(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-15
(45)【発行日】2022-06-23
(54)【発明の名称】火工装置用の筒状フィルタ、前記筒状フィルタの製造方法、前記筒状フィルタを使用した火工装置
(51)【国際特許分類】
B60R 21/264 20060101AFI20220616BHJP
B01D 39/10 20060101ALI20220616BHJP
B01J 7/00 20060101ALI20220616BHJP
【FI】
B60R21/264
B01D39/10
B01J7/00 A
(21)【出願番号】P 2018044289
(22)【出願日】2018-03-12
【審査請求日】2021-01-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100098408
【氏名又は名称】義経 和昌
(72)【発明者】
【氏名】廣岡 正人
(72)【発明者】
【氏名】西川 嘉晃
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-528276(JP,A)
【文献】特開2011-255750(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第19725418(DE,A1)
【文献】特開2006-159153(JP,A)
【文献】特開2007-008205(JP,A)
【文献】国際公開第2010/050588(WO,A1)
【文献】特開2009-286264(JP,A)
【文献】特開2010-234843(JP,A)
【文献】特開2012-144072(JP,A)
【文献】特開2016-055669(JP,A)
【文献】特開2005-178599(JP,A)
【文献】特開2001-315611(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/264
B01D 39/10
B01D 46/24
B01J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス発生源としてガス発生剤または加圧ガスを有している
ガス発生器に用いられる
ガス発生器用の筒状フィルタであって、前記
ガス発生器用の筒状フィルタが前記
ガス発生器のハウジングの内部に配置され、
前記筒状フィルタが、第1環状端面
部、前記第1環状端面
部と軸方向に
反対側の位置にある第2環状端面
部、および前記第1環状端面
部と前記第2環状端面
部の間の筒状壁面
部を有しているものであり、
前記第1環状端面
部と前記第2環状端面
部の少なくとも一方が脆弱部を有しており、
前記第1環状端面
部が脆弱部を有しているときの脆弱部が、前記第1環状端面
部から
軸方向に突き出された、前記第1環状端面
部の厚さ未満の厚さを有する第1環状壁部を含むものであり、前記第1環状壁部が前記ハウジングの形状に応じて前記ハウジングの
半径方向内側または外側に倒れるように変形し、
前記ハウジングに対して前記第1環状壁部が環状に密着し、
前記第2環状端面
部が脆弱部を有しているときの脆弱部が、前記第2環状端面
部から
軸方向に突き出された、前記第2環状端面
部の厚さ未満の厚さを有する第2環状壁部を含むものであり、前記第2環状壁部が前記ハウジングの形状に応じて前記ハウジングの
半径方向内側または外側に倒れるように変形し
、前記ハウジングに対して前記第2環状壁部が環状に密着した状態で配置されている、
ガス発生器用の筒状フィルタ。
【請求項2】
前記第1環状端面
部が脆弱部としての前記第1環状壁部を有するとき、前記第1環状壁部が前記ハウジングの環状斜面に当接し、前記ハウジングの
半径方向内側または外側に倒れるように変形した状態で配置されており、
前記第2環状端面
部が脆弱部としての前記第2環状壁部を有するとき、前記第2環状壁部が前記ハウジングの環状斜面とは異なる別の環
状傾斜面に当接し、前記ハウジングの
半径方向内側または外側に倒れるように変形した状態で配置されている、請求項1記載の
ガス発生器用の筒状フィルタ。
【請求項3】
前記第1環状端面
部が第1環状壁部を含む脆弱部を有しているとき、
前記脆弱部が、前記
ガス発生器用の筒状フィルタの筒状外壁面に沿って軸方向に伸ばされた第1外側環状壁部、前記
ガス発生器用の筒状フィルタの筒状内壁面に沿って軸方向に伸ばされた第1内側環状壁部、および前記第1外側環状壁部と前記第1内側環状壁部の組み合わせから選ばれる1つのものであり、
前記第1外側環状壁部と前記第1内側環状壁部のそれぞれの厚さが、前記第1環状端面
部の1/2厚さ未満のものであり、
前記第2環状端面
部が第2環状壁部を含む脆弱部を有しているとき、
前記脆弱部が、前記
ガス発生器用の筒状フィルタの筒状外壁面に沿って軸方向に伸ばされた第2外側環状壁部、前記
ガス発生器用の筒状フィルタの筒状内壁面に沿って軸方向に伸ばされた第2内側環状壁部、および前記第2外側環状壁部と前記第2内側環状壁部の組み合わせから選ばれる1つのものであり、
前記第2外側環状壁部と前記第2内側環状壁部のそれぞれの厚さが、前記第2環状端面
部の1/2厚さ未満のものである、請求項1記載の
ガス発生器用の筒状フィルタ。
【請求項4】
前記第1環状端面
部が第1環状壁部を含む脆弱部を有しているとき、第1外側環状壁部と第1内側環状壁部の間には第1環状溝が形成されており、
前記第2環状端面
部が第2環状壁部を含む脆弱部を有しているとき、第2外側環状壁部と第2内側環状壁部の間には第2環状溝が形成されている、請求項3記載の
ガス発生器用の筒状フィルタ。
【請求項5】
前記第1環状端面
部が第1環状壁部を含む脆弱部を有しているとき、
前記脆弱部が、
前記
ガス発生器用の筒状フィルタの筒状外壁面から厚さ方向に間隔をおいて軸方向に伸ばされた第1中間環状壁部と、
前記第1中間環状壁部から、前記第1環状端面
部と前記筒状外壁面との境界部となる第1外側角部までの範囲、または前記第1中間環状壁部から、前記第1環状端面
部と前記筒状内壁面との境界部となる第1内側角部までの範囲からなり、
前記第1中間環状壁部の厚さが前記第1環状端面
部の厚さの1/2以下の厚さで、前記第1中間環状壁部の厚さの中間位置から前記筒状外壁面までの距離(L1)と前記第1中間環状壁部の厚さの中間位置から前記筒状内壁面までの距離(L2)がL1<L2、L1=L2またはL1>L2の関係を満たしているものであり、
前記第2環状端面
部が第2環状壁部を含む脆弱部を有しているとき、
前記脆弱部が、
前記
ガス発生器用の筒状フィルタの筒状外壁面から厚さ方向に間隔をおいて軸方向に伸ばされた第2中間環状壁部と、
前記第2中間環状壁部から、前記第2環状端面
部と前記筒状外壁面との境界部となる第2外側角部までの範囲、または前記第2中間環状壁部から、前記第2環状端面
部と前記筒状内壁面との境界部となる第2内側角部までの範囲からなり、
前記第2中間環状壁部の厚さが前記第2環状端面
部の厚さの1/2以下の厚さで、前記第2中間環状壁部の厚さの中間位置から前記筒状外壁面までの距離(L11)と前記第2中間環状壁部の厚さの中間位置から前記筒状内壁面までの距離(L12)がL11<L12、L11=L12またはL11>L12の関係を満たしているものである、請求項1記載の
ガス発生器用の筒状フィルタ。
【請求項6】
前記第1環状端面
部が第1環状壁部を含む脆弱部を有しL1<L2であるとき、第1中間環状壁部は、前記ハウジングの半径方向内側に倒れるように変形し、
前記第2環状端面
部が第2環状壁部を含む脆弱部を有しL11<L12であるとき、第2中間環状壁部は、前記ハウジングの半径方向内側に倒れるように変形する、請求項5に記載の
ガス発生器用の筒状フィルタ。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項記載の
ガス発生器用の筒状フィルタの製造方法であって、
部分的に幅が増減された長尺状のフィルタ材を巻き込んで行き、巻き始めと巻き終わりを溶接固定する、
ガス発生器用の筒状フィルタの製造方法。
【請求項8】
ガス排出口を有するハウジング内に点火装置、ガス発生源となるガス発生剤または加圧ガス、および
ガス発生器用の筒状フィルタが収容された
ガス発生器であって、
前記ハウジングが、
天板、前記天板と軸方向に対向する位置にある底板、前記天板および前記底板の間にある周壁部からなり、
前記天板の一部、前記天板と前記周壁部の境界部分、底板の一部および前記底板と前記周壁部の境界部の少なくとも一つに環状斜面を有しているものであり、
前記
ガス発生器用の筒状フィルタが、前記ガス発生剤が燃焼して発生した燃焼ガスが前記ガス排出口から排出されるまでのガス排出経路に配置された、請求項1~6のいずれか1項記載の
ガス発生器用の筒状フィルタの前記第1環状端面
部の脆弱部および前記第2環状端面
部の脆弱部の少なくとも一方が半径方向に変形されたものであり、
前記変形された脆弱部が前記環状斜面の内側面に環状面で密着されているものである、
ガス発生器。
【請求項9】
前記天板の一部に形成された環状斜面が、前記天板と前記底板の間隔を短くするように半径方向外側から半径方向内側に向かって傾斜されているものであり、
前記天板と前記周壁部の境界部分に形成された傾斜面部が、前記天板と前記底板の間隔を短くするように前記半径方向外側に傾斜されているものであり、
前記底板の一部に形成された環状斜面が、前記底板と前記天板の間隔を短くするように半径方向外側から半径方向内側に向かって傾斜されているものであり、
前記底板と前記周壁部の境界部分に形成された傾斜面部が、前記天板と前記底板の間隔を短くするように前記半径方向外側に傾斜されているものである、請求項8記載の
ガス発生器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアバッグ装置に使用するガス発生器などとして好適な火工装置用の筒状フィルタ、前記筒状フィルタの製造方法、前記筒状フィルタを使用した火工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス発生源としてガス発生剤や加圧ガスを使用したガス発生器などの火工装置は、自動車に搭載するエアバッグ装置などで汎用されている。
このような火工装置では、ガス発生剤の燃焼により生じた燃焼ガスを冷却したり、ガス中の残渣や金属小片を捕集したりするため、フィルタが使用されている。
【0003】
特許文献1は、ガス発生器用の筒状フィルタの発明である。
図5に示す長尺状のパンチングメタル40を
図4に示すように巻いて行き、巻き終わりを溶接固定することで筒状フィルタ10を製造できることが記載されている(段落番号0042、0035~0037)。
筒状フィルタ10は、ガス発生器100の部品として使用したとき、両端面11a、11bが押し潰されることで天板101aの平坦面、底板102aの平坦面と密着されることが記載されている(段落番号0049)。
【0004】
特許文献2は、インフレータの発明である。
図1および
図2に示すように、フィルタ材25は、軸方向に沿って延びる筒状部26を有している。筒状部26には複数の開口部27が形成されており、軸方向の一方の端部であるアッパーケース9の天板部10側の端部に折り曲げ部28aを有している(段落番号0039)。
フィルタ材25は、ロワーケース3とアッパーケース9によって軸方向から挟み込まれることでハウジングに組付けられる。折り曲げ部28aは、アッパーケース9に突き当たることで弾性変形し、フィルタ材25の軸方向に弾性力を発現してアッパーケース9に圧接する弾性力発現部として機能する。これによりフィルタ材25は、そのハウジングへの組付けの際に軸方向の長さが減じることになり、適度な圧力をもってロワーケース3の底板部4およびアッパーケース9の天板部10と実質的に環状線として接することになり、各部材間の寸法精度の誤差を許容して安定的にハウジングに対して固定される(段落番号0044)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-255750号公報
【文献】特許第5158651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、エアバッグ装置用ガス発生器に使用できる火工装置用の筒状フィルタ、前記筒状フィルタの製造方法、前記筒状フィルタを使用した火工装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明(第1実施形態)は、ガス発生源としてガス発生剤を有している火工装置用の筒状フィルタであって、
前記筒状フィルタが、第1環状端面、前記第1環状端面と軸方向に対向する位置にある第2環状端面、および前記第1環状端面と前記第2環状端面の間の筒状壁面を有しているものであり、
前記第1環状端面と前記第2環状端面の少なくとも一方が脆弱部を有しており、
前記第1環状端面が脆弱部を有しているときの脆弱部が、前記第1環状端面から突き出された、前記第1環状端面の厚さ未満の厚さを有する第1環状壁部を含むものであり、
前記第2環状端面が脆弱部を有しているときの脆弱部が、前記第2環状端面から突き出された、前記第2環状端面の厚さ未満の厚さを有する第2環状壁部を含むものである、火工装置用の筒状フィルタを提供する。
【0008】
本発明の筒状フィルタは、ガス発生源としてガス発生剤のみを有している火工装置用、またはガス発生源としてガス発生剤と加圧ガスを併用している火工装置用、またはガス発生源として加圧ガスを使用している火工装置用である。
火工装置は、自動車に搭載するエアバッグ装置で使用するガス発生器などを含むものである。
筒状フィルタは、第1環状端面、前記第1環状端面と軸方向に対向する位置にある第2環状端面、および前記第1環状端面と前記第2環状端面の間の筒状壁面を有している。筒状壁面は、内側の筒状内壁面と外側の筒状外壁面からなる。
【0009】
筒状フィルタは、第1環状端面と第2環状端面のいずれか一方または両方が脆弱部を有している。脆弱部の変形方向は、半径方向内側、または半径方向外側に倒れる(傾斜する)ように変形されていてもよい。また、脆弱部の変形方向は、軸方向への変形部分を含むものであってもよい。
第1環状端面が脆弱部を有しているときの脆弱部は、第1環状端面から突き出された、第1環状端面の厚さ未満の厚さを有する第1環状壁部を含むものである。第1環状壁部は、周方向に連続している。
第2環状端面が脆弱部を有しているときの脆弱部は、第2環状端面から突き出された、第2環状端面の厚さ未満の厚さを有する第2環状壁部を含むものである。脆弱部となる第2環状壁部は、周方向に連続している。
脆弱部は、外力が加えられたときに優先的に変形される部分である。筒状フィルタの脆弱部は、火工装置の組み立て工程において筒状フィルタをハウジング内に配置されているとき、前記ハウジング内壁面または前記ハウジング内に配置されたリテーナなどの別部材に当接された状態で変形されることで、前記ハウジング内壁面または前記別部材と前記筒状フィルタの密着性を高めるように機能するものである。
したがって脆弱部は、ハウジング内壁面やリテーナなどの別部材との当接面に沿った方向に変形する。なお、筒状フィルタとして第1環状端面、または第2環状端面に形成される脆弱部(第1環状壁部および第2環状壁部)の突き出されている方向は、必ずしもフィルタの軸方向である必要はなく、半径方向内側または外側に傾斜されていてもよい。
【0010】
筒状フィルタを火工装置のハウジング内に配置したとき、前記ハウジングまたは前記ハウジング内に配置するリテーナなどの他の部材の形状に応じて、第1環状端面の第1環状壁部を含む脆弱部のみに外力が加えられる実施形態、第2環状端面の第2環状壁部を含む脆弱部のみに外力が加えられる実施形態、第1環状端面の第1環状壁部を含む脆弱部と第2環状端面の第2環状壁部を含む脆弱部の両方に外力が加えられる実施形態があり、第1実施形態の筒状フィルタは、これらの全ての実施形態を含むものである。
本発明の技術を適用できるフィルタは、特開平10-119705号公報に開示されている圧縮成形フィルタのほか、パンチングメタルやラスメタル、エキスパンドメタルなどを多層に巻回して形成したフィルタなどの公知のフィルタに使用することができる。
【0011】
第1実施形態の筒状フィルタの好ましい実施形態(第2実施形態)は、前記第1環状端面が第1環状壁部を含む脆弱部を有しているとき、
前記脆弱部が、前記筒状フィルタの筒状外壁面に沿って軸方向に伸ばされた第1外側環状壁部、前記筒状フィルタの筒状内壁面に沿って軸方向に伸ばされた第1内側環状壁部、および前記第1外側環状壁部と前記第1内側環状壁部の組み合わせから選ばれる1つのものであり、
前記第1外側環状壁部と前記第1内側環状壁部のそれぞれの厚さが、前記第1環状端面の1/2厚さ未満のものであり、
前記第2環状端面が第2環状壁部を含む脆弱部を有しているとき、
前記脆弱部が、前記筒状フィルタの筒状外壁面に沿って軸方向に伸ばされた第2外側環状壁部、前記筒状フィルタの筒状内壁面に沿って軸方向に伸ばされた第2内側環状壁部、および前記第2外側環状壁部と前記第2内側環状壁部の組み合わせから選ばれる1つのものであり、
前記第2外側環状壁部と前記第2内側環状壁部のそれぞれの厚さが、前記第2環状端面の1/2厚さ未満のものである。
【0012】
筒状フィルタを火工装置のハウジング内に配置したとき、前記ハウジングまたは前記ハウジング内に配置するリテーナなどの他の部材の形状に応じて、第1環状端面の第1外側環状壁部のみに外力が加えられる実施形態、第1内側環状壁部のみに外力が加えられる実施形態、第1外側環状壁部と前記第1内側環状壁部の両方に外力が加えられる実施形態があり、第2実施形態の筒状フィルタは、これらの全ての実施形態に対応できるものである。
同様に第2環状端面の第2外側環状壁部のみに外力が加えられる実施形態、第2内側環状壁部のみに外力が加えられる実施形態、第2外側環状壁部と前記第2内側環状壁部の両方に外力が加えられる実施形態があり、第2実施形態の筒状フィルタは、これらの全ての実施形態を含むものである。
【0013】
第1環状端面の第1外側環状壁部または第1内側環状壁部が形成されていない第1環状端面部分は、外力が加えられても変形しない部分(非脆弱部)であり、第1外側環状壁部の半径方向内側への変形、または第1内側環状壁部の半径方向外側への変形を許容するための空間を形成している。
例えばこの空間は、第1環状端面の円周方向に沿った第1環状溝となっている。第1環状端面は外力が加えられても変形しない部分(非脆弱部)であり、第1環状溝が、第1外側環状壁部の半径方向内側への変形、または第1内側環状壁部の半径方向外側への変形を許容するための空間を形成している。
また第1環状溝は、第1外側環状壁部または第1内側環状壁部の変形に対して抵抗とならなければ、不連続な複数の溝であってもよい。
第1環状端面に形成された第1外側環状壁部または第1内側環状壁部の厚さは、いずれも第1環状端面の1/2厚さ未満のものである。
第1環状端面に形成された第1外側環状壁部と第1内側環状壁部の合計厚さは、第1環状端面の2/3厚さ以下が好ましい。
【0014】
第1環状端面の第1外側環状壁部のみに外力が加えられる実施形態では、第1外側環状壁部は、半径方向内側に折れ曲がるように変形して、ハウジングの内壁面(またはリテーナ)に対して環状面として圧接する。
第1環状端面の第1内側環状壁部のみに外力が加えられる実施形態では、第1内側環状壁部は、半径方向外側に折れ曲がるように変形して、ハウジングの内壁面(またはリテーナ)に対して環状面として圧接する。
第1環状端面の第1外側環状壁部と第1内側環状壁部の両方に外力が加えられる実施形態では、第1外側環状壁部と第1内側環状壁部は、半径方向外側または半径方向内側に折れ曲がるように変形して、ハウジングの内壁面(またはリテーナ)に対して環状面として圧接する。
第2環状端面の第2外側環状壁部と第2内側環状壁部も上記の第1環状端面の第1外側環状壁部、第1内側環状壁部と同様に変形してハウジングの内壁面(またはリテーナ)に対して環状面として圧接する。
第2環状端面に形成された第2外側環状壁部または第2内側環状壁部の厚さは、いずれも第2環状端面の1/2厚さ未満のものである。
第2環状端面に形成された第2外側環状壁部と第2内側環状壁部の合計厚さは、第2環状端面の2/3厚さ以下が好ましい。
その他、ハウジング形状(またはリテーナ形状)に応じて、第1環状端面の第1内側環状壁部が半径方向外側に折れ曲がるように変形してハウジングの内壁面(またはリテーナ)に対して環状面として圧接し、第2環状端面の第2外側環状壁部が半径方向内側に折れ曲がるように変形してハウジングの内壁面(またはリテーナ)に対して環状面として圧接する実施形態、または前記実施形態とは逆の実施形態もある。
【0015】
第1実施形態の筒状フィルタの好ましい実施形態(第3実施形態)は、前記第1環状端面が第1環状壁部を含む脆弱部を有しているとき、
前記脆弱部が、前記筒状フィルタの筒状外壁面から厚さ方向に間隔をおいて軸方向に伸ばされた第1中間環状壁部と、前記第1中間環状壁部から前記第1環状端面と前記筒状外壁面の第1外側角部までの範囲、または前記第1中間環状壁部から前記第1環状端面と前記筒状内壁面の第1内側角部までの範囲からなり、
前記第1中間環状壁部の厚さが前記第1環状端面の厚さの1/2以下の厚さで、前記第1中間環状壁部の厚さの中間位置から前記筒状外壁面までの距離(L1)と前記第1中間環状壁部の厚さの中間位置から前記筒状内壁面までの距離(L2)がL1<L2、L1=L2またはL1>L2の関係を満たしているものであり、
前記第2環状端面が第2環状壁部を含む脆弱部を有しているとき、
前記脆弱部が、前記筒状フィルタの筒状外壁面から厚さ方向に間隔をおいて軸方向に伸ばされた第2中間環状壁部と、前記第2中間環状壁部から前記第2環状端面と前記筒状外壁面の第2外側角部までの範囲、または前記第2中間環状壁部から前記第2環状端面と前記筒状内壁面の第2内側角部までの範囲からなり、
前記第2中間環状壁部の厚さが前記第2環状端面の厚さの1/2以下の厚さで、前記第2中間環状壁部の厚さの中間位置から前記筒状外壁面までの距離(L11)と前記第2中間環状壁部の厚さの中間位置から前記筒状内壁面までの距離(L12)がL11<L12、L11=L12またはL11>L12の関係を満たしているものである。
【0016】
第3実施形態の筒状フィルタは、第2実施形態の筒状フィルタとは第1環状端面と第2環状端面の脆弱部の位置が異なっている。
第3実施形態の筒状フィルタの第1環状端面の脆弱部は、
(i)筒状フィルタの筒状外壁面から厚さ方向に間隔をおいて軸方向に伸ばされた第1中間環状壁部と、
(ii)第1中間環状壁部から、前記第1環状端面と前記筒状外壁面との境界部分である第1外側角部までの範囲と、
(iii)筒状フィルタの筒状内壁面から厚さ方向に間隔をおいて軸方向に伸ばされた第1中間環状壁部から、第1環状端面と筒状内壁面との境界部分である第1内側角部までの範囲
のうち、(i)と(ii)、または(i)と(iii)の2つである。
これらの脆弱部では、外力を受けたとき、第1中間環状壁部と、第1中間環状壁部から第1外側角部までの範囲が変形するか、または第1中間環状壁部と、第1中間環状壁部から第1内側角部までの範囲が変形する。
第3実施形態の筒状フィルタの第2環状端面の脆弱部は、
(iv)筒状フィルタの筒状外壁面から厚さ方向に間隔をおいて軸方向に伸ばされた第2中間環状壁部と、
(v)第2中間環状壁部から、前記第2環状端面と前記筒状外壁面との境界部分である第2外側角部までの範囲と、
(vi)筒状フィルタの筒状内壁面ら厚さ方向に間隔をおいて軸方向に伸ばされた第2中間環状壁部から第2環状端面と筒状内壁面との境界部である第2内側角部まで範囲
のうち、(iv)と(v)、または(iv)と(vi)の2つである。
これらの脆弱部では、外力を受けたとき、第2中間環状壁部と、第2中間環状壁部から第2外側角部までの範囲が変形するか、または第2中間環状壁部と、第2中間環状壁部から第2内側角部までの範囲が変形する。
【0017】
第1中間環状壁部の厚さは第1環状端面の厚さの1/2以下の厚さであり、好ましくは第1環状端面の厚さの1/3~1/2の厚さである。
また第1中間環状壁部の厚さの中間位置から筒状外壁面までの距離(L1)と第1中間環状壁部の厚さの中間位置から筒状内壁面までの距離(L2)は、L1<L2、L1=L2またはL1>L2の関係を満たしている。
L1<L2のとき、L2/L1は1.2~2.2の範囲が好ましい。
L1>L2のとき、L1/L2は1.2~2.2の範囲が好ましい。
【0018】
第2中間環状壁部の厚さは第2環状端面の厚さの1/2以下の厚さであり、好ましくは第2環状端面の厚さの1/3~1/2の厚さである。
また第2中間環状壁部の厚さの中間位置から筒状外壁面までの距離(L11)と第1中間環状壁部の厚さの中間位置から筒状内壁面までの距離(L12)は、L11<L12、L11=L12またはL11>L12の関係を満たしている。
L11<L12のとき、L12/L11は1.2~2.2の範囲が好ましい。
L11>L12のとき、L11/L12は1.2~2.2の範囲が好ましい。
【0019】
本発明は、ガス排出口を有するハウジング内に点火装置、ガス発生源となるガス発生剤および筒状フィルタが収容された火工装置であって、
前記ハウジングが、
天板、前記天板と軸方向に対向する位置にある底板、前記天板および前記底板の間にある周壁部からなり、
前記天板の一部、前記天板と前記周壁部の境界部分、底板の一部および前記底板と前記周壁部の境界部の少なくとも一つに環状斜面を有しているものであり、
前記筒状フィルタが、前記ガス発生剤が燃焼して発生した燃焼ガスが前記ガス排出口から排出されるまでのガス排出経路に配置された、請求項1~3のいずれか1項記載の筒状フィルタの前記第1環状端面の脆弱部および前記第2環状端面の脆弱部の少なくとも一方が半径方向に変形されたものであり、
前記変形された脆弱部が前記環状斜面の内側面に環状面で密着されているものである、火工装置を提供する。
【0020】
本発明の火工装置は、車両に搭載するエアバッグ装置用のガス発生器などとして使用することができるものであり、筒状フィルタとして上記した第1実施形態~第3実施形態のいずれかの筒状フィルタを使用したものである。
本発明の火工装置は、ガス発生源としてガス発生剤を使用しているものであり、ガス発生源としてガス発生剤のみを使用しているものと、ガス発生源としてガス発生剤と加圧ガスを併用しているものを含んでいる。
【0021】
ガス発生器のハウジングは、前記天板の一部、前記天板と前記周壁部の境界部分、底板の一部および前記底板と前記周壁部の境界部の少なくとも一つに環状斜面を有している。環状斜面は、軸方向に対向する天板と底板の両方に形成されていることが好ましい。
筒状フィルタの第1環状端面の脆弱部および第2環状端面の脆弱部の少なくとも一方は、半径方向内側または半径方向外側に変形されることによって当接面が形成され、環状斜面の内側面とその当接面が密着することで、前記当接部分から燃焼ガスがショートパスすることが防止されている。
特許文献1のインフレータの発明では、ハウジングとフィルタの接触部分が環状線であるが、本発明の火工装置では、ハウジングと筒状フィルタの接触部分が環状面であることから、密着性がより高められており、上記したショートパス防止効果も高められている。
なお、火工装置として、ガス発生源として加圧ガスを併用しているものを使用したときは、筒状フィルタは加圧ガスを封入するために使用していた破裂板の破壊片を捕捉するようにも機能する。
【0022】
上記の火工装置の発明の好ましい実施形態は、
前記天板の一部に形成された環状斜面が、前記天板と前記底板の間隔を短くするように半径方向外側から半径方向内側に向かって傾斜されているものであり(第1天板環状斜面)、
前記天板と前記周壁部の境界部分に形成された傾斜面部が、前記天板と前記底板の間隔を短くするように前記半径方向外側に傾斜されているものであり(第2天板環状斜面)、
前記底板の一部に形成された環状斜面が、前記底板と前記天板の間隔を短くするように半径方向外側から半径方向内側に向かって傾斜されているものであり(第1底板環状斜面)、
前記底板と前記周壁部の境界部分に形成された傾斜面部が、前記天板と前記底板の間隔を短くするように前記半径方向外側に傾斜されているものである(第2底板環状斜面)。
【0023】
第2実施形態の筒状フィルタを使用したときにおける上記の各環状斜面の関係を説明する。
第1天板環状斜面を有するハウジング内に第2実施形態の第1内側環状壁部、または第1外側環状壁部と第1内側環状壁部の組み合わせを有する筒状フィルタを配置したとき、第1内側環状壁部が半径方向外側に倒れるように変形することで、第1天板環状斜面と第1内側環状壁部の環状内側面が環状面として当接される。このため、密着性が高められ、前記当接部分から燃焼ガスがショートパスすることが防止される。
第2天板環状斜面を有するハウジング内に第2実施形態の第1外側環状壁部、または第1外側環状壁部と第1内側環状壁部の組み合わせを有する筒状フィルタを配置したとき、第1外側環状壁部が半径方向内側に倒れるように変形することで、第2天板環状斜面と第1外側環状壁部の環状外側面が環状面として当接される。このため、密着性が高められ、前記当接部分から燃焼ガスがショートパスすることが防止される。
第1底板環状斜面を有するハウジング内に第2実施形態の第2内側環状壁部、または第2外側環状壁部と第2内側環状壁部の組み合わせを有する筒状フィルタを配置したとき、第2内側環状壁部が半径方向外側に倒れるように変形することで、第1底板環状斜面と第2内側環状壁部の環状内側面が環状面として当接される。このため、密着性が高められ、前記当接部分から燃焼ガスがショートパスすることが防止される。
第2底板環状斜面を有するハウジング内に第2実施形態の第2外側環状壁部、または第2外側環状壁部と第2内側環状壁部の組み合わせを有する筒状フィルタを配置したとき、第2外側環状壁部が半径方向内側に倒れるように変形することで、第2底板環状斜面と第2外側環状壁部の環状外側面が環状面として当接される。このため、密着性が高められ、前記当接部分から燃焼ガスがショートパスすることが防止される。
【発明の効果】
【0024】
本発明の筒状フィルタを使用した火工装置では、筒状フィルタとハウジング内壁面またはリテーナなどの他部材との接触部分の密着性が高められている。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の筒状フィルタを適用することができるガス発生器の軸方向断面図。
【
図2】本発明の筒状フィルタの一実施形態を示す斜視図。
【
図3】(a)は、
図2の筒状フィルタの半径方向の部分断面図、(b)は(a)の筒状フィルタをハウジング内に配置したときの状態(脆弱部の変形状態)を示す軸方向の部分断面図。
【
図4】(a)は、
図2とは異なる筒状フィルタの半径方向の部分断面図、(b)は
図3(b)に対応する脆弱部の変形状態を示す軸方向の部分断面図。
【
図5】(a)は、
図2とは異なる筒状フィルタの半径方向の部分断面図、(b)は
図3(b)に対応する脆弱部の変形状態を示す軸方向の部分断面図。
【
図6】本発明の別実施形態であるガス発生器の軸方向断面図。
【
図7】(a)は、
図6のガス発生器で使用している筒状フィルタの半径方向の部分断面図、(b)は(a)とは別実施形態の筒状フィルタの半径方向の部分断面図。
【
図8】(a)~(b)は、筒状フィルタの製造方法を説明するための概念図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
<
図1~
図3に示すガス発生器>
以下、本発明の筒状フィルタとそれを使用した火工装置(ガス発生器)を説明する。本発明の火工装置は、筒状フィルタとそれを固定するためのハウジングの内壁面形状またはリテーナなどの他部材との関係に特徴があるものであり、他の構成要素については公知のガス発生器と同じものでもよい。
【0027】
図1に示すガス発生器10は、天板12aと上部周壁部12bを形成するディフューザシェル12と、ディフューザシェル12と共に内部収容空間を形成する、底板13aと下部周壁部13bを形成するクロージャシェル13とを接合してなるハウジング11により、外殻容器が形成されている。
【0028】
ディフューザシェル12とクロージャシェル13とは、溶接部19においてレーザー溶接などにより接合されており、この溶接により、1つの周壁部(上部周壁部12bと下部周壁部13bの組み合わせ)が形成されている。
【0029】
ディフューザシェル12の天板12aと上部周壁部12bとの環状接触部には、上部環状斜面14が設けられ、クロージャシェル13の底板13aと下部周壁部13bとの環状接触部には、下部環状斜面15が設けられている。
上部環状斜面14と下部環状斜面15は、いずれも天板12aと底板13aの間の距離が短くなるようにハウジングの半径方向内側から半径方向外側に向かって傾斜している。
【0030】
ディフューザシェル12には、所要数のガス排出口17が設けられ、防湿のため、アルミニウムのシールテープ60で閉塞されている。
図1では、ガス排出口17は単一の径を持つ複数のものであるが、異なる径を有する複数のものであってもよい。
【0031】
ハウジング11内には、筒状フィルタ20が配置されており、筒状フィルタ20の内側には、チューブ状部材40が配置されている。
チューブ状部材40は、チューブ状の本体部41と、本体部41と一体に形成され、一端側の開口部周縁からハウジングの半径方向に延ばされた環状平面42とを有している。
【0032】
チューブ状部材40の内部空間は第1燃焼室45となり、外部空間は第2燃焼室55となる。
第1燃焼室45内には、点火手段となる所要量の第1ガス発生剤(図示せず)および点火薬とともに点火器50が収容されている。
第1ガス発生剤は、点火器50の作動により着火燃焼して、第2ガス発生剤を着火燃焼させてエアバッグ膨張媒体となるガスを発生させるためのものであるほか、それ自体の燃焼による発生ガスもエアバッグの膨張に利用されるものである。
【0033】
チューブ状部材40の本体部41には、円周方向および軸方向のそれぞれに等間隔になるように複数の連通孔44が設けられており、第1燃焼室45と第2燃焼室55は、連通孔44により連通されている。連通孔44は、本体部41の外側からアルミニウムのシールテープで閉塞されている。
このような配置状態の連通孔44を有しているため、第1燃焼室45から生じた火炎および高温ガスは、第2燃焼室55内に均等に行き渡るので、第2燃焼室55内の第2ガス発生剤の着火性が向上される。
【0034】
チューブ状部材40は、環状平面42が天板12aに当接されている。
チューブ状部材40の他端開口部側は点火器カラー51の外周面に嵌合され、点火器50の火炎等が直接第2燃焼室55に流入しないようになっている。
【0035】
第1燃焼室45内に収容された点火器カラー51は、クロージャシェル13の底板13aに形成された中央孔から、チューブ状部材40内に挿入固定されている。カラー51には段付部52が形成されており、この段付部52と底板13aを重ね合わせるようにして嵌合されている。
【0036】
第2燃焼室55は、チューブ状部材40の外部空間に設けられており、内部には所要量の第2ガス発生剤(図示せず)が収容されている。第2燃焼室55には、第2ガス発生剤の充填量に応じた適切な容積に調整するためのリテーナを配置することもできる。
【0037】
筒状フィルタ20は、
図2、
図3(a)に示すとおり、第1環状端面21、第1環状端面21と軸方向に対向する位置にある第2環状端面22、第1環状端面21と第2環状端面22の間の筒状壁面23を有している。
筒状壁面23は、外側の筒状外壁面23aと内側の筒状内壁面23bを有している。
【0038】
第1環状端面21には、筒状外壁面23aに沿って軸方向に伸ばされた第1外側環状壁部25と筒状内壁面23bに沿って軸方向に伸ばされた第1内側環状壁部26が形成されている。
第1外側環状壁部25と第1内側環状壁部26の厚さは同じであり、いずれも第1環状端面21の厚さの約1/3である。
第1外側環状壁部25と第1内側環状壁部26の間には第1環状溝27が形成されている。第1環状溝27は、第1外側環状壁部25と第1内側環状壁部26が形成されていない第1環状端面21である。
【0039】
第2環状端面22には、筒状外壁面23aに沿って軸方向に伸ばされた第2外側環状壁部28と筒状内壁面23bに沿って軸方向に伸ばされた第2内側環状壁部29が形成されている。
第2外側環状壁部28と第2内側環状壁部29の厚さは同じであり、第2環状端面22の厚さの約1/3である。
第2外側環状壁部28と第2内側環状壁部29の間には第2環状溝30が形成されている。第2環状溝30は、第2外側環状壁部28と第2内側環状壁部29が形成されていない第2環状端面22である。
【0040】
第1外側環状壁部25と第1内側環状壁部26は、第1環状端面21(第1環状溝27)から同じ高さである。第1外側環状壁部25および第1内側環状壁部26の高さは、筒状フィルタ20の本体部分の径方向厚みと同等であることが好ましく、例えば筒状フィルタ20の全高(H)に示す第1外側環状壁部25(または第1内側環状壁部26)の高さの割合は6~18%が好ましい。
第2外側環状壁部28と第2内側環状壁部29は、第2環状端面22(第2環状溝30)から同じ高さである。第2外側環状壁部28および第2内側環状壁部29の高さは、筒状フィルタ20の本体部分の径方向厚みと同等であることが好ましく、例えば筒状フィルタ20の全高(H)に示す第2外側環状壁部28(または第2内側環状壁部29)の高さの割合は6~18%が好ましい。
ここで「筒状フィルタ20の全高(H)」は、第1外側環状壁部25(または第1内側環状壁部26)から第2外側環状壁部28(または第2内側環状壁部29)までの距離である。
【0041】
筒状フィルタ20の第1外側環状壁部25と第1内側環状壁部26は、配置対象となるガス発生器のハウジング形状に応じて、いずれか一方または両方が脆弱部として機能することができる。筒状フィルタ20の第2外側環状壁部28と第2内側環状壁部29も同様にいずれか一方または両方が脆弱部として機能することができる。
図2、
図3(a)に示す筒状フィルタ20を
図1に示すガス発生器10に使用した場合の実施形態をガス発生器10の組み立て方法と合わせて
図3(b)により説明する。
【0042】
クロージャシェル13の中央部の穴にカラー51に固定された点火器50を嵌め込んで固定する。
次に、チューブ状部材40をカラー51に嵌め込む。
次に、筒状フィルタ20を所定位置に配置する。このとき、クロージャシェル13の下部環状斜面15の内側面に筒状フィルタ20の第2外側環状壁部28が当接される。
次に、筒状フィルタ20の内側に所要量のガス発生剤を収容する。
次に、ディフューザシェル12を筒状フィルタ20とチューブ状部材40の上から被せる。このとき、ディフューザシェル12の上部環状斜面14の内側面に筒状フィルタ20の第1外側環状壁部25が当接される。
【0043】
次に、ディフューザシェル12をクロージャシェル13側に押し下げる。
これによりディフューザシェル12の上部環状斜面14に当接された筒状フィルタ20の第1外側環状壁部25は、上部環状斜面14により押されることと、第1内側環状壁部26との間に第1環状溝27が存在すること(即ち、第1環状溝27が存在することで空間が存在すること)の両方によって、ハウジング11の半径方向内側に倒れるように(折れ曲がるように)変形する。
前記変形により第1外側環状壁部25の環状外側面25a全体が上部環状斜面14に当接され、第1外側環状壁部25の内側面の先端部は第1内側環状壁部26に当接された状態となる(
図3(b))。このとき、第1内側環状壁部26は底板13a方向に押し潰されるように変形していてもよい。
【0044】
クロージャシェル13の下部環状斜面15の内側面に当接された第2外側環状壁部28は、その環状外側面28a全体が、第1外側環状壁部25と同様に
図3(b)に示すようにハウジング11の半径方向内側に倒れるように(折れ曲がるように)変形して、下部環状斜面15に当接する。このとき、第2内側環状壁部29も天板12a方向に押し潰されるように変形していてもよい。
このように筒状フィルタ20の第1外側環状壁部25と上部環状斜面14が環状面からなる大きな接触面積で密着され、筒状フィルタ20の第2外側環状壁部28と下部環状斜面15が環状面からなる大きな接触面積で密着されているため、それぞれの接触部分からの燃焼ガスのショートパス防止効果が高められている。
特に第1外側環状壁部25と第2外側環状壁部28は、それぞれの環状斜面14、15によって半径方向に変形するので、軸方向に圧縮する場合に比べて変形しやすいことと、環状斜面14、15によって変形量がコントロールしやすく、筒状フィルタの第1、第2環状端面からのガスのショートパス防止効果が高められる。
【0045】
<
図1、
図4に示すガス発生器>
筒状フィルタ20の別実施形態である筒状フィルタ20Aは、
図4(a)に示すとおり、第1環状端面121、第1環状端面121と軸方向に対向する位置にある第2環状端面122、第1環状端面121と第2環状端面122の間の筒状壁面123を有している。
筒状壁面123は、外側の筒状外壁面123aと内側の筒状内壁面123bを有している。
【0046】
第1環状端面121の半径方向外側には、筒状外壁面123aに沿って軸方向に伸ばされた第1外側環状壁部125が形成されている。
第1外側環状壁部125の厚さは、第1環状端面121の厚さの約1/3である。
さらに第1環状端面121には、第1環状端面121と第1外側環状壁部125の内径差により第1内側環状段差面126が形成されている。
【0047】
第2環状端面122の半径方向外側には、筒状外壁面123aに沿って軸方向に伸ばされた第2外側環状壁部128が形成されている。
第2外側環状壁部128の厚さは、第2環状端面122の厚さの約1/3である。
さらに第2環状端面122には、第2環状端面122と第2外側環状壁部128の内径差により第2内側環状段差面129が形成されている。
【0048】
第1外側環状壁部125の高さは、筒状フィルタ20Aの本体部の径方向厚みと同等であることが好ましい。例えば筒状フィルタ20Aの全高(H)に対する第1外側環状壁部125の高さの割合は6~18%が好ましい。
第2外側環状壁部128の高さは、筒状フィルタ20Aの本体部の径方向厚みと同等であることが好ましい。例えば筒状フィルタ20Aの全高(H)に対する第2外側環状壁部128の高さの割合は6~18%が好ましい。
ここで「筒状フィルタ20Aの全高(H)」は、第1外側環状壁部125から第2外側環状壁部128までの距離である。
【0049】
図4(a)に示す筒状フィルタ20Aを
図1に示すガス発生器10に使用した場合の実施形態をガス発生器10の組み立て方法と合わせて
図4(b)により説明する。
クロージャシェル13の中央部の穴にカラー51に固定された点火器50を嵌め込んで固定する。
次に、チューブ状部材40をカラー51に嵌め込む。
次に、筒状フィルタ20Aを所定位置に配置する。このとき、クロージャシェル13の下部環状斜面15の内側面に筒状フィルタ20Aの第2外側環状壁部128が当接される。
次に、筒状フィルタ20Aの内側に所要量のガス発生剤を収容する。
次に、ディフューザシェル12を筒状フィルタ20Aとチューブ状部材40の上から被せる。このとき、ディフューザシェル12の上部環状斜面14の内側面に筒状フィルタ20Aの第1外側環状壁部125が当接される。
【0050】
次に、ディフューザシェル12をクロージャシェル13側に押し下げる。
これによりディフューザシェル12の上部環状斜面14に当接された筒状フィルタ20Aの第1外側環状壁部125は、上部環状斜面14により押されることと、第1内側環状段差面126により半径方向内側に空間が存在することの両方によって、ハウジング11の半径方向内側に倒れるように(折れ曲がるように)変形する。
前記変形により第1外側環状壁部125の環状外側面125a全体が上部環状斜面14の内側面に密着された状態となる(
図4(b))。
【0051】
クロージャシェル13の下部環状斜面15の内側面に当接された第2外側環状壁部128は、第1外側環状壁部125と同様に
図4(b)に示すようにその環状外側面128a全体がハウジング11の半径方向内側に倒れるように(折れ曲がるように)変形して、下部環状面15に当接する。
前記変形により第2外側環状壁部128の環状外側面128aは下部環状斜面15の内側面に密着された状態となる。
このように筒状フィルタ20Aの第1外側環状壁部125と上部環状斜面14が環状面からなる大きな接触面積で密着され、筒状フィルタ20Aの第2外側環状壁部128と下部環状斜面15が環状面からなる大きな接触面積で密着されているため、それぞれの接触部分からの燃焼ガスのショートパス防止効果が高められ、
図2、
図3の実施例と同様な効果が得られる。
【0052】
<
図1、
図5に示すガス発生器>
筒状フィルタ20の別実施形態である筒状フィルタ20Bは、
図5(a)に示すとおり、第1環状端面221、第1環状端面221と軸方向に対向する位置にある第2環状端面222、第1環状端面221と第2環状端面222の間の筒状壁面223を有している。
筒状壁面223は、外側の筒状外壁面223aと内側の筒状内壁面223bを有している。
【0053】
第1環状端面221の筒状外壁面223aから厚さ方向に間隔をおいて軸方向に伸ばされて第1中間環状壁部225が形成されている。第1中間環状壁部225の厚さは、第1環状端面221の厚さの約1/3である。
さらに第1環状端面221には、第1環状端面221と第1中間環状壁部225の外径差により第1外側環状段差面226が形成され、第1環状端面221と第1中間環状壁部225の内径差により第1内側環状段差面227が形成されている。
図5(a)に示す実施形態では、第1中間環状壁部225、第1外側環状段差面226、第1外側環状段差面226と筒状外壁面223aの境界部の第1外側環状角部228が脆弱部として機能する。
【0054】
第1中間環状壁部225の厚さの中間位置から筒状外壁面223aまでの距離(L1)と第1中間環状壁部225の厚さの中間位置から筒状内壁面223bまでの距離(L2)は、L1<L2の関係を満たしているものである(
図5(b))。L2/L1は1.5~3の範囲が好ましい。
【0055】
第2環状端面222の筒状外壁面223aから厚さ方向に間隔をおいて軸方向に伸ばされて第2中間環状壁部230が形成されている。第2中間環状壁部230の厚さは、第2環状端面222の厚さの約1/3である。
さらに第2環状端面222には、第2環状端面222と第2中間環状壁部230の外径差により第2外側環状段差面231が形成され、第2環状端面222と第2中間環状壁部230の内径差により第2内側環状段差面232が形成されている。
図5(a)に示す実施形態では、第2中間環状壁部230、第2外側環状段差面231、第2外側環状段差面231と筒状外壁面223aの境界部の第2外側環状角部233が脆弱部として機能する。
【0056】
第2中間環状壁部230の厚さの中間位置から筒状外壁面223aまでの距離(L11)と第2中間環状壁部230の厚さの中間位置から筒状内壁面223bまでの距離(L12)は、L11<L12の関係を満たしているものである(
図5(b))。L12/L1は1.5~3の範囲が好ましい。
【0057】
第1中間環状壁部225の高さは、筒状フィルタ20Bの本体部の径方向厚みと同等であることが好ましい。例えば筒状フィルタ20Bの全高(H)に対する第1中間環状壁部225の高さの割合は6~18%が好ましい。
第2中間環状壁部230の高さは、筒状フィルタ20Bの本体部の径方向厚みと同等であることが好ましい。例えば筒状フィルタ20Bの全高(H)に対する第2中間環状壁部230の高さの割合は6~18%が好ましい。
ここで「筒状フィルタ20Bの全高(H)」は、第1中間環状壁部225から第2中間環状壁部230までの距離である。
【0058】
図5(a)に示す筒状フィルタ20Bを
図1に示すガス発生器10に使用した場合の実施形態をガス発生器10の組み立て方法と合わせて
図5(c)により説明する。
クロージャシェル13の中央部の穴にカラー51に固定された点火器50を嵌め込んで固定する。
次に、チューブ状部材40をカラー51に嵌め込む。
次に、筒状フィルタ20Bを所定位置に配置する。このとき、クロージャシェル13の下部環状斜面15の内側面に筒状フィルタ20Bの第2中間環状壁部228が当接される。
次に、筒状フィルタ20Bの内側に所要量のガス発生剤を収容する。
次に、ディフューザシェル12を筒状フィルタ20Bとチューブ状部材40の上から被せる。このとき、ディフューザシェル12の上部環状斜面14の内側面に筒状フィルタ20Bの第1中間環状壁部225が当接される。
【0059】
次に、ディフューザシェル12をクロージャシェル13側に押し下げる。
これによりディフューザシェル12の上部環状斜面14に当接された筒状フィルタ20Bの第1中間環状壁部225は、上部環状斜面14により押されることと、第1内側環状段差面227により半径方向内側に空間が存在することの両方によって、ハウジング11の半径方向内側に倒れるように(折れ曲がるように)変形する。このとき、第1外側環状角部228と第1外側環状段差面226も半径方向内側に押し潰されて変形する。
前記変形により第1中間環状壁部225の外側面225aと押し潰された第1外側環状角部228、第1外側環状段差面226は、上部環状斜面14に環状面で密着された状態となる。
【0060】
クロージャシェル13の下部環状斜面15の内側面に当接された第2中間環状壁部230は、下部環状斜面15により押されることと、第2内側環状段差面232により半径方向内側に空間が存在することの両方によって、ハウジング11の半径方向内側に倒れるように(折れ曲がるように)変形する。このとき、第2外側環状角部233と第2外側環状段差面231も半径方向内側に押し潰されて変形する。
前記変形により第2中間環状壁部230の外側面230aと押し潰された第2外側環状角部233と第2外側環状段差面231は、
図5(c)と同様に下部環状斜面15に密着された状態となる。
このように筒状フィルタ20Bの第1中間環状壁部225の環状外側面225a、押し潰された第1外側環状角部228、第1外側環状段差面226と上部環状斜面14が環状面からなる大きな接触面積で密着され、筒状フィルタ20Bの第2中間環状壁部230の環状外側面230a、押し潰された第2外側環状角部233、第2外側環状段差面231は、下部環状斜面15に環状面で密着された状態となる。このため、前記密着部分からの燃焼ガスのショートパス防止効果が高められている。
【0061】
<
図6に示すガス発生器>
図6に示すガス発生器10Aは、
図1のガス発生器10とはハウジング11の天板70の形状が異なるほかは同じものである。
天板70は、外側環状天板部71、内側円形天板部73、外側環状天板部71と内側円形天板部73の間の中間環状傾斜天板部72からなるものである。
中間環状傾斜天板部72は、半径方向外側から半径方向内側に向かって、天板70と底板13aとの間の距離が短くなるように傾斜されている。
中間環状傾斜天板部72の傾斜方向は、
図1に示す上部環状斜面14とは傾斜の向きが逆になっている。
図6に示すガス発生器10Aでは、
図3に示す筒状フィルタ20、
図7(a)に示す筒状フィルタ20Cおよび
図7(b)に示す筒状フィルタ20Dのいずれかを使用する。
【0062】
<
図3(a)に示す筒状フィルタを使用した
図6に示すガス発生器>
図3(a)に示す筒状フィルタ20を
図6に示すガス発生器10Aに使用した場合の実施形態をガス発生器10Aの組み立て方法と合わせて説明する。
クロージャシェル13の中央部の穴にカラー51に固定された点火器50を嵌め込んで固定する。
次に、チューブ状部材40をカラー51に嵌め込む。
次に、筒状フィルタ20を所定位置に配置する。このとき、クロージャシェル13の下部環状斜面15の内側面に筒状フィルタ20の第2外側環状壁部28が当接される。
次に、筒状フィルタ20の内側に所要量のガス発生剤を収容する。
次に、ディフューザシェル12を筒状フィルタ20とチューブ状部材40の上から被せる。このとき、ディフューザシェル12の中間環状傾斜天板部72の内側面に筒状フィルタ20の第1内側環状壁部26が当接される。
【0063】
次に、ディフューザシェル12をクロージャシェル13側に押し下げる。
これによりディフューザシェル12の中間環状傾斜天板部72に当接された筒状フィルタ20の第1内側環状壁部26は、中間環状傾斜天板部72により押されることと、第1外側環状壁部25との間に第1環状溝27が存在すること(即ち、第1環状溝27が存在することで空間が存在すること)の両方によって、ハウジング11の半径方向外側に倒れるように(折れ曲がるように)変形する。
前記変形により第1内側環状壁部26の半径方向内側面(環状内側面)26aは中間環状傾斜天板部72に密着され、第1内側環状壁部26の先端部は第1外側環状壁部25に当接された状態となる。このとき、第1外側環状壁部25は底板13a方向に押し潰されるように変形していてもよい。
【0064】
クロージャシェル13の下部環状斜面15の内側面に当接された第2外側環状壁部28は、
図3(b)に示す実施形態と同様にハウジング11の半径方向内側に倒れるように(折れ曲がるように)変形する。
前記変形により第2外側環状壁部28の半径方向外側面(環状外側面)28aは下部環状斜面15に密着され、第2外側環状壁部28の先端部は第2内側環状壁部29に当接された状態となる。このとき、第2内側環状壁部29も底板13a方向に押し潰されるように変形していてもよい。
このように筒状フィルタ20の第1内側環状壁部26と中間環状傾斜天板部72が環状面からなる大きな接触面積で密着され、筒状フィルタ20の第2外側環状壁部28と下部環状斜面15が環状面からなる大きな接触面積で密着されているため、それぞれの接触部分からの燃焼ガスのショートパス防止効果が高められている。
【0065】
<
図7(a)に示す筒状フィルタを使用した
図6に示すガス発生器>
図7(a)に示す筒状フィルタ20Cを
図6に示すガス発生器10Aに使用した場合の実施形態をガス発生器10Aの組み立て方法と合わせて説明する。
【0066】
図7(a)に示す筒状フィルタ20Cについて説明する。
筒状フィルタ20Cは、
図7に示すとおり、第1環状端面321、第1環状端面321と軸方向に対向する位置にある第2環状端面322、第1環状端面321と第2環状端面322の間の筒状壁面323を有している。
筒状壁面323は、外側の筒状外壁面323aと内側の筒状内壁面323bを有している。
【0067】
第1環状端面321の半径方向内側には、筒状内壁面323bに沿って軸方向に伸ばされた第1内側環状壁部325が形成されている。
第1内側環状壁部325の厚さは、第1環状端面321の厚さの約1/3である。
さらに第1環状端面321には、第1環状端面321と第1内側環状壁部325の内径差により第1外側環状段差面326が形成されている。
【0068】
第2環状端面322の半径方向外側には、筒状外壁面323aに沿って軸方向に伸ばされた第2外側環状壁部330が形成されている。
第2外側環状壁部330の厚さは、第2環状端面322の厚さの約1/3である。
さらに第2環状端面322には、第2環状端面322と第2外側環状壁部330の内径差により第2内側環状段差面331が形成されている。
【0069】
第1内側環状壁部325の高さは、筒状フィルタ20Cの本体部の径方向厚みと同等であることが好ましい。例えば筒状フィルタ20Cの全高に対する第1内側環状壁部325の高さの割合は6~18%が好ましい。
第2内側環状壁部330の高さは、筒状フィルタ20Cの本体部の径方向厚みと同等であることが好ましい。例えば筒状フィルタ20Cの全高に対する第2内側環状壁部330の高さの割合は6~18%が好ましい。
ここで「筒状フィルタ20Cの全高」は、第1内側環状壁部325から第2内側環状壁部330までの距離であり、実質的に
図4(a)のHと同じ距離となる。
【0070】
図7(a)に示す筒状フィルタ20Cを
図6に示すガス発生器10Aに使用した場合の実施形態をガス発生器10Aの組み立て方法と合わせて
図6、
図7により説明する。
クロージャシェル13の中央部の穴にカラー51に固定された点火器50を嵌め込んで固定する。
次に、チューブ状部材40をカラー51に嵌め込む。
次に、筒状フィルタ20Cを所定位置に配置する。このとき、クロージャシェル13の下部環状斜面15の内側面に筒状フィルタ20Cの第2外側環状壁部330が当接される。
次に、筒状フィルタ20Cの内側に所要量のガス発生剤を収容する。
次に、ディフューザシェル12を筒状フィルタ20Cとチューブ状部材40の上から被せる。このとき、ディフューザシェル12の中間環状傾斜天板部72の内側面に筒状フィルタ20Cの第1内側環状壁部325が当接される。
【0071】
次に、ディフューザシェル12をクロージャシェル13側に押し下げる。
これによりディフューザシェル12の中間環状傾斜天板部72に当接された筒状フィルタ20の第1内側環状壁部325は、中間環状傾斜天板部72により押されることと、第1外側環状段差面326との間に空間が存在することの両方によって、ハウジング11の半径方向外側に倒れるように(折れ曲がるように)変形する。
前記変形により第1内側環状壁部325の環状内側面325aは上部環状斜面14の内側面に密着された状態となる。
【0072】
クロージャシェル13の下部環状斜面15の内側面に当接された第2外側環状壁部330は、
図4(b)に示すようにハウジング11の半径方向内側に倒れるように(折れ曲がるように)変形する。
前記変形により第2外側環状壁部330の環状外側面330aは下部環状斜面15の内側面に密着された状態となる。
このように筒状フィルタ20Cの第1内側環状壁部325と中間環状傾斜天板部72が環状面からなる大きな接触面積で密着され、筒状フィルタ20Cの第2外側環状壁部330と下部環状斜面15が環状面からなる大きな接触面積で密着されているため、それぞれの接触部分からの燃焼ガスのショートパス防止効果が高められている。
【0073】
<
図7(b)に示す筒状フィルタを使用した
図6に示すガス発生器>
図7(b)に示す筒状フィルタ20Dを
図6に示すガス発生器10Aに使用した場合の実施形態をガス発生器10Aの組み立て方法と合わせて説明する。
【0074】
図7(b)に示す筒状フィルタ20Dについて説明する。
筒状フィルタ20Dは、
図7(b)に示すとおり、第1環状端面421、第1環状端面421と軸方向に対向する位置にある第2環状端面422、第1環状端面421と第2環状端面422の間の筒状壁面423を有している。
筒状壁面423は、外側の筒状外壁面423aと内側の筒状内壁面423bを有している。
【0075】
第1環状端面421の筒状内壁面423bから厚さ方向に間隔をおいて軸方向に伸ばされて第1中間環状壁部425が形成されている。第1中間環状壁部425の厚さは、第1環状端面421の厚さの約1/3である。
さらに第1環状端面421には、第1環状端面421と第1中間環状壁部425の外径差により第1外側環状段差面426が形成され、第1環状端面421と第1中間環状壁部425の内径差により第1内側環状段差面427が形成されている。
第1中間環状壁部425、第1内側環状段差面427、第1内側環状段差面427と筒状内壁面423bの境界部の第1内側環状角部428が脆弱部として機能する。
【0076】
第1中間環状壁部425の厚さの中間位置から筒状外壁面423aまでの距離(L21)と第1中間環状壁部425の厚さの中間位置から筒状内壁面423bまでの距離(L22)は、L21<L22の関係を満たしているものである。L22/L21は2~4の範囲が好ましい。L21は、
図5(b)のL1、L11に相当し、L22は、
図5(b)のL2、L12に相当するものである。
【0077】
第2環状端面422の筒状外壁面423aから厚さ方向に間隔をおいて軸方向に伸ばされて第2中間環状壁部430が形成されている。第2中間環状壁部430の厚さは、第2環状端面422の厚さの約1/3である。
さらに第2環状端面422には、第2環状端面422と第2中間環状壁部430の外径差により第2外側環状段差面431が形成され、第2環状端面422と第2中間環状壁部430の内径差により第2内側環状段差面432が形成されている。
図7(a)に示す実施形態では、第2中間環状壁部430、第2外側環状段差面431、第2外側環状段差面431と筒状外壁面423aの境界部の第2外側環状角部433が脆弱部として機能する。
【0078】
第2中間環状壁部430の厚さの中間位置から筒状外壁面423aまでの距離(L31)と第2中間環状壁部430の厚さの中間位置から筒状内壁面423bまでの距離(L32)は、L31>L32の関係を満たしているものである。L31/L32は2~4の範囲が好ましい。L31は、
図5(b)のL2、L12に相当し、L32は、
図5(b)のL1、L11に相当するものである。
【0079】
第1中間環状壁部425の高さは、筒状フィルタ20Dの本体部の径方向厚みと同等であることが好ましい。例えば筒状フィルタ20Dの全高(H)中の第1中間環状壁部425の高さの割合は6~18%が好ましい。
第2中間環状壁部430の高さは、筒状フィルタ20Dの本体部の径方向厚みと同等であることが好ましい。例えば筒状フィルタ20Dの全高(H)中の第2中間環状壁部430の高さの割合は6~18%が好ましい。
ここで「筒状フィルタ20Dの全高(H)」は、第1中間環状壁部425から第2中間環状壁部430までの距離である。前記Hは
図5(a)のHに相当するものである。
【0080】
図7(b)に示す筒状フィルタ20Dを
図6に示すガス発生器10Aに使用した場合の実施形態をガス発生器10Aの組み立て方法と合わせて
図6、
図7により説明する。
クロージャシェル13の中央部の穴にカラー51に固定された点火器50を嵌め込んで固定する。
次に、チューブ状部材40をカラー51に嵌め込む。
次に、筒状フィルタ20Dを所定位置に配置する。このとき、クロージャシェル13の下部環状斜面15の内側面に筒状フィルタ20Dの第2中間環状壁部430が当接される。
次に、筒状フィルタ20Dの内側に所要量のガス発生剤を収容する。
次に、ディフューザシェル12を筒状フィルタ20Dとチューブ状部材40の上から被せる。このとき、ディフューザシェル12の中間環状傾斜天板部72の内側面に筒状フィルタ20Dの第1中間環状壁部425が当接される。
【0081】
次に、ディフューザシェル12をクロージャシェル13側に押し下げる。
これによりディフューザシェル12の上部環状斜面14に当接された筒状フィルタ20Dの第1中間環状壁部425は、中間環状傾斜天板部72により押されることと、第1外側環状段差面426により半径方向外側に空間が存在することの両方によって、ハウジング11の半径方向外側に倒れるように(折れ曲がるように)変形する。このとき、第1内側環状角部428と第1内側環状段差面427も半径方向内側に押し潰されて変形する。
前記変形により第1中間環状壁部425の環状内側面425aと押し潰された第1外側環状角部428、第1外側環状段差面426は、上部環状斜面14に環状面で密着された状態となる。
【0082】
クロージャシェル13の下部環状斜面15の内側面に当接された第2中間環状壁部430は、下部環状斜面15により押されることと、第2内側環状段差面432により空間が存在することの両方によって、ハウジング11の半径方向内側に倒れるように(折れ曲がるように)変形する。このとき、第2外側環状角部433と第2外側環状段差面431も半径方向内側に押し潰されて変形する。
前記変形により第2中間環状壁部430の環状外側面430aと押し潰された第2外側環状角部433と第2外側環状段差面431は、
図5(c)と同様の変形状態で下部環状斜面15に密着された状態となる。
このように筒状フィルタ20Dの第1中間環状壁部425の環状外側面425a、押し潰された第1内側環状角部428と、第1内側環状段差面427と中間環状傾斜天板部72が環状面からなる大きな接触面積で密着され、筒状フィルタ20Dの第2中間環状壁部430の環状外側面430a、押し潰された第2外側環状角部433、第2外側環状段差面431は下部環状斜面15に環状面からなる大きな接触面積で密着された状態となる。このため、前記密着部分からの燃焼ガスのショートパス防止効果が高められている。
【0083】
<筒状フィルタの製造方法>
図8(a)~(c)により筒状フィルタの製造方法を説明する。
本発明の筒状フィルタは、部分的に幅が増減された長尺状のフィルタ材を巻き込んで行き、巻き始めと巻き終わりを溶接固定して製造することができる。
長尺状のフィルタ材は、均一厚さのものでもよいし、部分的に厚さが異なるものでもよい。
【0084】
図8(a)は、
図3(a)に示す筒状フィルタ20の製造方法である。
フィルタ材80が最内層となり、フィルタ材81が中間層、フィルタ材82が最外層になるように巻き込んでいく。なお、フィルタ材80~82の長さ比は、実際の製造に使用する長さ比を示すものではない。
フィルタ材80~フィルタ材82の幅方向の第1端側(図面の上側)が順に第1内側環状壁部26、第1環状溝27、第1外側環状壁部25となり、フィルタ材80~フィルタ材82の幅方向の第2端側(図面の下側)が順に第2内側環状壁部29、第2環状溝30、第2外側環状壁部28となる。
【0085】
図8(b)は、
図4(a)に示す筒状フィルタ20Aの製造方法である。
フィルタ材85が最内層から中間層となり、フィルタ材86が最外層になるように巻き込んでいく。なお、フィルタ材85、86の長さ比は、実際の製造に使用する長さ比を示すものではない。
フィルタ材85~フィルタ材86の幅方向の第1端側(図面の上側)が順に第1内側環状段差面126、第1外側環状壁部125となり、フィルタ材85~フィルタ材86の幅方向の第2端側(図面の下側)が順に第2内側環状段差面129、第2外側環状壁部128となる。
【0086】
図8(c)は、
図5(a)に示す筒状フィルタ20Bの製造方法である。
フィルタ材90が最内層側となり、フィルタ材91が中間層になり、フィルタ材92が最外層になるように巻き込んでいく。なお、フィルタ材90~92の長さ比は、実際の製造に使用する長さ比を示すものではない。
フィルタ材90~フィルタ材92の幅方向の第1端側(図面の上側)が順に第1内側環状段差面227、第1中間環状壁部225、第1外側環状段差面226となり、フィルタ材90~フィルタ材92の幅方向の第2端側(図面の下側)が順に第2内側環状段差面232、第2中間環状壁部230、第2外側環状段差面231となる。
図7(a)、(b)に示す筒状フィルタ20C、20Dも上記の製造方法に準じて、フィルタ材の幅や厚さを調整して製造することができる。
【0087】
本発明のエアバッグ装置は、
図1、
図6に示すガス発生器を周知のエアバッグ装置に組み込んだものであり、具体的には、ガス発生器と、衝撃を感知してガス発生器を作動させる衝撃センサと、ガス発生器で発生するガスを導入して膨張するエアバッグと、前記エアバッグを収容するモジュールケースとを含むものである。
次に、
図1により、本発明のガス発生器を自動車のエアバッグ装置に組み込んだ場合の動作を説明する。
【0088】
自動車が衝突したとき、衝撃センサからの指令を受け、点火器50が作動して、第1燃焼室45内の第1ガス発生剤を着火燃焼させ、火炎および高温ガスを発生させる。火炎および高温ガスは、チューブ状部材40に設けられた複数の連通孔44(連通孔44を閉塞しているシールテープは破裂される)から第2燃焼室55内に噴射され、第2ガス発生剤を着火燃焼させ、エアバッグ膨張媒体となるガスを発生させる。
【0089】
このとき、
図1で示すガス発生器10は、筒状フィルタ20の第1環状端面21と上部環状斜面14が密着し、筒状フィルタ20の第2環状端面22と下部環状斜面15が密着している。
このため、筒状フィルタ20とハウジング11との接触部分からのショートパス防止効果が充分に発揮される。
このようなショートパス防止効果が発現されるため、発生ガスは筒状フィルタ20で濾過および冷却された後、シールテープ60を破ってガス排出口17から排出され、エアバを膨張させる。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明の筒状フィルタは、車両に搭載するエアバッグ装置用のガス発生器などの火工装置のフィルタとして利用することができる。
【符号の説明】
【0091】
10、10A ガス発生器
20、20A~20D 筒状フィルタ