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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-15
(45)【発行日】2022-06-23
(54)【発明の名称】工作機械
(51)【国際特許分類】
   B23B 19/02 20060101AFI20220616BHJP
   B23B 39/02 20060101ALI20220616BHJP
   B23B 31/02 20060101ALI20220616BHJP
【FI】
B23B19/02 A
B23B39/02
B23B31/02 601C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019032504
(22)【出願日】2019-02-26
(65)【公開番号】P2020131413
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000003458
【氏名又は名称】芝浦機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】多田 敦司
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】実公昭62-43684(JP,Y2)
【文献】特開2004-358647(JP,A)
【文献】特開平4-176504(JP,A)
【文献】実開昭47-25287(JP,U)
【文献】特開平5-44707(JP,A)
【文献】国際公開第1998/10889(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 19/02
B23B 39/02
B23B 31/02
B23Q 1/28
B23Q 5/04 - 5/26
F16B 2/00 - 2/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に工具を装着可能かつ中心軸線廻りに回転可能な主軸と、前記主軸を前記中心軸線方向へ進退自在に収容するフライス軸と、前記フライス軸を前記中心軸線廻りに回転自在に支持する主軸ヘッド本体と、前記フライス軸の回転を前記主軸に伝達する回転伝達機構と、前記主軸ヘッド本体に設置されて前記フライス軸を回転駆動する駆動モータと、前記主軸ヘッド本体に設置されて前記主軸を進退させる進退駆動装置と、前記フライス軸の内側に設置されて前記主軸を拘束するクランプ装置と、を有し、
前記クランプ装置は、前記フライス軸に対して前記中心軸線方向の位置を固定されかつ内側に前記主軸が挿通される内リングと、前記内リングと円錐面を介して嵌合可能な外リングと、前記外リングまたは前記内リングのいずれか一方を前記外リングと前記内リングとが嵌合する方向へ駆動可能なクランプピストンを有するクランプシリンダと、前記外リングまたは前記内リングのいずれか他方を前記クランプピストンとは逆向きに駆動可能なアンクランプピストンを有するアンクランプシリンダと、を有し、
前記フライス軸は、前記フライス軸の外周面に設置されかつ軸側クランプ管路を通して前記クランプシリンダに連通された軸側クランプカプラと、前記フライス軸の外周面に設置されかつ軸側アンクランプ管路を通して前記アンクランプシリンダに連通された軸側アンクランプカプラと、を有し、
前記主軸ヘッド本体は、前記フライス軸が操作角度位置にある状態で前記軸側クランプカプラに結合可能なヘッド側クランプカプラと、前記フライス軸が操作角度位置にある状態で前記軸側アンクランプカプラに結合可能なヘッド側アンクランプカプラと、前記ヘッド側クランプカプラおよび前記ヘッド側アンクランプカプラに圧油を供給可能な圧油供給装置と、を有することを特徴とする工作機械。
【請求項2】
請求項1に記載の工作機械において、
前記主軸ヘッド本体は、前記ヘッド側クランプカプラおよび前記ヘッド側アンクランプカプラを、それぞれ前記主軸ヘッド本体の前記フライス軸を収容する部位の内周面から前記フライス軸に向けて進退させるカプラ駆動装置を有することを特徴とする工作機械。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の工作機械において、
前記軸側クランプカプラおよび前記軸側アンクランプカプラは、前記ヘッド側クランプカプラまたは前記ヘッド側アンクランプカプラとの結合が解除された状態で圧油の流通を遮断可能なバルブを有することを特徴とする工作機械。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の工作機械において、
前記外リングおよび前記内リングが互いに嵌合する前記円錐面は、前記フライス軸の先端側に向けて拡径した形状であることを特徴とする工作機械。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の工作機械において、
前記内リングは、内周面が前記主軸の外周面に接触可能に配置され、かつ前記フライス軸に対して前記中心軸線方向に位置規制されており、
前記外リングは、前記クランプシリンダおよび前記アンクランプシリンダで駆動可能であることを特徴とする工作機械。
【請求項6】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の工作機械において、
前記外リングは、前記フライス軸の内周面に固定され、
前記内リングの内周面と前記主軸の外周面との間には前記フライス軸に対して前記中心軸線方向に位置規制された円筒状のスリーブが設置され、
前記内リングは、前記クランプシリンダおよび前記アンクランプシリンダで駆動可能であることを特徴とする工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は主軸繰り出し方式の工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械では、主軸ヘッド本体に回転自在に支持された主軸の先端に工具を装着し、主軸ヘッド本体をワークに対して相対移動させることで、ワークの任意位置を工具で切削加工することができる。
工作機械において、例えば横中ぐり盤などには、主軸繰り出し方式の工作機械が利用されている(特許文献1参照)。
主軸繰り出し方式の工作機械は、先端に工具を装着可能かつ中心軸線廻りに回転可能な主軸と、主軸を中心軸線方向へ進退自在に収容するフライス軸と、フライス軸を中心軸線廻りに回転自在に支持する主軸ヘッド本体と、フライス軸の回転を主軸に伝達する回転伝達機構と、主軸ヘッド本体に設置されてフライス軸を回転駆動する駆動モータと、主軸ヘッド本体に設置されて主軸を進退させる進退駆動装置と、フライス軸の内側に設置されて主軸を拘束するクランプ装置と、を有する。
進退駆動装置としては、主軸の工具装着側とは反対側の端部に接続され、主軸を軸線方向へ移動させるボールねじ等などが利用される。回転伝達機構としては、フライス軸の回転を主軸に伝達可能かつ軸線方向の相対移動を許容可能な係合機構、例えばフライス軸の内面および主軸の外面に形成されて主軸の軸線方向に延びるキーおよびキー溝などが利用される。
クランプ装置は、フライス軸の工具に近い先端側に設置され、クランプ状態では主軸を拘束して主軸の軸心の振れを抑制する。進退駆動装置による主軸の進退は、クランプ装置による主軸の拘束を解除したアンクランプ状態で行われる。
【0003】
このような主軸繰り出し方式の工作機械では、駆動モータでフライス軸を回転駆動することで、回転伝達機構を介して回転力が主軸に伝達され、主軸に装着された工具を回転させてワークを加工することができる。
加工の際には、進退駆動装置で主軸を進出または後退させることで、ワークに対する工具の位置を変更することができる。主軸が進出した状態では、クランプ装置によりフライス軸の先端近傍で主軸を拘束することで、主軸の振れを抑制することができる。
【0004】
前述のような主軸繰り出し方式の工作機械において、主軸を拘束するクランプ装置としては、例えば円錐面(リング状のテーパ面)を用いて主軸を全周から締め付ける機構が利用されている(特許文献2参照)。
具体的には、フライス軸に対して中心軸線方向の位置を固定されかつ内側に主軸が挿通される内リングと、内リングと円錐面を介して嵌合可能な外リングと、で構成されるクランプリングを有するとともに、外リングが内リングに嵌合する嵌合方向へ外リングを付勢する皿ばね列などの付勢部材と、外リングを内リングとの嵌合が解除される解除方向へ駆動可能な油圧ピストンなどの解除機構と、を有するクランプ装置が利用されている。特許文献2では、前述のようなクランプリング式のクランプ装置を一対、逆向きに設置している。
このようなクランプ装置を有する主軸繰り出し方式の工作機械においては、解除機構によりクランプ装置を解除した状態で、主軸の繰り出し動作を実行できる。一方、クランプ装置を動作させ、主軸をフライス軸の先端近傍で拘束することで、進出状態の主軸の振れを抑制できる。
【0005】
前述したクランプ装置では、回転するフライス軸の解除機構に主軸ヘッド本体側から油圧(加圧された油)を供給するために、フライス軸の外周面には周方向に連続した圧力ポケットが形成され、主軸ヘッド本体の内周面には圧力ポケットを囲むリング状のブロック(ブシュ)が設置され、ブシュに形成されたポートと圧力ポケットとが常時連通する構成とされる。
圧力ポケットおよびポートは、フライス軸の工具から離れた側に設置される。一方、クランプ装置はフライス軸の工具に近い先端側に設置される。クランプ装置と圧力ポケットとは、フライス軸の内部に形成された軸方向に延びる油圧通路で接続される。
フライス軸が回転する際に圧力ポケットに残油があると、ブシュにより油が剪断されて発熱し、部材が熱膨張することがある。そこで、フライス軸を回転させる前に、ポートから圧縮空気を供給し、圧力ポケットの残油を排出することがなされている(特許文献2の段落0013参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平8-281501号公報
【文献】特開平5-44707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述した主軸繰り出し方式の工作機械においては、油圧式のクランプ装置により、進出時の主軸の振れを抑制できる。しかし、フライス軸を主軸ヘッド本体に対して回転させるため、圧力ポケットとポートとは密封することができず、各々の間から周囲に油が漏れ出すことが避けられなかった。
このような油漏れが避けられないため、圧力ポケットおよびポートはフライス軸先端のクランプ装置から離れた位置とせざるを得ず、そのためにフライス軸には軸方向に延びる長い油圧通路を形成する必要があった。
フライス軸に長い油圧通路を形成するには、ガンドリル等による深穴加工が必要になり、製造コストが低減できない。また、長い油圧通路はフライス軸の重量バランスに影響するため、フライス軸の回転中心を挟んで対称に一対の油圧経路を形成することも必要になり、製造時の作業およびコストが倍増していた。
従って、深穴加工を解消して製造作業を容易にし、製造コストを低減することが望まれていた。
【0008】
前述した従来のクランプ装置では、皿ばねを用いた付勢部材により常時クランプ状態が維持され、油圧により解除機構を動作させた状態ではクランプ状態が解除される。
ここで、クランプ状態でのクランプ力は皿ばねに依存するので、安定したクランプ力が得られる。一方、クランプ状態解除の際には、皿ばねによるクランプ力以上のアンクランプ力を加える必要がある。
しかし、前述したように、圧力ポケットとポートとの間が密封されておらず、油漏れによる圧力損失が生じる。そのため、アンクランプ力を大きくすることができず、その結果クランプ力も大きくできなかった。
従って、ワークに対する加工能力を高めるために、クランプ装置のクランプ力を更に強化することが望まれていた。
さらに、アンクランプ状態を維持するためには、アンクランプ力を生じさせる油圧の供給を継続する必要があり、油圧供給が継続されることで圧力ポケットとポートとの間からの油漏れも続くことになっていた。
従って、油圧供給がなくてもアンクランプ状態を維持できるようにすることが望まれていた。
【0009】
本発明の目的は、主軸に対するクランプ力を強化でき、アンクランプ状態での油圧供給に起因する発熱(剪断熱の発生)を解消できるとともに、製造が容易で低コストにできる主軸繰り出し方式の工作機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の工作機械は、先端に工具を装着可能かつ中心軸線廻りに回転可能な主軸と、前記主軸を前記中心軸線方向へ進退自在に収容するフライス軸と、前記フライス軸を前記中心軸線廻りに回転自在に支持する主軸ヘッド本体と、前記フライス軸の回転を前記主軸に伝達する回転伝達機構と、前記主軸ヘッド本体に設置されて前記フライス軸を回転駆動する駆動モータと、前記主軸ヘッド本体に設置されて前記主軸を進退させる進退駆動装置と、前記フライス軸の内側に設置されて前記主軸を拘束するクランプ装置と、を有し、
前記クランプ装置は、前記フライス軸に対して前記中心軸線方向の位置を固定されかつ内側に前記主軸が挿通される内リングと、前記内リングと円錐面を介して嵌合可能な外リングと、前記外リングまたは前記内リングのいずれか一方を前記外リングと前記内リングとが嵌合する方向へ駆動可能なクランプピストンを有するクランプシリンダと、前記外リングまたは前記内リングのいずれか他方を前記クランプピストンとは逆向きに駆動可能なアンクランプピストンを有するアンクランプシリンダと、を有し、
前記フライス軸は、前記フライス軸の外周面に設置されかつ軸側クランプ管路を通して前記クランプシリンダに連通された軸側クランプカプラと、前記フライス軸の外周面に設置されかつ軸側アンクランプ管路を通して前記アンクランプシリンダに連通された軸側アンクランプカプラと、を有し、
前記主軸ヘッド本体は、前記フライス軸が操作角度位置にある状態で前記軸側クランプカプラに結合可能なヘッド側クランプカプラと、前記フライス軸が操作角度位置にある状態で前記軸側アンクランプカプラに結合可能なヘッド側アンクランプカプラと、前記ヘッド側クランプカプラおよび前記ヘッド側アンクランプカプラに圧油を供給可能な圧油供給装置と、を有することを特徴とする。
【0011】
このような本発明では、駆動モータでフライス軸を回転駆動することで、フライス軸と連結された主軸が回転駆動され、主軸の先端に装着された工具によってワークを加工することができる。
加工にあたって、進退駆動装置で主軸を進退させることで、主軸先端すなわち工具の繰り出し長さを調整することができる。フライス軸から主軸を繰り出した場合でも、クランプ装置で主軸をクランプすることで、工具の振れを抑制できる。
本発明のクランプ装置では、主軸をクランプするクランプ動作、およびクランプを解除するアンクランプ動作を実行する際に、それぞれ圧油を供給し、クランプ動作およびアンクランプ動作のとき以外は圧油を停止しておく。
【0012】
クランプ動作を行う場合、先ず、クランプ準備動作として、フライス軸を主軸ヘッド本体に対して所定の操作角度位置に停止させ、ヘッド側クランプカプラと軸側クランプカプラとが正対する状態としたうえ、ヘッド側クランプカプラと軸側クランプカプラとを結合させる。このとき、併せてヘッド側アンクランプカプラと軸側アンクランプカプラとの結合も行ってもよい。
次に、クランプ動作として、圧油供給装置からヘッド側クランプカプラに圧油を供給し、軸側クランプカプラおよび軸側クランプ管路を通してクランプシリンダまで圧油を送りこむ。送り込む圧油は、立ち上がりの急なパルス状とすることが好ましい。
クランプシリンダに圧油が供給されると、クランプピストンが、圧油を受けて外リング(または内リング)を、外リングと内リングとが嵌合する方向へ駆動する。駆動された外リング(または内リング)は、円錐面(リング状のテーパ面)を介して嵌合し、内リングが主軸を径方向内向きに締め付け、これにより主軸のクランプが行われる。
このとき、供給される圧油がパルス状であれば、駆動する外リング(または内リング)にインパクトが与えられ、円錐面での嵌合が強固に行われ、クランプ状態の保持性能を高めることができる。
クランプ状態となったら、圧油供給装置からの圧油を停止し、ヘッド側クランプカプラと軸側クランプカプラとを分離する。このとき、ヘッド側アンクランプカプラと軸側アンクランプカプラとが結合されていれば、併せてこれらの分離も行う。
クランプ状態では、外リングと内リングとの嵌合が、各々の円錐面の摩擦力により維持することができ、クランプシリンダへの圧油を停止してもクランプ状態が維持される。
この状態でフライス軸を駆動モータで回転駆動することで、主軸はフライス軸にクランプされた状態で一体に回転することができる。
【0013】
アンクランプ動作を行う場合、先ず、アンクランプ準備動作として、フライス軸を主軸ヘッド本体に対して所定の操作角度位置に停止させ、ヘッド側アンクランプカプラと軸側アンクランプカプラとが正対する状態としたうえ、ヘッド側アンクランプカプラと軸側アンクランプカプラとを結合させる。このとき、併せてヘッド側クランプカプラと軸側クランプカプラとの結合も行ってもよい。
次に、アンクランプ動作として、圧油供給装置からヘッド側アンクランプカプラに圧油を供給し、軸側アンクランプカプラおよび軸側アンクランプ管路を通してアンクランプシリンダまで圧油を送りこむ。送り込む圧油は、立ち上がりの急なパルス状とすることが好ましい。
アンクランプシリンダに圧油が供給されると、アンクランプピストンが、圧油を受けて外リング(または内リング)を、クランプ動作における嵌合方向と逆向きに駆動する。駆動された外リング(または内リング)は、円錐面(リング状のテーパ面)による外リングと内リングとの嵌合を分離し、内リングによる主軸の径方向内向きの締め付けを解除し、これにより主軸のアンクランプが行われる。
このとき、供給される圧油がパルス状であれば、駆動する外リング(または内リング)にインパクトが与えられ、円錐面での嵌合が強固であっても確実に解除させることができる。
アンクランプ状態となったら、圧油供給装置からの圧油を停止し、ヘッド側アンクランプカプラと軸側アンクランプカプラとを分離する。このとき、ヘッド側クランプカプラと軸側クランプカプラとが結合されていれば、併せてこれらの分離も行う。
アンクランプ状態では、内リングおよび外リングは嵌合方向に拘束されておらず、互いに接触することもあるが、クランプ動作のような圧油供給がない限りクランプ状態に至ることはなく、アンクランプシリンダの圧油を停止してもアンクランプ状態が維持される。
この状態でフライス軸を進退駆動装置で進退させることで、主軸はフライス軸からの繰り出し長さを調整することができる。
【0014】
以上のように、本発明においては、クランプ動作およびアンクランプ動作の際にそれぞれ圧油を供給し、クランプ動作およびアンクランプ動作の際以外は圧油の供給を停止することができる。つまり、本発明では、従来のようなアンクランプ状態での継続的な油圧供給を解消することができる。
さらに、クランプ動作の際のクランプシリンダへの油圧、およびアンクランプ動作におけるアンクランプシリンダへの油圧は、それぞれ任意に設定することができ、必要に応じてクランプ状態での主軸に対するクランプ力を高めることができる。従って、ワークに対する加工能力を高めるために、クランプ装置のクランプ力を更に強化することができる。
【0015】
さらに、本発明では、クランプ動作の際の圧油の供給にヘッド側クランプカプラと軸側クランプカプラとを用い、アンクランプ動作の際の圧油の供給にヘッド側アンクランプカプラと軸側アンクランプカプラとを用いるようにした。このため、従来のような、フライス軸と主軸ヘッド本体との間での圧油の漏れ出しを防止できる。
そして、フライス軸と主軸ヘッド本体との間の油漏れが防止できるため、ヘッド側クランプカプラと軸側クランプカプラ、およびヘッド側アンクランプカプラと軸側アンクランプカプラは、それぞれクランプ装置の他の部分(内リングおよび外リング、クランプシリンダおよびアンクランプシリンダ)とともに、フライス軸の先端近傍に設置することができる。その結果、従来のような軸方向に延びる長い油圧通路などが必要なく、ガンドリル加工のような特殊な加工を解消することができる。従って、本発明によれば、製造作業を容易にし、製造コストを低減することができる。
【0016】
本発明の工作機械において、前記主軸ヘッド本体は、前記ヘッド側クランプカプラおよび前記ヘッド側アンクランプカプラを、それぞれ前記主軸ヘッド本体の前記フライス軸を収容する部位の内周面から前記フライス軸に向けて進退させるカプラ駆動装置を有することが好ましい。
【0017】
このような本発明では、クランプ動作の際およびアンクランプ動作の際には、カプラ駆動装置でヘッド側クランプカプラおよびヘッド側アンクランプカプラを進出させることで、軸側クランプカプラおよび軸側アンクランプカプラに結合させることができる。一方、加工動作の際には、クランプ動作およびアンクランプ動作を行わないため、カプラ駆動装置でヘッド側クランプカプラおよびヘッド側アンクランプカプラを後退させておくことができる。これにより、フライス軸が主軸ヘッド本体に対して回転する際に、カプラどうしの干渉などが生じることを防止でき、円滑な動作を行うことができる。
【0018】
本発明の工作機械において、前記軸側クランプカプラおよび前記軸側アンクランプカプラは、前記ヘッド側クランプカプラまたは前記ヘッド側アンクランプカプラとの結合が解除された状態で圧油の流通を遮断可能なバルブを有することが好ましい。
【0019】
このような本発明では、ヘッド側クランプカプラと軸側クランプカプラとの結合、およびヘッド側アンクランプカプラと軸側アンクランプカプラとの結合が解除された際に、軸側クランプカプラおよび軸側アンクランプカプラがバルブで閉鎖され、軸側クランプ管路を通してクランプシリンダの圧油が流出すること、および軸側アンクランプ管路を通してアンクランプシリンダの圧油が流出することを防止できる。
【0020】
本発明の工作機械において、前記外リングおよび前記内リングが互いに嵌合する前記円錐面は、前記フライス軸の先端側に向けて拡径した形状であることが好ましい。
【0021】
このような本発明では、加工時にワークから工具への反力が生じ、主軸が先端側から反対側に向けて付勢された際に、フライス軸の先端側に向けて拡径した円錐面によって内リングが外リングに押込まれ、嵌合が補強されることになる。その結果、クランプ装置による主軸のクランプ力を補強することができる。
なお、内リングおよび外リングの組(クランプリング)を複数設置する場合、少なくとも1組の円錐面がフライス軸の先端側に向けて拡径していればよい。
【0022】
本発明の工作機械において、前記内リングは、内周面が前記主軸の外周面に接触可能に配置され、かつ前記フライス軸に対して前記中心軸線方向に位置規制されており、前記外リングは、前記クランプシリンダおよび前記アンクランプシリンダで駆動可能であることが好ましい。
【0023】
このようは本発明では、クランプ動作時およびアンクランプ動作時に、クランプシリンダまたはアンクランプシリンダで外リングが駆動されることで、内リングに対して嵌合または解除される。
内リングは、外リングとの嵌合時に内周面が主軸の外周面に接触することで、強いクランプ力が得られる。さらに、内リングは、中心軸線方向に位置規制されているため、クランプ動作時およびアンクランプ動作時に主軸の中心軸線方向位置のずれを防止できる。
【0024】
本発明の工作機械において、前記外リングは、前記フライス軸の内周面に固定され、
前記内リングの内周面と前記主軸の外周面との間には前記フライス軸に対して前記中心軸線方向に位置規制された円筒状のスリーブが設置され、前記内リングは、前記クランプシリンダおよび前記アンクランプシリンダで駆動可能であることが好ましい。
本発明において、外リングは、別部材をフライス軸の内周面に固定してもよく、フライス軸の内周面に円錐面を加工して外リングとしてもよい。
【0025】
このようは本発明では、クランプ動作時およびアンクランプ動作時に、クランプシリンダまたはアンクランプシリンダで内リングが駆動されることで、外リングに対して嵌合または解除される。
内リングは、外リングとの嵌合時に内周面がスリーブを介して主軸の外周面に押し付けられることで、十分なクランプ力が得られる。
内リングと主軸との間のスリーブは、フライス軸の中心軸線方向に位置規制されているため、クランプ動作時およびアンクランプ動作時に主軸の中心軸線方向位置のずれを防止できる。
外リングは、フライス軸の内周面に固定され、あるいはフライス軸の内周面と一体化することができるとともに、クランプシリンダまたはアンクランプシリンダが内リングを駆動するため、フライス軸に形成されるクランプ装置としての厚みを小さくすることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、主軸に対するクランプ力を強化でき、アンクランプ状態での油圧供給を解消できるとともに、製造が容易で低コストにできる主軸繰り出し方式の工作機械を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の第1実施形態の工作機械の全体を示す斜視図。
図2】前記第1実施形態の主軸ヘッド本体を示す断面図。
図3】前記第1実施形態のクランプ装置を示す断面図。
図4】前記第1実施形態の主軸先端側を示す正面図。
図5】前記第1実施形態のクランプ装置のクランプ状態を示す拡大断面図。
図6】前記第1実施形態のクランプ装置のアンクランプ状態を示す拡大断面図。
図7】前記第1実施形態のクランプ装置の操作を示すフローチャート。
図8】本発明の第2実施形態のクランプ装置を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
〔第1実施形態〕
図1において、工作機械1は、本発明に基づく主軸繰り出し方式の工作機械である。
工作機械1は、ベッド2の上面にテーブル3およびコラム4を有する。
テーブル3は、X軸移動機構5およびZ軸移動機構6により、水平かつ互いに交差するX軸方向およびZ軸方向へ移動可能である。
コラム4には、主軸ヘッド本体10が支持されている。主軸ヘッド本体10は、図示しないY軸移動機構を介してコラム4に支持され、コラム4に沿って昇降つまりY軸方向へ移動可能である。
【0029】
図2において、主軸ヘッド本体10には、繰り出し方式の主軸20およびフライス軸30が設置されている。
主軸20は、先端に工具を装着するチャック21を有し、フライス軸30の中心部に同軸つまり互いの中心軸線が一致した状態で進退自在に収容されている。主軸20およびフライス軸30の中心軸線は、工作機械1のZ軸方向とされている。
フライス軸30は、軸受31,32を介して主軸ヘッド本体10に回転自在に支持されている。主軸ヘッド本体10には、フライス軸30を回転駆動する駆動モータ11が設置され、図示しない伝達機構を介してフライス軸30に接続されている。
【0030】
主軸20とフライス軸30との間には、フライス軸30の回転を主軸20に伝達する回転伝達機構12が設置されている。
回転伝達機構12は、主軸20の外周面に形成された長手方向に延びるキー溝22と、フライス軸30に固定されてキー溝22に嵌合するキー部材33とを有し、フライス軸30と主軸20との間で回転を伝達可能であるとともに、フライス軸30と主軸20との長手方向への移動を許容可能である。
【0031】
主軸ヘッド本体10には、フライス軸30および主軸ヘッド本体10に対して主軸20を中心軸線方向へ進退させる進退駆動装置13が設置されている。
進退駆動装置13は、主軸20のチャック21と反対側端に当接する当接部材14と、当接部材14を主軸20の長手方向(中心軸線方向)へ移動させる送りねじ機構15および進退駆動モータ16とを有する。主軸20は、当接部材14で押されることで、先端側へ移動し、これによりフライス軸30の先端側から繰り出し(W軸移動)が可能である。一方、当接部材14を主軸20の端部から離隔させるとともに、先端などから逆向きの力を与えることで、主軸20はフライス軸30内に戻すことができる。
【0032】
このような工作機械1においては、テーブル3にワークを載置し、主軸20に加工に応じた工具を装着して加工を行う。
加工の際には、X軸移動機構5、Z軸移動機構6、およびコラム4に設置された図示しないY軸移動機構によりワークと工具との相対位置を制御し、駆動モータ11でフライス軸30を回転駆動することで、回転伝達機構12を介して回転力が主軸20に伝達され、主軸20に装着された工具を回転させてワークを加工する。
ワークの奥まった部分などに対しては、進退駆動装置13により主軸20をW軸方向へ進出させて(繰り出して)加工を行うことができる。
このような繰り出し状態(主軸20が進出した状態)において、フライス軸30と主軸20との振れを防止するために、フライス軸30の先端近傍で主軸20を拘束するクランプ装置40が設置されている。
【0033】
図3および図4において、クランプ装置40は、内リング41、外リング42、クランプピストン431、アンクランプピストン441を有し、これらはフライス軸30の先端側内周面に形成されたキャビティ400に収容されている。
【0034】
内リング41は、外周面が主軸20の先端側に向けて拡径する円錐面411とされた円筒状の部材であり、内リング41の内側には主軸20が挿通されている。
内リング41は、筒状部材401を介してキャビティ400の端部壁に当接されるとともに、キャビティ400を封止する蓋部材402から主軸20に沿って伸びる筒状部403に当接されることで、フライス軸30の中心軸線方向に対して位置を規制されている。
内リング41の内周面と主軸20の外周面との間には、僅かな間隔が形成されている。この間隔は、内リング41が外力で内向きに絞られた際に、内リング41と主軸20とが密着する程度の僅かな寸法とされている。
【0035】
外リング42は、内周面が主軸20の先端側に向けて拡径する円錐面421とされた円筒状の部材であり、内リング41の外側に同軸状に配置されている。
外リング42の内側の円錐面421は、内リング41の円錐面411に対向され、外リング42と内リング41とが主軸20に沿って相対変位することで嵌合可能である。
すなわち、外リング42を内リング41に対して主軸20の先端向きに変位させることで、互いの円錐面411,421が嵌合し、外リング42により内リング41を締め付けて主軸20をクランプ可能である。クランプ状態では、互いの円錐面411,421の摩擦力により、当該クランプ状態を維持可能である。
一方、外リング42を内リング41に対して主軸20の先端向きと逆向きに変位させることで、締め付け状態を解除(アンクランプ)し、この状態では主軸20の移動(W軸方向の繰り出し)が可能である。
【0036】
クランプピストン431は、キャビティ400と筒状部材401との間に配置された円筒状の部材である。クランプピストン431の外周面とキャビティ400の内周面、およびクランプピストン431の内周面と筒状部材401の外周面との間は、それぞれシール部材でシールされている。
【0037】
図5に示すように、クランプピストン431は、一端側が外リング42の主軸20の先端と反対側の端面に当接され、クランプピストン431の他端側に圧油を供給することで、外リング42を内リング41と嵌合する方向へ駆動可能である。これらのキャビティ400と筒状部材401との間の空間およびクランプピストン431により、クランプ装置40をクランプ状態とするためのクランプシリンダ43が形成されている。
【0038】
アンクランプピストン441は、キャビティ400と筒状部403との間に配置された円筒状の部材である。アンクランプピストン441の外周面とキャビティ400の内周面、およびアンクランプピストン441の内周面と筒状部403の外周面との間は、それぞれシール部材でシールされている。
【0039】
図6に示すように、アンクランプピストン441は、一端側が外リング42の主軸20の先端側の端面に当接され、アンクランプピストン441の他端側に圧油を供給することで、外リング42を内リング41との嵌合が解除される方向へ駆動可能である。これらのキャビティ400と筒状部403との間の空間およびアンクランプピストン441により、クランプ装置40のクランプ状態を解除する(アンクランプする)ためのアンクランプシリンダ44が形成されている。
【0040】
クランプ装置40においては、クランプシリンダ43に圧油を供給することで、外リング42を内リング41に対して主軸20の先端向きに変位させ、外リング42により内リング41を締め付けて主軸20をクランプ可能である。
一方、アンクランプシリンダ44に圧油を供給することで、外リング42を内リング41に対して主軸20の先端側と逆向きに変位させ、外リング42による内リング41の締め付けを解除し、主軸20をアンクランプ可能である。
【0041】
図3および図4に戻って、これらのクランプシリンダ43およびアンクランプシリンダ44への交互的な圧油供給を行うために、クランプシリンダ43はクランプ圧油ライン45を介して、アンクランプシリンダ44はアンクランプ圧油ライン46を介して、それぞれ圧油供給装置17に接続されている。
【0042】
圧油供給装置17は、主軸ヘッド本体10に設置されて、クランプ圧油ライン45およびアンクランプ圧油ライン46に圧油を交互に供給可能な油圧源であり、主軸20のセンタースルーホールを通して工具にクーラントを供給する既存の油圧源が利用できる。
圧油供給装置17は、立ち上がりの急なパルス状の圧油を供給可能であることが好ましい。
【0043】
クランプ圧油ライン45は、フライス軸30側に設置されるクランプシリンダ43と主軸ヘッド本体10に設置される圧油供給装置17とを接続するものであり、軸側クランプ管路451、軸側クランプカプラ452、ヘッド側クランプカプラ453、およびヘッド側クランプ管路454で構成される。
軸側クランプ管路451は、フライス軸30に穿孔された通路を連続させて形成され、クランプシリンダ43と軸側クランプカプラ452とを連通させている。
軸側クランプカプラ452は、フライス軸30の外周面に穿孔された凹部に嵌め込まれ、表面の一部がフライス軸30の外周面に露出した状態で保持されている。ただし、軸側クランプカプラ452はフライス軸30の外周面からは突出しない。
【0044】
ヘッド側クランプカプラ453は、主軸ヘッド本体10の軸側クランプカプラ452と対向可能な内周面に穿孔された凹部に移動可能に収容されている。フライス軸30が所定の操作角度位置で停止し、軸側クランプカプラ452がヘッド側クランプカプラ453に正対した状態(互いに真正面に位置合わせされて結合可能な状態)にあるとき、ヘッド側クランプカプラ453を軸側クランプカプラ452に向けて移動させることで、ヘッド側クランプカプラ453の先端部が主軸ヘッド本体10の内周面から突出し、軸側クランプカプラ452に液密状体で結合可能である。一方、ヘッド側クランプカプラ453を後退させることで、先端部が主軸ヘッド本体10の内周面から突出しない状態とされ、フライス軸30を主軸ヘッド本体10に対して回転させることが可能となる。
【0045】
ヘッド側クランプカプラ453の移動を行うために、主軸ヘッド本体10にはカプラ駆動装置47が設置されている。
カプラ駆動装置47は、例えば油圧シリンダで構成され、主軸ヘッド本体10に収容されたヘッド側クランプカプラ453を駆動し、フライス軸30に保持された軸側クランプカプラ452に向けて進出させ、あるいは逆向きに後退させることが可能である。
【0046】
ヘッド側クランプ管路454は、ヘッド側クランプカプラ453が収容された凹部に一端が接続され、この凹部を通してヘッド側クランプカプラ453に連通されるとともに、他端が圧油供給装置17に接続されている。
【0047】
以上のように、軸側クランプカプラ452およびヘッド側クランプカプラ453が結合された状態では、軸側クランプ管路451、軸側クランプカプラ452、ヘッド側クランプカプラ453、およびヘッド側クランプ管路454により一連のクランプ圧油ライン45が構成され、圧油供給装置17からの圧油をクランプシリンダ43まで供給可能である。一方、軸側クランプカプラ452およびヘッド側クランプカプラ453を分離し、ヘッド側クランプカプラ453を後退させた状態では、主軸20およびフライス軸30を主軸ヘッド本体10に対して回転させることが可能である。
【0048】
ところで、軸側クランプカプラ452およびヘッド側クランプカプラ453を分離した状態で、クランプシリンダ43ないし軸側クランプ管路451にあった圧油が軸側クランプカプラ452から漏出しないように、軸側クランプカプラ452には圧油の流路を閉鎖可能なバルブ455が設置されている。
バルブ455は、軸側クランプカプラ452の内部にボール状の弁体を配置し、軸側クランプ管路451内の油圧により流路を閉鎖する逆止弁とされている。ヘッド側クランプカプラ453には、ヘッド側クランプカプラ453と軸側クランプカプラ452とが結合された状態でバルブ455の弁体まで到達可能な図示しないプッシュロッドが設置されている。
【0049】
従って、ヘッド側クランプカプラ453と軸側クランプカプラ452とが結合された際には、バルブ455の弁体がプッシュロッドで押されて流路が開かれ、ヘッド側クランプカプラ453からクランプシリンダ43へと圧油が供給される。
一方、ヘッド側クランプカプラ453と軸側クランプカプラ452とが分離された際には、バルブ455により流路が閉鎖され、軸側クランプ管路451およびクランプシリンダ43からの圧油の漏出を防止できる。
【0050】
アンクランプ圧油ライン46は、フライス軸30側に設置されるアンクランプシリンダ44と主軸ヘッド本体10に設置される圧油供給装置17とを接続するものであり、軸側アンクランプ管路461、軸側アンクランプカプラ462、ヘッド側アンクランプカプラ463、ヘッド側クランプ管路464、およびバルブ465で構成されている。
これらは、それぞれクランプ圧油ライン45の軸側クランプ管路451、軸側クランプカプラ452、ヘッド側クランプカプラ453、ヘッド側クランプ管路454、およびバルブ455と同様に構成されており、重複する説明は省略する。
【0051】
以上のようなクランプ圧油ライン45およびアンクランプ圧油ライン46のうち、回転動作するフライス軸30に形成された部分、つまり軸側クランプ管路451、軸側クランプカプラ452、軸側アンクランプ管路461、および軸側アンクランプカプラ462は、それぞれフライス軸30の反対側に一対(それぞれ回転中心軸線に対して対称に)設置されている。
なお、反対側に一対の構成のうち一方は、実際に圧油が通らないダミーであってもよく、あるいは反対側の構成との重量バランス(フライス軸30の回転中心軸線に対する対称性)を確保するためのバランス調整用ウエイトなどであってもよい。
【0052】
〔第1実施形態の動作〕
本実施形態の工作機械1においては、図7に示す手順で動作を行う。
工作機械1による加工を行う際には、クランプ装置40によりフライス軸30の先端で主軸20をクランプする。
アンクランプ状態(図6の状態)では、内リング41と外リング42とは嵌合しておらず、主軸20に対する締め付け力は解除されている。この状態で、クランプ準備動作(処理S1)およびクランプ動作(処理S2)を順次行うことで、主軸20はクランプ状態(図5の状態)とされる。
【0053】
クランプ準備動作(処理S1)では、フライス軸30を回転させて所定の操作角度位置に停止させる。操作角度位置では、軸側クランプカプラ452とヘッド側クランプカプラ453と、および軸側アンクランプカプラ462とヘッド側アンクランプカプラ463とが、それぞれ正対した状態となる。
この状態で、カプラ駆動装置47により、主軸ヘッド本体10側のヘッド側クランプカプラ453およびヘッド側アンクランプカプラ463を進出させ、それぞれフライス軸30側の軸側クランプカプラ452および軸側アンクランプカプラ462に結合させる。
【0054】
クランプ準備動作(処理S1)により、クランプ側およびアンクランプ側の各カプラが結合した状態となったら、クランプ動作(処理S2)を行う。
クランプ動作(処理S2)では、圧油供給装置17からクランプ圧油ライン45を通してクランプシリンダ43に、立ち上がりの急なパルス状の圧油を供給する。この圧油により、クランプピストン431が外リング42にインパクトをもって当接し、外リング42と内リング41とが強固に嵌合される(図5参照)。その結果、アンクランプ状態にあったクランプ装置40はクランプ状態となる。
【0055】
クランプ状態になったら、カプラ駆動装置47により、主軸ヘッド本体10側のヘッド側クランプカプラ453およびヘッド側アンクランプカプラ463を後退させ、それぞれフライス軸30側の軸側クランプカプラ452および軸側アンクランプカプラ462から分離する。これにより、フライス軸30は主軸ヘッド本体10に対して回転可能な状態に戻る。
【0056】
クランプ状態で主軸20およびフライス軸30が回転可能な状態になったら、駆動モータ11でフライス軸30および主軸20を回転させ、ワークに対して所望の加工動作を行う(処理S3)。
一連の加工が済んだら、フライス軸30および主軸20を停止させた状態で、オペレータまたは自動制御装置が、主軸20のW軸移動(繰り出しあるいは戻し)が必要かを判定する(処理S4)。
W軸移動が必要でなければ、加工動作(処理S3)およびW軸移動の判定(処理S4)を繰り返す。
【0057】
W軸移動が必要なら、クランプ装置40による主軸20のクランプを解除するために、アンクランプ準備動作(処理S5)およびアンクランプ動作(処理S6)を順次行う。
アンクランプ準備動作(処理S5)では、フライス軸30を所定の操作角度位置で停止させる。操作角度位置では、軸側クランプカプラ452とヘッド側クランプカプラ453と、および軸側アンクランプカプラ462とヘッド側アンクランプカプラ463とが、それぞれ正対した状態となる。
この状態で、カプラ駆動装置47により、主軸ヘッド本体10側のヘッド側クランプカプラ453およびヘッド側アンクランプカプラ463を進出させ、それぞれフライス軸30側の軸側クランプカプラ452および軸側アンクランプカプラ462に結合させる。
本実施形態では、クランプ側およびアンクランプ側のカプラを共に操作するため、アンクランプ準備動作(処理S5)とクランプ準備動作(処理S1)とは同じ内容である。
【0058】
アンクランプ準備動作(処理S5)により、クランプ側およびアンクランプ側の各カプラが結合した状態となったら、アンクランプ動作(処理S6)を行う。
アンクランプ動作(処理S6)では、圧油供給装置17からアンクランプ圧油ライン46を通してアンクランプシリンダ44に、立ち上がりの急なパルス状の圧油を供給する。この圧油により、アンクランプピストン441が外リング42にインパクトをもって当接し、外リング42と内リング41との嵌合が確実に解除される(図6参照)。その結果、クランプ状態にあったクランプ装置40はアンクランプ状態となる。
【0059】
アンクランプ状態になったら、カプラ駆動装置47により、主軸ヘッド本体10側のヘッド側クランプカプラ453およびヘッド側アンクランプカプラ463を後退させ、それぞれフライス軸30側の軸側クランプカプラ452および軸側アンクランプカプラ462から分離する。これにより、フライス軸30は主軸ヘッド本体10に対して回転可能な状態に戻る。
アンクランプ状態においては、進退駆動装置13で主軸20を進出または後退させることで、主軸20を所望のW軸位置に設定する(処理S7)。
【0060】
主軸20のW軸移動が済んだら、前述したクランプ準備動作(処理S1)およびクランプ動作(処理S2)により、クランプ装置40で主軸20をクランプすることで、加工動作(処理S3)を再開することができる。
【0061】
〔第1実施形態の効果〕
本実施形態では、駆動モータ11でフライス軸30を回転駆動することで、回転伝達機構12ないし主軸20までが回転駆動され、主軸20の先端に装着された工具によってワークを加工することができる。
加工にあたって、進退駆動装置13で主軸20を進退させることで、フライス軸30からの主軸20ないし工具の繰り出し長さを調整することができる。フライス軸30から主軸20を繰り出した場合でも、クランプ装置40で主軸20をクランプすることで、工具の振れを抑制できる。
【0062】
本実施形態においては、クランプ動作およびアンクランプ動作の際に、それぞれクランプシリンダ43またはアンクランプシリンダ44に圧油を供給し、クランプ動作およびアンクランプ動作の際以外は圧油の供給を停止することができる。つまり、本実施形態では、従来のようなアンクランプ状態での継続的な圧油供給を解消することができる。
さらに、クランプ動作の際のクランプシリンダ43への圧油、およびアンクランプ動作におけるアンクランプシリンダ44への圧油は、それぞれ任意に設定することができ、必要に応じてクランプ状態での主軸20に対するクランプ力を高めることができる。従って、ワークに対する加工能力を高めるために、クランプ装置40のクランプ力を更に強化することができる。
本実施形態では、送り込む圧油を、立ち上がりの急なパルス状とすることで、クランプ動作およびアンクランプ動作において外リング42にインパクトを与えることができ、クランプ動作時には内リング41との嵌合を強固にできるとともに、アンクランプ動作時には嵌合の解除を確実にできる。
【0063】
本実施形態では、クランプ動作の際の圧油の供給にヘッド側クランプカプラ453と軸側クランプカプラ452とを用い、アンクランプ動作の際の圧油の供給にヘッド側アンクランプカプラ463と軸側アンクランプカプラ462とを用いるようにした。このため、従来のような、フライス軸30と主軸ヘッド本体10との間での圧油の漏れ出しを防止できる。
そして、フライス軸30と主軸ヘッド本体10との間の油漏れが防止できるため、ヘッド側クランプカプラ453と軸側クランプカプラ452、およびヘッド側アンクランプカプラ463と軸側アンクランプカプラ462は、それぞれクランプ装置40の他の部分(内リング41および外リング42、クランプシリンダ43およびアンクランプシリンダ44)とともに、フライス軸30の先端近傍に設置することができる。その結果、従来のような軸方向に延びる長い油圧通路などが必要なく、ガンドリル加工のような特殊な加工を解消することができる。従って、本実施形態によれば、製造作業を容易にし、製造コストを低減することができる。
【0064】
本実施形態では、主軸ヘッド本体10にカプラ駆動装置47を設け、ヘッド側クランプカプラ453およびヘッド側アンクランプカプラ463を、それぞれ主軸ヘッド本体10のフライス軸30を収容する部位の内周面からフライス軸30に向けて進退させるようにした。
このため、クランプ装置40において、クランプ動作の際およびアンクランプ動作の際には、カプラ駆動装置47でヘッド側クランプカプラ453およびヘッド側アンクランプカプラ463を進出させることで、軸側クランプカプラ452および軸側アンクランプカプラ462に結合させることができる。一方、加工動作の際には、クランプ動作およびアンクランプ動作を行わないため、カプラ駆動装置47でヘッド側クランプカプラ453およびヘッド側アンクランプカプラ463を後退させておくことができる。これにより、フライス軸30が主軸ヘッド本体10に対して回転する際に、カプラどうしの干渉などが生じることを防止でき、円滑な動作を行うことができる。
【0065】
本実施形態では、軸側クランプカプラ452にバルブ455を設け、ヘッド側クランプカプラ453との結合が解除された状態で圧油の流通を遮断できるようにした。
このため、ヘッド側クランプカプラ453との結合が解除された際に、軸側クランプカプラ452がバルブ455で閉鎖され、軸側クランプ管路451を通してクランプシリンダ43の圧油が流出することを防止できる。このため、クランプ装置40におけるクランプ状態は、円錐面411,421(リング状のテーパ)の摩擦力に加えて、圧油が残されたクランプシリンダ43によって確実に保持できる。
【0066】
本実施形態では、内リング41および外リング42が互いに嵌合する円錐面411,421は、フライス軸30の先端側に向けて拡径した形状とした。
このため、加工時にワークから工具への反力が生じ、主軸20が先端側から反対側に向けて付勢された際に、フライス軸30の先端側に向けて拡径した円錐面411,421によって内リング41が外リング42に押込まれ、嵌合が補強されることになる。その結果、クランプ装置40による主軸20のクランプ力を補強することができる。
【0067】
本実施形態では、内リング41は、内周面が主軸20の外周面に接触可能に配置され、かつフライス軸30に対して中心軸線方向に位置規制されており、外リング42は、クランプシリンダ43およびアンクランプシリンダ44で駆動可能な構造とした。
つまり、クランプ動作時およびアンクランプ動作時に、クランプシリンダ43またはアンクランプシリンダ44で外リング42が駆動され、内リング41に対して嵌合または解除されるようにした。
このため、内リング41は、外リング42との嵌合時に内周面が主軸20の外周面に接触することで、強いクランプ力が得られる。さらに、内リング41は、中心軸線方向に位置規制されているため、クランプ動作時およびアンクランプ動作時に主軸20の中心軸線方向位置のずれを防止できる。
【0068】
本実施形態では、クランプ圧油ライン45およびアンクランプ圧油ライン46のうち、回転動作するフライス軸30に形成された部分、つまり軸側クランプ管路451、軸側クランプカプラ452、軸側アンクランプ管路461、および軸側アンクランプカプラ462は、それぞれフライス軸30の反対側に一対(それぞれ回転中心軸線に対して対称に)設置した。
このため、フライス軸30は回転中心軸線まわりの重量バランスが対称とされ、回転に伴う不要な振動などを防止できる。
また、一対の軸側クランプ管路451、軸側クランプカプラ452、軸側アンクランプ管路461、および軸側アンクランプカプラ462は、それぞれヘッド側クランプカプラ453およびヘッド側アンクランプカプラ463と結合可能であり、本実施形態のフライス軸30は180度離れた2位置を操作角度位置とすることができる。
【0069】
〔第2実施形態〕
図8には、本発明の第2実施形態が示されている。
本実施形態のクランプ装置50は、前述した第1実施形態の工作機械1(図1参照)に設置され、主軸20をフライス軸30にクランプするものである。
本実施形態において、クランプ装置50の基本的な機能は前述した第1実施形態のクランプ装置40と同様である。このため、共通の構成(クランプ圧油ライン45およびアンクランプ圧油ライン46ほか)については同じ符号を用いて重複する説明は省略し、以下には第1実施形態と異なる部分について説明する。
【0070】
図8において、クランプ装置50は、内リング51、外リング52、クランプピストン531、アンクランプピストン541を有する。
このうち、内リング51、クランプピストン531、アンクランプピストン541は、フライス軸30の先端側内周面に形成されたキャビティ500に収容されている。外リング52は、キャビティ500の内周面に形成された段差部により形成され、フライス軸30と一体になっている。
【0071】
キャビティ500には、フライス軸30の先端側と反対側に筒状部材501が設置されている。筒状部材501は、主軸20の外周面に沿って配置され、キャビティ500の内周面と筒状部材501の外周面との間には所定の間隔が形成されている。
キャビティ500は、フライス軸30の先端側を蓋部材502で封止されている。
蓋部材502は、フライス軸30の先端側を封止する部分から主軸20の外周面に沿って伸びる第1筒状部503および第2筒状部504(スリーブ)を有する。
第1筒状部503は、第2筒状部504よりも厚みが大きく、第1筒状部503とキャビティ500の内周面(外リング52に相当する段差部よりも先端側)との間には所定の間隔が形成されている。
第2筒状部504(スリーブ)は、第1筒状部503よりも厚みが薄く、第2筒状部504とキャビティ500の内周面(外リング52に相当する部分)との間には所定の間隔が形成されている。
第2筒状部504は、筒状部材501と接続されており、キャビティ500は、フライス軸30の内側の主軸20が収容される空間とは遮断されている。
【0072】
内リング51は、外周面が主軸20の先端側に向けて拡径する円錐面511とされた円筒状の部材であり、内リング51の内側には第2筒状部504が挿通され、内リング51は第2筒状部504に沿ってフライス軸30の回転軸線方向へ変位可能である。
内リング51の内周面と第2筒状部504の外周面と、および第2筒状部504の内周面と主軸20の外周面との間には、それぞれ僅かな間隔が形成されている。この間隔は、内リング51が外力で内向きに絞られた際に、内リング51と第2筒状部504、および第2筒状部504と主軸20とが、それぞれ密着する程度の僅かな寸法とされている。
【0073】
外リング52は、キャビティ500の段差部となるフライス軸30に、内周面が主軸20の先端側に向けて拡径する円錐面521を加工して形成され、内側には内リング51が同軸状に配置される。
外リング52の内側の円錐面521は、内リング51の円錐面511に対向され、外リング52と内リング51とが主軸20に沿って相対変位することで嵌合可能である。
前述した第1実施形態では、外リング42を内リング41に対して変位させることで、相互の嵌合および解除がなされていたが、本実施形態では外リング52がフライス軸30に固定されており、内リング51を変位させることで嵌合および解除を行う。
【0074】
すなわち、内リング51を外リング52に対して主軸20の先端向きに変位させることで、互いの円錐面511,521が嵌合し、外リング52により内リング51を締め付けて主軸20をクランプ可能である。クランプ状態では、互いの円錐面511,521の摩擦力により、当該クランプ状態を維持可能である。
一方、内リング51を外リング52に対して主軸20の先端向きと逆向きに変位させることで、締め付け状態を解除(アンクランプ)し、この状態では主軸20の移動(W軸方向の繰り出し)が可能である。
【0075】
クランプピストン531は、キャビティ500と第1筒状部503との間に配置された円筒状の部材である。クランプピストン531の外周面とキャビティ500の内周面、およびクランプピストン531の内周面と第1筒状部503の外周面との間は、それぞれシール部材でシールされている。
【0076】
クランプピストン531は、一端側が内リング51の主軸20の先端側の端面に当接され、クランプピストン531の他端側に圧油を供給することで、内リング51を外リング52と嵌合する方向へ駆動可能である。これらのキャビティ500と第1筒状部503との間の空間およびクランプピストン531により、クランプ装置50をクランプ状態とするためのクランプシリンダ53が形成されている。
【0077】
アンクランプピストン541は、キャビティ500と筒状部材501との間に配置された円筒状の部材である。アンクランプピストン541の外周面とキャビティ500の内周面、およびアンクランプピストン541の内周面と筒状部材501の外周面との間は、それぞれシール部材でシールされている。
【0078】
アンクランプピストン541は、一端側が内リング51の主軸20の先端と反対側の端面に当接され、アンクランプピストン541の他端側に圧油を供給することで、内リング51を外リング52との嵌合が解除される方向へ駆動可能である。これらのキャビティ500と筒状部材501との間の空間およびアンクランプピストン541により、クランプ装置50のクランプ状態を解除する(アンクランプする)ためのアンクランプシリンダ54が形成されている。
【0079】
クランプ装置50においては、クランプシリンダ53に圧油を供給することで、内リング51を外リング52に対して主軸20の先端側と逆向きに変位させ、外リング52により内リング51を締め付けて第2筒状部504を介して主軸20をクランプ可能である。
一方、アンクランプシリンダ54に圧油を供給することで、内リング51を外リング52に対して主軸20の先端側向きに変位させ、外リング52による内リング51の締め付けを解除し、主軸20をアンクランプ可能である。
【0080】
これらのクランプシリンダ53およびアンクランプシリンダ54への交互的な圧油供給を行うために、クランプシリンダ53はクランプ圧油ライン45を介して、アンクランプシリンダ54はアンクランプ圧油ライン46を介して、それぞれ圧油供給装置17に接続されている。
本実施形態において、クランプ圧油ライン45、アンクランプ圧油ライン46、および圧油供給装置17は、前述した第1実施形態と同じものである。
【0081】
本実施形態においては、前述した第1実施形態と同様な動作により、第1実施形態と同様な効果を得ることができる。
さらに、内リング51は、外リング52との嵌合時に内周面がスリーブ(第2筒状部504)を介して主軸20の外周面に押し付けられることで、十分なクランプ力が得られる。
内リング51と主軸20との間のスリーブ(第2筒状部504)は、フライス軸30の中心軸線方向に位置規制されているため、クランプ動作時およびアンクランプ動作時に主軸20の中心軸線方向位置のずれを防止できる。
外リング52は、フライス軸30の内周面に一体的に形成されるとともに、クランプシリンダ53またはアンクランプシリンダ54が内リング51を駆動するため、フライス軸30に形成されるクランプ装置50としての厚みを小さくすることができる。
【0082】
〔他の実施形態〕
前述した第1実施形態では、内リング41を独立させ、筒状部材401と蓋部材402の筒状部403とで挟み込んで固定したが、内リング41と筒状部材401とを一体とし、または、内リング41と筒状部403とを一体に形成してもよい。
前述した第2実施形態では、フライス軸30に直接円錐面521を形成することで外リング52をフライス軸30と一体に形成したが、円錐面521を有する別体の外リング52をフライス軸30に固定して一体化してもよい。
【0083】
前述した各実施形態では、カプラ駆動装置47によりヘッド側クランプカプラ453およびヘッド側アンクランプカプラ463の双方を同時に移動させたが、ヘッド側クランプカプラ453およびヘッド側アンクランプカプラ463は必要な側のみを移動させるようにしてもよい。
すなわち、クランプ動作の際には、ヘッド側クランプカプラ453と軸側クランプカプラ452とが結合されていればよく、ヘッド側クランプカプラ453のみを移動させればよい。また、アンクランプ動作の際には、ヘッド側アンクランプカプラ463と軸側アンクランプカプラ462とが結合されていればよく、ヘッド側アンクランプカプラ463のみを移動させればよい。
【0084】
前述した各実施形態では、圧油供給装置17からクランプシリンダ43,53およびアンクランプシリンダ44,54に、立ち上がりの急なパルス状を供給したが、立ち上がりの緩やかな圧油供給としてもよい。ただし、パルス状の圧油にすることで、駆動する外リング42(または内リング51)にインパクトが与えられ、クランプ時には円錐面411,421あるいは円錐面511,521での嵌合が強固に行われ、クランプ状態の保持性能を高めることができる。また、アンクランプ時には、円錐面411,421あるいは円錐面511,521での嵌合が強固であっても確実に解除させることができる。
【0085】
前述した各実施形態では、軸側クランプカプラ452にバルブ455を設けてクランプ動作における圧油保持に用いたが、バルブ455は逆止弁に限らず、ヘッド側クランプカプラ453との結合により機械的に開かれるバルブであってもよい。さらに、軸側クランプカプラ452にバルブ455を設置することが必須ではなく、省略してもよい。
【0086】
前述した各実施形態において、円錐面411,421,511,521は、それぞれフライス軸30の先端側に向けて拡径した形状としたが、これは逆向きであってもよい。
ただし、各実施形態の向きとすることで、加工時にワークから工具への反力が生じ、主軸20が先端側から反対側に向けて付勢された際に、フライス軸30の先端側に向けて拡径した円錐面411,421,511,521によって内リング41,51が外リング42,52に押込まれ、嵌合が補強されることになる。その結果、クランプ装置40,50による主軸20のクランプ力を補強することができるので好ましい。
前述した各実施形態では、内リング41,51および外リング42,52を一組ずつ設置したが、これらの組を複数設置してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明は主軸繰り出し方式の工作機械に利用できる。
【符号の説明】
【0088】
1…工作機械、2…ベッド、3…テーブル、4…コラム、5…X軸移動機構、6…Z軸移動機構、10…主軸ヘッド本体、11…駆動モータ、12…回転伝達機構、13…進退駆動装置、14…当接部材、15…送りねじ機構、16…進退駆動モータ、17…圧油供給装置、20…主軸、21…チャック、22…キー溝、30…フライス軸、31,32…軸受、33…キー部材、40…クランプ装置、400…キャビティ、401…筒状部材、402…蓋部材、403…筒状部、41…内リング、411…円錐面、42…外リング、421…円錐面、43…クランプシリンダ、431…クランプピストン、44…アンクランプシリンダ、441…アンクランプピストン、45…クランプ圧油ライン、451…軸側クランプ管路、452…軸側クランプカプラ、453…ヘッド側クランプカプラ、454…ヘッド側クランプ管路、455…バルブ、46…アンクランプ圧油ライン、461…軸側アンクランプ管路、462…軸側アンクランプカプラ、463…ヘッド側アンクランプカプラ、464…ヘッド側クランプ管路、465…バルブ、47…カプラ駆動装置、50…クランプ装置、500…キャビティ、501…筒状部材、502…蓋部材、503…第1筒状部、504…第2筒状部(スリーブ)、51…内リング、511…円錐面、52…外リング、521…円錐面、53…クランプシリンダ、531…クランプピストン、54…アンクランプシリンダ、541…アンクランプピストン。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8