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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-15
(45)【発行日】2022-06-23
(54)【発明の名称】ステアリング装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 1/19 20060101AFI20220616BHJP
   B62D 1/181 20060101ALI20220616BHJP
【FI】
B62D1/19
B62D1/181
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018143339
(22)【出願日】2018-07-31
(65)【公開番号】P2020019327
(43)【公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000144810
【氏名又は名称】株式会社山田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(72)【発明者】
【氏名】関口 暢
(72)【発明者】
【氏名】本間 太輔
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-132358(JP,A)
【文献】特開2012-250638(JP,A)
【文献】特開2006-111090(JP,A)
【文献】特開2003-146225(JP,A)
【文献】特開2005-280655(JP,A)
【文献】特開2005-280654(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0230596(US,A1)
【文献】特開2005-119538(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向に沿う第1軸線回りに回転可能にステアリングシャフトが挿入されるパイプと、
車体に支持されるとともに、前記パイプを前記前後方向に移動可能に支持するハウジングと、
前記ハウジングに対して前記パイプを前記前後方向に移動させるテレスコ機構と、
前記パイプ及び前記テレスコ機構の間に設けられた荷重吸収機構と、を備え、
前記荷重吸収機構は、
前記パイプに設けられた第1支持部と、
前記テレスコ機構に設けられた第2支持部と、
前記第1支持部及び前記第2支持部の間に配置された中間支持部と、
前記第1支持部に固定されるとともに、前記第1支持部及び前記中間支持部間を接続する第1接続部材と、
前記第2支持部に固定されるとともに、前記第2支持部及び前記中間支持部間を接続する第2接続部材と、を備え、
前記荷重吸収機構は、前記パイプに作用する前方への荷重が所定値以上の場合に、前記第1接続部材と前記中間支持部とが相対的に摺動可能に構成されるとともに、前記第2接続部材と前記中間支持部とが相対的に摺動可能に構成されているステアリング装置。
【請求項2】
前記中間支持部は、前記前後方向に交差する交差方向から見て前記第1支持部及び前記第2支持部の間に重ね合わされ、
前記中間支持部には、
前記中間支持部を前記交差方向に貫通するとともに、前記前後方向に延びる第1長孔と、
前記中間支持部を前記交差方向に貫通するとともに、前記前後方向に延びる第2長孔と、が形成され、
前記第1接続部材は、前記第1長孔の後端部に挿入され、
前記第2接続部材は、前記第2長孔の前端部に挿入されている請求項1に記載のステアリング装置。
【請求項3】
前記第1長孔は、
前記第1長孔の後端部に位置して、前記第1接続部材が挿入された第1大径部と、
前記第1大径部の前方に連なるとともに、前記第1接続部材と前記中間支持部との前記前後方向への相対移動時に前記第1接続部材によって拡幅される第1小径部と、を有し、
前記第2長孔は、
前記第2長孔の前端部に位置して、前記第2接続部材が挿入された第2大径部と、
前記第2大径部の後方に連なるとともに、前記第2接続部材と前記中間支持部との前記前後方向への相対移動時に前記第2接続部材によって拡幅される第2小径部と、を有している請求項2に記載のステアリング装置。
【請求項4】
前記テレスコ機構は、
前記ハウジングに設けられたモータユニットと、
前記モータユニットの出力軸に連結された雄ねじを有するシャフトと、
前記パイプに設けられるとともに、前記シャフトに螺合されたナットと、を備えている請求項1から請求項3の何れか1項に記載のステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ステアリング装置では、運転者の体格差や運転姿勢に応じてステアリングホイールの前後位置を調整するテレスコピック機能を備えたものがある。この種のステアリング装置としては、車体に支持されたメインチューブと、前後方向に移動可能にメインチューブ内で保持されたアウタチューブと、アウタチューブ内に保持されたインナチューブと、を備えた構成が知られている(例えば、下記特許文献1参照)。インナチューブは、ステアリングシャフトを回転可能に支持している。
【0003】
上述した特許文献1発明において、インナチューブには、前後方向に延びるスリットが形成されている。アウタチューブは、インナチューブのスリットに挿通されたボルトによってインナチューブに連結されている。
【0004】
特許文献1発明に係るステアリング装置では、テレスコ動作の際、アウタチューブ、インナチューブ及びステアリングシャフトがメインチューブに対して一体で前後動する。
一方、二次衝突時において、所定の荷重がステアリングホイールに作用した場合には、インナチューブがアウタチューブに対して前方に移動しようとする。この際、ボルトがスリットを拡幅しながらインナチューブが前方に移動することで、二次衝突時に運転者に加わる衝撃荷重を緩和するとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-49923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した従来技術にあっては、二次衝突時におけるインナチューブのストロークを確保するには、スリットの長さを拡大する必要がある。しかしながら、スリットの長さを拡大し、ボルト等の移動スペースを確保すると、インナチューブ周辺のレイアウト性が低下する可能性がある。また、ステアリング装置が大型化する可能性がある。
【0007】
そこで、本発明は、レイアウト性の低下を抑制した上で、二次衝突時におけるパイプのストロークを確保できるステアリング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は以下の態様を採用した。
(1)本発明の一態様に係るステアリング装置は、前後方向に沿う第1軸線回りに回転可能にステアリングシャフトが挿入されるパイプと、車体に支持されるとともに、前記パイプを前記前後方向に移動可能に支持するハウジングと、前記ハウジングに対して前記パイプを前記前後方向に移動させるテレスコ機構と、前記パイプ及び前記テレスコ機構の間に設けられた荷重吸収機構と、を備え、前記荷重吸収機構は、前記パイプに設けられた第1支持部と、前記テレスコ機構に設けられた第2支持部と、前記第1支持部及び前記第2支持部の間に配置された中間支持部と、前記第1支持部に固定されるとともに、前記第1支持部及び前記中間支持部間を接続する第1接続部材と、前記第2支持部に固定されるとともに、前記第2支持部及び前記中間支持部間を接続する第2接続部材と、を備え、前記荷重吸収機構は、前記パイプに作用する前方への荷重が所定値以上の場合に、前記第1接続部材と前記中間支持部とが相対的に摺動可能に構成されるとともに、前記第2接続部材と前記中間支持部とが相対的に摺動可能に構成されている。
【0009】
本態様のステアリング装置では、二次衝突時において、第1接続部材と中間支持部との間に作用する荷重、及び中間支持部と第2接続部材との間に作用する荷重によって衝突荷重を緩和できる。すなわち、中間支持部は、第1接続部材及び第2接続部材の双方に対して相対的に摺動する。そのため、中間支持部とパイプとの間の摺動のみで衝撃荷重を緩和する構成に比べ、中間支持部と第2接続部材との摺動長さ分だけ中間支持部の前後方向における長さを短縮できる。これにより、二次衝突時におけるストロークを確保した上で、中間支持部に対して前後のスペースを確保し易くなる。したがって、パイプ周辺のレイアウト性を向上させることができる。
【0010】
(2)上記(1)の態様に係るステアリング装置において、前記中間支持部は、前記前後方向に交差する交差方向から見て前記第1支持部及び前記第2支持部の間に重ね合わされ、前記中間支持部には、前記中間支持部を前記交差方向に貫通するとともに、前記前後方向に延びる第1長孔と、前記中間支持部を前記交差方向に貫通するとともに、前記前後方向に延びる第2長孔と、が形成され、前記第1接続部材は、前記第1長孔の後端部に挿入され、前記第2接続部材は、前記第2長孔の前端部に挿入されていてもよい。
本態様によれば、中間支持部及び第1支持部同士、並びに中間支持部及び第2支持部同士を接続部材によって確実に接続できる。これにより、通常使用時(例えば、テレスコ動作時等)において、パイプとテレスコ機構とを荷重吸収機構を介して確実に接続することができる。また、二次衝突時には、中間支持部を接続部材に対して安定して摺動させることができる。
【0011】
(3)上記(2)の態様に係るステアリング装置において、前記第1長孔は、前記第1長孔の後端部に位置して、前記第1接続部材が挿入された第1大径部と、前記第1大径部の前方に連なるとともに、前記第1接続部材と前記中間支持部との前記前後方向への相対移動時に前記第1接続部材によって拡幅される第1小径部と、を有し、前記第2長孔は、前記第2長孔の前端部に位置して、前記第2接続部材が挿入された第2大径部と、前記第2大径部の後方に連なるとともに、前記第2接続部材と前記中間支持部との前記前後方向への相対移動時に前記第2接続部材によって拡幅される第2小径部と、を有していてもよい。
本態様によれば、二次衝突時において、中間支持部と第1接続部材との間に作用する摺動抵抗、及び中間支持部と第2接続部材との間に作用する摺動抵抗を確保できる。これにより、衝撃吸収性能の向上を図ることができる。
しかも、従来のように一段のストロークにより衝撃荷重を緩和する場合に比べて、スリットの拡幅時に発生するバリによって接続部材の移動が阻害されるのを抑制できる。そのため、第1接続部材と中間支持部との間に作用する摺動抵抗や、第2接続部材と中間支持部との間に作用する摺動抵抗が過大になるのを抑制できる。
【0012】
(4)上記(1)から(3)の何れかの態様に係るステアリング装置において、前記テレスコ機構は、前記ハウジングに設けられたモータユニットと、前記モータユニットの出力軸に連結された雄ねじを有するシャフトと、前記パイプに設けられるとともに、前記シャフトに螺合されたナットと、を備えていてもよい。
本態様によれば、二次衝突時時において、シャフトの雄ねじ部と、可動部の雌ねじ部と、が接触することで、ハウジングに対する可動部の前方への移動が規制される。これにより、可動部に対してガイドプレートが前方に移動するのを規制でき、EAプレートと接続部材との相対移動を促すことができる。この場合、ガイドプレートの固定部を別途設ける必要がないので、部品点数の増加や構成の複雑化を抑制できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様によれば、レイアウト性の低下を抑制した上で、二次衝突時におけるパイプのストロークを確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】ステアリング装置の斜視図である。
図2図1のII-II線に沿う断面図である。
図3】ステアリング装置の左側面図である。
図4図1のIV-IV線に沿う断面図である。
図5】荷重吸収機構の分解斜視図である。
図6】後側ブラケットを取り外した状態におけるステアリング装置の平面図である。
図7】二次衝突時の動作を説明するための説明図である。
図8】二次衝突時の動作を説明するための説明図である。
図9】二次衝突時の動作を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
[ステアリング装置]
図1は、ステアリング装置1の斜視図である。
図1に示すように、ステアリング装置1は、車両に搭載され、ステアリングホイール2の回転操作に伴って車輪の舵角を調整する。
【0016】
ステアリング装置1は、ハウジング11と、パイプ12と、ステアリングシャフト13と、駆動機構14と、荷重吸収機構15と、を備えている。パイプ12及びステアリングシャフト13は、それぞれ軸線O1に沿って形成されている。したがって、以下の説明では、パイプ12及びステアリングシャフト13の軸線O1の延びる方向を単にシャフト軸方向といい、軸線O1に直交する方向をシャフト径方向といい、軸線O1回りの方向をシャフト周方向という場合がある。
【0017】
本実施形態のステアリング装置1は、軸線O1が前後方向に対して交差した状態で車両に搭載される。具体的に、ステアリング装置1の軸線O1は、後方に向かうに従い上方に延在している。但し、以下の説明では、便宜上、ステアリング装置1において、シャフト軸方向でステアリングホイール2に向かう方向を単に後方とし、ステアリングホイール2とは反対側に向かう方向を単に前方(矢印FR)とする。また、シャフト径方向のうち、ステアリング装置1が車両に取り付けられた状態での上下方向を単に上下方向(矢印UPが上方)とし、左右方向を単に左右方向(矢印LHが左側)とする。
【0018】
<ハウジング>
ハウジング11は、ブラケット(前側ブラケット20及び後側ブラケット33)を介して車体に取り付けられている。ハウジング11は、保持筒部21と、前側取付ステー22と、後側取付ステー23と、を有している。
【0019】
図2は、図1のII-II線に沿う断面図である。
図1図2に示すように、保持筒部21は、シャフト軸方向(前後方向)に延びる筒状に形成されている。図2に示すように、保持筒部21内の前端部には、前側軸受25の外輪が嵌合(圧入)されている。保持筒部21の後部において、シャフト周方向の一部(本実施形態では、保持筒部21の上部)には、スリット26が形成されている。スリット26は、保持筒部21をシャフト径方向に貫通する。
【0020】
図1図2に示すように、前側取付ステー22は、保持筒部21の前端部において、左右方向の両側に位置する部分から前方に向けてそれぞれ延設されている。前側取付ステー22の前端部には、上述した前側ブラケット20が取り付けられている。
前側ブラケット20は、前側取付ステー22と車体との間を接続している。具体的に、前側ブラケット20は、シャフト軸方向から見た正面視で下方に開口するU字状に形成されている。前側ブラケット20は、ハウジング11の前端部を上方及び左右方向の両側から取り囲んでいる。前側ブラケット20のうち、左右方向の両側に位置する前側壁20a,20aは、左右方向に延びるピボット軸29,29によって前側取付ステー22に接続されている。これにより、ハウジング11は、ピボット軸29回り(左右方向に延びる軸線O2回り)に回動可能に前側ブラケット20に支持されている。
【0021】
後側取付ステー23は、保持筒部21の後端部に形成されている。具体的に、後側取付ステー23は、保持筒部21の上部において、スリット26を左右方向に跨っている。後側取付ステー23には、リンクプレート(第1リンクプレート31及び第2リンクプレート32)を介して上述した後側ブラケット33が取り付けられている。
後側ブラケット33は、正面視において下方に開口するハット形状に形成されている。後側ブラケット33は、保持筒部21を上方及び左右方向の両側から取り囲んでいる。すなわち、後側ブラケット33は、保持筒部21に対して左右方向の第1側(右側)に位置する右側壁33aと、保持筒部21に対して左右方向の第2側(左側)に位置する左側壁33bと、を有している。
【0022】
上述した第1リンクプレート31は、ハウジング11に対して右側において後側取付ステー23と後側ブラケット33とを接続している。第1リンクプレート31は、左右方向から見た側面視において、シャフト軸方向に沿って延びる板状に形成されている。第1リンクプレート31の前端部は、左右方向に延びる軸線O3回りに回動可能に、上述した右側壁33aに支持されている。第1リンクプレート31の後端部は、左右方向に延びる軸線O4回りに回動可能に後側取付ステー23に支持されている。
【0023】
図3は、ステアリング装置1の左側面図である。
図3に示すように、上述した第2リンクプレート32は、ハウジング11に対して左側において後側取付ステー23と後側ブラケット33とを接続している。第2リンクプレート32は、側面視でT字状に形成されている。具体的に、第2リンクプレート32は、前後延設部32aと、前後延設部32aから下方に延設された下方延設部32bと、を有している。前後延設部32aの前端部は、軸線O3回りに回動可能に上述した左側壁33bに支持されている。前後延設部32aの後端部は、上述した軸線O4回りに回動可能に後側取付ステー23に支持されている。
【0024】
第2リンクプレート32には、支持プレート34が取り付けられている。支持プレート34は、上下方向に延びるクランク状に形成されている。支持プレート34の上端部は、前後延設部32aに固定されている。支持プレート34の下端部は、下方延設部32bに対して左右方向で間隔をあけて対向している。
【0025】
<パイプ>
図1に示すように、パイプ12は、シャフト軸方向に延びる筒状に形成されている。パイプ12の外径は、保持筒部21の内径よりも小さくなっている。パイプ12は、保持筒部21内に挿入されている。パイプ12は、保持筒部21(ハウジング11)に対してシャフト軸方向に移動可能に構成されている。パイプ12の後端部には、後側軸受35の外輪が嵌合(圧入)されている。
【0026】
<ステアリングシャフト>
図2に示すように、ステアリングシャフト13は、インナシャフト37及びアウタシャフト38を備えている。
インナシャフト37は、シャフト軸方向に延びる筒状に形成されている。インナシャフト37は、パイプ12内に挿入されている。インナシャフト37の後端部は、上述した後側軸受35の内輪に圧入されている。これにより、インナシャフト37は、パイプ12内で後側軸受35を介して軸線O1回りに回転可能に支持されている。インナシャフト37のうち、パイプ12から後方に突出した部分には、ステアリングホイール2が連結される。
【0027】
アウタシャフト38は、シャフト軸方向に延びる筒状に形成されている。アウタシャフト38は、保持筒部21内において、パイプ12内に挿入されている。アウタシャフト38の後端部には、パイプ12内において、インナシャフト37が挿入されている。アウタシャフト38の前端部は、保持筒部21内において前側軸受25の内輪に圧入されている。これにより、アウタシャフト38は、保持筒部21内で軸線O1回りに回転可能に支持されている。
【0028】
インナシャフト37及びパイプ12は、アウタシャフト38に対してシャフト軸方向に移動可能に構成されている。なお、インナシャフト37の外周面には、例えば雄スプラインが形成されている。雄スプラインは、アウタシャフト38の内周面に形成された雌スプラインに係合している。これにより、インナシャフト37は、アウタシャフト38に対する相対回転が規制された上で、アウタシャフト38に対してシャフト軸方向に移動する。但し、ステアリングシャフト13の伸縮構造や回転規制の構造は、適宜変更が可能である。なお、本実施形態では、アウタシャフト38がインナシャフト37に対して前方に配置された構成について説明したが、この構成のみに限らず、アウタシャフト38がインナシャフト37に対して後方に配置された構成であってもよい。
【0029】
<駆動機構>
図1に示すように、駆動機構14は、チルト機構41と、テレスコ機構42と、を備えている。チルト機構41は、例えばハウジング11の左側に配置されている。テレスコ機構42は、例えばハウジング11の右側に配置されている。なお、駆動機構14は、少なくともテレスコ機構42を有していればよい。
【0030】
図3に示すように、チルト機構41は、チルトモータユニット45と、チルト連結部46と、チルト可動部47と、を備えている。チルト機構41は、チルトモータユニット45の駆動によって軸線O2回りのステアリング装置1の回動の規制及び許容を切り替える。
チルトモータユニット45は、チルトギヤボックス51と、チルトモータ52と、を備えている。
【0031】
チルトギヤボックス51は、ハウジング11の前端部(保持筒部21と前側取付ステー22との境界部分)において、左側に突出して設けられている(図4参照)。チルトギヤボックス51には、減速機構(不図示)が収納されている。
チルトモータ52は、チルトギヤボックス51の前端部に取り付けられている。本実施形態において、チルトモータ52は、出力軸(不図示)の軸方向をシャフト軸方向に向けた状態でチルトギヤボックス51に取り付けられている。チルトモータ52の出力軸は、チルトギヤボックス51内で減速機構に接続されている。
【0032】
チルト連結部46は、チルトワイヤ54と、チルトシャフト55と、チルトワイヤ54及びチルトシャフト55同士を連結するチルトカップリング57と、を備えている。
チルトカップリング57は、保持筒部21のシャフト軸方向の中央部において、左右方向に延びる軸線O5回りに回転可能に支持されている。
【0033】
チルトワイヤ54は、チルトギヤボックス51とチルトカップリング57との間を架け渡している。チルトワイヤ54は、チルトモータ52の駆動に伴い回転可能に構成されている。チルトワイヤ54は、撓み変形可能に構成されている。なお、チルトギヤボックス51とチルトカップリング57との間を接続する接続部材は、チルトワイヤ54のような撓み変形するものに限られない。すなわち、チルトギヤボックス51とチルトカップリング57のレイアウト等によっては、チルトギヤボックス51とチルトカップリング57を撓み変形しない接続部材により接続してもよい。
チルトシャフト55は、チルトカップリング57とチルト可動部47との間を架け渡している。チルトシャフト55は、チルトモータ52の駆動に伴い、チルトワイヤ54と共回りする。チルトシャフト55の外周面には、雄ねじ部が形成されている。
【0034】
チルト可動部47は、上述した第2リンクプレート32の下方延設部32bと、支持プレート34の下端部と、の間で左右方向に延びる軸線O6回りに回動可能に支持されている。チルト可動部47は、チルトシャフト55の延在方向を軸方向とする筒状に形成されている。チルト可動部47の内周面には、例えば雌ねじ部が形成されている。チルト可動部47内には、チルトシャフト55が螺合している。すなわち、チルト可動部47は、チルトシャフト55の回転に伴いチルトシャフト55の延在方向に移動可能に構成されている。
【0035】
図1に示すように、テレスコ機構42は、テレスコモータユニット61と、テレスコ連結部62と、テレスコ可動部63と、を備えている。テレスコ機構42は、テレスコモータユニット61の駆動によってハウジング11に対するパイプ12(ステアリングシャフト13)の前後動の規制及び許容を切り替える。
テレスコモータユニット61は、テレスコギヤボックス65と、テレスコモータ66と、を備えている。
【0036】
テレスコギヤボックス65は、ハウジング11の前端部において、右側に突出して設けられている。テレスコギヤボックス65には、減速機構(不図示)が収納されている。
テレスコモータ66は、テレスコギヤボックス65の前端部に取り付けられている。テレスコモータ66は、出力軸(不図示)の軸方向をシャフト軸方向に向けた状態でテレスコギヤボックス65に取り付けられている。テレスコモータ66の出力軸は、テレスコギヤボックス65内で減速機構に接続されている。
【0037】
テレスコ連結部62は、テレスコワイヤ71と、テレスコシャフト72と、テレスコワイヤ71及びテレスコシャフト72同士を連結するテレスコカップリング74と、を備えている。
テレスコカップリング74は、保持筒部21のシャフト軸方向の略中央部で支持されている。
【0038】
テレスコワイヤ71は、テレスコギヤボックス65とテレスコカップリング74との間を架け渡している。テレスコワイヤ71は、テレスコモータ66の駆動に伴い回転可能に構成されている。テレスコワイヤ71は、撓み変形可能に構成されている。なお、テレスコギヤボックス65とテレスコカップリング74との間を接続する接続部材は、テレスコワイヤ71のような撓み変形するものでなくてもよい。すなわち、テレスコギヤボックス65とテレスコカップリング74のレイアウト等によっては、テレスコギヤボックス65とテレスコカップリング74を撓み変形しない接続部材により接続してもよい。
テレスコシャフト72は、テレスコカップリング74とテレスコ可動部63との間を架け渡している。テレスコシャフト72は、テレスコモータ66の駆動に伴い、テレスコワイヤ71と共回りする。テレスコシャフト72の外周面には、雄ねじ部が形成されている。
【0039】
テレスコ可動部63は、ブロック状に形成されている。テレスコ可動部63には、テレスコ可動部63をシャフト軸方向に貫通する貫通孔63aが形成されている。貫通孔63aの内面には例えば雌ねじ部が形成されている。テレスコ可動部63の貫通孔63a内には、テレスコシャフト72が螺合している。すなわち、テレスコ可動部63は、テレスコシャフト72の回転に伴いテレスコシャフト72の延在方向に移動可能に構成されている。
【0040】
<荷重吸収機構>
図4は、図1のIV-IV線に沿う断面図である。図5は、荷重吸収機構15の分解斜視図である。
図4図5に示すように、荷重吸収機構15は、ハンガブラケット80と、EA(Energy Absorbing)プレート81と、ガイドプレート82と、第1接続部材83と、第2接続部材84と、を備えている。
【0041】
ハンガブラケット80は、パイプ12の前端部において、パイプ12の上部に固定されている。ハンガブラケット80は、シャフト軸方向に延在している。ハンガブラケット80は、下方に開口するC字状に形成されている。ハンガブラケット80は、ハウジング11のスリット26内に収容されている。
【0042】
ハンガブラケット80の頂壁部80aのうち、前端部には、頂壁部80aを上下方向に貫通する貫通孔80bが形成されている。本実施形態において、貫通孔80bは雌ねじ孔である。
【0043】
ガイドプレート82は、上述したテレスコ可動部63とEAプレート81との間を接続している。ガイドプレート82は、正面視においてクランク状に形成されている。具体的に、ガイドプレート82は、下壁部82aと、上壁部82bと、下壁部82a及び上壁部82b間を接続する接続壁部82cと、を有している。
下壁部82aは、テレスコ可動部63の上面に固定されている。接続壁部82cは、下壁部82aの左側端部から上方に延在している。上壁部82bは、接続壁部82cの上端部から左側に延在している。上壁部82bは、ハウジング11の上方からEAプレート81に重なり合っている。
【0044】
上壁部82bの後端部には、上壁部82bを上下方向に貫通する貫通孔82dが形成されている。本実施形態において、貫通孔82dは雌ねじ孔である。
上壁部82bの前端部には、上壁部82bを上下方向に貫通する確認孔82eが形成されている。確認孔82eは、貫通孔82dよりも大径に形成されている。なお、ガイドプレート82は、確認孔82eを有さない構成としてもよい。
【0045】
EAプレート81は、上下方向におけるハンガブラケット80とガイドプレート82との間でシャフト軸方向に延在している。EAプレート81は、正面視において、下方に開口するC字状に形成されている。EAプレート81の前後方向における長さは、ハンガブラケット80やガイドプレート82よりも長くなっている。なお、EAプレート81は、スリット26(保持筒部21)よりも上方に位置していることが好ましい。
【0046】
EAプレート81の頂壁部81aには、第1長孔90及び第2長孔91が形成されている。各長孔90は、頂壁部81aを上下方向に貫通している。
第1長孔90は、EAプレート81の前部において、シャフト軸方向に延在している。具体的に、第1長孔90は、後端部に位置する第1大径部90aと、第1大径部90aから前方に連なる第1小径部90bと、を有している。
【0047】
第2長孔91は、EAプレート81の後部において、シャフト軸方向に延在している。第2長孔91は、第1長孔90に対してシャフト軸方向に間隔をあけた状態で、第1長孔90と直線状に並んでいる。具体的に、第2長孔91は、前端部に位置する第2大径部91aと、大径部91aから後方に連なる第2小径部91bと、を有している。
【0048】
EAプレート81は、平面視において、第1大径部90aとハンガブラケット80の貫通孔80bとが重なり合い、第2大径部91aとガイドプレート82の貫通孔82dとが重なり合った状態で、ハンガブラケット80及びガイドプレート82の間に配置されている。
【0049】
第1接続部材83は、ハンガブラケット80及びEAプレート81間を接続している。具体的に、第1接続部材83は、第1接続ピン94と、第1介装部材95と、を備えている。
第1接続ピン94の下端部は、例えばハンガブラケット80の貫通孔80b内に螺着されている。第1接続ピン94の上端部は、EAプレート81の第1大径部90a内に嵌合されている。すなわち、第1接続ピン94の外径は、第1大径部90aの幅(左右方向の幅)以下で、かつ第1小径部90bの幅よりも大きくなっている。第1接続ピン94は、上述した確認孔82eを通じてガイドプレート82の上方から視認可能とされている。なお、第1接続ピン94は、第1大径部90a及び貫通孔80bを通じて、ハンガブラケット80及びEAプレート81間を接続する構成であれば、ハンガブラケット80及びEAプレート81間の接続方法は適宜変更が可能である。
【0050】
第1介装部材95は、例えばナットである。第1介装部材95は、第1接続ピン94において、ハンガブラケット80の頂壁部80aと、EAプレート81の頂壁部81aと、の間に位置する部分に螺着されている。第1介装部材95は、頂壁部80a,81a間に介在して、頂壁部80a,81aの隙間を保持している。なお、第1介装部材95は、頂壁部80a,81a間に介在する構成であれば、第1接続ピン94に螺着されていなくてもよい。この場合、第1介装部材95は、例えば皿ばね形状に形成されていてもよい。また、第1介装部材95は、樹脂材料や金属材料により形成することが可能である。
【0051】
第2接続部材84は、EAプレート81及びガイドプレート82間を接続している。具体的に、第2接続部材84は、第2接続ピン97と、第2介装部材98と、を備えている。
第2接続ピン97の下端部は、EAプレート81の第2大径部91a内に嵌合されている。第2接続ピン97の上端部は、例えばガイドプレート82の貫通孔82d内に螺着されている。すなわち、第2接続ピン97の外径は、第2大径部91aの幅以下で、かつ第2小径部91bの幅よりも大きくなっている。なお、第2接続ピン97は、第2大径部91a及び貫通孔80bを通じて、EAプレート81及びガイドプレート82間を接続する構成であれば、EAプレート81及びガイドプレート82間の接続方法は適宜変更が可能である。
【0052】
第2介装部材98は、例えばナットである。第2介装部材98は、第2接続ピン97において、EAプレート81の頂壁部81aと、ガイドプレート82の上壁部82bと、の間に位置する部分に螺着されている。第2介装部材98は、頂壁部81a及び上壁部82b間に介在して、頂壁部81a及び上壁部82b間の隙間を保持している。なお、第2介装部材98は、頂壁部80a及び上壁部82b間に介在する構成であれば、第2接続ピン97に螺着されていなくてもよい。
【0053】
[作用]
次に、上述したステアリング装置1の作用を説明する。以下の説明では、チルト・テレスコ動作及び二次衝突時の動作について主に説明する。
【0054】
<チルト動作>
図3に示すように、チルト動作は、チルトモータ52の駆動力が第2リンクプレート32を介してハウジング11に伝達されることで、ハウジング11が軸線O2回りに回動する。具体的に、ステアリングホイール2を上向きに調整する場合には、チルトモータ52が駆動することで、チルトワイヤ54及びチルトシャフト55が例えば第1方向に回転する。チルトシャフト55が第1方向に回転すると、チルト可動部47がチルトシャフト55に対して後方に移動する。チルト可動部47が後方に移動することで、第2リンクプレート32の前後延設部32a及び第1リンクプレート31が軸線O3回りに上方へ向けて回動する。その結果、ステアリングホイール2が、ハウジング11やパイプ12、ステアリングシャフト13等とともに軸線O2回りの上方に回動する。
【0055】
一方、ステアリングホイール2を下向きに調整する場合には、チルトシャフト55を第2方向に回転させる。すると、チルト可動部47がチルトシャフト55に対して前方に移動する。チルト可動部47が前方に移動することで、第2リンクプレート32の前後延設部32a及び第1リンクプレート31が軸線O3回りに下方へ向けて回動する。その結果、ステアリングホイール2が、ハウジング11やパイプ12、ステアリングシャフト13等とともに軸線O2回りの下方に回動する。
【0056】
<テレスコ動作>
図1に示すように、テレスコ動作は、テレスコモータ66の駆動力がガイドプレート82、EAプレート81及びハンガブラケット80を介してパイプ12に伝達されることで、パイプ12及びインナシャフト37がハウジング11及びアウタシャフト38に対して前後動する。具体的に、ステアリングホイール2を後方に移動させる場合には、テレスコモータ66の駆動により、テレスコワイヤ71及びテレスコシャフト72を例えば第1方向に回転させる。テレスコシャフト72が第1方向に回転すると、テレスコ可動部63及びガイドプレート82がテレスコシャフト72に対して後方に移動する。ガイドプレート82の後方移動に伴い、パイプ12が後方に移動する。これにより、ステアリングホイール2が後方に移動する。
【0057】
一方、ステアリングホイール2を前方に移動させる場合、テレスコワイヤ71及びテレスコシャフト72を例えば第2方向に回転させる。テレスコシャフト72が第2方向に回転すると、テレスコ可動部63及びガイドプレート82がテレスコシャフト72に対して前方に移動する。ガイドプレート82の前方移動に伴い、パイプ12が前方に移動する。これにより、ステアリングホイール2が前方に移動する。
【0058】
<二次衝突時>
次に、二次衝突時の動作について説明する。
図6に示すように、二次衝突時(衝突荷重が所定値以上の場合)には、ステアリングホイール2がパイプ12及びハンガブラケット80やインナシャフト37とともに、ハウジング11及びアウタシャフト38に対して前方に移動する。
【0059】
図7図9は、二次衝突時の動作を説明するための説明図である。
図6図7は通常時のEAプレート81と第1接続部材83と第2接続部材84を示している。図7を参照して、二次衝突時には、まずパイプ12、ハンガブラケット80、EAプレート81及び第1接続部材83がガイドプレート82及び第2接続部材84に対して前方に移動する。この際、第2接続ピン97の外径は、第2小径部91bの幅よりも大径になっている。そのため、EAプレート81は、第2接続ピン97によって第2小径部91bが押し広げられながら前方に移動する(一段目ストローク)。そして、第2小径部91bが押し広げられる際に発生する荷重によって、二次衝突時に運転者に加わる衝撃荷重が緩和される。
【0060】
図6図8に示すように、第2接続ピン97が第2小径部91bの後端縁に突き当たることで、ガイドプレート82及び第2接続部材84に対するEAプレート81の前方移動が規制される。その後、さらに衝突荷重が作用すると、パイプ12、ハンガブラケット80及び第1接続部材83が、EAプレート81及びガイドプレート82に対して前方に移動する。この際、第1接続ピン94の外径は、第1小径部90bの幅よりも大径になっている。そのため、図9に示すように、第1接続部材83は、第1接続ピン94によって第1小径部90bを押し広げながら前方に移動する(二段目ストローク)。そして、第1小径部90bを押し広げる際に発生する荷重によって、二次衝突時に運転者に加わる衝撃荷重が緩和される。
【0061】
なお、二次衝突時には、接続ピン94,97によって小径部90b,91bを押し広げる際の荷重に加え、例えば以下の方法で衝撃荷重を緩和してもよい。
(1)パイプ12の外周面と保持筒部21の内周面との間の摺動抵抗。
(2)第1介装部材95及びEAプレート81間での摺動抵抗や、第2介装部材98及びEAプレート81間での摺動抵抗。
なお、上述した(1)、(2)の摺動部分に高摩擦係数の塗料を塗布したり、凹凸加工等を施したりしてもよい。
【0062】
上述したように、本実施形態では、一段目ストロークにおいてガイドプレート82及び第2接続部材84に対してEAプレート81が前方移動し、二段目ストロークにおいてガイドプレート82及びEAプレート81に対して第1接続部材83及びハンガブラケット80が前方移動する。すなわち、本実施形態のステアリング装置1では、一段目ストロークにおいて第2接続部材84とEAプレート81との間に作用する荷重が、二段目ストロークにおいて第1接続部材83とハンガブラケット80との間に作用する荷重に比べて小さい。
【0063】
本実施形態では、上述した条件を満足するように、荷重吸収機構15の寸法等が設定されている。一段目ストローク及び二段目ストロークでの荷重の調整は、例えばEAプレート81(頂壁部81a)の板厚や、第1接続ピン94と第1小径部90bとの締め代、第2接続ピン97と第2小径部91bとの締め代等を変更することで行うことができる。
【0064】
このように、本実施形態では、荷重吸収機構15が、二次衝突時において、第2接続ピン97に対してEAプレート81が前方移動し、EAプレート81に対して第1接続ピン94が前方移動する構成とした。
この構成によれば、二次衝突時において、第2接続ピン97とEAプレート81との間に作用する荷重、及びEAプレート81と第1接続ピン94との間に作用する荷重によって衝突荷重を緩和できる。すなわち、EAプレート81は、第1接続部材83及び第2接続部材84の双方に対して相対的に摺動する。そのため、EAプレート81とパイプ12との間の摺動のみで衝撃荷重を緩和する構成に比べ、第2長孔91の長さ分だけEAプレート81のシャフト軸方向における長さを短縮できる。これにより、二次衝突時におけるストロークを確保した上で、EAプレート81に対して前後のスペースを確保し易くなる。したがって、パイプ12周辺のレイアウト性を向上させることができる。
【0065】
しかも、本実施形態では、ハンガブラケット80がパイプ12に別体で設けられた構成とした。
この構成によれば、第1接続部材83を支持する支持部をパイプ12と一体で設ける場合に比べて、支持部の形成に伴うパイプ12の剛性低下や加工の複雑化を抑制できる。
【0066】
本実施形態では、第1接続部材83が第1長孔90を通じてEAプレート81に接続され、第2接続部材84が第2長孔91を通じてEAプレート81に接続された構成とした。
この構成によれば、EAプレート81及びハンガブラケット80同士、並びにEAプレート81及びガイドプレート82同士を接続部材83,84によって確実に接続できる。これにより、通常使用時(例えば、テレスコ動作時等)において、パイプ12とテレスコ可動部63とを荷重吸収機構15を介して確実に接続することができる。また、二次衝突時には、EAプレート81を接続部材83,84に対して安定して摺動させることができる。
【0067】
本実施形態では、二次衝突時において、第1接続部材83によって第1小径部90bが拡幅され、第2接続部材84によって第2小径部91bが拡幅される構成とした。
この構成によれば、二次衝突時において、EAプレート81と第1接続部材83との間に作用する荷重、及びEAプレート81と第2接続部材84との間に作用する荷重を確保できる。これにより、衝撃吸収性能の向上を図ることができる。
しかも、従来のように一段のストロークにより衝撃荷重を緩和する場合に比べて、スリットの拡幅時に発生するバリによって接続部材の移動が阻害されるのを抑制できる。そのため、第1接続部材83とEAプレート81との間に作用する荷重や、第2接続部材84とEAプレート81との間に作用する荷重が過大になるのを抑制できる。
【0068】
本実施形態では、テレスコ機構42において、テレスコシャフト72がテレスコ可動部63に螺合する構成とした。
この構成によれば、二次衝突時において、テレスコシャフト72の雄ねじ部と、テレスコ可動部63の雌ねじ部と、が接触することで、ハウジング11に対するテレスコ可動部63の前方への移動が規制される。これにより、一段目ストローク時において、パイプ12とともにガイドプレート82が前方に移動するのを抑制できる。この場合、ガイドプレート82の固定部を別途設ける必要がないので、部品点数の増加や構成の複雑化を抑制できる。
【0069】
以上、本発明の好ましい実施例を説明したが、本発明はこれら実施例に限定されることはない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。本発明は上述した説明によって限定されることはなく、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
例えば、上述した実施形態では、軸線O1が前後方向に交差している構成について説明していたが、この構成のみに限られない。軸線O1は、車両の前後方向に一致していてもよい。
【0070】
上述した実施形態では、EAプレート81に長孔90,91がそれぞれ形成された構成について説明したが、この構成のみに限られない。例えば接続部材83,84が破断可能な薄肉部をEAプレート81に形成したり、接続部材83,84がEAプレート81に単に摺動する構成であったりしてもよい。また、各長孔90,91は、左右方向の幅がシャフト軸方向の全長に亘って一様であってもよい。すなわち、本発明に係るステアリング装置では、二次衝突時において、EAプレート81と接続部材83,84との間に摺動抵抗が発生する構成であればよい。
上述した実施形態では、ハンガブラケット80及びEAプレート81間が第1接続ピン94により接続され、EAプレート81及びガイドプレート82間が第2接続ピン97により接続された構成について説明したが、この構成のみに限られない。例えば接続部材は、ハンガブラケット80及びEAプレート81間、並びにEAプレート81及びガイドプレート82の間に介在して、EAプレート81に摺動可能とされていてもよい。
【0071】
上述した実施形態では、テレスコ機構42が送りねじ機構である場合について説明したが、この構成のみに限られない。テレスコ機構42は、例えば歯車等を用いてもよい。
上述した実施形態では、ハウジング11にモータユニット(固定部)が設けられた構成について説明したが、この構成のみに限らず、パイプ12にモータユニット(可動部)が設けられていてもよい。
【0072】
上述した実施形態では、一段目ストロークにおいてEAプレート81が第2接続部材84に対して前方移動し、二段目ストロークにおいて第1接続部材83がEAプレート81に対して前方移動する構成について説明したが、この構成のみに限られない。一段目ストロークにおいて第1接続部材83がEAプレート81に対して前方移動し、二段目ストロークにおいてEAプレート81が第2接続部材84に対して前方移動してもよい。
【0073】
上述した実施形態では、テレスコ動作やチルト動作をアクチュエータ(駆動機構14)で行う電動式のステアリング装置1について説明したが、この構成のみに限らず、手動でテレスコ動作やチルト動作を行えるステアリング装置であってもよい。
上述した実施形態では、第1接続部材83がハンガブラケット80を介してパイプ12に接続された構成について説明したが、この構成のみに限らず、第1接続部材83をパイプ12に直接固定してもよい。
【0074】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上述した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上述した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0075】
1…ステアリング装置
11…ハウジング
12…パイプ
13…ステアリングシャフト
15…荷重吸収機構
42…テレスコ機構
61…テレスコモータユニット(モータユニット)
63…テレスコ可動部(ナット)
72…テレスコシャフト(シャフト)
80…ハンガブラケット(第1支持部)
81…EAプレート(中間支持部)
82…ガイドプレート(第2支持部)
83…第1接続部材
84…第2接続部材
90…第1長孔
91…第2長孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9