(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-15
(45)【発行日】2022-06-23
(54)【発明の名称】経鼻投与
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4045 20060101AFI20220616BHJP
A61K 9/72 20060101ALI20220616BHJP
A61P 25/06 20060101ALI20220616BHJP
A61K 31/56 20060101ALI20220616BHJP
A61P 11/02 20060101ALI20220616BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20220616BHJP
A61M 15/00 20060101ALI20220616BHJP
【FI】
A61K31/4045 ZMD
A61K9/72
A61P25/06
A61K31/56
A61P11/02
A61P29/00
A61M15/00 Z
(21)【出願番号】P 2020115917
(22)【出願日】2020-07-03
(62)【分割の表示】P 2017519960の分割
【原出願日】2015-06-25
【審査請求日】2020-07-30
(32)【優先日】2014-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516385848
【氏名又は名称】オプティノーズ アズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001612
【氏名又は名称】弁理士法人きさらぎ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジュペスランド,パー ギスレ
(72)【発明者】
【氏名】マハムード,ラミー,エイ.
(72)【発明者】
【氏名】メッシーナ,ジョン
【審査官】佐々木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0057047(US,A1)
【文献】特表2008-509143(JP,A)
【文献】特表2007-503873(JP,A)
【文献】特表2003-518484(JP,A)
【文献】特表2011-510964(JP,A)
【文献】特表2004-538027(JP,A)
【文献】国際公開第2008/078730(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/123417(WO,A1)
【文献】特表平10-508004(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
A61M 15/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の頭痛や偏頭痛を治療的に処置するための
スマトリプタンを含む治療薬であって、
前記
スマトリプタンは、第1のステップにおいて、マウスピース及びノーズピースを備える送出装置によって20mg以下の量で配送されて投与され、かつ、
第2のステップにおいて、前記マウスピースが患者の口に配置され、前記ノーズピースが患者
の鼻孔に配置されると共に、前
記鼻孔内に前記ノーズピースから出る流体の流れが生成されるよう、患者が前記マウスピースに息を吐き出すことにより、患者
の鼻道の内部
の位置に
、1%vol/vol~10%vol/volの二酸化炭素濃度の二酸化炭素が
少なくとも10L/分の流量で2秒~3秒の継続時間配送され、
前記二酸化炭素は
、前記位置において鼻粘膜のpHを
0.01pH単位~0.5pH単位の範囲の量だけ降下させ、
前記第1のステップが、前記第2のステップの前または前記第2のステップと同時に実行される、治療薬。
【請求項2】
前記
スマトリプタンは、
粉末エアロゾルとして投与されるコハク酸スマトリプタンの形態であ
る、請求項1に記載の治療薬。
【請求項3】
患者の偏頭痛を処置する、請求項1に記載の治療薬。
【請求項4】
前記
スマトリプタンは、11mgの量で配送される、請求項1に記載の治療薬。
【請求項5】
患者の鼻ポリープ、
鼻ポリープを有する若しくは有さない鼻副鼻腔炎又は鼻ポリープを有する若しくは有さない慢性鼻副鼻腔炎を治療的に処置するための
フルチカゾンを含む治療薬であって、
前記
フルチカゾンは、第1のステップにおいて、マウスピース及びノーズピースを備える送出装置によって100μg~400μgの量で配送されて投与され、かつ、
第2のステップにおいて、前記マウスピースが患者の口に配置され、前記ノーズピースが患者
の鼻孔に配置されると共に、前
記鼻孔内に前記ノーズピースから出る流体の流れが生成されるよう、患者が前記マウスピースに息を吐き出すことにより、患者
の鼻道の内部
の位置に
、1%vol/vol~10%vol/volの二酸化炭素濃度の二酸化炭素が
少なくとも10L/分の流量で2秒~3秒の継続時間配送され、
前記二酸化炭素は
、前記位置において鼻粘膜のpHを
0.01pH単位~0.5pH単位の範囲の量だけ降下させ、
前記第1のステップが、前記第2のステップの前または前記第2のステップと同時に実行される、治療薬。
【請求項6】
前記
フルチカゾンは、
液体エアロゾルとして投与されるプロピオン酸フルチカゾン
の形態であ
る、請求項5に記載の治療薬。
【請求項7】
前記
フルチカゾンは、100μg、200μgまたは400μgの量に
て配送される、請求項5に記載の治療薬。
【請求項8】
前記治療薬は、1日に2回配送される、請求項5に記載の治療薬。
【請求項9】
患者の
鼻ポリープを有する若しくは有さない鼻副鼻腔炎又は鼻ポリープを有する若しくは有さない慢性鼻副鼻腔炎を処置する、請求項5に記載の治療薬。
【請求項10】
前記第1のステップは、前記第2のステップの前に実行され、または前記第1のステップと同時に実行される、請求項1又は5に記載の治療薬。
【請求項11】
前記位置は、鼻道の上後領域を含む、請求項1又は5に記載の治療薬。
【請求項12】
前記量は
、0.1
pH単位~0.2pH単位の範囲である、請求項1又は5に記載の治療薬。
【請求項13】
前記流量は、少なくとも20L/分
となるよう制御
される、請求項1又は5に記載の治療薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一実施形態において、頭痛(例えば、群発性頭痛および偏頭痛)および神経障害性疼痛を含む痛みの処置などにおける物質、特には薬剤、とりわけ迅速な作用の発現を必要とする物質の経鼻投与に関する。本発明は、他の実施形態において、例えば痛みの処置などの副交感神経刺激をもたらすことができる補足の治療の処置としての二酸化炭素ガスの経鼻投与、NOの経鼻除去、および/または経鼻のpH調節にさらに関する。
【背景技術】
【0002】
図1(a)を参照すると、鼻気道1は、鼻中隔によって隔てられた2つの鼻腔を備えており、この気道1は、副鼻腔口3および耳管口5などの多数の開口と、嗅覚細胞とを含んでおり、鼻粘膜によって覆われている。鼻気道1は、鼻咽頭7、口腔9、および下気道11に連絡でき、鼻気道1は、中咽頭帆13の開閉によって鼻咽頭7の前部領域および口腔9に選択的に連絡する。帆13は、軟口蓋と称されることも多いが、口腔9を通じての呼気において口腔9および鼻気道1の圧力を平衡させることによって達成されるなど、口腔9に特定の正の圧力がもたらされることによって達成される閉位置に実線で示され、開位置に破線で示されている。
【0003】
本発明の発明者は、驚くべきことに、物質および少なくとも1つのガスを鼻気道の後部領域にもたらすことによって、例えば同等の物質の伝統的な送達と比べたときに、速やかな全身への取り込みおよび迅速な反応速度を達成できることを突き止めた。
【0004】
鼻気道の後部領域は、
図1(b)に示されるように、鼻弁NVの後ろの領域である。鼻弁は、柔軟な翼状の組織および堅固な軟骨性鼻中隔によってそれぞれ支持された下鼻甲介勃起組織および中隔勃起組織を含む前部の骨腔を備える(Cole,P(The Respiratory Role of the Upper Airways,a selective clinical and pathophysiological review.1993,Mosby-Year Book Inc.ISBN1.55664-390-X))。これらの構成要素が組み合わさり、数ミリメートルにわたって延び、鼻の気流を調節し、軟骨および骨によって安定化され、随意筋によって調節され、勃起組織によって規制される動的な弁が形成される。鼻弁の管腔は、鼻気道の後部および前部領域の間の最も狭い断面積の部位であり、腹側よりも背側においてはるかに長くて狭く、この管腔が、骨腔の梨状領域に延びる三角形の入り口を定めている。鼻弁は、前方部分において移行上皮によって覆われ、気道上皮に後方に徐々に変化している。鼻弁および前部の前庭が、おおむね鼻の前方3分の1を定めている。
【0005】
鼻気道の後部領域が、繊毛のある気道上皮と、嗅球から篩板CPを通って下方に延びる神経を備える嗅上皮とで覆われた領域である一方で、鼻気道の前部領域は、繊毛のない扁平上皮と、移行上皮とで覆われた領域である。嗅上皮は、鼻気道の外側および中央側の両方に広がり、典型的には1.5~2.5cmほど下方に広がっている。
【0006】
上後領域が、
図1(b)に示されるように、下鼻道IMの上方の領域であり、中鼻甲介、漏斗における副鼻腔口(上顎洞、前頭洞、および篩骨洞への開口)、嗅覚領域、および三叉神経の上部分岐を包含し、脳を囲む静脈洞に流れる静脈を含む領域である。
【0007】
図1(b)に示されるとおり、鼻気道の後部領域は、上顎間縫合の前端のとがった突起である前鼻棘AnSと、硬口蓋の鼻梁の鋭い後端であり、鼻と鼻咽頭との間の移行を呈する後鼻棘PnSと、の間の距離の4分の1に相当し、すなわち前鼻棘AnSの後方約13mm~約14mmの距離に相当する場所に位置する仮想の鉛直面VERT1の後方の鼻領域である(Rosenberger,H(Growth and Development of the Naso-Respiratory Area in Childhood,PhD Thesis,Laboratory of Anatomy,School of Medicine,Western Reserve University,Presented to the Annual Meeting of the American Laryngological,Rhinological and Otological Society,Charleston,South Carolina,USA,1934)が、前鼻棘AnSと後鼻棘PnSとの間の距離を18歳の少年において56mmであり、18歳の少女において53.3mmであると定めている)。やはり
図1(b)に示されるとおり、後鼻領域は、後方においては後鼻棘PnSを通って延びる仮想の鉛直面VERT2によって境界付けられる。
【0008】
さらに
図1(b)に示されるとおり、鼻気道の上部領域は、篩板CPと、鼻気道の鼻孔底NFと篩板CPとの間の距離の3分の1に相当し、典型的には鼻孔底NFの上方約13~約19mmの高さに相当する場所に位置する水平面HORIZと、によって境界付けられる鼻気道の上方部分である(Zacharek,M A et al(Sagittal and Coronal Dimensions of the Ethmoid Roof:A Radioanatomic Study,AM J Rhinol 2005,Vol 19,pages 348 to 352)が、鼻孔底NFから篩板CPまでの距離を46+/-4mmと定めている)。したがって、上後領域は、上記定義の鉛直および水平面VERT1、HORIZによって境界付けられてよい上方かつ後方の領域を含むことができる。
【0009】
頭痛、アレルギ、ぜんそく、および他の状態、ならびに関連の生理機能の治療のためのガス療法が、以下の文献、すなわちCasale et al,J Allergy Clin Immunol 121(1):105-109(2008)、Vause et al,Headache 47:1385-1397(2007)、Tzabazis et al,Life Science 87:36-41(2010)、およびCasale et al,Ann Allergy Asthma Immunol 107:364-370(2011)などに記載されている。
【0010】
国際公開第2001/064280号が、筋骨格障害、神経痛、鼻炎、および他の疾患を含む苦痛の緩和のためにガスの形態およびcapnic溶液(炭酸水など)の形態の二酸化炭素を経皮的および経粘膜的に適用するための方法および装置を開示している。
【0011】
米国特許出願公開第2011/0046546号明細書が、頭痛、鼻炎、ぜんそく、てんかん、神経病、などの一般的な疾患に関する症状を治療するための装置、方法、およびキットを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】国際公開第2001/064280号
【文献】米国特許出願公開第2011/0046546号明細書
【非特許文献】
【0013】
【文献】Cole,P(The Respiratory Role of the Upper Airways,a selective clinical and pathophysiological review.1993,Mosby-Year Book Inc.ISBN1.55664-390-X)
【文献】Rosenberger,H(Growth and Development of the Naso-Respiratory Area in Childhood,PhD Thesis,Laboratory of Anatomy,School of Medicine,Western Reserve University,Presented to the Annual Meeting of the American Laryngological,Rhinological and Otological Society,Charleston,South Carolina,USA,1934)
【文献】Zacharek,M A et al(Sagittal and Coronal Dimensions of the Ethmoid Roof:A Radioanatomic Study,AM J Rhinol 2005,Vol 19,pages 348 to 352)
【文献】Casale et al,J Allergy Clin Immunol 121(1):105-109(2008)
【文献】Vause et al,Headache 47:1385-1397(2007)
【文献】Tzabazis et al,Life Science 87:36-41(2010)
【文献】Casale et al,Ann Allergy Asthma Immunol 107:364-370(2011)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の発明者は、鼻気道を通じてのガスの供給などによるpH、鼻腔内ガス圧力、および/またはNO濃度の制御と組み合わせて治療物質を投与することで、改善された治療処置をもたらすことができることに気が付いた。一実施形態において、pH、鼻腔内ガス圧力、および/またはNO濃度の制御は、投与された治療物質の取り込みを仲介する相加効果または相乗効果をもたらすことができる副交感神経刺激をもたらすことができる。一例においては、治療物質の作用の迅速な発現を達成することができる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
一態様において、本発明は、物質を被験者に投与する方法であって、三叉神経が分布している粘膜を含む被験者の鼻腔の後方領域に物質を投与することと、前記物質の投与の前、最中、または後に前記粘膜のpHを調節することで、前記物質の取り込みの速度を高めることと、を含む方法を提供する。
【0016】
一実施形態において、前記粘膜には、翼口蓋神経節がさらに分布している。
【0017】
一実施形態において、前記物質は、鼻孔に装着され、任意選択で鼻孔の孔に流体を漏らさぬように密着させられたノーズピースを通じて配送される。
【0018】
一実施形態において、前記物質は、1つの鼻孔を通って粘膜の1つの三叉神経に配送される。
【0019】
一実施形態において、前記物質は、各々の鼻孔を通って順次に粘膜に三叉神経の各々に配送される。
【0020】
一実施形態において、前記pHは、少なくとも1つのガスを配送することによって調節される。
【0021】
一実施形態において、前記少なくとも1つのガスは、任意選択で該少なくとも1つのガスの少なくとも5vol%の濃度を有する流れにて配送される。
【0022】
一実施形態において、前記少なくとも1つのガスは、二酸化炭素を含む。
【0023】
一実施形態において、前記pHの調節は、三叉神経のV1枝における活動を達成させる。
【0024】
一実施形態において、前記pHの調節は、自律神経系への副交感神経の影響が存在する事象の際に実行されることで、三叉神経がpH調節を受けやすくなり、物質の取り込みが向上する。
【0025】
一実施形態において、前記pHは、前記pH調節において下げられる。
【0026】
一実施形態において、本方法は、前記物質を配送する前、前記物質を配送している最中、または前記物質を配送した後に、鼻腔内の圧力を調節することによって前記物質の取り込みの速度を高めることをさらに含む。
【0027】
一実施形態において、前記圧力は、少なくとも約3kPaであり、任意選択で約3~約7kPaである。
【0028】
一実施形態において、前記圧力は、少なくとも1つのガスを配送することによって調節される。
【0029】
一実施形態において、前記少なくとも1つのガスは、任意選択で該少なくとも1つのガスの少なくとも5vol%の濃度を有する流れにて配送される。
【0030】
一実施形態において、前記少なくとも1つのガスは、二酸化炭素を含む。
【0031】
一実施形態において、前記圧力の調節は、三叉神経のV1枝の活動を達成させる。
【0032】
一実施形態において、前記圧力の調節は、自律神経系への副交感神経の影響が存在する事象の際に実行されることで、三叉神経が圧力の調節を受けやすくなり、物質の取り込みが向上する。
【0033】
一実施形態において、前記圧力は、前記圧力調節において高められる。
【0034】
一実施形態において、本方法は、前記物質を配送する前、前記物質を配送している最中、または前記物質を配送した後に、鼻腔内のNOの濃度を調節することによって前記物質の取り込みの速度を高めることをさらに含む。
【0035】
一実施形態において、前記NOの濃度は、少なくとも1つのガスを配送することによって調節される。
【0036】
一実施形態において、前記少なくとも1つのガスは、任意選択で該少なくとも1つのガスの少なくとも5vol%の濃度を有する流れにて配送される。
【0037】
一実施形態において、前記少なくとも1つのガスは、二酸化炭素を含む。
【0038】
一実施形態において、前記NOの濃度の調節は、三叉神経のV1枝の活動を達成させる。
【0039】
一実施形態において、前記NOの濃度は、前記NO濃度調節において下げられる。
【0040】
一実施形態において、前記物質は、血液-脳の障壁を通過することがない物質である。
【0041】
一実施形態において、前記物質は、トリプタンである。一実施形態において、前記物質は、スマトリプタンである。
【0042】
別の実施形態において、前記物質は、麦角アルカロイドである。一実施形態において、前記物質は、ジヒドロエルゴタミンなど、エルゴタミンあるいはその類似体または誘導体である。
【0043】
一実施形態において、本方法は、神経またはCNSの疾患の処置のための方法である。
【0044】
一実施形態において、本方法は、群発性頭痛および偏頭痛などの頭痛の処置のための方法である。
【0045】
一実施形態において、本方法は、前記物質および/または前記少なくとも1つのガスを配送する際に被験者の口腔咽頭の軟口蓋を閉鎖することをさらに含む。
【0046】
一実施形態において、本方法は、被験者がマウスピースを通って息を吐き出すことによって被験者の口腔咽頭の軟口蓋の閉鎖を引き起こすことをさらに含む。
【0047】
一実施形態においては、前記マウスピースがノーズピースに連通することによって、息の吐き出しからの呼気が前記ノーズピースを通って配送される。
【0048】
別の態様において、本発明は、被験者に物質を投与する方法であって、三叉神経が分布した粘膜を含む被験者の鼻腔の後部領域に物質を配送することと、前記物質を配送する前、前記物質を配送している最中、または前記物質を配送した後に鼻腔の圧力を調節することにより、前記物質の取り込みの速度を高めることと、を含む方法を提供する。
【0049】
一実施形態において、前記粘膜には、翼口蓋神経節がさらに分布している。
【0050】
一実施形態において、前記物質は、鼻孔に装着され、任意選択で鼻孔の孔に流体を漏らさぬように密着させられたノーズピースを通じて配送される。
【0051】
一実施形態において、前記物質は、1つの鼻孔を通って粘膜の1つの三叉神経に配送される。
【0052】
一実施形態において、前記物質は、各々の鼻孔を通って順次に粘膜に三叉神経の各々に配送される。
【0053】
一実施形態において、前記圧力は、少なくとも1つのガスを配送することによって調節される。
【0054】
一実施形態において、前記少なくとも1つのガスは、任意選択で該少なくとも1つのガスの少なくとも5vol%の濃度を有する流れにて配送される。
【0055】
一実施形態において、前記少なくとも1つのガスは、二酸化炭素を含む。
【0056】
一実施形態において、前記圧力の調節は、三叉神経のV1枝における活動を達成させる。
【0057】
一実施形態において、前記圧力の調節は、自律神経系への副交感神経の影響が存在する事象の際に実行されることで、三叉神経が圧力の調節を受けやすくなり、物質の取り込みが向上する。
【0058】
一実施形態において、前記圧力は、少なくとも約3kPaであり、任意選択で約3~約7kPaである。
【0059】
一実施形態において、前記圧力は、前記圧力調節において高められる。
【0060】
一実施形態において、本方法は、前記物質を配送する前、前記物質を配送している最中、または前記物質を配送した後に、鼻腔内のNOの濃度を調節することによって前記物質の取り込みの速度を高めることをさらに含む。
【0061】
一実施形態において、前記NOの濃度は、少なくとも1つのガスを配送することによって調節される。
【0062】
一実施形態において、前記少なくとも1つのガスは、任意選択で該少なくとも1つのガスの少なくとも5vol%の濃度を有する流れにて配送される。
【0063】
一実施形態において、前記少なくとも1つのガスは、二酸化炭素を含む。
【0064】
一実施形態において、前記NOの濃度の調節は、三叉神経のV1枝の活動を達成させる。
【0065】
一実施形態において、前記NOの濃度は、前記NO濃度調節において下げられる。
【0066】
一実施形態において、前記物質は、血液-脳の障壁を通過することがない物質である。
【0067】
一実施形態において、前記物質は、トリプタンである。一実施形態において、前記物質は、スマトリプタンである。
【0068】
別の実施形態において、前記物質は、麦角アルカロイドである。一実施形態において、前記物質は、ジヒドロエルゴタミンなど、エルゴタミンあるいはその類似体または誘導体である。
【0069】
一実施形態において、本方法は、神経またはCNSの疾患の処置に使用される。
【0070】
一実施形態において、本方法は、群発性頭痛および偏頭痛などの頭痛の処置のためのものである。
【0071】
一実施形態において、本方法は、前記物質および/または前記少なくとも1つのガスを配送する際に被験者の口腔咽頭の軟口蓋を閉鎖することをさらに含む。
【0072】
一実施形態において、本方法は、被験者がマウスピースを通って息を吐き出すことによって被験者の口腔咽頭の軟口蓋の閉鎖を引き起こすことをさらに含む。
【0073】
一実施形態においては、前記マウスピースがノーズピースに連通することによって、息の吐き出しからの呼気が前記ノーズピースを通って配送される。
【0074】
さらなる態様において、本発明は、被験者に物質を投与する方法であって、三叉神経が分布した粘膜を含む被験者の鼻腔の後部領域に物質を配送することと、前記物質を配送する前、前記物質を配送している最中、または前記物質を配送した後に鼻腔におけるNOの濃度を調節することにより、前記物質の取り込みの速度を高めることと、を含む方法を提供する。
【0075】
一実施形態において、前記粘膜には、翼口蓋神経節がさらに分布している。
【0076】
一実施形態において、前記物質は、鼻孔に装着され、任意選択で鼻孔の孔に流体を漏らさぬように密着させられたノーズピースを通じて配送される。
【0077】
一実施形態において、前記物質は、1つの鼻孔を通って1つの三叉神経における粘膜に配送される。
【0078】
一実施形態において、前記物質は、各々の鼻孔を通って順次に三叉神経の各々における粘膜に配送される。
【0079】
一実施形態において、前記NOの濃度は、少なくとも1つのガスを配送することによって調節される。
【0080】
一実施形態において、前記少なくとも1つのガスは、任意選択で該少なくとも1つのガスの少なくとも5vol%の濃度を有する流れにて配送される。
【0081】
一実施形態において、前記少なくとも1つのガスは、二酸化炭素を含む。
【0082】
一実施形態において、前記NOの濃度の調節は、三叉神経のV1枝の活動を達成させる。
【0083】
一実施形態において、前記NOの濃度は、前記NO濃度調節において下げられる。
【0084】
一実施形態において、本方法は、前記物質を配送する前、前記物質を配送している最中、または前記物質を配送した後に前記粘膜のpHを調節することで、前記物質の取り込みの速度を高めることをさらに含む。
【0085】
一実施形態において、前記pHは、少なくとも1つのガスを配送することによって調節される。
【0086】
一実施形態において、前記少なくとも1つのガスは、任意選択で該少なくとも1つのガスの少なくとも5vol%の濃度を有する流れにて配送される。
【0087】
一実施形態において、前記少なくとも1つのガスは、二酸化炭素を含む。
【0088】
一実施形態において、前記pHの調節は、三叉神経のV1枝における活動を達成させる。
【0089】
一実施形態において、前記pHの調節は、自律神経系への副交感神経の影響が存在する事象の際に実行されることで、三叉神経がpH調節を受けやすくなり、物質の取り込みが向上する。
【0090】
一実施形態において、前記pHは、前記pH調節において下げられる。
【0091】
一実施形態において、本方法は、前記物質を配送する前、前記物質を配送している最中、または前記物質を配送した後に、鼻腔内の圧力を調節することによって前記物質の取り込みの速度を高めることをさらに含む。
【0092】
一実施形態において、前記圧力は、少なくとも約3kPaであり、任意選択で約3~約7kPaである。
【0093】
一実施形態において、前記圧力は、少なくとも1つのガスを配送することによって調節される。
【0094】
一実施形態において、前記少なくとも1つのガスは、任意選択で該少なくとも1つのガスの少なくとも5vol%の濃度を有する流れにて配送される。
【0095】
一実施形態において、前記少なくとも1つのガスは、二酸化炭素を含む。
【0096】
一実施形態において、前記圧力の調節は、三叉神経のV1枝の活動を達成させる。
【0097】
一実施形態において、前記圧力の調節は、自律神経系への副交感神経の影響が存在する事象の際に実行されることで、三叉神経が圧力の調節を受けやすくなり、物質の取り込みが向上する。
【0098】
一実施形態において、前記圧力は、前記圧力調節において高められる。
【0099】
一実施形態において、前記物質は、血液-脳の障壁を通過することがない物質である。
【0100】
一実施形態において、前記物質は、トリプタンである。一実施形態において、前記物質は、スマトリプタンである。
【0101】
別の実施形態において、前記物質は、麦角アルカロイドである。一実施形態において、前記物質は、ジヒドロエルゴタミンなど、エルゴタミンあるいはその類似体または誘導体である。
【0102】
一実施形態において、本方法は、神経またはCNSの疾患の処置に使用され、一実施形態において、群発性頭痛および偏頭痛などの頭痛の処置に使用される。
【0103】
一実施形態において、本方法は、前記物質および/または前記少なくとも1つのガスを配送する際に被験者の口腔咽頭の軟口蓋を閉鎖することをさらに含む。
【0104】
一実施形態において、本方法は、被験者がマウスピースを通って息を吐き出すことによって被験者の口腔咽頭の軟口蓋の閉鎖を引き起こすことをさらに含む。
【0105】
一実施形態においては、前記マウスピースがノーズピースに連通することによって、息の吐き出しからの呼気が前記ノーズピースを通って配送される。
【0106】
またさらなる態様において、本発明は、被験者に物質を投与する方法であって、三叉神経が分布している粘膜を含む被験者の鼻腔の後方領域に物質を配送することと、前記物質を配送する前、前記物質を配送している最中、または前記物質を配送した後に前記粘膜のpHを調節し、前記物質を配送する前、前記物質を配送している最中、または前記物質を配送した後に鼻腔内の圧力を調節することで、前記物質の取り込みの速度を高めることと、を含む方法を提供する。
【0107】
さらに別の態様において、本発明は、被験者に物質を投与する方法であって、三叉神経が分布している粘膜を含む被験者の鼻腔の後方領域に物質を配送することと、前記物質を配送する前、前記物質を配送している最中、または前記物質を配送した後に前記粘膜のpHを調節し、前記物質を配送する前、前記物質を配送している最中、または前記物質を配送した後に鼻腔内のNOの濃度を調節することで、前記物質の取り込みの速度を高めることと、を含む方法を提供する。
【0108】
また別の態様において、本発明は、被験者に物質を投与する方法であって、三叉神経が分布している粘膜を含む被験者の鼻腔の後方領域に物質を配送することと、前記物質を配送する前、前記物質を配送している最中、または前記物質を配送した後に鼻腔内の圧力を調節し、前記物質を配送する前、前記物質を配送している最中、または前記物質を配送した後に鼻腔内のNOの濃度を調節することで、前記物質の取り込みの速度を高めることと、を含む方法を提供する。
【0109】
さらに別の態様において、本発明は、被験者に物質を投与する方法であって、三叉神経が分布している粘膜を含む被験者の鼻腔の後方領域に物質を配送することと、前記物質を配送する前、前記物質を配送している最中、または前記物質を配送した後に前記粘膜のpHを調節し、前記物質を配送する前、前記物質を配送している最中、または前記物質を配送した後に鼻腔内の圧力を調節し、前記物質を配送する前、前記物質を配送している最中、または前記物質を配送した後に鼻腔内のNOの濃度を調節することで、前記物質の取り込みの速度を高めることと、を含む方法を提供する。
【0110】
またさらなる態様において、本発明は、神経またはCNSの疾患の処置のための物質を提供し、この物質は、三叉神経が分布した粘膜を含む被験者の鼻腔の後部領域に配送され、この物質が配送される前、配送されている最中、または配送された後で前記粘膜のpHが調節されることにより、この物質の取り込みの速度が高められる。
【0111】
また別のさらなる態様において、本発明は、神経またはCNSの疾患の処置のための物質を提供し、この物質は、三叉神経が分布した粘膜を含む被験者の鼻腔の後部領域に配送され、この物質が配送される前、配送されている最中、または配送された後で鼻腔内の圧力が調節されることにより、この物質の取り込みの速度が高められる。
【0112】
またさらに別の態様において、本発明は、神経またはCNSの疾患の処置のための物質を提供し、この物質は、三叉神経が分布した粘膜を含む被験者の鼻腔の後部領域に配送され、この物質が配送される前、配送されている最中、または配送された後で鼻腔内のNOの濃度が調節されることにより、この物質の取り込みの速度が高められる。
【0113】
一実施形態において、前記物質は、トリプタンである。一実施形態において、前記物質は、スマトリプタンである。
【0114】
別の実施形態において、前記物質は、麦角アルカロイドである。一実施形態において、前記物質は、ジヒドロエルゴタミンなど、エルゴタミンあるいはその類似体または誘導体である。
【0115】
一実施形態において、前記物質は、群発性頭痛および偏頭痛などの頭痛の処置のための物質である。
【0116】
さらなる態様において、本発明は、被験者に物質を投与する方法であって、物質を被験者に配送することと、前記物質を配送する前、配送している最中、または配送した後に鼻腔内の圧力を調節することにより、前記物質の取り込みの速度を高めることと、を含む方法を提供する。
【0117】
さらに別の態様において、本発明は、被験者に物質を投与する方法であって、物質を被験者に配送することと、前記物質を配送する前、配送している最中、または配送した後に鼻腔内のNOの濃度を調節することにより、前記物質の取り込みの速度を高めることと、を含む方法を提供する。
【0118】
またさらなる態様において、本発明は、被験者に物質を投与する方法であって、物質を被験者に配送することと、前記物質を配送する前、配送している最中、または配送した後に三叉神経が分布した粘膜のpHを調節することにより、前記物質の取り込みの速度を高めることと、を含む方法を提供する。
【0119】
一実施形態において、前記配送する行為は、経口、局所、経粘膜、吸入および/または注射、皮下、経鼻、ならびに/あるいは経口である。
【0120】
さらなる態様において、本発明は、被験者に物質を投与する方法であって、偏頭痛を生じさせる第1の物質を配送することと、上記開示の方法のいずれかに従って第2の物質を配送することと、を含む方法を提供する。
【0121】
本発明によれば、実施形態が、患者を治療的に処置する方法に向けられる。この方法は、第1のステップにおいて治療薬を投与することと、第2のステップにおいて患者の鼻道の内部の位置に治療量の二酸化炭素またはpH調節物質の少なくとも一方を配送することとを含むことができる。
【0122】
別の実施形態は、患者に配送される医薬品の治療効果を高めるための方法に向けられる。この方法は、鼻道の上後領域に約5%~約6%vol/volの二酸化炭素を配送するように患者の鼻道に流体の流れを配送することを含むことができる。この方法は、或る量の前記医薬品を患者に投与することをさらに含むことができる。
【0123】
また別の実施形態は、患者の処置の方法であって、治療効果をもたらすべく少なくとも約0.1pH単位だけ鼻道の上後領域のpHを下げるように患者の鼻孔に約5%~約6%vol/volの二酸化炭素を配送することを含む方法に向けられる。
【0124】
本発明のさらなる目的および利点は、一部は以下の説明に記載され、一部は説明から自明であり、あるいは本発明を実施することによって学ぶことができる。本発明の目的および利点は、添付の特許請求の範囲に詳しく指摘される構成要素および組み合わせによって実現および達成される。
【0125】
以上の全体的な説明および以下の詳細な説明の両方が、あくまでも例示および説明にすぎず、請求項に記載のとおりの本発明を限定するものではないことを、理解すべきである。
【0126】
本明細書に取り入れられて本明細書の一部を構成する添付の図面は、説明と協働して、あくまでも例示であるが本発明の原理を説明する役に立つ本発明の種々の実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【
図1(a)】人間の被験者の上部気道の構造を概略的に示している。
【
図1(b)】本発明の実施形態による鼻腔の区分けを示している。
【
図2(a)】本発明の一実施形態によるブレスパワー(Breath Powered(商標))双方向(Bi-Directional(商標))経鼻投与装置を示している。
【
図2(b)】本発明の一実施形態によるブレスパワー(商標)双方向(商標)経鼻投与装置を示している。
【
図3(a)】本発明の別の実施形態によるブレスパワー(商標)双方向(商標)経鼻投与装置を示している。
【
図3(b)】本発明の別の実施形態によるブレスパワー(商標)双方向(商標)経鼻投与装置を示している。
【
図4(a)】本発明のさらなる実施形態によるブレスパワー(商標)双方向(商標)経鼻投与装置を示している。
【
図4(b)】本発明のさらなる実施形態によるブレスパワー(商標)双方向(商標)経鼻投与装置を示している。
【
図5】実施例1の研究における反応率を示している。
【
図6】実施例2の研究に関して、
図2(a)および(b)のブレスパワー(商標)装置を使用して投与された経鼻スマトリプタン粉末、20mgの鼻腔スプレー、100mgの錠剤、および6mgの皮下注射について、14時間のサンプリング期間におけるスマトリプタン血漿濃度-時間のプロフィルを示しており、差し込み図は、
図2(a)および(b)のブレスパワー(商標)装置を使用して投与された経鼻スマトリプタン粉末、20mgの鼻腔スプレー、および100mgの錠剤について、投与後の最初の30分間におけるスマトリプタン血漿濃度-時間のプロフィルを示している。
図6の主たる部分は、経鼻投与の両方法においては平均血漿スマトリプタン濃度-時間プロフィルが錠剤および注射において観測されるプロフィルよりもはるかに低くなることを示している。
図6の差し込み図は、投与後の最初の30分において、血漿スマトリプタン濃度の上昇の速度が20mgの鼻腔スプレーまたは100mgの錠剤と比べて
図2(a)および(b)のブレスパワー(商標)装置を使用して投与されたスマトリプタン粉末においてより速いことを示している。
【
図7】実施例2の研究に関して、
図2(a)および(b)のブレスパワー(商標)装置を用いたスマトリプタン粉末の投与後の最初の4時間におけるスマトリプタン血漿濃度-時間プロフィルを20mgの鼻腔スプレーと比較して示している。
【
図8】実施例2の研究に関して、
図2(a)および(b)のブレスパワー(商標)装置を用いたスマトリプタン粉末の経鼻投与におけるスマトリプタンの薬物動態の結果を、20mgの鼻腔スプレー、100mgの錠剤、および6mgの皮下注射と比べて示している。
【
図9】実施例2の研究に関して、血漿スマトリプタン薬物動態パラメータの統計比較を示している。
【
図10】実施例3の研究に関して、ニトログリセリン(GTN)誘起の偏頭痛および健康な被験者を含むスマトリプタン血漿薬物動態パラメータの統計比較を示している。
【
図11】
図11(a)は、実施例3の研究における
図2(a)および(b)のブレスパワー(商標)装置の使用および伝統的な鼻腔スプレーポンプによる投与について、鼻の各領域への初期(0~2分)の付着を示している。
図11(b)は、実施例3の研究における
図2(a)および(b)のブレスパワー(商標)装置の使用および伝統的な鼻腔スプレーポンプによる投与について、初期(0~2分)の鼻の水平方向における分布を示している。
【
図12】実施例3の研究における
図2(a)および(b)のブレスパワー(商標)装置および従来からの鼻腔スプレー(Imitrex(登録商標) 6mg Nasal Spray、あるいは承認または後発同等品)を用いた2つのクロスオーバ研究からの経鼻スマトリプタンの薬物動態(PK)プロフィルを示しており、一方の研究がGTN攻撃の最中の偏頭痛患者において行われ、他方の研究は健康な志願者において行われている。
【
図13】実施例6の研究における頭痛が緩和された患者の割合を示している。
【
図14】パッケージの挿入物に報告された2時間の時点における痛みの緩和を示している。
【
図15】有効な薬剤および偽薬について、研究によってパッケージの挿入物に報告された2時間の時点における痛みの反応率を示している。
【
図16】実施例8の研究におけるおおむね鼻道の上方および下方の領域に配置されたpHプローブの位置を示している。
【
図17】実施例8の研究における
図4(a)および(b)のブレスパワー(商標)装置を使用した呼気の流れの関数としてのpHを示している。
【
図18】実施例8の研究における
図3(a)および(b)ならびに
図4(a)および(b)のブレスパワー(商標)装置を使用した呼気の流れの関数としてのpHを示している。
【
図19】実施例8の研究における
図4(a)および(b)のブレスパワー(商標)装置を使用した呼気の流れの関数としてのpHを示している。
【
図20】実施例8の研究における
図4(a)および(b)のブレスパワー(商標)装置を使用した呼気の流れの関数としてのpHを示している。
【
図21】先行技術文献(Shusterman、2003年)からの鼻へと投与された通常の空気(0%)ならびに15%および45%の二酸化炭素の3秒のパルスについてのデータを示している。
【
図22】実施例8の研究における口呼吸、穏やかな鼻呼吸、および
図3(a)および(b)ならびに
図4(a)および(b)のブレスパワー(商標)投与装置による投与の前の穏やかな鼻呼吸に関する呼気の流れの関数としてのpHを示している。
【
図23】実施例9の研究に関する患者の人口統計学データおよびベースライン特性(FAS)を示している。
【
図24】実施例9の研究における
図4(a)および(b)のブレスパワー(商標)装置を用いたスマトリプタンの投与に関する疼痛反応を偽薬と比べて示している。
【
図25】実施例9の研究において、
図4(a)および(b)のブレスパワー(商標)装置の使用について、投与後120分までの所定の時点において頭痛が緩和された患者ならびに24および48時間の時点において緩和が維持された患者の割合(FAS)を、偽薬と比べて示している。
【
図26】実施例9の研究において、
図4(a)および(b)のブレスパワー(商標)装置の使用について、投与後120分の時点における有意な緩和の患者の割合(FAS)を、偽薬と比べて示している。
【
図27】実施例9の研究において、
図4(a)および(b)のブレスパワー(商標)装置の使用について、投与後120分の時点において痛みからの解放を達成した患者の割合を、偽薬と比べて示している。
【
図29】実施例10の研究のための安全性評価サンプル(SAS)における患者の人口統計学データおよびベースライン特性を示している。
【
図30】実施例10の研究において、
図4(a)および(b)のブレスパワー(商標)装置を用いたスマトリプタン粉末の投与について、投与後30分における疼痛緩和の主要評価項目(SPID-30)を、経口スマトリプタン錠剤(Imitrex(登録商標) 100mg Tablet、あるいは承認または後発同等品)と比べて示している。
【
図31】実施例10の研究において、
図4(a)および(b)のブレスパワー(商標)装置を用いたスマトリプタン粉末の投与について、投与後30分における疼痛緩和の主要評価項目(SPID-30)を、経口スマトリプタン錠剤(Imitrex(登録商標) 100mg Tablet、あるいは承認または後発同等品)と比べて示している。
【
図32】実施例10の研究において、
図4(a)および(b)のブレスパワー(商標)装置を用いたスマトリプタン粉末の投与について、投与後の所定の時間期間における疼痛緩和の患者の割合を、経口スマトリプタン錠剤(Imitrex(登録商標) 100mg Tablet、あるいは承認または後発同等品)と比べて示している。
【
図33】実施例10の研究において、
図4(a)および(b)のブレスパワー(商標)装置を用いたスマトリプタン粉末の投与について、投与後の所定の時間期間における疼痛緩和の患者の割合を、経口スマトリプタン錠剤(Imitrex(登録商標) 100mg Tablet、あるいは承認または後発同等品)と比べて示している。
【
図34】実施例10の研究において、
図4(a)および(b)のブレスパワー(商標)装置を用いたスマトリプタン粉末の投与について、投与後の所定の時間期間において痛みから解放された患者の割合を、経口スマトリプタン錠剤(Imitrex(登録商標) 100mg Tablet、あるいは承認または後発同等品)と比べて示している。
【
図35】実施例10の研究において、
図4(a)および(b)のブレスパワー(商標)装置を用いたスマトリプタン粉末の投与について、投与後の所定の時間期間において痛みから解放された患者の割合を、経口スマトリプタン錠剤(Imitrex(登録商標) 100mg Tablet、あるいは承認または後発同等品)と比べて示している。
【
図36】実施例10の研究において、
図4(a)および(b)のブレスパワー(商標)装置を用いたスマトリプタン粉末の投与について、投与後の所定の時間期間において痛みが軽減された患者の割合を、経口スマトリプタン錠剤(Imitrex(登録商標) 100mg Tablet、あるいは承認または後発同等品)と比べて示している。
【
図37】実施例10の研究において、
図4(a)および(b)のブレスパワー(商標)装置を用いたスマトリプタン粉末の投与について、投与後24および48時間において痛みから解放されたままであった患者の割合を、経口スマトリプタン錠剤(Imitrex(登録商標) 100mg Tablet、あるいは承認または後発同等品)と比べて示している。
【
図38】実施例10の研究において、
図4(a)および(b)のブレスパワー(商標)装置を用いたスマトリプタン粉末の投与について、投与後120分以内に定型でないトリプタン感覚を有した患者の割合を、経口スマトリプタン錠剤(Imitrex(登録商標) 100mg Tablet、あるいは承認または後発同等品)と比べて示している。
【発明を実施するための形態】
【0128】
次に、添付の図面に実施例が示されている本発明の典型的な実施形態を詳しく参照する。可能な限り、同じ参照番号が、図面の全体を通して同一または類似の部分を指して使用される。
【0129】
典型的な送出装置
装置1
図2(a)および
図2(b)が、一実施形態による粉末エアロゾルをもたらす(deliver,配送する)ように動作することができる第1のブレスパワー(Breath Powered(商標))双方向(Bi-Directional(商標))粉末送出装置(powder delivery device,粉末配送装置)を示している。
【0130】
この送出装置は、ハウジング15と、カプセルCを受け入れるカプセル収容ユニット16と、被験者の鼻腔に収まるノーズピースユニット17と、被験者が息を吐き出すマウスピース18と、カプセル収容ユニット16に収容されたカプセルCを穿刺することによって送出装置を動作に向けて準備するように機能することができるカプセル穿刺機構20とを備えている。
【0131】
ハウジング15は、以下でさらに詳しく説明されるように、この実施形態においてはハウジング15の上端に位置し、ノーズピースユニット17を受け入れる第1のノーズピース開口21と、この実施形態においてはハウジング15の端壁に位置し、カプセル穿刺機構20の作動ボタン81が延びている第2の横開口22とを備えている。
【0132】
カプセル収容ユニット16は、以下でさらに詳しく説明されるように、この実施形態においてはノーズピースユニット17のカプセル収容部材49内に収容されたカプセルCを受け入れるために、この実施形態においてはハウジング15のノーズピース開口21に対向して配置された細長い直立したチャンバであるカプセル収容部材23を備えている。
【0133】
この実施形態において、カプセル収容部材23は、気流を通過させるための入り口24および出口25を備えており、カプセル収容部材23の上側の下流端によって定められる出口25は、ノーズピースユニット17のカプセル収容部材49を収容し、カプセル収容部材49がカプセル収容部材23内にぴったりと収まるように構成されている。
【0134】
ノーズピースユニット17は、ハウジング15のノーズピース開口21に収まるように構成された本体部材45と、被験者の鼻孔に収まるように本体部材45から外に延びたノーズピース47と、本体部材45から内側に延び、被験者の鼻腔にもたらされるべき内容物を有するカプセルCを収容するカプセル収容部材49とを備える。一実施形態において、カプセルCは、粉末状の物質などの粒子状物質と、典型的には医薬物質とを収容するヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)カプセルである。他の実施形態においては、カプセルCを、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、およびカルボキシメチルセルロースなどの別のセルロース誘導体で実質的に形成することができる。代案の実施形態においては、カプセルCを、ゼラチン誘導体から形成することができる。一実施形態においては、カプセルCを、パリレンなどの疎水性材料で覆うことができる。
【0135】
この実施形態において、ノーズピース47は、ノーズピースユニット17を被験者の鼻腔に案内し、鼻孔の鼻道との流体を漏らさない密着をもたらすための実質的に円錐台形状の外側部分53を有するとともに、ここでは実質的に円筒状の部分であり、物質を被験者の鼻腔の後部領域にもたらし、この実施形態においては前鼻棘AnSの後方の前鼻棘AnSと後鼻棘PnSとの間の距離の4分の1に相当する位置に位置する鉛直面と、鼻孔底の上方の鼻孔底と篩板との間の距離の3分の1の高さに位置する水平面とによって境界付けられる上後領域にもたらす内部チャネル55を備えている。上述したように、本発明の発明者は、鼻腔の上後領域にもたらされる粉末状物質を増やすことで、驚くべきことに、例えば伝統的な液体鼻腔スプレーなどの物質の伝統的な経鼻投与と比べて、きわめて迅速な作用の発現がもたらされることに気が付いた。
【0136】
この実施形態において、ノーズピース47は、物質のかなりの割合を鼻腔の上後領域にもたらすように構成され、ここでは届けられる量の30%超を初期にもたらすように構成される。
【0137】
この実施形態において、ノーズピース47は、ここでの言及によってその全体が援用される本出願の出願人による以前の国際公開第2000/051672号に開示されているように、被験者の鼻孔との流体を漏らさない密着の提供において、被験者の鼻気道を通る双方向の送達を提供する。しかしながら、別の実施形態においては、ノーズピース47が必ずしも密着する収まりをもたらす必要はなく、すなわち鼻腔への送出をもたらすが、必ずしも双方向の送達をもたらす必要はない。
【0138】
この実施形態において、ノーズピース47は、所定のサイズを上回るカプセルCの一部などの異物がノーズピース47を通過して被験者の鼻腔に進入することがないように、典型的には穴開き要素またはメッシュ要素であるトラップ要素57を備える。
【0139】
カプセル収容部材49は、この実施形態においては円筒形である細長い流路63と、流路63の一端(下流端)に連通した入り口開口65とを備えており、カプセルCは、気流が流路63を通ってもたらされるときに流路63内で回転できるように、軸が流路63に沿うように配置され、入り口開口65は、入り口開口65を通ってもたらされる気流に流れの制限をもたらすとともに、流路63を通って気流がもたらされるまでのカプセルCの一端(下端)のための座として機能する。
【0140】
カプセル収容部材49は、カプセルCをカプセルCの軸方向の長さに沿って間隔を開けた位置において穿刺することができるように、カプセル収容部材49の側壁に複数の(この実施形態においては、第1および第2の)穿刺穴71、73をさらに備える。一実施形態において、第1の(下方の)穴71は、カプセルCの下端が流路63の入り口開口65に着座しているときにカプセルCに収容された物質の高さよりも上方の位置においてカプセルCが穿刺されるように位置することができる。この方法で、カプセルCに収容された物質は、気流が流路63を通ってもたらされるまで流路63に放出されることがない。
【0141】
この実施形態において、ノーズピースユニット17は、送出装置の作動のたびに交換される交換式のユニットとして設けられる。この実施形態において、ノーズピースユニット17を、例えばアルミニウム箔パッケージなどの気密のパッケージに梱包することができる。
【0142】
マウスピースユニット18は、この実施形態においては被験者の唇に把持され、カプセル収容ユニット16を通って運搬用の気流をもたらすために被験者が息を吐き出すマウスピース77と、この実施形態においては細長い管状の部分であり、マウスピース77とカプセル収容ユニット16とを連通させる空気チャンバ78とを備える。
【0143】
この実施形態において、空気チャンバ78は、カプセル収容ユニット16のカプセル収容部材23よりも大きい体積を有し、一実施形態においては、カプセル収容部材23の体積の少なくとも2倍の体積を有する。
【0144】
一実施形態において、空気チャンバ78は、少なくともその上流端に、ここでは呼気の気流を冷却するための凝縮器として形成される温度調節器79を備える。この構成によって、呼気の際に吐き出される気流が冷却される。
【0145】
この実施形態において、温度調節器79は、ラビリンス構造を備える。別の実施形態において、温度調節器79は、微生物フィルタとしても機能することができるフィルタ要素によってもたらされてよい。
【0146】
一実施形態において、温度調節器79は、送出装置が使用されていないときに内部に集まった凝縮物を乾燥させるための手段を備えることができる。
【0147】
一実施形態において、空気チャンバ78は、清掃または交換などが可能であるように取り外し可能であってよい。
【0148】
この構成は、カプセルCからの物質の送出において、送出装置の信頼できる動作をもたらすことが明らかになっている。本発明の発明者は、湿った呼気をカプセルCに直接もたらすと、場合によってはカプセルCの必要な回転が妨げられ、カプセルCに収容された物質の適切な放出が妨げられる可能性があることを突き止めた。より低温の空気を用意し、そのような低温の空気を最初に噴出にてもたらすように構成することで、カプセルCの必要な回転が繰り返し見られる。
【0149】
カプセル穿刺機構20は、被験者による操作などが可能であるようにハウジング15の横開口22を通って延びている作動ボタン81と、作動ボタン81によって支持され、作動ボタン81の前方に延びており、作動ボタン81が後退位置から突出位置に押し込まれるときにカプセル収容部材49の側壁の穿刺穴71、73のうちの該当の1つを通って駆動されてカプセルCを穿刺する複数の(この実施形態においては第1および第2の)穿刺要素83、85とを備える。
【0150】
この実施形態において、カプセル穿刺機構20は、作動ボタン81が押し込まれてカプセルCが穿刺された後に作動ボタン81を後退位置に戻すために、作動ボタン81を後退位置に向かって外方向に付勢するように機能する弾性要素87を備える。この実施形態において、弾性要素87は、作動ボタン81の一体の一部分として形成されているが、他の実施形態においては、圧縮ばねなどの別途の要素として設けられてもよい。
【0151】
次に、この送出装置の典型的な動作を、以下で説明する。
【0152】
最初に、送出装置を手に取り、ノーズピースユニット17をハウジング15に挿入して、被験者は、カプセル穿刺機構20の作動ボタン81を押し、カプセル収容部材49に収容されたカプセルCを穿刺する。
【0153】
作動ボタン81を押すことにより、カプセルCは、カプセルCの軸方向の長さに沿って間隔を開けて位置する2つの位置において、穿刺要素83、85によって穿刺される。
【0154】
次いで、作動ボタン81が放され、付勢要素87の付勢のもとで作動ボタン81が後退位置に復帰する。この方法で、送出装置が準備され、すぐに使用できる状態となる。
【0155】
次いで、被験者は、ノーズピース47が流体を漏らさない密着を達成するように鼻孔の鼻道に当接するまで、ノーズピース47を自身の鼻腔に挿入し(この時点で、ノーズピース47の遠位端は被験者の鼻腔に約2cm延びる)、マウスピース77を自身の唇に保持する。
【0156】
次いで、被験者は、マウスピース77を通して息を吐き出し始め、この呼気が、被験者の口腔咽頭の軟口蓋を閉じ、被験者の鼻気道を通って気流を送るように機能し、気流が一方の鼻腔を通過し、鼻中隔の後縁を巡り、他方の鼻孔から出ることで、被験者の鼻気道を通る双方向の気流が達成される。
【0157】
被験者が充分な力で息を吐き出すとき、カプセルCは、カプセル収容部材49の入り口開口65によって定められる座から持ち上げられて回転し、この回転が、カプセルC内から物質を放出し、吐き出された気流に乗せて被験者の鼻腔の後部領域に届けるように機能する。呼気が続けられるとき、カプセルCは回転を続ける。
【0158】
さらに、この装置において、カプセルCは、振動するように構成され、この振動が、鼻孔に挿入されたノーズピースユニット17によってもたらされる音の伝達経路を通じて、特には鼻腔の後部領域において鼻気道の換気を促進するように機能する。この振動は、後述の検討において概説されるように、効能に貢献すると考えられる。
【0159】
次いで、送出装置のこの動作が、装置を他方の第2の鼻孔へと装着して、新たなカプセルCで繰り返される。この実施形態においては、ノーズピースユニット17の全体が交換されるが、他の実施形態においては、カプセル収容部材49またはカプセルCだけを交換してもよい。
【0160】
ガスを、2、3、4、5、6、7、8、9、または10kPaの圧力でもたらすことができる。
【0161】
装置2
図3(a)および
図3(b)が、液体エアロゾルを届けるように機能することができるブレスパワー(商標)双方向(商標)液体送出装置を示している。
【0162】
この送出装置は、ハウジング115と、被験者の鼻腔に収まるノーズピース117と、使用時に被験者が息を吐き出すマウスピース118と、被験者の鼻腔に物質をもたらすように手動で動作させることができる物質供給ユニット120とを備えており、被験者がマウスピース118を通って息を吐き出すときに被験者の鼻気道に気流をもたらすことができる。
【0163】
ハウジング115は、この実施形態においては実質的に細長い管状の部分であり、物質供給ユニット120の操作部(この実施形態においては、物質収容室151の底部によって定められる)を突出させる開口123を一端に含んでいる本体部材121を備えている。
【0164】
ハウジング115は、さらに詳しく後述されるように、物質供給ユニット120の作動と同時に、この実施形態においては空気の噴出の形態である気流をノーズピース117を通ってもたらすなどのために、ノーズピース117およびマウスピース118に連通し、
図3(a)および
図3(b)に示されるように閉状態および開状態の間で動作することができるバルブアセンブリ125をさらに備える。
【0165】
バルブアセンブリ125は、主たる本体要素127と、
図3(a)および
図3(b)に示されるように閉位置および開位置の間をスライドできるように本体要素127に配置されたバルブ要素129とを備える。
【0166】
本体要素127は、この実施形態においては管状の部分であり、バルブ要素129がスライド可能に配置されるバルブ部分131と、バルブ部分131の下流にあり、ノーズピース117に連通し、この実施形態においては先細りの部分を有している内向きのフレア状の前部133とを備えている。
【0167】
本体要素127のバルブ部分131およびバルブ要素129の各々は、バルブ要素129が閉位置にあるときには連通せず、バルブ要素129が開位置にあるときには連通するバルブ開口137、139を備えている。
【0168】
ノーズピース117は、ノーズピース117と被験者の鼻腔との間に密着した収まりをもたらす外側シール面143を定める本体部材141と、被験者がマウスピース119を通じて息を吐き出すときに気流を被験者の鼻気道に選択的にもたらすようにマウスピース119に選択的に連通する内側送出チャネル145と、送出チャネル145内に配置され、被験者の鼻気道に物質を届ける出口ユニット147とを備える。
【0169】
この実施形態において、出口ユニット147は、物質を被験者の鼻気道に届けるためにノズル149を備える。この実施形態において、ノズル149は、送出チャネル145内に送出チャネル145と同軸に配置される。
【0170】
一実施形態において、出口ユニット147の遠位端は、被験者の鼻腔に少なくとも約2cm、少なくとも約3cm、あるいは約2cm~約3cm延びるように構成されてよい。
【0171】
この実施形態において、物質供給ユニット120は、物質収容室151と機械式送出ポンプ153とを備えるポンプユニットであり、物質収容室151は、物質を収容し、物質供給ユニット120の操作部としてハウジング115の開口123から突出し、機械式送出ポンプ153は、一定量の物質を物質収容室151から出口ユニット147にもたらし、ここではエアロゾルスプレーとして出口ユニット147のノズル出口149からもたらすために、ここでは典型的には被験者の指または親指によって物質収容室151を押し込むことによって作動させることができる。
【0172】
この実施形態において、物質収容室151は、バルブアセンブリ125のバルブ要素129と一緒に動いて物質供給ユニット120の動作およびバルブアセンブリ125の開放を同時にもたらすことによって、ここではスプレーの形態である物質と、ここでは空気の噴出としての気流とを、被験者の鼻腔に同時にもたらすように、バルブアセンブリ125のバルブ要素129に接続される。
【0173】
この実施形態において、機械式送出ポンプ153は、一定量の物質をもたらすための液体送出ポンプであるが、別の実施形態においては、機械式送出ポンプ153が、作動時に一定量の粉末状物質をもたらす粉末送出ポンプであってもよい。
【0174】
この実施形態において、物質供給ユニット120は、連続的な送出動作において一定量の物質を複数回もたらすことができる複数回分のユニットである。
【0175】
装置3
図4(a)および
図4(b)が、別の実施形態による粉末エアロゾルをもたらすように動作することができる第2のブレスパワー(商標)双方向(商標)粉末送出装置を示している。
【0176】
この送出装置は、ハウジング215と、カプセルCを受け入れるカプセル収容ユニット216と、被験者の鼻腔に収まるノーズピースユニット217と、被験者が息を吐き出すマウスピース218と、マウスピース218をハウジング215に結合させる可撓結合部219と、カプセル収容ユニット216に収容されたカプセルCを穿刺することによって送出装置を動作に向けて準備するように機能することができるカプセル穿刺機構220とを備えている。
【0177】
ハウジング215は、本明細書においてさらに詳しく説明されるように、この実施形態においてはハウジング215の上端に位置し、ノーズピースユニット217を受け入れる第1のノーズピース開口221と、この実施形態においてはハウジング215の端壁に位置し、カプセル穿刺機構220の作動ボタン281が延びている第2の横開口222とを備えている。
【0178】
カプセル収容ユニット216は、本明細書においてさらに詳しく説明されるように、この実施形態においてはノーズピースユニット217のカプセル収容部材249内に収容されたカプセルCを受け入れるために、この実施形態においてはハウジング215のノーズピース開口221に対向して配置された細長い直立したチャンバであるカプセル収容部材223を備えている。
【0179】
この実施形態において、カプセル収容部材223は、気流を通過させるための入り口224および出口225を備えており、カプセル収容部材223の上側の下流端によって定められる出口225は、ノーズピースユニット217のカプセル収容部材249を収容し、カプセル収容部材249がカプセル収容部材223内にぴったりと収まるように構成されている。
【0180】
ノーズピースユニット217は、ハウジング215のノーズピース開口221に収まるように構成された本体部材245と、被験者の鼻孔に収まるように本体部材245から外に延びたノーズピース247と、本体部材245から内側に延び、被験者の鼻腔にもたらされるべき内容物を有するカプセルCを収容するカプセル収容部材249とを備える。この実施形態において、カプセルCは、ゼラチンから形成される。一実施形態においては、カプセルCを、パリレンなどの疎水性材料で覆うことができる。
【0181】
この実施形態において、ノーズピース247は、ノーズピースユニット217を被験者の鼻腔に案内し、鼻孔の鼻道との流体を漏らさない密着をもたらすための実質的に円錐台形状の外側部分253を有するとともに、ここでは実質的に円筒状の部分であり、物質を被験者の鼻腔の後部領域にもたらし、この実施形態においては前鼻棘AnSの後方の前鼻棘AnSと後鼻棘PnSとの間の距離の4分の1に相当する位置に位置する鉛直面と、鼻孔底の上方の鼻孔底と篩板との間の距離の3分の1の高さに位置する水平面とによって境界付けられる上後領域にもたらす内部チャネル255を備えている。上述したように、本発明の発明者は、鼻腔の上後領域にもたらされる粉末状物質を増やすことで、驚くべきことに、例えば伝統的な液体鼻腔スプレーなどの物質の伝統的な経鼻投与と比べて、きわめて迅速な作用の発現がもたらされることに気が付いた。
【0182】
この実施形態において、ノーズピース247は、物質のかなりの割合を鼻腔の上後領域にもたらすように構成され、ここでは届けられる量の30%超を初期にもたらすように構成される。
【0183】
この実施形態において、ノーズピース247は、ここでの言及によってその全体が援用される本出願の出願人による以前の国際公開第2000/051672号に開示されているように、被験者の鼻孔との流体を漏らさない密着の提供において、被験者の鼻気道を通る双方向の送達を提供する。しかしながら、別の実施形態においては、ノーズピース247が必ずしも密着する収まりをもたらす必要はなく、すなわち鼻腔への送出をもたらすが、必ずしも双方向の送達をもたらす必要はない。
【0184】
カプセル収容部材249は、この実施形態においては円筒形である細長い流路263と、流路263の一端(下流端)に連通した入り口開口265とを備えており、カプセルCは、気流が流路263を通ってもたらされるときに流路263内で回転できるように、軸が流路263に沿うように配置され、入り口開口265は、入り口開口265を通ってもたらされる気流に流れの制限をもたらすとともに、流路263を通って気流がもたらされるまでのカプセルCの一端(下端)のための座として機能する。
【0185】
カプセル収容部材249は、カプセルCをカプセルCの軸方向の長さに沿って間隔を開けた位置において穿刺することができるように、カプセル収容部材249の側壁に複数の(この実施形態においては、第1および第2の)穿刺穴271、273をさらに備える。
【0186】
この実施形態において、ノーズピースユニット217は、送出装置の作動のたびに交換される交換式のユニットとして設けられる。この実施形態において、ノーズピースユニット217を、例えばアルミニウム箔パッケージなどの気密のパッケージに梱包することができる。
【0187】
マウスピース218は、この実施形態においては、被験者の唇に把持され、カプセル収容ユニット216を通って運搬用の気流をもたらすために被験者が息を吐き出すときに、この実施形態においては剛体または半剛体材料からなる管状部275を備える。
【0188】
可撓結合部220は、ノーズピース247に対するマウスピース218の移動を可能にし、この実施形態においてはノーズピース247に対するマウスピース218の非対称な並進を可能にする弾性要素である。
【0189】
本発明の発明者は、マウスピース218の移動時にノーズピース247に対するマウスピース218の非対称な並進を、特にはノーズピース247の軸に沿った方向の移動がノーズピース247に対する横方向の移動よりも大きくなるようなやり方でもたらすことで、患者の服薬順守および効能の改善を可能にする構成がもたらされることを明らかにした。
【0190】
この実施形態において、マウスピース218の遠位端Dは、ノーズピース247の軸に直交する方向Xと比べて、ノーズピース247の軸に平行な方向に少なくとも1.5倍大きい距離Yだけ移動するように構成される。より好ましくは、マウスピース218の遠位端Dは、ノーズピース247の軸に直交する方向Xと比べて、ノーズピース247の軸に平行な方向Yに少なくとも1.75倍または少なくとも2倍大きい距離だけ移動するように構成される。
【0191】
この実施形態において、可撓結合部220は、マウスピース218を通る呼気によってカプセル収容ユニット216へと気流がもたらされるように、一部分においてハウジング215へと取り付けられ、別の部分においてマウスピース218の管状部275へと取り付けられる環状結合部材277を備える。
【0192】
この実施形態において、結合部材277は、ここではノーズピース247に近い結合部材277の一方側(上側)にヒンジ部279をもたらすように構成され、マウスピース218は、付勢力Fの印加によって上方または下方へと付勢されたときにヒンジ部279を中心にして優先的に回転する。
【0193】
この実施形態において、結合部材277は、一方側(上側)へとより短い寸法を有することで、マウスピース218が一方側(上側)を中心として回転するように保証し、ノーズピース247から遠い他方側(下側)へと次第に増加する寸法を有している。
【0194】
この実施形態において、結合部材277は、他方側(下側)に向かって大きくなる弓形の湾曲したプロフィル280を有し、マウスピース218が上方へと付勢される場合の伸び、およびマウスピース218が下方へと付勢する場合の圧縮を可能にする。
【0195】
この実施形態において、プロフィル部分280は、マウスピース218を上方へと付勢するために必要な付勢力がマウスピース218を下方へと付勢するために必要な付勢力よりも小さくなるように湾曲している。
【0196】
この実施形態において、結合部材277は、ノーズピース247の軸に対して約50度の角度にマウスピース218の軸をもたらすとともに、マウスピース218がノーズピース247の軸に対して約38度の角度を囲むように約12度の角度だけ上方へと移動でき、かつノーズピース247の軸に対して約57度の角度を囲むように約7度の角度だけ下方へと移動できるように構成される。
【0197】
別の実施形態においては、結合部材277を、湾曲したプロフィル部分280を有することに代え、あるいは湾曲したプロフィル部分280を有することに加えて、結合部材277の材料が一方側(上側)において他方側(下側)よりも弾性的でないように、勾配付けられた材料で形成することができる。
【0198】
この実施形態において、結合部材277は、好ましくは50というデュロメータを有する熱可塑性エラストマ(TPE)で形成される。
【0199】
カプセル穿刺機構220は、被験者による操作などが可能であるようにハウジング215の横開口222を通って延びている作動ボタン281と、作動ボタン281によって支持され、作動ボタン281の前方に延びており、作動ボタン281が後退位置から突出位置に押し込まれるときにカプセル収容部材249の側壁の穿刺穴271、273のうちの該当の1つを通って駆動されてカプセルCを穿刺する複数の(この実施形態においては第1および第2の)穿刺要素283、285とを備える。
【0200】
この実施形態において、カプセル穿刺機構220は、作動ボタン281が押し込まれてカプセルCが穿刺された後に作動ボタン281を後退位置に戻すために、作動ボタン281を後退位置に向かって外方向に付勢するように機能する弾性要素287を備える。この実施形態において、弾性要素287は、作動ボタン281の一体の一部分として形成されているが、他の実施形態においては、圧縮ばねなどの別途の要素として設けられてもよい。
【0201】
次に、この送出装置の典型的な動作を、以下で説明する。
【0202】
最初に、送出装置を手に取り、ノーズピースユニット217をハウジング215に挿入して、被験者は、カプセル穿刺機構220の作動ボタン281を押し、カプセル収容部材249に収容されたカプセルCを穿刺する。
【0203】
作動ボタン281を押すことにより、カプセルCは、カプセルCの軸方向の長さに沿って間隔を開けて位置する2つの位置において、穿刺要素283、285によって穿刺される。
【0204】
次いで、作動ボタン281が放され、付勢要素287の付勢のもとで作動ボタン281が後退位置に復帰する。この方法で、送出装置が準備され、すぐに使用できる状態となる。
【0205】
次いで、被験者は、ノーズピース247が流体を漏らさない密着を達成するように鼻孔の鼻道に当接するまで、ノーズピース247を自身の鼻腔に挿入し(この時点で、ノーズピース247の遠位端は被験者の鼻腔に約2cm延びる)、マウスピース277を自身の唇に保持する。
【0206】
次いで、被験者は、マウスピース218を通して息を吐き出し始め、この呼気が、被験者の口腔咽頭の軟口蓋を閉じ、被験者の鼻気道を通って気流を送るように機能し、気流が一方の鼻腔を通過し、鼻中隔の後縁を巡り、他方の鼻孔から出ることで、被験者の鼻気道を通る双方向の気流が達成される。
【0207】
被験者が充分な力で息を吐き出すとき、カプセルCは、カプセル収容部材249の入り口開口265によって定められる座から持ち上げられて回転し、この回転が、カプセルC内から物質を放出し、吐き出された気流に乗せて被験者の鼻腔の後部領域に届けるように機能する。呼気が続けられるとき、カプセルCは回転を続ける。
【0208】
さらに、この装置において、カプセルCは、振動するように構成され、この振動が、鼻孔に挿入されたノーズピースユニット217によってもたらされる音の伝達経路を通じて、特には鼻腔の後部領域において鼻気道の換気を促進するように機能する。この振動は、後述の検討において概説されるように、効能に貢献すると考えられる。
【0209】
次いで、送出装置のこの動作が、新たなノーズピースユニット217にて、装置を他方の第2の鼻孔へと装着して繰り返される。この実施形態においては、ノーズピースユニット217の全体が交換されるが、他の実施形態においては、カプセル収容部材249またはカプセルCだけを交換してもよい。
【0210】
ガスを、2、3、4、5、6、7、8、9、または10kPaの圧力でもたらすことができる。
【0211】
次に、本発明を、以下の実施例(ただし、これらに限られるわけではない)を参照して説明する。
【実施例1】
【0212】
この検討の主要な目的は、スマトリプタンの投与後の頭痛の緩和の発現を研究することにあった。また、この研究は、スマトリプタン治療の後の効用および安全性ならびに許容性を評価した。頭痛の緩和を、頭痛疾患の国際分類(第2版)(the International Classification of Headache Disorders(2nd Edition))の基準における中程度の痛み(グレード2)または深刻な痛み(グレード3)から痛みなし(グレード0)または軽い痛み(グレード1)への軽減と定義した。
【0213】
436名の被験者を、研究サンプルとした。研究における処置を、(i)
図2(a)および(b)のブレスパワー(商標)投与装置による鼻腔への16mgのスマトリプタン粉末の経鼻投与と経口錠剤偽薬との組み合わせ、および(ii)有効物質を含んでいないブレスパワー(商標)投与システムを使用しつつ100mgのスマトリプタンを経口投与する100mgの経口スマトリプタン錠剤(Imitrex(登録商標) 100mg Tablet、あるいは承認または後発同等品)の投与とした。
【0214】
研究では、単独の偏頭痛の発作の急性治療において、
図2(a)および(b)のブレスパワー(商標)投与装置を用いた16mgの投与量のスマトリプタンの経鼻投与の30分後における頭痛の緩和を、100mgのスマトリプタンの経口投与と比較した。
【0215】
この研究における投与の30分後および120分後における奏効率が、
図5にまとめられている。見て取ることができるように、100mgのスマトリプタンの経口投与と偽薬装置との組み合わせにおいては、30分後の奏効率が39%であった。
図2(a)および(b)のブレスパワー(商標)装置を用いた16mgのスマトリプタンの投与と偽薬の経口錠剤との組み合わせでは、30分後の奏効率が67%であった。
【0216】
スマトリプタンの作用の早期の発現について考えられる機構は、二酸化炭素が感覚神経の活発化およびカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)の放出を妨げることができることに起因している可能性があり、二酸化炭素および薬剤の流れのパターンも一定の役割を果たしている可能性がある。3~7kPaというより高い空気の圧力が、この装置の装置を通ってもたらされ、薬剤および二酸化炭素を鼻腔の後部領域に到達させることを可能にでき、特には三叉神経V1を狙うことを可能にできる。二酸化炭素への曝露および粘膜の圧力の組み合わせが有効かもしれない。二酸化炭素は、NOの作用に対抗し、CGRPの放出を促進できる。鼻粘膜のpHも、より高い二酸化炭素の圧力および濃度に曝されたときに変化する可能性がある。
【実施例2】
【0217】
この研究は、健康な被験者における無作為の非盲検の単回投与の交差の相対的バイオアベイラビリティ研究を含む。研究サンプルを、研究者によって健康であると判断され、医療歴、身体検査、血液化学、血液学(完全血球算定を含む)、尿検査、生体信号、および心電図(ECG)によって判断される臨床的に関連する異常を有していない18~55歳の男性および女性の20名の被験者とした。対象の被験者について、ボディマスインデックス(BMI)は18~32kg/m
2であり、体重は50kg以上であった。参加に先立ち、被験者は、研究における薬剤の各回の投与の前の48時間および拘束の期間の最中についてアルコールの摂取を控え、カフェイン/メチルキサンチンの摂取を研究の前の7日間および研究の継続期間について1日につき300mg未満に抑え、投与の前の24時間および拘束の最中は摂取しないことに同意した。さらに被験者は、最後の薬物動態サンプルの採取後まで研究日-1前の72時間についてグレープフルーツ、ダイダイ、またはキニンを含む食品または飲料(例えば、トニックウォータ)を消費せず、研究の最中にケシの実を含む食品を消費しないことに同意した。被験者を、両方の鼻孔を通る気流ならびに軟口蓋を閉じる能力(例えば、風船を膨らませる能力)について検証したところ、
図2(a)および(b)のブレスパワー(商標)装置を正しく使用することが可能であった。
【0218】
偏頭痛の履歴、もしくはスマトリプタンまたはその成分のいずれかあるいはスルホンアミドを含むあらゆる薬剤への過敏症またはアレルギの履歴を有する被験者は、除外した。被験者を、ヘモグロビンレベルがスクリーニング時に正常の下限よりも低い場合、スクリーニングの前の3ヵ月において献血を行い、あるいは多大な血液の喪失(>500mL)を被った場合、もしくは研究の完了から2ヵ月以内に献血を予定している場合に、不適格とした。投与の前の28日間における薬剤分解酵素(CYP-450)誘導物質の使用、投与の前の14日間における薬剤分解酵素(CYP-450)抑制剤の使用、投与の前の28日間におけるあらゆるモノアミン酸化酵素抑制剤の使用、出産の能力を持つ女性の被験者におけるホルモン避妊薬を除くあらゆる処方薬/製品の使用、ならびに研究開始の1日以内におけるあらゆる店頭売りの非処方の調製品(推奨の量にて使用されるイブプロフェンおよびアセトアミノフェンを除く)の使用は、いずれも除外の対象とした。妊婦および授乳中の女性は除外した。アレルギ性鼻炎、鼻中隔湾曲、ポリープ症、深刻な粘膜の腫れ、鼻潰瘍、鼻の外傷、または何らかの他の理由による呼吸疾患または既知の鼻閉塞、慢性の鼻血の履歴、現在の鼻咽頭に関する疾病、ならびに既知の軟口蓋の機能不全の存在は、すべて除外の対象とした。
【0219】
研究を、6回の来所で構成した。最初の来所において、被験者を適格であるかどうか選別した。身体検査の後で、被験者に対して、
図2(a)および(b)のブレスパワー(商標)送出装置の使用についての指導を行った。ひとたび被験者について装置を適切に使用できることが実証されると、残りの選別手順(生体信号、ECGの記録、臨床検査室試験のための血液および尿の採取、アルコールおよび薬剤の摂取についての試験、血清妊娠試験(女性のみ))を実行した。
【0220】
適格の被験者は、診療所にさらに4回来所した(来所2~5)。各々の来所において、被験者は、投与の前の晩に研究場所にチェックインし、スマトリプタン濃度を測定するための最後の血液サンプルの採取後まで研究場所にとどまった。無作為化を、Celerion Bioanalysis Laboratory(米国ネブラスカ州Lincoln)によって生成した。被験者を、最初の処置の来所(来所2)において4×4のラテン方格法を使用して処置シーケンスに無作為に割り当てた。研究処置を、(i)16mgの投与量をもたらす
図2(a)および(b)のブレスパワー(商標)装置によって経鼻投与される20mgのスマトリプタン粉末、(ii)20mgのスマトリプタン鼻腔用スプレー(Imitrex(登録商標) 20mg Nasal Spray、あるいはその承認または後発同等品)、(iii)100mgの経口錠剤(Imitrex(登録商標) 100mgTablet、あるいはその承認または後発同等品)、および(iv)6mgの皮下注射(Imitrex(登録商標) 6mg SC、あるいはその承認または後発同等品)とした。各々の被験者について、これら4つの処置の各々を、処置の間に7日の洗い流し期間を持たせつつ、4つの別々の期間において、各々の来所においてほぼ同じ時刻に行った。被験者を、投与の前の少なくとも8時間および投与後の4時間まで絶食とした。
【0221】
図2(a)および(b)のブレスパワー(商標)装置によるスマトリプタン粉末の投与において、被験者は、最初に1回目の分の物質を第1のノーズピースユニット17(スマトリプタンのフリーベース(free base)の11mgを収容しているカプセルC、平均投与量は7~8mgになる)から一方の鼻孔に自身で投与し、次いで2回目の分の物質を第2のノーズピースユニット17(やはりスマトリプタンのフリーベースの11mgを収容しているカプセルC、平均投与量は8mgになる)から他方の第2の鼻孔に自身で投与した。鼻腔用スプレーによる投与については、最初に被験者に適切な投与についての指導が行われ、次いで被験者は、1回分の20mgのスマトリプタンを一方の鼻孔に自身で投与した。経口錠剤は、240mLの水で被験者によって摂取された。皮下注射については、研究者または被指名人が、6mgのスマトリプタンを被験者の腹部に注射した。
【0222】
被験者を、スマトリプタン濃度を測定するための最後の血液採取の3~10日後に、事後評価のための最後の来所(来所6)にて再訪させた。安全性評価は、有害事象(AE)の報告、身体検査、臨床検査室試験、生体信号、およびECGの測定にもとづいた。
【0223】
血液サンプル(5mL)を、投与前(時刻0)ならびに投与後2、5、10、15、20、25、30、45分、1、1.5、2、3、4、6、8、10、12、および14時間において、K2EDTAを含む管に採取した。採取管を冷凍遠心機(2~8℃)に1,500×gで10分間にわたって配置することによって、血漿部分を分離した。すべての血漿サンプルを、生物学的分析施設に送るまで-20℃で凍結保存した。血漿サンプルを、Celerion Bioanalysis Laboratory(米国ネブラスカ州Lincoln)において、検証済みのLC-MS/MS法を使用してスマトリプタンについて分析した。定量化下限(LLOQ)は0.1ng/mLであり、LLOQを下回るすべての濃度を、記述統計学およびPKパラメータの計算に関して0として取り扱った。すべてのPKパラメータを、WinNonlin Professional(登録商標)Version 5.2(米国カリフォルニア州Mountain View)およびSAS(登録商標)(Release Version 9.1.3,SAS Institute Inc.,米国ノースカロライナ州Cary)において無隔壁の手法を使用して計算した。計算したPKパラメータを以下に列挙する。
Cmax 観測された最大薬剤濃度
tmax Cmaxに達するまでの時間
AUC0-t 時刻0から時刻tまでの薬剤濃度-時間曲線の下方の面積。tは線形台形規則を使用して計算される最後の測定可能濃度[Cp]の時刻。
AUC0-∞ 時刻0から無限遠までの薬剤濃度-時間曲線の下方の面積。AUC0-∞=AUC0-t+Cp/λZとして計算される。
AUC0-15min 時刻0から15分までの薬剤濃度-時間曲線の下方の面積。
AUC0-30min 時刻0から30分までの薬剤濃度-時間曲線の下方の面積。
t1/2 最終排出半減期。ln(2)/λZとして計算され、λZは線形最小二乗回帰分析によって濃度-時間曲線の半対数グラフから計算される見掛けの一次最終排出速度定数である。
λZ 最終排出速度定数
AUC 無限遠までのCpから外挿されたAUC0-∞の割合。100×[1-(AUC0-t/AUC0-∞)]として計算される。
【0224】
サンプルサイズは、統計的検出力よりもむしろ実施上の考慮事項にもとづいた。20人の被験者からなるサンプルサイズが、4×4のラテン方格法を用いた各々のシーケンスにおいて少なくとも5回の反復実験をもたらし、PKパラメータのロバストな評価をもたらすと判定された。
【0225】
血漿濃度およびPKパラメータの値を、すべての記述統計学の計算に用いたSAS(登録商標)にインポートした。スマトリプタンのIn-transformed PKパラメータAUC0-∞、AUC0-t、AUC0-30、およびCmaxの分散分析(ANOVA)を、処置の比較に使用した。ANOVAモデルは、シーケンス、処置、および期間を固定効果として含み、被験者が変量効果としてシーケンスに重なった。シーケンス効果を、有意性の5%レベルにおける誤差項として被験者(シーケンス)を使用して試験した。各々のANOVAは、最小二乗(LS)平均、処置のLS平均の間の差、標準誤差、およびこの差に関する90%信頼区間(CI)の計算を含んだ。LS平均、LS平均の間の差、および各々の差の90%CIを、元の目盛りに対して累乗した。2つの処置は、処置の差の90%CIが80~125%という容認範囲内に完全に含まれる場合に限り、生物学的に同等と見なされる。
【0226】
スマトリプタンの血漿濃度-時間のプロフィル(
図6)は、4つの処置の各々の特徴を良好に示している。全曝露は、2つの経鼻投与によるスマトリプタン処置において、経口または皮下の経路によってもたらされるスマトリプタンと比べて大幅に少ない。2つの経鼻処置における投与後4時間までの平均血漿濃度-時間のプロフィルは、
図2(a)および(b)のブレスパワー(商標)装置による投与後に明らかに異なるプロフィル(
図7)を示しており、すなわち投与後の最初の30分において、
図2(a)および(b)のブレスパワー(商標)装置からのスマトリプタン粉末は、伝統的な液体スマトリプタンの鼻腔スプレーと比べ、血漿スマトリプタン濃度のより速やかな高まりおよび大幅に大きな曝露を生じさせている。
【0227】
4つの処置におけるPKパラメータの概要が、
図8に示されている。すべての処置について、第1の点t
max値は存在せず、平均残留面積(AUC
%extrapとして定義される)は約5%以下であった。
図2(a)および(b)のブレスパワー(商標)装置を用いたスマトリプタン粉末の経鼻投与は、スマトリプタンの鼻腔スプレーと比べて、投与された量は20%少ないにもかかわらず、27%高いピーク曝露(C
max)および75%多い早期曝露(AUC
0-15)をもたらした。これは、投与量の調節にもとづけば、59%高いピーク曝露および119%多い早期曝露を表わす。14時間にわたってAUC
0-tおよびAUC
0-∞によって測定された全身曝露の程度は、
図2(a)および(b)のブレスパワー(商標)装置および鼻腔スプレー液体スマトリプタンについて同様であった。対照的に、
図2(a)および(b)のブレスパワー(商標)装置によってもたらされたスマトリプタン粉末においては、100mgの経口スマトリプタン錠剤および6mgの皮下スマトリプタン注射の両者と比べて、ピークおよび全体としての全身曝露が大幅に低かった。両方の経鼻製品における吸収プロフィル曲線は、初期の経鼻吸収とその後の胃腸吸収との組み合わせに矛盾しない双峰のピークを特徴としたが、これらの製品は、同じパターンを示したわけではない(
図7)。早期のピークが、
図2(a)および(b)のブレスパワー(商標)投与装置を使用してより高い一方で、後のピークは、鼻腔スプレーによる投与においてより高かった。
【0228】
約3~4時間に位置する見かけの最終消失半減期は、2つの経鼻処置および経口錠剤においては同等であったが、皮下注射においては、より短い約2時間であった。
【0229】
幾何平均を用いた血漿スマトリプタンPKパラメータの統計比較が、
図9にまとめられている。全身曝露の全体としての程度(投与量の調節なし)は、
図2(a)および(b)のブレスパワー(商標)投与装置および伝統的な液体鼻腔スプレーを用いたスマトリプタン粉末の投与において同様であったが、ピーク曝露および投与後の最初の30分における累積曝露は、
図2(a)および(b)のブレスパワー(商標)投与装置を用いて投与されたスマトリプタン粉末においてそれぞれ約20%および52%高く、これは投与量が約20%少ない(16mg対20mg)にもかかわらずより多くのスマトリプタンが投与後により早期に体循環に達したことを示唆している。経口錠剤および皮下注射の両者に対しては、
図2(a)および(b)のブレスパワー(商標)装置によるスマトリプタン粉末の経鼻投与後のピークおよび全体としての曝露が、大幅に低かった。
【0230】
使用後の
図2(a)および(b)のブレスパワー(商標)装置における残留物の定量的測定により、装置が各々の鼻孔に8±0.9mg(平均±SD)のスマトリプタン粉末をもたらした(平均総投与量は16mgになる)ことが明らかになった。14時間にわたる全身曝露の程度は、
図2(a)および(b)のブレスパワー(商標)投与装置を用いた16mgのスマトリプタン粉末およびスマトリプタン鼻腔スプレーを用いた20mgの液体スマトリプタンの投与において同様(AUC
0-∞が64.9ng・hr/mL対61.1ng・hr/mL)であったが、スマトリプタン粉末この投与は、伝統的な液体鼻腔スプレーと比べて、投与量が20%少ないにもかかわらず、ピーク曝露が27%高く(C
maxが20.8ng/mL対16.4ng/mL)、最初の30分における曝露が61%多かった(AUC
0-30minが5.8ng・hr/mL対3.6ng・hr/mL)。差の大きさは、ミリグラム当たりの基準においてより大きく、同等の量をより少ないリスクでもたらすこと、またはより少ない量を大幅に低いリスクでもたらすことを可能にしている。標準的な鼻腔スプレー後の吸収プロフィルは、より低い早期の吸収およびその後のより高い吸収に一致した双峰のピークを示した。対照的に、
図2(a)および(b)のブレスパワー(商標)投与装置を用いた投与後のプロフィルは、より高い早期の吸収およびより低い後の吸収を示した。
【0231】
100mgの経口錠剤(C
maxが70.2ng/mL、AUC
0-∞が308.8ng・hr/mL)および6mgの注射(C
maxが111.6ng/mL、AUC
0-∞が128.2ng・hr/mL)と比べると、
図2(a)および(b)のブレスパワー(商標)投与装置を用いたスマトリプタン粉末の経鼻投与後のピークおよび全体としての曝露は、大幅に低かった。
【0232】
この研究における
図2(a)および(b)のブレスパワー(商標)投与装置を用いたスマトリプタン粉末の投与のPK特性は、
図2(a)および(b)のブレスパワー(商標)投与装置を用いると、血漿濃度の初期の立ち上がりの速度が、鼻腔スプレーでの20mgのスマトリプタンの投与または経口錠剤での100mgのスマトリプタンの投与のいずれの後よりも速いことを示している。
【0233】
スマトリプタンの種々の経口および非経口の処方の比較は、吸収の初期の期間における血漿濃度の上昇の速度が効能の良好な目安をもたらすことを示し、伝統的な鼻腔スプレーにてもたらされる20mgのスマトリプタンの臨床効果が血漿レベルに大きな差があるにもかかわらず経口錠剤として投与される100mgのスマトリプタンの臨床効果と同様であることを部分的に説明できる。また、偏頭痛の患者において
図2(a)および(b)のブレスパワー(商標)投与装置を用いたスマトリプタン粉末の投与で観察される60分における効能も説明することができる。
【0234】
経鼻投与の2つの形態についての平均吸収プロフィルの評価から、いくつかの重要な相違が明らかになる。生物学的に同等な現時点において利用可能なスマトリプタン注射製品の範囲と異なり、PKプロフィルは、
図2(a)および(b)のブレスパワー(商標)投与装置および伝統的な液体鼻腔スプレーが生物学的に同等でないことを示している。液体鼻腔スプレーにおいては、2つのピークを有する明白な混成パターンが存在し、比較的低い経鼻吸収の後に、投与量の大部分が飲み込まれることに一致したほぼ胃腸吸収と思われる高度な吸収が続くことを示唆している。対照的に、
図2(a)および(b)のブレスパワー(商標)投与装置を用いたスマトリプタン粉末の投与後には早期のピークがより顕著であり、投与量のより多くの部分が経鼻的に吸収されることを示唆している。
図8に示されるとおり、
図2(a)および(b)のブレスパワー(商標)投与装置を用いたスマトリプタン粉末の投与と標準的な液体鼻腔スプレーとの間の違いは、たとえ投与量について量の調整を行わなくても、C
max(20.8ng/mL対16.4ng/mL)、AUC
0-30(5.8ng・hr/mL対3.6ng・hr/mL)、およびAUC
0-15(2.1ng・hr/mL対1.2ng・hr/mL)などの吸収プロフィルを特徴付けるいくつかの指標においても明らかである。
図2(a)および(b)のブレスパワー(商標)投与装置を用いたスマトリプタン粉末の投与と比べたときの伝統的な鼻腔スプレーに関する最大濃度までの時間の遅れ(中央値t
maxが0.75時間に対して1.5時間)も、ブレスパワー(商標)投与装置において早期の経鼻吸収の割合が高いことに矛盾しない。しかしながら、中央値t
max値は、双峰の吸収プロフィルの文脈において慎重に解釈されなければならない。
【0235】
スマトリプタン粉末が2つの鼻孔に投与されたのに対し、鼻腔スプレーが1つの鼻孔に投与されたことに注目すべきである。液体スマトリプタン鼻腔スプレーを両方の鼻孔に分けて投与することによる薬物動態プロフィルへの影響はすでに研究されており、1つの鼻孔への投与と比べて吸収の速度または程度に影響を与えないことが明らかになっている。したがって、投与の手順におけるこの違いは、今回の研究における発見を説明するものではないと思われる。
【0236】
図2(a)および(b)のブレスパワー(商標)投与装置を使用して投与される薬剤カプセルのペアに入れられたスマトリプタン粉末の量は、約20mgであった。しかしながら、測定された平均投与量は16mgであり、伝統的な鼻腔スプレーによって投与された20mgのスマトリプタンよりも20%少ない。このより少ない投与量は、2つの異なる経鼻投与の手法の間で見られる吸収の速度および程度の両方における差を、さらに強調する。
【0237】
スマトリプタン液体鼻腔スプレーは、未だ広くは使用されていない。これは、一部には、鼻腔スプレーに関して知覚される大きな利益が鼻腔スプレー投与の固有の不適切さによって制限されて少ないがゆえの動機の欠如の反映かもしれない。多くの被験者において薬剤の多くの部分が胃腸管から吸収されることに鑑み、経鼻投与と経口投与との間の差が、多くの患者において観察できない可能性がある。この研究のブレスパワー(商標)投与装置は、粉末を鼻弁の向こうの領域に分配することで、相対的に経鼻吸収が多く、胃腸吸収が少ない吸収プロフィルを生み出すことによって、典型的なスプレーの投与の不適切さの多くを回避する。処置後の最も早い時点における吸収の速度および程度について見られる大きな差は、鼻腔からの吸収がより大であることに起因すると考えられる。この研究は健康な志願者を対象にしたが、比例して大きい経鼻吸収に向かう変化は、経口投与と
図2(a)および(b)のブレスパワー(商標)投与装置を用いた投与との間の差が健康な志願者の場合よりもより顕著になり得る偏頭痛患者の臨床の文脈において、特に重要となり得る。多数の研究が、偏頭痛を有する患者において胃内容排出が遅いことを示しており、そのような患者における経口投与後の薬剤の吸収の信頼性および速度へのリスクならびに経口PK曲線の「右への移動」を示唆している。仮説ではあるが、スマトリプタン血中レベルの迅速な上昇の速度は、より速い発現速度またはより大きな治効をもたらすため、この研究のブレスパワー(商標)投与装置の使用が、経口投与または鼻腔スプレーによる投与と比べてより迅速な初期の上昇の速度を伴うことに、注目することが重要である。呼気によって生み出される正の圧力によって増強される真の経鼻投与の達成に関するさらなる理論上の利点として、薬剤および二酸化炭素が三叉神経の第1枝および副交感神経の翼口蓋神経節にもたらされること、およびおそらくはこの関連においてそれらが刺激されることが挙げられる。
【0238】
注射または経口のトリプタンの使用には、許容性および安全性の懸念が付随することがある。この研究から、この研究のブレスパワー(商標)投与装置の使用後のピークおよび全体としての全身曝露が、錠剤または注射と比べて大幅に低いことが明らかになった。曝露が少ないということは、安全性および許容性のプロフィルがより良好であり、すなわち所与の量における関連のリスクがより低いと言い換えることができる。この研究から、全身的副作用はなく、ただ1人の被験者が味覚障害を報告したにすぎず、スマトリプタン粉末の投与における
図2(a)および(b)のブレスパワー(商標)投与装置の使用がより安全であり、健康な被験者によって良好に許容されることが明らかになった。対照的に、4名の被験者が皮下注射後に発熱を経験し、3名の被験者の各々が錠剤および注射の後に吐き気を報告した。
【0239】
図2(a)および(b)のブレスパワー(商標)経鼻投与装置を用いたスマトリプタン粉末の投与は、鼻腔スプレーと比べたときにより迅速かつより効率的な吸収プロフィルをもたらし、錠剤または注射よりも曝露レベルが大幅に低いと結論付けられる。
【実施例3】
【0240】
この研究は、健康な被験者と比較したときのニトログリセリン(GTN)誘起の偏頭痛を有する被験者における
図2(a)および(b)のブレスパワー(商標)投与装置および伝統的な鼻腔スプレー(Imitrex(登録商標) 20mg Nasal Spray、あるいは承認または後発同等品)を用いたスマトリプタンの投与を調査した。
【0241】
図10~12が、
図2(a)および(b)のブレスパワー(商標)送出装置および20mgの鼻腔スプレーの両方を使用して得られた健康な被験者のスマトリプタンPKパラメータと比較したニトログリセリン(GTN)誘起の偏頭痛についてのスマトリプタンPKパラメータを示している。
【0242】
自発的な変化が、偏頭痛の側への片側性の送達によるより良好な吸収および作用をもたらすことができると考えられる。三叉神経の片側の活性化が、経鼻吸収の増大および胃腸吸収の遅延をもたらすように鼻粘膜を変更することができる。三叉神経の自発的な活性化が、二酸化炭素の投与もより効率的にでき、さらに粘膜が、圧力の影響をより受けやすくなることができた。
図10から見て取ることができるとおり、偏頭痛患者においてGNT発作の際に偏頭痛の側に
図2(a)および(b)のブレスパワー(商標)投与装置を使用してもたらされた7.5mgのスマトリプタンが、27%の生物学的利用能をもたらした。偏頭痛の側の投与についてのC
maxが11である一方で、鼻腔スプレーにおいてはわずか9.7である。各々の鼻孔への
図2(a)および(b)のブレスパワー(商標)投与装置を用いた7.5mgのスマトリプタンの投与は、より高い生物学的利用能をもたらすようには見受けられない。
【0243】
図2(a)および(b)のブレスパワー(商標)投与装置を用いたスマトリプタンの投与は、より効率的な薬剤投与の形態であり、伝統的な液体鼻腔スプレーと比べてより少ない投与量でより高いピークおよびより早期の曝露を生み出し、伝統的な鼻腔スプレーまたは経口投与と比べてより迅速な吸収を生み出す。また、経口錠剤または皮下注射と比べて大幅に低いピークおよび全体としての全身曝露をもたらす。
【実施例4】
【0244】
この研究は、
図2(a)および(b)のブレスパワー(商標)投与装置を用いた公称量20mgのスマトリプタンの両側への投与と、100mgの経口スマトリプタン錠剤(Imitrex(登録商標) 100mg Tablet、あるいはその承認または後発同等品)の投与とを比較する二重盲研究である。
【0245】
この研究は、対象の各患者が各々の処置によって頭痛を処置するクロスオーバ設計である。具体的には、患者は、5回までの頭痛を一方の処置によって処置し、次いでクロスオーバにより、5回までの頭痛を他方の処置によって処置した。各々の頭痛において、患者は
図2(a)および(b)のブレスパワー(商標)投与装置の使用および錠剤の摂取を行い、そのうちの一方だけが有効な薬物スマトリプタンを含む。
【0246】
400を超える頭痛についての非盲検データから、中程度または重度の頭痛について30分の時点において得られた結果(薬剤の摂取の30分後における頭痛の緩和)は、54%である。
【0247】
文献は、スマトリプタンの100mgの経口錠剤からの30分における反応が、約9~14%になるはずだと述べている。これは、偽薬装置において観測された反応速度が、経口錠剤単独においてこれまでに観測された反応速度よりも、はるかに速いことを示している。
【実施例5】
【0248】
メシル酸ジヒドロエルゴタミン(DHE)、スマトリプタン、ゾルミトリプタン、ブトルファノール、シバミド、およびリドカインの経鼻投与処方物がいずれも、偏頭痛および/または群発性頭痛の処置について使用/研究されている。シバミドおよびリドカインは、神経伝播を中断させるために鼻用スポイトによって投与されており、臨床効果の或る程度の証拠が存在しているが、頭痛の処置について米国食品医薬品局の承認を未だ受けていない。さらに、SPGの神経刺激が、群発性頭痛の進行停止において有望な結果を示しており、鼻腔からアクセスできる神経への局所処置の可能性を強く支持している。
【0249】
DHE、スマトリプタン、ゾルミトリプタン、およびブトルファノールは、偏頭痛の処置について規定の承認を得ており、患者によって伝統的な鼻腔スプレーの形態で投与可能である。DHEは、静脈注射で投与されたときにきわめて有効な薬剤であることが知られている。残念ながら、経口投与においては生物学的利用能が1%未満である。しかしながら、経鼻投与の場合には~40%の生物学的利用能を有し、この薬剤を外来患者の状況において使用することが可能である。経鼻用の処方に加えて、スマトリプタンは、皮下注射、経口錠剤、座薬、およびすぐに溶ける錠剤(米国外)として利用可能である。経鼻用の処方に加えて、ゾルミトリプタンは、経口錠剤および速やかに溶ける処方物として利用可能である。両方の薬剤について、経鼻用の処方物は、経口用の処方物の代案として、遅い発現、遅い運動性からの頭痛の際の少ないGI吸収、ならびに吐き気の存在下で経口の薬剤を摂取することへの患者の嫌悪の問題を克服すべく導入された。
【0250】
経鼻投与スマトリプタンおよび経鼻投与ゾルミトリプタンの両者は、偏頭痛の症状の緩和の提供において偽薬に対する優性を証明済みであり、経鼻投与ゾルミトリプタンは、同じ量のゾルミトリプタン経口錠剤と比べてより早期の緩和をもたらすことが証明済みである。いずれも、それぞれの経口投与錠剤よりも迅速な吸収をもたらす。しかしながら、いずれも経口と比べて全体としての生物学的利用能の顕著な向上はもたらしていない。
【0251】
これらのトリプタンの伝統的な鼻腔スプレーは、かなり小さい早期のピーク(鼻粘膜における吸収にもっぱら起因する)と、その後のより明瞭なピーク(鼻を迂回した後に飲み込まれる薬剤のかなりの量のGI吸収を表す)とを有する双峰の吸収パターンを示す。ゾルミトリプタンについて、鼻部分が研究において定量化され、総吸収の約30%を占めることが明らかになった。同様の研究は、スマトリプタン鼻腔スプレーにおいては行われていないが、スマトリプタン液体鼻腔スプレーの薬物動態は研究されている。経鼻投与されるゾルミトリプタンについて承認された量が、錠剤についての最高の量(5mg)と同じであるのに対し、承認された伝統的なスマトリプタン鼻腔スプレーの量の範囲(5、10、および20mg)が、承認された経口投与(25、50、および100mg)の5分の1であることに、注目することが重要である。結果として、全身曝露が、スマトリプタン鼻腔スプレーの量の範囲において、経口投与の処方物と比べて大幅に少ない一方で、経鼻投与のゾルミトリプタンにおいては同様またはわずかに多い。より少ない量をもたらす機会は、経口投与の処方物と比べて全身およびGI関連の副作用の恐れを全身曝露が少ないことによって軽減できるため、(ゾルミトリプタンに対する)スマトリプタンの経鼻投与の潜在的利点を強調する。
【0252】
経鼻の薬剤の投与の理論的な利点にもかかわらず、偏頭痛の処置への広い採用について障害が存在している。患者にとって、伝統的な鼻腔スプレーにおいて達成される標的粘膜への不適切な付着の結果が、経口処置と比べて知覚される臨床的利点が欠ける原因となる重要な因子と考えられる。将来に向けた研究により、患者に鼻腔スプレーを選択させる重要な動機が発現の速度であることが示されている。さらに、より迅速な吸収の可能性を提供する他の処方物が、単に経口投与の処方物の量を増やすよりも望ましいかもしれない。経口投与の処方物に対する許容性または安全性の改善は、それらが発現の速度の改善などの核となる効能の利点を伴うならば、単純に患者による選択の可能性を高めると考えられる。
【0253】
鼻腔スプレーにおいて使用される伝統的なスプレーポンプでは、鼻孔の入り口から約2cmに位置する鼻弁と呼ばれる狭い三角形の狭窄の向こう側の標的部位への薬剤の付着が限定的になる。狭い鼻弁の目的は、複雑で入り組んだ鼻道と協働して、吸い込まれる空気をろ過および調整し、嗅覚を高め、ガス交換および呼気の際の流体の保持を最適化することにある。鼻のこれらの重要な機能的特徴は、効率的な経鼻の薬剤投与に多くの場合に無視し得ない重要な制約を課す。
【0254】
例えば、スプレー瓶から放射される膨張する凸状の噴煙および高い粒子速度は、大部分が鼻前庭の壁に衝突すると考えられる。経鼻投与の推進力を増しても、噴煙が最初に到達した表面に衝突する一方で、「鼻での吸い込み」が後述のように問題を悪化させるため、基本的な解剖学的制約を変えることにはならない。鼻腔の前部、すなわち鼻前庭は、主として繊毛のない扁平上皮で覆われており、鼻弁の向こうの繊毛のある気道上皮と比べて薬剤の吸収の効率が低い。鼻の前部領域の形状と噴煙との間のこの不整合ゆえに、スプレーのわずかな部分だけが鼻弁を過ぎて進入し、スプレー量の大部分は前庭に残る。
【0255】
鼻の前庭の液体の大部分は、滴り落ちるか、あるいは拭き取られる可能性がある。投与の際の鼻からの吸い込みは、鼻弁をさらに狭くし、投与後の滴り落ちを避けるための反射的な鼻からの吸い込みは、上側がすでにきわめて狭い鼻弁をさらに狭くするだけでなく、すでにスリット状のより奥の鼻道を縮ませると考えられる。これは、広い鼻表面積への意図される照準およびより大量の付着の潜在的利益の両方を損なう傾向にあり、鼻弁を通過した薬剤を鼻孔底に沿って案内して飲み込ませようとする傾向を有する。舌の付け根に位置する苦みを検知する味蕾が、これらの鼻腔スプレーにおいてしばしば報告される強い苦みの原因となる濃縮された液体に露出される。スプレーのうちのより小さな割合だけが、早期の鼻吸収の大部分を占めるきわめて血管の多い呼吸粘膜に達する。このように、伝統的な鼻腔スプレーによってもたらされる薬剤のかなりの部分が、鼻で吸収されるよりもむしろ飲み込まれてしまうため、GI管が、吸収される薬剤の量に鼻よりも大きく貢献する。この現象は、スマトリプタンにおいて伝統的な鼻腔スプレー投与の後に双峰の吸収プロフィルが生じることで観察され、経鼻の吸収に関係すると思われる低い早期のピークが20分後に生じ、その後に90分の辺りのGI吸収による高い吸収ピークが続く。
【0256】
伝統的な鼻腔スプレー投与に続く経口吸収が優位であることで、経鼻投与について意図される利点が減少する。すなわち、経口錠剤との大きな違いがないことで、一部の患者において作用の発現がわずかに速くなるにとどまり、鼻腔スプレーの市場における受け入れが限られる結果となっている。
【0257】
とりわけ、偏頭痛および他の頭痛の病態生理学に関与する三叉神経の感覚枝および副交感枝の両者が、SPGの存在場所でもある鼻弁の向こうの粘膜表面を刺激する。これらの構造が頭痛の病態生理学に関与する範囲において、鼻腔の上後部分は、現状および将来の薬剤による治療の介入にとって標的を呈するが、標準的な鼻腔スプレーでは効果的な到達が不可能である。
【0258】
点鼻薬およびスプレーポンプに関する付着パターンについての包括的な見直しは、伝統的な送出装置は鼻弁の向こうの呼吸粘膜への送達にとって最適ではないという結論を導いた。伝統的なスプレーポンプの薬剤の送達を改善しようと試みるいくつかの手法が、長年にわたって提案および試験されてきているが、概して実用的でなく、最適でなく、あるいは繰り返しの人間における経鼻投与研究における証明が未だなされていない。使用の方法を改善することによって従来からの鼻腔スプレーを最適化する努力も、やはり報われておらず、研究において伝統的な鼻腔スプレーを使用して7つの異なる頭および体の位置が試験され、「最良な方法は存在しない」と結論付けられた。
【0259】
本明細書に記載のブレスパワー(商標)双方向(商標)送出機構は、電気機械のコストまたは複雑さを伴わない単純な装置において実現可能であり、伝統的な経鼻投与の多数の欠点を克服する。そのような装置を用いて、液体および粉末の両方の薬剤をもたらすことができる。この経鼻投与の考え方は、柔軟なマウスピースと成形された密封ノーズピースとを備える装置からなる。それは、肺吸入の恐れを回避しつつ鼻弁の向こうの鼻内の標的部位への薬剤の送達の程度および再現性を改善するために、鼻の構造および生理の独特な態様を利用するように設計される。
【0260】
一動作において、ユーザは、成形されたノーズピースを一方の鼻孔にスライドさせて鼻腔組織との密着を生じさせ、マウスピースを開いた唇の間に挿入し、大きく息を吸い込み、唇をマウスピースの周囲に閉じ、次いでマウスピースに強く息を吐く。装置への口での呼気により、中咽頭に正の圧力が生じ、軟口蓋を自然に持ち上げて密着させ、鼻腔と口腔とを完全に分離させる。ノーズピースの密着ゆえに、気流および動的な正の圧力が装置によって鼻腔に伝えられ、鼻弁および狭いスリット状の通路を膨張させる。装置および鼻道の抵抗に起因して口内の駆動圧力に比べてわずかに低くなる鼻腔内の圧力が、軟口蓋を横切る圧力と釣り合い、軟組織の過度の持ち上がりをおおむね回避する。これが、一般に、鼻腔の奥で鼻中隔の後方に位置する2つの鼻孔の間の連絡路の開通を維持し、鼻腔の過度の圧力を緩和しつつ吐き出された息が反対側の鼻孔から逃げ出すことを可能にする。
【0261】
再使用可能な装置本体と使い捨てのノーズピースとを備える専用の多数回使用のブレスパワー(商標)粉末装置を、偏頭痛の患者における使用のために開発した。11mgのスマトリプタン粉末が標準的な呼吸カプセルに入れられ、使い捨てのノーズピースのカプセル室に入れられて患者に提供される。室の底に位置する気流の小さな入り口と、上部のより大きな開口とが存在できる。装置の使用に先立ち、新しいノーズピースを装置の上部にはめ込むことができ、装置本体のボタンを押し込むことによってカプセルを穿刺することができる。装置への呼気において、穿刺されたカプセルは吐き出される息によって振動および/または回転でき、粉末を気流に放出する。薬剤粒子が、一方の鼻孔への生理学的に暖められた空気の膨張流によって後方に運ばれて鼻弁を過ぎ、空気が進路を反転させて他方の鼻孔を通って前方に逃げ出す前に、鼻腔の奥の方の位置の全体にわたって広く付着し、双方向の配送をもたらすことができる。
【0262】
個人間の人体測定における差異を評価する多数の研究を、個人の鼻孔のサイズならびに口と鼻との間の距離および角度の差異に対応するための装置の適切な設計をもたらすために実行した。本設計は、快適さおよび使用の容易さに関して充分に受け入れられることが使いやすさの試験および臨床試験において明らかになっている。
【0263】
液体および粉末処方物の鼻における付着を生体内で調査するためにこの数十年において使用されているシンチグラフィ技術は、比較的粗雑であり、鼻の領域ごとの付着および解消のパターンの信頼できる絶対的または相対的定量化を可能にしていない。被験者における放射線標識粒子の鼻の領域ごとの付着の信頼できる定量化を可能にする改善されたシステムが導入され、液体および粉末薬剤の両方について従来からの鼻腔スプレー装置をブレスパワー(商標)装置と比較する臨床付着試験において使用されている。
【0264】
最近の研究において、Tc99mで標識付けされたラクトース粉末がブレスパワー(商標)粉末装置によってもたらされている。スマトリプタン粉末と同様のカプセル充てんおよび粒子サイズのプロフィルが使用されている。付着の違いを測定するために、鼻が3つの水平な部分に分けられ、鉛直な分割線が下鼻甲介の頭部に配置され、各部分の内部の放射線のカウントが投与後に定量化された。
【0265】
ブレスパワー(商標)粉末装置は、鼻粘膜が繊毛のある気道上皮によって覆われている領域(とりわけ上後および中後領域であるが、上前および中前領域も)においてより広大な付着を示し、繊毛のない鼻前庭においては付着が少なく、従来からのスプレー投与と比べて鼻弁の向こうの上後領域への初期の付着が大幅に多かった(~54%対16%)(
図11a)。対照的に、液体スプレーにおいては、投与量の大部分が鼻の下部の限られた領域に付着した(~60%対~17%)(
図11a、
図11b)。
【0266】
領域ごとの付着および解消の分析は、ブレスパワー(商標)粉末装置が、鼻弁の向こうのきわめて血管の多い呼吸粘膜により広大な曝露をもたらし、特には鼻腔の中央および上部領域への送達を改善することを、明らかに示している。これは、適切な薬物について標準的な鼻腔スプレー投与において達成されるよりも迅速かつ顕著な薬物の吸収につながると妥当に期待される。この差は、PKの改善に反映され、最終的には効能の改善に反映されるため、客観的に測定できるはずである。この方法でのスマトリプタンの投与の結果を評価するそのような研究が、今や実行されている。
【0267】
2つの研究によって、ブレスパワー(商標)装置によって投与されるスマトリプタンのPKを評価した。一方を、偏頭痛を引き起こすことが知られているニトログリセリンによる攻撃(GTN攻撃)に先立って皮下(SC)注射スマトリプタンまたはブレスパワー(商標)装置によってもたらされるスマトリプタン粉末のいずれかで前処置した12名の偏頭痛患者におけるクロスオーバ研究とした。40より大規模な第2の研究を、ブレスパワー(商標)装置によって投与されるスマトリプタン粉末(15mgの投与量を鼻孔間で分け合う)を20mgのスマトリプタン鼻腔スプレー(一方の鼻孔)、100mgのスマトリプタン錠剤、および6mgのスマトリプタンSC注射と比較する健康な志願者における4-wayクロスオーバ研究とした。両方の研究において、ブレスパワー(商標)投与について、初期の鼻吸収およびその後のGI吸収を表す双峰の吸収パターンが存在した(
図12)。両方の研究において観察された初期のピークは、標準的な鼻腔スプレーにおいて観察されるピーク(第2の研究において測定)よりも顕著であり、ブレスパワー(商標)装置におけるより効率的かつ迅速な全身吸収を他のPKパラメータとともに表している(
図12)。また、吸収が、錠剤投与の場合よりも早期に生じているが、ピークおよび総計の全身曝露は、経口錠剤または皮下注射のいずれと比べても大幅に低い。
【0268】
スマトリプタン粉末の鼻のピークは、1つが偏頭痛患者においてであり、1つが健康な志願者においてである2つのPK研究においてきわめてよく似ており、両方の集団において早期に生じている。しかしながら、もっぱらGI吸収を表すと思われる後のピークは、GTN攻撃の最中に偏頭痛患者において実行された研究において大幅に小さい(
図12)。これは、攻撃の際にさらに強調される偏頭痛患者において観察される自律神経機能障害ゆえに、GI吸収が遅くなり、かつ少なくなることを反映していると考えられる。
【0269】
スマトリプタン粉末が2つの鼻孔に分配された一方で、鼻腔スプレーはただ1つの鼻孔に投与されたことに、注意すべきである。液体スプレーの投与量を鼻孔の間で分割することのPKプロフィルへの影響は、すでに調査済みであり、ただ1つの鼻孔への投与と比べて吸収の速度も程度も改善しないことが明らかになっている。したがって、投与の方法におけるこの違いは、健康な被験者のPK研究における発見を説明するものではないと思われる。
【0270】
薬物動態データを検討するときに、ブレスパワー(商標)送出装置によって投与されたスマトリプタンの総量が、スマトリプタンの20mgの液体スプレーよりも20~25%少ないことを思い出すことが重要である。ブレスパワー(商標)投与によって鼻吸収がより多くなることで、鼻を迂回するスマトリプタンの割合がスマトリプタンスプレーと比べて少なくなり、投与量が2つの鼻孔の間で分割される(
図12)。ブレスパワー(商標)投与後のより少ない投与量、より広い鼻分布、および大きく変更されたクリアランスパターン(軟口蓋が通常は投与時に実質的に閉じられることに注意)が、舌の付け根に位置する味蕾に到達する薬剤の量および濃度をさらに下げ、苦み知覚の強度を軽減すると考えられる。結果は、ブレスパワー(商標)装置によって生み出される鼻への付着の増進が、実際に薬物動態の利点に結び付いていることを示している。
【0271】
早期の吸収の増加は、効能の改善に関する利点を提供することができ、特には痛みの緩和のより迅速な発現を提供することができ、投与量が少ないことで、許容性または安全性を向上させることができると、仮説を立てることが妥当である。GTN攻撃による研究における偏頭痛の発作の防止の能力は、SCおよびブレスパワー(商標)粉末投与後の同様の脳波記録における発見と組み合わせられ、はるかに低い血中濃度にもかかわらず、臨床的に重要な潜在的利点を示唆している。これらの発見が、ブレスパワー(商標)スマトリプタン送出装置による無作為化された偽薬対照試験に進む論理的根拠をもたらした。
【0272】
急性偏頭痛における第1の偽薬対照並行群3群試験(患者の総数117名)において、2つの投与量のスマトリプタン粉末をブレスパワー(商標)装置で投与し、ダミー装置を使用した「偽薬」対照群と比較した。両方の有効な投与において、痛みの緩和の敏速な発現が観測され、早期の痛みの緩和の程度は、はるかに少ない全身曝露にもかかわらずSC注射についての履歴データと同様であった。また、両方の投与量において120分の時点における痛みの緩和について大きな利点が観察され、さらなる発展について多い方の投与量を選択した。多い方の投与量は、2時間の時点において偽薬による44%に対して60%(P<.01)の反応をもたらし、60分(74%対38%、P<.01)および30分(54%対31%;NS)の時点における高い早期反応率をもたらした。
【0273】
212名の患者におけるフェーズIII偽薬対照並行群2群研究を、ブレスパワー(商標)装置によって投与されるスマトリプタン粉末において最近行った。以下で検討されて示されるように、投与後2時間において、患者のかなりの割合が偽薬と比べて痛みの緩和(68%対45%、P<.01)、トリプタン治療の高い価値に直面した。しかしながら、やはり最も印象的な結果は、30分における顕著に高い反応率(42%対27%、P<.05)を有する痛みの緩和の敏速な発現であった。これは、トリプタン薬剤のきわめて少ない投与量に照らして特に注目に値する。報告された有害事象は、主として穏やかかつ一時的であり、おおむね投与の場所に限られていた。経鼻スマトリプタン粉末の経鼻投与のためのブレスパワー(商標)投与装置の使用は、効果的であり、安全であり、良好な耐用性を示し、急性偏頭痛の成人において痛みの緩和の敏速な発現を提供することができると結論付けられた。
【実施例6】
【0274】
この研究の目的は、中程度~激しい偏頭痛の患者の処置における
図2(a)および(b)のブレスパワー(商標)投与装置を用いたスマトリプタン粉末の投与の効能および安全性を同等の偽薬装置と比較することにある。
【0275】
経口トリプタンを摂取する患者は、一般的に、不満の理由として遅い作用の発現、不充分な痛みの緩和、および副作用に言及し、吐き気または嘔吐も使用の障壁となり得る。「トリプタン作用」として知られる副作用(AEs)は、最も頻繁には、より高い血漿中濃度を生じる処方物および投与量に関係する。
【0276】
小さな試験において、
図2(a)および(b)のブレスパワー(商標)投与装置によってもたらされる少量のスマトリプタン粉末が、付随の副作用を伴うことなく、スマトリプタンの注射によってすでに報告された率に近い頭痛緩和率を生じた。これらの結果が、より大規模な試験の実行を後押しした。
【0277】
この研究は、単回投与、多施設、無作為化、二重盲、偽薬対照、並行群研究である。患者は、参加前の1年超にわたって偏頭痛の履歴を有しており、頭痛を訴える日が1ヵ月当たり1日よりも多く15日よりも少なかった。患者を、第1および第2のノーズピースユニット17(それぞれ11mgのスマトリプタン粉末(平均7.5mgの放出量をもたらす)または偽薬のいずれかを収容したカプセルCを備えている)を使用してそれぞれの鼻道に第1および第2の投与分を届け、15mgという合計の平均投与量をもたらす
図2(a)および(b)のブレスパワー(商標)投与装置に無作為化した。患者は、中程度または激しい強度に達する発作を処置し、計画された時点において症状を記録した。
【0278】
結果が、
図13に大まかに示されている。具体的には、212名の患者が処置を受けた(108名がスマトリプタン粉末を投与するために
図2(a)および(b)のブレスパワー(商標)投与装置を使用し、104名が偽薬を投与するために
図2(a)および(b)のブレスパワー(商標)投与装置を使用)。平均年齢は42歳であり、85%が女性であった。
【0279】
主たる結果として、120分の時点において
図2(a)および(b)のブレスパワー(商標)投与装置を用いてスマトリプタン粉末が与えられた患者の68%が痛みの緩和を報告したのに対し、
図2(a)および(b)のブレスパワー(商標)投与装置を用いて偽薬が与えられた者においては45%であった(p<.01)。痛み緩和曲線は早期に隔たり、30分において統計的に有意になり(42%対27%;p<.05)、
図2(a)および(b)のブレスパワー(商標)投与装置は痛みの緩和の迅速な開始をもたらし、30分における顕著に高い応答速度を有する。120分の時点において、
図2(a)および(b)のブレスパワー(商標)投与装置を使用してスマトリプタン粉末が与えられた患者の37%が完全な緩和を報告したのに対し、
図2(a)および(b)のブレスパワー(商標)投与装置を使用して偽薬が与えられた者においては17%(p<.01)であり、意味のある緩和を報告した患者は、70%に対して45%(p<.001)であった。
【0280】
120分の時点において痛みが緩和された患者のうち、
図2(a)および(b)のブレスパワー(商標)投与装置を使用してスマトリプタン粉末が与えられた患者については65%、
図2(a)および(b)のブレスパワー(商標)投与装置を使用して偽薬が与えられた者(ns)については53%で、24時間の時点でも痛みの緩和が続いていた。吐き気、雑音恐怖症、および光恐怖症の大幅な軽減が報告された。両群において、群の間の差は統計的に有意ではなかった。全身性の有害事象は、1名の患者において報告されたにすぎない。唯一の患者は、軽微かつ一時的な手および頭部のうずきを報告した。報告された最も一般的(>5%)なAEは、製品の味(22%)、鼻の不快(13%)、および鼻炎(6%)であり、いずれも一時的かつおおむね軽微であった。
【0281】
この研究も、
図2(a)および(b)のブレスパワー(商標)装置を用いた少量のスマトリプタン粉末の投与が、偽薬および経口処置における歴史上の率と比べて、患者のうちの大きな割合において早期の頭痛緩和を生じ、頭痛の緩和の高い率を生じるという先の発見の繰り返しである。処置は良好な耐用性も示し、全身性の有害事象は少数であった。
【0282】
これらの結果の公開済みのデータとの比較は、
図2(a)および(b)のブレスパワー(商標)投与装置を用いたスマトリプタン粉末の投与における痛みの緩和の発現の速度が経口処置よりもはるかに速く、SC注射において達成される速度に近付くが、全身曝露は大幅に少なく、したがって付随の有害事象の恐れが大幅に低いことを示唆している。
【0283】
図2(a)および(b)のブレスパワー(商標)投与装置による臨床試験において、興味を引く高い偽薬反応率が観察されている。これらの試験において、対照の患者は、「いかなる処置」も受けないのではなく、偽薬にて同一の
図2(a)および(b)のブレスパワー(商標)送出装置を使用した。これらの「偽薬」患者における高い反応は、偶然、長期的傾向、または他の因子に起因する可能性があるが、おそらくは
図2(a)および(b)のブレスパワー(商標)投与装置の使用に直接関係があると説明できる。
【0284】
通常の呼吸の際に、鼻の上方の狭い部分における空気の最小限の交換が存在する。約5~6%の二酸化炭素を含み、毎分約30Lまたはそれ以上の流量であり、約2~約3秒にわたって続き、鼻の上部の狭い部分に進入する大量の呼気を流す
図2(a)および(b)のブレスパワー(商標)送出装置の特定の空気力学が、100%の二酸化炭素の投与(この二酸化炭素の投与は、短い継続時間にて行われ、少ない流量(10mL/s)および少ない量で行われているが)において報告された治療効果と部分的に同様の治療効果をもたらすことができる。この研究のこのブレスパワー(商標)投与装置においては、振動するカプセルおよび気流が、ハミングおよび脈動するネブライザへの反応において部分的に観測されるように、鼻の上部の狭い部分における空気の交換を大幅に増進できると推定される。さらに、正の気圧によって実現される潜在的な正の効果、カプセルのがたつきによって生み出される素早い振動、およびNOの除去のいずれもが偏頭痛の緩和において一定の役割を果たし得るとの仮説を立てる理由が存在する。これらの装置関連の機構および他の装置関連の機構のうちの1つ以上が、この研究のブレスパワー(商標)投与装置を使用したときの偽薬群の高い反応率に貢献している可能性がある。
【0285】
図2(a)および(b)のブレスパワー(商標)投与装置に関する鼻腔の奥深くの付着は、薬剤を三叉神経を分布させた粘膜組織およびSPGにより広くもたらす潜在力を可能にし、これが刺激によって副交感神経作用を引き起こすことができる三叉神経またはSPGによって少なくとも部分的に仲介される様々な疾患の処置において有益であると立証される可能性が高い。ブレスパワー(商標)装置そのものの空気力学的特性が、別の作用の機構および/または相乗効果を提供できる。
【0286】
偏頭痛の無効化または防止における可能性に加えて、群発性頭痛および三叉神経痛が、例えばトリプタン、DHE、リドカイン、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、局所作用のコルチコステロイド、および潜在的なCGRP拮抗薬などの多数の新規または現行の薬剤の単独または組み合わせでの投与の可能性の標的徴候の代表である。未だ満たされていない大きなニーズが存在し、最適な効能のためにSPGに最も近い領域を特に標的とするように意図された処置に合わせて投与を最適化するように現在の装置を改良することができる。他の潜在的な徴候として、この方法でのトリプタンまたは他の薬剤のきわめて少量の毎日の投与が充分な受容体阻害を提供して急性の発作の数を減らすことができる慢性偏頭痛が挙げられる。局所ステロイドさえも、群発性頭痛または副鼻腔炎による頭痛において単独または術後補助療法として有益となり得る。
【0287】
薬剤の経鼻投与は、長きにわたって、頭痛および他の疾患の処置において有用であることが知られている投与経路であった。しかしながら、経鼻投与の典型的な方法は、薬剤を広く、迅速かつ効率的な薬剤の吸収および他の利益を効果的に生じさせることができる鼻腔の後部/上部領域に届けるうえで、比較的効果が少ない。したがって、経鼻の薬剤投与の有望さが、充分には現実になっていない。本発明のブレスパワー(商標)投与装置による生体内での人のガンマ付着研究が、この新規な装置の機構が、顕著に改善された経鼻の薬剤の付着パターンをもたらすことができることを証明している。
【0288】
この改善された付着の結果を評価するための薬物動態研究が、少量のスマトリプタン粉末の投与に続いて実行され、この改善された投与が、標準的な鼻腔スプレーと比べたときの鼻粘膜における吸収の速度および効率の向上ならびにGI吸収の割合の低下に関係していることを示している。繰り返された臨床試験において、三叉神経および/またはSPGによって少なくとも部分的に仲介される標的への少量の投与のための
図2(a)および(b)のブレスパワー(商標)投与装置の使用が、かなりの反応率をもたらし、他の投与の形態よりもむしろSC注射によく似た早期の痛みの緩和をもたらすが、経口またはSCによる処置と比べて曝露がはるかに少ないことが、今や示されている。経鼻投与のこの新形態は、将来において様々な疾患の処置にいくつかの興味深い治療の選択肢を提供することができる。
【実施例7】
【0289】
この研究のこの目的は、
図2(a)および(b)のブレスパワー(商標)送出装置を用いたスマトリプタン粉末の投与を、伝統的な鼻腔スプレーでの液体スマトリプタンの投与と比較することである。
【0290】
この研究においては、
図2(a)および(b)のブレスパワー(商標)投与装置を使用して20mgのスマトリプタン乾燥粉末を投与し、投与は第1および第2のノーズピースユニット17(各々がスマトリプタンのフリーベースの10mgの公称量を収容しており、8mgの平均投与量をもたらす)を用いて2回の投与にて行われ、鼻への合計投与量は16mgとなった。
【0291】
これは、この研究のブレスパワー(商標)投与装置におけるスマトリプタンへの総曝露が、錠剤、鼻腔スプレー、または注射よりも少ない総ミリグラム投与量であることを意味する。しかしながら、直接な比較の薬物動態研究が、
図2(a)および(b)のブレスパワー(商標)装置を用いた16mgのスマトリプタン粉末の投与が20mgの従来からの液体スマトリプタン鼻腔スプレー(Imitrex(登録商標) 20mg Nasal Spray、あるいは承認または後発同等品)よりも高いピーク濃度(C
max ng/mL)を生むことを示している(20.8mg対16.4mg、投与量についての調節なし)。両方の経鼻投与の処方物は、スマトリプタン錠剤(Imitrex(登録商標) 100mg Tablet、あるいはその承認または後発同等品)(100mg錠剤=70.2,6ng/ml)または皮下注射(Imitrex(登録商標) 6mg SC、あるいはその承認または後発同等品)(6mg注射=111.6ng/ml)よりも大幅に低いピーク濃度(C
max ng/mL)を生む。同様に、曲線(AUC
0-∞ ng.hr/mL)の下方の面積によって測定される総薬剤曝露も、経鼻の処方物においては、100mgの錠剤(308.8ng.hr/mL)または6mgの注射(128.2ng.hr/mL)と比べてはるかに少ない(この研究のブレスパワー(商標)投与装置=64.9ng.hr/mL、従来からの20mgのスマトリプタン液体鼻腔スプレー=61.1ng.hr/mL、投与量についての調節なし)。この研究のブレスパワー(商標)投与装置によって投与されるスマトリプタン粉末は、試験したいかなるスマトリプタン製品とも生物学的に同等ではない。特に、
図2(a)および(b)のブレスパワー(商標)投与装置によって投与されるスマトリプタンの薬物動態が、従来からの液体鼻腔スプレーと比べてより高速かつより効率的な吸収のパターンを示し、投与される薬剤が20%少ないにもかかわらずAUC
0-15分が液体スマトリプタン鼻腔スプレーについて1.2であるのに対してこの研究のブレスパワー(商標)投与装置では2.1であり、AUC
0-30分が従来からのスプレーについて3.6であるのに対してこの研究のブレスパワー(商標)投与装置では5.8であり、すなわち早期の血漿曝露が60%増しよりもさらに上回ることに、注目すべきである。
【0292】
2010年に公開されたBPPSITについてのフェーズ2の無作為化された対照試験は、一時的な偏頭痛を有する117名の成人の被験者を含んでいる。スマトリプタン粉末公称10mgの群、スマトリプタン粉末公称20mgの群、および偽薬の3つの群が存在する。偽薬を含むすべての処置群が、ブレスパワー(商標)投与装置を使用した。後述されるフェーズ3の試験と同様に、被験者に対して偏頭痛が中程度または激しいときに処置を行うように指示した。フェーズ3の試験は、上述のように鼻に16mgをもたらす公称20mgの投与量だけを用い、したがってそれらのデータだけを検討した。
【0293】
フェーズ2の試験において、2時間における痛みの解放が、20mgの被験者の57%および偽薬の被験者の25%において生じた(P<.05)。中程度~激しい頭痛から皆無または軽い頭痛への移行として定義される2時間における頭痛の緩和は、きめて高く、統計的に有意であり、20mgについて80%、偽薬について44%であった。両方の投与量は、60分までの頭痛の緩和について偽薬から統計的に分離された。最も頻繁な処置関連の有害事象は、20mgの被験者の13%において生じた金属風味であった。
【0294】
BPPSIT20mgについてのフェーズ3の規定の中枢的研究、すなわちTARGET研究において、処置を受ける無作為化された223名の被験者(112名がBPPSIT、111名が偽薬を入れた装置)が存在した。主たる結果の指標は、BPPSIT群の被験者の67.6%および偽薬群の被験者の45.2%において生じた2時間における頭痛の緩和であった(P<.01)。頭痛の緩和について、BPPSITは、フェーズ2の試験の場合よりも早期に偽薬からの統計的に有意な隔たりに到達し、この時間は30分であった(41.7%対26.9%;P<.05)。2時間における痛みの解消は、偽薬において17%であるのに比べ、BPPSITについては被験者の34%において生じた(P<.01)。
【0295】
5%超において生じた有害事象として、異常な味(22%)、鼻の不快(13%)、および鼻炎(6%)が挙げられる。いずれも一時的かつおおむね軽微であった。中枢的試験において深刻な有害事象は生じなかった。
【0296】
BPPSITデータにおいて調査する価値があるいくつかの問題が存在する。それらは、フェーズ2およびフェーズ3の研究の間の効能の差、全体としての効能、早期の反応、ならびに偽薬反応および治療効果(TG)などである。フェーズ2からのデータは目覚ましく、2時間の時点において約80%が頭痛緩和との評価であったが、フェーズ3においては、2時間の時点における数字がこれほど高くはなく、約67%である従来からのトリプタンの範囲の上端により近くなり、30分の時点における数字は、経口処置および様々な注射用のトリプタンにおいて報告されている値よりも顕著に高い42%であった。これは、おそらくは単にフェーズ3においてフェーズ2と比べて2倍以上である被験者の数によるものと説明することができる。より多い被験者数(N)において明らかになる結果における差ゆえに、臨床医がフェーズ2から3に自身の薬剤の評価を変える多数の事例が存在する。被験者の数が少ないほど、結果が無作為変動に翻弄されやすくなる。
【0297】
しかしながら、反応率がBPPSITにおいて実際により高い可能性があり、1つの可能性は装置が理由であることである。すなわち、おそらくはより高い反応は、スマトリプタン粉末が翼口蓋神経節および三叉神経の上顎分岐を含む翼口蓋管に当接する横縁の近くに鼻内の高いところまでもたらされるときに生じる。偏頭痛および群発性頭痛に関するこれらの枢要な構造への直接的なトリプタンの作用の可能性が、さらなる調査に値し得る。
【0298】
2時間の時点における頭痛の緩和は、それがただ1つの時点であるがゆえに、大部分のフェーズ3偏頭痛試験における標準的な主要結果変数であるが、患者にとって臨床的に重要であると考えられる早期の効果についての情報をもたらすものではない。BPPSITにおいて、30分の時点における反応は42%~49%の範囲であった。これは、この早期の時点において、高い反応率である。ほぼすべての承認済みのトリプタンについて食品医薬品局が承認した処方情報に含まれる無作為化された対照の規定の試験からのデータが、頭痛反応を説明するプールされた効能データのグラフィクスを提供する。これらのグラフィクスを点検することで、スマトリプタン注射において30分の時点における頭痛反応が50%の範囲である一方で、30分の時点における痛みの緩和が経口の処方物において10~20%であり、従来からの鼻腔スプレー処方物において20~30%であることが明らかである。これらのデータは、BPPSITの早期の反応率が、他の非注射の投与形態において報告されている早期の反応率と比べ、注射において観察される早期の反応率に接近できることを示唆している。
【0299】
16mgというそのような少ない実際の投与量が、早期において注射に近い効能を有することができ、2時間の時点において6倍の投与量の錠剤に比肩する効能を有することができることは、興味深い。一般に、少ない曝露量において効能が同等であることは、有害事象の可能性を考えたときに魅力的である。
【0300】
BPPSITのフェーズ3試験をさらに精査すると、偽薬の率がかなり高いように思われ、2時間の時点における頭痛の緩和が45.2%であり、フェーズ2試験においても44%とやはり高い。対照的に、従来からのスマトリプタン液体鼻腔スプレーの2つのフェーズ3試験を要約しているRyanおよびその同僚の論文においては、偽薬の2時間の時点における頭痛の緩和の率は、29および35%である。偽薬の率がトリプタン無作為化対照試験において時間につれて次第に上昇する傾向が存在している。例えば、スマトリプタン経口錠剤の承認に使用された試験においては、偽薬の反応率が17%である。トリプタンについての付随の上昇する患者の期待を伴うトリプタンの未経験患者が存在しないこと、および患者の背景プールがトリプタンの広い入手性によって影響されるときの研究集団の変更など、偽薬の反応率の上昇を説明するための多数の仮説が存在している。
【0301】
BPPSITの場合に、装置そのものが高い偽薬反応率の原因である可能性がある。多数の研究者が、装置試験の状況においてより高い偽薬の率に気付いている。1組の研究者が述べているように、「装置による偽の治療への偽薬/反偽薬反応は、長期にわたる薬剤治療についてこれまでに報告されたものと同様」である。フェーズ3試験における高い偽薬反応率について、1つの可能性は装置そのものの新規性および使用であった。
【0302】
高い偽薬反応の技術的理由は、このフェーズ3試験において、ベースラインにおける激しい頭痛の割合が17%と顕著に低いことにあるかもしれない。これまでのトリプタン研究においては、典型的には、激しい頭痛の割合がより高い。中程度のベースライン評価に比べて激しいベースライン評価が少ないと、標準的な評価の物差しおよび分析方法に鑑みて、偽薬の反応が高くなると予想される。
【0303】
偽薬群が有効な処置をもたらしていた可能性があるかもしれない。BPPSIT試験における偽薬は、ブレスパワー(商標)装置(二酸化炭素による圧力およびラクトース粉末)による処置であった。これを明らかに偽の処置であったと考えることができるが、実際には偏頭痛への二酸化炭素の有益な効果についての文献が存在する。Spieringsおよび同僚らは、要約の形態でのみ入手することができる予備試験において、一時的な偏頭痛の急性治療のための連続的な二酸化炭素の吹き込みが、偽薬と比べてきわめて統計的に有意な2時間の時点における痛みの解放という反応(25.0%対4.8%)(P=.006)をもたらすことを発見した。
【0304】
すなわち、二酸化炭素は、おそらくは痛みの規制のシステムの一部である。Vauseおよび同僚らが、2007年に培養されたラットの三叉神経節細胞における発見について、「pH6.0または5.5における主な三叉神経節培養組織の培養が、カルシトニン遺伝子関連のペプチド(CGRP)遊離を大いに刺激することが示され、・・・等水溶液の条件のもとでの培養組織の二酸化炭素処理が・・・CGRPの分泌についてのKCI、カプサイチン、および酸化チッ素の刺激作用を大いに抑制し、等水溶液の条件のもとでの二酸化炭素処理は・・・減少をもたらし、・・・細胞内カルシウムのカプサイチンを介した増加が、二酸化炭素が感覚神経の活性化を抑え、したがって神経ペプチドの放出を抑えることによる独特な調節機構の第1の証拠[をもたらしている]」と書いている。さらに、二酸化炭素について観測されたCGRP分泌の抑制効果は、カルシウムチャネル活性の調節および細胞内pHの変化を含むと考えられる。
【0305】
したがって、BPPSITの二酸化炭素「偽薬」が、或る程度の治療をもたらしておる可能性があり、すなわち本当の偽薬反応ではない可能性がある。フェーズ2およびフェーズ3の両方の研究が44~45%という高い偽薬反応率を示したという事実は、この可能性を示唆している。しかしながら、新規なトリプタン投与試験における高い偽薬の率について、先例が存在する。第1のリザトリプタンの口で溶けることができる錠剤の試験において、偽薬の率は47%であった。BPPSITと比べたSpieringsの装置の二酸化炭素の濃度が不明であることが、現時点においてこの可能性をさらに調べる機会を制限している。
【0306】
BPPSITフェーズ3データにおいて検討すべきさらなる問題は、有効な薬剤における反応から偽薬における反応を引き算したときに得られる差として定義されるTGの問題である。20mgの場合の2時間の時点における頭痛の緩和に関して、フェーズ2におけるTGは36であり、フェーズ3においては22であった。この第2のTGは、第1に、トリプタンについての下端に位置するように思われる。研究(さらに詳しくは後述)においてTGの使用を選択するならば、実際に、2つのBPPSITのTGは、スマトリプタン液体鼻腔スプレーにおけるTGと同等に見えると考えられる。従来からのスマトリプタン液体鼻腔スプレーの5回の試験におけるTGは、25、25、29、35、および36であった。
【0307】
Sheftellおよび同僚らが、トリプタンの効能データのTGへの変換が有用であるか否かを評価した。TGの意図は、偽薬の変動にもかかわらず真の薬剤の効果を明らかにすることである。驚くべきことに、TGは有効な薬剤における反応よりも偽薬における反応に強く相関していることが明らかになった。TGをトリプタンの比較に使用すべきではなく、偏頭痛の治療は、メタ分析によってではなく、適切に設計された一対一の研究を使用することによってのみ比較できることに、注意すべきである。
【0308】
分析の目的で、この問題を再検討し、有効な薬剤および偽薬における反応についての研究による添付文書に報告された2時間の時点における頭痛の緩和を比較した(
図14および15を参照)。TGの理論によれば、偽薬に対する有効な薬剤の反応率が、有効な薬剤同士の相関よりも良好な正の相関を有していなければならない。TGが偏頭痛試験の解釈において有用な概念であるためには、有効な薬剤による処置において観察される反応が、観察される偽薬における反応率に比例して上下しなければならない。
【0309】
しかしながら、おそらくはTGの概念の他の適用と異なり、偽薬における反応率は、大きく変動するが、有効な薬剤における反応率への影響をほとんど、または全く有さないことが明らかである。トリプタン類におけるデータが、
図15のX軸に見られるように、所与の薬剤についての研究間で偽薬に対する反応に大きなばらつきが存在することを示している。偽薬についての率を横切る
図15のY軸上の比較的平坦な線として見られるように、所与の有効な処置において、有効な薬剤における反応率は、研究間の変動がはるかに小さい。偽薬群および有効な薬剤の群において観察された反応の間に、注目に値する相関は存在していない。引かれた研究において、有効な薬剤:偽薬のR2=0.02である。
【0310】
有効な薬剤における反応率は、偏頭痛においては有用な考え方ではないように見受けられるTGよりも良好に真の治療効果を反映するが、2001年に述べられたように、良好に設計された一対一の研究が、依然として比較のための基準である。すでに述べたように、BPPSITにおける頭痛の緩和率は、2時間の時点においては歴史的に他のトリプタン治療に一致しているように見受けられ、おそらくは30分の時点において注射のスマトリプタンにおいて歴史的に報告された反応率に近付くと言うことが、妥当であり得る。この迅速な発現は、患者、特にはすでに述べたように迅速な発現を必要とする患者にとって、重要となり得る。繰り返しになるが、この反応が16mgという少ない投与量において達成されることに注目すべきである。やはり、このことは、より投与量の多い処置と比べたときの望ましい安全性および耐用性についての潜在力を示唆しているが、鼻腔内の装置または薬剤の独特な活動について考えられる効能へ寄与に関する興味深い疑問も強調している。
【0311】
偏頭痛の急性治療は、個々の患者のニーズを薬剤および処方物に調査させる必要がある。特には、吐き気および反応、ピーク強度までの素早い時間、および実際には偏頭痛患者の一般的な胃不全麻痺のすべてが、発作の処置のための様々な非経口の処方物を要求する。ジェネリックなトリプタンが入手可能になるにつれ、それらを新たな処方物において使用する試みが進んでいる。新規なBPPSITは、従来からの液体鼻腔スマトリプタンスプレーと比べて、少なくとも薬物動態の改善を提供する。
【0312】
スマトリプタンの経鼻投与のためにこの研究において用いられたブレスパワー(商標)装置は、軟口蓋を閉じ、少量の粉末スマトリプタンを片側の鼻腔において上方に高く進めるために、自然の鼻の構造を使用する。この手法は、有害事象を減らし、効能を改善することができる。
【0313】
既知の有効な偏頭痛の薬剤について新規な投与システムを生み出すことは、確かに価値のある努力である。速効性の非経口の鼻用の処方物の臨床における役割は、すでに述べたように、錠剤が上手くいかない運命にあり、すなわち吐き気および嘔吐の状況にある者や、中枢性感作、異痛、および偏頭痛の無効化までの時間が、経口の薬剤の予測不可能かつ低速な吸収プロフィルに鑑みて錠剤に反応するには患者にとって短すぎる場合である。さらなる研究が、この新規なシステムが発現の速度および有効性において予報される利益を、これまでの非経口の処方物と比べて少ない有害事象で、臨床的にもたらすかどうかを明らかにするはずである。
【実施例8】
【0314】
この研究においては、
図4(a)および(b)のブレスパワー(商標)投与装置を使用した鼻のpH測定結果を分析した。いくつかの態様において、このデータは、現実的であると考えることができ、生体内で「装置効果」を確認するための利用可能な方法を提供する。しかしながら、鼻内のNOおよび二酸化炭素レベルの測定は、鼻から空気を常時吸い出す必要があり、流れのパターンを変化させてしまうと考えられるため、典型的には実現不可能である。
【0315】
粉末の形態の15~16mgのスマトリプタンをもたらすための
図4(a)および(b)のブレスパワー(商標)投与装置および経口スマトリプタン錠剤(Imitrex(登録商標) 100mg Tablet、あるいはその承認または後発同等品)を使用した一対一(H2H)の結果からの盲検データが、一般的に、高い反応率、すなわち激しい/中程度の偏頭痛から軽い偏頭痛への軽減または偏頭痛の解消を示しており、30分の時点における非盲検化後の潜在的な筋書きが、1つ以上の「装置効果」を示唆している。
【0316】
100mgの経口スマトリプタン錠剤(Imitrex(登録商標) 100mg Tablet、あるいはその承認または後発同等品)の30分の時点における最高の有効反応率(13%)に、15~16mgのスマトリプタン粉末の投与についての30分の時点における最高の偽薬の率(31%)を加えるとすると、合計は30分の時点において44%になる。このデータは、15~16mgのスマトリプタン粉末の投与と偽薬錠剤とにおける30分の時点の70%という反応率が、きわめて高いことを示唆している。174回の激しい発作について、95%が30分の時点において改善された。やはり、これは、両方の処置の選択肢においてきわめて高い反応率である(少なくとも90%の反応)。
【0317】
「盲検」データについて、1556件の発作が存在した。これらの発作のうち、30分の時点における反応データが示される。713件の発作は、処置時において軽い発作であり、669件の発作は、処置時において中程度の発作であり、174件の発作は、処置時に激しい発作であった。軽い発作については、117件(16.4%)が30分の時点において解消した。中程度の発作については、288件(43%)が軽い発作になり、101件(15.1%)が解消した。激しい発作については、77件(44.3%)が中程度の発作となり、65件(37.4%)が軽い発作となり、22件(12.6%)が解消した。すべての発作ついて、1ポイントの改善が43%であり、痛みの解消は15.4%であった。中程度/激しい発作(n=843)について、57%が軽い発作/解消となり、14.6%が痛みの解消を達成した。
【0318】
双方向の流れパターンのいくつかの生理学的な側面を再考した。一般的に、そのような流れパターンは、約5~約6%の二酸化炭素の範囲の鼻粘膜への吐き出された二酸化炭素の曝露をもたらす。さらに、pHが鼻粘膜において局所的に変化する可能性がある(Djupesland、2014年)。鼻の上部からのNOの除去(Djupesland、1999年)も生じる可能性があり、正の圧力が鼻粘膜に加えられる可能性がある(Valsalvaおよび痛みの緩和)。さらに、振動する気流が狭いスリット状の通路および洞からのガス交換を促進できる。Hummingおよび他の刊行物が、鼻のNO、振動するメッシュ、およびパルス式ネブライザを記載している。
【0319】
上述の潜在的な装置効果について、考えられる説明がいくつか存在する。そのような効果の証拠は、フェーズ2およびフェーズ3の試験において早期の時点においても観測される高い偽薬の率からもたらされる。盲検のH2Hデータも、さらなる「装置効果」を示唆している。
【0320】
1つの仮説は、約5~6%の二酸化炭素を含む呼気を双方向的にもたらすことで、きわめて少ない流量の100%の二酸化炭素または低流量の15~45%の二酸化炭素(Shusterman、2003年を参照)の低流量の送達と同様の鼻粘膜への二酸化炭素の曝露がもたらされるというものである。
【0321】
フェーズ2偏頭痛試験(Spierings、2008年-Capnia)において、二酸化炭素が、偏頭痛について最小3.5分の休息で最初の2時間において45秒の休止および7回までの投与サイクルで90秒(900mL)または5×15(1050mL)にわたって10ml/秒で受動的にもたらされた。これは、毎秒10mlの二酸化炭素にほぼ等しかった。二酸化炭素のかなりの希釈が、開いた鼻ならびに投与の際に生じ得る鼻による吸い込みまたは吐き出しゆえに予想される。
【0322】
フェーズ2急性鼻炎(AR)試験(Casale、2008年-Capnia)において、二酸化炭素が経鼻にて2回、10mL/sの流量で60秒間にわたって受動的に投与され、総投与量は約1200mLであった。投与は、5分未満の間隔によって隔てられ、交互の鼻孔に投与された。
【0323】
被験者は、口を通じた呼吸によってガスを過度に吸い込むことを避け、ガスが一方の鼻孔に流れ、鼻および鼻腔を通過し、他方の鼻孔を通って出ることができるようにした。流量は、やはり毎秒10mlの二酸化炭素であった。二酸化炭素のかなりの希釈が、開いた鼻ならびに投与の際に生じ得る鼻による吸い込みまたは吐き出しゆえに予想される。
【0324】
さらに、Shustermanの2003年の論文は、吸入に同期した5L/分 15% × 3秒での二酸化炭素の投与を記載している。これは、250mL×0.15に相当し、37.5mlの二酸化炭素に等しく、すなわち毎秒12.5mlに等しい。比較により、
図4(a)および(b)のブレスパワー(商標)投与装置(Djupesland、2014年)は、5%の二酸化炭素を30L/分で3秒間にわたってもたらし、すなわち約5~6%の二酸化炭素を500mL/秒で与え、すなわち25~30mL/秒または3秒で75~90mLの二酸化炭素を与える。
【0325】
二酸化炭素は、偏頭痛およびアレルギ性鼻炎において効果を示しており、二酸化炭素は、粘膜のpHを局所的に下げることによって例えば局所の三叉神経構造に作用し、神経を鈍感にする細胞間の事象を引き起こすと考えられる。さらに、鼻にもたらされた二酸化炭素は、鼻粘膜におけるpH変化を引き起こすことができる(Shusterman、2003年)。
【0326】
二酸化炭素は、少なくとも部分的には、偏頭痛およびARにおいてpHを変化させることによって機能する。最近の刊行物が、二酸化炭素などの刺激時の三叉神経知覚線維からのCGRPの放出が嗅覚受容器ニューロンの臭気への反応を阻害すると記載している。VauseおよびSpieringsによる論文は、「この研究からの結果は、二酸化炭素が感覚神経の活性化を抑え、したがって神経ペプチドの放出を抑えることによる独特な調節機構の第1の証拠をもたらしている」と述べている。さらに、二酸化炭素について観察されるCGRP分泌の抑制効果は、カルシウムチャネル活性の調節および細胞内pHの変化を含むと考えられる。
【0327】
効果を実現させるのが細胞内のpHの変化であり、かなりの程度までの細胞外のpH変化が鼻の粘液の分泌によって緩衝されると思われる。最近の研究ならびにShusterman,2003年による研究において、鼻のpHの指標の小さな変化が、1.5~2ミリメートルの間の直径を有する鼻道に挿入されたプローブによって測定された。これらのプローブは、食道および室のpHを測定するために使用されており、詳細な曲線(後述される例を参照)をもたらすソフトウェアに直接結合させることができる。
【0328】
これらの研究から、15体積%超の二酸化炭素濃度が、鼻のpHの変化を目にするために必要であると思われる。しかしながら、以下でさらに詳しく論じられるとおり、この研究は、ブレスパワー(商標)投与装置を使用することで、鼻のpHの変化を5~6体積%の二酸化炭素濃度で達成できることを明らかにしている。
【0329】
これまでの文献が、1~3%程度およびさらに低い二酸化炭素濃度を感知またはかぎつけることができる過敏症の嗅覚受容体を有するラットを記載している。この二酸化炭素の検知の高感度の態様は、炭酸などの合成を触媒するカルボニックアンヒドラーゼの活性に依存する。結果としての酸性化が、嗅上皮の最も背側の凹所に位置する嗅覚受容器ニューロンの小集団に活動を生じさせる。
【0330】
人間においては、そのような高感度の二酸化炭素の検出は存在せず、二酸化炭素は人間にとっては臭いを有さない。しかしながら、より高い二酸化炭素濃度において、三叉神経の線維がやはり酸性化によって活性化される。重要なことに、三叉神経の活動を生じさせる陽子は、嗅覚の粘液または間質液において放出されたものではなく、三叉神経の線維の軸索原形質において放出されたものである。最近になって、三叉神経節ニューロンのTRPA1チャネルのゲーティングの研究が、チャネルが細胞内酸性化によって開かれることを明らかにした(Wang他、2010年)。
【0331】
二酸化炭素は形質膜を横切って容易に拡散できるため、感覚終末の内側でのカルボニックアンヒドラーゼ反応は、線維内pHの低下を引き起こすことができる。この細胞内酸性化の正確な程度は、これまでのところまだ測定されておらず、カルボニックアンヒドラーゼの線維内濃度は知られていない。しかしながら、線維内のアクセス可能な体積の小ささに鑑み、酸性化は、はるかに大きな体積を有する周囲の流体と比べて、線維においてはより強調されると予想される。
【0332】
人間の被験者において、Shusterman,2003年は、今回の研究において用いたもの(5L/分、3秒の継続時間、20%の二酸化炭素)と同様の二酸化炭素刺激の最中に細胞外のpH電極によって鼻粘膜pHの酸性化を測定した。細胞外pHは、~7.4という基礎レベルから0.05~0.1pH単位だけ低下し、二酸化炭素の効果は各々の二酸化炭素パルスの最中である。細胞外pHのこれらの微小な低下は、細胞外の媒体の効率的なpH緩衝を反映している。細胞内酸性化による二酸化炭素検出の利点は、軸索原形質の内部の二酸化炭素によって、より大きなpH変化を生じさせることができることにある。細胞外の媒体に関して、三叉神経の線維は、周囲の流体の体積およびpH緩衝能力と無関係に、pH電極として働くのではなく、むしろ二酸化炭素電極として働くように見受けられる。
【0333】
たとえ人間が二酸化炭素に対する高感度を有していなくても、最近の研究は、人間が約5~6%のCO2の二酸化炭素レベルを感知できることを示唆している。さらに、鼻粘膜は、鼻の前部においてより敏感であり得る。
【0334】
1つ以上の因子が、
図2(a)および(b)、
図3(a)および(b)、ならびに
図4(a)および(b)のブレスパワー(商標)投与装置の使用から得られる上述の反応データに影響を及ぼし得る。1つの仮説は、ブレスパワー(商標)投与技術を利用することによって、達成される特定の気流および圧力の特徴が、先の研究において観測された高い偽薬の効果および偽薬のブレスパワー(商標)投与装置が経口スマトリプタン錠剤と組み合わせられたときの30分の時点における高い反応を少なくとも部分的に説明できる別の利点を提供する。1つ以上の因子が影響を有することができ、これらの因子は、ガス圧力、鼻からのNO除去、または呼気の二酸化炭素への曝露を含む可能性が高いと予想される。これらの因子のうち、二酸化炭素が、最も大きな影響をもたらす可能性がある。
【0335】
上述のように、二酸化炭素は、偏頭痛およびアレルギ性鼻炎に影響を有することが知られており、それは局所pHの小さな変化によって達成されると思われる。以前の研究が、15%および45%の両方の濃度の5L/分の二酸化炭素の曝露が、0.1~0.2pH単位の粘膜pHの低下を引き起こすことを示している。研究は、そのような小さいpH変化が三叉神経に影響を及ぼし、三叉神経の感度および伝導度を変化させ得ることを示唆している。他の研究は、CGRPの放出、したがって偏頭痛の痛みに影響を及ぼす可能性を示唆している。
【0336】
この研究において、
図3(a)および(b)ならびに
図4(a)および(b)のブレスパワー(商標)投与装置を使用し、しかしながら有効物質は投与していないときの鼻のpHの測定は、予期せぬ結果をもたらした。いかなる物質の放出も伴わないこれらのブレスパワー(商標)装置を通じての呼気は、反復かつおおむね再現性のある(センサ位置の小さな不可避のばらつきに支配される)0.1~0.2pH単位のpH低下を引き起こした。このデータは、15%および45%の二酸化炭素の3秒の噴出において観察された内容と同様である。この研究において、センサは鼻の底および鼻の天井の近くの両方に配置された。多くの場合において、センサが鼻の床よりも天井の方に配置される場合に、より大きな「低下」が観察される。
【0337】
上記仮説のように、NOの先の測定値に少なくとも部分的にもとづき、きわめて少ない流量の二酸化炭素において、二酸化炭素が鼻の床にもたらされる場合には鼻の上部の二酸化炭素濃度の達成および上昇に時間がかかる。先の研究において用いられた約45%~約100%という高い濃度においても、上述のとおりのブレスパワー(商標)装置の使用において即座に達成される約6%の濃度を達成するために10秒のパルスよりも多くの時間を要する可能性がある。これは、これらのブレスパワー(商標)装置を使用したときに観測された「装置効果」を説明することができる。
【0338】
上述のとおりのブレスパワー(商標)装置の使用への直接的な反応におけるpHの低下を検出できることは、特筆すべきである。このデータは、高い偽薬効果およびきわめて高い奏効率について、科学的および論理的な説明をもたらす。
【0339】
本明細書に記載のデータは、装置効果の仮説の裏付けを提供する。液体の投与のための
図3(a)および(b)のブレスパワー(商標)装置ならびに粉末の投与のための
図4(a)および(b)のブレスパワー(商標)装置の両者における測定値は、類似のデータをもたらす。したがって、特定の装置よりもむしろ基礎にある双方向(Bi-Directional(商標))法が、大きな効果を有するように見受けられる。二酸化炭素がアレルギ性鼻炎にも効果を有することは、注目に値する。
【0340】
この研究において、鼻のpH測定が、ノルウェイのWinMed社によって提供されるDigitrapper pHという1.6mmのpHセンサおよびAccuViewというソフトウェアを使用して行われた。実施形態において、1つ以上のプローブPが、
図16に大まかに示されるように配置され、いずれかの鼻道に位置することができる。
【0341】
図4(a)および(b)のブレスパワー(商標)装置を使用し、鼻の天井に向けて同じ側に配置されたセンサプローブPによる呼気の流れの関数としてのpHを示すデータが、
図17に示されている。
図3(a)および(b)のブレスパワー(商標)装置ならびに
図4(a)および(b)のブレスパワー(商標)装置を使用した呼気の流れの関数としてのpHを示すデータが、
図18に示されており、pHセンサは、鼻の天井に向かって鼻孔の開口から約4~5cmに配置されている。
図19が、
図4(a)および(b)のブレスパワー(商標)投与装置に関する呼気の流れの関数としてのpHを示すデータを示しており、センサは、鼻の床および中間部分において鼻に約4~5cmに位置している。
図20は、
図4(a)および(b)のブレスパワー(商標)投与装置に関する呼気の流れの関数としてのpHを示すさらなるデータを示しており、やはりセンサは、鼻の床および中間部分において鼻に約4~5cmに位置している。
【0342】
Shusterman,2003年が、通常の空気(0%)ならびに15%および45%の二酸化炭素の3秒のパルスを鼻にもたらした。pHセンサは、鼻の床に沿って配置された。サンプリング周波数は、毎秒10回(10Hz)であった。この研究からのデータが、
図21に示されている。
【0343】
比較として、この研究は、口呼吸、穏やかな鼻呼吸、および
図3(a)および(b)ならびに
図4(a)および(b)のブレスパワー(商標)投与装置による投与の前の穏やかな鼻呼吸を比較し、センサは右の鼻孔に約4~5cmに配置され、装置は左の鼻孔に挿入された。本方法に関するデータが、
図22に示されている。
【0344】
要約すると、ブレスパワー(商標)投与装置は、偏頭痛およびアレルギ性鼻炎においてコニカルエフェクト(conical effects)を示している試験(Capnia-Casale 2008年およびSpierings 2008年)においてもたらされた100%の二酸化炭素の投与と比べてより高い生理学的活性および効能をもたらす。ブレスパワー(商標)投与装置は、1分間隔の3秒のパルスにてもたらされる15%および45%の両方の二酸化炭素と比べて、装置を通る呼気への直接反応においてpHレベルの同様の低下も示す。これらの結果は、ブレスパワー(商標)装置が、試験において以前に使用され、偏頭痛および永続するアレルギ性鼻炎において効果を有することを示した100%の投与と同様の鼻粘膜への二酸化炭素の曝露を生み出すことができることを示唆している。ブレスパワー(商標)装置を使用したときの二酸化炭素に関連したこの効果は、正の気圧、大きな流量および変化した流れのパターン、鼻腔に浸入する改善された気流、装置の動作における振動効果、ならびに酸化チッ素の除去などのブレスパワー(商標)装置の使用に関連する1つ以上の他の因子との組み合わせにおいて、三叉神経および肥満細胞について刺激または仲介効果を引き起こすことができる。
【実施例9】
【0345】
口蓋閉鎖ブレスパワー(商標)装置を使用した低用量のスマトリプタン粉末によるフェーズ2試験は、注射によってすでに報告された水準に近付く頭痛の緩和を生み出したが、トリプタン効果を伴わなかった。
【0346】
この追加の研究は、中程度~激しい急性偏頭痛の患者において偽薬と比較したときのこの投与の形態の効能および安全性を評価するために行われた。
【0347】
この研究は、スクリーニングに先立つ12ヵ月において1~8回/月の偏頭痛を経験している患者において実行されたフェーズ3、他施設、無作為化、二重盲検、偽薬対照、単回投与、並行群研究であった。各々の患者は、中程度または激しい強度の単一の偏頭痛を、
図4(a)および(b)のブレスパワー(商標)装置を使用して11mgのスマトリプタン粉末を含んでいるカプセル(両カプセルが合計で22mgの総投与量をもたらす)からの2回の投与(各々の鼻孔に1回ずつ)または偽薬が装てんされた同等の対応する装置(偽薬装置)で処置した。この研究において、各々のカプセルの公称投与量は11mgのフリーベースであり、7.5mgの平均投与量がもたらされ、2つのカプセルからの合計の平均投与量は15mgであった。
【0348】
以下の効能の結果が測定された。
120分の時点(主要)および120分までの複数の時点における頭痛反応(軽微または皆無と評価される痛み)。
120分までの複数の時点における完全な痛みの解放(頭痛の苦痛からの自由)。
有意な緩和までの時間(頭痛の苦痛の反応の解釈の患者による報告)。
臨床の無力および偏頭痛関連の症状(光恐怖症、音声恐怖症、吐き気、および嘔吐)。
救急薬の使用。
反応の持続/痛みの解放の持続(120分の時点において頭痛について効果があり/痛みが完全に消え、投与後24および48hまで再発生または救急薬の使用がない)。
【0349】
合計で212名の患者(平均年齢42歳;85%が女性)が処置を受けた(108名がスマトリプタン粉末;104名が偽薬)。患者の人口統計学データおよびベースライン特性が、
図23に示される。
【0350】
120分の時点における頭痛反応(主要転帰)は、68%対45%であった(P<.01)。頭痛反応曲線は早期に分かれ、30分で統計的に有意になった(42%対27%;P<.05)。一般に、この投与の形態は、完了した緩和および持続した反応について偽薬よりも統計的に優れており、24および48時間の時点でも残っていた。無力および偏頭痛関連の症状についても軽減が見られた。
【0351】
結果が
図25に示される。一般に、完全な痛みの解消(120分)は37%対17%(P<.01)であり、意味のある緩和(120分)は70%対45%(P<.001)であった。反応の持続は、24時間の時点において44%対24%(P<.01)であり、48時間の時点において34%対20%(P=.01)であった。痛みの解消の持続は、24時間の時点において28%対12%(P=.005)であり、48時間の時点において20%対9%(P=.02)であった。さらに、吐き気、音声恐怖症、および光恐怖症の軽減が、両方の群において報告された(偽薬に対して有意ではない)。救急薬を必要とした患者は、本投与形態と比べ、偽薬を使用した患者において有意に多かった(52%対37%;P=.02)。
【0352】
主要評価項目に関して、本投与形態を使用した患者の68%が投与後120分の時点において頭痛の緩和を報告したのに対し、偽薬装置の使用においては45%であった(P<.01;
図26)。本投与形態における頭痛の緩和は早期に達成され、30分の時点において偽薬と比べて統計的に有意になった(42%対27%、P<.05;
図26)。頭痛の緩和は、頭痛疾患の国際分類(第2版)の基準における深刻(グレード3)または中程度(グレード2)の頭痛の痛みから軽い頭痛の痛み(グレード1)または頭痛の痛みなし(グレード0)への軽減として決定された。
【0353】
救急薬を必要とした患者は、偽薬装置と比べ、本投与形態を使用した患者において有意に少なかった(37%対52%、P<.05)。
【0354】
加えて、24および48hの時点において痛みの緩和の持続を感じた患者は、偽薬装置と比べ、本投与形態を使用した患者においてより多かった(
図26)。さらに、救急薬を必要とせずに24時間の時点において痛みからの解放を維持した患者は、偽薬装置を使用した場合の12%と比べ、本投与形態を使用した患者においてより多かった(28%)(P<.01)。24または48hの時点における痛みの緩和の維持は、120分の時点において頭痛が緩和された患者および完全に痛みから解放された患者であって、2~24hおよび2~48hの時間枠において頭痛の再発がなく、救急薬を必要とすることがなかった患者に関して計算されている。
【0355】
頭痛の緩和の尺度についての結果に一致して、120分の終点において意味のある緩和を感じた患者(
図27-投与後120分において本投与形態または偽薬装置による処置後に有意な緩和を感じた患者の割合を示している(FAS))および完全な痛みの緩和を感じた患者(
図28-120分の終了点において痛みの解消を達成した患者の割合(FAS))は、偽薬と比べて本投与形態を使用した患者において有意に多かった。意味のある緩和は、患者の報告による解釈である。痛みからの解放は、深刻(グレード3)または中程度(グレード2)の頭痛の痛みから痛みなし(グレード0)への軽減によって決定される頭痛の痛みからの解放である。
【0356】
臨床障害尺度(clinical disability score)は、45および120分の間を含めて偽薬と比べて本投与形態によって処置された患者において大きく改善された(P<.05)。偏頭痛関連の症状の発生は、120分の終点において大幅に少なくなった(本投与形態対偽薬装置:吐き気19%対21%、嘔吐2%対0%、光恐怖症48%対60%、音声恐怖症32%対44%)。これらの減少は、群間で有意には達していない。
【0357】
全身性の副作用(AE)はほとんどなく、1名の患者を除いて何も報告されなかった。「トリプタン効果」として知られる特定のAEが、高い血漿薬剤濃度を生じさせる処方物および用量につきまとう。最小限のトリプタン知覚も存在した。具体的には、胸部圧迫感は存在せず、ただ1名の患者が軽い一時的な知覚異常を報告したにすぎない。報告された最も一般的(>5%)なAEは、製品の味(22%)、鼻の不快(13%)、および鼻炎(6%)であった。
【0358】
伝統的な鼻腔スプレーと異なり、本投与形態は、粉末状のスマトリプタンを迅速な吸収が可能である鼻構造の奥深くに届けるために新規なブレスパワー(商標)装置を使用する。この奥深くの領域は、三叉神経および嗅神経によって神経が大いに分布した領域ともなっており、理論的に直接効果または鼻から脳への輸送の潜在力を提供している。ブレスパワー(商標)装置は、正の気圧およびカプセルのがたつきからの振動との組み合わせにおいて、二酸化炭素を局所的にもたらし、酸化チッ素(NO)を取り除く。この効果は、この研究において見られる偽薬反応にも貢献している可能性がある。高い偽薬反応は、鼻腔内の三叉神経末端における二酸化炭素の送達および/またはNOの除去の神経化学効果に関係している可能性もある。NOは、偏頭痛の病態生理学における重要な仲介者であるCGRPの三叉神経ニューロンからの放出を刺激することが知られている一方で、二酸化炭素は、CGRPの放出を抑制し、偏頭痛の調節において有益となり得る。
【0359】
結論として、本投与形態による処置は、偽薬装置そのものへの高い反応にもかかわらず、最小限のトリプタン知覚で同等の偽薬装置と比べて敏速かつ持続する偏頭痛の緩和をもたらす。このデータは、先のフェーズ2試験からの結果に一致し、本投与形態が急性偏頭痛の処置において重要な治療力がありかつ現実的な選択肢を提供できることを示唆している。
【実施例10】
【0360】
実施例10は、実施例9に続き、実施例9の研究の延長を呈し、得られたデータは非盲検である。
【0361】
この研究は、
図29に示されるとおり、2つの最大12週間の二重盲期間による多施設ダブルダミー有効経口比較物クロスオーバ研究である。
【0362】
患者は、スクリーニングに先立つ少なくとも1年間において頭痛疾患の国際分類(第2版)の基準に従って前兆を伴う偏頭痛または前兆を伴わない偏頭痛と診断され、過去12ヵ月において2~8回/月の偏頭痛発作を経験した18~65歳である。合計275名の偏頭痛患者が無作為化され、185名(67.3%)が両方の期間において1~5回の偏頭痛について処置され、フル・アナリシス・セット(FAS)を構成した。FASの患者についての研究において、合計1531回の偏頭痛を評価した。平均において、患者は40.1歳であり、女性(85%)であり、ベースラインにおいて4.9回/月の偏頭痛発作を有した。患者サンプルの人口統計学データが、
図30に示されている。
【0363】
患者は、
1)
図4(a)および(b)のブレスパワー(商標)投与装置(2つのカプセルを使用し、各々のカプセルが11mgのスマトリプタン粉末を収容しており、それぞれ平均で8mgを投与し、したがってスマトリプタン粉末の公称総投与量は22mgであり、平均総投与量は16mgになる)+経口偽薬錠剤、および
2)同一の偽薬装置(ただし、ラクトース粉末が入れてある)+100mgの経口スマトリプタン錠剤(Imitrex(登録商標) 100mg Tablet、あるいはその承認または後発同等品)
へと1:1に無作為化された。
【0364】
二重盲段階の各々の期間(最大12週間の継続期間)において、患者を研究療法(装置+経口錠剤)で最大5回の適切な偏頭痛について処置した。適切な偏頭痛は、少なくとも軽度(グレード1)の強さについての頭痛疾患の国際分類(第2版)の基準に合致し、処置は、適切な偏頭痛の発生から1時間以内に与えられた。
【0365】
投与の直前ならびに投与後10、15、30、45、60、90、および120分、ならびに24および48時間において、患者は、以下を電子手帳に記録した。
・頭痛深刻度スコア(痛みの強さ 0=なし、1=軽度、2=中程度、3=深刻)
・臨床障害スコア(日常活動の実行 0=障害なし、1=軽い障害、2=中程度の障害、3=深刻な障害)
・吐き気、音声恐怖症、光恐怖症、または嘔吐の有無
【0366】
120分後に、患者は、(うずき、温暖/高温感覚、灼熱感、無気力感、圧力、頭部の締め付けなどの窮屈感、麻痺、および違和感で構成される)非定型の感覚の有無および深刻度を記録した。
【0367】
緩和がなく、頭痛が悪化し、あるいは頭痛が再発した場合、すべての毎日の評価が1回目の研究薬剤の投与後120分の時点から24時間までについて完了した後で、2回目の研究薬剤を摂取することができた。頭痛深刻度の評価は、24および48時間の時点でも行った。
【0368】
2回目の投与の後、研究薬剤の2回目の投与後120分の時点で緩和がなく、頭痛が悪化し、あるいは頭痛が再発した場合、救急薬を摂取することができた。
【0369】
主要評価項目SPID-30が、投与から30分までの頭痛疾患の国際分類(第2版)の基準におけるすべての頭痛深刻度スコアを利用する合計疼痛強度差(summed pain intensity differences:SPID)を評価した。
【0370】
データを、ラスト・オブザーベーション・キャリィド・フォワード(LOCF)を用いてANCOVA(固定効果としての処置、期間、処置順序;ランダム効果としての被験者)によって分析した。
【0371】
副次的評価項目は、各々の時点における頭痛の緩和、痛みの軽減、および痛みからの解放の評価を含んだ。
【0372】
図31および32に示されるとおり、主要評価項目(SPID-30)は、
図4(a)および(b)のブレスパワー(商標)装置を用いたスマトリプタン粉末の経鼻投与において、投与後の最初の30分について、経口スマトリプタン錠剤と比べて、有意に大きい痛みの緩和が達成されたことを示している(LS平均が7.41に対して10.80、P<.001)。
【0373】
図33および34に示されるとおり、15分から始まって90分まで、統計的により大きい投与後の痛みの緩和率(P<.05)が、
図4(a)および(b)のブレスパワー(商標)装置を用いたスマトリプタン粉末の経鼻投与において達成された。深刻または中程度の発作に関して、30分の時点において、
図4(a)および(b)のブレスパワー(商標)装置を用いたスマトリプタン粉末の経鼻投与による痛みの緩和が、発作のうちの54%において達成されたのに対し、経口錠剤と偽薬装置との組み合わせにおいては39%であった(P<.001)。この頭痛緩和の割合は、10、45、71、および78%である15、30、60、および120分の時間間隔における6mgの皮下投与スマトリプタン(Imitrex(登録商標) 6mg SC、あるいはその承認または後発同等品)の頭痛の緩和さえも上回る。頭痛の緩和は、深刻(グレード3)または中程度(グレード2)の頭痛の痛みから軽い頭痛の痛み(グレード1)または頭痛の痛みなし(グレード0)への軽減として判断されている。
【0374】
加えて、本投薬形態は、偽薬装置と比べて同等の24および48hにおける頭痛の緩和の維持を提供する。これは、偽薬装置を使用した場合の錠剤からの100mgと比べ、約16mgの投与量で同等の頭痛緩和の維持が得られるがゆえに、きわめて重要である。
【0375】
図35および36に示されるとおり、15分から始まって90分まで、統計的により大きい投与後の痛みからの解放率(P<.01)が、ブレスパワー(商標)装置を用いたスマトリプタン粉末の経鼻投与において達成された。30分の時点において、ブレスパワー(商標)装置を用いたスマトリプタン粉末の経鼻投与による痛みからの解放が、発作のうちの18%において達成されたのに対し、経口スマトリプタン錠剤においては11%であった(P<.001)。痛みからの解放は、深刻(グレード3)、中程度(グレード2)、または軽度(グレード1)の頭痛の痛みから頭痛の痛みなし(グレード0)への軽減によって判断される頭痛の痛みからの解放である。
【0376】
加えて、ブレスパワー(商標)装置を用いたスマトリプタン粉末の経鼻投与においては、有意な痛みの緩和までの時間(25パーセンタイル値(95% CI) 31分(95% CIは評価できず)に対して20分(16~30分)、中央値 49分(46~61分)に対して45分(32~46分))および痛みからの解放までの時間(25パーセンタイル値(95% CI) 60分(46~91分)に対して46分(95% CIは評価できず)、中央値 121分(91~121分)に対して91分(95% CIは評価できず))がどちらも短かった。
【0377】
また、
図36に示されるとおり、
図4(a)および(b)のブレスパワー(商標)装置を用いたスマトリプタン粉末の経鼻投与は、有意に多数の発作において痛みの軽減を示す。30分の時点において、
図4(a)および(b)のブレスパワー(商標)装置を用いたスマトリプタン粉末の経鼻投与による痛みの軽減は、35%に対して49%である(P<.001)。痛みの軽減は、ベースラインにおいて深刻(グレード3)、中程度(グレード2)、または軽度(グレード1)の頭痛の痛みを有する患者における少なくとも1ポイントの痛みの強さの減少である。
【0378】
痛みの軽減および痛みからの解放は、120分において
図4(a)および(b)のブレスパワー(商標)装置を用いたスマトリプタン粉末の経鼻投与および経口スマトリプタン錠剤について同等であり、
図37に示されるとおり24および48hにわたって維持された。
【0379】
継続不可能となる有害事象(AE)に直面した患者は、処置された患者(n=262、安全セット)のうちの2%未満であり、深刻なAEは報告されなかった。
【0380】
鼻の不快および通常でない製品の味が、100mgのスマトリプタン錠剤および偽薬装置と比べ、
図4(a)および(b)のブレスパワー(商標)装置を用いたスマトリプタンの投与および偽薬錠剤においてより一般的に報告された(1%対16%および4%対26%)が、これらは事例のほぼ90%において軽度であると考えられ、研究の中断は1件だけであった。
【0381】
加えて、うずき、温暖/高温感覚、灼熱感、無気力感、圧力、頭部の締め付けなどの窮屈感、麻痺、および違和感で構成される非定型のトリプタン感覚は、
図38に示されるとおり、
図4(a)および(b)のブレスパワー(商標)装置を用いたスマトリプタン粉末で処置された患者において、有意に低かった(2%対5%、P=.02)。非定型の感覚は、
図2(a)および(b)のブレスパワー(商標)装置を使用したスマトリプタン粉末および他のスマトリプタン投与形態で処置された患者(n=20)についてのフェーズ1薬物動態クロスオーバ試験において具体的には測定されていないが、処置に関連した顔面紅潮(flushing)(発生率の最も高いAE)の割合は、Imitrex(登録商標) 6mg SCにおいて20%であり、ブレスパワー(商標)装置を用いてスマトリプタン粉末によって処置された患者においては生じなかった。Imitrex(登録商標) 6mg SCと比べ、割合は顕著に低く、例えばうずきに関しては14%である。
図4(a)および(b)のブレスパワー(商標)装置を使用してスマトリプタン粉末で処置された患者における非定型のトリプタン感覚のこの低い水準は、患者にとって臨床的に重要であり、ブレスパワー(商標)装置を用いた経鼻投与の潜在的な利点であり得る。
【0382】
また、100mgの経口スマトリプタン錠剤および偽薬装置における痛みの緩和の割合が、経鼻投与装置を使用することなく従来どおりに摂取したときの100mgの経口スマトリプタン錠剤(Imitrex(登録商標) 100mg Tablet、あるいはその承認または後発同等品)のラベルに記載の痛みの緩和をはるかに超えること(30、60、および120分の時間間隔において、12、35、および60%に対して39、63、および77%)が、注目される。
【実施例11】
【0383】
上記提示の実施例および検討において、二酸化炭素は、治療または薬物動態に関する効果の提供および/または向上をもたらし、さらには/あるいは鼻道内の領域のpHの調節をもたらすための機構を提供するものとして説明されている。二酸化炭素は、鼻道において反応し、pHを下げることができる。上述のように、もたらされる二酸化炭素の濃度は、約5~約6%vol/volの範囲であってよい。他の態様において、治療量の二酸化炭素は、約1%vol/vol超の二酸化炭素および約10%vol/vol未満の二酸化炭素を含むことができる。
【0384】
二酸化炭素以外の気体または流体を、例えばpHを高めるなど、pHの調節をもたらすために使用することができる。また、1つ以上の固体物質を、二酸化炭素あるいは他の気体または流体を伴っても、伴わなくてもよいが、鼻道内のpHの調節に使用することができる。例えば、微細な粒子状物質を、鼻道内の組織の周囲の細胞外環境のpHを調節するために使用することができる。
【0385】
いくつかの実施形態において、pH調節物質は、酸性ガスまたは塩基性ガスあるいは緩衝液を含むことができる。また、pH調節物質は、治療薬と一緒に含まれる処方物の一部を形成でき、あるいは治療薬とは別の処方物の一部を形成することができる。pH調節物資値は、既知の量だけpHを調節することができる。既知の量を、個人または個人の群、治療薬、薬剤の群、あるいは1つ以上の薬剤の期待される挙動の要件にもとづいて決定することができる。既知の量は、約0.01~約0.5pH単位、または約0.1~約0.2pH単位の範囲であってよい。
【0386】
種々の機構を、pH調節物質を含む気流をエアロゾル化または他の方法で生成するために使用することができる。例えば、pH調節物質の粉末を、カプセルまたはブリスタパックにおいて治療薬と組み合わせることができる。別の実施形態においては、1つ以上の別途のカプセルまたはブリスタパックを、治療薬の空気による運搬の前、同時、または後にpH調節をもたらすために、治療剤の付近、上流、または下流に配置することができる。機械式、電気式、または化学式の振動機構を、pH調節物質を放出させるために使用することもできる。
【実施例12】
【0387】
この研究の目的は、フルチカゾンを用いた鼻ポリープを有する慢性鼻副鼻腔炎の患者の治療を調査することであった。
【0388】
鼻ポリープを有する慢性鼻副鼻腔炎の109名の患者における3ヵ月の偽薬対照研究において、
図3(a)および(b)のブレスパワー(商標)送出装置によるフルチカゾン(400μg、1日2回)の投与が、耐用性良好であり、症状および全体としてのポリープスコアの両者の大きな軽減を生み出すと報告された
【0389】
標準的な鼻腔スプレー投与における期待と比べて特筆されることに、被験者の20%近くにおいてポリープの完全な除去が3ヵ月後に報告された。合計のポリープスコアが改善した被験者の割合は、4、8、および12週間の時点において、偽薬と比べて本投与形態において有意に高かった(それぞれ、22%対7%、p=0.011、43%対7%、P<0.001、および57%対9%、P<0.001)。
【0390】
比較的低いベースラインのポリープスコアにもかかわらず、12週間後に、有効な処置群においては合計のポリープスコアが2.8から1.8に大きく減少した一方で、偽薬群においてはポリープスコアのわずかな増加が見られた(-0.98対+0.23、P<0.001)。
【0391】
ピーク鼻吸入流量(PNIF)は、本投与形態による治療の最中に次第に増加した(p<0.001)。組み合わせの症状スコア、鼻閉塞、不快、鼻炎の症状、および臭いの感覚作用は、いずれも大きく改善された。
【0392】
本投与形態のきわめて大きな進行性の治療効果が、ベースラインのポリープスコアにかかわらずに観測された。以前の洞手術が効能に影響することはなかった。これは、小さなポリープを有する多くの患者におけるポリープの完全な除去に加えて、この研究のブレスパワー(商標)送出装置によって達成される標的場所への付着の改善が、真の臨床的利点につながり、おそらくは手術の必要性を減らすことができることを示唆している。
【実施例13】
【0393】
実施例12と同じ薬剤-装置の組み合わせ製品を使用し、小規模な偽薬対照研究(N=20)を、ポリープのない術後の治療抵抗性CRSの患者において実行したところ、客観的指標および自覚症状の両者について臨床的に有意な改善がもたらされた。
【0394】
浮腫についての内視鏡スコアが、顕著かつ進行する改善を示した(12週間(中央値):本投与形態が-4.0であるのに対し、偽薬は-1.0、p=0.015)。
【0395】
ピーク鼻吸入流量(PNIF)は、偽薬と比べたときに本投与形態による治療の最中に有意に増加した(4週間:p=0.006;8週間:p=0.03)。12週間後に、本投与形態を受けた群のMRIスコアは、ベースラインに対して改善し(p=0.039)、有意な傾向は偽薬に対して見られなかった。
【0396】
鼻RSOM-31サブスケールも、本投与形態を使用した治療において有意に改善した(4週間:p=0.009;8週間:p=0.016、12週間:NS)。臭いの感覚、鼻の不快、および組み合わせのスコアが、いずれも有意に改善した(p<0.05)。とりわけ、これは、多数の最近の負の偽薬対照試験によって示された状態である。この文脈は、同様の患者サンプルにおける過去のデータとの比較に加えて、ブレスパワー(商標)投与装置の使用が、臨床の実務において優れた鼻の奥への付着(この場合には、中鼻道への到達の改善)を生み出すことができ、したがって臨床反応の改善をもたらすことができることを、やはり示唆している。
【0397】
上述のように、本発明は、患者を処置する方法を提供する。処置は、1つ以上のステップを含むことができ、第1のステップは、治療剤の投与を含むことができる。第2のステップは、上述のように、二酸化炭素またはpH調節物質を鼻道の1つ以上の領域にもたらすことを含むことができる。これらのステップの順番は、入れ替え可能であり、したがって第2のステップが第1のステップの前に生じてもよい。また、両方のステップまたはさらなるステップが、同時に生じてもよいと考えられる。
【0398】
上述のように、特にはpHおよびNO濃度に関する二酸化炭素の効果、ならびに鼻腔内の装置によって生み出される三叉神経および翼口蓋神経節への高い圧力が、特には経口錠剤群において早期の時点で、より高い全体としての奏効率をもたらすと仮定される。
【0399】
最後に、本発明が、種々の実施形態において説明されており、添付の特許請求の範囲によって定められる本発明の技術的範囲から離れることなく、多数の様々な方法で変更可能であることを、理解できるであろう。
【0400】
例えば、本発明をスマトリプタンに関して例示したが、本発明が、リサトリプタン、ナラトリプタン、エレトリプタン、フロバトリプタン、およびゾルミトリプタンなどの他のトリプタン、ならびにカフェイン、フェンタニル、オキシコドン、ヒドロモルフォン、モルヒネ、コデイン、ケトベミドン、コカイン、およびオピオイド全般を有するメシル酸ジヒドロエルゴタミン、マレイン酸エルゴノビン、および酒石酸エルゴタミンを含むエルゴタミンなどの他の鎮痛薬など、多数の他の物質にも適用されることを、理解できるであろう。
【0401】
また、本発明は、ミダゾラムなどのベンゾジアゼピンにも適用される。
【0402】
さらに、本発明は、例えばアスピリン、イブプロフェン、ナプロキセン、インドメタシン、ジクロフェナク、およびケトプロフェンなどの非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)に関しても適用される。
【0403】
言及された研究の結果から、本発明が、特には1000g/molを超える分子量を有しており、典型的に経口での生物学的利用率がきわめて低く、多くの場合に1%未満であるたんぱく質およびペプチド、特にはホルモンならびにその誘導体および類似体の投与に関して適用されることが、明らかである。特定の例として、インスリン(類似体および誘導体を含む)、デスモプレシン、およびカルシトニンが挙げられる。他の例として、成長ホルモンならびにその類似体または誘導体、オキシトシンならびにその類似体または誘導体、Orexin-A(Hypocretin-1)ならびにその類似体または誘導体を含むオレキシン(ヒポクレチン)ならびにその類似体または誘導体が挙げられる。
【0404】
またさらには、本発明は、粉末ワクチン、免疫刺激剤、および免疫賦活剤に関しても適用される。
【0405】
要約すると、本発明は、分子の以下の広い定義に関して適用される。
【0406】
フェンタニル、ミダゾラム、およびオキシコドンなどの比較的敏速な鼻吸収および高い鼻BAを有する小さな分子(<1000)。本発明は、先行技術の経鼻投与システムと比べてはるかに迅速なCNS効果を示し、これは、動脈吸収が静脈吸収よりも約25%~50%大きい動脈および静脈濃度の間の差、動物での研究において約25%大きくなることが示されているBBBを通過しなければならない海綿静脈洞および頸動脈に生じ得る「逆流」輸送、ならびに嗅神経および三叉神経に沿って生じ得る直接のN2B輸送に起因している可能性がある(Einer-Jensen,N et al,Pharmacol.Toxicol.,87(6]),2000,pages 276 to 278、Einer-Jensen,N et al,Exp.Brain Res.,130(2),2000,pages 216 to 220、およびDale,O et al,Intranasal Midazolam: a comparison of two delivery devices in human volunteers,J.Pharmacy and Pharmacology,58,2006,pages 1311 to 1318)。しかしながら、三叉神経によるN2B輸送および臨床効果は、必ずしも伝統的なPKプロフィルに反映されていない。
【0407】
スマトリプタンおよびゾルミトリプタンなどの比較的低いBAを有する小型および中型サイズの分子。本発明のスマトリプタン粉末に関して、スマトリプタンはBBBを比較的上手く通過しないが、動物における研究が、スマトリプタンが直接的なN2B機構によって脳に直接運ばれる可能性を示唆している(Gladstone,J P,Newer formulations of triptans: Advances in migraine treatment,Drugs,63,2003,pages 2285 to 2305)。本発明は、迅速な吸収および作用の敏速な発現が望まれる場合に特に大事な吸収の増大をもたらす。本発明は、より迅速なCNS効果を示し、それは生じ得る直接的なN2B取り込み、分子がBBBを通過することができる海綿静脈洞および頸動脈に生じ得る「逆流」輸送、ならびに嗅神経および三叉神経に沿って生じ得る直接的なN2B輸送に起因する可能性がある。
【0408】
経鼻のBAが低く、典型的には約3~15%であり、GI管における分解ゆえに経口のBAがきわめて低く、典型的には1%未満であるペプチドおよびたんぱく質などの大きな分子(>1000)。本発明は、粉末処方物の供給において、ペプチドおよびたんぱく質の投与にきわめて適しており、粉末が改善された鼻吸収をもたらすだけでなく、改善された安定性も有することができる。これらの物質に関して、CSFを介することがない直接の脳構造への嗅神経および三叉神経に沿った専用の輸送機構が存在し得ると仮定される。したがって、CSFからの測定値は有効物質の存在を示さない可能性があるが、最近の研究(Thorne,R G et al,Delivery of insulin-like growth factor-l to the rat brain and spinal cord along olfactory and trigeminal pathways following intranasal administration,Neuroscience,127(2),2004,pages 481 to 496)に例示されるように、実質的な効果が脳において存在でき、臨床効果を奏することができる。
【0409】
本発明の原理を、特定の用途についての例示の実施形態を参照して本明細書において説明したが、本発明がそれらに限られるわけではないことを、理解すべきである。当業者であれば、本明細書に提示の教示に鑑みて、いずれも本明細書に記載の実施形態の技術的範囲に包含されるさらなる改良、応用、実施形態、および同等物による置き換えに想到できるであろう。したがって、本発明を、以上の説明によって限定されるものと考えてはならない。
【0410】
本明細書において言及されたすべての資料は、それらの全体が本明細書に援用される。援用される刊行物ならびに特許または特許出願が本明細書に含まれる開示と矛盾する限りにおいて、本明細書が矛盾する資料よりも優先する。
【0411】
用語「偽薬」は、本明細書において、医薬品の投与を含んでも、含まなくてもよい比較用の投与を指して使用される。しかしながら、そのような「偽薬」処置は、例えば二酸化炭素を鼻へともたらすことにより、医薬品のさらなる投与の有無にかかわらず、それ自身が治療効果を有してもよい。