(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-15
(45)【発行日】2022-06-23
(54)【発明の名称】電気自動車補助ユニット
(51)【国際特許分類】
H02K 11/33 20160101AFI20220616BHJP
H01R 4/64 20060101ALI20220616BHJP
【FI】
H02K11/33
H01R4/64 C
(21)【出願番号】P 2020545091
(86)(22)【出願日】2018-02-28
(86)【国際出願番号】 EP2018054902
(87)【国際公開番号】W WO2019166080
(87)【国際公開日】2019-09-06
【審査請求日】2020-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】515069336
【氏名又は名称】ピアーブルグ パンプ テクノロジー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Pierburg Pump Technology GmbH
【住所又は居所原語表記】Alfred-Pierburg-Strasse 1, 41460 Neuss, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】特許業務法人ナガトアンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】シュルツ, クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】グロス, ペーター
【審査官】三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第02725691(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0030124(US,A1)
【文献】特開2010-161863(JP,A)
【文献】特開2008-035629(JP,A)
【文献】特開平10-174357(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102006048900(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 11/33
H02K 5/22
H02K 9/18
H01R 4/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも部分的に導電性を呈するように構成された補助ユニットハウジング(15)を備える電気自動車補助ユニット(10)であって、
前記補助ユニットハウジング(15)には、
ステータ側モータコイル(30)を有する電気駆動モータ(14)と、
前記駆動モータ(14)により駆動される
ユニット機構(12)と、
前記駆動モータ(14)を制御する制御及びパワー用エレクトロニクス(37)を含むモータエレクトロニクスを備えたモータエレクトロニクス基板(40)とが設けられ、
前記モータエレクトロニクス基板(40)は、少なくとも1つのハウジング接地接続部(
48、56)を備え、前記ハウジング接地接続部は、ハウジング接地素子(48)を介して前記補助ユニットハウジング(15)に直接的に導電性を呈する態様で接続され、
前記モータ制御エレクトロニクス基板(40)は、プラグ接続部(46)を介してエンジン制御ユニットに接続することができ、
前記プラグ接続部(46)は、少なくとも2本のプラグピン(48、54、60
、62)を有するパンチくし型配列(44)を介して、前記モータ制御エレクトロニクス基板(40)に電気的に接続され、
前記ハウジング接地素子は、前記パンチくし型配列(44)のプラグピン(48)として設計され
、
前記パンチくし型配列(44)のプラグピン(48、54、60、62)は、前記モータエレクトロニクス基板(40)から出発して、前記モータエレクトロニクス基板(40)に近接して配置された非導電性熱伝導層(42)および導電性隔壁(20)を貫通する一方で、前記プラグピンの少なくとも1本が前記プラグ接続部(46)に電気的に接続され、前記プラグピンの少なくとも別の1本が前記ハウジング接地素子(48)を介して前記補助ユニットハウジング(15)に導電性を呈する態様で直接的に接続されており、前記パンチくし型配列(44)は、前記モータエレクトロニクス基板(40)から略径方向外方に向けられている、電気自動車補助ユニット。
【請求項2】
前記パンチくし型配列(44)は、プラスチック材料で押出コーティングされている、請求項1記載の電気自動車補助ユニット。
【請求項3】
前記プラグピン(48)の自由端は、前記補助ユニットハウジング(15)の導電性ハウジング部(52)の凹部(50)に挿入されることを特徴とする請求項1または2に記載の電気自動車補助ユニット。
【請求項4】
前記パンチくし型配列(44)を介して前記エンジン制御部に接続可能な車両接地素子(54)が設けられていることを特徴とする請求項1から
3の何れか1項に記載の電気自動車補助ユニット。
【請求項5】
前記モータ制御エレクトロニクス基板(40)から始まって、共通のプラグピン部(56)が、前記ハウジング接地素子(
48)及び前記車両接地素子(
54)用に設けられていることを特徴とする請求項
4に記載の電気自動車補助ユニット。
【請求項6】
前記導電性隔壁(20)が、前記補助ユニットハウジング(15)内に配置されると共に、前記ハウジング(15)に電気的に接続され、前記隔壁は、モータエレクトロニクス室(17)を、前記駆動モータ(14)及び/又は前記ユニット機構(12)から分離することを特徴とする請求項1から
5のいずれか一項に記載の電気自動車補助ユニット(10)。
【請求項7】
前記ユニット機構(12)は、ポンプロータ(24)とポンプステータ(22)とを備える液体ポンプであり、前記隔壁(20)は、前記液体ポンプによって送り込まれる液体によって直接冷却されることを特徴とする請求項
6に記載の電気自動車補助ユニット(10)。
【請求項8】
所定の厚さDを有する
前記非導電性熱伝導層(42)が、前記モータエレクトロニクス回路基板(40)と前記隔壁(20)との間に設けられている請求項
5または
6に記載の電気自動車補助ユニット(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項の前文に画定された電気自動車補助ユニットに関し、例えば、電気駆動ポンプ、特に液体ポンプ、電気バルブ、電気フラップ、または他の電気アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車内の多数の小型及び大型の電気部品及び自動車補助ユニットは、電気自動車補助ユニットの電気干渉抑制に非常に高い需要を作っている。モータエレクトロニクス室には、モータエレクトロニクスと、特にモータコイルの制御のためのパワーエレクトロニクスとを備えるモータエレクトロニクス基板が配置されている。多くの電気補助ユニット、特にポンプは、モータエレクトロニクス室が、モータコイルを含むと共に、電気駆動モータに隣接するように構成されている。駆動モータは、モータコイルを含み、モータエレクトロニクス室とは、互いに、仕切りによって分離されている。
【0003】
電気干渉抑制における重要な対策は、導電性ハウジングと、モータエレクトロニクス基板上の回路接地との、互いの、さらには車両の電気接地との良好で低抵抗の接地接触である。
【0004】
冷却剤ポンプとして設計された電気自動車補助ユニットが知られている(特許文献1)。
【0005】
モータブラシが、オプションとして、抑制チョークを介して、車両接地又は車両バッテリ電圧に接続されている機械的整流DCモータが知られている(特許文献2)。
【0006】
回路基板または回路基板接地を金属ハウジングに電気的および機械的に接続する3アーム接地コネクタが知られている(特許文献3)。
【0007】
モータエレクトロニクス回路基板が仕切り壁上にその非装備サイドによって固定されている電動冷却剤ポンプが開示されている(特許文献4)。
【0008】
導電性ハウジングを備える電子的整流電気モータ用の干渉抑制装置が開示される(特許文献5)。係る装置において、ハウジング接触、モータ接続及び電源の各々のために分離された接触パッドが、干渉抑制回路基板上に設けられており、前記パッドはフィルタ素子によって互いに接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】欧州特許出願第2476914 A1号明細書
【文献】欧州特許出願第2053726 A2号明細書
【文献】ドイツ国特許第19728291号明細書
【文献】欧州特許第2187718号明細書
【文献】米国特許第5982253号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、ハウジング接地要素が特に簡単な方法で設計され、故に組立が簡単で安価な、電気駆動モータを備える干渉のない電気自動車補助ユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的は、ハウジング接地素子が、パンチくし型配列のプラグピンとして設計されることによって達成される。したがって、接地接続を迅速かつ直接的に行うことができる。短く且つ低抵抗の接地接続のため、EMCの改善が達成できる。接地接続用のネジを省略したため、部品が削減でき、製造工程を短縮できる。また、組立工程としてのネジ止めを省略することができ、時間短縮に加え、切りくずがないためクリーン度の向上につながる。ねじの省略は、基板上のスペースの節約にもつながる。
【0012】
電気自動車補助ユニットは、基本的には任意の種類の補助ユニットとすることができる。例えば、電気バルブ、電気フラップ又は他の電気アクチュエータ、又は流体ポンプ、特に液体ポンプ、具体的には潤滑剤ポンプ、冷却液ポンプ又は燃料ポンプである。駆動モータは、液体ポンプの場合にはドライランナーとして構成することができるが、特にウェットランナーとしても構成することができる。
【0013】
電気自動車補助ユニットは、複数のモータコイルを備えた電気駆動モータと、駆動モータによって駆動されるユニット機構と、駆動モータの制御のためのモータエレクトロニクスを備えたモータエレクトロニクス基板とを備える。本明細書で使用されるように、ユニット機構は、集合配列、すなわち、例えば、アクチュエータの場合のトランスミッション、ポンプの場合のポンプロータおよびポンプステータなどを指す。
【0014】
さらに、補助ユニットハウジングの少なくとも一部は導電性であり、故に、モータ電子回路基板上に配置された駆動モータ、並びに制御およびパワーエレクトロニクスが、電気的にシールドされる。
【0015】
特に有利な態様で、パンチングくし型配列は、プラスチック材料で押出コーティングされており、これにより組立てを再度簡単にすることができる。プラグピンの自由端が、補助ユニットハウジングの導電性ハウジング部の凹部に挿入されるという事実により、アセンブリを更に簡略にすることができる。
【0016】
パンチングくし型配列は、エンジン制御エレクトロニクス基板から始まって、ほぼ半径方向外側に向けられることが好ましい。これは、駆動モータが回転する長軸を有するほぼ円筒状ハウジングに基づいている。接地接続ラインの半径方向配列は、外部への最短の可能な接続であり、故に、車両側の車両接地への最短の接続である。
【0017】
有利な実施形態では、パンチくし型配列を介してエンジン制御ユニットに接続されるようになっている車両接地素子が設けられている。これは、ハウジングの電磁シールド性をさらに向上させる。エンジン制御エレクトロニクス基板から始まり、共通コネクタピン部を、ハウジング接地素子及び車両接地素子のために設けることができる。
【0018】
好ましくは、導電性隔壁が、補助ユニットハウジング内に配置される。導電性隔壁は、導電性ハウジングに電気的に接続される。隔壁は、モータエレクトロニクスを含むモータエレクトロニクス基板が配置されるモータエレクトロニクス室を、駆動モータおよび/またはユニット機構から分離する。隔壁は、更なるシールドであり、例えば、モータエレクトロニクス回路基板に直接隣接しており、故に、特に有効な電磁シールドである。
【0019】
好ましくは、ユニット機構は、ポンプロータとポンプステータとを備える液体ポンプであり、隔壁は、液体ポンプによってポンプされる液体によって直接冷却される。設計について、これは、隔壁に直接隣接した液体ポンプで達成できるため、液体が隔壁の周りを常時流れ、高い冷却能力で隔壁を冷却する。代替例として、駆動モータは、隔壁に隣接することができ、モータロータは、ウェットランナーとして構成される。したがって、モータロータを取り囲む液体も、隔壁を直接洗浄して冷却する。
【0020】
モータコイルを制御するために、モータエレクトロニクス基板上のモータエレクトロニクスは、パワーセミコンダクタを含み、設計によっては、120~150℃の固有温度を超えてはならない。その理由は、この温度を超えるとモータエレクトロニクスが破壊される可能性があるためである。モータエレクトロニクスは、良好な電磁互換性を保証し、モータエレクトロニクスを外部の影響から保護するために、通常、気密封止されたモータエレクトロニクス室内に収容されるので、専用の空冷ハウジングを介した冷却は、限られた範囲でのみ可能である。隔壁の側面をポンプ流体で洗浄することにより、冷却能力が著しく増加する。
【0021】
モータエレクトロニクス基板は、所定の一定の厚みDを有する電気的に非導電性の熱伝導層を介して隔壁に接続されることが特に好ましい。熱伝導層は、熱伝導性ペーストによって形成することができるが、モータエレクトロニクス基板を隔壁上に永久的に固定する熱伝導性の接着剤によって形成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、モータエレクトロニクス基板を含む電気自動車補助ユニットの概略的な長手方向断面を示す。
【
図2】
図2は、隔壁を有しない
図1の電気自動車補助ユニットのモータエレクトロニクス基板の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施の形態を、図面を参照して以下により詳細に説明する。
【0024】
図1は、電気自動車補助ユニット10の概略図である。本実施の形態では、電気冷却剤ポンプとして構成されている。しかしながら、基本的に、電気自動車補助ユニットは、別のタイプの電気ポンプ、電気バルブ、電気フラップ又は別のタイプの補助ユニットとして構成することもできる。
【0025】
長手方向に見ると、本発明の電気自動車補助ユニット10は、ユニット機構12と、電気駆動モータ14と、エンジンエレクトロニクス部16との領域に分割される。ユニット機構12は、ポンプロータ24とポンプステータ22とを備える。電気駆動モータ14は、複数のステータ側モータコイル30と永久励起モータロータ32とによって実質的に形成される。モータエレクトロニクス室17がモータエレクトロニクス部16内に設けられている。この室内には、モータエレクトロニクス回路基板40が配置されている。モータエレクトロニクス回路基板40は、駆動モータ14の制御及び調整、特にモータコイル30を駆動するための制御及びパワー用エレクトロニクス37を備える。モータコイル30は、複数の接続線35を介してモータエレクトロニクス基板40に電気的に接続されている。
【0026】
ポンプロータ24及びモータロータ32は、ロータシャフト26に接して配置されている。駆動モータ14は、モータロータ32が配置されている湿潤領域を、モータコイル30が配置されている環状乾燥領域から分離する円筒缶34を有する。従って、駆動モータ14は、いわゆるキャンドモータとして、又はウェットランナーとして設計されている。
【0027】
自動車補助ユニット10は、ハウジング15を備える。ハウジング15は、実質的に、円筒形ハウジングシリンダ25と、ポンプ側ハウジングカバー11と、エレクトロニクス側ハウジングカバー13とによって形成される。内部隔壁18が、ハウジング15内には設けられており、この隔壁は、横断面内に位置し、ユニット機構12のポンプチャンバを駆動モータ14から仮想的に閉じている。しかし、ユニット機構12によって汲み上げられた液体は、湿潤チャンバに流入し、湿潤チャンバから流出することもできる。さらに、横断面内に横たわるさらなる隔壁20は、補助ユニットハウジング15内に配置され、モータエレクトロニクス室16を駆動モータ14から気密に分離する。ハウジング15及び隔壁20の全ての部品は、例えばアルミニウムのような導電性金属で作られている。
【0028】
モータエレクトロニクス基板40は、熱伝導層42によって放熱壁20に接着される。熱伝導層42は、熱伝導性接着剤であり、所定の一定の厚さDを有する。
【0029】
符号44は、エンジン制御エレクトロニクス基板40を、プラグ接続部46を介して、詳細を図示しないエンジン制御ユニットに接続するパンチングくし型配列を明らかにする。本発明によれば、パンチングくし型配列44のプラグピン48が、ハウジング接地素子として構成され、その自由端は、補助ユニットハウジング15の導電性ハウジング部52の凹部50に挿入されるように設けられている(特に
図2も参照)。基本的に、パンチングくし型配列44は、エンジン制御エレクトロニクス基板40を始点として半径方向外側に向けられている。効果的な態様において、パンチングくし型配列44は、プラスチック素子58と共に押出コーティングされている。
【0030】
図2は、
図1の電気自動車補助ユニット10のモータエレクトロニクス基板40の斜視図であり、隔壁20の無いパンチくし型配列44を示す。ハウジング接地素子48に加えて、車両接地素子54が設けられる。車両接地素子54は、パンチくし型配列44を介してエンジン制御ユニットに接続することができる。このようにして、電磁シールドを改善することができる。エンジン制御エレクトロニクス基板40から始まり、共通コネクタピン部56が、ハウジング接地素子
48及び車両接地素子
54に設けられている。
図2から分かるように、更なるコネクタピン60
、62が、モータ制御エレクトロニクス基板40の制御のために設けられている。
【符号の説明】
【0031】
10 電気自動車補助ユニット
12 ユニット機構
14 電気駆動モータ
15 補助ユニットハウジング
30 ステータ側モータコイル
37 制御及びパワー用エレクトロニクス
40 モータエレクトロニクス基板
44 パンチくし型配列
46 プラグ接続部
48 ハウジング接地素子
48、54、60、62 プラグピン
48、56 ハウジング接地接続部