(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-15
(45)【発行日】2022-06-23
(54)【発明の名称】錠制御装置
(51)【国際特許分類】
E05B 49/00 20060101AFI20220616BHJP
【FI】
E05B49/00 C
(21)【出願番号】P 2018106731
(22)【出願日】2018-06-04
【審査請求日】2021-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000170598
【氏名又は名称】株式会社アルファ
(74)【代理人】
【識別番号】100093986
【氏名又は名称】山川 雅男
(72)【発明者】
【氏名】加藤 輝久
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 壮
【審査官】野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-183843(JP,A)
【文献】実開昭57-096357(JP,U)
【文献】特開2012-188828(JP,A)
【文献】特開2004-257072(JP,A)
【文献】特開2015-151833(JP,A)
【文献】特開2008-127869(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 45/06
47/00
49/00-49/04
77/00-85/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
認証情報入力部から入力された認証情報に対する認証成立を条件に電気錠を解錠する錠制御装置であって、
解錠失敗操作を不正操作履歴として保持する履歴保持部と、
履歴保持部への不正操作履歴の有無を表示する履歴表示部とを有し、
前記履歴保持部に保持された不正操作履歴は、解錠成功操作を除く所定のリセット用操作を条件に消去可能
で、
かつ、前記履歴表示部は、錠制御装置への操作開始から所定期間のみ不正操作履歴を表示する錠制御装置。
【請求項2】
前記履歴保持部は、施錠状態における開扉操作を不正操作履歴として保持する請求項1記載の錠制御装置。
【請求項3】
前記履歴保持部は、前記認証情報入力部への所定のリセット用認証情報に対する認証成立を条件に消去可能な請求項1または2記載の錠制御装置。
【請求項4】
前記履歴保持部は、該履歴保持部での保持対象操作の回数を不正操作履歴として保持する請求項1、2または3記載の錠制御装置。
【請求項5】
認証情報入力部に暗証番号入力部を有し、
前記履歴保持部の不正操作回数が前記暗証番号入力部の数字を光らせて表示する請求項4記載の錠制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は錠制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
錠装置の制御を行う錠制御装置としては、特許文献1に記載のものが知られている。この従来例において、錠制御装置は暗証符号の一致を解錠の条件とする符号錠として構成されており、入力された暗証符号が不一致の場合には不一致回数を計測する不一致カウンタを備える。
【0003】
錠制御装置に対して誤った暗証符号を入力すると、不一致カウンタがインクリメントされ、所定の値に達すると不正解錠防止モードにセットされるとともに警報装置を作動させることにより不正解錠防止モードへの遷移を知らせ、これ以降、真正な暗証符号が入力されても解錠動作が行われない。
【0004】
不正解錠防止モードの解消は、真正な暗証符号が所定回数入力されることにより行われ、不正解錠防止モードに移行すると、一回の真正な暗証符号の入力では解錠動作は行われず、偶然の一致による不正解錠操作を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した従来例において、不正解錠防止モードへの移行時には警報装置が作動し、さらに、不正解錠防止モードにおいては真正な暗証符号を入力しても解錠されないために、不正操作があったことを知ることができるが、不正解錠防止モードへの移行が連続する複数回の不正解錠操作を条件とするために、例えば、中間に真正な解錠操作を含む場合には不正解錠防止モードに移行することはなく、不正解錠操作があったことを知ることはできないという問題がある。
【0007】
本発明は、以上の欠点を解消すべくなされたものであって、不正解錠操作があったことを確実に知ることにより、事前の防犯対策を取ることを可能にする錠制御装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば上記目的は、
認証情報入力部1から入力された認証情報に対する認証成立を条件に電気錠2を解錠する錠制御装置であって、
解錠失敗操作を不正操作履歴として保持する履歴保持部3と、
履歴保持部3への不正操作履歴の有無を表示する履歴表示部4とを有し、
前記履歴保持部3に保持された不正操作履歴は、解錠成功操作を除く所定のリセット用操作を条件に消去可能で、
かつ、前記履歴表示部4は、錠制御装置への操作開始から所定期間のみ不正操作履歴を表示する錠制御装置を提供することにより達成される。
【0009】
錠制御装置は、解錠失敗操作を不正操作履歴として保持する履歴保持部3を備えており、履歴表示部4をアクセスすることにより履歴保持部3の内容を知ることができる。
【0010】
したがって、本発明において、不正解錠操作が疑われる解錠失敗操作があったことを確実に知ることができるために、履歴保持部3に不正操作履歴がない場合には安心を得ることができ、履歴がある場合には、その後の適切な対処を行うことができる。
【0011】
また、履歴保持部3は解錠成功操作により初期化されることなく、特別に設定したリセット用操作によってのみ初期化されるために、不正な解錠操作が成功した場合でも履歴を保持するために不正解錠操作があったことを確実に知ることができる。
【0012】
解錠失敗操作には、認証情報入力部1への認証不能情報の入力、認証情報入力可能状態での認証情報未入力に加え、デッドボルト等に対する直接的な解錠状態への移行操作を含めることができる。
【0013】
また、履歴保持部3への保持対象に施錠状態における開扉操作を加えると、いわゆる解錠のための不正操作に加え、ドアに対する不正アクセスも監視することが可能になる。
【0014】
不正操作履歴は常時表示しておいたり、あるいは適宜の表示操作を行うことにより表示可能であるが、錠制御装置への操作開始から所定期間のみ表示するように構成すると、バッテリ駆動仕様等の場合、バッテリの消耗を防ぐことが可能になる。
【0015】
また、履歴保持部3の初期化のためのリセット用操作としては、例えば、メカニカルキーによる操作が可能であるが、前記認証情報入力部1への所定のリセット用認証情報の入力によると、構造の複雑化を避けることができる。
【0016】
さらに、履歴保持部3における不正操作履歴は、対象操作の有無を保持すれば足りるが、対象操作の回数を保持すると、不正解錠操作の重度を知ることができる。
【0017】
この場合、履歴表示部4として暗証番号入力部5を利用し、該暗証番号入力部5の履歴回数に対応する数字を光らせて失敗回数を表示すると、別途の表示手段を設定する必要がなくなる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、不正解錠操作があったことを確実に知ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】錠装置を示す図で、(a)は正面図、(b)は右側面図、(c)は斜視図である。
【
図4】暗証番号モードにおけるフローチャートである。
【
図5】カード利用モードにおけるフローチャートである。
【
図6】施錠時のハンドル操作があった場合の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1以下に本発明が適用された玄関ドア(D)用の錠装置を示す。本例の錠装置は、ケース6内に、ドア(D)内に組み込まれた箱錠2aを作動させるためのモーター等の電動アクチュエータ2b、および電動アクチュエータ2bの動作を制御するための本発明の電気錠制御装置を組み込んで形成され、玄関ドア(D)の屋外側壁面に固定されて使用される。
【0021】
また、ケース6に開設される貫通孔6aにはハンドル7の操作軸7aが挿通し、箱錠2aに設けられたラッチ(図示せず)を操作する。
【0022】
ケース6上部には認証情報を入力するための認証情報入力部1が配置され、この認証情報入力部1から入力された認証情報が認証されると、電動アクチュエータ2bにより操作軸7aが回転駆動され、箱錠2aが施解錠操作される。
【0023】
なお、
図1において電気錠2は、ケース6内の電動アクチュエータ2bと、ドア(D)内の箱錠2aとにより構成されている場合が示されているが、箱錠2aと電動アクチュエータ2bとを同一ケースに収納した電気錠2を制御するように必要部分のみをケース6に収納したり、あるいは後述する認証部8をケース6外に配置するものであってもよい。
【0024】
図2に示すように、電気錠制御装置は、制御部9と、制御部9により制御されて作動する認証部8、モード管理部10、モード設定部11、履歴保持部3、および電気錠駆動部12とを有し、電気錠駆動部12から出力される施解錠駆動信号により電気錠2内の電動アクチュエータが駆動される。
【0025】
また、ケース6の適宜箇所には、利用者による利用開始を装置に知らせるための操作開始ボタン13が配置され、さらに、ドア(D)には施錠状態においてドアハンドルに対する操作があった際に電気錠制御装置に操作検出信号を出力するドアハンドル操作検知部14が配置される。
【0026】
上記認証部8は、認証情報入力部1から入力された認証情報を認証するもので、カード認証装置15と、暗証番号認証装置16とから構成され、カード認証装置15は、利用者が所持する認証媒体(認証カード)に保持される認証コードをカード読み取り部15aから読み込み、コード格納部15b内に登録された基準コードとの一致により認証判定するように構成される。
【0027】
カード認証装置15での認証を行うために、通常の運用時にユーザーが使用するユーザーカード17A、ユーザーカード17Aの登録、暗証コードの削除、変更を行うための管理カード17B、および後述する履歴保持部3をリセットするための履歴リセットカード17Cが用意される。
【0028】
また、暗証番号認証装置16は、暗証番号入力部5から利用者が入力した暗証番号とコード格納部16a内の基準コードとの一致を判定するように構成される。
【0029】
これらカード認証装置15のカード読み取り部15aと暗証番号認証装置16の暗証番号入力部5は上述したケース6の表面に配置されて認証情報入力部1を構成する。
【0030】
電気錠制御装置の使用が開始されると、上記モード管理部10により指定された認証方式に適合する認証装置が起動され、認証動作が行われる。
【0031】
各認証装置は、認証動作に先立って所定の操作画面を表示し、本例において、カード認証装置15は上述した錠装置の認証情報入力部1に配置されたカード読み取り部15aの近傍に表示されたカードマーク18を点灯してカード読み取り部15aへの認証カードの翳しを促し、暗証番号認証装置16は、上記認証情報入力部1にテンキーを点灯、表示して暗証番号の入力を促す。
【0032】
履歴保持部3は、施錠状態における解錠操作の失敗、および施錠状態における開扉操作を不正操作として保持するもので、本例において、履歴保持部3は、解錠等の失敗操作の有無のみでなく、失敗操作回数を保持する。
【0033】
また、履歴保持部3での保持履歴は、カード利用モード下で履歴リセットカード17Cをカード読み取り部15aに翳すことにより、あるいは暗証番号利用モード下での履歴リセット用の番号入力によりリセットされ、解錠操作の成功によってはリセットされない。
【0034】
さらに、本例において履歴表示部4は、暗証番号認証装置16の暗証番号入力部5が利用され、例えば、履歴情報として不正操作履歴として履歴保持対象行為が2回あったことを示す”2”が保持されている場合、履歴情報は、暗証番号入力部5の該当するテンキーである”2”を光らせることにより表示されるが、別途履歴表示部4を設けることもできる。
【0035】
以上のように構成される電気錠2制御装置の制御原理図を
図3に示す。まず、制御は操作開始ボタン13への操作を待って開始され、操作開始ボタン13が押下されると(ステップS11)、履歴保持部3に保持された不正操作履歴(以下、「カウンタ値」)が表示され(ステップS12)、解錠操作が適正である場合(ステップS13)、電気錠駆動部12に解錠信号がセットされて電気錠2が解錠駆動され(ステップS14)、その後、履歴情報の表示が終了する(ステップS15)。
【0036】
これに対し、解錠操作が適正でなかった場合には、実行された操作がリセット用操作であるか否かを判定し(ステップS131)、リセット用操作である場合、履歴情報を消去(本例の場合、カウンタのリセット)が行われる(ステップS1311)。
【0037】
また、ステップ(S131)においてリセット用操作と判定されなかった場合には、カウンタ値がインクリメントされた後(ステップS1312)、履歴情報の表示が終了する。
【0038】
図4に暗証番号モードで運用している場合の制御装置の動作の詳細を示す。制御は操作開始ボタン13への操作を待って開始され、操作開始ボタン13が押下されると(ステップS21)、履歴保持部3内のカウンタ値が1以上であるか否かが判定され(ステップS22)、カウンタ値が1以上である場合には、履歴表示部4として機能する暗証番号入力部5のテンキーを点灯してカウンタ値を表示する(ステップS23)。
【0039】
バッテリ消耗を減らすために、履歴表示部4の点灯は所定時間に限られており、テンキーが点灯されると、点灯時間を計測するためのカウンタ表示タイマの計測を開始し(ステップS24)、このタイマがタイムアップするまで履歴情報(カウンタ値)が表示され、次いで、テンキーを全点灯して暗証番号の入力を促す(ステップS25、S26)。
【0040】
また、ステップS22において履歴保持部3内に不正操作履歴がない場合には、履歴情報を表示することなくステップS26に移行する。
【0041】
この後、テンキーへの入力可能時間を制限するために、操作待機タイマによる計時を開始し(ステップS27)、設定時間内に入力がなかった場合には(ステップS28、S29)、不正操作としてカウンタをインクリメントした後(ステップS281)、全てのテンキーを消灯し(S32)、制御を終了する。
【0042】
これに対し、ステップS29においてタイムアップ前に暗証番号が入力された場合には、まず、入力された暗証番号が解錠用暗証番号に一致するか否かを判定し(ステップS30)、一致する場合には解錠操作をした後(ステップS31)、ステップS32に移動する。
【0043】
また、ステップS30において暗証番号が解錠用暗証番号に一致しなかった場合、入力された暗証番号が履歴リセット用の番号に一致するか否かを判定し(ステップS301)、一致する場合には履歴情報を消去し(ステップS3011)、一致しなかった場合には、解錠操作失敗としてカウンタを増加する(ステップS3012)。
【0044】
図5にカード利用モードで運用している場合の詳細を示す。上述した暗証番号モードでの運用と同様に、制御は操作開始ボタン13への操作を待って開始され、操作開始ボタン13が押下されると(ステップS41)、カウンタ値が1以上であるか否かが判定される(ステップS42)。本ステップにおいてカウンタ値が1以上である場合には、所定時間、カウンタ値を表示した後(ステップS43、44、45)、カウンタ値が0、すなわち、履歴保持部3に失敗履歴が保持されていない場合には、カウンタ値を表示することなくカードによる認証を待つ。
【0045】
カウンタ値の表示は、テンキーを光らせることにより行うことができるが、別途履歴表示部4を設けることもできる。また、カードによる認証を促すために、
図1に示すように、カードアイコンを光らせることができる。
【0046】
カードによる認証時間を制限するために、操作待機タイマによる計時が開始され(ステップS46)、設定時間内に入力がなかった場合には(ステップS47)、不正操作としてカウンタを増加させた後(ステップS471)、カウンタを消灯して制御を終了する(ステップS51)。
【0047】
これに対し、ステップ(ステップS47)においてタイムアップ前にカードが翳された場合には(ステップS48)、まず、カードがユーザーカード、すなわち、解錠用コードが記憶されたカードであるかを認証し(ステップS49)、認証が成立すると、解錠操作をした後(ステップS50)、ステップS51に移動する。
【0048】
また、ステップS49においてカードがユーザーカードでなかった場合には、当該カードが履歴リセットカードであるか否かをカードに保持されたIDコードにより判定し(ステップS491)、履歴リセットカードである場合には履歴情報を消去し(ステップS492)、一致しなかった場合には、ステップS47に戻り、新たなカードの認証を待つ。
【0049】
図6にドア(D)に対する開扉失敗操作の監視も可能にした制御装置の動作を示す。本例において、制御は制御部9がドアハンドル操作検知部14からの操作検出信号の受領により開始される(ステップS61)。上述したように、ドアハンドル操作検知部14は、ハンドル7に対する操作が行われると、施錠状態であるか否かを判定し(ステップS611)、施錠状態の場合には、制御部9に操作検出信号を出力し、制御部9は履歴保持部3のカウンタをインクリメントする(ステップS612)。
【0050】
また、上述したハンドルへの操作がなかった場合、
図3、あるいは
図4、5と同様の制御が行われる。
【符号の説明】
【0051】
1 認証情報入力部
2 電気錠
3 履歴保持部
4 履歴表示部
5 暗証番号入力部