクレオチド配列を含むが、これに限定されるのではない。
【0109】
本明細書で、用語“核酸分子”はDNA(gDNA及びcDNA)そしてRNA分子を包括的に含む意味を有し、核酸分子で基本構成単位であるヌクレオチドは自然のヌクレオチドだけでなく、糖または塩基部位が変形された類似体(analogue)も含む(Scheit、Nucleotide Analogs、John Wiley、New York(1980); Uhlman及びPeyman、Chemical Reviews、90:543-584(1990))。
【0110】
本発明の前記抗体またはその抗原結合断片、または前記キメラ抗原受容体ポリペプチドをエンコーディングするヌクレオチド配列は、前記キメラ抗原受容体分子を構成するアミノ酸配列をエンコーディングするヌクレオチド配列であれば足りて、どの特定ヌクレオチド配列に限定されないということは当業者に自明である。
【0111】
これは、ヌクレオシド配列の変異が発生しても変異されたヌクレオチド配列を蛋白質に発現すれば蛋白質配列で変化をもたらさない場合もあるためである。これをコドンの縮退星という。したがって、前記ヌクレオチド配列は機能的に均等なコドンまたは同一なアミノ酸をコーディングするコドン(例えば、コドンの縮退星により、アルギニンまたはセリンに対するコドンは6個である)、または生物学的に均等なアミノ酸をコーディングするコドンを含むヌクレオチド配列を含む。
【0112】
本発明の具体的な具現例によれば、前記本発明のCD19に対する抗体またはその抗原結合断片の重鎖CDR、軽鎖CDR、重鎖可変領域、軽鎖可変領域、重鎖、または軽鎖をなすポリペプチドをエンコーディングする核酸のヌクレオチド配列は本明細書の添付された配列目録に収録されている。
【0113】
抗-CD19抗体またはその抗原結合断片をエンコーディングする本発明の核酸分子は、前記したヌクレオチド配列に対して実質的な同一性を示すヌクレオチド配列も含むことと解析される。上記の実質的な同一性は、前記した本発明のヌクレオチド配列と任意の他の配列を最大限対応するようにアラインし、当業界で通常的に用いられるアルゴリズムを用いてアラインされた配列を分析した場合に、最小80%の相同性、より好ましくは最小90%の相同性、最も好ましくは最小95%の相同性を示すヌクレオチド配列を意味する。
【0114】
前述した生物学的均等活性を有する変異を考慮すれば、本発明の抗体または抗原結合断片;またはキメラ抗原受容体ポリペプチドをエンコーディングする核酸分子は配列目録に記載された配列と実質的な同一性(substantial identity)を示す配列も含むことと解析される。上記の実質的な同一性は、前記した本発明の配列と任意の他の配列を最大限対応するようにアラインし、当業界で通常的に用いられるアルゴリズムを用いてアラインされた配列を分析した場合に、最小61%の相同性、より好ましくは70%の相同性、より好ましくは80%の相同性、最も好ましくは90%の相同性を示す配列を意味する。配列比較のためのアラインメント方法は当業界に公知されている。アラインメントに対する多様な方法及びアルゴリズムは Smith and Waterman、Adv. Appl. Math. 2:482(1981); Needleman and Wunsch、J. Mol. Bio. 48:443(1970); Pearson and Lipman、Methods in Mol. Biol. 24: 307-31(1988); Higgins and Sharp、Gene 73:237-44(1988); Higgins and Sharp、CABIOS 5:151-3(1989); Corpet et al., Nuc. Acids Res. 16:10881-90(1988); Huang et al., Comp. Appl. BioSci. 8:155-65(1992) and Pearson et al., Meth. Mol. Biol. 24:307-31(1994)に開示されている。NCBI Basic Local Alignment Search Tool(BLAST) (Altschul et al., J. Mol. Biol.215:403-10(1990))は、NBCI(National Center for Biological Information) などで接近可能であり、インターネット上でblastp、blastn、blastx、tblastn、及びtblastxのような配列分析プログラムと連動して用いることができる。BLASTはncbiウェブサイトのBLASTページを通じて接続可能である。このプログラムを用いた配列相同性比較方法はncbiウェブサイトのBLAST helpページで確認することができる。
【0115】
本発明の更に他の態様によれば、本発明は前記抗-CD19抗体またはその抗原結合断片をエンコーディングする核酸分子を含む再組合せベクターを提供する。
【0116】
本発明の更に他の一態様によれば、本発明は前記再組合せベクターに形質転換された宿主細胞を含む。
【0117】
本発明のベクターを安定し、かつ連続的にクローニング及び発現させることができる宿主細胞は当業界に公知されて、いかなる宿主細胞も用いることができ、例えば、前記ベクターの適合した真核細胞宿主細胞は猿腎臓細胞7(COS7:monkey kidney cells)、NSO細胞、SP2/0、チャイニーズハムスター卵巣(CHO:Chinese hamster ovary)細胞、W138、幼いハムスター腎臓(BHK:baby hamster kidney)細胞、MDCK、骨髄種細胞株、HuT78細胞及びHEK-293細胞を含むが、これに限定されるのではない。
【0118】
本発明の他の態様によれば、本発明は次を含むCD19特異的キメラ抗原受容体を提供する:
(a)上記の抗-CD19抗体またはその抗原結合断片を含む細胞外ドメイン(Extracellular domain);
(b)膜横断ドメイン(transmembrane domain);及び
(c)細胞内信号伝達ドメイン。
【0119】
本明細書で、用語“キメラ抗原受容体(chimeric antigen receptor、CAR)”は、T-細胞信号伝達またはT-細胞活性化ドメインに連結された抗体の抗原結合ドメイン(例えば、単一鎖可変断片(scFv))を含有する人工的に製作されたハイブリッド蛋白質またはポリペプチドである。キメラ抗原受容体は単一クローン抗体の抗原-結合性質を用いて非-MHC-制限方式で、選択された標的に対するT-細胞特異性及び反応性を再誘導する能力を有する。非-MHC-制限された抗原認識はCARを発現するT-細胞に抗原処理にかかわらず抗原を認識する能力を提供して、腫瘍逃避の主要メカニズムを回避させる。また、CARはT-細胞で発現される時、有利には内在性T-細胞受容体(TCR)アルファ及びベータ鎖と二量体化されない。
【0120】
本発明のキメラ抗原受容体はBリンパ球抗原として知られたCD19に対して誘導された抗体またはその抗原結合断片を含む細胞外ドメインを含む。本発明で、前記CD19に対して誘導された抗体またはその抗原結合断片は、前述した抗-CD19抗体またはその抗原結合断片である。
【0121】
本発明の一具現例によれば、本発明のキメラ抗原受容体は細胞の表面で発現される。したがって、膜横断ドメインを含むことができる。前記膜横断ドメインは当該分野で公知された天然供給源から、または合成供給源から由来できる。前記膜横断ドメインは、例えばT-細胞受容体、CD27、CD28、CD3エプシロン、CD45、CD4、CD5、CD8(CD8α)、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、及びCD154のアルファ、ベータまたはゼタ鎖からなる群より選択された蛋白質の膜横断ドメインでありうるが、これに限定されるのではない。
【0122】
本発明の具体的な具現例によれば、前記膜横断ドメインは配列目録第20配列を含むヌクレオチド配列によりエンコーディングされるCD8由来ヒンジ/膜横断ドメインである。
【0123】
本明細書で、用語“細胞内信号伝達ドメイン”は2次メッセンジャー(2nd messenger)を生成するか、または前記2次メッセンジャーに反応してエフェクターとして機能することによって、規定された信号伝達経路を通じての細胞活性を調節するために情報を細胞内に伝達することによって作用する蛋白質の機能性部分を意味する。
【0124】
本発明の他の具現例によれば、本発明のキメラ抗原受容体は細胞内信号伝達ドメインを含むことができる。前記細胞内信号伝達ドメインは、免疫細胞及び免疫反応の活性化を引き起こすターゲット(例えば、CD19)に前記細胞外ドメインを結合させた後、細胞内信号伝達の原因となる。即ち、細胞内信号伝達ドメインは免疫細胞の正常エフェクター(effector)機能のうち、少なくとも1つの活性化の原因となる。例えば、T細胞のエフェクター機能はサイトカインの分泌を含む細胞毒性活性またはヘルパー活性でありうる。キメラ抗原受容体で使用するための信号変換ドメインの好ましい例は、抗原受容体結合(engagement)後、信号変換を開始するために協力して作用するT細胞受容体及び共同-受容体の細胞質配列、だけでなく同一な機能的能力を有する、このような配列の任意誘導体または変形体及び任意合成配列でありうる。
【0125】
本発明の具体的な具現例によれば、前記キメラ抗原受容体の細胞内信号伝達ドメインはCD3ζ(CD3ゼタ)鎖から由来したドメインである。
【0126】
本発明のより具体的な具現例によれば、前記CD3ζ(CD3ゼタ)鎖から由来したドメインは配列目録第22配列を含む塩基配列によりエンコーディングされるCD3ζドメインである。
【0127】
本発明の他の具体的な具現例によれば、前記キメラ抗原受容体の細胞内信号伝達ドメインは、OX40(CD134)、CD2、CD27、CD28、CDS、ICAM-1、LFA-1(CD11a/CD18)及び4-1BB(CD137)からなる群より選択された1以上の共同刺激分子(costimulatory molecule)を追加的に含む。前記細胞内信号伝達ドメインは、前述したドメインの他にも当該分野で公知された他の細胞内信号伝達分子から収得または由来することができ、細胞内信号伝達ドメインが由来する分子の全体またはその断片を含むことができる。
【0128】
本発明の具体的な一具現例によれば、前記共同刺激ドメインは、CD28、OX40、4-1BB(CD137)、及び/又はICOS(CD278)からなる群より選択された蛋白質から収得された機能的信号伝達ドメインでありえ、より具体的にはCD28及び/又はOX40の機能的信号伝達ドメインでありうる。
【0129】
本発明の他の一具現例によれば、前記細胞内信号伝達ドメインは、4-1BB、CD28、OX40、CD3ゼタの機能的信号伝達ドメイン、またはこれらの組合せである。前記細胞内信号伝達ドメインは、最も具体的にはCD3ゼタの機能的信号伝達ドメインである。
【0130】
本発明のより具体的な具現例によれば、前記CD137を含む共同刺激分子は配列目録第21配列を含む塩基配列によりエンコーディングされるCD3ζドメインである。
【0131】
本発明のキメラ抗原受容体の膜横断ドメイン及び細胞内信号伝達ドメインは、前述した具体的な膜横断ドメイン及び細胞内信号伝達ドメインのうち、1つ以上選択された組合せで含まれることができる。例えば、本発明のキメラ抗原受容体はCD8α膜横断ドメイン及びCD28及びCD3ζの細胞内信号伝達ドメインを含むことができる。
【0132】
本発明の一具現例に従うCARコンストラクトの構造及びアミノ酸/ヌクレオチド配列は、図9及び配列目録に添付されている。
【0133】
本発明の他の一態様によれば、本発明は前述したキメラ抗原受容体をエンコーディングする核酸分子を提供する。
【0134】
本明細書で、前述した抗-CD19抗体またはその抗原結合断片(ポリペプチド)とこれをエンコーディングする核酸分子、抗-CD19抗体またはその抗原結合断片を含むキメラ抗原受容体及びこれをエンコーディングする核酸分子は単離された状態である。
【0135】
本明細書で、用語“単離された”は自然/天然状態から変形または除去されることを意味する。例えば、生きている動物に自然的に存在する核酸またはペプチドは“単離された”ものでないが、それから部分的にまたは完全に分離された同一な核酸またはペプチドは“単離された”ものである。単離された核酸または蛋白質は実質的に精製された形態に存在できるか、または例えば宿主細胞のような非-天然環境に存在することができる。
【0136】
本発明の更に他の態様によれば、本発明は前述した核酸分子を含む再組合せベクターを提供する。本明細書で後述する“ベクター”に対しては前述した抗体またはその抗原結合断片、またはキメラ抗原受容体をエンコーディングする核酸分子と関連して共通的に適用される。
【0137】
本明細書で、用語“ベクター”は伝達ベクターと発現ベクターを含む。
【0138】
本明細書で、用語“伝達ベクター”は単離された核酸を含み、単離された核酸を細胞の内部に伝達することに使われることができる物質の組成を称する。線形ポリヌクレオチド、イオン性または両親媒性化合物と連結されたポリヌクレオチド、プラスミド及びウイルスを含むが、これに限定されるのではない。より具体的に、前記伝達ベクターは自己複製性プラスミドまたはウイルスを含む。前記用語は細胞内への核酸の転移を促進させる非-プラスミド及び非-ウイルス性化合物、例えばポリリシン化合物、リポソームなどを追加的に含むことができることと解析されならなければならない。ウイルス性伝達ベクターは、アデノウイルスベクター、アデノ-関連ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクターを含むが、これに限定されるのではない。
【0139】
本明細書で、用語“発現ベクター”は宿主細胞で目的遺伝子を発現させるために、発現させるヌクレオシド配列に作動可能に連結された発現制御配列を含む再組合せヌクレオシドを含むベクターを称する。発現ベクターは発現のための充分のシス作用因子(cis-acting element)を含み、発現のための他の要素は宿主細胞または試験官内発現システムにより提供できる。前記発現ベクターは再組合せポリヌクレオチドを含むプラスミドベクター;コスミドベクター;そしてバクテリオファージベクター、アデノウイルスベクター、レンチウイルス、レトロウイルスベクター、及びアデノ-関連ウイルスベクターのようなウイルスベクターを含む。本発明の具体的な具現例によれば、本発明のベクターで前記抗体またはその抗原結合断片、またはキメラ抗原受容体をコーディングする核酸分子は前記ベクターのプロモータと作動的に結合(operatively linked)されている。本明細書で、用語“作動的に結合された”は、核酸発現調節配列(例:プロモータ、シグナル配列、または転写調節因子結合位置のアレイ)と他の核酸配列との間の機能的な結合を意味し、これにより前記調節配列は前記他の核酸配列の転写及び/又は解読を調節するようになる。
【0140】
本発明の再組合せベクターシステムは当業界に公知されている多様な方法により構築されることができ、これに対する具体的な方法は Sambrook et al., Molecular Cloning、A
Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press(2001)に開示されており、この文献は本明細書に参照として挿入される。
【0141】
本発明のベクターは遺伝子クローニングのためのベクター、蛋白質の発現のためのベクター、または遺伝子の伝達のためのベクターとして構築できる。また、本発明のベクターは原核細胞または真核細胞を宿主にして構築できる。
【0142】
例えば、本発明のベクターが発現ベクターであり、真核細胞を宿主にする場合には、哺乳動物細胞のゲノムから由来したプロモータ(例:メタロチオニンプロモータ、β-アクチンプロモータ、ヒトヘログロビンプロモータ、及びヒト筋肉クレアチンプロモータ)または哺乳動物ウイルスから由来したプロモータ(例:アデノウイルス後期プロモータ、ワクシニアウイルス7.5Kプロモータ、SV40プロモータ、サイトメガロウイルスプロモータ、HSVのtkプロモータ、マウス乳房腫瘍ウイルス(MMTV)プロモータ、HIVのLTRプロモータ、モロニーウイルスのプロモータ、エプスタインバーウイルス(EBV)のプロモータ、及びラウスサルコーマウイルス(RSV)のプロモータ)が用いられることができ、これらは一般的に転写終結配列としてポリアデニル化配列を有する。
【0143】
本発明の一具現例によれば、前記ベクターが伝達ベクターの場合、“レトロウイルスベクター”でありうる。レトロウイルスは遺伝子伝達システムのための便利なプラットフォームを提供する。遺伝子伝達のために選択された遺伝子はレトロウイルスベクター内に挿入され、レトロウイルス粒子内にパッケージングできる。次に、再組合せされたレトロウイルスはインビボ、またはインビトロで目的とする宿主細胞に伝達できる。多くのレトロウイルスベクターが関連技術分野に知られており、本発明の具体的な具現例で、前記レトロウイルスベクターはMLV-基盤のレトロウイルスベクターであるpMTレトロウイルスベクターであるが、これに限定されるのではない。
【0144】
本発明の他の一具現例によれば、前記ベクターはレンチウイルスベクター、アデノウイルスベクターである。
【0145】
本発明のベクターはそれから発現されるポリペプチドまたは蛋白質の精製を容易にするために、他の配列と融合されることもできる。融合される配列は、例えば、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(Pharmacia、USA)、マルトース結合蛋白質(NEB、USA)、FLAG(IBI、USA)及び6x His(hexahistidine;Quiagen、USA)などがある。一方、本発明の発現ベクターは本発明の抗体またはその抗原結合断片、及びこれを含むCARポリペプチドの発現を評価するための選択標識として選択可能マーカー遺伝子及び/又はレポーター遺伝子を含むことができる。選択可能マーカー遺伝子には当業界で通常的に用いられる抗生剤耐性遺伝子を含み、例えばアンピシリン、ゲンタマイシン、カルベニシリ、クロラムフェニコール、ストレプトマイシン、カナマイシン、ゲネチシン、ネオマイシン、及びテトラサイクリンに対する耐性遺伝子がある。レポーター遺伝子には、ルシフェラーゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、または緑色蛍光蛋白質遺伝子を含む。
【0146】
本発明の再組合せベクターを細胞内に導入し発現させる方法は、関連技術分野によく知られている。ベクターは当業界に公知されている方法により宿主細胞、例えば哺乳動物、バクテリア、酵母、または昆虫細胞内に容易に導入できる。例えば、ベクターは、物理的、化学的、または生物学的手段により宿主細胞内に伝達できる。前記物理的手段は、燐酸カルシウム沈殿、リポフェクション、粒子爆撃(particle bombardment)、微細注入、電気穿孔などを含む。前記化学的手段は、コロイド分散液システム、例えば巨大分子複合体、ナノカプセル、マイクロスピア、ビード、及び水中油エマルジョン、マイセル(micelle)、混合されたマイセル、及びリポソームを含む脂質-基盤システムを含む。また、前記生物学的手段は前述したレンチウイルス、レトロウイルスなど、DNAまたはRNAベクターの使用を含む。
【0147】
本発明の他の一態様によれば、本発明は前述したキメラ抗原受容体を発現する細胞を提供する。
【0148】
本発明の一具現例によれば、前記細胞は免疫細胞として先天性及び/又は後天性免疫反応の開示及び/又は実行を担う造血起源の細胞を称する。
【0149】
本発明に従う前記免疫細胞は、幹細胞から由来できる。幹細胞は、成体幹細胞、非-ヒト胚芽幹細胞、臍帯血由来幹細胞、骨髄由来幹細胞、誘導万能幹細胞、または造血幹細胞でありうる。より具体的には、前記免疫細胞は、樹状細胞、キラー樹状細胞、肥満細胞、NK-細胞、B-細胞、または炎症性T-リンパ球、細胞毒性T-リンパ球、調節T-リンパ球、またはヘルパーT-リンパ球からなる群より選択された免疫細胞でありうるが、これに制限されるのではない。
【0150】
本発明で、前記キメラ抗原受容体を発現する細胞はエフェクター細胞(effector cell)とも称される。前記エフェクター細胞は自己細胞または同種異型細胞の集団を含む。即ち、前記エフェクター細胞は本CD19に特異的なCARを発現する自己細胞または同種異型細胞の集団を含む。
【0151】
また、本発明の一具現例によれば、前記エフェクター細胞はCD19特異的CARをコーディングする核酸分子を含むベクターに形質感染または形質導入された細胞の集団を含む。前記形質感染または形質導入は、前述したように、当業界に知られている多様な手段により制限無しでなされることができる。
【0152】
したがって、本発明の具体的な具現例によれば、本発明のエフェクター細胞、例えばTリンパ球、または自然殺害細胞に伝達され、CD19特異的CARコーディング核酸分子はmRNAに転写され、前記mRNAからCD19特異的CARポリペプチドが翻訳されてエフェクター細胞の表面に発現される。
【0153】
また、本発明の更に他の一態様によれば、本発明はキメラ抗原受容体を発現する細胞を含む薬剤学的組成物を提供する。
【0154】
前記薬剤学的組成物は、前述した本発明のキメラ抗原受容体を発現する細胞及び薬剤学的に許容される担体を含む薬剤学的組成物の形態に提供できる。
【0155】
本発明のキメラ抗原受容体を発現する細胞が薬剤学的組成物の形態に投与される場合、前記細胞は投与される対象体(subject)に対して同種動物由来または自己由来細胞でありうる。
【0156】
本発明の薬剤学的組成物は、本発明のキメラ抗原受容体を発現する細胞の集団を含むことができる。
【0157】
本発明の薬剤学的組成物は、前述した本発明のキメラ抗原受容体を発現する細胞を有効性分に用いるので、この両者に共通した内容は本明細書の過度な複雑性を避けるために、その記載を省略する。
【0158】
下記の実施例で立証されたように、本発明のCD19_12.18抗体断片を含むキメラ抗原受容体T細胞(CD19_12.18CAR-T cell)はCD19抗原を発現する細胞株(RaJi)と同時培養する場合、CD19陽性細胞株(RaJi)の表面のCD19抗原を認識することによって、キメラ抗原受容体細胞の活性化を誘導するので、CD19抗原と関連した疾患の治療に有用に使用できることと期待される。
【0159】
本発明の薬剤学的組成物により予防または治療できる疾患には、CD19を発現する細胞と関連したヒト及び哺乳動物の疾患として、慢性リンパ球性白血病(chronic lymphocytic leukemia、CLL)、急性リンパ球性白血病(acute lymphocytic leukemia、ALL)、前リンパ球性白血病(pro-lymphocytic leukemia)、毛細胞白血病(hairy cell leukemia)、一般急性リンパ球性白血病(commonacute lymphocytic leukemia、CALLA)、Null-acute lymphoblastic leukemia、非-ホジキンリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(diffuse large B cell lymphoma、DLBCL)、多発性骨髄腫、濾胞性リンパ腫(follicular lymphoma)、脾臓リンパ腫(splenic lymphoma)、辺縁帯リンパ腫(marginal zone lymphoma)、マントル細胞リンパ腫(mantle cell lymphoma)、低危険群B細胞リンパ腫(indolent B cell lymphoma)、ホジキンリンパ腫(Hodgkin lymphoma)からなる群より選択されたB細胞悪性腫瘍(B cell malignancy)を含む。
【0160】
また、前記疾患は不適切であるか、または増強したB細胞数及び/又は活性化と関連した自己免疫疾患及び炎症疾患を含む。前記自己免疫疾患及び炎症疾患の例には、多発性硬化症、リューマチ性関節炎、及び全身性紅斑性ループス(systemic lupus erythematosus、SLE)を含む。
【0161】
本発明の薬剤学的組成物に含まれる薬剤学的に許容される担体は、製剤時に通常的に用いられるものであって、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、澱粉、アカシアゴム、燐酸カルシウム、アルギネート、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微細結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、滑石、ステアル酸マグネシウム、及びミネラルオイルなどを含むが、これに限定されるのではない。本発明の薬剤学的組成物は前記成分の以外に、潤滑剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁剤、保存剤などを追加で含むことができる。適合した薬剤学的に許容される担体及び製剤は Remington's Pharmaceutical Sciences (19th ed., 1995)に詳細に記載されている。
【0162】
本発明の薬剤学的組成物は経口または非経口で投与することができ、例えば静脈内注入、皮下注入、筋肉注入、腹腔注入、胸骨内注入、腫瘍内注入、局所投与、鼻内投与、肺内投与、及び直腸内投与などにより投与できる。
【0163】
本発明の薬剤学的組成物の適合した投与量は、製剤化方法、投与方式、患者の年齢、体重、性、病的状態、飲食、投与時間、投与経路、排泄速度、及び反応感応性のような要因により多様であり、普通に熟練した医者は希望する治療または予防に効果的な投与量を容易に決定及び処方することができる。本発明の好ましい具現例によれば、本発明の薬剤学的組成物の1日投与量は0.0001-100mg/kgである。本明細書で、用語“薬剤学的有効量”は前述した疾患を予防または治療することに十分な量を意味する。
【0164】
本明細書で、用語“予防”は疾患または疾患状態の防止または保護的な治療を意味する。本明細書で、用語“治療”は疾患状態の減少、抑制、鎮静、または根絶を意味する。
【0165】
本発明の薬剤学的組成物は当該発明が属する技術分野で通常の知識を有する者が容易に実施することができる方法によって、薬剤学的に許容される担体及び/又は賦形剤を用いて製剤化することによって単位容量形態に製造されるか、または多容量容器内に内入させて製造できる。この際、剤形はオイルまたは水性媒質中の溶液、懸濁液または乳化液形態、またはエキス剤、散剤、坐剤、粉末剤、顆粒剤、錠剤、またはカプセル剤形態でありえ、分散剤または安定化剤を追加的に含むことができる。
【0166】
また、本発明の薬剤学的組成物は前述したキメラ抗原受容体を発現する細胞の以外に他の薬剤学的活性薬剤または薬物、例えば、アスパラギナーゼ、ブスルファン、カボプラチン、シスプラチン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、メトトレキサート、パクリタキセル、リツキシマブ、ビンブラスチン、ビンクリスチンなどの化学治療剤;ベバシズマブ (bevacizumab)、オラパリブ(olaparib)などの標的治療剤;またはニボルマブ (nivolumab)、ペンブロリズマブ(pembrolizumab)のような免疫関門抑制剤を含むか、またはこれらと共に併用投与できる。
【0167】
本発明の更に他の一態様によれば、本発明は前述したCD19に対する抗体またはその抗原結合断片を含む組成物;または上記のCD19特異的キメラ抗原受容体を発現するエフェクター細胞を含む組成物を治療を必要とする対象体に投与する段階を含むCD19を発現する細胞と関連した疾患、自己免疫疾患または炎症疾患の治療方法を提供する。
【0168】
本発明の治療方法の対象疾病であるCD19を発現する細胞と関連した疾患、自己免疫疾患または炎症疾患は前記薬学的組成物の治療対象疾病と関連して定義した通りである。
【0169】
本発明の一具現例で、前記対象体は哺乳動物またはヒトである。
【0170】
本発明の癌または炎症性疾患の治療方法は有効性分として前述した抗体または抗原結合断片;またはキメラ抗原受容体を発現するエフェクター細胞を共通的に使用する方法であるので、重複する内容に対しては本明細書の過度な複雑性を避けるためにその記載を省略する。
【発明の効果】
【0171】
本発明の抗体は癌細胞(特に、血液癌)で高発現されるCD19に特異的に結合する抗体であって、従来のCD19ターゲット抗体のCDR配列と比較して相同性が非常に低くて、その配列の独特性があり、従来のCD19に結合するFMC63抗体断片と相異するエピトープに特異的に結合する。本発明の抗-CD19抗体または抗原結合断片を含むキメラ抗原受容体を発現する細胞はCD19を発現する陽性細胞株に反応して免疫細胞活性を誘導するので、CAR-免疫細胞治療剤として有用に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0172】
図1】CD19_12.18抗体断片に対するCD19-ECD蛋白質に対する結合をELISAで分析した結果を示した図である。
図2】CD19_12.18抗体断片に対するCD19陽性細胞株であるRaJi、RS4;11細胞株、及びCD19陰性細胞株であるJurkat細胞株に対する結合能を流細胞分析器を通じて分析した結果を示した図である。
図3】開発された抗体断片のFMC63抗体断片とのエピトープを比較した結果を示した図である。FMC63とのエピトープ比較のために、センサーチップにFMC63とCD19-ECD蛋白質を固定化した後、本発明のCD19_12.18抗体断片との結合を分析した結果を示した図である。
図4】開発された抗体断片の結合部位確認を流細胞分析器を通じて進行した結果である。Mutant CD19がtransient transfectionを通じて発現された293細胞と開発された抗体断片を用いており、対照群にFMC63抗体を使用した。
図5】FMC63の報告された結合部位にFMC63と開発された抗体断片の結合有無を確認した結果である。結合部位確認はMutant CD19がtransient transfectionを通じて発現された293細胞を用いて進行した。
図6】開発された抗体断片が連結されたキメラ抗原受容体を発現する細胞毒性T細胞の活性をインターフェロンガンマ分泌量で分析した結果を示した図である。
図7】親和度の増進及びヒト化を通じて開発された抗体断片の細胞結合能を確認した結果である。CD19陽性細胞株であるRaJi細胞が分析に使われた。[単位:MFI(mean fluorescence intensity)]
図8a】親和度が異なる開発された抗体断片を含む細胞毒性T細胞の活性をインターフェロンガンマの量で確認した結果である。CD19陽性細胞株であるRaJi-Luc細胞と細胞毒性T細胞を1:5の割合で共同培養した後、培養液のインターフェロンガンマを測定した。
図8b】CD19陽性細胞株であるRaJi-Luc細胞と細胞毒性T細胞を共同培養した後、生き残ったRaJi-Luc細胞のluciferaseを測定して細胞毒性を確認した。
図9】開発された抗体断片の活性を最適化するために、キメラ抗原受容体を構成するヒンジ領域、膜通過ドメイン及び補助刺激ドメインが変更された7種のコンストラクトを示す図である。
図10】変更された7種のキメラ抗原受容体の発現を流細胞分析器を通じて分析した結果である。細胞毒性T細胞でのキメラ抗原受容体の発現を分析するためにマーカーにCD3を使用した。
図11a】7種のキメラ抗原受容体が発現される細胞毒性T細胞の活性をインターフェロンガンマの量で確認した結果である。標的細胞にCD19陽性細胞であるRaJiとCD19陰性細胞であるJurkatを使用しており、細胞毒性T細胞と1:5の割合で共同培養してインターフェロンガンマを測定した。
図11b】CD19陽性細胞株であるRaJi-Luc細胞と細胞毒性T細胞を共同培養した後、生き残ったRaJi-Luc細胞のluciferaseを測定して細胞毒性を確認した結果である。
図12a】CD19_1218、CD19_1218.81、CD19_1218.81.79、及びCD19_1218.82抗体がFMC63と異なる部位に結合することを確認するためのoctet実験の結果である。
図12b】CD19_1218とCD19_1218.81抗体を用いたcompetition ELISA試験の結果である。競争物質がない状態(CD19-ECD-Ck単独)の吸光度を100%にして相対的な結合を示した。
【発明を実施するための形態】
【0173】
以下、実施例を通じて本発明をより詳細に説明する。これらの実施例は専ら本発明をより具体的に説明するためのものであって、本発明の要旨に従って本発明の範囲がこれらの実施例により制限されないということは当業界で通常の知識を有する者において自明である。
実施例
実施例1:CD19に対する抗体開発
抗体開発のためにヒトCD19蛋白質の細胞外部ドメイン(extracellular domain、ECD)部位を動物細胞を用いて生産した。ECDのC-末端にヒトIgG1のヒンジ及びFc部位(CH-CH)が結合された形態(CD19-ECD-Fc)とHis tagが結合された形態(CD19-ECD-His)のDNAをpCEP4 (Invitrogen、Cat. No. V044-50)にHind-IIIとBamH-I制限酵素を用いてクローニングした。次に、Freestyle 293F(Invitrogen、Cat. No. R790-07)細胞にポリエチレンイミン(Polyscience Inc., Cat. No. 23966)を用いて前記クローニングされたベクターを一時形質転換(transient transfection)させ、細胞培養液からprotein-A Ceramic HyperD Fレジン (PALL、Cat No. 20078-028)またはNi-NTA Superflow(Qiagen、Cat No. 30410) を用いて精製した。精製された蛋白質をProtein assay dye(Bio-Rad、Cat. No. 500-0006)を用いて定量し、SDS-PAGE後、クマシブルー染色を通じて濃度及び純度を確認した。確保したCD19-ECD-His蛋白質を鶏の皮下に注射し、免疫が完了した鶏から脾臓及び滑液嚢を得た。採取した脾臓及び滑液嚢試料からTRI試薬(Invitrogen、米国)を使用してtotal RNAを抽出し、これからcDNAを合成した。免疫グロブリンの重鎖可変領域と軽鎖可変領域に特異的な公知のプライマーを用いて抗体断片ライブラリーを製作した(表1、Phage display: a laboratory manual、Carlos Barbas III、et al.,
Cold Spring Harbor Laboratory Press参照)。
【0174】
【表1】
【0175】
製作された鶏の免疫ライブラリーとCD19-ECD-Fc蛋白質を抗原に用いてファージバイオ-パンニング(bio-panning)を実施した。抗体ライブラリーはVCSM13ヘルパーファージ(helper phage)を用いてファージ形態に収得してパンニングに用いた。パンニングラウンド(panning round)は4ラウンドまで実施しており、親和度の高いファージが選択的によく選別できるパンニング戦略でパンニングラウンド回数が増えるにつれて抗原の量を減らし、洗浄回数は増やす方法を適用した。ターゲット抗原に結合したファージの数はER2537 E. coli(New England Biolabs、Cat. No. 801-N)を用いて下記のように滴定した。バイオ-パンニング各ラウンドで得たバインダーファージ(binder phage)をpH2.2のグライシン緩衝液に溶出した。SB培養液(super broth medium)で一夜間培養したER2537 E.coliを新たなSB培養液を用いて1/200に希釈して継代した。次に、3時間の間37℃で追加培養してログファージ(log phage)に到達するようにした。100μlの新鮮なER2537 E.coliと10μlの希釈されたファージを1.5mlチューブで混合した後、30分間培養した後、アンピシリン(ampicillin)LBプレート(lysogeny broth agar plate)に塗抹した。続いて、37℃で一夜間培養して生成されたコロニー(colony)数と希釈因子を適用してファージ数を測定した。
【0176】
ババイオ-パンニング各ラウンドで得たバインダーファージはER2537 E.coliに感染させてコロニー形態に維持した状態でELISA方法により各抗原に対する結合有無を確認した。ファージを感染させて得たコロニーをSB培養液に接種した後、OD600で0.5になるまで培養した。次に、0.5mMのIPTGを入れて30℃でシェ―キング(shaking)培養して抗体断片蛋白質が過課発現されるようにした。CD19に特異的に結合する抗体はCD19-ECD-Fc蛋白質を用いたELISAとCD19過発現細胞株であるRaji細胞を用いたflow cytometry方法により選別した。これを通じてヒトCD19に対する結合能が最も優れる抗体CD19_12.18を選別して、選別されたCD19_12.18抗体の可変部位のアミノ酸配列は表2の通りである。
【0177】
【表2】
【0178】
選別されたCD19_12.18抗体の結合を定量的に確認するために前記可変部位を含む抗体断片を動物細胞を用いて生産した。抗体断片のC-末端にヒトIgG1のヒンジ及びFc部位(CH-CH)が結合された形態のDNAをpCEP4ベクター(Invitrogen、Cat. No. V044-50)にクローニングした。次に、FreestyleTM 293F細胞(Invitrogen、 Cat. No. R790-07)に前記クローニングされたベクターを一時的に形質転換させ、細胞培養液から、Fc融合蛋白質形態の抗体(Anti-CD19 scFv-Fc)を確保した。選別された抗体の結合能を測定するためにCD19-ECDカッパ軽鎖融合蛋白質(CD19-ECD-Ck)をコーティング抗原に用いたELISAを進行した。CD19-ECD蛋白質がコーティングされたプレートに精製された抗体断片(Anti-CD19 scFv-Fc)を濃度依存的に(50、12.5、3.1μg/mL)処理して、2次抗体(Anti-human Fc HRP)を処理した後、TMBで発色反応を発生させてELISAリーダー器(Victor X3 PerkinElmer)を用いてOD450値を測定した(図1)。図1に示すように、本発明のCD19_12.18抗体はCD19-ECD蛋白質に特異的に結合する抗体であることを確認した。
【0179】
また、CD19-ECD蛋白質に結合するCD19_12.18に対してCD19陽性細胞株であるRaJi、RS4;11細胞株とCD19陰性細胞株であるJurkatに対する結合能を確認した。精製された抗体断片(Anti-CD19 scFv-Fc)をCD19陽性細胞株であるRaji、RS4;11とCD19陰性細胞株であるJurkatに処理し、細胞株に結合した抗体断片は抗-ヒトIgG-FITCを用いて染色した。細胞株に結合した抗体断片に対する分析は流細胞分析器を通じて測定した(図2)。図2に示すように、本発明のCD19_12.18抗体はCD19陽性細胞に特異的に結合する抗体であることを確認した。
実施例2.開発された抗体断片のFMC63とのエピトープ比較
開発された抗体がB細胞由来血液癌治療のためのキメラ抗原受容体(chimeric antigen
receptor、CAR)に使われるマウス由来CD19抗体であるFMC63とエピトープが重複するかを確認するためにOctet(Pall ForteBio)機器を用いてエピトープビニング(epitope binning)を進行した。AR2Gセンサーチップ(Fortebio、Cat. No. 18-5092(tray)、18-5093(pack)、18-5094(case))にFMC63-Fcを10μg/mLの濃度でEDC/NHSを用いたアミンカップリング方法により固定させた。FMC63が固定されたセンサーチップにCD19-ECDカッパ軽鎖融合蛋白質(CD19-ECD-Ck)を10μg/mLの濃度で10分間結合させ、以後、5分間FMC63とCD19-ECDとの間の結合を安定化させた。以後、本発明の抗体であるCD19_12.18またはFMC63を10μg/mLの濃度で10分間結合させ、10分間抗原と抗体との間の結合を安定化させた。FMC63を固定した以後に、全ての抗体抗原は kinetics buffer (Fortebio、 cat No. 18-1092)を用いて希釈し、安定化させる段階でも同一なbufferを使用した。仮に、2次に結合させた抗体がFMC63と結合されたCD19-ECD蛋白質に追加結合すれば、これはFMC63とエピトープを共有しない抗体と解析することができる。図3に示すように、FMC63は追加で結合しない一方、本発明者らにより開発された抗体であるCD19_12.18はFMC63に結合されたCD19-ECDに追加結合することを確認した。したがって、本発明のCD19_12.18抗体は既存のFMC63抗体と結合するエピトープが相異することが分かった。
実施例3:開発された抗体断片のエピトープ検証
開発された抗体断片のエピトープを確認するための方法で、多様なmutant CD19を構築した後、開発された抗体断片の結合を流細胞分析器を用いて確認した。より具体的に、CD19蛋白質の発現を確認するためにpLenti6-V5/DESTレンチウイルスベクター(Invitrogen、米国)にT2A systemを用いてGFP蛋白質を同時に発現するbi-cistronic expression system(mutant CD19-T2A-GFP)をClaI/XhoIに切断及び結紮させた。製造されたコンストラクトは塩基配列分析を通じて確認した。抗体の結合有無は full length CD19 蛋白質をtransient transfectionを通じて発現した293細胞に精製された抗体断片(Anti-CD19 scFv-Fc)を結合して流細胞分析器で分析する方法を使用した。
【0180】
まず、Recombinant human CD19 (hCD19、UniProtKB: P15391、SEQ ID NO: 92)及びcynomolgus monkey CD19 (cCD19、UniprotKB: G7Q0T7、SEQ ID NO: 93) 蛋白質との結合能を測定して、開発された抗体がFMC63と同一にcCD19にcross-reactivityが無いことを確認した(図4)。これに基づいて開発された抗体のエピトープを糾明するために特定位置のアミノ酸をcynomolgus monkeyのアミノ酸に変形したmutant CD19(mtCD19)を開発した。既存に報告されたFMC63結合部位の以外の部分のうち、hCD19とcCD19との間に差が出る12個のresidueに対してcCD19のアミノ酸を有するmutant CD19を開発し、抗体の結合能力を確認した。GFP-positive細胞に対する結合有無はmean fluorescence intensity(MFI)に基づいて分析した。その結果、testされた12個のmutantのうち、6個residue(T51V、S53C、E55D、L58F、K59E、K63N)が開発された抗体であるCD19_12.18とhCD19との間の結合に重要な役割をしており、特に、そのうちの3個のresidue(L58F、K59E、K63N)の場合、CD19_12.18の結合を完全に抑制してkey residuesであることを確認した(図4)。これら主要6個mutant hCD19にFMC63は完全に結合するので、該当mutantがhCD19の全体構造に影響を与えてCD19_12.18が結合しないものでないことを確認することができた。
【0181】
追加的に、CD19_12.18抗体がFMC63の結合に重要な部位が変更されたmutantに結合できることを確認するためにFMC63結合に重要であると予想される部位に対する5種のmutantを製作(Sommermeyer D et al., Leukemia、2017、31(10):2191)して試験を進行した。参考文献の結果と同一に、FMC63は218 residueがarginineに変更され、224 residueにserineが追加されたmutant(H218R/KSS)のみで結合に影響を受けることを確認することができた。一方、開発された抗体であるCD19_12.18は変更されたmutantでも正常に結合することを確認することによって、FMC63とは相異する部位に結合するという事実を確認することができた(図5)。
実施例4:開発された抗体断片が連結されたキメラ抗原受容体を含むレンチウイルスの製作
開発された抗体CD19_12.18を用いてキメラ抗原受容体を開発した。キメラ抗原受容体はCD8リーダー、scFv形態のCD19_12.18、CD8ヒンジ及び膜横断領域、CD137細胞質領域、及びCD3ゼタの細胞質領域をコドン最適化した後、pLenti6-V5/DESTレンチウイルスベクター(Invitrogen、米国)にSpeI/XhoIに切断及び結紮させた。製造されたコンストラクト(配列目録第23配列)は塩基配列分析を通じて確認した。
【0182】
製造されたレンチウイルスコンストラクトをウイルス外皮蛋白質であるVSV-G(vesicular stomatitis Indiana virus Gprotein)をコーディングする核酸とgag、pol及びrev遺伝子を含むプラスミドであるpCMV-dR8.91と共にLenti-X 293T(Takara Bio Inc., 日本)細胞株に形質導入させた。形質導入はリポフェクタミン2000(Invitrogen、米国)を使用して製造社のプロトコルの通り遂行した。72時間後、レンチウイルスが含まれた培養液を遠心分離型フィルター装置(Millipore、米国)を使用して10倍濃縮して保管した。
実施例5.開発された抗体断片を含むキメラ抗原受容体が表面に提示された細胞毒性T細胞の製造
実施例3で製造されたレンチウイルスを用いて、CD19_12.18抗体断片(scFv)を含むキメラ抗原受容体が表面に提示された細胞毒性T細胞を製造した。
【0183】
まず、ヒトのnaive T細胞を分離してDynabeadsTM Human T-Activator CD3/CD28(Thermofisher scientific、米国)で24時間の間刺激し、ポリブレン(Sigma-Aldrich、米国)及び前記レンチウイルスを前記細胞に添加して24時間の間培養しながら形質導入させた。以後、IL-2(Gibco、米国)が含まれた培地に交替して5% CO、37℃の条件で培養した。
【0184】
前記のように製造されたCD19_12.18抗体断片を含むキメラ抗原受容体が表面に提示されたT細胞(CD19_12.18 CAR-T cell)は、製造後、24時間以内に以後の実験に使用した。
実施例6.開発された抗体断片を含むキメラ抗原受容体が表面に提示された細胞毒性T細胞の活性確認
実施例4で製造したキメラ抗原受容体が表面に提示された細胞毒性T細胞(CD19_12.18 CAR-T cell)を使用して、前記T細胞が細胞表面のCD19を認識することによって、キメラ抗原受容体細胞の活性化を誘導するか否かを確認した。
【0185】
具体的に、CD19陽性細胞株であるRajiとCD19陰性細胞株であるJurkat E6.1細胞株を10%ウシ胎児血清及び1%ペニシリン-ストレプトマイシンが添加されたRPMI-1640培地に培養して使用した。まず、CD19陽性あるいは陰性細胞株を底の丸い形態の96-ウェルプレートにウェル当たり3x10個になるように株分けした。培養上等液を除去した後、ウェル当たり処理比率に合うように製造したキメラ抗原受容体T細胞(CD19_12.18 CAR-T cell)を添加し、5% CO及び37℃の条件で24時間の間培養した。その結果、培地に分泌されたインターフェロンガンマの量をELISAキットを使用して製造社のプロトコルの通り測定し、その結果を図6に示した。この際、対照群として細胞を培養しないプレートにキメラ抗原受容体T細胞を添加した群(Effector T cell only)、細胞を培養したプレートになんにも添加しない群(Target cell only)を使用した。
【0186】
図6に示すように、本発明のCD19_12.18抗体断片を含むキメラ抗原受容体T細胞(CD19_12.18 CAR-T cell)とCD19陽性細胞株(Raji)でインターフェロンガンマの分泌が有意的に増加することを確認した。したがって、本発明のCD19_12.18抗体断片を含むキメラ抗原受容体が表面に提示された細胞毒性T細胞(CD19_12.18 CAR-T cell)はキメラ抗原受容体を使用してCD19陽性細胞(Raji)の表面のCD19を認識することによって、キメラ抗原受容体細胞の活性化を誘導することを確認した。
実施例7.開発された抗体断片に対する親和度増進及びヒト化抗体開発
CD19に対してCD19_12.18対比優れる結合力を有する抗体断片を確保するために重鎖と軽鎖ライブラリーを組み合わせて新たなサブライブラリーを製作した。サブライブラリーを生成するために、NNK同意コドン(degenerate codons)を含有するオリゴヌクレオチドが使われており、この際、CD19_12.18の配列が70%以上維持されるようにした。CD19_12.18抗体断片はtemplate DNAに使われた。ランダムコドンはPCRにより6個のCDRに導入された。増幅された抗体断片は QIAquick Gel Extraction Kit (QIAGEN、米国)により精製された。抗体断片及びpComb3XSSベクターはsfiI制限酵素に切断されており、ライゲーション後、ER2537に形質注入してファージライブラリーを製作した。製作されたファージライブラリーに基づいて実施例1と同一な方法により抗体を選別した。
【0187】
選別された抗体のヒト化抗体をCDRグラフティング方法を用いて開発した。開発された抗体のCDRの移植を受けるヒト抗体はIMGT/V-QUESTを用いて塩基配列基準類似性の高いヒト生殖腺(germline)抗体遺伝子のV及びJ遺伝子を選別した(Brochet、X. et al., Nucl Acids Res. 36:503-508(2008))。開発されたヒト化抗体をFc tag形態にFreestyleTM 293F細胞株を用いて生産した。重鎖のV遺伝子とJ遺伝子にIGHV3-74*01とIGHJ*01が、軽鎖のV遺伝子とJ遺伝子にIGLV1-51*02とIGLJ2*01が使われた。開発された抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域のアミノ酸配列は表3及び表4の通りである。
【0188】
【表3】
【0189】
【表4】
【0190】
親和度増進及びヒト化を通じて選別された抗体に対してCD19陽性細胞株であるRaji細胞株に対する結合能を確認した。精製された抗体断片をCD19陽性細胞株であるRajiに濃度依存的に処理し、CD19陽性細胞株であるRajiに結合した抗体断片は抗-ヒトIgG-FITCを用いて染色した。Raji細胞株に結合した抗体断片に対する分析は流細胞分析器を通じて測定し(図7)、結合能の分析はGraphpad Prismで遂行した(表5)。これを通じてCD19_12.18対比結合能が向上した抗体を確保した。
【0191】
【表5】
【0192】
実施例8:親和度増進及びヒト化がなされた抗体断片が連結されたキメラ抗原受容体を含むレンチウイルスの製作
開発された抗体のうち、親和度が異なる3種(hzCD19_1218.81、hzCD19_1218.82、hzCD19_1218.81.79)を用いてキメラ抗原受容体を開発した。キメラ抗原受容体はCD8リーダー、scFv形態の開発された抗体、CD8ヒンジ及び膜横断(transmembrane)領域、CD137細胞質領域、及びCD3ゼタの細胞質領域をGeneOptimizer(Invitrogen)アルゴリズムを用いてコドン最適化した後、プロモータがEF-1 alphaに変更されたpLenti6.3/V5TOPOレンチウイルスベクター(Invitrogen、米国)にSpeI/PacIに切断及び結紮させた。製造されたコンストラクトは塩基配列分析を通じて確認した。
【0193】
製造されたレンチウイルスコンストラクトをウイルス外皮蛋白質であるVSV-G(vesicular stomatitis indiana virus Gprotein)をコーディングする核酸とgag、pol、及びrev遺伝子を含むプラスミドであるpCMV-dR8.91と共にLenti-X 293T(Takara Bio Inc., 日本)細胞株に形質導入させた。形質導入はリポフェクタミン2000(Invitrogen、米国)を使用して製造社のプロトコルの通り遂行した。レンチウイルスが含まれた培養液をLenti-X concentrator(Takara Bio Inc., 日本)を使用して濃縮して保管した。
実施例9.親和度増進及びヒト化がなされた抗体断片を含むキメラ抗原受容体が表面に提示された細胞毒性T細胞の製造及び活性確認
実施例8で製造されたレンチウイルスを用いて、CD19_12.18抗体断片(scFv)を含むキメラ抗原受容体が表面に提示された細胞毒性T細胞を実施例5の方法を用いて製造した。これを通じてキメラ抗原受容体が表面に提示された細胞毒性T細胞を使用して、前記T細胞が細胞表面のCD19を認識することによって、キメラ抗原受容体細胞の活性化を誘導するか否かを確認した。
【0194】
具体的に、CD19陽性細胞株であるRajiにGFP-Luciferaseが発現されるレンチウイルスを導入して遺伝子導入細胞株であるRaji-Luc細胞株を構築して実験に使用した。まず、Raji-Luc細胞株を底の丸い形態の96-ウェルプレートにウェル当たり3x10個になるように株分けした。Raji-Luc細胞株(T)が株分けされたプレートにウェル当たり処理比率(T:E=1:2、1:5、または1:10)に合うように製造した細胞毒性T細胞(E)を添加し、5%CO及び37℃の条件で24時間の間培養した。培養後、培地に分泌されたインターフェロンガンマの量をELISAキットを使用して製造社のプロトコルの通り測定し、細胞毒性T細胞の毒性効果をluciferase測定(Bio-Glo Luciferase assay system、Promega、米国)を通じて確認した。
【0195】
図8aに示すように、本発明の抗体断片を含む細胞毒性T細胞(E)とRaji-Luc細胞(T)が処理された実験群でインターフェロンガンマの分泌が有意的に増加することを確認した。本発明の抗体断片を含むキメラ抗原受容体の細胞毒性効果は、細胞毒性T細胞とRaji-Lucの培養後、残っているRaJi-Luc細胞株を3X Lysis buffer(75mM Tris(pH 8.0)、30% glycerol、3% Triton X100)で破砕して溶出されて出るluciferaseをsubstrateと反応させて確認した。Raji-Luc細胞のみ培養したwellから出るsignalを100%にしてlysis比率を決定した。本発明の抗体断片が含まれたキメラ抗原受容体T細胞では処理比率によって細胞毒性効果が表れることを確認することができ、CD19_12.18対比親和度が増進された抗体断片が含まれた細胞毒性T細胞で細胞毒性効果が優れるに表れることを確認した(図8b)。
実施例10:ヒンジ領域、膜通過ドメイン及び補助刺激ドメインの変更を通じてのキメラ抗原受容体の開発
開発された抗体断片を用いたキメラ抗原受容体活性を最適化するためにキメラ抗原受容体を構成するヒンジ領域(CD8、CD28、Fc)、膜横断ドメイン(CD8、CD28、ICOS)及び補助刺激ドメイン(CD137、CD28、ICOS、CD3)の変更を通じて新たなキメラ抗原受容体(CAR2乃至CAR7)を開発しており、活性を確認するためにCD19抗原に結合する抗体断片部位はhzCD19_1218.81を用いた(図9)。CAR1乃至CAR7の各々のキメラ抗原受容体は実施例8と同一な方法によりプロモータがEF-1 alphaに変更されたpLenti6.3/V5TOPOレンチウイルスベクター(Invitrogen、米国)に切断及び結紮させており、製造されたコンストラクトは塩基配列分析を通じて確認した。前記開発されたCAR1乃至CAR7のコンストラクトのアミノ酸及びヌクレオチド配列配列番号74乃至87の配列配列目録に添付された。開発された各々のコンストラクトは実施例8のプロトコルの通りレンチウイルスを製造及び濃縮して保管した。
【0196】
開発されたキメラ抗原受容体の活性を確認するために前記実施例4と同一な方法により細胞毒性T細胞を確保しており、前記T細胞がCD19を発現する細胞に特異的に活性を誘導するかを確認した。
【0197】
まず、確保された細胞毒性T細胞でCARが発現される様相を確認した。キメラ抗原受容体の発現はCD19-ECDを1次結合させた後、2次抗体にanti-human IgG FITC(Invitrogen、A11013)を用いて観察した。この際、確認された細胞がT細胞かを確認するためにAnti-human CD3 PE(Biolegend、317308)を同時に結合させて流細胞分析器で分析した。分析結果、ヒンジ領域がCD8からCD28またはFcに変更されたコンストラクト(CAR2、CAR3)で既存のCD8ヒンジを使ったコンストラクト対比CARの発現が大きく低くなることを確認した。また、膜横断ドメイン及び補助刺激ドメインを変更したコンストラクトではICOS膜通過ドメイン及び補助刺激ドメインを使用する場合(CAR5)にCARの発現が相対的に低くなることを確認した(図10)。
【0198】
開発された細胞毒性T細胞に対する活性は実施例8と同一な方法により進行した。CD19陽性であるRaJi-Luc細胞株とCD19陰性であるJurkat細胞株を製造した細胞毒性T細胞の24時間培養液でインターフェロンガンマの量と細胞毒性効果を測定した。図11aに示すように、CD19陽性であるRaji-Lucと細胞毒性T細胞が共に培養された実験群のみでインターフェロンガンマの量が増加することを確認した。また、実験に使われたCARコンストラクトのうち、発現が最も良かったコンストラクトCAR1がインターフェロンガンマの分泌を最も多く誘導することが分かった。一方、細胞毒性効果ではインターフェロンガンマ分泌とは異なり、コンストラクトCAR1、CAR4、CAR5、CAR6がほとんど同等に優れる活性を示した(図11b)。
実施例11.CD19_1218及び親和度増進がなされた開発抗体の結合部位分析
本発明で開発されたCD19_1218抗体及びこれから親和度増進及びヒト化がなされた抗体がCD19_1218抗体と同一な結合部位を有するかを分析するためにepitope binningとcompetitition ELISAを進行した。実施例2のように、FMC63抗体をimmobilizationsしたsensor chipにCD19-ECD蛋白質を結合させた後、FMC63、CD19_1218、hzCD19_1218.81、hzCD19_1218.81.79、及びhzCD19_1218.82抗体を各々追加で結合させた(図12a)。その結果、FMC63抗体は追加結合できなかったが、CD19_1218を含んだ4種の抗体は追加で結合することを確認した。Competition ELISAはCD19_1218.81-Fc抗体をELISA plateに2μg/mLの濃度でコーティングし、CD19-ECD-Ck(3μg/mL)単独、あるいはCD19-ECD-Ck(3μg/mL)とCD19_1218-Fc抗体(300μg/mL)の混合液を加えて結合させた。以後、CD19_1218.81-Fc抗体に結合したCD19-ECD-Ck蛋白質をanti-Ck-HRP抗体を用いて測定した。その結果、CD19_1218抗体がある場合にCD19_1218.81-FcとCD19-ECD-Ck蛋白質の結合が抑制されることを確認した(図12b)。以上の結果に基づいて開発された抗体がCD19_1218抗体と同一な結合部位を有することを確認した。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8a
図8b
図9
図10a
図10b
図10c
図10d
図11a
図11b
図12a
図12b
【配列表】
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