(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-15
(45)【発行日】2022-06-23
(54)【発明の名称】ランプ加熱装置
(51)【国際特許分類】
F27D 11/02 20060101AFI20220616BHJP
H05B 3/00 20060101ALI20220616BHJP
【FI】
F27D11/02 Z
H05B3/00 330Z
(21)【出願番号】P 2019184207
(22)【出願日】2019-10-07
(62)【分割の表示】P 2015125584の分割
【原出願日】2015-06-23
【審査請求日】2019-11-06
【審判番号】
【審判請求日】2021-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000167200
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクトサーモシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】服部 昌
【合議体】
【審判長】池渕 立
【審判官】土屋 知久
【審判官】太田 一平
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-12480(JP,A)
【文献】特開平5-144757(JP,A)
【文献】特開昭60-81819(JP,A)
【文献】特開2004-39955(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L21/26
F27D11/02
H05B3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理ガスが流入する処理炉の外側に配置され、平板状の被処理物における互いに平行な第1面及び第2面のそれぞれに複数ずつ対向する線状発光体を備え、
前記第1面に対向する前記複数の線状発光体は、前記第1面に平
行で互いに平行に配置され、
前記第2面に対向する前記複数の線状発光体は、前記第2面に平
行で互いに平行、かつ前記第1面に対向する前記複数の線状発光体と直交させて配置され、
前記第1面に対向する前記複数の線状発光体は、前記第1面に平行且つ互いに平行に配置されるとともに、前記第1面の端部側に位置するものほど第1面との距離である第1の距離が短くなるように配置され、更に、隣接する前記線状発光体どうしの平面視での距離である第2の距離が、前記第1面の端部側に位置するものほど短くなるように配置され、
前記第1面に対向する前記複数の線状発光体の配置位置が、前記被処理物の前記第1面が均一に加熱されるような位置となるように、前記第1の距離と前記第2の距離の両方が設定されている、ランプ加熱装置において、
炉内における前記被処理物の前記第1面側の空間または前記第2面側の空間の少なくとも一方は、複数のゾーンに分割され、
前記複数のゾーンは、前記処理炉において、炉の水平方向における中央部と、中央部以外のその他の部分と、によって構成され、
外的要因により被処理物の部分的な温度差を生じた場合に、被処理物の均熱化を図るように、
前記第1面または前記第2面の少なくとも一方に対向する前記複数の線状発光体の発光量が前記ゾーン毎に調整可能とされている、ランプ加熱装置。
【請求項2】
前記複数のゾーンは、前記中央部と、前記水平方向における前記中央部に対する一方側の端部である第1端部と、他方側の端部である第2端部と、によって構成される、
請求項1に記載のランプ加熱装置。
【請求項3】
前記複数のゾーンは、前記第1面側の空間と前記第2面側の空間の両方に設定されており、
前記第1面側の空間に設定された前記複数のゾーンの並ぶ方向と、前記第2面側の空間に設定された前記複数のゾーンの並ぶ方向と、は直交している、
請求項1または請求項2に記載のランプ加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体材料としてのシリコンウェハ等の被処理物を加熱する熱処理に使用されるランプ加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコンウェハ等の平板状の被処理物を大気中又は所定雰囲気中で加熱する熱処理には、ハロゲンランプ等の発光体を熱源としたランプ加熱装置が用いられている。ランプ加熱装置は、線状又は球状を呈する発光体を用いて、平板状の被処理物の全体を均一に加熱する必要がある。
【0003】
例えば、複数の線状発光体を被処理物に平行な平面内に一定の間隔で配置した場合、被処理物の中央部には複数の線状発光体の全てから光が照射されるが、被処理物の端部は一部の線状発光体のみから光が照射される。このため、全ての線状発光体を一定の電力で駆動した場合には、被処理物の中央部が端部よりも高温になる。
【0004】
そこで、従来のランプ加熱装置として、径の異なる複数の環状ランプのそれぞれを被処理物からの距離が互いに異なる位置に配置する等、発光体の形状や配置を種々工夫したものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、形状の異なる複数の発光体を備えることとすると、発光体の設計が困難で交換作業も煩雑になる。
【0007】
この発明の目的は、複数の線状発光体を被処理物に対して適正に配置することで、発光体の設計の複雑化や交換作業の煩雑化を伴うことなく平板状の被処理物の全面を均一に加熱することができるランプ加熱装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明のランプ加熱装置は、平板状の被処理物における互いに平行な第1面及び第2面のそれぞれに複数ずつ対向する線状発光体を備えている。第1面に対向する複数の線状発光体は、第1面に平行な面内で互いに平行に配置され、第1面の端部側に位置するものほど第1面との距離を短くして配置されている。第2面に対向する複数の線状発光体は、第2面に平行な面内で互いに平行、かつ第1面に対向する複数の線状発光体と直交する方向に配置され、第2面の端部側に位置するものほど第2面との距離を短くして配置されている。
【0009】
この構成によれば、被処理物の側面視において、第1面及び第2面のそれぞれに対向して複数の線状発光体が配置される。第1面に対向する複数の線状発光体は、第1面の端部側に位置するものが中央部に位置するものよりも第1面に近接して配置され、被処理物の側面視において、中央部が第1面から離間する凸状の位置に配置される。第2面に対向する複数の線状発光体は、第2面の端部側に位置するものが中央部に位置するものよりも第2面に近接して配置され、被処理物の側面視において、中央部が第2面から離間する凸状の位置に配置される。
【0010】
被処理物の第1面及び第2面のそれぞれで、複数の線状発光体の全てから光の照射を受ける中央部では法線方向から光が照射される線状発光体からの距離が相対的に長く、複数の線状発光体の一部のみから光を受ける端部では法線方向から光が照射される線状発光体からの距離が相対的に短くなり、全ての線状発光体を同一の電力で駆動した場合でも、照射光量による中央部と端部との温度差が緩和される。
【0011】
また、第1面及び第2面に平行な面内で、第1面に対向する複数の線状発光体と第2面に対向する複数の線状発光体とが互いに直交しているため、第1面及び第2面のそれぞれにおいて複数の線状発光体に対する対向角度差による温度ムラが緩和される。
【0012】
この構成において、被処理物の第1面側及び第2面側に配置される全ての線状発光体を同一形状とすることが好ましい。発光体の設計をより簡略化できる。
【0013】
また、被処理物の第1面側及び第2面側のそれぞれにおいて、複数の線状発光体のそれぞれの被処理物に対する配置位置は、互いに等しいことが好ましい。被処理物が円形又は正方形である場合に、被処理物の全体の温度を均一化できる。また、第1面側と第2面側とで線状発光体の支持部材を共通化できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、発光体の設計の複雑化や交換作業の煩雑化を伴うことなく平板状の被処理物の全面を均一に加熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】(A)及び(B)は、本発明の実施形態に係るランプ加熱装置の概略の平面図及び側面断面図である。
【
図2】同ランプ加熱装置による被処理物の第1面に対する線状発光体の配置位置及び照射光量を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、この発明の実施形態に係るランプ加熱装置について、図面を参照しつつ説明する。
【0017】
図1(A)及び(B)に示すように、この発明の実施形態に係るランプ加熱装置10は、ランプハウス1、処理炉2、支持体3、線状発光体41~46,51~56を備え、被処理物Wを所定の温度に加熱する。被処理物Wは、正方形の板状を呈する。
【0018】
ランプハウス1は、断熱性を有する6面体の筐体であり、内部に処理炉2及び線状発光体41~46,51~56を収納している。なお、
図1(A)は、ランプハウス1の上面11を取り外した状態を示している。
【0019】
処理炉2は、透光性の材料を素材とする偏平な管体であり、前面側に開口部21を有し、背面側に管部22を有している。処理炉2は、ランプハウス1の前面12の開口121からランプハウス1内に挿入され、開口部21を前面12から外部に露出させ、管部22を背面13の孔部131から外部に露出させた状態で、ランプハウス1内に保持される。
【0020】
支持体3は、透光性を有し、上面に被処理物Wを載置した状態で、開口部21を経由して処理炉2内に出し入れされる。処理炉2内には、管部22を経由して処理ガスが導入される。
【0021】
線状発光体41~46は、被処理物Wの第1面である上面側で、ランプハウス1内における処理炉2の外側に、互いに平行にして配置されている。線状発光体41~46は、ランプハウス1の左側面14と右側面15とを貫通している。線状発光体51~56は、被処理物Wの第2面である下面側で、ランプハウス1内における処理炉2の外側に、互いに平行にして配置されている。線状発光体51~56は、ランプハウス1の前面12と背面13とを貫通している。平面視において、線状発光体51~56は、線状発光体41~46と直交して配置されている。
【0022】
合計12本の線状発光体41~46,51~56は、全て同一形状のハロゲンランプ等の管状ランプであり、ランプハウス1の外部に露出した一端部側から電力の供給を受ける。例えば、線状発光体41~46は左側面14から露出した端部に電源端子を備え、線状発光体51~56は背面13から露出した端部に電源端子を備えている。
【0023】
なお、線状発光体41~46,51~56は、被処理物Wに対する照射光量の均一化を図るため、発光長Lが被処理物Wの一辺の長さであるワークエリアDよりも2×0.8h(但し、hは線状発光体から被処理物Wまでの法線方向の高さ)以上長くすることが好ましい。
【0024】
図2に示すように、線状発光体41~43は、矩形の被処理物Wの上面WAに対して、それぞれ法線方向について高さh1,h2,h3の高さ位置で、それぞれの間に水平方向について距離L2,L3の間隔を設けて配置されている。高さh1は高さh2より長く、高さh2は高さh3より長くされている。線状発光体44~46は、線状発光体41~43と左右対称となる位置に配置されている。線状発光体41と線状発光体44との間には距離L2より長い距離L1の間隔が設けられている。
【0025】
被処理物Wの上面WAの上側に上述のように線状発光体41~46を配置することにより、被処理物Wの上面WAには
図2に示すように、中央部よりも端部近傍の照射光量が高くなるように光が照射される。被処理物Wにおける放熱による温度低下は中央部に比較して端部近傍が大きいため、中央部に比較して端部近傍により多くの光を照射することで、被処理物Wの上面W側の温度の均一化を図ることができる。
【0026】
つまり、被処理物Wの加熱状態を確認しつつ、例えば
図2に示す光量分布となるように、高さh1~h3、並びに距離L1~L3を決定する。これによって、線状発光体41~46の駆動電力を変化させることなく、被処理物Wの上面WAを均一に加熱することができる。
【0027】
線状発光体51~56については、被処理物Wを挟んで線状発光体41~46と上下対称となる位置から、平面視において線状発光体41~46に対して90度回転させた位置に配置する。線状発光体41~46の長手方向と線状発光体51~56の長手方向とを直交させることで、被処理物W全体の温度ムラの発生を緩和できる。
【0028】
このように、被処理物Wの部分的な温度低下に応じて被処理物Wからの距離を変化させて線状発光体41~46及び線状発光体51~56を配置することで、線状発光体41~46及び線状発光体51~56のそれぞれを同一仕様及び同一駆動量とすることができる。これによって被処理物Wの全体を一様な色温度の光で加熱することができ、より高い精度で被処理物Wの均熱化を図ることができる。また、線状発光体41~46及び線状発光体51~56を同一仕様及び同一駆動量とすることで、寿命の均一化を図ることもできる。
【0029】
なお、線状発光体41~46及び線状発光体51~56は、複数本ずつ纏めて図示しない単一の支持部材にランプハウス1の外側に露出した部分で固定される。発光寿命の観点から線状発光体41~46及び線状発光体51~56の全てを一括して交換することが好ましいため、単一の支持部材に複数本の線状発光体を固定することで交換作業が簡略化される。この場合に、線状発光体41~46に使用する支持部材と線状発光体51~56とは同一形状とすることができるため、線状発光体41~46及び線状発光体51~56をそれぞれ一体的に支持部材に固定することもできる。
【0030】
また、処理炉2内を例えば中央部、左部、右部、前部及び後部のように複数のゾーンに分割し、線状発光体41~46及び線状発光体51~56の発光量をゾーン毎に調整できるようにすることが好ましい。これによって、外的要因による被処理物の部分的な温度差を解消することができる。例えば、処理炉2内に処理ガスを流通させる場合、処理ガスの流入側の温度は流出側の温度よりも低下するが、流入側のゾーンに位置する線状発光体の発光量を流出側のゾーンに位置する線状発光体の発光量よりも大きくすることで、被処理物の均熱化を図ることができる。
【0031】
上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0032】
1-ランプハウス
2-処理炉
41~46,51~56-線状発光体
10-ランプ加熱装置