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特許7090191老化を防止し、しわを取り、肌のバリアを修復する発酵液及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-15
(45)【発行日】2022-06-23
(54)【発明の名称】老化を防止し、しわを取り、肌のバリアを修復する発酵液及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/20 20060101AFI20220616BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20220616BHJP
   A23L 33/135 20160101ALI20220616BHJP
   A61K 36/704 20060101ALI20220616BHJP
   A61K 36/21 20060101ALI20220616BHJP
   A61K 35/74 20150101ALI20220616BHJP
   A61K 8/99 20170101ALI20220616BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20220616BHJP
   A61Q 19/08 20060101ALI20220616BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20220616BHJP
   C12R 1/46 20060101ALN20220616BHJP
【FI】
C12N1/20 A
C12N1/20 E
C12N1/20 Z
A23L33/105
A23L33/135
A61K36/704
A61K36/21
A61K35/74 G
A61K8/99
A61Q19/00
A61Q19/08
A61P17/00
C12R1:46
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021026426
(22)【出願日】2021-02-22
(65)【公開番号】P2022085811
(43)【公開日】2022-06-08
【審査請求日】2021-02-22
(31)【優先権主張番号】202011367324.0
(32)【優先日】2020-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【微生物の受託番号】CGMCC  CGMCC 3622
(73)【特許権者】
【識別番号】519401712
【氏名又は名称】オクスロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】堺 孝子
(72)【発明者】
【氏名】ヨン リー
(72)【発明者】
【氏名】ジェームズ ウェイ
【審査官】伊達 利奈
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-055811(JP,A)
【文献】国際公開第2003/000074(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第101906391(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00
A23L 2/00-35/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受託番号CGMCC No:3622のストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus) grx90でアッケシソウ及びタデアイを発酵させることを含むことを特徴とする発酵液の製造方法。
【請求項2】
前記アッケシソウと前記タデアイとの重量比が2:12~12:2であることを特徴とする請求項1に記載の発酵液の製造方法。
【請求項3】
復元された前記ストレプトコッカス・サーモフィルスを、前記アッケシソウ及び前記タデアイを含有する培地に播種して発酵させることと、
発酵完了後、上澄み液を取り、発酵液とすること、
を含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の発酵液の製造方法。
【請求項4】
前記アッケシソウ及び前記タデアイを含有する前記培地が、前記アッケシソウを2wt%~12wt%と前記タデアイを2wt%~12wt%含有することを特徴とする請求項3に記載の発酵液の製造方法。
【請求項5】
前記アッケシソウ及び前記タデアイを含有する前記培地が、質量分率で、前記アッケシソウ2~10%、前記タデアイ2~10%、グルコース5~30%、ペプトン5~15%、牛肉エキス粉末5~15%、酵母エキス粉末2~8%、リン酸水素二カリウム0.1~0.5%、硫酸マグネシウム0.1~0.5%、硫酸マンガン0.1~0.3%を含むことを特徴とする請求項3に記載の発酵液の製造方法。
【請求項6】
前記発酵の温度が35~50℃であことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の発酵液の製造方法。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の発酵液の製造方法で発酵液を製造し、前記発酵液を老化防止及び/またはしわ取り及び/または肌バリア修復化粧品、医薬品または食品の製造において使用する方法
【請求項8】
アッケシソウ及びタデアイを原料とする発酵液の製造における、受託番号CGMCC No:3622のストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus) grx90の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、老化を防止し、しわを取り、肌のバリアを修復する発酵液及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アッケシソウ(Salicornia europaea L.)はヒユ科アッケシソウ属の一年草である。前記アッケシソウは、タンパク質、ビタミン、アミノ酸、ミネラル、及び複数種の活性物質を豊富に含んでおり、皮膚の良好なバリア機能の回復を促進でき、極めて優れる滋潤効果を発揮できる。また、皮膚にある天然保湿因子NMFの合成も促進し、肌を柔らかく滑らかにでき、スキンケア製品に使用できる。特許文献1では、アッケシソウ(Salicornia herbacea L.)及び芦根の複合エキスを含有する発酵液が皮膚の老化を予防できることが開示され、特許文献2では、アッケシソウ(Salicornia herbacea L.)を含有する保湿・水分保持組成物が開示され、当該組成物は奥深くまで水分を補給し、長期にわたって水分を保持するなどの効果を有する。
【0003】
タデアイ(Polygonum tinctorium)はタデ科の一年草である。タデアイは、インジゴ、トリプタントリン、インディルビン、チンダイノン(qingdainone)、β-シトステロール、ケンペロール、フラボン類、インディカンなどの物質を含み、抗ウイルス、抗菌、消炎、抗酸化などの作用を持ち、医薬品及び染色の分野で多く用いられている。特許文献3では、解熱・抗炎症作用を有する、タデアイを含む漢方薬組成物が開示されている。特許文献4では、タデアイからインジゴ色素を抽出することを含む、天然インジゴ色素を用いる柳編み製品の染色法が開示され、現在、タデアイについては、主にそれにおけるインジゴ、トリプタントリン、β-シトステロールなどの機能性成分が使用されており、主に医薬品及び染色の分野に使用されている。
【0004】
現在、化粧品分野では、水、アルコールなどの溶媒でアッケシソウを抽出してアッケシソウエキスを得る場合が多いが、これではアッケシソウにおける栄養素及び機能性成分を十分に活用できない。例えば、アッケシソウに含まれる高分子のタンパク質が皮膚から吸収されるのは困難である。また、アッケシソウにおける塩分の含有量が高いため、皮膚に刺激を与え、乾燥を引き起こし、特に敏感肌の方にとっては、より不快感を与えやすい。なお、タデアイにおける植物性タンパクなどの栄養成分もまだ十分に活用されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】中国特許出願公開第104274355号明細書
【文献】中国特許出願公開第103767972号明細書
【文献】中国特許出願公開第103599269号明細書
【文献】中国特許出願公開第107253249号明細書
【文献】中国特許出願公開第101906391号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、アッケシソウに含まれる高分子のタンパク質が皮膚から吸収されるのは困難であり、アッケシソウにおける塩分の含有量が高いため、皮膚に刺激を与え、乾燥を引き起こし、特に敏感肌の方にとっては、より不快感を与えやすい。また、タデアイにおける植物性タンパクなどの栄養成分もまだ十分に活用されていない。
【0007】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、アッケシソウにおける高分子のタンパク質を皮膚から吸収され易い低分子ペプチドに分解するとともに、エキスにおける塩分の含有量を減らし、皮膚に対する刺激を減少させ、また、タデアイにおける植物性タンパクを低分子ペプチドに分解し、皮膚を滋養できる発酵液の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、研究により、ストレプトコッカス・サーモフィルスを用いてアッケシソウ及びタデアイを共発酵させることで、アッケシソウにおける高分子物質を低分子物質に分解でき、これにより皮膚から吸収され易くなること、発酵がアッケシソウにおける塩分の含有量を低下させ、皮膚に対する刺激を減少させることができること、および、ストレプトコッカス・サーモフィルスによる発酵を通じて、タデアイにおける植物性タンパク成分を低分子ペプチドに分解でき、皮膚の滋養により有利であることを見出した。
【0009】
本発明に用いられるストレプトコッカス・サーモフィルスは受託番号CGMCC No:3622のストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus) grx90であり、すでに2010年2月1日に中国微生物菌種保蔵管理委員会普通微生物センター(CGMCC)に寄託され、かつ、特許文献5に開示されている。
【0010】
具体的には、本発明は、受託番号CGMCC No:3622のストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus) grx90でアッケシソウ及びタデアイを発酵させることを含む、発酵液の製造方法を提供する。
本発明の実施例によれば、前記発酵液の製造方法は、発酵完了後、上澄み液を取り、発酵液とすることをさらに含む。
【0011】
本発明の実施例によれば、遠心または自然沈降の方式で上澄み液を得ることができる。
【0012】
本発明の実施例によれば、前記発酵液の製造方法では、前記アッケシソウと前記タデアイとの重量比が2:12~12:2であり、好ましくは3:7~7:3であり、より好ましくは5:5である。具体的には、アッケシソウとタデアイとの重量比は2:12、2:10、3:7、5:5、7:3、10:2または12:2であってもよい。
【0013】
研究により、アッケシソウとタデアイとの重量比が上記の範囲内にあることが、発酵によりアッケシソウの活性低分子ペプチド及びタデアイの活性低分子ペプチドを生産することにとってより有利であり、且つ、老化防止、しわ取り、肌のバリア修復といった作用の発揮を促進できることを見出した。
【0014】
本発明の実施例によれば、前記アッケシソウはアッケシソウ(Salicornia herbacea L.)から選ばれるものである。
【0015】
本発明の実施例によれば、前記発酵液の製造方法は、復元された前記ストレプトコッカス・サーモフィルスを、前記アッケシソウ及び前記タデアイを含有する培地に播種して発酵させることと、発酵完了後、上澄み液を取り、発酵液とすることを含む。
【0016】
具体的には、当分野の常法により前記ストレプトコッカス・サーモフィルスを培養することができ、例えば、特許文献5に開示される方法を参照できる。例えば、具体的には、MRS培地で培養することができる。
【0017】
本発明の実施例によれば、前記アッケシソウ及び前記タデアイを含有する前記培地は、アッケシソウ2wt%~12wt%とタデアイ2wt%~12wt%とを含有する。
【0018】
本発明の実施例によれば、前記アッケシソウ及び前記タデアイを含有する前記培地は、炭素源、窒素源及び無機塩をさらに含有する。
【0019】
具体的には、前記炭素源が、グルコース、リボース、ラクトース、ガラクトース、フルクトース、シュクロース、マルトース、マンノース、フコース、マンニトール、ソルビトールから選ばれる1種または複数種であることが好ましい。前記窒素源が、ペプトン、牛肉エキス粉末、酵母エキス粉末から選ばれる1種または複数種であることが好ましい。
【0020】
本発明の実施例によれば、前記アッケシソウ及び前記タデアイを含有する前記培地において、炭素源はグルコースであることが好ましく、窒素源はペプトン、牛肉エキス粉末及び酵母エキス粉末であることが好ましく、これにより、ストレプトコッカス・サーモフィルスによる発酵にとってより有利である。
【0021】
本発明の実施例によれば、前記アッケシソウ及び前記タデアイを含有する前記培地は、質量分率で、アッケシソウ2~10%、タデアイ2~10%、グルコース5~30%、ペプトン5~15%、牛肉エキス粉末5~15%、酵母エキス粉末2~8%、リン酸水素二カリウム0.1~0.5%、硫酸マグネシウム0.1~0.5%、硫酸マンガン0.1~0.3%を含む。
【0022】
本発明の実施例によれば、前記アッケシソウ及び前記タデアイを含有する前記培地はさらに水を含み、例えば、質量分率が100%になるよう水を足す。
【0023】
本発明の実施例によれば、前記発酵の温度は35~50℃であり、例えば36~42℃である。
【0024】
本発明の実施例によれば、通常、発酵の過程は静置培養であってもよく、例えば、一般的には12~36時間培養する。
【0025】
具体的な発酵温度及び発酵時間は、アッケシソウ及びタデアイにおけるタンパク質またはペプチドが実質的に十分に加水分解されているのか、或いは活性低分子ペプチドが十分に生成したのかに準ずる。
【0026】
発酵が完了した後、遠心法で、例えば、6000gで10分間遠心することで、上澄み液を得ることができる。得られた上澄み液には、多量のアッケシソウの活性低分子ペプチド及びタデアイの活性低分子ペプチドが含まれている。
【0027】
本発明の発酵液には、アッケシソウの活性低分子ペプチド及びタデアイの活性低分子ペプチドが含まれており、さらにストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)の発酵生成物が含まれている。
【0028】
本発明は上記の方法で製造される発酵液を含む。研究により、当該発酵液が微生物によってアッケシソウ、タデアイを発酵させてなるものであり、ストレプトコッカス・サーモフィルスによる発酵を通じて、アッケシソウ、タデアイにおける活性成分が放出され、更にアッケシソウ、タデアイにおける吸収・利用されにくい高分子の活性成分が分解され、これにより、発酵液の老化防止、しわ取り、肌のバリア修復といった作用が向上することが証明されている。従って、本発明に係る方法により製造される発酵液は優れる老化防止、しわ取り、及び肌のバリア修復といった機能を有する。
【0029】
当分野の常法により、前記上澄み液をさらに乾燥して粉末化することができる。一般的には、発酵により得られる活性低分子ペプチドの構造を破壊せず、かつ機能を損なわないことを基準とする方法、例えば凍結乾燥または噴霧乾燥がある。
【0030】
本発明は、さらに、老化防止及び/またはしわ取り及び/または肌バリア修復化粧品、医薬品または食品の製造における、上記の方法で製造される発酵液の使用を含む。
【0031】
本発明は、さらに、上記発酵液を主な活性成分または唯一の活性成分として含有する化粧品、医薬品または食品を提供する。
【0032】
上記の化粧品、医薬品または食品の組成及びその製造については、従来技術を参照できる。
【0033】
前記化粧品としては、具体的には、クリーム剤、エマルション、パスタ剤、軟膏剤、フェイスマスク、ゲル剤または洗剤などであってもよい。従来技術における既知の基剤、賦形剤、担体、添加剤などを用いて、常法に従って混合することにより、化粧水、エッセンス、フェイスマスク、原液、アンプル、エマルション、フェイスクリーム、アイクリームなどを製造できる。
【0034】
以上の研究に基づき、本発明は、さらに、アッケシソウ及びタデアイを原料とする発酵液の製造における、受託番号CGMCC No:3622のストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus) grx90の使用を提供する。
【発明の効果】
【0035】
ストレプトコッカス・サーモフィルスは、重要な工業用乳酸菌であって、安全な食品グレードの微生物として公認され、炭水化物、タンパク質類の物質を代謝し、アミノ酸類の物質を合成でき、発酵過程において、短鎖脂肪酸、エキソポリサッカライド、ペプチド類などの代謝生成物を生産できる。本発明では、ストレプトコッカス・サーモフィルスを用いてアッケシソウ及びタデアイを発酵させるが、このことで、アッケシソウ及びタデアイにおける植物性タンパクの栄養素を十分に活用でき、同時に、アッケシソウ及びタデアイにおける豊富な栄養成分がストレプトコッカス・サーモフィルスによる発酵を促進でき、エキソポリサッカライド、ペプチド類などの活性成分をより多く生産できる。本発明によれば、アッケシソウにおける高分子のタンパク質を皮膚から吸収され易い低分子ペプチドに分解するとともに、エキスにおける塩分の含有量を減らし、皮膚に対する刺激を減少させ、また、タデアイにおける植物性タンパクを低分子ペプチドに分解し、皮膚を滋養できる。本発明の発酵液は老化防止、しわ取り、肌のバリア修復などの機能を有し、化粧品、医薬品または食品の製造に使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下において使用される受託番号CGMCC No:3622のストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus) grx90は、すでに2010年2月1日に中国微生物菌種保蔵管理委員会普通微生物センターに寄託されている。
【0037】
以下において使用されるストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus) grx90(その受託番号がCGMCC No.3622である)の復元培養方法は下記の通りである。ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus) grx90(CGMCC No.3622)をMRS培地に加え、42℃の条件下で静置し16時間復元培養し、6000gで3分間遠心して、菌体を回収し、無菌水を加えて菌体を2回洗浄し、最後に同体積の保護剤を含むPBS溶液(NaCl0.8%、KHPO0.02%、NaHPO0.115%、トリプトン1%、及びグルタミン酸ナトリウム0.1%)に再懸濁させれば、それを菌株として、アッケシソウ(Salicornia herbacea L.)及びタデアイを含有する培地に播種して発酵することができる。
【0038】
以下において使用される受託番号CGMCC No 1.3996のストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)は中国普通微生物菌種保蔵管理センターから購入したものである。
【0039】
以下において使用されるストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus) CGMCC NO. 1.3996の復元方法は上記のストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus) grx90(その受託番号がCGMCC No:3622である)の方法とほぼ同じである。
【0040】
以下において使用される受託番号CGMCC NO. 1.15608のラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)は中国普通微生物菌種保蔵管理センターから購入したものである。その復元方法は下記の通りである。ラクトバチルス・ファーメンタムをMRS培地に加え、36℃の条件下で静置し48時間復元培養し、遠心(6000g、3分間)して菌体を回収し、無菌水を加えて菌体を洗浄(2回)した後、同体積の保護剤を含むPBS溶液(NaCl0.8%、KHPO0.02%、NaHPO0.115%、トリプトン1%、及びグルタミン酸ナトリウム0.1%)に再懸濁させる。
【実施例
【0041】
実施例1
復元培養されたストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus) grx90(その受託番号がCGMCC No:3622である)を2%の割合で培地に播種し、42℃で24時間静置培養した。発酵が完了した後、遠心(6000g、10分間遠心)して上澄み液を取り、発酵液とした。
ここで、前記培地は、質量分率で、アッケシソウ(Salicornia herbacea L.)5%、タデアイ5%、グルコース10%、ペプトン8%、牛肉エキス粉末5%、酵母エキス粉末3%、リン酸水素二カリウム0.1%、硫酸マグネシウム0.2%、硫酸マンガン0.1%を含み、残量が水である。
【0042】
実施例2
復元培養されたストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus) grx90(その受託番号がCGMCC No:3622である)を2%の割合で培地に播種し、36℃で24時間静置培養した。発酵が完了した後、遠心(6000g、10分間遠心)して上澄み液を取り、発酵液とした。
本実施例において用いられる培地は実施例1の培地と同じである。
【0043】
実施例3
復元培養されたストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus) grx90(その受託番号がCGMCC No:3622である)を2%の割合で培地に播種し、42℃で24時間静置培養した。発酵が完了した後、遠心(6000g、10分間遠心)して上澄み液を取り、発酵液とした。
ここで、前記培地は、質量分率で、アッケシソウ(Salicornia herbacea L.)3%、タデアイ7%、グルコース10%、ペプトン8%、牛肉エキス粉末5%、酵母エキス粉末3%、リン酸水素二カリウム0.1%、硫酸マグネシウム0.2%、硫酸マンガン0.1%を含み、残量が水である。
【0044】
実施例4
復元培養されたストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus) grx90(その受託番号がCGMCC No:3622である)を2%の割合で培地に播種し、42℃で24時間静置培養した。発酵が完了した後、遠心(6000g、10分間遠心)して上澄み液を取り、発酵液とした。
ここで、前記培地は、質量分率で、アッケシソウ(Salicornia herbacea L.)4%、タデアイ6%、グルコース10%、ペプトン8%、牛肉エキス粉末5%、酵母エキス粉末3%、リン酸水素二カリウム0.1%、硫酸マグネシウム0.2%、硫酸マンガン0.1%を含み、残量が水である。
【0045】
比較例1
本比較例の発酵液及びその製造方法と実施例1との差異は、用いられる培地が、質量分率で、タデアイ10%、グルコース10%、ペプトン8%、牛肉エキス粉末5%、酵母エキス粉末3%、リン酸水素二カリウム0.1%、硫酸マグネシウム0.2%、硫酸マンガン0.1%を含み、残量が水であることだけである。
【0046】
比較例2
本比較例の発酵液及びその製造方法と実施例1との差異は、ストレプトコッカス・サーモフィルスgrx90(CGMCC No:3622)を受託番号CGMCC No 1.3996のストレプトコッカス・サーモフィルスに置き替えたことだけである。
【0047】
比較例3
本比較例の発酵液及びその製造方法と実施例1との差異は、用いられる培地が、質量分率で、アッケシソウ(Salicornia herbacea L.)10%、グルコース10%、ペプトン8%、牛肉エキス粉末5%、酵母エキス粉末3%、リン酸水素二カリウム0.1%、硫酸マグネシウム0.2%、硫酸マンガン0.1%を含み、残量が水であることだけである。
【0048】
比較例4
本比較例はアッケシソウエキスを提供し、その製造方法は下記の通りである。アッケシソウ(Salicornia herbacea L.)を5g取り、水で洗浄し、10倍の重量の水を加えて2分間すりつぶし、ホモジネートを得、100メッシュの濾布でろ過してろ液を得、ろ液を一晩静置して、上澄み液を取り、精製水を加えて体積を100mLになるよう調整して、アッケシソウエキスとした。
【0049】
比較例5
本比較例はストレプトコッカス・サーモフィルスの発酵液を提供し、その製造方法は、復元培養されたストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus) grx90を2%の播種量でMRS培地に播種して発酵することと、発酵完了後、6000gで10分間遠心して、上澄み液を取り、ストレプトコッカス・サーモフィルス発酵液とすることを含み、具体的な発酵条件としては、42℃で培地において24時間静止培養した。
【0050】
比較例6
本比較例の発酵液及びその製造方法と実施例1との差異は、ストレプトコッカス・サーモフィルス grx90(CGMCC No:3622)を受託番号CGMCC NO. 1.15608のラクトバチルス・ファーメンタムに置き替えたことだけである。
【0051】
実験例1
実施例1~4、比較例1~3の発酵液及び比較例4のアッケシソウエキスをそれぞれ100ml取り、分画分子量が1000であるフィルターでろ過し、クマシーブリリアントブルーキットを用いて、ろ液における低分子ペプチドの含有量を検出した。実験の結果を表1に示す。
【0052】
【表1】
注:表1における「低分子ペプチドの含有量」とは、実施例1~4、比較例1~3の発酵液及び比較例4のアッケシソウエキス100mlにおける低分子ペプチドの含有量(mg)である。
【0053】
実験の結果は、実施例1~4の発酵液における低分子ペプチドの含有量が比較例1~4より著しく高いことを示しており、ストレプトコッカス・サーモフィルスがアッケシソウ(Salicornia herbacea L.)及びタデアイにおける高分子のタンパク質を1000dal以下の低分子ペプチドに分解でき、皮膚からの吸収に有利であり、アッケシソウの活性成分を放出させることができることが証明されている。
【0054】
実験例2
実施例1~2、比較例2~3の発酵液及び比較例4のアッケシソウエキスをそれぞれ100ml取り、硝酸銀滴定法によりそれらにおける塩化ナトリウムの含有量を検出し、その結果を表2に示す。
【表2】
注:表2における「塩化ナトリウムの含有量」とは、実施例1~2、比較例2~3の発酵液及び比較例4のアッケシソウエキス100mlにおける塩化ナトリウムの含有量(mg)である。
【0055】
実験の結果は、実施例1、2の発酵液における塩化ナトリウムの含有量が比較例2~4より著しく低いことを示しており、ストレプトコッカス・サーモフィルスがアッケシソウ(Salicornia herbacea L.)における塩の含有量を効率的に低下させ、皮膚に対する刺激性を減らし、皮膚をより良好に保護できることが証明されている。
【0056】
実験例3 発酵液の抗酸化作用の評価試験
実施例1~4、比較例1~3、5、6の発酵液及び比較例4のアッケシソウエキスをそれぞれ精製水で100倍に希釈して試料とし、下記の実験を行った。
【0057】
1、スーパーオキシドアニオンラジカル消去能の評価
0.05mol/LのpH8.2のTris-HCl緩衝液を4.5mL取り、25℃の恒温水槽にて20min予熱した。試料1mL及び25mmol/Lのピロガロール溶液0.4mLをさらに加えて均一に混合した後、25℃の水浴にて5min反応させ、8mol/LのHCl 1.0mLを加えて反応を停止させた。Tris-HCl緩衝液を標準液として、299nmの吸光度を測定した。空白対照として、試料の代わりに、試料の溶媒(即ち、25mmol/Lのピロガロール溶液)1mLを用いた。下記の式により消去率(D)を算出した。
スーパーオキシドアニオンラジカル消去率=[1-(A2/A1)]×100%
ここで、A1が空白対照の吸光度であり、A2が試料の吸光度である。
【0058】
2、ヒドロキシルラジカル消去能の評価
2mmol/LのFeSO 3mL、1mmol/LのH 3mLを順に25mLの比色管に加え、均一に振り混ぜ、そして6mmol/Lのサリチル酸を3mL加え、均一に振り混ぜて、37℃の水浴で15min加熱した後取り出し、その吸光度を測定した。濃度が一定である被測定液をそれぞれ加え、均一に振り混ぜ、引き続き水浴で15min加熱した後取り出し、その吸光度を測定した。空白対照として、被測定液の代わりに、脱イオン水を用いた。下記の式により試料のヒドロキシルラジカル(・OH)消去率を算出した。
ヒドロキシルラジカル消去率=[A1-A2-(A1-A3)]/A1×100%
ここで、A1が試料を加える前の反応系の吸光度であり、A2が・OHを試料で消去した後の反応系の吸光度であり、A3が・OHを空白対照で消去した後の反応系の吸光度である。
【0059】
上記の試料の抗酸化作用の評価結果を表3に示す。
【0060】
【表3】
【0061】
表3の結果は、実施例1~4の発酵液のラジカル消去率が比較例1~6より著しく高いことを示しており、本発明の発酵液が優れる抗酸化能を有することが証明されていて、実施例1の抗酸化能は最も優れ、皮膚の抗酸化能を増加し、皮膚の老化を遅らせることができる。
【0062】
実験例4 皮膚の滋養・保湿効果の分析
実施例1~4、比較例1~3、5、6の発酵液及び比較例4のアッケシソウエキスに対して、皮膚の滋養・保湿効果をそれぞれ評価し、具体的な方法は下記のとおりである。
25歳から60歳までの男性38名および女性62名、計100名のパネラーを選択し、ランダムに10群に分け、群あたり10名とした。皮膚において5×5cmを選択して、ドイツのCK社の皮膚水分量計Corneometer CM825を用いて、上記の試料を皮膚に使用した。使用を開始する前に、皮膚水分量計を用いて、一定の温度及び一定の湿度(21℃及び40%湿度)の条件下で各被験者の皮膚の水分含有量を測定し、さらに、使用した後の初期値(T0)、30min(T1)及び8h(T2)の皮膚の水分含有量を測定し、測定結果を表4に示す。
【0063】
【表4】
【0064】
表4の測定結果から分かるように、実施例1~4の発酵液を使用した場合、使用後30minの皮膚の水分含有量は比較例1~6と比べて顕著に向上し、中でも、実施例1の効果が最も良好であった。これにより、本発明の発酵液が皮膚を滋養・保湿し、皮膚へ十分な水分を供給し、しわを減らし、肌のバリアを修復し、皮膚の老化を遅らせることができることが証明されている。
【0065】
上記において、一般的な説明及び具体的な実施形態で本発明を詳しく説明したが、本発明に基づき、いくつかの修正や改善を行い得ることは当業者にとって自明である。よって、本発明の趣旨から逸脱しない範疇で行われるこれらの修正や改善は、いずれも本発明の保護しようとする範囲に属する。