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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-15
(45)【発行日】2022-06-23
(54)【発明の名称】流体移送装置
(51)【国際特許分類】
   F04C 2/22 20060101AFI20220616BHJP
   F04C 18/22 20060101ALI20220616BHJP
   F04C 11/00 20060101ALI20220616BHJP
   F04C 23/00 20060101ALI20220616BHJP
【FI】
F04C2/22
F04C18/22 Z
F04C11/00 C
F04C23/00 D
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2020573192
(86)(22)【出願日】2019-07-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-04
(86)【国際出願番号】 KR2019008145
(87)【国際公開番号】W WO2020009474
(87)【国際公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-01-29
(31)【優先権主張番号】10-2018-0077183
(32)【優先日】2018-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518445687
【氏名又は名称】韓国原子力研究院
【氏名又は名称原語表記】KOREA ATOMIC ENERGY RESEARCH INSTITUTE
【住所又は居所原語表記】111, Daedeok-daero 989beon-gil, Yuseong-gu, Daejeon 34057, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100087505
【氏名又は名称】西山 春之
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【弁理士】
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(74)【代理人】
【識別番号】100218604
【弁理士】
【氏名又は名称】池本 理絵
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】コウ,ヨングォン
(72)【発明者】
【氏名】クウォン,ヨンスン
(72)【発明者】
【氏名】ペク,ミンフン
(72)【発明者】
【氏名】イ,ジェグァン
【審査官】松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】特開昭48-052008(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0226480(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0167668(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 2/22
F04C 18/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エピトロコイド曲面状の流体圧縮空間を形成するロータハウジングと、
前記ロータハウジングの流体圧縮空間を複数の容積変動空間に区画するように前記ロータハウジングの流体圧縮空間内に配置され、その場で回転する回転軸に偏心結合されて前記流体圧縮空間内で偏心回転するロータと、
前記ロータハウジングの流体圧縮空間を覆うように形成され、中心に形成される回転軸貫通孔と、前記回転軸貫通孔を中心に互いに反対側に対称に形成される第1カバー流路及び第2カバー流路とを備えるロータハウジングカバーと、
を含み、
前記ロータハウジングカバーは、複数備えられ、互いに離隔して配置され、
前記ロータハウジングは、複数備えられ、隣接して配置される2つの前記ロータハウジングカバー間に1つずつ配置され、
前記ロータは、各前記ロータハウジングの流体圧縮空間内に1つずつ配置され、
前記ロータの配列方向は、前記回転軸に対して前記ロータの中心が向く方向から決定され、各前記ロータは、隣接する他の前記ロータとは異なる方向を向くように配列され
前記第1カバー流路及び前記第2カバー流路は、前記回転軸の延長方向に平行な方向において前記ロータの偏心回転範囲と重なる範囲内に配置され、前記第1カバー流路及び前記第2カバー流路の開放時に隣接して配置される2つの前記ロータハウジングの流体圧縮空間が連通するように前記ロータハウジングカバーを貫通し、隣接する2つの前記ロータハウジングの一方の流体圧縮空間から隣接する2つの前記ロータハウジングの他方の流体圧縮空間に流体を移送することを特徴とする流体移送装置。
【請求項2】
前記第1カバー流路と前記第2カバー流路とは、前記ロータハウジングカバーの平面上で、前記回転軸貫通孔を挟んで180゜の角度をなすように配置されることを特徴とする請求項1に記載の流体移送装置。
【請求項3】
前記ロータハウジングの配列方向は、前記エピトロコイド曲面が向く方向から決定され、前記ロータハウジング同士の配列方向は、規則性を有して繰り返され、
前記ロータハウジングカバーの配列方向は、前記回転軸貫通孔を中心とする前記第1カバー流路及び前記第2カバー流路の配置方向から決定され、前記ロータハウジングカバー同士の配列方向は、規則性を有して繰り返されることを特徴とする請求項1に記載の流体移送装置。
【請求項4】
前記ロータハウジングの数は、3つ以上であり、
前記ロータハウジングカバーの数は、前記ロータハウジングの数よりも1つ多く、
前記ロータハウジングカバーと前記ロータハウジングとは、交互に配置されることを特徴とする請求項3に記載の流体移送装置。
【請求項5】
前記ロータハウジングカバーの配列方向は、前記回転軸貫通孔を中心とする前記第1カバー流路及び前記第2カバー流路の配置方向から決定され、
前記ロータハウジングカバーの前記第1カバー流路及び前記第2カバー流路の配置方向は、隣接する他の前記ロータハウジングカバーの前記第1カバー流路及び前記第2カバー流路の配置方向に対して90゜の角度をなすように配列されることを特徴とする請求項1に記載の流体移送装置。
【請求項6】
前記ロータハウジングの配列方向は、前記エピトロコイド曲面が向く方向から決定され、
前記ロータハウジングは、全て同じ方向を向いて配列されるか、又は隣接する他の前記ロータハウジングに対して90゜の角度をなすように配列されることを特徴とする請求項1に記載の流体移送装置。
【請求項7】
前記ロータハウジングは、隣接する他の前記ロータハウジングに対して90゜の角度をなすように配列され、
前記ロータは、隣接する他の前記ロータに対して180゜の角度をなすように配列されることを特徴とする請求項6に記載の流体移送装置。
【請求項8】
前記ロータハウジングは、全て同じ方向を向いて配列され、
前記ロータは、隣接する他の前記ロータに対して90゜の角度をなすように配列されることを特徴とする請求項6に記載の流体移送装置。
【請求項9】
前記ロータハウジングは、前記エピトロコイド曲面に外接する位置に形成されるハウジング流路を備え、
前記ハウジング流路は、前記流体圧縮空間に連通するように形成され、前記回転軸の延長方向に平行な方向に延びて一側の前記ロータハウジングカバーと他側の前記ロータハウジングカバーとのいずれかに向けて開放されることを特徴とする請求項6に記載の流体移送装置。
【請求項10】
前記ハウジング流路は、
一側の前記ロータハウジングカバーに向けて開放される第1ハウジング流路と、
他側の前記ロータハウジングカバーに向けて開放される第2ハウジング流路と、
を含むことを特徴とする請求項9に記載の流体移送装置。
【請求項11】
前記第1ハウジング流路は、複数備えられ、前記回転軸を中心に互いに反対側に対称に形成され、
前記第2ハウジング流路は、複数備えられ、前記回転軸を中心に互いに反対側に対称に形成されることを特徴とする請求項10に記載の流体移送装置。
【請求項12】
いずれかの前記ロータハウジングを一側の前記ロータハウジングカバーから見たときの前記第1ハウジング流路の配列と、前記いずれかのロータハウジングを他側の前記ロータハウジングカバーから見たときの前記第2ハウジング流路の配列とは、同一であることを特徴とする請求項11に記載の流体移送装置。
【請求項13】
複数の前記ロータハウジングカバーのいずれかを挟んで、一側の前記ロータハウジングに形成されるハウジング流路及び他側の前記ロータハウジングに形成されるハウジング流路は、前記回転軸の延長方向に平行な方向において互いに重ならない位置にそれぞれ配置され、
前記第1カバー流路及び前記第2カバー流路は、前記一側のロータハウジングに形成される前記ハウジング流路と前記他側のロータハウジングに形成される前記ハウジング流路とを連結するように形成されることを特徴とする請求項9に記載の流体移送装置。
【請求項14】
前記ロータハウジングは、隣接する他の前記ロータハウジングに対して90゜の角度をなすように配列され、
前記第1ハウジング流路及び前記第2ハウジング流路は、それぞれ2つ備えられ、2つの前記第1ハウジング流路のいずれか一方から、前記エピトロコイド曲面に沿って、2つの前記第2ハウジング流路のいずれか一方までの距離を第1距離とし、2つの前記第2ハウジング流路の他方までの距離を第2距離とすると、前記第1距離と前記第2距離とのうち、前記エピトロコイド曲面の変曲点を通るのは、前記エピトロコイド曲面の変曲点を通らないのより長いことを特徴とする請求項10に記載の流体移送装置。
【請求項15】
前記第1カバー流路及び前記第2カバー流路は、前記ロータハウジングカバーの外径より小さい円周に沿って延び、前記エピトロコイド曲面の2つの変曲点のうち相対的に近いのを向く方向に延びることを特徴とする請求項14に記載の流体移送装置。
【請求項16】
前記ロータは、隣接する他の前記ロータに対して180゜の角度をなすように配列されることを特徴とする請求項14に記載の流体移送装置。
【請求項17】
前記ロータハウジングは、全て同じ方向を向いて配列され、
前記第1ハウジング流路及び前記第2ハウジング流路は、それぞれ2つ備えられ、2つの前記第1ハウジング流路のいずれか一方から、前記エピトロコイド曲面に沿って、2つの前記第2ハウジング流路のいずれか一方までの距離を第1距離とし、2つの前記第2ハウジング流路の他方までの距離を第2距離とすると、前記第1距離と前記第2距離とのうち、前記エピトロコイド曲面の変曲点を通るのは、前記エピトロコイド曲面の変曲点を通らないのより短いことを特徴とする請求項10に記載の流体移送装置。
【請求項18】
前記第1ハウジング流路及び前記第2ハウジング流路は、前記回転軸の延長方向に平行な方向において互いに重ならないように形成され、
前記第1ハウジング流路同士は、前記回転軸の延長方向に平行な方向において互いに重なるように形成され、
前記第2ハウジング流路同士は、前記回転軸の延長方向に平行な方向において互いに重なるように形成されることを特徴とする請求項17に記載の流体移送装置。
【請求項19】
前記第1カバー流路及び前記第2カバー流路は、前記ロータハウジングカバーの外径より小さい円周に沿って延び、前記エピトロコイド曲面の2つの変曲点のいずれかと前記ロータハウジングカバーの外径間を経由するように形成されることを特徴とする請求項17に記載の流体移送装置。
【請求項20】
前記ロータは、隣接する他の前記ロータに対して90゜の角度をなすように配列されることを特徴とする請求項17に記載の流体移送装置。
【請求項21】
いずれかの前記ロータを挟んで、一側の前記ロータと他側の前記ロータとは、180゜の角度をなすように配列されることを特徴とする請求項20に記載の流体移送装置。
【請求項22】
前記ロータは、前記ロータハウジングカバーに対向する面の縁部に沿って突出する突起部を備えることを特徴とする請求項9~請求項21のいずれか1つに記載の流体移送装置。
【請求項23】
前記ロータは、前記ロータハウジングカバーに対向する面から突出する突起部を備え、
前記突起部は、
前記ロータハウジングカバーに対向する面の縁部より小さい周面に沿って形成される第1突起部と、
前記第1突起部の頂点から前記ロータの頂点に向かって突出する第2突起部と、
を含むことを特徴とする請求項9~請求項21のいずれか1つに記載の流体移送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体を両方向に移送できる流体移送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(2016年9月1日登録)にロータリピストンポンプが開示されている。上記特許文献に開示されているロータリピストンポンプは、エピトロコイド状の内周面を有するロータハウジングを備え、ロータハウジングの内部空間でロータが偏心回転することによりロータハウジングの容積変動空間の圧縮及び膨張が繰り返し行われる。また、ロータリピストンポンプには、流入逆止弁及び排出逆止弁が取り付けられている。
【0003】
上記特許文献に開示されているロータリピストンポンプは、それ以前のピストンポンプに比べて相対的に高流量の流体を移送できるだけでなく、簡単な構造を有しながらも高い圧力を発生するという利点を有する。上記特許文献に開示されているロータリピストンポンプは、容積式ポンプ(positive displacement pump)であり、ロータハウジングとロータ間の気密性がポンプ性能に大きな影響を及ぼす非常に重要な要素である。
【0004】
しかし、ロータリピストンポンプは、圧力を発生するために、必須的に少なくとも1対の流入逆止弁及び1対の排出逆止弁を必要とする。ロータリピストンポンプは、簡単な構造を有するものの、2対の逆止弁により、スプリングの設置空間、流路の連結空間、逆止弁の板又はボールの設置空間などを必要とする。また、ロータリピストンポンプは、低騒音の利点を有するものの、逆止弁の繰り返し動作は微小騒音の発生原因となる。さらに、逆止弁を備えるロータリピストンポンプは、逆止弁の特性により、流体を一方向にのみ移送することができ、両方向には移送することができない。
【0005】
よって、そのような欠点を改善できるように、逆止弁を備えることなく、高流量、吸入(真空)及び加圧機能を維持できる構造の流体移送装置、並びに逆止弁を除くより簡単な構造で小型化と低騒音を実現し、流体を両方向に移送できる構造の流体移送装置の開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】韓国登録特許第10-1655160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、流体を両方向に移送できる構造の流体移送装置を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、広い設置空間、騒音の発生、メンテナンスの困難などの逆止弁の欠点を改善できる構造の流体移送装置を提供することにある。
【0009】
本発明のさらに他の目的は、流体(水、オイル、空気)を加圧する圧縮機能に加え、空気を吸入する真空機能を備える流体移送装置を提供することにある。
【0010】
本発明のさらに他の目的は、ロータ、ロータハウジング、ロータハウジングカバーの接触面に発生する摩擦を低減できる構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の一実施形態による流体移送装置は、エピトロコイド曲面状の流体圧縮空間を形成するロータハウジングと、前記ロータハウジングの流体圧縮空間を複数の容積変動空間に区画するように前記ロータハウジングの流体圧縮空間内に配置され、その場で回転する回転軸に偏心結合されて前記流体圧縮空間内で偏心回転するロータと、前記ロータハウジングの流体圧縮空間を覆うように形成され、中心に形成される回転軸貫通孔と、前記回転軸貫通孔を中心に互いに反対側に対称に形成される第1カバー流路及び第2カバー流路とを備えるロータハウジングカバーとを含み、前記ロータハウジングカバーは、複数備えられ、互いに離隔して配置され、前記ロータハウジングは、複数備えられ、隣接して配置される2つの前記ロータハウジングカバー間に1つずつ配置され、前記ロータは、各前記ロータハウジングの流体圧縮空間内に1つずつ配置され、前記ロータの配列方向は、前記回転軸に対して前記ロータの中心が向く方向から決定され、各前記ロータは、隣接する他の前記ロータとは異なる方向を向くように配列される。
【0012】
前記第1カバー流路と前記第2カバー流路とは、前記ロータハウジングカバーの平面上で、前記回転軸貫通孔を挟んで180゜の角度をなすように配置される。
【0013】
前記ロータハウジングの配列方向は、前記エピトロコイド曲面が向く方向から決定され、前記ロータハウジング同士の配列方向は、規則性を有して繰り返され、前記ロータハウジングカバーの配列方向は、前記回転軸貫通孔を中心とする前記第1カバー流路及び前記第2カバー流路の配置方向から決定され、前記ロータハウジングカバー同士の配列方向は、規則性を有して繰り返される。
【0014】
前記ロータハウジングの数(個数)は、3つ以上であり、前記ロータハウジングカバーの数(個数)は、前記ロータハウジングの数(個数)よりも1つ多く、前記ロータハウジングカバーと前記ロータハウジングとは、交互に配置される。
【0015】
前記ロータハウジングカバーの配列方向は、前記回転軸貫通孔を中心とする前記第1カバー流路及び前記第2カバー流路の配置方向から決定され、前記ロータハウジングカバーは、隣接する他の前記ロータハウジングカバーに対して90゜の角度をなすように配列される。
【0016】
前記第1カバー流路及び前記第2カバー流路は、前記回転軸の延長方向に平行な方向において前記ロータの偏心回転範囲と重なる範囲内に配置され、開放時に隣接して配置される2つの前記ロータハウジングの流体圧縮空間が連通するように前記ロータハウジングカバーを貫通する。
【0017】
前記ロータハウジングの配列方向は、前記エピトロコイド曲面が向く方向から決定され、前記ロータハウジングは、全て同じ方向を向いて配列されるか、又は隣接する他の前記ロータハウジングに対して90゜の角度をなすように配列される。
【0018】
前記ロータハウジングは、隣接する他の前記ロータハウジングに対して90゜の角度をなすように配列され、前記ロータは、隣接する他の前記ロータに対して180゜の角度をなすように配列される。
【0019】
前記ロータハウジングは、全て同じ方向を向いて配列され、前記ロータは、隣接する他の前記ロータに対して90゜の角度をなすように配列される。
【0020】
前記ロータハウジングは、前記エピトロコイド曲面に外接する位置に形成されるハウジング流路を備え、前記ハウジング流路は、前記流体圧縮空間に連通するように形成され、前記回転軸の延長方向に平行な方向に延びて一側の前記ロータハウジングカバーと他側の前記ロータハウジングカバーとのいずれかに向けて開放される。
【0021】
前記ハウジング流路は、一側の前記ロータハウジングカバーに向けて開放される第1ハウジング流路と、他側の前記ロータハウジングカバーに向けて開放される第2ハウジング流路とを含む。
【0022】
前記第1ハウジング流路は、複数備えられ、前記回転軸を中心に互いに反対側に対称に形成され、前記第2ハウジング流路は、複数備えられ、前記回転軸を中心に互いに反対側に対称に形成される。
【0023】
いずれかの前記ロータハウジングを一側の前記ロータハウジングカバーから見たときの前記第1ハウジング流路の配列と、前記いずれかのロータハウジングを他側の前記ロータハウジングカバーから見たときの前記第2ハウジング流路の配列とは、同一である。
【0024】
一側の前記ロータハウジングに形成されるハウジング流路及び他側の前記ロータハウジングに形成されるハウジング流路は、前記回転軸の延長方向に平行な方向において互いに重ならない位置にそれぞれ配置され、前記第1カバー流路及び前記第2カバー流路は、前記一側のロータハウジングに形成される前記ハウジング流路と前記他側のロータハウジングに形成される前記ハウジング流路とを連結するように形成される。
【0025】
前記ロータハウジングは、隣接する他の前記ロータハウジングに対して90゜の角度をなすように配列され、前記第1ハウジング流路及び前記第2ハウジング流路は、それぞれ2つ備えられ、2つの前記第1ハウジング流路のいずれか一方から、前記エピトロコイド曲面に沿って、2つの前記第2ハウジング流路のいずれか一方までの距離を第1距離とし、2つの前記第2ハウジング流路の他方までの距離を第2距離とすると、前記第1距離と前記第2距離とのうち、前記エピトロコイド曲面の変曲点を通るのは、前記エピトロコイド曲面の変曲点を通らないのより長い。
【0026】
前記第1カバー流路及び前記第2カバー流路は、前記ロータハウジングカバーの外径より小さい円周に沿って延び、前記エピトロコイド曲面の2つの変曲点のうち相対的に近いのを向く方向に延びる。
【0027】
前記ロータは、隣接する他の前記ロータに対して180゜の角度をなすように配列される。
【0028】
前記ロータハウジングは、全て同じ方向を向いて配列され、前記第1ハウジング流路及び前記第2ハウジング流路は、それぞれ2つ備えられ、2つの前記第1ハウジング流路のいずれか一方から、前記エピトロコイド曲面に沿って、2つの前記第2ハウジング流路のいずれか一方までの距離を第1距離とし、2つの前記第2ハウジング流路の他方までの距離を第2距離とすると、前記第1距離と前記第2距離とのうち、前記エピトロコイド曲面の変曲点を通るのは、前記エピトロコイド曲面の変曲点を通らないのより短い。
【0029】
前記第1ハウジング流路及び前記第2ハウジング流路は、前記回転軸の延長方向に平行な方向において互いに重ならないように形成され、前記第1ハウジング流路同士は、前記回転軸の延長方向に平行な方向において互いに重なるように形成され、前記第2ハウジング流路同士は、前記回転軸の延長方向に平行な方向において互いに重なるように形成される。
【0030】
前記第1カバー流路及び前記第2カバー流路は、前記ロータハウジングカバーの外径より小さい円周に沿って延び、前記エピトロコイド曲面の2つの変曲点のいずれかと前記ロータハウジングカバーの外径間を経由するように形成される。
【0031】
前記ロータは、隣接する他の前記ロータに対して90゜の角度をなすように配列される。
【0032】
いずれかの前記ロータを挟んで、一側の前記ロータと他側の前記ロータとは、180゜の角度をなすように配列される。
【0033】
前記ロータは、前記ロータハウジングカバーに対向する面の縁部に沿って突出する突起部を備える。
【0034】
前記ロータは、前記ロータハウジングカバーに対向する面から突出する突起部を備え、前記突起部は、前記ロータハウジングカバーに対向する面の縁部より小さい周面に沿って形成される第1突起部と、前記第1突起部の頂点から前記ロータの頂点に向かって突出する第2突起部とを含む。
【発明の効果】
【0035】
上記構成の本発明の流体移送装置は、規則性を有して交互に配置されるロータハウジング及びロータハウジングカバーを含むので、逆止弁を備えなくても動作することができる。よって、本発明の流体移送装置は、流体を両方向に移送することができる。また、本発明においては、逆止弁に必要な設置空間、逆止弁の設置による騒音問題、逆止弁のメンテナンス問題、逆止弁の開閉時に発生する漏水(漏油)問題などを解決することができる。
【0036】
さらに、本発明においては、従来のロータリ真空ポンプより迅速に高い真空度に到達することができる。よって、本発明の流体移送装置は、真空、自吸、加圧機能を備えた万能ポンプであって、産業用だけでなく、一般ポンプとしても非常に活用性が高い。例えば、本発明の流体移送装置は、流体移送自吸式ポンプ、空気吸入水封式ポンプ、空気圧縮機兼用真空掃除機、小型空気圧縮機、噴霧器など、様々な用途に用いることができる。
【0037】
さらに、本発明の流体移送装置は、ロータに形成される突起部を含むので、ロータとロータハウジングカバーの接触面に発生する摩擦を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明による第1実施形態の流体移送装置を示す概念図である。
図2図1に示す流体移送装置の分解斜視図である。
図3a図2に示す流体移送装置のロータ、ロータハウジング及びロータハウジングカバーを示す平面図である。
図3b図2に示す流体移送装置のロータ、ロータハウジング及びロータハウジングカバーを示す平面図である。
図4】回転軸の1回転間のロータの偏心回転による流路の開閉状態の変化、容積変動空間の容積変化を順次示す概念図である。
図5】流体移送装置に流入した流体が流体移送装置から排出されるまでのロータの偏心回転による流路の開閉状態の変化、容積変動空間の容積変化を順次示す概念図である。
図6】本発明による第2実施形態の流体移送装置を示す概念図である。
図7図6に示す流体移送装置の分解斜視図である。
図8図7に示す流体移送装置の第1ロータハウジング及び第1ロータハウジングカバーを示す斜視図である。
図9】ロータの回転による流路の開閉状態の変化、容積変動空間の容積変化を順次示す概念図である。
図10】本発明による第3実施形態の流体移送装置を示す概念図である。
図11図10に示す流体移送装置の分解斜視図である。
図12図10に示す流体移送装置の第1ロータハウジングと第1ロータハウジングの両側に配置される第1及び第2ロータハウジングカバーを示す斜視図である。
図13図10に示す流体移送装置の第1ロータ、第1ロータハウジング及び第2ロータハウジングカバーを示す平面図である。
図14】ロータの回転による流路の開閉状態の変化、容積変動空間の容積変化を順次示す概念図である。
図15】第1~第3実施形態の流体移送装置に適用されるロータの概念図である。
図16】第1~第3実施形態の流体移送装置に適用される他のロータの概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、添付図面を参照して、本発明による流体移送装置についてより詳細に説明する。
【0040】
本明細書においては、異なる実施形態であっても同一又は類似の構成については同一又は類似の符号を付し、その説明は省略する。
【0041】
ある構成要素が他の構成要素に「連結」又は「接続」されていると言及された場合は、他の構成要素に直接連結又は接続されていてもよく、中間にさらに他の構成要素が存在してもよいものと解すべきである。それに対して、ある構成要素が他の構成要素に「直接連結」又は「直接接続」されていると言及された場合は、中間にさらに他の構成要素が存在しないものと解すべきである。
【0042】
本明細書において用いられる単数の表現には、特に断らない限り複数の表現が含まれる。
【0043】
1.第1実施形態の流体移送装置100
【0044】
図1は本発明による第1実施形態の流体移送装置100を示す概念図である。
【0045】
流体移送装置100の外観は、流体出入口ハウジング111、112、ロータハウジング121、122、123、ロータハウジングカバー141、142、143、144、及び回転軸150により形成される。流体移送装置100の外観は、図1に示すように円筒状に形成されてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0046】
流体移送装置100の一端から他端に向けて、第1流体出入口ハウジング111、交互に配置される複数のロータハウジングカバー141、142、143、144及び複数のロータハウジング121、122、123、並びに第2流体出入口ハウジング112が順次配置される。
【0047】
流体出入口ハウジング111、112は、流体移送装置100の両端にそれぞれ備えられてもよい。2つの流体出入口ハウジング111、112は、流体移送装置100の外側面を形成する。2つの流体出入口ハウジング111、112は、区分のために、第1流体出入口ハウジング111、第2流体出入口ハウジング112ともいう。
【0048】
流体出入口ハウジング111、112には、それぞれ、流体出入口111a、112aが形成される。流体出入口111a、112aは、流体出入口ハウジング111、112の一側から突出するようにしてもよい。図1においては、流体出入口111a、112aが流体出入口ハウジング111、112の外周面から突出した場合を示す。
【0049】
本発明による流体移送装置100は、流体を両方向に移送することができる。よって、2つの流体出入口111a、112aは、流体の移送方向によって、流体流入口となることもあり、流体排出口となることもある。
【0050】
ロータハウジングカバー141、142、143、144とロータハウジング121、122、123とは交互に配置される。ロータハウジングカバー141、142、143、144は複数備えられ、ロータハウジングカバー141、142、143、144は、それぞれ、互いに離隔して配置される。また、2つのロータハウジングカバー141、142、143、144間に1つのロータハウジング121、122、123が配置される。
【0051】
ロータハウジングカバー141、142、143、144及びロータハウジング121、122、123は、流体出入口ハウジング111、112と共に、流体移送装置100の連続的な外周面を形成するようにしてもよい。
【0052】
ロータハウジングカバー141、142、143、144は、ロータハウジング121、122、123よりも1つ多い数(個数)だけ備えられる。例えば、ロータハウジング121、122、123の数(個数)がn(nは自然数)であれば、ロータハウジングカバー141、142、143、144の数(個数)はn+1である。流体の移送のための前記nの最小値は2である。よって、ロータハウジング121、122、123は2以上の自然数だけ備えられ、ロータハウジングカバー141、142、143、144は3以上の自然数だけ備えられる。
【0053】
図1においては、n=3の場合を示す。流体移送装置100の設計上の必要に応じて、より多くのロータハウジング121、122、123及びロータハウジングカバー141、142、143、144が備えられてもよい。流体移送装置100は、前記nの数が増加するにつれて、高い圧力を発生することができる。
【0054】
回転軸150は、流体移送装置100を貫通して、流体移送装置100の一側から露出する。回転軸150は、モータ(図示せず)に連結され、前記モータから回転駆動力が供給される。流体出入口ハウジング111、112には、回転軸150のスムーズな回転のために、耐摩耗性のベアリング及び/又はリテーナ161、162が設けられてもよい。ベアリング及び/又はリテーナ161、162は、回転軸150を囲むように形成されてもよい。
【0055】
以下、流体移送装置100の内部構造について説明する。
【0056】
図2図1に示す流体移送装置100の分解斜視図である。
【0057】
流体出入口ハウジング111、112は、流体移送装置100の最も外側に1つずつ配置される。流体出入口ハウジング111、112は、流体移送装置100の外周面の一部を形成し、流体移送装置100の両側面を形成する。前記両側面は、流体移送装置100の設置方向によって上下面となることもある。
【0058】
流体出入口ハウジング111、112は、円筒の形状を有してもよい。流体出入口ハウジング111、112の一面は開口しており、前記開口した一面は前記円筒の2つの底面のいずれか一方に対応する。よって、流体出入口ハウジング111、112は、前記円筒の周面及び他方の底面に対応する外壁を有する。前記開口した底面に対応する位置には、複数のロータハウジングカバー141、142、143、144の1つ(141)(144)が配置される。
【0059】
流体出入口ハウジング111、112には、流体出入口111a、112aが形成される。移送対象流体は、流体出入口111a、112aから流体出入口ハウジング111、112の内部に流入したり、流体出入口ハウジング111、112の内部から外部に排出される。
【0060】
流体出入口ハウジング111、112の閉鎖された底面には、ベアリング及び/又はリテーナ161、162が設けられる。ベアリング及び/又はリテーナ161、162は、前記閉鎖された底面を貫通するように配置されてもよい。つまり、ベアリング及び/又はリテーナ161、162は、流体移送装置100の内部と外部の両方に露出するようにしてもよい。
【0061】
ロータハウジング121、122、123及びロータハウジングカバー141、142、143、144は、複数備えられる。ただし、ロータハウジングカバー141、142、143、144は、ロータハウジング121、122、123よりも1つ多い数(個数)だけ備えられる。ロータハウジング121、122、123は、2つのロータハウジングカバー141、142、143、144間に1つずつ配置される。
【0062】
ロータハウジング121、122、123とロータハウジングカバー141、142、143、144とが交互に配置されるので、ロータハウジング121、122、123同士は離隔して配置される。また、ロータハウジングカバー141、142、143、144同士も離隔して配置される。
【0063】
ロータハウジング121、122、123は、流体圧縮空間121a、122a、123aを形成する。流体圧縮空間121a、122a、123aは、両側のロータハウジングカバー141、142、143、144に向けて開口している。
【0064】
ロータハウジングカバー141、142、143、144が配置された位置でロータハウジング121、122、123を見ると、流体圧縮空間121a、122a、123aを形成するロータハウジング121、122、123の内周面はエピトロコイド形状である。エピトロコイド形状に規定される領域が流体圧縮空間121a、122a、123aである。
【0065】
エピトロコイド形状とは、第1円に接しながら第1円の外側を転がる第2円の一点が描く曲線を意味する。エピトロコイド形状は、第1円と第2円の大きさの比によって異なり、非常に様々に図示することができる。図2に示すエピトロコイド形状は、第1円の半径をRとし、第2円の半径をrとすると、R=2rの関係を満たすピーナッツ形状である。ここで、係数2は、エピトロコイド形状に現れる変曲点(尖点)の数(個数)に対応する。
【0066】
ロータハウジング121、122、123の配列方向は、エピトロコイド曲面が向く方向から決定される。例えば、後述する図3などの平面図上で、ある2つのロータハウジングのエピトロコイド曲面が互いに重なっている場合は、前記2つのロータハウジングは同じ方向に配列されているものである。それに対して、ある1つのロータハウジングのエピトロコイド曲面は縦になっており、他の1つのロータハウジングのエピトロコイド曲面は横になっている場合は、前記2つのロータハウジングは異なる方向に配列されているものである。また、それらの配列方向は90゜の角度をなす。
【0067】
本発明において、ロータハウジング121、122、123同士の配列方向は、規則性を有して繰り返される。第1実施形態の流体移送装置100においては、ロータハウジング121、122、123が隣接するロータハウジング121、122、123に対して90゜の角度をなすように配列される。ここで、隣接するとは、接触していることを意味するのではなく、離隔しているが他のロータハウジングに比べてより近い位置に配置されていることを意味する。
【0068】
図2に示すように、最も上方の第1ロータハウジング121は、横方向を向いて配列されており、その下方の第2ロータハウジング122は、縦方向を向いて配列されており、最も下方の第3ロータハウジング123は、再び横方向を向いて配列されている。
【0069】
ただし、ロータハウジング121、122、123の配列方向は相対的なものであるので、配列方向を決定する基準は任意に変更することができる。例えば、ロータハウジング121、122、123の配列方向を決定する基準を、エピトロコイド曲面の2つの頂点を結ぶ仮想の直線が向く方向にしても、図2において、隣接する2つのロータハウジング121、122、123同士の配列方向は、依然として90゜の角度をなす。
【0070】
ロータ131、132、133は、三角柱状に形成される。ロータ131、132、133の形状は正三角柱に近いが、その側面はロータ131、132、133の外側に向かって膨らんだ形状を有する曲面である。前記曲面は、ロータハウジング121、122、123のエピトロコイド曲面に対応する。
【0071】
ロータ131、132、133は、ロータハウジング121、122、123の流体圧縮空間121a、122a、123aを複数の容積変動空間に区画するように、流体圧縮空間121a、122a、123a内に配置される。容積とは、圧縮対象流体を収容する空間の体積又は嵩を意味する。よって、容積変動空間とは、体積又は嵩が一定でなく、体積又は嵩がロータ131、132、133の回転によって変化する空間を意味する。
【0072】
ロータハウジング121、122、123が複数備えられるので、ロータ131、132、133もロータハウジング121、122、123の数(個数)と同じ数(個数)だけ備えられる。ロータ131、132、133は、各ロータハウジング121、122、123の流体圧縮空間121a、122a、123a内に1つずつ配置される。
【0073】
ロータ131、132、133が流体圧縮空間121a、122a、123a内に1つずつ配置されることにより、各流体圧縮空間121a、122a、123aは3つの容積変動空間に区画される。また、ロータ131、132、133が回転することにより、前記3つの容積変動空間は圧縮と膨張を繰り返してその体積又は嵩が変化する。
【0074】
ロータ131、132、133は、回転軸150に結合されて回転軸150と共に回転する。回転軸150は、その場で回転し、ロータ131、132、133は、回転軸150に偏心結合される。よって、ロータ131、132、133は、流体圧縮空間121a、122a、123a内で偏心回転する。ここで、偏心回転とは、ロータ131、132、133が回転軸150に偏心結合された状態を維持しながら回転することを意味する。
【0075】
ロータ131、132、133の中心には、両側のロータハウジングカバー141、142、143、144に向けて開口した収容部131a、132a、133aが形成される。収容部131a、132a、133aは、後述するロータジャーナル151、152、153を収容する空間である。
【0076】
回転軸150は、流体移送装置100の中心を貫通し、その一端が流体移送装置100の外部に露出する。回転軸150の一端は、回転駆動力を供給するモータに連結される。
【0077】
ロータジャーナル151、152、153は、回転軸150に偏心して設けられる。ロータジャーナル151、152、153は、円筒状に形成されてもよい。ギヤ(図示せず)の形成位置を提供するために、ロータジャーナル151、152、153は、ロータ131、132、133より低い高さで形成されてもよい。
【0078】
ロータジャーナル151、152、153は、ロータ131、132、133の収容部131a、132a、133aに挿入される。ロータジャーナル151、152、153は、回転軸150とロータ131、132、133の偏心した連結状態を維持する。ロータジャーナル151、152、153はロータ131、132、133の中心に挿入されるので、ロータジャーナル151、152、153の中心はロータ131、132、133の中心と一致する。よって、回転軸150に対するロータジャーナル151、152、153の位置と、回転軸150に対するロータ131、132、133の位置とは、実質的に同じ概念である。
【0079】
前記モータから供給される回転駆動力により回転軸150がその場で回転すると、前記ギヤを介して回転駆動力が供給されるロータ131、132、133は、ロータハウジング121、122、123の流体圧縮空間121a、122a、123a内で偏心回転する。ロータ131、132、133が偏心回転すると、ロータハウジング121、122、123の容積変動空間が圧縮と膨張を繰り返す。
【0080】
ロータ131、132、133の配列方向は、回転軸150に対してロータ131、132、133の中心が向く方向から決定される。つまり、回転軸150に対してロータジャーナル151、152、153の中心が向く方向も、ロータ131、132、133の配列方向と同じである。
【0081】
ロータ131、132、133は、それぞれ、隣接する他のロータ131、132、133とは異なる方向を向くように配列されている。特に、第1実施形態の流体移送装置100においては、ロータ131、132、133が隣接する他のロータ131、132、133と180゜をなすように配列されている。例えば、図2において、最も上方の第1ロータ131とその直下の第2ロータ132とは反対方向を向いて配列されている。また、最も下方の第3ロータ133とその直上の第2ロータ132とは反対方向を向いて配列されている。図2において、ロータ131、132、133は3つであるので、最も上方の第1ロータ131と最も下方の第3ロータ133とは同じ方向を向いて配列されている。
【0082】
流体移送装置100が動作すると、ロータ131、132、133が偏心回転するので、ロータ131、132、133の配列方向はリアルタイムに変化する。ロータ131、132、133の配列方向がリアルタイムに変化しても、いずれかのロータ131、132、133が隣接するロータ131、132、133と180゜の角度をなすことは変わらない。つまり、ロータ131、132、133の配列方向は、固定されたものではなく、各ロータ間の相対的な位置関係として理解すべきである。相対的な位置関係は、回転に関係するものではない。
【0083】
ロータハウジングカバー141、142、143、144は、ロータハウジング121、122、123の流体圧縮空間121a、122a、123aを覆うように形成される。例えば、ロータハウジングカバー141、142、143、144は、円板状に形成されてもよい。
【0084】
ロータハウジングカバー141、142、143、144の中心には、回転軸貫通孔141c、142c、143c、144cが形成される。回転軸貫通孔141c、142c、143c、144cには、回転軸150が貫通して配置される。
【0085】
ロータハウジングカバー141、142、143、144には、カバー流路141a、141b、142a、142b、143a、143b、144a、144bが形成される。流体移送装置100には複数の流路が形成される。それらのうち、カバー流路141a、141b、142a、142b、143a、143b、144a、144bは、ロータハウジングカバー141、142、143、144に形成される流路という意味で命名されたものである。
【0086】
カバー流路141a、141b、142a、142b、143a、143b、144a、144bは、隣接する2つのロータハウジング121、122、123の流体圧縮空間121a、122a、123aが連通するように、ロータハウジングカバー141、142、143、144を貫通する。カバー流路141a、141b、142a、142b、143a、143b、144a、144bがロータハウジングカバー141、142、143、144を貫通する方向は、回転軸150の延長方向に平行な方向である。
【0087】
カバー流路141a、141b、142a、142b、143a、143b、144a、144bは複数形成される。カバー流路141a、141b、142a、142b、143a、143b、144a、144bのいずれか一方を第1カバー流路141a、142a、143a、144aとし、カバー流路141a、141b、142a、142b、143a、143b、144a、144bの他方を第2カバー流路141b、142b、143b、144bとすると、第1カバー流路141a、142a、143a、144aと第2カバー流路141b、142b、143b、144bとは、回転軸貫通孔141c、142c、143c、144cを中心に互いに反対側に対称に形成される。
【0088】
第1カバー流路141a、142a、143a、144aと第2カバー流路141b、142b、143b、144bとが反対側に配置されるので、第1カバー流路141a、142a、143a、144aと第2カバー流路141b、142b、143b、144bとは、ロータハウジングカバー141、142、143、144の平面上で、回転軸貫通孔141c、142c、143c、144cを挟んで180゜の角度をなすように配置される。
【0089】
ロータハウジングカバー141、142、143、144の配列方向は、回転軸貫通孔141c、142c、143c、144cを中心とする第1カバー流路141a、142a、143a、144a及び第2カバー流路141b、142b、143b、144bの配置方向から決定される。また、ロータハウジングカバー141、142、143、144同士の配列方向は、規則性を有して繰り返される。
【0090】
例えば、第1実施形態の流体移送装置100において、ロータハウジングカバー141、142、143、144は、隣接する他のロータハウジングカバー141、142、143、144に対して90゜の角度をなすように配列される。図2において、最も上方の第1ロータハウジングカバー141は、平面図上でその下の第2ロータハウジングカバー142に対して90゜の角度をなすように配置される。また、上から2番目の第2ロータハウジングカバー142と3番目の第3ロータハウジングカバー143とも、90゜の角度をなすように配置される。このような規則性は繰り返し続けられる。
【0091】
ただし、第1カバー流路141a、142a、143a、144aと第2カバー流路141b、142b、143b、144bとは対称であるので、その位置と形状が同様である。よって、図2において、上から1番目の第1ロータハウジングカバー141と3番目の第3ロータハウジングカバー143とは、180゜の角度をなすように配置されるが、同じ方向を向いて配列されるともいえる。これは説明の違いにすぎず、どちらの場合も、隣接するロータハウジングカバー141、142、143、144同士は90゜の角度をなすように配置されるということは変わらない。
【0092】
次に、ロータ131、132、133の回転時にロータハウジング121、122、123に形成されるカバー流路141a、141b、142a、142b、143a、143b、144a、144bの開閉メカニズムについて説明する。
【0093】
図3a及び図3bは図2に示す流体移送装置100のロータ131、132、ロータハウジング121、122及びロータハウジングカバー141、142を示す平面図である。図3a及び図3bにおいては、隣接する2つのロータハウジング121、122、隣接する2つのロータハウジングカバー141、142、及び各ロータハウジング121、122の流体圧縮空間121a、122a内に設けられるロータ131、132を示す。
【0094】
第1カバー流路141a、142a及び第2カバー流路141b、142bは、回転軸150の延長方向に平行な方向においてロータ131、132の偏心回転範囲と重なる範囲内に配置される。ロータ131、132の偏心回転範囲はロータハウジング121、122のエピトロコイド曲面に一致するので、第1カバー流路141a、142a及び第2カバー流路141b、142bは、回転軸150の延長方向に平行な方向においてエピトロコイド曲面の範囲内に形成される。よって、第1カバー流路141a、142a及び第2カバー流路141b、142bの開閉は、ロータ131、132の偏心回転によって決定される。
【0095】
また、第1カバー流路141a、142a及び第2カバー流路141b、142bは、偏心回転するロータ131、132により遮蔽される形状を有する。例えば、第1カバー流路141a、142a及び第2カバー流路141b、142bは、底辺が最も長く、上へ行くほど狭くなる五角形の形状を有してもよい。ここで、上端の頂点を中心として両側の2つの辺は、ロータ131、132の回転過程でロータ131、132の外周面に一致する位置に形成されてもよい。
【0096】
回転軸150とロータ131、132の回転比は、回転軸150の外周面に形成されるギヤと、ロータ131、132の収容部131a、132aに形成されるギヤの数によって決定される。回転軸150とロータ131、132の回転比は3:1である。よって、回転軸150が3回転すると、ロータ131、132は1回転する。
【0097】
ロータ131、132がロータハウジング121、122の流体圧縮空間121a、122aに挿入されると、流体圧縮空間121a、122aは複数の容積変動空間に区画される。三角柱状のロータ131、132がピーナッツ状のエピトロコイド曲面を有する流体圧縮空間121a、122aに挿入されると、流体圧縮空間121a、122aは3つの容積変動空間に区画される。
【0098】
説明の便宜上、各容積変動空間を区分してA、B、Cにする。各ロータハウジング121、122の容積変動空間は、容積変動空間の後ろに数字を付けて区分する。例えば、第1ロータハウジング121の容積変動空間AはA1とする。容積変動空間の位置はロータ131、132の外周面との関係により識別されるので、ロータ131、132が偏心回転すると容積変動空間の位置も変化する。
【0099】
ロータ131、132が偏心回転し続けることにより、3つの容積変動空間は膨張と圧縮を繰り返す。このとき、3つの容積変動空間の体積変化は、横軸をロータ131、132の回転角度とし、縦軸を体積とするグラフ上で、サイン曲線に従う。例えば、図3aにおいて、空間A1の体積は、第1ロータ131が回転する前に最大である。また、空間A1の体積は、第1ロータ131が反時計方向に回転することにより次第に減少し、回転軸150が270゜回転したときに最小となる。なお、回転軸150が270゜回転する間、ロータ131、132は90゜回転する。
【0100】
容積変動空間の体積変化は、サイン曲線に従うので、前記グラフ上で最大値又は最小値を基点に対称となる。例えば、回転軸150が反時計方向に回転することにより空間A1の体積が減少する分だけ、空間B1の体積は増加し、C1の体積は減少する。よって、ロータ131、132が回転することにより、3つの容積変動空間は位相差を有して体積の増加と減少を繰り返す。
【0101】
以下、流体移送装置100の動作について説明する。
【0102】
図4は回転軸150の1回転間のロータ131、132、133の偏心回転による流路の開閉状態の変化、容積変動空間の容積変化を順次示す概念図である。図5は流体移送装置100に流入した流体が流体移送装置100から排出されるまでのロータ131、132、133の偏心回転による流路の開閉状態の変化、容積変動空間の容積変化を順次示す概念図である。
【0103】
図4及び図5図2に示す流体移送装置100を下から上に投影したものである。
【0104】
流体移送装置100の2つの流体出入口111a、112aのいずれか一方からは流体が流入し、他方からは圧縮された流体が排出される。その逆も可能である。図2において、上方の流体出入口111aから流体が流入し、下方の流体出入口112aから流体が排出されるという前提の下で、図4及び図5について説明する。同じ構成間の区分のために、上方の流体出入口を第1流体出入口111a、下方の流体出入口を第2流体出入口112aという。
【0105】
(a)列は、流体移送装置100の2つの流体出入口111a、112aのうち流体の流入側に最も近い第1ロータ131、第1ロータハウジング121、第1ロータハウジング121の両側に配置される第1ロータハウジングカバー141及び第2ロータハウジングカバー142、並びに2つのロータハウジングカバー141、142に形成されるカバー流路141a、141b、142a、142bを示す平面図である。
【0106】
図4及び図5において、点線で示すカバー流路は、ロータの後方に配置されるロータハウジングカバーのカバー流路を示す。例えば、(a-1)列において、点線で示す第1カバー流路141a及び第2カバー流路141bは、第1ロータ131の後方に配置される第1ロータハウジングカバー141に形成される。
【0107】
また、図4及び図5において、実線で示すカバー流路は、ロータの前方に配置されるロータハウジングカバーのカバー流路を示す。例えば、(a-1)列において、実線で示す第1カバー流路142a及び第2カバー流路142bは、第1ロータ131の前方に配置される第2ロータハウジングカバー142に形成される。
【0108】
(b)列は、第2ロータ132、第2ロータハウジング122、第2ロータハウジング122の両側に配置される第2ロータハウジングカバー142と第3ロータハウジングカバー143、並びに2つのロータハウジングカバー142、143に形成されるカバー流路142a、142b、143a、143bを示す平面図である。
【0109】
(c)列は、流体移送装置100の第3ロータ133、第3ロータハウジング123、第3ロータハウジング123の両側に配置される第3ロータハウジングカバー143及び第4ロータハウジングカバー144、並びに2つのロータハウジングカバー143、144に形成されるカバー流路143a、143b、144a、144bを示す平面図である。
【0110】
図4及び図5における縦方向の平面図は、ロータ131、132、133の回転による各ロータハウジング121、122、123の容積変化を順次示すものである。同図において、同じ数字の行には同じ時間帯の各ロータ131、132、133の位置を示す。ロータ131、132、133は、反時計方向に回転する。
【0111】
以下、まず図4を参照して説明する。
【0112】
(1)行は、流体移送装置100が動作する前の初期状態を示すものである。
【0113】
第1ロータハウジング121は、第2ロータハウジング122に対して90゜の角度をなすように配列されている。第2ロータハウジング122は、第3ロータハウジング123に対して90゜の角度をなすように配列されている。
【0114】
第1ロータ131は、第2ロータ132に対して180゜の角度をなすように配列されている。第2ロータ132は、第3ロータ133に対して180゜の角度をなすように配列されている。
【0115】
第1ロータハウジングカバー141は、第2ロータハウジングカバー142に対して90゜の角度をなすように配列されている。第2ロータハウジングカバー142は、第3ロータハウジングカバー143に対して90゜の角度をなすように配列されている。第3ロータハウジングカバー143は、第4ロータハウジングカバー144に対して90゜の角度をなすように配列されている。
【0116】
回転軸150とロータ131、132、133の回転比は3:1である。よって、回転軸150とロータジャーナル151、152、153が3回転すると、ロータ131、132、133は1回転する。(1)行から(9)行まで回転軸150が1回転するので、ロータ131、132、133は120゜回転する。
【0117】
まず、(a)列について説明する。(a-1)列で第1ロータハウジング121の空間A1は体積が最大である。(a-1)列から(a-7)列まで回転軸150が270゜回転する間、第1ロータ131は90゜回転する。また、その過程で空間A1は次第に小さくなる。(a-7)列の第1ロータ131の位置で、空間A1は体積が最小である。(a-7)列から(a-9)列まで回転軸150がさらに回転する間、空間A1は次第に大きくなる。
【0118】
(a-1)列から(a-9)列まで第1ロータ131の位置が変化する間、空間B1は、次第に大きくなり、(a-5)列の第1ロータ131の位置で体積が最大である。また、(a-5)列から(a-9)列まで第1ロータ131の位置が変化する間、空間B1は体積が次第に小さくなる。
【0119】
(a-1)列から(a-9)列まで第1ロータ131の位置が変化する間、空間C1は、次第に小さくなり、(a-3)列の第1ロータ131の位置で体積が最小である。また、(a-3)列から(a-9)列まで第1ロータ131の位置が変化する間、空間C1は体積が次第に大きくなる。(a-9)列の第1ロータ131の位置で、空間C1は体積が最大である。
【0120】
次に、(b)列について説明する。(b-1)列で第2ロータハウジング122の空間A2は体積が最小である。(b-1)列から(b-7)列まで回転軸150が270゜回転する間、第2ロータ132は90゜回転する。また、その過程で空間A2は次第に大きくなる。(b-7)列の第2ロータ132の位置で、空間A2は体積が最大である。(b-7)列から(b-9)列まで回転軸150がさらに回転する間、空間A2は次第に小さくなる。
【0121】
(b-1)列から(b-9)列まで第2ロータ132の位置が変化する間、空間B2は、次第に小さくなり、(b-5)列の第2ロータ132の位置で体積が最小である。また、(b-5)列から(b-9)列まで第2ロータ132の位置が変化する間、空間B2は体積が次第に大きくなる。
【0122】
(b-1)列から(b-9)列まで第2ロータ132の位置が変化する間、空間C2は、次第に大きくなり、(b-3)列の第2ロータ132の位置で体積が最大である。また、(b-3)列から(b-9)列まで第2ロータ132の位置が変化する間、空間C2は体積が次第に小さくなる。(b-9)列の第2ロータ132の位置で、空間C2は体積が最小である。
【0123】
(c)列の変化は(a)列の変化と実質的に同様である。
【0124】
(c-1)列で第3ロータハウジング123の空間A3は体積が最大である。(c-1)列から(c-7)列まで回転軸150が270゜回転する間、第3ロータ133は90゜回転する。また、その過程で空間A3は次第に小さくなる。(c-7)列の第3ロータ133の位置で、空間A3は体積が最小である。(c-7)列から(c-9)列まで回転軸150がさらに回転する間、空間A3は次第に大きくなる。
【0125】
(c-1)列から(c-9)列まで第3ロータ133の位置が変化する間、空間B3は、次第に大きくなり、(c-5)列の第3ロータ133の位置で体積が最大である。また、(c-5)列から(c-9)列まで第3ロータ133の位置が変化する間、空間B3は体積が次第に小さくなる。
【0126】
(c-1)列から(c-9)列まで第3ロータ133の位置が変化する間、空間C3は、次第に小さくなり、(c-3)列の第3ロータ133の位置で体積が最小である。また、(c-3)列から(c-9)列まで第3ロータ133の位置が変化する間、空間C3は体積が次第に大きくなる。(c-9)列の第3ロータ133の位置で、空間C3は体積が最大である。
【0127】
次いで、図5を参照して説明する。
【0128】
回転軸150とロータ131、132、133の回転比は3:1である。よって、回転軸150とロータジャーナル151、152、153が3回転すると、ロータ131、132、133は1回転する。(1)行から(6)行まで回転軸150が約600゜回転するので、ロータ131、132、133は約200゜回転する。
【0129】
(1)行は、流体移送装置100が動作する前の初期状態を示すものである。
【0130】
流体は、第1流体出入口111aから第1流体出入口ハウジング111に流入する。次に、流体は、第1ロータハウジングカバー141の第1カバー流路141a及び第2カバー流路141bを介して、第1ロータハウジング121の空間A1及び空間B1に流入する。
【0131】
第1ロータ131が(1)行から(3)行まで回転することにより、空間A1は次第に小さくなり、第2ロータ132が(1)行から(3)行まで回転することにより、空間A2は次第に大きくなる。第1ロータ131及び第2ロータ132が(3)行の位置まで偏心回転すると、空間A1の体積は最小となり、空間A2の体積は最大となる。
【0132】
流体は、第2ロータハウジングカバー142の第1カバー流路142aを介して、第2ロータハウジング122の空間A2に流入する。その過程において、空間A1では、第1ロータハウジングカバー141の第1カバー流路141aと第2ロータハウジングカバー142の第1カバー流路142aが同時に連結される時点が存在する。よって、空間A1の流体が第1ロータハウジングカバー141の第1カバー流路141aへ逆流する可能性がある。しかし、第2ロータハウジング122の空間A2は、膨張しているので負圧状態となる。空間A2が負圧状態であるので、空間A1の流体は、逆流するのではなく、空間A2に流入する。
【0133】
第2ロータ132が(3)行から(5)行まで回転することにより、空間A2は体積が次第に小さくなる。また、第3ロータ133が(3)行から(5)行まで回転することにより、空間A3は次第に大きくなる。第2ロータ132及び第3ロータ133が(5)行の位置まで偏心回転すると、空間A2の体積は最小となり、空間A3の体積は最大となる。
【0134】
空間A2の流体は、第3ロータハウジングカバー143の第1カバー流路141a、142a、143a、144aを介して、空間A3に流入する。その過程において、空間A2では、第2ロータハウジングカバー142の第1カバー流路142aと第3ロータハウジングカバー143の第1カバー流路143aが同時に連結される時点が存在する。よって、空間A2の流体が第2ロータハウジングカバー142の第1カバー流路142aへ逆流する可能性がある。しかし、第3ロータハウジング123の空間A3は、膨張しているので負圧状態となる。空間A3が負圧状態であるので、空間A2の流体は、逆流するのではなく、空間A3に流入する。
【0135】
第1ロータ131、第2ロータ132及び第3ロータ133が(6)行の位置まで偏心回転すると、空間A3では、第3ロータハウジングカバー143の第1カバー流路143aと第4ロータハウジングカバー144の第1カバー流路144aが同時に連結される。また、空間C2では、第2ロータハウジングカバー142の第1カバー流路142aと第3ロータハウジングカバー143の第1カバー流路143aが同時に連結される。さらに、空間C1では、第2ロータハウジングカバー142の第1カバー流路142aが連結される。よって、空間A3、C2、C1が互いに連結される。
【0136】
このとき、空間C1は、圧縮されているので正圧状態であり、空間C2は、膨張しているので負圧状態である。正圧と負圧は互いに相殺されるので、正圧状態の空間A3の流体は、第4ロータハウジングカバー144の第1カバー流路144aを介して、第2流体出入口ハウジング112に排出される。
【0137】
以上のように、流体移送装置100のロータ131、132、133が反時計方向に回転することにより、いずれか一方の流体出入口111aに流入した流体は、各ロータハウジングカバー141、142、143、144の第1カバー流路141a、142a、143a、144aと各ロータハウジング121、122、123の流体圧縮空間121a、122a、123aを介して、他方の流体出入口112aから排出される。流体の移送量は、各ロータハウジング121、122、123の空間A、B、Cの変化量と回転軸150の回転に左右される。
【0138】
流体の移送は、各ロータハウジングカバー141、142、143、144の第2カバー流路141b、142b、143b、144bと各ロータハウジング121、122、123の流体圧縮空間121a、122a、123aを介しても同様に行われる。空間B1、B2、B3の体積変化、空間C1、C2、C3の体積変化は、流体が各ロータハウジングカバー141、142、143、144の第1カバー流路141a、142a、143a、144a及び第2カバー流路141b、142b、143b、144bを介して移送されるようにする。
【0139】
このような流体移送方式は、高圧発生装置に適用することができる。また、従来のロータリピストンポンプとは異なり、ロータの逆回転により流体を逆方向に移送することができる。よって、本発明の流体移送装置100は、流体を両方向に移送することができる。特に、本発明の流体移送装置100は、乾式真空ポンプだけでなく、オイル式真空ポンプに適用することもできる。また、本発明の流体移送装置100は、ピストン方式であるので、粘性の高い流体にも適用することができる。
【0140】
2.第2実施形態の流体移送装置200
【0141】
次に、第2実施形態の流体移送装置200について説明する。
【0142】
図6は本発明による第2実施形態の流体移送装置200を示す概念図である。
【0143】
流体移送装置200の外観は、流体出入口ハウジング211、212、ロータハウジング221、222、223、ロータハウジングカバー241、242、243、244、及び回転軸250により形成される。流体移送装置200の外観は、第1実施形態の流体移送装置100の外観と実質的に同様である。よって、第1実施形態の流体移送装置100において説明された構成のほとんどは第2実施形態の流体移送装置200にも適用することができる。
【0144】
ただし、ロータハウジング221、222、223にハウジング流路221b1、221b2、221c1、221c2、222b1、222b2、222c1、222c2、223b1、223b2、223c1、223c2が形成される点、ロータハウジングカバー241、242、243、244に形成されるカバー流路241a、241b、242a、242b、243a、243b、244a、244bの形状や位置などは第1実施形態と異なる。以下、第1実施形態との相違点について説明する。
【0145】
図6において説明していない符号251は第1ロータジャーナル、252は第2ロータジャーナル、253は第3ロータジャーナル、261、262はベアリング及び/又はリテーナである。
【0146】
図7図6に示す流体移送装置200の分解斜視図である。
【0147】
ロータハウジング221、222、223同士の配列方向は、規則性を有して繰り返される。第2実施形態の流体移送装置200においては、いずれか一方のロータハウジング221、222、223が隣接するロータハウジング221、222、223に対して90゜の角度をなすように配列される。
【0148】
図7に示すように、最も上方の第1ロータハウジング221は、横方向を向いて配列されており、その下方の第2ロータハウジング222は、縦方向を向いて配列されており、最も下方の第3ロータハウジング223は、再び横方向を向いて配列されている。
【0149】
ロータハウジング221、222、223には、ハウジング流路221b1、221b2、221c1、221c2、222b1、222b2、222c1、222c2、223b1、223b2、223c1、223c2が形成される。ハウジング流路221b1、221b2、221c1、221c2、222b1、222b2、222c1、222c2、223b1、223b2、223c1、223c2は、ロータハウジングカバー241、242、243、244のカバー流路241a、241b、242a、242b、243a、243b、244a、244bと区分するために、ロータハウジング221、222、223に形成される流路という意味で命名されたものである。
【0150】
ハウジング流路221b1、221b2、221c1、221c2、222b1、222b2、222c1、222c2、223b1、223b2、223c1、223c2は、エピトロコイド曲面に外接する位置に形成される。ハウジング流路221b1、221b2、221c1、221c2、222b1、222b2、222c1、222c2、223b1、223b2、223c1、223c2は、エピトロコイド曲面に外接するので、流体圧縮空間221a、222a、223aとハウジング流路221b1、221b2、221c1、221c2、222b1、222b2、222c1、222c2、223b1、223b2、223c1、223c2との間には境界が別に存在しない。よって、ハウジング流路221b1、221b2、221c1、221c2、222b1、222b2、222c1、222c2、223b1、223b2、223c1、223c2は、流体圧縮空間221a、222a、223aに連通するように形成される。
【0151】
ハウジング流路221b1、221b2、221c1、221c2、222b1、222b2、222c1、222c2、223b1、223b2、223c1、223c2と流体圧縮空間221a、222a、223aとが連通するとは、流体が流体圧縮空間221a、222a、223aからハウジング流路221b1、221b2、221c1、221c2、222b1、222b2、222c1、222c2、223b1、223b2、223c1、223c2への流動が阻害されず、ハウジング流路221b1、221b2、221c1、221c2、222b1、222b2、222c1、222c2、223b1、223b2、223c1、223c2から流体圧縮空間221a、222a、223aへの流動が阻害されないことを意味する。
【0152】
ハウジング流路221b1、221b2、221c1、221c2、222b1、222b2、222c1、222c2、223b1、223b2、223c1、223c2は、回転軸250の延長方向に平行な方向に延びる。ロータハウジング221、222、223の両側にはロータハウジングカバー241、242、243、244がそれぞれ1つずつ配置されるが、ハウジング流路221b1、221b2、221c1、221c2、222b1、222b2、222c1、222c2、223b1、223b2、223c1、223c2は、2つのロータハウジングカバー241、242、243、244のいずれか一方に向けて開放され、他方に向けて閉塞された構造を有する。
【0153】
ロータハウジング221、222、223には、一側のロータハウジングカバー241、242、243、244に向けて開放される第1ハウジング流路221b1、221b2、222b1、222b2、223b1、223b2、及び他側のロータハウジングカバー241、242、243、244に向けて開放される第2ハウジング流路221c1、221c2、222c1、222c2、223c1、223c2がそれぞれ形成される。第1ハウジング流路221b1、221b2、222b1、222b2、223b1、223b2と第2ハウジング流路221c1、221c2、222c1、222c2、223c1、223c2とは、開放される方向によって分けられる。いずれかのロータハウジングカバー241、242、243、244からロータハウジング221、222、223を見ると、第1ハウジング流路221b1、221b2、222b1、222b2、223b1、223b2と第2ハウジング流路221c1、221c2、222c1、222c2、223c1、223c2のいずれか一方は視覚的に露出し、反対側の他方は視覚的に遮蔽される。
【0154】
第1ロータハウジング221に形成される第1ハウジング流路221b1、221b2は、第1ロータハウジングカバー241に向けて開放されるのに対して、第2ロータハウジングカバー242に向けて閉鎖される。逆に、第1ロータハウジング221に形成される第2ハウジング流路221c1、221c2は、第1ロータハウジングカバー241に向けて閉鎖されるのに対して、第2ロータハウジングカバー242に向けて開放される。
【0155】
ハウジング流路221b1、221b2、221c1、221c2、222b1、222b2、222c1、222c2、223b1、223b2、223c1、223c2は、一方向にのみ開放された構造を有するので、ロータ231、232、233が回転すると、ハウジング流路221b1、221b2、221c1、221c2、222b1、222b2、222c1、222c2、223b1、223b2、223c1、223c2に流入した流体は一方向にのみ流動する。ロータ231、232、233の回転方向が反転すると、流体の流動方向も反転する。流体は、ロータ231、232、233の回転方向に関係なく両方向に流動することはできない。
【0156】
第1ハウジング流路221b1、221b2、222b1、222b2、223b1、223b2は、複数備えられる。例えば、第1ハウジング流路221b1、221b2、222b1、222b2、223b1、223b2は、ロータハウジング221、222、223毎に2つずつ形成されてもよい。第2ハウジング流路221c1、221c2、222c1、222c2、223c1、223c2も、複数備えられる。例えば、第2ハウジング流路221c1、221c2、222c1、222c2、223c1、223c2は、ロータハウジング221、222、223毎に2つずつ形成されてもよい。
【0157】
第1ロータハウジング221を一側の第1ロータハウジングカバー241から見たときの第1ハウジング流路221b1、221b2の配列と、第1ロータハウジング221を他側の第2ロータハウジングカバー242から見たときの第2ハウジング流路221c1、221c2の配列とは、同一である。これは、第2ロータハウジング222と第3ロータハウジング223も同様である。
【0158】
例えば、第1ロータハウジングカバー241から第1ロータハウジング221を見ると、第1ハウジング流路221b1、221b2は、回転軸250の左上側と右下側に1つずつ形成される。同様に、第2ロータハウジングカバー242から第1ロータハウジング221を見ると、第2ハウジング流路221c1、221c2は、回転軸250の左上側と右下側に1つずつ形成される。
【0159】
いずれかのロータハウジングカバー241、242、243、244を挟んで、一側のロータハウジング221、222、223に形成されるハウジング流路221b1、221b2、221c1、221c2、222b1、222b2、222c1、222c2、223b1、223b2、223c1、223c2及び他側のロータハウジング221、222、223に形成されるハウジング流路221b1、221b2、221c1、221c2、222b1、222b2、222c1、222c2、223b1、223b2、223c1、223c2は、回転軸250の延長方向に平行な方向において互いに重ならない位置にそれぞれ配置される。ここで、互いに重ならない位置に配置されるハウジング流路221b1、221b2、221c1、221c2、222b1、222b2、222c1、222c2、223b1、223b2、223c1、223c2は、2つのロータハウジング221、222、223間に配置されるロータハウジングカバー241、242、243、244に向けて開放されている。
【0160】
例えば、第1ロータハウジング221に形成される第2ハウジング流路221c1、221c2は、第2ロータハウジングカバー242に向けて開放されている。第2ロータハウジング222に形成される第1ハウジング流路222b1、222b2も、第2ロータハウジングカバー242に向けて開放されている。第1ロータハウジング221に形成される第2ハウジング流路221c1、221c2及び第2ロータハウジング222に形成される第1ハウジング流路222b1、222b2は、回転軸250の延長方向に平行な方向において互いに重ならない位置に配置される。
【0161】
ロータハウジングカバー241、242、243、244に形成されるカバー流路241a、241b、242a、242b、243a、243b、244a、244bは、一側のロータハウジング221、222、223に形成されるハウジング流路221b1、221b2、221c1、221c2、222b1、222b2、222c1、222c2、223b1、223b2、223c1、223c2と、他側のロータハウジング221、222、223に形成されるハウジング流路221b1、221b2、221c1、221c2、222b1、222b2、222c1、222c2、223b1、223b2、223c1、223c2とを連結するように形成される。
【0162】
例えば、第2ロータハウジングカバー242に形成されるカバー流路242a、242bは、第1ロータハウジング221に形成される第2ハウジング流路221c1、221c2と第2ロータハウジング222に形成される第1ハウジング流路222b1、222b2とを連結するように形成される。
【0163】
ハウジング流路221b1、221b2、221c1、221c2、222b1、222b2、222c1、222c2、223b1、223b2、223c1、223c2がエピトロコイド曲面に外接する位置に形成されるので、ハウジング流路221b1、221b2、221c1、221c2、222b1、222b2、222c1、222c2、223b1、223b2、223c1、223c2は、回転軸250の延長方向に平行な方向においてロータ231、232、233の偏心回転範囲外に形成される。カバー流路241a、241b、242a、242b、243a、243b、244a、244bも、両側のハウジング流路221b1、221b2、221c1、221c2、222b1、222b2、222c1、222c2、223b1、223b2、223c1、223c2を互いに連結するためには、回転軸250の延長方向に平行な方向においてロータ231、232、233の偏心回転範囲外に形成されなければならない。
【0164】
ロータ231、232、233は、それぞれ、隣接する他のロータ231、232、233とは異なる方向を向くように配列される。特に、第2実施形態の流体移送装置200においては、ロータ231、232、233が隣接する他のロータ231、232、233と180゜をなすように配列される。
【0165】
例えば、図7において、最も上方の第1ロータ231とその直下の第2ロータ232とは反対方向を向いて配列される。また、最も下方の第3ロータ233とその直上の第2ロータ232とは反対方向を向いて配列される。図7において、ロータ231、232、233は3つであるので、最も下方の第3ロータ233と最も上方の第1ロータ231とは同じ方向を向いて配列される。
【0166】
第1カバー流路241a、242a、243a、244aと第2カバー流路241b、242b、243b、244bとは、ロータハウジングカバー241、242、243、244の平面上で、回転軸貫通孔241c、242c、243c、244cを挟んで180゜の角度をなすように配置される。
【0167】
第2実施形態の流体移送装置200において、ロータハウジングカバー241、242、243、244は、隣接する他のロータハウジングカバー241、242、243、244に対して90゜の角度をなすように配列される。図7において、最も上方の第1ロータハウジングカバー241は、平面図上でその下の第2ロータハウジングカバー242に対して90゜の角度をなすように配置される。また、第2ロータハウジングカバー242とその下の第3ロータハウジングカバー243とも、90゜の角度をなすように配置される。このような規則性は繰り返し続けられる。
【0168】
ただし、第1カバー流路241a、242a、243a、244aと第2カバー流路241b、242b、243b、244bとは対称であるので、その位置と形状が同様である。よって、図7において、第1ロータハウジングカバー241と第3ロータハウジングカバー243とは、180゜の角度をなすように配置されるが、同じ方向を向いて配列されるともいえる。これは説明の違いにすぎず、どちらの場合も、隣接するロータハウジングカバー241、242、243、244同士は90゜の角度をなすように配置されるということは変わらない。
【0169】
図7において説明していない符号221a、222a、223aは流体圧縮空間、231a、232a、233aは収容部である。
【0170】
図8図7に示す流体移送装置200の第1ロータハウジング221及び第1ロータハウジングカバー241を示す斜視図である。
【0171】
2つの第1ハウジング流路221b1、221b2は、回転軸250を中心に互いに反対側に対称に形成される。ピーナッツ状のエピトロコイド曲面に形成される2つの変曲点を結んでエピトロコイド曲面を2つの半円に分けると、2つの第1ハウジング流路221b1、221b2は異なる半円に形成される。
【0172】
2つの第2ハウジング流路221c1、221c2は、回転軸250を中心に互いに反対側に対称に形成される。ピーナッツ状のエピトロコイド曲面に形成される2つの変曲点を結んでエピトロコイド曲面を2つの半円に分けると、2つの第2ハウジング流路221c1、221c2は異なる半円に形成される。
【0173】
2つの第1ハウジング流路221b1、221b2のいずれか一方221b1から、エピトロコイド曲面に沿って2つの第2ハウジング流路221c1、221c2のいずれか一方221c2までの距離を第1距離とし、エピトロコイド曲面に沿って2つの第2ハウジング流路221c1、221c2の他方221c1までの距離を第2距離とすると、第1距離と第2距離とのいずれか一方(221b1-221c2)は、エピトロコイド曲面の変曲点を通る。それに対して、第1距離と第2距離との他方(221b1-221c1)は、エピトロコイド曲面の変曲点を通らない。
【0174】
ここで、第1距離と第2距離とのうち、エピトロコイド曲面の変曲点を通るのは、エピトロコイド曲面の変曲点を通らないのより長い。例えば、2つの第1ハウジング流路221b1、221b2のいずれか一方221b1から、同じ半円に位置する第2ハウジング流路221c1までの距離よりも、他の半円に位置する第2ハウジング流路221c2までの距離の方が長い。
【0175】
上記説明は、2つの第1ハウジング流路221b1、221b2の他方221b2を基準とする第1距離及び第2距離に対しても同様に適用される。また、上記説明は、2つの第2ハウジング流路221c1、221c2のいずれか一方を基準とする2つの第1ハウジング流路221b1、221b2までの距離にも適用される。
【0176】
第1ロータハウジングカバー241に形成されるカバー流路241a、241bは、第1ロータハウジングカバー241の外径より小さい円周に沿って延びる。カバー流路241a、241bは、エピトロコイド曲面の2つの変曲点のうち相対的に近いのを向く方向に延びる。
【0177】
以下、流体移送装置200の動作について説明する。
【0178】
図9はロータ231、232、233の回転による流路の開閉状態の変化、容積変動空間の容積変化を順次示す概念図である。
【0179】
図9図7に示す流体移送装置200を下から上に投影したものである。
【0180】
流体移送装置200の2つの流体出入口211a、212aのいずれか一方からは流体が流入し、他方からは圧縮された流体が排出される。その逆も可能である。図7において、上方の流体出入口211aから流体が流入し、下方の流体出入口212aから流体が排出されるという前提の下で、図9について説明する。同じ構成間の区分のために、上方の流体出入口を第1流体出入口211a、下方の流体出入口を第2流体出入口212aという。
【0181】
(a)列は、第1ロータ231、第1ロータハウジング221、第1ロータハウジング221の両側に配置される第1ロータハウジングカバー241及び第2ロータハウジングカバー242のカバー流路241a、241b、242a、242bを示す平面図である。
【0182】
(b)列は、第2ロータ232、第2ロータハウジング222、第2ロータハウジング222の両側に配置される第2ロータハウジングカバー242及び第3ロータハウジングカバー243のカバー流路242a、242b、243a、243bを示す平面図である。
【0183】
(c)列は、第3ロータ233、第3ロータハウジング223、第3ロータハウジング223の両側に配置される第3ロータハウジングカバー243及び第4ロータハウジングカバー244のカバー流路243a、243b、244a、244bを示す平面図である。
【0184】
点線で示すカバー流路は、ロータの後方に配置されるロータハウジングカバーのカバー流路を示す。例えば、(a-1)列において、点線で示す第1カバー流路241a及び第2カバー流路241bは、第1ロータ231の後方に配置される第1ロータハウジングカバー241に形成される。
【0185】
また、実線で示すカバー流路は、ロータの前方に配置されるロータハウジングカバーのカバー流路を示す。例えば、(a-1)列において、実線で示す第1カバー流路242a及び第2カバー流路242bは、第1ロータ231の前方に配置される第2ロータハウジングカバー242に形成される。
【0186】
第1ロータハウジング221は、第2ロータハウジング222に対して90゜の角度をなすように配列されている。第2ロータハウジング222は、第3ロータハウジング223に対して90゜の角度をなすように配列されている。
【0187】
第1ロータ231は、第2ロータ232に対して180゜の角度をなすように配列されている。第2ロータ232は、第3ロータ233に対して180゜の角度をなすように配列されている。
【0188】
第1ロータハウジングカバー241は、第2ロータハウジングカバー242に対して90゜の角度をなすように配列されている。第2ロータハウジングカバー242は、第3ロータハウジングカバー243に対して90゜の角度をなすように配列されている。第3ロータハウジングカバー243は、第4ロータハウジングカバー244に対して90゜の角度をなすように配列されている。
【0189】
回転軸250とロータ231、232、233の回転比は3:1である。よって、回転軸250が3回転すると、ロータ231、232、233は1回転する。(1)行から(6)行まで回転軸250が約600゜回転するので、ロータ231、232、233は約200゜回転する。
【0190】
(1)行は、流体移送装置200が動作する前の初期状態を示すものである。
【0191】
流体は、第1流体出入口211aから第1流体出入口ハウジング211に流入する。次に、流体は、第1ロータハウジングカバー241の第1カバー流路241aと第1ロータハウジング221の第1ハウジング流路221b1を介して、空間A1に流入する。また、流体は、第1ロータハウジングカバー241の第2カバー流路241bと第1ロータハウジング221の他の第1ハウジング流路221b2を介して、空間B1に流入する。
【0192】
第1ロータ231が(1)行から(3)行まで回転することにより、空間A1は次第に小さくなり、第2ロータ232が(1)行から(3)行まで回転することにより、空間A2は次第に大きくなる。第1ロータ231及び第2ロータ232が(3)行の位置まで偏心回転すると、空間A1の体積は最小となり、空間A2の体積は最大となる。
【0193】
空間A1の流体は、第1ロータハウジング221の第2ハウジング流路221c1、第2ロータハウジングカバー242の第1カバー流路242a、第2ロータハウジング222の第1ハウジング流路222b1を介して、空間A2に流入する。
【0194】
その過程において、空間A1では、第1ロータハウジングカバー241の第1カバー流路241aと第2ロータハウジングカバー242の第1カバー流路242aが同時に連結される時点が存在する。よって、空間A1の流体が第1ロータハウジングカバー241の第1カバー流路241aへ逆流する可能性がある。しかし、第2ロータハウジング222の空間A2は、膨張しているので負圧状態となる。空間A2が負圧状態であるので、空間A1の流体は、逆流するのではなく、空間A2に流入する。
【0195】
第2ロータ232が(3)行から(5)行まで偏心回転することにより、空間A2は体積が次第に小さくなる。また、第3ロータ233が(3)行から(5)行まで偏心回転することにより、空間A3は次第に大きくなる。第2ロータ232及び第3ロータ233が(5)行の位置まで偏心回転すると、空間A2の体積は最小となり、空間A3の体積は最大となる。
【0196】
空間A2の流体は、第2ロータハウジング222の第2ハウジング流路222c1、第3ロータハウジングカバー243の第1カバー流路243a、第3ロータハウジング223の第1ハウジング流路223b1を介して、空間A3に流入する。その過程において、空間A2では、第2ロータハウジングカバー242の第1カバー流路242aと第3ロータハウジングカバー243の第1カバー流路243aが同時に連結される時点が存在する。よって、空間A2の流体が第2ロータハウジングカバー242の第1カバー流路242aへ逆流する可能性がある。しかし、第3ロータハウジング223の空間A3は、膨張しているので負圧状態となる。空間A3が負圧状態であるので、空間A2の流体は、逆流するのではなく、空間A3に流入する。
【0197】
第1ロータ231、第2ロータ232及び第3ロータ233が(6)行の位置まで偏心回転すると、空間A3では、第3ロータハウジングカバー243の第1カバー流路243aと第4ロータハウジングカバー244の第1カバー流路244aが同時に連結される。また、空間C2では、第2ロータハウジングカバー242の第1カバー流路242aと第3ロータハウジングカバー243の第1カバー流路243aが同時に連結される。さらに、空間C1では、第2ロータハウジングカバー242の第1カバー流路242aが連結される。よって、空間A3、C2、C1が互いに連結される。
【0198】
このとき、空間C1は、圧縮されているので正圧状態であり、空間C2は、膨張しているので負圧状態である。正圧と負圧は互いに相殺されるので、正圧状態の空間A3の流体は、第4ロータハウジングカバー244の第1カバー流路244aを介して、第2流体出入口ハウジング212に排出される。
【0199】
以上のように、流体移送装置200のロータ231、232、233が反時計方向に回転することにより、いずれか一方の流体出入口211aに流入した流体は、各ロータハウジングカバー241、242、243、244の第1カバー流路241a、242a、243a、244aと各ロータハウジング221、222、223の流体圧縮空間221a、222a、223aを介して、他方の流体出入口212aから排出される。流体の移送量は、各ロータハウジング221、222、223の空間A、B、Cの変化量と回転軸250の回転に左右される。
【0200】
流体の移送は、各ロータハウジングカバー241、242、243、244の第2カバー流路241b、242b、243b、244bと各ロータハウジング221、222、223の流体圧縮空間221a、222a、223aを介しても同様に行われる。空間B1、B2、B3の体積変化、空間C1、C2、C3の体積変化は、流体が各ロータハウジングカバー241、242、243、244の第1カバー流路241a、242a、243a、244a及び第2カバー流路241b、242b、243b、244bを介して移送されるようにする。
【0201】
3.第3実施形態の流体移送装置300
【0202】
次に、第3実施形態の流体移送装置300について説明する。
【0203】
図10は本発明による第3実施形態の流体移送装置300を示す概念図である。
【0204】
流体移送装置300の外観は、流体出入口ハウジング311、312、ロータハウジング321、322、323、ロータハウジングカバー341、342、343、344、及び回転軸350により形成される。流体移送装置300の外観は、第2実施形態の流体移送装置200の外観と実質的に同様である。よって、第2実施形態の流体移送装置200において説明された構成のほとんどは第3実施形態の流体移送装置300にも適用することができる。
【0205】
ただし、ロータハウジング321、322、323の配列、ロータハウジング321、322、323に形成されるハウジング流路321b1、321b2、321c1、321c2、322b1、322b2、322c1、322c2、323b1、323b2、323c1、323c2の位置、ロータ331、332、333の配列などは第2実施形態と異なる。以下、第2実施形態との相違点について説明する。
【0206】
図10において説明していない符号361、362はベアリング及び/又はリテーナである。
【0207】
図11図10に示す流体移送装置300の分解斜視図である。
【0208】
ロータハウジング321、322、323同士の配列方向は、規則性を有して繰り返される。第3実施形態の流体移送装置300においては、複数のロータハウジング321、322、323が全て同じ方向を向いて配列される。図11においては、第1ロータハウジング321、第2ロータハウジング322及び第3ロータハウジング323が全て横方向を向いて配列される。
【0209】
ロータハウジング321、322、323には、ハウジング流路321b1、321b2、321c1、321c2、322b1、322b2、322c1、322c2、323b1、323b2、323c1、323c2が形成される。ハウジング流路321b1、321b2、321c1、321c2、322b1、322b2、322c1、322c2、323b1、323b2、323c1、323c2は、エピトロコイド曲面に外接する位置に形成される。第1ハウジング流路321b1、321b2、322b1、322b2、323b1、323b2及び第2ハウジング流路321c1、321c2、322c1、322c2、323c1、323c2は、複数備えられる。例えば、第1ハウジング流路321b1、321b2、322b1、322b2、323b1、323b2及び第2ハウジング流路321c1、321c2、322c1、322c2、323c1、323c2は、それぞれロータハウジング321、322、323毎に2つずつ形成されてもよい。
【0210】
いずれかのロータハウジング321、322、323において、第1ハウジング流路321b1、321b2、322b1、322b2、323b1、323b2及び第2ハウジング流路321c1、321c2、322c1、322c2、323c1、323c2は、回転軸350の延長方向に平行な方向において互いに重ならない位置にそれぞれ形成される。また、異なるロータハウジング321、322、323に形成される第1ハウジング流路321b1、321b2、322b1、322b2、323b1、323b2及び第2ハウジング流路321c1、321c2、322c1、322c2、323c1、323c2も、互いに重ならない位置に形成される。
【0211】
それに対して、異なるロータハウジング321、322、323に形成される第1ハウジング流路321b1、321b2、322b1、322b2、323b1、323b2同士は、回転軸350の延長方向に平行な方向において互いに重なるように形成される。また、異なるロータハウジング321、322、323に形成される第2ハウジング流路321c1、321c2、322c1、322c2、323c1、323c2同士は、回転軸350の延長方向に平行な方向において互いに重なるように形成される。
【0212】
ロータ331、332、333は、隣接する他のロータ331、332、333に対して90゜の角度をなすように配列される。第1ロータ331と第2ロータ332とは、90゜の角度をなすように配列される。また、第2ロータ332と第3ロータ333とは、90゜の角度をなすように配列される。ロータ331、332、333の配列方向は規則性を有するので、いずれかのロータ331、332、333を挟んで、一側のロータ331、332、333と他側のロータ331、332、333とは、180゜の角度をなすように配列される。例えば、第2ロータ332を挟んで、一側の第1ロータ331と他側の第3ロータ333とは、180゜の角度をなすように配列される。
【0213】
ロータハウジングカバー341、342、343、344に形成されるカバー流路341a、341b、342a、342b、343a、343b、344a、344bは、一側のロータハウジング321、322、323に形成されるハウジング流路321b1、321b2、321c1、321c2、322b1、322b2、322c1、322c2、323b1、323b2、323c1、323c2と、他側のロータハウジング321、322、323に形成されるハウジング流路321b1、321b2、321c1、321c2、322b1、322b2、322c1、322c2、323b1、323b2、323c1、323c2とを連結するように形成される。
【0214】
例えば、第2ロータハウジングカバー342に形成されるカバー流路342a、342bは、第1ロータハウジング321に形成される第2ハウジング流路321c1、321c2と第2ロータハウジング322に形成される第1ハウジング流路322b1、322b2とを連結するように形成される。
【0215】
ハウジング流路321b1、321b2、321c1、321c2、322b1、322b2、322c1、322c2、323b1、323b2、323c1、323c2がエピトロコイド曲面に外接する位置に形成されるので、ハウジング流路321b1、321b2、321c1、321c2、322b1、322b2、322c1、322c2、323b1、323b2、323c1、323c2は、回転軸350の延長方向に平行な方向においてロータ331、332、333の偏心回転範囲外に形成される。
【0216】
カバー流路341a、341b、342a、342b、343a、343b、344a、344bも、両側のハウジング流路321b1、321b2、321c1、321c2、322b1、322b2、322c1、322c2、323b1、323b2、323c1、323c2を互いに連結するためには、回転軸350の延長方向に平行な方向においてロータ331、332、333の偏心回転範囲外に形成されなければならない。第1カバー流路341a、342a、343a、344aと第2カバー流路341b、342b、343b、344bとは、ロータハウジングカバー341、342、343、344の平面上で、回転軸貫通孔341c、342c、343c、344cを挟んで180゜の角度をなすように配置される。
【0217】
第3実施形態の流体移送装置300において、ロータハウジングカバー341、342、343、344は、全て同じ方向を向いて配列される。ロータハウジングカバー341、342、343、344の第1カバー流路341a、342a、343a、344a及び第2カバー流路341b、342b、343b、344bが対称であるので、ロータハウジングカバー341、342、343、344は、180゜回転しても回転前の位置と同じ状態となる。よって、第3実施形態の流体移送装置300において、ロータハウジングカバー341、342、343、344は、隣接する他のロータハウジングカバー341、342、343、344に対して180゜の角度をなすように配列されるともいえる。
【0218】
図12図10に示す流体移送装置300の第1ロータハウジング321と第1ロータハウジング321の両側に配置される第1ロータハウジングカバー341及び第2ロータハウジングカバー342を示す斜視図である。
【0219】
2つの第1ハウジング流路321b1、321b2は、回転軸350を中心に互いに反対側に対称に形成される。ピーナッツ状のエピトロコイド曲面に形成される2つの変曲点を結んでエピトロコイド曲面を2つの半円に分けると、2つの第1ハウジング流路321b1、321b2は異なる半円に形成される。
【0220】
2つの第2ハウジング流路321c1、321c2は、回転軸350を中心に互いに反対側に対称に形成される。ピーナッツ状のエピトロコイド曲面に形成される2つの変曲点を結んでエピトロコイド曲面を2つの半円に分けると、2つの第2ハウジング流路321c1、321c2は異なる半円に形成される。
【0221】
2つの第1ハウジング流路321b1、321b2のいずれか一方321b1から、エピトロコイド曲面に沿って2つの第2ハウジング流路321c1、321c2のいずれか一方321c2までの距離を第1距離とし、他方321c1までの距離を第2距離とすると、第1距離と第2距離とのいずれか一方(321b1-321c2)は、エピトロコイド曲面の変曲点を通る。それに対して、第1距離と第2距離との他方(321b1-321c1)は、エピトロコイド曲面の変曲点を通らない。
【0222】
ここで、第1距離と第2距離とのうち、エピトロコイド曲面の変曲点を通るのは、エピトロコイド曲面の変曲点を通らないのより短い。例えば、2つの第1ハウジング流路321b1、321b2のいずれか一方321b1から、同じ半円に位置する第2ハウジング流路321c1までの距離よりも、他の半円に位置する第2ハウジング流路321c2までの距離の方が短い。
【0223】
上記説明は、2つの第1ハウジング流路321b1、321b2の他方321b2を基準とする第1距離及び第2距離に対しても同様に適用される。また、上記説明は、2つの第2ハウジング流路321c1、321c2のいずれか一方を基準とする2つの第1ハウジング流路321b1、321b2までの距離にも適用される。
【0224】
ロータハウジングカバー341、342に形成されるカバー流路341a、341b、342a、342bは、ロータハウジングカバー341、342の外径より小さい円周に沿って延びる。カバー流路341a、341b、342a、342bは、エピトロコイド曲面の2つの変曲点のうち相対的に近いのを向く方向に延びる。カバー流路341a、341b、342a、342bは、エピトロコイド曲面の2つの変曲点のいずれかとロータハウジングカバー341、342の外径間を経由するように形成される。
【0225】
図13図10に示す流体移送装置300の第1ロータ331、第1ロータハウジング321及び第2ロータハウジングカバー342を示す平面図である。
【0226】
第1ロータ331が回転して第1ロータ331の頂点が第1ロータハウジング321のいずれかの第2ハウジング流路321c2を通過する際に、3つの容積変動空間A1、B1、C1のうち2つの容積変動空間A1、B1が第2ハウジング流路321c2により連結される瞬間が存在する。このとき、2つの容積変動空間A1、B1のいずれか一方は正圧状態であり、他方は負圧状態である。よって、2つの容積変動空間A1、B1が第2ハウジング流路321c2により連結される瞬間、流量の移送と圧力の発生に微小な損失が発生し得る。このような損失は第2実施形態の流体移送装置200においても発生し得る。
【0227】
このような損失が発生し得るものの、第2実施形態と第3実施形態においては、図15及び図16のロータ構造を適用することにより摩擦を低減できるという利点がある。それについては後述する。
【0228】
一方、このような損失を低減するためには、ロータ331の形状を変形すること、ロータ331の頂点にベインを設けること、ハウジング流路321b1、321b2、321c1、321c2の断面積を最小化することが考えられる。
【0229】
次に、流体移送装置300の動作について説明する。
【0230】
図14はロータ331、332、333の回転による流路の開閉状態の変化、容積変動空間の容積変化を順次示す概念図である。図14図11に示す流体移送装置300を下から上に投影したものである。
【0231】
流体移送装置300の2つの流体出入口311a、312aのいずれか一方からは流体が流入し、他方からは圧縮された流体が排出される。その逆も可能である。図11において、上方の流体出入口311aから流体が流入し、下方の流体出入口312aから流体が排出されるという前提の下で、図14について説明する。
【0232】
(a)列は、第1ロータ331、第1ロータハウジング321、第1ロータハウジング321の両側に配置される第1ロータハウジングカバー341及び第2ロータハウジングカバー342のカバー流路341a、341b、342a、342bを示す平面図である。
【0233】
(b)列は、第2ロータ332、第2ロータハウジング322、第2ロータハウジング322の両側に配置される第2ロータハウジングカバー342及び第3ロータハウジングカバー343のカバー流路342a、342b、343a、343bを示す平面図である。
【0234】
(c)列は、第3ロータ333、第3ロータハウジング323、第3ロータハウジング323の両側に配置される第3ロータハウジングカバー343及び第4ロータハウジングカバー344のカバー流路343a、343b、344a、344bを示す平面図である。
【0235】
(1)行に示すように、ロータハウジング321、322、323は、全て同じ方向を向いて配列されている。ロータハウジングカバー341、342、343、344も、全て同じ方向を向いて配列されている。
【0236】
第1ロータ331は、第2ロータ332に対して90゜の角度をなすように配列されている。第2ロータ332は、第3ロータ333に対して90゜の角度をなすように配列されている。第1ロータ331は、第3ロータ333に対して180゜の角度をなすように配列されている。
【0237】
回転軸350とロータ331、332、333の回転比は3:1である。よって、回転軸350が3回転すると、ロータ331、332、333は1回転する。(1)行から(6)行まで回転軸350が600゜回転するので、ロータ331、332、333は200゜回転する。
【0238】
(1)行は、流体移送装置300が動作する前の初期状態を示すものである。流体移送装置300が動作すると、第1ロータ331、第2ロータ332及び第3ロータ333が偏心回転し、流体は第1流体出入口311aから第1流体出入口ハウジング311に流入する。
【0239】
第1ロータ331が繰り返し偏心回転すると、第1ロータ331の位置が(1)行の状態に達する直前に、流体は、第1ロータハウジングカバー341の第1カバー流路341aと第1ロータハウジング321の第1ハウジング流路321b1を介して、空間A1に流入する。
【0240】
第1ロータ331が(1)行から(3)行まで偏心回転することにより、空間A1は次第に小さくなり、第2ロータ332が(1)行から(3)行まで偏心回転することにより、空間A2は次第に大きくなる。第1ロータ331及び第2ロータ332が(3)行の位置まで偏心回転すると、空間A1の体積は最小となり、空間A2の体積は最大となる。
【0241】
流体は、第1ロータハウジング321の第2ハウジング流路321c1、第2ロータハウジングカバー342の第1カバー流路342a、第2ロータハウジング322の第1ハウジング流路322b1を介して、空間A2に流入する。その過程において、空間A1では、第1ロータハウジングカバー341の第1カバー流路341aと第2ロータハウジングカバー342の第1カバー流路342aが同時に連結される時点が存在する。よって、空間A1の流体が第1ロータハウジングカバー341の第1カバー流路341aへ逆流する可能性がある。しかし、第2ロータハウジング322の空間A2は、膨張しているので負圧状態となる。空間A2が負圧状態であるので、空間A1の流体は、逆流するのではなく、空間A2に流入する。
【0242】
第2ロータ332が(3)行から(5)行まで回転することにより、空間A2は体積が次第に小さくなる。また、第3ロータ333が(3)行から(5)行まで回転することにより、空間A3は次第に大きくなる。第2ロータ332及び第3ロータ333が(5)行の位置まで偏心回転すると、空間A2の体積は最小となり、空間A3の体積は最大となる。
【0243】
空間A2の流体は、第2ロータハウジング322の第2ハウジング流路322c1、第3ロータハウジングカバー343の第1カバー流路343a、第3ロータハウジング323の第1ハウジング流路323b1を介して、空間A3に流入する。その過程において、空間A2では、第2ロータハウジングカバー342の第1カバー流路342aと第3ロータハウジングカバー343の第1カバー流路343aが同時に連結される時点が存在する。よって、空間A2の流体が第2ロータハウジングカバー342の第1カバー流路342aへ逆流する可能性がある。しかし、第3ロータハウジング323の空間A3は、膨張しているので負圧状態となる。空間A3が負圧状態であるので、空間A2の流体は、逆流するのではなく、空間A3に流入する。
【0244】
第1ロータ331、第2ロータ332及び第3ロータ333が(6)行の位置よりさらに偏心回転すると、空間A3では、第3ロータハウジングカバー343の第1カバー流路343aと第4ロータハウジングカバー344の第1カバー流路344aが同時に連結される瞬間が存在する。このとき、空間C2では、第2ロータハウジングカバー342の第1カバー流路342aと第3ロータハウジングカバー343の第1カバー流路343aが同時に連結される。また、空間C1では、第2ロータハウジングカバー342の第1カバー流路342aが連結される。よって、空間A3、C2、C1が互いに連結される。
【0245】
このとき、空間C1は、圧縮されているので正圧状態であり、空間C2は、膨張しているので負圧状態である。正圧と負圧は互いに相殺されるので、正圧状態の空間A3の流体は、第4ロータハウジングカバー344の第1カバー流路344aを介して、第2流体出入口ハウジング312に排出される。
【0246】
以上のように、流体移送装置300のロータ331、332、333が反時計方向に回転することにより、いずれか一方の流体出入口311aに流入した流体は、各ロータハウジングカバー341、342、343、344の第1カバー流路341a、342a、343a、344aと各ロータハウジング321、322、323の流体圧縮空間321a、322a、323aを介して、他方の流体出入口312aから排出される。流体の移送量は、各ロータハウジング321、322、323の空間A、B、Cの変化量と回転軸350の回転に左右される。
【0247】
流体の移送は、各ロータハウジングカバー341、342、343、344の第2カバー流路341b、342b、343b、344bと各ロータハウジング321、322、323の流体圧縮空間321a、322a、323aを介しても同様に行われる。空間B1、B2、B3の体積変化、空間C1、C2、C3の体積変化は、流体が各ロータハウジングカバー341、342、343、344の第1カバー流路341a、342a、343a、344a及び第2カバー流路341b、342b、343b、344bを介して移送されるようにする。
【0248】
4.第1~第3実施形態の流体移送装置に適用されるロータ
【0249】
以上では三角柱状のロータについて説明した。以下ではロータの変形例について説明する。
【0250】
図15は第1~第3実施形態の流体移送装置100、200、300に適用されるロータ431の概念図である。
【0251】
ロータ431は、突起部431bを備える。突起部431bは、ロータハウジングカバーに対向する面の縁部に沿って突出する。突起部431bは、縁部の内面に対して段差を有する。よって、ロータ431が回転する際に、突起部431bはロータハウジングカバーに接触しているのに対して、縁部の内面はロータハウジングカバーから離隔している。
【0252】
ロータ431は、2つのロータハウジングカバーに対向して配置されるので、突起部431bは、ロータ431の一側及び他側にそれぞれ形成されてもよい。
【0253】
ロータ431に突起部431bが備えられた場合、ロータ431とロータハウジングカバーとの摩擦面積が小さくなる。よって、突起部431bは、ロータ431とロータハウジングカバーとの摩擦を低減するという効果を有する。
【0254】
図15において説明していない符号431aは収容部である。
【0255】
図16は第1~第3実施形態の流体移送装置100、200、300に適用される他のロータ531の概念図である。
【0256】
ロータ531は、突起部531bを備える。突起部531bは、第1突起部531b1及び第2突起部531b2からなる。
【0257】
第1突起部531b1は、ロータハウジングカバーに対向する面から突出する。ただし、図15とは異なり、第1突起部531b1は、ロータ531の縁部に沿って突出するのではなく、ロータ531の縁部より小さい周面に沿って形成される。よって、第1突起部531b1は、第1突起部531b1の内面に対しても段差を有し、ロータ531の縁部に対しても段差を有する。
【0258】
第2突起部531b2は、第1突起部531b1の頂点からロータ531の頂点に向かって突出する。第2突起部531b2は、第1突起部531b1に対して、ベインに類似した構造を有するものといえる。
【0259】
ロータ531に突起部531bが備えられた場合、ロータ531とロータハウジングカバーとの摩擦面積が小さくなる。よって、突起部531bは、ロータ531とロータハウジングカバーとの摩擦を低減するという効果を有する。
【0260】
図16において説明していない符号531aは収容部である。
【0261】
前述した流体移送装置は、前述した実施形態の構成と方法に限定されるものではなく、各実施形態の全部又は一部を選択的に組み合わせて構成することにより様々に変形することができる。
【産業上の利用可能性】
【0262】
本発明は、流体移送装置に関する産業分野に用いることができる。
なお、出願当初の請求項は以下の通りであった。
[請求項1]
エピトロコイド曲面状の流体圧縮空間を形成するロータハウジングと、
前記ロータハウジングの流体圧縮空間を複数の容積変動空間に区画するように前記ロータハウジングの流体圧縮空間内に配置され、その場で回転する回転軸に偏心結合されて前記流体圧縮空間内で偏心回転するロータと、
前記ロータハウジングの流体圧縮空間を覆うように形成され、中心に形成される回転軸貫通孔と、前記回転軸貫通孔を中心に互いに反対側に対称に形成される第1カバー流路及び第2カバー流路とを備えるロータハウジングカバーと、
を含み、
前記ロータハウジングカバーは、複数備えられ、互いに離隔して配置され、
前記ロータハウジングは、複数備えられ、隣接して配置される2つの前記ロータハウジングカバー間に1つずつ配置され、
前記ロータは、各前記ロータハウジングの流体圧縮空間内に1つずつ配置され、
前記ロータの配列方向は、前記回転軸に対して前記ロータの中心が向く方向から決定され、各前記ロータは、隣接する他の前記ロータとは異なる方向を向くように配列されることを特徴とする流体移送装置。
[請求項2]
前記第1カバー流路と前記第2カバー流路とは、前記ロータハウジングカバーの平面上で、前記回転軸貫通孔を挟んで180゜の角度をなすように配置されることを特徴とする請求項1に記載の流体移送装置。
[請求項3]
前記ロータハウジングの配列方向は、前記エピトロコイド曲面が向く方向から決定され、前記ロータハウジング同士の配列方向は、規則性を有して繰り返され、
前記ロータハウジングカバーの配列方向は、前記回転軸貫通孔を中心とする前記第1カバー流路及び前記第2カバー流路の配置方向から決定され、前記ロータハウジングカバー同士の配列方向は、規則性を有して繰り返されることを特徴とする請求項1に記載の流体移送装置。
[請求項4]
前記ロータハウジングの数は、3つ以上であり、
前記ロータハウジングカバーの数は、前記ロータハウジングの数よりも1つ多く、
前記ロータハウジングカバーと前記ロータハウジングとは、交互に配置されることを特徴とする請求項3に記載の流体移送装置。
[請求項5]
前記ロータハウジングカバーの配列方向は、前記回転軸貫通孔を中心とする前記第1カバー流路及び前記第2カバー流路の配置方向から決定され、
前記ロータハウジングカバーは、隣接する他の前記ロータハウジングカバーに対して90゜の角度をなすように配列されることを特徴とする請求項1に記載の流体移送装置。
[請求項6]
前記第1カバー流路及び前記第2カバー流路は、前記回転軸の延長方向に平行な方向において前記ロータの偏心回転範囲と重なる範囲内に配置され、開放時に隣接して配置される2つの前記ロータハウジングの流体圧縮空間が連通するように前記ロータハウジングカバーを貫通することを特徴とする請求項1に記載の流体移送装置。
[請求項7]
前記ロータハウジングの配列方向は、前記エピトロコイド曲面が向く方向から決定され、
前記ロータハウジングは、全て同じ方向を向いて配列されるか、又は隣接する他の前記ロータハウジングに対して90゜の角度をなすように配列されることを特徴とする請求項1に記載の流体移送装置。
[請求項8]
前記ロータハウジングは、隣接する他の前記ロータハウジングに対して90゜の角度をなすように配列され、
前記ロータは、隣接する他の前記ロータに対して180゜の角度をなすように配列されることを特徴とする請求項7に記載の流体移送装置。
[請求項9]
前記ロータハウジングは、全て同じ方向を向いて配列され、
前記ロータは、隣接する他の前記ロータに対して90゜の角度をなすように配列されることを特徴とする請求項7に記載の流体移送装置。
[請求項10]
前記ロータハウジングは、前記エピトロコイド曲面に外接する位置に形成されるハウジング流路を備え、
前記ハウジング流路は、前記流体圧縮空間に連通するように形成され、前記回転軸の延長方向に平行な方向に延びて一側の前記ロータハウジングカバーと他側の前記ロータハウジングカバーとのいずれかに向けて開放されることを特徴とする請求項7に記載の流体移送装置。
[請求項11]
前記ハウジング流路は、
一側の前記ロータハウジングカバーに向けて開放される第1ハウジング流路と、
他側の前記ロータハウジングカバーに向けて開放される第2ハウジング流路と、
を含むことを特徴とする請求項10に記載の流体移送装置。
[請求項12]
前記第1ハウジング流路は、複数備えられ、前記回転軸を中心に互いに反対側に対称に形成され、
前記第2ハウジング流路は、複数備えられ、前記回転軸を中心に互いに反対側に対称に形成されることを特徴とする請求項11に記載の流体移送装置。
[請求項13]
いずれかの前記ロータハウジングを一側の前記ロータハウジングカバーから見たときの前記第1ハウジング流路の配列と、前記いずれかのロータハウジングを他側の前記ロータハウジングカバーから見たときの前記第2ハウジング流路の配列とは、同一であることを特徴とする請求項12に記載の流体移送装置。
[請求項14]
一側の前記ロータハウジングに形成されるハウジング流路及び他側の前記ロータハウジングに形成されるハウジング流路は、前記回転軸の延長方向に平行な方向において互いに重ならない位置にそれぞれ配置され、
前記第1カバー流路及び前記第2カバー流路は、前記一側のロータハウジングに形成される前記ハウジング流路と前記他側のロータハウジングに形成される前記ハウジング流路とを連結するように形成されることを特徴とする請求項10に記載の流体移送装置。
[請求項15]
前記ロータハウジングは、隣接する他の前記ロータハウジングに対して90゜の角度をなすように配列され、
前記第1ハウジング流路及び前記第2ハウジング流路は、それぞれ2つ備えられ、2つの前記第1ハウジング流路のいずれか一方から、前記エピトロコイド曲面に沿って、2つの前記第2ハウジング流路のいずれか一方までの距離を第1距離とし、2つの前記第2ハウジング流路の他方までの距離を第2距離とすると、前記第1距離と前記第2距離とのうち、前記エピトロコイド曲面の変曲点を通るのは、前記エピトロコイド曲面の変曲点を通らないのより長いことを特徴とする請求項11に記載の流体移送装置。
[請求項16]
前記第1カバー流路及び前記第2カバー流路は、前記ロータハウジングカバーの外径より小さい円周に沿って延び、前記エピトロコイド曲面の2つの変曲点のうち相対的に近いのを向く方向に延びることを特徴とする請求項15に記載の流体移送装置。
[請求項17]
前記ロータは、隣接する他の前記ロータに対して180゜の角度をなすように配列されることを特徴とする請求項15に記載の流体移送装置。
[請求項18]
前記ロータハウジングは、全て同じ方向を向いて配列され、
前記第1ハウジング流路及び前記第2ハウジング流路は、それぞれ2つ備えられ、2つの前記第1ハウジング流路のいずれか一方から、前記エピトロコイド曲面に沿って、2つの前記第2ハウジング流路のいずれか一方までの距離を第1距離とし、2つの前記第2ハウジング流路の他方までの距離を第2距離とすると、前記第1距離と前記第2距離とのうち、前記エピトロコイド曲面の変曲点を通るのは、前記エピトロコイド曲面の変曲点を通らないのより短いことを特徴とする請求項11に記載の流体移送装置。
[請求項19]
前記第1ハウジング流路及び前記第2ハウジング流路は、前記回転軸の延長方向に平行な方向において互いに重ならないように形成され、
前記第1ハウジング流路同士は、前記回転軸の延長方向に平行な方向において互いに重なるように形成され、
前記第2ハウジング流路同士は、前記回転軸の延長方向に平行な方向において互いに重なるように形成されることを特徴とする請求項18に記載の流体移送装置。
[請求項20]
前記第1カバー流路及び前記第2カバー流路は、前記ロータハウジングカバーの外径より小さい円周に沿って延び、前記エピトロコイド曲面の2つの変曲点のいずれかと前記ロータハウジングカバーの外径間を経由するように形成されることを特徴とする請求項18に記載の流体移送装置。
[請求項21]
前記ロータは、隣接する他の前記ロータに対して90゜の角度をなすように配列されることを特徴とする請求項18に記載の流体移送装置。
[請求項22]
いずれかの前記ロータを挟んで、一側の前記ロータと他側の前記ロータとは、180゜の角度をなすように配列されることを特徴とする請求項21に記載の流体移送装置。
[請求項23]
前記ロータは、前記ロータハウジングカバーに対向する面の縁部に沿って突出する突起部を備えることを特徴とする請求項10~請求項22のいずれか1つに記載の流体移送装置。
[請求項24]
前記ロータは、前記ロータハウジングカバーに対向する面から突出する突起部を備え、
前記突起部は、
前記ロータハウジングカバーに対向する面の縁部より小さい周面に沿って形成される第1突起部と、
前記第1突起部の頂点から前記ロータの頂点に向かって突出する第2突起部と、
を含むことを特徴とする請求項10~請求項22のいずれか1つに記載の流体移送装置。
図1
図2
図3a
図3b
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