(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-15
(45)【発行日】2022-06-23
(54)【発明の名称】半導体装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 27/11568 20170101AFI20220616BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20220616BHJP
H01L 29/788 20060101ALI20220616BHJP
H01L 29/792 20060101ALI20220616BHJP
【FI】
H01L27/11568
H01L29/78 371
(21)【出願番号】P 2018134089
(22)【出願日】2018-07-17
【審査請求日】2021-01-15
(73)【特許権者】
【識別番号】302062931
【氏名又は名称】ルネサスエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】特許業務法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 真雄
(72)【発明者】
【氏名】門島 勝
(72)【発明者】
【氏名】川嶋 祥之
(72)【発明者】
【氏名】山川 市朗
【審査官】小山 満
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-053474(JP,A)
【文献】特開2008-244163(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0060991(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第02846348(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0237688(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 27/11568
H01L 21/336
H01L 29/788
H01L 29/792
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上に形成され、且つ、電荷の保持が可能な電荷蓄積層を含む第1ゲート絶縁膜と、前記第1ゲート絶縁膜上に形成された第1ゲート電極とを有する不揮発性メモリセルを備える半導体装置であって、
前記電荷蓄積層は、
前記半導体基板上に形成され、且つ、ハフニウムシリケート膜からなる第1絶縁膜と、
前記第1絶縁膜上に形成され、前記第1絶縁膜とは異なる材料からなり、且つ、アルミニウム膜、窒化アルミニウム膜、炭化アルミニウム膜、アルミニウムシリケート膜または酸化アルミニウム膜からなる第1挿入層と、
前記第1挿入層上に形成され、前記第1挿入層とは異なる材料からなり、且つ、ハフニウムシリケート膜からなる第2絶縁膜と、
を有する、半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記第1挿入層の厚さは、前記第1絶縁膜の厚さおよび前記第2絶縁膜の厚さよりも薄い、半導体装置。
【請求項3】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記第1ゲート絶縁膜は、前記半導体基板と前記電荷蓄積層との間に、酸化シリコン膜または酸窒化シリコン膜からなる第3絶縁膜を更に有し、
前記第1絶縁膜は、前記第3絶縁膜に直接接している、半導体装置。
【請求項4】
請求項3に記載の半導体装置において、
前記電荷蓄積層は、
前記第2絶縁膜上に形成され、且つ、前記第1挿入層と同じ膜からなる第2挿入層と、
前記第2挿入層上に形成され、前記第2挿入層とは異なる材料からなり、且つ、ハフニウムシリケート膜からなる第4絶縁膜と、
を更に有する、半導体装置。
【請求項5】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記第1ゲート絶縁膜は、前記電荷蓄積層と前記第1ゲート電極との間に、酸化アルミニウム膜、酸窒化アルミニウム膜またはアルミニウムシリケート膜からなり、且つ、前記第1挿入層よりも厚い厚さを有する第3絶縁膜を更に有する、半導体装置。
【請求項6】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記第1ゲート絶縁膜は、前記第1ゲート電極と前記電荷蓄積層との間に、第3絶縁膜を更に有し、
前記第3絶縁膜は、
前記電荷蓄積層上に形成され、且つ、酸化アルミニウム膜、酸窒化アルミニウム膜またはアルミニウムシリケート膜からなる第4絶縁膜と、
前記第4絶縁膜上に形成され、且つ、酸化シリコン膜、酸窒化シリコン膜または窒化シリコン膜からなる第5絶縁膜と、
前記第5絶縁膜上に形成され、且つ、酸化アルミニウム膜、酸窒化アルミニウム膜またはアルミニウムシリケート膜からなる第6絶縁膜と、
を有し、
前記第1挿入層の厚さは、前記第4絶縁膜の厚さおよび前記第6絶縁膜の厚さよりも薄い、半導体装置。
【請求項7】
請求項6に記載の半導体装置において、
前記第4絶縁膜に含まれる複数の第1結晶粒と、前記第6絶縁膜に含まれる複数の第2結晶粒とは、前記第5絶縁膜によって分離されている、半導体装置。
【請求項8】
請求項7に記載の半導体装置において、
前記第4絶縁膜および前記第6絶縁膜は、それぞれ多結晶膜であり、
前記第5絶縁膜は、非晶質膜である、半導体装置。
【請求項9】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記不揮発性メモリセルは、
前記半導体基板上に形成された第2ゲート絶縁膜と、
前記第2ゲート絶縁膜上に形成された第2ゲート電極と、
を更に有し、
前記第1ゲート電極は、前記第2ゲート電極と絶縁分離されている、半導体装置。
【請求項10】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記第1挿入層は、酸化アルミニウム膜からなる、半導体装置。
【請求項11】
(a)半導体基板上に、電荷の保持が可能な電荷蓄積層を含む第1ゲート絶縁膜を形成する工程、
(b)前記第1ゲート絶縁膜上に、第1ゲート電極を形成する工程、
を有し、
前記(a)工程において、前記電荷蓄積層を形成する工程は、
(a1)前記半導体基板上に、ハフニウムシリケート膜からなる第1絶縁膜を形成する工程、
(a2)前記第1絶縁膜上に、アルミニウム膜、窒化アルミニウム膜、炭化アルミニウム膜、アルミニウムシリケート膜または酸化アルミニウム膜からなる第1挿入層を形成する工程、
(a3)前記第1挿入層上に、ハフニウムシリケート膜からなる第2絶縁膜を形成する工程、
を有する、半導体装置の製造方法。
【請求項12】
請求項
11に記載の半導体装置の製造方法において、
前記(a3)工程後、熱処理を行う工程、を更に有し、
前記第1絶縁膜および前記第2絶縁膜の各々の前記ハフニウムシリケート膜は、Hf
xSi
1-xO
2(0<x<1)膜であり、
0.9≦x<1である場合には、前記熱処理の温度を800℃以上、975℃未満とし、
0<x<0.9である場合には、前記熱処理の温度を975℃以上、1050℃以下とする、半導体装置の製造方法。
【請求項13】
請求項
11に記載の半導体装置の製造方法において、
前記(a)工程において、前記電荷蓄積層を形成する工程は、
(a4)前記第2絶縁膜上に、前記第2絶縁膜の厚さよりも薄い厚さを有し、且つ、アルミニウム膜、窒化アルミニウム膜、炭化アルミニウム膜、アルミニウムシリケート膜または酸化アルミニウム膜からなる第2挿入層を形成する工程、
(a5)前記第2挿入層上に、前記第2挿入層の厚さよりも厚い厚さを有し、且つ、ハフニウムシリケート膜からなる第3絶縁膜を形成する工程、
を更に有する、半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置およびその製造方法に関し、特に、不揮発性メモリセルを有する半導体装置に適用して有効な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気的に書込および消去が可能な不揮発性メモリとして、フラッシュメモリまたはEEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)が広く使用されている。これらの不揮発性メモリセルには、ゲート電極下に、例えば窒化シリコン膜のようなトラップ性絶縁膜を有する電荷蓄積層を設けた、MONOS(Metal Oxide Nitride Oxide Semiconductor)型トランジスタと呼ばれるメモリセルがある。この電荷蓄積層に電荷の注入および放出を行うことによって、トランジスタの閾値をシフトさせることで、このトランジスタを不揮発性メモリセルとして使用することが可能となる。また、近年では、電荷蓄積層である窒化シリコン膜に代えて、酸化ハフニウム膜などのような高誘電率膜を用いた不揮発性メモリセルも開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、電荷蓄積層にハフニウムシリケート膜を用いた不揮発性メモリセルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
高誘電率膜を用いた不揮発性メモリセルにおいて、リテンション特性などの信頼性を向上させることが望まれている。
【0006】
その他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願において開示される実施の形態のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0008】
一実施の形態である半導体装置は、半導体基板上に形成され、且つ、電荷の保持が可能な電荷蓄積層を含む第1ゲート絶縁膜と、第1ゲート絶縁膜上に形成された第1ゲート電極とを有する不揮発性メモリセルを備える。ここで、電荷蓄積層は、ハフニウム、シリコンおよび酸素を含む第1絶縁膜と、第1絶縁膜上に形成され、第1絶縁膜とは異なる材料からなり、且つ、アルミニウムを含む第1挿入層と、第1挿入層上に形成され、第1挿入層とは異なる材料からなり、且つ、ハフニウム、シリコンおよび酸素を含む第2絶縁膜と、を有する。
【0009】
また、一実施の形態である半導体装置は、電荷の保持が可能な電荷蓄積層を有する不揮発性メモリセルを備える。ここで、電荷蓄積層は、ハフニウム、シリコンおよび酸素を含む第1絶縁膜を有する。そして、ハフニウムと異なる金属を含む挿入層が、第1絶縁膜の膜中に、少なくとも1層以上形成されている。
【発明の効果】
【0010】
一実施の形態によれば、半導体装置の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施の形態1の半導体装置を示す断面図である。
【
図2】実施の形態1のメモリセルの等価回路図である。
【
図3】「書込」、「消去」および「読出」時における選択メモリセルの各部位への電圧の印加条件の一例を示す表である。
【
図4】実施の形態1の半導体装置の要部を拡大した断面図である。
【
図5】本願発明者らによる実験結果を示すグラフである。
【
図6】電荷蓄積層の内部に存在するトラップ準位を示した模式図である。
【
図7】本願発明者らによる実験結果を示すグラフである。
【
図8】本願発明者らによる実験結果を示すグラフである。
【
図9】実施の形態1の半導体装置の製造工程を説明する断面図である。
【
図10】
図9に続く製造工程を説明する断面図である。
【
図14】実施の形態2の半導体装置の要部を拡大した断面図である。
【
図15】実施の形態3の半導体装置の要部を拡大した断面図である。
【
図17】実施の形態4の半導体装置を示す断面図である。
【
図18】実施の形態4のメモリセルの等価回路図である。
【
図19】「書込」、「消去」および「読出」時における選択メモリセルの各部位への電圧の印加条件の一例を示す表である。
【
図20】実施の形態4の半導体装置の製造工程を説明する断面図である。
【
図27】検討例1の半導体装置の要部を拡大した断面図である。
【
図28】検討例2の半導体装置の要部を拡大した断面図である。
【
図29】検討例3の半導体装置の要部を拡大した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の実施の形態においては、便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0013】
以下、実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施の形態では、特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
【0014】
また、実施の形態で用いる図面においては、図面を見易くするためにハッチングを省略する場合もある。
【0015】
(実施の形態1)
<メモリセルMC1の構造>
本実施の形態における不揮発性メモリセルであるメモリセルMC1を備える半導体装置について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施の形態の半導体装置の断面図であり、
図2は、
図1の要部を拡大した断面図である。
【0016】
本実施の形態のメモリセルMC1は、ゲート絶縁膜MZに電荷の保持が可能な電荷蓄積層CSLを備えたn型のトランジスタであり、電荷蓄積層CSLは、トラップ性絶縁膜を有する。
【0017】
図1に示されるように、半導体基板(基板)SBには、p型のウェル領域PWが形成されており、ウェル領域PWには、メモリセルMC1が形成されている。半導体基板SBは、例えば1Ωcm~10Ωcmの比抵抗を有するp型の単結晶シリコン(Si)からなる。
【0018】
半導体基板SB上(すなわちウエル領域PW1上)には、ゲート絶縁膜MZが形成されており、ゲート絶縁膜MZ上には、メモリゲート電極MGが形成されている。メモリゲート電極MGは、例えばn型の不純物が導入された多結晶シリコン膜のような導電性膜である。なお、消去時の正孔トンネル電流を確保するために、メモリゲート電極MGに、p型の不純物が導入された多結晶シリコン膜、または、不純物が導入されていない多結晶シリコン膜を適用してもよい。また、メモリゲート電極MGは、例えば窒化チタン膜、アルミニウム膜若しくはタングステン膜のような金属膜、または、これらの金属膜の積層膜であってもよい。
【0019】
また、
図1では、図面を見易くするため、ゲート絶縁膜MZは単層の絶縁膜として表されているが、後述の
図4で説明するように、実際には、ゲート絶縁膜MZは、絶縁膜BT、絶縁膜HSO1、挿入層AL1、絶縁膜HSO2および絶縁膜TPを有する積層膜である。
【0020】
メモリゲート電極MGの側面上には、サイドウォールスペーサSWが形成されている。サイドウォールスペーサSWは、例えば酸化シリコン膜と窒化シリコン膜との積層膜からなる。
【0021】
サイドウォールスペーサSW下のウェル領域PWには、低濃度のn型不純物領域であるエクステンション領域EXSおよびエクステンション領域EXDが形成されている。また、サイドウォールスペーサSWと整合する位置のウェル領域PWには、エクステンション領域EXSよりも高濃度のn型不純物領域である拡散領域MS、および、エクステンション領域EXDよりも高濃度のn型不純物領域である拡散領域MDが形成されている。エクステンション領域EXSおよび拡散領域MSは、互いに接続されており、それぞれメモリセルMC1のソース領域の一部を構成している。エクステンション領域EXDおよび拡散領域MDは、互いに接続されており、それぞれメモリセルMC1のドレイン領域の一部を構成している。
【0022】
メモリゲート電極MG上、拡散領域MS上および拡散領域MD上には、例えばコバルトシリサイド(CoSi2)、ニッケルシリサイド(NiSi)またはニッケルプラチナシリサイド(NiPtSi)からなるシリサイド層SIが形成されている。シリサイド層SIは、主に、後述のプラグPGとの接触抵抗を低減するために形成されている。
【0023】
このようなメモリセルMC1上には、層間絶縁膜IL1が形成されている。層間絶縁膜IL1には複数のコンタクトホールが形成され、複数のコンタクトホール内には、複数のプラグPGが形成されている。プラグPGは、例えば、チタン膜、窒化チタン膜、または、これらの積層膜からなるバリアメタル膜と、例えばタングステンを主体とする導電性膜とからなる。プラグPGは、シリサイド層SIを介して、拡散領域MSまたは拡散領域MDに電気的に接続されている。なお、図示はしていないが、層間絶縁膜IL1中には、メモリゲート電極MGに電気的に接続されるプラグPGも存在している。
【0024】
プラグPG上および層間絶縁膜IL1上には、層間絶縁膜IL2が形成されている。層間絶縁膜IL2には配線用の溝が形成され、この溝内には、例えば銅を主体とする導電性膜を有する配線M1が埋め込まれている。また、配線M1はプラグPGに電気的に接続されている。このような配線は、所謂ダマシン構造の配線である。配線M1の上方には、更に多層の配線および層間絶縁膜も形成されているが、ここではそれらの図示および説明は省略する。
【0025】
<メモリセルMC1の動作について>
以下に、不揮発性メモリセルであるメモリセルMC1の動作例について、
図2および
図3を参照して説明する。なお、ここで説明するメモリセルMC1は、半導体装置内に存在している複数のメモリセルMC1のうち、選択メモリセルである。
【0026】
図2は、メモリセルMC1の等価回路図である。
図3は、「書込」、「消去」および「読出」時におけるメモリセルMC1の各部位への電圧の印加条件の一例を示す表である。
図3の表には、「書込」、「消去」および「読出」時のそれぞれにおいて、ドレイン領域である拡散領域MDに印加される電圧Vd、メモリゲート電極MGに印加される電圧Vmg、ソース領域である拡散領域MSに印加される電圧Vs、および、ウェル領域PWに印加される電圧Vbが記載されている。
【0027】
なお、
図3の表に示したものは電圧の印加条件の好適な一例であり、これに限定されるものではなく、必要に応じて種々変更可能である。また、本実施の形態では、ウェル領域PWから電荷蓄積層CSLへの電子の注入を「書込」と定義し、電荷蓄積層CSLからウェル領域PWへの電子の放出を「消去」と定義する。
【0028】
書込動作は、FNトンネル(Fowler Nordheim Tunneling)方式によって行われる。例えば
図3の「書込」の欄に示されるような電圧を、書込みを行うメモリセルMC1の各部位に印加し、ウェル領域PWからメモリセルMC1の電荷蓄積層CSLに電子を注入することで書込みを行う。注入された電子は、電荷蓄積層CSL中のトラップ準位に捕獲され、その結果、メモリゲート電極MGを有するメモリトランジスタのしきい値電圧が上昇する。すなわち、メモリトランジスタは書込状態となる。
【0029】
消去動作は、FNトンネル方式によって行われる。例えば
図3の「消去」の欄に示されるような電圧を、消去を行うメモリセルMC1の各部位に印加し、電荷蓄積層CSL中の電子をウェル領域PWへ放出する。その結果、メモリトランジスタのしきい値電圧が低下する。すなわち、メモリトランジスタは消去状態となる。
【0030】
読出動作には、例えば
図3の「読出」の欄に示されるような電圧を、読出しを行うメモリセルMC1の各部位に印加する。読出し時のメモリゲート電極MGに印加される電圧Vmgを、書込状態におけるメモリトランジスタのしきい値電圧と、消去状態におけるメモリトランジスタのしきい値電圧との間の値にすることで、書込状態または消去状態を判別することができる。
【0031】
<ゲート絶縁膜MZの詳細な構造>
図4は、
図1に示される半導体装置の要部を拡大した断面図であり、ゲート絶縁膜MZの詳細な構造を示す断面図である。
【0032】
ゲート絶縁膜MZは、半導体基板SB(ウェル領域PW)とメモリゲート電極MGとの間に介在しており、メモリセルMC1のゲート絶縁膜として機能する膜であり、その内部に電荷蓄積層CSLを有する積層膜である。具体的には、ゲート絶縁膜MZは、半導体基板SB上に形成された絶縁膜BTと、絶縁膜BT上に形成された絶縁膜HSO1と、絶縁膜HSO1上に形成された挿入層AL1と、挿入層AL1上に形成された絶縁膜HSO2と、絶縁膜HSO2上に形成された絶縁膜TPとの積層膜からなる。
【0033】
絶縁膜(ボトム絶縁膜)BTは、例えば酸化シリコン膜または酸窒化シリコン膜であり、例えば2nm~5nmの厚さを有する。
【0034】
絶縁膜HSO1は、窒化シリコン膜よりも高い誘電率を有する膜であり、酸化金属膜であり、例えば5nm~9nmの厚さを有する。具体的には、絶縁膜HSO1は、ハフニウム(Hf)、シリコン(Si)および酸素(O)を含む膜であり、好ましくはHfxSi1-xO2(0<x<1)膜のようなハフニウムシリケート膜である。なお、絶縁膜HSO1中のトラップ準位の密度を向上させるため、HfxSi1-xO2膜の組成比は、0.6<x<1であることが好ましく、x=0.8であることが最も好ましい。
【0035】
挿入層AL1は、ハフニウムとは異なる金属を含む膜であり、アルミニウム(Al)を含む膜であり、例えば1nm~4nmの厚さを有する。具体的には、挿入層AL1は、アルミニウム(Al)膜、窒化アルミニウム(AlN)膜、炭化アルミニウム(AlC)膜、アルミニウムシリケート(AlSiO)膜または酸化アルミニウム膜である。本実施の形態において、挿入層AL1として好ましいのは、アルミニウム(Al)および酸素(O)を含む酸化金属膜であり、最も好ましいのAl2O3膜のような酸化アルミニウム膜である。
【0036】
絶縁膜HSO2は、挿入層AL1と異なる材料からなる膜であり、ハフニウム(Hf)、シリコン(Si)および酸素(O)を含む膜であり、例えば5nm~9nmの厚さを有する。絶縁膜HSO2は、絶縁膜HSO1と同じ材料であることが好ましい。
【0037】
このように、本実施の形態では、電荷蓄積層CSLの内部において、ハフニウム、シリコンおよび酸素を含む膜(絶縁膜HSO1、絶縁膜HSO2)の膜中に、アルミニウムを含む膜(挿入層AL1)が、1層形成されている。
【0038】
絶縁膜(トップ絶縁膜)TPは、窒化シリコン膜よりも高い誘電率を有する膜であり、絶縁膜HSO1および絶縁膜HSO2と異なる材料からなる酸化金属膜であり、例えば5nm~12nmの厚さを有する。具体的には、絶縁膜TPは、アルミニウム(Al)および酸素(O)を含む膜であり、好ましくは酸化アルミニウム膜、酸窒化アルミニウム膜またはアルミニウムシリケート膜である。また、絶縁膜TPとして、他の酸化金属膜を用いることもでき、例えば、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)またはルテチウム(Lu)の何れかの金属の酸化物からなる酸化金属膜を、絶縁膜TP1として用いることもできる。
【0039】
絶縁膜TPは、主に、電荷蓄積層CSLの内部に蓄積された電荷が、メモリゲート電極MGへ抜けることを防止する役目を果たす。このため、絶縁膜TPは、挿入層AL1よりも、厚い厚さを有していることが好ましい。
【0040】
ところで、従来の不揮発性メモリセルでは、トラップ準位を備えたゲート絶縁膜としては、酸化シリコン膜、電荷蓄積層である窒化シリコン膜、および、酸化シリコン膜を積層したONO(oxide nitride oxide)膜が知られている。ONO膜を採用した場合は、誘電率が比較的低いことから、ゲート絶縁膜のEOT(Equivalent Oxide Thickness:酸化膜換算膜厚)が大きくなってしまう。このため、ゲート絶縁膜のEOTが大きくなることで動作電圧が高くなる懸念がある。また、ゲート絶縁膜のEOTを小さくするために物理的膜厚を薄くしようとすると、電荷蓄積層内に蓄積した電荷のリークによって、リテンション特性(電荷保持特性、データ保持特性)の劣化が生じる懸念がある。これらは、半導体装置の信頼性を低下させてしまう。
【0041】
本実施の形態では、電荷蓄積層CSLは、主に、高誘電率膜である絶縁膜HSO1および絶縁膜HSO2によって構成されている。また、絶縁膜TPも高誘電率膜である。これらの膜により、ゲート絶縁膜MZのEOTを抑制しながらゲート絶縁膜MZの物理的膜厚を増加させることができるため、リークによるリテンション特性の劣化を防止し、リテンション特性の向上を図ることができる。また、ゲート絶縁膜MZの物理的膜厚を確保しながらEOTを低減できるため、リークによるリテンション特性の劣化を防止しながら、メモリセルMC1の動作電圧の低減および動作速度の向上を図ることができる。
【0042】
ここで、本実施の形態の電荷蓄積層CSLが有するトラップ準位は、Hf
xSi
1-xO
2(0<x<1)膜である絶縁膜HSO1および絶縁膜HSO2の内部に多く存在するが、絶縁膜HSO1と挿入層AL1との界面付近、および、絶縁膜HSO2と挿入層AL1との界面付近に、より多くのトラップ準位が存在している。このため、電荷蓄積層CSLの中央部に近い位置に、より多くのトラップ準位を存在させることができる。すなわち、電荷蓄積層CSLの内部のうち、絶縁膜HSO1の下面から離れた位置、および、絶縁膜HSO2の上面から離れた位置に、より多くの深いトラップ準位を存在させることができる。また、後述の
図7でも説明するが、ハフニウムシリケート膜と酸化アルミニウム膜との界面には、多くの深いトラップ準位が存在する。本実施の形態では、このような界面を形成することができるため、多くの深いトラップ準位を形成することができる。これらにより、電荷蓄積層CSLの内部に蓄積した電荷が、電荷蓄積層CSLから抜けにくくなり、メモリセルMC1のリテンション特性を向上させることができる。
【0043】
また、挿入層AL1は、電荷蓄積層CSLの内部におけるトラップ準位を多くするために設けられた膜である。例えば、挿入層AL1が酸化アルミニウム膜であり、絶縁膜HSO1および絶縁膜HSO2がハフニウムシリケート膜である場合、酸化アルミニウム膜の誘電率は、ハフニウムシリケート膜の誘電率よりも低い。このため、挿入層AL1の厚さは、必要以上に厚くしない方が好ましく、絶縁膜HSO1の厚さおよび絶縁膜HSO2の厚さよりも薄いことが好ましい。
【0044】
<検討例1~3の半導体装置と、本実施の形態の半導体装置との比較>
以下に、上述のようなリテンション特性の向上について、
図5~
図8および
図27~
図29を用いて詳しく説明する。
【0045】
図27~
図29は、それぞれ検討例1~検討例3の半導体装置の要部を拡大した断面図であり、
図6は、電荷蓄積層CSLの内部に存在するトラップ準位を示した模式図であり、
図5、
図7および
図8は、本願発明者らによる実験結果を示すグラフである。
【0046】
検討例1の半導体装置は、
図27に示されるように、電荷蓄積層CSLとして絶縁膜HSO1のみが形成されており、電荷蓄積層CSLには、挿入層AL1および絶縁膜HSO2が含まれていない。また、検討例1の絶縁膜HSO1の厚さは、本実施の形態の絶縁膜HSO1の厚さと、挿入層AL1の厚さと、絶縁膜HSO2の厚さとを合計した程度の厚さとなっている。
【0047】
検討例2の半導体装置は、
図28に示されるように、電荷蓄積層CSLとして絶縁膜HO、挿入層AL1および絶縁膜HSO2が形成されている。絶縁膜HOは、本実施の形態の絶縁膜HSO1のようなHf
xSi
1-xO
2(0<x<1)膜ではなく、酸化ハフニウム膜(HfO膜)である。また、検討例2の絶縁膜HOの厚さは、本実施の形態の絶縁膜HSO1の厚さと同程度である。
【0048】
検討例3の半導体装置は、
図29に示されるように、電荷蓄積層CSLとして挿入層AL1および絶縁膜HSO2が形成されており、絶縁膜HSO1が形成されていない。このため、検討例3の挿入層AL1は、絶縁膜BTと直接接している。また、検討例3の絶縁膜HSO2の厚さは、本実施の形態の絶縁膜HSO1の厚さと、絶縁膜HSO2の厚さとを合計した程度の厚さとなっている。
【0049】
図5の横軸は、メモリセルMC1に書込動作を行った後に、150℃の高温でメモリセルMC1を放置した時間を示している。
図5の縦軸は、フラットバンド電圧の変動量ΔVfbを示しており、具体的には、書込動作後に一定時間が経過した後のフラットバンド電圧(Vfb)と、書込動作を行う前のフラットバンド電圧(Vfbi)との差を示している。なお、
図5のΔVfbの値は、フラットバンド電圧の変動量の相対値である。また、ここでは、絶縁膜HSO1にHf
xSi
1-xO
2(x=0.8)膜を適用し、絶縁膜BTに酸窒化シリコン(SiON)膜を適用した場合で測定している。また、トップ絶縁膜TPは、酸化アルミニウム膜などの単層膜である場合で説明するが、後述の実施の形態3のように、トップ絶縁膜TPが、絶縁膜TP1~TP3のような積層膜であっても、フラットバンド電圧の変動量ΔVfbの比率は同様である。
【0050】
図5から判るように、本実施の形態(●)、検討例1(□)および検討例2(▲)では、時間の経過と共に、それぞれ上記変動量ΔVfbが減少しているが、本実施の形態(●)では、検討例1(□)および検討例2(▲)よりも、上記変動量ΔVfbの減少が抑制されている。すなわち、本実施の形態(●)では、検討例1(□)および検討例2(▲)よりも、リテンション特性が改善されていることが判る。
【0051】
また、リテンション特性が改善された結果から、本実施の形態(●)では絶縁膜HSO1と絶縁膜HSO2との間に、挿入層AL1を形成しているので、本実施の形態(●)の電荷蓄積層CSLの内部のトラップ準位は、検討例1(□)よりも、増えたと推測できる。
【0052】
また、本実施の形態(●)のように、絶縁膜HSO1にHfxSi1-xO2膜を適用したことで、検討例2(▲)のように、絶縁膜HSO1にHfO膜を適用するよりも、電荷蓄積層CSLの内部のトラップ準位が増えたと推測できる。
【0053】
図6は、検討例1の構造を基にして、電荷蓄積層CSLの内部に存在するトラップ準位を示した模式図である。●印は1.3eV~2.1eVのエネルギーを有する深いトラップ準位を示し、■印は0.8eV~1.3eVのエネルギーを有する浅いトラップ準位を示している。距離Xaは、メモリゲート電極MGから、絶縁膜TPと絶縁膜HSO1との界面付近までの距離を示している。距離Xbは、メモリゲート電極MGから絶縁膜HSO1の膜中までの距離を示している。距離Xcは、メモリゲート電極MGから、絶縁膜HSO1と絶縁膜BTとの界面付近までの距離を示している。
【0054】
図7(a)は、電荷蓄積層CSLの内部に存在するトラップ準位を、TSC-CV(Thermally Stimulated Current-Capacitance Voltage)法を用いて、エネルギー的な分布深さ毎に分解したグラフを示している。
図7(a)の縦軸は、フラットバンド電圧の変動量ΔVfbを示し、
図7(a)の横軸は、ゲート絶縁膜MZの電気的な厚さを示している。ここでは、絶縁膜BTの厚さと絶縁膜TPの厚さとが一定であるとして測定した結果を示している。
【0055】
ここで、電荷蓄積層CSLに蓄積された電荷Qによるフラットバンド電圧の変動量ΔVfbは、以下の式(1)で表され、メモリゲート電極MGから電荷Qまでの距離Xに比例し、誘電率kに反比例する。なお、容量Cは、電荷Qとメモリゲート電極MGとの間の容量である。
【0056】
ΔVfb=Q/C=Q×X/k (1)
距離Xを
図6の距離Xa~Xcに当てはめた場合、X=Xaの時には、変動量ΔVfbはほぼ一定となる。X=Xbの時には、電荷蓄積層CSLの膜中において距離Xbが変化するので、変動量ΔVfbはXbの積分値(∫Xbdx)に比例する。すなわち、変動量ΔVfbはXbの2乗(Xb
2)に比例する。X=Xcの時には、変動量ΔVfbはXcに比例する。
【0057】
このため、
図7(a)の破線で示されるように、深いトラップ準位(●)においては、厚さ方向に対して変動量ΔVfbはほぼ一定となり、浅いトラップ準位(■)においては、厚さ方向に対して変動量ΔVfbはほぼ二次曲線と重なっている。
【0058】
図7(b)は、TSC-CV法を用いて、ゲート絶縁膜MZの膜中に存在するトラップ準位の表面密度を求めたグラフである。
図7の横軸は、絶縁膜TPと絶縁膜HSO1との界面付近、絶縁膜HSO1の膜中、および、絶縁膜HSO1と絶縁膜BTとの界面付近における、各々の領域を示している。
図7の縦軸は、トラップ準位の表面密度の値を示している。ここでは、検討例1の構造において、絶縁膜BTが酸窒化シリコン膜であり、絶縁膜HSO1がハフニウムシリケート膜であり、絶縁膜TPが酸化アルミニウム膜である場合で測定している。
【0059】
図7(b)に示されるように、深いトラップ準位は、酸化アルミニウム膜である絶縁膜TPと、ハフニウムシリケート膜である絶縁膜HSO1との界面に多く存在していることが判る。すなわち、
図7(a)および
図7(b)の結果から、ゲート絶縁膜MZの内部のトラップ準位は、
図6のような分布になっていることが判る。
【0060】
本願発明者らは、この結果を応用し、ハフニウムシリケート膜の膜中に酸化アルミニウム膜を挿入することで、ハフニウムシリケート膜と酸化アルミニウム膜との界面を多く形成し、多くの深いトラップ準位を形成することを考案した。すなわち、本実施の形態では、絶縁膜HSO1と絶縁膜HSO2との間に、挿入層AL1が形成されていることで、電荷蓄積層CSLの内部において、多くの深いトラップ準位を存在させることが可能となっている。
【0061】
以上のように、
図6および
図7の結果と、
図5の結果とを組み合わせて考察すると、本実施の形態の電荷蓄積層CSLの厚さは、検討例1の電荷蓄積層CSLの厚さとほぼ同じであるにも関わらず、本実施の形態では、検討例1よりも、リテンション特性が改善されている。これは、本実施の形態では、絶縁膜HSO1と絶縁膜HSO2との間に、挿入層AL1を形成することで、絶縁膜HSO1と挿入層AL1との界面付近、および、絶縁膜HSO2と挿入層AL1との界面付近に、より多くの深いトラップ準位を存在させる事ができるからである。言い換えれば、電荷蓄積層CSLの内部において、ハフニウムシリケート膜と酸化アルミニウム膜との界面、すなわち深いトラップ準位が形成され易い界面が増えている。従って、電荷蓄積層CSLの中央部に近い位置に、より多くの深いトラップ準位を存在させることができる。これにより、リテンション特性が改善できるので、半導体装置の信頼性を向上させることができる。
【0062】
更に、本実施の形態の電荷蓄積層CSLでは、絶縁膜HSO1は、ハフニウム(Hf)、シリコン(Si)および酸素(O)を含む膜であり、好ましくはHfxSi1-xO2(0<x<1)膜のようなハフニウムシリケート膜である。これにより、検討例2のように、絶縁膜HSO1にHfO膜を適用するよりも、電荷蓄積層CSLの内部において、深いトラップ準位を増やすことができ、リテンション特性を改善させることができる。
【0063】
図8の横軸は、メモリセルMC1に書込動作を行った後に、室温(26℃)でメモリセルMC1を放置した時間を示している。
図8の縦軸は、
図5の縦軸と同様に、フラットバンド電圧の変動量ΔVfbを示している。
【0064】
図8から判るように、本実施の形態(●)および検討例3(▲)では、時間の経過と共に、それぞれ上記変動量ΔVfbが減少しているが、本実施の形態(●)では、検討例3(▲)よりも、上記変動量ΔVfbの減少が抑制されている。すなわち、本実施の形態(●)では、検討例3(▲)よりも、リテンション特性が改善されていることが判る。また、
図8のグラフは室温でメモリセルMC1を放置したものであるが、例えば150℃以上の高温でメモリセルMC1を放置した場合には、本実施の形態(●)の変動量ΔVfbと、検討例3(▲)変動量ΔVfbとの差が、更に大きくなることは自明である。
【0065】
すなわち、検討例3のように、絶縁膜HSO1を形成せずに、挿入層AL1を絶縁膜BTに直接接するように形成すると、リテンション特性が劣化した。このため、本実施の形態のように、挿入層AL1が絶縁膜BTに直接接しないように、挿入層AL1は絶縁膜HSO1と絶縁膜HSO2との間に形成し、絶縁膜HSO1が絶縁膜BTに直接接していることが好ましい。これにより、リテンション特性を改善させることができる。
【0066】
<メモリセルMC1の製造方法>
以下に、
図9~
図13を用いて、本実施の形態の半導体装置の製造方法を説明する。
【0067】
まず、
図9に示されるように、フォトリソグラフィ法およびイオン注入法によって、例えばボロン(B)または二フッ化ボロン(BF
2)を半導体基板SB内に導入することで、p型のウェル領域PWを形成する。
【0068】
図10は、ゲート絶縁膜MZの形成工程を示している。なお、
図10以降では、図面を見易くするために、ゲート絶縁膜MZを単層膜として図示しているが、実際には、
図10の破線で囲まれた領域である拡大図のように、ゲート絶縁膜MZは、絶縁膜BT、絶縁膜HSO1、挿入層AL1、絶縁膜HSO2および絶縁膜TPを有する積層膜である。
【0069】
まず、例えばISSG(In Situ Steam Generation)酸化法によって、半導体基板SB上に、例えば酸化シリコン膜である絶縁膜BTを形成する。絶縁膜BTは、例えば2nm~5nmの厚さを有する。その後、NO処理またはプラズマ窒化処理を行うことで、酸化シリコン膜を窒化して、酸窒化シリコン膜としてもよい。
【0070】
次に、半導体基板SB上に、絶縁膜BTを介して、絶縁膜HSO1、挿入層AL1および絶縁膜HSO2を有する電荷蓄積層CSLを形成する。
【0071】
例えば、LPCVD(Low Pressure Chemical Vapor Deposition)法またはALD(Atomic Layer Deposition)法によって、絶縁膜BT上に、ハフニウム(Hf)、シリコン(Si)および酸素(O)を含む絶縁膜HSO1を形成する。絶縁膜HSO1は、例えば5nm~9nmの厚さを有する。また、絶縁膜HSO1形成時の成膜温度は、例えば200℃~500℃である。
【0072】
次に、LPCVD法またはALD法によって、絶縁膜HSO1上に、ハフニウムと異なる金属として、アルミニウム(Al)を含む挿入層AL1を形成する。挿入層AL1は、例えば1nm~4nmの厚さを有する。また、挿入層AL1形成時の成膜温度は、例えば200℃~500℃である。
【0073】
次に、LPCVD法またはALD法によって、挿入層AL1上に、ハフニウム(Hf)、シリコン(Si)および酸素(O)を含む絶縁膜HSO2を形成する。絶縁膜HSO2は、挿入層AL1と異なる材料からなり、絶縁膜HSO1と同じ材料からなり、例えば5nm~9nmの厚さを有する。また、絶縁膜HSO2形成時の成膜温度は、例えば200℃~500℃である。
【0074】
次に、LPCVD法またはALD法によって、電荷蓄積層CSL上に、アルミニウム(Al)および酸素(O)を含む絶縁膜TPを形成する。絶縁膜TPは、絶縁膜HSO2と異なる材料からなり、好ましくは酸化アルミニウム膜、酸窒化アルミニウム膜またはアルミニウムシリケート膜であり、例えば5nm~10nmの厚さを有する。また、絶縁膜TP形成時の成膜温度は、例えば200℃~500℃である。
【0075】
次に、主に、絶縁膜HSO1、挿入層AL1、絶縁膜HSO2および絶縁膜TPを結晶化させる目的で、例えば800℃~1050℃の熱処理を行う。この熱処理により、これらの絶縁膜が、非晶質膜から多結晶膜となる。ここで、絶縁膜HSO1および絶縁膜HSO2が、HfxSi1-xO2(0.9≦x<1)膜である場合には、熱処理の温度を800℃以上、975℃未満とし、絶縁膜HSO1および絶縁膜HSO2が、HfxSi1-xO2(0<x<0.9)膜である場合には、熱処理の温度を975℃以上、1050℃以下とする。このように熱処理の温度を調整することで、絶縁膜HSO1および絶縁膜HSO2を適切に結晶化させることができる。
【0076】
図11は、メモリゲート電極MGの形成工程を示している。
【0077】
まず、例えばLPCVD法によって、ゲート絶縁膜MZ上に、例えば多結晶シリコン膜のような導電性膜を形成する。次に、フォトリソグラフィ法およびイオン注入法によって、多結晶シリコン膜に、n型の不純物を導入する。なお、この導電性膜は、p型の不純物が導入された多結晶シリコン膜、または、不純物が導入されていない多結晶シリコン膜でもよい。また、この導電性膜は、例えば窒化チタン膜、アルミニウム膜若しくはタングステン膜のような金属膜、または、これらの金属膜の積層膜であってもよい。
【0078】
次に、フォトリソグラフィ法およびエッチング処理によって、上記導電性膜をパターニングし、メモリゲート電極MGを形成する。その後、ドライエッチング処理およびウェットエッチング処理によって、メモリゲート電極MGから露出しているゲート絶縁膜MZを除去する。
【0079】
図12は、エクステンション領域EXSおよびエクステンション領域EXDの形成工程を示している。
【0080】
フォトリソグラフィ法およびイオン注入法によって、例えばヒ素(As)またはリン(P)をメモリゲート電極MGの横のウェル領域PW内に導入することで、n型の不純物領域であるエクステンション領域EXSおよびエクステンション領域EXDを形成する。エクステンション領域EXSはメモリセルMC1のソース領域の一部を構成し、エクステンション領域EXDはメモリセルMC1のドレイン領域の一部を構成する。
【0081】
図13は、サイドウォールスペーサSW、拡散領域MS、拡散領域MDおよびシリサイド層SIの形成工程を示している。
【0082】
まず、メモリゲート電極MGを覆うように、例えばLPCVD法により、例えば窒化シリコン膜からなる絶縁膜を形成する。次に、この絶縁膜に対して異方性エッチングを行うことで、メモリゲート電極MGの側面に、サイドウォールスペーサSWを形成する。なお、サイドウォールスペーサSWを構成する絶縁膜は、酸化シリコン膜と、酸化シリコン膜上に形成された窒化シリコン膜としてもよい。
【0083】
次に、フォトリソグラフィ法およびイオン注入法によって、サイドウォールスペーサSWをマスクとして例えばヒ素(As)またはリン(P)をウェル領域PW内に導入することで、n型の不純物領域である拡散領域MSおよび拡散領域MDを形成する。拡散領域MSは、エクステンション領域EXSよりも高い不純物濃度を有し、エクステンション領域EXSと接続し、メモリセルMC1のソース領域の一部を構成する。拡散領域MDは、エクステンション領域EXDよりも高い不純物濃度を有し、エクステンション領域EXDと接続し、メモリセルMC1のドレイン領域の一部を構成する。
【0084】
次に、サリサイド(Salicide:Self Aligned Silicide)技術により、拡散領域MS、拡散領域MSおよびメモリゲート電極MGの各々の上面上に、低抵抗のシリサイド層SIを形成する。
【0085】
シリサイド層SIは、具体的には次のようにして形成することができる。まず、サイドウォールスペーサSW、拡散領域MS、拡散領域MSおよびメモリゲート電極MGを覆うように、シリサイド層SI形成用の金属膜を形成する。この金属膜は、例えばコバルト、ニッケルまたはニッケル白金合金からなる。次に、半導体基板SBに、例えば300℃~500℃の第1熱処理と、例えば600℃~700℃の第2熱処理とを施すことによって、拡散領域MS、拡散領域MDおよびメモリゲート電極MGに含まれる材料と、上記金属膜と反応させる。これにより、拡散領域MS、拡散領域MSおよびメモリゲート電極MGの各々の上面上に、シリサイド層SIが形成される。その後、未反応の金属膜を除去する。
【0086】
以上のようにして、本実施の形態のメモリセルMC1が形成される。
【0087】
図13の工程後、層間絶縁膜IL1、プラグPG、層間絶縁膜IL2および配線M1を形成することで、
図1に示される半導体装置が製造される。
【0088】
まず、メモリセルMC1を覆うように、層間絶縁膜IL1を形成する。層間絶縁膜IL1としては、酸化シリコン膜の単体膜、または、窒化シリコン膜とその上に厚い酸化シリコン膜とを形成した積層膜などを用いることができる。層間絶縁膜IL1の形成後、必要に応じて、層間絶縁膜IL1の上面をCMP(Chemical Mechanical Polishing)法で研磨してもよい。
【0089】
次に、フォトリソグラフィ法およびドライエッチング法などによって、層間絶縁膜IL1内にコンタクトホールを形成し、コンタクトホール内にタングステンなど主体とする導電性膜を埋め込むことで、層間絶縁膜IL1内に複数のプラグPGを形成する。複数のプラグPGは、それぞれシリサイド層SIを介して、拡散領域MSおよび拡散領域MDに接続される。なお、メモリゲート電極MGもプラグPGに接続されるが、本実施の形態ではその図示を省略する。
【0090】
次に、プラグPGが埋め込まれた層間絶縁膜IL1上に層間絶縁膜IL2を形成する。その後、層間絶縁膜IL2に配線用の溝を形成した後、配線用の溝内に例えば銅を主成分とする導電性膜を埋め込むことで、層間絶縁膜IL2内にプラグPGに接続される配線M1を形成する。この配線M1の構造は、所謂ダマシン(Damascene)配線構造と呼ばれる。
【0091】
その後、デュアルダマシン(Dual Damascene)法などにより、2層目以降の配線を形成するが、ここではそれらの説明および図示は省略する。また、配線M1および配線M1よりも上層の配線は、ダマシン配線構造に限定されず、例えばタングステン膜またはアルミニウム膜をパターニングすることで形成してもよい。
【0092】
(実施の形態2)
以下に、実施の形態2の半導体装置を、
図14を用いて説明する。なお、以下の説明では、実施の形態1との相違点を主に説明する。
図14は、実施の形態2の半導体装置の要部を拡大した断面図であり、ゲート絶縁膜MZの詳細な構造を示す断面図である。
【0093】
実施の形態1では、電荷蓄積層CSLの内部において、ハフニウムシリケート膜(絶縁膜HSO1、絶縁膜HSO2)の膜中に、1層の酸化アルミニウム膜(挿入層AL1)が形成されていた。すなわち、絶縁膜HSO1と絶縁膜HSO2との間に、挿入層AL1が形成されていた。
【0094】
図14に示されるように、実施の形態2では、電荷蓄積層CSLは、絶縁膜HSO1~HSO3を有し、絶縁膜HSO1と絶縁膜HSO2と間に挿入層AL1を有し、絶縁膜HSO2と絶縁膜HSO3と間に挿入層AL2を有している。
【0095】
絶縁膜HSO3は、絶縁膜HOS1または絶縁膜HSO2と同じ材料からなる膜であり、ハフニウムシリケート膜などである。また、挿入層AL2は、ハフニウムと異なる金属を含む膜であり、挿入層AL1と同じ材料からなる膜であり、酸化アルミニウム膜などである。また、絶縁膜HSO3を形成する方法は、絶縁膜HSO1と同じであり、挿入層AL2を形成する方法は、挿入層AL1と同じである。
【0096】
このように、実施の形態2では、ハフニウム、シリコンおよび酸素を含む膜(絶縁膜HSO1~HSO3)の膜中に、2層のアルミニウムを含む膜(挿入層AL1、挿入層AL2)が形成されている。従って、ハフニウムシリケート膜と酸化アルミニウム膜との界面が、実施の形態1と比較して、2倍となる。このため、電荷蓄積層CSLの内部において、より多くのトラップ準位を存在させることができる。従って、メモリセルMC1のリテンション特性を更に改善させることができる。
【0097】
また、実施の形態2では、2層のアルミニウムを含む膜(挿入層AL1、挿入層AL2)を例示したが、3層以上のアルミニウムを含む膜を形成してもよい。
【0098】
例えば、実施の形態2のように、挿入層AL1の厚さを1nm~4nmに設定した場合、電荷蓄積層CSLは、最大で4層の酸化アルミニウム膜と、最大で5層のハフニウムシリケート膜とを有する。この場合、電荷蓄積層CSLの内部において、ハフニウムシリケート膜と酸化アルミニウム膜との界面の数は8つとなる。
【0099】
なお、実施の形態2の電荷蓄積層CSLは、実施の形態1よりも多くの膜を有することになるが、積層膜からなる電荷蓄積層CSLの合計の厚さが大きくなりすぎると、ゲート絶縁膜MZのEOTが増加することになる。従って、実施の形態2の電荷蓄積層CSLの厚さが、実施の形態1の電荷蓄積層CSLの厚さと同程度になるように、絶縁膜HSO1~HSO3、挿入層AL1および挿入層AL2の各々の厚さを調整することが好ましい。
【0100】
(実施の形態3)
以下に、実施の形態3の半導体装置を、
図15および
図16を用いて説明する。なお、以下の説明では、実施の形態1との相違点を主に説明する。
図15は、実施の形態3の半導体装置の要部を拡大した断面図であり、ゲート絶縁膜MZの詳細な構造を示す断面図である。
図16は、ゲート絶縁膜MZのうちの一部を拡大し、絶縁膜TPの詳細な構造を示す断面図である。
【0101】
実施の形態1では、トップ絶縁膜TPは、酸化アルミニウム膜などからなる単層膜であった。
【0102】
図15に示されるように、実施の形態3では、トップ絶縁膜TPは、電荷蓄積層CSL上に形成された絶縁膜TP1と、絶縁膜TP1上に形成された絶縁膜TP2と、絶縁膜TP2上に形成された絶縁膜TP3とを有する積層膜である。
【0103】
絶縁膜TP1は、窒化シリコン膜よりも高い誘電率を有する膜であり、絶縁膜HSO2と異なる材料からなる酸化金属膜であり、例えば2nm~5nmの厚さを有する。具体的に、絶縁膜TP1は、アルミニウム(Al)および酸素(O)を含む膜であり、好ましくは酸化アルミニウム膜、酸窒化アルミニウム膜またはアルミニウムシリケート膜であり、より好ましくはAl2O3膜である。また、絶縁膜TP1として、他の酸化金属膜を用いることもでき、例えば、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)またはルテチウム(Lu)の何れかの金属の酸化物からなる酸化金属膜を、絶縁膜TP1として用いることもできる。
【0104】
絶縁膜TP2は、絶縁膜TP1と異なる材料からなる膜であり、酸化シリコン膜、酸窒化シリコン膜または窒化シリコン膜であり、例えば1nm~2nmの厚さを有する。このような絶縁膜TP2は、例えばLPCVD法またはALD法によって形成することができる。
【0105】
絶縁膜TP3は、絶縁膜TP1と同じ材料からなる膜であり、例えば2nm~5nmの厚さを有する。また、絶縁膜TP1および絶縁膜TP3は、実施の形態1の絶縁膜TPと同じ方法で形成することができる。
【0106】
絶縁膜TP1および絶縁膜TP3は、主に、電荷蓄積層CSLの内部に蓄積された電荷が、メモリゲート電極MGへ抜けることを防止する役目を果たす。このため、絶縁膜TP1および絶縁膜TP3は、絶縁膜HSO2を構成する絶縁膜よりもバンドギャップが大きい絶縁膜であることが好ましく、挿入層AL1よりも厚い厚さを有していることが好ましい。
【0107】
実施の形態3では、絶縁膜TP1と絶縁膜TP3との間に、これらと異なる材料からなる絶縁膜TP2を形成している。このため、電荷蓄積層CSLの内部に蓄積された電荷が、絶縁膜TPを介して、メモリゲート電極MGへ抜けやすくなることを防止でき、メモリセルMC1のリテンション特性を改善させることができる。以下に、このような理由について説明する。
【0108】
実施の形態1では、電荷蓄積層CSLとメモリゲート電極MGとの間には、絶縁膜TPのような酸化アルミニウム膜などからなる単層膜が形成されている。このとき、絶縁膜TPの内部において、大きな結晶粒(グレイン)が形成されていると、この結晶粒の外周を構成する粒界が、電荷蓄積層CSLとメモリゲート電極MGとを繋いでしまう。このため、粒界がリーク経路となり、電荷蓄積層CSLの内部に蓄積された電荷が、メモリゲート電極MGへリークする恐れがある。
【0109】
絶縁膜TP2は、主に、上記リーク経路を分断するために設けられている。すなわち、
図16に示されるように、絶縁膜TP1を構成する複数の結晶粒GR1と、絶縁膜TP3を構成する複数の結晶粒GR2とは、絶縁膜TP2によって分離されている。絶縁膜TP1および絶縁膜TP3は、それぞれ別々に形成されるため、絶縁膜TP1の粒界GB1の位置と、絶縁膜TP3の粒界GB2の位置とをずらすことができ、絶縁膜TP1の粒界GB1と絶縁膜TP3の粒界GB2とを分断することができる。
【0110】
また、実施の形態1では、
図10の工程時に熱処理を行うことにより、絶縁膜TPを結晶化していた。実施の形態3でも同じ熱処理を行うことで、非晶質膜であった絶縁膜TP1および絶縁膜TP3が結晶化され、多結晶膜となるが、絶縁膜TP2は、非晶質膜として残すこともできる。絶縁膜TP2が非晶質膜であることで、絶縁膜TP1の粒界GB1と絶縁膜TP3の粒界GB2とが、絶縁膜TP2を介して繋がる恐れを、より確実に防止できる。
【0111】
このように、実施の形態3では、電荷蓄積層CSLとメモリゲート電極MGとの間において、絶縁膜TPの粒界に起因したリークが発生することを抑制できる。従って、メモリセルMC1のリテンション特性を更に向上させることができ、半導体装置の信頼性を更に向上させることができる。
【0112】
また、実施の形態3に開示した技術を、実施の形態2と組み合わせて用いることもできる。
【0113】
(実施の形態4)
以下に、実施の形態4の半導体装置を
図17~
図19を用いて説明し、実施の形態4の半導体装置の製造方法を
図20~
図25を用いて説明する。なお、以下の説明では、実施の形態1との相違点を主に説明する。
【0114】
実施の形態1のメモリセルMC1は、メモリゲート電極MGを有するシングルゲート型のメモリセルであった。
【0115】
実施の形態4のメモリセルMC2は、メモリゲート電極MGだけでなく、メモリゲート電極MGと隣接する位置に制御ゲート電極CGを有するスプリットゲート型のメモリセルである。以下に、実施の形態4における不揮発性メモリセルであるメモリセルMC2を備える半導体装置について説明する。
図17は、メモリセルMC2の断面図を示している。
【0116】
<メモリセルMC2の構造>
図17に示されるように、半導体基板SBには、p型のウェル領域PWが形成されている。ウェル領域PW上には、ゲート絶縁膜GFが形成され、ゲート絶縁膜GF上には、制御ゲート電極CGが形成されている。ゲート絶縁膜GFは、例えば酸化シリコン膜であり、例えば2nm~5nmの厚さを有する。ゲート絶縁膜GFは、酸化シリコン膜に代えて、酸化ハフニウム膜などの酸化金属膜のような高誘電率膜であってもよい。制御ゲート電極CGは、例えばn型の不純物が導入された多結晶シリコン膜である。また、制御ゲート電極CGは、例えば窒化チタン膜、アルミニウム膜若しくはタングステン膜のような金属膜、または、これらの金属膜の積層膜であってもよい。
【0117】
ウェル領域PW上、および、制御ゲート電極CGの一方の側面上には、ゲート絶縁膜MZが形成されている。実施の形態4のゲート絶縁膜MZは、実施の形態1のゲート絶縁膜MZと同じ構造である。なお、
図17では、図面を見易くするために、ゲート絶縁膜MZを単層膜として図示しているが、実際には、
図17の破線で囲まれた領域である拡大図のように、ゲート絶縁膜MZは、絶縁膜BT、絶縁膜HSO1、挿入層AL1、絶縁膜HSO2および絶縁膜TPを有する積層膜である。
【0118】
制御ゲート電極CGの一方の側面上には、ゲート絶縁膜MZを介して、メモリゲート電極MGが形成されている。すなわち、制御ゲート電極CGとメモリゲート電極MGとの間には、ゲート絶縁膜MZのような絶縁膜が形成されており、制御ゲート電極CGは、メモリゲート電極MGと絶縁分離されている。メモリゲート電極MGの2つの側面のうち、制御ゲート電極CGと反対側の側面上、および、制御ゲート電極CGの他方の側面上には、サイドウォールスペーサSWが形成されている。
【0119】
メモリゲート電極MG側のサイドウォールスペーサSWの下部のウェル領域PWには、n型の不純物領域であるエクステンション領域EXSが形成されており、制御ゲート電極CG側のサイドウォールスペーサSWの下部のウェル領域PWには、n型の不純物領域であるエクステンション領域EXDが形成されている。エクステンション領域EXSは、メモリセルMC2のソース領域の一部を構成し、エクステンション領域EXDは、メモリセルMC2のドレイン領域の一部を構成する。
【0120】
メモリゲート電極MG側のサイドウォールスペーサSWに整合する位置のウェル領域PWには、n型の不純物領域である拡散領域MSが形成されており、制御ゲート電極CG側のサイドウォールスペーサSWに整合する位置のウェル領域PWには、n型の不純物領域である拡散領域MDが形成されている。拡散領域MSは、エクステンション領域EXSよりも高い不純物濃度を有し、エクステンション領域EXSに接続し、メモリセルMC2のソース領域の一部を構成する。拡散領域MDは、エクステンション領域EXDよりも高い不純物濃度を有し、エクステンション領域EXDに接続し、メモリセルMC2のドレイン領域の一部を構成する。
【0121】
メモリゲート電極MG上、制御ゲート電極CG上、拡散領域MS上および拡散領域MD上には、シリサイド層SIが形成されている。
【0122】
なお、メモリセルMC2の上方には、実施の形態1と同様に、層間絶縁膜IL1、プラグPG、層間絶縁膜IL2および配線M1などが形成されているが、ここではこれらの図示を省略している。
【0123】
<メモリセルMC2の動作について>
次に、不揮発性メモリセルであるメモリセルMC2の動作例について、
図18および
図19を参照して説明する。なお、ここで説明するメモリセルMC2は、半導体装置内に存在している複数のメモリセルMC2のうち、選択メモリセルである。
【0124】
図18は、不揮発性メモリのメモリセルMC2の等価回路図である。
図19は、「書込」、「消去」および「読出」時におけるメモリセルMC2の各部位への電圧の印加条件の一例を示す表である。
図19の表には、「書込」、「消去」および「読出」時のそれぞれにおいて、ドレイン領域である拡散領域MDに印加される電圧Vd、制御ゲート電極CGに印加される電圧Vcg、メモリゲート電極MGに印加される電圧Vmg、ソース領域である拡散領域MSに印加される電圧Vs、および、ウェル領域PWに印加される電圧Vbが記載されている。
【0125】
なお、
図19の表に示したものは電圧の印加条件の好適な一例であり、これに限定されるものではなく、必要に応じて種々変更可能である。また、実施の形態4では、電荷蓄積層CSLへの電子の注入を「書込」と定義し、電荷蓄積層CSLへのホール(正孔)の注入を「消去」と定義する。
【0126】
書込動作は、SSI(Source Side Injection:ソースサイド注入)方式と呼ばれる、ソースサイド注入によるホットエレクトロン注入を用いた書込み方式によって行われる。例えば
図19の「書込」の欄に示されるような電圧を、書込みを行うメモリセルMC2の各部位に印加し、電荷蓄積層CSLに電子を注入することで書込みを行う。
【0127】
この際、ホットエレクトロンは、メモリゲート電極MGおよび制御ゲート電極CGに覆われた箇所(チャネル領域)で発生し、メモリゲート電極MGの下部の電荷蓄積層CSLにホットエレクトロンが注入される。注入されたホットエレクトロンは、電荷蓄積層CSL中のトラップ準位に捕獲され、その結果、メモリゲート電極MGを有するメモリトランジスタのしきい値電圧が上昇する。すなわち、メモリトランジスタは書込状態となる。
【0128】
消去動作は、BTBT(Band-To-Band Tunneling:バンド間トンネル現象)方式と呼ばれる、BTBTによるホットホール注入を用いた消去方式によって行われる。すなわち、BTBTにより発生したホールを電荷蓄積層CSLに注入することにより消去を行う。例えば
図19の「消去」の欄に示されるような電圧を、消去を行うメモリセルMC2の各部位に印加し、BTBT現象によりホールを発生させ、電界加速することで電荷蓄積層CSL中にホールを注入する。その結果、メモリトランジスタのしきい値電圧が低下する。すなわち、メモリトランジスタは消去状態となる。
【0129】
読出動作には、例えば
図19の「読出」の欄に示されるような電圧を、読出しを行うメモリセルMC2の各部位に印加する。読出し時のメモリゲート電極MGに印加される電圧Vmgを、書込状態におけるメモリトランジスタのしきい値電圧と、消去状態におけるメモリトランジスタのしきい値電圧との間の値にすることで、書込状態または消去状態を判別することができる。
【0130】
実施の形態4のメモリセルMC2は、実施の形態1のメモリセルMC1と同様に、ゲート絶縁膜MZは、絶縁膜BT、絶縁膜HSO1、挿入層AL1、絶縁膜HSO2および絶縁膜TPを有する積層膜である。このため、実施の形態4においても、メモリセルMC2のリテンション特性を改善させることができ、半導体装置の信頼性を向上させることができる。
【0131】
<メモリセルMC2の製造方法>
以下に、
図20~
図25を用いて、実施の形態4の半導体装置の製造方法を説明する。
【0132】
まず、
図20に示されるように、フォトリソグラフィ法およびイオン注入法をもちいて、半導体基板SBに、p型のウェル領域PWを形成する。
【0133】
次に、例えば熱酸化法またはISSG酸化法によって、例えば酸化シリコンからなるゲート絶縁膜GFを形成する。その後、NO処理またはプラズマ窒化処理を行うことで、酸化シリコン膜を窒化して、酸窒化シリコン膜としてもよい。また、ゲート絶縁膜GFとして、例えばALD法によって、例えば酸化ハフニウム膜などの酸化金属膜を形成してもよい。
【0134】
次に、ゲート絶縁膜GF上に、例えばCVD法を用いて、例えば多結晶シリコン膜からなる導電性膜を堆積する。また、この導電性膜は、例えば窒化チタン膜、アルミニウム膜若しくはタングステン膜のような金属膜、または、これらの金属膜の積層膜であってもよい。次に、フォトリソグラフィ法およびドライエッチング法を用いて、導電性膜をパターニングする。これにより、導電性膜が加工されて制御ゲート電極CGが形成される。次に、制御ゲート電極CGから露出しているゲート絶縁膜GFを除去することで、制御ゲート電極CG下にゲート絶縁膜GFが残される。
【0135】
図21は、ゲート絶縁膜MZの形成工程を示している。
【0136】
ウェル領域PW上、並びに、制御ゲート電極CGの上面上および側面上に、絶縁膜MZを形成する。上述のように、ゲート絶縁膜MZは、絶縁膜BT、絶縁膜HSO1、挿入層AL1、絶縁膜HSO2および絶縁膜TPからなり、これらの絶縁膜の形成方法は、実施の形態1と同様である。
【0137】
図22は、メモリゲート電極MGの形成工程を示している。
【0138】
まず、ゲート絶縁膜MZ上に、例えばCVD法を用いて、例えば多結晶シリコンからなる導電性膜を堆積する。また、この導電性膜は、例えば窒化チタン膜、アルミニウム膜若しくはタングステン膜のような金属膜、または、これらの金属膜の積層膜であってもよい。次に、異方性エッチング処理を行い、導電性膜をサイドウォール状に加工することで、制御ゲート電極CGの両側面に、ゲート絶縁膜MZを介して、導電性膜からなるメモリゲート電極MGを形成する。
【0139】
図23は、ゲート絶縁膜MZの一部およびメモリゲート電極MGの一部の除去工程を示している。
【0140】
まず、制御ゲート電極CGの一方の側面に形成されているメモリゲート電極MGを覆うレジストパターンを形成する。次に、このレジストパターンをマスクとして、ドライエッチング処理およびウェットエッチング処理を行うことで、レジストパターンに覆われていないゲート絶縁膜MZおよびメモリゲート電極MGを除去する。これにより、メモリセルMC2のドレイン領域側のゲート絶縁膜MZおよびメモリゲート電極MGが除去され、メモリセルMC2のソース領域側のゲート絶縁膜MZおよびメモリゲート電極MGが残される。
【0141】
図24は、エクステンション領域EXDおよびエクステンション領域EXSの形成工程を示している。
【0142】
フォトリソグラフィ法およびイオン注入法によって、例えばヒ素(As)またはリン(P)をウェル領域PW内に導入することで、n型のエクステンション領域EXDおよびn型のエクステンション領域EXSを形成する。エクステンション領域EXDおよびエクステンション領域EXSは、制御ゲート電極CGおよびメモリゲート電極MGに対して自己整合で形成される。
【0143】
図25は、サイドウォールスペーサSW、拡散領域MDおよび拡散領域MSの形成工程を示している。
【0144】
まず、メモリセルMCを覆うように、例えばCVD法によって、例えば窒化シリコンからなる絶縁膜を形成する。次に、この絶縁膜に対して異方性ドライエッチング処理を行うことで、制御ゲート電極CGの側面上およびメモリゲート電極MGの側面上に、サイドウォールスペーサSWが形成される。なお、サイドウォールスペーサSWを構成する絶縁膜は、酸化シリコン膜と、酸化シリコン膜上に形成された窒化シリコン膜としてもよい。
【0145】
次に、フォトリソグラフィ法およびイオン注入法によって、サイドウォールスペーサSWをマスクとして例えばヒ素(As)またはリン(P)をウェル領域PW内に導入することで、n型の拡散領域MDおよびn型の拡散領域MSを形成する。
【0146】
その後、実施の形態1と同様な方法によって、メモリゲート電極MG上、制御ゲート電極CG上、拡散領域MS上および拡散領域MD上に、シリサイド層SIを形成することで、
図17に示されるメモリセルMC2が製造される。
【0147】
また、このような実施の形態4のメモリセルMC2に、実施の形態2および実施の形態3の技術を組み合わせて適用することもできる。
【0148】
(変形例)
以下に、実施の形態4の変形例の半導体装置を、
図26を用いて説明する。なお、以下の説明では、実施の形態4との相違点を主に説明する。
【0149】
本変形例のメモリセルMC3は、実施の形態4のメモリセルMC2と同様に、メモリゲート電極MGおよび制御ゲート電極CGを有するスプリットゲート型のメモリセルである。実施の形態4では、先にゲート絶縁膜GFおよび制御ゲート電極CGを形成し、その後、ゲート絶縁膜MZおよびメモリゲート電極MGを形成していたが、本変形例では、これらを形成する順番が逆になっている。
【0150】
以下に、
図26を用いて、本変形例のメモリセルMC3を備える半導体装置について説明する。
【0151】
図26に示されるように、ウェル領域PW(半導体基板SB)上には、ゲート絶縁膜MZが形成され、ゲート絶縁膜MZ上には、メモリゲート電極MGが形成されている。メモリゲート電極MGの一方の側面上には、絶縁膜IF1が形成されている。絶縁膜IF1は、例えば窒化シリコンまたは酸化シリコンからなる。ウェル領域PW上および絶縁膜IF1上には、ゲート絶縁膜GFが形成されている。絶縁膜IF1が窒化シリコン膜である場合には、
図26に示されるように、ISSG酸化法によって形成されるゲート絶縁膜GFは、絶縁膜IF1上にも形成される。絶縁膜IF1が酸化シリコン膜である場合には、ゲート絶縁膜GFは、絶縁膜IF1上に形成されない。また、ゲート絶縁膜GFをALD法によって、酸化ハフニウム膜のような高誘電率膜で形成する場合、絶縁膜IF1が窒化シリコン膜または酸化シリコン膜の何れかであっても、ゲート絶縁膜GFは絶縁膜IF1上にも形成される。
【0152】
メモリゲート電極MGの一方の側面上には、絶縁膜IF1およびゲート絶縁膜GFを介して、制御ゲート電極CGが形成されている。すなわち、制御ゲート電極CGとメモリゲート電極MGとの間には、少なくとも絶縁膜IF1のような絶縁膜が形成されており、制御ゲート電極CGは、メモリゲート電極MGと絶縁分離されている。
【0153】
ゲート絶縁膜MZ、メモリゲート電極MG、ゲート絶縁膜GFおよび制御ゲート電極CGの各々の構造および製造方法は、実施の形態4と同じである。
【0154】
制御ゲート電極CGの2つの側面のうち、メモリゲート電極MGと反対側の側面上、および、メモリゲート電極MGの他方の側面上には、サイドウォールスペーサSWが形成されている。メモリゲート電極MG側のサイドウォールスペーサSWの下部のウェル領域PWには、n型の不純物領域であるエクステンション領域EXSが形成されており、制御ゲート電極CG側のサイドウォールスペーサSWの下部のウェル領域PWには、n型の不純物領域であるエクステンション領域EXDが形成されている。メモリゲート電極MG側のサイドウォールスペーサSWに整合する位置のウェル領域PWには、n型の不純物領域である拡散領域MSが形成されており、制御ゲート電極CG側のサイドウォールスペーサSWに整合する位置のウェル領域PWには、n型の不純物領域である拡散領域MDが形成されている。メモリゲート電極MG上、制御ゲート電極CG上、拡散領域MS上および拡散領域MD上には、シリサイド層SIが形成されている。
【0155】
なお、メモリセルMC3の等価回路図、並びに、「書込」、「消去」および「読出」の各動作電圧は、
図18および
図19と同様である。
【0156】
このような本変形例においても、メモリセルMC3のリテンション特性を改善させることができ、半導体装置の信頼性を向上させることができる。
【0157】
以上、本発明者らによってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0158】
例えば、上述の実施の形態では、平坦な半導体基板SBに、メモリセルMC1~メモリセルMC3を形成する場合について説明したが、メモリセルMC1~メモリセルMC3をフィン構造としてもよい。すなわち、半導体基板SBの一部を凸状に加工して突出部を形成し、この突出部の上面および側面を覆うようにゲート絶縁膜MZを形成することで、メモリセルMC1~メモリセルMC3を設けても良い。
【符号の説明】
【0159】
AL1、AL2 挿入層
BT 絶縁膜(ボトム絶縁膜)
CG 制御ゲート電極
CSL 電荷蓄積層
EXD エクステンション領域
EXS エクステンション領域
GB1、GB2 粒界
GF ゲート絶縁膜
GR1、GR2 結晶粒
HO 絶縁膜
HSO1~HSO3 絶縁膜
IF1 絶縁膜
IL1、IL2 層間絶縁膜
MC1~MC3 メモリセル
MD 拡散領域
MG メモリゲート電極
MS 拡散領域
MZ ゲート絶縁膜
PG プラグ
PW ウェル領域
SB 半導体基板
SI シリサイド層
SW サイドウォールスペーサ
TP 絶縁膜(トップ絶縁膜)
TP1~TP3 絶縁膜