IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社LIXILグループの特許一覧

<>
  • 特許-水栓装置 図1
  • 特許-水栓装置 図2
  • 特許-水栓装置 図3
  • 特許-水栓装置 図4
  • 特許-水栓装置 図5
  • 特許-水栓装置 図6
  • 特許-水栓装置 図7
  • 特許-水栓装置 図8
  • 特許-水栓装置 図9
  • 特許-水栓装置 図10
  • 特許-水栓装置 図11
  • 特許-水栓装置 図12
  • 特許-水栓装置 図13
  • 特許-水栓装置 図14
  • 特許-水栓装置 図15
  • 特許-水栓装置 図16
  • 特許-水栓装置 図17
  • 特許-水栓装置 図18
  • 特許-水栓装置 図19
  • 特許-水栓装置 図20
  • 特許-水栓装置 図21
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-15
(45)【発行日】2022-06-23
(54)【発明の名称】水栓装置
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/042 20060101AFI20220616BHJP
   F16K 3/08 20060101ALI20220616BHJP
   F16K 3/316 20060101ALI20220616BHJP
【FI】
E03C1/042 B
F16K3/08
F16K3/316
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018063893
(22)【出願日】2018-03-29
(65)【公開番号】P2019173439
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2021-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】藤井 建吾
(72)【発明者】
【氏名】田嶋 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】吉谷 亮佑
(72)【発明者】
【氏名】勝田 美樹
(72)【発明者】
【氏名】近藤 隆弘
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-224951(JP,A)
【文献】実開平01-109664(JP,U)
【文献】実開平02-087179(JP,U)
【文献】特開2000-320699(JP,A)
【文献】特開2011-001762(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/00-1/10
F16K 3/00-3/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定弁体と、
前記固定弁体に着座することで前記固定弁体との間をシールする回転弁体と、
前記回転弁体との間で相互に回転を伝達可能に設けられる回転軸と、を備え、
前記回転軸及び前記回転弁体は、前記回転弁体の回転中心線に対して前記回転軸を任意の方向に傾斜可能に設けられる水栓装置。
【請求項2】
前記回転弁体は、前記固定弁体との間をシールするシール部材と、前記シール部材が取り付けられる弁本体部材と、を有し、
前記回転軸は、前記回転軸の一部が前記シール部材と前記弁本体部材の間に配置されることで、前記回転弁体に対する前記回転弁体の回転軸方向での位置が保持される請求項1に記載の水栓装置。
【請求項3】
前記回転軸は、軸部と、前記回転弁体との間で相互に回転を伝達するための回転伝達部とを有し、
前記回転伝達部は、前記軸部から前記回転弁体の径方向外側に突き出る請求項1または2に記載の水栓装置。
【請求項4】
前記回転軸の一端面には凸曲面状の曲面部が設けられ、
前記回転弁体は、前記曲面部が座する凹曲面状の座面部を有する請求項1から3のいずれかに記載の水栓装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水栓装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、水栓本体の内部に設けられる隔壁体が構成する固定弁体と、固定弁体に対して回転可能な回転弁体とを備えた水栓装置が記載されている。この回転弁体には、回転弁体と一体的に回転可能な回転軸が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-044216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
回転弁体が着座する固定弁体と回転弁体との間でシール性の確保が求められる場合がある。また、回転軸の周囲の部材の寸法誤差等の影響によって、回転軸の中心軸線の位置が設計上の目標位置から傾斜するように位置ずれ場合がある。この場合に、特許文献1の構造のもとでは、回転軸の目標位置からの位置ずれに追従して回転弁体が固定弁体から離れてしまう恐れがあり、回転弁体と固定弁体との間でのシール性の低下が懸念される。
【0005】
本発明のある態様は、このような課題に鑑みてなされ、その目的の1つは、回転弁体と固定弁体との間で安定したシール性を得られる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述の課題を解決するための本発明の第1態様は水栓装置である。第1態様の水栓装置は、固定弁体と、前記固定弁体に着座することで前記固定弁体との間をシールする回転弁体と、前記回転弁体との間で相互に回転を伝達可能に設けられる回転軸と、を備え、前記回転軸は、前記回転弁体の回転中心線に対して任意の方向に傾斜可能に設けられる。
【0007】
第1態様によれば、回転軸の中心軸線の位置が設計上の目標位置から傾斜するように位置ずれしたとき、その位置ずれに追従して、回転弁体に対する角度を変更するように回転軸が傾斜できる。これに伴い、回転軸の位置の変化に追従して回転弁体が固定弁体から離れてしまう事態を避けられ、回転弁体と固定弁体との間で安定したシール性を得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態の水栓装置を示す斜視図である。
図2】第1実施形態の給水路の一部を模式的に示す説明図である。
図3】第1実施形態の水栓装置の一部の側面断面図である。
図4図3の一部の拡大図である。
図5図4のA-A線断面図である。
図6図5の回転弁体及び回転軸のB-B線断面図である。
図7図5の回転弁体及び回転軸のC-C線断面図である。
図8】第1実施形態の回転弁体及び回転軸の斜視図である。
図9】第1実施形態の回転弁体及び回転軸の分解図である。
図10図6の矢視Aから回転弁体及び回転軸を見た図である。
図11図10のD-D線断面図である。
図12】第1実施形態の回転軸の基端側端部の斜視図である。
図13図13(a)は、図6の一部の拡大図であり、図13(b)は、図7の一部の拡大図である。
図14図13(a)のE-E線断面図である。
図15】第1実施形態の回転ハンドルの動作の説明図である。
図16】第1実施形態の押しボタンの動作の説明図である。
図17】回転弁体と回転軸の中心軸線を模式的に示す図である。
図18】第1実施形態の回転弁体と回転軸を模式的に示す他の図である。
図19】第2実施形態の回転弁体と回転軸の一部を示す断面図である。
図20】第3実施形態の回転弁体と回転軸の一部を示す断面図である。
図21】第3実施形態の回転軸の一部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態、変形例では、同一の構成要素に同一の符号を付し、重複する説明を省略する。各図面では、説明の便宜のため、構成要素の一部を適宜省略したり、構成要素の寸法を適宜拡大、縮小して示す。図面は符号の向きに合わせて見るものとする。本明細書での「接触」とは、特に明示がない限り、言及している二者が直接的に接触する場合の他に、他の部材を介して間接的に接触する場合も含む。
【0010】
(第1の実施の形態)
図1は、第1実施形態の水栓装置12を示す斜視図である。水栓装置12は、水栓装置12の構成部品を収容する水栓本体14と、下向きに水を吐き出し可能な吐水部16とを備える。水栓装置12は、ユーザにより操作される操作部材20と、操作部材20に対する操作を通じて吐水部16から吐き出される水の流量を調整可能な弁ユニット22と、を備える。本実施形態において、操作部材20はシングルレバーであり、弁ユニット22は操作部材20に対する操作を通じて水の温度も調整可能である。
【0011】
図2は、水栓本体14の内部に形成される給水路30の一部を模式的に示す説明図である。給水路30は、水源側から弁ユニット22を通して送られる水を吐水部16に供給するためのものである。給水路30は、第1水路としての上流側水路30A、30Bと、第1水路とは別の第2水路としての下流側水路32A、32Bとを有する。上流側水路30A、30Bには、弁ユニット22により流量の調整された水が供給され、下流側水路32A、32Bには、上流側水路30A、30Bから水が供給される。
【0012】
本実施形態の上流側水路30A、30Bには、下流側水路32A、32Bに原水を供給するための原水水路30A(第1上流側水路)と、下流側水路32A、32Bに改質水を供給するための改質水水路30B(第2上流側水路)とが含まれる。改質水は、カートリッジ34内の改質材により原水を改質することで生成される。本明細書での「改質」とは、物理変化や化学変化を経て、特定の成分を原水から除去又は原水に付与することをいう。
【0013】
本実施形態の下流側水路32A、32Bには、吐水部16に水を供給するためのストレート用水路32A(第1下流側水路)と、吐水部16に水を供給するためのシャワー用水路32B(第2下流側水路)とが含まれる。吐水部16は、ストレート用水路32Aから供給される水を受けてストレート吐水で水を吐き出す。吐水部16は、シャワー用水路32Bから供給される水を受けてシャワー吐水で水を吐き出す。
【0014】
給水路30には、上流側水路30A、30Bと下流側水路32A、32Bの間に回転弁体36が設けられる。本実施形態の回転弁体36は、複数の上流側水路30A、30Bのなかからいずれかの上流側水路30A、30Bに、水が流れる通水経路を切り替え可能である。また、本実施形態の回転弁体36は、複数の下流側水路32A、32Bのなかからいずれかの下流側水路32A、32Bに、水が流れる通水経路を切り替え可能である。
【0015】
図3は、水栓装置12の一部の側面断面図である。水栓装置12は、固定弁体50と、固定弁体50に着座することで固定弁体50との間をシールする回転弁体36と、回転弁体36との間で相互に回転を伝達可能に設けられる回転軸64と、固定弁体50に近づく方向に回転弁体36を付勢する第1付勢部材66と、を備える。
【0016】
回転弁体36は、固定弁体50に着座した状態で回転軸64から回転力を受けると、固定弁体50に着座した状態で回転中心線Lrを中心として回転する。以下、この回転中心線Lrに沿った方向を回転弁体36の回転軸方向であるX方向という。また、X方向の一方側(図3の右側)を基端側、X方向の他方側(図3の左側)を先端側という。また、この回転中心線Lrを中心とする円の円周方向、半径方向を単に「周方向」、「径方向」という。
【0017】
本実施形態の水栓本体14は、先端側部分に吐水部16が設けられたスパウト部18を有する。水栓本体14は、スパウト部18を構成する外部本体部品43及び内部本体部品44を有する。本実施形態の外部本体部品43は、第1筒状部43aと、第1筒状部43aの外周部から突出する第2筒状部43bとを有する。第2筒状部43bには吐水部16が設けられる。内部本体部品44は、外部本体部品43の第1筒状部43aに収容される。内部本体部品44は、基端側の筒状の第1本体部材46と、先端側の第2本体部材48とを有する。
【0018】
第2本体部材48は、基端側の弁体収容部48a(第1収容部)と、先端側の機構収容部48b(第2収容部)と、弁体収容部48aと機構収容部48bの間に設けられる水路形成部48cとを有する。弁体収容部48aは、基端側に向かって開くとともに先端側に底部を有する有底筒状をなす。機構収容部48bは、先端側に向かって開くとともに基端側に底部を有する有底筒状をなす。水路形成部48cには、水路形成部48cをX方向に貫通する貫通孔48dと、前述の複数の下流側水路32A、32Bとが形成される。本図では、単数の下流側水路32Aの通水方向のみ示す。
【0019】
水栓装置12は、回転弁体36を回転させるときに操作される操作部品38、40を備える。本実施形態の操作部品38、40には、回転操作を受けて回転可能な回転ハンドル38と、押圧操作を受けてX方向に可動な押しボタン40とが含まれる。
【0020】
水栓装置12は、操作部品38、40の動きに連動して、回転弁体36を作動させることが可能な連動機構60を備える。本実施形態の連動機構60にはスラストロック機構が組み込まれる。本実施形態の連動機構60は、水栓本体14の機構収容部48bに収容され、水栓本体14に回転可能に支持される筒状の第1受け部材68と、第1受け部材68と一体的に回転可能な回転子70とを有する。
【0021】
図4は、図3の一部の拡大図である。固定弁体50は、水栓本体14の内部で給水路30の途中に設けられる。本実施形態の固定弁体50は、第2本体部材48の弁体収容部48aの底面部が構成する。本実施形態の固定弁体50の回転弁体36が着座する座面は平坦面である。
【0022】
回転弁体36は、水栓本体14の弁体収容部48aに収容される。回転弁体36は、固定弁体50とX方向に対向する弁体対向部36aと、弁体対向部36aから基端側に延びる弁軸部36bとを有する。本実施形態の弁軸部36bは、基端側に向かって開くとともに先端側に底部を有する有底筒状をなす。弁軸部36bの基端側端部には水路形成部材としてのカートリッジ34に接続される接続部59が設けられる。
【0023】
水栓本体14の内部には、固定弁体50に対してX方向に対向する位置に、前述の第1水路としての上流側水路30A、30Bの一部が形成される。本実施形態の上流側水路30A、30Bの一部には、回転弁体36の弁軸部36bの外部に形成される原水水路30Aの一部となる第1外部水路55と、回転弁体36の弁軸部36bの内部に形成される改質水水路30Bの一部となる第1内部水路57と、が含まれる。第1外部水路55は、水栓本体14とカートリッジ34の間に設けられる第2外部水路62に連通し、第1内部水路57は、カートリッジ34の内部に設けられる第2内部水路69に連通する。
【0024】
図5は、図4のA-A線断面図である。本図では回転弁体36のハッチングを省略する。固定弁体50には、弁孔56A、56Bが形成される。弁孔56A、56Bは、前述の第1水路としての下流側水路32A、32Bに連通する。本実施形態の弁孔56A、56Bには、ストレート用水路32Aに連通するストレート用弁孔56A(第1弁孔)と、シャワー用水路32Bに連通するシャワー用弁孔56B(第2弁孔)とが含まれる。
【0025】
図6は、図5の回転弁体36及び回転軸64のB-B線断面図である。図7は、図5の回転弁体36及び回転軸64のC-C線断面図である。本実施形態の回転弁体36の弁体対向部36aは円盤状をなす。弁体対向部36aには、複数の上流側水路30A、30Bに個別に連通する複数種の通水孔58A、58Bが形成される。複数種の通水孔58A、58Bには、原水水路30Aに連通する原水通水孔58A(第1通水孔)と、改質水水路30Bに連通する改質水通水孔58B(第2通水孔)とが含まれる。複数種の通水孔58A、58Bは、所定の並び順で周方向に並べられる。本実施形態での並び順は原水通水孔58Aと改質水通水孔58Bが交互に位置することである。本実施形態の原水通水孔58Aは合計2つ形成され、改質水通水孔58Bは合計2つ形成される。
【0026】
図5に示すように、弁体対向部36aは、弁孔56A、56BとX方向に重なる位置に通水孔58A、58Bが配置されるとき、その弁孔56A、56Bを開く。このとき、開かれた弁孔56A、56Bに連通する下流側水路32A、32Bと、その弁孔56A、56BとX方向に重なる位置に配置される通水孔58A、58Bに連通する上流側水路30A、30Bとが連通される。弁体対向部36aは、弁孔56A、56BとX方向に重なる位置に通水孔58A、58B以外の箇所が配置されるとき、その弁孔56A、56Bを閉じる。図5では、ストレート用弁孔56Aが開き、シャワー用弁孔56Bが閉じている状態を示す。回転弁体36は、自らが回転中心線Lr周りに回転することによって、このような弁孔56A、56Bと通水孔58A、58Bとの間での連通の有無を変更可能である。
【0027】
図4に戻り、弁体対向部36aは、固定弁体50の座面に着座するシール面36cを有する。回転弁体36のシール面36cは、固定弁体50に着座することで、回転弁体36と固定弁体50の間をシールする。これにより、回転弁体36のシール面36cと固定弁体50の座面と間を通しての弁孔56A、56Bと通水孔58A、58Bとの間での連通が断たれる。
【0028】
第1付勢部材66は、回転弁体36とカートリッジ34の間に配置される。本実施形態の第1付勢部材66は、弾性体の一例となるコイルスプリングである。本実施形態の第1付勢部材66は、回転弁体36の弁軸部36bの外周側に配置される第2受け部材72に座するととともに、カートリッジ34の外周側に配置される第3受け部材74に座する。本実施形態の第1付勢部材66は回転弁体36を固定弁体50に近づく方向に常時付勢している。回転弁体36のシール面36cは、第1付勢部材66の付勢力によって固定弁体50に密着している。
【0029】
図3に示すように、回転軸64の先端側の端部は連動機構60の第1受け部材68、回転子70を介して水栓本体14に回転可能に支持される。本実施形態の回転軸64は、ユーザにより操作部品38、40に入力された外力が連動機構60を介して回転力として伝達され、その受けた回転力を回転弁体36に伝達する。
【0030】
図8は、回転弁体36及び回転軸64の斜視図であり、図9は、その分解図である。図6図9に示すように、本実施形態の回転弁体36は、固定弁体50との間をシールするシール部材54と、シール部材54が取り付けられる弁本体部材52とを有する。本実施形態のシール部材54は弁体対向部36aの一部を構成し、弁本体部材52は弁体対向部36aの一部と他の部位を構成する。シール部材54は、ゴム等の弾性体が構成している。本実施形態のシール面36cはシール部材54が構成している。
【0031】
図10は、図6の矢視Aから回転弁体36及び回転軸64を見た図であり、図11は、図10のD-D線断面図である。シール部材54は、基端側の主面から基端側に突き出るピン部76を有する。ピン部76は、回転弁体36の回転中心線Lrから偏心した位置で周方向に間を置いて複数設けられる。ピン部76の先端部には中間部より拡径した形状の頭部76aが設けられる。弁本体部材52には、ピン部76が差し込まれる取付孔78が形成される。シール部材54は、その取付孔78の周縁部に頭部76aが引っ掛かることで、弁本体部材52に取り付けられる。ピン部76は取付孔78内に弾性変形を伴い挿入可能である。
【0032】
以下、図10に示すように、X方向に直交するとともに互いに直交する方向をY方向(第1方向)及びZ方向(第2方向)という。図12は、回転軸64の基端側端部の斜視図である。図10図12に示すように、回転軸64は、長尺状の軸部64aと、軸部64aの基端側端部の外周面から径方向外側に突き出る複数の回転伝達部64bとを有する。本実施形態の回転伝達部64bはY方向の両側に突き出ている。回転伝達部64bは、回転弁体36との間で相互に回転を伝達するためのものである。本実施形態の回転伝達部64bはY方向に延びる柱状、詳しくは、円柱状をなしている。本実施形態の回転伝達部64bは、その基端部から先端側にかけての大部分の範囲で同等の断面形状を持ってY方向に延びる柱状をなす。
【0033】
図13(a)は、図6の一部の拡大図であり、図13(b)は、図7の一部の拡大図である。図14は、図13(a)のE-E線断面図である。回転弁体36の中央部には、回転軸64の基端側端部が差し込まれる差込孔80が形成される。本実施形態の差込孔80は有底孔である。差込孔80には、回転軸64の軸部64aを収納する軸収納部80aと、回転軸64の回転伝達部64bを収納する回転受け部80bとを有する。回転軸64及び回転弁体36とは、回転伝達部64b及び回転受け部80bが接触することで、相互に回転が伝達される。
【0034】
差込孔80には回転軸64の一部と接触することで差込孔80からの回転軸64の抜け止めをする抜止部80cが形成される。本実施形態での「回転軸64の一部」とは回転軸64の回転伝達部64bである。回転軸64の一部(回転伝達部64b)は、シール部材54と弁本体部材52の間に配置される。これにより、回転軸64は、回転弁体36に対するX方向での位置が保持されるように回転弁体36に接続される。よって、シール部材54を弁本体部材52に取り付けることで、回転弁体36に対して回転軸64を組み付けられるようになり、水栓装置12の組み立てに要する作業工数を削減できる。
【0035】
本実施形態の抜止部80cは差込孔80の内周面から径方向内側に突き出る突起部である。本実施形態の抜止部80cはシール部材54が構成している。これにより、シール部材54の弾性変形を伴い、回転軸64の一部(回転伝達部64b)を差込孔80から出し入れ可能となる。
【0036】
回転軸64の軸部64aの基端側端面には凸曲面状の曲面部64cが設けられる。本実施形態の曲面部64cは凸球面状をなす。回転弁体36は、曲面部64cが座する座面部36dを有する。本実施形態の座面部36dは差込孔80の底面部に設けられる。本実施形態の座面部36dは曲面部64cがなす曲面と同等の曲率半径を持つ凹曲面状をなす。本実施形態の座面部36dは凹球面状をなす。本実施形態の座面部36dには凹部36eが形成されており、凹球面状の形状として凹球帯状をなしている。このように、本明細書での「球面」には、球帯、球冠の両方が含まれる。
【0037】
回転軸64は、回転弁体36の回転中心線Lrに対して任意の方向に傾斜可能に設けられる。ここでの任意の方向とは、その回転中心線Lrに直交するものをいう。別の観点からいうと、回転軸64は、図6の方向Laに示すように、回転弁体36の回転中心線Lrに対してY方向の両側に傾斜可能であり、かつ、図7の方向Lbに示すように、Z方向の両側に傾斜可能である。この条件は、回転軸64の曲面部64cを回転弁体36の座面部36dに接触させた状態で満たされる。また、本実施形態の回転軸64は、固定弁体50に対するX方向での回転弁体36の相対位置を保持した状態のまま、前述の回転中心線Lrに対して傾斜可能にも設けられる。回転軸64の中心軸線Lcが回転弁体36の回転中心線Lrと重なる位置を基準位置という。図6図7は、回転軸64が基準位置にある状態を示す。このとき、本実施形態の回転軸64は、回転弁体36の回転中心線Lrに対して基準位置から任意の方向に傾斜可能に設けられるとも捉えられる。
【0038】
図13図14に示すように、回転軸64は、回転弁体36に対するY方向での傾斜を許容するために、回転弁体36との間でY方向及びX方向に隙間82A、82Bを空けて設けられる。Y方向の隙間82Aは、回転軸64と回転弁体36との間に設けられ、X方向の隙間82Bは、回転軸64の回転伝達部64bと回転弁体36の回転受け部80bとの間に設けられる。回転軸64は、回転弁体36に対するZ方向での傾斜を許容するため、回転弁体36との間でZ方向に第3隙間82Cを空けて設けられる。
【0039】
水栓装置12の動作を説明する。図15は、回転ハンドル38の動作の説明図である。図15(a)は、回転ハンドル38によりストレート吐水が選択されている状態を示し、図15(b)は、回転ハンドル38によりシャワー吐水が選択されている状態を示す。図15の上段は、吐水部16から吐き出される水を示し、図15の下段は、回転弁体36と固定弁体50の位置関係を示す。図16も同様である。本図では、回転弁体36の回転位置を示すために回転弁体36に原点Poを付す。
【0040】
本実施形態の連動機構60は、所定の第1角度θ1の範囲に回転弁体36の回転可能範囲を制限している状態のもと、回転ハンドル38の回転に連動して、回転ハンドル38の回転量に応じた回転量で、回転軸64とともに回転弁体36を回転させる。これにより、回転弁体36は、複数の下流側水路32A、32Bのなかからいずれかの下流側水路32A、32Bに特定種の通水孔58A、58Bの連通相手を切り替える。これに伴い、特定種の通水孔58A、58Bに連通する特定の上流側水路30A、30Bの連通相手が、複数の下流側水路32A、32Bの何れかに切り替わる。これに伴い、回転弁体36は、吐水部16から吐き出される水が、ストレート吐水とシャワー吐水の間で切り替わるように、水栓装置12の動作状態を切り替える。
【0041】
図16は、押しボタン40の動作の説明図である。図16(a)は、押しボタン40により原水Waが選択されている状態を示し、図16(b)は、押しボタン40により改質水Wbが選択されている状態を示す。
【0042】
本実施形態の連動機構60は、押しボタン40が押圧操作を受ける毎に、回転軸64とともに回転弁体36を所定の第2角度θ2の分だけ回転させる。第2角度θ2は、第1角度θ1より大きい角度である。回転弁体36を角度θ2で回転させる毎に、複数種の通水孔58A、58Bの並び順に応じた順番で、複数の下流側水路32A、32Bのうち特定の下流側水路32A、32Bに連通する通水孔58A、58Bが切り替わる。これに伴い、特定の下流側水路32A、32Bの連通相手が、複数の上流側水路30A、30Bの何れかに切り替わる。これに伴い、回転弁体36は、吐水部16から吐き出される水が、原水Waと改質水Wbとの間で切り替わるように、水栓装置12の動作状態を切り替える。
【0043】
以上の水栓装置12の効果を説明する。本実施形態の回転軸64は、回転弁体36の回転中心線Lrに対して傾斜可能に設けられる。この利点を説明する。
【0044】
図17は、回転弁体36と回転軸64の中心軸線Lcを模式的に示す図である。図17(a)、(b)では、回転弁体36に対して回転軸64が傾斜不能に設けられる参考例を示す。図17(a)では、回転軸64の中心軸線Lcが設計上の目標位置Ltに配置される状態を示し、図17(b)では、回転軸64の中心軸線Lcが目標位置Ltから傾斜するように位置ずれしている状態を示す。本実施形態での回転軸64の目標位置Ltとは、固定弁体50に形成される貫通孔48dの中心線が固定弁体50の座面と垂直である場合に、貫通孔48dの中心線と平行に回転軸64の中心軸線Lcが配置される位置をいう。本例では、目標位置Ltにある回転軸64は、回転弁体36に対して角度θ3をなしている。
【0045】
回転軸64の目標位置Ltからの位置ずれは、たとえば、回転軸64や貫通孔48dの寸法誤差、第1受け部材68、回転子70等の他部材に対する回転軸64の組み付け誤差、回転軸64の反り等の影響によって生じる。参考例の構造のもとでは、回転軸64の中心軸線Lcが目標位置Ltから位置ずれしてしまうと、その位置ずれに追従して回転弁体36が固定弁体50から離れてしまう恐れがある。
【0046】
図17(c)は、回転弁体36の回転中心線Lrに対して回転軸64が傾斜可能に設けられる例を示す。本実施形態によれば、回転軸64の中心軸線Lcの目標位置Ltからの位置ずれに追従して、回転弁体36に対する回転軸64の角度を角度θ3から角度θ4に変更するように回転軸64が傾斜できる。これに伴い、回転軸64の位置ずれに追従して回転弁体36が固定弁体50から離れてしまう事態を避けられ、回転弁体36と固定弁体50との間で安定したシール性を得られる。
【0047】
図18は、実施形態の回転弁体36と回転軸64を模式的に示す他の図である。回転軸64は、回転弁体36の回転中心線Lcに対して任意の方向に傾斜可能である。これにより、回転弁体36の回転中心線Lcに対して回転軸64を傾斜させた状態のまま、回転弁体36に対して回転中心線Lc周りに回転軸64が相対回転可能となる。これに伴い、回転軸64が中心軸線Lc周りの方向Pc1に回転し、回転弁体36が回転中心線Lr周りの方向Pc2に回転したとき、その回転の前後で固定弁体50に対して回転弁体36が着座した状態を維持することが可能となる。よって、回転弁体36の回転位置によらず、回転弁体36と固定弁体50との間で安定したシール性を得られる。
【0048】
回転軸64の回転伝達部64bは柱状をなしている。よって、回転伝達部64bが球状をなす場合と比べ、回転伝達部64bの柱軸方向(図13のY方向)での回転弁体36の回転受け部80bに対する接触範囲を広げることができ、その分、回転伝達部64bと回転弁体36の間で相互に回転を伝達し易くなる。
【0049】
回転軸64は凸曲面状の曲面部64cを有し、回転弁体36は凹曲面状の座面部36dを有する。よって、曲面部64cを座面部36dに面接触させることができる。このため、回転弁体36に対する角度を変更しようと回転軸64が相対的に動いた場合に、回転軸64の曲面部64cが回転弁体36の座面部36dを摺動しても、両者の間での摩耗を抑え易くなる。
【0050】
なお、回転軸64の軸部64aは、その軸線方向の中央部から回転伝達部64bまでの範囲で同等の断面形状で連続するように設けられる。これにより、回転軸64の軸部64aに軸線方向に向かって断面形状が変化する箇所がないため、良好な強度を確保できる。
【0051】
以上の水栓装置12の他の特徴を説明する。図10に示すように、回転弁体36の原水通水孔58A、58Bは、回転軸64に対してY方向の両側に位置するように形成される。回転弁体36の改質水通水孔58Bは、回転軸64に対してZ方向の両側に位置するように形成される。
【0052】
(第2の実施の形態)
図19は、第2実施形態の回転弁体36と回転軸64の一部を示す断面図である。本実施形態の回転弁体36の座面部36dは平面状をなす。これにより、回転弁体36の回転受け部80bの底面部を座面部36dと面一に形成でき、回転軸64のY方向での角度変更範囲を拡大できる。このように座面部36dの形状は特に限定されない。
【0053】
(第3の実施の形態)
図20は、第3実施形態の回転弁体36と回転軸64の一部を示す断面図であり。図21は、回転軸64の一部を示す斜視図である。本実施形態の回転軸64の回転伝達部64bには先端から基端側にかけての一部の範囲に半球状の半球部64eが設けられる。これにより、回転軸64のY方向での角度変更範囲を拡大できる。このように回転伝達部64bの形状は特に限定されない。
【0054】
本実施形態の回転軸64の軸部64aには差込孔80の内側にてくびれ部64dが形成される。これにより、回転軸64にくびれ部64dがある分、回転軸64が角度変更したとき、回転弁体36の差込孔80に回転軸64が干渉し難くなり、回転軸64の角度変更範囲を大きくできる。
【0055】
以上、実施形態をもとに本発明を説明した。次に、各構成要素の変形例を説明する。
【0056】
固定弁体50は、水栓本体14とは別体の部材が構成していてもよい。
【0057】
弁孔56A、56Bに連通する第1水路は上流側水路30A、30Bでもよく、回転弁体36により第1水路との連通の有無が変更される第2水路は下流側水路32A、32Bでもよい。
【0058】
回転弁体36との間で相互に回転を伝達可能に回転軸64を設けつつ、回転弁体36の回転中心線Lrに対して回転軸64を任意の方向に傾斜可能に設けるうえで、その具体的な構造は特に限定されない。たとえば、カルダンジョイント、ツェッパジョイント等の自在継手を介して回転軸64を回転弁体36を接続してもよい。
【0059】
回転弁体36に対する回転軸64のX方向での位置を保持するうえで、弁本体部材52とシール部材54との間には、回転軸64の回転伝達部64bとは別の一部が配置されていてもよい。たとえば、回転軸64を自在継手を介して回転弁体36に接続する場合、回転軸64の端部に接続した自在継手の一部を弁本体部材52とシール部材54の間に配置してもよい。
【0060】
回転弁体36は、自らが回転中心線Lr周りに回転することによって、第1水路と第2水路の連通の有無を変更可能である例を説明した。本実施形態の回転弁体36は、複数の第1水路と複数の第2水路のなかからいずれかの第1水路と第2水路に通水経路を切り替える切替弁として機能する例を説明した。この他にも、単数の第1水路と単数の第2水路の連通の有無を切り替える開閉弁として機能してもよい。第1水路と第2水路の数は特に限定されないともいえる。また、この他にも、回転弁体36は、自らが回転中心線Lr周りに回転することによって、第1水路に連通する弁孔56A、56Bの開度を変更可能であってもよい。これは、たとえば、回転弁体36が流量調整弁や温度調整弁として機能する場合を想定している。
【0061】
回転軸64は、固定弁体50に形成される貫通孔48dに挿通されていなくともよい。回転軸64は、回転弁体36に対してX方向での位置が保持されるように接続されていなくともよい。たとえば、固定弁体50に近づくX方向に回転弁体36を第1付勢部材66により付勢しつつ、回転弁体36に近づくX方向に回転軸64を他の付勢部材により付勢することで、回転弁体36に対する回転軸64のX方向での位置を保持してもよい。
【0062】
回転軸64の曲面部64cは、Y方向及びZ方向の何れかから見て、凸曲面状をなしていればよい。同様に、回転弁体36の座面部36dも、Y方向及びZ方向の何れかから見て、凹曲面状をなしていればよい。
【0063】
以上、本発明の実施形態や変形例について詳細に説明した。前述した実施形態や変形例は、いずれも本発明を実施するにあたっての具体例を示したものにすぎない。実施形態や変形例の内容は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、請求の範囲に規定された発明の思想を逸脱しない範囲において、構成要素の変更、追加、削除等の多くの設計変更が可能である。前述の実施形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「実施形態の」「実施形態では」等との表記を付して強調しているが、そのような表記のない内容でも設計変更が許容される。以上の構成要素の任意の組み合わせも、本発明の態様として有効である。図面の断面に付したハッチングは、ハッチングを付した対象の材質を限定するものではない。
【0064】
以上の実施形態、変形例により具体化される発明を一般化すると、以下の技術的思想が導かれる。以下、発明が解決しようとする課題に記載の態様を用いて説明する。
【0065】
第2態様の水栓装置は、第1態様において、前記回転弁体は、前記固定弁体との間をシールするシール部材と、前記シール部材が取り付けられる弁本体部材と、を有し、前記回転軸は、前記回転軸の一部が前記シール部材と前記弁本体部材の間に配置されることで、前記回転弁体に対する前記回転弁体の回転軸方向での位置が保持されてもよい。
この態様によれば、シール部材を弁本体部材に取り付けることで、回転弁体に対して回転軸を組み付けられるようになり、水栓装置の組み立てに要する作業工数を削減できる。
【0066】
第3態様の水栓装置は、第1または第2態様において、前記回転軸は、軸部と、前記回転弁体との間で相互に回転を伝達するための回転伝達部とを有し、前記回転伝達部は、前記軸部から前記回転弁体の径方向外側に突き出る柱状をなしてもよい。
【0067】
第4態様の水栓装置は、第1から第3態様のいずれかにおいて、前記回転軸の一端面には凸曲面状の曲面部が設けられ、前記回転弁体は、前記曲面部が座する凹曲面状の座面部を有していてもよい。
この態様によれば、回転軸の曲面部が回転弁体の座面部と面接触するため、その曲面部が座面部上を摺動したとき、両者の間での摩耗を抑えられる。
【符号の説明】
【0068】
12…水栓装置、36…回転弁体、36d…座面部、50…固定弁体、52…弁本体部材、54…シール部材、64…回転軸、64b…回転伝達部、64c…曲面部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21