(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-15
(45)【発行日】2022-06-23
(54)【発明の名称】箱曲げ用パンチ金型及び箱曲げ用金型セット
(51)【国際特許分類】
B21D 5/02 20060101AFI20220616BHJP
【FI】
B21D5/02 Y
B21D5/02 F
B21D5/02 C
(21)【出願番号】P 2018176981
(22)【出願日】2018-09-21
【審査請求日】2021-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダ
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】川崎 秀勝
(72)【発明者】
【氏名】鹿内 博勝
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特公昭47-025586(JP,B1)
【文献】実開昭62-034927(JP,U)
【文献】実開昭59-114228(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2005/0022577(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パンチ金型本体と、
パンチ金型本体に金型幅方向に沿って設けられた1つのヒンジピンと、
1つの前記ヒンジピンに回転可能に設けられ、金型長さ方向に対称的に配置され、板状のワークを上方向から押圧する押圧部を有した一対の回転パンチと、
前記パンチ金型本体に着脱可能に設けられたユニットベースと、を備え、
1つの前記ヒンジピンは、前記ユニットベースに設けられることにより、前記ユニットベースを介して前記パンチ金型本体に設けられており、
各回転パンチは、その回転によって、前記押圧部が水平になる水平姿勢と、前記押圧部における金型長さ方向外側が金型長さ方向内側よりも低くなるように前記押圧部が水平方向に対して傾斜した傾斜姿勢とに切り替わるよう構成されると共に、ワークの曲げ加工後に自重よる回転によって前記水平姿勢から前記傾斜姿勢に切り替わるように構成されて
おり、
前記ユニットベース、1つの前記ヒンジピン、及び一対の前記回転パンチは、前記パンチ金型本体に対して着脱可能なパンチユニットを構成していることを特徴とする箱曲げ用パンチ金型。
【請求項2】
箱曲げ用パンチ金型と、箱曲げ用ダイ金型とからなり、
前記箱曲げ用パンチ金型は、
パンチ金型本体と、
パンチ金型本体に金型幅方向に沿って設けられた1つのヒンジピンと、
1つの前記ヒンジピンに回転可能に設けられ、金型長さ方向に対称的に配置され、板状のワークを上方向から押圧する押圧部を有した一対の回転パンチと、を備え、
各回転パンチの前記押圧部は、平坦面状であり、
各回転パンチは、その回転によって、前記押圧部が水平になる水平姿勢と、前記押圧部における金型長さ方向外側が金型長さ方向内側よりも低くなるように前記押圧部が水平方向に対して傾斜した傾斜姿勢とに切り替わるよう構成されると共に、ワークの曲げ加工後に自重よる回転によって前記水平姿勢から前記傾斜姿勢に切り替わるように構成されており、
前記箱曲げ用ダイ金型は、
上側に板状のワークにおける短辺側の曲げフランジに相当する部分を曲げるための直角状の曲げ部を有したダイ金型本体と、
前記ダイ金型本体における前記曲げ部の正面側に昇降可能に設けられ、上側にワークを支持しかつ一対の前記回転パンチの前記押圧部と協働してワークを挟持する平坦面状の支持部を有した昇降ブロックと、
前記昇降ブロックを上方向へ付勢する付勢部材と、を備えたことを特徴とする箱曲げ用金型セット。
【請求項3】
各回転パンチの前記押圧部は、平坦面状であることを特徴とする請求項1に記載の箱曲げ用パンチ金型。
【請求項4】
各回転パンチは、
前記押圧部を有したパンチボディと、
前記パンチボディの金型長さ方向内側に形成され、1つの前記ヒンジピンに回転可能に連結する連結片と、を有し、
一対の前記回転パンチの前記連結片が重なるように金型幅方向に位置をずらしていることを特徴とする請求項1
に記載の箱曲げ用パンチ金型。
【請求項5】
前記ユニットベースは、
前記パンチ金型本体に着脱可能に設けられたベースブロックと、
前記ベースブロックの下面に金型幅方向に間隔を置いて形成された一対の支持部材と、
を有し、
1つの前記ヒンジピンは、一対の前記支持部材の間に金型幅方向に沿って連結するように設けられており、
各回転パンチは、
前記押圧部を有したパンチボディと、
前記パンチボディの金型長さ方向内側に形成され、1つの前記ヒンジピンに回転可能に連結する連結片と、を有し、
一対の前記回転パンチの前記連結片が一対の前記支持部材の間において重なるように金型幅方向に位置をずらしていることを特徴とする請求項
1に記載の箱曲げ用パンチ金型。
【請求項6】
前記水平姿勢の各回転パンチは、金型長さ方向外側から見ると一対の前記支持部材に整合していることを特徴とする請求項5に記載の箱曲げ用パンチ金型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状のワーク(板金)の箱曲げ加工を行うための箱曲げ用パンチ金型及び箱曲げ用金型セットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ワークの箱曲げ加工を行って箱製品を製作する際には、専用金型として箱曲げ用パンチ金型が用いられている(特許文献1参照)。そして、従来の箱曲げ用パンチ金型の構成について簡単に説明すると、次の通りである。
【0003】
箱曲げ用パンチ金型は、プレスブレーキの上部テーブルの下端部に着脱可能に設けられたパンチ金型本体(特許文献1では上型本体)を備えており、パンチ金型本体は、金型長さ方向に延びている。パンチ金型本体の下部には、一対の移動パンチ(特許文献1では隅金型)が金型長さ方向へ移動可能に設けられており、各移動パンチは、ワークを上方向から押圧する押圧部を有している。また、パンチ金型本体の下部における一対の移動パンチの間には、複数の中間パンチ(特許文献1では中間ブロック)が設けられており、各中間パンチは、ワークを上方向から押圧する押圧部を有している。曲げ加工に使用する複数の中間パンチは、ワークの曲げ長さに応じて選択可能である。
【0004】
各移動金型の金型長さ方向外側には、ヒンジピン(特許文献1ではピン)が金型幅方向に沿って設けられている。換言すれば、パンチ金型本体の下部には、一対のヒンジピンが一対の移動金型を介して設けられている。また、各ヒンジピンには、回転パンチ(引用文献1では回転型)が回転可能に設けられており、各回転パンチは、ワークを上方向から押圧する押圧部を有している。
【0005】
各回転パンチは、その回転によって水平姿勢と傾斜姿勢とに切り替わるように構成されている。水平姿勢とは、回転パンチの押圧部が水平になる姿勢のことである。傾斜姿勢とは、回転パンチの押圧部における金型長さ方向外側が金型長さ方向内側よりも低くなるように、回転パンチの押圧部が水平方向に対して傾斜した姿勢のことである。また、各回転パンチは、ワークの曲げ加工後に上部テーブルが上昇すると、自重(各回転パンチの自重)による回転によって水平姿勢から傾斜姿勢に切り替わるように構成されている。これにより、ワークの箱曲げ加工の終了後又は途中に、回転パンチとL字形状の曲げフランジとの干渉を回避しつつ、箱曲げ用パンチ金型を箱製品又はワークから抜くことができる。
【0006】
なお、本発明に関連する先行技術として特許文献1の他に、特許文献2に示すものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特公昭61-16203号公報
【文献】特開2018-20335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、近年、短辺側の寸法のより短い箱製品を製作したいという要望が強くなっている。この要望に応えるためには、各回転パンチを水平姿勢に切り替えた状態における一方の回転パンチの金型長さ方向外側の端部から他方の回転パンチの金型長さ方向外側の端部までの距離、換言すれば、一対の回転パンチの最大の端部間距離を短くしなければならない。一方、箱曲げ用パンチ金型から複数の中間パンチを取り除いたとしても、各回転パンチの回転動作の信頼性を確保するために、一対のヒンジピンを金型長さ方向に十分に離隔させる必要がある。その結果、一対の回転パンチの最大の端部間距離を短くすることによって前述の要望に応えることは困難であるという問題がある。
【0009】
そこで、本発明は、各回転パンチの回転動作の信頼性を確保しつつ、一対の回転パンチの最大の端部間距離を短くすることができる、新規な構成からなる箱曲げ用パンチ金型等を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1実施態様に係る箱曲げ用パンチ金型は、パンチ金型本体と、パンチ金型本体に金型幅方向に沿って設けられた1つのヒンジピンと、1つの前記ヒンジピンに回転可能に設けられ、金型長さ方向に対称的に配置され、板状のワーク(板金)を上方向から押圧する押圧部を有した一対の回転パンチと、備えている。そして、各回転パンチは、その回転によって、前記押圧部における金型長さ方向外側が金型長さ方向内側よりも低くなるように前記押圧部が水平方向に対して傾斜した傾斜姿勢と、前記押圧部が水平になる水平姿勢とに切り替わるよう構成される。各回転パンチは、ワークの曲げ加工後に自重(各回転パンチの自重)よる回転によって前記水平姿勢から前記傾斜姿勢に切り替わるように構成されている。
【0011】
本発明の第1実施態様では、各回転パンチの前記押圧部は、平坦面状であってもよい。また、各回転パンチは、前記押圧部を有したパンチボディと、前記パンチボディの金型長さ方向内側に形成され、1つの前記ヒンジピンに回転可能に連結する連結片と、を有してもよい。この場合に、一対の前記回転パンチの前記連結片が重なるように金型幅方向に位置をずらしてもよい。
【0012】
本発明の第1実施態様では、前記パンチ金型本体に着脱可能に設けられたユニットベースを備え、1つの前記ヒンジピンは、前記ユニットベースに設けられることにより、前記ユニットベースを介して前記パンチ金型本体に設けられており、前記ユニットベース、1つの前記ヒンジピン、及び一対の前記回転パンチは、前記パンチ金型本体に対して着脱可能なパンチユニットを構成してもよい。更に、前記ユニットベースは、前記パンチ金型本体に着脱可能に設けられたベースブロックと、前記ベースブロックの下面に金型幅方向に間隔を置いて形成された一対の支持部材と、を有してもよい。この場合、1つの前記ヒンジピンは、一対の前記支持部材の間に金型幅方向に沿って連結するように設けられている。各回転パンチは、前記押圧部を有したパンチボディと、前記パンチボディの金型長さ方向内側に形成され、1つの前記ヒンジピンに回転可能に連結する連結片と、を有してもよい。この場合に、一対の前記回転パンチの前記連結片が一対の前記支持部材の間において重なるように金型幅方向に位置をずらしてもよい。前記水平姿勢の各回転パンチは、金型長さ方向外側から見ると一対の前記支持部材に整合してもよい。
【0013】
本発明の第1実施態様によると、前述のように、1つの前記ヒンジピンに一対の前記回転パンチが回転可能に設けられ、一対の前記回転パンチが金型長さ方向に対称的に配置されている。各回転パンチは、その回転によって前記水平姿勢と前記傾斜姿勢とに切り替わるよう構成されている。そのため、各回転パンチの回転動作の信頼性を確保しつつ、一対の回転パンチの最大の端部間距離をに短くすることができる。
【0014】
本発明の第2実施態様に係る箱曲げ用金型セットは、本発明の第1実施態様からなる箱曲げ用パンチ金型と、箱曲げ用ダイ金型とからなり、前記箱曲げ用パンチ金型における各回転パンチの前記押圧部は、平坦面状である。前記箱曲げ用ダイ金型は、上側に板状のワーク(板金)における短辺側の曲げフランジに相当する部分を曲げるための直角状の曲げ部を有したダイ金型本体を備えている。前記箱曲げ用ダイ金型は、前記ダイ金型本体における前記曲げ部の正面側に昇降可能(上下方向へ移動可能)に設けられ、上側にワークを支持しかつ一対の前記回転パンチの前記押圧部と協働してワークを挟持する平坦面状の支持部を有した昇降ブロックと、前記昇降ブロックを上方向へ付勢する付勢部材と、を備えている。
【0015】
本発明の第2実施態様によると、前述のように、前記箱曲げ用金型セットは本発明の第1実施態様に係る前記箱曲げ用パンチ金型と前記箱曲げ用ダイ金型からなる。そのため、本発明の第2実施態様によると、前述の本発明の第1実施態様による作用と同様の作用を奏する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、前記箱曲げ用パンチ金型を用いて短辺側の寸法のより短い箱製品を製作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る箱曲げ用金型セットの左側面図である。
【
図2】
図2(a)は、箱製品の斜視図である。
図2(b)は、箱曲げ加工の対象となる板状のワーク、換言すれば、箱製品の展開状態を示す図である。
【
図3A】
図3Aは、本発明の実施形態に係る箱曲げ用パンチ金型の斜視図であり、各回転パンチを水平姿勢に切り替えた様子を示している。
【
図3B】
図3Bは、本発明の実施形態に係る箱曲げ用パンチ金型の斜視図であり、各回転パンチを傾斜姿勢に切り替えた様子を示している。
【
図4A】
図4Aは、本発明の実施形態に係る箱曲げ用パンチ金型の正面図であり、止め板を省略しかつ各回転パンチを水平姿勢に切り替えた様子を示している。
【
図4B】
図4Bは、本発明の実施形態に係る箱曲げ用パンチ金型の正面図であり、止め板を省略しかつ各回転パンチを傾斜姿勢に切り替えた様子を示している。
【
図5】
図5(a)は、本発明の実施形態に係る箱曲げ用パンチ金型の左側面図であり、各回転パンチを水平姿勢に切り替えた様子を示している。
図5(b)は、本発明の実施形態に係る箱曲げ用パンチ金型の左側面図であり、各回転パンチを傾斜姿勢に切り替えた様子を示している。
【
図6】
図6(a)は、本発明の実施形態に係る箱曲げ用ダイ金型の左側面図である。
図6(b)は、本発明の実施形態に係る箱曲げ用ダイ金型の正面図である。
【
図7】
図7は、本発明の実施形態に係る箱曲げ用金型セットの正面図であり、ワークにおける短辺側の曲げフランジに相当する部分をL字状に曲げる様子を示している。
【
図8】
図8は、本発明の実施形態に係る箱曲げ用金型セットの左側面図であり、ワークにおける短辺側の曲げフランジに相当する部分をL字状に曲げる様子を示している。
【
図9】
図9は、本発明の実施形態に係る箱曲げ用金型セットの正面図であり、ワークの曲げ加工後の様子を示している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について
図1から
図9を参照して説明する。
【0019】
なお、本願の明細書及び特許請求の範囲において、「設けられる」とは、直接的に設けられることの他に、別部材を介して間接的に設けられることを含む意である。また、「金型長さ方向」とは、箱曲げ用パンチ金型又は箱曲げ用ダイ金型の長さ方向のことをいい、本発明の実施形態にあっては、左右方向のことをいう。
「金型長さ方向外側」とは、金型長さ方向の片側であって箱曲げ用パンチ金型又は箱曲げ用ダイ金型の中心から遠い側(1つのヒンジピンから遠い側)のことをいう。「金型長さ方向内側」とは、金型長さ方向の片側であって箱曲げ用パンチ金型又は箱曲げ用ダイ金型の中心から近い側(1つのヒンジピンから近い側)のことをいう。「金型幅方向」とは、箱曲げ用パンチ金型又は箱曲げ用ダイ金型の幅方向のことをいい、本発明の実施形態にあっては、前後方向のことをいう。
【0020】
「水平」とは、完全な水平に限定されず、水平方向に対して僅かに(例えば3度未満程度)傾斜した状態も含む意である。「短辺」とは、隣り合う2つの端辺のうち短い方の端辺のことをいい、隣り合う2つの端辺の長さが同じ場合には、いずれの端辺も含む意である。「長辺」とは、隣り合う2つの端辺のうち長い方の端辺ことをいい、隣り合う2つの端辺の長さが同じ場合には、いずれの端辺も含む意である。
【0021】
図面中、「CA」は金型長さ方向、「L」は左方向、「R」は右方向、「CB」は金型幅方向、「FF」は前方向、「FR」は後方向、「「U」は上方向、「D」は下方向をそれぞれ指している。
【0022】
図1及び
図2(a)(b)に示すように、本発明の実施形態に係る箱曲げ用金型セット10は、プレスブレーキの上部テーブル12の下端部にパンチホルダ(図示省略)を介して設けられた箱曲げ用パンチ金型14と、プレスブレーキの下部テーブル16の上端部に設けられた箱曲げ用ダイ金型18とからなる。また、箱曲げ用金型セット10は、板状のワーク(板金)Wの箱曲げ加工を行って4つのL字形状の曲げフランジFを有した箱製品Mを製作する際に用いられる。特に、箱曲げ用金型セット10は、ワークWの箱曲げ加工のうち、ワークWにおける短辺側の曲げフランジに相当する部分F’の曲げ加工を行う際に用いられる。
【0023】
なお、ワークWの箱曲げ加工のうち、ワークWにおける長辺側の曲げフランジに相当する部分F’の曲げ加工は、ワークWにおける短辺側の曲げフランジに相当する部分F’の曲げ加工を行う前に、汎用の金型セット(図示省略)を用いて行われる。
図2(b)には、破線で曲げ線を示しており、各曲げ線に付した番号は、曲げ加工の順番を一例として示している。
【0024】
続いて、本発明の実施形態に係る箱曲げ用パンチ金型14の具体的な構成について
図1から
図5(a)(b)を参照して説明する。
【0025】
箱曲げ用パンチ金型14は、金型長さ方向に延びたパンチ金型本体20を備えている。パンチ金型本体20の上部には、上部テーブル12の下端部にパンチホルダを介して取付けるためシャンク部22が形成されている。パンチ金型本体20の正面側の下部には、段部(段状の凹部)20dが形成されている。
【0026】
図1から
図5(a)(b)に示すように、パンチ金型本体20の段部20dには、金型長さ方向に延びたユニットベース24が着脱可能に設けられている。パンチ金型本体20の下面には、ユニットベース24を下方向から支持する支持プレート26が複数の取付ボルト(図示省略)を介して設けられている。パンチ金型本体20の正面(前面)には、ユニットベース24を前方向から押さえる複数の押え具28が複数の取付ボルト30を介して設けられている。パンチ金型本体20の左側面には、ユニットベース24の金型長さ方向の位置を規定するための規定板32が複数の取付ボルト(図示省略)を介して設けられている。
【0027】
ユニットベース24は、パンチ金型本体20の段部20dに着脱可能に設けられたベースブロック34を有しており、ベースブロック34は、金型長さ方向に延びている。ベースブロック34の下面の中央には、矩形状の凸部36が形成されている。また、ベースブロック34の凸部36の前部には、一方の支持部材としての支持片38が形成されている。支持片38は、その下側に、ワークWを上方向から押圧する平坦面状の押圧部38pを有している。支持片38の押圧部38pは、前側が後側よりも僅かに高くなるように水平方向に対して僅かに(例えば1度)傾斜しているが、水平方向に対して傾斜させなくてもよい。
【0028】
ベースブロック34の凸部36の後部には、他方の支持部材としての支持爪40が支持片38と金型幅方向に間隔を置いて形成されている。支持爪40は、その下側に、ワークWを上方向から押圧する平坦面状の押圧部40pを有している。支持爪40の押圧部40pは、支持片38の押圧部38pと同一平面上に位置している。支持爪40の後部には、ワークW又は箱製品Mにおける短辺側のL字形状の曲げフランジFとの干渉を回避するためのバック傾斜面40bが形成されている(
図5(b)参照)。
【0029】
ユニットベース24における支持片38と支持爪40との間に、1つのヒンジピン42が金型幅方向に沿って連結するように設けられている。換言すれば、パンチ金型本体20の下面の中央部には、1つのヒンジピン42がユニットベース24を介して金型幅方向に沿って設けられている。また、ユニットベース24の凸部36の正面には、支持片38からの1つのヒンジピン42の離脱を防止するための止め板44が複数の取付ボルト(図示省略)を介して設けられている。
【0030】
1つのヒンジピン42には、一対の回転パンチ46が回転可能に設けられており、一対の回転パンチ46は、金型長さ方向に対称に配置されている。また、各回転パンチ46は、ワークWを上方向から押圧する平坦面状の押圧部48pを有したパンチボディ48と、パンチボディ48の金型長さ方向内側に形成されかつ1つのヒンジピン42に回転可能に連結する連結片50とを有している。一対の回転パンチ46の連結片50は、支持片38と支持爪40の間において重なるように金型幅方向に位置をずらしている(
図3A参照)。一対の回転パンチ46の連結片50の厚み(金型幅方向の長さ)の合計寸法は、支持片38と支持爪40との間隔寸法よりも僅かに小さく設定されている。各パンチボディ48の後部には、ワークW又は箱製品Mにおける短辺側のL字形状の曲げフランジFとの干渉を回避するためのバック傾斜面48bが形成されている(
図8参照)。各パンチボディ48の金型長さ方向外側の側部には、ワークW又は箱製品Mにおける長辺側のL字形状の曲げフランジFとの干渉を回避するためのサイド傾斜面48sが形成されている(
図7参照)。
【0031】
図3Aから
図5(a)(b)に示すように、各回転パンチ46は、その回転によって水平姿勢と傾斜姿勢とに切り替わるように構成されている。水平姿勢とは、パンチボディ48の押圧部48pが水平になる姿勢のことをいう。傾斜姿勢とは、パンチボディ48の押圧部48pにおける金型長さ方向外側が金型長さ方向内側よりも低くなるように、パンチボディ48の押圧部48pが水平方向に対して傾斜した姿勢のことをいう。また、各回転パンチ46は、ワークWの曲げ加工後に上部テーブル12が上昇すると、自重(各回転パンチ46の自重)による回転によって水平姿勢から傾斜姿勢に切り替わるように構成されている(
図9参照)。
【0032】
各連結片50には、各回転パンチ46の自重による回転を規制するためのストッパ面50sが形成されている(
図4B参照)。各連結片50のストッパ面50sは、各回転パンチ46がワークWと非接触状態のときに、各回転パンチ46の自重によってベースブロック34の凸部36の下面に当接する。換言すれば、各回転パンチ46は、ワークWと非接触状態のときに、傾斜姿勢に保持されるように構成されている。また、水平姿勢の各回転パンチ46は、金型長さ方向外側から見ると支持片38と支持爪40に整合している(
図5(a)参照)。換言すれば、水平姿勢の各パンチボディ48の押圧部48pは、支持片38の押圧部38p及び支持爪40の押圧部40pと同一平面上に位置している。更に、ベースブロック34の凸部36における1つのヒンジピン42の両側には、水平姿勢の回転パンチ46を下方向へ押圧するボールプランジャ52がそれぞれ設けられている(
図4A及び
図4B参照)。
【0033】
ここで、ユニットベース24、1つのヒンジピン42、一対の回転パンチ46、及び一対のボールプランジャ52は、パンチ金型本体20に対して着脱可能なパンチユニットPUを構成している。
【0034】
パンチ金型本体20の背面(後側面)には、金型長さ方向に離隔した一対のバックプレート54が複数の取付ボルト(図示省略)を介して設けられており、各バックプレート54は、上下方向に延びている。なお、箱曲げ用パンチ金型14を保管する際に、各回転パンチ46が水平姿勢に保持されるようにしてもよい。
【0035】
続いて、本発明の実施形態に係る箱曲げ用ダイ金型18の具体的な構成について
図1及び
図6(a)(b)説明する。
【0036】
図1、
図2(a)(b)、及び
図6(a)(b)に示すように、箱曲げ用ダイ金型18は、下部テーブル16の上端部に設けられた取付ベース56を備えており、取付ベース56は、金型長さ方向に延びている。また、取付ベース56の上側には、金型長さ方向に延びたダイ金型本体58が複数の取付ボルト(図示省略)を介して設けられている。ダイ金型本体58は、上側に金型長さ方向に延びた凹部60dを有したダイボディ60と、ダイボディ60における凹部60dの背面側(後側)に着脱可能に設けられかつ金型長さ方向に延びた矩形断面の曲げ片62と有している。更に、曲げ片62は、その角部に、ワークWにおける短辺側の曲げフランジに相当する部分F’をL字状に曲げるための直角状の曲げ部62bを有しており、曲げ部62bは、金型長さ方向に延びている。なお、ダイ金型本体58から曲げ片62を省略して、ダイボディ60がワークWにおける短辺側の曲げフランジに相当する部分F’をL字状に曲げるための直角状の曲げ部(図示省略)を有してもよい。
【0037】
ダイボディ60の下部には、2つの段付き穴60hが金型長さ方向に間隔を置いて形成されており、各段付き穴60hの上端は、凹部60d側に開口している。また、ダイボディ60の下部における2つの段付き穴60hの間には、2つの支持穴60vが金型長さ方向に間隔を置いて形成されており、各支持穴60vの上端は、凹部60d側に開口している。
【0038】
ダイボディ60の凹部60dには、金型長さ方向に延びた昇降ブロック64が昇降可能(上下方向へ移動可能)に設けられている。換言すれば、ダイ金型本体58における曲げ部62bの正面側には、金型長さ方向に延びた昇降ブロック64が昇降可能に設けられている。また、昇降ブロック64は、その上側に、ワークWを水平に支持する平坦面状の支持部64sを有しており、支持部64sは、金型長さ方向に延びている。昇降ブロック64の支持部64sは、一対のパンチボディ48の押圧部48p等(支持片38の押圧部38p及び支持爪40の押圧部40pを含む)と協働してワークWを挟持する。昇降ブロック64の支持部64sの後端は、各回転パンチ46の後端よりもワークWの厚み分だけ後方向に位置している。
【0039】
ダイボディ60の各段付き穴60hには、ストリッパボルト66が昇降可能に設けられており、各ストリッパボルト66の上端部(先端部)は、昇降ブロック64の下部に固定されている。各ストリッパボルト66の頭部は、昇降ブロック64の支持部64sが曲げ片62の上面と同じ高さに位置すると、ダイボディ60の各段付き穴60hの段部(段差部)に当接するように構成されている。また、ダイボディ60の各支持穴60vには、昇降ブロック64を上方向へ付勢する付勢部材としてコイルスプリング68が設けられている。なお、昇降ブロック64の支持部64sが曲げ片62の上面よりも僅かに高い高さに位置すると、各ストリッパボルト66の頭部がダイボディ60の各段付き穴60hの段部に当接するようにしてもよい。
【0040】
ダイボディ60の背面には、一対のバックプレート54を上下方向へ摺動可能に案内するガイドプレート70が複数の取付ボルト(図示省略)を介して設けられており、各ガイドプレート70は、金型長さ方向に延びている。また、昇降ブロック64の支持部64sには、ワークWを金型長さ方向(左右方向)に位置決めするための位置決め部材72が設けられており、位置決め部材72は、金型幅方向(前後方向)に延びている。位置決め部材72は、金型長さ方向に位置調節可能であり、ワークWにおける長辺側の曲げフランジFを突当て可能な突当て面72sを有している。
【0041】
続いて、本発明の実施形態の作用及び効果について説明する。
【0042】
箱曲げ用金型セット10を用いてワークWにおける短辺側の曲げフランジに相当する部分F’の曲げ加工を行う前に、汎用の金型セットを用いてワークWにおける各長辺側の曲げフランジに相当する部分F’の曲げ加工を2回行う。これにより、ワークWにおける各長辺側にL字形状の曲げフランジFを形成する。
【0043】
次に、ワークWにおける一方の短辺側の曲げフランジに相当するF’の曲げ線が曲げ片62の曲げ部62bの後端に位置するように、ワークWを前後方向に位置決めする(
図1参照)。また、ワークWにおける長辺側の曲げフランジFを位置決め部材72の突当て面72sに突き当てて、ワークWを左右方向に位置決めする。これにより、ワークWを箱曲げ用ダイ金型18に対してセットすることができる。
【0044】
続いて、上部テーブル12が下降することにより、各回転パンチ46が傾斜姿勢に保持された状態で、箱曲げ用パンチ金型14が下降して、各パンチボディ48の押圧部48pがワークWに接触する。そして、上部テーブル12の下降動作が継続されることにより、箱曲げ用パンチ金型14が下降しながら、各回転パンチ46が回転して傾斜姿勢から水平姿勢に切り替わる。すると、一対のパンチボディ48の押圧部48p等と昇降ブロック64の支持部64sとの協働によりワークWを挟持する。更に、上部テーブル12の下降動作が継続されことにより、箱曲げ用パンチ金型14が下降しながら、昇降ブロック64が複数のコイルスプリング68の付勢力に抗して下降する。すると、曲げ片62の曲げ部62bが昇降ブロック64に対して相対的に上昇する。これにより、
図7及び
図8に示すように、曲げ片62の曲げ部62bによってワークWにおける一方の短辺側の曲げフランジに相当する部分F’をL字状に曲げることができる。
【0045】
ワークWの曲げ加工後に、
図9に示すように、上部テーブル12が上昇することにより、箱曲げ用パンチ金型14が上昇しながら、各回転パンチ46がその自重による回転によって水平姿勢から傾斜姿勢に切り替わる。また、昇降ブロック64が複数のコイルスプリング68の付勢力によって元の高さ位置まで上昇する。これにより、箱曲げ用パンチ金型14及び箱曲げ用ダイ金型18、換言すれば、箱曲げ用金型セット10を元の状態に復帰させることができる。
【0046】
前述の動作を繰り返すことにより、ワークWにおける一方の短辺側の曲げフランジに相当する部分F’の2回の曲げ加工を行って、ワークWにおける一方の短辺側にL字形状の曲げフランジFを形成することができる。また、ワークWを180度反転させて、前述の動作を繰り返すことにより、ワークWにおける他方の短辺側の曲げフランジに相当する部分F’の2回の曲げ加工を行って、ワークWにおける他方の短辺側にL字形状の曲げフランジFを形成することができる。これにより、4つのL字形状の曲げフランジFを有した箱製品Mを製作することができる。
【0047】
前述のように、ワークWの曲げ加工後に上部テーブル12が上昇すると、各回転パンチ46がその自重による回転によって水平姿勢から傾斜姿勢に切り替わる。これにより、ワークWの箱曲げ加工の終了後又は途中に、各回転パンチ46とL字形状の曲げフランジFとの干渉を回避しつつ、箱曲げ用パンチ金型14を箱製品M又はワークWから抜くことができる。
【0048】
また、前述のように、1つのヒンジピン42に一対の回転パンチ46が回転可能に設けられ、一対の回転パンチ46が金型長さ方向に対称的に配置されている。各回転パンチ46は、その回転によって水平姿勢と傾斜姿勢とに切り替わるよう構成されている。そのため、各回転パンチ46の回転動作の信頼性を確保しつつ、一対の回転パンチ46の最大の端部間距離を十分に短くすることができる。なお、一対の回転パンチ46の最大の端部間距離とは、各回転パンチ46を水平姿勢に切り替えた状態における一方の回転パンチ46の金型長さ方向外側の端部から他方の回転パンチ46の金型長さ方向の端部までの距離のことをいう。
【0049】
更に、前述のように、ユニットベース24、1つのヒンジピン42、一対の回転パンチ46、及び一対のボールプランジャ52は、パンチ金型本体20に対して着脱可能なパンチユニットPUを構成している。そのため、ユニットベース24(ベースブロック34)の後側面とパンチ金型本体20の段部20dの前側面との間にシム(図示省略)を介在させることにより、各回転パンチ46の金型幅方向の位置、換言すれば、昇降ブロック64の支持部64sの後端に対する各回転パンチ46の後端の前後方向の位置を変更することができる。併せて、一対の回転パンチ46の最大の端部間距離の異なる複数種のパンチユニットPUを用意することにより、パンチユニットPUの交換によって一対の回転パンチ46の最大の端部間距離を変更することができる。
【0050】
従って、本発明の実施形態によれば、各回転パンチ46の回転動作の信頼性を確保しつつ、一対の回転パンチ46の最大の端部間距離を十分に短くできるため、箱曲げ用金型セット10を用いて短辺側の寸法のより短い箱製品Mを製作することができる。
【0051】
また、本発明の実施形態によれば、昇降ブロック64の支持部64sの後端に対する各回転パンチ46の後端の前後方向の位置を変更できるため、厚み(板厚)の異なる複数種のワークWの箱曲げを行うことができる。
【0052】
更に、本発明の実施形態によれば、パンチユニットPUの交換によって一対の回転パンチ46の最大の端部間距離を変更できるため、短辺側の寸法の異なる複数種の箱製品Mを製作することができる。
【0053】
なお、本発明は、前述の実施形態の説明に限るものでなく、次のように種々の態様で実施可能である。
【0054】
上部テーブル12が昇降する代わりに、下部テーブル16が昇降してもよい。換言すれば、箱曲げ用パンチ金型14が昇降する代わりに、箱曲げ用ダイ金型18が昇降してもよい。また、各パンチボディ48の押圧部48pを平坦面状に形成する代わりに、特許文献2に示すように、パンチ先端角を有した交差する2面状に形成してもよい。この場合には、箱曲げ用ダイ金型18に代えて、上面にV溝が形成された汎用ダイ金型(図示省略)を用いる。
【0055】
そして、本発明に包含される権利範囲は、前述の実施形態に限定されないものである。
【符号の説明】
【0056】
10 箱曲げ用金型セット
12 上部テーブル
14 箱曲げ用パンチ金型
16 下部テーブル
18 箱曲げ用ダイ金型
20 パンチ金型本体
20d パンチ金型本体の段部
22 シャンク部
24 ユニットベース
26 支持プレート
28 押え具
30 取付ボルト
32 規定板
34 ベースブロック
36 凸部
38 支持片(支持部材)
38p 支持片の押圧部
40 支持爪(支持部材)
40p 支持爪の押圧部
40b 支持爪のバック傾斜面
42 1つのヒンジピン
44 止め板
46 回転パンチ
48 パンチボディ
48p パンチボディの押圧部
48b パンチボディのバック傾斜面
48s パンチボディのサイド傾斜面
50 連結片
50s 連結片の当接面(ストッパ面)
52 ボールプランジャ
PU パンチユニット
54 バックプレート
56 取付ベース
58 ダイ金型本体
60 ダイボディ
60d ダイボディの凹部
60h ダイボディの段付き穴
60v ダイボディの支持穴
62 曲げ片
62b 曲げ片の曲げ部
64 昇降ブロック
64s 昇降ブロックの支持部
66 ストリッパボルト
68 コイルスプリング(付勢部材)
70 ガイドプレート
72 位置決め部材
72s 位置決め部材の突当て面
W ワーク(板金)
M 箱製品
F 曲げフランジ
F’ 曲げフランジに相当する部分