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▶ 株式会社高見沢サイバネティックスの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-15
(45)【発行日】2022-06-23
(54)【発明の名称】識別装置
(51)【国際特許分類】
   G07D 5/02 20060101AFI20220616BHJP
【FI】
G07D5/02 104
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018016674
(22)【出願日】2018-02-01
(65)【公開番号】P2019133516
(43)【公開日】2019-08-08
【審査請求日】2021-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000143396
【氏名又は名称】株式会社高見沢サイバネティックス
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【弁理士】
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(72)【発明者】
【氏名】山口 利道
(72)【発明者】
【氏名】土屋 和範
【審査官】中村 泰二郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-222715(JP,A)
【文献】特開2017-162766(JP,A)
【文献】特開2016-062161(JP,A)
【文献】特開2002-133487(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 5/00- 7/207
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
識別対象物を外観に基づいて識別する装置であって、
前記識別対象物を撮像して前記識別対象物に関する撮像データを生成する画像入力部と、
前記撮像データに基づいて前記識別対象物を識別する識別処理部と、を備え、
前記画像入力部は、前記識別対象物を撮像する撮像手段、及び前記識別対象物を照らす光照射手段を有し、
前記光照射手段は、中心軸線が前記識別対象物の被撮像面と交差する方向に延びる円筒形状の透光部材と、前記透光部材内に光を入射する発光部とを有し、
前記透光部材の外側面は、前記識別対象物側の端に近づくほど前記中心軸線に近づくように前記方向に対して傾斜した第1領域と、前記中心軸線との距離が前記方向に沿って一定である第2領域とを含み、前記透光部材の内側面と前記中心軸線との距離は前記方向に沿って一定であり、
前記発光部は、前記方向における前記透光部材の前記識別対象物とは反対側の端部から前記透光部材内に光を入射し、前記端部から前記透光部材内に入射した光は、前記内側面と前記第2領域との間に閉じ込められつつ前記方向に沿って進行して前記第1領域に到達し、前記第1領域は、該光を前記識別対象物に向けて反射及び拡散し、
前記撮像手段は、前記識別対象物において反射し前記透光部材の内側を通過した光を受ける、識別装置。
【請求項2】
前記第1領域は、前記中心軸線を中心軸線とする架空の円錐台の側面を成している、請求項1に記載の識別装置。
【請求項3】
前記透光部材の前記第1領域には光拡散加工が施されている、請求項1または2に記載の識別装置。
【請求項4】
前記透光部材の前記第1領域には光拡散部材が貼付されている、請求項1または2に記載の識別装置。
【請求項5】
前記透光部材の前記第1領域には光拡散膜が塗布されている、請求項1または2に記載の識別装置。
【請求項6】
前記透光部材は樹脂製である、請求項1~のいずれか1項に記載の識別装置。
【請求項7】
前記識別対象物が硬貨若しくはメダルである、請求項1~のいずれか1項に記載の識別装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、識別装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、硬貨処理機用の硬貨判別装置に関する技術が記載されている。この文献に記載された硬貨判別装置は、搬送中の硬貨の一方の面に向けて光を照射するLEDなどの複数の発光素子と、硬貨の一方の面において反射した光を受光し、画像パターンデータを生成する受光手段と、を備える。複数の発光素子は、透明通路部の中心部を中心とした円上に配置されている。各発光素子は、光軸が、水平方向に対して小さな角度を成し、透明通路部の中心部を中心とした円の中心軸上の所定の点を向くように配置されており、透明通路部上を通過する硬貨に対し、浅い角度で光を照射可能となっている。
【0003】
特許文献2には、硬貨識別装置に関する技術が記載されている。この文献に記載された硬貨識別装置は、識別対象硬貨の表面を撮像して該表面の撮像データを生成する画像入力部と、撮像データに基づいて識別対象硬貨の種類を識別する識別部と、を備える。硬貨が搬送される搬送路と撮像装置との間には開口を有する透明板が設けられており、透明板の内部における開口の周囲には、発光素子が配置されている。発光素子は例えば赤外LEDである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-197865号公報
【文献】特開2005-284918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年の識別装置は、例えば硬貨、紙幣、メダル、トークン等の真贋及び種類を識別するために、識別対象物を撮像し、得られた撮像データに基づいて識別を行う。識別対象物を撮像する際には、識別対象物の被撮像面を照明することが必要になる。その際、被撮像面からの反射光が撮像装置に入射することを防ぐため、被撮像面の周囲から浅い角度でもって光が照射される(例えば特許文献1,2を参照)。
【0006】
被撮像面に光を照射する際には、輝度ムラが抑制された均一な光を照射することが望ましい。均一な光を照射することにより、より正確な撮像データを取得して識別精度を高めることができるからである。その為に、例えば発光素子の配置密度を高める、発光素子から対象物までの距離を長くして光を拡散させる、といった方式が考えられる。しかしながら、発光素子の配置密度を高めると、発光素子の個数が増加して製造コストが増す。また、発光素子から対象物までの距離を長くすると、識別装置の小型化を妨げてしまう。
【0007】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、製造コストを抑え、小型化を実現しながら均一な光を識別対象物に照射することができる識別装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明による識別装置は、識別対象物を外観に基づいて識別する装置であって、識別対象物を撮像して識別対象物に関する撮像データを生成する画像入力部と、撮像データに基づいて識別対象物を識別する識別処理部と、を備える。画像入力部は、識別対象物を撮像する撮像手段、及び識別対象物を照らす光照射手段を有し、光照射手段は、中心軸線が識別対象物の被撮像面と交差する方向に延びる円筒形状の透光部材と、透光部材内に光を入射する発光部とを有する。透光部材の外側面は、識別対象物側の端に近づくほど中心軸線に近づくように上記方向に対して傾斜した第1領域と、中心軸線との距離が上記方向に沿って一定である第2領域とを含む。透光部材の内側面と中心軸線との距離は、上記方向に沿って一定である。発光部は、上記方向における透光部材の識別対象物とは反対側の端部から透光部材内に光を入射する。該端部から透光部材内に入射した光は、内側面と第2領域との間に閉じ込められつつ上記方向に沿って進行して第1領域に到達する。第1領域は、該光を識別対象物に向けて反射及び拡散する。撮像手段は、識別対象物において反射し透光部材の内側を通過した光を受ける。
【0009】
この識別装置では、円筒形状の透光部材内に発光部から光が入射する。光は透光部材内を伝搬し、外側面の傾斜領域に達する。この領域は、透光部材内部を伝搬する光を、円筒形状の内側面を延長した領域内を通過する識別対象物に向けて、反射及び拡散させる。反射及び拡散した光は、透光部材の内側面から透光部材の外部へ出射し、識別対象物の被撮像面に照射される。このような構成を備える識別装置によれば、均一な光を識別対象物に照射することができる。また、透光部材によって光が拡散されるので、例えば発光部が複数の発光素子によって構成される場合であっても、発光素子の個数を抑制することができる。従って、製造コストを抑えることができる。また、発光素子から対象物までの距離を短くできるので、識別装置の小型化を実現できる。
【0010】
また、上記の識別装置において、上記領域は、中心軸線を中心軸線とする架空の円錐台の側面を成してもよい。これにより、光を効果的に拡散して均一性を高めることができる。
【0011】
また、上記の識別装置において、発光部は、上記方向における透光部材の識別対象物とは反対側の端部から透光部材内に光を入射してもよい。これにより、透光部材の内部における光の伝搬距離を十分に確保し、拡散の程度をより高めることができる。
【0012】
また、上記の識別装置において、透光部材の上記領域には光拡散加工が施されてもよい。或いは、上記の識別装置において、透光部材の上記領域には光拡散部材が貼付されてもよい。或いは、上記の識別装置において、透光部材の上記領域には光拡散膜が塗布されてもよい。これらのうち少なくとも一つの構成を識別装置が備えることにより、光を効果的に拡散して均一性を高めることができる。
【0013】
また、上記の識別装置において、透光部材は樹脂製であってもよい。これにより、透光部材の上記の形状を容易に実現することができる。
【0014】
また、上記の識別装置において、識別対象物は硬貨若しくはメダルであってもよい。これらは略円形の被撮像面を有するので、円筒形状の透光部材を備える上記の識別装置において格別の効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明による識別装置によれば、製造コストを抑え、小型化を実現しながら均一な光を識別対象物に照射することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る識別装置1の構成を概略的に示すブロック図である。
図2】画像入力部2の具体的な構成例を示す断面図である。
図3】透光部材22の外観を示す斜視図である。
図4】(a)領域22cに光拡散加工が施されている例を示す図である。(b)領域22cに光拡散部材26が貼付されている例を示す図である。(c)領域22cに光拡散膜27が塗布されている例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しながら本発明による識別装置の実施の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態に係る識別装置1の構成を概略的に示すブロック図である。本実施形態の識別装置1は、識別対象物の真贋及び種類を外観に基づいて識別する装置である。識別対象物としては、例えば硬貨、記念硬貨、メダル、トークン、紙幣などの紙葉類、カードなどの板状物が挙げられる。図1に示されるように、本実施形態の識別装置1は、画像入力部2、識別処理部3、及び制御部4を備えている。画像入力部2は、識別対象物の表面を撮像して、識別対象物の表面に関する撮像データを生成する。識別処理部3は、撮像データに基づいて識別対象物の真贋及び種類を識別する。識別処理部3は、処理部31、記憶部32、及び比較部33を有する。処理部31は、画像入力部2から撮像データを入力し、識別のために適した形式に撮像データを処理する。また、記憶部32は、識別の基準となるデータ(以下、基準データ)を予め記憶している。記憶部32は、例えばメモリ等の電子的な記憶手段によって構成されている。比較部33は、処理部31から出力された処理後の撮像データと、記憶部32に記憶された基準データとを比較することによって、識別対象物の真贋及び種類を識別する。処理部31及び比較部33は、例えばCPUといった演算処理装置及びメモリといった記憶手段を有し、記憶手段に格納されたプログラムを演算処理装置が読み込むことによって動作するコンピュータによって好適に実現される。或いは、処理部31及び比較部33は、例えばASICなどのハードウェアチップによって実現されてもよい。なお、処理部31及び比較部33は、共通のコンピュータまたはハードウェアチップによって実現されてもよく、それぞれ別個のコンピュータまたはハードウェアチップによって実現されてもよい。また、処理部31及び比較部33の記憶手段は、記憶部32の記憶手段と共通であってもよく、それぞれ別個に設けられてもよい。
【0019】
制御部4は、画像入力部2及び識別処理部3の制御を行う。具体的には、図示しない撮像タイミングセンサが識別対象物の搬送路に設けられており、撮像タイミングセンサは、識別対象物の通過を示す電気的な通過信号を制御部4に送る。制御部4は、この通過信号に基づいて、識別対象物を良好なタイミングで撮像するように画像入力部2の動作を制御する。また、そのタイミングに合わせて、上記の識別動作を行うように識別処理部3を制御する。撮像タイミングセンサは、搬送路において画像入力部2よりも上流に配置される。
【0020】
図2は、画像入力部2の具体的な構成例を示す断面図である。図2に示されるように、この画像入力部2は、識別対象物5を照らす光照射手段20と、識別対象物5を撮像する撮像手段25とを有する。画像入力部2は、識別対象物5が搬送される空隙である搬送路に沿って配置され、搬送面の一部を構成する透光板21に対して識別対象物5とは反対側に設けられる。透光板21は、搬送面の一部に形成された円形の開口を塞ぐ板状の部材であって、光照射手段20によって識別対象物5に照射される光の波長を少なくとも含む波長域において光透過特性を有する。透光板21は、例えばガラス若しくは樹脂によって構成される。一実施例では、透光板21はサファイアガラスからなる。本実施形態では、識別対象物5は透光板21上を移動し、その際、識別対象物5の被撮像面5aが透光板21の一方の板面21aと対向する。板面21aの法線は鉛直方向に沿っている。
【0021】
撮像手段25は、例えばCCD及びレンズを含むCCDカメラといった撮像装置によって構成される。撮像手段25は、透光板21を挟んで、識別対象物5の被撮像面5aと対向して配置されている。言い換えると、撮像手段25は、透光板21の板面21aとは反対側の板面21bと対向して、透光板21の下方に配置されている。撮像手段25は前述した制御部4(図1を参照)によって制御され、撮像手段25の前を識別対象物5が通過する瞬間に被撮像面5aを撮像する。
【0022】
光照射手段20は、透光部材(導光部材)22及び発光部23を有する。発光部23は、透光部材22内に光Lを入射する。なお、光Lは全ての発光部23から同時に出射されるが、理解を容易にするため図2では一部の発光部23からの光Lのみ示している。発光部23は、例えば基板24の実装面24a上に実装された複数の発光素子によって好適に構成される。発光素子は、例えばLEDである。発光素子は、面実装タイプ及びリードタイプの何れであってもよく、それらを組み合わせてもよい。発光部23から出力される光Lの波長は任意に決定されるが、例えば被撮像面5aの形状や模様を明瞭に撮像するために赤外域或いは可視域が好適である。実装面24aは、透光板21の板面21aに沿って(すなわち水平面に沿って)延在している。基板24は、撮像手段25から被撮像面5aが見えるようにするための円形の開口24bを有する。開口24bは、板面21aの法線方向から見て撮像手段25と重なる位置に形成されている。発光部23を構成する複数の発光素子は、開口24bの周縁部に沿って円環状に並んで配列されている。これらの発光素子は、光軸方向を搬送路に向けて、方向A1に沿って光Lを出射する。この場合、実装面24aと垂直な方向に光Lを発するように発光素子を基板24に取り付ければよいので、発光素子の実装作業が比較的容易となる。
【0023】
透光部材22は、発光部23から出射される光Lの波長を少なくとも含む波長域において光透過特性を有する。透光部材22は、例えばガラス若しくは樹脂によって構成される。一実施例では、透光部材22は透明な樹脂からなる。
【0024】
図3は、透光部材22の外観を示す斜視図である。図2及び図3に示されるように、透光部材22は円筒形状を呈しており、その中心軸線C1は、識別対象物5の被撮像面5aと交差する(例えば直交する)方向A1に沿って延びている。なお、方向A1は、透光板21の板面21aと交差し、例えば直交する。透光部材22は、内側面22a、外側面22b、及び端面22dを有する。中心軸線C1に垂直な断面における内側面22a及び外側面22bの断面形状は共に円形である。内側面22aと中心軸線C1との距離は、方向A1に沿って一定である。一方、外側面22bと中心軸線C1との距離は、一部の領域22cを除いて、方向A1に沿って一定である。すなわち、一部の領域22cを除く外側面22bは円柱面を成す。撮像手段25は、内側面22aを搬送路とは反対側に延長した架空の円筒の内側に位置する。
【0025】
外側面22bの一部の領域22cは、識別対象物5側の端(すなわち搬送路側の端)22eに近づくほど中心軸線C1に近づくように方向A1に対して傾斜している。中心軸線C1が透光板21の板面21aに対して垂直である場合、領域22cは板面21aに対しても傾斜している。一例では、領域22cは、中心軸線C1を中心軸線とする架空の円錐台の側面を成している。領域22cは、発光部23から出力されて透光部材22内を伝搬する光Lを、識別対象物5に向けて反射及び拡散する。すなわち、領域22cは、透光部材22とその外部媒体(空気)との屈折率差によって、透光部材22内を伝搬する光を反射する。このため、透光部材22の延在方向(方向A1)と領域22cとの成す角は、領域22cにおいて光Lが全反射可能な角度であることが好ましい。方向A1と領域22cとの成す角θは、例えば40°~44°の範囲内である。
【0026】
また、領域22cは、その反射の際に光Lを拡散するための構造を有する。例えば、図4(a)に示されるように、領域22cには光拡散加工が施されている。光拡散加工は、例えば表面に微細な凹凸を形成する擦りガラス加工、粗面加工、或いは複数の微細なレンズ形状を2次元状に配列するような加工であってもよい。或いは、図4(b)に示されるように、領域22cに光拡散部材26が貼付されてもよい。或いは、図4(c)に示されるように、領域22cに光拡散膜27が塗布されてもよい。なお、光Lを拡散するための構造としては、図4(a)~図4(c)に示された構成を単独で有してもよく、また、これらの構成の少なくとも2つを組み合わせてもよい。領域22cは、内側面22aと繋がっていてもよく、内側面22aから離れていてもよい。また、領域22cは、透光部材22の識別対象物5側の端22eに達していてもよく、達していなくてもよい。
【0027】
端面22dは、方向A1における透光部材22の識別対象物5とは反対側の端部(すなわち、搬送路とは反対側の端部)に位置する表面である。端面22dは平坦であり、中心軸線C1と交差する(一例では直交する)架空平面に沿っている。端面22dは基板24の実装面24aと対向しており、発光部23から出射された光Lは端面22dから透光部材22の内部に入射する。なお、発光部23の各発光素子と端面22dとは互いに接してもよく、互いに離間してもよい。また、発光部23の各発光素子と端面22dとは互いに固定されてもよく、固定されなくてもよい。発光部23の各発光素子と端面22dとの間に、屈折率整合材が介在してもよい。
【0028】
上記の構成を備える本実施形態の識別装置1の動作を説明する。まず、識別装置1の投入口に識別対象物5が投入される。この識別対象物5は、搬送路の搬送面上を搬送手段(例えば駆動ベルト等)によって搬送される。そして、識別対象物5が所定の位置まで搬送されたことを、撮像タイミングセンサが検知する。撮像タイミングセンサは、検知信号を制御部4に出力する。制御部4は、検知信号に基づいて、発光部23を所定時間発光させる。
【0029】
発光部23から出射された光Lは、端面22dから透光部材22内に入射し、拡がりつつ透光部材22の延在方向(方向A1)に沿って進行する。このとき、光Lは、透光部材22と外部媒質(空気)との屈折率差によって、内側面22aと外側面22bとの間に閉じ込められる。また、このとき、光Lは、端面22dと領域22cとの距離が長いほど大きく拡がる。そして、光Lが領域22cに到達すると、光Lは識別対象物5に向けて反射及び拡散し、内側面22aから透光部材22の外部へ出射する。このとき、透光部材22の上方に配置された識別対象物5の被撮像面5aに光Lが向くように、反射前の光Lの光軸と、反射後の光Lの光軸(拡散光の中心)とは90°より大きい角度を成す。言い換えると、領域22cに対する光Lの入射角は45°よりも大きい。また、内側面22aに対する光Lの入射角は十分大きいため、光Lの多くの部分は内側面22aを通過する。
【0030】
識別対象物5は、光Lによって照らされながら、画像入力部2を通過する。識別対象物5が画像入力部2を通過する際、透光部材22の内側面22aを搬送路側に延長した架空の円筒内を識別対象物5が通過するタイミングで撮像手段25による撮像が行われるように、制御部4が撮像手段25を制御する。このとき、撮像手段25は、識別対象物5の被撮像面5aにおいて反射し透光部材22の内側(すなわち内側面22aによって囲まれた領域)を通過した光Lを受光する。撮像手段25によって生成された被撮像面5aに関する撮像データは、識別処理部3に送られる。識別処理部3では、処理部31が撮像データを適宜処理して処理データを作成する。作成された処理データは、予め記憶部32に記憶されている基準データとともに、比較部33に入力される。比較部33は、処理データと基準データとを比較して、識別対象物5が識別基準に合致しているか否かを判定し、その結果を出力する。
【0031】
以上に説明した、本実施形態による識別装置1によって得られる効果について説明する。上述したように、この識別装置1では、円筒形状の透光部材22内に発光部23から光Lが入射する。光Lは透光部材22内を伝搬し、外側面22bの傾斜領域22cに達する。この領域22cは、透光部材22内部を伝搬する光Lを、内側面22aを延長した円筒内を通過する識別対象物5に向けて、反射及び拡散させる。反射及び拡散した光Lは、内側面22aから透光部材22の外部へ出射し、識別対象物5の被撮像面5aに照射される。このような構成によれば、被撮像面5aの法線方向に対して傾斜した方向から光Lを照射できる。更に、光Lは内側面22aの近傍から遠くまで広範囲に拡がり、且つ、照射範囲における光Lの密度が拡散により均一化される。そして、透光部材22が被撮像面5aを囲むように配置されるので、被撮像面5aの全周囲からそのような光Lが照射される。従って、この識別装置1によれば、均一な光Lを識別対象物5に照射することができる。また、透光部材22によって光Lが拡散されるので、例えば発光部23が複数の発光素子によって構成される場合であっても、発光素子の個数を抑制することができる。従って、製造コストを抑えることができる。また、発光部23から識別対象物5までの距離を短くできるので、識別装置1の小型化を実現できる。
【0032】
また、本実施形態のように、領域22cは、透光部材22の中心軸線C1を中心軸線とする架空の円錐台の側面を成してもよい。これにより、光Lを効果的に拡散して均一性を高めることができる。
【0033】
また、本実施形態のように、発光部23は、方向A1における透光部材22の識別対象物5とは反対側の端部(端面22d)から透光部材22内に光Lを入射してもよい。これにより、透光部材22の内部における光の伝搬距離を十分に確保し、拡散の程度をより高めることができる。
【0034】
また、本実施形態のように、透光部材22の領域22cには光拡散加工が施されてもよい。或いは、透光部材22の領域22cには光拡散部材26が貼付されてもよい。或いは、透光部材22の領域22cには光拡散膜27が塗布されてもよい。これらのうち少なくとも一つの構成を識別装置1が備えることにより、光Lを効果的に拡散して均一性を高めることができる。
【0035】
また、本実施形態のように、透光部材22は樹脂製であってもよい。これにより、透光部材22の上記の形状を容易に実現することができる。
【0036】
また、本実施形態のように、識別対象物5は硬貨若しくはメダルであってもよい。これらは略円形の被撮像面5aを有するので、円筒形状の透光部材22を備える識別装置1において格別の効果を得ることができる。
【0037】
本発明による識別装置は、上述した実施形態に限られるものではなく、他に様々な変形が可能である。例えば、上記実施形態では発光部23として複数の発光素子を円環状に配列したものが例示されているが、発光部23の構成はこれに限られず、例えば円環状の発光領域を有する単一の発光装置によって構成されてもよい。また、上記実施形態では外側面22bの領域22cにおいて光Lを拡散させる手段として光拡散加工、光拡散部材26、及び光拡散膜27が例示されているが、領域22cにおいて光Lを拡散させる手段はこれらに限られない。
【符号の説明】
【0038】
1…識別装置、2…画像入力部、3…識別処理部、4…制御部、5…識別対象物、5a…被撮像面、20…光照射手段、21…透光板、21a,21b…板面、22…透光部材、22a…内側面、22b…外側面、22c…領域、22d…端面、22e…端、23…発光部、24…基板、24a…実装面、24b…開口、25…撮像手段、26…光拡散部材、27…光拡散膜、31…処理部、32…記憶部、33…比較部、A1…方向、C1…中心軸線、L…光。
図1
図2
図3
図4