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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-15
(45)【発行日】2022-06-23
(54)【発明の名称】タイヤトレッド化合物
(51)【国際特許分類】
   C08L 7/00 20060101AFI20220616BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20220616BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20220616BHJP
【FI】
C08L7/00
C08L101/00
B60C1/00 A
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019542581
(86)(22)【出願日】2018-02-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-03-12
(86)【国際出願番号】 US2018018005
(87)【国際公開番号】W WO2018148728
(87)【国際公開日】2018-08-16
【審査請求日】2021-02-12
(31)【優先権主張番号】62/458,310
(32)【優先日】2017-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501166968
【氏名又は名称】クーパー タイヤ アンド ラバー カンパニー
【氏名又は名称原語表記】Cooper Tire & Rubber Company
【住所又は居所原語表記】701 Lima Avenue, Findlay, Ohio 45840, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コルビン、ハワード
(72)【発明者】
【氏名】ドンリー、ティモシー
(72)【発明者】
【氏名】ウォルターズ、ザカリー
【審査官】中落 臣諭
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-508287(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L1/00-101/14
C08K3/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ある量の天然ゴムを含むエラストマーと;
エラストマーの全体にわたって分布し、少なくとも20phrの量で存在する、ある量の炭化水素樹脂と、
を含むタイヤトレッド組成物であって:
タイヤトレッド組成物中で使用されるエラストマー及び炭化水素樹脂と一致するエラストマー-樹脂混合物の実際のTgと、当該エラストマー-樹脂混合物の予想Tgとの偏差によって測定して、エラストマー中の樹脂の20phrの所定の濃度で天然ゴム中の所定の混和性を、炭化水素樹脂が有し、
しかも、当該エラストマー-樹脂混合物中の所定の混和性が、当該実際のTgと当該予想Tgとのパーセント(6%)未満の偏差であり、
炭化水素樹脂が110℃~165℃の軟化点を有し、
しかも、炭化水素樹脂が、石油供給原料に由来する芳香族スチレン系モノマーと混合ジシクロペンタジエン(DCPD)の熱重合によって製造される炭化水素樹脂、及び、重合アルファ-ピネン樹脂、重合ベータ-ピネン樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、脂環式炭化水素樹脂、及びそれらの組合せから成る炭化水素樹脂の群から選択され、
しかも、炭化水素樹脂が、クマロン-インデン樹脂、フェノール樹脂、及びアルファ-メチルスチレン樹脂を含まない、
前記の組成物。
【請求項2】
エラストマーが天然ゴムから成る、請求項1のタイヤトレッド組成物。
【請求項3】
エラストマー-樹脂混合物の実際のTgが、-80℃~-15℃である、請求項1のタイヤトレッド組成物。
【請求項4】
タイヤトレッド組成物の実際のTgが、-50℃~-5℃の間である、請求項1のタイヤトレッド組成物。
【請求項5】
タイヤトレッド組成物が、天然の可塑剤を含有しない、請求項1のタイヤトレッド組成物。
【請求項6】
エラストマー-樹脂混合物が、充填材及び可塑剤を含まない、請求項1のタイヤトレッド組成物。
【請求項7】
所定の混和性が、エラストマー-樹脂混合物の数理モデルによって計算される、請求項1のタイヤトレッド組成物。
【請求項8】
数理モデルがフォックス方程式を含む、請求項7のタイヤトレッド組成物。
【請求項9】
当該エラストマー-樹脂混合物中の所定の混和性が、当該実際のTgと当該予想Tgとのパーセント(5%)未満の偏差である、請求項1のタイヤトレッド組成物。
【請求項10】
炭化水素樹脂が、500g/mol~4000g/molの間の数平均分子量を有する、請求項1のタイヤトレッド組成物。
【請求項11】
天然ゴムが、ヘベア天然ゴム、グアユール天然ゴム、ロシアンタンポポ天然ゴム及びそれらの組合せから成る群から選択される要素である、請求項1のタイヤトレッド組成物。
【請求項12】
請求項1に記載のタイヤトレッド組成物で製造されるタイヤトレッド。
【請求項13】
請求項1に記載のタイヤトレッド組成物で製造されるタイヤトレッドを含むタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、February 13, 2017に提出された米国仮出願第62/458,310の利益を主張する。当該仮出願の開示全体は、参照によってここに組み込まれる。
【0002】
分野
本開示は、タイヤ用ゴム組成物に関し、より詳しくは、タイヤ用トレッドとして使用される天然ゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
タイヤ産業は、極めて競争的であり、従って、価格の変化に伴って、原材料を切り換えるのが可能なことが重要である。旅客タイヤトレッドにおいては、典型的なエラストマーシステムは、スチレンブタジエンゴム(SBR)とポリブタジエンゴム(BR)の混合物である。SBRは、溶液ベースのポリマー又はエマルジョンベースのポリマーであることができる。BRは、典型的に、高シス型である。SBRは、SBR/BRエラストマーシステムを有するトレッド化合物中で、普通大量に使用され、SBRのタイプ及び量は、タイヤ最終用途で所望される性能特徴に基づいて選択される。
【0004】
トレッド化合物の性能は、エラストマーシステムのガラス転移温度(Tg)によって、主に決定される。高シスBRは、約-105℃のガラス転移温度を有する。SBRのTgは、スチレン及びビニル含有量に応じて、-75℃(以下)~0℃超の範囲の値でコントロールできる。こうして、トレッド化合物は、SBR中のスチレン/ビニル含有量及びBRに対するSBRの比率の両方によってトレッド化合物のTgを設定するために極度の柔軟性を有する。価格に応じて、SBR/BR比率は、範囲内の価格用に最適化することもできる。
【0005】
天然ゴム、SBR及びBRの間に価格の大きな相違が存在する時には特に、旅客タイヤ化合物においてより多くの天然ゴムを使用できるという産業上の必要性が存在する。しかし、典型的には、天然ゴムは、旅客タイヤトレッドにおいては限定的な量でのみ使用され、材料のほとんどは、大型トラック及びバストレッド化合物で使用され、全て天然ゴムであることができる。理想的には、もしも天然ゴムの価格がSBR及びBRに対して低いならば、旅客タイヤに使用されるエラストマーシステム中で天然ゴムのみを使用するトレッド化合物を有することが極めて有利であろう。
【0006】
旅客トレッド化合物中で全て天然ゴムを使用する上でのチャレンジの1つは、天然ゴムに関連した低いTg(約-65℃)である。純粋な天然ゴムを従来のプロセスオイルと混合すると、低いTgのタイヤトレッド化合物になり、これは、現代の旅客タイヤに必要なウェットトラクション特徴を有しないであろう。
【0007】
樹脂などの添加剤は、タイヤ化合物の加工性を改善するために、タイヤ産業において長年使用されてきた。これらの材料は、エラストマーの混合、バッチ間均一性を促進する均質剤の機能を果たすことができ、充填材分散を改善し、そして、ビルディングタックを改善できる。これらのタイプの樹脂は、炭化水素(例えば、C5、C9、混合C5-C9、ジシクロペンタジエン、テルペン樹脂、高スチレン樹脂、及び混合物)、クマロン-インデン樹脂、ロジン及びそれらの塩、純粋なモノマー樹脂、及びフェノール樹脂、を含む。
【0008】
樹脂は、ウェットトラクションなどの他の特性を妥協することなしで摩耗などの特性を最大にするために合成トレッド化合物のTgを調節するために使用されてきた。例えば、Labauzeの米国特許第7,084,228は、摩耗を改善するためにより高いBRレベルを実現できるようなやり方で、特定のテルペンベースの樹脂をSBR/BRトレッド化合物中に組み込むことができることを教示するが、タイヤトレッド化合物のTgは同じに維持される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
転がり抵抗又は摩耗などの特性に悪影響を与えることなしで、ウェットトラクションを改善するためにTgの上昇を提供するために、天然ゴムのTgを上昇させることができる添加剤を有する天然ゴムトレッド化合物の継続する必要性が存在する。望ましくは、ほんの少量のそのような添加剤が、コストを最小限にするために要求されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
概要
本開示によれば、転がり抵抗又は摩耗などの特性に悪影響を与えることなしで、ウェットトラクションを改善するためにTgの上昇を提供するために、天然ゴムのTgを上昇させることができる添加剤を有する天然ゴムトレッド化合物であって、コストを最小限にするためにほんの少量のそのような添加剤を要求するものが、驚いたことに見出された。
【0011】
一形態では、タイヤトレッド組成物は、ある量のエラストマーと、エラストマーの全体にわたって実質的に均一に分布するある量の炭化水素樹脂と、を含む。エラストマーは、天然ゴムを含み、特に、形態は、全体に天然ゴムから成る。タイヤトレッド組成物中で使用されるエラストマー及び炭化水素樹脂と一致するエラストマー-樹脂混合物の実際のTgと、当該エラストマー-樹脂混合物の予想Tgとの偏差によって測定して、天然ゴム中の所定の濃度で所定の混和性を、炭化水素樹脂が有する。
【0012】
ここで使用する時、用語「タイヤトレッド組成物中で使用されるエラストマー及び炭化水素樹脂と一致するエラストマー-樹脂混合物」は、エラストマー-樹脂混合物中のエラストマーに対する樹脂の重量比当りが、タイヤトレッド組成物中のエラストマーに対する樹脂の重量比当りと実質的に同じであることを、意味する。
【0013】
特に、20phrの当該樹脂がエラストマー-樹脂混合物中で使用される時、当該エラストマー-樹脂混合物中の所定の混和性は、当該実際のTgと当該予想Tgとの約6パーセント(6%)未満の偏差である。この形態では、Tgに対する充填材及びオイルの影響は、考慮から有利に除去される。なぜなら、タイヤトレッド組成物中のエラストマーのみが、それらの相対添加量では、実際のTgと予想Tgとの偏差を決定するために考慮されるからである。
【0014】
他の形態では、Tgに対する炭化水素エラストマーの影響を確実にするために使用されるエラストマー-樹脂混合物は、タイヤトレッド組成物と同じか又はほとんど同じであることができる。例えば、エラストマー-樹脂混合物は、タイヤトレッド組成物と同じ相対濃度で、Tgに対する影響を有する同じ添加剤材料を有するように、配合することができる。特に、タイヤトレッド組成物は、ある量のエラストマーと、エラストマーの全体にわたって実質的に均一に分布するある量の炭化水素樹脂と、を含むことができる。エラストマーは、天然ゴムを含み、特に、形態は、全体に天然ゴムから成る。炭化水素樹脂は、天然ゴム中の所定の濃度で所定の混和性を有する。タイヤトレッド組成物の実際のTgと、タイヤトレッド組成物の予想Tgとの偏差によって、所定の混和性が測定される。特に、20phrの樹脂がタイヤトレッド組成物中で使用される時、天然ゴム中の所定の混和性は、タイヤトレッド組成物の実際のTgと予想Tgとの約6パーセント(6%)未満の偏差である。この形態では、タイヤトレッド組成物中の充填材及びオイルは、実際のTgに対する影響を及ぼすであろう。これは、実際のTgと予想Tgとの偏差を決定する上で考慮される。
【0015】
特定の形態では、本開示は、天然ゴムと混和性であるように設計される高軟化点樹脂を含む天然ゴムトレッド化合物を含む。ポリマーシステムでの樹脂の混和性は、トレッド化合物において重要である。なぜなら、樹脂/ポリマーシステムが非混和性になると、樹脂は、エラストマーシステムのTgに対する影響をそれほど及ぼさないからであり、そして、動力学的特性を低下することができるポリマーマトリックス中の別個の相を実際に形成できるからである。いくつかの樹脂は、限定された範囲では天然ゴムと混和性であるが、その混和性は、樹脂とポリマーとの間の極性の相違、樹脂の分子量、及び、樹脂又はポリマーが含有できるいかなる官能基、に依存するであろう。
【0016】
混和性を測定する1つの方法は、システムの実際のTgを、完全に混和性のシステムとして計算した予想Tgと、比較することである、ということが、見出された。Tgを予想するために様々な数理モデルが使用でき、そして、本開示の範囲内にあると全て考慮されるが、そのような計算は、(下記に示す)フォックス方程式を使用して実施することができ、それは、各成分の重量パーセントを、全体のガラス転移温度に関連させる。
【数1】

上記の式中、Tgは、ブレンドの全体のガラス転移であり、Tg,1は、成分1のガラス転移温度であり、Tg,2は、成分2のガラス転移であり、そして、x1は、成分1の重量フラクションである。
【0017】
この方程式は、そのようなブレンド中の高Tg成分のTgが高いほど、ブレンドでのいかなる特定のTgを実現するのに要求される高Tg成分が少ないことを、示す。タイヤトレッドのポリマーシステムでは、これは、樹脂のガラス転移温度が高いほど、化合物の全体のTgを高い値に調節する必要性が少ない、ということを意味する。
【0018】
本開示で使用される適切な数理モデルは、少なくとも周知のフォックス方程式ほどのかなりの正確さでTgを予想して、こうして、同じ予想を実質的に生みだすであろう、ということが理解されるべきである。従って、エラストマー-樹脂混合物中で20phrの樹脂でのフォックス方程式予想での6パーセント(6%)未満の偏差の所定の混和性は、これらの他の適切な数理モデルにも同等に適用する。
【0019】
この利益に対しては、実際の制限が存在する。例えば、樹脂及びポリマーシステムは、混合されなければならず、そして、トレッド化合物の典型的な混合温度は、165℃を超えない。この温度は、非常に制限された時間で実現され、こうして、樹脂はまず軟化しなければならず、こうして、それは、ポリマーマトリックス中に完全に組み込むことができる。こうして、165℃より高い軟化点を持つ樹脂は、本開示のタイヤトレッド化合物としては不適切であることが見出された。エラストマーシステムでの十分な組み込みを確保するために、マスター混合の間のダンプ温度が樹脂の軟化点よりも少なくとも20~30℃高くあるべきである、ということも見出された。
【0020】
樹脂軟化点の実際の下限は110℃である。なぜなら、このレベルよりも低いと、全体の化合物の所望のTgを実現するためには、かなり高いレベルの樹脂が要求されるからである。軟化点及びガラス転移温度は、炭化水素樹脂では、よく関連しており、軟化点は、Tgよりも約45℃高い。
【0021】
非混和性システムは、このフォックス方程式に従わないであろうということ、及び、示差走査熱分析(DSC)でのTg挙動は、結果として実質的に変化し得るということ、が理解されるべきである。この非混和性決定の例は、図1にグラフで表現される。かなりの非混和性システムでは、両方の成分の元のTgが見られるが、より典型的なことは、混和性の程度に依存する、各々の成分のTgのシフトである。混合物のTgが、フォックス方程式によって予想される値から更に離れるほど、システムの混和性が少なくなることが考慮されるべきである。実質的に完全な混和性が、タイヤトレッド化合物では所望される。
【0022】
他の形態では、本開示のタイヤトレッド化合物は、>98% cis-ポリイソプレンポリマー中での特定の樹脂の使用に関する。これは、天然ゴム又は合成ゴムの配合の両方を含む。天然ゴムは、いかなる源に由来することができる。ヘベアが最も普通であるが、グアユール及びロシアンタンポポ(TKS)も使用できる。
【0023】
合成の高シスポリイソプレンが、業界で周知であって、Goodyear ChemicalからNatsyn(登録商標)2200として、及び、the Joss GroupからSKI-3(登録商標)して、市販されている。樹脂に関する制限としては、110~165℃の間の軟化点を含むであろう。これは、例えば、“Standard Test Methods for Softening Point of Hydrocarbon Resins and Rosin Based Resins by Automated Ring-and-Ball Apparatus”のタイトルのASTM D6493に記載されている環球法によって決定される。樹脂に関する制限としては、(例えば、フォックス方程式によって)予想されるものの6%の範囲内(最も特定の形態では、予想されるものの5%の範囲内)のNRと樹脂との混合物での観察Tg値をも含むであろう。この範囲内の樹脂は、特にウェットトラクションでは、良好な配合性能を示すことが、見出された。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図面の簡単な記述
本開示の他の利点と同様に、上記の点は、特にここに記載の図面に鑑みて考慮すると、以下の詳細な記述から当業者には容易に明白になるであろう。
【0025】
図1図1は、(実線によって示される)フォックス方程式によって予想されるTgと実際のTgとの間の一致によって決定される、十分な混和性を持つ樹脂を有する第1のゴム化合物(実線で示される)と、フォックス方程式によって予想されるTgから逸脱した第2のゴム化合物(点線で示される)と、のモデルであり、こうして、これは、非混和性樹脂を例証しており、そこでは、第2のゴム化合物の曲線は、第1のゴム化合物の曲線からの顕著な偏差を示している。「非混和性」樹脂の混和性は非常に制限されるので、一旦エラストマーが樹脂で飽和されると、樹脂は、混合物のTgに対して大きな影響を及ぼさないであろう。こうして、曲線の平坦化が存在する。樹脂は、もしもそれが十分に非混和性であるならば、別個の相を形成できることを、理解すべきである。
【0026】
図2図2~9は、天然ゴム組成物中の様々なPHR添加量での2つの異なる樹脂タイプでのDSC試験結果を示す。一方の樹脂は、ここに記載されているような混和性であり、他の樹脂は、ここに記載されているような非混和性である。
図3図2~9は、天然ゴム組成物中の様々なPHR添加量での2つの異なる樹脂タイプでのDSC試験結果を示す。一方の樹脂は、ここに記載されているような混和性であり、他の樹脂は、ここに記載されているような非混和性である。
図4図2~9は、天然ゴム組成物中の様々なPHR添加量での2つの異なる樹脂タイプでのDSC試験結果を示す。一方の樹脂は、ここに記載されているような混和性であり、他の樹脂は、ここに記載されているような非混和性である。
図5図2~9は、天然ゴム組成物中の様々なPHR添加量での2つの異なる樹脂タイプでのDSC試験結果を示す。一方の樹脂は、ここに記載されているような混和性であり、他の樹脂は、ここに記載されているような非混和性である。
図6図2~9は、天然ゴム組成物中の様々なPHR添加量での2つの異なる樹脂タイプでのDSC試験結果を示す。一方の樹脂は、ここに記載されているような混和性であり、他の樹脂は、ここに記載されているような非混和性である。
図7図2~9は、天然ゴム組成物中の様々なPHR添加量での2つの異なる樹脂タイプでのDSC試験結果を示す。一方の樹脂は、ここに記載されているような混和性であり、他の樹脂は、ここに記載されているような非混和性である。
図8図2~9は、天然ゴム組成物中の様々なPHR添加量での2つの異なる樹脂タイプでのDSC試験結果を示す。一方の樹脂は、ここに記載されているような混和性であり、他の樹脂は、ここに記載されているような非混和性である。
図9図2~9は、天然ゴム組成物中の様々なPHR添加量での2つの異なる樹脂タイプでのDSC試験結果を示す。一方の樹脂は、ここに記載されているような混和性であり、他の樹脂は、ここに記載されているような非混和性である。
【0027】
図10図10は、全体に合成ゴムトレッド化合物に対して、本開示に従った天然ゴムトレッド化合物でのウェットハンドリング及びウェットブレーキの比較タイヤ試験結果を示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
詳細な記述
下記の詳細な記述及び添付の図面は、組成物の様々な形態を記載し例証する。当該記述及び図面は、当業者が組成物を製造して使用できる役目を果たし、いかなるやり方でも組成物の範囲を制限する意図ではない。開示されている方法に関して、提示されている工程は、本質的に例示であり、こうして、工程の順序は、特に開示されていない限り、必要でも決定的なものでもない。
【0029】
本開示は、ある量のエラストマー及びある量の炭化水素樹脂を有するゴム配合物を含む。炭化水素樹脂は、非限定的な例として例えば押出又は成形操作より前の混合操作によって、エラストマーの全体にわたって実質的に均一に分布している。エラストマーを通じて樹脂の実質的に均一の分布は、充分な混合操作によって促進できること、及び、当業者はそのような混合操作を実行する能力を所有していること、が理解されるべきである。
【0030】
ゴム配合物は、様々な硫黄加硫性構成ポリマーを様々な一般に使用される添加剤材料と混合することなどのゴム配合技術で公知の方法によって、配合できる。当該一般に使用される添加剤材料は、例えば、硫黄などの硬化剤、活性化剤、抑制剤及び促進剤、オイルなどの加工添加剤、例えば、粘着性樹脂、シリカ、可塑剤、充填材、顔料、脂肪酸、酸化亜鉛、ワックス、酸化防止剤及びオゾン劣化防止剤、しゃく解剤、及び、例えばカーボンブラックなどの補強剤など、である。ゴム配合物用の他の適切な添加剤も、所望により使用できる。ゴム配合物の意図する用途に応じて、通常の添加剤が選択されて、従来の量で使用される。
【0031】
特定の形態では、エラストマーシステムは、天然ゴムを含む。最も特定の形態では、エラストマーシステムは、全体に天然ゴムから成る。
【0032】
樹脂のタイプ及び添加量は、エラストマーシステムの天然ゴムと樹脂との所望の混和性を提供するように、選択される。クマロン-インデン樹脂、フェノール樹脂及びアルファ-メチルスチレン(AMS)樹脂とは異なると理解されるべき特定の炭化水素樹脂が、この目的のために特に適切であるということが、見出された。樹脂のタイプ及び添加量は、特定の樹脂添加量レベルでのTgの予想と実際のTgとの対応によって定義されるような混和性によって主に制約されるが、選択される炭化水素樹脂の分子量(Mn)は、典型的には500~3000g/molの間であり、天然ゴムとの十分な混和性を提供するために典型的には4000g/molを超えない。
【0033】
特定の樹脂添加量レベルでのTgの予想のための特に適切な計算として、ここではフォックス方程式が特定されるが、人工知能モデルなどの他のモデル及び方程式も、所望により、特定の樹脂添加量レベルでのTgを予想するために開示の範囲内で使用できることを、当業者は理解すべきである。こうして、本開示は、ポリマー中の樹脂混和性の課題に対してフォックス方程式を適用することに限定されない。
【0034】
樹脂は、全体化合物のTgが例えば約-50℃~-5℃の間の所望の範囲のレベルで、ゴム配合物に添加される。特に、樹脂の添加量は、所望の化合物Tg及び関連するトラクション性能を提供するように、しかし、従来の混合操作下での混合を妨げるほど多くないように、最大にすることもできる。特に、添加される樹脂のレベルは、約5phr~約40phrの間であることができる。例えば、樹脂は、少なくとも約10phr、特定の例では少なくとも約15phr、更に特定の例では少なくとも約20phr、のレベルで添加できる。当業者は、所望により、選択される樹脂タイプ及びタイヤトレッドの最終用途に応じて、この範囲内の適切な樹脂レベルを選択できる。
【0035】
異なる樹脂タイプ及び異なる樹脂添加量での天然ゴム化合物のTgの試験を通じて、特定のタイプの炭化水素樹脂が、前述の添加量レベルで、エラストマーシステムの天然ゴムと最も混和性であり、そしてそれ故に、得られるトレッド化合物の全体のTgに対して所望の影響を及ぼすことが、驚いたことに見出された。非限定的な例として、本開示のタイヤトレッド組成物中で使用される樹脂は、下記から成る群から選択できる:脂環式炭化水素樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、重合ピネン樹脂(アルファ又はベータ)、及び、石油供給原料に由来する芳香族スチレン系モノマー及び混合ジシクロペンタジエン(DCPD)の熱重合によって製造される炭化水素樹脂、及びそれらの組合せ。
【0036】
適切な樹脂の一例は、ESCOREZ(登録商標)5340樹脂として公知の脂環式炭化水素樹脂であり、これは、the ExxonMobil Chemical Companyから市販の5300シリーズの樹脂の1つである。ESCOREZ(登録商標)5340樹脂は、ウォーターホワイト脂環式炭化水素樹脂であり、エチレン酢酸ビニル(EVA)、スチレン系ブロックコポリマー、SIS、SBS、及びSEBSブロックコポリマーなど、メタロセンポリオレフィン、アモルファスポリオレフィン、APP及びAPAOなど、を含む様々な粘着性ポリマーの粘着力を高めるように元々設計されている。ESCOREZ(登録商標)5340樹脂は、ペレットの形態で典型的に提供され、ETM22-24試験仕様に基づき約283.1°F(139.5℃)の典型的な軟化点を有する。ETM試験仕様は、アメリカ領域で使用される公表されたExxonMobil試験方法であり、ASTM試験方法から展開され、そして、リクエストすればExxonMobilから入手可能であり、参照によりここに組み込まれる。ESCOREZ(登録商標)5340樹脂は、ETM22-14に基づき3600cP(3600mPas)の溶融粘度(356°F(180℃))を有する。ESCOREZ(登録商標)5340樹脂の数平均分子量(Mn)は約400g/molであり、重量平均分子量(Mw)は約730g/molであり、共に、ETM300-83に基づく。ESCOREZ(登録商標)5340樹脂のガラス転移温度は、ETM300-90に基づき、約187°F(86℃)である。
【0037】
混和性樹脂の他の例は、ESCOREZ(登録商標)1102樹脂として公知の脂肪族炭化水素樹脂であり、これは、the ExxonMobil Chemical Companyから市販の1000シリーズの樹脂である。ESCOREZ(登録商標)1102樹脂は、熱可塑性路面標識配合用を含む様々な用途に使用される結合剤として、元々設計された。ESCOREZ(登録商標)1102樹脂は、黄色の脂肪族炭化水素樹脂であり、ペレットの形態で典型的に提供される。ESCOREZ(登録商標)1102樹脂は、ETM22-24試験仕様に基づき約212.0°F(100℃)の軟化点を有するが、この樹脂は、材料利用のための最適の範囲の軟化点の外にあり、こうして、本出願では適切とは考慮されない、ということが、理解されるべきである。ESCOREZ(登録商標)1102樹脂は、ETM22-31に基づき1650cP(1650mPas)の溶融粘度(320°F(160℃))を有する。ESCOREZ(登録商標)1102樹脂の数平均分子量(Mn)は、ETM300-83に基づき約1300g/molである。重量平均分子量(Mw)は、ETM300-83に基づき約2900g/molである。ESCOREZ(登録商標)1102樹脂のガラス転移温度は、ETM300-90に基づき約126°F(52℃)である。
【0038】
適切な樹脂の更なる例は、DERCOLYTE A(登録商標)115樹脂として公知の重合アルファピネン樹脂であり、これは、フランス南西部に本部を置くDRT (Derives Resiniques et Terpeniques)から市販のポリテルペン系樹脂のシリーズの1つである。DERCOLYTE A(登録商標)115樹脂は、薄片の形態で、典型的に提供される。DERCOLYTE A(登録商標)115樹脂は、アルファピネンの重合で製造され、そして、溶剤型接着剤又はホットメルト配合物の粘着性特性(すなわち、粘着性及び接着性)を改善するための粘着性樹脂として、元々、開発された。DERCOLYTE A(登録商標)115樹脂は、環球法で約239°F(115℃)の軟化点を有する。重量平均分子量(Mw)は約900g/molである。DERCOLYTE A(登録商標)115樹脂のガラス転移温度は、約158°F(70℃)である。
【0039】
適切な樹脂の更に別の例は、LX(登録商標)-1144LV樹脂であり、これは、the Neville Chemical Company, in Pittsburgh, Pennsylvania, USAから市販の炭化水素樹脂のシリーズの1つである、石油供給原料に由来する芳香族スチレン系モノマー及びDCPDの熱重合によって製造される熱可塑性で低分子量の炭化水素樹脂である。LX(登録商標)-1144LV樹脂は、淡黄色の薄片で入手可能である。LX(登録商標)-1144LV樹脂は、ポリアルファメチルスチレン(PAMS)コンクリート養生剤用に元々開発された。LX(登録商標)-1144LV樹脂は、ASTM E28試験方法を使用して約230°F(110℃±5℃)の軟化点(環球法)を有する。LX(登録商標)-1144LV樹脂は、約500g/molの数平均分子量(Mn)及び約1,100g/molの重量平均分子量(Mw)を有し、共に、ASTM D3536試験方法を使用する。全ての関連するASTM試験方法は、参照によりここに組み込まれる。
【0040】
異なる樹脂タイプ及び異なる樹脂添加量での天然ゴム化合物のTgの実験室試験を通じて、特定のタイプの樹脂が、前述の添加量レベルで、エラストマーシステムの天然ゴムと最も少ない混和性であり、そしてそれ故に、得られるトレッド化合物の全体のTgに対して所望の影響を及ぼさないことが、驚いたことに見出された。非限定的な例として、本開示のタイヤトレッド組成物中で使用される樹脂は、インデン-クマロン樹脂、フェノール樹脂、アルファ-メチルスチレン(AMS)樹脂、及びそれらの組合せから成る群からは選択できない。
【0041】
不適切な樹脂の一例は、Novares(登録商標)C160樹脂であり、これは、RUTGERS Novares GmbH in Duisburg, Germanyから市販のクマロン-インデンベースの樹脂のシリーズの1つである。Novares(登録商標)C160樹脂は、EMA及びEVAなどのエチレンコ-ターポリマー及びホットメルト接着剤用の粘着付与剤として、元々開発された。それは、薄片の形態で典型的に提供され、約311-329°F(155-165℃)の軟化点(環球法)を有する。
【0042】
不適切な樹脂の他の例は、DUREZ(登録商標)C160樹脂である。DUREZ(登録商標)C160樹脂は、熱可塑性アルキルフェノールベースの樹脂であり、Sumitomo Bakelite Co., Ltd.の事業体及びSumitomo Bakelite High Performance Plasticsから市販の、架橋剤の添加なしでは更に反応できない酸触媒条件下で得られるノボラック又はフェノール-ホルムアルデヒド熱可塑性樹脂のシリーズの1つである。DUREZ(登録商標)C160樹脂は、DCT試験方法DCT104を使用して約201°F(94℃)の軟化点(環球)を有し、Sumitomo Bakelite Co., Ltdから市販され、そして、参照によりここに組み込まれる。DUREZ(登録商標)C160樹脂の測定Tgは、約120°F(49℃)である。
【0043】
不適切な樹脂の更なる別の例は、KRATON(登録商標)AT8602樹脂であり、これは、Kraton Corporationから市販のα-メチルスチレン(AMS)樹脂のシリーズの1つであり、そして、ウォーターホワイトカラー及び低い臭気を有する芳香族粘着付与剤として開発されている。KRATON(登録商標)AT8602樹脂の軟化点(環球)は、約239°F(115℃)である。KRATON(登録商標)AT8602樹脂の測定Tgは、約160°F(71℃)である。
【0044】
本開示のゴム配合物は、ヒマワリ油、カノーラ油などの天然の可塑剤を含まないことが、理解されるべきである。そのような天然の可塑剤は、より高価なだけでなく、それらは、ウェットトラクションに望ましくない影響を及ぼすことも公知である。こうして、天然の可塑剤の使用は、天然ゴムを含有するゴム配合物における特定の樹脂添加量と適切な樹脂タイプの使用を通じてウェットトラクションを高めるという本開示の目的には対抗していると考えられる。
【0045】
本開示は、所定の濃度で所定の混和性を有する炭化水素樹脂及び天然ゴムを有するゴム配合物を含む物品をも、含む。ゴム配合物は、押出され、成形され、あるいは、所望の形状に形成され、そして、圧力及び熱の少なくとも1つの適用を通じて硬化されることができると、理解すべきである。特定の例として、ゴム配合物は、トレッドとしてタイヤ中に使用できる。この目的では、ゴム配合物の中に存在するエラストマー-樹脂混合物の実際のTgは、約-80℃~約-15℃の間であることができ、当該エラストマー-樹脂混合物は、典型的に-65℃~約-15℃の間である天然ゴムから成る。
【0046】
下記の例は、例証の目的で提示されており、本発明を限定しない。全ての部は、特に指示がない限り、重量部である。
【0047】

評価された樹脂は、樹脂の主要な特性と一緒に、下記の表1及び表2に特定される。
【表1】

【表2】
【0048】
化合物性能:
【0049】
評価された100%天然ゴムトレッド化合物の化合物配合は、下記の表3に示され、20phrレベルでの樹脂が使用される。
【表3】
【0050】
表3に従う化合物が、従来の混合プロトコルを使用して5.5Lインターメッシュミキサーで混合された。
【0051】
DSC試験方法:
【0052】
DSC試験が、a TA Instruments Discovery series DSCで実行された。DSC分析の試験方法は、下記のとおりである:
1. 40℃で平衡化。
2. 30℃/分で-100℃にランプ。
3. -100℃で5分間温度を維持。
4. 10℃/分で100℃にランプ。
【0053】
DSC用のサンプル調製:
【0054】
フォックス方程式の結果と比較されたDSCサンプルを調製するために、5gのグアユールゴムを、100mLのシクロヘキサン中に溶解させた。グアユールゴムの各々の5gサンプルでは、その後、適切な量の樹脂を10mLのシクロヘキサン中に溶解させ、溶解ゴム混合物に添加した。それによって、評価用のエラストマー-樹脂混合物を形成した。エラストマー-樹脂混合物は、充填材及び可塑剤を実質的に含まないことが理解されるべきである。それらは、さもなければタイヤトレッド組成物中に見つかるであろうし、タイヤトレッド組成物のTgに影響し得る。評価された各々の樹脂では、樹脂は、10phr(0.5g)、20phr(1.0g)、30phr(1.5g)、及び40phr(2.0g)レベルで添加された。その結果、樹脂と混合したグアユールゴムの4個のサンプルが、各々の樹脂で調製された。
【0055】
ゴム及び樹脂を溶媒中に完全に溶解させた後、当該溶液を、アルミホイル上に注ぎ、フード中で一晩中乾燥させた。全ての溶媒が除去されるのを確保するために、その後、サンプルを、一定の重量が実現するまで、1時間区切りで50℃に設定された循環式エアーオーブン中に置いた。その後、エラストマー-樹脂混合物のTgを特定するために、DSCを使用してサンプルを試験した。図2図9は、グアユールゴム中の各レベル又は添加量で、NOVARES(登録商標)C160樹脂及びDERCOLYTE(登録商標)A115樹脂のDSCスキャンを表現する。下記で更に詳細に示されている表4は、20phrレベルで各々評価された樹脂の測定Tgを示す。
【0056】
結果:
【0057】
エラストマー-樹脂混合物のDSC分析及びそれらの混合物を含有する化合物の配合データの選択結果が、下記の表4及び図2図9に示される。
【表4】
【0058】
フォックス方程式と比較してDSCデータに基づき、実験データがフォックス方程式モデルと如何に接近して並んでいるかに基づく予想性能に関して、樹脂をランクした。フォックス方程式とのより高い相違がある樹脂は、天然ゴムとの混和性がより低いようであると判断された。こうして、それは、混和性のより高い樹脂よりも性能が劣る。ここで議論される実際のTgと予想Tgとのパーセンテージ相違は、測定単位としてのKelvin(K)度でのTgに対してなされていると理解されるべきである。
【0059】
この予想に基づき、フォックス方程式Tg予想との%相違が低い樹脂には、ベストのランク(1)が与えられた。それに対し、より高い%相違の樹脂には、ワーストのランク(8)が与えられた。樹脂なしで試験された配合サンプルは、劣ったウェットハンドリング性能の予想で、最も低いランキングが指定された。DSC分析のランキングを、0℃でのTanδ(すなわち、ウェットハンドリングインジケータ)のランキングと比較すると、樹脂のランキングが同一であることが、観察できる。
【0060】
ウェットハンドリングインジケータの結果によれば、NEVILLE(登録商標)、DERCOLYTE(登録商標)、及びESCOREZ(登録商標)樹脂が、同様の予想されるウェットトラクション性能を有することが示される。しかし、NOVARES(登録商標)樹脂は、0℃での一方向に低いTanDのデータに基づき、他の樹脂よりも劣るウェットトラクションを有することが予想される。これは、クマロンインデン樹脂が、炭化水素樹脂ほど天然ゴム中で混和性ではない、という事実に起因して予想される結果であった。
【0061】
上述の詳細な実験室試験結果に加えて、本開示に従う天然ゴムトレッド化合物で、実際の試験タイヤを製造した。それを表3に特定する。コントロール(対照)タイヤは、全体に合成のゴムトレッド化合物を使用した。
【0062】
従来のウェットブレーキ及びウェットハンドリング試験を、試験及びコントロールタイヤで実行した。正規化された試験結果を、下記の表5及び図10に示す。
【表5】
【0063】
表5及び図10に示されるように、本開示による天然ゴムトレッド化合物は、実際のタイヤ試験においてウェットブレーキとウェットハンドリングの両方で、方向の改善という結果になった。
【0064】
予想ガラス転移温度からの偏差又はパーセンテージ相違及びゴム/樹脂DSC試験で使用されたゴム/樹脂比率を使用する化合物からのウェットトラクション結果を比較すると、天然ゴムとの混和性との上限は約6%であり、そこでは、予想ガラス転移温度と6%以上で異なるいかなる樹脂及びポリマー混合物も、本開示の範囲外である、ということが確認された。特定の形態では、予想ガラス転移温度と約5%以下で異なるポリマー及び樹脂混合物が好ましいということが、理解されるべきである。
【0065】
本発明を例証する目的で、特定の代表的な形態と詳細が示されたが、添付の特許請求の範囲に更に記載されている開示の範囲から逸脱することなく、様々な変更をすることができる、ということが、当業者には明白であろう。
本発明に関連して、以下の内容を更に開示する。
[1]
天然ゴムを含むある量のエラストマーと;
エラストマーの全体にわたって実質的に均一に分布するある量の炭化水素樹脂と、
を含むタイヤトレッド組成物であって:
タイヤトレッド組成物中で使用されるエラストマー及び炭化水素樹脂と一致するエラストマー-樹脂混合物の実際のTgと、当該エラストマー-樹脂混合物の予想Tgとの偏差によって測定して、エラストマー中の樹脂の20phrの所定の濃度で天然ゴム中の所定の混和性を、炭化水素樹脂が有し、
しかも、当該エラストマー-樹脂混合物中の所定の混和性が、当該実際のTgと当該予想Tgとの約6パーセント(6%)未満の偏差であり、
炭化水素樹脂が110℃~165℃の軟化点を有する、前記の組成物。
[2]
エラストマーが天然ゴムから成る、[1]のタイヤトレッド組成物。
[3]
天然ゴムがグアユール天然ゴムである、[1]のタイヤトレッド組成物。
[4]
天然ゴムがTKS天然ゴムである、[1]のタイヤトレッド組成物。
[5]
エラストマー-樹脂混合物の実際のTgが、約-80℃~約-15℃である、[1]のタイヤトレッド組成物。
[6]
タイヤトレッド組成物の実際のTgが、約-50℃~-5℃の間である、[1]のタイヤトレッド組成物。
[7]
炭化水素樹脂が、石油供給原料に由来する芳香族スチレン系モノマーと混合ジシクロペンタジエン(DCPD)の熱重合によって製造される炭化水素樹脂、及び、重合ピネン樹脂(アルファ又はベータ)、脂肪族炭化水素樹脂、脂環式炭化水素樹脂、及びそれらの組合せから成る炭化水素樹脂の群から選択される、[1]のタイヤトレッド組成物。
[8]
タイヤトレッド組成物が、天然の可塑剤を含有しない、[1]のタイヤトレッド組成物。
[9]
エラストマー-樹脂混合物が、充填材及び可塑剤を実質的に含まない、[1]のタイヤトレッド組成物。
[10]
炭化水素樹脂が、少なくとも約10phrの量で存在する、[1]のタイヤトレッド組成物。
[11]
炭化水素樹脂が、少なくとも約20phrの量で存在する、[10]のタイヤトレッド組成物。
[12]
所定の混和性が、エラストマー-樹脂混合物の数理モデルによって計算される、[1]のタイヤトレッド組成物。
[13]
数理モデルがフォックス方程式である、[12]のタイヤトレッド組成物。
[14]
エラストマー-樹脂混合物が、Tgに影響してそしてタイヤトレッド組成物中に見つかる添加剤材料と同じ添加剤材料を有する、[1]のタイヤトレッド組成物。
[15]
[1]に記載のタイヤトレッド組成物で製造されるタイヤトレッド。
[16]
[1]に記載のタイヤトレッド組成物で製造されるタイヤトレッドを含むタイヤ。
[17]
天然ゴムから成るある量のエラストマーと;
エラストマーの全体にわたって実質的に均一に分布するある量の炭化水素樹脂と、
を含むタイヤトレッド組成物であって:
タイヤトレッド組成物中で使用されるエラストマー及び炭化水素樹脂と一致するエラストマー-樹脂混合物の実際のTgと、当該エラストマー-樹脂混合物の予想Tgとの偏差によって測定して、エラストマー中の樹脂の所定の濃度で天然ゴム中の所定の混和性を、炭化水素樹脂が有し、
しかも、当該エラストマー-樹脂混合物中の所定の混和性が、当該実際のTgと当該予想Tgとの約6パーセント(6%)未満の偏差であり、そして、エラストマー中の樹脂の所定の濃度が20phrであり、
しかも、炭化水素樹脂が、石油供給原料に由来する芳香族スチレン系モノマーと混合ジシクロペンタジエン(DCPD)の熱重合によって製造される炭化水素樹脂、及び、重合ピネン樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、脂環式炭化水素樹脂、及びそれらの組合せから成る炭化水素樹脂の群から選択され、そして、
炭化水素樹脂が110℃~165℃の軟化点を有する、前記の組成物。
[18]
[17]に記載のタイヤトレッド組成物で製造されるタイヤトレッドを含むタイヤ。
[19]
天然ゴムを含むある量のエラストマーと;
エラストマーの全体にわたって実質的に均一に分布するある量の炭化水素樹脂と、
を含むタイヤトレッド組成物であって:
タイヤトレッド組成物の実際のTgと、タイヤトレッド組成物の予想Tgとの偏差によって測定して、エラストマー中の樹脂の20phrの所定の濃度で天然ゴム中の所定の混和性を、炭化水素樹脂が有し、
しかも、タイヤトレッド組成物中の所定の混和性が、当該実際のTgと当該予想Tgとの約6パーセント(6%)未満の偏差であり、
炭化水素樹脂が110℃~165℃の軟化点を有する、前記の組成物。
[20]
[19]に記載のタイヤトレッド組成物で製造されるタイヤトレッドを含むタイヤ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10