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▶ グラクソスミスクライン バイオロジカルズ ソシエテ アノニムの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-15
(45)【発行日】2022-06-23
(54)【発明の名称】新規配合物
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/861 20060101AFI20220616BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220616BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20220616BHJP
   A61P 33/00 20060101ALI20220616BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20220616BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20220616BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20220616BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20220616BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20220616BHJP
   A61K 39/002 20060101ALI20220616BHJP
   A61K 39/02 20060101ALI20220616BHJP
   A61K 39/12 20060101ALI20220616BHJP
   A61K 9/19 20060101ALI20220616BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20220616BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20220616BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20220616BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20220616BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20220616BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20220616BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20220616BHJP
   A61K 35/761 20150101ALI20220616BHJP
【FI】
C12N15/861 Z
A61P35/00
A61P37/04
A61P33/00
A61P31/12
A61P31/10
A61P31/04
A61K48/00
A61K39/00 H
A61K39/002
A61K39/02
A61K39/12
A61K9/19
A61K47/26
A61K47/36
A61K47/10
A61K47/18
A61K47/12
A61K47/04
A61K47/02
A61K35/761
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2019539953
(86)(22)【出願日】2018-01-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-03-05
(86)【国際出願番号】 IB2018050453
(87)【国際公開番号】W WO2018138667
(87)【国際公開日】2018-08-02
【審査請求日】2020-12-24
(31)【優先権主張番号】1701239.4
(32)【優先日】2017-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】305060279
【氏名又は名称】グラクソスミスクライン バイオロジカルズ ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブールレ,エルバン
(72)【発明者】
【氏名】デスパス,オリヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】ギヨーム,デルフィーヌ
(72)【発明者】
【氏名】マトー,フレデリック
(72)【発明者】
【氏名】ヴァセル,マテュー
【審査官】山本 匡子
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-523233(JP,A)
【文献】特表2012-516679(JP,A)
【文献】特表2007-518414(JP,A)
【文献】国際公開第2015/189425(WO,A1)
【文献】Pharmaceutical Development and Technology(1998)Vol.3, No.3, p.373-383
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12P
C07K
C12N 1/00-7/06
C12N 15/00-90
A61K
MEDLINE/BIOSIS/MEDLINE/CAPLUS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サルアデノウイルスベクターと、ソルビトールと、トレハロースである非晶質糖とを含む組成物であって、ソルビトールとトレハロースとの比が4/14~3/18である、組成物
【請求項2】
凍結乾燥組成物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ソルビトールとトレハロースとの比が4/14~3.5/16である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
塩、たとえばNaClをさらに含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
サルアデノウイルスベクターと、ソルビトールと、トレハロースである非晶質糖とを含む水性混合物から凍結乾燥した組成物であって、ソルビトールとトレハロースとの比が4/14~3/18である、組成物
【請求項6】
ソルビトールとトレハロースとの比が4/14~3.5/16である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
水性混合物中の非晶質糖の濃度が、(i)18%(w/v)未満である、(ii)10~20%(w/v)である、又は(iii)14~18%(w/v)である、請求項5又は6に記載の組成物。
【請求項8】
水性混合物中のソルビトール濃度が3~4%(w/v)である、請求項5から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
サルアデノウイルスベクターがチンパンジーアデノベクターである、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
サルアデノウイルスベクターが、ChAd3、ChAd63、ChAd83、ChAd155、ChAd157、PanAd3、Pan5、Pan6、Pan7、又はPan9から選択される、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
界面活性剤、緩衝剤、及び/又は二価金属塩をさらに含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
ポロキサマー188又はポリソルベート80である界面活性剤を含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
トリス、スクシネート、ボレート、トリス-マレエート、リシン、ヒスチジン、グリシン、グリシルグリシン、シトレート、カーボネート、ホスフェート、又はその組合せから選択される緩衝剤を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
MgCl2、CaCl2、又はMgSO4から選択される二価金属イオン塩を含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
凍結乾燥されており、1.40~10%(w/w)などの1.40%(w/w)以上の含水量を有する、請求項1から14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
第1の容器が請求項1から15のいずれか一項に記載の凍結乾燥組成物を含有し、第2の容器が注射用水を含有する2つの容器を含むキット。
【請求項17】
a.アニーリングステップが含まれる、水性混合物を凍結することと、
b.凍結した水性混合物を減圧下で乾燥することと
によって水性混合物を凍結乾燥するステップを含む、請求項5に記載の組成物を調製する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凍結乾燥組成物中のアデノウイルスベクターの配合、その配合物、並びに凍結乾燥組成物を得る方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アデノウイルスベクターは、予防的又は治療的なタンパク質送達プラットフォームを表しており、ここでは、予防的又は治療的タンパク質をコードしている核酸配列がアデノウイルスゲノム内に組み込まれ、処置した対象にアデノウイルス粒子を投与した際にこれが発現される。許容される貯蔵温度での貯蔵を相当の貯蔵寿命で可能にする、アデノウイルスベクターの安定化配合物を開発することは、当分野における課題であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
R.K Evansら(「Development of stable Liquid Formulations for Adenovirus-Based Vaccines」 Journal of Pharmaceutical Sciences (2004)第93号、第10巻、2458~2475頁)に記載されているものなど、ヒトアデノウイルスベクターの安定化配合物は報告されている。しかし、アデノウイルスベクターの安定性を保っている配合物の必要性が、以前として当分野において存在する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、驚くべきことに、サルアデノウイルスベクターの配合物におけるソルビトールの使用が、凍結乾燥の間中、特に非晶質糖トレハロースをさらなる凍結保護剤として組み合わせた場合に、安定性を実質的に改善させることを見出した。したがって、本発明は、ソルビトールを、トレハロースなどの凍結保護剤として作用するさらなる非晶質糖と組み合わせて含む、凍結乾燥用の水性混合物、及び前記水性混合物から凍結乾燥によって得られた凍結乾燥組成物(本明細書中で以降「乾燥組成物」と呼ぶ)を提供する。
【0005】
さらに、低い塩含有量が、サルアデノウイルスベクター粒子の安定性、特に凍結乾燥中及び凍結乾燥ケークの再構成の際の安定性に対して、さらに好都合な効果を与えることが見出された。したがって、本発明は、ソルビトール及びさらなる非晶質糖を含有し、少量のNaClも含むアデノウイルス組成物をさらに提供する。また、本発明は、凍結乾燥組成物を使用する方法も提供し、ここでは、組成物を、低塩の水性液体、たとえば、注射用水又は非イオン性等張化剤の水性液体で再構成する。
【0006】
本発明は、記載したアデノウイルスベクター組成物を凍結乾燥する方法をさらに提供する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施例1で使用した凍結乾燥サイクルの例示を示す図である。
図2】実施例1で試験した組成物について決定されたガラス転移温度(Tg)を示す図である。(1)23%のトレハロースを含む組成物、(2)23%のスクロースを含む組成物、(3)23%のトレハロース+2%のソルビトールを含む組成物、(4)23%のスクロース+2%のソルビトールを含む組成物。
図3】実施例1で得られた組成物中に含有されるアデノ粒子の感染力を示す図である。(1)23%のトレハロース((+)によって示す)、(2)23%のスクロース(Xによって示す)、(3)23%のトレハロース+2%のソルビトール((Y)によって示す)、(4)23%のスクロース+2%のソルビトール((Z)によって示す)、(5)新鮮な精製バルク対照(上向き三角形によって示す)、及び(6)分解された精製バルク対照(逆三角形によって示す)。
図4】実施例2で使用した凍結乾燥サイクルの例示を示す図である。
図5】実施例2で決定されたTgを示す図である。
図6】実施例2で決定された含水量を示す図である。
図7】実施例2で決定されたオスモル濃度を示す図である。
図8】実施例2で決定されたPicoGreenデータを示す図である。
図9】実施例2で決定された感染力を示す図である。
図10】実施例2で決定された超高速液体クロマトグラフィー(UPLC)回収を示す図である。
図11】最適化された組合せを同定するための、実施例2で決定された様々なパラメータに関するデータの統計分析の例示を示す図である(実験計画法(DOE)プロット1)。
図12】より高いトレハロース濃度が可能となる最適化された組合せを同定するための、実施例2で決定された様々なパラメータに関するデータの統計分析の例示を示す図である(DOEプロット2)。
図13】実施例3で使用した凍結乾燥サイクル1を示す図である。
図14】実施例3で使用した凍結乾燥サイクル2を示す図である。
図15】実施例3で決定されたPicoGreenデータを示す図である。(x)+10℃での二次乾燥を用いた凍結乾燥条件を使用して得られたサンプルについてのデータ点(凍結乾燥サイクル(2))、(+)+25℃での二次乾燥を用いた凍結乾燥条件を使用して得られたサンプルについてのデータ点(凍結乾燥サイクル(1))、(上向き三角形)対照アデノウイルスストック、(逆三角形)陰性対照の分解されたアデノウイルスストック。
図16】実施例3で決定された感染力データを示す図である。(x)+10℃での二次乾燥を用いた凍結乾燥条件を使用して得られたサンプルについてのデータ点、(+)+25℃での二次乾燥を用いた凍結乾燥条件を使用して得られたサンプルについてのデータ点、(上向き)三角形 対照アデノウイルスストック、(逆三角形)陰性対照の分解されたアデノウイルスストック。
図17】実施例3で決定されたUPLCデータを示す図である。(x)+10℃での二次乾燥を用いた凍結乾燥条件を使用して得られたサンプルについてのデータ点、(+)+25℃での二次乾燥を用いた凍結乾燥条件を使用して得られたサンプルについてのデータ点、(上向き三角形)対照アデノウイルスストック、(逆三角形)陰性対照の分解されたアデノウイルスストック。
図18】凍結乾燥による損失の推定によって決定されたサルアデノウイルスの安定性を示す図である。15℃及び25℃の二次乾燥温度での、18%のトレハロース+3.5%のソルビトールと23%のトレハロースとの比較である。
図19】15℃及び25℃の乾燥温度で200日間での、18%のトレハロース+3.5%のソルビトール及び23%のトレハロースの安定性を実証する散布図である。
図20】15℃又は25℃の二次乾燥温度で、18%のトレハロース+3.5%のソルビトール(左パネル)又は23%のトレハロース(右パネル)を用いて配合した、2時間の道路輸送及び2時間の航空輸送のシミュレーションの後の、凍結乾燥アデノウイルスの外見を示す図である。バイアルは、シリコン処理した(S+)又はシリコン処理していない(S-)もののどちらかであった。シリコン処理したバイアルには50%の過剰量をロードし、シリコン処理していないバイアルには50%又は100%のどちらかの過剰量をロードした。(O)=無傷、(+)=ひび割れ、(X)=断片化。
図21】15℃又は25℃の二次乾燥温度で、18%のトレハロース+3.5%のソルビトール(左パネル)又は23%のトレハロース(右パネル)を用いて配合した、2時間の道路輸送及び2時間の航空輸送のシミュレーションの後の、凍結乾燥アデノウイルスの堅牢性を示す図である。バイアルは、シリコン処理した(S+)又はシリコン処理していない(S-)もののどちらかであった。シリコン処理したバイアルには50%の過剰量をロードし、シリコン処理していないバイアルには50%又は100%のどちらかの過剰量をロードした。(O)=粉末状でない、(+)=わずかに粉末状、(X)=粉末状。
【発明を実施するための形態】
【0008】
アデノウイルスベクターの配合物に関する当分野での報告に反して、本発明者らは、たとえばヒトアデノウイルスベクター用に開発された安定化配合物が、すべてのアデノウイルスベクター、たとえばサルアデノウイルスベクターにうまく適用できないことを見出した。以下、本発明は、アデノウイルス粒子の構造的完全性及び機能性がより良好に保護又は維持されている、アデノウイルスベクターの組成物について記載する。
【0009】
本発明者らは、凍結乾燥のために、アデノウイルスベクター、特にサルアデノウイルスベクターを配合する際にソルビトールをさらなる非晶質糖と組み合わせて加えることで、凍結乾燥及び/又はさらなる貯蔵の際に、そのアデノウイルスベクターの安定性が増加することを見出した。
【0010】
ソルビトール及びさらなる非晶質糖はどちらも凍結保護剤であるとみなされる。用語「凍結保護剤」とは、凍結するものの、この場合はアデノウイルスベクター、の凍結損傷を防止する賦形剤のクラスをいう。
【0011】
ソルビトールと組み合わせて本発明に係る使用に適した非晶質糖は、スクロース、トレハロース、マンノース、マンニトール、ラフィノース、ラクチトール、ラクトビオン酸、グルコース、マルツロース、イソマルツロース、ラクツロース、マルトース、ラクトース、イソマルトース、マルチトール、パラチニット、スタキオース、メレジトース、デキストラン、又はその組合せから選択され得る。一実施形態では、非晶質糖は、スクロース、トレハロース、ラクトース、ラフィノース、デキストラン、及びその組合せから選択される。
【0012】
具体的な実施形態では、ソルビトールと組み合わせるさらなる非晶質糖は、トレハロース若しくはスクロース、又は、スクロース、ラクトース、ラフィノース、デキストラン、及びマンニトールから選択されるものなどの第2の非晶質糖と組み合わせたトレハロースである。或いは、非晶質糖は、トレハロース、スクロース、又はスクロースとトレハロースの組合せである。別の実施形態では、非晶質糖は、トレハロース、又はスクロースと組み合わせたトレハロースである。さらに別の実施形態では、非晶質糖はトレハロースである。
【0013】
ソルビトール及び選択された非晶質糖、たとえばトレハロースは、定義された比で存在し得る。一実施形態では、ソルビトールと非晶質糖との比は、4/10以下、4/12以下、4/13以下、4/14以下である。別の実施形態では、ソルビトールと非晶質糖との比は、4/10~3/23、4/12~4/23、4/13~4/20、4/14~4/18、4/14~3.5/16、又は4/14~4/16である。具体的な実施形態では、比は4/14~4/16である。さらなる具体的な実施形態では、非晶質糖はトレハロースであり、ソルビトールとトレハロースとの比は4/14~4/16である。
【0014】
ソルビトールは、組成物を凍結乾燥させる元の水性混合物中に、定義された量で存在し得る。一実施形態では、水性混合物は、2~4%(w/v)、2.5~4%(w/v)、又は3~4%(w/v)のソルビトールを含有する。具体的な実施形態では、ソルビトールは3~4%(m/v)の量で存在する。
【0015】
本明細書中の実施形態に従って選択された非晶質糖は、定義された量で存在し得る。一実施形態では、水性混合物は、少なくとも3%(w/v)、少なくとも5%(w/v)、少なくとも10%(w/v)、少なくとも11%(w/v)、少なくとも12%(w/v)、少なくとも13%(w/v)、又は少なくとも14%(w/v)の、本明細書中上記で選択された非晶質糖を含有する。別の実施形態では、選択された非晶質糖は、23%(w/v)未満、たとえば、20%(w/v)未満、18%(w/v)未満、17%(w/v)未満、16%(w/v)未満、又は15%(w/v)未満の総量で水性混合物中に存在する。言い換えると、非晶質糖は、23%(w/v)以下、たとえば、20%(w/v)以下、18%(w/v)以下、17%(w/v)以下、16%(w/v)以下、又は15%(w/v)以下の総量で水性混合物中に存在する。言い換えると、非晶質糖は、少なくとも12%、少なくとも13%、又は少なくとも14%(w/v)であるが、18%未満、17%未満、又は16%(w/v)未満の総量で水性混合物中に存在することができる。
【0016】
具体的な実施形態では、非晶質糖はトレハロースであり、12%~18%(w/v)、又は14%~16.5%(w/v)の量で存在する。
【0017】
本発明者らは、さらに、アデノウイルスベクターが、乾燥形態の場合でも液体形態の場合でも、塩化ナトリウムなどの塩の存在によって実質的に影響を受ける場合があることを見出した。したがって、本発明は、塩化ナトリウムなどの塩に対するアデノウイルスベクターの感受性を考慮した配合物、すなわち、本明細書中に記載の凍結乾燥及び乾燥組成物のための水性混合物にさらに関する。一実施形態では、サルアデノウイルスベクターは、本明細書中に記載の水性混合物及び乾燥組成物を使用して配合する。
【0018】
本明細書中で使用する用語「塩」とは、その生成物が実効電荷を有さないように、関連する数のカチオン及びアニオンから構成される酸と塩基の中和反応から生じるイオン性化合物、たとえば塩化ナトリウムをいう。構成成分のイオンは、無機又は有機のどちらであることもでき、また、単原子又は多原子であることができる。
【0019】
一実施形態によれば、水性混合物中に存在する塩の量、特にNaClの量は、50mM未満、40mM未満、30mM未満、20mM未満、15mM未満、10mM未満、又は7.5mM未満であると定義される。言い換えると、水性混合物中に存在するNaClの量は、50mM以下、40mM以下、30mM以下、20mM以下、15mM以下、10mM以下、又は7.5mM以下であると定義され得る。好ましくは、組成物は塩を完全には欠いていない、又はNaClを完全には欠いていない。塩、特にNaClの含有量に関する実施形態のそれぞれに関わる疑念を回避するために、塩、それぞれNaClは、測定可能な量で存在すると理解される。したがって、本発明の一実施形態によれば、塩、特に塩化ナトリウムは、少なくとも0.5mM、少なくとも1mM、少なくとも2mM、少なくとも3mM、又は少なくとも4mMの量で存在する。或いは、塩化ナトリウムは、1~50mM、2.5~25mM、2.5~15mM、2.5~10mM、又は2.5~7.5mMの量で存在する。具体的な実施形態によれば、塩化ナトリウムは、約5mM、たとえば5+/-0.5mMの量で存在する。
【0020】
範囲を定義する目的で、本明細書中で使用する用語「間(~)」には、範囲の端値が含まれるとみなされる。たとえば、塩化ナトリウムが2.5~10mMの量で存在するという場合は、NaClが2.5mM又は10mMの濃度で存在する配合物が含まれる。
【0021】
さらなる実施形態によれば、塩化ナトリウムなどの塩もまた、乾燥組成物を再構成するための水性液体又は希釈剤の含有量が定義されている。凍結乾燥組成物を再構成するとは、乾燥組成物を再水和させて液体混合物を再度得ることを意味する。一実施形態によれば、再構成用の水性液体中に存在する塩、たとえば塩化ナトリウムの量は、50mM未満、40mM未満、30mM未満、20mM未満、15mM未満、10mM未満、又は7.5mM未満、50mM以下、40mM以下、30mM以下、20mM以下、15mM以下、10mM以下、又は7.5mM以下である。
【0022】
凍結乾燥組成物を再構成するための水性液体は、塩を本質的に含まない場合がある、たとえば塩化ナトリウムを本質的に含まない場合がある。本質的に含まないとは、塩又は塩化ナトリウムの濃度が0mMである、又はそれに非常に近いことを意味する。特定の実施形態では、凍結乾燥組成物を注射用水(WFI)で再構成することができる。
【0023】
さらなる実施形態では、組成物を再構成するための水性液体は、塩又は塩化ナトリウムを完全には欠いていない。したがって、塩化ナトリウムなどの塩は、少なくとも0.5mM、少なくとも1mM、少なくとも2mM、少なくとも3mM、又は少なくとも4mMの量で、乾燥組成物を再構成するために使用する水性液体中に存在することができる。或いは、塩化ナトリウムなどの塩は、1~50mM、2.5~25mM、2.5~15mM、2.5~10mM、又は2.5~7.5mMの量で、組成物を再構成するために使用する水性液体中に存在する。具体的な実施形態によれば、塩化ナトリウムなどの塩は、5mMの量で、組成物を再構成するために使用する水性液体中に存在する。
【0024】
したがって、本発明は、本明細書中に定義した組成物を再構成するための水性液体で乾燥組成物を再構成する、本明細書中に記載の乾燥組成物を使用する方法も提供する。
【0025】
水性混合物又は乾燥組成物には、ポロキサマー界面活性剤(たとえばポロキサマー188)、ポリソルベート界面活性剤(たとえば、ポリソルベート80及び/又はポリソルベート20)、オクトキシナール(octoxinal)界面活性剤、ポリドカノール界面活性剤、ステアリン酸ポリオキシル界面活性剤、ポリオキシルヒマシ油界面活性剤、N-オクチル-グルコシド界面活性剤、マクロゴール15ヒドロキシステアレート、及びその組合せから選択される界面活性剤をさらに含め得る。一実施形態では、界面活性剤は、ポロキサマー界面活性剤(たとえばポロキサマー188)、ポリソルベート界面活性剤(たとえば、ポリソルベート80及び/又はポリソルベート20)、具体的には、ポリソルベート80などのポリソルベート界面活性剤から選択される。
【0026】
一実施形態では、界面活性剤は、水性混合物に関して計算して、少なくとも0.001%、少なくとも0.005%、少なくとも0.01%(w/v)、及び/又は0.5%(w/v)までの量で存在する。界面活性剤は、0.25%未満又は0.1%未満(w/v)の量で存在することができる。別の実施形態では、界面活性剤は0.02%(w/v)の量で存在する。
【0027】
具体的な実施形態によると、界面活性剤は、0.005%~0.5%(w/v)、たとえば約0.02%(w/v)の量で水性混合物中に存在する、ポリソルベート80又はポロキサマー188である。
【0028】
さらなる実施形態では、緩衝剤を水性混合物又は乾燥組成物に加える。pHは、典型的には組成物の治療的成分を考慮して調節する。適切には、水性混合物のpHは、少なくとも6、少なくとも6.5、少なくとも7、又は少なくとも7.5である。言い換えると、水性混合物のpHは、10未満、9.5未満、9未満、又は8.5未満であり得る。他の実施形態では、水性混合物のpHは、6~10、7~9.5、7.5~9.5、又は、約7.5、たとえば、7.5+/-0.5、若しくは8.5+/-0.5である。最適なpHは、配合する特定のアデノウイルスベクター及び/又はその中に取り込ませる導入遺伝子によっても部分的に決定される。
【0029】
適切な緩衝剤は、トリス、スクシネート、ボレート、トリス-マレエート、リシン、ヒスチジン、グリシン、グリシルグリシン、シトレート、カーボネート、ホスフェート、又はその組合せから選択され得る。一実施形態では、緩衝剤は、トリス、スクシネート、又はボレートである。さらなる実施形態では、緩衝剤はトリスである。
【0030】
緩衝剤は、少なくとも0.5mM、少なくとも1mM、少なくとも2mM、又は少なくとも5mMの量で水性混合物中に存在することができる。或いは、緩衝剤は、50mM未満、40mM未満、30mM未満、又は20mM未満の量で水性混合物中に存在することができる。たとえば、緩衝剤は、0.5mm~50mM、1mM~50mM、又は2mM~20mMの量で存在し得る。一実施形態では、緩衝剤は約10mMの量で存在する。
【0031】
具体的な実施形態によると、緩衝剤はトリスであり、2~20mM、たとえば約10mMの量で水性混合物中に存在する。
【0032】
一実施形態では、組成物は、約20mM又はそれまでの量、たとえば約10mMの濃度のヒスチジンも含む。
【0033】
さらなる実施形態によれば、組成物は、Mg2+、Ca2+、又は塩の形態のMg2+若しくはCa2+、たとえば、MgCl2、CaCl2、若しくはMgSO4などの、二価金属イオンも含む。一実施形態では、二価金属イオンはMg2+である。二価金属イオンが水性混合物中に存在する典型的な量は、0.5~10mM、たとえば1又は2mM、又は特に1mMである。
【0034】
本発明の実施形態を説明する目的で、かつそれに反対するいかなる指摘も存在しない場合、組成物中に含めることが検討される指定した量の賦形剤(すなわち、塩、塩化ナトリウム、凍結保護剤、緩衝剤、界面活性剤、及び本明細書中に記載の他のもの)は、典型的には(かつ別段に指定しない限りは)、水性混合物の体積に関して計算して、w/v%として表す。或いは、水性混合物を凍結乾燥及び再構成する場合は、賦形剤の量は、再構成した組成物の体積に対して計算して、w/v%として表し得る。
【0035】
凍結乾燥方法中の安定性の増大に加えて、新規配合物は、凍結乾燥組成物の貯蔵の際にもアデノウイルスベクターの安定性を増大させ得る。新規配合物は、液体又は乾燥した組成物の貯蔵を、4℃、25℃、又は37℃で、1カ月間まで、3カ月間、6カ月間、1年間、2年間、又は3年間の間可能にする。一実施形態では、乾燥組成物は、4℃で3年間、25℃で3カ月間、又は37℃で1カ月間貯蔵することができる。出発物質の感染力と比較して、感染力の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、又は少なくとも90%が保持されている場合に貯蔵が十分であることが理解されよう。
【0036】
本明細書中に記載の混合物、組成物、及び方法は、出発物質の感染力と比較して感染力の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、又は少なくとも90%を保持しながら、37℃で少なくとも1カ月間、又は25℃で少なくとも3カ月間、又は4℃で少なくとも3年間のアデノウイルスベクターの貯蔵を可能にする。
【0037】
アデノウイルスベクターの安定性は、他の方法のなかでとりわけ、ベクターの感染力、たとえば、ウイルスベクターの操作(たとえば凍結乾燥)又は貯蔵の際における感染力の保持を測定することによって、決定することができる。用語「感染力」とは、感染を受ける宿主、すなわち細胞内に入り、宿主による発現のためにその遺伝物質を送達する、ベクターの能力をいう。感染力は「50%培養細胞感染用量」(CCID50)として表すことができ、これは、所定の培養細胞中の細胞の50%を感染させるために必要なアデノウイルスベクターの量である。感染力は、アデノウイルス導入遺伝子が発現される細胞の割合を測定することによって、測定することができる。たとえば、緑色蛍光タンパク質を感染力マーカーとして使用することができ、ここでは、ベクターと共に24時間インキュベーションした後に緑色蛍光タンパク質を発現する細胞数を決定する。或いは、感染力は、ベクターと共に24時間インキュベーションした後にアデノウイルスヘキソンカプシドタンパク質を発現する細胞数の決定によって、測定することができる。
【0038】
アデノウイルスは、様々な標的組織において高効率の遺伝子移入を達成するその能力、及び大きな導入遺伝子容量が故に、遺伝子移入の応用に幅広く使用されている。本発明において有用なアデノウイルスベクターは、様々な哺乳動物宿主に由来するものであり得る。100個を超える明白に異なるアデノウイルス血清型が単離されており、これらは様々な哺乳動物種に感染する。これらのアデノウイルス血清型は、配列相同性及び赤血球を凝集させるその能力に従って、6つの亜属へと分類されている(A~F、BはB1及びB2へとさらに分類されている)(Tatsis及びErtl、Molecular Therapy (2004) 10:616~629頁)。
【0039】
一実施形態では、本発明のアデノウイルスベクターはヒトアデノウイルスに由来する。そのようなヒト由来のアデノウイルスの例は、Ad1、Ad2、Ad4、Ad5、Ad6、Ad11、Ad24、Ad34、Ad35、特にAd5、Ad11、及びAd35である。Ad5に基づくベクターはいくつかの遺伝子治療の治験において大規模に使用されているが、自然感染が原因の一般集団における既存の免疫が理由で、Ad5及び他のヒトC群アデノウイルスベクターの使用には制限があり得る。Ad5及び他のヒトC群メンバーは、最も血清有病率の高い血清型の一員である傾向がある。さらに、処置中におけるベクターへの曝露の結果、既存のベクターに対する免疫が発生し得る。血清有病率の高いベクターに対する、これらの種類の既存又は発生した免疫は、遺伝子治療又はワクチン接種の努力の有効性を制限し得る。したがって、代替のアデノウイルス血清型は、宿主の免疫応答を回避することができる遺伝子送達システムの探究において非常に重要な標的を構成する。
【0040】
したがって、別の実施形態では、本発明のアデノウイルスベクターは、単純にサルアデノウイルスとも呼ばれる非ヒトサルアデノウイルスに由来する。数々のアデノウイルスがチンパンジー、ピグミーチンパンジー(bonobo)、アカゲザルマカク、及びゴリラなどの非ヒトサルから単離されており、これらのアデノウイルスに由来するベクターは、これらのベクターによってコードされている導入遺伝子に対して強力な免疫応答を誘発する(Collocaら(2012) Sci. Transl. Med. 4:1~9頁、Royら(2004) Virol. 324: 361~372頁、Royら(2010) J. Gene Med. 13:17~25頁)。非ヒトサルアデノウイルスに基づくベクターの特定の利点には、標的集団中におけるこれらのアデノウイルスに対する交差中和抗体が比較的欠如していることが含まれる。たとえば、特定のチンパンジーアデノウイルスと既存の中和抗体応答との交差反応は、特定の候補ヒトアデノウイルスベクターの場合の35%と比較して、標的集団の2%にしか存在しない。
【0041】
具体的な実施形態では、アデノウイルスベクターは、非ヒトアデノウイルス、たとえばサルアデノウイルス、特にチンパンジーアデノウイルスに由来するものであり、たとえば、ChAd3、ChAd63、ChAd83、ChAd155、ChAd157、Pan5、Pan6、Pan7(C7とも呼ばれる)、又はPan9である。そのような株の例は、WO03/000283、WO2010/086189、及びGB1510357.5に記載されており、American Type Culture Collection、10801 University Boulevard、バージニア州Manassas、20110-2209、及び他の供給源からも入手可能である。或いは、アデノウイルスベクターは、PanAd1、PanAd2、又はPanAd3など、ピグミーチンパンジー(bonobo)から単離した非ヒトサルアデノウイルスに由来するものであり得る。本明細書中に記載のそのようなベクターの例は、たとえば、WO2005/071093及びWO2010/086189に見つけることができる。また、アデノウイルスベクターは、WO2013/52799、WO2013/52811、及びWO2013/52832に記載のように、ゴリラから単離したアデノウイルスにも由来するものであり得る。
【0042】
アデノウイルスは、3つの主要なタンパク質、すなわち、ヘキソン(II)、ペントンベース(III)、及び小塊状ファイバー(knobbed fiber)(IV)と共に、いくつかの他の重要でないタンパク質、すなわち、VI、VIII、IX、IIIa、及びIVa2を含む、正二十面体カプシドを有する特徴的な形態学を有する。ヘキソンは、240個の三量体ヘキソンカプソメア及び12個のペントンベースからなるカプシドの構造的構成要素の大部分を占める。ヘキソンは3つの保存されたダブルバレルを有する一方で、上部は3つのタワーを有しており、それぞれのタワーは、カプシドのほとんどを形成するそれぞれのサブユニットからのループを含有する。ヘキソンのベースはアデノウイルス血清型間で高度に保存されている一方で、表面ループは可変的である(Tatsis及びErtl、Molecular Therapy (2004) 10:616~629頁)。ペントンは、ファイバーが付着する五量体ベースを形成する別のアデノウイルスカプシドタンパク質である。三量体のファイバータンパク質がカプシドの12個の頂点のそれぞれでペントンベースから突出しており、小塊状の棒様構造である。ファイバータンパク質の主な役割は、小塊領域と細胞受容体との相互作用を介してウイルスカプシドを細胞表面に係留することであり、ファイバーの柔軟なシャフト及び小塊領域における変動は様々な血清型の特徴である(Nicklinら Molecular Therapy 2005 12:384~393頁)。
【0043】
アデノウイルスベクターを使用して、所望のRNA又はタンパク質配列、たとえば異種配列を、in vivo発現のために送達し得る。ベクターには、裸DNA、ファージ、トランスポゾン、コスミド、エピソーム、プラスミド、又はウイルスを含めた任意の遺伝因子が含まれ得る。「発現カセット」(又は「ミニ遺伝子」)とは、選択された異種遺伝子(導入遺伝子)と、宿主細胞中での遺伝子産物の翻訳、転写、及び/又は発現を駆動するために必要な他の調節要素との組合せを意味する。
【0044】
典型的には、選択されたアデノウイルス遺伝子にネイティブな領域中に他のアデノウイルス配列を含有する核酸分子中に発現カセットが位置するように、アデノウイルスベクターを設計する。所望する場合は、発現カセットは、その領域の機能を破壊するために既存の遺伝子領域内に挿入し得る。或いは、発現カセットを、部分的又は完全に欠失させたアデノウイルス遺伝子の部位内に挿入し得る。たとえば、発現カセットは、E1A、E1B、E2A、E2B、E3、及びE4からなる群から選択されるゲノム領域の少なくとも1つの遺伝子を非機能的にする突然変異、挿入、又は欠失の部位に位置し得る。用語「非機能的にする」とは、遺伝子領域が遺伝子発現の機能的生成物をもはや生成できなくなるように、十分な量の遺伝子領域が除去される、又は他の様式で破壊されることを意味する。所望する場合は、遺伝子領域全体を除去し(て発現カセットで適切に置き換え)得る。適切には、アデノウイルスのE1遺伝子を欠失させ、選ばれたプロモーター、目的遺伝子のcDNA配列、及びポリAシグナルからなる発現カセットで置き換え、その結果、複製欠損の組換えウイルスがもたらされる。
【0045】
一実施形態では、アデノウイルスベクターによってコードされている導入遺伝子は、治療的若しくは免疫原性タンパク質、RNA、酵素、又は触媒RNAなどの、生物学及び医学において有用な生成物をコードしている配列である。望ましいRNA分子には、tRNA、dsRNA、リボソームRNA、触媒RNA、RNAアプタマー、及びアンチセンスRNAが含まれる。有用なRNA配列の一例は、処置した動物において標的核酸配列の発現を消滅させる配列である。
【0046】
したがって、一実施形態では、本明細書中に記載の混合物又は組成物は、アデノウイルスベクターによってコードされている導入遺伝子に応じて、哺乳動物又はヒト対象などの対象の予防的(したがって免疫原性若しくは防止的)又は治療的処置において使用するためのものである。
【0047】
導入遺伝子は、処置、たとえば遺伝子欠損の処置に、癌の治療剤若しくはワクチンとして、免疫応答の誘導に、及び/又は予防的ワクチン目的で使用されるポリペプチド又はタンパク質をコードし得る。本明細書中で使用する、免疫応答の誘導とは、「抗原」又は「免疫原」としても知られるタンパク質の、T細胞及び/又はタンパク質に対する液性免疫応答を誘導する能力をいう。
【0048】
本明細書中に記載のように配合したアデノウイルスベクターによって発現され、ヒト又は非ヒト動物を他の病原体に対して免疫化するために有用な免疫原には、たとえば、ヒト及び非ヒト脊椎動物に感染する細菌、真菌、寄生微生物、若しくは多細胞性寄生生物が含まれるか、又は癌細胞若しくは腫瘍細胞からのものである。たとえば、免疫原は様々なウイルスファミリーから選択され得る。
【0049】
一実施形態では、免疫原はフィロウイルス、たとえば、エボラ(ザイール、スーダン、レストン(Reston)、ブディブギョ(Budibugyo)、及び象牙海岸(Ivory Coast)種)又はマールブルグからのものである。そのような抗原は、ウイルス糖タンパク質(膜貫通及び/若しくは分泌された形態)並びに/又はウイルス核タンパク質に由来するものであり得る。そのようなベクターの例は、とりわけ、WO2011/130627に見つけることができる。
【0050】
別の実施形態では、免疫原は、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)などの呼吸器ウイルス並びにヒトメタニューモウイルス、hMPV及びパラインフルエンザウイルス(PIV)などの他のパラミクソウイルスから選択され得る。ヒト又は非ヒト動物を免疫化するための免疫原として有用なRSVの適切な抗原は、融合タンパク質(F)、付着タンパク質(G)、基質タンパク質(M2)、及び核タンパク質(N)から選択することができる。そのようなベクターはWO2012/089833及びPCT/EP2016/063297に記載されている。一実施形態では、PCT/EP2016/063297に記載のChAd155-RSV構築体が開示の組成物及び方法に検討される。
【0051】
別の実施形態では、免疫原は、レトロウイルス、たとえばヒト免疫不全ウイルス(HIV)などのレンチウイルスからのものであり得る。そのような実施形態では、免疫原は、Gag、Pol、Nef、Env、及び他のものなどのHIV-1又はHIV-2配列に由来するものであり得る。そのようなベクターは、とりわけ、GB1510357.5及びWO2008/107370に記載されている。
【0052】
別の実施形態では、免疫原は、ヒトパピローマウイルス(HPV)に由来するものであり得る。そのような実施形態では、免疫原は、任意のHPV型、具体的には、病気又は疾患を引き起こすことが知られているHPV型に由来するもの、たとえば、泌尿生殖器の癌を引き起こす高リスクHPV型であるHPV16、HPV18などであり得る。
【0053】
或いは、又はそれに加えて、導入遺伝子配列には、発現された際に検出可能なシグナルを生じるレポーター配列が含まれ得る。そのようなレポーター配列には、それだけには限定されないが、β-ラクタマーゼ、β-ガラクトシダーゼ(LacZ)、アルカリホスファターゼ、チミジンキナーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、ルシフェラーゼ、たとえば、CD2、CD4、CD8、インフルエンザ赤血球凝集素タンパク質、及びそれに対する高親和性抗体が存在する、又は慣用手段によって産生することができる、当分野で周知の他のものを含めた膜結合タンパク質、並びに、とりわけ赤血球凝集素又はMycからの抗原タグドメインと適切に融合された膜結合タンパク質を含む融合タンパク質をコードしているDNA配列が含まれる。これらのコード配列は、その発現を駆動する調節要素と会合した場合に、酵素アッセイ、X線アッセイ、比色アッセイ、蛍光アッセイ、又は他の分光アッセイ、蛍光活性化細胞分取アッセイ、並びに、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、及び免疫組織化学を含めた免疫学的アッセイを含めた慣用手段によって検出可能なシグナルをもたらす。
【0054】
導入遺伝子に加えて、発現カセットにはまた、アデノウイルスベクターを形質移入した細胞中でのその転写、翻訳、及び/又は発現を可能にするように導入遺伝子に作動可能に連結している、慣用の制御要素も含まれ得る。本明細書中で使用する「作動可能に連結した」配列には、目的遺伝子と隣接する発現制御配列、及びトランスで作用する又は少し離れた距離で目的遺伝子を制御する発現制御配列がどちらも含まれる。
【0055】
発現制御配列には、適切な転写開始、終結、プロモーター、及びエンハンサー配列;ウサギベータ-グロビンポリAを含めたスプライシング及びポリアデニル化(ポリA)シグナルなどの、効率的なRNAプロセシングシグナル;細胞質mRNAを安定化させる配列;翻訳効率を増強させる配列(たとえばコザックコンセンサス配列);タンパク質安定性を増強させる配列;並びに、所望する場合は、コードされている生成物の分泌を増強させる配列が含まれる。他の配列のなかでとりわけ、キメライントロンを使用し得る。
【0056】
「プロモーター」とは、RNAポリメラーゼの結合を許可し、遺伝子の転写を指示するヌクレオチド配列である。典型的には、プロモーターは、遺伝子の5'非コード領域中の、遺伝子の転写開始部位に近位に位置する。転写の開始において機能するプロモーター内の配列要素は、多くの場合コンセンサスヌクレオチド配列によって特徴づけられている。プロモーターの例には、それだけには限定されないが、細菌、酵母、植物、ウイルス、及び哺乳動物(ヒトが含まれる)からのプロモーターが含まれる。内部、ネイティブ、構成的、誘導性及び/又は組織特異的であるプロモーターを含めた多数の発現制御配列が当分野で知られており、利用し得る。
【0057】
アデノウイルスベクターは、異種遺伝子(導入遺伝子)を発現するように野生型アデノウイルスを改変する、及び/又は望ましくないアデノウイルス配列を欠失若しくは失活させることによって、作製される。また、アデノウイルスベクターは複製能力が改変されていてもよい。たとえば、ベクターは、複製欠損であり得るか、又は、野生型ウイルスと比較して非補完的細胞中で複製する能力が低下しているように複製が制限されていてもよい。これは、たとえば、複製に関与している遺伝子を欠失させること、たとえば、E1a、E1b、E3、又はE4遺伝子の欠失によって、ウイルスを突然変異させることによってもたらし得る。そのような改変は当業者に知られており、当分野において、たとえば、Royら、Human Gene Therapy 15:519~530頁、2004、Collocaら(2012) Sci. Transl. Med. 4:1~9頁、Royら(2004) Virol. 324: 361~372頁、又はWO03/000283によって記載されている。
【0058】
これらのベクターは、当業者に知られている技法を使用して作製する。そのような技法には、本文中に記載のもの、アデノウイルスゲノムの重複オリゴヌクレオチド配列の使用、ポリメラーゼ連鎖反応、及び所望のヌクレオチド配列を提供する任意の適切な方法などの、慣用のcDNAクローニング技法が含まれる。特に適切な方法には、Collocaら(2012) Sci. Transl. Med. 4:1~9頁、Royら(2004) Virol. 324: 361~372頁、Royら(2010) J. Gene Med. 13:17~25頁、及びWO2010/085984に提供されるものなどの標準の相同組換え方法、又はWarmingらNuc. Acids Res. (2005) 33:e36頁に記載のものなどの組換工学方法が含まれる。
【0059】
アデノウイルスベクターは、ウイルスが複製可能な任意の適切な細胞系で産生させることができる。具体的には、その損なわれた複製特徴をもたらす、ウイルスベクターから欠損している因子(E1など)を提供する、補完的細胞系を使用することができる。それだけには限定されないが、そのような細胞系は、とりわけ、HeLa(ATCC受託番号CCL 2)、A549(ATCC受託番号CCL 185)、HEK293、KB(CCL 17)、Detroit(たとえば、Detroit 510、CCL 72)、及びWI-38(CCL 75)細胞であり得る。これらの細胞系はすべてAmerican Type Culture Collection、10801 University Boulevard、バージニア州Manassas、20110-2209から入手可能である。他の適切な親細胞系は、Centre for Applied Microbiology and Research(CAMR、英国)の欧州動物培養物コレクション(European Collection of Animal Cell Cultures、ECACC)にECACC第96022940号の下で寄託されている細胞によって表されるPER.C6(商標)細胞、又はHer 96細胞(Crucell)など、他の供給源から得てもよい。
【0060】
特に適切な補完的細胞系はProcell92細胞系である。Procell92細胞系は、アデノウイルスE1遺伝子を発現し、ヒトホスホグリセリン酸キナーゼ-1(PGK)プロモーターの制御下にあるTetリプレッサー、及びG418耐性遺伝子を形質移入した、HEK 293細胞に基づいている(VitelliらPLOS One (2013) 8(e55435):1~9頁)。Procell92.Sは懸濁条件中での成長に適応されており、毒性タンパク質を発現するアデノウイルスベクターの産生にも有用である(www.okairos.com/e/inners.php?m=00084、最終アクセス日2015年4月13日)。
【0061】
アデノウイルス送達方法及び用量
本明細書中に記載の混合物又は組成物は、哺乳動物、適切にはヒトへの送達後に、ベクターによって送達した導入遺伝子産物に対する免疫応答、たとえば液性(たとえば抗体)及び/又は細胞媒介性(たとえば細胞傷害性T細胞)の応答を誘導することができる、1つ以上の組換えベクターを含み得る。組換えアデノウイルスは、(その遺伝子欠失のうちの任意のもの中に適切に)所望の免疫原をコードしている遺伝子を含んでいてよく、したがってワクチン中で使用し得る。組換えアデノウイルスは、免疫応答の誘導に重要であり病原体の拡大を制限することができる抗原が同定されており、そのcDNAが利用可能である任意の病原体に対する予防的又は治療的ワクチンとして使用することができる。
【0062】
したがって、一実施形態では、本明細書中に記載の混合物及び/又は組成物は、ヒト対象などの対象の免疫化において使用するためのものである。選択された遺伝子の免疫レベルをモニタリングして、ブースターの必要性があるならそれを決定することができる。血清中の抗体価の評価の後に、任意選択のブースター免疫化が所望され得る。
【0063】
一実施形態では、本明細書中に記載の水性混合物及び/又は(凍結乾燥)組成物を哺乳動物、たとえばヒト対象に投与し得る。具体的には、治療的又は免疫原性タンパク質である導入遺伝子をコードしているアデノウイルスベクター(すなわち組換えアデノウイルスベクター)を含む混合物又は組成物が、本明細書中に記載の水性混合物又は凍結乾燥組成物中への配合が検討される。
【0064】
任意選択で、本発明の混合物又は組成物は、たとえば、さらなる免疫原、たとえば、ポリペプチド抗原及び/又はアジュバントを含めた他の構成要素を含有するように配合し得る。そのようなアジュバントは、抗原をコードしているプライミングDNAワクチンと共に投与して、抗原のみをコードしているDNAワクチンでプライミングした際に生じる免疫応答と比較して抗原特異的免疫応答を増強させることができる。或いは、そのようなアジュバントは、本発明のアデノウイルスベクターを含む投与レジメンにおいて投与するポリペプチド抗原と共に投与することができる。
【0065】
一部の実施形態では、本明細書中に記載の混合物又は組成物は、筋肉内注射、膣内投与、静脈内注射、腹腔内注射、皮下注射、皮膚上投与、皮内投与、経鼻投与、又は経口投与によって対象に投与する。
【0066】
治療レジメンが1つ以上のアデノウイルスベクター及び/又はさらなる構成要素の同時投与を含む場合、これらを同時配合するか(すなわち同じ混合物若しくは組成物中)、又はそれぞれを異なる組成物中で配合し得る。別々に配合する場合、これらは同じ部位で又はそれ付近に同位置(co-locationally)で投与することが好ましい。たとえば、構成要素を、同じ側若しくは体肢(「同側部(co-lateral)」投与)に、又は逆側若しくは体肢に(「逆側部(contra-lateral)」投与)に、(たとえば、筋肉内、経皮、皮内、皮下から選択される投与経路を介して)投与することができる。
【0067】
ウイルスベクターの投薬量は、処置する状態、患者の年齢、体重、及び健康などの因子に主に依存し、したがって患者間で変動し得る。たとえば、ウイルスベクターの治療上有効な成体のヒト又は獣医学的投薬量は、一般に、1×105~1×1015個のウイルス粒子、たとえば1×108~1×1012(たとえば、1×108、5×108、1×109、5×109、1×1010、2.5×1010、5×1010、1×1011、5×1011、1×1012個の粒子)を含有する。或いは、ウイルスベクターは、典型的には1×105~1×1010個のプラーク形成単位(PFU)、たとえば、1×105PFU、5×105PFU、1×106PFU、5×106PFU、1×107PFU、5×107PFU、1×108PFU、5×108PFU、1×109PFU、5×109PFU、又は1×1010PFUである用量で投与することができる。投薬量は動物の大きさ及び投与経路に応じて変動する。たとえば、筋肉内注射用の適切なヒト又は獣医学的投薬量(約80kgの動物用)は、単一部位について約1×109~約5×1012個の粒子/mLの範囲である。任意選択で、複数の投与部位を使用し得る。別の例では、適切なヒト又は獣医学的投薬量は、経口製剤用で約1×1011~約1×1015個の粒子の範囲であり得る。
【0068】
アデノウイルスベクターは、定量的PCR分析(Q-PCR)によって、たとえばCMVプロモーター領域上に設計したプライマー及びプローブを用いて、HCMVプロモーターを含めた発現カセットを有するベクターゲノムを含有するプラスミドDNAの段階希釈を標準曲線として使用して、定量することができる。試験試料中のコピー数は平行線分析方法によって決定する。ベクター粒子定量の代替方法は、分析用HPLC又はA260nmに基づく分光光度方法であることができる。
【0069】
免疫学的に有効な量の核酸は、適切には1ng~100mgであり得る。たとえば、適切な量は1μg~100mgであることができる。特定の核酸(たとえばベクター)の適切な量は当業者が容易に決定することができる。核酸成分の例示的な有効量は、1ng~100μg、たとえば1ng~1μg(たとえば100ng~1μg)、又は1μg~100μg、たとえば、10ng、50ng、100ng、150ng、200ng、250ng、500ng、750ng、若しくは1μgであることができる。また、核酸の有効量には、1μg~500μg、たとえば1μg~200μg、たとえば10~100μg、たとえば、1μg、2μg、5μg、10μg、20μg、50μg、75μg、100μg、150μg、又は200μgが含まれることもできる。或いは、核酸の例示的な有効量は、100μg~1mg、たとえば100μg~500μg、たとえば、100μg、150μg、200μg、250μg、300μg、400μg、500μg、600μg、700μg、800μg、900μg、又は1mgであることができる。
【0070】
一般に、ヒト用量は0.3ml~2mlの体積中に含有される。したがって、本明細書中に記載の混合物及び/又は組成物は、乾燥組成物の再構成の際に、たとえば、0.3、0.4、0.5、0.6、1.0、1.5、又は2.0mlの体積のヒト用量/個体又は合わせた免疫原性成分が投与されるように配合することができる。
【0071】
当業者は、投与経路及び組換えベクターを用いる治療又はワクチンの用途に応じて、これらの用量を調節し得る。導入遺伝子の発現レベル、又はアジュバントについては循環抗体のレベルをモニタリングして、用量投与の頻度を決定することができる。
【0072】
1つ以上のプライミング及び/又はブーストステップを使用する場合、このステップには、1時間に1回、1日に1回、週に1回若しくは月に1回、又は年に1回投与する単一用量が含まれ得る。一例として、哺乳動物は、担体中に約10μg~約50μgのプラスミドを含有する1つ又は2つの用量を受け得る。送達の量又は部位は、望ましくは、哺乳動物が何であるか及び状態に基づいて選択される。
【0073】
選択された導入遺伝子によってコードされているタンパク質の治療レベル、又はそれに対する免疫応答レベルをモニタリングして、ブースターの必要性があるならそれを決定することができる。血清中のCD8+T細胞応答又は任意選択で抗体価の評価の後に、任意選択のブースター免疫化が所望され得る。任意選択で、アデノウイルスベクターは、単回投与で、又は様々な組合せレジメンで、たとえば他の活性成分を含むレジメン若しくは一連の処置と組み合わせて、又はプライム-ブーストレジメンで送達し得る。
【0074】
別段に指定しない限りは、「治療」又は「治療的」とは、防止的及び治癒的な処置の一方又は両方に関し得る。
【0075】
水性混合物又は乾燥組成物は、シリコン処理した又はシリコン処理していないガラスバイアル中に含有させ得る。一実施形態では、水性混合物又は乾燥組成物をシリコン処理していないバイアル中で提供する。適切には、水性混合物をシリコン処理していないバイアル中に含有させ、そのバイアル中に含有されている間に凍結乾燥することができる。
【0076】
また、本発明は、2つの容器を含むキットであって、その第1の容器が本明細書中に定義したアデノウイルス組成物を含み、第2の容器が、乾燥組成物を再構成するための本明細書中に定義した液体を含むキットも提供する。
【0077】
また、本発明は、本明細書中に定義した水性混合物などのアデノウイルスベクターを含有する液体を凍結乾燥(lyophilising or freeze-drying)させて、本明細書中に定義した凍結乾燥組成物を得る方法であって、アニーリングステップを含む方法も提供する。凍結乾燥サイクルは、通常は3つの方法段階からなる。
【0078】
方法の第1段階では、ほとんど水性の溶液又は混合物を凍結する。続いて、水をまず一次乾燥中の昇華によって除去する。第3段階では、凍結されなかった水を二次乾燥中の拡散及び脱離によって除去する。また、本発明者らは、凍結乾燥サイクルの凍結段階中にアニーリングステップを導入することで、アデノウイルスベクターの安定性に予想外の良い影響が与えられることも見出した。したがって、また、本発明は、凍結乾燥サイクルの凍結ステップがアニーリングステップを含む、本明細書中に記載の水性混合物などのアデノウイルスベクターを含有する液体を凍結乾燥する方法も提供する。
【0079】
凍結及び乾燥の温度並びに時間が、最終的には凍結乾燥組成物の含水量を決定する。一実施形態では、凍結乾燥組成物の含水量は、1.4%(w/w)以上、たとえば、1.4~10%(w/w)、1.4~8%(w/w)、1.7~8%(w/w)、1.9~8%(w/w)、1.4~5%(w/w)、1.7~5%(w/w)、1.9~5%(w/w)、1.4~3%(w/w)、1.7~3%(w/w)、又は1.9~3%(w/w)である。具体的な実施形態では、凍結乾燥組成物の含水量は、1.7%(w/w)以上、1.8%(w/w)以上、又は1.9%(w/w)以上である。
【0080】
記載した方法を定義する目的で、以下の用語を、当分野で知られているように使用する。用語「ガラス転移温度」すなわち「Tg」とは、非晶質の固形物が加熱の際に柔らかくなる、又は冷却の際に脆性となる温度である。用語「Tg'」とは、凍結状態でのガラス転移温度をいう。用語「崩壊温度」すなわち「Tc」とは、非晶質の材料が、もはやそれ自身の構造を支持できなくなる程度まで柔らかくなる温度をいう。用語「凍結乾燥すること(freeze-drying)」及び「凍結乾燥すること(lyophilising)」、並びに「凍結乾燥した(freeze-dried)」及び「凍結乾燥した(lyophilised)」は互換性があるように使用され、湿った物質を迅速に凍結し、次いで減圧下で脱水する同じ方法をいう。
【0081】
本明細書中で使用する用語「アニーリングステップ」とは、組成物の凍結乾燥サイクルにおける方法ステップをいい、ここで、凍結段階中に生成物を指定した凍結下の温度に事前に決定された期間の間維持する。当業者に知られているように、アニーリングは、氷結晶のオズワルド(Oswald)熟成及び非晶質マトリックスの凍結濃縮をもたらす。典型的には、アニーリング温度はTg'より(わずかに)高い。一実施形態では、アニーリングは、(Tg'+0.5℃)~(Tg'+20℃)の温度、たとえば、-15℃+/-9℃若しくは-15℃+/-6℃、又は(Tg'+0.5℃)~(Tg'+10℃)の温度で実行する。いずれにせよ、アニーリング温度は、アニーリング中にTg'と融解温度(Tm)の間であるべきである。具体的な実施形態では、アニーリングは、-4℃~-24℃、或いは-4℃~-20℃、或いは-4℃~-15℃、或いは-8℃~-15℃、たとえば-10℃+/-0.5℃の温度で行う。アニーリングは、生成物が凍結されており(固体状態)ガラス質状態である(Tg'未満)という条件で、生成物の凍結中、すなわち凍結試料が形成されている間に行うことができる。或いは、アニーリングは生成物の凍結後に行う。
【0082】
具体的な実施形態では、より具体的には、水性混合物が、ソルビトール及びトレハロースを、ソルビトールとトレハロースとの比で4/14~4/16.5で含む場合に、アニーリング温度は約-10℃(たとえば-10℃+/-1℃)である。
【0083】
一実施形態では、アニーリングステップの前に生成物を凍結する(すなわち生成物の温度がTg'未満)。一実施形態では、凍結は、試料又は水性混合物を、Tg'未満である凍結温度での一定の棚温度に曝露させることによって達成する。代替実施形態では、生成物は、棚傾斜凍結を適用することによって、すなわち、棚温度をTg'未満の凍結温度へと徐々に下げることによって凍結し得る。実施形態によれば、凍結温度は、Tg'-5℃未満、Tg'-7.5℃未満、又はTg'-10℃未満、たとえば-50℃以下の温度である。一実施形態によれば、凍結乾燥サイクルを開始する時点での生成物の温度(すなわち、凍結乾燥機中の試料の温度)は+2℃~+8℃である。
【0084】
棚傾斜凍結を適用する際、温度を、少なくとも0.1℃/分、少なくとも0.2℃/分、少なくとも0.3℃/分、若しくは少なくとも0.5℃/分の速度、及び/又は10℃/分未満、7.5℃/分、5℃/分、若しくは3℃/分未満の速度で下げる。或いは、温度を、0.1~10℃/分、0.1~5℃/分、0.2~3℃/分、又は0.3~1℃/分の速度で下げる。さらなる実施形態によれば、達成した棚温度を約又は少なくとも1時間(すなわち60分間)の間維持する。
【0085】
アニーリングステップを適用する前に生成物を凍結する状況のさらなる実施形態では、試料又は生成物の初期凍結に続いて、棚温度を、Tg'+0.5℃より高い、Tg'+1℃より高い、Tg'+3℃より高い、Tg'+5℃より高い、Tg'+10℃より高い、又はTg'+20℃より高い温度までなどの、Tg'より高い温度まで上げて、アニーリングステップを開始させる。いずれにせよ、アニーリング中に温度をTm未満に保つ。一実施形態では、温度を、少なくとも0.1℃/分、少なくとも0.2℃/分、少なくとも0.3℃/分、若しくは少なくとも0.5℃/分の速度、及び/又は10℃/分未満、7.5℃/分、5℃/分、若しくは3℃/分未満の速度で上げる。或いは、温度を、0.1~10℃/分、0.1~5℃/分、0.2~3℃/分、又は0.3~1℃/分の速度で上げる。さらなる実施形態によれば、アニーリング温度を、少なくとも2時間維持する及び/又は4時間まで維持する。
【0086】
さらなる実施形態では、アニーリングステップ後、減圧下での乾燥を開始する前に、棚温度を、Tg'-5℃未満、Tg'-7.5℃未満、又はTg'-10℃未満、たとえば-50℃以下の温度までなどの、Tg'未満の温度まで下げる。一実施形態では、これを達成するために、温度を、少なくとも0.1℃/分、少なくとも0.2℃/分、少なくとも0.3℃/分、若しくは少なくとも0.5℃/分の速度、及び/又は10℃/分未満、7.5℃/分未満、5℃/分未満、若しくは3℃/分未満の速度で下げる。或いは、温度を、0.1~10℃/分、0.1~5℃/分、0.2~3℃/分、又は0.3~1℃/分の速度で下げる。さらなる実施形態によれば、達成した棚温度を約又は少なくとも1時間(すなわち60分間)の間維持する。
【0087】
本明細書中に記載の凍結乾燥方法のステップb.ii.に企図される減圧下での乾燥は、典型的には2段階、すなわち一次乾燥及び二次乾燥で行う。一実施形態では、方法のステップb.ii.には以下が含まれる。
- ステップb.ii.1.では、生成物のTc未満である温度での一次乾燥、及び
- ステップb.ii.2.では、生成物のTcより高く、生成物のTg未満である温度での二次乾燥。
【0088】
具体的な実施形態では、本明細書中に記載の組成物の一次乾燥を-30℃+/-5℃で行い、本明細書中に記載の組成物の二次乾燥を10℃+/-5℃で行う、又は、本明細書中に記載の組成物の一次乾燥を-30℃+/-5℃で行い、二次乾燥を10℃+/-5℃で行う。
【0089】
具体的な実施形態では、本明細書中に記載のように組成物を凍結乾燥する場合、一次乾燥条件を24時間以上、24~40時間、又は30~40時間適用する。
【0090】
さらなる実施形態では、一次乾燥は、90μbar未満及び/又は40μbarより高い圧力で行う。一次乾燥条件は、24時間まで又はそれ以上で適用し得る。
【0091】
別の実施形態は、棚温度を0.1℃/分、少なくとも0.2℃/分、少なくとも0.3℃/分、若しくは少なくとも0.5℃/分の速度、及び/又は3℃/分未満、2℃/分未満、若しくは1℃/分未満の速度で上げることによって、二次乾燥温度を達成することに関する。或いは、二次乾燥温度は、棚温度を0.1~3℃/分、0.2~2℃/分、又は0.3~1℃/分の速度で上げることによって達成する。さらに別の実施形態によれば、二次乾燥温度は少なくとも-10℃かつ/又は30℃未満である。具体的な実施形態では、ソルビトール含有組成物の二次乾燥温度は25℃+/-5℃である。代替実施形態では、本明細書中に記載の組成物を凍結乾燥する際、二次乾燥温度は10℃+/-5℃である。
【0092】
二次乾燥条件は、少なくとも若しくは約3時間の間、少なくとも約4時間、少なくとも約5時間、又は、少なくとも若しくは約6時間の間適用し得る。
【0093】
本発明の具体的な実施形態には、以下が含まれる。
実施形態1:(i)アデノウイルスベクター、(ii)10mMのトリス、(iii)10mMのヒスチジン、(iv)5mMのNaCl、(v)1mMのMgCl2、(vi)2%(w/v)のスクロース、(vii)18%(w/v)のトレハロース、及び(viii)3.5%(w/v)のソルビトールを含む組成物。
【0094】
実施形態2:(i)アデノウイルスベクター、(ii)10mMのトリス、(iii)10mMのヒスチジン、(iv)5mMのNaCl、(v)1mMのMgCl2、(vi)2%(w/v)のスクロース、及び(vii)23%(w/v)のトレハロースを含む組成物。
【0095】
実施形態3:(i)アデノウイルスベクター、(ii)10mMのトリス、(iii)10mMのヒスチジン、(iv)5mMのNaCl、(v)1mMのMgCl2、(vi)2%(w/v)のスクロース、(vii)18%(w/v)のトレハロース、(viii)3.5%(w/v)のソルビトール、及び(ix)0.02%(w/v)のTWEEN 80を含む組成物。
【0096】
実施形態4:(i)アデノウイルスベクター、(ii)10mMのトリス、(iii)10mMのヒスチジン、(iv)5mMのNaCl、(v)1mMのMgCl2、(vi)2%(w/v)のスクロース、(vii)23%(w/v)のトレハロース、及び(ix)0.02%(w/v)のTWEEN 80を含む組成物。
【0097】
実施形態5:(i)アデノウイルスベクター、(ii)10mMのトリス、(iii)10mMのヒスチジン、(iv)5mMのNaCl、(v)1mMのMgCl2、(vi)2%(w/v)のスクロース、(vii)18%(w/v)のトレハロース、及び(viii)3.5%(w/v)のソルビトールを含む凍結乾燥(lyophilized or freeze-dried)組成物。
【0098】
実施形態6:(i)アデノウイルスベクター、(ii)10mMのトリス、(iii)10mMのヒスチジン、(iv)5mMのNaCl、(v)1mMのMgCl2、(vi)2%(w/v)のスクロース、及び(vii)23%(w/v)のトレハロースを含む凍結乾燥組成物。
【0099】
実施形態7:(i)アデノウイルスベクター、(ii)10mMのトリス、(iii)10mMのヒスチジン、(iv)5mMのNaCl、(v)1mMのMgCl2、(vi)2%(w/v)のスクロース、(vii)18%(w/v)のトレハロース、(viii)3.5%(w/v)のソルビトール、及び(ix)0.02%(w/v)のTWEEN 80を含む凍結乾燥組成物。
【0100】
実施形態8:(i)アデノウイルスベクター、(ii)10mMのトリス、(iii)10mMのヒスチジン、(iv)5mMのNaCl、(v)1mMのMgCl2、(vi)2%(w/v)のスクロース、(vii)23%(w/v)のトレハロース、及び(ix)0.02%(w/v)のTWEEN 80を含む凍結乾燥組成物。
【0101】
実施形態9:(i)アデノウイルスベクター、(ii)10mMのトリス、(iii)10mMのヒスチジン、(iv)5mMのNaCl、(v)1mMのMgCl2、(vi)2%(w/v)のスクロース、(vii)18%(w/v)のトレハロース、及び(viii)3.5%(w/v)のソルビトールから本質的になる組成物。
【0102】
実施形態10:(i)アデノウイルスベクター、(ii)10mMのトリス、(iii)10mMのヒスチジン、(iv)5mMのNaCl、(v)1mMのMgCl2、(vi)2%(w/v)のスクロース、及び(vii)23%(w/v)のトレハロースから本質的になる組成物。
【0103】
実施形態11:(i)アデノウイルスベクター、(ii)10mMのトリス、(iii)10mMのヒスチジン、(iv)5mMのNaCl、(v)1mMのMgCl2、(vi)2%(w/v)のスクロース、(vii)18%(w/v)のトレハロース、(viii)3.5%(w/v)のソルビトール、及び(ix)0.02%(w/v)のTWEEN 80から本質的になる組成物。
【0104】
実施形態12:(i)アデノウイルスベクター、(ii)10mMのトリス、(iii)10mMのヒスチジン、(iv)5mMのNaCl、(v)1mMのMgCl2、(vi)2%(w/v)のスクロース、(vii)23%(w/v)のトレハロース、及び(ix)0.02%(w/v)のTWEEN 80から本質的になる組成物。
【0105】
実施形態13:(i)アデノウイルスベクター、(ii)10mMのトリス、(iii)10mMのヒスチジン、(iv)5mMのNaCl、(v)1mMのMgCl2、(vi)2%(w/v)のスクロース、(vii)18%(w/v)のトレハロース、及び(viii)3.5%(w/v)のソルビトールから本質的になる凍結乾燥(lyophilized or freeze-dried)組成物。
【0106】
実施形態14:(i)アデノウイルスベクター、(ii)10mMのトリス、(iii)10mMのヒスチジン、(iv)5mMのNaCl、(v)1mMのMgCl2、(vi)2%(w/v)のスクロース、及び(vii)23%(w/v)のトレハロースから本質的になる凍結乾燥組成物。
【0107】
実施形態15:(i)アデノウイルスベクター、(ii)10mMのトリス、(iii)10mMのヒスチジン、(iv)5mMのNaCl、(v)1mMのMgCl2、(vi)2%(w/v)のスクロース、(vii)18%(w/v)のトレハロース、(viii)3.5%(w/v)のソルビトール、及び(ix)0.02%(w/v)のTWEEN 80から本質的になる凍結乾燥組成物。
【0108】
実施形態16:(i)アデノウイルスベクター、(ii)10mMのトリス、(iii)10mMのヒスチジン、(iv)5mMのNaCl、(v)1mMのMgCl2、(vi)2%(w/v)のスクロース、(vii)23%(w/v)のトレハロース、及び(ix)0.02%(w/v)のTWEEN 80から本質的になる凍結乾燥組成物。
【0109】
実施形態17:(i)アデノウイルスベクター、(ii)10mMのトリス、(iii)10mMのヒスチジン、(iv)5mMのNaCl、(v)1mMのMgCl2、(vi)2%(w/v)のスクロース、(vii)18%(w/v)のトレハロース、(viii)3.5%(w/v)のソルビトール、及び(ix)注射用水からなる組成物。
【0110】
実施形態18:(i)アデノウイルスベクター、(ii)10mMのトリス、(iii)10mMのヒスチジン、(iv)5mMのNaCl、(v)1mMのMgCl2、(vi)2%(w/v)のスクロース、(vii)23%(w/v)のトレハロース、及び(ix)注射用水からなる組成物。
【0111】
実施形態19:(i)アデノウイルスベクター、(ii)10mMのトリス、(iii)10mMのヒスチジン、(iv)5mMのNaCl、(v)1mMのMgCl2、(vi)2%(w/v)のスクロース、(vii)18%(w/v)のトレハロース、(viii)3.5%(w/v)のソルビトール、(ix)0.02%(w/v)のTWEEN 80、及び(ix)注射用水からなる組成物。
【0112】
実施形態20:(i)アデノウイルスベクター、(ii)10mMのトリス、(iii)10mMのヒスチジン、(iv)5mMのNaCl、(v)1mMのMgCl2、(vi)2%(w/v)のスクロース、(vii)23%(w/v)のトレハロース、(ix)0.02%(w/v)のTWEEN 80、及び(ix)注射用水からなる組成物。
【0113】
実施形態21:(i)アデノウイルスベクター、(ii)10mMのトリス、(iii)10mMのヒスチジン、(iv)5mMのNaCl、(v)1mMのMgCl2、(vi)2%(w/v)のスクロース、(vii)18%(w/v)のトレハロース、及び(viii)3.5%(w/v)のソルビトールからなる凍結乾燥組成物。
【0114】
実施形態22:(i)アデノウイルスベクター、(ii)10mMのトリス、(iii)10mMのヒスチジン、(iv)5mMのNaCl、(v)1mMのMgCl2、(vi)2%(w/v)のスクロース、及び(vii)23%(w/v)のトレハロースからなる凍結乾燥組成物。
【0115】
実施形態23:(i)アデノウイルスベクター、(ii)10mMのトリス、(iii)10mMのヒスチジン、(iv)5mMのNaCl、(v)1mMのMgCl2、(vi)2%(w/v)のスクロース、(vii)18%(w/v)のトレハロース、(viii)3.5%(w/v)のソルビトール、及び(ix)0.02%(w/v)のTWEEN 80からなる凍結乾燥組成物。
【0116】
実施形態24:(i)アデノウイルスベクター、(ii)10mMのトリス、(iii)10mMのヒスチジン、(iv)5mMのNaCl、(v)1mMのMgCl2、(vi)2%(w/v)のスクロース、(vii)23%(w/v)のトレハロース、及び(ix)0.02%(w/v)のTWEEN 80からなる凍結乾燥組成物。
【0117】
実施形態25:アデノウイルスベクターがチンパンジーアデノベクターなどのサルアデノベクターである、実施形態1から24のいずれか一項に記載の組成物。具体的には、アデノウイルスベクターはChAd3、ChAd63、ChAd83、ChAd155、ChAd157、Pan5、Pan6、Pan7、又はPan9から選択され、さらにより具体的には、アデノウイルスベクターはChAd3、ChAd63、ChAd83、ChAd155、ChAd157、及びPanAd3から選択され、さらにより具体的には、アデノウイルスベクターはChAd155である。
【0118】
本発明はまた、例えば以下の実施形態を包含する:
[実施形態1]アデノウイルスベクターと、ソルビトールと、トレハロース、スクロース、マンノース、マンニトール、ラフィノース、デキストラン、及びその組合せから選択される非晶質糖とを含む組成物。
[実施形態2]凍結乾燥組成物である、実施形態1に記載の組成物。
[実施形態3]ソルビトールと非晶質糖との比が4/14未満である、実施形態1又は2に記載の組成物。
[実施形態4]ソルビトールと非晶質糖との比が4/14~3/18、又は4/14~3.5/16である、実施形態1から3のいずれかに記載の組成物。
[実施形態5]塩、たとえばNaClをさらに含む、実施形態1から4のいずれかに記載の組成物。
[実施形態6]アデノウイルスベクターと、ソルビトールと、トレハロース、スクロース、マンノース、マンニトール、ラフィノース、デキストラン、及びその組合せから選択される非晶質糖とを含む水性混合物から凍結乾燥した組成物。
[実施形態7]ソルビトールと非晶質糖との比が4/14~3/18、又は4/14~3.5/16である、実施形態6に記載の組成物。
[実施形態8]水性混合物が、25mM未満、20mM未満、15mM未満、10mM未満、又は2~10mMのNaCl濃度を有する、実施形態6又は7に記載の組成物。
[実施形態9]水性混合物中の非晶質糖の濃度が18%(w/v)未満である、実施形態6から8のいずれかに記載の組成物。
[実施形態10]水性混合物中の非晶質糖の濃度が10~20%(w/v)又は14~18%(w/v)である、実施形態6から9のいずれかに記載の組成物。
[実施形態11]非晶質糖が、10~20%(w/v)又は14~18%(w/v)の水性混合物中の濃度に対応する量で存在する、実施形態6から10のいずれかに記載の組成物。
[実施形態12]水性混合物中のソルビトール濃度が3~4%(w/v)である、実施形態6から11のいずれかに記載の組成物。
[実施形態13]ソルビトールが、3~4%(w/v)の水性混合物中のソルビトール濃度に対応する量で存在する、実施形態6から12のいずれかに記載の組成物。
[実施形態14]NaClが、3~20mM、3~10mM、又は4~6mMの水性混合物中の濃度に対応する量で存在する、実施形態6から13のいずれかに記載の組成物。
[実施形態15]さらなる非晶質糖がトレハロース又はスクロースである、実施形態1から14のいずれかに記載の組成物。
[実施形態16]さらなる非晶質糖がトレハロースである、実施形態1から15のいずれかに記載の組成物。
[実施形態17]アデノウイルスベクターがチンパンジーアデノベクターなどのサルアデノベクターである、実施形態1から16のいずれかに記載の組成物。
[実施形態18]アデノウイルスベクターが、ChAd3、ChAd63、ChAd83、ChAd155、ChAd157、Pan5、Pan6、Pan7、又はPan9から選択される、実施形態1から17のいずれかに記載の組成物。
[実施形態19]アデノウイルスベクターが、ChAd3、ChAd63、ChAd83、ChAd155、ChAd157、及びPanAd3から選択される、実施形態1から18のいずれかに記載の組成物。
[実施形態20]アデノウイルスベクターがChAd155である、実施形態1から19のいずれかに記載の組成物。
[実施形態21]界面活性剤、緩衝剤、及び/又は二価金属塩をさらに含む、実施形態1から20のいずれかに記載の組成物。
[実施形態22]ポロキサマー界面活性剤(たとえばポロキサマー188)、ポリソルベート界面活性剤(たとえば、ポリソルベート80及び/又はポリソルベート20)、オクトキシナール(octoxinal)界面活性剤、ポリドカノール界面活性剤、ステアリン酸ポリオキシル界面活性剤、ポリオキシルヒマシ油界面活性剤、N-オクチル-グルコシド界面活性剤、マクロゴール15ヒドロキシステアレート、並びにその組合せから選択される界面活性剤を含む、実施形態1から21のいずれかに記載の組成物。
[実施形態23]ポロキサマー界面活性剤又はポリソルベート界面活性剤である界面活性剤を含む、実施形態1から22のいずれかに記載の組成物。
[実施形態24]ポロキサマー188又はポリソルベート80である界面活性剤を含む、実施形態1から23のいずれかに記載の組成物。
[実施形態25]ポリソルベート80である界面活性剤を含む、実施形態1から24のいずれかに記載の組成物。
[実施形態26]トリス、スクシネート、ボレート、トリス-マレエート、リシン、ヒスチジン、グリシン、グリシルグリシン、シトレート、カーボネート、ホスフェート、又はその組合せから選択される緩衝剤を含む、実施形態1から25のいずれかに記載の組成物。
[実施形態27]トリス、スクシネート、ボレート、又はその組合せから選択される緩衝剤を含む、実施形態1から26のいずれかに記載の組成物。
[実施形態28]トリスを含む、実施形態1から27のいずれかに記載の組成物。
[実施形態29]MgCl 2 、CaCl 2 、又はMgSO 4 から選択される二価金属イオン塩を含む、実施形態1から28のいずれかに記載の組成物。
[実施形態30]MgCl 2 を含む、実施形態1から29のいずれかに記載の組成物。
[実施形態31]凍結乾燥されており、1.40~10%(w/w)などの1.40%(w/w)以上の含水量を有する、実施形態1から30のいずれかに記載の組成物。
[実施形態32]注射用水で再水和/再構成するための、実施形態1から31のいずれかに記載の組成物。
[実施形態33]第1の容器が実施形態1から32のいずれかに記載の凍結乾燥組成物を含有し、第2の容器が注射用水を含有する2つの容器を含むキット。
[実施形態34]第2の容器の内容物を、第1の容器の内容物を再水和/再構成するために使用する、実施形態33に記載のキット。
[実施形態35]凍結乾燥するための、実施形態6から32のいずれかに記載の水性混合物。
[実施形態36]a.アニーリングステップが含まれる、水性混合物を凍結することと、
b.凍結した水性混合物を減圧下で乾燥することと
によって水性混合物を凍結乾燥するステップを含む、実施形態32のいずれかに記載の組成物を調製する方法。
以下、本発明を以下の非限定的な例によってさらに記載する。
【0119】
[実施例]
[実施例1]
ソルビトール効果の評価及びトレハロースとスクロースの比較
実験の目的は、凍結乾燥中におけるアデノウイルスに対するソルビトールの保護効果を評価すること、及び全トレハロースロードをスクロースで置き換えることの影響を評価することであった。実験で使用したChAd155ベクターは呼吸器合胞体ウイルスタンパク質(ChAd155-RSV)をコードしており、PCT/EP2016/063297に記載されている。ChAd155粒子を、賦形剤、10mMのトリス-10mMのヒスチジン-1mMのMgCl2.6H2O-0.02%(w/v)のTween 80-5mMのNaCl-23%(w/v)のトレハロース又はスクロース-2%(w/v)のソルビトールをさらに含む水性混合物中に配合した。糖濃度は、小児用注射に許容される最大オスモル濃度、すなわち900mOsm/kgに達すると計算された。ウイルス粒子の濃度は1.1×1011pU/mlであった。この組成は、0.5±0.02mlえ満たしたシリコン処理していない種類のガラスバイアル中において、凍結乾燥材料を0.625mlの注射用水で再構成した後に達するものとして計算された。その後、バイアルを、凍結乾燥位置に挿入した(凍結乾燥サイクル中に水蒸気が抜けることを可能にするように、部分的に挿入した)Helvoet FM460ブロモブチルストッパーで部分的に密封した。
【0120】
使用した凍結乾燥サイクルは以下のステップを含んでいた(図1に示す)。
【0121】
1.凍結:
・棚温度を-52℃に設定した。棚温度が-45℃以下となった際に、満たしたバイアルを凍結乾燥機に入れた。その後、試料を-52℃で最低1時間冷却した。
【0122】
2.アニーリングステップ:
・棚温度を上げて標的アニーリング温度(-10℃)まで1時間で到達させた
・アニーリング温度を2時間維持した
・棚温度を再度-10℃から-50℃まで、1時間かけて下げた。
・生成物を-50℃で少なくとも1時間維持した
【0123】
3.一次乾燥:
・チャンバー圧を80μbarに設定し、棚温度を3時間かけて-50℃から-25℃まで上げた。棚温度及びチャンバー圧を24時間維持した。
【0124】
4.二次乾燥:
・棚温度を6時間かけて-25℃から+10℃まで上げた一方で、チャンバー圧を40μbarまで下げた。棚温度が+10℃に達した際、これらの条件を6時間維持した。
【0125】
凍結乾燥サイクルの終わりに、825mbarのチャンバー圧に到達するまでチャンバーを乾燥窒素で満たし、その後、ストッパーをバイアル内に完全に挿入した(ストッパー留め)。ストッパー留めが完了した後、取出しのためにチャンバー圧を大気圧に平衡化させた。バイアルが取り出されるまで、チャンバー温度を+2~+8℃に維持した。その後、バイアルを取り出し、アルミニウム製フリップオフキャップでオーバーシールした。
【0126】
この実験の結果を以下の表に示す。
【0127】
再構成したワクチンの濃度に達するように希釈した、精製バルクChAd155の2つの試料を、30分間、60℃での処置の前及び後にそれぞれ陽性対照(新鮮な精製バルク対照)及び陰性対照(分解された精製バルク対照)として使用した。
【表1】
【0128】
PicoGreenアッセイはウイルス粒子の分解を測定する。Quant-iTTM PicoGreen dsDNA試薬は、溶液中の二本鎖DNAを定量するための超高感度の蛍光核酸染色剤である。
【0129】
アデノウイルス粒子のヘキソン感染力は、アデノウイルスヘキソンカプシドタンパク質について染色した細胞のフローサイトメトリー検出によって測定した。また、蛍光検出器と連結させたアニオン交換高速液体クロマトグラフィー(AEX-HPLC)システムを使用して、市販のアデノウイルス標準を参照として使用して、アデノウイルス粒子単位の濃度も測定した。使用したクロマトグラフィーシステムはDionex Ultimate 3000及びWaters Acquity UPLC biocompatible(Hクラス)であった。
【0130】
トレハロースを含有する組成物はガラス転移温度の増大を示し、生成物の高温貯蔵でより良好な安定性が誘導された。また、スクロース配合物と比較してトレハロース配合物において感染力が増大した(10~20%)。
【0131】
ソルビトール含有配合物では、ソルビトールの存在がガラス転移温度(Tg)の減少をもたらしたことが注目され、これは、生じるケークの外見に影響を与える可能性がある。図3に例示するように、ソルビトールを含有する組成物において感染力が10~20%改善された。
【0132】
[実施例2]
トレハロース、ソルビトール、及びNaClを含有する配合物の統計的DOEの決定
実験の目的は、いくつかの範囲のトレハロース、ソルビトール、及びNaClの濃度を評価して、凍結乾燥アデノウイルス候補の最適な条件を決定することであった。使用したアデノウイルスはChAd155-RSVであった。実施例1で観察されたトレハロース及びソルビトールの保護効果を、NaClの影響と共にさらに評価した。
【0133】
ChAd155-RSV粒子を、賦形剤、10mMのトリス-10mMのヒスチジン-1mMのMgCl2.6H2O-0.02%(w/v)のTween 80-NaCl(可変:5、25、又は45mM)-トレハロース(14、18.5、又は23%(v/w))-ソルビトール(0、2、又は4%(v/w))をさらに含む水性混合物中に配合した。評価したウイルス粒子の濃度は1.1×1011pU/mlであった。組成は、0.5±0.02mlを満たしたシリコン処理していない種類のガラスバイアル中において、凍結乾燥組成物を0.625mlの注射用水で再構成した後に達するものとして計算された。その後、バイアルを、凍結乾燥位置に挿入した(凍結乾燥サイクル中に水蒸気が抜けることを可能にするように、部分的に挿入した)Helvoet FM460ブロモブチルストッパーで部分的に密封した。
【0134】
以下の組成物を試験した。
- 試料1:トレハロース(T) 18.5%(v/w)-ソルビトール(S) 0%(v/w)-NaCl(N) 25mm
- 試料2:T 14%-S 0%-N 5mm
- 試料3:T 18.5%-S 4%-N 25mm
- 試料4:T 18.5%-S 2%-N 25mm
- 試料5:T 23%-S 0%-N 5mm
- 試料6:T 23%-S 4%-N 45mm
- 試料7:T 18.5%-S 2%-N 25mm
- 試料8:T 14%-S 4%-N 5mm
- 試料9:T 23%-S 0%-N 45mm
- 試料10:T 14%-S 2%-N 25mm
- 試料11:T 18.5%-S 2%-N 5mm
- 試料12:T 14%-S 0%-N 45mm
- 試料13:T 18.5%-S 2%-N 25mm
- 試料14:T 14%-S 4%-N 45mm
- 試料15:T 23%-S 2%-N 25mm
- 試料16:T 18.5%-S 2%-N 45mm
- 試料17:T 23%-S 4%-N 5mm
- 試料18:新鮮な精製バルク対照
- 試料19:分解された精製バルク対照
【0135】
再構成したワクチンの濃度に達するように希釈した、精製バルクChAd155の2つの試料を、30分間、60℃での処置の前及び後にそれぞれ陽性対照(新鮮な精製バルク対照)及び陰性対照(分解された精製バルク対照)として使用した。
【0136】
使用した凍結乾燥サイクルは以下のステップを含んでいた(図4に示す)。
【0137】
1.凍結:
・棚温度を-52℃に設定した。棚温度が-45℃以下となった際に、満たしたバイアルを凍結乾燥機に入れた。その後、試料を-52℃で最低1時間冷却した
【0138】
2.アニーリングステップ:
・棚温度を上げて標的アニーリング温度(-10℃)まで1時間で到達させた
・アニーリング温度を2時間維持した
・棚温度を再度-10℃から-50℃まで、1時間かけて下げた
・生成物を-50℃で少なくとも1時間維持した
【0139】
3.一次乾燥:
・チャンバー圧を80μbarに設定し、棚温度を3時間かけて-50℃から-30℃まで上げた。棚温度及びチャンバー圧を24時間維持した
【0140】
4.二次乾燥:
・棚温度を6時間かけて-25℃から+10℃まで上げた一方で、チャンバー圧を40μbarまで下げた。棚温度が+10℃に達した際、これらの条件を6時間維持した
【0141】
凍結乾燥サイクルの終わりに、825mbarのチャンバー圧に到達するまでチャンバーを乾燥窒素で満たし、その後、ストッパーをバイアル内に完全に挿入した(ストッパー留め)。ストッパー留めが完了した後、取出しのためにチャンバー圧を大気圧に平衡化させた。バイアルが取り出されるまで、チャンバー温度を+2~+8℃に維持した。その後、バイアルを取り出し、アルミニウム製フリップオフキャップでオーバーシールした。
【0142】
すべての試料を、T0、及び1週間、+4℃、+25℃(T1W25)、又は+30℃で貯蔵した後に分析した。
【0143】
この実験の結果を以下の表に示す。
【表2】
【0144】
PicoGreenアッセイ及びヘキソン感染力は、実施例1に記載のとおりであった。本明細書中に報告する定量的PCR(qPCR)は、ウイルス含有量を決定することを可能にする。この試験は、アデノウイルス中に存在するhCMVプロモーターを標的とする。DNA試料をQuiagen QIAmp 96 DNA Bloodで抽出した。結果はゲノム等量/ミリリットル(gE/ml)として表す。全体的なパラメータを考慮した最良の結果(たとえば、PicoGreen値が最低値、感染力及びHPLC含有量が最高値、オスモル濃度が900mOsm/kg未満)は、14~18.5%のトレハロース、4%のソルビトール、及びNaCl<25mmを含む組成物で達成された。
【0145】
統計分析の後、パラメータの様々な制約集合に基づいて以下の最適化された組成物が同定された(実験計画法(DOE)プロット1については図11を参照)。
- Tgに関する制約を考慮しない場合、最良の候補はトレハロース=14%/ソルビトール=4%/NaCl=5mMであろう。
- Tgが≧25℃であるべきことを考慮した場合、最良の候補はトレハロース=14%~16%/ソルビトール=3%/NaCl=5mMであろう。
【0146】
より高いトレハロース含有量が望ましい組成物では、以下の最適化された組成物が同定された(DOEプロット2については図12を参照)。
- トレハロース=22%、ソルビトール=2%、及びNaCl=5mM。
【0147】
凍結乾燥組成物のTgに対するソルビトール含有量の効果は、生じるケークの外見及びその中に保存されるアデノウイルス粒子の安定性に影響を与えた。その組成中にソルビトールが含まれる候補のガラス転移温度の減少は、1週間後、+25℃及び+30℃でケークの外見不良(融解/崩壊)をもたらした。ガラス転移温度の低下が、凍結乾燥ステップ後にケーク中で測定された含水量(残留湿度)と直接関連していたことが観察された。しかし、驚くべきことに、同時に、より高い含水量を有する試料(Karl Fisher滴定によって測定)が、貯蔵の際にアデノウイルス粒子の感染力をより良好に維持したことが観察された。ケークの溶けた外見にもかかわらず、少なくとも1.8%w/wの最小含水量が維持された場合、感染力はより高いまま保たれた。
【0148】
[実施例3]
配合物トレハロース/ソルビトール/NaClの統計的DOE
実施例2の結果は、トレハロース(14~16%)、ソルビトール(3~4%)、及びNaCl(5mm)の最適な範囲を支持していた。
【0149】
同じChAd155-RSVを使用して、実施例2のデータを補足するためにさらなる組成物を試験した。評価した組成物では、NaClのモル濃度を5mmに固定した。トレハロース及びスクロースの含有量は以下のように変動させた。
【表3】
【0150】
再構成したワクチンの濃度に達するように希釈した、精製バルクChAd155の2つの試料を、30分間、60℃での処置の前及び後にそれぞれ陽性対照及び陰性対照として使用した。
【0151】
また、貯蔵後(特に、低温での貯蔵後、再構成及び患者への投与の時間をカバーするために+25℃(室温)で)のケーク外見の安定性を改善するために、凍結乾燥サイクルを評価した。
【0152】
実施例2では、ソルビトールの存在下におけるTgの減少の影響は、凍結乾燥ステップ後にケーク中で測定された含水量(残留湿度)と直接関連していたと決定された。データは、安定性の際に含水量がアデノウイルスの感染力に対して保護効果を有していたことを示していたが、ケークの外見不良(溶けた外見)は望ましくない。この目的のために、凍結乾燥(freeze-drying or lyophilisation)サイクルを以下のようにさらに最適化した。
【0153】
- 凍結乾燥サイクル(1):より長い一次乾燥段階(+10時間)をより高い二次乾燥温度(+25℃)と組み合わせて使用した(図13を参照)。
- 凍結乾燥サイクル(2):より長い一次乾燥段階(+10時間)を+10℃の二次乾燥温度と組み合わせて使用した(図14を参照)。
【0154】
凍結乾燥生成物を、T0、及び1週間、+4℃(T1W4)、+25℃(T1W25)、+30℃(T1W30)で安定させた後に評価した。
【0155】
この実験の結果を以下の表に示す。
【表4】
【0156】
PicoGreenアッセイ、ヘキソン感染力、及びAEX-HPLCは、実施例1に記載のとおりであった。CCID50感染力はアデノウイルス力価の測度である。培養細胞感染用量50(Cell Culture infections Dose 50、CCID50)とは、特定の体積中の細胞の50%において細胞変性効果生じさせるために必要なウイルスの量を定量する、エンドポイント希釈アッセイである。本実施例では、力価をlog10スケールで表す(Log CCID50/ml)。これは、希釈系列の試料を指示細胞上に接種することによって測定する。インキュベーション時間(アデノウイルスでは7日間、37℃)の後、アデノウイルスヘキソンを免疫染色し、結果を顕微鏡観察で決定した。
【0157】
全体的なパラメータを考慮した最良の結果(たとえば、PicoGreen値が最低値、感染力及びHPLC含有量が最高値、オスモル濃度が900mOsm/kg未満)は、凍結乾燥サイクル2を使用して達成された。組成物2(14%のトレハロース-4%のソルビトール)、4(16%のトレハロース-3.5%のソルビトール)、及び5(16%のトレハロース-4%のソルビトール)が全体的なパラメータに関して最良の成績であった。
【0158】
[実施例4]
凍結乾燥アデノウイルスの安定性
凍結乾燥組成物の安定性研究を、5カ月間にわたって25℃で、又は7カ月間にわたって15℃で行った。また、分解が同様のプロファイルに従うであろうという仮定に基づいた統計的モデルを使用して、リアルタイムデータの3年間への外挿も行った。2つの安定性モデルを使用して、HPLC及び感染力によって測定し、蛍光活性化細胞分取(FACS)によって測定し、国際単位(IU)で表したウイルス含有量を外挿した。(1)線形モデル:
【数1】
、(2)一次崩壊モデル:
【数2】
、及び(2)一次崩壊(漸近線あり):
【数3】
。測定及び外挿したデータをどちらも以下の表に示す。
【表5】
【0159】
15℃での二次乾燥は、アデノウイルスの損失で測定して、25℃での二次乾燥よりも高い安定性をもたらした。図18及び19に示すように、2つのプロファイルを観察した。図18は、18%のトレハロース+3.5%のソルビトール又は23%のトレハロースのどちらかを用いて、15℃の二次乾燥温度で配合したアデノウイルスの、4℃で200日間にわたる安定性を示す。図19は、18%のトレハロース+3.5%のソルビトール又は23%のトレハロースのどちらかを用い、25℃の二次乾燥温度で配合したアデノウイルスの、4℃で200日間にわたる安定性を示す。
【0160】
図18及び19に示すように、23%のトレハロースの濃度は、凍結乾燥の際に18%のトレハロース+3.5%のソルビトールの濃度よりも比較的高い損失(約45%)をもたらし、続く4℃での経時的な損失はわずかであった。対照的に、18%のトレハロース+3.5%のソルビトールは、約30%のアデノウイルスベクター損失しかもたらさなかった。
【0161】
[実施例5]
凍結乾燥アデノウイルスの物理的安定性
道路及び/又は航空による輸送から生じる振動ストレスを再現する機械的ストレスの、凍結乾燥組成物の安定性に対する効果を検査した。より具体的には、凍結乾燥状態での組成物の物理的安定性を、振盪ストレスへの曝露の後に試験した。
【0162】
2つの配合物を既に記載のように調製し、試験した。
(1)18%のスクロース+3.5%のソルビトール
(2)23%のトレハロース
【0163】
それぞれの試験条件について、シリコン処理した又はシリコン処理していないもののどちらかの、凍結乾燥組成物を含有する10個のガラスバイアルを、軽量の断熱容器(Sofribox)の内部に、4℃で、水平にテープで貼った。それぞれの試験で3つの反復試料を使用した。Lansmontモデル1000振動試験システムを使用して、試料を勢いよく2時間「レベル2」で振とうし、続いてさらに2時間「レベル1」で振とうした。実験設計は、それぞれ2時間の道路輸送及び2時間の航空輸送中に遭遇する振動ストレスを再現することを意図している。
【0164】
振動は、ケークの組成、並びに振動の強度及び期間に応じて、ケークを粉末へと徐々に崩壊させると予想される。凍結乾燥組成物の物理的完全性は、0、2時間、及び4時間の時点でAxiovision(CQR及び写真)を使用した視覚解析によって決定した(図20及び21)。
【0165】
図20は、道路輸送による2時間及び航空輸送による2時間のシミュレーション輸送後に、無傷のまま(O)、ひび割れた(+)、又は断片化していた(X)のいずれかの凍結乾燥試料の割合を示す。18%のトレハロース+3.5%のソルビトールを有する配合物は、23%のトレハロースを有する配合物よりも振動ストレスによって受ける影響が少なかった凍結乾燥組成物をもたらした。また、15℃の二次乾燥温度も、輸送中の振動ストレスによって受ける影響がより少なかった凍結乾燥組成物をもたらした。18%のトレハロース+3.5%のソルビトールを有する配合物、15℃の二次乾燥温度、及びシリコン処理したバイアルの使用は、凍結乾燥ケークを無傷に保つために最良の条件をもたらした。
【0166】
図21は、道路輸送による2時間及び航空輸送による2時間のシミュレーション輸送後に、粉末状でないまま(O)、わずかに粉末状(+)、又は粉末状(X)であった凍結乾燥試料の堅牢性を示す。18%のトレハロース+3.5%のソルビトールを有する配合物は、23%のトレハロースを有する配合物よりも振動ストレスによって受ける影響が少なかった凍結乾燥組成物をもたらした。また、15℃の二次乾燥温度も、輸送中の振動ストレスによって受ける影響がより少なかった凍結乾燥組成物をもたらした。18%のトレハロース+3.5%のソルビトールを用いて配合した場合、15℃の二次乾燥温度は25℃の二次乾燥温度よりも少ない粉末の形成をもたらした。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21