(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-15
(45)【発行日】2022-06-23
(54)【発明の名称】スパイクベース、スパイク金具、スパイクソールおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
A43B 13/26 20060101AFI20220616BHJP
A43B 13/16 20060101ALI20220616BHJP
A43C 15/02 20060101ALI20220616BHJP
【FI】
A43B13/26 A
A43B13/16
A43C15/02 101
(21)【出願番号】P 2020566424
(86)(22)【出願日】2020-01-15
(86)【国際出願番号】 JP2020001012
(87)【国際公開番号】W WO2020149290
(87)【国際公開日】2020-07-23
【審査請求日】2021-10-26
(31)【優先権主張番号】P 2019006814
(32)【優先日】2019-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000310
【氏名又は名称】株式会社アシックス
(74)【代理人】
【識別番号】110001265
【氏名又は名称】特許業務法人山村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷口 憲彦
(72)【発明者】
【氏名】小塚 祐也
(72)【発明者】
【氏名】高島 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】石川 達也
(72)【発明者】
【氏名】菱川 文智
(72)【発明者】
【氏名】大沼 輝昭
(72)【発明者】
【氏名】畠山 彩香
【審査官】程塚 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-102402(JP,A)
【文献】特開2012-050815(JP,A)
【文献】実開昭60-004206(JP,U)
【文献】実公昭50-035858(JP,Y1)
【文献】特開平11-089609(JP,A)
【文献】特開平08-131205(JP,A)
【文献】実公昭51-029137(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B 13/26
A43B 13/16
A43C 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製のソール本体1に一体に形成され、前記ソール本体1の天面1Fから下方に向かって先端11が突出し前記先端11と前記ソール本体1の天面1Fとで定義される凹面12を有する樹脂製のスパイクベース10と、
前記スパイクベース10の前記凹面12に密着した状態で前記凹面12に結合される凸面20を有し、前記凸面20を形成する金属製の被着部21から前記スパイクベース10の前記凹面12に沿って、かつ、前記スパイクベース10の前記先端11よりも前記下方に向かって突出し前記金属製の前記被着部21に一体に連なるスパイク部22を有する金属製のスパイク金具2とを備え、
ここにおいて、前記被着部21が椀状に形成されている、スパイクソール。
【請求項2】
請求項1において、前記スパイクベース10と前記スパイク金具2の被着部21とを締め付ける締付部を更に備える、スパイクソール。
【請求項3】
請求項2において、前記締付部は前記ソール本体1の天面1Fおよび前記スパイク部の被着部21を貫通するリベット5で形成されている、スパイクソール。
【請求項4】
請求項1において、前記被着部21は前記凹面12から前記スパイクベース10の樹脂が突出して係合する貫通孔23または係合凹部24を定義する、スパイクソール。
【請求項5】
請求項1において、前記被着部21の前記凸面20には前記スパイクベース10の樹脂が係合する係合凸部25が設けられている、スパイクソール。
【請求項6】
請求項1において、前記スパイク部22は前記椀状の被着部21に連なる複数の棘状突起で形成されている、スパイクソール。
【請求項7】
請求項6において、
前記棘状突起は先に向かってテーパ状に細くなる山型状である、スパイクソール。
【請求項8】
樹脂製のソール本体1に一体に形成され、前記ソール本体1の天面1Fから下方に向かって先端11が突出し前記先端11と前記ソール本体1の天面1Fとで定義される凹面12を有する樹脂製のスパイクベース10と、
前記スパイクベース10の前記凹面12に密着した状態で前記凹面12に結合される凸面20を有し、前記凸面20を形成する金属製の被着部21から前記スパイクベース10の前記凹面12に沿って、かつ、前記スパイクベース10の前記先端11よりも前記下方に向かって突出し前記金属製の前記被着部21に一体に連なるスパイク部22を有する金属製のスパイク金具2とを備え、
ここにおいて、前記スパイクベース10の先端11は壁状の壁部を形成し、
前記スパイク部22は前記壁部を覆うように形成されている、スパイクソール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスパイクベース、スパイク金具、スパイクソールおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、陸上用などのスパイクは基本的な構造として、硬質樹脂の中に埋め込まれる金属ベースと下に突出するピンとを備える。前記金属ベースはピンの保持力を確保する。ピンは路面に刺さることでロスなくアスリートの力を路面に伝える。したがって、かかる基本構造には剛性の大きいベースが必ず必要となる。
【0003】
しかし、スパイクソールのスムースな屈曲を考えた場合、剛性の大きい金属ベースの存在はスパイクソールのスムースな屈曲性能を妨げる要因となる。さらに、この金属ベース周辺のソールの強度を高めるためには金属ベース周辺の樹脂の量を増やす必要がある。これにより、屈曲性能はさらに低下し、また、スパイクソールの重量が増加し易い。
【0004】
そこで、競技等に必要なグリップ性を維持しつつ、軽量で、かつ、スムースな屈曲性能が期待できるスパイクソールとして、近年、ハニカム状のスパイクを備えたソールが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【0006】
しかし、前記先行技術ではスパイク金具の地面に刺さるスパイク部よりも、樹脂ソールに接合される部位が大きくなり、前記屈曲性能の向上が今一つ十分ではない場合がある。
また、樹脂ソールに接着されるスパイク金具の面が小さく、十分な接合力が得られない場合がある。
したがって、本発明の目的は、樹脂ソールの屈曲性能を更に向上できると共に、樹脂ソールとスパイク金具の接合力を高めることができるスパイクソールおよびその製造方法を提供することである。
【0007】
本スパイクソールは、樹脂製のソール本体1に一体に形成され、前記ソール本体1の天面1Fから下方に向かって先端11が突出し前記先端11と前記ソール本体1の天面1Fとで定義される凹面12を有する樹脂製のスパイクベース10と、
前記スパイクベース10の前記凹面12に密着した状態で前記凹面12に結合される凸面20を有し、前記凸面20を形成する金属製の被着部21から前記スパイクベース10の前記凹面12に沿って、かつ、前記スパイクベース10の前記先端11よりも前記下方に向かって突出し前記金属製の前記被着部21に一体に連なるスパイク部22を有する金属製のスパイク金具2とを備える。
【0008】
本発明のスパイクベースは、樹脂製のソール本体1に一体に形成され、前記ソール本体1の天面1Fから下方に向かって先端11が突出し前記先端11と前記ソール本体1の天面1Fとで定義される凹面12を有する。
【0009】
本発明のスパイク金具は、樹脂製のソール本体の凹面12に密着した状態で前記凹面12に結合される凸面20を有し、前記凸面20を形成する金属製の被着部21から前記凹面12に沿って、かつ、下方に向かって突出し前記金属製の前記被着部21に一体に連なるスパイク部22を有する。
【0010】
本発明によれば、スパイクベース10は天面1Fの一部である凹面12から下方に向かって突出する先端11を有する。したがって、前記突出した先端11はスパイクベース10の凹面12の表面積を大きくする。そのため、通常の平坦なスパイクベースの場合に比べ、コンパクトな接合面が得られる。
【0011】
一方、スパイク金具2の被着部21は前記凹面12に沿った凸面20を有する。したがって、前記凸面20は通常の平坦なスパイクベースに接合する場合よりもコンパクトで、かつ、表面積が大きい。
【0012】
このように互いに接合されるスパイクベース10とスパイク金具2の凸面20とは互いに大きな表面積で接合されているため、その結合力も大きくなる。一方、前記凹面12と凸面20はソール本体1における投影面積が小さくなるから、樹脂製のソール本体1の屈曲性能は向上するであろう。
【0013】
更に、スパイクベース10の先端11は、ソール本体1の天面1Fから下方に向かって突出しており、前記スパイク部22が地中に刺さった直後、前記先端11も地面に刺さるであろう。したがって、ソールが地面を掴む力が大きくなるであろう。
【0014】
本スパイクソールにおいて、好ましくは、前記スパイクベース10と前記スパイク金具2の被着部21とを締め付ける締付部を更に備える。より好ましくは、前記締付部は前記ソール本体1の天面1Fおよび前記スパイク部の被着部21を貫通するリベット5で形成されている。
これらの場合、スパイクベースの凹面12にスパイク金具2の凸面20が樹脂の結合力で被着している上に、更に、リベット等の締結部でスパイク金具2がソール本体1に締結されて、高い結合力が得られる。
【0015】
一方、本発明方法は、1つの局面において、樹脂製のソール本体1にスパイク金具2が固着されたスパイクソールの製造方法であって、
前記スパイク金具2が固着される前記ソール本体1の装着面が融解した状態で前記スパイク金具2の被着部21が前記装着面に密着する工程と、
前記装着面が固化して前記被着部21が前記装着面に結合される工程と、
前記結合後に、前記ソール本体と前記スパイク金具2とが締結部により互いに締結される工程とを備える。
【0016】
この1つの局面によれば、ソール本体1の装着面が融解した状態でスパイク金具2の被着部21が前記装着面に密着する。そのため、樹脂の強い結合力で被着部21が装着面に被着される。
更に、ソール本体1とスパイク金具2とが締結部により互いに締結され、前記装着面に対する被着部21の結合力が高まる。
【0017】
前記1つの局面において、好ましくは、前記締結部はリベットで構成され、前記締結部工程において、前記リベットが前記スパイク金具2の前記被着部21と前記ソール本体1の装着面とを貫通して、前記被着部21とソール本体1とを締め付ける。
このように、リベットでソール本体1とスパイク金具2とを締め付ける場合、締結工程を容易かつ確実に行うことができる。
【0018】
好ましくは、前記密着する工程は、
前記スパイク金具2をソール本体1の金型内に装填する工程と、
前記金型内に樹脂を供給して前記スパイク金具2と前記ソール本体1とを一体に成形する工程とを備える。
このようにインサート成形をした場合、スパイクソールを量産し易い。
【0019】
好ましくは、前記密着する工程は、
予め成形された前記ソール本体1の前記装着面を融解させた状態で前記被着部21を前記装着面に押し付けて密着させる。
この場合、成型後のスパイクベースに個別のスパイク金具2を装着でき、個々の着用者の好みに応じたスパイクソールを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施例1を示すスパイクソールの概略斜視図である。
【
図4】
図4Aはスパイク金具の実施例2を示す拡大斜視図、
図4Bはスパイクベースの部分拡大斜視図である。
【
図9】
図9(a)~(d)はスパイクソールの製造方法の他の例を示す成型工程の拡大断面図である。
【
図10】
図10(a)~(d)は同製造方法における締結工程の一例を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本スパイクソールにおいて、好ましくは、前記被着部21は前記凹面12から前記スパイクベース10の樹脂が突出して係合する貫通孔23または係合凹部24を定義する。
この場合、貫通孔23または係合凹部24にスパイクベース10の樹脂が係合して、スパイク金具2とスパイクベース10との結合力が増大するだろう。
また、スパイクベース10にスパイク金具2の被着部21を押し付けた際に、融解していた樹脂が前記貫通孔23や係合凹部24に逃げる。そのため、スパイクベース10の凹面12と被着部21の凸面20とが密着し易く、結合力が増大するだろう。
【0022】
好ましくは、前記被着部21の前記凸面20には前記スパイクベース10の樹脂が係合する係合凸部25が設けられている。
この場合、係合凸部25の係合により、結合力が増大するだろう。
【0023】
好ましくは、前記被着部21が椀状に形成されている。
椀状の被着部21はソール本体1の凹面12に密着する面積が増大させる。一方、ソール本体1における投影面積が小さくなり、スムースな屈曲性能が発揮される。
【0024】
好ましくは、スパイク部22は椀状の被着部21に連なる棘状突起で形成され、更に好ましくは前記棘状突起は先に向かってテーパ状に細くなる山型状である。
このような山型状の棘状突起は丸棒状のピンに比べ地面への貫入深さが小さくても、十分な係合力を発揮するだろう。したがって、スパイク部22が地中から抜ける際の抵抗が小さく、走力のロスが小さくなるであろう。
【0025】
好ましくは、前記被着部21は角筒状である。
角筒状の被着部21は鉛直軸のまわりに回転し難いだろう。
【0026】
好ましくは、前記スパイクベース10の先端11は壁状の壁部を形成し、
前記スパイク部22は前記壁部を覆うように形成されている。
壁部を覆うスパイク部22は肉厚になるため、柔らかい地面においても、係合力を発揮し易い。
好ましくは、前記被着部21が前記スパイク部22に継ぎ目なく一体に連なっている。
【0027】
他方、本製造方法は、別の局面において、樹脂製のソール本体1にスパイク金具2が固着されたスパイクソールの製造方法であって、
前記ソール本体1を成形する工程と、
前記スパイク金具2を生成する工程と、
前記ソール本体1の成形後に、前記スパイク金具2が固着される前記ソール本体1の装着面を融解させた状態で前記スパイク金具2の被着部21を前記装着面に押し付ける工程と、
前記装着面が固化して前記被着部21が前記凹面12に結合される工程とを備える。
【0028】
例えば前記スパイクソールは以下の方法により製造し得る。
より具体的な製造方法は、樹脂製のソール本体1に前記スパイク金具2が固着されたスパイクソールの製造方法であって、
前記ソール本体1を成形する工程と、
前記スパイク金具2を生成する工程と、
前記ソール本体1の成形後に、前記ソール本体1の前記凹面12を融解させた状態で前記スパイク金具2の被着部21を前記凹面12に押し付ける工程と、
前記凹面12が固化して前記被着部21が前記凹面12に結合される工程とを備える。
【0029】
1つの前記各実施態様または下記の実施例に関連して説明および/または図示した特徴は、1つまたはそれ以上の他の実施態様または他の実施例において同一または類似な形で、および/または他の実施態様または実施例の特徴と組み合わせて、または、その代わりに利用することができる。
【実施例】
【0030】
本発明は、添付の図面を参考にした以下の好適な実施例の説明からより明瞭に理解されるであろう。しかし、実施例および図面は単なる図示および説明のためのものであり、本発明の範囲を定めるために利用されるべきものではない。本発明の範囲は請求の範囲によってのみ定まる。添付図面において、複数の図面における同一の部品番号は、同一または相当部分を示す。
【0031】
以下、本発明の実施例が図面にしたがって説明される。
図1~
図3はスパイクソールの実施例1を示す。
【0032】
図1はスパイクソールを示す。
図1に示す本スパイクソールは、たとえば陸上競技のためのスパイクソールである。スパイクソールは非発泡体の樹脂成分を含む硬質のソール本体1と、前記ソール本体1に固着されたスパイク金具2とを備える。
【0033】
ソール本体1は、例えば強化繊維で強化されたFRP(繊維強化プラスチック)製であってもよい。前記ソール本体1は複数枚のプリプレグのシートと複数枚の接着剤のフィルムとが、互いに積層された積層体で形成されていてもよい。
また、前記ソール本体1は、テープ状にカットされた薄肉のプリプレグのシートを、繊維方向がランダムになるように積層された積層体で形成されていてもよい。
【0034】
また、前記ソール本体1は強化繊維を含む熱可塑性樹脂のプレートが成型されて形成されてもよい。かかる成型方法はPCT/JP16/88491に記述されており、ここにその記述のすべてが組み込まれる。
【0035】
熱可塑性樹脂の種類としては、例えば、熱可塑性のポリアミド樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリプロピレン樹脂などを用いることができる。また、樹脂成分は、1種単独で又は2種以上を併用できる。なお、強化繊維としては、例えばカーボン繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、ボロン繊維などを用いることができる。
【0036】
図2Dにおいて、前記ソール本体1には複数の突出した先端11が形成されている。この先端11は、ソール本体1の天面1Fから下方U(図では上方)の地面に向かって突出している。前記先端11と前記天面1Fとは凹面12を有するスパイクベース10を定義する。
【0037】
図2Aに示すように、前記スパイクベース10の少なくとも1つにはスパイク金具2が固着されている。
図3Cに示すように、スパイク金具2はスパイクベース10の凹面12に密着した状態で凹面12に結合された凸面20を有する。
【0038】
図3Cの前記凸面20は例えば椀状の被着部21に形成されている。前記スパイク金具2は金属製で前記被着部21と被着部21に継ぎ目なく一体に連なる複数のスパイク部22とを有する。
【0039】
前記各スパイク部22は、前記被着部21からスパイクベース10の凹面12に沿って、かつ、スパイクベース10の先端11よりも下方U(図では上方)に向かって突出している。本例においては、
図2Bの前記スパイク部22は3本以上設けられている。前記3本のスパイク部22は椀状の被着部21の周方向に互いに離間して配置されてもよい。
【0040】
本例において、スパイク部22は前記被着部21に連なる棘状突起で形成されていてもよい。すなわち、スパイク部22は先に向かってテーパ状に細くなる山型状であってもよい。
【0041】
図3Cに示すように、被着部21の凸面20にはスパイクベース10の樹脂が係合する凸部25が設けられていてもよい。この場合、スパイクベース10の凹面12には凸部25に係合する凹部が形成される。
【0042】
図3Dおよび
図3Eに示すように、被着部21には貫通孔23が設けられていてもよい。この貫通孔23には凹面12からスパイクベース10の樹脂が突出して係合する。
【0043】
つぎに、前記スパイクソールの製造方法の一例について説明する。
まず、
図1のソール本体1を一次成形すると共に、
図2Bおよび
図2Cのスパイク金具2を生成する。
図2Dは一次成形されたスパイクソールの天面1Fを示し、この状態では凹面12には凸部25(
図3C)に係合する凹部は設けられていない。
【0044】
つぎに、前記スパイク金具2を加熱して昇温させる。スパイク金具2の温度はソール本体1の樹脂が融解する温度以上に設定する。
【0045】
この後、前記昇温したスパイク金具2の凸面20を
図3A~
図3Cに示すように、凹面12に押し付ける。これにより、前記スパイク金具2が固着される前記ソール本体1の装着面(凹面12)を融解させた状態で、前記スパイク金具2の被着部21が前記装着面に押し付けられる。、
【0046】
つまり、前記ソール本体1の一次成形後に、昇温させたスパイク金具2により前記ソール本体1の前記凹面12を融解させた状態で前記スパイク金具2の被着部21を前記凹面12に押し付ける。その後、前記凹面12が固化して前記被着部21が前記凹面12に結合される。
【0047】
ここで、前記凸面20に形成された凸部25は凹面12の表面に食い込みながら
図3Cのように凹面12に入り込む。なお、被着部21の凸面20に形成された凸部25は、
図3A~
図3Cにおいて誇張されて大きく図示されており、実際には凸部25は小さいのが好ましいだろう。
【0048】
図3Cにおいて、金属との結合力が高いエポキシ樹脂などでソール本体1が形成されている場合、前記凸部25を設ける必要はないだろう。すなわち、被着部21の凸面20が滑らかな面であってもスパイク金具2はソール本体1の凹面12に十分な強度の接合力で結合されるであろう。
【0049】
また、被着部21に凸部25を設けずに被着部21の凸面20が粗面で形成されてもよい。凸面20が粗面である場合、滑らかな面に比べ結合力が高まるであろう。
【0050】
前記凹面12を融解させる別の方法としては、前記凹面12の表面に溶剤を塗布してもよい。、また、熱風や熱源で凹面12の表面を融解させてもよい。
【0051】
前記押し付ける工程において、前記凸部25などが前記凹面12に入り込む際に、凹面12付近の樹脂は押される。この押された樹脂のボリュームは、
図3Dまたは
図3Eのような貫通孔23から逃げることにより、前記被着部21の凸面20と凹面12とが隙間なく密着し易いだろう。その場合、高い係合力が期待できる。
【0052】
つぎに、前記スパイクソールの走行中の作用について説明する。
図3Cにおいて、走行によりソール本体1の接地面が接地する際には、スパイク金具2のスパイク部22が地面に刺さる。ついで、前記スパイクベース10の先端11も地面に刺さる。このように、スパイク部22が地面に刺さるだけでなく、スパイクベース10の先端11も地面に刺さるので、突出長さが短いスパイク部22であっても地面に対する大きな係合力が得られる。
【0053】
また、
図2Bおよび
図2Cのように、凸面20の周方向に互いに離れた複数本の棘状のスパイク部22は、地面に対する係合力が安定し易い。例えば、走行方向だけでなく、横方向にも高い係合力を発揮し、静止状態から加速し易いかもしれない。
【0054】
図4A~
図7Dは他の実施例を示す。
以下の実施例においては、主として、実施例1と異なる構造について説明する。
【0055】
図4Aおよび
図4Bは実施例2を示す。
図4Aに示すように、スパイク金具2の凸面20には係合凹部24および係合凸部25の双方が設けられている。前記係合凹部24は前記貫通孔23と同様に樹脂が逃げるためのもので、係合凹部24に入り込んだ樹脂には被着部21が係合する。
【0056】
本例のスパイク部22は2つの棘状突起と2つの刃物状突起を備えていてもよい。なお、
図4Bのスパイクベース10は前記スパイク金具2を結合する前(融解前)の状態で図示されている。
【0057】
図5A~
図5Dは実施例3を示す。
この例において、被着部21は角筒状である。
【0058】
本例においては、スパイクベース10の先端11を覆うようにスパイク部22が設けられている。また、係合凹部24および係合凸部25は角筒の周方向にループ状に連なっている。
【0059】
図6Aおよび
図6Bは実施例4を示す。
図6Aに示すスパイクベース10の先端11は壁状の壁部を形成する。
図6Aのスパイク部22は壁部である先端11を覆うように先端11に嵌り込む。
図6Bの被着部21には係合凹部24および係合凸部25が設けられていてもよい。
図6Aの凹面12に嵌る凸面20は断面台形状に形成されていてもよい。
【0060】
図7Aは実施例5を示す。
この例において、壁状の先端11は被着部21で覆われている。スパイクベース10は2つの凹面12を有する。
【0061】
図7Bおよび
図7Cは実施例6を示す。
これらの図に示すように、被着部21はスパイクベース10の凹面12に一部において凹面12に沿っていれば、残りの一部において凹面12に沿っていなくてもよい。
【0062】
ソール本体1の天面1Fは、ソール本体1の下面であって、被着部21の凸面20が結合される面である。なお、前記天面1Fにおいてソール本体1は他の部位よりも厚肉であってもよいが、
図7Cのように薄肉であってもよい。
【0063】
図7Dは実施例7を示す。
この図に示すように、スパイク金具2はスパイクベース10の先端11に外嵌していてもよい。
【0064】
図8Aおよび
図8Bは実施例8を示す。
これらの図に示すように、金属製の被着部21がスパイクベース10の凹面12に部分的に沿っていなくてもよい。
また、スパイク部22は、例えば1本のテーパ状の先端に向かって尖ったピンで形成され、前記凹面12に全く沿っていなくてもよい。
【0065】
これらの場合も、ソール本体1における凸面20の投影面積が凸面20とスパイクベース10の結合面積よりも小さくなる効果が得られる。
【0066】
図9および
図10は実施例9のスパイクソールおよびその製造方法を示す。
【0067】
図10(d)はスパイクソールの部分拡大断面図である。
この図に示すように、本例においても実施例1と同様に、樹脂製のスパイクベース10に金属製のスパイク金具2が被着している。
【0068】
すなわち、スパイクベース10は樹脂製のソール本体1(
図1)に一体に形成されている。このスパイクベース10はソール本体1の天面1Fから下方U(紙面の上方)に向かって先端11が突出し前記先端11と前記ソール本体1の天面1Fとで定義される凹面12を有する。
【0069】
前記スパイク金具2は被着部21と、これに一体に連なるスパイク部22を有する。前記被着部21はスパイクベース10の前記凹面12に密着した状態で凹面12に結合される凸面20を有する。前記スパイク部22は被着部21からスパイクベース10の前記凹面12に沿って、かつ、スパイクベース10の前記先端11よりも前記下方Uに向かって突出する。
【0070】
図10(d)の本例においては、更に、前記スパイクベース10と前記スパイク金具2の被着部21とを締め付ける締付部を備える。前記締付部は例えばソール本体1の天面1Fおよびスパイク部22の被着部21を貫通するリベット5で形成されている。
リベット5としては周知のブラインドリベット(Blind rivet)の他にハトメ様の中空のリベットや中実のリベットを採用することができる。
【0071】
図10(d)のブラインドリベット5は、ソール本体1に係合する頭部51と、被着部21に係合する変形部52との間で、スパイクベース10と被着部21とを締結する。
【0072】
つぎに、前記スパイクソールの製造方法について説明する。
【0073】
図9(a)に示すように、製造に先立って、第1および第2金型61,62を用意する。第1金型61にはスパイク金具2を装填するための装填部63が設けられている。
【0074】
本例の場合、スパイク金具2の被着部21には第1貫通孔2Hが設けられている。この第1貫通孔2Hは第1金型61の装填部63の先端の突部64に嵌る。この第1貫通孔2Hが第1金型61の前記突部64に嵌るように、スパイク金具2が第1金型61に装填される。
【0075】
一方、第1金型61と第2金型62との間には、ソール本体1を形成する樹脂材料19が供給(配置)される。なお、樹脂材料19は両金型61,62内で昇温される。
【0076】
その後、
図9(b)に示すように、両金型61,62が型締めされて、前記樹脂材料19(
図9(a))が両金型61,62のキャビィティ65の形状に合致した形状になる。この際、スパイク金具2の被着部21の凸面20に密着した形状の凹面12がスパイクベース10に形成される。
【0077】
一方、スパイクベース10には前記装填部63の突部64に合致した第2貫通孔1Hが形成される。この第2貫通孔1Hの位置は前記第1貫通孔2Hの位置に合致している。この型締時にソール本体1の装着面(凹面)12が融解した状態でスパイク金具2の被着部21が装着面12に密着する。
【0078】
前記型締後、
図9(c)のように、両金型61,62が型開きされ、スパイク金具2がスパイクベース10に一体に成型されたス
図9(d)のパイクソールの中間品3が得られる。この際、装着面12が固化して被着部21が装着面12に密着した状態で結合される。
【0079】
前記成型により、前記スパイクベース10に前記スパイク金具2が結合された後に、以下に説明するように、ソール本体1とスパイク金具2とがリベットにより互いに締結される。
【0080】
図10(a)に示すように、ソール本体1の第2貫通孔1Hとスパイク金具2の第1貫通孔2Hに変形前のブラインドリベット5Aを挿通する。このブラインドリベット5Aは中空のリベット5と心棒53とで構成されている。
【0081】
その後、
図10(b)の矢印のように前記心棒53を引き抜くことで、
図10(c)のように、中空のリベット5が変形する。これにより、
図10(d)のように、中空のリベット5の頭部51と、その反対側の先端の変形部52との間でソール本体1とスパイク金具2とが締結される。すなわち、リベット5はスパイク金具2の被着部21とソール本体1の装着面12とを貫通し、被着部21とソール本体1とを締め付ける。
【0082】
ところで、
図9(d)の中間品3は前記インサート成形ではなく、前記実施例1のように、予め個別に成形されたソール本体1とスパイク金具2を用いてもよい。この場合、前述のように、予め成形されたソール本体1の被装着面12にスパイク金具2を押し付けて密着させる。
【0083】
以上のとおり、図面を参照しながら好適な実施例を説明したが、当業者であれば、本明細書を見て、自明な範囲で種々の変更および修正を容易に想定するであろう。
たとえば、スパイク金具が前足部に加え後足部に設けられていてもよい。
また、スパイク金具は1つのみであってもよいし、複数であってもよい。
したがって、そのような変更および修正は請求の範囲から定まる本発明の範囲内のものと解釈される。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明のスパイクソールは陸上用競技用の他にフットボール、野球スパイク、防滑靴などの他のスパイクソールに利用できる。
【符号の説明】
【0085】
1:ソール本体 1F:天面 1H:第2貫通孔
10:スパイクベース 11:先端 12:凹面(装着面) 19:樹脂材料
2:スパイク金具 20:凸面 21:被着部 22:スパイク部 23:貫通孔
24:係合凹部 25:係合凸部 2H:第1貫通孔
3:中間品 5A:ブラインドリベット
5:リベット 51:頭部 52:変形部 53:心棒
61:第1金型 62:第2金型 63:装填部 64:突部 65:キャビィティ