(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-15
(45)【発行日】2022-06-23
(54)【発明の名称】光ファイバ、レーザ生成装置、レーザ加工装置、及び光ファイバの製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 6/036 20060101AFI20220616BHJP
G02B 6/02 20060101ALI20220616BHJP
H01S 3/00 20060101ALI20220616BHJP
H01S 3/10 20060101ALI20220616BHJP
B23K 26/00 20140101ALI20220616BHJP
B23K 26/064 20140101ALI20220616BHJP
【FI】
G02B6/036
G02B6/02 B
G02B6/02 411
G02B6/02 356A
G02B6/02 376B
H01S3/00 B
H01S3/10 Z
B23K26/00 P
B23K26/064 K
(21)【出願番号】P 2019163375
(22)【出願日】2019-09-06
【審査請求日】2020-04-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100109896
【氏名又は名称】森 友宏
(72)【発明者】
【氏名】島 研介
【審査官】奥村 政人
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-210602(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0013571(US,A1)
【文献】国際公開第2018/063452(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/102138(WO,A1)
【文献】特開2013-178497(JP,A)
【文献】特開2019-040131(JP,A)
【文献】特開平11-084150(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/02- 6/036
G02B 6/44
B23K 26/00-26/42
H01S 3/00- 4/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心コアと、
前記中心コアの半径方向外側に位置する内側リング層であって、前記中心コアの屈折率よりも低い屈折率を有する内側リング層と、
前記内側リング層の半径方向外側
で前記内側リング層を囲むリング状の1以上の外側コアであって、前記内側リング層の屈折率よりも高い屈折率を有する外側コアと、
前記1以上の外側コアの半径方向外側に位置する1以上の外側リング層であって、前記1以上の外側コアの屈折率よりも低い屈折率を有する1以上の外側リング層と
を備える1本の長手方向に連続する光ファイバであって、
前記中心コアと前記内側リング層との間の比屈折率差Δ
CFは、長手方向に沿って変化し、その両端部の間の少なくとも1つの位置において、前記1以上の外側コアと該外側コアの半径方向外側に隣接する外側リング層との間の比屈折率差Δ
PFよりも小さくなっており、
前記少なくとも1つの位置における前記比屈折率差Δ
CFは、前記少なくとも1つの位置の上流側の前記中心コアを伝搬する光の一部を前記少なくとも1つの位置の下流側の前記外側コアに導きやすくするように、前記少なくとも1つの位置の上流側の位置における前記中心コアと前記内側リング層との間の比屈折率差Δ
C1及び前記少なくとも1つの位置の下流側の位置における前記中心コアと前記内側リング層との間の比屈折率差Δ
C2に比べて部分的に小さくなっている、
光ファイバ。
【請求項2】
前記内側リング層の厚さは、前記1以上の外側リング層の厚さよりも薄い、請求項1に記載の光ファイバ。
【請求項3】
前記1以上の外側コアは、複数の外側コアを含み、
前記1以上の外側リング層は、前記1以上の外側コアと同数の複数の外側リング層を含む、請求項1又は2に記載の光ファイバ。
【請求項4】
前記少なくとも1つの位置において、前記複数の外側コアと該外側コアの半径方向外側に隣接する外側リング層との間の比屈折率差Δ
PFnは、半径方向外側に向かうにつれ次第に大きくなる、請求項3に記載の光ファイバ。
【請求項5】
前記少なくとも1つの位置において曲げられる、請求項1から4のいずれか一項に記載の光ファイバ。
【請求項6】
前記少なくとも1つの位置は、前記長手方向に沿った複数の位置を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の光ファイバ。
【請求項7】
前記少なくとも1つの位置の上流側の位置における屈折率分布は、前記少なくとも1つの位置の下流側の位置における屈折率分布と同一である、請求項1から6のいずれか一項に記載の光ファイバ。
【請求項8】
レーザ光を生成する少なくとも1つのレーザ光源と、
請求項1から7のいずれか一項に記載された光ファイバであって、前記少なくとも1つのレーザ光源からの前記レーザ光が前記中心コアに導入されるように前記少なくとも1つのレーザ光源の下流側に接続される光ファイバと、
前記光ファイバを前記少なくとも1つの位置において曲げるように構成されるファイバ曲げ部と
を備える、
レーザ生成装置。
【請求項9】
前記ファイバ曲げ部は、前記光ファイバの曲げ径を調整可能に構成される、請求項8に記載のレーザ生成装置。
【請求項10】
請求項8又は9に記載のレーザ生成装置と、
前記レーザ生成装置から出力されるレーザ光を加工対象物に向けて照射するレーザ照射部と、
を備えるレーザ加工装置。
【請求項11】
前記加工対象物の加工状態を検出するプロセスモニタと、
前記プロセスモニタからの出力に応じて前記レーザ生成装置の前記ファイバ曲げ部における前記光ファイバの曲率を調整する制御部と
を備える、請求項10に記載のレーザ加工装置。
【請求項12】
中心コアと、前記中心コアの半径方向外側に位置する内側リング層であって、屈折率を低下させる性質を有するドーパントを含み、前記中心コアの屈折率よりも低い屈折率を有する内側リング層と、前記内側リング層の半径方向外側
で前記内側リング層を囲むリング状の1以上の外側コアであって、前記内側リング層の屈折率よりも高い屈折率を有する外側コアと、前記1以上の外側コアの半径方向外側に位置する1以上の外側リング層であって、該外側リング層の半径方向内側に隣接する前記外側コアの屈折率よりも低い屈折率を有する1以上の外側リング層とを含む1本の長手方向に連続する基材光ファイバを用意し、
前記基材光ファイバの両端部の間の少なくとも1箇所を加熱して、前記内側リング層中の前記ドーパントを拡散させて、前記中心コアと前記内側リング層との間の比屈折率差Δ
CFを、前記1以上の外側コアと該外側コアの半径方向外側に隣接する外側リング層との間の比屈折率差Δ
PFよりも小さくするとともに、長手方向において前記少なくとも1箇所の両側の位置における前記中心コアと前記内側リング層との間の比屈折率差よりも部分的に小さくする、
光ファイバの製造方法。
【請求項13】
前記ドーパントはフッ素である、請求項12に記載の光ファイバの製造方法。
【請求項14】
屈折率を上昇させる性質を有するドーパントを含む中心コアと、前記中心コアの半径方向外側に位置する内側リング層
であって、前記中心コアの屈折率よりも低い屈折率を有する内側リング層と、前記内側リング層の半径方向外側
で前記内側リング層を囲むリング状の1以上の外側コアであって、前記内側リング層の屈折率よりも高い屈折率を有する外側コアと、前記1以上の外側コアの半径方向外側に位置する1以上の外側リング層であって、該外側リング層の半径方向内側に隣接する前記外側コアの屈折率よりも低い屈折率を有する1以上の外側リング層とを含む1本の長手方向に連続する基材光ファイバを用意し、
前記基材光ファイバの両端部の間の少なくとも1箇所を加熱して、前記中心コア中の前記ドーパントを拡散させて、前記中心コアと前記内側リング層との間の比屈折率差Δ
CFを、前記1以上の外側コアと該外側コアの半径方向外側に隣接する外側リング層との間の比屈折率差Δ
PFよりも小さくするとともに、長手方向において前記少なくとも1箇所の両側の位置における前記中心コアと前記内側リング層との間の比屈折率差よりも部分的に小さくする、
光ファイバの製造方法。
【請求項15】
前記ドーパントはゲルマニウムである、請求項14に記載の光ファイバの製造方法。
【請求項16】
前記少なくとも1箇
所を加熱する前の前記基材光ファイバにおいて、前記1以上の外側コアと該外側コアの半径方向外側に隣接する外側リング層との間の比屈折率差は、前記中心コアと前記内側リング層との間の比屈折率差以上である、請求項12から15のいずれか一項に記載の光ファイバの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ、レーザ生成装置、レーザ加工装置、及び光ファイバの製造方法に係り、特にレーザ光の光学的特性を調整するために用いられる光ファイバに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ファイバレーザ装置は、従来のレーザ装置と比較すると集光性が高く、取り回しのよい光ファイバを利用できることから、マーキングや材料加工など様々な分野で急速に普及してきている。例えば、ファイバレーザ装置を用いて金属加工を行う場合には、加工対象物に高パワーのレーザ光を照射して加工対象物を加熱及び溶融し、溶接や切断などの加工が行われる。このようなレーザ加工においては、加工速度や加工品質などの加工性能を向上する上で、照射するレーザ光の光学的特性を加工対象物の材料に応じて変更することが重要である。
【0003】
このようにレーザ光の光学的特性を加工対象物の材料に応じて変更するために、光ファイバに複数の光導波層を形成し、それぞれの光導波層から出力されるレーザ光のパワーの比を調整する技術が知られている。例えば、レーザ光を出射する光ファイバと複数の光導波層を有する光ファイバとの間に楔状のガラス部材を抜き差しすることで特定の光導波層にレーザ光を選択的に導入する技術(例えば特許文献1参照)や光ファイバから出射されたレーザ光をレンズによって偏向させて下流側の光ファイバの特定の光導波層に導く技術(例えば特許文献2参照)などが知られている。
【0004】
しかしながら、このような従来の手法では、上流側の光ファイバと下流側の光ファイバとの間にガラス部材やレンズを配置しているため、構成が複雑になり易い。また、上流側の光ファイバから一旦レーザ光を出射した後に、ガラス部材やレンズによってレーザ光の光路を変更するものであるため、ガラス部材やレンズの位置や向きのわずかな変化によって、下流側の光ファイバにレーザ光が入射する位置が大きく変化してしまう。このため、レーザ光を下流側の光ファイバの所望の光導波層に正確に導くことが難しい。さらに、下流側の光ファイバの端面や光ファイバに付着した異物へのレーザ光の照射により発熱が生じ、下流側の光ファイバの損傷を引き起こす可能性もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6244308号明細書
【文献】国際公開第2011/124671号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、簡単に所望の光学的特性を有する光を低損失で出力すること可能な光ファイバを提供することを第1の目的とする。
【0007】
また、本発明は、簡単に所望の光学的特性を有するレーザ光を低損失で出力すること可能なレーザ生成装置を提供することを第2の目的とする。
【0008】
さらに、本発明は、加工対象物に応じた高品質の加工が可能なレーザ加工装置を提供することを第3の目的とする。
【0009】
また、本発明は、所望の光学的特性を有する光を低損失で出力することが可能な光ファイバを容易に製造することができる方法を提供することを第4の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様によれば、簡単に所望の光学的特性を有する光を低損失で出力すること可能な光ファイバが提供される。この光ファイバは、中心コアと、上記中心コアの半径方向外側に位置する内側リング層と、上記内側リング層の半径方向外側に位置する1以上の外側コアと、上記1以上の外側コアの半径方向外側で前記内側リング層を囲むリング状の1以上の外側リング層とを備える1本の長手方向に連続する光ファイバにより構成される。上記内側リング層は、上記中心コアの屈折率よりも低い屈折率を有する。上記外側コアは、上記内側リング層の屈折率よりも高い屈折率を有する。上記外側リング層は、上記1以上の外側コアの屈折率よりも低い屈折率を有する。上記中心コアと上記内側リング層との間の比屈折率差ΔCFは、長手方向に沿って変化し、その両端部の間の少なくとも1つの位置において、上記1以上の外側コアと該外側コアの半径方向外側に隣接する外側リング層との間の比屈折率差ΔPFよりも小さくなっており、上記少なくとも1つの位置における上記比屈折率差ΔCFは、上記少なくとも1つの位置の上流側の上記中心コアを伝搬する光の一部を上記少なくとも1つの位置の下流側の上記外側コアに導きやすくするように、上記少なくとも1つの位置の上流側の位置における上記中心コアと上記内側リング層との間の比屈折率差ΔC1及び上記少なくとも1つの位置の下流側の位置における上記中心コアと上記内側リング層との間の比屈折率差ΔC2に比べて部分的に小さくなっている。
【0011】
このような構成によれば、長手方向に沿った少なくとも1つの位置において、中心コアにおける光の閉じ込め効果が弱くなるため、この位置で光ファイバを曲げることで、中心コアを伝搬する光を中心コアから外側コアに漏洩させることができる。したがって、光ファイバの曲げ径を適切に調整することで、中心コアを伝搬する光の光量と外側コアを伝搬する光の光量とを所望の割合に調整して、簡単に所望の光学的特性を有する光を低損失で出力することが可能となる。上記少なくとも1つの位置における上記比屈折率差Δ
CF
は、上記少なくとも1つの位置の上流側の位置における上記中心コアと上記内側リング層との間の比屈折率差Δ
C1
よりも小さい。このため、上記少なくとも1つの位置の上流側では、中心コアから光が漏洩しにくくなる。また、上記少なくとも1つの位置における上記比屈折率差Δ
CF
は、上記少なくとも1つの位置の下流側の位置における上記中心コアと上記内側リング層との間の比屈折率差Δ
C2
よりも小さい。このため、上記少なくとも1つの位置の下流側では、中心コアと外側コアに分けられた光が他方のコアに漏洩しにくくなる。
【0012】
より効果的に比屈折率差ΔCFを比屈折率差ΔPFよりも小さくするために、上記内側リング層の厚さが、上記1以上の外側リング層の厚さよりも薄いことが好ましい。
【0013】
上記1以上の外側コアは、複数の外側コアを含み、上記1以上の外側リング層は、上記1以上の外側コアと同数の複数の外側リング層を含んでいてもよい。この場合には、中心コアを伝搬する光を中心コアと複数の外側コアに分けて伝搬させることできるので、出力される光の光学的特性をより細かく制御することが可能となる。
【0014】
この場合において、上記少なくとも1つの位置において、上記複数の外側コアと該外側コアの半径方向外側に隣接する外側リング層との間の比屈折率差ΔPFnは、半径方向外側に向かうにつれ次第に大きくなることが好ましい。このようにすることで、光ファイバの曲げ径が小さくなるに従って、中心コアを伝搬する光が半径方向のより外側に漏洩し易くなるため、光ファイバの曲げ径を調整することにより出力される光の光学的特性を制御し易くなる。
【0015】
上述したように、上記光ファイバを上記少なくとも1つの位置において曲げてもよい。また、上記少なくとも1つの位置は、上記長手方向に沿った複数の位置を含んでいてもよい。
【0016】
上記少なくとも1つの位置の上流側の位置における屈折率分布は、上記少なくとも1つの位置の下流側の位置における屈折率分布と同一であることが好ましい。
【0018】
本発明の第2の態様によれば、簡単に所望の光学的特性を有するレーザ光を低損失で出力すること可能なレーザ生成装置が提供される。このレーザ生成装置は、レーザ光を生成する少なくとも1つのレーザ光源と、上述した光ファイバと、上記光ファイバを上記少なくとも1つの位置において曲げるように構成されるファイバ曲げ部とを備える。上記光ファイバは、上記少なくとも1つのレーザ光源からの上記レーザ光が上記中心コアに導入されるように上記レーザ光源の下流側に接続される。
【0019】
このような構成によれば、ファイバ曲げ部において光ファイバを曲げることで、光ファイバの中心コアを伝搬するレーザ光源からのレーザ光を中心コアから外側コアに漏洩させることができる。したがって、ファイバ曲げ部において光ファイバの曲げ径を適切に調整することで、中心コアを伝搬するレーザ光の光量と外側コアを伝搬するレーザ光の光量とを所望の割合に調整して、簡単に所望の光学的特性を有するレーザ光を低損失で出力することが可能となる。
【0020】
出力するレーザ光の光学的特性を必要に応じて調整できるように、上記ファイバ曲げ部は、上記光ファイバの曲げ径を調整可能に構成されることが好ましい。
【0021】
本発明の第3の態様によれば、加工対象物に応じた高品質の加工が可能なレーザ加工装置が提供される。このレーザ加工装置は、上述したレーザ生成装置と、上記レーザ生成装置から出力されるレーザ光を加工対象物に向けて照射するレーザ照射部とを備える。
【0022】
このような構成によれば、加工対象物に応じた所望の光学的特性を有するレーザ光を加工対象物に照射することができるので、レーザ加工の品質が向上する。
【0023】
上述したレーザ加工装置は、上記加工対象物の加工状態を検出するプロセスモニタと、上記プロセスモニタからの出力に応じて上記レーザ生成装置の上記ファイバ曲げ部における上記光ファイバの曲率を調整する制御部とを備えることが好ましい。このような構成によれば、加工対象物の加工状態に応じて加工対象物に照射されるレーザ光の光学的特性を調整することができるため、レーザ加工の品質がさらに向上する。
【0024】
本発明の第4の態様によれば、所望の光学的特性を有する光を低損失で出力することが可能な光ファイバを容易に製造することができる方法が提供される。この方法では、中心コアと、上記中心コアの半径方向外側に位置する内側リング層と、上記内側リング層の半径方向外側で前記内側リング層を囲むリング状の1以上の外側コアと、上記1以上の外側コアの半径方向外側に位置する1以上の外側リング層とを含む1本の長手方向に連続する基材光ファイバを用意する。上記内側リング層は、屈折率を低下させる性質を有するドーパントを含み、上記中心コアの屈折率よりも低い屈折率を有する。上記外側リング層は、該外側リング層の半径方向内側に隣接する上記外側コアの屈折率よりも低い屈折率を有する。上記外側コアは、上記内側リング層の屈折率よりも高い屈折率を有する。この方法では、上記基材光ファイバの両端部の間の少なくとも1箇所を加熱して、上記内側リング層中の上記ドーパントを拡散させて、上記中心コアと上記内側リング層との間の比屈折率差ΔCFを、上記1以上の外側コアと該外側コアの半径方向外側に隣接する外側リング層との間の比屈折率差ΔPFよりも小さくするとともに、上記長手方向において上記少なくとも1箇所の両側の位置における上記中心コアと上記内側リング層との間の比屈折率差よりも部分的に小さくする。上記ドーパントはフッ素であってもよい。
【0025】
本発明の第5の態様によれば、所望の光学的特性を有する光を低損失で出力することが可能な光ファイバを容易に製造することができる方法が提供される。この方法では、屈折率を上昇させる性質を有するドーパントを含む中心コアと、上記中心コアの半径方向外側に位置する内側リング層であって、上記中心コアの屈折率よりも低い屈折率を有する内側リング層と、上記内側リング層の半径方向外側で前記内側リング層を囲むリング状の1以上の外側コアと、上記1以上の外側コアの半径方向外側に位置する1以上の外側リング層とを含む1本の長手方向に連続する基材光ファイバを用意する。上記外側リング層は、該外側リング層の半径方向内側に隣接する上記外側コアの屈折率よりも低い屈折率を有する。上記外側コアは、上記内側リング層の屈折率よりも高い屈折率を有する。この方法では、上記基材光ファイバの両端部の間の少なくとも1箇所を加熱して、上記中心コア中の上記ドーパントを拡散させて、上記中心コアと上記内側リング層との間の比屈折率差ΔCFを、上記1以上の外側コアと該外側コアの半径方向外側に隣接する外側リング層との間の比屈折率差ΔPFよりも小さくするとともに、上記長手方向において上記少なくとも1箇所の両側の位置における上記中心コアと上記内側リング層との間の比屈折率差よりも部分的に小さくする。上記ドーパントはゲルマニウムであってもよい。
【0026】
これらの方法によれば、上述した所望の光学的特性を有する光を低損失で出力することが可能な光ファイバを容易に製造することができる。
【0027】
上記少なくとも1箇所は、他の光ファイバに突き合わせた上記基材光ファイバの端部であってもよい。この場合には、内側リング層における屈折率の上昇と、基材光ファイバと他の光ファイバとの融着とを同時に実現することができる。
【0028】
上記少なくとも1箇所を加熱する前の上記基材光ファイバにおいて、上記1以上の外側コアと該外側コアの半径方向外側に隣接する外側リング層との間の比屈折率差は、上記中心コアと上記内側リング層との間の比屈折率差以上であってもよい。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、長手方向に沿った少なくとも1つの位置において、中心コアにおける光の閉じ込め効果が弱くなるため、この位置で光ファイバを曲げることで、中心コアを伝搬する光を中心コアから外側コアに漏洩させることができる。したがって、光ファイバの曲げ径を適切に調整することで、中心コアを伝搬する光の光量と外側コアを伝搬する光の光量とを所望の割合に調整して、簡単に所望の光学的特性を有する光を低損失で出力することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態における光ファイバを模式的に示す断面図である。
【
図3】
図3は、
図1のA-A線断面における半径方向の屈折率分布を示すグラフである。
【
図4】
図4は、
図1のB-B線断面における半径方向の屈折率分布を示すグラフである。
【
図5】
図5は、
図1のC-C線断面における半径方向の屈折率分布を示すグラフである。
【
図6】
図6は、
図1に示す光ファイバの使用態様の一例を模式的に示す断面図である。
【
図8】
図8は、本発明の第2の実施形態における光ファイバを模式的に示す断面図である。
【
図10】
図10は、
図8のD-D線断面における半径方向の屈折率分布を示すグラフである。
【
図11】
図11は、
図8のE-E線断面における半径方向の屈折率分布を示すグラフである。
【
図12】
図12は、
図8のF-F線断面における半径方向の屈折率分布を示すグラフである。
【
図13】
図13は、本発明に係る光ファイバを用いたレーザ加工装置の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明に係る光ファイバの実施形態について
図1から
図13を参照して詳細に説明する。なお、
図1から
図13において、同一又は相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。また、
図1から
図13においては、各構成要素の縮尺や寸法が誇張されて示されている場合や一部の構成要素が省略されている場合がある。
【0032】
図1は、本発明の第1の実施形態における光ファイバ1を模式的に示す断面図、
図2は、
図1のA-A線断面図である。
図1に示すように、光ファイバ1は、ファイバレーザなどのレーザ光源に接続される光入力部2と、光入力部2から入力された光を複数の光導波層に分配可能な構造を有する光処理部3と、光処理部3により分配された光を伝搬する光出力部4とを含んでいる。
【0033】
図1及び
図2に示すように、本実施形態の光ファイバ1は、中心コア10と、中心コア10を覆う内側リング層20と、内側リング層20を覆う外側コア30と、外側コア30を覆う外側リング層40と、外側リング層40を被覆する樹脂層50とを有している。中心コア10及び外側コア30は例えばSiO
2から構成される。内側リング層20及び外側リング層40のそれぞれには、屈折率を低下させる性質を有するドーパント(例えばフッ素(F)やホウ素(B))が添加されている。例えば、中心コア10の外径は100μm、内側リング層20の外径は110μm、外側コア30の外径は200μm、外側リング層40の外径は360μmである。
【0034】
図3は、
図1のA-A断面における光入力部2の半径方向の屈折率分布を示すグラフである。上述したように、内側リング層20と外側リング層40には、屈折率を低下させる性質を有するドーパントが添加されているため、内側リング層20及び外側リング層40の屈折率は、
図3に示すように中心コア10及び外側コア30の屈折率よりも低くなっている。このように、中心コア10の半径方向外側に隣接する内側リング層20の屈折率は中心コア10の屈折率よりも低くなっており、これにより中心コア10は、内部に光を閉じ込めて伝搬させる光導波層となっている。また、外側コア30の半径方向内側に隣接する内側リング層20の屈折率及び外側コア30の半径方向外側に隣接する外側リング層40の屈折率は、それぞれ外側コア30の屈折率よりも低くなっており、これにより外側コア30は、内部に光を閉じ込めて伝搬させる光導波層となっている。本実施形態では、上記ドーパントとしてフッ素が用いられており、例えば、中心コア10と内側リング層20との間の比屈折率差Δ
C1は1.0%であり、外側コア30と外側リング層40との間の比屈折率差Δ
P1も1.0%である。なお、
図3に示す例では、外側コア30と外側リング層40との間の比屈折率差Δ
P1が、中心コア10と内側リング層20との間の比屈折率差Δ
C1と同一となっているが、外側コア30と外側リング層40との間の比屈折率差Δ
P1が中心コア10と内側リング層20との間の比屈折率差Δ
C1よりも大きくなっていてもよい。
【0035】
図1に示すように、光処理部3では樹脂層50が除去され、外側リング層40が外部に露出している。
図4は、
図1のB-B線断面における光処理部3の半径方向の屈折率分布を示すグラフである。
図4に示すように、光処理部3においても、内側リング層20の屈折率が中心コア10の屈折率よりも低くなっているが、光処理部3における中心コア10と内側リング層20との間の比屈折率差Δ
CFは、光入力部2における比屈折率差Δ
C1よりも小さくなっている。また、外側リング層40の屈折率は外側コア30の屈折率よりも低くなっているが、光処理部3における外側コア30と外側リング層40との間の比屈折率差Δ
PFは、光入力部2における比屈折率差Δ
P1と同一又はこれより小さくなっている。例えば、比屈折率差Δ
CFは0.6%、比屈折率差Δ
PFは1.0%である。
【0036】
図5は、
図1のC-C線断面における光出力部4における半径方向の屈折率分布を示すグラフである。
図5に示すように、光出力部4における屈折率分布は光入力部2における屈折率分布と同一である。例えば、中心コア10と内側リング層20との間の比屈折率差Δ
C2は1.0%であり、外側コア30と外側リング層40との間の比屈折率差Δ
P2は1.0%である。なお、
図5に示す例では、外側コア30と外側リング層40との間の比屈折率差Δ
P2が、中心コア10と内側リング層20との間の比屈折率差Δ
C2と同一となっているが、外側コア30と外側リング層40との間の比屈折率差Δ
P2が中心コア10と内側リング層20との間の比屈折率差Δ
C2よりも大きくなっていてもよい。
【0037】
このように、内側リング層20の屈折率は長手方向に沿って変化している。すなわち、光処理部3における内側リング層20Aの屈折率は、光入力部2における内側リング層20Bの屈折率よりも高く、光出力部4における内側リング層20Cの屈折率は、光処理部3における内側リング層20Aの屈折率よりも低くなっている。これにより、中心コア10と内側リング層20との間の比屈折率差も長手方向に沿って変化している。すなわち、光処理部3における中心コア10と内側リング層20Aとの間の比屈折率差ΔCFは、光入力部2における中心コア10と内側リング層20Bとの間の比屈折率差ΔC1よりも小さくなっており、光出力部4における中心コア10と内側リング層20Cとの間の比屈折率差ΔC2は、光処理部3における中心コア10と内側リング層20Aとの間の比屈折率差ΔCFよりも大きくなっている。本実施形態における光ファイバ1は、このような構成を有しているため、以下で述べるような形態で使用することで、光入力部2の中心コア10に入力された光を光出力部4の中心コア10と外側コア30とに所望のパワー比で導くことができる。
【0038】
図6は、光ファイバ1の使用態様の一例を模式的に示す断面図である。上述した光ファイバ1は、
図6に示すように、光処理部3の部分で曲げて用いられる。光ファイバ1の光入力部2には、ファイバレーザなどのレーザ光源が接続され、このレーザ光源からのレーザ光が光入力部2の中心コア10に導入される。なお、光処理部3の外側リング層40の外周面に樹脂を塗布して光処理部3を保護してもよい。
【0039】
上述したように、光処理部3における中心コア10と内側リング層20Aとの間の比屈折率差ΔCFは、光入力部2における比屈折率差ΔC1よりも小さくなっているため、光処理部3においては中心コア10における光の閉じ込め効果が光入力部2に比べて弱くなる。したがって、光処理部3で光ファイバ1を曲げることにより、光入力部2の中心コア10を伝搬してきたレーザ光の一部Lを光処理部3において中心コア10から外側コア30に漏洩させることができる。そして、この外側コア30に漏洩したレーザ光の一部Lを光出力部4の外側コア30に導くことができる。また、光入力部2の中心コア10を伝搬してきたレーザ光の一部は、光処理部3において外側コア30に漏洩した後に中心コア10に戻るか、あるいは、中心コア10をそのまま伝搬して、光出力部4の中心コア10に導かれる。
【0040】
光出力部4では、中心コア10と内側リング層20Cとの間の比屈折率差ΔC2が、光処理部3における比屈折率差ΔCFよりも大きくなるため、上述のようにして光出力部4の中心コア10と外側コア30に分けられたレーザ光は、その後漏洩することなく、それぞれ中心コア10と外側コア30を伝搬していく。したがって、光処理部3における光ファイバ1の曲げ径を適切に調整することにより、光出力部4における中心コア10を伝搬するレーザ光の光量と外側コア30を伝搬するレーザ光の光量とを所望の割合に調整することができる。
【0041】
次に、このような光ファイバ1の製造方法について説明する。光ファイバ1を製造する際には、まず、
図7Aに示すように、上述した光入力部2又は光出力部4と同一の構造を有する基材光ファイバ101を用意する。すなわち、この基材光ファイバ101は、中心コア110と、中心コア110を覆う内側リング層120と、内側リング層120を覆う外側コア130と、外側コア130を覆う外側リング層140と、外側リング層140を被覆する樹脂層150とを有している。中心コア110及び外側コア130は例えばSiO
2から構成されており、内側リング層120及び外側リング層140のそれぞれには、屈折率を低下させる性質を有するドーパント(この例ではフッ素)が添加されている。このため、この基材光ファイバ101の屈折率プロファイルは
図3や
図5に示されるものと同一となっている。例えば、中心コア110の外径は100μm、内側リング層120の外径は110μm、外側コア130の外径は200μm、外側リング層140の外径は360μmである。なお、基材光ファイバ101として、外側コア130と外側リング層140との間の比屈折率差Δが中心コア110と内側リング層120との間の比屈折率差よりも大きい屈折率プロファイルを有するものを用いてもよい。
【0042】
そして、この基材光ファイバ101の樹脂層150の一部150Aを除去して外側リング層140を露出させ、
図7Bに示すように、この露出した部分103を例えばバーナー190やアーク放電を用いて周囲から例えば1000℃以上に加熱する。例えば、バーナー190を長手方向に50mm移動させて露出した部分103を加熱する。この加熱により、内側リング層120及び外側リング層140に添加されたフッ素が拡散する結果、内側リング層120及び外側リング層140の屈折率が上昇する。ここで、外側リング層140の厚さ(80μm)が内側リング層120の厚さ(5μm)に比べて非常に大きいことに加え、外側リング層140中のフッ素は空気中にも拡散するため、外側リング層140の屈折率はあまり上昇せず、内側リング層120の屈折率の方がより大きく上昇する。この結果、加熱部分103では、屈折率プロファイルが
図4に示されるものに変化し、加熱されていない部分102,104に比べて中心コア110と内側リング層120との間の比屈折率差が小さくなる。これにより、
図1に示すような光ファイバ1が完成する。このとき、基材光ファイバ101の加熱部分103が光ファイバ1の光処理部3となり、加熱されていない部分102,104がそれぞれ光入力部2及び光出力部4となる。なお、フッ素などのドーパントの拡散距離は加熱温度や加熱時間によって変わるため、上記の加熱工程における加熱温度や加熱時間を適宜調整することにより、内側リング層120の屈折率の上昇の程度を制御することができ、加熱部分103において所望の屈折率プロファイルを得ることができる。
【0043】
上述の例では、長手方向に沿った1箇所で基材光ファイバ101を加熱しているが、長手方向に沿った複数箇所で基材光ファイバ101を加熱し、複数の箇所で内側リング層120の屈折率を上昇させた部分を形成してもよい。また、上記例では、基材光ファイバ101の中間部で樹脂層150の一部150Aを除去して加熱しているが、例えば、基材光ファイバ101の端部で樹脂層150を除去し、基材光ファイバ101の端部を他の光ファイバに突き合わせ、この他の光ファイバとの突き合わせ部分を加熱してもよい。この場合には、上述した内側リング層120における屈折率の上昇と同時に、基材光ファイバ101(光ファイバ1)と他の光ファイバとの融着を実現することができる。
【0044】
また、基材光ファイバ101の内側リング層120に屈折率を低下させる性質を有するドーパントを添加するのに代えて、基材光ファイバ101の中心コア110に屈折率を上昇させるドーパント(例えば、ゲルマニウム(Ge)やリン(P))を添加してもよい。この場合にも、基材光ファイバ101を加熱することで、中心コア110に添加されたドーパントが内側リング層120に拡散する結果、内側リング層120の屈折率が上昇するため、上述した光ファイバ1と同様の構造の光ファイバが得られる。
【0045】
上述の例では、加熱によるドーパントの拡散を用いて光ファイバ1を製造しているが、加熱によって基材光ファイバ101の中心コア110と内側リング層120との間の応力を解放することによって内側リング層120の屈折率を上昇させてもよい。例えば、中心コア110として内側リング層120よりも軟化温度が低い材料(例えばゲルマニウムを添加した石英ガラス)を用いると、光ファイバの線引き(紡糸)時に内側リング層120が紡糸張力を負担するため、中心コア110には圧縮応力が残留して屈折率が上昇する。このような基材光ファイバ101を加熱すると、上記残留応力が解放され、中心コア110と内側リング層120との間の比屈折率差が小さくなるため、上述した光ファイバ1と同様の構造の光ファイバを得ることができる。
【0046】
また、ゲルマニウムを添加した石英ガラスは、250nm近傍の波長の紫外線を照射すると屈折率が上昇することが知られている。したがって、基材光ファイバ101の内側リング層120としてゲルマニウムを添加したガラスを用い、基材光ファイバ101に紫外線を照射することで内側リング層120の屈折率を上昇させてもよい。なお、この場合には、石英にゲルマニウムを添加すると屈折率が石英よりも上昇するため、内側リング層120にはゲルマニウムに加えて、屈折率を低下させるためにフッ素やホウ素を添加する必要がある。
【0047】
図8は、本発明の第2の実施形態における光ファイバ201を模式的に示す断面図、
図9は、
図8のD-D線断面である。
図8に示すように、光ファイバ201は、第1の実施形態における光ファイバ1と同様に、ファイバレーザなどのレーザ光源に接続される光入力部202と、光入力部202から入力された光を複数の光導波層のうち所望の光導波層に分配可能な構造を有する光処理部203と、光処理部203により分配された光を伝搬する光出力部204とを含んでいる。
図8及び
図9に示すように、本実施形態の光ファイバ201は、中心コア210と、中心コア210を覆う内側リング層220と、内側リング層20を覆う第1の外側コア230と、第1の外側コア230を覆う第1の外側リング層240と、第1の外側リング層240を覆う第2の外側コア250と、第2の外側コア250を覆う第2の外側リング層260と、第2の外側リング層260を被覆する樹脂層270とを有している。
【0048】
中心コア210、第1の外側コア230、及び第2の外側コア250は例えばSiO
2から構成される。内側リング層220、第1の外側リング層240、及び第2の外側リング層260のそれぞれには、屈折率を低下させる性質を有するドーパント(例えばフッ素(F)やホウ素(B))が添加されており、内側リング層220、第1の外側リング層240、及び第2の外側リング層260の屈折率は、
図10に示すように中心コア210、第1の外側コア230、及び第2の外側コア250の屈折率よりも低くなっている。このように、中心コア210の半径方向外側に隣接する内側リング層220の屈折率は中心コア210の屈折率よりも低くなっており、これにより中心コア210は、内部に光を閉じ込めて伝搬させる光導波層となっている。また、第1の外側コア230の半径方向内側に隣接する内側リング層220の屈折率及び第1の外側コア230の半径方向外側に隣接する第1の外側リング層240の屈折率は、それぞれ第1の外側コア230の屈折率よりも低くなっており、これにより第1の外側コア230は、内部に光を閉じ込めて伝搬させる光導波層となっている。さらに、第2の外側コア250の半径方向内側に隣接する第1の外側リング層240の屈折率及び第2の外側コア250の半径方向外側に隣接する第2の外側リング層260の屈折率は、それぞれ第2の外側コア250の屈折率よりも低くなっており、これにより第2の外側コア250は、内部に光を閉じ込めて伝搬させる光導波層となっている。
図10に示す例では、中心コア210と内側リング層220との間の比屈折率差Δ
C1と、第1の外側コア230と第1の外側リング層240との間の比屈折率差Δ
P11と、第2の外側コア250と第2の外側リング層260との間の比屈折率差Δ
P12とが同一となっている。
【0049】
図8に示すように、光処理部203では樹脂層270が除去され、第2の外側リング層260が外部に露出している。
図11は、
図8のE-E線断面における光処理部203の半径方向の屈折率分布を示すグラフである。
図11に示すように、光処理部203においても、内側リング層220の屈折率が中心コア210の屈折率よりも低くなっているが、光処理部203における中心コア210と内側リング層220との間の比屈折率差Δ
CFは、光入力部202における比屈折率差Δ
C1よりも小さくなっている。また、第1の外側リング層240の屈折率は第1の外側コア230の屈折率よりも低くなっているが、光処理部203における第1の外側コア230と第1の外側リング層240との間の比屈折率差Δ
PF1は、光入力部202における比屈折率差Δ
P11よりも小さくなっている。さらに、第2の外側リング層260の屈折率は第2の外側コア250の屈折率よりも低くなっているが、光処理部203における第2の外側コア250と第2の外側リング層260との間の比屈折率差Δ
PF2は、光入力部202における比屈折率差Δ
P11と同一又はこれより小さくなっている。ここで、比屈折率差Δ
PF1は比屈折率差Δ
CFよりも大きく、比屈折率差Δ
PF2は比屈折率差Δ
PF1よりも大きくなっており、半径方向外側に向かうにつれてコアとリング層との間の比屈折率差が次第に大きくなっている。
【0050】
図12は、
図8のF-F線断面における光出力部204における半径方向の屈折率分布を示すグラフである。
図12に示すように、光出力部204における屈折率分布は光入力部202における屈折率分布と同一である。
図12に示す例では、中心コア210と内側リング層220との間の比屈折率差Δ
C2と、第1の外側コア230と第1の外側リング層240との間の比屈折率差Δ
P21と、第2の外側コア250と第2の外側リング層260との間の比屈折率差Δ
P22とが同一となっている。
【0051】
本実施形態では、中心コア210と内側リング層220との間の比屈折率差が長手方向に沿って変化するとともに、第1の外側コア230と第1の外側リング層240との間の比屈折率差も長手方向に沿って変化している。すなわち、光処理部203における中心コア210と内側リング層220Aとの間の比屈折率差ΔCFは、光入力部202における中心コア210と内側リング層220Bとの間の比屈折率差ΔC1及び光出力部204における中心コア210と内側リング層220Cとの間の比屈折率差ΔC2よりも小さくなっており、光処理部203における第1の外側コア230と第1の外側リング層240Aとの間の比屈折率差ΔPF1は、光入力部202における第1の外側コア230と第1の外側リング層240Bとの間の比屈折率差ΔP11及び光出力部204における第1の外側コア230と第1の外側リング層240Cとの間の比屈折率差ΔP21よりも小さくなっている。
【0052】
このような光ファイバ201においては、光処理部203における中心コア210と内側リング層220Aとの間の比屈折率差ΔCFが、光入力部202における比屈折率差ΔC1よりも小さくなっているため、光処理部203においては中心コア210における光の閉じ込め効果が光入力部202に比べて弱くなる。また、光処理部203における第1の外側コア230と第1の外側リング層240Aとの間の比屈折率差ΔPF1が、光入力部202における比屈折率差ΔP11よりも小さくなっているため、光処理部203においては第1の外側コア230における光の閉じ込め効果が光入力部202に比べて弱くなる。
【0053】
したがって、このような光ファイバ201を光処理部203で曲げて使うことで、光入力部202の中心コア10を伝搬してきたレーザ光の一部を光処理部203において中心コア210から第1の外側コア230に漏洩させ、第1の外側コア230に漏洩したレーザ光の一部をさらに第2の外側コア250に漏洩させることができる。これにより、光処理部203における曲げ径を適切に調整することで、光出力部204における中心コア210を伝搬するレーザ光の光量、第1の外側コア230を伝搬するレーザ光の光量、及び第2の外側コア250を伝搬するレーザ光の光量を所望の割合に調整することができる。
【0054】
ここで、本実施形態の光処理部203では、比屈折率差ΔPF1が比屈折率差ΔCFよりも大きいため、光処理部203における曲げ径が大きいときには、レーザ光は第1の外側コア230までしか漏洩しないが、光処理部203における曲げ径をさらに小さくすることで、レーザ光が第1の外側コア230から第2の外側コア250に漏洩することとなる。このように、半径方向外側に向かうにつれてコアとリング層との間の比屈折率差を次第に大きくすることで、光処理部203における曲げ径を適切に調整することにより、中心コアから外側コアのうちいずれの外側コアまで光を導入するかを制御することができる。
【0055】
このような光ファイバ201は、第1の実施形態における光ファイバ1と同様の方法により製造することができる。すなわち、上述した光入力部202又は光出力部204の構造を有する基材光ファイバの樹脂層270の一部を除去して第2の外側リング層260を露出させ、この露出させた部分を加熱することで、内側リング層220、第1の外側リング層240、及び第2の外側リング層260に添加されたフッ素を拡散させることにより光ファイバ201を製造することができる。ここで、光処理部203における中心コア210と内側リング層220との間の比屈折率差ΔCFを第1の外側コア230と第1の外側リング層240との間の比屈折率差ΔPF1よりも小さくするためには、基材光ファイバにおける内側リング層220の厚さを第1の外側リング層240の厚さより薄くすることが好ましい。また、光処理部203における第1の外側コア230と第1の外側リング層240との間の比屈折率差ΔPF1を第2の外側コア250と第2の外側リング層260との間の比屈折率差ΔPF2よりも小さくするためには、基材光ファイバにおける第1の外側リング層240の厚さを第2の外側リング層260の厚さより薄くすることが好ましい。
【0056】
本実施形態における光ファイバ201は、2層の外側コア230,250と2層の外側リング層240,260とを含んでいるが、本発明は、3層以上の外側コアと3層以上の外側リング層とを含む光ファイバも適用できることは言うまでもない。
【0057】
本発明に係る光ファイバは、以下に述べるようにレーザ加工装置に応用することが可能である。本発明に係る光ファイバをレーザ加工装置に用いることによって、加工対象物に照射するレーザ光の光学的特性を加工対象物の材料に応じて簡単かつ安全に変更することができる。
【0058】
図13は、本発明に係る光ファイバを用いたレーザ加工装置501の構成を示す模式図である。
図13に示すレーザ加工装置501は、加工対象物Wを保持するステージ510と、レーザ生成装置520と、レーザ生成装置520から出力されるレーザ光をステージ510上の加工対象物Wに向けて照射するレーザ照射部530と、加工対象物Wの加工状態を検出するプロセスモニタ540と、プロセスモニタ540の検出信号を受けてレーザ生成装置520を制御する制御部550とを備えている。
【0059】
レーザ生成装置520は、複数のレーザ光源521と、これらのレーザ光源521からのレーザ光を結合する光コンバイナ522と、光コンバイナ522から延びるデリバリファイバ523と、デリバリファイバ523に接続される光ファイバ524と、光ファイバ524を所定の曲げ径で曲げるためのファイバ曲げ部525とを含んでいる。レーザ光源521は、それぞれ所定の波長(例えば1100nm)の出力レーザ光を生成するものであり、例えば主発振器出力増幅器(MOPA)型のファイバレーザや共振器型のファイバレーザにより構成することができる。
【0060】
レーザ光源521と光コンバイナ522とはそれぞれ光ファイバ526によって互いに接続されている。光コンバイナ522の下流側にはデリバリファイバ523が接続されている。デリバリファイバ523と光ファイバ524とは融着接続部527で互いに融着接続されている。この光ファイバ524として上述した光ファイバ1又は201を用いることができる。以下では、光ファイバ524として上述した光ファイバ1を用いた例を説明する。
【0061】
ファイバ曲げ部525には、光ファイバ524(光ファイバ1)の一部が曲げられた状態で収容されている。このファイバ曲げ部525は、光ファイバ1の曲げ径を調整できるように構成されている。例えば、ファイバ曲げ部525は、固定部601と、レール602上を移動可能な可動部603とを備えていてもよい。固定部601と可動部603との間に光ファイバ1の光処理部3を曲げた状態で挟み込み、固定部601に対して可動部603を移動させることにより、固定部601と可動部603との間の距離を変えて光処理部3の曲げ径を調整することができる。なお、このような光ファイバ1の曲げ径を調整する機構は図示のものに限定されるものではない。
【0062】
制御部550は、プロセスモニタ540の検出信号を受けて、加工対象物Wの加工状態に応じてレーザ光源521及びファイバ曲げ部525を制御する。例えば、制御部550は、加工対象物Wの加工状態に応じて、レーザ光源521に供給する電流を制御することによりレーザ光源521から出力されるレーザ光の出力を調整したり、ファイバ曲げ部525の可動部603を移動することによりレーザ照射部530から出力されるレーザ光の光学的特性を調整したりすることができる。また、制御部550は、所定のプログラムに従ってレーザ光源521及びファイバ曲げ部525を制御してもよい。
【0063】
例えば、加工対象物Wの加工部が薄く、これを高速に切断する場合には、制御部550は、ファイバ曲げ部525の可動部603を移動して光ファイバ1の中心コア10から出力されるレーザ光の割合を上げる。一方、加工対象物Wの加工部が厚く、これを切断する場合には、制御部550が、ファイバ曲げ部525の可動部603を別の方向に移動して光ファイバ1の外側コア30から出力されるレーザ光の割合を上げてもよい。
【0064】
上述の例では、光ファイバ1を1箇所で曲げているが、光ファイバ1を複数箇所で曲げてもよい。高パワーのレーザ光の場合、中心コア10を伝搬するレーザ光を1箇所で外側コア30に漏洩させると、外側コア30にレーザ光が過度に漏洩して光損失が生じることが考えられるが、中心コア10を伝搬するレーザ光を複数箇所で徐々に外側コア30に漏洩させることでそのような光損失を低減することができる。
【0065】
これまで本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0066】
1 光ファイバ
2 光入力部
3 光処理部
4 光出力部
10 中心コア
20 内側リング層
30 外側コア
40 外側リング層
50 樹脂層
101 基材光ファイバ
103 加熱部分
110 中心コア
120 内側リング層
130 外側コア
140 外側リング層
150 樹脂層
190 バーナー
201 光ファイバ
202 光入力部
203 光処理部
204 光出力部
210 中心コア
220 内側リング層
230 第1の外側コア
240 第1の外側リング層
250 第2の外側コア
260 第2の外側リング層
270 樹脂層
501 レーザ加工装置
510 ステージ
520 レーザ生成装置
521 レーザ光源
522 光コンバイナ
523 デリバリファイバ
524 光ファイバ
525 ファイバ曲げ部
530 レーザ照射部
540 プロセスモニタ
550 制御部
601 固定部
602 レール
603 可動部
W 加工対象物