(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-15
(45)【発行日】2022-06-23
(54)【発明の名称】バスケットカテーテル
(51)【国際特許分類】
A61B 17/221 20060101AFI20220616BHJP
【FI】
A61B17/221
(21)【出願番号】P 2019570335
(86)(22)【出願日】2019-01-07
(86)【国際出願番号】 JP2019000054
(87)【国際公開番号】W WO2019155796
(87)【国際公開日】2019-08-15
【審査請求日】2021-04-21
(31)【優先権主張番号】P 2018021394
(32)【優先日】2018-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】特許業務法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高寺 雅之
【審査官】北村 龍平
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-22386(JP,A)
【文献】特開2015-16033(JP,A)
【文献】特開2005-87398(JP,A)
【文献】特開2015-116399(JP,A)
【文献】中国実用新案第213098156(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/221
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠位側と近位側を有する外筒部材と、
該外筒部材の内腔に配置されている内挿部材と、
前記内挿部材の遠位側に配置されており、複数の弾性ワイヤが第1結束部と、該第1結束部よりも近位側の第2結束部において結束されて形成されている拡張可能なバスケット部と、を有しているバスケットカテーテルであって、
前記バスケット部の最大外径をなす位置よりも近位側、かつ前記第2結束部よりも遠位側であって、前記複数の弾性ワイヤのうち少なくとも1本の特定の弾性ワイヤが前記外筒部材と接触している接触状態で、前記外筒部材の中心軸に対して垂直な方向から見て、前記特定の弾性ワイヤは、前記第2結束部の遠位端と前記外筒部材の遠位端の間において、前記外筒部材の中心軸に対して角度αをなしており、前記特定の弾性ワイヤが、前記外筒部材の遠位端で前記外筒部材の中心軸に対して角度βをなして
おり、
前記弾性ワイヤの最大外径位置よりも遠位側に配置されている弾性ワイヤは、前記最大外径位置よりも近位側に配置されている弾性ワイヤよりも硬度が低いバスケットカテーテル。ここで、0度<α<50度、15度<β<90度、かつα≦βである。
【請求項2】
前記弾性ワイヤの最大外径位置を含み、前記第1結束部の近位端よりも近位側であって、前記第2結束部の遠位端よりも遠位側の中央区間に配置されている弾性ワイヤが、前記中央区間以外に配置されている弾性ワイヤよりも硬度が低い請求項
1に記載のバスケットカテーテル。
【請求項3】
遠位側と近位側を有する外筒部材と、
該外筒部材の内腔に配置されている内挿部材と、
前記内挿部材の遠位側に配置されており、複数の弾性ワイヤが第1結束部と、該第1結束部よりも近位側の第2結束部において結束されて形成されている拡張可能なバスケット部と、を有しているバスケットカテーテルであって、
前記バスケット部の最大外径をなす位置よりも近位側、かつ前記第2結束部よりも遠位側であって、前記複数の弾性ワイヤのうち少なくとも1本の特定の弾性ワイヤが前記外筒部材と接触している接触状態で、前記外筒部材の中心軸に対して垂直な方向から見て、前記特定の弾性ワイヤは、前記第2結束部の遠位端と前記外筒部材の遠位端の間において、前記外筒部材の中心軸に対して角度αをなしており、前記特定の弾性ワイヤが、前記外筒部材の遠位端で前記外筒部材の中心軸に対して角度βをなしており、
前記弾性ワイヤの最大外径位置を含み、前記第1結束部の近位端よりも近位側であって、前記第2結束部の遠位端よりも遠位側の中央区間に配置されている弾性ワイヤが、前記中央区間以外に配置されている弾性ワイヤよりも硬度が低いバスケットカテーテル。ここで、0度<α<50度、15度<β<90度、かつα≦βである。
【請求項4】
前記特定の弾性ワイヤが前記外筒部材と接触している状態において、
前記特定の弾性ワイヤは前記第2結束部の遠位端を通っており、
前記
バスケットカテーテルを前記
バスケットカテーテルの遠位端側から見て、
前記特定の弾性ワイヤの前記第2結束部の遠位端と前記内挿部材の遠位端の中心とを通る第1直線と、前記特定の弾性ワイヤと前記外筒部材とが接触する点と前記外筒部材の遠位端の中心とを通る第2直線が角度γをなしている請求項1
~3のいずれか一項に記載のバスケットカテーテル。ここで、0度<γ<90度である。
【請求項5】
前記第2結束部において、前記複数の弾性ワイヤがねじって結束されている請求項1
~4のいずれか一項に記載のバスケットカテーテル。
【請求項6】
前記第1結束部において、前記複数の弾性ワイヤがねじって結束されている請求項1~
5のいずれか一項に記載のバスケットカテーテル。
【請求項7】
前記複数の弾性ワイヤがらせん状に形成されている請求項1~
6のいずれか一項に記載のバスケットカテーテル。
【請求項8】
前記バスケット部の最大外径位置において、前記複数の弾性ワイヤのうち少なくとも1本の特定の弾性ワイヤが、前記バスケット部の中心軸に対して角度Xをなしており、前記第2結束部において、前記複数の弾性ワイヤのうち少なくとも1本の特定の弾性ワイヤが、中心軸に対して角度Yをなしており、X>Yである請求項1~
7のいずれか一項に記載のバスケットカテーテル。
【請求項9】
前記バスケット部の最大外径位置よりも遠位側にある前記弾性ワイヤが、前記最大外径位置よりも近位側にある前記弾性ワイヤよりも長い請求項1~
8のいずれか一項に記載のバスケットカテーテル。
【請求項10】
前記複数の弾性ワイヤが、筒状の接続具によって前記第2結束部で結束されており、
前記接続具は、遠位側から前記弾性ワイヤの近位端部が挿入されているワイヤ挿通路を複数有している請求項1~
9のいずれか一項に記載のバスケットカテーテル。
【請求項11】
前記外筒部材の遠近方向において、前記第1結束部の近位端を0%とし前記バスケット部の最大外径位置を100%としたとき、前記バスケット部の外径が最大外径の半分となる位置が、0%~25%の範囲にあり、
前記バスケット部を側面から見て、前記複数の弾性ワイヤは、前記第1結束部の近位端から前記最大外径位置までの間における包絡線が弧状となるように形成されている請求項1~
10のいずれか一項に記載のバスケットカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、好適にバスケットに異物を捕捉することができるカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
胆管や尿道に生じる結石の治療では、SUS撚線やNi-Ti等の形状記憶合金線を籠状に編んだバスケットカテーテル(バスケット鉗子)や結石除去用バルーンカテーテルが用いられる。バスケットカテーテルにおいて、結石などの異物を捕捉するバスケット部は、複数の金属線材が遠位端と該遠位端よりも近位側の2箇所で結束されて、この2箇所の結束部の間で線材が折り曲げられたり、らせん状にねじり合わされることで籠状に構成されている。バスケットカテーテルは、内視鏡の鉗子口を通じて胆管内等の処置部に到達する。バスケット部は患部への送達時には例えば樹脂製のシースに収められており、異物の捕捉時にシースの遠位端から露出させることにより籠状に展開される。異物をバスケット内に収容した後、バスケットカテーテルを処置部から抜去し、異物を除去する。
【0003】
巨大な結石により胆管が大きく拡張している症例では、結石を小さく破砕した後に、バスケットカテーテルで結石を除去するが、拡張した胆管と結石のクリアランスが大きくなり、バスケット部の隙間から取りこぼしが生じることがある。胆管軸に沿った摺動を複数回行うことで結石を回収するが、胆泥から微小結石の場合には十分に採取することができないことがある。このため、様々なサイズの結石を採取可能なバスケットカテーテルが開発されている。
【0004】
特許文献1には生体管腔に挿入されて当該生体管腔の物体を破砕するための医療デバイスであって、破砕した物体を吸引して、シャフト外管に設けられる開口部から当該物体を除去することが開示されている。
【0005】
特許文献2には遠位側に行くに従ってバスケットワイヤの螺旋のピッチが密になっていることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-158785号公報
【文献】国際公開第2015/072394号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1の記載によれば、記載されたデバイスは小さいサイズの結石が回収可能であるが、使用時には吸引器具が必要であり、バスケットカテーテル単独で異物を回収することができない。また、特許文献2に記載されているようにワイヤ間を密に形成することで結石の取りこぼしを防止できるが、ワイヤ間が密であるために、結石を回収することが困難になったり、バスケット部を外筒部材に収納する際の引き込み時の抵抗が大きくなるおそれがある。そこで、本発明はバスケット部を外筒部材内に引き込むときの荷重を低減することができるバスケットカテーテルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決し得た本発明のバスケットカテーテルは、遠位側と近位側を有する外筒部材と、外筒部材の内腔に配置されている内挿部材と、内挿部材の遠位側に配置されており、複数の弾性ワイヤが第1結束部と、第1結束部よりも近位側の第2結束部において結束されて形成されている拡張可能なバスケット部と、を有し、バスケット部の最大外径をなす位置よりも近位側、かつ第2結束部よりも遠位側であって、複数の弾性ワイヤのうち少なくとも1本の特定の弾性ワイヤが外筒部材と接触している接触状態で、外筒部材の中心軸に対して垂直な方向から見て、特定の弾性ワイヤは、第2結束部の遠位端と外筒部材の遠位端の間において、外筒部材の中心軸に対して角度αをなしており、特定の弾性ワイヤが、外筒部材の遠位端で外筒部材の中心軸に対して角度βをなしている点に要旨を有する。ここで、0度<α<50度、15度<β<90度、かつα≦βである。本発明のバスケットカテーテルは、角度α、βが上記範囲に設定されていることにより、バスケット部の近位側において、特定弾性ワイヤが適度に径方向外方に広がりつつ、バスケット部を外筒部材内に引き込むときの荷重を低減することができるため、バスケットカテーテルの操作性が向上する。
【0009】
上記バスケットカテーテルは、特定の弾性ワイヤが外筒部材と接触している状態において、特定の弾性ワイヤは第2結束部の遠位端を通っており、カテーテルをカテーテルの遠位端側から見て、特定の弾性ワイヤの第2結束部の遠位端と内挿部材の遠位端の中心とを通る第1直線と、特定の弾性ワイヤと外筒部材とが接触する点と外筒部材の遠位端の中心とを通る第2直線が角度γをなしていることが好ましい。ここで、0度<γ<90度である。
【0010】
上記バスケットカテーテルは、第2結束部において、複数の弾性ワイヤがねじって結束されていることが好ましい。
【0011】
上記バスケットカテーテルは、第1結束部において、複数の弾性ワイヤがねじって結束されていることが好ましい。
【0012】
上記バスケットカテーテルにおいて、複数の弾性ワイヤがらせん状に形成されていることが好ましい。
【0013】
上記バスケットカテーテルは、バスケット部の最大外径位置において、複数の弾性ワイヤのうち少なくとも1本の特定の弾性ワイヤが、バスケット部の中心軸に対して角度Xをなしており、第2結束部において、複数の弾性ワイヤのうち少なくとも1本の特定の弾性ワイヤが、中心軸に対して角度Yをなしており、X>Yであることが好ましい。
【0014】
上記バスケットカテーテルにおいて、バスケット部の最大外径位置よりも遠位側にある弾性ワイヤが、最大外径位置よりも近位側にある弾性ワイヤよりも長いことが好ましい。
【0015】
上記バスケットカテーテルにおいて、複数の弾性ワイヤが、筒状の接続具によって第2結束部で結束されており、接続具は、遠位側から弾性ワイヤの近位端部が挿入されているワイヤ挿通路を複数有していることが好ましい。
【0016】
上記バスケットカテーテルは、外筒部材の遠近方向において、第1結束部の近位端を0%としバスケット部の最大外径位置を100%としたとき、バスケット部の外径が最大外径の半分となる位置が、0%~25%の範囲にあり、バスケット部を側面から見て、複数の弾性ワイヤは、第1結束部の近位端から最大外径位置までの間における包絡線が弧状となるように形成されていることが好ましい。
【0017】
上記バスケットカテーテルにおいて、弾性ワイヤの最大外径位置を含み、第1結束部の近位端よりも近位側であって、第2結束部の遠位端よりも遠位側の中央区間に配置されている弾性ワイヤが、中央区間以外に配置されている弾性ワイヤよりも硬度が低いことが好ましい。
【0018】
上記バスケットカテーテルにおいて、弾性ワイヤの最大外径位置よりも遠位側に配置されている弾性ワイヤは、最大外径位置よりも近位側に配置されている弾性ワイヤよりも硬度が低いことが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、特定弾性ワイヤが適度に径方向外方に広がりつつ、バスケット部を外筒部材内に引き込むときの荷重を低減することができるため、バスケットカテーテルの操作性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施の形態に係るバスケットカテーテルの遠位側の側面図(一部断面図)を表す。
【
図2】
図1に示すバスケットカテーテルの第2結束部付近を拡大した側面図(一部断面図)を表す。
【
図3】特定の弾性ワイヤと外筒部材の接触状態を示す模式図を表す。
【
図4】本発明の他の実施の形態に係るバスケットカテーテルの遠位側の側面図(一部断面図)を表す。
【
図5】本発明のさらに他の実施の形態に係るバスケットカテーテルの遠位側の側面図(一部断面図)を表す。
【
図6】本発明のさらに他の実施の形態に係るバスケットカテーテルの遠位側の側面図(一部断面図)を表す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、下記実施の形態に基づき本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施の形態によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、各図面において、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、明細書や他の図面を参照するものとする。また、図面における種々部材の寸法は、本発明の特徴の理解に資することを優先しているため、実際の寸法とは異なる場合がある。
【0022】
図1~
図3を参照して、バスケットカテーテルの構成について説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係るバスケットカテーテルの遠位側の側面図(一部断面図)を、
図2は
図1に示すバスケットカテーテルの第2結束部付近を拡大した側面図(一部断面図)を、
図3は特定の弾性ワイヤと外筒部材の接触状態を示す模式図を表す。図面の理解を容易にするために、
図3では特定の弾性ワイヤが第2結束部の遠位端から最大外径位置よりも近位側まで延在していることを示している。
【0023】
本発明においてバスケットカテーテル1は、遠位側と近位側を有するものであり、結石等の体内の異物を捕捉する籠状のバスケット部9を有する医療用の処置具である。バスケットカテーテル1を、以下、単に「カテーテル1」と称することがある。本発明のカテーテル1は、外筒部材2と、内挿部材3と、バスケット部9と、を有している。
【0024】
本発明において、カテーテル1の近位側とは、カテーテル1の延在方向に対して使用者、つまり術者の手元側の方向を指し、遠位側とは近位側の反対方向、すなわち処置対象側の方向を指す。また、カテーテル1の近位側から遠位側への方向を軸方向または遠近方向と称する。
【0025】
本発明のバスケットカテーテル1は内視鏡を用いた治療に用いられ、内視鏡の鉗子口を通じて、内視鏡の鉗子口の遠位側から体内に配置され、処置部まで到達する。カテーテル1のすべての材料は生体適合性を有することが望ましい。
【0026】
外筒部材2は、遠位側と近位側を有しており、内腔にバスケット部9を収容することができる。外筒部材2は、内部にバスケット部9を収容することによって、カテーテル1が内視鏡の鉗子口から鉗子チャンネル内を通って異物の近くに搬送されるまでの間にバスケット部9の弾性ワイヤ10が内視鏡内の鉗子口、鉗子チャンネル内、異物以外の体内組織等を傷付けることを防止する。
【0027】
外筒部材2としては、樹脂チューブ、単線または複数の線材、撚線の線材を特定のパターンで配置することによって形成された筒状体、金属管またはこれらを組み合わせたものが挙げられる。樹脂チューブは、例えば押出成形によって製造することができる。線材が特定のパターンで配置された筒状体としては、線材が単に交差される、または編み込まれることによって網目構造を有する筒状体や、線材が巻回されたコイルが示される。網目構造の種類は特に制限されず、コイルの巻き数や密度も特に制限されない。網目構造やコイルは軸方向の全体にわたって一定の密度で形成されていてもよく、軸方向の位置によって異なる密度で形成されていてもよい。金属管の可撓性を高めるために、金属管の外側表面には複数の環状の溝やらせん状の溝が形成されていてもよい。中でも、溝が金属管の軸方向の中央よりも遠位側の外表面、特に外周面に形成されていることが好ましい。
【0028】
外筒部材2は樹脂または金属から構成されることが好ましい。外筒部材2を構成する樹脂としては、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、塩化ビニル系樹脂、シリコーン系樹脂、天然ゴム等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂が好適に用いられる。また、外筒部材2を構成する金属としては、例えば、SUS304、SUS316等のステンレス鋼、白金、ニッケル、コバルト、クロム、チタン、タングステン、金、Ni-Ti合金、Co-Cr合金、またはこれらの組み合わせが挙げられる。特に、Ni-Ti合金から構成されている線材は、形状記憶性および高弾性に優れている。また、線材は、上述の金属、ポリアリレート繊維、アラミド繊維、超高分子量ポリエチレン繊維、PBO繊維、炭素繊維等の繊維材料であってもよい。繊維材料は、モノフィラメントであっても、マルチフィラメントであってもよい。また、樹脂から構成されている筒状体に金属線材等の補強材が配設されているものを外筒部材2として用いてもよい。
【0029】
内挿部材3は外筒部材2の内腔に配置されている。内挿部材3は近位側に設けられるハンドル(図示せず)と遠位側のバスケット部9に接続されており、手元側の操作をバスケット部9に伝達する。
【0030】
内挿部材3は外筒部材2と同様の樹脂または金属から構成されることが好ましい。内挿部材3の材料は、外筒部材2の材料と同じであってもよく、異なっていてもよい。内挿部材3は外筒部材2と同様に樹脂チューブ、単線または複数の線材、撚線の線材を特定のパターンで配置することによって形成された筒状体、金属管またはこれらを組み合わせたものを用いることができる。
【0031】
内挿部材3が中実状に形成されているか、あるいは複数の線材が結束または撚られて形成されていることが好ましい。これにより内挿部材3の外径を小さくすることができるため、カテーテル1自体の外径も小さくすることができる。例えば、バスケット部9を形成する長尺な弾性ワイヤ10を準備し、弾性ワイヤ10の遠位部分にバスケット部9を形成し、バスケット部9の第2結束部12(後述する)よりも近位部分を内挿部材3とすることができる。
【0032】
内挿部材3が中空状に形成されていることが好ましい。これにより、バスケット部9で捕捉された異物を除去等するための補助処置具を内挿部材3内に配置することができる。別の補助処置具によって、管腔内または異物の観察や捕捉した異物の除去等の処置を行うことができ、嵌頓の防止、症例に応じた手技の選択肢の増加、低侵襲治療の促進といった効果が得られる。例えば、内視鏡を併用して、胆管内の結石を除去する場合、内視鏡を胆管内に挿入することができないため、十二指腸に配置された内視鏡から胆管内に挿入されたカテーテル1から、追加の処置具である補助処置具を挿入することによって、処置の効率を高め、治療の低侵襲性を促進することができる。補助処置具としては、バルーンカテーテル、マイクロカテーテル、鉗子、レーザープローブ、ファイバースコープ、電気水圧衝撃破砕プローブまたはガイドワイヤが挙げられる。
【0033】
中空状の内挿部材3として、一または複数の線材がらせん状に巻回されて形成されている中空体を用いてもよい。内挿部材3は軸方向の一部が中空体であることが好ましく、軸方向全体が中空体であってもよい。複数の線材がらせん状に巻回されて形成される中空体は、複数の線材を撚り合わせて芯のない中空体として形成することもできる。中空体は、中空体が複数重ねられている複層中空体であることが好ましい。複層中空体は、例えば、芯材に線材を巻きつけてコイルを形成し、そのコイルの上にさらに線材を巻きつけてコイルを形成することにより形成することができる。このような中空体によれば、手元側のトルクをバスケット部9に伝達しやすくなるため、異物の捕捉操作を容易に行うことができる。
【0034】
図示していないが、内挿部材3は中空コイル体の近位端部に接続されている金属管をさらに有していてもよい。金属管が設けられることによって内挿部材3の軸方向への伸びを抑えることができる。中空体がコイル状に形成されている場合は、軸方向に沿って延在している伸長抵抗部材を中空コイル体の内側または外側に配置し、伸長抵抗部材の遠位端部と近位端部を中空コイル体に固定することができる。
【0035】
外筒部材2や内挿部材3は、単層から構成されていてもよく、複数層から構成されていてもよい。また、軸方向において外筒部材2の一部が単層から構成されており、他部が複数層から構成されていてもよく、内挿部材3についても同様である。
【0036】
造影剤や薬液等の流体から外筒部材2や内挿部材3を保護するために、外筒部材2や内挿部材3の外側表面、内側表面にはコーティング剤が塗布されていてもよい。また、内挿部材3に対するガイドワイヤの摺動性を高めるために、内挿部材3の内側表面には潤滑剤が塗布されていてもよい。さらに、外筒部材2に対する内挿部材3の摺動性を高めるために、外筒部材2の内側表面や内挿部材3の外側表面には潤滑剤が塗布されていてもよい。
【0037】
バスケット部9は体内で異物を捕捉するために設けられる。バスケット部9は内挿部材3の遠位側に配置されている拡張可能なものである。バスケット部9は外筒部材2の遠位側内部に収容された状態で処置部まで到達する。その後、バスケット部9は外筒部材2からさらに遠位側へ移動し、外筒部材2による拘束から脱して徐々に拡張し、
図1に示すような予め設計されたバスケット形状となる。複数の弾性ワイヤ10は第1結束部11と、第1結束部11よりも近位側の第2結束部12において結束されている。弾性ワイヤ10には湾曲形状や屈曲形状が付与されて籠状に形成され、第1結束部11と第2結束部12の間に異物を取り込む。詳細には、バスケット部9の第2結束部12の遠位端よりも遠位側を外筒部材2から露出させると、バスケット部9は弾性ワイヤ10の径方向の外方への拡張によってバスケット形状となり、弾性ワイヤ10の隙間からバスケット部9に異物を取り込むことができる。
【0038】
弾性ワイヤ10は、弾性を有する線状部材であり、形状記憶合金または形状記憶樹脂から構成されることが好ましい。弾性ワイヤ10は例えば、SUS304、SUS316等のステンレス鋼、白金、ニッケル、コバルト、クロム、チタン、タングステン、アルミニウム、金、銀、Ni-Ti合金、Co-Cr合金等から構成されている単線または撚線の金属線材であってもよい。中でもNi-Ti合金から構成されている金属線材であることが好ましい。弾性ワイヤ10の個数は特に制限されず、対象とする異物の大きさに応じて適宜選択することができる。一般的には、大きいサイズの異物を対象とするときは、弾性ワイヤ10の個数を少なく、小さいサイズの異物を対象とするときは、弾性ワイヤ10の個数を多くすることが好ましい。
【0039】
バスケット部9の最大外径位置15よりも遠位側と近位側において、弾性ワイヤ10が異なる材料や太さの違うワイヤから構成されていてもよい。例えば、
図1に示すように、弾性ワイヤ10の最大外径位置15を含み、第1結束部11の近位端よりも近位側であって、第2結束部12の遠位端よりも遠位側の中央区間16に配置されている弾性ワイヤ10が、中央区間16以外に配置されている弾性ワイヤ10よりも硬度が低くてもよい。具体的には、中央区間16に配置されている弾性ワイヤ10が、中央区間16よりも遠位側にある遠位区間17と、中央区間16よりも近位側にある近位区間18の少なくともいずれか一方に配置されている弾性ワイヤ10よりも硬度が低いことが好ましい。これにより、バスケット部9の外筒部材2内への引き込み荷重を低減することができる。さらに、最大外径位置15よりも遠位側に配置されている弾性ワイヤ10が、最大外径位置15よりも近位側に配置されている弾性ワイヤ10よりも硬度が低くてもよい。弾性ワイヤ10の硬度をこれらのように設定することにより、後述するバスケット部9の最大外径位置15よりも遠位側にある弾性ワイヤ10が、最大外径位置15よりも近位側にある弾性ワイヤ10よりも長い態様や、第1結束部11の近位端から最大外径位置15までの間において複数の弾性ワイヤ10の包絡線L4が弧状となる態様の場合に、バスケット部9の外筒部材2内への引き込み荷重をより低減することができる。
【0040】
バスケット部9は最大外径位置15を挟んで遠位側と近位側で弾性ワイヤ10の個数が異なっていてもよく、例えば、最大外径位置15よりも遠位側の個数を近位側よりも多くすることができる。これにより、弾性ワイヤ10の間隔がバスケット部9の遠位側では密に、近位側では疎になりやすくなる。疎の部分(近位部分)を用いることでバスケット部9内に異物を取り込みやすくなり、密の部分(遠位部分)を用いることで疎の部分で捕捉した異物のサイズが小さくても取りこぼしにくくなる。
【0041】
弾性ワイヤ10の外径は、外筒部材2の内径の5分の1以下であることが好ましく、10分の1以下であることがより好ましく、15分の1以下であることがさらに好ましい。弾性ワイヤ10の外径が小さいほど、バスケット部9を外筒部材2内に引き込むときの荷重を低減することができる。具体的には、弾性ワイヤ10の外径が0.26mm以下であることが好ましく、0.20mm以下であることがより好ましい。
【0042】
バスケット部9は複数の弾性ワイヤ10が第1結束部11において結束されている。具体的には、バスケット部9の遠位側(好ましくはバスケット部9の遠位端部)に第1結束部11が配置されている。第1結束部11において、複数の弾性ワイヤ10はそれぞれが接触していても接触していなくてもよい。
図1に示すように、先端チップ13によって弾性ワイヤ10が第1結束部11で結束されていてもよい。弾性ワイヤ10を結束可能である限り、先端チップ13の形状は特に限定されないが、例えば軸方向の少なくとも一部(より好ましくは先端チップ13の近位端を含む部分)に筒状に形成されている筒部を有していることが好ましい。先端チップ13の筒部内に弾性ワイヤ10の遠位端部を挿入して、筒部をかしめることによって弾性ワイヤ10を結束することができる。
【0043】
図示していないが、先端チップ13は複数の弾性ワイヤ10の遠位端部が挿入される一または複数のワイヤ挿入孔を有していてもよい。その場合、弾性ワイヤ10の本数とワイヤ挿入孔の数が同じであることが好ましい。これにより、ワイヤ挿入孔に弾性ワイヤ10を1本ずつ挿入することができるため、先端チップ13とワイヤ挿入孔をしっかりと固定することができる。
【0044】
第1結束部11では、熱溶着または銀ロウ付け、接着、かしめ加工などの方法により、複数の弾性ワイヤ10が結束されていてもよい。また、複数の弾性ワイヤ10を用いて結び目を形成することにより、これら弾性ワイヤ10が結束されていてもよい。
【0045】
先端チップ13は、弾性ワイヤ10と同じ材料であってもよく、異なる材料で構成されていてもよい。例えば、先端チップ13と弾性ワイヤ10をともに、金属材料として溶接によって両者を固定することができる。先端チップ13を樹脂材料として、接着剤を用いて弾性ワイヤ10と接着してもよい。先端チップ13として、例えば金属材料と樹脂材料のように異なる材料を組み合わせたものを用いてもよい。例えば、先端チップ13のうち、弾性ワイヤ10を固定する部分を金属材料から構成し、その金属部分よりも遠位側の部分を樹脂材料から構成することができる。これにより先端チップ13と弾性ワイヤ10の固定をより強固にし、かつ生体を傷つけにくくすることができる。また先端チップ13は、外筒部材2と同じ材料であってもよく、異なる材料で構成されていてもよい。
【0046】
先端チップ13にはバスケットカテーテル1とは別の処置具である補助処置具を挿通させる処置具挿通路が設けられていてもよい。中空状の内挿部材3を経由して補助処置具をバスケット部9の遠位側まで到達させる場合には、処置具挿通路は、内挿部材3の軸方向に沿って延在していることが好ましい。先端チップ13は、先端チップ13の内挿部材3の軸方向でない方向に延在する処置具挿通路が設けられていてもよい。このような処置具挿通路には、例えば、ガイドワイヤを挿通することができる。また、バスケット部9を外筒部材2内に引き込んだときに、バスケット部9の位置を固定できるように、内挿部材3の径方向において、先端チップ13の外径は外筒部材2の内径よりも大きいことが好ましい。
【0047】
第1結束部11において、複数の弾性ワイヤ10がねじって結束されていることが好ましく、全ての弾性ワイヤ10がねじって結束されていることがより好ましい。これにより、第1結束部11において複数の弾性ワイヤ10が周方向に変位するため、バスケット部9の遠位側を外筒部材2外に出す、または外筒部材2内に引き込むときの荷重を低減することができる。
【0048】
複数の弾性ワイヤ10は、第1結束部11よりも近位側の第2結束部12において結束されている。第2結束部12では、第1結束部11と同様の方法で弾性ワイヤ10を結束することができる。例えば、接続具14によって、弾性ワイヤ10が第2結束部12で結束されていてもよい。また、複数の弾性ワイヤ10と内挿部材3が接続具14によって接続されていることが好ましい。接続具14は、円筒状や多角筒状等の筒状に形成することができる。接続具14は、先端チップ13や外筒部材2と同様の材料から構成することができる。接続具14は、弾性ワイヤ10とともに外筒部材2内に収容されるため、接続具14の外径は外筒部材2の内径よりも小さいものである。第1結束部11と同様に、熱溶着または銀ロウ付け、接着、かしめ加工などの方法により、複数の弾性ワイヤ10や接続具14が互いに第2結束部12で結束されていてもよい。
【0049】
複数の弾性ワイヤ10が、筒状の接続具14によって第2結束部12で結束されており、接続具14は、遠位側から弾性ワイヤ10の近位端部が挿入されているワイヤ挿通路を複数有していることが好ましい。これにより、筒状の接続具14を介して内挿部材3と弾性ワイヤ10をより強固に接続することができる。また、中空状に形成されている内挿部材3と弾性ワイヤ10が、筒状の接続具14によって第2結束部12で結束されていることが好ましい。これにより、手技において内挿部材3の内腔に挿通される補助処置具を併用することができる。
【0050】
複数のワイヤ挿通路が周方向に並んで配置されることが好ましい。ワイヤ挿通路は、等間隔に並んで配置されることが好ましいが、不均等に配置されていてもよい。このようにワイヤ挿通路を配置することによって、バスケット部9における弾性ワイヤ10の延在方向を調整することができる。
【0051】
図1~
図2に示すように、バスケット部9の最大外径をなす位置(以下、単に「最大外径位置15」ということがある)よりも近位側、かつ第2結束部12よりも遠位側であって、複数の弾性ワイヤ10のうち少なくとも1本の特定の弾性ワイヤ10(以下、「特定弾性ワイヤ10a」ということがある)が外筒部材2と接触している接触状態で、外筒部材2の中心軸に対して垂直な方向から見て、特定弾性ワイヤ10aは、第2結束部12の遠位端と外筒部材2の遠位端の間において、外筒部材2の中心軸に対して角度αをなしており、特定弾性ワイヤ10aが、外筒部材2の遠位端で外筒部材2の中心軸に対して角度βをなしている。ここで、0度<α<50度、15度<β<90度、かつα≦βである。
【0052】
1本の特定弾性ワイヤ10aが、第2結束部12の遠位端と外筒部材2の遠位端の間において、外筒部材2の中心軸に対して角度αをなしており、かつ外筒部材2の遠位端で外筒部材2の中心軸に対して角度βをなしていることが好ましい。これにより、引き込み荷重の低減効果が高められる。
【0053】
αが0度超50度未満であり、βが15度超90度未満であることにより、バスケット部9を外筒部材2内に引き込むときの荷重を低減することができる。また、α≦βであることにより、特定弾性ワイヤ10aが適度に径方向の外方に広がりやすくなる。したがって、上記のようにα、βの範囲を設定することにより、特定弾性ワイヤ10aが適度に径方向外方に広がりつつ、バスケット部9を外筒部材2内に引き込むときの荷重を低減することができるため、バスケットカテーテル1の操作性が向上する。
【0054】
特定弾性ワイヤ10aは、第2結束部12の遠位端よりも遠位側の位置において、外筒部材2の中心軸に対して角度αをなしていてもよいが、
図2に示すように、第2結束部12の遠位端において角度αをなしていることが好ましい。これにより、第2結束部12の遠位端から外筒部材2との接触点Pまでの区間全体で弾性ワイヤ10が径方向の外方に曲げられるため、角度βを大きくしやすくなる。その結果、バスケット部9の近位側での外径を確保しやすくなり、多様なサイズの対象物を捕捉することができるようになる。角度αと角度βとの間に、一または複数の、外筒部材2の中心軸に対して角度をなしている部分があってもよい。
【0055】
図2に示すように、特定弾性ワイヤ10aは、外筒部材2との接触点Pを挟んで遠近方向に延在している部分が湾曲していることが好ましい。その場合、特定弾性ワイヤ10aの上記外筒部材2との接触点Pを挟んで遠近方向に延在している部分は、折り曲げられていないことが好ましい。特定弾性ワイヤ10aに急激な角度変化を付与しないことで、弾性ワイヤ10が外筒部材2に引っ掛かりにくくなるため、バスケット部9の引き込みをスムーズに行うことができる。
【0056】
αは、5度以上であることが好ましく、10度以上であることがより好ましく、15度以上であることがさらに好ましい。また、αは、45度以下であることが好ましく、40度以下であることがより好ましく、35度以下であることがさらに好ましい。また、βは、20度以上であることが好ましく、25度以上であることがより好ましく、30度以上であることがさらに好ましい。また、βは、85度以下であることが好ましく、80度以下であることがより好ましく、75度以下であることがさらに好ましい。αおよびβを上記範囲に設定することで、引き込み荷重をより一層小さくすることができる。
【0057】
αとβの角度差は、5度以上あることが好ましく、10度以上あることがより好ましく、15度以上あることがさらに好ましい。また、βがαの1.5倍以上であることが好ましく、2倍以上であることがより好ましく、2.5倍以上であることがさらに好ましい。このようにαとβの角度差を設定することにより、バスケット部9の近位側において、特定弾性ワイヤ10aが適度に径方向外方に広がりやすくなる。
【0058】
バスケット部9は、複数の弾性ワイヤ10のうち少なくとも2本以上が上記特定弾性ワイヤ10aであることが好ましく、複数の弾性ワイヤ10の全てが上記特定弾性ワイヤ10aであることがより好ましい。すなわち、2本以上の弾性ワイヤ10においてαとβが上記範囲にあることが好ましく、全ての弾性ワイヤ10においてαとβが上記範囲にあることがより好ましい。これにより、バスケット部9を外筒部材2内に引き込むときの荷重をより一層小さくすることができる。
【0059】
特定弾性ワイヤ10aが複数設けられており、バスケット部9は、特定弾性ワイヤ10aと、特定弾性ワイヤ10a以外の非特定弾性ワイヤが、周方向において交互に配置されていることが好ましい。周方向において、特定弾性ワイヤ10aが所定の間隔で設けられていることにより、バスケット部9を外筒部材2内に引き込むときの荷重の周方向での偏りを小さくできる。
【0060】
特定弾性ワイヤ10aが複数設けられており、一の特定弾性ワイヤ10aの角度αと、他の特定弾性ワイヤ10aの角度αの差は、5度以内であることが好ましく、3度以内であることがより好ましく、1度以内であることがさらに好ましい。同様に、一の特定弾性ワイヤ10aの角度βと、他の特定弾性ワイヤ10aの角度βの差も、5度以内が好ましく、より好ましくは3度以内である。これにより、各特定弾性ワイヤ10aが外筒部材2から受ける力をほぼ同じにすることができるため、バスケット部9を外筒部材2内に引き込むときの荷重の周方向での偏りを低減できる。
【0061】
特定弾性ワイヤ10aは、外筒部材2と接触している状態において、周方向に変位していてもよい。詳細には、
図2、
図3に示すように、特定弾性ワイヤ10aが外筒部材2と接触している状態において、特定弾性ワイヤ10aは第2結束部12の遠位端を通っており、カテーテル1をカテーテル1の遠位端側から見て、特定弾性ワイヤ10aの第2結束部12の遠位端12Aと内挿部材3の遠位端の中心C1とを通る第1直線L1と、特定弾性ワイヤ10aと外筒部材2とが接触する点Pと外筒部材2の遠位端の中心C2とを通る第2直線L2が角度γをなしていることが好ましい。ここで、0度<γ<90度である。角度γが0度超であることにより、バスケット部9を外筒部材2内に引き込むときの力を周方向に逃がすことができるため、引き込み時の荷重をより一層小さくすることができる。また、角度γが90度未満であることにより、特定弾性ワイヤ10aが、周方向において隣に位置する弾性ワイヤ10と接触してバスケット部9の形状が崩れることを抑制できる。したがって、特定弾性ワイヤ10aが外筒部材2と接触しても、特定弾性ワイヤ10aは角度γで周方向に変位していることにより、バスケット部9を外筒部材2内に引き込むときの荷重をより一層小さくすることができる。
【0062】
なお、第1直線L1において、「特定弾性ワイヤ10aの第2結束部12の遠位端12A」とは、第2結束部12の遠位端12Aのうち特定弾性ワイヤ10aの中心軸と交差している点のことを意味している。
【0063】
角度γは5度以上であることが好ましく、10度以上がより好ましく、15度以上がさらに好ましく、また、85度以下であることが好ましく、80度以下であることがより好ましく、75度以下であることがさらに好ましい。γを上記範囲に設定することにより、バスケット部9を外筒部材2内に引き込むときの荷重をより一層小さくすることができる。
【0064】
特定弾性ワイヤ10aが複数設けられている場合、一の特定弾性ワイヤ10aaのγと、他の特定弾性ワイヤ10abのγの角度差が5度以内であることが好ましく、3度以内であることがより好ましい。これにより、バスケット部9を外筒部材2内に引き込むときの荷重の偏りを低減できる。
【0065】
バスケット部9を構成する全ての弾性ワイヤ10が特定弾性ワイヤ10aであり、各特定弾性ワイヤ10aのγの角度差が5度以内であることが好ましく、3度以内であることがより好ましい。これにより、バスケット部9が拡張したときに隣り合う弾性ワイヤ10が接触しにくくなる。
【0066】
γが、360度/弾性ワイヤ10の本数よりも小さいことが好ましい。このようにγを設定することによって、周方向において隣り合う弾性ワイヤ10の接触を抑制しつつ、バスケット部9を外筒部材2内に引き込むときの荷重を低減することができる。
【0067】
図2に示すように、第2結束部12において、複数の弾性ワイヤ10がねじって結束されていることが好ましく、全ての弾性ワイヤ10がねじって結束されていることがより好ましい。これにより、第2結束部12において複数の弾性ワイヤ10が周方向に変位するため、バスケット部9の近位側を外筒部材2内に引き込むときの荷重を低減することができる。
【0068】
図3に示すように、接触点Pで特定弾性ワイヤ10aが外筒部材2と接触している状態において、カテーテル1の遠位端側から見て、接触点Pにおける特定弾性ワイヤ10aの接線L3が第1直線L1に対して周方向に角度δをなすように延在していることが好ましい。このように特定弾性ワイヤ10aが延在角度δを有することにより、周方向において隣り合う弾性ワイヤ10の接触を抑制しつつ、バスケット部9を外筒部材2内に引き込むときの荷重を低減することができる。ここで0度<δ≦γであることが好ましく、δ<γであることがより好ましい。
【0069】
角度δは3度以上であることが好ましく、5度以上がより好ましく、10度以上がさらに好ましく、また、60度以下であることが好ましく、55度以下であることがより好ましく、50度以下であることがさらに好ましい。δを上記範囲に設定することにより、バスケット部9を外筒部材2内に引き込むときの荷重をより一層小さくすることができる。
【0070】
バスケット部9において、弾性ワイヤ10は直線状に形成されていてもよく、曲線状に形成されていてもよい。弾性ワイヤ10は湾曲していてもよく、折り曲げられていてもよいが、湾曲していることが好ましい。中でも、バスケット部9の近位側で、弾性ワイヤ10が湾曲していることがより好ましい。これにより、バスケット部9の近位側を外筒部材2内にスムーズに引き込むことができるため、引き込み荷重を低減することができる。
【0071】
複数の弾性ワイヤ10がらせん状に形成されていることが好ましく、全ての弾性ワイヤ10がらせん状に形成されていることがより好ましい。このように弾性ワイヤ10を形成することにより、異物を捕捉しやすくなる。
【0072】
バスケット部9は、遠位側に向かって、弾性ワイヤ10の巻きピッチが小さくなっていることが好ましい。バスケット部9の遠位側で弾性ワイヤ10の間隔が密になるため、バスケット部9で捕捉された異物を取りこぼすことなく、乳頭側に移動させることができる。
【0073】
バスケット部9の外筒部材2内への引き込み荷重を低減するために、弾性ワイヤ10がバスケット部9の中心軸を回転軸とした回転対称に配置されていてもよい。
【0074】
次に、
図4~
図6を用いて、バスケット部9および弾性ワイヤ10の形状の変形例について説明する。
図4では、全ての弾性ワイヤ10(8本の弾性ワイヤ10)が、特定弾性ワイヤ10aである例を示している。
図4に示すように、バスケット部9の最大外径位置15において、複数の弾性ワイヤ10のうち少なくとも1本の特定弾性ワイヤ10aが、バスケット部9の中心軸に対して角度Xをなしており、第2結束部12において、複数の弾性ワイヤ10のうち少なくとも1本の特定弾性ワイヤ10aが、上記中心軸に対して角度Yをなしており、X>Yであることが好ましい。特定弾性ワイヤ10aの延在角度がX>Yであるとは、第2結束部12に比べて最大外径位置15では、ワイヤは径方向の外方により拡がっているということである。換言すれば、
図4に示すように、特定弾性ワイヤ10aaの最大外径位置15から径方向の外方に長さdだけ離れた位置P1までの遠近方向の長さL
P1は、特定弾性ワイヤ10abの第2結束部12の遠位端12Aから径方向の外方に長さdだけ離れた位置P2までの遠近方向の長さL
P2よりも短い。このように特定弾性ワイヤ10aの延在角度を設定することで、弾性ワイヤ10の間隔がバスケット部9の遠位側では密に、近位側では疎になりやすくなる。疎の部分(近位部分)を用いることでバスケット部9内に異物を取り込みやすくなり、密の部分(遠位部分)を用いることで疎の部分で捕捉した異物のサイズが小さくても取りこぼしなく採石することができる。
【0075】
ここで、5度<X<60度であり、20度<X<45度であることが好ましい。また、0度<Y<45度であり、15度<Y<30度であることが好ましい。
【0076】
図4では、角度Xをなす特定弾性ワイヤ10aと、角度Yをなす特定弾性ワイヤ10aが異なっている例を挙げて説明したが、1つの特定弾性ワイヤ10aが角度XとYを有していてもよい。また、全ての弾性ワイヤ10が特定弾性ワイヤ10aであり、特定弾性ワイヤ10aの全てが角度XとYを有していてもよい。その場合、一の特定弾性ワイヤ10aaの角度Xと、他の特定弾性ワイヤ10abの角度Xは同じであっても異なっていてもよいが、バスケット部9を外筒部材2内に引き込むときの荷重の偏りを低減する観点からは同じであることが好ましい。同様の理由から、一の特定弾性ワイヤ10aaの角度Yと、他の特定弾性ワイヤ10abの角度Yは同じであっても異なっていてもよい。
【0077】
図5に示すように、バスケット部9の最大外径位置15よりも遠位側にある弾性ワイヤ10が、最大外径位置15よりも近位側にある弾性ワイヤ10よりも長いことが好ましい。特定弾性ワイヤ10aは、バスケット部9の最大外径位置15よりも遠位側の部分が、最大外径位置15よりも近位側の部分に比べて長いことがより好ましい。このように弾性ワイヤ10の長さを設計することによって、弾性ワイヤ10の間隔をバスケット部9の遠位側では密に、近位側では疎にすることができる。バスケット部9の遠位側を密にすることによって異物の取りこぼしを抑え、近位側を疎にすることによって異物の回収を容易にすることができる。
【0078】
外筒部材2の遠近方向において、バスケット部9の最大外径位置15は特に限定されず、例えば、遠近方向において第1結束部11の近位端から第2結束部12の遠位端までの長さを2等分割する位置にあってもよく、上記分割位置よりも遠位側にあってもよい。これにより、バスケット部9の密の部分を広範囲に形成しやすくなり、密の部分での異物の取りこぼし抑制効果が一層高められる。また、バスケット部9の最大外径位置15は、上記分割位置よりも近位側にあってもよい。これにより、バスケット部9の疎の部分を広範囲に形成しやすくなり、疎の部分で異物を一層取り込みやすくなる。
【0079】
外筒部材2の遠近方向において、第1結束部11の近位端を0%としバスケット部9の最大外径位置15を100%としたとき、バスケット部9の外径が最大外径の半分となる位置が、0%~25%の範囲にあり、バスケット部9を側面から見て、複数の弾性ワイヤ10は、第1結束部11の近位端から最大外径位置15までの間における包絡線L4が弧状となるように形成されていることが好ましい。このように最大外径位置15よりも遠位側の包絡線L4が弧状であることにより、これにより、バスケット部9のうち弧状の部分が胆管の内壁に沿いやすくなるため、小さいサイズの異物であってもバスケット部9の遠位側で取りこぼしにくくすることができる。
【0080】
バスケット部9の外径が最大外径の半分となる位置が、3%~20%の範囲にあることがより好ましく、5%~15%の範囲にあることがさらに好ましい。これにより、バスケット部9の遠位側が胆管の内壁に一層沿いやすくなるため、小さいサイズの異物であってもバスケット部9の遠位側で取りこぼしにくくすることができる。
【0081】
弧状の包絡線L4は、径方向の外方に張り出していることが好ましい。これによりバスケット部9の弧状の部分が胆管の内壁により一層沿いやすくなる。
【0082】
外筒部材2内にバスケット部9の近位側を引き込んだときの荷重が1.2N以下であることが好ましく、1.0N以下であることがより好ましく、0.9N以下であることがさらに好ましく、0.8N以下であることがさらにより好ましく、0.7N以下であることが特に好ましい。バスケット部9を外筒部材2内に引き込むときの荷重は、後述する実施例に記載の方法で測定する。
【0083】
図示していないが、外筒部材2と内挿部材3の操作性を向上させるため、外筒部材2または内挿部材3の近位側には公知のハンドルを設けることができる。
【0084】
本願は、2018年2月8日に出願された日本国特許出願第2018-21394号に基づく優先権の利益を主張するものである。2018年2月8日に出願された日本国特許出願第2018-21394号の明細書の全内容が、本願に参考のため援用される。
【実施例】
【0085】
(引き込み荷重試験)
バスケット部において、線径が0.26mmまたは0.20mmの8本の弾性ワイヤがらせん状に形成されており、外筒部材と接触している特定弾性ワイヤの角度α、βがそれぞれ表1に示すように設定されたバスケットカテーテルを準備した。日本電産シンポ社製の引張試験機(デジタルフォースゲージ FGC-10 10kgf)を用いて、内径が1.6mmのPTFE製の外筒部材内に各バスケットカテーテルの近位側を速度10mm/秒で引き込んだときの荷重を測定した。結果を表1に示す。
【0086】
【0087】
実施例1~4に係るカテーテルは、比較例1~2に係るカテーテルに比べて、引き込み時の荷重を低減することができることが分かった。
【符号の説明】
【0088】
1:バスケットカテーテル
2:外筒部材
3:内挿部材
9:バスケット部
10:弾性ワイヤ
10a、10aa、10ab:特定弾性ワイヤ
11:第1結束部
12:第2結束部
12A:第2結束部の遠位端
13:先端チップ
14:接続具
15:最大外径位置
16:中央区間
17:遠位区間
18:近位区間
L1:第1直線
L2:第2直線
L3:接線
L4:包絡線
α、β、γ、δ、X、Y:角度
P:特定弾性ワイヤと外筒部材が接触する点
C1:内挿部材の遠位端の中心
C2:外筒部材の遠位端の中心