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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-15
(45)【発行日】2022-06-23
(54)【発明の名称】消火設備及び消火設備の管理方法
(51)【国際特許分類】
   A62C 13/66 20060101AFI20220616BHJP
   A62C 35/02 20060101ALI20220616BHJP
【FI】
A62C13/66
A62C35/02 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018181413
(22)【出願日】2018-09-27
(65)【公開番号】P2020048881
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】391008320
【氏名又は名称】株式会社初田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100125450
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 広明
(72)【発明者】
【氏名】久野 彰治
【審査官】鈴木 貴晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-129114(JP,A)
【文献】特開2012-187282(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 13/66, 35/02
F16K 15/02, 17/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
消火剤を収容する消火剤貯蔵容器と、
前記消火剤貯蔵容器内の前記消火剤を加圧するための加圧ガスを、第1流路を経由して供給する加圧ガス容器と、
前記消火剤が加圧されたときに該消火剤を外部に放出するための第2流路と、
前記加圧ガスが供給されていないときに、前記消火剤貯蔵容器及び/又は前記第1流路の温度上昇に伴って圧力が上昇した、前記消火剤貯蔵容器内及び/又は該第1流路内のガスの一部を、該消火剤貯蔵容器外及び/又は該第1流路外に開放可能な、ガス開放機構と、を備え
前記ガス開放機構は、
前記加圧ガスが供給されていないときに、前記第1流路と前記第2流路とを連通可能な第1バイパス流路と、
該第1バイパス流路の一部に設けられた第1弁と、をさらに備え、
前記第1弁は、
前記加圧ガスを前記第1流路から前記第2流路に向けて通過させず、かつ
前記ガスの前記圧力が前記加圧ガスの加圧ガス圧力よりも低いときは前記ガスを前記第1流路から前記第2流路に向けて通過させる弁である、
消火設備。
【請求項2】
消火剤を収容する消火剤貯蔵容器と、
前記消火剤貯蔵容器内の前記消火剤を加圧するための加圧ガスを、第1流路を経由して供給する加圧ガス容器と、
前記消火剤が加圧されたときに該消火剤を外部に放出するための第2流路と、
前記加圧ガスが供給されていないときに、前記消火剤貯蔵容器及び/又は前記第1流路の温度上昇に伴って圧力が上昇した、前記消火剤貯蔵容器内及び/又は該第1流路内のガスの一部を、該消火剤貯蔵容器外及び/又は該第1流路外に開放可能な、ガス開放機構と、を備え、
前記ガス開放機構は、
前記加圧ガスが供給されていないときに、前記消火剤貯蔵容器と前記第2流路とを連通可能な第2バイパス流路と、
該第2バイパス流路の一部に設けられた第2弁と、をさらに備え、
前記第2弁は、
前記加圧ガスを前記消火剤貯蔵容器から前記第2流路に向けて通過させず、かつ
前記ガスの前記圧力が前記加圧ガスの加圧ガス圧力よりも低いときは前記ガスを前記消火剤貯蔵容器から前記第2流路に向けて通過させる弁である、
消火設備。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の消火設備の管理方法であって、
前記加圧ガスが供給されていないときの、前記消火剤貯蔵容器内及び/又は該第1流路内のガスの一部が、前記ガス解放機構によって該消火剤貯蔵容器外及び/又は該第1流路外に開放されていることを定期的に又は不定期に検査することにより、必要に応じて前記ガス解放機構を交換する、
消火設備の管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消火設備及び消火設備の管理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化による気候変動が専門家から指摘される中、世界の複数の国が、異常気象の代表的な一例とも言える記録的な気温の上昇という環境問題に直面している。該気候変動の理由の正否はともかく、少なくとも我が国においては、夏季に40℃以上の最高気温を観測した地域が一年のうちに多数存在したことは確かな事実である。このような気温の記録的上昇は、これまで想定していなかった消火設備の疲労の促進又は誤作動等を引き起こす可能性がある。
【0003】
これまで、消火剤貯蔵容器、加圧ガス容器、ホース、ノズル、起動装置等を1つの収容箱内に収容した、いわゆるパッケージ型消火設備が、屋内消火栓設備の代替として採用されてきた。例えば、外気に曝され、空調されていない環境下に設置された消火剤を用いたパッケージ型消火設備においては、消火剤貯蔵容器内に存在するガスが外気温の上昇に伴ってその圧力を上昇させるため、該消火剤貯蔵容器内の消火剤を押圧することになる。その結果、あたかも加圧ガス容器からの加圧ガスによって押圧されたかのように、該消火剤がホースを経由してノズルから放出される可能性が存在した。
【0004】
これまで、上記可能性への対策として、外気温の上昇のみによって消火剤が放出されないように、該消火剤貯蔵容器からホースに至るまでの流路内に封板とよばれる樹脂製の板を介在させて封口することにより、該消火剤の意図しない放出を防止する技術が開示されている(特許文献1)。なお、該封板は、加圧ガスにより該消火剤貯蔵容器内が加圧されたときは、押圧された消火剤によって破壊されるように工夫されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実開昭58-33068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の封板を採用する場合、昼夜の温度変化によるヒートサイクルによる疲労と、材質の経年劣化によって、その役割を果たせなくなった封板を定期的又は不定期に交換する作業が必要となる。その結果、封板の採用は、消火設備の維持・管理における該封板の点検作業及び交換作業を発生させるとともに、コスト増加という負担を生じさせることになる。
【0007】
また、上述のとおり、封板は、加圧ガスを用いて押圧された消火剤によって破壊されることを実現し得る程度の「弱さ」を有する必要があることから、その特性を有した上で耐久性の高い封板を採用することは非常に難しい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、設置される環境の温度変化、及び繰り返しの温度変化に強い消火設備の実現に大きく貢献するものである。
【0009】
上述のとおり、封板を採用することは一時的な解決手段としては有用であるが、作業負担とコストの増大を招くことになる。また、封板自身の機能性向上を図るにしても、コストを抑えた上での材質改良及び構造の複雑化の回避は、高い技術的障壁となる。そこで、本願発明者は、本来は不要である部材とも言える封板を採用することなく、外気温の上昇のみによって消火剤が放出されないための構造又は構成の創出に向けて鋭意取り組んだ。
【0010】
本願発明者による多くの試行錯誤と分析が重ねられた結果、外気温の上昇に伴って圧力が上昇し得る消火剤貯蔵容器内のガスを、該ガスが収容される領域外及び/又は該領域に連通する流路外に開放する構造及び構成が創出された。その結果、該消火剤の意図しない放出を確度高く防止又は抑制するという、上述の課題を解決し得ることを本願発明者は見出した。本発明は、上述の着眼点に基づいて創出された。
【0011】
本発明の1つの消火設備は、消火剤を収容する消火剤貯蔵容器と、該消火剤貯蔵容器内の該消火剤を加圧するための加圧ガスを、第1流路を経由して供給する加圧ガス容器と、該消火剤が加圧されたときに該消火剤を外部に放出するための第2流路と、を備えている。さらに、この消火設備は、前述の加圧ガスが供給されていないときに、前述の消火剤貯蔵容器及び/又は前述の第1流路の温度上昇に伴って圧力が上昇した、該消火剤貯蔵容器内及び/又は該第1流路内のガスの一部を、該消火剤貯蔵容器外及び/又は該第1流路外に開放可能な、ガス開放機構を備えている。
【0012】
この消火設備によれば、例えば、加圧ガスが供給されていないときに、外気温の上昇に伴って該消火剤貯蔵容器内及び/又は該第1流路内のガスの圧力が上昇した場合に、上述のガス開放機構によって、該ガスの一部を該消火剤貯蔵容器外及び/又は該第1流路外に開放することができる。その結果、該ガスが該消火剤を押圧することによる該消火剤の意図しない放出を、確度高く防止又は抑制することが可能となる。
【0013】
なお、上述の消火設備におけるガス開放機構の構成は特に限定されないが、例えば、次の4つの態様によって上述の課題を解決し得る。
【0014】
(第1の態様)
第1の態様は次のとおりである。
上述のガス開放機構が、上述の加圧ガスが供給されていないときに、上述の第1流路と上述の第2流路とを連通可能な第1バイパス流路と、該第1バイパス流路の一部に設けられた第1弁とを備えている。加えて、前述の第1弁は、前述の加圧ガスを前述の第1流路から前述の第2流路に向けて通過させず、かつ上述のガスの圧力が該加圧ガスの加圧ガス圧力よりも低いときは該ガスを該第1流路から該第2流路に向けて通過させる弁である。
【0015】
この第1の態様の消火設備によれば、加圧ガスが供給されていないときに、例えば外気温の上昇に伴って該消火剤貯蔵容器内及び/又は該第1流路内のガスの圧力が上昇した場合に、上述の第1バイパス流路及び第1弁によって、該ガスの一部を該第1流路外である第2流路に開放することができる。その結果、該第1流路に連通する該消火剤貯蔵容器内の該ガスが該消火剤を押圧することによる該消火剤の意図しない放出を、確度高く防止又は抑制することが可能となる。
【0016】
(第2の態様)
また、第2の態様は次のとおりである。
上述のガス開放機構が、上述の加圧ガスが供給されていないときに、上述の消火剤貯蔵容器と上述の第2流路とを連通可能な第2バイパス流路と、該第2バイパス流路の一部に設けられた第2弁とを備えている。加えて、前述の第2弁は、前述の加圧ガスを前述の消火剤貯蔵容器から該第2流路に向けて通過させず、かつ上述のガスの圧力が該加圧ガスの加圧ガス圧力よりも低いときは該ガスを該消火剤貯蔵容器から該第2流路に向けて通過させる弁である。
【0017】
この第2の態様の消火設備によれば、加圧ガスが供給されていないときに、例えば外気温の上昇に伴って該消火剤貯蔵容器内及び/又は該第1流路内のガスの圧力が上昇した場合に、上述の第2バイパス流路及び第2弁によって、該ガスの一部を該消火剤貯蔵容器外である第2流路に開放することができる。その結果、該消火剤貯蔵容器内の該ガスが該消火剤を押圧することによる該消火剤の意図しない放出を、確度高く防止又は抑制することが可能となる。
【0018】
(第3の態様)
また、第3の態様は次のとおりである。
上述のガス開放機構が、上述の加圧ガスが供給されていないときに、上述の第1流路内の上述のガスを大気に開放可能な第1開放弁を備えている。加えて、前述の第1開放弁は、前述の加圧ガスを前述の第1流路から大気に開放せず、かつ該ガスの圧力が該加圧ガスの加圧ガス圧力よりも低いときは該ガスを該第1流路から大気に向けて通過させる弁である。
【0019】
この第3の態様の消火設備によれば、加圧ガスが供給されていないときに、例えば外気温の上昇に伴って該消火剤貯蔵容器内及び/又は該第1流路内のガスの圧力が上昇した場合に、上述の第1開放弁によって、該第1流路内の該ガスの一部を該第1流路外である大気に開放することができる。その結果、該第1流路に連通する該消火剤貯蔵容器内の該ガスが該消火剤を押圧することによる該消火剤の意図しない放出を、確度高く防止又は抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の1つの消火設備によれば、例えば、加圧ガスが供給されていないときに、外気温の上昇に伴って該消火剤貯蔵容器内及び/又は該第1流路内のガスの圧力が上昇した場合に、上述のガス開放機構によって、該ガスの一部を該消火剤貯蔵容器外及び/又は該第1流路外に開放することができる。その結果、該ガスが該消火剤を押圧することによる該消火剤の意図しない放出を、確度高く防止又は抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】第1の実施形態の消火設備の概要を示す説明図である。
図2A】第1の実施形態の消火設備における弁の構造の概要と作用を示す説明図である。
図2B】第1の実施形態の変形例の消火設備における弁の構造の概要と作用を示す説明図である。
図3】第2の実施形態の消火設備の概要を示す説明図である。
図4】第3の実施形態の消火設備の概要を示す説明図である。
図5】その他の実施形態の消火設備の概要を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施形態を、添付する図面に基づいて詳細に述べる。尚、この説明に際し、全図にわたり、特に言及がない限り、共通する部分には共通する参照符号が付されている。また、図中、本実施形態の要素は必ずしもスケール通りに示されていない。また、各図面を見やすくするために、一部の符号が省略され得る。
【0023】
<第1の実施形態>
図1は、本実施形態の消火設備100の概要を示す説明図である。また、図2Aは、本実施形態の消火設備100における弁(第1弁60a)の構造の概要と作用を示す説明図である。なお、図1に限らず全ての実施形態における消火設備の概要を示す各説明図においては、説明の便宜上、消火剤貯蔵容器10内の消火剤12が見えるように描かれている。
【0024】
(消火設備100及び第1弁60aの構成と作用)
図1に示すように、本実施形態の消火設備100は、液状の消火剤12を収容する消火剤貯蔵容器10(代表的には、公知の金属製の容器)と、消火剤12を加圧するための加圧ガスを、第1流路20(代表的には、公知の金属製又は樹脂製の配管)を経由して供給する加圧ガス容器70(代表的には、公知の金属製の容器)と、消火剤12が加圧されたときに消火剤12を外部に放出するための流路の一部である第2流路30(代表的には、公知の金属製又は樹脂製の配管)と、を備える。
【0025】
ここで、消火剤12が加圧されたときは、サイフォン管32、第2流路30、第2流路30と金属製又は樹脂製の継ぎ手84を介して連通するホース80(代表的には、公知の樹脂製の配管)、及び公知のノズル82を経由して、消火剤12が外部に放出される。なお、本実施形態の消火剤貯蔵容器10の容積から消火剤12の体積を減じた領域(ガスが存在する空間)14は、第1流路20と連通している。
【0026】
また、本実施形態の消火設備100は、加圧ガスが供給されていないときに、消火剤貯蔵容器10及び/又は第1流路20の温度上昇に伴って圧力が上昇した、消火剤貯蔵容器10内及び/又は第1流路20内のガスの一部を、消火剤貯蔵容器10外及び/又は第1流路20外に開放可能な、ガス開放機構を備えている。
【0027】
より具体的には、本実施形態のガス開放機構は、加圧ガスが供給されていないときに、第1流路20と第2流路30とを連通可能な第1バイパス流路40a,40b(代表的には、公知の金属製の容器)と、第1バイパス流路40a,40bの一部に設けられた第1弁60a(例えば、PISCO社製、型式CVLU10-10)とを備えている。なお、消火剤貯蔵容器10内及び第1流路20内(以下、総称して「消火剤貯蔵容器10等内」ともいう)のガスと、第2流路30内のガスとの間の圧力差が0.01MPa以下であった場合は、本実施形態の第1弁60aは、第1流路20側から第2流路30側に向けてガスを通過させる弁である。
【0028】
また、後述する第2乃至第5の各実施形態において採用される、第1弁60a、第2弁60b、第1開放弁60c、及び第2開放弁60dは、本実施形態の第1弁60aと同じ弁が採用され得る。但し、後述する第1弁60aの各機能を備える限り、前述の第1弁60aの代替として第1弁60aとは異なる既製品を採用することも可能である。また、本実施形態は、消火剤貯蔵容器10等内のガスと第2流路30内のガスとの間の圧力差は、0.01MPa以下という数値範囲には限定されない。例えば、0.2MPa以下という圧力差が生じた場合に、第1流路20側から第2流路30側に向けてガスを通過させる弁を用いることも、本実施形態の変形例のひとつである。
【0029】
また、本実施形態においては、図1に示すように、第1流路20と第1バイパス流路40aとは、図示しない公知の金属製又は樹脂製の継ぎ手を介して1つの接続部(図1のA)において連通し、第2流路30と第1バイパス流路40bとは、図示しない公知の金属製又は樹脂製の継ぎ手を介して他の接続部(図1のB)において連通している。
【0030】
加えて、第1弁60aは、図2Aに示すように、次の2つの機能(x1)及び(y1)を備えている。
(x1)消火活動を行うために消火剤を使用する際に、加圧ガス容器70から供給される加圧ガス(図2A(b)における「高圧(加圧)ガス」の矢印)を第1流路20から第2流路30に向けて通過させない。
(y1)加圧ガスが供給されていないときには、例えば、外気温の上昇又はその他の異常によって生じる、消火剤貯蔵容器10等内のガスと第2流路30内のガスとの圧力差が生じたとしても、消火剤貯蔵容器10等内のガスの圧力が加圧ガス圧力よりも低いとき(図2A(a)における「低圧ガス」の矢印)は、消火剤貯蔵容器10等内のガスの一部を第1流路20側から第2流路30に向けて通過させる。
【0031】
なお、本実施形態の第1弁60aは、消火剤貯蔵容器10等内のガスの圧力が加圧ガス圧力よりも低いとき(図2A(a)における「低圧ガス」)は、弁体62は完全に流路を閉塞することなく、弁体ストッパー64と第1弁60aの下流端との間に存在するため、第1流路20側から第2流路30に向けて消火剤貯蔵容器10等内のガスの一部を通過させることが可能となる。その結果、消火剤貯蔵容器10等内のガスと、第2流路30内のガスとの圧力差が無くなるか、又は小さくなるため、消火剤12の意図しない放出を、確度高く防止又は抑制することが可能となる。
【0032】
なお、本実施形態の第1弁60aの代わりに、図2Bに示すスプリング式の弁260aを採用し、第1弁60aと同様に、上述の(x1)及び(y1)の役割を果たすように該弁を配置することによって本実施形態と同様の効果が奏され得る。該弁260aを採用する消火設備は、本実施形態の変形例の一つである。
【0033】
具体的には、該弁260aは、消火剤貯蔵容器10等内のガスの圧力が加圧ガス圧力よりも低いとき(図2B(a)における「低圧ガス」)は、スプリング266を押し込む力が弱いため、弁体262は完全に流路を閉塞することがない。その結果、第1流路20側から第2流路30に向けて消火剤貯蔵容器10等内のガスの一部を通過させることが可能となる。一方、消火活動を行うために消火剤を使用する際には、加圧ガス容器70から供給される加圧ガス(図2B(b)がスプリング264の付勢力に抗して弁体262を押し込むことによって、弁体262が完全に流路を閉塞することになるため、「高圧(加圧)ガス」の矢印)は、第1流路20から第2流路30に向けて通過しない。従って、本実施形態の第1弁60aは、図2Aに示す弁体に限定されない。
【0034】
一方、消火活動を行うために消火剤を使用する際に、加圧ガス容器70から加圧ガスが供給されると、第1弁60aは、弁体62が該加圧ガスによる高い加圧ガス圧力によって押されることによって流路を閉塞するため、該加圧ガスは第1流路20から第2流路30に向けて通過しない。その結果、該加圧ガスがその圧力を実質的に維持した状態で、第1流路20の第1流路端部22から供給され、該加圧ガスが消火剤貯蔵容器10内の液状の消火剤12を押圧することによって、消火剤12が、第2流路30、ホース80、及びノズル82を経由して外部に放出されることになる。
【0035】
従って、上述の構成を有する本実施形態の消火設備100は、例えば、加圧ガスが供給されていないときに、外気温の上昇に伴って消火剤貯蔵容器10内及び/又は第1流路20内のガスの圧力が上昇した場合に、上述のガス開放機構によって、該ガスの一部を消火剤貯蔵容器10外及び/又は第1流路20外に開放することができる。その結果、該ガスが消火剤12を押圧することによる消火剤12の意図しない放出を、確度高く防止又は抑制することが可能となる。
【0036】
<第2の実施形態>
図3は、本実施形態の消火設備120の概要を示す説明図である。なお、本実施形態の消火設備120は、ガス開放機構として、第1バイパス流路40a,40b及び第1弁60aの代わりに、第2バイパス流路50a,50b及び第1弁60bを備えている点を除いて、消火設備100と同様である。従って、第1の実施形態と重複する説明は省略され得る。
【0037】
(消火設備120及び第2弁60bの構成と作用)
図3に示すように、本実施形態の消火設備120は、消火剤貯蔵容器10と第2流路30とを、第1流路20を介さずに連通することができる第2バイパス流路50a,50b(代表的には、公知の金属製又は樹脂製の配管)と、第2バイパス流路50a,50bの一部に設けられた第2弁60bとを備えている。なお、第2バイパス流路50aは、消火剤貯蔵容器10の領域14に連通する開口部50cを備える。
【0038】
また、本実施形態においては、図3に示すように、第2流路30と第2バイパス流路50bとは、図示しない公知の金属製又は樹脂製の継ぎ手を介して1つの接続部(図1のC)において連通している。
【0039】
加えて、第2弁60bも、第1弁60aと同様に、第1の実施形態において説明した2つの機能(x1)及び(y1)を備えている。
【0040】
その結果、本実施形態の第2弁60bは、消火剤貯蔵容器10内のガスの圧力が加圧ガス圧力よりも低いときは、消火剤貯蔵容器10から第2流路30に向けて該ガスの一部を通過させることが可能となる。その結果、消火剤貯蔵容器10等内のガスと、第2流路30内のガスとの圧力差が無くなるか、又は小さくなるため、消火剤12の意図しない放出を、確度高く防止又は抑制することが可能となる。
【0041】
一方、消火活動を行うために消火剤を使用する際に、加圧ガス容器70から加圧ガスが供給されると、第2弁60bは、弁体62が該加圧ガスによる高い加圧ガス圧力によって押されることによって流路を閉塞するため、該加圧ガスは消火剤貯蔵容器10から第2流路30に向けて通過しない。その結果、該加圧ガスが、その圧力を実質的に維持した状態で、第1流路20を経由して消火剤貯蔵容器10内の液状の消火剤12を押圧することによって、消火剤12が、第2流路30、ホース80、及びノズル82を経由して外部に放出されることになる。
【0042】
従って、上述の構成を有する本実施形態の消火設備120は、例えば、加圧ガスが供給されていないときに、外気温の上昇に伴って消火剤貯蔵容器10内及び/又は第1流路20内のガスの圧力が上昇した場合に、上述のガス開放機構によって、該ガスの一部を消火剤貯蔵容器10外及び/又は第1流路20外に開放することができる。その結果、該ガスが消火剤12を押圧することによる消火剤12の意図しない放出を、確度高く防止又は抑制することが可能となる。
【0043】
<第3の実施形態>
図4は、本実施形態の消火設備140の概要を示す説明図である。なお、本実施形態の消火設備140は、ガス開放機構として、第1の実施形態の第1バイパス流路40a,40b及び第1弁60aと、第2の実施形態の第2バイパス流路50a,50b及び第1弁60bの両方を備えている点を除いて、消火設備100又は消火設備120と同様である。従って、第1の実施形態又は第2の実施形態と重複する説明は省略され得る。
【0044】
(消火設備140の構成と作用)
図4に示すように、本実施形態の消火設備140は、第1の実施形態の第1バイパス流路40a,40b及び第1弁60aと、第2の実施形態の第2バイパス流路50a,50b及び第1弁60bの両方を備えている。従って、第1の実施形態のガス開放機構と、第2の実施形態のガス開放機構の両方の技術的効果が奏され得ることになる。
【0045】
従って、上述の構成を有する本実施形態の消火設備140は、例えば、加圧ガスが供給されていないときに、外気温の上昇に伴って消火剤貯蔵容器10内及び/又は第1流路20内のガスの圧力が上昇した場合に、上述のガス開放機構によって、該ガスの一部を消火剤貯蔵容器10外及び/又は第1流路20外に開放することができる。その結果、該ガスが消火剤12を押圧することによる消火剤12の意図しない放出を、確度高く防止又は抑制することが可能となる。なお、本実施形態の消火設備140においては、仮に、第1の実施形態のガス開放機構と、第2の実施形態のガス開放機構のいずれかが不具合等によってその技術的効果を発揮しない場合であっても、他方のガス開放機構の作用によって、第1の実施形態又は第2の実施形態の技術的効果が奏され得る。そのため、上述の構成を有する本実施形態の消火設備140は、消火剤12の意図しない放出を確度高く防止又は抑制するという機能の安定性を格段に高め得る。
【0046】
<その他の実施形態1>
ところで、上述の実施形態及び変形例においては、液状の消火剤が採用されているが、上述の実施形態及び変形例の消火剤は液状の消火剤に限定されない。例えば、図5に示す消火設備160は、第1の実施形態の消火設備100のうち、採用された消火剤が粉状の消火剤12aである点を除いて消火設備100と同様である。図5に示す実施態様のように、液状の消火剤が採用された上述の各実施形態において、液状の消火剤の代わりに粉状の消火剤が採用された場合であっても、上述の実施形態の変形例の一つであるとともに、上述の実施形態及び変形例の効果の少なくとも一部が奏され得る。
【0047】
<その他の実施形態2>
また、上述の実施形態及び変形例における消火設備100,120,140,160の管理方法として、以下の管理工程を採用することは好適な一態様である。
(M1)上述の実施形態及び変形例における消火設備100,120,140,160について、加圧ガスが供給されていないときの、消火剤貯蔵容器10内及び/又は第1流路20内のガスの一部が、消火設備100,120,140,160のガス解放機構によって消火剤貯蔵容器10外及び/又は第1流路20外に開放されていることを定期的に又は不定期に検査する工程。
(M2)前述の(M1)工程の結果、加圧ガスが供給されていないときに、該ガス解放機構によって、消火剤貯蔵容器10内及び/又は第1流路20内のガスの一部が、消火剤貯蔵容器10外及び/又は第1流路20外に開放されていなければ、例えば、第1の実施形態において説明した第1弁60aの機能(x1)及び(y1)を有する新たなガス解放機構に交換する工程。
【0048】
上述のとおり、1つの消火設備の管理方法においては、上述の実施形態及び変形例における消火設備100,120,140,160のガス解放機構について、加圧ガスが供給されていないときの、消火剤貯蔵容器10内及び/又は第1流路20内のガスの一部が、消火剤貯蔵容器10外及び/又は第1流路20外に開放されていることを定期的に又は不定期に検査することにより、必要に応じて前記ガス解放機構を交換する工程が採用され得る。該管理方法を採用することにより、該ガス解放機構の交換作業という簡便な工程によって消火設備の信頼性を高めるとともに、長寿命化を実現し得ることは特筆に値する。
【0049】
以上述べたとおり、上述の各実施形態の開示は、それらの実施形態の説明のために記載したものであって、本発明を限定するために記載したものではない。加えて、各実施形態の他の組合せを含む本発明の範囲内に存在する変形例もまた、特許請求の範囲に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、消火設備として広く利用され得る。
【符号の説明】
【0051】
10 消火剤貯蔵容器
12 消火剤
14 領域(ガスが存在する空間)
20 第1流路
22 第1流路端部
30 第2流路
40a,40b 第1バイパス流路
50a,50b 第2バイパス流路
50c 第2バイパス流路端部
60a 第1弁
60b 第2弁
62 弁体
64 弁体ストッパー
70 加圧ガス容器
80 ホース
82 ノズル
84 継ぎ手
92 第3流路
100,120,140,160 消火設備
260a スプリング式の弁
262 弁体
266 スプリング
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5