(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-15
(45)【発行日】2022-06-23
(54)【発明の名称】イチョウジテルペンラクトン組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/365 20060101AFI20220616BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20220616BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20220616BHJP
A61K 47/18 20060101ALI20220616BHJP
A61P 7/02 20060101ALI20220616BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20220616BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20220616BHJP
【FI】
A61K31/365 ZMD
A61K9/08
A61K47/02
A61K47/18
A61P7/02
A61P9/00
A61P25/00
(21)【出願番号】P 2020536623
(86)(22)【出願日】2018-11-13
(86)【国際出願番号】 CN2018115166
(87)【国際公開番号】W WO2019128498
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2020-06-29
(31)【優先権主張番号】201711475578.2
(32)【優先日】2017-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520072718
【氏名又は名称】ジアンスー カニョン ファーマシューティカル カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】JIANGSU KANION PHARMACEUTICAL CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【氏名又は名称】金子 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】シャオ ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】チャン シオウジュイエン
(72)【発明者】
【氏名】ジョウ オンリ
(72)【発明者】
【氏名】カン シャオドン
(72)【発明者】
【氏名】ワン ヨンシャン
(72)【発明者】
【氏名】フ ハンフェイ
(72)【発明者】
【氏名】ウ ユィン
(72)【発明者】
【氏名】ワン ジェンジョン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン チェンフォン
【審査官】篭島 福太郎
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第107898782(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第1424315(CN,A)
【文献】Eur J Clin Pharmacol,2017年01月20日,Vol.73,No.5,p.537-546
【文献】Journal of Ethnopharmacology,2014年,Vol.158,p.132-139
【文献】Journal of Pharmaceutical and Biomedical Analysis,2016年,Vol.126,p.109-116
【文献】Cell Stress and Chaperones,2016年,Vol.21,No.6,p.1037-1053
【文献】Chin J Nat Med,2017年10月20日,Vol.15,No.10,p.775-784
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/365
A61K 9/08
A61K 47/02
A61K 47/18
A61P 7/02
A61P 9/00
A61P 25/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量で計算すると、32~36%のギンコライドAと、55~60%のギンコライドBと、2.2~3.6%のギンコライドKとを含み、前記ギンコライドBとギンコライドKの重量比は18~22:1であることを特徴とする、脳卒中の予防及び治療に用いる、血小板凝集抑制薬として用いる又は神経保護薬として用いるためのイチョウジテルペンラクトン組成物。
【請求項2】
前記ギンコライドAの含有量は32~34%であり、および/または前記ギンコライドBの含有量は56~58%であり、および/または前記ギンコライドKの含有量は2.4~3.4%であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
33.5~35.2%のギンコライドA、56.1~6
0%のギンコライドB、2.6~3.0%のギンコライドK、前記ギンコライドBとギンコライドKの重量比は20.0~21.5:1であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記製剤は薬学的に許容される添加物をさらに含むことを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物を含む
脳卒中の予防及び治療に用いる、血小板凝集抑制薬として用いる又は神経保護薬として用いるためのイチョウジテルペンラクトン製剤。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物を含む
脳卒中の予防及び治療に用いる、血小板凝集抑制薬として用いる又は神経保護薬として用いるためのイチョウジテルペンラクトン注射剤。
【請求項6】
前記注射剤は1mlまたは5mlまたは10mlの用量で、5±0.5mgまたは25±0.5mgまたは50±0.5mgの前記イチョウジテルペンラクトン組成物を含むことを特徴とする請求項5に記載の注射剤。
【請求項7】
前記注射剤はメグルミンと塩化ナトリウムとをさらに含み、各成分の重量比は、イチョウジテルペンラクトン組成物:メグルミン:塩化ナトリウム=(2~8):(2~8):(4~12)であることを特徴とする請求項5または6に記載の注射剤。
【請求項8】
脳卒中の予防及び治療のための薬剤に用いるための請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
血小板凝集を抑制するための薬剤に用いるための請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
神経保護薬として用いるための請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医薬技術分野に属し、特に固定成分のイチョウジテルペンラクトン組成物及び応用に関する。
【背景技術】
【0002】
イチョウの葉には広範な生物活性があり、フラボノイド類、テルペン類、多糖類、フェノール類、有機酸、アルカロイド、アミノ酸、ステロイド、微量元素などの様々な化学成分を含む。その中に、ビタミンC、ビタミンE、カロチンおよびカルシウム、燐、ホウ素、セレンなどの鉱物元素の含有量も非常に豊富で、その最も主要な薬用価値の成分はフラボノイド類とテルペン類である。フラボノイド類とテルペン類は血管拡張、抗酸化など多方面にわたり作用を持っている。
【0003】
ギンコライドはイチョウの葉の主な活性成分の1つとして、珍しい天然化合物で、今まで他の植物の中に存在しているのはまだ発見されておらず、抗酸化、抗炎症、抗血小板凝集、抗アポトーシス及び細胞死、血管拡張、中枢神経系や虚血性組織の保護などの薬理作用を持っている。ギンコライドは受容体に対して強い特異的な抑制活性を持ち、特異的な血小板活性化因子(PAF)拮抗剤であり、PAFが健康な人の血小板凝集と血栓症増加を抑制でき、その拮抗作用の活性は化学構造と密接に関係している。PAFは血小板凝集を引き起こす可溶性リン脂質物質であり、これまでに発見された最も強い脂質媒体の1つでもあり、多くの病的及び生理学的過程で重要な役割を果たしている。PAFは主にPAF受容体を通してその生物学的作用を発揮し、PAF受容体拮抗剤は主にPAF受容体を抑制することによって、PAF受容体の生物学的効果を拮抗する。イチョウジテルペンラクトンは、現在最も臨床応用の見通しがある天然PAF受容体拮抗剤と認められている。イチョウジテルペンラクトンは主にジテルペンラクトン類のギンコライドA(GA)、ギンコライドB(GB)、ギンコライドC(GC)、ギンコライドL(GL)、ギンコライドM(GM)、ギンコライドJ(GJ)、ギンコライドK(GK)およびセスキテルペン類に属するビロバリドを含む。ギンコライドKは新しい単量体で、その構造はギンコライドBと似ている。
【0004】
CN1424031AはギンコライドA、B、Kの含有量がギンコライドA 30~40%、ギンコライドB 50~65%、ギンコライドK 0.5~5%であるギンコライド製剤を報告している。本出願は各種のジテルペンラクトン間の比率関係に関する詳細な研究を行わない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来技術に基づいて更なる研究を行い、虚血性脳卒中疾患モデルおよび血小板凝集抑制などの評価指標を利用して、より優れた配合量のギンコライドA、B、Kの重量百分率を得た。その上で、発明者は驚くほど、ギンコライドBとKの比率は一定の範囲内で、イチョウジテルペンラクトン組成物の抗脳卒中効果がより優れていることを発見した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明はイチョウジテルペンラクトン組成物であって、前記組成物は、重量で32~36%のギンコライドAと、55~60%のギンコライドBと、2.2~3.6%のギンコライドKとを含み、前記ギンコライドBとギンコライドKの重量比は18~22:1であることを特徴とする。
【0007】
好ましくは、33.5~35.2%のギンコライドA、56.1~60.1%のギンコライドB、2.6~3.0%のギンコライドK、前記ギンコライドBとギンコライドKの重量比は20.0~21.5:1である。
【0008】
好ましくは、前記ギンコライドAの含有量は32~34%であり、および/または前記ギンコライドBの含有量は56~58%であり、および/または前記ギンコライドKの含有量は2.4~3.4%である。
【0009】
好ましくは、ギンコライドB/Kの比率は19~21:1で、より好ましくは20:1である。
【0010】
好ましくは、前記組成物は抽出物形式または複合体形式とすることができる。
【0011】
また、本発明は上記組成物(抽出物を含む)を含むイチョウジテルペンラクトン製剤であって、前記製剤は薬学的に許容される添加物をさらに含むことを特徴とする。
【0012】
さらに、前記製剤はイチョウジテルペンラクトン注射剤である。
【0013】
具体的に、前記注射剤は1mlまたは5mlまたは10mlの用量で、5±0.5mgまたは25±0.5mgまたは50±0.5mgの前記イチョウジテルペンラクトン組成物を含む。
【0014】
さらに、前記注射剤はメグルミンと塩化ナトリウムとをさらに含み、各成分の重量比はイチョウジテルペンラクトン組成物:メグルミン:塩化ナトリウム=(2~8):(2~8):(4~12)である。
【0015】
また、本発明は上記組成物の脳卒中予防薬の調製における応用である。
【0016】
また、本発明は上記組成物の血小板凝集抑制薬の調製における応用である。
【0017】
また、本発明は上記組成物の神経保護薬の調製における応用である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
前記「応用」とは、上記組成物(抽出物を含む)を対応する疾病またはその疾病の傾向を有する被験者に投与することを指し、その目的は、上記の疾病又はその傾向を治癒、緩和、変化、影響、改善又は予防することなどの治療効果を与えることである。当業者は、治療する疾患の種類、投与経路、および賦形剤の使用に応じて、特定の有効量を容易に決定することができるが、それは、他の薬物の併用により異なる可能性がある。
【0019】
本発明は、ラットの局所脳虚血再灌灌流障害の実験によって、イチョウジテルペンラクトン組成物が、脳虚血再灌流ラットの神経機能評価値を低下させ、脳虚血面積を減少させ、脳組織浮腫後の水分含量を減少させ、SOD活性を向上させ、MDA含有量を低減させることができ、また、イチョウジテルペンラクトン単量体が一定の割合での効果を著しく高めたことを発見した。また、本発明はイチョウジテルペンラクトン組成物が異なる時間点でPAFおよびADP誘導剤によって誘導されたウサギ血小板凝集を抑制し、最大凝集率を低下させることができ、同様に、イチョウジテルペンラクトン単量体が一定の割合でより良い抗血栓形成の効果を有することを証明した。
【0020】
前述のように、本発明は、イチョウジテルペンラクトン組成物を提供することを目的とする。以下、実施形態の内容を参照しながら具体的に説明する。
【0021】
特に、本発明に対してなされた同様の置換及び修正は、当業者にとって明らかであり、それらは本発明に含まれるものとみなされる。当業者は、本発明の内容、精神及び範囲から逸脱することなく、本明細書に記載された方法及び用途を変更または適切に変更し、組み合わせることによって、本発明の技術を実現し、適用することができることは明らかである。明らかに、記載された実施形態は、全ての実施形態ではなく、本発明の一部の実施形態にすぎない。
【0022】
なお、特定条件が指定されていない場合は、通常の条件又は製造者が推奨する条件に従って行う。使用される原料薬または添加物、および製造者を示さずに使用される試薬または機器として、いずれも市販で入手できる従来の製品である。別段の説明がない限り、すべての百分率、比率、割合または部数は重量で計算される。
【0023】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての専門用語及び科学用語は、当業者によく知られているものと同じ意味を持っている。また、記載される内容に類似または同等のいかなる方法も材料も、本発明に適用できる。
【0024】
実施例1 イチョウジテルペンラクトン組成物が虚血性脳疾患モデルに対する保護作用
1.材料
1.1イチョウジテルペンラクトン組成物は以下の方法によって調製することができる。イチョウ葉をエタノールで抽出し、濃縮し、吸着剤により雑質を除去し、有機溶剤で溶離し、洗浄し、精製し、再結晶化するなどの手順を通して、その中の抽出パラメータ、吸着剤の選択、溶離剤の選択、洗浄液の選択及び再結晶溶剤の選択を調整して取得し、またはCN1424031Aによって開示された方法で調製すると同時に、調製パラメータを調整することによって調製し、前記組成物はまた化合物の再結合によって得られる。上記の方法により、表1の配合比のイチョウジテルペンラクトン組成物を得る。
【0025】
以上の方法により、重量百分率が異なる組成物または抽出物を得て、そのイチョウジテルペンラクトンA、B、Kの百分率の含有量を測定した。
【0026】
【0027】
ニモジピン、山東新華製薬株式会社の製剤、バッチNo.1609215、2,3,5-トリフェニルテトラゾリウムクロリド、sigma会社の製品、スーパーオキシドディスムターゼ(SOD)、マロンジアルデヒド(MDA)の試薬キットはいずれも南京建成生物工学研究所から購入された。
【0028】
1.2動物
SDラット150匹、雄、体重220-250g、クリーン、Shanghai.SIPPR-BK Laboratory Animal Co., Ltd.、合格証番号:SCXK(上海)2013-0016。
【0029】
1.3機器
TSQ-280型恒温培養発振器(上海精宏実験設備有限会社)、5804R型冷凍遠心機(Eppendorf会社)、BD224S型電子天秤(Sedolis科学機器有限会社)。
【0030】
2.方法
2.1グループ分けとモデル製作
体重合格のラットを選択してランダムに14群に分け、すなわち偽手術群、モデル群、ニモジピン群(10.8mg/kg)、イチョウジテルペンラクトン組成物群(表1を参照)2.4g・kg-1静脈に注射して投薬する。すべての動物はモデル制作の1d前及び再灌流後30minに尾静脈に該当の薬物を注射した(偽手術群とモデル群は同時に等容量の生理食塩水を注射する)。
【0031】
Zea Longaなどの方法に基づいて、内頸動脈縫合閉鎖法により、ラットの右中大脳動脈閉塞(middle cerebraal artery occlusion MCAO)モデルを鎖調製された。主なステップ:10%の抱水クロラール(350mg・kg-1)を腹腔内に注射して、ラットを麻酔させ、右外頸動脈を分離し、結紮し、切断し、外頸動脈の残端から総頸動脈と内頸動脈に沿って頭部末端の拡大した約18mmのナイロン縫合糸をゆっくりと挿入し、虚血を起こすために中大脳動脈入口を閉鎖し、虚血3h後再灌流し、再灌流24h後頭を切って脳を取った。偽手術群では、総頸動脈,外頸動脈と内頸動脈を分離しただけで、縫合糸を挿入しなかった。
【0032】
2.2測定指標
2.2.1神経機能評価 Longaの採点基準を参照し、術後の評価は1-2点を手術成功の印とする;0点:明らかな神経症状がない;1点:左の前肢を完全に伸ばせない;2点:左に回転する;3点:歩いている時左に傾倒する;4点:自分で歩くことができない。
【0033】
2.2.2脳組織内水分含量 再灌流24h後にラットの頭を切って脳を取り、それぞれ湿重量と電熱恒温乾燥ボックスの中で100℃乾燥して48hから恒重後の乾燥重量を測定し、水分含量を計算した。水分含量(%)=(湿重量-乾燥重量)/湿重量×100%
【0034】
2.2.3脳梗塞面積測定 再灌流24h後に頭を切って脳を取り、2mmの連続冠状切片を5切片作成し、2%TTCリン酸塩緩衝液に脳の切片を入れ、37℃の恒温で30min孵育し、正常な脳組織は赤い色に染め、梗塞巣は白色を呈した。フィルタ紙で表面の液体を吸収した後に、デジタルカメラで写真を撮り、ソフトウェアで各脳切片の両面の虚血面積を計算して平均値を取った。
【0035】
2.2.4血清活力、MDA含有量の検査 再灌流24h後に血液を分離して血清を取り、説明書の操作によってOD値を測定し、SOD、MDAの含有量を計算した。
【0036】
【0037】
3.結果
3.1神経機能評価
脳虚血再灌流後、モデル群に比べて、イチョウジテルペンラクトン組成物群とニモジピン群は、ラットの神経行動評価スコア(P<0.05,P<0.01)を著しく低下させ、ラットの虚血再灌流後の行動障害を著しく改善し、明らかに梗塞面積を減少させることができ(P<0.05,P<0.01)、結果は、イチョウジテルペンラクトン組成物は、ラットの神経損傷を低減し、脳梗塞率を低下させることができることを示した、表2を参照。
【0038】
3.2脳組織内の水分含量
モデル群は脳組織内の水分含量が明らかに増加し、偽手術群に比べると有意差があり(p<0.01)、ニモジピン、イチョウジテルペンラクトン組成物群はモデル群に比べると有意差があり(P<0.05,P<0.01)、イチョウジテルペンラクトン組成物は脳組織浮腫後の水分含量を著しく低下させることができることを示した、表2を参照。
【0039】
3.3脳梗塞面積
偽手術群と比べると、モデル群はMDAの含有量が増加し(p<0.01)たが、SOD活性が弱まった(p<0.01)、モデル群と比べると、ニモジピン群はラットのSOD活性が向上したが、MDAの含有量が著しく低下して、有意差があり(p<0.01)、イチョウジテルペンラクトン組成物群はラットのSOD活性が著しく向上したが(P<0.05、P<0.01)、MDAの含有量が著しく減少した、表2を参照。
【0040】
【0041】
4.結論
表2から分かるように、実施例2~3群は実施例1群に比べると有意差がなく、すなわち、実施例1群は対比例1~8群に比べると有意差がある。
【0042】
実施例1~3群のイチョウジテルペンラクトン組成物は、ギンコライドAの含有量が32~36%の範囲内であり、ギンコライドBの含有量が55~60%の範囲内であり、ギンコライドKの含有量は2.2~3.6%の範囲内であり、かつギンコライドBとギンコライドKの重量比は18~22:1の範囲内である。実施例1~3群のイチョウジテルペンラクトン組成物は対比例1~8群のイチョウジテルペンラクトン組成物に比べて、脳虚血再灌流ラットの神経機能スコアを低下させ、脳虚血面積を減少させ、脳組織浮腫後の水分含量を低減させ、SOD活性を高めてMDA含有量を減少させることによって、ラットの局所脳虚血再灌流障害に対する保護作用がより効果的であり、即ち、ラットの局所脳虚血再灌流障害に対してより良い保護作用を持っている。
【0043】
また、本発明は比較的安定した成分比例の抽出物を得る調製方法を提供し、具体的には、イチョウ葉(イチョウ科植物イチョウGikago biloba L.の乾燥葉、江蘇ヒ州から購入)の薬材50kgを取り、10%のエタノールを8倍の量で加熱還流して2回抽出し、1.5時間ごとに抽出液を結合し、濃縮し、濾過し、濃縮液を得た。イチョウ葉の薬材の重さの15%であるポリアミドを濃縮液に加え、36時間かき混ぜて吸着し、一晩静置して、上澄みを捨てて、吸着剤を集めた。95%のエタノール30Lを吸着剤に加え、1.5時間煮沸してから冷まし、上清液を取り、抽出した吸着剤に30Lのエタノールを加え、3回繰り返して抽出し、上記4回の抽出液を結合し、減圧下で濃縮し、濃縮液(d=1.40)を得て、5日間冷蔵した。冷蔵した濃縮液を遠心分離し、沈殿物を収集し、沈殿物に水を加えて3回洗浄し、水を捨て、2倍の量のエタノールを沈殿物に加えて3回還流抽出し、1時間ごとに抽出液を濾過し、抽出液を収集し、乾燥品まで溶剤を回収し、総テルペンラクトン粗品を得た。総テルペンラクトン粗品に1倍(重量比)の水を加えて3回洗浄し、水を捨て、3倍の量(重量比)のエタノールを沈殿物に加えて3回繰り返して再結晶し、乾燥してイチョウジテルペンラクトン原料を得た。測定により、この原料の中で、イチョウジテルペンラクトンAの含有量は35%で、イチョウジテルペンラクトンBは58%で、イチョウジテルペンラクトンKは3.1%であった。
【0044】
上記の手順を3回繰り返して、イチョウジテルペンラクトンA、イチョウジテルペンラクトンB、イチョウジテルペンラクトンKの含有量SD値が小さく、いずれも5%以下であった。
【0045】
実施例2 イチョウジテルペンラクトン組成物がウサギ血小板凝集及ぼす影響
1.実験材料
1.1 機器
STEELIEX血小板凝集因子分析器、北京世帝科学機器会社、LDZ5-2遠心機、北京医療遠心機工場。
【0046】
1.2 試薬と薬物
薬物群の具体的な比例は表1と同じである。
【0047】
ニモジピン、山東新華製薬株式会社の製品、バッチNo.1609215、アデノシン二リン酸(adenosin diphosate、ADP)、上海伯奥生物科学技術有限会社(輸入分装)、血小板活性化因子(plotelet activating factor、PAF)はsigma会社に提供され、トリジウムクエンレート、上海凌峰化学試薬有限会社。
【0048】
1.3実験動物
ニュージーランド白ウサギは、南京市浦口区の莱芙養殖場から提供され、実験動物生産許可証SCXK(蘇)2014-0004、使用許可証:SYXK(蘇)2013-0021。
【0049】
2.実験方法
2.1ウサギの体外血小板凝集率の測定
ウサギをプロカインで局所麻酔し、頸動脈挿管により放血を行い、3.8%のクエン酸ナトリウム溶液で抗凝固し、1000r/minで10min遠心分離し、多血小板血漿(PRP)を取り、残りは3000r/minで遠心分離し、つまり乏血小板血漿(PPP)を取り、凝集誘導剤としてADP(最終濃度5.4μg/ml)とPAF(最終濃度0.37μg/ml)を使用した。イチョウジテルペンラクトン組成物の各薬液10μl(最終濃度9.26μg/ml)、ニモジピン10μl(最終濃度0.05μg/ml)を各チューブ250μl PRPに加え、生理食塩水10μlを対照群PRPに加え、5minインキュベーション後、146μg/mlのADP10μl、10μg/mlのPAF10μlを順番に加え、2つの誘導剤によって誘導された1min、5min時の血小板凝集率と最大凝集率をそれぞれ検出し、式に従って血小板凝集抑制率を計算した。
凝集抑制率(%)=(ブランク対照群最大凝集率-投与群最大凝集率)/ブランク対照群最大凝集率×100%
【0050】
【0051】
3.結果
3.1イチョウジテルペンラクトン組成物の体外投与がPAF誘導のウサギの血小板凝集率に及ぼす影響
その結果、イチョウジテルペンラクトン組成物の体外投与の最終濃度は9.26μg/mlで、PAF誘導のウサギの血小板最大凝集率には明らかな抑制効果があり、1minと5minの血小板凝集率を著しく抑えることができ、ブランク対照群に比べて有意差がある(p<0.01、P<0.05)。結果は表3に示す。
【0052】
【0053】
3.2 イチョウジテルペンラクトン組成物の体外投与がADP誘導のウサギの血小板凝集率に及ぼす影響
その結果、イチョウジテルペンラクトン組成物の体外投与の最終濃度は9.26μg/mlであり、ADP誘導のウサギの1min、5min血小板凝集率に対して一定の抑制効果があり、ブランク対照群と比べて有意差がある(p<0.05、0.01)。結果は表4に示す。
【0054】
【0055】
4.結論
表3から分かるように、実施例2~3群は実施例1群に比べると有意差がなく、すなわち、実施例1群は対比例1~8群に比べると有意差がある。
【0056】
実施例1~3群のイチョウジテルペンラクトン組成物では、ギンコライドAの含有量は32~36%の範囲内であり、ギンコライドBの含有量は55~60%の範囲内であり、ギンコライドKの含有量は2.2~3.6%の範囲内であり、かつギンコライドBとギンコライドKの重量比は18~22:1の範囲内である。実施例1~3群のイチョウジテルペンラクトン組成物は、対比例1~8群のイチョウジテルペンラクトン組成物に比べて、異なる時間点でPAFおよびADP誘導剤によって誘導されたウサギの血小板凝集を抑制し、最大凝集率を低下させることにより良い効果を得て、より良い抗血栓形成の作用があることを示し、この作用は血小板凝集を効率的に広く抑制することに密接に関連している。
【0057】
以上は本発明の好ましい実施形態のみであり、当業者にとっては、本発明の原理を逸脱することなく、いくつかの改良及び潤飾を行うことができ、これらの改良及び潤飾も本発明の保護範囲と見なすべきであることを指摘すべきである。