(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-15
(45)【発行日】2022-06-23
(54)【発明の名称】組成物の筋損傷および筋疲労を予防する能力を評価する方法;食品補助剤および医薬品
(51)【国際特許分類】
A23L 33/16 20160101AFI20220616BHJP
A23L 33/15 20160101ALI20220616BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20220616BHJP
A61K 33/24 20190101ALI20220616BHJP
A61K 31/355 20060101ALI20220616BHJP
A61K 31/353 20060101ALI20220616BHJP
A61K 31/352 20060101ALI20220616BHJP
A61K 31/19 20060101ALI20220616BHJP
A61K 31/194 20060101ALI20220616BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20220616BHJP
【FI】
A23L33/16
A23L33/15
A23L33/105
A61K33/24
A61K31/355
A61K31/353
A61K31/352
A61K31/19
A61K31/194
A61P21/00
(21)【出願番号】P 2021014237
(22)【出願日】2021-02-01
(62)【分割の表示】P 2018555969の分割
【原出願日】2017-03-08
【審査請求日】2021-03-01
(32)【優先日】2016-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】398057293
【氏名又は名称】ソシエテ・デクスプロワタシオン・デ・プロデュイ・プール・レ・アンデュストリー・シミック・セピック
【氏名又は名称原語表記】SOCIETE D’EXPLOITATION DE PRODUITS POUR LES INDUSTRIES CHIMIQUES SEPPIC
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【氏名又は名称】布施 行夫
(72)【発明者】
【氏名】レティシア・カッツァート
(72)【発明者】
【氏名】キャサリン・カーン
(72)【発明者】
【氏名】アンブレ・デプーター
【審査官】戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104415053(CN,A)
【文献】Asian J. Sports Med.,2015年,vol.6, no.1,pp.e24898(1-7)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 33/00-33/29
A61K 31/00-31/80
A61P 21/00-21/06
FSTA/CAplus/AGRICOLA/BIOSIS/
MEDLINE/EMBASE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Google
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 多価金属カチオン(C
METAL)の少なくとも1つの塩、
- ビタミンEまたはビタミンEアセテートから選択される少なくとも1つの化合物(V
E)、
- フラバノールファミリーの化合物、アントシアニンファミリーの化合物、フェノール酸ファミリーの化合物、およびフラボノールファミリーの化合物および/またはそのグルコシル化誘導体から選択される少なくとも1つの食用ポリフェノール化合物を含む食用組成物(C
A)であって、
(C
METAL)/(V
E)のモル比が0.50以上2.00以下である
、
治療による人体の処置方法における、身体運動によって引き起こされる筋疲労および/または筋損傷を予防するための使用のための、食用組成物(C
A)。
【請求項2】
請求項1に記載の組成物(C
A)であって、前記組成物(C
A)の重量100%につき、
- 5重量%~50重量%の、多価金属カチオン(C
M)の塩および食用有機アニオンの塩、
- 1重量%~35重量%の、ビタミンEまたはビタミンEアセテートから選択される少なくとも1つの化合物(V
E)、
- 0.5重量%~80重量%の、フラバノールファミリーの化合物、アントシアニンファミリーの化合物、フェノール酸ファミリーの化合物、およびフラボノールファミリーの化合物および/またはそのグルコシル化誘導体から選択されるポリフェノール化合物の食用組成物(PP)、
- 10重量%~93.5重量%の、少なくとも1つの薬学的および/または栄養的に許容される加工用添加剤を含み、
(C
M)/(V
E)のモル比が0.50以上2.00以下である、組成物(C
A)。
【請求項3】
食品補助組成物を調製するための、請求項1および2のいずれか1項に定義される食用組成物(C
A)の使用。
【請求項4】
食品補助剤としての、請求項1および2のいずれか1項に定義される食用組成物(C
A)の使用。
【請求項5】
治療による人体の処置方法を実施するための、請求項1および2のいずれか1項に定義される食用組成物(C
A)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトにおける身体運動によって引き起こされる筋疲労および筋損傷を予防する、および/または減少させることを意図した化学物質または化学組成物を選択することを目的としたインビトロの試験方法に関する。
【0002】
本発明の主題はまた、上記の化学組成物および食品補助剤、およびそれを含む薬剤である。
【背景技術】
【0003】
ヒトにおいて、激しいまたは長期の筋肉活動の期間は全て、筋力低下と考えられる筋肉の性能の低下を引き起こし得る。筋力低下は、身体の全ての筋肉、より特定的には、例えば四肢の筋肉などの骨格筋を含み得る。その強さに応じて、筋力低下は、単なる「筋疲労」、またはそうでない場合、筋肉強度の低下、筋肉を動かすことの困難さ、および四肢の運動筋肉の場合には、動くことの困難さ、に関連する病的状態を特徴とする。
【0004】
定義により、筋力低下が短期間(数分から数時間の範囲であり得る)のうちに回復可能である場合、それは筋疲労として説明される。すなわち、ScherrerおよびMonodの定義によると、身体活動に関し、筋活動の後の一時的な筋肉の作業能力の低下は、休息によって回復可能な運動中枢の一定レベルの刺激に対して生じる[Scherrer
et al.,“le travail musculaire local et la fatigue chez l’homme”[Local muscle work and fatigue in human beings”];J.Physiol.(Paris)1960;52:419-501]。
【0005】
他方、筋力低下が、回復するのが遅い、または回復するのが困難であり、筋肉の構造変化に関連する場合、運動誘発性筋損傷(EIMD)であると考えられる。筋損傷は即時の筋力低下を引き起こし、それは消えるまで数日間持続し得る。さらに、この筋損傷のために、対象にとって異常または過剰な運動を行った後の数日間、関与する筋肉は膨らみ、痛みが生じ、および/または堅くなり得る。この現象は、「遅発性筋肉痛」(DOMS)と呼ばれる[Allen DG et al.,“Mechanisms of stretch-induced muscle damage in normal and dystrophic muscle:role of ionic changes”;J.Physiol.2005 Sep 15;567(Pt 3):723-35]。
【0006】
一般に、筋疲労は、エネルギーの欠乏、および筋収縮が増加するエネルギー需要に応答することを可能にする主要な代謝産物の結果であると考えられる。長期間の身体活動の後、筋肉は疲労し、神経系が収縮することを要求しても、もはや収縮することができない[Baird MF et al.,“Creatine-kinase- and exercise-related muscle damage implications for muscle performance and recovery”;J.Nutr.Metab.2012;Epub 2012 Jan11]。筋疲労に関連するいくつかの生物学的メカニズムが存在する。最も重要なものは、例えばグルコース、グリコーゲンまたは血糖などの消費の増加またはATPを産生するための基質の欠如による、筋肉のアシドーシスおよびATP枯渇である。筋肉のアシドーシスは、酸素の不在下で解糖中に生じる乳酸の産生の結果である。この乳酸はただちに乳酸塩およびヒドロニウ
ムイオンに変換される。乳酸塩の一部は、筋肉細胞から拡散し、血液中に見出される。この乳酸塩の割合は血清乳酸値と呼ばれる。ヒドロニウムイオンの生成は、pHの低下および筋肉のアシドーシスの発生を誘発し、筋収縮機構を妨げる。
【0007】
筋疲労に関連するこれらの機構は、例えば、乳酸塩、アンモニア水、またはオキシプリン(ヒポキサンチンおよびキサンチンなど)などの多数の生物学的マーカーによってモニターすることができる。血液中のその含有量の増加は、好気性ATP産生が不十分であり、その嫌気性産生で補充する必要があることを示すため、血清乳酸値は最もよく知られた筋疲労の生物学的マーカーである。
【0008】
さらに、運動がより激しくなると血清乳酸値が上昇することが観察されている[Finsterer J,“Biomarkers of peripheral muscle fatigue during exercise”;BMC Musculoskelet Disord.,2012;13:218]。骨格筋が収縮すると、筋肉によって産生されるサイトカインであるマイオカインも放出される。これらのマイオカインのうち、インターロイキン6、8および15(IL-6、IL-8、IL-15)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、白血病阻害因子(LIF)、線維芽細胞成長因子(繊維芽細胞増殖因子21につきFGF-21)およびフォリスタチン様タンパク質(フォリスタチン様1につきFSTL-1)を挙げ得る。
【0009】
これらのマイオカインのうち、IL-6産生は筋収縮に応答して指数関数的に増加することが知られている。これは、運動の持続時間、その強度、関与する筋肉運動、および対象の持久力とも相関する。
【0010】
身体運動中、IL-6は、細胞外基質を動因するため、または例えばグルコースなどの基質の供給を増加させるために、ホルモンとして作用するようである[Finsterer J.“Biomarkers of peripheral muscle fatigue during exercise.BMC Musculoskelet Disord”;2012;13:218]。
【0011】
安静時に健康な対象に存在しないか、または非常に少量存在するIL-6濃度は、身体運動中に非常に高いレベルまで上昇する[Febbraio MA et al.,“Muscle-derived interleukin-6:mechanisms for activation and possible biological roles”;FASEB J.2002;16:1335-47]。IL-6の高い血漿レベルは、運動中の疲労感の増加と関連づけられており、訓練されたランナーにおいてパフォーマンスが有意に低下する[Robson-Ansley PJ et al.,“Acute interleukin-6 administration impairs athletic performance in healthy,trained male runners”;Can J Appl Physiol.2004 Aug;29(4):411-8]。
【0012】
運動前の炭水化物または炭水化物が多く含まれる食事の摂取によって、身体運動に対するIL-6の反応が低下する。従って、IL-6は、身体運動時にグルコース調節ホルモンとして作用し、血糖恒常性を維持するために筋肉または肝臓によって放出されることが提案されている。
【0013】
異常なまたは激しい身体運動は、先に定義したように、筋傷害または様々な強度の損傷(EIMD)を惹起する可能性がある。筋傷害は、筋節および膜損傷のレベルでの障害などの構造異常、細胞成分放出の誘発、筋肉タンパク質の分解および細胞透過性の増加、お
よびサイトカインの放出、および貪食細胞による浸潤を含む炎症プロセスをも特徴とする。[Allen DG et al.,“Skeletal muscle fatigue:cellular mechanisms”;Physiol Rev.2008;88:287-332;Baird MF et al.J.Nutr.Metab.2012;Epub 2012 Jan 11.]。筋損傷は、即発性の痛みまたは時間経過後の遅発性の痛みをもたらす事象のカスケードを誘発する。筋肉痛は、身体運動中または身体運動を行った直後に対象が感じる即発性の痛みを指す。筋肉痛は、筋肉の硬さ、不快な痛みおよび/または筋肉感受性と関連する。これらの症状は数時間のみ感じられ、前述したように遅発性の痛み(DOMS)の症状に比べて比較的一時的である。
【0014】
その症状は前述したものと同じであるが、運動の終了後24時間、その発生が遅延する。これは72時間維持され、次の5~7日以内にゆっくりと緩和される[Lewis PB et al.“Muscle soreness and delayed-onset muscle soreness”Clin.Sports Med.2012;31:255-62]。
【0015】
遅発性の痛みはまた、スポーツ傷害の最も一般的かつ再発する形態であると考えられている[Cheung K et al.,“Delayed onset muscle
soreness:treatment strategies and performance factors”Sports Med.2003;33:145-64]。
【0016】
筋繊維の血液中への放出は、筋損傷から筋肉の痛みに至るまでの連続した全ての範囲において、いくつかのステップで起こり得る。既知の筋損傷の生物学的マーカーは、例えば、クレアチンキナーゼおよび乳酸脱水素酵素である。これらのマーカーのうち、クレアチンキナーゼは、筋損傷が生じたときに血流に放出される重要な酵素である。クレアチンキナーゼは、筋肉組織中にほぼ独占的に存在するという特性を有するため、筋損傷および傷害を評価するために一般に血清中でアッセイされる[Baird MF et al.“Creatine-kinase-and exercise-related muscle damage implications for muscle performance and recovery.J Nutr Metab.2012;Epub 2012 Jan 11]。
【0017】
筋疲労および筋損傷に関連する効果を予防または治療するために、有孔な化学物質または化学組成物を開発して、身体疲労および筋損傷の発生を引き起こすように、身体運動を生じる可能性のある対象または身体運動を生じた対象に投与することが必要である。
【0018】
このような化学物質または化学組成物の投与は、より特定的には、経口または非経口で、さらにより特定的には、食品補助剤としての錠剤、ゲルカプセル、顆粒またはソフトカプセルの形態で行われる。
【0019】
このような化学物質または化学組成物の経口投与はまた、前記化学物質または化学組成物を含む食品組成物の形態を取ることもできる。
【0020】
筋疲労および筋損傷に関連する効果の予防および治療のための有効な化学物質または化学組成物の開発には、物質または組成物を調製する段階と前記物質または組成物の生物学的性能を評価する段階との間の反復的なアプローチが含まれるため、長い時間および費用のかかる研究プロセスを要する。
【0021】
このプロセスの生産性を向上させるためには、有効な化学物質および化学組成物をスク
リーニングおよび選択するための中程度のスループットで使用できる生物学的性能を評価する方法が好ましく、これは、臨床研究モデルを含む、または臨床研究中に得られる生検を有するモデルを含む評価方法を実施しないことを含む。
【0022】
さらに、動物細胞のモデルを用いた、または動物を含む生物学的評価の方法は、動物の代謝がヒトの代謝とは異なるため、関連性はより低い。
【0023】
従って、ヒトの身体運動によって引き起こされる筋疲労および筋損傷を予防する、または減少させることを可能にする化学物質または化学組成物を選択するための、インビトロの方法であり、スクリーニング手法において中程度のスループットで使用可能であり、動物細胞に関わらず、再現性、感受性、識別可能、かつ効率的であり、特に、筋疲労および肉損傷に対して試験された物質または組成物の効果を付随して評価することを可能にすることによるものであって、最終的に、ヒトの栄養市場に適したものである方法を開発する必要がある。
【0024】
本出願の目的において、「スクリーニング」という用語は、生物学的に活性な分子の研究、同定、分類を目的とする技術の実施を意味する。このアプローチでは、1つ以上の試験に従って関連する活性を有する分子のみが選択される。
【0025】
ヒトの臨床試験は、訓練期にあるスポーツをする男性および女性、または身体運動サイクルが課せられた個人において、特に実施される。これらの方法は、製品の有効性を評価するのに適しているが、スクリーニングおよびいくつかの成分の選択には到達することができない。例えば、Beijer et al.は、26人の男性対象における血管新生応答に対する、6週間の訓練期間中のさらなる振動の影響を研究した。血管新生の生物学的マーカーであるMMP-2、MMP-9、VEGFおよびエンドスタチンならびに内皮細胞の増殖能力をアッセイするために血清を収集した[Beijer Å et al.,“Whole-body vibrations do not elevate the angiogenic stimulus when applied during resistance exercise”;PLoS One.2013 Nov.15;8(11):e80143.]。
【0026】
他の参考文献は、試験期間中に筋生検を採取した臨床試験に言及している。
【0027】
例えば、座業の対象13人において臨床試験を行い、酸素消費量およびインスリン感受性を、課せられた6週間の身体訓練期間の前後に評価した。筋生検は、そのうち8人から、約65%の酸素消費で60分間、安定に管理されたペダリング運動の前後に採取した。
【0028】
この研究により、生検での筋肉内トリグリセリドおよびペリリピン2および5の酸化能力および含量を分析することが可能になった[Shepherd SO et al.,“Resistance training increases skeletal muscle oxidative capacity and net intramuscular triglyceride breakdown in type I
and II fibres of sedentary males”;Exp.Physiol.2014 Jun.;99(6):894-908]。
【0029】
別の臨床研究では、健康な対象で、様々な年齢および様々なレベルの身体運動において、イリシンタンパク質の生理学を研究した[Huh JY et al.,“Exercise-induced irisin secretion is independent of age or fitness level and increased irisin may directly modulate muscle me
tabolism through AMPK activation”;J.Clin.Endocrinol.Metab.2014 Nov.;99(11):E2154-61]。イリシンは、褐色脂肪組織に対する運動の効果に関与するマイオカインとして提案されている。その役割をよりよく理解するために、著者らは、トレッドミルでの対象の身体運動の後、高齢者および若年者、身体的に活発なまたは座業の対象において、イリシンをアッセイした。彼らはまた、8週間の走行訓練の前後に、若年で中程度に訓練された対象において生検を行った。これらの試料は、身体運動誘発性遺伝子発現調節の分析を可能にした。
【0030】
他の参考文献はまた、動物における身体運動の効果に関する研究に言及している。特に、筋肉減少症に対する身体運動の有益な効果に関する研究を挙げ得る[Cisterna
B et al.“Adapted physical exercise enhances activation and differentiation potential of satellite cells in the skeletal
muscle of old mice”;J.Anat.2016 Jan 6.doi:10.1111/joa.12429]。この文脈において、トレッドミルでの身体運動に供した28ヶ月齢のマウスにおいて、衛星細胞(筋再生における寄与する細胞)の量および活性化、ならびにそれらの増殖および分化能をインサイツで評価した。この研究は、身体運動が、筋肉減少症および加齢に関連した衛星細胞の劣化を防ぐための強力かつ非薬理学的なアプローチであることを示すことを可能にした。
【0031】
インビトロでの研究に関連する多くの参考文献は、マウス筋肉細胞、特にC2C12およびL6マウス系の細胞(それぞれマウスおよびラット筋芽細胞系であり、急速に分化して収縮可能な筋管を形成し、筋肉タンパク質を産生することが可能である)で使用される方法に関する。
【0032】
この点に関しては、以下のものを挙げ得る:
- C2C12筋細胞の代謝、遺伝子発現およびミトコンドリア含量に及ぼすイリシンタンパク質の影響に関する研究[Vaughan RA et al.,“Characterization of the metabolic effects of irisin on skeletal muscle in vitro”;Diabetes Obes.Metab.2014 Aug;16(8):711-8];
- UV-B線、または低体温および高体温、または低pHに曝露したC2C12筋芽細胞および筋管における、骨格筋の発達と恒常性に不可欠なアポトーシスの機構に関する研究[Battistelli M et al.,“Skeletal Muscle
Cell Behavior After Physical Agent Treatments”;Curr.Pharm.Des.2015;21(25):3665-72];
- ラット筋管を採取および単離するステップ、次いで慢性的な身体運動をシミュレートするためのクレアチンで処置するステップまたは電気刺激のステップを含む方法を用いた、筋管の機能的応答に関する研究[McAleer CW et al.,“Mechanistic investigation of adult myotube response to exercise and drug treatment in vitro using a multiplexed functional assay system”;J.Appl.Physiol.(1985).2014 Dec 1;117(11):1398-405];
- カルシウムイオノフォアA23187を添加することにより、身体運動に関連するストレスを模倣するために、前記筋肉系の刺激のステップを含む、ラットL6筋肉系の細胞を含む評価方法を用いる研究;この研究は、ブルーベリー抽出物に含まれるポリフェノールが活性酸素種の生成、および乳酸脱水素酵素およびクレアチンキナーゼ酵素の放出、
に及ぼす保護効果を示すことを可能にした[Hurst RD et al.,“Blueberry fruit polyphenolics suppress oxidative stress-induced skeletal muscle cell damage in vitro”;Mol.Nutr.Food Res.2010 Mar;54(3):353-63];
インビトロでの研究に関する他の参考文献は、ヒト骨格筋細胞を含む方法に関する。この点に関し、培地にイリシンを添加することによるグルコースおよび脂肪酸の消費、およびまたこれらの同じイリシン刺激h物について、グルコース、グリコーゲンおよび脂質代謝に関連する遺伝子の発現の誘導を研究するための、対象から採取したヒト骨格筋細胞を含む評価方法を用いた研究を挙げ得る[Huh JY et al.,“Exercise-induced irisin secretion is independent of age or fitness level and increased irisin may directly modulate muscle metabolism through AMPK activation”;J.Clin.Endocrinol.Metab.2014 Nov;99(11):E2154-61]。
【0033】
従来技術は、ヒトの身体運動によって引き起こされる筋疲労および筋損傷を同時に予防することを可能にする化学物質または化学組成物を選択するための、スクリーニング手法において中程度のスループットで使用可能であり、動物細胞に関わらず、再現性、感受性、識別可能、かつ効率的であり、最終的に、ヒトの栄養市場に適したものである、インビトロの方法を開示していないようである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0034】
より特定的には、先行技術は、ヒト初代骨格筋細胞に関連し、イオノフォア剤を添加することによって刺激するステップを含む選択方法を開示も教示もしていない。
【0035】
その結果、中程度のスループットにおいて適切であり得る、適切で効率的なインビトロの試験法が存在しないことにより、ヒトの身体運動によって引き起こされる筋疲労および筋損傷を同時に予防することができる効率的な食品製品または食品の開発が妨げられる。
【課題を解決するための手段】
【0036】
第1の態様によると、本発明の主題は、化学物質(S)または化学組成物(C)の、ヒトにおける身体運動によって引き起こされる筋疲労および筋損傷を予防する能力を評価する方法であって、前記方法が、
- ヒト初代骨格筋細胞を培養する、ステップa);
- ステップa)で得られた細胞を分化させて筋管を得る、ステップb);
- 化学物質(S)または化学組成物(C)をステップb)で得られた細胞培地に接触させる、ステップc);
- 少なくとも1つのカルシウムイオノフォア剤(AI)をステップc)で得られた細胞培地と接触させる、ステップd);
- ステップd)で得られた細胞培地中、以下を含むまたは以下からなる生物学的マーカーの組み合わせの発現レベルを測定する、ステップe):
- 筋肉によって産生されるマイオカインまたはサイトカインからなる群の要素から選択される、少なくとも1つの血糖恒常性の生物学的マーカー(M1)、
- クレアチンキナーゼおよび乳酸脱水素酵素から選択される、少なくとも1つの筋肉病変の生物学的マーカー(M2)、
- 乳酸塩、アンモニア水およびオキシプリンからなる群の要素から選択される、少なくとも1つのATP代謝の生物学的マーカー(M3)、
および
- ステップe)において測定された前記3つの生物学的マーカー(M1)、(M2)および(M3)の各々の発現レベルを、これらの3つの生物学的マーカーの各々についての参照発現レベルと比較するステップf)
を含むことを特徴とする、方法である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
「筋疲労および筋損傷を予防する能力」という表現は、本発明の文脈において、身体運動を行った後の筋力低下につながる、筋肉の性能低下が観察される期間を減少させる能力、および身体運動を行った後に発生し得る筋肉の構造変化の強度を減少させる能力を意味することが意図される。
【0038】
本発明の文脈において、「物理的運動」という用語は、抵抗を克服する目的で身体的な力を動員し使用すること、および/または筋肉を収縮させることによって身体または手足の運動を行うことなどのパフォーマンスを達成することを意味することが意図される。
【0039】
「初代骨格筋細胞」という用語は、骨格筋から直接抽出される細胞を意味する。
【0040】
「筋管」という用語は、筋形成中のいくつかの筋管の融合によって形成される多核細胞を意味する。次いで、筋管は、筋線維に分化する。筋芽細胞は、骨格筋の形成を担う幹細胞である。
【0041】
本発明の目的において、「イオノフォア剤」という用語は、生細胞の脂質二重層または小胞のような疎水性膜を通るイオンの輸送を触媒することができる「イオン輸送体」を意味することが意図される。特に、カルシウムイオノフォアは、カルシウムイオンが筋肉細胞に入ることを可能にすることができ、従って身体運動を模倣する。本発明の主題である方法のステップd)で使用されるカルシウムイオノフォア剤(AI)のうち、より特定的には、ボーベリシン、イオノマイシン、カルシマイシン(またはA23187)、最も特定的にはカルシマイシン(またはA23187)を挙げ得る。
【0042】
本発明の目的において、「生物学的マーカー」という用語は、正常な生物学的プロセス、病原性プロセス、または外部介入に対する薬理学的応答の指標として客観的に測定および評価される特性を意味することが意図される。生物学的マーカーは、例えば、検出が特定の病的状態を示す物質であってもよく、逆に検出が特定の生理学的状態を示す物質であってもよい。
【0043】
「血糖恒常性の生物学的マーカー(M1)」という表現は、先に定義した生物学的マーカーを意味することを意図し、その発現の変動は血糖恒常性と相関する。本発明の主題である方法のステップe)で発現レベルが測定される血糖恒常性の生物学的マーカー(M1)のうち、より特定的には、インターロイキン-6(IL-6)、インターロイキン-8(IL-8)、インターロイキン-15(IL-15)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、白血病阻害因子(LIF)および最も特定的にはインターロイキン-6を挙げ得る。
【0044】
「血糖ホメオスタシス」という用語は、外部ストレスにかかわらず、特に身体運動中に、生物がその血糖平衡を維持する能力を意味することを意図している。グルコースは、身体運動中、吸収(腸粘膜)または内因性産生(肝臓)の部位と、本質的にエネルギーを産生することを目的としたその代謝の部位、特に骨格筋との間を移動する。
【0045】
本出願の目的において、IL-6生物学的マーカーはヒトIL-6遺伝子(NCBI参照:遺伝子ID:GenBank:JQ250825.1)、およびまたこの遺伝子の産
物を含む。1つの特定の実施形態では、IL-6生物学的マーカーは、ヒトIL-6遺伝子の産物の1つからなる。ヒトIL-6遺伝子の産物は、ヒトIL-6遺伝子およびヒトIL-6タンパク質の転写物を含む。本出願の目的において、「ヒトIL-6遺伝子の転写物」は、その配列がNCBI参照:GenBank:M54894.1を有するポリヌクレオチドである。本出願の目的において、「ヒトIL-6タンパク質」という用語は、ペプチド配列がNCBI参照配列GenBank:AAD13886.1であるタンパク質を意味することを意図する。
【0046】
「筋肉病変の生物学的マーカー(M2)」という表現は、先に定義した生物学的マーカーを示し、その発現の変化は筋肉病変と相関する。本発明の主題である方法のステップe)で発現レベルが測定される筋肉病変の生物学的マーカー(M2)のうち、より特定的には、クレアチンキナーゼおよび乳酸脱水素酵素を挙げ得る。
【0047】
「ATP代謝の生物学的マーカー(M3)」という表現は、先に定義した生物学的マーカーを示し、その発現の変化はATP代謝と相関する。本発明の主題である方法のステップe)で発現レベルが測定されるATP代謝の生物学的マーカー(M3)のうち、より特定的には、乳酸塩、アンモニア水およびオキシプリンを挙げ得る。
【0048】
先に定義した方法の1つの特定的な態様によると、ステップe)において、前記生物学的マーカー(M1)はインターロイキン-6であり、前記生物学的マーカー(M2)はクレアチンキナーゼであり、前記生物学的マーカー(M3)は乳酸塩である。
【0049】
生物学的マーカー(M1)、(M2)および(M3)の各々について、「発現レベルの測定」という表現は、一般に、遺伝子の転写物の量の測定、または生体分子の量の測定、より特定的には、人体によって産生されるタンパク質および代謝産物の量の測定、または酵素活性のレベルを指す。
【0050】
生物学的マーカーの発現レベルをヌクレオチドレベルで測定する場合、すなわちヌクレオチド形態の遺伝子の産生量を測定することにより、当業者がヌクレオチド量を測定するために通常使用する任意の方法を用いることができ、従って、qRT-PCR(定量的逆転写ポリメラーゼ連鎖反応)、DNAチップおよびインサイツハイブリダイゼーションについて言及することができる。
【0051】
生物学的マーカーの発現レベルがタンパク質、機能または代謝レベルで測定される場合、すなわちタンパク質または代謝産物であるかどうかをその量を測定することによって、またはその生物学的機能を測定することによって、タンパク質もしくは代謝産物の量または機能性を測定するために、当業者によって通常使用される任意の方法を使用することができ、従って、ELISAアッセイ、ウェスタンブロット、質量分析、免疫蛍光、クロマトグラフィー技術および酵素活性を挙げ得る。
【0052】
本発明の主題である方法において、血糖恒常性の生物学的マーカー(M1)の発現の測定は、より特定的にはタンパク質レベルで行われる。
【0053】
本発明の主題である方法の1つの特定の態様によると、生物学的マーカー(M1)がインターロイキン-6である場合、インターロイキン-6発現の測定はタンパク質レベルで実施され、さらにより特定的には、比色ELISA(酵素結合免疫吸着測定)法を用いる測定で実施される。この方法は、測定プレートのウェルの底に結合したヒトIL-6に特異的な抗体を用いる。アッセイされる試料はウェルに加えられ、試料中に存在するIL-6は固定化された抗体に結合する。次いで、ウェルを洗浄し、ビオチン化された別の抗ヒトIL-6抗体を添加する。
【0054】
結合していない抗体を除去するためにウェルをもう一度すすぎ、次いでHRP(西洋ワサビペルオキシダーゼ)酵素にコンジュゲートしたストレプトアビジンをウェルに加える。ウェルを再びすすぎ、HRP基質テトラメチルベンジジンをウェルに添加する。色の強度は、結合したIL-6の量に比例して発生する。「停止」溶液は、色を青色から黄色に変化させ、色強度は、分光測光法によって450nmで測定される。標準範囲を参照してIL-6濃度を算出する。
【0055】
本発明の主題である方法の本発明の主題である方法では、筋肉病変の生物学的マーカー(M2)の発現の測定は、より特定的には機能レベルで行われ、より特定的には酵素活性レベルで行われる。
【0056】
本発明の主題である方法のもう1つの特定的な態様によると、生物学的マーカー(M2)がクレアチンキナーゼである場合、クレアチンキナーゼの発現の測定は機能レベルで実施され、さらにより特定的には、その酵素活性の測定で実施される。クレアチンキナーゼの酵素活性は、比色ELISA法によって測定される。このアッセイは、アッセイされる試料中に存在するクレアチンキナーゼによって、リン酸クレアチンおよびADPがクレアチンおよびATPに変換される結合酵素反応に基づく。
【0057】
このようにして産生されたATPは、次に、グルコース6-リン酸を生成するためにヘキソキナーゼの存在下でグルコースをリン酸化するために使用され、続いて後者はグルコース6-リン酸デヒドロゲナーゼの存在下でNADPによって酸化される。340nmで検出される、様々な測定時間において産生されたNADPHの量は、試料のクレアチンキナーゼ活性に比例する。次いで、較正された試料を参照して、クレアチンキナーゼ活性を計算する。
【0058】
本発明の主題である方法において、ATP代謝の生物学的マーカー(M3)の発現の測定は、より特定的には代謝レベルで行われる。
【0059】
本発明の主題である方法のより特定の態様によると、生物学的マーカー(M3)が乳酸塩である場合、乳酸塩発現の測定は代謝レベルで実施され、さらにより特定的には、比色酵素アッセイを行う測定で実施される。
【0060】
簡潔には、細胞上清中に存在する乳酸塩は酵素混合物と特異的に反応して産生物を生成し、特定のプローブと相互作用して色を生成する。
【0061】
光学濃度を分光光度法により570nmで測定し、乳酸塩濃度を標準範囲を用いて計算する。
【0062】
本発明の主題である方法のさらに特定の態様によると、生物学的マーカー(M1)がインターロイキン-6である場合、インターロイキン-6発現の測定はタンパク質レベルで実施され、さらにより特定的には、比色ELISA法を行う測定で実施され、生物学的マーカー(M2)がクレアチンキナーゼである場合、クレアチンキナーゼ発現の測定は機能レベルで実施され、さらにより特定的には、比色ELISA法による酵素活性の測定を行う測定で実施され、生物学的マーカー(M3)が乳酸塩である場合、乳酸塩発現の測定は代謝レベルで実施され、さらにより特定的には、比色酵素アッセイを行う測定で実施される。
【0063】
生物学的マーカーの「参照発現レベル」という用語は、参照として使用される前記生物学的マーカーの任意の発現レベルを示す。
【0064】
例えば、参照発現レベルは、ヒトにおける筋疲労および筋損傷の予防におけるその効果について先行技術から知られた物質で前記生物学的マーカーの発現レベルを測定することにより、または本発明の主題である方法が前記方法のステップc)およびステップd)の非存在下で行われる場合に前記生物学的マーカーの発現レベルを測定することであって;そこで、目的の生物学的マーカーの発現レベルが、未処理および非ストレス化分化細胞の培地に対応するものであることによって、または本発明の主題である方法が前記方法のステップc)の非存在下で行われる場合に前記生物学的マーカーの発現レベルを測定することであって;そこで、目的の生物学的マーカーの発現レベルが、未処理およびストレス化分化細胞の培地に対応するものであることによって、得ることができる。
【0065】
本発明の文脈において、血糖恒常性の生物学的マーカー(M1)の参照発現レベルは、
- 本発明の主題である方法のステップc)またはステップd)のいずれも実行せず、本発明の主題である方法のステップb)の最後に得られた培地において、非処理および非ストレス化分化細胞上のマーカー(M1)の発現レベルのこの測定値をN1と表し、および/または
- 本発明の主題である方法のステップc)を実行せず、本発明の主題である方法のステップa)、b)およびd)を実行した後に得られた培地において、非処理だがストレス化した分化細胞上のマーカー(M1)の発現レベルのこの測定値をN1
0と表し、および/または
- 本発明の主題である方法のステップc)で使用される物質(S)が、ビタミンE、グルコース、シクロスポリンA、アクチノマイシンDからなる群の要素から選択される物質である場合、およびより特定的には、本発明の主題である方法のステップc)で使用される物質(S)が、ビタミンEである場合、本発明の主題である方法のステップd)を実行した後に得られた培地において、
前記生物学的マーカー(M1)の発現レベルを測定することによって、得ることができる。参照物質(S)についての生物学的マーカー(M1)の発現レベルのこの測定値をN1
Refと表す。
【0066】
本発明の文脈において、筋肉病変の生物学的マーカー(M2)の参照発現レベルは:
- 本発明の主題である方法のステップc)またはステップd)のいずれも実行せず、本発明の主題である方法のステップb)の最後に得られた培地において、非処理および非ストレス化分化細胞上の発現レベルのこの測定値をN2と表し、および/または
- 本発明の主題である方法のステップc)を実行せず、本発明の主題である方法のステップa)、b)およびd)を実行した後に得られた培地において、非処理だがストレス化した分化細胞上の発現レベルのこの測定値をN2
0と表し、および/または
- 本発明の主題である方法のステップc)で使用される物質(S)が、ビタミンE、IL-1RA(インターロイキン-1受容体アンタゴニスト)、ジヒドロミリセチン、アンドログラフォライドおよびニフェジピンからなる群の要素から選択される物質である場合、およびより特定的には、本発明の主題である方法のステップc)で使用される物質(S)が、ビタミンEである場合、本発明の主題である方法のステップd)を実行した後に得られた培地において、
前記生物学的マーカー(M2)の発現レベルを測定することによって、得ることができる。参照物質(S)についての生物学的マーカー(M2)の発現レベルのこの測定値をN2
Refと表す。
【0067】
本発明の文脈において、ATP代謝の生物学的マーカー(M3)の参照発現レベルは:
- 本発明の主題である方法のステップc)またはステップd)のいずれも実行せず、本発明の主題である方法のステップb)の最後に得られた培地において、非処理および非ストレス化分化細胞上の生物学的マーカー(M3)の発現レベルのこの測定値をN3と表
し、および/または
- 本発明の主題である方法のステップa)、b)およびd)を実行するが、本発明の主題である方法のステップc)を実行せず、その後に得られた培地において、非処理だがストレス化した分化細胞上の生物学的マーカー(M3)の発現レベルのこの測定値をN3
0と表し、および/または
- 本発明の主題である方法のステップc)で使用される物質(S)が、ビタミンE、グルタチオン、マグネシウムおよびコエンザイムQ10からなる群の要素から選択される物質である場合、およびより特定的には、本発明の主題である方法のステップc)で使用される物質(S)が、ビタミンEである場合、本発明の主題である方法のステップd)を実行した後に得られた培地において、
前記生物学的マーカー(M3)の発現レベルを測定することによって、得ることができる。参照物質(S)についての生物学的マーカー(M3)の発現レベルのこの測定値をN3
Refと表す。
【0068】
先に定義した方法に起因して、前記物質(S)または前記組成物(C)は、ヒトにおける身体運動による筋疲労および筋損傷を予防することが意図され、ヒトにおいて身体運動によって誘発される筋疲労および筋損傷を予防するために、それ自体として、またはそれを含む栄養補助組成物を調製するため、またはそれを含む食品を調製するために、使用され得るように選択することができる。
【0069】
前に定義した方法に起因して、物質(S)または組成物(C)は、次の場合、ヒトにおいて身体運動によって誘発される筋疲労および筋損傷を予防するために、それ自体として、またはそれを含む栄養補助組成物を調製するため、またはそれを含む食品を調製するために使用されるように選択される:
- N1
iで示される、前記物質(S)または前記組成物(C)について測定された発現レベルが、血糖恒常性の生物学的マーカー(M1)の参照発現レベルよりも大きく、
- N2
iで示される、前記物質(S)または前記組成物(C)について測定された発現レベルが、筋肉病変の生物学的マーカー(M2)の参照発現レベルよりも大きく、
- N3
iで示される、前記物質(S)または前記組成物(C)について測定された発現レベルが、ATP代謝の生物学的マーカー(M3)の参照発現レベルよりも高い場合。
【0070】
物質(S)または組成物(C)は、より特定的には、次の場合、ヒトにおいて身体運動によって誘発される筋疲労および筋損傷を予防するために、それ自体として、またはそれを含む栄養補助組成物を調製するため、またはそれを含む食品を調製するために使用されるように選択される:
- 比率R1=[(N1
0-N1
i)×100]/[(N1
0-N1)]がn1より大きく;
- 比率R2=[(N2
0-N2
i)×100]/[(N2
0-N2)]がn2より大きく;
- 比率R3=[(N3
0-N3
i)×100]/[(N3
0-N3)]がn3より大きく、
かつ:
n1が20より大きく、より特定的には40より大きく、n2が20より大きく、より特定的には40より大きく、n3が20より大きく、より特定的には40より大きく、N1、N1
0、N2、N2
0、N3およびN2
0は先に定義した通りである場合。
【0071】
上記で定義したn1は、より特定的には40以上であり、最も特定的には70以上、さらにより特定的には100以上である。
【0072】
上記で定義したn2は、より特定的には40以上であり、最も特定的には70以上、さ
らにより特定的には100以上である。
【0073】
上記で定義したn3は、より特定的には40以上であり、最も特定的には70以上、さらにより特定的には100以上である。
【0074】
先に定義された方法に起因して、n1、n2およびn3はが40以上である物質(S)または組成物(C)がより特定的に選択される。
【0075】
別の態様によると、本発明の主題は、
- 多価金属カチオン(CMETAL)の少なくとも1つの塩、
- ビタミンEまたはビタミンEアセテートから選択される少なくとも1つの化合物(VE)、
- フラバノールファミリーの化合物、アントシアニンファミリーの化合物、フェノール酸ファミリーの化合物、およびフラボノールファミリーの化合物および/またはそのグルコシル化誘導体から選択される少なくとも1つのポリフェノール化合物
を含む食用組成物(CA)であって、
(CMETAL)/(VE)のモル比が0.50以上2.00以下であり、より特定的には0.50以上1.50以下である、食用組成物(CA)である。
【0076】
本発明の主題は、特に、上で定義した前記組成物(CA)であって、多価金属カチオン(CMETAL)は、二価金属カチオン、より特定的にはカルシウム、マグネシウム、亜鉛、マンガン、鉄、銅、コバルト、銀、バリウム、ジルコニウムおよびストロンチウムカチオンから選択される二価金属カチオンである。
【0077】
1つのより特定的な態様によると、多価金属カチオン(CMETAL)は、カルシウム、マグネシウム、亜鉛およびストロンチウムから選択される二価金属カチオンである。
【0078】
1つのより特定的な態様によると、多価金属カチオン(CMETAL)は、亜鉛の二価カチオンである。
【0079】
多価金属カチオン(CMETAL)は、グリコール酸、クエン酸、酒石酸、サリチル酸、乳酸、マンデル酸、アスコルビン酸、ピルビン酸、フマル酸、グリセロリン酸、レチノイン酸、安息香酸、コジック酸、リンゴ酸、グルコン酸、ガラクツロン酸、プロピオン酸、ヘプタン酸、4-アミノ安息香酸、桂皮酸、ベンザルマロン酸、アスパラギン酸およびグルタミン酸から誘導されるアニオンからなる群の要素から選択される、カルボキシレート形態の少なくとも1つのカルボン酸基を有する食用有機アニオンとの塩の形態で先に定義した組成物(CA)に使用される。
【0080】
本発明の1つの特定的な態様によると、多価金属カチオン(CMETAL)は、前記多価金属カチオン(CMETAL)のグルコン酸塩、グリセロリン酸塩、アスパラギン酸塩またはグルタミン酸塩の形態で、先に定義された前記組成物(CA)において用いられる。
【0081】
本発明の最も特定的な態様によると、多価金属カチオン(CMETAL)は、前記多価金属カチオン(CMETAL)のグルコン酸塩の形態で、前記組成物(CA)において用いられる。
【0082】
「ビタミンE」という用語は、先に定義した前記組成物(CA)の定義において、以下を意味する:
- α-トコフェロールまたは(2R)-2,5,7,8-テトラメチル-2-[(4
R,8R)-4,8,12-トリメチルトリデシル]-3,4-ジヒドロクロメン-6-オール、
- β-トコフェロールまたは(2R)-2,5,8-トリメチル-2-[(4R,8R)-4,8,12-トリメチルトリデシル]-3,4-ジヒドロクロメン-6-オール、
- γ-トコフェロールまたは(2R)-2,7,8-トリメチル-2-[(4R,8R)-4,8,12-トリメチルトリデシル]-3,4-ジヒドロクロメン-6-オール、
- δ-トコフェロールまたは(2R)-2,8-ジメチル-2-[(4R,8R)-4,8,12-トリメチルトリデシル]-3,4-ジヒドロクロメン-6-オール、
- α-トコトリエノールまたは(2R)-2,5,7,8-テトラメチル-2-[(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエニル]-3,4-ジヒドロクロメン-6-オール、
- β-トコトリエノールまたは(2R)-2,5,8-トリメチル-2-[(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエニル]-3,4-ジヒドロクロメン-6-オール、
- γ-トコトリエノールまたは(2R)-2,7,8-トリメチル-2-[(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエニル]-3,4-ジヒドロクロメン-6-オールおよび
- δ-トコトリエノールまたは(2R)-2,8-ジメチル-2-[(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエニル]-3,4-ジヒドロクロメン-6-オール。
【0083】
α-トコフェロール、β-トコフェロール、γ-トコフェロール、δ-トコフェロール、α-トコトリエノール、β-トコトリエノール、γ-トコトリエノールおよびδ-トコトリエノールという用語は、前記化合物のそれぞれのジアステレオ異性的に純粋な形態、または前記化合物のラセミ体、例えばDL-α-トコフェロールを意味する。
【0084】
α-トコフェリルアセテート、β-トコフェリルアセテート、γ-トコフェリルアセテートまたはδ-トコフェリルアセテートなどのトコフェロールのアセテートは、対応するトコフェロールから得られる合成化合物である。
【0085】
1つの特定的な態様によると、本発明の主題は、先に定義した前記組成物(CA)であって、ビタミンEは、α-トコフェロールおよびα-トコフェリルアセテートからなる群の要素から選択される。
【0086】
最も特定的な態様によると、先に定義した前記組成物(CA)は、α-トコフェリルアセテートを含む。
【0087】
「フラバノールファミリーの化合物」という用語は、以下の式(I):
【化1】
特に、
- R1=OH、R2=H、およびR3=Hの場合、(+)-カテキン、
- R1=H、R2=OH、およびR3=Hの場合、(-)-エピカテキン、
- R1=OH、R2=H、およびR3=OHの場合、(+)-ガロカテキン、および
- R1=H、R2=OH、およびR3=OHの場合、(-)-エピガロカテキンである、
モノマー構造の1つから誘導される化合物を意味する。
【0088】
「アントシアニンファミリーの化合物」という表現は、式(II):
【化2】
特に、
- R’1およびR’2がそれぞれメトキシラジカルを表す場合、マルビジン、
- R’1がメトキシラジカルを表し、R’2が水素原子を表す場合、ペオニジン、
- R’1およびR’2がそれぞれヒドロキシルラジカルを表す場合、デルフィニジン、および
- R’1がメトキシラジカルを表し、R’2がヒドロキシルラジカルを表す場合、ペツニジンである、
構造の1つを有するアグリコン(アントシアニジン)を含む、モノグリコシル化またはポリグルコシル化化合物を意味する。
【0089】
「フェノール酸ファミリーの化合物」という表現は、より特定的には、カフタル酸、シス-クタル酸、トランス-クタル酸、カフェ酸、没食子酸、パラ-クマリン酸または2-S-グルタチオニルカフタル酸から選択される化合物を意味する。
【0090】
「フラボノールまたはそのグルコシル化誘導体ファミリーの化合物」という表現は、より特定的には、ミリセトールグルコシド、ケルセトールグルコシド、式(III):
【化3】
特に、
- R”1およびR”2がそれぞれ水素原子である場合、ケンフェロール、
- R”1がヒドロキシルラジカルを表し、R”2が水素原子を表す場合、ケルセチン
- R”1およびR”2がそれぞれヒドロキシルラジカルを表す場合、ミリセチン、および
- R”1がメトキシラジカルを表し、R”2が水素原子を表す場合、イソラムネチンである、
構造の1つを有する化合物からなる群の要素を意味する。
【0091】
1つの特定的な態様によると、本発明の主題は、上で定義した前記食用組成物(CA)であって、その重量100%につき、
- 5重量%~50重量%、より特定的には5重量%~40重量%の、多価金属カチオン(CM)の塩および食用有機アニオンの塩、
- 1重量%~35重量%、より特定的には5重量%~35重量%、最も特定的には8重量%~35重量%の、ビタミンEまたはビタミンEアセテート、ビタミンEアセテートから選択される少なくとも1つの化合物(VE)、
- 0.5重量%~80重量%、より特定的には1重量%~70重量%の、フラバノールファミリーの化合物、アントシアニンファミリーの化合物、フェノール酸ファミリーの化合物、およびフラボノールファミリーの化合物および/またはそのグルコシル化誘導体から選択されるポリフェノール化合物の食用組成物(PP)、
- 10重量%~93.5重量%、より特定的には15重量%~89重量%の、少なくとも1つの食用加工用添加剤を含み、
(CM)/(VE)のモル比が0.50以上2.00以下であり、より特定的には0.50以上1.50以下である、組成物(CA)である。
【0092】
1つの特定的な態様によると、本発明の主題は、上で定義した組成物(CA)であって、前記組成物(PP)は、その重量100%につき、
- 60重量%~75重量%の、少なくとも1つのフラバノールファミリーの化合物、
- 10重量%~20重量%の、少なくとも1つのアントシアニンファミリーの化合物、
- 5重量%~30重量%の、少なくとも1つのフェノール酸ファミリーの化合物を含む。
【0093】
1つの最も特定的な態様によると、本発明の主題は、上で定義した組成物(CA)であって、前記組成物(PP)はまた、最高で5重量%の、フラボノールファミリーまたはそのグルコシル化誘導体の少なくとも1つを含む。
【0094】
別の特定的な態様によると、本発明の主題は、上で定義した組成物(CA)であって、前記組成物(PP)は、ブドウ果汁抽出物または赤ワインの粉末状乾燥残渣の抽出物、特に以下の連続的なステップ:
- 赤ワインを蒸留する、ステップa1)、
- ステップa1)で得られた蒸留物を濃縮する、ステップb1)、
- ステップb1)で得られた濃縮物を乾燥する、ステップc1)
を含む方法によって得られる赤ワインの粉末状乾燥残渣の抽出物である。
【0095】
従って、赤ワインの乾燥残渣は、一般に最大5重量%の水分を含有する粉末の形態で得られる。
【0096】
本発明の主題である組成物(CA)中に存在する「食用加工添加剤」という用語は、その技術的機能が、前記組成物(CA)の様々な成分の混合を可能にすること、および/または容易にすること、その組成物(CA)の物理的特性を促進および/または最適化すること、例えば、その流れ、その安定性およびその後の医薬および/または栄養製剤への取り込みを促進および/または最適化することであり、医薬製剤および/または栄養製剤の販売のために実施されている規制によって要求される条件を遵守することができる、任意の化学物質または任意の化学組成物を指す。
【0097】
1つのより特定的な態様によると、本発明の主題である組成物(CA)に存在する少なくとも1つの食用加工用添加剤は、希釈剤、流動剤、結合剤または崩壊剤である。
【0098】
本発明の主題である組成物(CA)において組み合わせることができる希釈剤のうち、ラクトース、スクロース、サッカロース、グルコース、マルトデキストリン、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、イソマルト、リン酸水素カルシウム、微結晶性セルロース、デンプン、より特定的にはコーンスターチ、小麦デンプン、ジャガイモデンプン、リン酸二カルシウム、無水二塩基性リン酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウムおよび炭酸マグネシウム、8~24個の炭素原子を含む脂肪酸のモノグリセリドおよび/またはジグリセリドを挙げ得る。
【0099】
本発明の主題である組成物(CA)中に組み合わせることができる流動化剤のうち、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ステアリルフマル酸ナトリウム、硬化植物油、無水コロイダルシリカ、安息香酸ナトリウムおよび二酸化ケイ素を挙げ得る。
【0100】
本発明の主題である組成物(CA)中に組み合わせることができる結合剤のうち、ペースト、アルファ化デンプン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、サッカロースシロップおよびアカシアガムの形態のデンプンを挙げ得る。
【0101】
本発明の主題である組成物(CA)中に組み合わせることができる崩壊剤のうち、デンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドンおよびポリビニルピロリドンを挙げ得る。
【0102】
1つの特定的な態様によると、本発明の主題は、上で定義した前記食用組成物(CA)であって、その重量100%につき、
- 5重量%~50重量%、より特定的には5重量%~40重量%の、多価金属カチオン(CM)の塩および食用有機アニオンの塩、
- 1重量%~35重量%、より特定的には5重量%~35重量%、最も特定的には8重量%~35重量%の、ビタミンEまたはビタミンEアセテートから選択される少なくとも1つの化合物(VE)、ビタミンEアセテート、
- 0.5重量%~80重量%、より特定的には1重量%~70重量%の、フラバノールファミリーの化合物、アントシアニンファミリーの化合物、フェノール酸ファミリーの化合物、およびフラボノールファミリーの化合物および/またはそのグルコシル化誘導体から選択されるポリフェノール化合物の食用組成物(PP)、
- 10重量%~93.5重量%、より特定的には15重量%~89重量%の、少なくとも1つの食用加工用添加剤からなり、
(CM)/(VE)のモル比が0.50以上2.00以下であり、より特定的には0.50以上1.50以下である、組成物(CA)である。
【0103】
本発明の主題である組成物(CA)は、任意の物理的形態、より特定的には粉末の形態であり得る。
【0104】
本発明の主題である組成物(CA)が粉末の形態である場合には、種々の成分を、少なくとも1つの機械的撹拌システム、例えば、フラットスターリングブレードまたはインペラ型スターリングブレードを備えたミキサーに導入することにより得られ、ミキサーは任意選択によりタンブラーミキサーであり、ミキサーは任意選択によりランプブレーカーシステムを備える。この混合操作は、一般に環境温度で行われる。
【0105】
より特定的な態様によると、本発明の主題は、粉末の形態であり、その重量の100%につき、
- 5重量%~50重量%、より特定的には5重量%~40重量%のグルコン酸亜鉛、
- 1重量%~35重量%のα-トコフェロール、
- 0.5重量%~80重量%の前記組成物(PP)であって、食用組成物(PP)が、60重量%~75重量%の少なくとも1つのフラバノールファミリーの化合物、10重量%~20重量%の少なくとも1つのアントシアニンファミリーの化合物、および5重量%~30重量%の少なくとも1つのフェノール酸ファミリーの化合物を含む組成物、
- 10重量%~93.5重量%、より特定的には15重量%~89重量%の、少なくとも1つの食用加工用添加剤からなり、
(CM)/(VE)のモル比が0.50以上2.00以下であり、より特定的には0.50以上1.50以下である、組成物(CA)である。
【0106】
本発明の主題である方法により、先に定義した組成物(CA)の評価は、先に定義したように、比率R1、R2およびR3の3つ全てが40より大きいことを明らかにする。
【0107】
別の態様によると、本発明の主題は、食品補助組成物を調製するための、先に定義した組成物(CA)の使用、およびまた食品補助剤としてのその使用である。
【0108】
本出願の目的において、「食品補助組成物」という用語は、個人の通常の食事において量が欠乏している、または不足している栄養素または栄養もしくは生理学的効果を有する物質の補助を提供することを目的とする組成物を意味することを意図している。
【0109】
食物補助組成物は、栄養素、または栄養的もしくは生理学的効果を単独または組み合わせて有する他の物質の濃縮源を構成し、個人の食事において特定の障害を予防すること、または特に身体運動中の、特定の需要を満たすことを可能にする。
【0110】
食品補助組成物はまた、食品補助剤に関するフランス共和国の2006年3月26日の法令第2006-352条第2項に示されているような、および/または2002年6月10日の欧州議会および弁護人の指令2002/46/ECの定義を満たす。
【0111】
本出願の目的において、「食品組成物」という用語は、食物、すなわちヒトが摂取するか、または合理的に摂取する可能性が高いことが意図される任意の形質転換、部分的形質転換または非形質転換の物質または製品を含む組成物を意味することを意図する。食品はまた、欧州規則178/2002/ECにある定義に対応する。
【0112】
別の態様によると、本発明の主題は、その重量100%につき、5重量%~70重量%、より特定的には10重量%~70重量%、さらにより特定的には25重量%~70重量%の、先に定義した組成物(CA)を含むことを特徴とする食品補助組成物である。
【0113】
1つの特定的な態様によると、本発明の主題である食品補助組成物は、当業者に知られた任意の提示形態、例えば錠剤、ゲルカプセル、ソフトカプセル、シロップ、粉末、例えば即時放出性粉末、遅延放出性粉末または再構成飲料用粉末、液体、スティックまたはゲルの形態である。
【0114】
別の態様によると、本発明の主題は、その重量100%につき、5重量%~70重量%、より特定的には10重量%~70重量%、さらにより特定的には25重量%~70重量%の、先に定義した組成物(CA)を含むことを特徴とする食品組成物である。
【0115】
1つの特定的な態様によると、本発明の主題である食品組成物は、飲料、より特定的には、水性飲料、溶液、果汁、味付き飲料、エナジードリンク、アルコール飲料、コーヒー系飲料、チョコレート系飲料、茶系飲料、乳製品、より特定的には、ミルク、ヨーグルト、ミルクデザート、飲用ヨーグルト、チーズ、アイスクリーム、チョコレートバー、シリアル製品、より特定的には、シリアルバー、クッキー、朝食用シリアル、小麦粉、パン製造製品、特殊栄養製品、より特定的には、乳児用栄養製品、身体運動のための栄養製品、臨床栄養製品、食事代替品、キャンディー、より特定的には、チューインガム、スイーツ、キャラメル、糖衣錠、ロゼンジ、マシュマロ、求肥(turkish delight)、ヌガー、フルーツゼリー、リコリスなどの、当業者に知られた任意の食品製品形態である。
【0116】
一般に、本発明の主題である食品補助組成物はまた、生物活性脂質、水溶性または水分散性微量元素塩、水溶性または脂溶性ビタミン、プレバイオティクス、プロバイオティクス、ミルクタンパク質および/またはタンパク質濃縮物、植物または動物酵素、アミノ酸、ペプチド、糖、味増強剤、香味料などの、栄養分野で通常使用される活性成分を含むことができる。
【0117】
本発明の主題である食品補助組成物中に任意選択により存在する生物活性脂質としては、植物油から抽出されたものなどのフィトステロール、より特定的には沙棘油、コーン油、大豆油の抽出物;植物油から単離されたフィトステロール複合体、例えば、カンペステロール、スチグマステロールおよびブラシカステロールから構成されるコレスタチン;フィトスタノール;藻類、緑色植物、真菌、細菌から抽出される、テルペノイドファミリーに属するカロテノイド;オメガ3基の多価不飽和脂肪酸、例えばα-リノレン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸;オメガ-6グループの多価不飽和脂肪酸、例えば、リノレン酸、γ-リノレン酸、エイコサジエン酸、ジホモ-γ-リノレン酸、アラキドン酸、ドコサジエン酸、ドコサテトラエン酸、ドコサペンタエン酸、を挙げ得る。
【0118】
本発明の主題である食品補助組成物中に任意選択により存在する水溶性または水分散性微量元素塩の例としては、炭酸第一鉄、塩化第一鉄四水和物、塩化第二鉄六水和物、クエン酸第一鉄六水和物、フマル酸第一鉄、乳酸第一鉄四水和物、硫酸第一鉄一水和物、硫酸第一鉄七水和物、アミノ酸水和物の第一鉄キレート、グリシン鉄キレート;ヨウ化カルシウム六水和物、無水ヨウ素酸カルシウム;ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム;酢酸コバルト四水和物、塩基性炭酸コバルト一水和物、炭酸コバルト六水和物、硫酸コバルト七水和物、硫酸コバルト一水和物、硝酸コバルト六水和物、酢酸第二銅一水和物、塩基性炭酸銅一水和物、塩化第二銅二水和物、メチオニン酸銅、硫酸第二銅五水和物、アミノ酸水和物の第一銅キレート、水和グリシンの第一銅キレート、メチオニンヒドロキシ類似体の第一銅キレート;炭酸マンガン、塩化マンガン四水和物、マンガン酸リン酸三水和物、硫酸
マンガン四水和物、硫酸マンガン一水和物、アミノ酸水和物のマンガンキレート、グリシン水和物のマンガンキレート、メチオニンヒドロキシ類似体のマンガンキレート;モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸ナトリウム、亜セレン酸ナトリウム、セレン酸ナトリウム;サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)によって産生されるセレンの有機形態、セレノメチオニン(不活性化セレン酵母)、およびサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)(不活性化セレン酵母)によって産生されるセレノメチオニンを挙げ得る。
【0119】
本発明の主題である食品補助組成物中に任意選択により存在する水溶性または脂溶性ビタミンの例としては、以下のものを挙げ得る:ビタミンA、より特定的にはレチノール、酢酸レチニル、パルミチン酸レチニルまたはそのベータカロテンの形態;ビタミンD2、より特定的にはエルゴカルシフェロール、または25-ヒドロキシカルシフェロール、その形態、ビタミンD3、より特定的にはそのコレカルシフェロールの形態、ビタミンK、より特定的にはフィロキノン(フィトメナジオン)またはそのメナキノンの形態、ビタミンB1、より特定的にはチアミン塩酸塩、チアミン一硝酸塩、塩化チアミン一リン酸塩または塩化チアミンピロリン酸塩の形態、ビタミンB2、より特定的にはリボフラビン、またはリボフラビン5’-リン酸ナトリウム、その形態、ビタミンB6、より特定的には塩酸ピリドキシン、ピリドキシン5’-リン酸またはピリドキサール5’-リン酸の形態、ビタミンB12、より特定的にはシアノコバラミン、ヒドロキソコバラミン、5’-デオキシアデノシルコバラミンまたはそのメチルコバラミンの形態、ビタミンC、より特定的にはL-アスコルビン酸、L-アスコルビン酸ナトリウム、L-アスコルビン酸カルシウム、L-アスコルビン酸カリウム、パルミチル-6-L-アスコルビン酸カルシウム塩、アスコルビン酸一リン酸ナトリウムまたはそのパントテン酸の形態、より特定的にはD-パントテン酸カルシウム、D-パントテン酸ナトリウム、デクスパンテノールまたはそのパンテチンの形態、ビタミンPP、より特定的には、その葉酸形態またはその葉酸塩形態のニコチン酸、ナイアシン、ニコチンアミドまたはイノシトールヘキサニコチネート、前記葉酸塩は、より特定的には、プテロイルモノグルタミン酸型、L-メチル葉酸カルシウム型またはグルコサミン塩の形態の(6S)-5-メチルテトラヒドロ葉酸型、ビタミンH2、B7またはBW、より特定的にはそのビオチン形態またはそのコリン形態、より特定的には塩化コリン、クエン酸二水素コリンまたは二酒石酸コリンの形態、イノシトール、カルニチン、より特定的にはそのL-カルニチンまたはL-カルニチン-L-酒石酸塩の形態、およびタウリン。
【0120】
本発明の主題である食品補助組成物中に任意選択により存在するプレバイオティクスの例としては、イヌリン、トランス-ガラクトオリゴ糖、フルクタンおよびマンノオリゴ糖を挙げ得る。
【0121】
本発明の主題である食品補助組成物中に任意選択により存在するプロバイオティクスの例としては、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、バチルス・セレウス・バル・トヨイ(Bacillus cereus var toyoi)、バチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)単独、またはバチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)と組み合わせた、種々の菌株、またはエンテロコッカス・フェシウム(Enteroccocus faecium)の菌株を挙げ得る。
【0122】
これらの微生物株は、一般に固体担体、例えば炭酸カルシウム、デキストロースまたはソルビトールに結合している。
【0123】
本発明の主題である食品補助組成物中に任意選択により存在するタンパク質および/またはタンパク質濃縮物の例としては、ミルクの分解に起因するミルクタンパク質、例えば
、凍結乾燥粉末または噴霧乾燥粉末形態の初乳、粉末、精製画分、またはIgG、ラクトペルオキシダーゼ、ラクトフェリンが富化された画分の形態の乳清を挙げ得る。
【0124】
本発明の主題である食品補助組成物中に任意選択により存在する植物酵素または動物酵素の例としては、プロムターゼ、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、3-フィターゼ、6-フィターゼ、エンド-1,4-ベータグルカナーゼ、エンド-1,4-ベータキシラナーゼ、または消化を改善または促進する他の酵素を挙げ得る。
【0125】
本発明の主題である食品補助組成物中に任意選択により存在するペプチドの例としては、アボカドペプチド、ハウチワマメペプチド、キノアペプチド、マカペプチド、発酵または非発酵大豆ペプチド、米ペプチド、アカシア・マクロスタチヤ種子抽出物中に存在するペプチド、パッションフラワーシード抽出物中に存在するペプチドを挙げ得る。
【0126】
本発明の主題である食品補助組成物中に任意選択により存在するアミノ酸の例としては、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、ヒドロキシプロリン、ピロリジン、セレノシステイン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、サルコシンおよびオルニチンを挙げ得る。
【0127】
本発明の主題である食品補助組成物中に任意選択により存在する糖類の例としては、水溶性多糖類、例えばオリゴ糖類、単糖類または二糖類などの低分子量の糖類、例えばグルコース、ラクトースまたはデキストロースを挙げ得る。
【0128】
本発明の主題である食品補助組成物中に任意選択により存在する味増強剤の例としては、グルタミン酸、例えば、グルタミン酸、グルタミン酸一ナトリウム、グルタミン酸一カリウム、ジグルタミン酸カルシウム、グルタミン酸アンモニウムまたはジグルタミン酸マグネシウム;グアニル酸、例えば、グアニル酸(グアノシンモノホスフェート)、グアニル酸二ナトリウム、グアニル酸二カリウムまたはグアニル酸カルシウム;イノシン酸、例えば、イノシン酸、イノシン酸二ナトリウム、イノシン酸二カリウムまたはイノシン酸カルシウム、またはステビア抽出物またはレバウジオシドなどの他の強い甘味料を挙げ得る。
【0129】
別の態様によると、本発明の主題は、治療による人体の処置方法を実施するための、より特定的には、治療による人体の処置方法における、身体運動によって引き起こされる筋疲労および/または筋損傷を予防するための使用のための、先に定義した食用組成物(CA)である。
【0130】
以下の実験概要は本発明を説明するものであるが、本発明を限定するものではない。
【0131】
A-1)-細胞の選択および経時変化
A-1-1)-培養ステップ
本発明の主題である方法を実施するために保持される細胞は、大臀(gluteus maximus)筋(ヒトにおける筋肉運動の場合)のヒト初代骨格筋細胞であり、これは筋管(または筋繊維)に分化するその能力のためである。
【0132】
それらの分化能力を評価するために、細胞を48ウェルプレート中、10000細胞/ウェル、特異的培地中、37℃、5%のCO2を含有する湿潤雰囲気中で培養した。各条件は4回繰り返して行われる。
【0133】
A-1-2)-分化ステップ
細胞が70~80%コンフルエンスに達した時点で、培地を分化培地に交換して筋管を得た。筋芽細胞の筋管への分化を、いくつかの期間の最後に細胞内クレアチンキナーゼ活性を測定することにより評価し、分化ステップの最適持続時間を決定した。細胞内クレアチンキナーゼ活性は、異なる時間に340nmでの分光光度測定によってアッセイキットで測定する。得られた結果は、タンパク質のmU/mgで表される。
【0134】
得られた結果は、10日間の分化後に最適なクレアチンキナーゼ活性を示し、このクレアチンキナーゼ活性は、細胞継代R3の方が細胞継代R4よりも大きいことが示された。
【0135】
従って、本発明による方法の分化ステップは、細胞継代R3について10日間実施される。
【0136】
A-1-3)-分化細胞ストレスステップ
いくつかの濃度のイオノフォア剤カルシマイシン(またはA23187)を先のステップで得られた分化細胞について試験した。
【0137】
これらの濃度のそれぞれについて、乳酸塩の量、インターロイキンIL-6の量およびクレアチンキナーゼ(CK)の活性レベルを評価した。
【0138】
乳酸塩の量およびインターロイキンIL-6の量の測定は、各培地から上清を回収することによって行った。
【0139】
乳酸塩は、乳酸塩の標準範囲と比較して、575nmでの分光光度測定によるアッセイキットを用いて定量した。結果はDNAのpg/μgで表した。
【0140】
標準範囲のIL-6と比較して、450nmでの分光光度測定によるアッセイキットを用いてIL-6を定量した。結果はDNAのpg/μgで表した。
【0141】
細胞層を、超音波処理プローブを用いてPBS緩衝液中で溶解し、2つの評価を前記細胞層に対して行った:
- 異なる時間における340nmでの分光光度測定によるアッセイキットを用いたクレアチンキナーゼ(CK)活性の評価。結果はmU/μgDNAで表した;および
- DNA挿入剤であるHoescht試薬を用いた蛍光アッセイによる、標準的範囲のDNAと比較したDNA量の評価。
【0142】
乳酸塩およびIL-6の量の結果ならびにクレアチンキナーゼ(CK)活性の結果を、層中に存在するDNAの量に対して表した。
【0143】
測定した乳酸塩およびIL-6の量を比較するため、スチューデント検定による統計分析を実施し、クレアチンキナーゼ(CK)活性は、試験した各カルシマイシン(またはA23187)濃度について、およびカルシマイシン(またはA23187)と組み合わせず先の工程で得られた分化細胞について、測定した。
【0144】
得られた結果は、最適なカルシマイシン(またはA23187)濃度が1μmol/L(または1μM)であることを示すことを可能にした。
【0145】
A-2)-最適な方法の定義。
従って、この方法は、以下のステップを含む:
- 上記セクションA-1-1)に記載された操作条件に従って大臀筋(gluteu
s maximus)からヒト初代骨格筋細胞を培養する、ステップa)、
- 上記セクションA-1-2)に記載された操作条件に従って、そして特に細胞継代R3について10日間、ステップa)で得られた培地の細胞分化をする、ステップb)、
- ステップb)で得られた培地を試験物質または組成物と接触させる、ステップc)
- ステップc)で得られた培地を、1μmol/L(または1μM)の濃度でカルシマイシン(またはA23187)に接触させる、ステップd)
- 培地上清について乳酸の量およびインターロイキンIL-6の量を測定し、上記セクションA-1-3)に記載の方法に従ってクレアチンキナーゼ(CK)活性を測定する、ステップe)、
- クレアチンキナーゼ(CK)、IL-6および乳酸塩の発現レベルを比較する、ステップf)。より具体的には、このステップf)の文脈において、以下が計算される:
細胞外インターロイキンIL-6について、比R1=[(N1
0-N1
i)×100]/[(N1
0-N1)]であって:
N1は、方法のステップc)またはステップd)のいずれも実行せずに(非処理および非ストレス化分化細胞)、上記の方法の最後に得られた培地中で測定されたIL-6の量に相当し、
N1
0は、方法のステップc)を実行せずに(非処理だがストレス化した分化細胞)、上記の方法の最後に得られた培地中で測定されたIL-6の量に相当し、
N1
iは、方法のステップc)において物質または組成物(i)が使用された場合の(処理およびストレス化分化細胞)、上記の方法の最後に得られた培地中で測定されたIL-6の量に相当し;
細胞内クレアチンキナーゼについて、比R2=[(N2
0-N2
i)×100]/[(N2
0-N2)であって:
N2は、方法のステップc)またはステップd)のいずれも実行せずに(非処理および非ストレス化分化細胞)、上記の方法の最後に得られた培地中で測定されたクレアチンキナーゼ活性に相当し、
N2
0は、方法のステップc)を実行せずに(非処理だがストレス化した分化細胞)、上記の方法の最後に得られた培地中で測定されたクレアチンキナーゼ活性に相当し、
N2
iは、方法のステップc)において物質または組成物(i)が使用された場合の(処理およびストレス化分化細胞)、上記の方法の最後に得られた培地中で測定されたクレアチンキナーゼ活性に相当し;
細胞外乳酸塩について、比R3=[(N3
0-N3
i)×100]/[(N3
0-N3)]であって:
N3は、方法のステップc)またはステップd)のいずれも実行せずに(非処理および非ストレス化分化細胞)、上記の方法の最後に得られた培地中で測定された乳酸塩の量に相当し、
N3
0は、方法のステップc)を実行せずに(非処理だがストレス化した分化細胞)、上記の方法の最後に得られた培地中で測定された乳酸塩の量に相当し、
N3
iは、方法のステップc)において物質または組成物(i)が使用された場合の(処理およびストレス化分化細胞)、上記の方法の最後に得られた培地中で測定された乳酸塩の量に相当する。
【0146】
B)-本発明の主題である方法による物質および組成物の評価。
組成物(C1)は、その構成成分を、フラットスターラーブレードまたはインペラ型ブレードを備えた機械式攪拌装置を備えたミキサーに25℃の温度で連続的に導入することにより、種々の構成成分を混合して調製した。
組成物C1は、その重量の100%につき、以下からなる:
グルコン酸亜鉛38.2%、
D-αトコフェリルアセテート31.0重量%、
コーンスターチ23.18重量%、
二酸化ケイ素6.02重量%、
Provinol(商標)の名称で販売され、90重量%のポリフェノール酸含量を含む、赤ワインの乾燥残渣1.6重量%。
【0147】
本特許出願の主題である評価方法を実施することによって得られた結果を以下の表1に示す:
【0148】
【0149】
結果の分析
Provinol(商標)(ポリフェノール化合物に基づく赤ワインの乾燥残渣)で処理した細胞では、比率R1、R2およびR3は40未満である。グルコン酸亜鉛で処理した細胞についても同様である。このことから、Porvinol(商標)もグルコン酸亜鉛、および結果的に亜鉛二価カチオンも、ヒトにおける身体運動によって誘発される筋疲労および筋損傷を予防するために単独で選択することができないことが推論される。
【0150】
D-α-トコフェリルアセテートで処理された細胞については、比R1およびR3は40未満であり、比R2は40より大きい(R2=47)。従って、この製品は、ヒトにおける身体運動によって誘発される筋疲労および筋損傷を予防するために選択することもできない。
【0151】
逆に、比R1、R2およびR3は、組成物(C1)で処理された細胞について全て40を超える。
【0152】
この組成物(C1)は、ヒトにおける身体運動によって誘発される筋疲労および筋損傷を予防するために選択することができる。