(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-15
(45)【発行日】2022-06-23
(54)【発明の名称】マルチポート弁
(51)【国際特許分類】
F16K 31/06 20060101AFI20220616BHJP
H01F 7/16 20060101ALI20220616BHJP
【FI】
F16K31/06 305A
F16K31/06 305D
F16K31/06 305E
F16K31/06 305K
F16K31/06 305L
H01F7/16 R
H01F7/16 P
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017244869
(22)【出願日】2017-12-21
【審査請求日】2020-12-17
(32)【優先日】2016-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505296441
【氏名又は名称】エムエイシー・バルブス,インク
【氏名又は名称原語表記】MAC VALVES,INC
【住所又は居所原語表記】30569 BECK ROAD,P.O.BOX 111,WIXOM,MICHIGAN 48393,UNITED STATES OF AMERICA
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジェイミソン マイケル
【審査官】笹岡 友陽
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-129877(JP,A)
【文献】特表2010-523915(JP,A)
【文献】米国特許第09206921(US,B1)
【文献】特開平8-135834(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/06
H01F 7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチポート弁であって、
少なくとも1つのポートを備える弁箱と、
前記弁箱内に長手軸に沿って摺動可能に配置される弁部材と、
第1ねじ部と筒状本体を有する第1容器部品と、
前記第1ねじ部と噛み合う第2ねじ部と筒状本体を有し、前記第1容器部品と調節可能に連結し、前記第1容器部品と共に内部領域を形成する第2容器部品と、
前記第1容器部品と前記第2容器部品の前記内部領域内に配置される磁極片と、
前記第1容器部品の前記筒状本体内と前記第2容器部品の前記筒状本体内とに配置され、前記磁極片を中心として環状に延びる電磁コイルと、
前記長手軸と同軸上に配置され、その少なくとも一部分が前記電磁コイル内に摺動可能に配置され、前記電磁コイルに電気が供給された時に、非通電位置から通電位置まで前記長手軸に沿って移動し、前記弁部材が前記弁箱を封止するように配置されて前記弁箱の前記少なくとも1つのポートを開閉するように前記弁部材と連結される電機子と、を備えるマルチポート弁において、
前記内部領域は、前記第1容器部品と前記第2容器部品を前記長手軸回りに互いに対して回転させることによって調節可能な長手方向寸法を有し、前記電機子に対する前記磁極片の長手軸方向位置を変更さ
せ、
前記弁箱は、前記第2容器部品に螺合されている
ことを特徴とするマルチポート弁。
【請求項2】
マルチポート弁であって、
少なくとも1つのポートを備える弁箱と、
前記弁箱内に長手軸に沿って摺動可能に配置される弁部材と、
ボビンに巻回される電磁コイルと、
前記長手軸と同軸上に配置され、その少なくとも一部分が前記ボビン内に摺動可能に配置され、前記電磁コイルに電気が供給された時に、非通電位置から通電位置まで前記長手軸に沿って移動し、前記非通電位置と前記通電位置の一方にある時、前記弁部材が前記弁箱を封止するように配置されて前記少なくとも1つのポートを閉じるように前記弁部材と連結される電機子と、
前記ボビンの少なくとも一部の内部に配置される磁極片と、
第1ねじ部と筒状本体を有する第1容器部品と、
前記第1ねじ部と噛み合う第2ねじ部と筒状本体を有し、前記第1容器部品と調節可能に連結し、前記第1容器部品と共に内部領域を形成する第2容器部品と、
前記第1容器部品に固定されるエンドキャップと、を備えるマルチポート弁において、
前記コイルおよび前記ボビンは、前記第1容器部品の前記筒状本体と前記第2容器部品の前記筒状本体とに配置され
前記磁極片および前記電機子の少なくとも一部分は、前記内部領域内に配置され、
前記内部領域は、前記第1容器部品と前記第2容器部品を前記長手軸回りに互いに対して回転させることによって調節可能な長手方向寸法を有し、前記電機子に対する前記磁極片の長手軸方向位置を変更さ
せ、
前記弁箱は、前記第2容器部品に螺合されている、ことを特徴とするマルチポート弁。
【請求項3】
請求項1または請求項
2に記載のマルチポート弁において、
前記電機子が前記非通電位置にある時、前記磁極片と前記電機子との間に隙間が形成され、
前記内部領域の前記長手方向寸法が増加するにつれて前記隙間が増加し、前記磁極片と前記電機子との間の磁力が減少し、
前記内部領域の前記長手方向寸法が減少するにつれて前記隙間が減少し、前記磁極片と前記電機子との間の磁力が増加する、ことを特徴とするマルチポート弁。
【請求項4】
請求項
3に記載のマルチポート弁において、
前記磁極片は、前記第1容器部品と一体形成される、ことを特徴とするマルチポート弁。
【請求項5】
請求項
4に記載のマルチポート弁において、
前記第1容器部品は、本体部と、連続した閉端部とを有し、前記磁極片は、前記第1容器部品の前記連続した閉端部から長手軸方向に延出する、ことを特徴とするマルチポート弁。
【請求項6】
請求項
3に記載のマルチポート弁において、
前記磁極片は、前記第1容器部品に構造的に装着される別部品である、ことを特徴とするマルチポート弁。
【請求項7】
請求項1または請求項
2に記載のマルチポート弁において、
前記電機子と前記弁部材の少なくとも一方と当接して配置され、前記電機子を前記非通電位置に向かって付勢する付勢部材をさらに備える、ことを特徴とするマルチポート弁。
【請求項8】
請求項
7に記載のマルチポート弁において、
前記第2容器部品は、環状フランジを備え、
前記電機子は、外側延出肩部を備え、
前記付勢部材は、前記電機子周りに螺旋状に、かつ、前記第2容器部品の前記環状フランジと前記電機子の前記外側延出肩部との間を長手方向に延出する、ことを特徴とするマルチポート弁。
【請求項9】
請求項1または請求項
2に記載のマルチポート弁において、
前記第1容器部品および前記第2容器部品は、強磁性材料からなる、ことを特徴とするマルチポート弁。
【請求項10】
マルチポート弁であって、
少なくとも1つのポートを備える弁箱と、
前記弁箱内に長手軸に沿って摺動可能に配置される弁部材と、
第1ねじ部を有する第1容器部品と、
前記第1ねじ部と噛み合う第2ねじ部を有し、前記第1容器部品と調節可能に連結し、前記第1容器部品と共に内部領域を形成する第2容器部品と、
前記第1容器部品と前記第2容器部品の前記内部領域内に配置される電磁コイルと、
前記電磁コイル内に少なくとも部分的に配置される磁極片と、
前記長手軸と同軸上に配置され、その少なくとも一部分が前記電磁コイル内に摺動可能に配置され、前記電磁コイルに電気が供給された時に、非通電位置から通電位置まで前記長手軸に沿って移動し、前記弁部材が前記弁箱を封止するように配置されて前記弁箱の前記少なくとも1つのポートを開閉するように前記弁部材と連結される電機子と、を備え、
前記内部領域は、前記第1容器部品と前記第2容器部品を前記長手軸回りに互いに対して回転させることによって調節可能な長手方向寸法を有し、前記電機子に対する前記磁極片の長手軸方向位置を変更させ、
前記磁極片と前記第1容器部品は、一体形成され、連続して途切れのない磁束経路を形成するワンピース構造を形成
し、
前記弁箱は、前記第2容器部品に螺合されている、ことを特徴とするマルチポート弁。
【請求項11】
請求項
10に記載のマルチポート弁において、
前記第2容器部品は、前記マルチポート弁をマニフォールドに係合させるための座部として機能する環状肩部を備える、ことを特徴とするマルチポート弁。
【請求項12】
請求項
10に記載のマルチポート弁において、
前記第2容器部品は、押え板を収納するより小さな径の腰部を有する、ことを特徴とするマルチポート弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年12月22日付け出願の米国仮特許出願第62/437,796号の優先権を主張する。上記出願の全開示内容が本明細書中に援用される。
【0002】
本発明は電磁弁に関する。
【背景技術】
【0003】
電磁弁は、圧縮空気のような流体を制御するものであり、ソーター、包装機、フードプロセッサー等の装置を操作するのに使われてもよい。これら弁は、何百万ものサイクルにわたり操作される可能性がある。
【0004】
米国特許第8,783,653号に例示されるように、従来、電磁弁は、磁極片と、インダクタワイヤのコイルが巻回された同心ボビンとを備え、ワンピース型の外側ケースまたは容器に組み込まれる。コイルが通電すると、磁力が発生し、容器内部に配置される電機子が引き寄せられる。電機子は、開く(弁構造によっては閉まる)ことにより流体の流れを制御する弁部材を構成する。通常、弁部材すなわち電機子は、コイルが通電されない場合に弁部材を静止状態になるまで付勢する働きをする付勢部材すなわちバネに抗って作動する。
【発明の概要】
【0005】
本発明の主題は、弁箱と、弁箱内に長手軸方向に沿って摺動可能に配置される弁部材と、を備えるマルチポート弁を提供することである。マルチポート弁は、ボビンに巻回される電磁コイルと、電機子と、を有する。電機子は、長手軸と同軸上に配置される。電機子の少なくとも一部分は、ボビン内に摺動可能に配置され、長手軸に沿って非通電位置から通電位置まで移動する。電機子は、電気が電磁コイルに供給されると、通電位置に移動する。マルチポート弁の構成に応じて、電機子が非通電位置または通電位置にある場合に、弁部材が弁箱に対して封止状態で配置され弁箱の1つ以上の開口部をふさぐように、電機子は弁部材と連結される。磁極片は長手軸と同軸上に配置され、ボビンの少なくとも一部の内部に配置される。第1容器部品は弁箱に装着される。第1容器部品は第1ねじ部を有する。マルチポート弁はさらに、第2ねじ部を有する第2容器部品を備える。第2容器部品の第2ねじ部は、第1容器部品の第1ねじ部と噛み合い、それにより第2容器部品は、第1容器部品に調節可能に連結される。第1容器部品および第2容器部品は、共同して内部領域を形成する。コイル、ボビン、磁極片、および電機子の少なくとも一部分は、第1容器部品および第2容器部品の内部領域内に配置される。内部領域の長手方向寸法は、長手軸に沿って計測される。第1容器部品および第2容器部品はねじ込み調節可能であり、容器内部の長手方向寸法を調節する。すなわち、第1容器部品および第2容器部品を長手軸回りに互いに対して回転させることにより、内部領域の長手方向寸法を増減可能である。これにより、電機子に対する磁極片の長手方向位置が変わり、磁極片および電機子それぞれの対向する端面の間の隙間を精密に調節することができる。
【0006】
開示されたマルチポート弁は、いくつかの点において従来の弁設計を改良するものである。開示された弁容器は、より少ない部品で組立可能であり、より低コストかつより迅速に組立可能である。従来の弁を製造するのに必要ないくつかの部品および機械加工工程を省くことに加えて、開示されるマルチポート弁は、より良い磁束分布を示し、その結果、所定のサイズについて、より大きな力を発生させる電磁コイルを提供する。より大きな力の結果、マルチポート弁はより迅速に動作することができる。動作スピードは、ソーター、包装機、フードプロセッサー等に適用される多くの場合、極めて重要な要素である。
【0007】
さらなる利用分野は、本明細書に示される記載から明らかになるであろう。
この発明の概要における説明および具体例は説明目的のみを意図したものであり、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本明細書中で説明される図面は、選択された実施形態の図示目的にすぎず、可能性のある実施の全てを図示するものではなく、本開示の範囲を限定することを意図するものでもない。
【
図1】マルチポート弁の上面斜視図であり、電気接続部を示す。
【
図2】マルチポート弁の底面斜視図であり、開口部を示す。
【
図3】
図1および2のマルチポート弁の前面図である。
【
図4】
図1および2のマルチポート弁の右側面図である。
【
図5】
図1および2のマルチポート弁の背面図である。
【
図6】
図1および2のマルチポート弁の左側面図である。
【
図7A】
図1および2のマルチポート弁の上面図である。
【
図7B】
図1および2のマルチポート弁の底面図である。
【
図8】
図7Bの8-8線にほぼ沿ったマルチポート弁の断面図である。
【
図9】
図7Bの9-9線に沿ったマルチポート弁の断面図である。
【
図10】例示のマニホールドに載置される
図9のマルチポート弁の断面図であり、使用中のマルチポート弁を図示する。
【
図11A】非通電位置における、
図9のマルチポート弁の断面図である。
【
図11B】通電位置における、
図9のマルチポート弁の断面図である。
【
図12】
図9のマルチポート弁の調節可能ツーピース容器アセンブリの拡大図であり、どのように磁束線が集中しているかを示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
添付の図面を参照して、より詳しく実施形態を説明する。
【0010】
調節可能なツーピース容器技術を説明するために、図面には三方弁が例示的に図示される。尚、原理は、例えば二方弁および四方弁を含めた、他の電磁弁構造にも容易に適用可能である。
【0011】
図1および2に関して、マルチポート弁10は、電磁弁操作装置の電磁部品を囲む外側ハウジングとして機能するツーピース容器12を備える。マルチポート弁10は、長手軸Aを有する。第1容器部品14を第2容器部品16内にねじ込む。より詳細には、第1容器部品14は、第2容器部品16の第2ねじ部19と螺合する第1ねじ部18を有する。第1容器部品14のエンドキャップ20は、外側に突出する電気接続部22を備える。エンドキャップ20は、六角ボルトのような締め具24により第1容器部品14に固定される。詳細は、後述される
図8および
図9により良く図示される。
【0012】
図10においてより詳細に図示されるように、第2容器部品16は、マルチポート弁10をマニフォールド46に係合させるための座部26として機能する環状肩部を備える。第2容器部品16は、
図10に図示されるように、押え板30を収容する、より小さな径の腰部28を有する。
【0013】
図10に関して、本実施形態のマルチポート弁10は、流入口40、流出口42および排出口44のそれぞれの間を封止するように設計されたOリング封止構造34、36、38を有する弁箱32を備えた三方弁である。Oリング封止構造34、36、38は、弁箱32と一体形成されてもよいし、別体であってもよい。
図10において、弁箱32は、マニフォールド46に挿入されている。マニフォールド46は、流入口40、流出口42および排出口44のそれぞれと流体連通するように配置されるねじカップリング40’、42’および44’を有する。
図10は、マルチポート弁10を開閉して流体フローを制御するために使用される、操作弁封止部材として機能する弁部材54を図示する。弁部材54は、ポペット弁またはスプール弁のような幾何学的形状であってもよいが、単に例示であって、これに限定されるものではない。弁部材54は、静止位置(
図11A)と作動位置(
図11B)との間で摺動するように、弁箱32内に配置される。
図10には、弁部材54を静止位置(電磁コイル60に電流が流れない時にとる位置)に付勢する付勢部材56(例えば、ばね)も図示される。弁部材54および付勢部材56について、
図11Aと
図11Bと共に下記でさらに検討する。
【0014】
図7A、
図8および
図9を参照して、ツーピース容器12は、電磁コイル60が巻回されるボビン58を備える電磁部品を収容する。電磁コイル60の両端部は、それぞれ電気接続部22の第1導体爪22aおよび第2導体爪22bと連結される(
図7Aに第1導体爪22aおよび第2導体爪22bを視認できる)。
図9に図示されるように、第1容器部品14は、筒状本体14bと、それに連続する閉端部14cと、を有する。第2容器部品16も筒状本体16bを有する。第1容器部品14および第2容器部品16は、一緒に合わせて、内部領域13を形成する。磁極片62は内部領域13に配置される。磁極片62は、第1容器部品14の閉端部14cに連続し、長手方向に内部領域13内に延出してもよい。あるいは、磁極片62は、第1容器部品14の閉端部14cに取り付けられる別部品であってもよい。
【0015】
図12に図示されるように、磁極片62および閉端部14cは、連続して途切れのない磁束経路を形成する。以下でより詳しく説明する。
【0016】
図9および
図12を参照して、ボビン58および電磁コイル60が、組立品として、内部領域13内に挿入される。図示されるように、ボビン58の約半分が、磁極片62を囲む。ボビン58の残り半分が電機子64を囲み、磁極片62と電機子64との間に小さな隙間66ができる。
【0017】
図9で分かるように、電気接続部22を有するエンドキャップ20は、第1容器部品14の閉端部14cに締め具24により固定される。
図9に図示されるように、電気接続部22と電磁コイル60は、ボビン58と一体形成されるか、またはボビン58により支持される金属導体構造68を介して導通される。
【0018】
図9を参照して、第1容器部品14の第1ねじ部18および第2容器部品16の第2ねじ部19により、2つの容器部品14および16を、相互にねじ込んで、調節可能に接続することができる。第2容器部品16は、長手方向に延びた穴70を、環状フランジ72を介して有する。穴70は、電機子64を収容し、電機子64の、非通電位置(
図11A)と通電位置(
図11B)との間の往復運動を可能とするのに十分な空間を有したサイズである。第1容器部品14および第2容器部品16の内部領域13は、長手軸Aと平行に延びる長手方向寸法Lを有する。内部領域13の長手方向寸法Lは、第2容器部品16のフランジ72の内側面と、第1容器部品14の閉端部14cとの間で計測される。下記で説明されるように、長手方向寸法Lは調節可能である。環状フランジ72の外側面は、肩部として機能する。その肩部に抗して付勢部材56の一端が電機子64を押圧し、電機子64を非通電位置まで戻す。付勢部材56の他端は、電機子64の軸方向外側に延出する肩部73に当接する。付勢部材56のこの他端は、電機子64を非通電位置に付勢する付勢力を加える。電磁コイル60が通電されると、磁力が発生し、電機子64を磁極片62側の通電位置まで引き寄せ、付勢部材56を圧縮する。
【0019】
ねじ込み連結器74は、弁箱32と係合し、第2容器部品16で電機子64を支持する。ねじ込み連結器74は、電機子64の拡張された径部の周りに配置されるOリング78と共に封止部を形成する内周面を有する。弁箱32は、ねじ込み連結器80外側に螺合され、さらに、第2容器部品16の開口端内側に82で螺合される。Oリング封止構造84が、ねじ込み連結器74と弁箱32との間に設けられる。
【0020】
弁部材54は、電機子64と共に摺動する。弁部材54は、電機子64と一体形成されてもよく、電機子64に装着される別部品であってもよい。マルチポート弁10を開閉する際の弁部材54およびその動作は、
図11Aおよび
図11Bに最も良く示される。
図11Aは、非通電位置における電機子64を示す。電機子64が非通電位置にある場合、弁部材54の先端86は、弁箱32と静止状態で接触する。
図11Bは、通電位置における電機子64を示す。電機子64が通電位置にある場合、弁部材54の基端88は、弁座90に当接して封止する。ぴっちりとした封止部を形成するのを促進するために、弁部材54には、エラストマージャケットまたはオーバーモールディングが施されてもよい。
【0021】
尚、
図11Aと
図11Bを比べると、電磁コイル60が通電されると、隙間66の大きさは小さくなる。内部領域13の長手方向寸法Lおよびそれにより隙間66の間隔を精密に空けることは、第1容器部品14の第1ねじ部18および第2容器部品16の第2ねじ部をお互いに回すことによって、非常に精密に調節できる。いくつかの用途では、磁極片62と電機子64とを物理的に接触させることも望ましい。そのような場合には、第1容器部品14と第2容器部品16とを互いにねじ込むことにより、簡単に接触させることができる。その他の用途では、通電時に電磁コイル60が電機子64を引き寄せる力を精密に調節できるのが望ましい。この調節も、第1容器部品14と第2容器部品16を長手軸A周りに互いに回転させ、隙間66の大きさを調節することによって調節可能である。電機子64が磁極片62に近づくほど(すなわち、隙間66が狭くなり、したがって磁束が集中するほど)、けん引力はより大きくなる。逆に、電機子64が磁極片62から離れるほど(すなわち、隙間66が広くなり、したがって磁束が減少するほど)、けん引力は減少する。このように、内部領域13の長手方向寸法Lを調節することによって、磁力によるけん引力を非常に精密に細かく調節することができる。
【0022】
従来の電磁弁設計とは対照的に、第1容器部品14の部品である磁極片62を備えたツーピース容器12は、最小の隙間または途切れを有する磁束経路を作ることにより、より強い磁力によるけん引力を生じる。このことを、
図12を参照して、より詳細に説明する。
【0023】
図12は、電磁コイル60により発生する例示的な磁力線100が、磁極片62および電機子64を介してどのように集中するかを示す。磁力線100は、ここでは、長楕円として図示される閉路を形成する。第1容器部品14および第2容器部品16は、鋼鉄または他の強磁性材料から製造される。したがって、第1容器部品14および第2容器部品16は、磁束を集中させる非常に良好な磁束経路を生じ、電機子64に最大の影響を与えることになる。一般的に言えば、強磁性材料は良好な磁束経路を提供するが、空隙は磁束経路をかなり劣化させる。このように、磁極片62および第1容器部品14の一体構造、および、第1容器部品14および第2容器部品16の密着した物理的なねじ込み連結により、空隙の大部分が取り除かれた閉磁束経路回路となる。
【0024】
このことは、磁束線100により例示される。磁束線100は、その経路が、磁極片62をA地点で通過し、第1容器部品14の閉端部14cをB地点で通過し、第1容器部品14の外殻をC地点で通過し、第1容器部品14と第2容器部品16とのねじ込み連結部をD地点で通過し、第2容器部品をE地点で通過し、最後に、第2容器部品16の環状フランジ72と電機子64との間の小さな隙間をF地点で通過して、電機子64内にG地点で進入するのを線でむすんで描かれる。電機子64が摺動可能とするためのF地点での小さな隙間を除き、磁束線100により示される磁束は、事実上空隙を有さない、密着ねじ込み連結により連結された、実質的に2つの一体型鋼鉄構造体を通過することができる。
【0025】
第1容器部品14および磁極片62の一体構造による磁束線100の集中、および、2つの容器部品14および16の密着ねじ込み連結による集中により、大きな表面積にわたって空隙をもたらす部品内部空間を有したアセンブリを備える従来の構造体と比べて、磁束集中が向上しているのが分かる。この向上は、電磁コイル60に通電した場合、電機子64に作用するけん引力がより強くなることにもつながる。
【0026】
上記実施形態の記載は、図示および説明のためになされるものであり、この開示内容に限定されるものではない。特定の実施形態における個々の要素および特徴は、一般的に、その特定の実施形態に限定されるものではなく、適用可能な場合、交換可能であり、たとえ詳細に図示または記載されないとしても、選択された実施形態で使用可能である。同一構成要素を多くのやり方で変形させてもよい。そのような変形は、開示内容から逸脱すると解釈されるべきではない。全てのそのような変形は発明の範囲内に含まれると意図される。