(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-15
(45)【発行日】2022-06-23
(54)【発明の名称】フッ素化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 17/20 20060101AFI20220616BHJP
C07C 21/18 20060101ALI20220616BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20220616BHJP
【FI】
C07C17/20
C07C21/18
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2018179695
(22)【出願日】2018-09-26
(62)【分割の表示】P 2016524511の分割
【原出願日】2014-10-13
【審査請求日】2018-10-16
【審判番号】
【審判請求日】2020-09-28
(32)【優先日】2013-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】100080447
【氏名又は名称】太田 恵一
(72)【発明者】
【氏名】ボネ,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】コリエ,ベルトラン
(72)【発明者】
【氏名】ドゥール-ベール,ドミニク
(72)【発明者】
【氏名】ギャレ,ドミニク
(72)【発明者】
【氏名】ピガモ,アンヌ
(72)【発明者】
【氏名】ワンドランジェ,ロラン
【合議体】
【審判長】大熊 幸治
【審判官】瀬良 聡機
【審判官】伊藤 佑一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/088195(WO,A1)
【文献】特表平08-508992(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101074185(CN,A)
【文献】特開2002-53873(JP,A)
【文献】特開2013-34953(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
- フッ化水素酸を含む気体流を供給する工程と、
- 塩素化合物の少なくとも1つの液体流を供給し、前記気体流との混合によってこの液体流を気化させる工程であって、結果として得られる混合物が気体混合物である工程と、
- 気相でフッ化水素酸と塩素化合物とを触媒反応させ、製品流を収集する工程と
を含む、フッ素化合物の製造方法であって、塩素化合物の液体流とフッ化水素酸を含む気体流との混合が、静的ミキサー内で実施され、
HFを含む気体流と塩素化合物の液体流の間の質量流量比(気体流/液体流)は1~30であり、HFを含む気体流の温度と塩素化合物の気化後の気体混合物の温度間の差が50℃以下であることを特徴とする方法。
【請求項2】
- 塩素化合物が、クロロカーボン、ハイドロクロロカーボン、クロロフルオロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、クロロオレフィン、ハイドロクロロオレフィン、クロロフルオロオレフィン、またはハイドロクロロフルオロオレフィンであり、フッ素化合物が、フルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボン、クロロフルオロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、フルオロオレフィン、ハイドロフルオロオレフィン、クロロフルオロオレフィン、またはハイドロクロロフルオロオレフィンであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
- 塩素化合物が、1,1,2-トリクロロエタン、1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパン、1,1,1,3,3-ペンタクロロプロパン、1,1,2,2,3-ペンタクロロプロパン、2,3-ジクロロ-1,1,1-トリフルオロプロパン、パークロロエチレン、1,2-ジクロロエチレン、1,1,2,3-テトラクロロプロペン、2,3,3,3-テトラクロロプロペン、1,1,3,3-テトラクロロプロペン、1,3,3,3-テトラクロロプロペン、2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、およびそれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
- フッ素化合物が、ペンタフルオロエタン、1-クロロ-2,2-ジフルオロエタン、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、およびそれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
- 塩素化合物がパークロロエチレンでありフッ素化合物がペンタフルオロエタンであるか、または塩素化合物が1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンでありフッ素化合物が2,3,3,3-テトラフルオロプロペンであることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
一方ではフッ素化合物の流れを、他方では再循環流を収集できるようにする1つまたは複数の製品流分離工程を含むことを特徴とする、請求項1~5のいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
再循環流が、任意にはフッ化水素酸の供与後に、フッ化水素酸を含む気体流を供給することを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
塩素化合物の液体流を、それの気化温度よりも低い温度で加熱する工程を含むことを特徴とする、請求項1~7のいずれか一つに記載の方法。
【請求項9】
フッ化水素酸を含む気体流と塩素化合物の液体流とを混合する工程の後、そしてフッ化水素酸と塩素化合物とを触媒反応させる工程の前に、
- 混合物を加熱する工程、または
- 混合物を冷却する工程、
を含むことを特徴とする、請求項1~8のいずれか一つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばハイドロフルオロカーボンまたはハイドロフルオロオレフィンなどのフッ素化合物の製造方法およびこの方法の実施に適した設備に関する。
【背景技術】
【0002】
特にハイドロクロロカーボンまたはハイドロクロロオレフィンをフッ素化することによって、ハイドロフルオロカーボンまたはハイドロフルオロオレフィンを製造することが公知である。このフッ素化は概して、フッ素化剤としてフッ化水素酸を使用する触媒的フッ素化である。
【0003】
フッ素化反応は概して、気相にて高温(300℃超)で実施されなければならない。したがって、熱交換器を使用してフッ素化反応の前に試薬を加熱し、気化させ、過熱することが公知である。
【0004】
しかしながら、試薬の加熱、気化および過熱というこの予備的工程は、熱交換器内でのコークスの生成を導く傾向を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】欧州特許第939071号明細書
【文献】米国特許第4902838号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、設備におけるコークス生成の問題を制限、または回避するフッ素化合物製造方法を完成させる必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は第一に、
- フッ化水素酸を含む気体流を供給する工程と、
- 塩素化合物の少なくとも1つの液体流を供給し、前記気体流との混合によってこの液体流を気化させる工程であって、結果として得られる混合物が気体混合物である工程と、
- 気相でフッ化水素酸と塩素化合物とを触媒反応させ、製品流を収集する工程と
を含む、フッ素化合物の製造方法に関する。
【0008】
実施形態によると
- 塩素化合物は、クロロカーボン、ハイドロクロロカーボン、クロロフルオロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、クロロオレフィン、ハイドロクロロオレフィン、クロロフルオロオレフィン、またはハイドロクロロフルオロオレフィンであり、フッ素化合物は、フルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボン、クロロフルオロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、フルオロオレフィン、ハイドロフルオロオレフィン、クロロフルオロオレフィンまたはハイドロクロロフルオロオレフィンであり、
- 好ましくは塩素化合物は、1,1,2-トリクロロエタン、1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパン、1,1,1,3,3-ペンタクロロプロパン、1,1,2,2,3-ペンタクロロプロパン、2,3-ジクロロ-1,1,1-トリフルオロプロパン、パークロロエチレン、1,2-ジクロロエチレン、1,1,2,3-テトラクロロプロペン、2,3,3,3-テトラクロロプロペン、1,1,3,3-テトラクロロプロペン、1,3,3,3-テトラクロロプロペン、2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、およびそれらの混合物から選択され、
- 好ましくはフッ素化合物は、ペンタフルオロエタン、1-クロロ-2,2-ジフルオロエタン、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、およびそれらの混合物から選択され、
- さらに一層好ましくは、塩素化合物がパークロロエチレンでありフッ素化合物がペンタフルオロエタンであるか、または塩素化合物が1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンでありフッ素化合物が2,3,3,3-テトラフルオロプロペンである。
【0009】
別の実施形態によると、塩素化合物が1,1,3,3-テトラクロロプロペンでありフッ素化合物が1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンであるか、または塩素化合物が1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンでありフッ素化合物が1,3,3,3-テトラフルオロプロペンであるか、または塩素化合物が1,1,2-トリクロロエタンでありフッ素化合物が1-クロロ-2,2-ジフルオロエタンである。
【0010】
一実施形態によると、塩素化合物の液体流とフッ化水素酸を含む気体流との混合は、静的ミキサー内で実施される。
【0011】
一実施形態によると、方法は、一方ではフッ素化合物流を、他方では再循環流を収集できるようにする1つまたは複数の製品流分離工程を含む。
【0012】
一実施形態によると、再循環流は、任意にはフッ化水素酸の供与後に、フッ化水素酸を含む気体流を供給する。
【0013】
一実施形態によると、方法は、適切な場合フッ化水素酸の供与を伴う再循環流の触媒的フッ素化工程を含み、このフッ素化工程の終了時に、フッ化水素酸を含む気体流が収集される。
【0014】
一実施形態によると、方法は、塩素化合物の液体流をそれの気化温度よりも低い温度で加熱する工程を含む。
【0015】
一実施形態によると、方法は、フッ化水素酸を含む気体流と塩素化合物の液体流とを混合する工程の後、そしてフッ化水素酸と塩素化合物とを触媒反応させる工程の前に、
- 混合物を加熱する工程、または
- 混合物を冷却する工程
を含む。
【0016】
本発明は同様に、
- 塩素化合物の液体流の流入用導管と、
- フッ化水素酸を含む気体流の流入用導管と、
- 塩素化合物の液体流の流入用導管とフッ化水素酸を含む気体流の流入用導管とによって供給を受ける、混合および気化用ユニットと、
- 混合および気化用ユニットの出口にある気体混合物収集用導管と、
- 気体混合物収集用導管による供給を受ける触媒的フッ素化用反応装置と、
- 触媒的フッ素化用反応装置の出口にある製品流収集用導管と
を含む、フッ素化合物の製造用設備に関する。
【0017】
一実施形態によると、
- 塩素化合物は、クロロカーボン、ハイドロクロロカーボン、クロロフルオロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、クロロオレフィン、ハイドロクロロオレフィンまたはハイドロクロロフルオロオレフィンであり、フッ素化合物は、フルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボン、クロロフルオロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、フルオロオレフィン、ハイドロフルオロオレフィンまたはハイドロクロロフルオロオレフィンであり、
- 好ましくは塩素化合物は、1,1,2-トリクロロエタン、1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパン、1,1,1,3,3-ペンタクロロプロパン、1,1,2,2,3-ペンタクロロプロパン、2,3-ジクロロ-1,1,1-トリフルオロプロパン、パークロロエチレン、1,2-ジクロロエチレン、1,1,2,3-テトラクロロプロペン、2,3,3,3-テトラクロロプロペン、1,1,3,3-テトラクロロプロペン、1,3,3,3-テトラクロロプロペン、2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンおよびそれらの混合物から選択され、
- 好ましくはフッ素化合物は、ペンタフルオロエタン、1-クロロ-2,2-ジフルオロエタン、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンおよびそれらの混合物から選択され、
- さらに一層好ましくは、塩素化合物がパークロロエチレンでありフッ素化合物がペンタフルオロエタンであるか、または塩素化合物が1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンでありフッ素化合物が2,3,3,3-テトラフルオロプロペンである。
【0018】
別の実施形態によると、塩素化合物が1,1,3,3-テトラクロロプロペンでありフッ素化合物が1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンであるか、または塩素化合物が1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンでありフッ素化合物が1,3,3,3-テトラフルオロプロペンであるか、または塩素化合物が1,1,2-トリクロロエタンでありフッ素化合物が1-クロロ-2,2-ジフルオロエタンである。
【0019】
一実施形態によると、混合および気化用ユニットは静的ミキサーである。
【0020】
一実施形態によると、設備は、
- 製品流収集用導管による供給を受ける少なくとも1つの分離用ユニットと、
- 1つまたは複数の分離用ユニットの出口にあるフッ素化合物収集用導管、および再循環流収集用導管と
を含む。
【0021】
一実施形態によると、再循環流収集用導管、そして任意にはフッ化水素酸供与用導管は、フッ化水素酸を含む気体流流入用導管に供給を行なう。
【0022】
一実施形態によると、設備は、適切な場合フッ化水素酸の供与を伴い、再循環流収集用導管により少なくとも部分的に供給を受ける触媒的フッ素化用反応装置を含み、フッ化水素酸を含む気体流の流入用導管は、触媒的フッ素化用反応装置から派生している。
【0023】
一実施形態によると、設備は、塩素化合物液体流の流入用導管に加熱手段を含む。
【0024】
一実施形態によると、設備は、気体混合物の収集用導管に加熱手段または冷却手段を含む。
【0025】
本発明は、現状技術の欠点を克服することができる。本発明はより詳細には、設備のコークス生成の問題を制限、または回避するフッ素化合物の製造方法を提供する。
【0026】
これは、フッ化水素酸を含有する高温気体流と混合させることによって主要な試薬(フッ素化すべき塩素化合物)を気化させることにより達成される。
【0027】
こうして、(高温金属はコークス化傾向を有することから)大量のコークス生成を導く2つの要因である非常に大きい接触表面ならびに高温点を呈する熱交換器内での主要な試薬の気化および過熱が回避される。
【0028】
その上、この混合工程のために、気化の際の塩素化合物の分圧は比較的低くなり、したがって気化温度も同様に低くなり、いずれにせよ塩素化合物が独立した形で気化されるという仮定の下での気化温度よりも低い。こうして、特に塩素化合物の変質の危険性を制限することができる。
【0029】
好ましくは、フッ化水素酸を含む気体流は、塩素化合物液体流との混合時点で100~400℃、より詳細には130~380℃、そして有利には250~380℃の温度にある。
【0030】
概して、フッ化水素酸を含む気体流の温度は、塩素化合物液体流との混合時点で、
- 触媒反応の温度以下、
- 圧力およびこの気体流の組成(特にHF含有量)によって左右される、フッ化水素酸を含む気体流の気化温度以上
から選択される。
【0031】
例えば、(以下により詳細に説明する)HFC-125の製造の枠内で、フッ化水素酸を含む気体流の温度は、約165℃であり得る。(以下でより詳細に説明する)HFO-1234yfの製造の枠内で、フッ化水素酸を含む気体流の温度は、約320~380℃であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明に係る設備の一実施形態を概略的に表わす図である。
【
図2】本発明に係る設備の別の実施形態を概略的に表わす図である。
【
図3】塩素化合物の気化後の主要フッ素化反応装置の供給流の温度推移を示すグラフである(実施例1参照)。x軸には、t/h単位で表わされたHFを含む気体流の流量が示され、y軸には、塩素化合物との混合および気化後のこの塩素化合物流の℃単位の温度が示されている。△で表わされた点は、25℃の塩素化合物の初期温度に対応し、■で表わされた点は、70℃の塩素化合物の初期温度に対応し、◇により表わされた点は、100℃の塩素化合物の初期温度に対応する。グラフ上の10、20、30とマーキングされた3つのデータ群は、それぞれ10、20および30という値のHF/有機物モル比に対応する。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明について、ここで以下の記述の中でより詳細かつ非限定的に説明する。
【0034】
本発明は、フッ素化合物を形成するためのフッ化水素酸による塩素化合物のフッ素化に関する。
【0035】
塩素化合物とは、1つまたは複数の塩素原子を含む有機化合物のことであり、フッ素化合物とは、1つまたは複数のフッ素原子を含む有機化合物を意味する。
【0036】
塩素化合物は1つまたは複数のフッ素原子を含んでいてよく、フッ素化合物は1つまたは複数の塩素原子を含んでいてよいと理解されている。概して、フッ素化合物の塩素原子数は、塩素化合物の塩素原子数よりも少なく、フッ素化合物のフッ素原子数は、塩素化合物のフッ素原子数より多い。
【0037】
塩素化合物は、任意にはF、Cl、IおよびBrの中(好ましくはFおよびClの中)から選択された置換基を有し、かつ少なくとも1つのCl置換基を含む、アルカンまたはアルケンであってよい。
【0038】
フッ素化合物は、任意にはF、Cl、IおよびBrの中(好ましくはFおよびClの中)から選択された置換基を有し、かつ少なくとも1つのF置換基を含む、アルカンまたはアルケンであってよい。
【0039】
塩素化合物は特に、1つまたは複数の塩素置換基を伴うアルカン(ハイドロクロロカーボンまたはクロロカーボン)、あるいは1つまたは複数の塩素およびフッ素置換基を伴うアルカン(ハイドロクロロフルオロカーボンまたはクロロフルオロカーボン)、あるいは1つまたは複数の塩素置換基を伴うアルケン(クロロオレフィンまたはハイドロクロロオレフィン)、あるいは1つまたは複数の塩素およびフッ素置換基を伴うアルケン(ハイドロクロロフルオロオレフィンまたはクロロフルオロオレフィン)であり得る。
【0040】
フッ素化合物は特に、1つまたは複数のフッ素置換基を伴うアルカン(フルオロカーボンまたはハイドロフルオロカーボン)、あるいは1つまたは複数の塩素およびフッ素置換基を伴うアルカン(ハイドロクロロフルオロカーボンまたはクロロフルオロカーボン)、あるいは1つまたは複数のフッ素置換基を伴うアルケン(フルオロオレフィンまたはハイドロフルオロオレフィン)、あるいは1つまたは複数の塩素およびフッ素置換基を伴うアルケン(ハイドロクロロフルオロオレフィンまたはクロロフルオロオレフィン)であり得る。
【0041】
塩素化合物およびフッ素化合物は、直鎖または分枝化合物であってよく、好ましくは直鎖化合物である。
【0042】
一実施形態によると、塩素化合物およびフッ素化合物は唯一の炭素原子を含む。
【0043】
一実施形態によると、塩素化合物およびフッ素化合物は2つの炭素原子を含む。
【0044】
一実施形態によると、塩素化合物およびフッ素化合物は3つの炭素原子を含む。
【0045】
一実施形態によると、塩素化合物およびフッ素化合物は4つの炭素原子を含む。
【0046】
一実施形態によると、塩素化合物およびフッ素化合物は5つの炭素原子を含む。
【0047】
本発明は、特に以下のフッ素化反応に適用される。
- パークロロエチレン(PER)からペンタフルオロエタン(HFC-125)へのフッ素化、
- 1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパン(HCC-240db)から2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233xf)へのフッ素化、
- 1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパン(HCC-240db)から2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)へのフッ素化、
- 1,1,1,3,3-ペンタクロロプロパン(HCC-240fa)から1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze)へのフッ素化、
- 1,1,1,3,3-ペンタクロロプロパン(HCC-240fa)から1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233zd)へのフッ素化、
- 2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233xf)から2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)へのフッ素化、
- 1,1,2,2,3-ペンタクロロプロパン(HCC-240aa)から2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)へのフッ素化、
- 1,1,2,2,3-ペンタクロロプロパン(HCC-240aa)から2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233xf)へのフッ素化、
- 2,3-ジクロロ-1,1,1-トリフルオロプロパン(HCFC-243db)から2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)へのフッ素化、
- 2,3-ジクロロ-1,1,1-トリフルオロプロパン(HCFC-243db)から1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233zd)へのフッ素化、
- 2,3-ジクロロ-1,1,1-トリフルオロプロパン(HCFC-243db)から1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze)へのフッ素化、
- 2,3-ジクロロ-1,1,1-トリフルオロプロパン(HCFC-243db)から2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233xf)へのフッ素化、
- 1,1,2,3-テトラクロロプロペン(HCO-1230xa)から2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)へのフッ素化、
- 1,1,2,3-テトラクロロプロペン(HCO-1230xa)から2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233xf)へのフッ素化、
- 2,3,3,3-テトラクロロプロペン(HCO-1230xf)から2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)へのフッ素化、
- 2,3,3,3-テトラクロロプロペン(HCO-1230xf)から2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233xf)へのフッ素化、
- 1,1,3,3-テトラクロロプロペン(HCO-1230za)から1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233zd)へのフッ素化、
- 1,1,3,3-テトラクロロプロペン(HCO-1230za)から1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze)へのフッ素化、
- 1,3,3,3-テトラクロロプロペン(HCO-1230zd)から1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233zd)へのフッ素化、
- 1,3,3,3-テトラクロロプロペン(HCO-1230zd)から1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze)へのフッ素化、
- 1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233zd)から1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze)へのフッ素化、
- 1,1,2-トリクロロエタンから1-クロロ-2,2-ジフルオロエタン(HCFC-142)へのフッ素化、
- 1,2-ジクロロエチレンから1-クロロ-2,2-ジフルオロエタン(HCFC-142)へのフッ素化。
【0048】
塩素化合物からフッ素化合物への転換は、(唯一の反応工程または唯一の反応条件集合を伴う)直接転換、あるいは(2つ以上の反応工程を伴うかまたは2つ以上の反応条件集合を使用する)間接転換であり得る。
【0049】
フッ素化反応は、以下の条件で実施されてよい。
- 3:1~150:1、好ましくは4:1~100:1、そしてより一層好ましくは5:1~50:1のHF/塩素化合物モル比、
- 1~100秒、好ましくは1~50秒、とりわけ2~40秒の接触時間(触媒体積を総流入流で除し、作動温度および圧力に調整したもの)、
- 0.1~50バール、好ましくは0.3~15バールの絶対圧力、
- 100~500℃、好ましくは200~450℃、そしてより詳細には300~400℃の温度(触媒床の温度)。
【0050】
反応の際の触媒の急速不活性化を回避するために、例えば0.005~2、好ましくは0.01~1.5の酸化剤/有機化合物モル比で、酸化剤(例えば酸素または塩素)を添加することができる。例えば純粋酸素流または純粋塩素流、もしくは酸素/窒素混合物または塩素/窒素混合物を使用することができる。
【0051】
使用される触媒は例えば、遷移金属酸化物あるいはこのような金属の誘導体またはハロゲン化物またはオキシハロゲン化物を含む、金属系のものであってよい。例えば、FeCl3、オキシフッ化クロム、酸化クロム(任意にはフッ素化処理に付されたもの)、フッ化クロム、およびそれらの混合物を挙げることができる。考えられる他の触媒は、炭素上に担持された触媒、アンチモン系触媒、アルミニウム系触媒(例えば、AlF3およびAl2O3、オキシフッ化アルミナおよびフッ化アルミナ)である。
【0052】
概して、オキシフッ化クロム、フッ化またはオキシフッ化アルミニウム、あるいは担持触媒または金属例えばCr、Ni、Fe、Zn、Ti、V、Zr、Mo、Ge、Sn、Pb、Mg、Sbを含まない触媒を使用することができる。
【0053】
この点に関しては、国際公開第2007/079431号(7頁、1~5および28~32行目)、欧州特許第939071号明細書(段落[0022])、国際公開第2008/054781号(9頁22行目~10頁34行目)、および国際公開第2008/040969号(請求項1)を参照することができ、これらは明示的に参照される。
【0054】
使用に先立ち、触媒は好ましくは、空気、酸素、または塩素、および/またはHFでの活性化に付される。
【0055】
使用に先立ち、触媒は好ましくは、100~500℃、好ましくは250~500℃、そしてより詳細には300~400℃の温度で、空気または酸素およびHFとの活性化に付される。活性化時間は好ましくは1~200時間、そしてより詳細には1~50時間である。
【0056】
この活性化には、酸化剤、HFおよび有機化合物の存在下での最終的フッ素化の活性化工程が後続していてよい。
【0057】
HF/有機化合物モル比は、好ましくは2~40であり、酸化剤/有機化合物モル比は、好ましくは0.04~25である。最終活性化温度は、好ましくは300~400℃であり、その持続時間は好ましくは6~100時間である。
【0058】
触媒は好ましくは、クロム系である。より詳細には、これはクロムを含む混合触媒である。
【0059】
一実施形態によると、クロムおよびニッケルを含む混合触媒が使用される。(金属元素に基づく)Cr/Niモル比は、概して0.5~5、例えば0.7~2、例えば約1である。触媒は0.5~20重量%のクロム、および0.5~20重量%のニッケル、好ましくは各々2~10%を含有していてよい。
【0060】
金属は、金属形態、または誘導体、例えば酸化物、ハロゲン化物またはオキシハロゲン化物の形態で存在していてよい。これらの誘導体は、好ましくは触媒金属の活性化によって得られる。
【0061】
担体は好ましくは、アルミニウム、例えばアルミナ、活性化アルミナ、もしくはアルミニウム誘導体、例えばハロゲン化アルミニウムおよびオキシハロゲン化アルミニウム、例えば米国特許第4902838号明細書に記載のもの、あるいは以上で説明した活性化方法によって得られるもので構成される。
【0062】
触媒は、活性化に付されたまたは付されていない担体上に、活性化されたまたはされていない形態のクロムおよびニッケルを含むことができる。
【0063】
本明細書に明示的に参照されている国際公開第2009/118628号(特に4頁30行目~7頁16行目)を参照することができる。
【0064】
好ましい別の実施形態は、MgおよびZnから選択された少なくとも1つの元素とクロムとを含む混合触媒に基づくものである。MgまたはZn/Crの原子比は、好ましくは0.01~5である。
【0065】
図1を参照しながら、ここで、HCC-240dbからHFO-1234yfを製造する方法という特定の場合において、本発明の一実施形態を説明するが、当然のことながら、これは塩素化合物/フッ素化合物の他の対についても同様に適用される。
【0066】
本発明に係る設備は、触媒的フッ素化用反応装置8に供給を行なう、HCC-240db液体流流入用導管2とHFを含む気体流の流入用導管5とを含む。HCC-240db液体流流入用導管2は、液体HCC-240dbの貯蔵1に由来する。HFを含む気体流の流入用導管5は、(場合によって上述の酸化剤と組合せた)純粋HF流、あるいは代替的には、例示した実施例中の場合のように、かつ以下でより詳細に記述するように、有機化合物、特に塩素および/またはフッ素有機化合物とHFとの混合物を輸送することができる。
【0067】
混合および気化用ユニット4は、HCC-240db液体流流入用導管2、およびHFを含む気体流の流入用導管5によって同時に供給を受ける。このユニットは、気体流と液体流とを混合するように適応されている。これは、連続的プロセスを可能にするように静的ミキサーであることが好ましい。このユニット内では、HFを含む気体流は、HCC-240dbの液体流に対して熱を移転し、これによりHCC-240dbの気化が可能になる。
【0068】
HCC-240db、HFおよび任意には追加の化合物の混合物は、触媒的フッ素化用反応装置8まで混合物を輸送する、混合および気化用ユニット4の出口にある気体混合物収集用導管6の中に収集される。
【0069】
HCC-240dbは、HFを含む気体流と混合する前に予備的加熱工程を受けることができる。この場合、この予備的加熱は、HCC-240dbの気化温度より低い温度(およびこの化合物の変質または分解温度よりも低い温度)で実施される。このために、HCC-240db液体流流入用導管2に加熱手段3を具備することができる。
【0070】
HCC-240dbとHFを含む流れとの混合とフッ素化反応の間において、場合によっては、気体混合物収集用導管6に加熱手段、または図示されている通り冷却手段7を具備することで、混合物の補足的加熱または逆に混合物の冷却を想定することができる。加熱か冷却かの選択は、混合および気化用ユニット4に由来する気体混合物の温度と比較した、フッ素化反応に所望される温度によって左右される。
【0071】
触媒的フッ素化用反応装置8の出口には、製品流収集用導管9が連結されている。この導管は、特に対象製品(フッ素化合物、ここではHFO-1234yf)を残りの製品流と分離することのできる1つの分離用ユニット10(または複数の連続する分離用ユニット)に供給を行なう。この点において、特に1つまたは複数の蒸留塔または傾瀉、抽出、洗浄他のユニットを使用することができる。この対象製品は、分離用ユニット10の出口でフッ素化合物収集用導管11内に回収される。その上、再循環流が、再循環流収集用導管12内で回収される。望ましくない他の生成物を、この段階で除去することができる(特にフッ素化反応の際に発生する塩酸)。
【0072】
再循環流は、特に、反応しなかった試薬、すなわちHFおよび塩素化合物(ここではHCC-240db)を含む可能性がある。また再循環流は、反応に由来する二次生成物、すなわち塩素化合物(HCC-240db)のフッ素化によって得られる所望のフッ素化合物以外のフッ素化生成物も含んでいる可能性がある。例示された場合において、再循環流は、HCC-240dbのフッ素化によって得られる特にHCFO-1233xf、そして任意にはHFC-245cb(1,1,1,2,2-ペンタフルオロプロパン)を含む。
【0073】
考えられる1つの実施形態によると、再循環流を触媒的フッ素化用反応装置8へ直接戻すことができる。考えられる別の実施形態によると、この再循環流を、全く異なる処理、さらには別個の活用の対象としてもよい。考えられる別の実施形態によると、この再循環流は、触媒的フッ素化用反応装置8に一部分だけ戻される。
【0074】
ここで例示されている別の実施形態によると、再循環流は、主要な触媒的フッ素化反応装置8に向かって戻される前に補足的フッ素化を受ける。
【0075】
このように再循環流収集用導管12は、補足的な触媒的フッ素化反応装置16に供給を行なう。適切な場合には、例示されている通り、HF供与用導管13をこの収集用導管に連結して新鮮なHFを供与することができる。適切な場合には、例示されている通り、酸化剤供与用導管14を同様に再循環流収集用導管12に連結して、触媒の触媒活性を維持するための酸化剤の供与を確保することができる。
【0076】
再循環流収集用導管12に加熱および気化用手段15を具備して、補足的な触媒的フッ素化反応装置16内で実施される補足的なフッ素化反応のために、流れを所望の温度にすることができる。
【0077】
例示された実施例中では、前述のHFを含む気体流の流入用導管5は、補足的な触媒的フッ素化反応装置16に直接由来している。こうしてHFを含む気体流は、HF(そして場合によっては酸化剤)に加えて、補足的なフッ素化反応に由来するフッ素化された製品を含む。
【0078】
新鮮なHF供与および/または酸化剤供与は、必要な場合、HFを含む気体流の流入用導管5内に添加可能である。
【0079】
触媒的フッ素化の全く異なる2つの工程を含み、塩素化試薬(HCC-240db)の供給がこれら2つの工程間で実施される製造方法の原理は、参照されている国際公開第2013/088195号中で詳述されている。
【0080】
以上の説明中、(塩素化合物の液体流を気化させるために使用される)HFを含む気体流は、再循環流の補足的なフッ素化反応に由来する流れに対応する。次のような他の変形形態が可能である。
- HFを含む気体流は、再循環流の補足的フッ素化反応に由来する流れに、追加のHFおよび/または追加の酸化剤を加えたものであり得る、
- HFを含む気体流は、直接(補足的なフッ素化反応工程無く)再循環流であり得る、または部分的再循環流であり得る、
- HFを含む気体流は直接(補足的フッ素化反応工程無く)再循環流に追加のHFおよび/または追加の酸化剤を加えたものであり得る;
- HFを含む気体流は、任意には新鮮な酸化剤を含む新鮮なHF流であり得る。
【0081】
この最後のケースでは再循環流が存在する場合、これはHFを含む気体流と塩素化合物の液体流の混合工程の後に導入されてよく、再循環流の追加のフッ素化反応を使用する場合には、この反応に由来する流れを、HFを含む気体流と塩素化合物の液体流の混合工程の後に導入することができる。
【0082】
図2を参照しながら、ここで別の一実施形態について説明する。これは、PERからHFC-125を製造する方法(ならびにその実施を可能にする設備)である。
【0083】
設備は、HFを含む気体流の流入用導管25とPER液体流の流入用導管21を含んでおり、これらの2つの導管が、静的ミキサーである混合および気化用ユニット22に供給を行っている。この静的ミキサーの出口には、気体混合物収集用導管23が連結されており、これが1つのまたは一連の複数のフッ素化反応装置(図示せず)に供給を行なう。
【0084】
HFを含む気体流流入用導管25には、加熱手段26a、26b、26cが具備される。加熱手段24a、24bが、気体混合物収集用導管23に具備されている。
【0085】
一実施形態によると、HFを含む気体流は、触媒的フッ素化反応に由来する製品流の処理および分離後に収集される再循環流の加熱、そして適切な場合には気化によって得られる。
【0086】
使用される加熱手段26a、24aの一部は、熱節約交換器であり得る。
【0087】
本発明の方法の実施において一般に考慮すべき重要なパラメータは、以下のものである。
- HFを含む気体流の流量は、塩素化合物の流量より大きくなくてはならず、かつ塩素化合物の完全な気化を可能にしHFを含む気体流の部分的凝縮を回避するように、塩素化合物の流量に比べて十分大きいものでなければならない。こうして好ましくは、HFを含む気体流と塩素化合物流の間の質量流量比は1~30、好ましくは1.2~25、そしてより一層好ましくは1.5~20である、
- HFを含む気体流の温度は、同じ理由で十分高くなくてはならない(この温度はいかなる場合でも、考慮されている圧力における塩素化合物の気化温度より高くなくてはならない)、
- 塩素化合物の気化後の気体混合物の温度とHFを含む気体流の温度間の差は、比較的小さいものにとどまらなければならず、好ましくは50℃以下、あるいは30℃または25℃以下にとどまらなければならない。
【0088】
HFを含む気体流の温度が比較的低い場合(例えばおよそ150℃、または200℃)、塩素化合物の完全な気化を保証するためには、比較的高い質量流量比(気体流/液体流)が必要である。ただし、結果として得られる温度差は、比較的小さい。この状態では、HFのオリゴマー化によって生成された熱は、塩素化合物を気化させるために用いられる。
【0089】
HFを含む気体流の温度が比較的高い場合(例えばおよそ250℃、または300℃)、必要な質量流量比はより小さいが、得られる温度差は比較的高い。この状態では、HFの蒸気はオリゴマーの形状をしておらず、塩素化合物の気化熱は、過熱されたHFの冷却によって提供される。
【0090】
[実施例]
以下の実施例が、非限定的に本発明を例示している。
【0091】
実施例1-塩素化合物との混合に関連するHF流の温度低下の研究
この研究のためには、
図1のスキームにしたがったHCC-240dbからHFO-1234yfへのフッ素化反応が考慮される。
【0092】
1600kg/時のHFO-1234yfの生産性、場合によって4、5または7絶対バールで実施されるフッ素化反応(反応装置8)、場合によって10、20または30のHF/塩素化合物モル比、そして場合によって60%または70%のHCFO-1233xf転換率を考慮する。HCC-240dbの供給流量は、あらゆる場合において3100kg/時である。
【0093】
予備的フッ素化反応(反応装置16)は、350℃の温度で実施されるものとみなすと、HFを含む気体流(導管5)が350℃というこの温度にあるものとみなされる。
【0094】
HCC-240db流の温度に関しては、25℃(流れの予熱はない)、70℃、または100℃という3つの仮説を考慮する。
【0095】
これらの仮説全体に基づいて、各ケースにおいて、HCC-240dbについての温度に応じた蒸気圧に関して利用可能なデータから、HFを含む流れとHCC-240dbの液体流との間の混合後の流れの温度を計算する。結果は
図3に表わされている。
【0096】
最終温度に対するHCC-240dbの流れの予熱の影響は比較的小さい(HCC-240db流が予熱されているか否かによって、混合後の流れの最終温度に対して2.4~8℃の差異)ことが確認される。反応前の混合物の補足的加熱(または逆に冷却)を想定する必要性は、所望される反応温度により左右される。
【0097】
概して、HCC-240dbとの混合およびHCC-240dbの気化に関係する温度の低下は穏やかであり、方法の使用に適合するものである。
【0098】
実施例2-HFを含む気体流と塩素化合物流との間に必要な質量流量比の研究
この研究のためには、7絶対バールの圧力を取上げて、実施例1と同じ基本的仮説を使用する。ここでは、異なる温度、すなわち150、200、250、または300℃でのHF流(純粋)を企図する。場合に応じて、HCC-240dbとの混合後の温度の、多少の差はあるが大きな低下(絶対値でΔTと記載)を仮定し、そこから対応する質量流量比(R)(HCC-240dbの質量流量に対するHFを含む気体流の質量流量の比)を演繹する。
【0099】
また、(HFを含む気体流の凝縮を発生させない)HCC-240dbの完全な気化を可能にするΔTおよびRの限界値も計算する。結果は下表にまとめられている。
【0100】
【0101】
実施例3-パイロット試験
HFを含むフッ素化用反応装置由来の気体流を、予め予熱された240dbの液体流と混合させる。フッ素化用反応装置に由来するHFを含む気体流の流量は、20~50kg/時である。この気体流は、320℃~350℃の温度、および3~5バールの圧力にある。240dbの液体流の流量は3~4kg/時である。240dbのこの液体流を4~6バールの圧力で100℃~120℃の温度に予熱する。
【0102】
2つの流れが混合された場合、240dbの液体流は、HFを含む流れによって瞬間的に気化させられ、これら2つの流れの混合の結果として得られる気体流の温度は、3~5バールで280℃~330℃である。結果として得られるこの流れを、任意には240dbから1233xfへのフッ素化が内部で行なわれる別のフッ素化用反応装置に供給を行なう前に350℃~380℃の温度まで再加熱することができる。
【符号の説明】
【0103】
2 塩素化合物の液体流の流入用導管
3 加熱手段
4 混合および気化用ユニット
5 フッ化水素酸を含む気体流の流入用導管
6 気体混合物収集用導管
7 冷却手段
8 触媒的フッ素化用反応装置
9 製品流収集用導管
10 分離用ユニット
11 フッ素化合物収集用導管
12 再循環流収集用導管
13 フッ化水素酸供与用導管
16 触媒的フッ素化用反応装置