(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-15
(45)【発行日】2022-06-23
(54)【発明の名称】余剰水の処理方法
(51)【国際特許分類】
G21F 9/06 20060101AFI20220616BHJP
C02F 1/70 20060101ALI20220616BHJP
【FI】
G21F9/06 551
G21F9/06 G
G21F9/06 501A
C02F1/70 Z
(21)【出願番号】P 2018184814
(22)【出願日】2018-09-28
【審査請求日】2021-02-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100210572
【氏名又は名称】長谷川 太一
(72)【発明者】
【氏名】中野 貴司
(72)【発明者】
【氏名】中土 雄太
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 さつき
(72)【発明者】
【氏名】吉永 智美
(72)【発明者】
【氏名】鬼塚 博徳
(72)【発明者】
【氏名】永田 亮
【審査官】後藤 大思
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-091297(JP,A)
【文献】特開2003-063826(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0136344(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 9/00-9/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子力プラントの系統の化学除染時に、前記系統中の機器に純水を供給することにより生じる過マンガン酸イオンを含む余剰水の処理方法であって、
余剰水に亜硫酸水素ナトリウムを添加して前記余剰水中の過マンガン酸イオンを分解する過マンガン酸イオン分解工程と、
前記過マンガン酸イオン分解工程後に、前記余剰水が貯留されたタンクからサンプリングした一部の余剰水を用いて、
炭酸が抜け出た状態の前記余剰水を目標とするpHである目標pHとするために必要なアルカリ金属の水酸化物の添加量である目標添加量を決定する添加量決定工程と、
前記添加量決定工程で決定した前記目標添加量に基づいて、前記水酸化物を前記タンクに添加する水酸化物添加工程と、を含
み、
前記添加量決定工程は、
前記余剰水中に炭酸がほとんど含有されていない状態となるように、前記余剰水中の炭酸を低減する炭酸低減工程と、
前記炭酸低減工程後の前記余剰水を前記目標pHとするために必要なアルカリ金属の水酸化物の添加量を前記目標添加量として決定する低減後決定工程とを含む余剰水の処理方法。
【請求項2】
前記炭酸低減工程では、前記余剰水が煮沸される請求項
1に記載の余剰水の処理方法。
【請求項3】
原子力プラントの系統の化学除染時に、前記系統中の機器に純水を供給することにより生じる過マンガン酸イオンを含む余剰水の処理方法であって、
余剰水に亜硫酸水素ナトリウムを添加して前記余剰水中の過マンガン酸イオンを分解する過マンガン酸イオン分解工程と、
前記過マンガン酸イオン分解工程後に、前記余剰水が貯留されたタンクからサンプリングした一部の余剰水を用いて、
炭酸が抜け出た状態の前記余剰水を目標とするpHである目標pHとするために必要なアルカリ金属の水酸化物の添加量である目標添加量を決定する添加量決定工程と、
前記添加量決定工程で決定した前記目標添加量に基づいて、前記水酸化物を前記タンクに添加する水酸化物添加工程と、を含
み、
前記添加量決定工程は、
前記余剰水中の炭酸量を取得する炭酸量取得工程と、
前記炭酸量取得工程での炭酸量に基づいて、前記目標添加量を決定する取得後決定工程と、を含む余剰水の処理方法。
【請求項4】
前記水酸化物添加工程では、前記取得後決定工程で決定した前記目標添加量から前記炭酸量取得工程で取得した炭酸量を減じた量の前記アルカリ金属の水酸化物を実際に前記タンクに添加する請求項
3に記載の余剰水の処理方法。
【請求項5】
前記過マンガン酸イオン分解工程は、
前記余剰水中の前記過マンガン酸イオンの濃度を取得する濃度取得工程と、
前記濃度取得工程で取得された前記過マンガン酸イオンの濃度に基づいて、前記過マンガン酸イオンを分解するために必要な前記亜硫酸水素ナトリウムの量である基準亜硫酸水素ナトリウム量を決定する基準亜硫酸水素ナトリウム量決定工程と、
前記基準亜硫酸水素ナトリウム量決定工程で決定された前記基準亜硫酸水素ナトリウム量の1.2倍~1.5倍の量の前記亜硫酸水素ナトリウムを前記余剰水に添加する亜硫酸水素ナトリウム添加工程とを含む請求項1から請求項
4の何れか一項に記載の余剰水の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、余剰水の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力プラントでは、運用中のメンテナンス作業や、廃炉時の解体作業に際して、機器や配管等に付着した放射性核種を除去する除染作業が行われる。特に、原子力プラントの系統を構成する配管部材(主としてステンレス鋼及びインコネルを含む)は、運用中に高温高圧の環境下に曝されることから、表面に酸化被膜が形成され、被膜中に放射性核種が取り込まれる。この酸化被膜を除去し、部材を除染する方法として、化学除染と呼ばれる方法が知られている。
【0003】
化学除染方法では、まず、部材を過マンガン酸等の酸化剤が添加された水溶液中に接触させて、部材の表面に付着した酸化被膜に含まれるクロム系酸化物中のクロムを酸化溶出させる。次に、シュウ酸等の有機酸を水溶液に添加して、酸化被膜の主要成分である鉄系酸化物中の鉄やニッケルを溶出させる。このとき、コバルト等の放射性核種も同時に溶出される。そして、化学除染方法では、放射性核種が溶出された水溶液をイオン交換樹脂に接触させて、酸化皮膜とともに放射性物質を除去している。
【0004】
このような化学除染方法として、例えば、特許文献1には、過マンガン酸を沈殿させる還元剤を処理水に添加することで、過マンガン酸を沈殿物として除去する除染廃液処理方法が記載されている。この除染廃液処理方法では、処理水中のマンガンを減少させることで、イオン交換樹脂の使用量を低減させている。
【0005】
また、化学除染方法によって原子力プラント内を除染する系統除染では、化学溶液である処理水が、一次冷却水のように原子力プラント内を循環される。処理水を循環させるために、一次冷却水を圧送するために設けられた一次冷却材ポンプが使用される。この際、処理水中に含まれる様々な微粒子が一次冷却材ポンプのシール部分に流入すると、一次冷却材ポンプの破損の原因となる。そのため、純水を一次冷却材ポンプに供給することで、一次冷却材ポンプを保護しながら、系統除染は行われる。純水を供給することで、系統内を流れる処理水の流量が増加してしまい、不要な余剰水が発生する。
【0006】
このような余剰水は、処理水と同様に、過マンガン酸イオンが含まれているために別途処理する必要がある。具体的な処理方法として、余剰水は、原子力プラント内から回収されてタンク内に溜められる。その後、亜硫酸水素ナトリウムが添加されることで、余剰水中の過マンガン酸イオンが分解除去されている。過マンガン酸イオンが除去された余剰水は、最終的にエバポレータによって濃縮された後に廃棄される。
【0007】
濃縮時には、エバポレータ等を損傷させないように余剰水は弱アルカリ性となっていることが好ましい。そのため、余剰水を弱アルカリ性とするために、水酸化ナトリウム等のpHを調整する薬品が添加される。その際、タンク内から余剰水の一部がサンプリングされ、ラボ等で添加する薬品の量が確認される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、亜硫酸水素ナトリウムが添加された後の余剰水中には多量の炭酸が含まれている。この炭酸は、添加する薬品の量を確認する作業を行っている間に、サンプリングした余剰水から抜け出てしまう。そのため、サンプリングした余剰水と、タンク内に溜められた状態の余剰水とで、含有されている炭酸量に差が生じる。含有されている炭酸量に差があることで、サンプリングした余剰水に基づいて決定した量の薬品を添加しても、タンク内の余剰水は、目標とするpHにならない場合がある。この場合、タンク内の余剰水のpHを再度調整する必要があり、追加作業が発生してしまう。また、追加作業によって、多量の炭酸が含有されたタンク内の余剰水を目標とするpHとした場合でも、濃縮時に余剰水中の炭酸が大量に気化することで、余剰水のpHが目標としている値よりも高くなってしまう。その結果、余剰水が弱アルカリ性ではなくなり、後段の処理に影響を与える。そのため、濃縮時の余剰水のpHを安定させることが求められている。
【0010】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、濃縮時の余剰水のpHを安定させた状態で処理可能な余剰水の処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
本発明の第一態様に係る余剰水の処理方法は、原子力プラントの系統の化学除染時に、前記系統中の機器に純水を供給することにより生じる過マンガン酸イオンを含む余剰水の処理方法であって、余剰水に亜硫酸水素ナトリウムを添加して前記余剰水中の過マンガン酸イオンを分解する過マンガン酸イオン分解工程と、前記過マンガン酸イオン分解工程後に、前記余剰水が貯留されたタンクからサンプリングした一部の余剰水を用いて、炭酸が抜け出た状態の前記余剰水を目標とするpHである目標pHとするために必要なアルカリ金属の水酸化物の添加量である目標添加量を決定する添加量決定工程と、前記添加量決定工程で決定した前記目標添加量に基づいて、前記水酸化物を前記タンクに添加する水酸化物添加工程と、を含み、前記添加量決定工程は、前記余剰水中に炭酸がほとんど含有されていない状態となるように、前記余剰水中の炭酸を低減する炭酸低減工程と、前記炭酸低減工程後の前記余剰水を前記目標pHとするために必要なアルカリ金属の水酸化物の添加量を前記目標添加量として決定する低減後決定工程とを含む。
【0012】
このような構成によれば、添加量決定工程によって、余剰水中の炭酸の影響を排除して、余剰水を目標pHとするためアルカリ金属の水酸化物の量が決定される。したがって、水酸化物添加工程では、濃縮時に余剰水から炭酸が抜け出た状態を想定した量のアルカリ金属の水酸化物が、余剰水に添加される。これにより、濃縮時の余剰水のpHが予想以上に高くなってしまうことを防ぐことができる。
【0014】
このような構成とすることで、炭酸低減工程によって、サンプリングした余剰水中の炭酸が実際に低減される。そのため、炭酸が抜け出た後の余剰水の状態をサンプリングした余剰水で簡単に模擬することができる。
【0015】
また、本発明の第二態様に係る余剰水の処理方法では、第一態様において、前記炭酸低減工程では、前記余剰水が煮沸されてもよい。
【0016】
このような構成とすることで、煮沸によって、サンプリングされた余剰水中の炭酸を簡単に低減できる。そのため、余剰水から炭酸を抜くための複雑な装置を用いることなく、炭酸が抜け出た後の余剰水の状態をサンプリングされた余剰水で簡単に模擬することができる。
【0017】
また、本発明の第三態様に係る余剰水の処理方法は、原子力プラントの系統の化学除染時に、前記系統中の機器に純水を供給することにより生じる過マンガン酸イオンを含む余剰水の処理方法であって、余剰水に亜硫酸水素ナトリウムを添加して前記余剰水中の過マンガン酸イオンを分解する過マンガン酸イオン分解工程と、前記過マンガン酸イオン分解工程後に、前記余剰水が貯留されたタンクからサンプリングした一部の余剰水を用いて、炭酸が抜け出た状態の前記余剰水を目標とするpHである目標pHとするために必要なアルカリ金属の水酸化物の添加量である目標添加量を決定する添加量決定工程と、前記添加量決定工程で決定した前記目標添加量に基づいて、前記水酸化物を前記タンクに添加する水酸化物添加工程と、を含み、前記添加量決定工程は、前記余剰水中の炭酸量を取得する炭酸量取得工程と、前記炭酸量取得工程での炭酸量に基づいて、前記目標添加量を決定する取得後決定工程と、を含む。
【0018】
このような構成とすることで、炭酸量取得工程によって、サンプリングした余剰水中の炭酸量が取得される。そのため、サンプリングした余剰水から炭酸が抜くための装置を設けることなく、炭酸が抜け出た後の余剰水の状態を確認することができる。これにより、濃縮時の余剰水のpHを高い精度で安定させた状態として、処理することでできる。
【0019】
また、本発明の第四態様に係る余剰水の処理方法では、第三態様において、前記水酸化物添加工程では、前記取得後決定工程で決定した前記目標添加量から前記炭酸量取得工程で取得した炭酸量を減じた量の前記アルカリ金属の水酸化物を実際に前記タンクに添加してもよい。
【0020】
このような構成とすることで、濃縮時における余剰水から炭酸が抜け出た状態を想定した量のアルカリ金属の水酸化物が余剰水に添加される。これにより、濃縮時の余剰水のpHが予想以上に高くなってしまうことを防ぐことができる。
【0021】
また、本発明の第五態様に係る余剰水の処理方法では、第一から第四態様のいずれか一つにおいて、前記過マンガン酸イオン分解工程は、前記余剰水中の前記過マンガン酸イオンの濃度を取得する濃度取得工程と、前記濃度取得工程で取得された前記過マンガン酸イオンの濃度に基づいて、前記過マンガン酸イオンを分解するために必要な前記亜硫酸水素ナトリウムの量である基準亜硫酸水素ナトリウム量を決定する基準亜硫酸水素ナトリウム量決定工程と、前記基準亜硫酸水素ナトリウム量決定工程で決定された前記基準亜硫酸水素ナトリウム量の1.2倍~1.5倍の量の前記亜硫酸水素ナトリウムを前記余剰水に添加する亜硫酸水素ナトリウム添加工程とを含んでいてもよい。
【0022】
このような構成とすることで、余剰水に含まれる過マンガン酸イオンを高い精度で分解させることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、濃縮時の余剰水のpHを安定させた状態で処理できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】化学除染方法の対象となる除染対象物の例を示す図である。
【
図3】第一実施形態における余剰水の処理方法のフロー図である。
【
図4】第一実施形態における余剰水の処理システムである。
【
図5】第二実施形態における余剰水の処理方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
《第一実施形態》
以下、本発明に係る実施形態について
図1から
図4を参照して説明する。
まず、化学除染方法S1の対象となる除染対象物Zについて説明する。化学除染の対象となる除染対象物Zは、原子力プラントの系統を構成する配管、容器、各種機器等の部品であって、炉水が接触する部品である。
【0027】
ここで、原子力プラントとしては、例えば、
図1に示すように、加圧水型原子炉50を備える原子力発電プラントPがある。この原子力発電プラントPは、燃料棒51等が収納される加圧水型原子炉50と、加圧水型原子炉50内の一次冷却水(軽水)の沸騰を抑えるために一次冷却水を加圧する加圧器52と、一次冷却水の熱により二次冷却水を蒸気にする蒸気発生器53と、蒸気発生器53からの一次冷却水を加圧水型原子炉50に戻す一次冷却材ポンプ54と、蒸気発生器53で発生した蒸気で駆動する蒸気タービン56と、蒸気タービン56の駆動で発電する発電機57と、蒸気タービン56からの蒸気を水に戻す復水器58と、復水器58からの水を蒸気発生器53に戻す給水ポンプ59と、を備えている。
【0028】
この加圧水型原子炉50と蒸気発生器53とは一次冷却水配管55a及び55bで接続されている。蒸気発生器53と蒸気タービン56とは蒸気配管55cで接続されている。復水器58と蒸気タービン56とは給水配管55dで接続されている。
【0029】
このように構成された原子力発電プラントPにおいて、炉水、即ち一次冷却水に接する部材である一次冷却系部材が除染対象物Zである。除染対象物Zとしては、加圧水型原子炉50、加圧器52、蒸気発生器53、一次冷却材ポンプ54、これらを接続する一次冷却水配管55a及び55b、この一次冷却水配管55a及び55b等に設けられている各種弁等がある。これら除染対象物Zは、鉄を主成分としてクロムやニッケルを含むステンレス鋼やニッケル基合金であるインコネル等で形成されている。
【0030】
この除染対象物Zを構成する金属元素は、わずかに炉水に溶出して、一部が加圧水型原子炉50内の燃料棒51表面に付着する。燃料棒51の表面に付着した金属元素は、燃料から中性子線が照射させることにより、原子核反応を起こして、クロム、鉄、ニッケル、コバルト等の放射性核種となる。これら放射性核種は、大部分が酸化物の形態で燃料棒51表面に付着したままであるが、その一部が炉水中に溶出されたり、不溶性固体として放出されたりする。炉水中に溶出又は放出された放射性核種は、除染対象物Zの炉水接触面に付着する。このため、除染対象物Z近傍で作業する作業員は、部品に形成された酸化皮膜中の放射性核種からの放射線に晒されることになる。
【0031】
化学除染方法S1は、上記で説明した原子力発電プラントPを廃止する際等に行われる系統除染に関するものである。化学除染方法S1では、除染対象物Zである配管等の内部で化学溶液である処理水を循環させる。これにより、除染対象物Zの内表面に付着している放射性核種を含んだ酸化被膜を除去して廃棄している。化学除染方法S1は、
図2に示すように、酸化工程S2と、除染工程S3と、分解工程S4と、浄化工程S5とを含んでいる。
【0032】
酸化工程S2は、除染対象物Z内部に酸化剤を添加した処理水を供給し循環させる。具体的には、酸化剤として過マンガン酸を添加する。酸化工程S2では、除染対象物Z内部に過マンガン酸を添加した処理水を循環させることで、ステンレス鋼やニッケル基合金を含む除染対象物Zに付着した酸化被膜中のクロムがCr6
+として酸化溶出する。その結果、酸化工程S2では、この放射性核種であるクロムを含有する処理水である一次処理水が生成される。
【0033】
除染工程S3は、酸化工程S2後に実施される。除染工程S3では、一次処理水に有機酸としてシュウ酸が添加される。また、本実施形態の除染工程S3では、イオン交換樹脂等の吸着材へシュウ酸が添加された一次処理水である二次処理水を通水させることで、溶出した金属が除去される。具体的には、二次処理水は循環され、除染対象物Zの内部に何度も供給される。二次処理水が除染対象物Zの内部に供給されることで、除染対象物Zから鉄、ニッケル、及びコバルトが二次処理水中に溶出される。さらに、除染対象物Zから二次処理水中に溶出されたらクロム、鉄、ニッケル、及びコバルトが吸着材によって除去される。
【0034】
分解工程S4は、除染工程S3後に実施される。分解工程S4では、二次処理水中のシュウ酸が分解される。分解工程S4では、例えば、二次処理水に紫外線を照射することで、二次処理水中のシュウ酸が水と二酸化炭素に分解される。なお、分解工程S4では、シュウ酸が他の方法で分解されてもよい。これにより、二次処理水からシュウ酸が分解除去された三次処理水が生成される。
【0035】
浄化工程S5は、分解工程S4後に実施される。本実施形態の浄化工程S5では、除染工程S3で除去しきれなかったクロム、鉄、ニッケル、及びコバルトが除去される。具体的には、浄化工程S5では、例えば、イオン交換樹脂等の吸着材を用いて、処理水中に含まれるクロム、鉄、ニッケル、及びコバルト等の放射性核種や、これら放射性核種で汚染された残留成分(シュウ酸等のイオン)を除去することで除染が行われる。その後、除染対象物Zの線量を測定し、十分に線量が低下している場合には、化学除染方法S1が終了される。また、除染対象物Zの線量が未だ高い場合には、必要に応じて酸化工程S2から浄化工程S5が繰り返し実施される。除染された処理水は、次サイクル以降で再び利用することができる。
【0036】
ここで、原子力プラントの系統の化学除染時に、系統中の機器に純水を供給することにより生じる余剰水の処理方法について説明する。上述した化学除染方法S1では、一次冷却材ポンプ54を保護するために、一次冷却材ポンプ54に純水が供給されながら、酸化工程S2及び除染工程S3が実施される。酸化工程S2及び除染工程S3では、純水が供給されることで、除染対象物Z内を循環する処理水の量が増加する。そのため、処理水の一部(供給された純水の量と同量の処理水)が、余剰水として、除染対象物Z内部から回収されてタンク(不図示)に溜められる。本実施形態の余剰水の処理方法S100では、タンクに溜められた余剰水であって、過マンガン酸イオンが含有された余剰水に対して各種処理が行われる。具体的には、余剰水の処理方法S100は、
図3に示すように、余剰水取得工程S200と、過マンガン酸イオン分解工程S300と、添加量決定工程S400と、水酸化物添加工程S500と、濃縮工程S600と、廃棄工程S700とを含んでいる。
【0037】
また、余剰水の処理方法S100は、
図4に示すような余剰水の処理システム100によって実施される。余剰水の処理システム100は、ホールドアップタンク(タンク)110と、サンプリング部120と、制御部130と、薬剤供給部140と、ウェストホールドアップタンク150と、廃液エバポレータ160とを備えている。
【0038】
余剰水取得工程S200では、過マンガン酸が添加された後の余剰水が複数のホールドアップタンク110に取水される。つまり、余剰水取得工程S200では、過マンガン酸イオンが含まれている余剰水がホールドアップタンク110に回収される。本実施形態では、酸化工程S2で生じた余剰水が取水される。酸化工程S2で生じる余剰水のpHは、6.0~7.0程度となっている。
【0039】
過マンガン酸イオン分解工程S300は、添加量決定工程S400の前に実施される。過マンガン酸イオン分解工程S300では、ホールドアップタンク110内の余剰水に亜硫酸水素ナトリウムが添加されることで、余剰水中の過マンガン酸イオンが分解される。本実施形態の過マンガン酸イオン分解工程S300は、濃度取得工程S301と、基準亜硫酸水素ナトリウム量決定工程S302と、亜硫酸水素ナトリウム添加工程S303とを含んでいる。本実施形態では、ホールドアップタンク110、制御部130、及び薬剤供給部140が過マンガン酸イオン分解部である。
【0040】
濃度取得工程S301では、ホールドアップタンク110内から余剰水の一部がサンプリング部120にサンプリングされる。サンプリング部120は、途中に弁が設けられたサンプリングライン121を介してホールドアップタンク110に接続されている。したがって、濃度取得工程S301では、過マンガン酸イオンが含まれた余剰水の一部がホールドアップタンク110からサンプリングされる。サンプリング部120では、サンプリングされた一部の余剰水である第一サンプリング水に対して、過マンガン酸イオンのモル濃度が測定される。測定された過マンガン酸イオンのモル濃度の情報は制御部130に送られる。
【0041】
基準亜硫酸水素ナトリウム量決定工程S302では、濃度取得工程S301で取得された過マンガン酸イオンのモル濃度に基づいて、ホールドアップタンク110に溜められている余剰水中の過マンガン酸イオンの全てを分解するために必要な亜硫酸水素ナトリウムの量を算出して、基準亜硫酸水素ナトリウム量として決定する。基準亜硫酸水素ナトリウム量は、サンプリング部120で測定された過マンガン酸イオンのモル濃度の情報に基づいて、制御部130で算出される。
【0042】
具体的には、基準亜硫酸水素ナトリウム量は、以下の式1から算出される。
2MnO4
-+5NaHSO3 → 2MnSO4+2Na2SO4+NaHSO4+3H2O・・・(式1)
即ち、基準亜硫酸水素ナトリウム量は、取得された過マンガン酸イオンのモル濃度から算出されるホールドアップタンク110に溜められている余剰水中の過マンガン酸イオンの総量[mmol/L]に対して、2.5倍の量とされる。
【0043】
亜硫酸水素ナトリウム添加工程S303では、実際に余剰水に添加される亜硫酸水素ナトリウムの量が決定され、ホールドアップタンク110内に添加される。亜硫酸水素ナトリウム添加工程S303では、算出された基準亜硫酸水素ナトリウム量の情報に基づいて、制御部130で亜硫酸水素ナトリウムの量が算出される。算出された亜硫酸水素ナトリウムの量の情報が制御部130から薬剤供給部140に送られる。
【0044】
薬剤供給部140は、途中に弁が設けられた薬注ライン141を介してホールドアップタンク110に接続されている。薬剤供給部140では、余剰水に供給する各種薬剤が準備され、必要な量をホールドアップタンク110に供給している。亜硫酸水素ナトリウム添加工程S303では、薬剤供給部140には、亜硫酸水素ナトリウムが準備されている。薬剤供給部140は、制御部130からの情報に基づいて定められた量の亜硫酸水素ナトリウムを薬注ライン141を介してホールドアップタンク110に供給する。薬剤供給部140は、ホールドアップタンク110に亜硫酸水素ナトリウムを供給した後に、フラッシングされる。
【0045】
亜硫酸水素ナトリウム添加工程S303で、実際にホールドアップタンク110内に添加する亜硫酸水素ナトリウムの量は、基準亜硫酸水素ナトリウム量の1.2倍~1.5倍の量である。なお、除染に使用する薬品(シュウ酸)の分解生成物である二酸化炭素が溶液に溶け込んでおり、余剰水は二酸化炭素濃度の非常に高い溶液となる。
【0046】
添加量決定工程S400では、亜硫酸水素ナトリウムが添加された余剰水の一部が、貯留されたホールドアップタンク110からサンプリングされる。したがって、添加量決定工程S400では、炭酸が含まれた余剰水の一部がサンプリング部120にサンプリングされる。サンプリングされた一部の余剰水を用いて、余剰水に炭酸が含まれていないと仮定した場合に、余剰水を目標pHとするために必要な水酸化ナトリウムの添加量である目標添加量が決定される。したがって、本実施形態の添加量決定工程S400では、ホールドアップタンク110、制御部130、及び薬剤供給部140が添加量決定部である。
【0047】
具体的には、目標pHは、余剰水が弱アルカリ性を示すような値であり、例えばpH8.0~10.5程度の値である。本実施形態の添加量決定工程S400は、炭酸低減工程S401と、低減後決定工程S402とを含んでいる。
【0048】
炭酸低減工程S401では、炭酸が含まれた余剰水の一部がホールドアップタンク110からサンプリング部120にサンプリングされる。サンプリングされた一部の余剰水である第二サンプリング水は、所定時間(例えば、一時間)にわたって煮沸される。これにより、第二サンプリング水中の炭酸がほとんど気化して抜け出る。つまり、第二サンプリング水は、炭酸量が低減されて、炭酸がほとんど含有されていない状態となる。
【0049】
低減後決定工程S402では、炭酸がほとんど含有されていない状態となった第二サンプリング水に水酸化ナトリウムを加えながら第二サンプリング水のpHが測定される。第二サンプリング水のpHが目標pHとなった場合に、それまで第二サンプリング水に加えていた水酸化ナトリウムの添加量の情報が取得される。取得された水酸化ナトリウムの添加量の情報は制御部130に送られる。制御部130では、取得した水酸化ナトリウムの添加量の情報と、ホールドアップタンク110内の余剰水の量とに基づいて、ホールドアップタンク110内の余剰水の全てを目標pHとするために必要な水酸化ナトリウムの添加量が算出される。算出した水酸化ナトリウムの添加量が、目標添加量として決定される。即ち、本実施形態の添加量決定部は、制御部130である。
【0050】
水酸化物添加工程S500では、低減後決定工程S402で定められた目標添加量の水酸化ナトリウムがホールドアップタンク110に添加される。水酸化物添加工程S500では、算出された目標添加量の情報が制御部130から薬剤供給部140に送られる。水酸化物添加工程S500では、薬剤供給部140には、水酸化ナトリウムが準備されている。薬剤供給部140は、制御部130からの情報に基づいて定められた量の水酸化ナトリウムを薬注ライン141を介してホールドアップタンク110に供給する。即ち、本実施形態の水酸化物添加部は、薬剤供給部140である。薬剤供給部140は、ホールドアップタンク110に水酸化ナトリウムを供給した後に、フラッシングされる。したがって、本実施形態の水酸化物添加工程S500では、ホールドアップタンク110、制御部130、及び薬剤供給部140が水酸化物添加部である。
【0051】
水酸化物添加工程S500では、ホールドアップタンク110に水酸化ナトリウムを添加した後に、再びホールドアップタンク110内から余剰水の一部をサンプリング部120にサンプリングする。サンプリングした余剰水を再び所定時間煮沸し、pHを測定する。サンプリングした余剰水の煮沸後のpHが8.0~10.5の範囲に収まっており、弱アルカリ性となっていれば濃縮工程S600を実施する。仮に、サンプリングした余剰水の煮沸後のpHが8.0~10.5の範囲に収まっていなければ、添加量決定工程S400及び水酸化物添加工程S500を再び実施する。
【0052】
濃縮工程S600は、水酸化物添加工程S500後に実施される。濃縮工程S600では、水酸化ナトリウムが添加されたホールドアップタンク110内の余剰水が、ウェストホールドアップタンク150を介して廃液エバポレータ160に送られる。ウェストホールドアップタンク150は、途中にポンプの設けられた移送ライン151を介してホールドアップタンク110に接続されている。廃液エバポレータ160は、途中にポンプの設けられた廃液ライン161を介してウェストホールドアップタンク150に接続されている。したがって、本実施形態の濃縮工程S600では、廃液エバポレータ160が水酸化物添加部である。
【0053】
濃縮工程S600では、廃液エバポレータ160に送られた余剰水は、蒸発させられて、数十倍に濃縮される。この際、余剰水に含まれている炭酸は、気化し余剰水中から抜け出る。これにより、余剰水は、残留物が濃縮された濃縮水と、残留物がほとんど含まれていない蒸留水とに分離される。
【0054】
廃棄工程S700では、濃縮工程S600で生じた濃縮水がアスファルト固化され、廃棄される。
【0055】
上記のような余剰水の処理方法S100によれば、添加量決定工程S400において、余剰水に炭酸が含まれていないと仮定した場合の水酸化ナトリウムの目標添加量が決定される。つまり、余剰水中の炭酸の影響を排除して、余剰水を弱アルカリ性とするための水酸化ナトリウムの量が決定される。したがって、水酸化物添加工程S500では、濃縮工程S600で余剰水から炭酸が抜け出た状態を想定した量の水酸化ナトリウムが、余剰水に添加される。これにより、濃縮工程S600での余剰水のpHが予想以上に高くなってしまうことを防ぐことができる。したがって、余剰水に含まれている炭酸の含有量にかかわらず、濃縮時の余剰水のpHを安定させた状態で処理することでできる。
【0056】
特に、本実施形態では、炭酸低減工程S401によって、第二サンプリング水中の炭酸が実際に低減される。そのため、炭酸が抜け出た後の余剰水の状態を第二サンプリング水で簡単に模擬することができる。したがって、濃縮工程S600で炭酸が抜け出た状態の余剰水を弱アルカリ性にするために必要な水酸化ナトリウムの添加量を高い精度で求めることができる。これにより、濃縮時の余剰水のpHをより安定させた状態で処理することでできる。
【0057】
さらに、煮沸することで、第二サンプリング水中の炭酸を簡単に低減できる。そのため、第二サンプリング水から炭酸を抜くための複雑な装置を用いることなく、炭酸が抜け出た後の余剰水の状態を模擬した第二サンプリング水を簡単に取得することができる。
【0058】
また、余剰水に亜硫酸水素ナトリウムを添加した場合、余剰水中の溶存酸素によって亜硫酸水素ナトリウムの一部が分解されてしまう。そのため、ホールドアップタンク110に溜められている余剰水中の過マンガン酸イオンの全てを分解するために必要な量と等量の亜硫酸水素ナトリウムを添加しても、一部の過マンガン酸イオンが分解されない可能性がある。ところが、基準亜硫酸水素ナトリウム量の1.2倍~1.5倍の量の亜硫酸水素ナトリウムが添加されることで、ホールドアップタンク110内に余剰水に含まれる過マンガン酸イオンのほぼ全てを高い精度で分解させることができる。
【0059】
なお、第一実施形態における炭酸低減工程S401では、第二サンプリング水中の炭酸量を低減させる方法として、余剰水を煮沸する方法が用いられたが、このような方法に限定されるものではない。炭酸低減工程S401では、第二サンプリング水中の炭酸量が低減できればよく、例えば、第二サンプリング水にバブリングを施したり、第二サンプリング水を減圧させたり、第二サンプリング水を一度酸性化させたりしてもよい。
【0060】
《第二実施形態》
次に、本発明の余剰水の処理方法の第二実施形態について、
図5を参照して説明する。第二実施形態で示す余剰水の処理方法は、添加量決定工程が第一実施形態と異なっている。したがって、第二実施形態の説明においては、第一実施形態と同一部分に同一符号を付して説明するとともに重複説明を省略する。なお、第二実施形態の余剰水の処理方法S110も第一実施形態の余剰水の処理システム100で実施することができる。
【0061】
図5に示すように、第二実施形態の余剰水の処理方法S110では、添加量決定工程S450は、炭酸量取得工程S451と、取得後決定工程S452とを含んでいる。
【0062】
炭酸量取得工程S451では、亜硫酸水素ナトリウムが添加された余剰水が、ホールドアップタンク110からサンプリングされる。したがって、炭酸量取得工程S451では、炭酸が含まれた余剰水の一部が、ホールドアップタンク110からサンプリング部120サンプリングされる。サンプリングされた一部の余剰水である第二サンプリング水に含まれる炭酸量が測定されて取得される。取得された炭酸量の情報は、制御部130に送られる。
【0063】
炭酸量の測定方法としては、溶液中の有機物を有機体炭素の総量(炭素量)として測定する全有機体炭素計(TOC計)や、化学反応を用いて化学物質の量を測定する定量分析方法である滴定や、液体クロマトグラフィーを用いて溶液中のイオン性成分の分析を行うイオンクロマトグラフィ等が用いられる。
【0064】
取得後決定工程S452では、取得された第二サンプリング水中の炭酸量に基づいて、目標pHとするために必要な水酸化ナトリウムの添加量が算出される。具体的には、炭酸量取得工程S451で取得された第二サンプリング水中の炭酸量と、ホールドアップタンク110内の余剰水の量とに基づいて、ホールドアップタンク110内の余剰水の全てを目標pHとするために必要な水酸化ナトリウムの添加量が制御部130で算出される。算出した水酸化ナトリウムの添加量が、目標添加量として決定される。
【0065】
水酸化物添加工程S500では、取得後決定工程S452で定められた目標添加量から炭酸量取得工程S451で取得した炭酸量を減じた量の水酸化ナトリウムが実際に、ホールドアップタンク110に添加される。ホールドアップタンク110に水酸化ナトリウムを添加した後に、再び、ホールドアップタンク110内から余剰水の一部をサンプリングする。サンプリングした余剰水のpHが8.0~10.5の範囲に収まって弱アルカリ性となっていれば濃縮工程S600を実施する。
【0066】
第二実施形態の余剰水の処理方法S110によれば、炭酸量取得工程S451によって、第二サンプリング水中の炭酸量が取得される。そのため、第二サンプリング水から炭酸を抜くための装置を設けることなく、炭酸が抜け出た後の余剰水の状態を把握することができる。したがって、水酸化物添加工程S500では、濃縮工程S600で余剰水から炭酸が抜け出た状態を想定した量の水酸化ナトリウムを余剰水に添加することができる。これにより、濃縮時の余剰水のpHを安定させた状態として、処理することでできる。
【0067】
また、水酸化物添加工程S500では、目標添加量から、炭酸量取得工程S451で取得した炭酸量を減じた量の水酸化ナトリウムが添加されている。炭酸が含まれた余剰水では、添加された水酸化ナトリウムは、全てが余剰水のpH調整に使用されるわけでなく、以下の式2のように一部が炭酸と反応して消費されてしまう。
H2O+CO2+NaOH → NaHCO3・・・(式2)
【0068】
この際、炭酸の量[mol]と、炭酸に消費される水酸化ナトリウムの量[mol]は等量である。したがって、炭酸が除かれた余剰水を目標pHとするために必要な水酸化ナトリウムの量は、炭酸を含む余剰水を目標pHとするために必要な水酸化ナトリウムの量である目標添加量から、ホールドアップタンク110内の余剰水中の炭酸量を減じた値となる。したがって、目標添加量から、取得した炭酸量を減じた量の水酸化ナトリウムが添加されることで、濃縮工程S600で余剰水から炭酸が抜け出た状態を想定した量の水酸化ナトリウムが、余剰水に添加される。これにより、濃縮工程S600での余剰水のpHが予想以上に高くなってしまうことを防ぐことができる。したがって、余剰水に含まれている炭酸の含有量にかかわらず、濃縮時の余剰水のpHを安定させた状態で処理することでできる。
【0069】
(実施形態の他の変形例)
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0070】
なお、余剰水取得工程S200で取水される余剰水は、酸化工程S2で生じた余剰水であることに限定されるものではない。余剰水取得工程S200で取水される余剰水は、過マンガン酸イオンが含まれた余剰水であればよく、例えば、除染工程S3で生じた余剰水であってもよい。除染工程S3で生じる余剰水には、シュウ酸が添加されている。そのため、除染工程S3で生じた余剰水のpHは2.0~3.0程度となっている。
【0071】
また、添加量決定工程S450で添加量が決定されて水酸化物添加工程S500で添加される薬品は、水酸化ナトリウムであることに限定されるものではない。水酸化物添加工程S500で添加される薬品は、余剰水をアルカリ性にすることが可能なアルカリ金属の水酸化物であればよく、例えば水酸化カリウムであってもよい。
【0072】
また、余剰水の処理方法S100及びS110は、本実施形態のような余剰水の処理システム100で実施されるもの限定されるものではない。例えば、タンクに対して、供給する薬剤ごとに別の薬剤供給部を設けてもよい。また、余剰水の処理方法S100及びS110における各種算出して取得する値は、制御部130ではなく、作業者によって手動で算出されてもよい。
【符号の説明】
【0073】
Z 除染対象物
P 原子力発電プラント
51 燃料棒
50 加圧水型原子炉
52 加圧器
53 蒸気発生器
54 一次冷却材ポンプ
56 蒸気タービン
57 発電機
58 復水器
59 給水ポンプ
55a 一次冷却水配管
55b 一次冷却水配管
55c 蒸気配管
55d 給水配管
100 余剰水の処理システム
110 ホールドアップタンク
120 サンプリング部
121 サンプリングライン
130 制御部
140 薬剤供給部
141 薬注ライン
150 ウェストホールドアップタンク
160 廃液エバポレータ
S1 化学除染方法
S2 酸化工程
S3 除染工程
S4 分解工程
S5 浄化工程
S100,S110 余剰水の処理方法
S200 余剰水取得工程
S300 過マンガン酸イオン分解工程
S301 濃度取得工程
S302 基準亜硫酸水素ナトリウム量決定工程
S303 亜硫酸水素ナトリウム添加工程
S400,S450 添加量決定工程
S401 炭酸低減工程
S402 低減後決定工程
S500 水酸化物添加工程
S600 濃縮工程
S700 廃棄工程
S451 炭酸量取得工程
S452 取得後決定工程