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  • 特許-電力変換装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-15
(45)【発行日】2022-06-23
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20220616BHJP
   H01L 25/07 20060101ALI20220616BHJP
   H01L 25/18 20060101ALI20220616BHJP
   H02M 3/00 20060101ALI20220616BHJP
   H02M 7/04 20060101ALI20220616BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
H01L25/04 C
H02M3/00 Y
H02M7/04 C
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019048057
(22)【出願日】2019-03-15
(65)【公開番号】P2020150746
(43)【公開日】2020-09-17
【審査請求日】2021-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100172188
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 敬人
(72)【発明者】
【氏名】近藤 晃司
【審査官】栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-340067(JP,A)
【文献】特開平11-340395(JP,A)
【文献】特開平05-129487(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
H02M 7/04
H02M 3/00
H01L 25/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性の支柱を介して鉛直方向に積み上げられ、互いに絶縁されて電力変換動作する複数のモジュールと、
前記複数のモジュールのうち隣接して配置されたモジュール間で鉛直方向から角度をもって配置され、前記複数のモジュールのそれぞれに冷却媒体を供給する絶縁性の第1配管と、
を備え
前記複数のモジュールは、内部の管と流体的に接続するための第1ジョイントおよび第2ジョイントをそれぞれ有し、
前記複数のモジュールのうち1つのモジュールに設けられた前記第1ジョイントおよび前記第2ジョイントを流体的に接続する第2配管をさらに備え、
前記複数のモジュールのうち隣接して配置されたモジュール間に設けられた前記第1配管の一端は、前記第1ジョイントに流体的に接続され、他端は前記第2ジョイントに流体的に接続された電力変換装置。
【請求項2】
前記第1配管は、前記第1ジョイントおよび前記第2ジョイント間を直線状に接続する請求項記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記第1配管は、フッ素樹脂を含む請求項1または2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
内部の管と流体的に接続するための第3ジョイントを有し、電力変換動作する第3モジュールと、
内部の管と流体的に接続するための第4ジョイントを有し、絶縁性の支柱を介して前記第3モジュールの下方に隣接して設けられて、電力変換動作する第4モジュールと、
内部の管と流体的に接続するための第5ジョイントを有し、絶縁性の支柱を介して前記第4モジュールの下方に隣接して設けられて、電力変換動作する第5モジュールと、
前記第3ジョイントと前記第4ジョイントとの間を流体的に接続して前記第3モジュールおよび前記第4モジュールに冷却媒体を供給する第3配管と、
前記第4ジョイントと前記第5ジョイントとの間を流体的に接続して前記第4モジュールおよび前記第5モジュールに前記冷却媒体を供給する第4配管と、
を備え、
前記第3モジュール、前記第4モジュールおよび前記第5モジュールが配置された一方を前方とし、他方を後方としたときに、
前記第3ジョイントは、前記第3モジュールの後方の側に偏在して設けられ、
前記第4ジョイントは、前記第4モジュールの前方の側に偏在して設けられ、
前記第5ジョイントは、前記第5モジュールの後方の側に偏在して設けられた電力変換装置。
【請求項5】
前記第3配管は、前記第3ジョイントおよび前記第4ジョイントを直線状に接続し、
前記第4配管は、前記第4ジョイントおよび前記第5ジョイントを直線状に接続する請求項4記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、水冷の冷却装置を含む電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
大型の電力変換装置では、電力変換用のパワー半導体等を冷却するために、水冷式冷却装置を用いることがある。水冷式冷却装置は、冷却フィンに冷却水が循環する管を結合させて、冷却対象物を冷却する。
【0003】
このような電力変換装置の主回路を含む電力変換器は、多層に積み上げられたモジュール構成をなしており、複数のモジュール間を絶縁するために、沿面距離を十分にとる必要がある。各モジュールは、絶縁性の材料によって形成された支柱により相互に支持されており、このような絶縁支柱には、沿面距離をかせぐために、表面に波型形状がほどこされた碍子等が用いられる。
【0004】
各モジュールに冷却水を供給し、循環させるために、モジュール間に配管が設けられる。このようなモジュール間の配管は、冷却水のヘッドロスが大きくなるので、配管の内部に沿面距離をとるような波型形状を採用することができない。そのため、モジュール間の沿面距離をとるためには、モジュール間の配管の長さを長くする必要があり、モジュール間の間隔が広がり電力変換器の高さが必要以上に高くなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平9-93935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
実施形態は、モジュール間の距離を短縮し、装置の高さを低減した電力変換装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に係る電力変換装置は、絶縁性の支柱を介して鉛直方向に積み上げられ、互いに絶縁されて電力変換動作する複数のモジュールと、前記複数のモジュールのうち隣接して配置されたモジュール間で鉛直方向から角度をもって配置され、前記複数のモジュールのそれぞれに冷却媒体を供給する絶縁性の第1配管と、を備える。前記複数のモジュールは、内部の管と流体的に接続するための第1ジョイントおよび第2ジョイントをそれぞれ有する。前記複数のモジュールのうち1つのモジュールに設けられた前記第1ジョイントおよび前記第2ジョイントを流体的に接続する第2配管をさらに備える。前記複数のモジュールのうち隣接して配置されたモジュール間に設けられた前記第1配管の一端は、前記第1ジョイントに流体的に接続され、他端は前記第2ジョイントに流体的に接続される。
【発明の効果】
【0008】
本実施形態では、モジュール間の距離を短縮し、実装高を低減した電力変換装置が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施形態に係る電力変換装置を例示する模式的な側面図である。
図2】比較例の電力変換装置を例示する模式的な側面図である。
図3】第2の実施形態に係る電力変換装置を例示する模式的な側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して詳細な説明を適宜省略する。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態に係る電力変換装置を例示する模式的な側面図である。
図1に示すように、本実施形態の電力変換装置10は、複数のモジュール22と、複数の絶縁支柱24と、モジュール間配管30と、を備える。複数のモジュール22のそれぞれは、金属製の筐体を有する。複数のモジュール22のそれぞれは、絶縁性の材料で形成された絶縁支柱24を介して、上下に積み上げられている。上下に積み上げられた複数のモジュール22は、絶縁支柱24および金属製のベース26を介して、設置面に設置される。
【0012】
複数のモジュール22のそれぞれには、パワー半導体素子を複数含むスタックおよび制御基板等が搭載されている。これらの電気回路は、複数のモジュール22のそれぞれに設けられた導体28を介して外部の電気回路と接続される。
【0013】
スタックは、たとえば2つの水冷フィンによって挟持されたパワー半導体素子が複数個積層され、ネジ等によって締結されている。水冷フィンには、それぞれ管が結合されており、各管は、各モジュール22のジョイント34aに流体的に接続されている。
【0014】
ジョイント(第1ジョイント)34aは、モジュール22の側面に設けられている。ジョイント34aには、モジュール22内部の管のほか、モジュール22外部でモジュール間配管30および接続配管32に流体的に接続されている。
【0015】
モジュール22の側面には、このほかジョイント(第2ジョイント)34bが設けられている。ジョイント34bは、モジュール間配管30と接続配管とを流体的に接続するために設けられている。なお、最下段のモジュール22にもジョイント34bが設けられているが、この例では、未接続とされている。
【0016】
ジョイント34a,34bは、モジュール22の前後にそれぞれ偏在して設けられている。この例では、ジョイント34aはモジュール22の後方に偏在し、ジョイント34bはモジュール22の前方に偏在して配置されている。ジョイント34a,34bは、ほぼ同じ高さになるように設けられている。
【0017】
モジュール間配管(第1配管)30は、上下に隣接して配置されたモジュール22間に設けられている。モジュール間配管30の一方の端部は、上方のモジュール22の後方に偏在するジョイント34aに流体的に接続されている。モジュール間配管30の他方の端部は、下方のモジュール22の前方に偏在するジョイント34bに流体的に接続されている。そのため、上下のモジュール22を流体的に接続するモジュール間配管30は、鉛直方向から角度をもって、つまり斜め方向に配設されている。
【0018】
接続配管(第2配管)32は、ジョイント34a,34b間に接続されている。接続配管32は、上下のモジュール22に接続するモジュール間配管30同士を、その間のモジュール22において流体的に接続している。これによって、冷却水は、斜め方向に設置された一方のモジュール間配管30から接続配管32を介して、他方のモジュール間配管30に流れる。
【0019】
ポンプ等の循環設備は、配管38およびジョイント36を介して、電力変換装置10の配管に流体的に接続される。冷却水は、循環設備によって、ジョイント36に接続されたモジュール間配管30に供給される。冷却水の一部は、最下段のモジュール22のジョイント34aを介して、このモジュール22の内部のスタックに供給され、冷却水の残りの一部は接続配管32に供給され、ジョイント34bを介して、他のモジュール間配管30に供給される。
【0020】
それぞれのモジュール22内のスタックを冷却した冷却水は、他方の側面に設けられたモジュール間配管30および接続配管32を介して、回収され、循環設備によって循環される。なお、冷却媒体は、絶縁性や耐腐食性等の観点から純水であることが好ましいが、用途に応じて適切な冷媒とすることができる。
【0021】
モジュール間配管30は、絶縁性の材料で形成されている。絶縁性能や強度等の観点から、モジュール間配管30は、たとえば重さ、強度および絶縁性能の観点からフッ素樹脂によって形成されている。フッ素樹脂は、たとえばポリテトラフルオロエチレン(PolyTetraFluoroEthylene、PTFE)である。接続配管32は、任意の材料によって形成されている。絶縁性であってもよいし、導電性であってもよい。部材を統一する観点から、モジュール間配管30と同一の材料によって形成されていてもよい。
【0022】
モジュール間配管30は、配管の長さをなるべく短くし、内部に流れる冷却水のヘッドロスを低減する観点から、直線状に形成されていることが好ましい。
【0023】
ジョイント34a,34bは、任意の材料によって形成されており、たとえば、強度等の観点から金属製である。
【0024】
モジュール間配管30の長さは、鉛直方向に隣接して配置されるモジュール22間に必要とされる沿面距離に応じて設定される。モジュール間配管30を斜めに設けることによって、上下に隣接するモジュール22の空間的な距離は、必要とされる沿面距離よりも短くすることができる。
【0025】
本実施形態の電力変換装置の効果について、比較例の電力変換装置と比較しつつ説明する。
図2は、比較例の電力変換装置を例示する模式的な側面図である。
図2に示すように、比較例の電力変換装置110では、上下のモジュール122には、モジュール間配管130によって、冷却水が供給される。モジュール間配管130は、上下のモジュール122間の沿面距離を確保するために必要な長さに設定され、電力変換装置110の設置面に対してほぼ垂直方向に設けられている。
【0026】
絶縁支柱124の表面は、たとえば波型形状に加工されており、上下のモジュール122間の沿面距離を確保している。モジュール間配管130は、沿面距離を確保するには、必要な沿面距離だけの長さを設定する必要がある。そのため、モジュール間の距離は、モジュール間配管130の長さにより決定され、電力変換装置110の高さは、モジュール122の段数およびモジュール間配管130の長さによって決定される。
【0027】
本実施形態の電力変換装置10では、モジュール間配管30の長さは、モジュール22間に必要な沿面距離によって設定されている。たとえば、モジュール間配管30の長さは、比較例の場合のモジュール間配管130の長さとほぼ同じにすることができる。
【0028】
ここで、本実施形態では、各モジュール22の前後に偏在した2か所にジョイント34a,34bを設けている。そして、ジョイント34a,34b間を接続配管32で流体的に接続している。そのため、上下のモジュール22を流体的に接続するモジュール間配管30は、鉛直方向から角度をもたせるように斜めに配置されることができる。そのため、斜めに配置した角度に応じて、モジュール22間の距離を短縮することができる。
【0029】
たとえば、本実施形態の場合において、モジュール間配管30の配置角度を垂直方向から45°に設定すると、上下に隣接するモジュール22間の距離は、比較例の場合の1/√2≒0.7倍とすることができる。つまり、本実施形態では、電力変換装置10の高さを比較例の場合よりも30%程度低くすることができる。
【0030】
また、本実施形態では、各モジュール22のジョイント34a,34bを同じ位置に設けることができるので、モジュールの筐体等の形状や構造等を共通化することができる。そのため、筐体等の部材のコストを低くすることができる。
【0031】
(第2の実施形態)
上述の他の実施形態では、ジョイント34a,34bを前後に偏在させて、接続配管32で流体的に接続している。接続配管32が設けられていることによって、冷却水が流れる行程が長くなるため、冷却水のヘッドロスが、たとえば比較例の電力変換装置110の場合よりも大きくなる。本実施形態では、冷却水のヘッドロスの増大を抑制することができる電力変換装置を提供する。
【0032】
図3は、本実施形態に係る電力変換装置を例示する模式的な側面図である。
図3に示すように、本実施形態の電力変換装置210では、上下に隣接して設けられているモジュール222a,222bごとに、ジョイント234a,234bの偏在位置が相違する。この図において、最上段のモジュール222aでは、ジョイント(第1ジョイント)234aはモジュール222aの後方に偏在して設けられている。2段目のモジュール222bでは、ジョイント(第2ジョイント)234bは、モジュール222の前方に偏在して設けられている。最下段(3段目)のモジュール222aでは、ジョイント234aは、モジュール222aの後方に偏在して設けられている。つまり、隣接して配置されたモジュール222間で、ジョイント234a,234bは、交互に前後に偏在するように配置されている。
【0033】
モジュール222間に設けられたモジュール間配管30は、ジョイント234a,234b間に流体的に接続されている。このように、本実施形態でも、ジョイント234a,234bの偏在位置が隣接するモジュール222で異なっているので、ジョイント234a,234bを接続するモジュール間配管30は、鉛直方向から角度をもって、つまり斜め方向に設置される。
【0034】
本実施形態の電力変換装置210の効果について説明する。
本実施形態の電力変換装置210では、ジョイント234a,234bを上下に隣接するモジュール222ごとに前後の偏在位置を異ならせている。そのため、ジョイント234a,234b間を接続するモジュール間配管30は、上下のモジュール間を斜めに接続することができる。モジュール間配管30の長さを、モジュール234a,234b間の沿面距離に応じて設定することによって、上下のモジュール222a,222b間の距離を短くすることができる。
【0035】
本実施形態では、ジョイント234a,234bの前後の偏在位置を異ならせているので、1つのモジュールにおいて、2つのジョイントを接続する接続配管を用いることなく、冷却水の流水経路を形成することができる。接続配管を用いない分流水経路を短くすることができるので、冷却水のヘッドロスを低減することができる。
【0036】
また、装置の高さを抑制しつつ、沿面距離を確保するために、モジュール間の配管を直線状でなく、らせん状にしたり、波状にしたりする例がある。このような場合と比較しても、本実施形態では、モジュール間配管30を直線状とすることで、冷却水のヘッドロスの増大を抑制することができる。さらに、複雑な形状を形成することがないので、製造コスト等の上昇を抑制することができる。
【0037】
以上説明した実施形態によれば、モジュール間の距離を短縮し、実装高を低減した電力変換装置を実現することができる。
【0038】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他のさまざまな形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明およびその等価物の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0039】
10,210 電力変換装置、22,222a,222b モジュール、24 絶縁支柱、26 ベース、30 モジュール間配管、32 接続配管、34a,34b,234a,234b ジョイント
図1
図2
図3