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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-15
(45)【発行日】2022-06-23
(54)【発明の名称】生物医学的応用のためのポリマー材料
(51)【国際特許分類】
   A61L 27/18 20060101AFI20220616BHJP
   A61L 27/44 20060101ALI20220616BHJP
   A61L 27/54 20060101ALI20220616BHJP
   A61L 27/58 20060101ALI20220616BHJP
   C08G 18/40 20060101ALI20220616BHJP
   C08L 75/04 20060101ALI20220616BHJP
   C08L 101/16 20060101ALN20220616BHJP
【FI】
A61L27/18
A61L27/44
A61L27/54
A61L27/58
C08G18/40 009
C08L75/04
C08L101/16
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2018547859
(86)(22)【出願日】2016-11-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-02-21
(86)【国際出願番号】 US2016064018
(87)【国際公開番号】W WO2017095816
(87)【国際公開日】2017-06-08
【審査請求日】2019-11-27
(31)【優先権主張番号】62/260,752
(32)【優先日】2015-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518188186
【氏名又は名称】アレオ ビーエムイー,インコーポレイテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】500273296
【氏名又は名称】ザ・ペン・ステート・リサーチ・ファンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】リウ,チャオ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,ジエン
【審査官】今井 督
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第103751148(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0093565(US,A1)
【文献】国際公開第2014/107501(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/035020(WO,A1)
【文献】特表2015-513591(JP,A)
【文献】Siyan Zhang, Kiat Hwa Chan, Robert K. Prud'homme, and A.James Link,Synthesis and Evaluation of Clickable Block Copolymers for Targeted Nanoparticle Drug Delivery,Molecular Pharmaceutics,2012, Vol.9,2228-2236
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00- 18/87
C08L 75/00- 75/16
A61L 15/00- 33/00
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00- 47/69
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の生分解性ポリマーまたはオリゴマーから形成された複数の第1のブロック、
前記第1のポリマーまたはオリゴマーとは異なる第2の生分解性ポリマーまたはオリゴマーから形成された複数の第2のブロック、および
葉酸
を含むブロックコポリマーを含む、葉酸をPNS損傷部位に送達するための医療デバイスであって、
前記ブロックコポリマーは生分解性ブロックポリウレタンコポリマーであり、
前記第1のブロックおよび第2のブロックは、ウレタン結合を介して結合され、任意に、クエン酸エステルを介して架橋されており、
前記医療デバイスは、PNS損傷部位に配置するように使用される、
前記医療デバイス
【請求項2】
前記第1または第2のポリマーまたはオリゴマーが、(i)クエン酸、クエン酸塩またはクエン酸エステルと(ii)ポリオールとの反応生成物から調製された、ジオール末端またはジイソシアナート末端ポリエステルを含み、前記クエン酸塩が式(I)の構造:
【化1】

[式中、R、RおよびRは、独立に、-H、-CH、-CHCHまたはMであり;Rは、-HまたはMであり;Mは金属カチオンである]
を有する、請求項1に記載の医療デバイス
【請求項3】
前記第1のポリマーまたはオリゴマーが、ジオール末端脂肪族ポリエステルを含み、前記第2のポリマーまたはオリゴマーが、ジイソシアナート末端親水性ポリマーまたはオリゴマーを含む、請求項1または2に記載の医療デバイス
【請求項4】
前記第1のポリマーまたはオリゴマーが、ジオール末端ポリエーテルを含み、前記第2のポリマーまたはオリゴマーが、ジイソシアナート末端脂肪族ポリエステルを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の医療デバイス
【請求項5】
前記第1または第2のポリマーまたはオリゴマーが、式(I)の構造:
【化2】

[式中、Rは、-OH、-NCOまたは-R-NCOであり;
は、-Hまたは-R-NCOであり;
は、-Hまたは-CHであり;
およびRは、独立に、1~30個の炭素原子を有する、アルキレン、アルケニレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、アルコキシレン、アリーロキシレン、またはカルバミン酸塩残基であり;
nは10から1000の間の整数であり、
ただし、RおよびRの両者は、ポリマーまたはオリゴマーに、ヒドロキシル部分を提供し、または両者はイソシアナート部分を提供する]
を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の医療デバイス
【請求項6】
前記第1のポリマーまたはオリゴマーが、ジオール末端の、ポリ(D,L-乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)、ポリ(乳酸)(PLA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリ(乳酸)-ポリ(エチレングリコール)コポリマー(PLAPEG)、ポリ(グルタミン酸)-ポリ(エチレングリコール)コポリマー(PGAPEG)、PLAGACLPEGコポリマー、ポリヒドロキシブチレート(PHB)、またはこれらの組合せを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の医療デバイス
【請求項7】
前記第2のポリマーまたはオリゴマーが、ジイソシアナート末端の、ポリ(D,L-乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)、ポリ(乳酸)(PLA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリ(乳酸)-ポリ(エチレングリコール)コポリマー(PLAPEG)、ポリ(グルタミン酸)-ポリ(エチレングリコール)コポリマー(PGAPEG)、PLAGACLPEGコポリマー、ポリヒドロキシブチレート(PHB)、またはこれらの組合せを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の医療デバイス
【請求項8】
前記ポリエステルが、(i)クエン酸、クエン酸塩またはクエン酸エステルと、(ii)ポリオールおよび(iii)アミン、アミドまたはイソシアナートとの反応生成物を含む、請求項2に記載の医療デバイス
【請求項9】
前記ポリエステルが、(i)クエン酸、クエン酸塩またはクエン酸エステルと、(ii)ポリオールおよび(iii)ジイソシアナートとの反応生成物を含む、請求項8に記載の医療デバイス
【請求項10】
前記葉酸が、前記ブロックコポリマー中に非共有結合的に取り込まれている、請求項1に記載の医療デバイス
【請求項11】
前記葉酸が、前記ブロックコポリマーに共有結合で結合している、請求項1に記載の医療デバイス
【請求項12】
前記葉酸が、ペンダント基として前記ブロックコポリマーに共有結合で結合している、請求項11に記載の医療デバイス
【請求項13】
前記葉酸が、クリックケミストリー部分の反応生成物を経由して前記ブロックコポリマーと共有結合で結合している、請求項11に記載の医療デバイス
【請求項14】
前記葉酸が、アルキンとアジドの反応生成物を経由して前記ブロックコポリマーと共有結合で結合している、請求項11に記載の医療デバイス
【請求項15】
神経成長導管として使用される、請求項1に記載の医療デバイス
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、その開示全体が参照により本明細書に援用される、2015年11月30日に出願した米国特許仮出願第62/260752号明細書に基づく利益を主張するものである。
【0002】
本開示は、架橋された生分解性ブロックポリウレタンコポリマーおよびこれらの医療デバイスにおける使用に関する。
【背景技術】
【0003】
末梢神経損傷は、米国だけで毎年約360,000の人々が発症する重大な臨床的な問題である。末梢神経傷害は、組織、器官、および末梢神経系(PNS)における神経を損傷して、衰弱性の長期の疼痛、麻痺、または四肢の機能不全をもたらす。現時点での修復のための究極の判断基準は自家移植であるが、自家移植の使用は、複数の外科的手技の必要性、病状、罹患率または供与部位における感覚の喪失、入手可能な移植片の限定された供給、および神経腫形成の可能性を含む欠点を有する。したがって、自家移植の成績に匹敵するまたは上回ることができる代替のアプローチを開発する高い要求が存在する。
【0004】
神経誘導導管(NGC)は、末梢神経修復の挑戦に取り組む1つのアプローチである。神経外傷に対する最新技術の治療において、少数の生分解性合成神経修復導管(NGC)、即ち、Neurolac(登録商標)(Polyganics)、NeuraGen(Integra Life Sciences)、NeuraWrap(Integra Life Sciences)、NeuroMend(Collagen Matrix)、GEM(商標)Neurotube(Synovis Micro)、Avance(登録商標)Nerve Graft(AxoGen)、NeuroFlex(Collagen Matrix)、およびSalutunnel(Salumedica)が、臨床的用途のために市販されている。NGCは、ポリ(L-乳酸)(PLLA)、ポリ(D,L-乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリビニルアルコール(PVA)またはコラーゲン等の生分解性ポリマーから作製される。これらの神経導管は、自家移植に対して代替の外科的な選択を提供するが、これらの成績は、損傷を受けた神経の機能的回復において、たとえ短い隙間の損傷でさえ、依然として自家移植より劣っているままである。全体的に見れば、現在入手可能な合成神経修復導管製品は、比較的大きな神経の隙間(ラットに対して長さ>1cmまたはヒトに対して長さ>4cm)を治療する場合、自家移植と比較して最適以下の再生能力および不十分な機能回復率を有する。
【0005】
生分解性ポリウレタン(PU)、またはウレタンドープしたポリエステルは、その優れた機械的および加工特性ならびに優れた生体適合性によって、有用な生体材料として研究されている。Yangらは、架橋ウレタンドープした生分解性ポリエステル(CUPE)足場の、神経再生のための適用に関する系統的調査を記載した。Tran et al., J Biomed Mater Res A. 2014, 102(8): 2793-804;を参照されたい;また米国特許第7923486号明細書を参照されたい。
【0006】
さらに、Niu et al.,Baiomaterials 2014: 35: 4266-77は、末梢神経再生のための、ポリ乳酸(PLA)およびポリエチレングリコール(PEG)をベースとするブロックポリウレタンからの足場を開示した。Li et al.,J Biomed Mater Res Part A 2014: 102A: 685-97は、神経再生の可能性を持つ材料として、ポリカプロラクトン(PCL)およびポリエチレングリコール(PEG)をベースとする交互ブロックポリウレタンを開示している。
【0007】
さらに、葉酸、すなわち水溶性ビタミンB9は、中枢神経系(CNS)の発生、機能および修復で役割を果たすことが知られている。また、葉酸、すなわち水溶性ビタミンB9は、腫瘍を治療するための標的として開示されている。例えば、米国特許第7316811号明細書には、薬物送達担体としてのマルチアームポリペプチド-ポリ(エチレングリコール)ブロックコポリマー、および腫瘍を治療する標的剤としての葉酸が開示されている。しかし、PNS損傷の部位への葉酸の局所的送達は、開示されていないと考えられる。
【0008】
したがって、神経修復導管、組織足場足根骨および創傷被覆材等の生分解性医療デバイスを提供する必要性が引き続き存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本開示の利点は、架橋された生分解性(交互またはランダム)ブロックポリウレタンコポリマー、および医療デバイスにおけるその使用を含む。このようなブロックコポリマーは、ウレタン結合を介して一緒に結合された複数の生分解性ポリマーまたはオリゴマーを含む。該ブロックコポリマーは、有利にはクエン酸エステルを介して架橋することができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
これらのおよびその他の利点は、第1の生分解性ポリマーまたはオリゴマーから形成された複数の第1のブロック、および第1のポリマーまたはオリゴマーとは異なる第2の生分解性ポリマーまたはオリゴマーから形成された複数の第2のブロックを含み、第1のブロックおよび第2のブロックがウレタン結合を介して結合され、クエン酸エステルを介して架橋されている、架橋された生分解性ブロックポリウレタンコポリマーよって少なくとも部分的には満たされる。
【0011】
該ブロックコポリマーの実施形態は、第1のまたは第2のポリマーまたはオリゴマーが、(i)クエン酸、クエン酸塩もしくはクエン酸エステルと、(ii)ポリオールおよび/または(iii)アミン、アミド、アミノ酸もしくは第一級アミン部分を含む分子、ジイソシアナート等のイソシアナート、またはポリカルボン酸もしくはその官能性等価物、またはカテコール含有種との反応生成物から調製された、ジオール末端またはジイソシアナート末端ポリエステルを、それぞれ個々にまたは組み合わせて含む。いくつかの実施形態において、ブロックコポリマーは、葉酸を物理的にまたは共有結合的に取り込んでいる。
【0012】
本開示の別の態様は、ブロックコポリマーから形成された医療デバイスを含む。神経修復導管、組織足場足根骨および創傷被覆材、細胞内方成長、軟骨再建、臓器の置換および修復、靭帯および腱の修復、骨の再建および修復、皮膚の再建および修復、血管移植、および冠動脈ステント、他の軟および硬組織の再生を含めた、様々な医療デバイスを、本開示の架橋された生分解性ブロックポリウレタンコポリマーから製作することができ、また、植込み型の医療デバイスを生体材料から作製することもできる。
【0013】
本開示の架橋された生分解性ブロックポリウレタンコポリマーは、有利には、神経成長導管等の管腔の構造体として製作することができる。NGCは、単一チャンネルまたは多チャンネルであってよく、多孔質および非多孔質であってよく、テーパーありおよびテーパーなしであってよく、導管の位置に応じて変化する分解速度であってもよい。
【0014】
特定の実施形態において、医療デバイスは、葉酸を、例えば物理的にまたは共有結合的に取り込んだ、1種または複数種の本開示の架橋された生分解性ブロックポリウレタンコポリマーから形成される。このような医療デバイスは、PNS損傷部位等の損傷の部位に葉酸を局所的に送達することができる。したがって、本開示の一態様は、損傷、例えば、PNS損傷または創傷もしくは足根骨修復等の修復組織を治療するまたは修復するために、本開示の1種または複数種の、葉酸を取り込んだ架橋された生分解性ブロックポリウレタンコポリマーから形成された医療デバイスを配置することによって、葉酸を損傷部位に送達する方法を含む。
【0015】
本発明のさらなる利点は、以下の詳細な説明から当業者には容易に明らかになるが、詳細な説明においては、本発明を実行するのに予想されるベストモードの単なる例示によって、本発明の好ましい実施形態のみが示され説明される。当然のことながら、本発明は、他のおよび異なる実施形態が可能であり、そのいくつかの詳細は、すべて本発明から逸脱することなく、様々な明らかな観点において改変が可能である。したがって、図面および説明は、本来例示的であり、限定的ではないものとみなされるべきである。
【0016】
添付の図面が参照されるが、同じ参照番号の指定を有する要素は、全体を通して同様の要素を表す。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1A】葉酸(FA)と結合したシトレートポリマーの合成スキームであり、図1Aは、ポリ(オクタメチレンシトレート)-click-FA(POC-FA)に対するスキームであり、図1Bは、導電性生分解性光ルミネセンスポリマー(BPLP-アニリン四量体)(BPLP-AT-FA)をクリック結合された葉酸に対するスキームである。
図1B】葉酸(FA)と結合したシトレートポリマーの合成スキームであり、図1Aは、ポリ(オクタメチレンシトレート)-click-FA(POC-FA)に対するスキームであり、図1Bは、導電性生分解性光ルミネセンスポリマー(BPLP-アニリン四量体)(BPLP-AT-FA)をクリック結合された葉酸に対するスキームである。
図2図2は、アジド含有ジオールおよびアルキン含有ジオールの選択的な例の構造式である。
図3図3は、クイックケミストリーを介した葉酸-アルキンの合成スキームである。
図4図4は、神経修復顕微鏡下手術の概略図であり、実施例3の実施形態に一致する。
図5図5は、本明細書に記載の一実施形態による神経成長導管の透視図である。
図6図6は、本明細書に記載の一実施形態による神経成長導管の透視図である。
図7図7は、NGCの製作および移植の概略図であり、実施例24の実施形態と一致する。
図8図8は、葉酸が補充された培地で培養したシュワン細胞およびPC-12細胞に対するCCKアッセイの細胞毒性の図表であり、葉酸は、両細胞に対して最大1250mg/Lまでは細胞毒性がないことを示唆しており、対照群(元の培地中葉酸1.3mg/L)と比較して、相対的な細胞生存率を、増加する葉酸濃度に対してプロットし、データを平均±標準誤差として示す;n=8;p<0.05。この図面は、実施例25の実施形態と一致している。
図9図9は、3種の濃度の葉酸塩を含有する培地を用いた、NGFの有無でのPC12細胞の14日間のインキュベーションの結果、および各群におけるβ-アクチン(ロードコントロール)に対するMAP-2タンパク質の百分率を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本開示は、神経修復導管、組織足場足根骨および創傷被覆材等の生分解性医療デバイスに対する、機械的、形態的、電気的および生物学的な手がかりを含めた、多重の手がかりの相乗効果を提供する架橋された生分解性ブロックポリウレタンコポリマーに関する。細胞内方成長、軟骨再建、臓器置換および修復、靭帯および腱修復、骨再建および修復、皮膚保護剤、皮膚再建および修復、血管移植片、および冠動脈ステント用組織工学的足場等の他の医療デバイス、他の軟および硬組織再生、組織接着剤および外科的充填材、ならびに植込み型医療デバイスならびに爪つや出し剤およびセカンドスキン等の化粧品または審美的デバイスもまた生体材料から作製することができる。言及した医療デバイスおよび足場は、塩浸出法、ガス発泡法、in-situ形成法、凍結乾燥法、エレクトロスピニング法、押出法、成形法、注型法およびさらに3次元(3D)印刷法または付加製造法等の一般的な方法を用いて製作することができる。
【0019】
本開示の一態様において、架橋された生分解性材料は、第1の生分解性ポリマーまたはオリゴマーから形成された複数の第1のブロック、および第1のポリマーまたはオリゴマーとは異なる第2の生分解性ポリマーまたはオリゴマーから形成された複数の第2のブロックを含む、ブロックポリウレタンコポリマーを含む。第1のブロックおよび第2のブロックは、ウレタン結合を介して結合され、クエン酸エステルを介して架橋される。該ブロックコポリマーは、交互の第1のブロックおよび第2のブロックを含む交互ブロックコポリマーであることができ;またはブロックコポリマーは、ランダムブロックコポリマーであることができる。第1の生分解性ポリマーまたはオリゴマーおよび第2の生分解性ポリマーまたはオリゴマーは、それぞれが少なくとも300、少なくとも400、または少なくとも500の重量平均分子量を有することができる。
【0020】
本開示の特定の実施形態において、第1または第2のポリマーまたはオリゴマーは、(i)クエン酸、クエン酸塩またはクエン酸エステルと、(ii)ジオールまたはポリオールとの反応生成物から調製された、ジオール末端またはジイソシアナート末端ポリエステルを含み、クエン酸塩は、式(I)の構造:
【0021】
【化1】
[式中、R、RおよびRは、独立に、-H、-CH、-CHCH等の低級アルキル、またはMであり;Rは、-HまたはMであり;Mは金属カチオンである]
を有する。ジオールは、他の官能基、例えば、アジドまたはアルキン基を含むことができ、ポリオールは、例えば、C2~C20のα,ω-n-アルカンジオール、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)を含むことができる。
【0022】
シトレートポリエステルはまた、さらなる縮合モノマーから調製することができる。例えば、(i)クエン酸、クエン酸塩またはクエン酸エステルと、(ii)ポリオール、および(iii)アミン、アミド、アミノ酸または第一級アミン部分、ジイソシアナート等のイソシアナート、またはポリカルボン酸もしくはその官能性等価物を含む分子、またはカテコール含有種との反応生成物から調製された、ジオール末端またはジイソシアナート末端ポリエステル。例えば、アミノ酸は、α-アミノ酸またはアルキル置換α-アミノ酸を含むことができ;ポリカルボン酸またはその官能性等価物は、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸または塩化フマリルを含むことができ;カテコール含有種は、ドパミン、L-3,4-ジヒドロキシフェニルアラニン、D-3,4-ジヒドロキシフェニルアラニン、または3,4-ジヒドロキシヒドロ桂皮酸を含むことができる。
【0023】
いくつかの実施形態において、シトレートポリエステルはまた、1種または複数種の式(A)のモノマーと、(i)1種または複数種の式(B1)もしくは(B2)のモノマー;(ii)1種または複数種の式(B1)もしくは(B2)のモノマー、および1種または複数種の式(C)のモノマー;(iii)1種または複数種の式(B1)もしくは(B2)のモノマー、および1種または複数種の式(D1)もしくは(D2)のモノマー;(iv)1種または複数種の式(B1)、(B2)もしくは(B3)のモノマー、および1種または複数種の式(E)のモノマー;(v)1種または複数種の式(B1)もしくは(B2)のモノマー、および1種または複数種の式(F)のモノマー;(vi)1種または複数種の式(B4)、(B5)、もしくは(B6)のモノマー;または(vii)1種または複数種の式(B4)、(B5)もしくは(B6)のモノマー、および1種または複数種の、1種または複数種のアルキン部分もしくは1種または複数種のアジド部分を含むモノマーから調製することができ、ここで、式A、B1~B6、C、D、E、Fは以下の構造:
【0024】
【化2】
[式中、R、RおよびRは、それぞれ独立に、-H、-CH、-CHCHまたはMであり;Rは、-HまたはMであり;Mは、金属カチオン、例えば、NaまたはK等の一価の金属カチオンであり;Rは、-H、-OH、-OCH、-OCHCH、-CHまたは-CHCHであり;Rは、-H、または-CHもしくは-CHCH等の低級アルキルであり;nおよびmは、それぞれ独立に、1~20または1~100の範囲の整数であり;pは1~20の範囲の整数であり;Rは、-H、-CHまたは-CHCHであり;R12はアミノ酸の側鎖であり;R14、R15、R16およびR17は、独立に、-H、-CH(CHNH、-CH(CHR18)NH、または-CH(CHCOOHであり;R18は、-COOHまたは-(CHCOOHであり;xは0~20の範囲の整数であり;yは1~20の範囲の整数であり;R22は、-H、-OH、-OCH、-OCHCH、-CH、-CHCH、-NH、NHCH、-CHCHNHCH、-N(CH、または-CHCHN(CHCHであり;R23は、-H、-CH、または-CHCH、-(CH、または-(CHCHであり;R24は、-Hまたは-CHであり;R25は、-(CH-、-(CHCHO)-または-(CHOCH-であり;R26は、-H、-CH、またはC2~C20アルキルであり;R27は、-H、-C(O)CH、または-C(O)CHCHであり;R28およびR29は、独立に、OHまたは-NHであり;XおよびYは、独立に、O-または-NH-であり;Zは、-H、-CH、-(CH、-(CHCH、または
【0025】
【化3】
であり;aは0~20の整数であり;bは0~2000の整数であり;上式におけるn1は、1から2000の間の整数であり;m1およびpは、独立に、1~20の範囲の整数であり;式(B4)のモノマーは、-OHまたは-NHを含む末端を少なくとも1つ有する]
を有する。
【0026】
上記の様々なモノマーから様々なシトレートポリエステルを作製することができる。例えば、生分解性ポリ(オクタメチレンシトレート)およびアニリン四量体とカップリングされた生分解性光ルミネセンスポリマー(BPLP-AT)の合成を概略的に示す図1Aおよび1Bを参照されたい。図1A~1Bに示すシトレートベースのポリエステルは、クリックアルキン-アジドケミストリーを介して葉酸塩を取り込むこともできる。シトレートポリエステルがクリック可能なジオールを用いないで合成された場合、葉酸は、コンジュゲーションのための水溶性カルボジイミド(WSC)の使用等の適用可能な他のコンジュゲーション方法を介してポリマーにコンジュゲートすることもできる。シトレートポリエステルに含めることができる、1種または複数種のアルキン部分または1種または複数種のアジド部分を含む他の有用なモノマーを図2に例として示す。
【0027】
いくつかの実施形態において、第1または第2の生分解性ポリマーまたはオリゴマーは、式(II)の構造
【0028】
【化4】
[式中、Rは、-OH、-NCOまたは-R-NCOであり;Rは、-Hまたは-R-NCOであり;Rは、-Hまたは-CHであり;RおよびRは、独立に、1~30個の炭素原子を有する、アルキレン、アルケニレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、アルコキシレン、アリーロキシレン、またはカルバミン酸塩残基であり;nは10から1000の間の整数であり、ただし、RおよびRの両者は、ポリマーまたはオリゴマーに、ヒドロキシル部分を提供し、または両者はイソシアナート部分を提供する]
を有する。
【0029】
コポリマーの第1または第2のブロックを形成するのに使用することができる、他の有用な生分解性ポリマーおよび/またはオリゴマーには、ジオール末端またはジイソシアナート末端のポリエーテルまたはポリエステル、例えば、ジオール末端またはジイソシアナート末端の、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリ(プロピレングリコール)(PPG)、生分解性光ルミネセンスポリマージオール(BPLP)、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、これらのコポリマー、ポリ(D,L-乳酸-co-グリコール酸)(PLGA))、ポリ(乳酸)(PLA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリ(乳酸)-ポリ(エチレングリコール)コポリマー(PLAPEG)、ポリ(グルタミン酸)-ポリ(エチレングリコール)コポリマー(PGAPEG)、PLAGACLPEGコポリマー、ポリヒドロキシブチレート(PHB)、PCLPEG、生分解性光ルミネセンスポリマー(BPLP)、ポリ(エチレングリコール)マレエートシトレート(PEGMC)、イガイから着想した、注入可能なシトレートベースの生体接着物質(iCMBA)、ポリ(オクタメチレンシトレート)(POC)、クリック可能なPOC(POC-click)またはシトレートベースのポリマー、またはこれらの組合せが含まれる。
【0030】
第1のブロックおよび第2のブロックは、脂肪族ポリエステルジオールおよびジイソシアナート末端の、PEG、PPG等の親水性ポリエーテル部分の間の、または脂肪族ポリエーテルジオールおよびジイソシアナート末端脂肪族ポリエステルジオールの間の、または脂肪族ポリエステルジオールおよびジイソシアナート末端の、PLGA、PLA、PCL、PHA、POC、BPLP、iCMBA、POC-click、PEGMC、PLAPEG、PCLPEG、PGAPEG、PLAGACLPEG、PHB等の脂肪族ポリエステル部分の間の、カップリング反応を経由して、ウレタン結合を介して結合することができる。
【0031】
第1および第2の生分解性ポリマーまたはオリゴマーの間のウレタン結合の形成を、塊状でまたは有機溶媒中において実施してもよく、典型的には、不活性雰囲気下、湿気を除外して実施する。2-エチルヘキサン酸スズ(II)(SnOct)、ブチルジラウリン酸二スズ等のスズ触媒が典型的には反応に使用される。ヒドロキシル基およびイソシアナート基は、典型的には等モル比である。反応条件は、典型的には30~100℃で8~72時間である。
【0032】
生分解性ブロックポリウレタンコポリマーは、クエン酸エステルを含むブロックコポリマーを加熱することによって架橋される。有利には、架橋に先立ってブロックコポリマーを、溶液または懸濁液から所望の形状に造形し、次いで熱で乾燥して、第1および第2のひとそろいのブロックを含む架橋された生分解性ブロックポリウレタンコポリマーを形成することができる。生分解性ブロックポリウレタンコポリマーはまた、POMC、PEGMCもしくは二重結合含有シトレートポリマーブロックがPU合成に使用される場合は、光開始剤もしくは酸化還元開始剤等の開始剤を用いて、またはiCMBAブロックがPU合成に使用される場合は、メタ過ヨウ素酸ナトリウム塩もしくは硝酸銀を用いて、またはPOC-clickブロック等のクリック可能なシトレートポリマーがPU合成に使用される場合は、クリックケミストリーに使用される銅触媒を用いて、さらに架橋することができる。
【0033】
合成の間に、POC-click、POC、ウレタンドープされたPOC、iCMBA等の官能性架橋性ブロックが使用され、生分解性光ルミネセンスポリマー(BPLP)が使用された場合、生分解性ブロックポリウレタンコポリマーは、さらに官能化することができ、このようにして多用途のクラスの架橋ポリマーを生じさせることができる。この方策は、材料の特性および官能性のさらなる制御を可能にして、生物医学的分野の製品の応用および加えて他の非医学的応用をもたらす。機械的特性および分解性等の調節可能な物理的特性に加えて、シトレートポリマーの使用によりPUに追加される官能性には、限定するものではないが、抗炎症性、抗酸化性、抗血栓性、生体接着性および蛍光特性、ならびに葉酸等の付加されたまたはコンジュゲートされた分子による他の官能性が含まれる。
【0034】
例えば、葉酸を、架橋された生分解性ブロックポリウレタンコポリマー中に取り込むことができる。葉酸は、再生および神経保護効果を誘発するものと考えられる。局所的に送達された葉酸は、ニューロンの分化および神経幹細胞(NSC)の増殖増加を誘発するのに有効であることが見出された。葉酸の取込みは、本開示の架橋された生分解性ブロックポリウレタンコポリマーに、神経幹細胞分化および神経組織再生を促進することができる向神経性の因子を付与する。
【0035】
さらに、葉酸の本開示の架橋された生分解性ブロックポリウレタンコポリマーへの物理的または共有結合的な取込みは、特にPNS再生を促進する設計を可能にする。NGCそれ自体を介した官能性の局所的な葉酸の送達は、メチル化環境の改変を経由して損傷を受けた脳、脊髄および他の組織の修復を促進する、新規な組織工学的な方策である。
【0036】
葉酸を、例えば、架橋の前にまたはその後に、葉酸を生分解性ブロックポリウレタンコポリマーと混合することによって、本開示の架橋された生分解性ブロックポリウレタンコポリマーに物理的に取り込むことができる。あるいは、クリックケミストリーの使用を経由して葉酸塩を共有結合して、葉酸塩のペンダント基を形成することによって、葉酸を本開示の架橋された生分解性ブロックポリウレタンコポリマーに共有結合的に取り込んでもよい。図2は、クエン酸エステルを調製し、本開示の架橋された生分解性ブロックポリウレタンコポリマーに葉酸を共有結合的に取り込むのに使用することができる、アジド含有ジオールおよびアルキン含有ジオールの選択的な例を示す。図3は、葉酸をアルキンで修飾する代表的な合成スキームを示す。アルキンで修飾されると、葉酸は、ブロックコポリマー上のアジドと反応すること、即ち、代表的なクリックケミストリーによって、架橋された生分解性ブロックポリウレタンコポリマーに取り込まれて、例えば、図1に示すように葉酸塩のペンダント基を形成することができる。
【0037】
本開示の架橋された生分解性ブロックポリウレタンコポリマーから、神経修復導管、組織足場足根骨および創傷被覆材を含めて、様々な医療デバイスを製作することができ、細胞内方成長、軟骨再建、臓器置換および修復、靭帯および腱修復、骨再建および修復、皮膚再建および修復、血管移植片、および冠動脈ステント、他の軟および硬組織再生ならびに植込み型医療デバイスも生体材料から作製することができる。
【0038】
さらに、本開示のブロックコポリマーは、ヒドロキシアパタイト、リン酸カルシウム、バイオガラス、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、カーボンナノチューブ、グラフェン等の他の無機または金属材料と複合化して、整形外科的応用および他の生物医学的応用のための複合材料を形成することができる。
【0039】
本開示の架橋された生分解性ブロックポリウレタンコポリマーを、内腔の内部つぶれなしで最大140度までの屈曲を可能にする高い耐キンク性を有する内腔の構造物として製作することが有利である。
【0040】
本開示の一態様において、神経成長導管は、1種または複数種の本開示の架橋された生分解性ブロックポリウレタンコポリマーから形成される。本開示の一実施形態において、神経成長導管は、第1の多孔率を有するコアまたは内腔成分、およびコアまたは内腔成分を取り囲み、第1の多孔率と異なる第2の多孔率を有するシェルまたは外部足場成分を含む、コア-シェルまたは内腔-外部足場構造を有する。コア成分は、シェル成分より高い多孔率を示す。
【0041】
図4は、神経修復顕微鏡下手術の概略図を示す。図に示すように、神経導管、例えば多孔質神経導管は、近位の断端神経に取り付ける近位の末端、遠位の断端神経に取り付ける遠位の末端、および近位の末端から遠位の末端の間の中央の領域を有する。NGCは、0.5mm~5mmのチャンネル直径を有する単一チャンネル、または50ミクロン~500ミクロンのチャンネルの直径を有する多チャンネルであってもよい。多チャンネルのNGCに対して、チャンネルの数は、1~30の範囲であってもよい。中空の多孔質NGCに対して、NGC壁の孔径は0nm~500ミクロン(好ましくは50ミクロン未満)で変化してもよく、壁厚は、100ミクロン~2mmで変化してもよい。いくつかの実施形態において、神経導管は、外側(0%から開始して)から内側領域(最大99%)までの勾配多孔率を生じさせるような方法で製作することができる。
【0042】
孔径は、500nm~50ミクロンの範囲で足場全体にわたり均一であってもよい。代替的におよび図5の実施形態において示すように、孔径は、0nm~500ミクロンの範囲の外部孔径から0nm~最大500ミクロンの範囲の内腔孔径までの勾配であってもよい。壁厚は、100ミクロン~最大2mmの範囲であってもよい。
【0043】
さらにまたは別法では、神経導管は、テーパーのある管状構造または図6の実施形態に図示する形態であってもよい。示されたように、管状神経導管の内径および/または外径は、導管が一方の末端で他の末端と比較してより大きな内径および/または外径を有するように、全体的に連続的な方法(波状の方法または「山-および-谷」状の方法とは対照的に)を含めて、神経導管の近位の末端から遠位の末端まで変化してもよい。このような構造は、遠位に進むにつれて先細になる神経のために特に好都合であり得る。
【0044】
図7は、NGCの製作および移植の概略図である。図7の実施形態に示されるように、NGCを神経断端に縫合するまたは神経末端に接着してもよい。多チャンネルのNGCに対して、NGCの両方の末端は、縫合および接着を介して神経末端を包み込むのを容易にするためにチャンネルなしとして特に設計する。チャンネルのない部分は、橋がかけられる神経のサイズ以上であるべきであり、神経末端を固定するのに必要なだけ長くしてもよい。無縫合NGC移植に関しては、NGCの末端部(多チャンネルのNGCの場合は、チャンネルのない部分)を生体グルー/生体接着物質中に浸漬しまたはそれを充填して、グルー/接着物質がNGCの末端部に被膜/吸収されるようにさせた。神経末端もまた、iCMBA、フィブリングルー、シアノアクリラート、PEG、アルブミンまたはキトサンベースの生体グルーまたはシーラント等の生体グルー/生体接着物質、または外科手術に使用される任意の他の生体グルー/接着物質/シーラントで被覆される。
【0045】
本開示の一実施形態において、架橋された生分解性ブロックポリウレタンコポリマーを、位置に応じて変化する分解速度を有する神経導管として製作することができる。即ち、神経導管は、神経導管内で位置に応じて変化する分解速度を有する。
【0046】
特定の実施形態において、医療デバイスは、葉酸を例えば、物理的にまたは共有結合的に取り込んだ、1種または複数種の本開示の架橋された生分解性ブロックポリウレタンコポリマーから形成される。このような医療デバイスは、葉酸をPNS損傷部位等の損傷の部位に局所的に送達することができる。したがって、本開示の一態様は、葉酸を取り込んだ1種または複数種の本開示の架橋された生分解性ブロックポリウレタンコポリマーから形成された医療デバイスを配置することによって、損傷、例えばPNS損傷、または創傷、もしくは足根骨修復等の修復組織を治療または修復するために、葉酸を損傷部位に送達する方法を含む。
【実施例
【0047】
以下の実施例は、本発明の特定の好ましい実施形態をさらに例示するものであり、本来限定するものではない。当業者ならば、常套の実験のみを用いて、本明細書に記載の特定の材料および手順の均等物を理解するまたは確認することができる。
【実施例1】
【0048】
PEG-ジイソシアナートプレポリマーの合成の実施例
ジイソシアナート末端PEGを、Schouten et.al., Biomaterials 2005, 26, 4219-4228にいくつかの修正をして合成した。簡潔に言えば、100mL二口フラスコ中で、無水1,2-ジクロロエタン30mLに、PEG 2.4g(M=400、6×10-3mol)およびオクタン酸第一スズ0.06gを100℃で溶解した。次いで、系中の微量の水を、共沸蒸留により、フラスコに1,2-ジクロロエタン15mLが残るまで除去した。残留する溶液15mLを20mLの注射器に移した。この溶液を、HDI 2.0g(12×10-3mol)および1,2-ジクロロエタン20mLが予め投入された250mL三口フラスコに滴下添加した。窒素ガス下で50℃において5時間反応を実施した。残留するPEG-ジイソシアナートを、さらに使用するためにフラスコに維持した。
【実施例2】
【0049】
PCLおよびPEGベースの交互ブロックポリウレタン(PUCL-alt-PEG)合成の実施例
100mLの3口フラスコ中で、0.006molの量のPCL-ジオールを1,2-ジクロロエタン60mLに溶解した。水分を105℃における共沸蒸留によって除去した。約20mLの残留する溶液を25mLの注射器に移し、実施例1で調製したPEG-ジイソシアナートのフラスコ中に緩徐に滴下した。75℃で48時間の反応後、粘性の溶液生成物を室温まで冷却させ、石油エーテルおよびメタノール(20/1、体積/体積%)の混合物中で沈殿させた。生成物を回収し、真空下40℃で一定の重量まで乾燥した。平均収率は90%であった。全面的な合成手順を以下のスキームで例示する。
【0050】
【化5】
【実施例3】
【0051】
神経修復試験
ポリウレタン神経誘導導管の製作
多孔質ポリウレタン神経誘導導管を、ディップコーティングおよび塩浸出方法を用いて調製した。典型的には、ブロックコポリマー(架橋前)1gをN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)10mLに、60℃で1時間溶解した。次いで、NaCl粒子(5~10μm)2gを、多孔質導管製作用ポロゲンとして、該溶液に添加し、十分混合した。外径1.5mmのステンレススチ-ル線を金型として使用した。金型を上記塩懸濁液に15秒間浸漬し、次いで取り出して3分間溶媒蒸発させた。上記のディップコーティングおよび乾燥サイクルを、所望のコーティング厚さが得られるまで、必要に応じて5回以上繰り返した。最後のコーティング後、コーティングスラリーを有する金型を、清浄な白色の紙またはTeflonシート上で回転して、金型上のコーティングの充填物を固めた。次いで、得られたポリマー/塩のコーティングを2日間空気乾燥し、2日間真空乾燥し、続いて架橋して/架橋せずに、次いで脱イオン水中で塩浸出し、凍結乾燥し、脱型して、多孔質神経誘導導管を得た。
【実施例4】
【0052】
葉酸を含むPCLおよびPEGベースの交互ブロックポリウレタン(FPUCL-alt-PEG、またはFAltPU)調製の実施例
実施例2で調製したPUCL-alt-PEG 5グラムをDMF 20mLに溶解して、透明な溶液を作製した。様々な量の葉酸(0.1mg~1000mg)をDMF 10mLに溶解して、別の溶液を作製した。2種の溶液を均一に混合し、自然乾燥した。葉酸を含有するPUCL-alt-PEGの膜を調製した。あるいは、上記のようにして、AltPUの足場を調製した。様々な量の葉酸(0.1mg/L~1000mg/L)を脱イオン(DI)水またはPBSに溶解した。足場を上記のFA溶液に24時間浸漬し、続いて凍結乾燥することによって、FAltPU足場を得た。
【実施例5】
【0053】
ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)ジオールの合成の実施例
触媒として無水トルエン-p-スルホン酸を用いて、精製されたPLGAおよび1,4-ブタンジオールの間のエステル交換反応によって、PLGA-ジオールを調製した。典型的には、PLGA(5g;MW 5×10)をクロロホルム100mLに溶解し、30分間還流し、続いて、トルエン-p-スルホン酸(1.5g)および1,4-ブタンジオール(5g)を添加した。75℃の還流下、18時間反応を実施し、室温まで冷却した。得られた溶液を蒸留水で4回洗浄して、未反応の1,4-ブタンジオールおよび触媒を除去し、次いで濃縮し、減圧下で乾燥した。生成物を真空下一定の重量まで乾燥した。平均収率は約80%であった。分子量2000を有するPLGA-ジオールを得た。
【実施例6】
【0054】
ポリ(オクタメチレンシトレート)(POC)プレポリマーおよびPOCベースの架橋ポリウレタン(XAltPU-POC)の合成の実施例
J.Yang et al. (Synthesis and evaluation of poly (diol citrate) biodegradable elastomers. Biomaterials. 2006; 27, 1889-98に従って、POC-ジオールプレポリマーを合成した。簡潔に言えば、注入口および排出口付きの三口反応フラスコ中で、クエン酸および1,8-オクタンジオールを1:1.1のモル比で、160~165℃において塊状重合させた。混合物が溶融した後、温度を140℃まで低下させ、反応混合物をさらに60分撹拌して、POCプレポリマーを生じさせた。プレポリマーを、脱イオン水中に滴下で沈殿させることによって精製した。沈殿したプレポリマーを回収し、凍結乾燥して、精製されたPOC-ジオールプレポリマーを得た。POC-ジオールの平均分子量は、MALDI-MSによって850~1200ダルトンと特性決定された。第一級末端ヒドロキシル基からウレタン結合を介した、POC-ジオールプレポリマーの連鎖延長によって、架橋ポリウレタンを調製した。さらなる熱架橋のために、POC-ジオールの側鎖の第三級ヒドロキシル基を使用して、POCベースの架橋ポリウレタンエラストマー(XPU-POC)を得た。
【実施例7】
【0055】
ポリ(オクタメチレンシトレート)(POC)およびPEGベースの交互ブロックポリウレタン(PUPOC-alt-PEG)の合成の実施例
250ml 3口フラスコ中で、実施例6において調製したPOC-ジオール5.1g(0.006mol)を、1,2-ジクロロエタンまたは1,4-ジオキサン60mLに溶解した。105℃における共沸蒸留によって、水分を除去した。約20mLの残留する溶液を30mLの注射器に移し、実施例1において調製したPEG-ジイソシアナートのフラスコ中に緩徐に滴下した。75℃における48時間の反応後、粘性の溶液生成物を室温まで冷却し、石油エーテルおよびメタノール(20/1、体積/体積%)の混合物中で沈殿させた。生成物を回収し、真空下40℃において一定の重量まで乾燥した。平均収率は90%であった。
【実施例8】
【0056】
POCおよびPEGベースの架橋された交互ブロックポリウレタン(XPUPOC-alt-PEG)合成の実施例
実施例7で合成した、ポリ(1,8-オクタンジオールクエン酸塩)(POC)およびPEGベースの交互ブロックポリウレタン(PUPOC-alt-PEG)溶液を、Teflonの型上に注型し、層状エアフローを備えたドラフト中ですべての溶媒が蒸発されるまで乾燥させた。得られたPUPOC-alt-PEG膜を80℃に維持されたオーブンに所定の時間移動して、架橋交互ブロックポリウレタンをドープしたPOCポリエステルエラストマー(XPUPOC-alt-PEG)を得た。
【実施例9】
【0057】
POCおよびPEGベースのランダムブロックポリウレタン(PUPOC-ran-PEG)および架橋ランダムブロックポリウレタン(XPUPOC-ran-PEG)の合成の実施例
典型的には、250mLの3口フラスコにおいて、POC-ジオール0.01mol、PEG 0.01molおよびオクタン酸第一スズ0.15gを1,2-ジクロロエタンまたは1,4-ジオキサン100mLに溶解し、共沸蒸留によって水を除去し、50mLの溶液がフラスコに残留した。フラスコを75℃まで冷却したとき、1,2-ジクロロエタンまたは1,4-ジオキサン10mL中のHDI 0.02molを注入した。反応混合物を窒素雰囲気下、75℃で48時間撹拌した。粘性の溶液生成物を室温まで冷却し、石油エーテルおよびメタノール(20/1、体積/体積%)の混合物中で沈殿させた。生成物を回収し、真空下40℃において一定の重量まで乾燥した。平均収率は90%であった。得られたPUPOC-ran-PEG膜を80℃に維持されたオーブン中に所定の時間移動して、架橋された交互ブロックポリウレタンをドープしたPOCポリエステルエラストマー(XPUPOC-alt-PEG)を得た。
【実施例10】
【0058】
脂肪族生分解性光ルミネセンスポリマージオール(BPLP-ジオール)プレポリマーの合成の実施例
J.Yang et al. (Development of aliphatic biodegradable photoluminescent polymers. Proceedings of the National Academy of Science of the United States of America. 2009; 106: 10086-91)に従って、BPLP-ジオールプレポリマーを合成した。簡潔に言えば、クエン酸および1,8-オクタンジオールを1:1.1のモノマーのモル比で組み合わせ、L-システイン(または他のアミン含有分子)を、L-システイン/クエン酸のモル比0.2で追加して撹拌した。160℃において20分間で溶融した後、温度を140℃まで低下させ、さらに75分連続的に撹拌して、BPLP-システイン(BPLP-Cys)ジオールプレポリマーを得た。BPLP-ジオールプレポリマーを、プレポリマー溶液を水中に沈殿させることによって精製し、続いて凍結乾燥した。BPLP-ジオールの平均分子量は、MALDI-MSによって800と特性決定された。第一級末端ヒドロキシル基からウレタン結合を介した、BPLP-ジオールプレポリマーの連鎖延長によって、BPLPベースのポリウレタン(PU-BPLP)を調製した。BPLP-ジオールの側鎖第三級ヒドロキシル基をさらなる熱架橋に使用して、BPLPベースの架橋ポリウレタンエラストマー(XPU-BPLP)を得た。
【実施例11】
【0059】
脂肪族生分解性光ルミネセンスポリマージオール(BPLP-ジオール)およびPEGベースの交互ブロックポリウレタン(PUBPLP-alt-PEG)の合成の実施例
250ml 3口フラスコ中で、実施例10において調製したBPLP-ジオール5.0g(0.006mol)を、1,2-ジクロロエタン60mLに溶解した。105℃における共沸蒸留で水分を除去した。約20mLの残留する溶液を30mLの注射器に移し、実施例1において調製したPEG-ジイソシアナートのフラスコ中に緩徐に滴下した。75℃における48時間の反応後、粘性の溶液生成物を石油エーテルおよびメタノール(20/1、体積/体積%)の混合物中で沈殿させた。生成物を回収し、真空下40℃において一定の重量まで乾燥した。平均収率は90%であった。
【実施例12】
【0060】
BPLPおよびPEGベースの架橋交互ブロックポリウレタンをドープしたBPLPポリエステルエラストマー(XPUBPLP-alt-PEG)の合成の実施例
実施例10において合成したBPLP-ジオールおよびPEGベースの交互ブロックポリウレタン(PUBPLP-alt-PEG)溶液を、Teflonの型上にキャストし、層状エアフローを備えたドラフト中ですべての溶媒が蒸発するまで乾燥させておいた。得られたPUBPLP-alt-PEG膜をオーブンに移動し、後重合のために80℃に4日間維持して、架橋交互ブロックポリウレタンをドープしたBPLPポリエステルエラストマー(XPUPOC-alt-PEG)を得た。
【実施例13】
【0061】
脂肪族BPLPおよびPEGベースのランダムブロックポリウレタン(PUBPLP-ran-PEG)合成の実施例
典型的には、250mLの3口フラスコにおいて、POC-ジオール0.01mol、PEG 0.01molおよびオクタン酸第一スズ0.15gを1,2-ジクロロエタン100mLに溶解し、共沸蒸留によって水を除去し、50mLの溶液がフラスコに残留した。フラスコを75℃まで冷却したとき、1,2-ジクロロエタン10mL中のHDI 0.02molを注入した。反応混合物を窒素雰囲気下、75℃で48時間撹拌した。粘性の溶液生成物を室温まで冷却し、石油エーテルおよびメタノール(20/1、体積/体積%)の混合物中で沈殿させた。生成物を回収し、真空下40℃において一定の重量まで乾燥した。平均収率は90%であった。
【実施例14】
【0062】
イガイから着想した、シトレートベースの生体接着物質(CMBA)-ジオールの合成の実施例
CMBA-ジオールプレポリマーを、M.Mehdizadeh et al.(Injectable citrate-based mussel-inspired tissue bioadhesives with high wet strength for sutureless wound closure. Biomaterials. 2012; 33: 7972-83)にいくつかの修正をして合成した。簡潔に言えば、1:1.1のモノマーモル比のクエン酸および1,8-オクタンジオールを160℃において20分間溶融した。次に、窒素ガスフロー下、ドパミンの計算量を混合物に添加した。透明な溶液を形成するのに十分な時間静置した後、真空下温度を140℃まで低下させ、所望の分子量が得られるまでに必要な時間撹拌した。得られたiCMBA-ジオールプレポリマーを1,2-ジクロロエタンまたは1,4-ジオキサンに溶解した。iCMBA-プレポリマーを、1,2-ジクロロエタンまたは1,4-ジオキサン溶液から水中に沈殿させることによって精製し、続いて凍結乾燥させた。
【0063】
イガイから着想した、シトレートベースの生体接着物質(CMBA)をベースとするポリウレタン(PU-CMBA)および架橋PU-CMBAの合成の実施例
CMBA-ジオールプレポリマーを、M. Mehdizadeh et.al., [43]にいくつかの修正をして合成した。簡潔に言えば、1:1.1のモノマーモル比のクエン酸および1,8-オクタンジオールを160℃において20分間溶融した。次に、窒素ガスフロー下、ドパミンの計算量を混合物に添加した。透明な溶液を形成するのに十分な時間静置した後、真空下温度を140℃まで低下させ、所望の分子量が得られるまでに必要な時間撹拌した。得られたiCMBA-プレポリマーを1,2-ジクロロエタンまたは1,4-ジオキサンに溶解した。iCMBA-プレポリマーを、1,2-ジクロロエタンまたは1,4-ジオキサン溶液から水中に沈殿させることによって精製し、続いて凍結乾燥させた。架橋XPU-CMBAを、実施例6と同様の手順で調製した。
【0064】
イガイから着想した、シトレートベースの生体接着物質(CMBA)およびPEGをベースにする交互ポリウレタン(PUCMBA-alt-PEG)および架橋PUCMBA-alt-PEG(XPUCMBA-alt-PEG)の合成の実施例
CMBA-ジオールプレポリマーを、M. Mehdizadeh et.al., [43]にいくつかの修正をして合成した。簡潔に言えば、1:1.1のモノマーモル比のクエン酸および1,8-オクタンジオールを160℃において20分間溶融した。次に、窒素ガスフロー下、ドパミンの計算量を混合物に添加した。透明な溶液を形成するのに十分な時間静置した後、真空下温度を140℃まで低下させ、所望の分子量が得られるまでに必要な時間撹拌した。得られたiCMBA-プレポリマーを1,2-ジクロロエタンまたは1,4-ジオキサンに溶解した。iCMBA-プレポリマーを、1,2-ジクロロエタンまたは1,4-ジオキサン溶液から水中に沈殿させることによって精製し、続いて凍結乾燥させた。
PUCMBA-alt-PEG)合成に対しては、典型的には、250mLの3口フラスコにおいて、CMBA-ジオール0.01molおよびオクタン酸第一スズ0.15gを1,2-ジクロロエタン100mLに溶解し、共沸蒸留によって水を除去し、50mLの溶液がフラスコに残留した。フラスコを冷却したとき、該溶液を、実施例1で調製したPEG-ジイソシアナート0.01モル中に注入した。反応混合物を窒素雰囲気下、75℃で48時間撹拌した。粘性の溶液生成物を室温まで冷却し、石油エーテルおよびメタノール(20/1、体積/体積%)の混合物中で沈殿させた。生成物を回収し、真空下40℃において一定の重量まで乾燥した。平均収率は90%であった。XPUCMBA-alt-PEGを、実施例12と同様の手順で調製した。
【実施例15】
【0065】
アジド基を有するPCLベースのクリック可能なランダムブロックポリウレタン(RanPU-N3)の合成の実施例
100mLの3口フラスコ中で、0.003molの量のPCL-ジオールを1,2-ジクロロエタン50mLに溶解した。水分を105℃における共沸蒸留によって除去した。約20mLの残留する溶液を25mLの注射器に移し、1,2-ジクロロエタン5mL中の2,2-ビス(アジドメチル)プロパン-1,3-ジオール(Jian Yang et.al, Advanced Materials 2014, 26, 1906-1911に従って調製した)0.003molを加えた、実施例1で調製したPEG-ジイソシアナート(0.006mol)のフラスコ中に緩徐に滴下した。75℃においてさらに48時間反応させ、粘性の溶液生成物を室温まで冷却し、さらにクリック反応をさせた。
【実施例16】
【0066】
アルキン基を有するクリック可能なランダムブロックポリウレタン(RanPU-Al)の合成の実施例
100mLの3口フラスコ中で、0.003molの量のPCL-ジオールを1,2-ジクロロエタン50mLに溶解した。水分を105℃における共沸蒸留によって除去した。約20mLの残留する溶液を25mLの注射器に移し、1,2-ジクロロエタン5mL中のプロパルギル2,2-ビス(ヒドロキシルメチル)プロピオナート(アルキン-ジオール)(J Yang et al.[45]に記載された通りに調製した)0.003モルを加えた、実施例1で調製したPEG-ジイソシアナート(0.006mol)のフラスコ中に緩徐に滴下した。75℃においてさらに48時間反応させた。
【実施例17】
【0067】
クリックケミストリーを介した架橋ランダムブロックポリウレタン(XRanPU-クリック)の合成の実施例
いずれの潜在的に有毒な金属イオンをも用いることなく、生体材料を合成することが有利であると考えられる。したがって、アジドおよびアルキンの銅触媒クリック反応は、使用することはできるが、この調製の選択肢ではない。本明細書では、熱的同時二元(TSB)架橋クリックケミストリーが、RanPU-N3およびRanPU-Alの混合物を100℃において3日間加熱することによって形成された。したがって、膜を製造するために、等量のRanPU-N3(実施例15)およびRanPU-Al(実施例16)を1,2-ジクロロエタンに溶解した。該膜を真空下100℃で3日間加熱して、架橋された交互ブロックポリウレタン(XRanPU-クリック)を得た。
【実施例18】
【0068】
アジド基を有する、PCLおよびPEGベースのクリック可能な交互ブロックポリウレタン(AltPU-N3)の合成の実施例
100mLの3口フラスコ中で、0.003molの量のPCL-ジオールを1,2-ジクロロエタン50mLに溶解した。水分を105℃における共沸蒸留によって除去した。約20mLの残留する溶液を25mLの注射器に移し、実施例1で調製したPEG-ジイソシアナート(0.006mol)のフラスコ中に緩徐に滴下し、75℃において24時間反応させて、PCL-PEGジイソシアナートを得た。次に、1,2-ジクロロエタン5mL中の2,2-ビス(アジドメチル)プロパン-1,3-ジオール(Jian Yang et.al. ( Click chemistry plays a dual role in biodegradable polymer design. Adv Mater. 2014, 26, 1906-11に従って調製した)0.003モルを上記PCL-PEGジイソシアナート溶液に添加した。75℃においてさらに48時間反応させ、次いで得られた粘性の溶液生成物を室温まで冷却し、石油エーテルおよびメタノール(20/1、体積/体積%)の混合物中で沈澱させた。生成物を回収し、真空下40℃で一定の重量まで乾燥した。
【実施例19】
【0069】
アルキン基を有する、PCLおよびPEGベースのクリック可能な交互ブロックポリウレタン(AltPU-Al)の合成の実施例
100mLの3口フラスコ中で、0.003molの量のPCL-ジオールを1,2-ジクロロエタン50mLに溶解した。水分を105℃における共沸蒸留によって除去した。約20mLの残留する溶液を25mLの注射器に移し、実施例1で調製したPEG-ジイソシアナート(0.006mol)のフラスコ中に緩徐に滴下し、75℃において24時間反応させて、PCL-PEGジイソシアナートを得た。次に、1,2-ジクロロエタン5mL中のプロパルギル2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオナート(アルキン-ジオール)(Jian Yang et al. ( Click chemistry plays a dual role in biodegradable polymer design. Adv Mater. 2014, 26, 1906-11に従って調製した)0.003モルを上記PCL-PEGジイソシアナート溶液に添加した。75℃においてさらに48時間反応させ、次いで得られた粘性の溶液生成物を室温まで冷却し、石油エーテルおよびメタノール(20/1、体積/体積%)の混合物中で沈澱させた。生成物を回収し、真空下40℃で一定の重量まで乾燥した。
【実施例20】
【0070】
クリックケミストリーを介した架橋交互ブロックポリウレタン(XAltPU-クリック)の合成の実施例
いずれの潜在的に有毒な金属イオンをも用いることなく、生体材料を合成することが有利であると考えられる。したがって、アジドおよびアルキンの銅触媒クリック反応は、使用することはできるが、この調製の選択肢ではない。本明細書では、熱的同時二元(TSB)架橋クリックケミストリーが、AltPU-N3およびAltPU-Alの混合物を100℃において3日間加熱することによって形成された。したがって、膜を製造するために、等量のAltPU-N3およびAltPU-Alを1,2-ジクロロエタンに溶解した。該膜を真空下100℃で3日間加熱して、架橋交互ブロックポリウレタン(XRanPU-クリック)を得た。
【0071】
代替的には、PCL-ジオール0.005mol、アルキン-ジオール0.001mol、およびPEG-ジイソシアナート0.006molすべてをフラスコに添加して、75℃で48時間反応させる。得られた粘性の溶液生成物を室温まで冷却し、さらにクリック反応をさせた。
【実施例21】
【0072】
図2に示す、アジド含有ジオールおよびアルキン含有ジオールの選択肢。
H1:2,2-ビス(アジドメチル)プロパン-1,3-ジオール;
H2:2-(アジドメチル)-2-メチルプロパン-1,3-ジオール;2-(アジドメチル)-2-エチルプロパン-1,3-ジオール。
I1:プロパルギル2,2-ビス(ヒドロキシル-メチル)プロピオナート;
I2:2-メチル-2-(プロパ-2-イニル)プロパン-1,3-ジオール;
I3:2,2-ジ(プロパ-2-イニル)プロパン-1,3-ジオール;
I4:R=CH3、R1=O、1,3-ジヒドロキシ-2-メチルプロパン-2-イルプロピオラート;R=CH2CH3、R1=O、1-ヒドロキシ-2-(ヒドロキシメチル)ブタン-2-イルプロピオラート;R=CH3、R1=NH、N-(1,3-ジヒドロキシ-2-メチルプロパン-2-イル)プロピオルアミド;R=CH2CH3、R1=NH、N-(1-ヒドロキシ-2-(ヒドロキシメチル)ブタン-2-イル)プロピオルアミド
I5:R=CH3、1,3-ジヒドロキシ-2-メチルプロパン-2-イルプロピオラート;R=CH2CH3、1-ヒドロキシ-2-(ヒドロキシメチル)ブタン-2-イルプロピオラート;
I6:1,3-ジヒドロキシ-2,4-イルプロピオラート。
【実施例22】
【0073】
以下の図に示される、アルキン修飾葉酸(FA-Al)の合成の実施例
葉酸(4.41g、0.01mol)および過剰なプロパルギルアルコール(0.866mL、1.5当量)をDMSO(20mL)に溶解し、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC、2.27g、0.011mol)および4-(ジメチルアミノ)-ピリジン(DMAP、0.013g、DCCに対して0.01当量)をDMSO 20mLに溶解し、DMSO中の葉酸溶液に緩徐に添加した。反応混合物を室温で24時間撹拌し、次いで沈殿物をろ過によって除去した。次いで、ろ過した溶液をジエチルエーテル中に沈殿させ、遠心分離し、ジエチルエーテル中で洗浄し、続いて真空乾燥させた後、修飾された葉酸塩が得られた。
【実施例23】
【0074】
クリックケミストリーを介した葉酸含有ポリウレタンの合成の実施例
実施例15におけるRanPU-N3および実施例18におけるAltPU-N3をFA-Alと反応させて、クリックケミストリーを介してRanPU-FAおよびAltPU-FAを形成することができる。AltPU-N3およびFA-Alの間のモル比は、1/0.1~1/1に変化させることができる。
【0075】
FA-Al(実施例22)を、クリックケミストリーを介して上記の任意のアジド含有PUと反応させることができる。
【実施例24】
【0076】
神経誘導導管(NGC)の製作および移植に対する方策
実施例3のように、多孔質NGCsを作製した。多チャンネルのNGCは、本発明者らの刊行物(Fabrication and characterization of biomimetic multichanneled crosslinked-urethane-doped polymer tissue engineered nerve guides, J Biomed Mater Res A. 2013)に記載されているように作製することができる。図7に示すように、中空の多孔質NGCに関して、NGC壁の孔径を0nm~500ミクロン(理想的には50ミクロン未満)に変化させることができ、壁厚を100ミクロン~2mmに変化させることができる。NGCを神経断端に縫合するまたは神経末端に接着することができる。多チャンネルのNGCに関して、NGCの両端は、神経末端を縫合または接着を介して包み込むのを容易にするために、チャンネルなしとして特定の設計がされる。チャンネルのない部分は、橋がかけられる神経のサイズ以上であるべきであり、神経末端を固定するのに必要なだけ長くしてもよい。無縫合NGC移植に関しては、NGCの末端部(多チャンネルのNGCの場合、チャンネルのない部分)を、フィブリングルー、iCMBAおよび任意の他のグルー等の生体グルー/生体接着物質中に浸漬するまたはそれを注入して、グルー/接着物質を多孔質足場の末端部分に被膜/吸収させる。神経末端も生体グルー/生体接着物質で被覆される。次いで、NGCを、一直線上にし、包み込み、神経末端と接着する。
【実施例25】
【0077】
葉酸が補充された培地中のシュワン細胞およびPC-12細胞の培養の実施例。葉酸が補充された培地で培養されたシュワン細胞およびPC-12細胞に対する細胞毒性のCCKアッセイは、葉酸は最大1250mg/Lまで両細胞に対する細胞毒性はないことを示唆している(図8)。葉酸が補充された培地は、用量依存的にPC-12神経突起伸長速度を促進することができる。調査した濃度の範囲内では、葉酸50~100mg/Lの補充が、PC-12の分化および神経突起伸長の促進に対して最適である。結果は、5ng/mlの神経増殖因子を含む、葉酸が補充された神経分化培地中の、PC-12細胞の培養の3日において用量依存的な神経突起伸長活性を示した。最も高い神経突起伸長は、葉酸50mg/Lで観察された。
【実施例26】
【0078】
この実施例は、2種の細胞株、シュワン細胞(PNSのグリア細胞)およびPC12細胞(ラット副腎髄質の褐色細胞腫由来の細胞株)に関する、細胞培地に補充された葉酸塩の神経栄養の影響を調査した。最大1000mg/Lまでの葉酸塩濃度を有する細胞培地は、両細胞株の生存率(細胞生存率>80%)を裏付けた。実施した他の研究には、様々な濃度の葉酸塩で強化した培地を用いた、1)シュワン細胞遊走試験、2)PC12細胞神経突起伸長アッセイ、3)PC12細胞中の微小管結合タンパク質-2(MAP-2)のウエスタンブロット分析、4)シュワン細胞およびPC12細胞の両者における全DNAのメチル化の定量、および5)神経再生に対する葉酸塩の作用のin vivo試験が含まれる。シュワン細胞遊走は、損傷を受けた神経の再ミエリン化に対して重大な意味を持ち、それゆえ本発明者らは、transwellモデル(孔径8m)およびマイクロチャネルベースの遊走アッセイを用いて、シュワン細胞遊走を促進する葉酸塩の走化性能を試験した。transwellモデルに関しては、細胞は、ろ過器のボトム側に4時間遊走する前に、ろ過器に1時間付着される。最も高い数のシュワン細胞が、(4、100、および200mg/Lの葉酸塩を含有する培地と比較して)50mg/Lの葉酸塩を含有する細胞培地の方に遊走した。同様に、シュワン細胞の遊走を、異なる濃度の葉酸塩を含有する培地を充填した2つの貯蔵器を連結するマイクロチャネル(幅:200μm)中で生存する細胞の画像化を用いて監視した。細胞を低葉酸塩培地(4mg/L)が充填された細胞チャンバーの左の貯蔵器と、高葉酸塩培地(50mg/L)が充填された右の貯蔵器の間のチャンネル中を遊走させながら、細胞の継時的な相のコントラスト画像を15分ごとに記録した。継時的な画像は、シュワン細胞の低葉酸塩培地から高葉酸塩培地への遊走を明確に示した。最大の軸索の再生を生じることができる葉酸塩の濃度の範囲を決定するために、本発明者らは、免疫細胞化学的分析およびイメージJソフトウエアを用いて、PC12細胞の神経突起伸長の改良への葉酸塩の異なる濃度の影響を試験した。各群から無作為に選択された少なくとも100個の細胞の神経細胞体の直径より2倍を超えた長い神経突起を測定することによって、神経突起の平均長さを決定した。本発明者らの発見に基づくと、葉酸塩50~100mg/Lに加えてNGF 50ng/mLは、葉酸塩1.3mg/Lを含有する対照培地(7日目で<100μm)および他の葉酸塩の濃度と比較して、神経突起伸長の増大を最も促進した(7日目で>150μm)。PC12分化への葉酸塩の影響をよりよく理解するために、微小管結合タンパク質-2(MAP-2)を、様々な濃度の葉酸塩中で2週間培養したPC12の細胞可溶化物において、ウエスタンブロット法を用いて定量化した。MAP-2は、初期の発生段階において、ニューロンに対して感受性で特異的なマーカーとして、神経突起および樹状突起の形成と関連付けられるタンパク質である。PC12細胞を、NGF(50ng/mL)の有無の状態で、3種の濃度の葉酸塩(1.3、50および100mg/L)を含有する細胞培地で14日間インキュベートした。NGFの存在下、50mg/Lの葉酸塩培地では、対照培地(1.3mg/L葉酸塩)より2.56倍高いMAP-2タンパク質発現を生じさせた。NGFが存在しない場合であっても、葉酸が補充された培地(50および100mg/Lの葉酸塩を有する)は、1.3mg/Lの葉酸塩を有する対照試料と比較して2.22~2.30倍高いMAP-2の発現を生じさせた。図9。葉酸塩は、DNAのメチル化を触媒することによってニューロンの分化を促進するものと考えられているので、全DNAメチル化を、様々な葉酸塩培地中で培養した後のシュワン細胞およびPC12細胞中で定量した。全DNAメチル化は、シュワン細胞およびPC12細胞両者の培養2日目に葉酸塩50mg/Lにおいて最高値であった。全または遺伝子特定的DNAメチル化がグリア細胞および神経細胞の分化に関係するかどうか、およびどのように関係するかを見出すために、本現象に対してさらなる試験を実施する。予備のin vivo試験は、葉酸塩で強化した耐キンク性CUPE NGCは、手術(ラット(180~220g、N=26)に2cmの座骨神経ギャップを生じさせ)および移植の4週後、対照CUPEおよびPCL NGCと比較して、そのより低いオートファジー、改良された電気生理学的結果(神経伝導速度またはNCVとして示される)、およびより良好な座骨機能指数(SFI)という点から非常に興味深い結果を示した。葉酸塩-CUPE(fCUPE)および葉酸塩-PCL(fPCL)NGCを、NGCを葉酸塩100mg/Lを含有するリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に浸漬し、凍結乾燥方法によって調製した。SFI値をBain et al.によって記載されているように計算した。葉酸塩-CUPE NGCは、良好なSFIの結果および自家移植と比較して匹敵するNCVの結果を示したことは注目する価値がある。これらの説得力のあるin vitroおよびin vivoのデータは、改良された末梢神経再生のためのNGCの設計における神経栄養の要素として、葉酸塩を使用することができることが明確に判明した。
【実施例27】
【0079】
本明細書に記載の神経導管の一実施形態を図5に図示する。図5を参照すると、該神経導管は、明細書に記載のポリマー材料から形成してもよい多孔質神経導管である。さらに、多孔質神経導管は、神経導管の位置または空間的な領域の関数として変化する分解または生分解速度を有する。特に、図5の実施形態において、神経導管は、神経導管の近位の末端および遠位の末端においてより速く、および神経導管の中央の領域でより遅く分解する。したがって、該神経導管は分解速度の勾配を示す。このような勾配は、複数の材料から神経導管を形成することによって実現することができ、該材料はin vivoに含まれる異なる分解速度を有する。複数の材料には、交互またはランダムブロックポリウレタン材料を含めた、上記の複数の異なるポリマー材料が含まれる。複数の材料はまた、PLLA、PLGA、PCL、PVAまたはコラーゲン移植材料等の、他の材料を含んでいてもよい。一般に、本開示の目的と整合しない任意の材料を、この実施例に記載されている構造を有する神経導管を形成するために使用してもよい。さらに、このような構造を有する神経導管は、場合によっては、神経組織成長パターン等の、組織成長パターンと整合するまたは対応するための分解プロファイル(時間および空間の両方における)を可能にすることができる。神経導管は、中空の管または多チャンネルの管状構造であることもできることがさらに理解される。
【実施例28】
【0080】
本明細書に記載の神経導管の一実施形態を図7に図示する。図7を参照すると、神経導管は、テーパーのある管状構造または形態を有する。したがって、管状神経導管の内径および/または外径は、神経導管の近位の末端から遠位の末端までで変化することができる。より詳細には、神経導管の内径および/または外径は、導管が一方の末端において、他の末端と比較してより大きな内径および/または外径を有するように、全体的に連続的な方法(波状の方法または「山-および-谷」状の方法とは対照的に)を含めて、近位の末端から遠位の末端まで増加または低減することができる。このような構造は、遠位に進むにつれて先細になる神経のために特に好都合であり得る。一般に、個々の患者の背が高いほど、四肢はより長く、末端の神経はより先細であり得る。したがって、本明細書に記載の神経導管の形状または形態要因は、テーパーのある神経組織を実質的に模倣することができ、それによって導管の挿入および組織再生を容易にする。
【0081】
実施例27および28の神経導管は、粒子浸出方法またはガス発泡方法を用いて多孔質構造を付与することができる。繊維状および多孔質導管は、エレクトロスピニング法、溶融物押出、または3D印刷によって形成することができる。実施例27および28の両者に対して、神経導管の繊維を円周上で一直線に配列するまたはランダムに配列してもよい。さらに、繊維の直径は、10nm~2mmの範囲であってもよい。
【0082】
本開示では、本発明の好ましい実施形態およびその多用途性の実施例を示し、説明するに過ぎない。本発明は、様々な他の組合せおよび環境で使用することが可能であり、本明細書で述べた発明概念の範囲内で変更または改変が可能であるものと理解される。したがって、例えば、当業者ならば、本明細書に記載の特定の物質、手順および取合せに対する多数の均等物を、常套の実験のみで理解または確認することが可能である。このような均等物は、本発明の範囲内に属し、以下の特許請求の範囲によって包含されるとみなされる。

図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9