(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-15
(45)【発行日】2022-06-23
(54)【発明の名称】制御装置、制御方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
H02J 3/38 20060101AFI20220616BHJP
H02J 3/12 20060101ALI20220616BHJP
【FI】
H02J3/38 170
H02J3/12
(21)【出願番号】P 2020559604
(86)(22)【出願日】2018-12-12
(86)【国際出願番号】 JP2018045680
(87)【国際公開番号】W WO2020121436
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-06-11
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「水素社会構築技術開発事業/水素エネルギーシステム技術開発/再エネ利用水素システムの事業モデル構築と大規模実証に係る技術開発」委託事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100124372
【氏名又は名称】山ノ井 傑
(72)【発明者】
【氏名】村井 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】田丸 慎悟
(72)【発明者】
【氏名】秋葉 剛史
(72)【発明者】
【氏名】山根 史之
(72)【発明者】
【氏名】加藤 新
(72)【発明者】
【氏名】森田 浩史
(72)【発明者】
【氏名】田上 哲治
【審査官】原 嘉彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/078875(WO,A1)
【文献】特表2007-523580(JP,A)
【文献】特開2003-61251(JP,A)
【文献】特開2016-111871(JP,A)
【文献】特開2004-362857(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/04-8/0668
H02J 3/00-5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受電電力が予め計画され、水素製造量が前記受電電力に応じて変化する水素製造装置を少なくとも含む水素システムを制御する制御装置であって、
前記受電電力の目標値が予め設定された需給調整時間帯の前の準備時間帯において、前記受電電力として前記水素製造装置へ入力される入力電力が、前記需給調整時間帯の開始時に前記目標値に一致するような制御指令値を算出する演算部と、
前記演算部で算出された前記制御指令値を前記水素製造装置へ出力する制御指令部と、
を備える制御装置。
【請求項2】
前記演算部が、
前記需給調整時間帯においては、前記入力電力に基づいて前記制御指令値を算出し、
非需給調整時間帯においては、前記水素製造量に基づいて前記制御指令値を算出する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記演算部が、前記目標値を設定するためのベースライン計算時間帯において、前記入力電力に基づいて前記制御指令値を算出する、請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記受電電力と前記水素製造量との相関関係を示すモデルを記憶する記憶部をさらに備え、
前記演算部は、前記準備時間帯に前記モデルを用いて前記制御指令値を算出する、請求項1から3のいずれかに記載の制御装置。
【請求項5】
前記演算部は、前記水素製造装置で実際に製造された前記水素製造量を示す実績データから前記モデルを推定し、推定した前記モデルを用いて前記制御指令値を算出する、請求項4に記載の制御装置。
【請求項6】
前記水素システムが、前記水素製造装置に電力を供給する発電装置を含み、
前記演算部は、前記発電装置から前記水素製造装置への供給電力を前記入力電力の一部として用いて前記制御指令値を算出する、請求項1から5のいずれかに記載の制御装置。
【請求項7】
前記受電電力がしきい値よりも小さい場合、前記演算部は、前記入力電力を増加させる、請求項6に記載の制御装置。
【請求項8】
前記水素システムが、前記水素製造装置で製造された水素を貯蔵する水素貯蔵装置と、前記水素貯蔵装置に貯蔵された前記水素で発電する燃料電池発電装置と、を含み、
前記演算部は、前記準備時間帯において、前記燃料電池発電装置の発電量を計画値に一致させるような制御指令値を算出する、請求項1から7のいずれかに記載の制御装置。
【請求項9】
受電電力および水素製造量が予め計画された水素製造装置を少なくとも含む水素システムを制御する方法であって、
前記受電電力の目標値が予め設定された需給調整時間帯の前の準備時間帯に、前記受電電力が前記需給調整時間帯の開始時に前記目標値に一致するように制御指令値を算出し、
算出した制御指令値を前記水素製造装置へ出力する、制御方法。
【請求項10】
受電電力および水素製造量が予め計画された水素製造装置を少なくとも含む水素システムの制御をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記受電電力の目標値が予め設定された需給調整時間帯の前の準備時間帯に、前記受電電力が前記需給調整時間帯の開始時に前記目標値に一致するように制御指令値を算出し、
算出した制御指令値を前記水素製造装置へ出力する、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、制御装置、制御方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電力供給によって水素を製造および貯蔵する水素システムが知られている。このような水素システムには、デマンドレスポンスなどの電力需給を調整する需給調整時間帯が設定されている。この需給調整時間帯では、水素製造装置への入力電力を目標値に調整する必要がある。
【0003】
そこで、水素製造装置への入力電力を制御する制御装置が提案されている。この制御装置によれば、水素システムから負荷へエネルギーを適切に供給することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
水素製造装置は、水の電気分解などの方法により水素を製造しているため、水素製造量を変更する際の変化速度が小さい。そのため、需給調整時間帯が短いと、制御装置が水素製造装置への入力電力を制御しても、水素製造量が需給調整時間帯内で計画通りに変化できない可能性がある。
【0006】
本発明の実施形態は、水素製造に関する電力需給調整の確実性を高めることが可能な制御装置、制御方法、およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態に係る制御装置は、受電電力が予め計画され、水素製造量が受電電力に応じて変化する水素製造装置を少なくとも含む水素システムを制御する。この制御装置は、受電電力の目標値が予め設定された需給調整時間帯の前の準備時間帯において、受電電力として水素製造装置へ入力される入力電力が、需給調整時間帯の開始時に目標値に一致するような制御指令値を算出する演算部と、演算部で算出された制御指令値を水素製造装置へ出力する制御指令部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本実施形態によれば、水素製造に関する電力需給調整の確実性を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係る水素製造管理システムの一構成例を示すブロック図である。
【
図2】第1実施形態に係る制御装置の処理手順を示すフローチャートである。
【
図3】第1実施形態に係る演算部の構成を示すブロック図である。
【
図4】(a)は、比較例に係る水素製造量の経時的な変化の一例を示す図であり、(b)は、比較例に係る受電電力の経時的な変化の一例を示す図である。
【
図5】(a)は、第1実施形態に係る水素製造量の経時的な変化の一例を示す図であり、(b)は、第1実施形態に係る受電電力の経時的な変化の一例を示す図である。
【
図6】(a)は、変形例に係る水素製造量の経時的な変化の一例を示す図であり、(b)は、変形例に係る受電電力の経時的な変化の一例を示す図である。
【
図7】第2実施形態に係る制御装置の一構成例を示すブロック図である。
【
図8】第2実施形態に係る制御装置の処理手順を示すフローチャートである。
【
図9】第3実施形態に係る水素製造管理システムの一構成例を示すブロック図である。
【
図10】第3実施形態に係る演算部の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。本実施形態は、本発明を限定するものではない。
【0011】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る水素製造管理システムの一構成例を示すブロック図である。
図1に示す水素製造管理システムは、水素システム1と、電力系統2と、エネルギー管理システム3と、制御装置4と、水素負荷5と、を備える。
【0012】
水素システム1は、発電装置11と、水素製造装置12と、水素貯蔵装置13と、を含む。本実施形態では、発電装置11は、再生可能なエネルギーで発電する。発電装置11には、例えば、太陽光発電(Photovoltaics)装置や風力発電装置を適用できる。発電装置11で発電された電力は、水素製造装置12へ供給される。
【0013】
水素製造装置12は、発電装置11から供給された電力と、電力系統2から供給された電力と、を受電して水素を製造する。電力系統2は、電力会社が管理する送配電網である。また、水素製造装置12は、製造した水素を水素貯蔵装置13に貯蔵する。
【0014】
水素貯蔵装置13は、貯蔵された水素を水素負荷5へ供給する。水素負荷5は、燃料電池発電装置や、燃料電池自動車などへの水素供給装置などである。
【0015】
エネルギー管理システム3は、水素システム1の運転計画を作成する。制御装置4は、エネルギー管理システム3で作成された運転計画に基づいて水素システム1を制御する。
【0016】
制御装置4は、インターフェース部41と、演算部42と、制御指令部43と、を含む。インターフェース部41は、水素システム1およびエネルギー管理システム3から種々の信号を受信する。演算部42は、インターフェース部41で受信された信号に基づいて、制御指令値、具体的には水素製造装置12への入力電力の指示値を算出する。制御指令部43は、演算部42で算出された制御指令値に基づいて水素製造装置12を制御する。
【0017】
図2は、第1実施形態に係る制御装置4の処理手順を示すフローチャートである。
図2を参照して、制御装置4の動作について説明する。
【0018】
まず、インターフェース部41が、水素システム1から制御データを示す信号を受信するとともに、エネルギー管理システム3から水素システム1の運転計画に関連する計画データを示す信号を受信する(ステップS101)。ステップS101では、インターフェース部41は、受信したこれらの信号を演算部42へ送信する。
【0019】
本実施形態では、制御データは、電力系統2からの受電電力と、発電装置11で発電されたPV発電電力と、水素製造装置12への入力電力と、水素製造装置12で実際に製造された水素製造量と、水素貯蔵装置13の消費電力と、を含む。一方、計画データは、水素製造装置12の水素製造量および受電電力量の各々の計画値と、発電装置11におけるPV発電量の予測値と、水素の需給を調整する需給調整時間帯と、を含む。
【0020】
次に、演算部42は、インターフェース部41から受信した信号に基づいて、制御指令値を算出する(ステップS102)。制御指令値の算出方法は、時間帯によって異なる。ここで、
図3を参照して、演算部42の構成を説明しつつ、ステップS102を詳しく説明する。
【0021】
図3は、第1実施形態に係る演算部42の構成を示すブロック図である。
図3に示す演算部42は、スイッチ421と、減算器422、423と、積分回路424、425と、第1制御回路426と、第2制御回路427と、第3制御回路428と、加算器429と、を有する。
【0022】
演算部42では、スイッチ421が、需給調整時間帯か否かを示す需給調整時間信号に応じて演算処理を切り替える。すなわち、需給調整時間帯か否かによって、演算部42の処理内容が異なる。
【0023】
需給調整時間信号が需給調整時間帯でない非需給調整時間帯であることを示す場合、スイッチ421は、減算器422および積分回路424を第1制御回路426に接続する。これにより、減算器422が、エネルギー管理システム3から取得した水素製造量計画値と、水素システム1から取得した水素製造装置12の水素製造量との差を算出する。続いて、積分回路424が、減算器422で算出された差を積分する。続いて、第1制御回路426が、この差をゼロにするように、例えばPI(Proportional Integral)制御を行う。その結果、水素製造量計画値に対応する入力電力の指示値が、制御指令値として算出される。
【0024】
また、需給調整時間信号が需給調整時間帯であることを示す場合、スイッチ421は、減算器423および積分回路425を第1制御回路426へ接続する。これにより、減算器423が、エネルギー管理システム3から取得した受電電力量計画値と、水素システム1から取得した受電電力との差を算出する。続いて、積分回路425が、減算器423で算出された差を積分する。続いて、第1制御回路426が、この差をゼロにするように、例えばPI制御を行う。その結果、受電電力量計画値に対応する入力電力の指示値が、制御指令値として算出される。
【0025】
さらに、本実施形態では、需給調整時間帯が、エネルギー管理システム3によって、30分ごとに予め決められているので、演算部42は、需給調整時間信号に基づいて、需給調整時間帯の前の時間帯である準備時間帯を事前に把握することができる。準備時間帯内において、後述する制御開始時刻になると、スイッチ421が、減算器423および積分回路425を第1制御回路426へ接続するとともに、第2制御回路427が駆動する。
【0026】
第2制御回路427は、減算器423で算出された差に基づいて、需給調整時間帯の開始時に、受電電力として水素製造装置12に入力される入力電力が、需給調整時間帯における受電電力量計画値である目標値に一致するようにフィードフォワード制御を行う。第2制御回路427の出力値は、加算器429で第1制御回路426の出力値と加算される。その後、加算器429の加算値が、制御指令値として算出される。
【0027】
第3制御回路428は、発電装置11で発電された電力が電力系統2へ流れる逆潮流を防止するための回路である。第3制御回路428は、時間帯に関わらず、水素製造装置12の受電電力としきい値を比較する。受電電力がしきい値よりも小さくなると、第3制御回路428の出力値が増加する。第3制御回路428の出力値は加算器429で増加され、これにより、水素製造装置12への入力電力を増加させる制御指令値が算出される。水素製造装置12への入力電力が増えることによって、発電装置11の出力電力が、水素製造装置12でより多く消費されるので、逆潮流を防止することができる。
【0028】
なお、需給調整時間帯における演算部42による制御は、需給調整時間帯に限らず、需給調整時間帯における目標値を設定するためのベースライン計算時間帯に行ってもよい。エネルギー管理システム3によって、ベースライン計算時間帯は、例えば、需給調整を行う日の1日前または1週間前の需給調整時間帯と同じ時間帯に設定される。ベースライン計算時間帯になると、スイッチ421が、減算器423および積分回路425を第1制御回路426へ接続する。その後、受電電力が計画値に一致するように、制御指令値が算出される。
【0029】
上述したステップS102で算出された制御指令値は、制御指令部43によって、水素製造装置12へ出力される(ステップS103)。水素製造装置12は、制御指令部43からの制御指令値に基づいて水素を製造する。その後、所定の終了条件を満たすまで、制御装置4は、上述したステップS101~S103の動作を繰り返す(ステップS104)。制御装置4の動作終了の条件は、例えばエネルギー管理システム3によって設定されている。
【0030】
以下、需給調整の制御方法について、比較例との違いを説明する。
図4(a)は、比較例に係る水素製造量の経時的な変化の一例を示す図である。
図4(b)は、比較例に係る受電電力の経時的な変化の一例を示す図である。
【0031】
図4(a)および
図4(b)に示すように、非需給調整時間帯では、実際の水素製造量を計画値Hdr1に一致させ、受電電力、すなわち入力電力を計画値Pdr1に一致させる制御を行う。一方、需給調整時間帯では、実際の水素製造量を目標値Hdr2に一致させ、受電電力を目標値Pdr2に一致させる制御を行う。
【0032】
しかし、
図4(b)に示すように、比較例では、需給調整時間帯の開始時刻T1に受電電力を計画値Pdr1から目標値Pdr2へ低下させる制御を開始する。この場合、
図4(a)に示すように、水素製造量は、受電電力の変化速度に応じて低下する。そのため、需給調整時間帯内で、実際の水素製造量が目標値Hdr2を超え、水素余剰状態となる。
【0033】
また、
図4(a)に示すように、需給調整時間帯の終了時刻T2を経過すると非需給調整時間帯に切り替わるので、水素製造量を計画値Hdr1に一致させる制御が開始される。需給調整時間帯から非需給調整時間帯に切り替わった直後では、水素製造量が目標値Hdr2よりも少ない水素不足状態となっているので、目標値Hdr2との誤差を減らす制御を行う。その結果、水素製造量が目標値Hdr2を超えるオーバーシュートの値が大きくなって、制御性能が低下するおそれがある。
【0034】
一方、
図5(a)は、本実施形態に係る水素製造量の経時的な変化の一例を示す図である。
図5(b)は、本実施形態に係る受電電力の経時的な変化の一例を示す図である。
【0035】
図5(b)に示すように、本実施形態では、準備時間帯の中で制御開始時刻Tsになると、第2制御回路427が、水素製造装置12の受電電力を目標値に一致させるフィードフォワード制御を開始する。
【0036】
制御開始時刻Tsは、準備時間帯の開始時刻T0における受電電力P(kW)と、需給調整時間帯における受電電力の目標値Pdr2(kW)と、水素製造装置12の最大入力電力変化率R(kW/分)と、を用いて下記の式(1)、(2)により計算される。なお、下記の式(2)では、受電電力Pの代わりに、非需給調整時間帯における計画値Pdr1を用いてもよい。
Ts=T1-ΔT1 (1)
ΔT1=(P-Pdr2)/R (2)
【0037】
制御開始時刻Tsになると、スイッチ421が切り替わって、第1制御回路426によるフィードバック制御および第2制御回路427によるフィードフォワード制御によって、受電電力は水素製造装置12の出力変化速度に従って低下する。その結果、需給調整時間帯の開始時刻T1には、受電電力は目標値Pdr2に一致する。
【0038】
需給調整時間帯では、第1制御回路426によるフィードバック制御によって、受電電力が目標値Pdr2と一致した状態を維持するように、制御指令値が算出される。
【0039】
その後、需給調整時間帯の終了時刻T2を経過すると、水素製造量を計画値Hdr1に一致させる制御に切り替わる。需給調整時間帯から非需給調整時間帯に切り替わった直後では、水素製造量が目標値Hdr2よりも少ない水素不足状態となっているので、目標値Hdr2との誤差を減らす制御を行う。ただし、本実施形態では、需給調整時間帯における水素製造量は、目標値Hdr2に一致しているので、目標値Hdr2との誤差は、上述した比較例に比べて小さい。そのため、オーバーシュートの値も小さくなり、制御性能を向上させることができる。
【0040】
以上説明した本実施形態によれば、需給調整時間帯の前の準備時間帯に、前もって受電電力を調整する。これにより、需給調整時間帯の開始時刻には、受電電力が目標値に一致している。そのため、水素製造装置12の入力電力に対する応答速度に関わらず、需給調整を確実に行うことが可能となる。
【0041】
また、需給調整時間帯が終了すると、水素製造量を計画値に一致させる制御を行うため、水素負荷に対して確実に水素供給を行うことができる。
【0042】
さらに、受電電力がしきい値よりも小さくなると、水素製造装置12への入力電力を増加させる制御を行う。これにより、発電装置11で発電された電力を、逆潮流させることなく有効に活用することができる。
【0043】
(変形例)
以下、本変形例について説明する。本変形例は、準備時間帯における受電電力の制御方法が第1実施形態と異なる。
【0044】
図6(a)は、変形例に係る水素製造量の経時的な変化の一例を示す図である。
図6(b)は、変形例に係る受電電力の経時的な変化の一例を示す図である。
【0045】
上述した第1実施形態では、制御開始時刻Tsから需給調整時間帯の開始時刻T1まで受電電力を低下させるので、水素製造量が計画値Hdr1よりも小さくなる。そのため、水素貯蔵装置13に貯蔵される水素が不足する可能性がある。
【0046】
そこで、本変形例では、準備時間帯において、制御装置4が水素の不足を補う制御を行う。この制御では、水素不足量と等しい水素余剰量を発生させるために、制御開始時刻Tsは、下記の式(3)、(4)によって算出される。
Ts=T1-ΔT1-ΔT2 (3)
ΔT2=√2ΔT1 (4)
【0047】
制御開始時刻TsからΔT2/2経過するまでの時間帯において、制御指令部43は、受電電力を最大入力電力変化率で目標値Pdr3まで増加させる。その後、制御指令部43は、需給調整時間帯の開始時刻T1になるまで、受電電力を最大入力電力変化率で目標値Pdr2まで減少させる。需給調整時間帯以降は、第1実施形態と同様の制御が行われる。
【0048】
以上説明した本変形例によれば、第1実施形態と同様に、準備時間帯に水素製造装置12の受電電力を調整することによって、需給調整時間帯の開始時刻に受電電力を目標値に一致させている。そのため、水素製造装置12の需給調整を確実に行うことが可能となる。
【0049】
さらに、本変形例では、準備時間帯で水素を余剰に製造している。これにより、準備時間帯で発生する水素不足を解消することも可能となる。
【0050】
(第2実施形態)
以下、
図7、8を参照して第2実施形態に係る制御装置を説明する。なお第1実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0051】
図7は、第2実施形態に係る制御装置40の一構成例を示すブロック図である。制御装置40は、第1実施形態の制御装置4の構成要素に加えて、記憶部44を含む。また、制御装置40は、第1実施形態の演算部42に替えて、演算部45を含む。
【0052】
記憶部44は、インターフェース部41で受信されたデータ、水素製造装置12における受電電力と水素製造量との相関関係を示すモデル、および水素製造装置12で実際に製造された水素製造量の実績データ等の種々のデータを記憶する。記憶部44は、例えば半導体メモリなどの記憶装置で構成される。また、演算部45は、記憶部44に記憶された信号およびモデルに基づいて、制御指令値を演算する。
【0053】
図8は、第2実施形態に係る制御装置40の処理手順を示すフローチャートである。
図8を参照して制御装置40の動作について説明する。
【0054】
まず、第1実施形態と同様に、インターフェース部41が、水素システム1から制御に関連する制御データを示す信号を受信するとともに、エネルギー管理システム3から水素システム1の運転計画に関連する計画データを示す信号を受信する(ステップS201)。インターフェース部41で受信されたデータは、記憶部44に保存される(ステップS202)。
【0055】
次に、演算部45は、記憶部44に記憶されたモデルを推定する必要があるか否か判定する(ステップS203)。このモデルは、上述したように、水素製造装置12における受電電力と水素製造量との相関関係を示す。この相関関係は、水素製造装置12の経年劣化や交換を起因として変動する可能性がある。
【0056】
そこで、本実施形態では、例えば、水素製造装置12の稼働時間が基準値を超えている場合、演算部45は、記憶部44に記憶されている水素製造装置12の実績データを用いてモデルを推定する(ステップS204)。
【0057】
次に、演算部45は、推定したモデルの更新が必要であるか否かを判定する(ステップS205)。本実施形態では、例えば、推定したモデルと実績データとの差が許容範囲外である場合、演算部45は、記憶部44に記憶されたモデルを更新する(ステップS206)。
【0058】
次に、第1実施形態と同様に、演算部45は、非需給調整時間帯、準備時間帯、および需給調整時間帯の各々において、制御指令値を算出する(ステップS207)。算出された制御指令値は、制御指令部43によって、水素製造装置12へ出力される(ステップS208)。その後、所定の終了条件を満たすまで、制御装置40は、上述したステップS201~S208の動作を繰り返す(ステップS209)。
【0059】
以上説明した本実施形態によれば、準備時間帯に、記憶部44に記憶されたデータを用いて受電電力を調整することによって、需給調整時間帯の開始時刻に受電電力を目標値に一致させている。そのため、水素製造装置12の入力電力に対する応答速度に関わらず、需給調整を確実に行うことが可能となる。
【0060】
さらに、本実施形態では、受電電力の調整に用いるモデルが、実績データに基づいて推定され、更新される。これにより、水素製造装置12の交換や経年劣化に対して精度良く制御することができる。
【0061】
(第3実施形態)
以下、
図9~
図11を参照して第3実施形態に係る制御装置を説明する。なお、第1実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0062】
図9は、第3実施形態に係る水素製造管理システムの一構成例を示すブロック図である。
図9に示す水素製造管理システムは、水素システム10と、電力系統2と、エネルギー管理システム30と、制御装置400と、水素負荷5と、熱負荷6と、を備える。
【0063】
水素システム10は、第1実施形態に係る水素システム1(
図1参照)の構成に加えて、燃料電池発電装置14を含む。燃料電池発電装置14は、水素貯蔵装置13に貯蔵された水素から、電力と熱を製造する。この電力は、発電装置11で発電された電力と、電力系統2からの電力とともに、水素製造装置12に供給され、水素を製造するために用いられる。また、燃料電池発電装置14で製造された熱は、熱負荷6に供給される。熱負荷6は、給湯負荷や、温熱負荷である。
【0064】
エネルギー管理システム30は、水素システム10の運転計画を作成する。制御装置400は、エネルギー管理システム3で作成された運転計画に基づいて水素システム10を制御する。
【0065】
制御装置400は、
図9に示すように、インターフェース部401と、演算部402と、制御指令部43に替えて制御指令部403と、を含む。インターフェース部401は、水素システム10およびエネルギー管理システム30から信号を受信する。
【0066】
演算部402は、その信号に基づいて水素製造装置12および燃料電池発電装置14の制御指令値をそれぞれ算出する。水素製造装置12への制御指令値は、入力電力の指示値を示す。燃料電池発電装置14への制御指令値は、発電の指示値を示す。制御指令部403は、演算部402で算出された制御指令値に基づいて、水素製造装置12および燃料電池発電装置14を個別に制御する。
【0067】
以下、制御装置400の動作について説明する。制御装置400は、第1実施形態に係る制御装置4と同様のフローチャート(
図2参照)に従って動作する。ここでは、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0068】
本実施形態のステップS101では、水素システム10からインターフェース部401に提供される制御データは、上述した第1実施形態のデータに加えて、燃料電池発電装置14の実際の発電量と、燃料電池発電装置14の燃料消費量と、を含む。また、エネルギー管理システム30からインターフェース部401に提供される計画データは、上述した第1実施形態のデータに加えて、燃料電池発電装置14の発電量の計画値を含む。
【0069】
ステップS102では、演算部402は、インターフェース部401から受信した信号に基づいて、水素製造装置12および燃料電池発電装置14の制御指令値をそれぞれ算出する。ここで、
図10を参照して、演算部402の構成を説明しつつ、本実施形態のステップS102を詳しく説明する。
【0070】
図10は、第3実施形態に係る演算部402の構成を示すブロック図である。
図10に示す演算部402は、第1実施形態に係る演算部42の構成(
図3参照)に加えて、スイッチ431と、減算器432と、第4制御回路433と、第5制御回路434と、第6制御回路435と、加算器436と、を有する。
【0071】
非需給調整時間帯、準備時間帯、および需給調整時間帯において、演算部402による水素製造装置12の制御動作については、第1実施形態と同様であるため説明を省略する。ここでは、演算部402が燃料電池発電装置14の発電量を制御する動作について説明する。
【0072】
非需給調整時間帯では、スイッチ431は、
図10に示すように減算器432を第4制御回路433に接続する。これにより、減算器432が、燃料電池発電装置14の発電量計画値と、水素システム10から取得した燃料電池発電装置14の発電量との差を算出する。続いて、第4制御回路433が、この差をゼロにするように、フィードバック制御する。
【0073】
また、需給調整時間帯では、スイッチ431は、積分回路425を第4制御回路433へ接続する。第4制御回路433は、水素製造装置12の受電電力を計画値に一致させるように燃料電池発電装置14の発電量をフィードバック制御する。
【0074】
また、準備時間帯には、第5制御回路434が、需給調整開始時刻に受電電力を目標値に一致させるように燃料電池の発電量をフィードフォワード制御する。
【0075】
さらに、時間帯に関わらず、第6制御回路435は、受電電力としきい値とを比較する。受電電力がしきい値よりも小さくなると、第6制御回路435の出力値が増加する。第6制御回路435の出力値は加算器436で加算され、燃料電池発電装置14の発電量を低減させる制御指令値が算出される。これにより、燃料電池発電装置14から水素製造装置12への電力供給が減少する一方で、発電装置11から水素製造装置12への電力供給が増加する。よって、逆潮流を防止することができる。
【0076】
以上説明した本実施形態によれば、第1実施形態と同様に、準備時間帯に前もって水素製造装置12の受電電力を調整することによって、この受電電力は需給調整時間帯の開始時刻に目標値に一致している。そのため、水素の需給調整を確実に行うことが可能となる。
【0077】
さらに本実施形態では、燃料電池発電装置14の発電量も制御することにより、デマンドレスポンスなどの需給調整時間帯の受電電力の制御範囲を拡大することができる。
【0078】
なお、上述した各実施形態において、演算部によって行われる処理の少なくとも一部は、ソフトウェアで構成してもよい。ソフトウェアで構成する場合には、一部の処理を実現するプログラムをフレキシブルディスクや磁気ディスク、光ディスク等の非一時的な記録媒体に収納し、コンピュータに読み込ませて実行させてもよい。記録媒体は、磁気ディスクや光ディスク等の着脱可能なものに限定されず、ソリッドステートドライブ装置、ハードディスク装置、メモリ素子などの固定型の記録媒体でもよい。
【0079】
以上、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例としてのみ提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図したものではない。本明細書で説明した新規な装置、方法、プログラム、及びシステムは、その他の様々な形態で実施することができる。また、本明細書で説明した装置、方法、プログラム、及びシステムの形態に対し、発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の省略、置換、変更を行うことができる。添付の特許請求の範囲およびこれに均等な範囲は、発明の範囲や要旨に含まれるこのような形態や変形例を含むように意図されている。