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特許7089839渦巻きコイル積層体の製造方法、渦巻きコイル積層体の積み重ね体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-15
(45)【発行日】2022-06-23
(54)【発明の名称】渦巻きコイル積層体の製造方法、渦巻きコイル積層体の積み重ね体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65H 54/28 20060101AFI20220616BHJP
   B65H 49/02 20060101ALI20220616BHJP
【FI】
B65H54/28 Z
B65H49/02
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2016083730
(22)【出願日】2016-04-19
(65)【公開番号】P2017193395
(43)【公開日】2017-10-26
【審査請求日】2019-04-11
【審判番号】
【審判請求日】2020-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】311014705
【氏名又は名称】NJT銅管株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】特許業務法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 敬
(72)【発明者】
【氏名】黒木 克英
(72)【発明者】
【氏名】水藤 謙輔
【合議体】
【審判長】藤本 義仁
【審判官】藤田 年彦
【審判官】吉村 尚
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-109040(JP,A)
【文献】特開昭63-66072(JP,A)
【文献】特開平10-263076(JP,A)
【文献】登録実用新案第3120987(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H49/00-49/38
B65H54/28
B65H54/80
B65H55/02-55/04
C22F 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅管が渦巻き状に巻かれている渦巻きコイルが、コイル積層体の中心軸の延長方向に、多数積層されているコイル積層体であり、
最も内側が1つ上の層の渦巻きコイルの最も内側と繋がり且つ最も外側が1つ下の層の渦巻きコイルの最も外側に繋がるA層渦巻きコイルと、最も外側が1つ上の層の渦巻きコイルの最も外側と繋がり且つ最も内側が1つ下の層の渦巻きコイルの最も内側に繋がるB層渦巻きコイルと、からなり、
該A層渦巻きコイルと該B層渦巻きコイルとが交互に繰り返されており、
各層の該渦巻きコイルの銅管は、曲率半径が連続して変化し、且つ、隣り合う銅管同士の隙間が銅管径より小さくなるように巻かれており、銅管の外径に対する銅管間の隙間の比が、0.01以上1.0未満であり、
該銅管は、Cu含有量が95質量%以上の銅管であり、
該渦巻きコイル積層体の最も内側の銅管の0.2%耐力値の平均(σ0.2INave)と最も外側の銅管の0.2%耐力値の平均(σ0.2OUTave)の差の絶対値(|σ0.2INave-σ0.2OUTave|)が6.1MPa以下であること、
を特徴とする渦巻きコイル積層体の製造方法であって、
該渦巻きコイル積層体は、該銅管が渦巻きコイル状の積層体に巻かれた後に、400~700℃で熱処理される渦巻きコイル積層体の製造方法。
【請求項2】
銅管が渦巻き状に巻かれている渦巻きコイルが、コイル積層体の中心軸の延長方向に、多数積層されているコイル積層体であり、
最も内側が1つ上の層の渦巻きコイルの最も内側と繋がり且つ最も外側が1つ下の層の渦巻きコイルの最も外側に繋がるA層渦巻きコイルと、最も外側が1つ上の層の渦巻きコイルの最も外側と繋がり且つ最も内側が1つ下の層の渦巻きコイルの最も内側に繋がるB層渦巻きコイルと、からなり、
該A層渦巻きコイルと該B層渦巻きコイルとが交互に繰り返されており、
各層の該渦巻きコイルの銅管は、曲率半径が連続して変化し、且つ、隣り合う銅管同士の隙間が銅管径より小さくなるように巻かれており、銅管の外径に対する銅管間の隙間の比が、0.01以上1.0未満であり、
該銅管は、Cu含有量が95質量%以上の銅管であり、
該渦巻きコイル積層体の最も内側の銅管の0.2%耐力値の平均(σ0.2INave)と最も外側の銅管の0.2%耐力値の平均(σ0.2OUTave)の差の絶対値(|σ0.2INave-σ0.2OUTave|)が6.1MPa以下であること、
を特徴とする渦巻きコイル積層体が、該銅管が渦巻きコイル状の積層体に巻かれた後に、400~700℃で熱処理され、コイル積層体の中心軸の延長方向に、2以上積み重ねられており、上にある渦巻きコイル積層体の一番下の層の渦巻きコイルの銅管の銅管端と、その下にある渦巻きコイル積層体の一番上の層の渦巻きコイルの銅管の銅管端とが、接続部材で繋がれていること、を特徴とする渦巻きコイル積層体の積み重ね体の製造方法
【請求項3】
少なくとも、Cu含有量が95質量%以上の銅の鋳塊を鋳造する鋳造工程、熱間加工工程及び冷間加工工程を行うことにより、継目無銅管を作製する継目無銅管作製工程と、
該継目無銅管を、渦巻きコイル状の積層体に巻くことにより、コイル巻取体を作製するコイル巻取工程と、
該コイル巻取体を、400~700℃で熱処理することにより、請求項1記載の渦巻きコイル積層体を得るコイル巻取体熱処理工程と、
を有することを特徴とする渦巻きコイル積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアコン、エコキュートなどのクロスフィン型熱交換器の伝熱銅管として用いられる銅管が巻き回されている積層コイル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ルームエアコン、パッケージエアコンなどの空調機用熱交換器、冷凍機等の伝熱管又は冷媒配管には、銅管が用いられてきたが、これらの銅管は、銅又は銅合金から所定の加工が施された後、コイル状に巻かれ、次いで、焼鈍等の熱処理が施された後、エアコンメーカー等に搬送される。そして、コイル状に巻かれた銅管は、エアコンメーカーで巻き解かれ、それぞれの用途に応じた形状に加工されて使用される。
【0003】
コイル状に巻かれた銅管としては、レベルワウンドコイルが一般的である。このレベルワウンドコイルは、銅管をボビンにコイル状に整列巻し、それを多数積層させることにより作製される。具体的には、例えば、図13図15に示すように、先ず、銅管22が、コイルからの取り外し可能なボビン21の内筒24の周りに端から他端まで(図14中、符号25で示す矢印の方向)、コイルの中心軸の延長方向に整列巻されて、一層目の整列巻きコイル23aが形成され、次いで、一層目の上に、一層目とは反対の方向(図14中、符号26で示す矢印の方向)に、銅管が整列巻されて、二層目の整列巻きコイル23bが形成される。そして、これが繰り返されて、銅管が整列巻きされている整列巻きコイルが、コイルの中心軸に対し垂直な方向に多層積層されているレベルワウンドコイル21が作製される。
【0004】
そして、作製されたレベルワウンドコイル20は、図15に示すように、コイルの中心軸の延長方向が垂直方向になるように、敷板16上に置かれて、エアコンメーカー等に搬送され、エアコンメーカー等で、レベルワウンドコイルの内側から、銅管22が繰り出されて、コイルが巻き解かれる。図16に示すように、レベルワウンドコイル20が、コイルの中心軸の延長方向33が垂直方向になるように置かれると、レベルワウンドコイル20には、上から下に向かって順に巻き解かれる整列巻きコイル23aと、反対に、下から上に向かって順に巻き解かれる整列巻きコイル23bとが、交互に存在する。そして、コイルの巻き解き時において、上から下に向かって順に巻き解かれる整列巻きコイル23aが、一番下の銅管22aまで巻き解かれたら、次は、一つ外側の整列巻きコイル23bが、今度は、下から上に向かって順に巻き解かれることになる。下から上に向かって順に巻き解かれる整列巻きコイル23bの一番下の銅管22bには、その層の全銅管の重さがかかっているため、一番下の銅管22bが敷板16に接していたのでは、一番下の銅管22bが敷板16と上にある銅管との間に挟まって、銅管22bの繰り出しができなくなる。
【0005】
そこで、特開2002-370869号公報(特許文献1)には、図17に示すように、コイルの中心軸の延長方向が垂直方向になるように置いた時に、下から上に向かって順に巻き解かれることとなる整列巻きコイル27bについては、上から下に向かって順に巻き解かれることとなる整列巻きコイル27aよりも上方に引き上げて、整列巻きコイル27bの一番下の銅管22bの下と敷板16との間に隙間を形成させることにより、一番下の銅管22bが敷板16と上にある銅管との間に挟まるのを防ぐレベルワウンドコイル(いわいる段落ちコイル)が開示されている。この段落ちコイルでは、上から下に向かって順に巻き解かれることとなる整列巻きコイルの一番下の銅管と敷板との間に形成される隙間の大きさは、銅管の銅管径の半分程度に設定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2002-370869号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
レベルワンドコイルが上に置かれる敷板は、運搬時にコイルの一番下の銅管が潰れないように、ある程度柔らかい材質でなければならない。そのため、特許文献1の段落ちレベルワウンドコイルでは、上から下に向かって順に巻き解かれることとなる整列巻きコイルの一番下の銅管は、敷板にある程度めり込むことになる。
【0008】
そして、上から下に向かって順に巻き解かれることとなる整列巻きコイルの一番下の銅管の敷板へのめり込みが大きくなり過ぎると、下から上に向かって順に巻き解かれることとなる整列巻きコイルの一番下の銅管までもが、敷板に接触してしまい、一番下の銅管が繰り出されるときに、敷板により抵抗を受けて、一番下の銅管に余分な力がかってしまう。そのため、そのことが、銅管の折れを発生させてしまい繰り出しトラブルの原因になるという問題があった。特に、銅管の径が小さくなる程、特に銅管径が5mm以下になると、下から上に向かって順に巻き解かれることとなる整列巻きコイルの一番下の銅管と敷板との間の隙間が小さくなるため、このような銅管の繰り出しトラブルの問題が起こり易い。
【0009】
また、図17に示すような段落ちレベルワウンドコイルでは、銅管は、他の銅管と重なりが密であるため、最終熱処理時に、銅管同士の溶着による貼り付きが起こった場合、線状に長く貼り付きが起こる。そのため、銅管を繰り出す時に、銅管が剥がれ難くなり、それが銅管の折れを発生させてしまい繰り出しトラブルの原因となるという問題があった。
【0010】
また、レベルワウンドコイルをエアコンメーカーで巻き解き、用途に応じた加工を行う際、特に、ヘアピン曲げ加工を行う際、銅管の機械的性質のバラツキがあると、曲げ内側に発生する曲げシワや曲げ外側が破断する曲げ折れを生じさせないようにするためは、曲げマンドレルの位置調整やマンドレル径の選択が難しくなる。特に、同一コイル内での銅管の0.2%耐力値σ0.2のバラツキを極力低減させることが課題となっている。
【0011】
従って、本発明の目的は、かかる従来の問題点を解決することであり、多層に巻かれたコイルから銅管を繰り出す時に、上記のような銅管の繰り出しトラブルの問題が生じ難く、且つ、同一コイル内での銅管の0.2%耐力値σ0.2のバラツキが少ない多層コイルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題は、以下に示す本発明により解決される。
すなわち、本発明(1)は、銅管が渦巻き状に巻かれている渦巻きコイルが、コイル積層体の中心軸の延長方向に、多数積層されているコイル積層体であり、
最も内側が1つ上の層の渦巻きコイルの最も内側と繋がり且つ最も外側が1つ下の層の渦巻きコイルの最も外側に繋がるA層渦巻きコイルと、最も外側が1つ上の層の渦巻きコイルの最も外側と繋がり且つ最も内側が1つ下の層の渦巻きコイルの最も内側に繋がるB層渦巻きコイルと、からなり、
該A層渦巻きコイルと該B層渦巻きコイルとが交互に繰り返されており、
各層の該渦巻きコイルの銅管は、曲率半径が連続して変化し、且つ、隣り合う銅管同士の隙間が銅管径より小さくなるように巻かれており、銅管の外径に対する銅管間の隙間の比が、0.01以上1.0未満であり、
該銅管は、Cu含有量が95質量%以上の銅管であり、
該渦巻きコイル積層体は、該銅管が渦巻きコイル状の積層体に巻かれた後に、400~700℃で熱処理されたものであり、
該渦巻きコイル積層体の最も内側の銅管の0.2%耐力値の平均(σ0.2INave)と最も外側の銅管の0.2%耐力値の平均(σ0.2OUTave)の差の絶対値(|σ0.2INave-σ0.2OUTave|)が10MPa以下であること、
を特徴とする渦巻きコイル積層体を提供するものである。
【0013】
また、本発明(2)は、(1)の渦巻きコイル積層体が、コイル積層体の中心軸の延長方向に、2以上積み重ねられており、
上下の渦巻きコイル積層体の銅管が、接続部材で繋がれていること、
を特徴とする渦巻きコイル積層体の積み重ね体を提供するものである。
【0014】
また、本発明(3)は、少なくとも、Cu含有量が95質量%以上の銅の鋳塊の鋳造する鋳造工程、熱間加工工程及び冷間加工工程を行うことにより、継目無銅管を作製する継目無銅管作製工程と、
該継目無銅管を、渦巻きコイル状の積層体に巻くことにより、コイル巻取体を作製するコイル巻取工程と、
該コイル巻取体を、400~700℃で熱処理することにより、(1)の渦巻きコイル積層体を得るコイル巻取体熱処理工程と、
を有することを特徴とする渦巻きコイル積層体の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、多層に巻かれたコイルから銅管を繰り出す時に、上記のような銅管の繰り出しトラブルの問題が生じ難く、且つ、同一コイル内での銅管の0.2%耐力値σ0.2のバラツキが少ない多層コイルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の渦巻きコイル積層体の形態例の模式的な斜視図である。
図2図1に示す渦巻きコイル積層体の平面図である。
図3図1に示す渦巻きコイル積層体の側面図である。
図4図1に示す渦巻きコイル積層体の断面図である。
図5A図1に示す渦巻きコイル積層体中の各層の渦巻きコイルを示す平面図である。
図5B】A層渦巻きコイル1つ分の断面図及び側面図である。
図5C】B層渦巻きコイル1つ分の断面図及び側面図である。
図6】A層渦巻きコイルの稜線とB層渦巻きコイルの稜線の位置関係を示す図である。
図7図1に示す渦巻きコイル積層体から銅管を繰り出している様子を示す模式的な斜視図である。
図8図1に示す渦巻きコイル積層体から銅管を繰り出している様子を示す模式的な断面図である。
図9図2中、渦巻きコイル積層体1を符号30の位置で切った断面図である。
図10図4(a)中の符号Aで示す部分の拡大図である。
図11】渦巻きコイル積層体が、コイル積層体の中心軸の延長方向に2つ積み重ねられている渦巻きコイル積層体の積み重ね体を示す模式図である。
図12】上下の渦巻きコイル積層体の銅管が、接続部材で繋がれる様子を示す模式図である。
図13】従来のレベルワンドコイルが作製される様子を示す図である。
図14】従来のレベルワンドコイルが作製される様子を示す図である。
図15】従来のレベルワンドコイルを示す図である。
図16】従来のレベルワンドコイルから銅管を繰り出す様子を示す図である。
図17】従来のレベルワンドコイルから銅管を繰り出す様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の渦巻きコイル積層体は、銅管が渦巻き状に巻かれている渦巻きコイルが、コイル積層体の中心軸の延長方向に、多数積層されているコイル積層体であり、
最も内側が1つ上の層の渦巻きコイルの最も内側と繋がり且つ最も外側が1つ下の層の渦巻きコイルの最も外側に繋がるA層渦巻きコイルと、最も外側が1つ上の層の渦巻きコイルの最も外側と繋がり且つ最も内側が1つ下の層の渦巻きコイルの最も内側に繋がるB層渦巻きコイルと、からなり、
該A層渦巻きコイルと該B層渦巻きコイルとが交互に繰り返されており、
各層の該渦巻きコイルの銅管は、曲率半径が連続して変化し、且つ、隣り合う銅管同士の隙間が銅管径より小さくなるように巻かれており、
該銅管は、Cu含有量が95質量%以上の銅管であり、
該渦巻きコイル積層体は、該銅管が渦巻きコイル状の積層体に巻かれた後に、400~700℃で熱処理されたものであり、
該渦巻きコイル積層体の最も内側の銅管の0.2%耐力値の平均(σ0.2INave)と最も外側の銅管の0.2%耐力値の平均(σ0.2OUTave)の差の絶対値(|σ0.2INave-σ0.2OUTave|)が10MPa以下であること、
を特徴とする渦巻きコイル積層体である。
【0018】
本発明の渦巻きコイル積層体の形状について、図1図6を参照して説明する。図1は、本発明の渦巻きコイル積層体の形態例の模式的な斜視図である。図2は、図1に示す渦巻きコイル積層体の平面図である。図3は、図1に示す渦巻きコイル積層体の側面図であり、図3(a)は、図2中の符号11で示す矢印の方向から見た図であり、図3(b)は、図2中の符号12で示す矢印の方向から見た図である。図4は、図1に示す渦巻きコイル積層体の断面図であり、図4(a)は、図1中のx-x線断面図であり、図4(b)は、図1中のy-y線断面図である。図5Aは、図1に示す渦巻きコイル積層体中の各層の渦巻きコイルを示す平面図であり、図5A(a)は、A層渦巻きコイル1つ分を取り出した図であり、図5A(b)は、B層渦巻きコイル1つ分を取り出した図であり、それぞれ、左が渦巻きコイルの平面図であり、右が銅管の稜線を示す図である。図5Bの上の図は、A層渦巻きコイル1つ分の断面図であり、図5Bの下の図は、A層渦巻きコイル1つ分の側面図である。図5Cの上の図は、B層渦巻きコイル1つ分の断面図であり、図5Cの下の図は、B層渦巻きコイル1つ分の側面図である。図6は、渦巻きコイル積層体中での、A層渦巻きコイルの稜線とB層渦巻きコイルの稜線の位置関係を示す図である。
【0019】
図1図4に示すように、渦巻きコイル積層体1は、1本の連続した銅管2で作製されており、銅管2が渦巻き状に巻かれている渦巻きコイル3が、コイル積層体の中心軸の延長方向13に、多数積層されているコイル積層体である。つまり、渦巻きコイル積層体1は、一番上の層の渦巻きコイルから、一番下の層の渦巻きコイルまで、一続きの銅管2で作製されている。
【0020】
渦巻きコイル積層体1は、2種類の渦巻きコイル、すなわち、A層渦巻きコイル3aとB層渦巻きコイル3bとからなり、コイル積層体の中心軸の延長方向13に、A層渦巻きコイル3aとB層渦巻きコイル3bとが交互に繰り返し積層されている。
【0021】
図5に示すように、A層渦巻きコイル3aは、最も内側5aが1つ上の層の渦巻きコイルの最も内側5bと繋がり且つ最も外側4aが1つ下の層の渦巻きコイルの最も外側4bに繋がっている。また、B層渦巻きコイル3bは、最も外側4bが1つ上の層の渦巻きコイルの最も外側4aと繋がり且つ最も内側5bが1つ下の層の渦巻きコイルの最も内側5aに繋がっている。
【0022】
図5A(a)に示すように、A層渦巻きコイル3aの銅管2aを上から見ると、最も内側5aから最も外側4aまで渦巻き状になっている。また、図5A(a)の右図に示すように、A層渦巻きコイル3aでは、銅管2aの曲率半径が連続して変化しており、且つ、隣り合う銅管2a同士の隙間が銅管径より小さくなっている。
【0023】
また、図4(a)及び図5Bに示すように、A層渦巻きコイル3aの銅管2aを横から見ると、銅管は、位置7aから最も外側4aまでの部分は、上下方向に同じ位置で渦巻き状に巻かれている。また、最も内側5aは1つ上の層のB層渦巻きコイル3bに繋がっているので、最も内側5aは、1つ上の層のB層渦巻きコイル3bと上下方向に同じ位置であり、そこから銅管の位置が徐々に下がっていき、位置7aで、位置7aから最も外側4aまでの部分と上下方向に同じ位置になる。よって、A層渦巻きコイル3aの最も内側とは、1つ上の層のB層渦巻きコイル3bの銅管の上下方向の位置が下がり始める位置であり、また、A層渦巻きコイル3aの最も外側とは、銅管が1つ下の層のB層渦巻きコイル3bに向かって上下方向の位置が下がり始める直前の位置である。そして、最も内側5aから最も外側4aまでが、A層渦巻きコイル3aである。
【0024】
図5A(b)に示すように、B層渦巻きコイル3bの銅管2bを上から見ると、最も内側5bから最も外側4bまで渦巻き状になっている。また、図5A(b)の右図に示すように、B層渦巻きコイル3bでは、銅管2bの曲率半径が連続して変化しており、且つ、隣り合う銅管2b同士の隙間が銅管径より小さくなっている。
【0025】
また、図3(a)及び図5Cに示すように、B層渦巻きコイル3bの銅管2bを横から見ると、銅管は、最も内側5bから位置6bまでの部分は、上下方向に同じ位置で渦巻き状に巻かれている。また、最も外側4bは1つ上の層のA層渦巻きコイル3aに繋がっているので、最も外側4bは、1つ上の層のA層渦巻きコイル3aと上下方向に同じ位置であり、そこから銅管の位置が徐々に下がっていき、位置6bで、最も内側5bから位置6bまでの部分と上下方向に同じ位置になる。よって、B層渦巻きコイル3bの最も外側とは、1つ上の層のA層渦巻きコイル3aの銅管の上下方向の位置が下がり始める位置であり、また、B層渦巻きコイル3bの最も内側とは、銅管が1つ下の層のA層渦巻きコイル3aに向かって上下方向の位置が下がり始める直前の位置である。そして、最も外側4bから最も内側5bまでが、B層渦巻きコイル3bである。
【0026】
渦巻きコイル積層体1において、A層渦巻きコイル3aの隣り合う銅管2a同士の間隔とB層渦巻きコイル3bの隣り合う銅管2b同士の間隔は、必ずしも等しくなくてもよく、A層渦巻きコイル3aの隣り合う銅管2a同士の間隔とB層渦巻きコイル3bの隣り合う銅管2b同士の間隔は、等しくても等しくなくてもよい。
【0027】
図5Aに示すように、A層渦巻きコイル3aとB層渦巻きコイル3bとは、両者が繋がっている最も内側の位置5a、5bを始点として見たときに、逆回りの渦巻きになっている。そのため、理論的には、A層渦巻きコイル3aの銅管2aの稜線とB層渦巻きコイル3bの銅管2bの稜線は、線状には重ならず、交差する。図6は、A層渦巻きコイル3aとB層渦巻きコイル3bとの重なりを示す図であり、A層渦巻きコイル3aの銅管2aの稜線を実線で、B層渦巻きコイル3bの銅管2bの稜線を点線で示している。このようなことから、実際の渦巻きコイル積層体中では、A層渦巻きコイル3aの銅管2aとB層渦巻きコイル3bの銅管2bの重なる部分が非常に少なくなる。
【0028】
渦巻きコイル積層体1から銅管2を繰り出して、コイルを巻き解く様子を、図7及び図8を参照して説明する。図7は、図1に示す渦巻きコイル積層体から銅管を繰り出している様子を示す模式的な斜視図である。図8は、図1に示す渦巻きコイル積層体から銅管を繰り出している様子を示す模式的な断面図であり、渦巻きコイル積層体の断面の片側半分を示す図である。図7に示すように、渦巻きコイル積層体1は、敷板16の上に、コイル積層体の中心軸の延長方向が垂直方向になるように置かれて、渦巻きコイルの上の層から順に巻き解かれる。そして、図8に示すように、A層渦巻きコイル3aは、矢印で示すように、内側から外側に向かって順に巻き解かれていき、A層渦巻きコイル3aの最も外側の銅管2aまで繰り出されると、次に、そのA層渦巻きコイル3aの下の層であるB層渦巻きコイル3bが、矢印で示すように、外側から内側に向かって順に巻き解かれていき、B層渦巻きコイル3bの最も内側の銅管2bまで繰り出されると、以降は、同様に、A層渦巻きコイルが、内側から外側に向かって順に巻き解かれ、次いで、B層渦巻きコイルが、外側から内側に向かって順に巻き解かれるということが繰り返される。この時、図6に示すように、繰り出されるのは、常に、最も上にある銅管2であり、レベルワウンドコイルのように、最も下にある銅管が繰り出されるようなことはない。
【0029】
本発明の渦巻きコイル積層体は、全てが1本の連続した銅管で作製されている。本発明の渦巻きコイル積層体を形成する銅管は、Cu含有量が95質量%以上の銅管であり、継目無銅管である。銅管を構成する銅のCu含有量は、95質量%以上、好ましくは99質量%以上である。銅管を構成する銅は、銅の含有量が上記範囲未満とならない範囲で、Sn、Zr、P、Fe、Cr、Ni、Co、Ti、Mn等の種々の合金成分を含有することができる。また、銅管を構成する銅では、上記以外に、O、H、S等の不可避不純物の含有は、許容される。
【0030】
銅管を構成する銅としては、例えば、無酸素銅(JIS H3300 C1020)、低りん脱酸銅(JIS H3300 C1201)、高りん脱酸銅(JIS H3300 C1220)、JIS H3300 C1862、JIS H3300 C1565、JIS H3300 C5010、JIS H3300 C5015等のCu含有量が99質量%以上の銅が挙げられる。
また、銅管を構成する銅としては、例えば、Cu-0.05~1.0質量%P、Cu-0.01~0.06質量%Fe-0.004~0.040質量%P、Cu-0.04~0.06質量%Ni-0.004~0.040質量%P、Cu-0.02~0.5質量%Cr-0.015~0.05質量%P等のCu含有量が99質量%以上の銅が挙げられる。
また、銅管を構成する銅としては、例えば、Cu-0.80~1.20質量%Fe-0.20~0.40質量%P、Cu-0.4~3.5質量%Ni-0.1~0.5質量%P、Cu-0.80~1.20質量%Ti-0.015~0.10質量%P、Cu-0.35~1.20質量%Co-0.20~0.50質量%P、Cu-0.40~1.20質量%Mn-0.20~0.40質量%P、Cu-0.58~0.72質量%Sn-0.005~0.35質量%Zr-0.004~0.040質量%P等のCu含有量が95質量%以上の銅が挙げられる。
【0031】
そして、本発明の渦巻きコイル積層体は、銅管が渦巻き状に巻かれている渦巻きコイルが、コイル積層体の中心軸の延長方向に、多数積層されているコイル積層体であり、2種類の渦巻きコイル、すなわち、A層渦巻きコイルとB層渦巻きコイルとからなり、コイル積層体の中心軸の延長方向に、A層渦巻きコイルとB層渦巻きコイルとが交互に繰り返し積層されている。よって、本発明の渦巻きコイル積層体では、銅管は、一番上の層の渦巻きコイルにある銅管の一方の銅管端から一番下の層の渦巻きコイルにある銅管の他方の銅管端まで、連続している。なお、渦巻き状とは、各層の渦巻きコイルを上から見た場合の、銅管の形状を指す。
【0032】
A層渦巻きコイルは、最も内側が1つ上の層の渦巻きコイルの最も内側と繋がり且つ最も外側が1つ下の層の渦巻きコイルの最も外側に繋がっている。また、B層渦巻きコイルは、最も外側が1つ上の層の渦巻きコイルの最も外側と繋がり且つ最も内側が1つ下の層の渦巻きコイルの最も内側に繋がっている。
【0033】
そして、A層渦巻きコイルとその下にあるB層渦巻きコイルとが繋がっている最も外側の位置を始点として見たときに、両者は逆回りの渦巻きになっており、且つ、B層渦巻きコイルとその下にあるA層渦巻きコイルとが繋がっている最も内側の位置を始点として見たときに、両者は逆回りの渦巻きになっている。なお、図5Aに示す形態例では、最も内側の位置を始点としたときに、A層渦巻きコイルは左巻きの渦巻きに巻かれ、且つ、B層渦巻きコイルは右巻きの渦巻きに巻かれているが、これに制限されず、本発明の渦巻きコイル積層体では、最も内側の位置を始点としたときに、A層渦巻きコイルは左巻きの渦巻きに巻かれ、且つ、B層渦巻きコイルは右巻きの渦巻きに巻かれていてもよいし、あるいは、最も内側の位置を始点としたときに、A層渦巻きコイルは右巻きの渦巻きに巻かれ、且つ、B層渦巻きコイルは左巻きの渦巻きに巻かれていてもよい。なお、A層渦巻きコイルとB層渦巻きコイルの最も外側の位置を始点したときも、A層渦巻きコイルとB層渦巻きコイルは、逆回りの渦巻きになる。
【0034】
A層渦巻きコイルは、上下方向の位置が徐々に下がりながら巻かれている部分と、上下方向が同じ位置で渦巻き状に巻かれている部分と、からなる。図5Aに示す形態例では、最も内側5aから位置7aまでの部分が、上下方向の位置が徐々に下がりながら巻かれている部分に相当し、また、位置7aから最も外側4aまでの部分が、上下方向が同じ位置で渦巻き状に巻かれている部分に相当する。本発明の渦巻きコイル積層体では、上下方向が同じ位置で渦巻き状に巻かれている部分が、各層を形成するので、A層渦巻きコイルのうちの、上下方向が同じ位置で渦巻き状に巻かれている部分の上下方向の位置を、A層の位置とする。B層渦巻きコイルでも同様に、B層渦巻きコイルのうちの、上下方向が同じ位置で渦巻き状に巻かれている部分の上下方向の位置を、B層の位置とする。そのため、A層渦巻きコイルの銅管を横から見ると、A層渦巻きコイルの銅管の最も内側の上下方向の位置は、1つ上のB層の位置と同じ位置であり、そこから銅管の位置は徐々に下がっていき、A層の位置まで、略銅管の外径1つ分下がる。そして、A層の位置まで下がったところから最も外側までは、銅管の上下方向の位置は同じである。つまり、A層渦巻きコイルの最も内側とは、銅管の上下方向の位置が1つ上の層のB層渦巻きコイルのB層の位置からA層の位置に向かって下がり始める位置であり、また、A層渦巻きコイルの最も外側とは、銅管の上下方向の位置が1つ下の層のB層渦巻きコイルのB層の位置に向かって下がり始める直前の位置である。図4に示す形態例では、最も内側の位置から渦巻きの中心を中心とする中心角で約180°分かけて、銅管の上下方向の位置が、B層の位置からA層の位置まで下がっているが、これに制限されず、本発明の効果を損なわない範囲で適宜選択される。そして、本発明の渦巻きコイル積層体では、最も内側の位置から渦巻きの中心を中心とする中心角で90~270°分かけて、銅管の上下方向の位置が、B層の位置からA層の位置まで下がっていることが好ましい。
【0035】
また、B層渦巻きコイルは、上下方向の位置が徐々に下がりながら巻かれている部分と、上下方向が同じ位置で渦巻き状に巻かれている部分と、からなる。図5Aに示す形態例では、最も外側4bから位置6bまでの部分が、上下方向の位置が徐々に下がりながら巻かれている部分に相当し、また、位置6bから最も内側5bまでの部分が、上下方向が同じ位置で渦巻き状に巻かれている部分に相当する。そのため、B層渦巻きコイルの銅管を横から見ると、B層渦巻きコイルの銅管の最も外側の上下方向の位置は、1つ上のA層の位置と同じ位置であり、そこから銅管の位置は徐々に下がっていき、B層の位置まで、略銅管の外径1つ分下がる。そして、B層の位置まで下がったところから最も内側までは、銅管の上下方向の位置は同じである。つまり、B層渦巻きコイルの最も外側とは、銅管の上下方向の位置が1つ上の層のA層渦巻きコイルのA層の位置からB層の位置に向かって下がり始める位置であり、また、B層渦巻きコイルの最も内側とは、銅管の上下方向の位置が1つ下の層のA層渦巻きコイルのA層の位置に向かって下がり始める直前の位置である。図3に示す形態例では、最も外側の位置から渦巻きの中心を中心とする中心角で約180°分かけて、銅管の上下方向の位置が、A層の位置からB層の位置まで下がっているが、これに制限されず、本発明の効果を損なわない範囲で適宜選択される。そして、本発明の渦巻きコイル積層体では、最も外側の位置から渦巻きの中心を中心とする中心角で90~270°分かけて、銅管の上下方向の位置が、A層の位置からB層の位置まで下がっていることが好ましい。
【0036】
A層渦巻きコイルでは、銅管の曲率半径は連続して変化しており、且つ、隣り合う銅管同士の隙間が銅管の直径より小さくなるように巻かれている。B層渦巻きコイルでも、同様に、銅管の曲率半径は連続して変化しており、且つ、隣り合う銅管同士の隙間が銅管の直径より小さくなるように巻かれている。
【0037】
なお、本発明の渦巻きコイル積層体の銅管の渦巻き形状とは、理論的には、銅管の曲率半径が連続して変化し、且つ、隣り合う銅管同士の隙間が銅管径より小さい形状を指すが、本発明の効果を損なわないものであれば、それに近似する形状のものも、本発明の渦巻きコイル積層体に含まれる。つまり、本発明の効果を損なわない範囲であれば、銅管の曲率半径が連続して変化していない箇所があったり、あるいは、隣り合う銅管同士の隙間が銅管径より大きくなっている箇所があってもよい。
【0038】
本発明の渦巻きコイル積層体は、銅管が渦巻きコイル状に巻かれた後に、400~700℃で熱処理されたものである。なお、銅管が渦巻きコイル状に巻かれた後の熱処理における熱処理温度は、銅管を構成する銅中の添加元素の種類及び添加量や要求性能等により、上記温度範囲で、適宜選択される。
【0039】
渦巻きコイル積層体の作製方法としては、所定のCu含有量の銅の鋳塊の鋳造し、熱間押出、冷間圧延及び冷間抽伸等を行い、必要に応じて、更に、転造を行い、継目無銅管を作製した後、先に焼鈍、時効処理等の熱処理を行ってから、渦巻きコイル状の積層体に巻く方法と、所定のCu含有量の銅の鋳塊の鋳造し、熱間押出、冷間圧延及び冷間抽伸等を行い、継目無銅管を作製した後、先に、渦巻きコイル状の積層体に巻いてから、焼鈍、時効処理等の熱処理を行う方法が考えられるが、本発明の渦巻きコイル積層体は、所定のCu含有量の銅の鋳塊の鋳造し、熱間押出、冷間圧延及び冷間抽伸等を行い、継目無銅管を作製した後、先に、渦巻きコイル状の積層体に巻いてから、熱処理を行うことにより作製された渦巻きコイル積層体である。
【0040】
そして、本発明の渦巻きコイル積層体は、銅管が渦巻きコイル状に巻かれた後に、400~700℃で熱処理されたものなので、渦巻きコイル積層体の最も内側の銅管の0.2%耐力値の平均(σ0.2INave)と最も外側の銅管の0.2%耐力値の平均(σ0.2OUTave)の差の絶対値(|σ0.2INave-σ0.2OUTave|)が、10MPa以下、好ましくは7MPa以下、特に好ましくは5MPa以下である。渦巻きコイル積層体の|σ0.2INave-σ0.2OUTave|が、上記範囲にあることにより、曲げ内側に発生する曲げシワや曲げ外側が破断する曲げ折れが生じ難いため、曲げマンドレルの位置調整やマンドレル径の選択が容易となる
【0041】
|σ0.2INave-σ0.2OUTave|の算出方法について、図2及び図9を参照して説明する。図9は、図2中、渦巻きコイル積層体1を、中心軸13に平行且つ中心軸13に重なる面30で切ったときの断面図である。同じ断面において、各渦巻きコイルの最も内側にある銅管が、最も内側の銅管32であり、各渦巻きコイルの最も外側にある銅管が、最も外側の銅管31である。1つの断面には、渦巻きコイル積層体の最も上の層から最も下の層まで、渦巻きコイル層の数だけ、最も内側の銅管32が存在する。先ず、中心軸13に平行且つ中心軸13に重なる面30と交差する銅管のうち、最も内側の銅管32から、任意に、採取間隔に大きな偏りがない程度で、10本以上の銅管32を選び、各々の0.2%耐力値を測定し、得られた0.2%耐力値の平均を、最も内側の銅管の0.2%耐力値の平均(σ0.2INave)として求める。具体的には、図9に示すように、最も内側の銅管32から、任意の最も内側の銅管32a、32b、32c、32d・・・(10本以上)を選び、中心軸13に平行且つ中心軸13に重なる面30と交差する位置近傍の銅管32a、32b、32c、32d・・・の各々の0.2%耐力値を測定し、得られた0.2%耐力値を平均し、σ0.2INaveとする。また、最も内側の銅管の0.2%耐力値の平均(σ0.2INave)を求めたときと同じ、中心軸13に平行且つ中心軸13に重なる面30と交差する銅管のうち、最も外側の銅管31から、任意に、採取間隔に大きな偏りがない程度で、10本以上の銅管31を選び、各々の0.2%耐力値を測定し、得られた0.2%耐力値の平均を、最も外側の銅管の0.2%耐力値の平均(σ0.2OUTave)として求める。具体的には、図9に示すように、最も外側の銅管31から、任意の最も外側の銅管31a、31b、31c、31d・・・(10本以上)を選び、中心軸13に平行且つ中心軸13に重なる面30と交差する位置近傍の銅管31a、31b、31c、31d・・・の各々の0.2%耐力値を測定し、得られた0.2%耐力値を平均し、σ0.2OUTaveとする。次いで、渦巻きコイル積層体の最も内側の銅管の0.2%耐力値の平均(σ0.2INave)と最も外側の銅管の0.2%耐力値の平均(σ0.2OUTave)の差の絶対値|σ0.2INave-σ0.2OUTave|を計算する。なお、|σ0.2INave-σ0.2OUTave|の測定において、最も内側の銅管32及び最も外側の銅管31を選択するための、中心軸13に平行且つ中心軸13に重なる面の位置は、渦巻きコイル積層体を、上から見たときの任意の1箇所でよい。渦巻きコイル積層体においては、渦巻きコイル積層体を、上から見たときの任意の1箇所の面における|σ0.2INave-σ0.2OUTave|の値は、渦巻きコイル積層体を上から見たときの他の位置の切断面における|σ0.2INave-σ0.2OUTave|の値と、殆ど同じである。なお、図9では、作図及び説明の都合上、11層と渦巻きコイルの層数が少ない渦巻きコイル積層体を記載しており、採取する最も内側の銅管32及び最も外側の銅管31については、それぞれ4本しか示していないが、実際の渦巻きコイル積層体では、最も内側の銅管32及び最も外側の銅管31については、それぞれ10本以上採取して、0.2%耐力値の平均を求める。
【0042】
本発明の渦巻きコイル積層体を形成する銅管は、ルームエアコン、パッケージエアコンなどの空調機用熱交換器、冷凍機等の伝熱銅管又は冷媒配銅管として用いられる伝熱銅管であり、平滑銅管又は内面溝付銅管である。
【0043】
銅管の外径は、特に制限されないが、好ましくは3~13mm、特に好ましくは3~10mmである。特に、本発明の渦巻きコイル積層体は、渦巻きコイル積層体を形成する銅管の外径が3~7mmと小さくても、銅管の繰り出しトラブルが起こり難くい。
【0044】
A層渦巻きコイル又はB層渦巻きコイル1つ当たりの銅管の巻き数は、特に制限されないが、好ましくは10~200、特に好ましくは30~60である。
【0045】
図1に示す形態例では、渦巻きコイル積層体は、一番上がA層渦巻きコイルの層であり、順に下に、B層、A層、B層、A層、B層・・・と交互に繰り返されて、一番下がA層渦巻きコイルの層となっているが、これに限定されるものではなく、A層渦巻きコイルとB層渦巻きコイルが交互に繰り返されて積層されているのであれば、一番上がA層渦巻きコイルであってもB層渦巻きコイルであってもよく、また、一番下がA層渦巻きコイルであってもB層渦巻きコイルであってもよい。
【0046】
本発明の渦巻きコイル積層体では、一番上の渦巻きコイルの層の上には渦巻きコイルの層がないことから、一番上の渦巻きコイルの層の銅管は、1つ上の層の渦巻きコイルの層とは繋がっていない。そのため、本発明の渦巻きコイル積層体では、一番上の層の渦巻きコイルには、上下方向の位置から徐々に低くなっていく部分がなくてもよい。
【0047】
本発明の渦巻きコイル積層体では、A層渦巻きコイル及びB層渦巻きコイルの合計層数は、特に限定されないが、好ましくは10~250、特に好ましくは20~80である。
【0048】
本発明の渦巻きコイル積層体に係るA層渦巻きコイルにおいて、隣り合う銅管同士の間には隙間が形成されている。また、本発明の渦巻きコイル積層体に係るB層渦巻きコイルにおいて、隣り合う銅管同士の間には隙間が形成されている。そして、本発明の渦巻きコイル積層体では、銅管の外径に対する銅管間の隙間の比が、好ましくは0.01以上1.0未満、特に好ましくは0.05~0.2である。銅管の外径に対する銅管間の隙間の比が上記範囲にあることにより、銅管の間に、1つ上又は1つ下の層の銅管が入り込み難くなる。なお、銅管間の隙間(p)は、以下の式(1)によって算出される。
p=(W-d×n)/(n-1) (1)
式(1)中、Wは渦巻きコイルの断面における各層の片側半分の幅であり、図4中の符号Wで示す長さであり、また、dは銅管の外径であり、また、nは渦巻きコイルの断面における各層の片側半分に存在する銅管の数である。
【0049】
なお、本発明おいて、隣り合う銅管同士の間隔とは、図10に示すように、銅管の銅管軸方向に垂直な面で切った断面において、隣り合う銅管の中心間の距離(符号8)を指す。この隣り合う銅管同士の間隔は、銅管の稜線間の距離に等しい。また、本発明において、銅管間の隙間とは、図10に示すように、銅管の銅管軸方向に垂直な面で切った断面において、隣り合う銅管間にできる隙間(符号9)を指す。なお、図10は、図4中の点線で囲った部分(符号A)の拡大図である。
【0050】
渦巻きコイルの外径(図4中、符号D1で示す長さ)及び渦巻きコイルの内径(図4中、符号Dで示す長さ)は、銅管の外径及び巻き数に応じて適宜選択されるが、渦巻きコイルの外径は、好ましくは800~1500mm、特に好ましくは1000~1100mmであり、また、渦巻きコイルの内径は、好ましくは300~1000mm、特に好ましくは500~700mmである。
【0051】
本発明の渦巻きコイル積層体では、A層渦巻きコイルとB層渦巻きコイルとは、両者が繋がっている位置を始点として見たときに、逆回りの渦巻きになっているので、理論的には、A層渦巻きコイルの銅管の稜線とB層渦巻きコイルの銅管の稜線が、線状には重ならずに交差する。このようなことから、実際の渦巻きコイル積層体中では、A層渦巻きコイルの銅管の稜線とB層渦巻きコイルの銅管の稜線の重なる部分が非常に少なくなる。そのため、最終熱処理時に、銅管同士の溶着による貼り付きが起こっても、従来の段落ちレベルワウンドコイルのように、銅管が線状に貼り付くということが起こり難いので、本発明の渦巻きコイル積層体では、銅管の線状の貼り付きを原因とする銅管の繰り出しトラブルが起こり難い。
【0052】
また、本発明の渦巻きコイル積層体では、上の層の渦巻きコイルから順に巻き解かれるので、本発明の渦巻きコイル積層体中の銅管は、上から他の銅管の荷重がかかっているような状態で繰り出されることはない。そのため、本発明の渦巻きコイル積層体では、銅管が繰り出されるときに、段落ちレベルワンドコイルのような、敷板の抵抗を原因とする銅管の繰り出しトラブルが起こらない。
【0053】
本発明の渦巻きコイル積層体の積み重ね体は、本発明の渦巻きコイル積層体が、コイル積層体の中心軸の延長方向に、2以上積み重ねられており、
上下の渦巻きコイル積層体の銅管が、接続部材で繋がれていること、
を特徴とする渦巻きコイル積層体の積み重ね体である。
【0054】
図11には、渦巻きコイル積層体1a、1bが、コイル積層体の中心軸の延長方向に、2つ積み重ねられている渦巻きコイル積層体の積み重ね体を示す。本発明の渦巻きコイル積層体は、通常、2~3個が、コイル積層体の中心軸の延長方向に積み重ねられた状態で、銅管の使用場所に置かれ、巻き解かれる。
【0055】
このとき、図12(a)に示すように、上にある渦巻きコイル積層体の一番下の層の渦巻きコイルの銅管2aの銅管端と、その下にある渦巻きコイル積層体の一番上の層の渦巻きコイルの銅管2bの銅管端とを近づけ、次いで、図12(b)に示すように、接続部材17で、上の渦巻きコイル積層体の銅管2aと下の渦巻きコイル積層体の銅管2bとが繋がれている。なお、図12は、上下の渦巻きコイル積層体の銅管が、接続部材で繋がれている様子を示す模式図である。
【0056】
接続部材で繋がれている2以上の渦巻きコイル積層体を巻き解きしていく際、銅銅管のねじれを接続部材で吸収するため、接続部材は一定のねじれ強度を有するチューブなどを用いることができる。例えば、塩化ビニル性のチューブや、樹脂製チューブ、銅管などを用いることができる。
【0057】
そして、本発明の渦巻きコイル積層体が、コイル積層体の中心軸の延長方向に、2以上積み重ねられ、上下の渦巻きコイル積層体の銅管が、接続部材で繋がれていることにより、上の渦巻きコイル積層体の銅管が全て繰り出された後、途切れることなく連続して、下の渦巻きコイル積層体の銅管が繰り出される。
【0058】
本発明の渦巻きコイル積層体は、以下に示す本発明の渦巻きコイル積層体の製造方法により、好適に製造される。
【0059】
本発明の渦巻きコイル積層体の製造方法は、少なくとも、Cu含有量が95質量%以上の銅の鋳塊を鋳造する鋳造工程、熱間加工工程及び冷間加工工程を行うことにより、継目無銅管を作製する継目無銅管作製工程と、
該継目無銅管を、渦巻きコイル状の積層体に巻くことにより、コイル巻取体を作製するコイル巻取工程と、
該コイル巻取体を、400~700℃で熱処理することにより、渦巻きコイル積層体を得るコイル巻取体熱処理工程と、
を有することを特徴とする渦巻きコイル積層体の製造方法である。
【0060】
本発明の渦巻きコイル積層体の製造方法は、継目無銅管作製工程と、コイル巻取工程と、コイル巻取体熱処理工程と、を有する。つまり、本発明の渦巻きコイル積層体の製造方法は、継目無銅管作製工程を行って、継目無銅管を得た後、得た継目無銅管を、先に、渦巻きコイル状の積層体に巻いてコイル巻取体を得、その後に、得たコイル巻取体を熱処理する。
【0061】
本発明の渦巻きコイル積層体の製造方法に係る継目無銅管作製工程は、少なくとも、Cu含有量が95質量%以上の銅の鋳塊を鋳造する鋳造工程、熱間加工工程及び冷間加工工程を行うことにより、継目無銅管を作製する工程である。また、継目無銅管作製工程では、冷間加工工程を行った後に、必要に応じて、更に、転造工程を行うことができる。なお、継目無銅管作製工程において、鋳造工程、熱間加工及び冷間加工を行うとは、鋳造工程の直後に、熱間加工工程を行い、熱間加工工程の直後に冷間加工工程を行うということを指すのではなく、鋳造工程より後の工程として熱間加工工程を行い、熱間加工工程より後の工程として冷間加工工程を行うということを指す。
【0062】
継目無銅管作製工程おける鋳造工程では、所定の化学組成の銅、すなわち、Cu含有量が95質量%以上の銅の鋳塊を、常法により鋳造し、所定の元素が所定の含有量で配合されているビレットを得る。例えば、銅の地金及び所定の含有元素の地金又は含有元素と銅の合金を、銅の鋳塊中の含有量が、所定の含有量となるように配合して、成分調整を行い、次いで、高周波溶解炉等を用いて、ビレットを鋳造する。次いで、鋳造後、ビレットを冷却する。
【0063】
熱間加工工程では、850~950℃の温度に加熱されたビレットを、熱間押出する。熱間押出は、マンドレル押出によって行われる。すなわち、加熱前に、冷間で予め穿孔したビレット、あるいは、押出前に熱間で穿孔したビレットに、マンドレルを挿入した状態で、熱間押出を行う。そして、熱間押出を行った後、速やかに冷却して、熱間押出素管を得る。
【0064】
冷間加工工程では、熱間押出により得られた熱間押出素管を、冷間圧延や冷間抽伸等の冷間での加工を行い、管の外径及び肉厚を減じていき、継目無銅管を得る。
【0065】
また、銅管が、内面溝が形成されている内面溝付管の場合、冷間加工に次いで、冷間加工により得られた継目無銅管を、400~700℃で加熱する中間焼鈍を行い、冷却後、転造加工を行う。転造加工では、継目無銅管内に、外面にらせん状の溝加工を施した転造プラグを配置して、高速回転する複数の転造ボールによって、管の外側から押圧して、管の内面に転造プラグの溝を転写して、管の内面に溝を形成させる。
【0066】
また、継目無銅管作製工程では、必要に応じて、鋳造工程から冷間加工工程の間に、あるいは、冷間加工工程より後且つコイル巻取工程より前に、種々の熱処理を行うことができる。例えば、複数回行う冷間圧延工程における冷間圧延と冷間圧延の間に、あるいは、冷間圧延後且つ冷間抽伸前に、あるいは、冷間抽伸後、あるいは、必要に応じて行う転造前に、熱処理を行うことができる。継目無銅管作製工程において、必要に応じて行われる熱処理の条件、すなわち、熱処理温度及び熱処理時間は、熱処理の目的に応じて、適宜選択される。
【0067】
本発明の渦巻きコイル積層体の製造方法に係るコイル巻取工程は、継目無銅管作製工程を行い得られた継目無銅管を、渦巻きコイル状の積層体に巻くことにより、コイル巻取体を作製する工程である。
【0068】
コイル巻取工程において作製するコイル巻取体の形状は、本発明の渦巻きコイル積層体の形状と同様である。つまり、コイル巻取工程では、継目無銅管作製工程を行い得られた継目無銅管を、本発明の渦巻きコイル積層体の形状に巻き取る。
【0069】
コイル巻取工程における継目無銅管の巻取は、例えば、銅管の曲げ曲率の外側に2個のロールを配し、曲率の内側に1個のロールを配する、いわゆるベンディングロールで、曲げ外側の2個のロールを曲げ曲率内側方向に押し付ける押付け量を連続的に変化させながら、コイル内周部の銅管を巻く時は、ロールの押付け量を大きくして、銅管に掛かる曲げ力を大きく、コイル外周部の銅管を巻く時は、ロールの押付け量を小さくして、銅管に掛かる曲げ力を小さくすることで、連続的に曲率の変化した渦巻きコイルを作製する。なお、継目無銅管を渦巻きコイル積層体の形状に巻き取って、コイル巻取体を得る方法は、これに制限されず、適宜選択される。コイル巻取工程おいて作製されるコイル巻取体の各層の渦巻きコイルの内側と外側とでは、銅管の曲率が異なり、内側の方が外側に比べ、曲率が大きい。そのため、コイル巻取工程において、継目無銅管を各層の渦巻きコイルの形状に巻き取る時に、渦巻きコイルの内側の継目無銅管には、外側の継目無銅管に比べ、かかる加工強度が大きい。このことから、コイル巻取工程おいて作製されるコイル巻取体の各層の渦巻きコイルでは、内側の継目無銅管は、外側の継目無銅管に比べ、加工硬化の度合いが大きくなるので、コイル巻取体の各層の渦巻きコイルの内側の継目無銅管の0.2%耐力値は、外側の継目無銅管の0.2%耐力値に比べ、大きくなる。
【0070】
本発明の渦巻きコイル積層体の製造方法に係るコイル巻取体熱処理工程は、コイル巻取工程を行い得られたコイル巻取体を熱処理して、本発明の渦巻きコイル積層体を得る工程である。
【0071】
コイル巻取体熱処理工程において、コイル巻取体を熱処理するときの熱処理温度は、400~700℃である。なお、コイル巻取体を熱処理するときの熱処理温度は、銅管を構成する銅中の添加元素の種類及び添加量や要求性能等により、上記温度範囲で、適宜選択される。また、コイル巻取体熱処理工程において、コイル巻取体を熱処理するときの熱処理時間は、銅管を構成する銅中の添加元素の種類及び添加量や要求性能、熱処理温度等により、適宜選択される。
【0072】
コイル巻取体熱処理工程では、継目無銅管を所定のコイル巻取体の形状に巻き取った後、巻きが崩れないように、得られたコイル巻取体を金属バンドで結束し、次いで、熱処理を行う。
【0073】
そして、本発明の渦巻きコイル積層体の製造方法では、コイル巻取工程を行った後に、コイル巻取体熱処理工程を行うので、コイル巻取体熱処理工程後の渦巻きコイル積層体の各渦巻きコイルの内側の銅管の0.2%耐力値と外側の銅管の0.2%耐力値の差が、熱処理後にコイル巻取りを行った場合のコイルの内側の銅管の0.2%耐力値と外側の銅管の0.2%耐力値の差に比べ、小さくなる。そのため、本発明の渦巻きコイル積層体の製造方法では、渦巻きコイルの内側の銅管の0.2%耐力値と外側の0.2%耐力値との差が小さい渦巻きコイル積層体を得ることができる。
【実施例
【0074】
(実施例1)
JIS H3300 C1220の組成(Cu含有量99.9質量%、P含有量0.025質量%)を有する銅のビレットを鋳造した。次いで、熱間加工及び冷間加工を行い、管外径が6.35mm、肉厚が0.25mmのベアー管の継目無銅管を得た。得られた継目無銅管の0.2%耐力値を測定したところ、385MPaであった。
次いで、得られた継目無銅管を、400mmの長さに切り出し、12本の試験銅管を作製した。次いで、それらのうち6本を用いて、曲率半径が280mmに相当するように、溝ロールに押し付けながら、銅管が湾曲するように曲げを行い曲げ銅管Aを得、また、残りの6本を用いて、曲率半径が550mmに相当するように、溝ロールに押し付けながら、銅管が湾曲するように曲げを行い曲げ銅管Bを得た。なお、曲げ銅管Aは、内径Dが560mm及び外径Dが1100mmの渦巻きコイルの最も内側の銅管に相当し、また、曲げ銅管Bは、該渦巻きコイルの最も外側の銅管に相当する。
次いで、曲げ銅管A及び曲げ銅管Bを、530℃で20分間熱処理した。
次いで、JIS Z 2241に準じて、熱処理後の各曲げ銅管の0.2%耐力値を測定した。0.2%耐力値の測定にあたっては、引張り試験が可能なように、曲げ銅管サンプルを平面に押し当てて整直して測定した。その結果、熱処理後の曲げ銅管Aの0.2%耐力値の平均(σ0.2INaveに相当)は58.7MPaであり、熱処理後の曲げ銅管Bの0.2%耐力値の平均(σ0.2OUTaveに相当)は52.6MPaであり、|σ0.2INave-σ0.2OUTave|は6.1MPaとなった。
【0075】
(比較例1)
実施例1と同様の方法で、0.2%耐力値が385MPaの継目無銅管を作製した。
次いで、得られた継目無銅管を、400mmの長さに切り出し、12本の直状管の試験銅管を作製した。
次いで、得られた試験銅管を、530℃で20分間熱処理した。
次いで、熱処理後の試験銅管のうち6本を用いて、曲率半径が280mmに相当するように、溝ロールに押し付けながら、銅管が湾曲するように曲げを行い曲げ銅管Cを得、また、残りの6本を用いて、曲率半径が550mmに相当するように、溝ロールに押し付けながら、銅管が湾曲するように曲げを行い曲げ銅管Dを得た。
次いで、JIS Z 2241に準じて、各曲げ銅管の0.2%耐力値を測定した。0.2%耐力値の測定にあたっては、引張り試験が可能なように、曲げ銅管サンプルを平面に押し当てて整直して測定した。その結果、曲げ銅管Cの0.2%耐力値の平均(σ0.2INaveに相当)は65.6MPaであり、曲げ銅管Dの0.2%耐力値の平均(σ0.2OUTaveに相当)は55.4MPaであり、|σ0.2INave-σ0.2OUTave|は10.2MPaとなった。
【0076】
(実施例2)
実施例1と同様の方法で、0.2%耐力値が385MPaの継目無銅管を作製した。
次いで、得られた継目無銅管を、渦巻きコイルの外径Dが1100mm、渦巻きコイルの内径Dが560mm、渦巻きコイルの厚みが260mm、渦巻きコイル層の数が40となるように巻き取り、コイル巻取体を得た。
次いで、得られたコイル巻取体を、465℃で90分間熱処理した。
次いで、得られた渦巻きコイル積層体において、任意の中心軸に平行且つ中心軸に重なる面と交差する位置の渦巻きコイルの最も内側の銅管を、任意に10箇所採取し、また、同じ任意の中心軸に平行且つ中心軸に重なる面と交差する位置の渦巻きコイルの最も外側の銅管を、任意に10箇所採取した。次いで、JIS Z 2241に準じて、採取した銅管の0.2%耐力値を測定した。0.2%耐力値の測定にあたっては、引張り試験が可能なように、曲げ銅管サンプルを平面に押し当てて整直して測定した。その結果、渦巻きコイルの最も内側の銅管の0.2%耐力の0.2%耐力値の平均(σ0.2INave)は59.1MPaであり、渦巻きコイルの最も外側の銅管の0.2%耐力値の平均(σ0.2OUTave)は54.3MPaであり、|σ0.2INave-σ0.2OUTave|は4.8MPaとなった。
【符号の説明】
【0077】
1 渦巻きコイル積層体
2、2a、2b、22 銅管
3a A層渦巻きコイル
3b B層渦巻きコイル
4a、4b 渦巻きコイルの最も外側
5a、5b 渦巻きコイルの最も内側
8 隣り合う銅管同士の間隔
9 銅管間の隙間
13 コイル積層体の中心軸
16 敷板
17 接続部材
20 レベルワウンドコイル
21 ボビン
23a、23b、27a、27b 整列巻きコイル
24 ボビンの内筒
30 中心軸13に平行且つ中心軸13に重なる面
31 最も外側の銅管
32 最も内側の銅管
渦巻きコイルの外径
渦巻きコイルの内径
W 渦巻きコイルの片側半分の幅
図1
図2
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図5A
図5B
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