(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-15
(45)【発行日】2022-06-23
(54)【発明の名称】炭化還元システム
(51)【国際特許分類】
B01J 20/30 20060101AFI20220616BHJP
F23B 90/06 20110101ALI20220616BHJP
F27D 17/00 20060101ALI20220616BHJP
F27B 19/00 20060101ALI20220616BHJP
C10B 53/02 20060101ALI20220616BHJP
B01J 20/02 20060101ALI20220616BHJP
【FI】
B01J20/30
F23B90/06
F27D17/00 104Z
F27B19/00
C10B53/02
B01J20/02 A
(21)【出願番号】P 2020532317
(86)(22)【出願日】2019-07-17
(86)【国際出願番号】 JP2019028114
(87)【国際公開番号】W WO2020022148
(87)【国際公開日】2020-01-30
【審査請求日】2020-11-17
(31)【優先権主張番号】P 2018138302
(32)【優先日】2018-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】袋 昭太
(72)【発明者】
【氏名】倉澤 響
【審査官】河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2016-0017213(KR,A)
【文献】特開2003-064422(JP,A)
【文献】特開2003-089792(JP,A)
【文献】特開2007-075706(JP,A)
【文献】特開2001-213614(JP,A)
【文献】特開2003-088878(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27D 17/00
F27B 19/00
C10B 53/00 - 53/08
C21B 13/00 - 13/14
F23G 5/00 - 5/50
F23B 90/06
F27B 17/00
B01J 20/00 - 20/34
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物を炭化して炭化物を生成するための炭化炉を備える炭化装置、
金属イオンを含む液体に前記炭化物を浸漬するための浸漬装置、および
前記浸漬後の前記炭化物に対して還元処理を行う還元炉を備える還元装置を有し、
前記還元炉は、前記炭化炉内で
前記炭化を行う際に発生するガスが供給されるよう、前記炭化炉と接続される炭化還元システム。
【請求項2】
前記炭化炉と前記還元炉を接続するガス供給管、および
前記ガス供給管を保温する保温手段、あるいは前記ガス供給管を加熱する加熱装置の少なくとも一方をさらに有する、請求項1に記載の炭化還元システム。
【請求項3】
前記ガスが供給されるように前記炭化炉と前記還元炉に接続される燃焼炉をさらに有する、請求項1
または2に記載の炭化還元システム。
【請求項4】
前記還元炉に接続される還元性ガス源をさらに有する、請求項1
乃至3のいずれか一項に記載の炭化還元システム。
【請求項5】
前記還元炉に接続されるガス置換装置をさらに有する、請求項1
乃至4のいずれか一項に記載の炭化還元システム。
【請求項6】
前記ガス置換装置は、空気を前記還元炉へ供給するファンを備える、請求項5に記載の炭化還元システム。
【請求項7】
前記還元炉に供給する前の前記ガスに含まれる還元性ガスの濃度を測定するための第1の濃度計、および
前記還元炉から排出されるガスに含まれる前記還元性ガスの濃度を測定するための第2の濃度計をさらに有する、請求項1
乃至6のいずれか一項に記載の炭化還元システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態の一つは、金属担持多孔質材料の製造方法、および金属担持多孔質材料を製造するために用いることが可能な炭化還元システムに関する。
【背景技術】
【0002】
河川、湖沼などの水域における水質汚染の原因の一つとして、生活排水や農業排水、工業排水中に含まれる窒素やリンが挙げられる。高濃度の窒素やリンを含む水が河川や湖沼、閉鎖性海域に排出されることで富栄養化が起こり、植物プランクトンの爆発的繁殖を招き、その結果、水道水の異臭味化、水域の水底の酸素条件の悪化により魚介類等が死滅するなど、生物多様性が失われて生態系も不安定となる。このような背景から、水中の窒素やリンを除去、回収するための様々な方法が検討されている。例えば特許文献1から4には、カルシウム金属や鉄イオンが担持された炭化物、鉄を含有する炭化物、あるいは鉄粉と活性炭の混合物などを用いることで水中の窒素やリン(リン酸イオン)が回収できることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-75706号公報
【文献】特開2001-213614号公報
【文献】特開2003-88878号公報
【文献】国際公開第2011/048705号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態の一つは、リンやヒ素を吸着、回収することが可能な金属担持多孔質材料を高効率、かつ低コストで製造する方法、およびそのためのシステムを提供することを課題の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態の一つは、炭化還元システムである。この炭化還元システムは、炭化炉を備える炭化装置、および還元炉を備える還元装置を有する。還元炉は、炭化炉内で炭化を行う際に発生するガスが供給されるよう、炭化炉と接続される。
【0006】
本発明の実施形態の一つは、金属担持多孔質材料を製造する方法である。この方法は、炭化炉内で第1の有機物を炭化して第1の炭化物を生成すること、第2の炭化物に吸着された金属化合物を、第1の有機物の炭化中に生成するガスを用い、炭化炉と接続される還元炉内で還元することを含む。
【0007】
この金属担持多孔質材料を製造する方法は、還元炉に供給される前に上記ガスを精製、または加熱することをさらに含んでもよい。あるいは上記方法は、金属イオンの還元前に、第2の炭化物を金属イオンを含む溶液に浸漬することをさらに含んでもよい。また、上記方法は還元中に還元性ガス源から還元性ガスを還元炉に供給することをさらに含んでもよい。あるいは上記方法は、還元の後、還元炉内の雰囲気を空気、不活性ガス、および窒素の少なくとも一つを含む気体で置換することをさらに含んでもよい。あるいは上記方法は、第1の炭化物を上記金属イオンを含む溶液に浸漬することをさらに含んでもよい。
【0008】
上記方法は、還元炉に供給される前に上記ガスに含まれる還元性ガスの第1の濃度を測定すること、および還元炉の排出ガス内における還元性ガスの第2の濃度を測定することをさらに含んでもよい。この場合上記方法は、第1の濃度と第2の濃度の差が0ppm以上10000ppm以下になった時に還元を停止することをさらに含んでもよい。
【0009】
第1の有機物と第2の有機物はバイオマスでもよく、上記金属イオンは2価、あるいは3価の鉄イオンでもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の実施形態により、リンや窒素、ヒ素などを吸着、回収することが可能な金属担持多孔質材料を効率よく、かつ低コストで製造する方法、およびこの方法を実現するためのシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態の一つである炭化還元システムの概略図。
【
図2】本発明の実施形態の一つである炭化還元システムの炭化装置の模式的断面図。
【
図3】本発明の実施形態の一つである炭化還元システムの還元装置の模式的断面図。
【
図4】本発明の実施形態の一つである炭化還元システムの還元装置の模式的断面図。
【
図5】本発明の実施形態の一つである炭化還元システムの概略図。
【
図6】本発明の実施形態の一つである炭化還元システムの炭化装置の模式的断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の各実施形態について、図面等を参照しつつ説明する。但し、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲において様々な態様で実施することができ、以下に例示する実施形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0013】
図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。本明細書と各図において、既出の図に関して説明したものと同様の機能を備えた要素には、同一の符号を付して、重複する説明を省略することがある。
【0014】
本明細書および図面において、同一、あるいは類似する複数の構成を総じて表記する際には同一の符号を用い、これら複数の構成のそれぞれを区別して表記する際には、さらにハイフンと自然数を用いる。
【0015】
以下本明細書では、バイオマスとは有機物の一種であり、生体由来の物質を指す。生体由来の物質としては木材が典型例として挙げられ、木材は間伐材、剪定廃材、建築廃木材であってもよい。その他の生体由来の物質として、農業廃棄物、食品残渣、繊維廃棄物などが挙げられる。
【0016】
(第1実施形態)
本発明の実施形態の一つである炭化還元システム100を
図1に示す。炭化還元システム100は、水中の環境汚染物質、特にリン(リン酸)またはヒ素を効率よく吸着、固定可能な金属担持多孔質材料を製造するために用いることができる。金属担持多孔質材料は、バイオマスなどの有機物を炭化して多数の細孔を有する多孔質材料である炭化物(以下、炭化物を多孔質材料とも記す)132を生成し、この多孔質材料を金属イオンを含む懸濁液、もしくは溶液(以下、これらを総じて金属イオンを含む混合物と記す)に浸漬して金属化合物を多孔質材料内に吸着させた後、金属イオンを含む金属化合物を金属(0価の金属)へ還元することで製造される。リンまたはヒ素の吸着に寄与する金属は数nmから数十μmの大きさを有する微粒子として炭化物132中の細孔内、および表面に存在する。
【0017】
1.全体構成
炭化還元システム100は、主な構成として炭化装置110、還元装置170、浸漬装置160を含む。炭化還元システム100は、任意の構成としてさらに、加熱装置140や還元性ガス源200、燃焼炉220、熱交換器230、集塵器240を含んでもよい。図示しないが、炭化装置110と還元装置170の間にタール除去装置を設けてもよい。
【0018】
詳細は後述するが、炭化装置110内で原料である有機物130が炭化されて炭化物132が生成し、その際に水素や一酸化炭素、メタンやプロパン、ブタンなどで代表されるアルカンなどの還元力を有するガス(以下、還元性ガス)を含むガス(以下、乾留ガスと記す)が発生する。この乾留ガスが還元装置170に供給されるよう、炭化還元システム100が構成される。炭化物132は浸漬装置160内で金属イオンを含む混合物に浸漬され、これにより、炭化物132の細孔内および表面に金属イオンが吸着される。吸着された金属イオンを含む金属化合物は還元装置170内で還元され、0価の金属として炭化物132の細孔内および表面に担持される。この金属がリンまたはヒ素の吸着に寄与する。
【0019】
2.炭化装置
上述したように、炭化装置110は、有機物を炭化して多孔質の炭化物132を生成するための装置である。炭化装置110の構造には特に制約はない。
図2に、炭化装置110の一例として、内燃式の炭化炉114を備える炭化装置110の模式的断面図を示す。ここで示した炭化装置110は一例であり、後述するように炭化炉は外熱式でも構わなく、その構造もバッチ式の密閉型の炭窯炉や連続式のロータリーキルン、揺動式炭化炉、スクリュー炉などでも構わない。いずれの形式の炭化炉でも、炭化によって発生した乾留ガスを還元装置170に導入する流路を有することを特徴とする。
【0020】
図2に示すように、炭化装置110は円筒形状を有する回転式の炭化炉114を有し、さらに有機物130を炭化するための熱エネルギーを供給するバーナー120が備えられた加熱チャンバー112が炭化炉114を覆うように設けられる。炭化装置110には、炭化する有機物130を投入するためのホッパー124やホッパー124の下に位置するスクリューフィーダー126を設けてもよい。スクリューフィーダー126によって有機物130が炭化炉114内へ供給される。
【0021】
炭化炉114と加熱チャンバー112は、有機物130を投入する側が炭化物132を搬出する側よりも高い位置になるよう水平面から傾斜しており、かつ、炭化炉114は駆動部116によって加熱チャンバー112内で回転するように構成される。駆動部116は、例えばチェーン、ベルト、歯車などを用いて炭化炉114を加熱チャンバー112の中心軸を中心として回転させる。炭化炉114に供給される有機物130は、炭化炉114が連続的に回転することによってホッパー124側からバーナー120側へ輸送され、その間、低酸素濃度の条件下、バーナー120による熱によって加熱される。これにより、有機物130の炭化が進行し、還元性ガスを含む乾留ガスが発生する。乾留ガスは排気ダクト128から取り出され、その後、炭化装置110を還元装置170や燃焼炉220と接続する第1のガス供給管182を介して還元装置170や燃焼炉220へ供給される。得られる炭化物132は炭化炉114の下部からガス漏洩防止用のロータリーバルブ122を介し、炭化装置110の外へ搬出され、浸漬装置160内で浸漬に供される。
【0022】
乾留ガスの温度を維持するため、第1のガス供給管182を断熱材などの保温手段118で覆ってもよい。あるいは、炭化装置110で生成する乾留ガスの加熱、あるいは温度維持のための加熱装置140を第1のガス供給管182に設けてもよい(
図1、3参照)。保温手段118、および/または加熱装置140を設けることで、高い温度を維持したまま炭化装置110で生成する乾留ガスを還元装置170へ供給することができ、乾留ガスの冷却によるタールの発生が抑制され、効率よく金属化合物の還元を行うことができる。
【0023】
3.還元装置
炭化装置110で得られる炭化物132は、その後浸漬装置160内で金属イオンを含む混合物に浸漬される。金属イオンを含む混合物の溶媒としては、水、またはメタノール、エタノールなどの有機溶媒を適宜用いることができる。上述したように、炭化物132は数nmから数十μmの径を有する細孔を備える多孔質体であり、浸漬によって金属イオンが炭化物132の細孔壁に吸着し、乾燥後、金属化合物が担持された金属化合物担持炭化物が得られる。図示しないが、浸漬装置160(
図1参照)は金属イオンを含む混合物と炭化物132を保持できるタンクを有していればよく、さらに金属イオンを含む混合物を冷却するための冷却装置を有していてもよい。詳細な説明は割愛するが、炭化装置110で発生した熱、あるいは還元装置170で発生した熱を利用して浸漬後の炭化物132、すなわち金属化合物担持炭化物を乾燥してもよい。
【0024】
浸漬後、金属化合物担持炭化物は還元装置170を用いて還元処理され、吸着した金属化合物が0価の金属へ還元される。還元装置170の構成にも特に制約はなく、例えば
図3に模式的に示した連続炉型の構造を採用することができる。ここに示した還元装置170は、還元炉172、還元炉172を加熱するためのヒータ180、及び炭化装置110から供給される乾留ガスを還元炉172に導入するための第1のガス供給管182を備える。第1のガス供給管182には、還元性ガスの流量を制御するためのバルブ184が設けられる。
【0025】
還元炉172には、金属化合物担持炭化物を投入するためのロータリーバルブ176やホッパー174を設けてもよい。還元炉172の底部には、得られる金属担持多孔質炭化物を取り出すためのロータリーバルブ178を設けることができる。二つのロータリーバルブ176、178を設けることで、還元炉172内部に導入される乾留ガスの漏洩を防止することができ、安全に金属化合物の還元を行うことができる。また、ロータリーバルブ176、178を設置することで、連続的に金属化合物担持炭化物を還元炉172に投入し、還元によって得られる金属担持多孔質材料を取り出すことができる。なお、還元炉172の底部は傾斜を有しいてもよく(
図3の点線参照)、この構造により、金属担持多孔質材料を還元炉172の底部に集めることができる。還元炉172にはさらにガス捕集管194が設けられ、ガス捕集管194は燃焼炉220と接続される。金属化合物担持炭化物と反応した乾留ガス、あるいは過剰の乾留ガスなどがガス捕集管194を介して燃焼炉220へ供給される。
【0026】
還元装置170はさらに、炭化装置110で生成した還元性ガス以外の還元性ガスを供給するための第2のガス供給管186を有してもよい。第2のガス供給管186には還元性ガス源200が接続され(
図1)、還元性ガス源200から供給される還元性ガスの流量はバルブ188によって制御される。これにより、例えば炭化装置110で生成する還元性ガスの量が不足する場合、あるいは炭化装置110が駆動していないときでも、還元装置170内に十分な還元性ガスを供給して金属化合物担持炭化物に対して還元処理を行うことができる。還元性ガス源200から供給される還元性ガスは、水素や一酸化炭素、アルカンの単体でも良く、これらの混合物でも良い。あるいは還元性ガスに窒素やアルゴンなどの不活性ガスが混合されていてもよい。
【0027】
還元装置170はさらに、還元炉172内の雰囲気(ガス)を置換するためのガス置換装置210(
図1)と連結される第3のガス供給管190を備えてもよい。乾留ガスには水素やアルカンなどの可燃性ガスや一酸化炭素などの有毒ガスが含まれるため、還元後にガス置換装置210から第3のガス供給管190を介して、少なくとも空気、窒素、および希ガス(ヘリウム、アルゴンなど)の不活性ガスのいずれかを供給することで、未反応の乾留ガスを還元炉172から排出することができる。ガス置換装置210には図示しない窒素やアルゴンなどの不活性ガス源を接続してもよい。あるいはガス置換装置210は、外気を導入するためのファンやコンプレッサーでもよい。さらに、第1のガス供給管182、第2のガス供給管186、第3のガス供給管190をそれぞれ独立に還元炉172に接続せずに、一本の供給管として還元炉172に接続しても構わない。この場合、還元炉の外部でこれらのガス供給管を接続し、バルブの切り替えによってこれらのガスの供給を制御してもよい。
【0028】
還元装置170は必ずしも連続型ではなく、バッチ式でもよい。例えば
図4に示すように、ロータリーバルブ176に代わって還元装置170の開口部に開閉扉179を設け、これを用いて還元炉172へ金属化合物担持炭化物を投入し、生成する金属担持多孔質材料を取り出してもよい。図示しないが、開口部を複数設け、金属化合物担持炭化物の投入と金属担持多孔質材料の取出しを異なる開口部を経由して行ってもよい。
図4に示した例では、還元装置170は開口部を介して金属化合物担持炭化物の投入を還元炉172の上から行うように構成されているが、開口部が水平方向に向くよう還元装置170を構成してもよい。
【0029】
4.燃焼炉
燃焼炉220には、炭化装置110から直接、あるいは還元装置170を経由して乾留ガスが導入される(
図1参照)。このように炭化還元システム100を構成することにより、例えば炭化装置110は駆動するものの還元装置170を駆動しない場合、あるいは未反応の還元性ガスが還元装置170からガス捕集管194を介して排出される場合、還元性ガスを燃焼して熱エネルギーとして取り出すことが可能になり、同時に還元性ガスは燃焼により無害となる。燃焼炉220の構成に制約はなく、公知の構造を適宜適用すればよい。
【0030】
5.濃度計
任意の構成として、炭化還元システム100は、乾留ガス中の還元性ガスの濃度を測定するための濃度計を含んでもよい(
図1)。例えば、炭化装置110と還元装置170の間に第1の濃度計154を有してもよい。第1の濃度計154は、炭化装置110内で生成し、還元装置170へ供給される乾留ガスに含まれる還元性ガスの濃度を測定するために用いることができる。さらに、還元装置170から排出された後、燃焼炉220へ供給される前のガス中の還元性ガスの濃度を測定するための第2の濃度計156を設けてもよい。第1の濃度計154や第2の濃度計156で得られる測定値を用いることで、還元の進行状態をモニターすることができる。濃度計の例としては、一酸化炭素濃度計、水素濃度計、揮発性有機化合物濃度計などを個別あるいは組み合わせて用いてもよい。
【0031】
6.その他の構成
炭化還元システム100はさらに、熱交換器230や集塵器240を含んでもよい。この場合、熱交換器230は燃焼炉220に接続される。これにより、燃焼炉220で得られる熱エネルギーを高温の蒸気、熱風として取出し、発電などに利用することができる。図示しないが、熱交換器230で得られる熱を利用し、浸漬後の炭化物132を乾燥してもよい。集塵器240は、燃焼され、熱交換器を経由した乾留ガス中に含まれる微粒子を除去するためのものであり、大気汚染を未然に防ぐための装置である。集塵器240を経由した後、乾留ガスは大気に放出される。
【0032】
7.システムフロー
本炭化還元システム100では、還元装置170で用いられる炭化物132を炭化装置110で製造することができる。換言すると、炭化処理と還元処理を異なる装置を用い、異なる工程で行うことができる。具体的なフローを以下に説明する。
【0033】
7-1.炭化
まず、バイオマスなどの有機物130を、ホッパー124やスクリューフィーダー126を用いて炭化装置110に配置する(
図1、
図2)。炭化炉114において、酸素の非存在下、あるいは低濃度の酸素の存在下、バーナー120によって得られるエネルギーにより有機物130は炭化される。炭化の過程で有機物130の一部は、少なくとも水蒸気、一酸化炭素、水素ガス、またはアルカンなどの乾留ガスとなり、残存物が炭化物132となる。このため、炭化物132は、有機物130の構造に起因する孔と、乾留ガスの脱離によって生成する細孔が複雑に混ざり合った大小様々な孔が形成された多孔質材料である。この炭化において用いる有機物130を第1の有機物130-1と呼ぶ。得られた炭化物(第1の炭化物132-1)は、その全量、あるいは一部が含浸処理へ供される。第1の炭化物132-1の全量を用いない場合には、他の一部は様々な用途に用いることができる。
【0034】
この炭化の際に還元装置170を駆動しない場合には、バルブ184を閉じ、バルブ196(
図1)を開放し、乾留ガスを燃焼炉220に導入すればよい。これにより、乾留ガスをエネルギーとして利用することができる。あるいは、第1の有機物130-1の炭化の際、別途炭化された有機物(以下、第2の有機物130-2と記す)を金属イオンを含む混合物に浸漬、乾燥させて製造された金属化合物担持炭化物(第2の炭化物132-2)を還元装置170において同時に処理してもよい。この第2の炭化物132-2は、炭化装置110で作製したものでも構わないし、炭化装置110とは異なる炭化装置で作製したものでもよい。あるいは、炭化物とは異なる多孔質材料でも構わない。すなわち、異なるバッチの有機物130(第1の有機物130-1と第2の有機物130-2)を同時に、それぞれ炭化処理と還元処理に供することができる。この場合には、第1の有機物130-1の炭化で生じる乾留ガスが還元装置170へ供給されるよう、バルブ184が調整される。バルブ196は閉じてもよく、あるいは還元装置170に導入される乾留ガスの流量を制御するため、適宜制御すればよい。このため、本炭化還元システム100を適用することで、炭化によって得られる乾留ガスに含まれる還元性ガスを直接還元装置170で利用することができ、効率よく還元処理を行うことができ、その結果、低コストで金属担持多孔質材料を製造することができる。また、炭化物132を製造するための最適化された条件(温度や時間)は、炭化物132に担持した金属化合物の還元のための最適条件と異なる場合が多いが、本炭化還元システム100によって各々の最適な条件下で炭化と還元を行うことができる。このため、炭化処理と還元処理とをそれぞれ個別に制御することが可能であり、炭化処理および還元処理それぞれを効率よく行うことができる。
【0035】
7-2.浸漬
第1の有機物130-1の炭化によって得られる第1の炭化物132-1の全て、あるいは一部は、浸漬装置160において浸漬処理に供される。これにより、第1の炭化物132-1の細孔壁に金属イオンが吸着する。その後、第1の炭化物132-1は乾燥され、還元処理される。上述したように、炭化装置110や熱交換器230、還元装置170で発生した熱エネルギーを用いて浸漬後の炭化物132を乾燥することにより、さらに効率よく金属担持多孔質材料を製造することが可能となる。
【0036】
また、炭化直後に得られる高温の炭化物132の冷却と浸漬を同時に行ってもよい。すなわち、炭化直後の高温の炭化物132を金属イオンを含む混合物に含浸させ、冷却と金属イオンの吸着を同時に行ってもよい。また、比較的高い温度を保った状態で金属化合物担持炭化物を金属イオンを含む混合物から取り出して乾燥させることで、短時間で乾燥を行うことができる。また、浸漬は開放系で行っても構わないし、超音波をかけながら、もしくは減圧容器に入れて行っても構わない。
【0037】
7-3.還元
第1の炭化物132-1を還元装置170で処理する際、炭化装置110は駆動していなくてもよく、あるいは駆動してもよい。駆動させる場合には、異なるバッチの有機物130、すなわち第3の有機物130-3が炭化装置110によって炭化され、炭化の際に生成する乾留ガス中の還元性ガスが第1の炭化物132-1に対する還元処理に利用される。このため、高効率、かつ低コストで金属担持多孔質材料を得ることができる。
【0038】
炭化装置110を駆動しない場合、あるいは第3の有機物130-3の炭化で発生する還元性ガスが不足する場合、還元性ガス源200を用いて別途還元性ガスを還元炉172に導入する。これにより、化学量論量以上の還元性ガスを還元装置170へ導入することができる。
【0039】
上述したように、炭化物の還元は第1の濃度計154、第2の濃度計156などを用いてモニターすることができる。例えば第2の濃度計156で測定される還元性ガスの濃度が一定になった場合に還元が終了したと判断することができる。あるいは、第1の濃度計154と第2の濃度計156で得られる還元性ガスの濃度(それぞれ第1の濃度と第2の濃度と記す)の差が0ppm以上50000ppm以下、0ppm以上10000ppm以下、あるいは0ppm以上1000ppm以下になった場合に還元が終了したと判断してもよい。
【0040】
従来、金属担持多孔質材料は、炭化前の有機物130を金属イオンを含む混合物に浸漬し、乾燥した後に炭化と還元を同一装置で同時に行うことで製造されてきた。しかしながらこの場合、多孔質構造が形成される前の有機物130に対して浸漬を行うため、金属イオンの吸着量を制御することが困難である。また、還元性ガスの発生は有機物の130昇温時に大量に発生するのに対し、還元性ガスの還元力は高温で高くなる。このため、高い還元力が得られる温度になった時には、還元ガスの多くは炭化炉114から排出されてしまっており、金属化合物担持炭化物の還元が不十分になるなど、還元性ガスを効率よく利用することができない。また、還元力を高めるために高温で処理すると、逆に炭化物132のグラファイト化が進行し、有機物130由来の多孔質構造が壊れてしまうなどの問題も抱えていた。また、還元性ガスの発生量は有機物130の量に依存するため、吸着した金属イオンの量が多い場合、還元を完全に進行させることが難しい。例えば金属イオンが鉄イオンの場合、金属塩として塩化鉄を用いると比較的速やかに還元が進行するものの、他の金属塩(硝酸鉄、硫酸鉄など)を用いると還元は十分に進行しないことが多い。さらに金属塩として塩化鉄を用いる場合には、乾留ガス中の有機化合物と塩化水素ガスもしくは塩素ガスとの反応が一部進行してダイオキシンが副生してしまう。このように、従来の方法では、炭化炉の後段にダイオキシン処理装置を設けるか、原料に脱塩素剤を投入しなければならなく、炭化物の製造コストが高くなっていた。さらに、バイオマスを有機物130として用いて各種用途の炭化物132を作製する場合、金属化合物を含むバイオマスを炭化した際には、他の製品への金属の混入等の恐れがあるため、炭化処理のたびに炭化炉内を洗浄する必要があった。
【0041】
これに対し本炭化還元システム100では、炭化と還元を異なる装置で、異なる工程として処理する。このため、還元に必要な時間や温度は炭化に左右されない。炭化に必要な条件も還元条件に左右されない。炭化で発生する乾留ガスを効率よく捕集し、還元力が高い条件で利用することができるため、塩化鉄以外の鉄溶液を用いても0価の鉄を生成でき、ダイオキシンの発生を防ぐことも可能である。このため、上述した問題の発生を防止することができる。さらに上述したように、炭化と還元を異なる装置で同時に行うことで、生成する乾留ガスを利用して金属化合物の還元を行うことができる。このため、効率よく、かつ低コストで金属担持多孔質材料を製造することができる。
【0042】
本炭化還元システム100のフローを別の視点から見ると、このフローは、バイオマスなどの有機物130が無酸素条件下で熱分解することで生成する一酸化炭素ガス、水素ガス、炭化水素ガスなどの還元性ガス(乾留ガス)が金属化合物の還元に利用され、ガス化しない残存物である炭化物132が0価の金属担持多孔質材料へ変換されるプロセスである。バイオマスなどの有機物は、光エネルギーと電子供与体である水や硫化水素を利用して大気中の二酸化炭素を固定することで生成される。また、このフローで製造される金属担持多孔質材料は、水質改善に利用した後にはリンを吸着しているため、農地などに埋設することで土壌の肥沃化のために再利用することができる。したがって、本炭化還元システム100は水質改善に寄与するだけでなく、同時に大気中の二酸化炭素を炭化物として固定することができ、温室効果対策のための有力な手段の一つとして位置づけることができる。
【0043】
(第2実施形態)
本実施形態では、第1実施形態の炭化還元システム100とは異なる炭化還元システム102について、
図5、
図6を用いて説明する。第1実施形態と同様、あるいは類似する構成については説明を割愛することがある。
【0044】
炭化還元システム102と炭化還元システム100の相違点の一つは、前者では内燃式の炭化装置110を用いるのに対し、後者では外燃式の炭化装置250を用いる点である。
【0045】
図6に示すように、炭化装置250は炭化炉252、および炭化炉252の周囲を覆う加熱チャンバー254を基本的な構成として有している。加熱チャンバー254には熱媒体導入口256と熱媒体排出口258が設けられ、前者を介して外部で加熱された媒体が加熱チャンバー254内に導入される。これにより、加熱された媒体が炭化炉252の外壁と接し、炭化炉252が加熱される。媒体としては電気ヒータなどによって加熱されたガスでもよく、軽油、重油、炭化物などの燃料を燃焼させて得られる高温のガスを用いてもよい。
【0046】
ホッパー266などを用いて投入される有機物130がスクリューフィーダー268によって炭化炉252内に導入される。炭化装置110と同様、炭化炉252も有機物130を投入する側が炭化物132を搬出する側よりも高い位置になるよう水平面から傾斜しており、かつ、炭化炉252は駆動部260によって加熱チャンバー254内で回転するように構成される。また、駆動部260は、例えばチェーン、ベルト、歯車などを用いて炭化炉252を加熱チャンバー254の中心軸を中心として回転させる。炭化炉252が回転することにより、投入された有機物130は徐々に有機物130が投入される側から下に輸送さる。炭化炉252内は無酸素、あるいは低酸素の環境下となっており、加熱された媒体によって有機物130が加熱される。低酸素の環境下で炭化を行う場合、炭化炉252に供給する酸素濃度は1%と以下とすればよい。炭化炉252は、約400℃から900℃の温度で加熱される。これにより、炭化装置110と同様、有機物130は炭化されて炭化物132を与えると同時に乾留ガスを生成する。
【0047】
乾留ガスは排気ダクト264から取り出され、その後、第1のガス供給管182を介して還元装置170や燃焼炉220へ供給される。一方、得られる炭化物132はロータリーバルブ262によって炭化炉252から排出され、その後、浸漬装置160内で浸漬に供される。このような外燃式の炭化装置250を用いる場合、媒体を加熱するためのエネルギー源が必要ではあるものの、比較的高い収量で炭化物132を得ることができる。
【0048】
炭化還元システム102では、燃焼炉220を炭化装置250に接続し、燃焼炉220で生成する高温の燃焼ガスを炭化装置250に供給することができる(
図5)。燃焼炉220で得られる高温の燃焼ガスは、熱媒体導入口256を介して加熱チャンバー254内に導入することができる。
【0049】
その他の構成やフローは炭化還元システム100のそれらと同様であるため、説明は割愛する。炭化還元システム100と同様、炭化還元システム102においても、炭化と還元を異なる装置で、異なる工程として処理するため、炭化と還元を同一装置で同時に行う従来の方法における問題点の発生を防止することができる。さらに、生成する乾留ガスを利用して金属化合物の還元を行うことができ、乾燥処理の短縮も可能である。このため、効率よく、かつ低コストで金属担持多孔質材料を製造することができる。
【0050】
(第3実施形態)
本実施形態では、炭化還元システム100を用いる金属担持多孔質材料の製造方法について述べる。第1、2実施形態と同様、あるいは類似する構成については説明を割愛することがある。
【0051】
1.炭化
まず、炭化装置110の炭化炉114に原料となる有機物130(第2の有機物130-2)を設置する。第2の有機物130-2は、ホッパー124を介して導入することができ、スクリューフィーダー126によって炭化炉114の内部へ輸送される。第2の有機物130-2としては、炭化することで多孔質の炭化物を与えるものであればよく、木材や繊維廃棄物などのバイオマスが典型例として挙げられる。炭化炉114内の温度が400℃以上900℃以下となるよう、バーナー120を用いて加熱を行う。
【0052】
2.浸漬
炭化が終了した後、得られる炭化物(第2の炭化物132-2)を金属イオンを含む混合物に浸漬する。金属イオンとしては、鉄イオン、ニッケルイオン、コバルトイオン、バナジウムイオン、マンガンイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオンなどが挙げられ、中でもリンまたはヒ素を効率よく固定可能な金属を与える鉄イオンが好ましい。鉄イオンを含む混合物の溶質としては、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、硝酸第一鉄、硝酸第二鉄が典型例として挙げられる。また、浸漬とは別の手段で第2の炭化物132-2に鉄化合物を担持したものでも構わない。その場合は酸化鉄、水酸化鉄などの各種鉄化合物を利用することができる。金属イオンを含む混合物中における塩の濃度は、例えば1%以上30重量%以下、15重量%以上30重量%以下とすることができる。
【0053】
浸漬は、第2の炭化物132-2を室温に冷却した後に行ってもよく、高温のまま行ってもよい。例えば20℃以上900℃以下、100℃以上700℃以下、あるいは300℃以上600℃以下の温度の第2の炭化物132-2を金属イオンを含む混合物に浸漬してもよい。比較的高温の状態で第2の炭化物132-2を浸漬し、金属イオンを含む混合物から取り出すことで、乾燥に要する時間を短縮することができる。浸漬時間は、10分以上48時間以下、30分以上24時間以下、2時間以上6時間以下の範囲から適宜選択すればよい。上述したように、金属イオンを含む混合物に対して超音波をかけながら浸漬を行ってもよい。あるいは、金属イオンを含む混合物と第2の炭化物132-2を圧力容器に入れて浸漬後に減圧してもよく、この時の圧力容器内の圧力は大気圧に対して-0.101MPa以上-0.020MPa以下、-0.101Mpa以上-0.040MPa以下、あるいは-0.101MPa以上-0.080MPa以下とする。この場合、減圧浸漬時間は、大気圧で浸漬する場合よりも短くてよく、上記圧力に達してから1秒以上1時間以下、10秒以上10分以下、30秒以上5分以下から適宜選択すればよい。
【0054】
浸漬後、第2の炭化物132-2を乾燥させる。乾燥は室温、あるいは加熱しながら行われる。加熱する場合、温度は50℃以上900℃以下、あるいは100℃以上800℃以下の範囲から選択される。乾燥は空気下、あるいは炭化炉114から得られる乾留ガス下で行われる。熱交換器230で得られる熱を利用して浸漬後の炭化物132を乾燥してもよい。
【0055】
3.還元
乾燥後、第2の炭化物132-2を還元装置170の還元炉172に導入する。また、炭化装置110の炭化炉114内に別の有機物(第1の有機物130-1)を設置する。ヒータ180を駆動して還元炉172を加熱すると同時に、炭化装置110を上述した方法と同様の方法で駆動して第1の有機物130-1の炭化を行う。還元炉172の温度は、200℃以上1000℃以下、300℃以上900℃以下、あるいは600℃以上800℃以下の温度から適宜選択される。この時、第1の有機物130-1から生成する還元性ガスが炭化装置110から還元炉172に供給される(
図1参照)。還元性ガスは、精製した後に還元炉172へ供給してもよい。あるいは、還元性ガスを加熱装置140を用いて加熱した後に還元炉172へ供給してもよい。
【0056】
炭化装置110から供給される還元性ガスが不足する場合、あるいは第2の炭化物132-2に対する還元処理の際に炭化装置110を駆動しない場合には、還元性ガス源200を用いて還元炉172に別途還元性ガスを供給してもよい。その供給量はバルブ188を用いて制御される。
【0057】
還元処理中、第1の濃度計154や第2の濃度計156を用いて還元をモニター、制御する。例えば第1の濃度計154で得られる還元ガスの濃度が低い場合、還元性ガス源200からの還元性ガスの導入が必要であると判断すればよい。また、第2の濃度計156で得られる還元ガスの濃度が一定となった場合に、還元が終了したと判断してもよい。あるいは、第1の濃度計154と第2の濃度計156で得られる還元ガスの濃度が同一となった場合、もしくはその差が0ppm以上50000ppm以下、0ppm以上10000ppm以下、あるいは0ppm以上1000ppm以下となった場合に還元が終了したと判断してもよい。この還元処理により、金属化合物が還元され、炭化物に担持された0価の金属が生成する。
【0058】
還元が終了した後、バルブ184、188を閉じ、バルブ192を開放し、ガス置換装置210から空気や窒素、もしくは不活性ガスを還元炉172に供給する。これにより、還元炉172に残存する還元性ガスを除去し、安全を確保することができる。その後、得られる金属担持多孔質材料が還元炉172から取り出される。
【0059】
以上述べた方法により、有機物を出発原料とし、リンまたはヒ素を吸着、固定、回収可能な金属担持多孔質材料を効率よく、かつ、低コストで製造することができる。
【0060】
本発明の実施形態として上述した各実施形態は、相互に矛盾しない限りにおいて、適宜組み合わせて実施することができる。各実施形態を基にして、当業者が適宜構成要素の追加、削除もしくは設計変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0061】
上述した各実施形態によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、又は、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと理解される。
【符号の説明】
【0062】
100:炭化還元システム、102:炭化還元システム、110:炭化装置、112:加熱チャンバー、114:炭化炉、116:駆動部、118:保温手段、120:バーナー、122:ロータリーバルブ、124:ホッパー、126:スクリューフィーダー、128:排気ダクト、130:有機物、130-1:第1の有機物、130-2:第2の有機物、130-3:第3の有機物、132:炭化物、132-1:第1の炭化物、132-2:第2の炭化物、140:加熱装置、154:第1の濃度計、156:第2の濃度計、160:浸漬装置、170:還元装置、172:還元炉、174:ホッパー、176:ロータリーバルブ、178:ロータリーバルブ、179:開閉扉、180:ヒータ、182:第1のガス供給管、184:バルブ、186:第2のガス供給管、188:バルブ、190:第3のガス供給管、192:バルブ、194:ガス捕集管、196:バルブ、198:保温装置、200:還元性ガス源、210:ガス置換装置、220:燃焼炉、230:熱交換器、240:集塵器、250:炭化装置、252:炭化炉、254:加熱チャンバー、256:熱媒体導入口、258:熱媒体排出口、260:駆動部、262:ロータリーバルブ、264:排気ダクト、266:ホッパー、268:スクリューフィーダー