(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-15
(45)【発行日】2022-06-23
(54)【発明の名称】吸収力が強化された農地保護土壌被覆シート及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A01G 13/00 20060101AFI20220616BHJP
【FI】
A01G13/00 302Z
(21)【出願番号】P 2021201430
(22)【出願日】2021-12-13
【審査請求日】2022-03-23
(31)【優先権主張番号】10-2021-0035280
(32)【優先日】2021-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0050978
(32)【優先日】2021-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521544414
【氏名又は名称】コエコ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】KOECO Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】508HO, 509HO, 142, Gwangdeok-daero, Danwon-gu, Ansan-si, Gyeonggi-do, 15477, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110002295
【氏名又は名称】弁理士法人M&Partners
(72)【発明者】
【氏名】リ ヒー ウォン
【審査官】櫻井 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-239954(JP,A)
【文献】特開2006-204206(JP,A)
【文献】特開2002-171847(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1169505(KR,B1)
【文献】韓国登録特許第10-1169556(KR,B1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0113983(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0257213(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 11/00 - 15/00
C09K 17/00 - 17/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
農地保護及び農地への栄養分の供給のための農地保護用の土壌被覆シートであって、
前記土壌被覆シートは、純粋パルプ、再生パルプ、液状ナノ粘土、木綿綿、植物抽出液、海藻類、栄養物質を原料物質として配合して用いる方式で製紙されており、
前記液状ナノ粘土、前記
植物抽出液及び前記栄養物質は、予め混合し、前記植物抽出液及び栄養物質が液状ナノ粘土に含浸して分散されており、
前記植物抽出液は、甘草、黄耆、川▲きゅう▼、ケンポナシの熱水抽出後の濃縮液からなり、前記海藻類は天草であり、前記栄養物質は酵素ステビア、大豆タンパク、カゼイン及び魚粉からなり、
前記純粋パルプ100重量部に対して、再生パルプ70~110重量部、前記液状ナノ粘土20~40重量部、前記木綿綿30~50重量部、前記植物抽出液5~12重量部、前記天草4~7重量部、前記酵素ステビア0.5~3重量部、前記大豆タンパク0.5~3重量部、前記カゼイン0.5~3重量部、前記魚粉0.5~3重量部を混合して製紙された土壌被覆シート。
【請求項2】
前記土壌被覆シートにおける前記木綿綿の繊維は製紙後にエンボス加工により破壊されていることを特徴とする、請求項1に記載の土壌被覆シート。
【請求項3】
農地保護及び農地への栄養分の供給のための農地保護用の土壌被覆シートの製造方法であって、
1)純粋パルプ、再生パルプ、液状ナノ粘土、木綿綿、植物抽出液、海藻類、栄養物質を準備するステップと、
2)前記純粋パルプ100重量部を基準とし、前記液状ナノ粘土20~40重量部と前記植物抽出液5~12重量部、前記栄養物質2~12重量部を準備し、前記液状ナノ粘土、前記植物抽出液、前記栄養物質を混合し、前記植物抽出液と前記栄養物質を前記液状ナノ粘土に含浸させるステップと、
3)前記純粋パルプ100重量部に対して、前記再生パルプ70~110重量部、前記木綿綿30~50重量部、前記海藻類4~7重量部、前記ステップ2)の物質を配合し、製紙過程の原料として使用するステップと、を含み、
前記植物抽出液は、甘草、黄耆、川▲きゅう▼、ケンポナシの熱水抽出後の濃縮液からなり、前記海藻類は天草であり、前記栄養物質は、酵素ステビア、大豆タンパク、カゼイン及び魚粉からなり、
前記栄養物質は、前記純粋パルプ100重量部を基準とし、前記酵素ステビア0.5~3重量部、前記大豆タンパク0.5~3重量部、前記カゼイン0.5~3重量部、前記魚粉0.5~3重量部であることを特徴とする、土壌被覆シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農作物を裁培する農地を覆って雑草の成長を抑制し、作物の成長時には生分解されるようにすることで、農地に有機質及び無機質の栄養分を供給可能にした、環境にやさしい農地保護被覆シートに関する。機能性物質を被覆シートにコーティングする従来の方式と違い、機能性物質を他の物質と配合する方式で製造され、且つ、被覆シートの物理的特性を向上させるための方式を組み合わせた技術である。特に、木綿綿を使用し、エンボス加工により吸収力を強化した。
【背景技術】
【0002】
農地保護被覆シート(別名はマルチシート)は、農作物を裁培する際、耕地土壌の表面を覆うために使用するものであって、土壌侵食防止、土壌水分保持、地温調節、雑草抑制、土壌汚染防止などの目的で使用されており、マルチシートともいう。
【0003】
マルチングの初期の方法は、稲藁、牧草などの環境にやさしい材料を使用する伝統的な方法であったが、作業しやすく材料の確保が容易なポリエチレンやポリ塩化ビニルのような材料を使用する方法がほとんどを占めている。しかしながら、前述のビニール材料は、回収するための作業強度が高い上に、土中に残存するビニールマルチシートは、材質の特性上、通気性が非常に悪いため、土壌汚染の主な原因となっているが、このように除去されずにいるビニールが年毎増え続けているという点がより大きな問題となっている。
農地保護及び栄養分の供給のため、窒素肥料や肥しを散布して農地を保護する方式では、窒素肥料などによる水質汚染を伴う問題点があり、肥しを作る過程で臭いが発生し、作る過程で意図しない成分が土地に浸透し、これも水質汚染の問題を引き起こす。したがって、農地の栄養供給のための、より環境にやさしい手段が必要である。そのため、生分解性マルチング材料の開発が行われてきている。マルチング材料が作物の裁培に適用されると、初期にはマルチング効果を示しながらも、作物の収穫時期には分解されて土壌汚染を遮断し、分解により生成された有機物によって土壌肥沃度も増加する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
特許文献1:大韓民国特許公報第10-1169505号
特許文献2:大韓民国特許公報第10-1169556号
特許文献3:大韓民国特許公報第10-2115939号
特許文献4:大韓民国特許公報第10-2169864号
特許文献5:大韓民国特許公報第10-2121207号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
生分解性マルチシートの形態においては、紙材質の母材に機能性物質をコーティングする方式を殆ど使用してきた。機能性物質をコーティングするためには、コーティング液中に天然接着材又はこれと類似な物質を使用するが、これらが紙母材の気孔を防き、水分調節機能が適切な範囲から逸脱する場合が多い。マルチシートは、生育に必須の水分蒸発を一部抑制し、一定の範囲内で裁培作物のための水分調節の役割を果たす。通常のメカニズムは、水分が流入し、流入した水分を蒸発しにくくしてそれを調節するが、通気性が足りない場合には、水分流入を遮断し、却って作物の生育に阻害要因になってしまう問題点がある。
そして、マルチシートの機能の一つは、雑草抑制又は除草効果を発揮することであるが、これは、裁培作物以外の他の植物に、生長に必要な太陽光を物理的に遮断することによって達成できる。マルチシートが畑に塗布(設置)されるには土壌の真上に塗布(設置)され、水田に適用される場合には長期間水中に沈積しなければならないが、除草効果を発揮するまでは適度の物性を維持しなければならず、適切な乾燥強度及び一定レベルの湿潤強度も要求される。乾燥地力増強剤としては両性ポリアクリルアミドを、湿潤強度を改善するためにはエポキシ樹脂系の湿潤地力増強剤を使用することもある。生分解性マルチシートの形態においては、通常は片面だけをコーティングするが、このメカニズムは、コーティングされていない部分の分解速度が速く、コーティングされている部分の分解速度がこれに従属して分解されるものであるが、その調節が容易でないため、片面の強度が比較的速く低下し、除草的機能の達成に問題を起こす場合が多い。また、両面コーティングでは、通気性がさらに悪くなる他、分解速度が却って遅くなるという問題も発生し得る。機能性物質の添加条件と、コーティング条件、母材の条件、地力増強剤の調節などの設計過程を調節すれば、ある程度適切なマルチシートを製造できるが、過程が複雑になり、わずかな変化に見合う品質均一性が達成しにくい。また、コーティング方式の分解性マルチシートでは、土壌に塗布(設置)されたマルチシートに加えられる条件が変わることにより、特定部分における物性が維持できなくなり、この場合は他の部分にも速やかに影響が及び、マルチシートの本来の目的の機能が低下してしまう問題も多い。
【0006】
本発明者も生分解性マルチシートを開発したことがあり、前述のような問題点にたどり着いた。本発明者はこのような問題点を認識し、本人が過去研究してきた資料はもとより、様々な実験を通じてさらに効果的なマルチシートを完成し、本出願に至った。
【0007】
親環境農地保護土壌被覆シートの製造において、機能性物質をコーティングする方式の問題点を解決しようとする。
【0008】
また、分解がなされる既存の親環境農地保護土壌被覆シートが有する物性の問題点を解決しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、農地保護及び農地への栄養分の供給のための農地保護土壌被覆シートであって、該土壌被覆シートは、純粋パルプ、再生パルプ、液状ナノ粘土、木綿綿、植物抽出液、海藻類、栄養物質をマルチシートの原料物質として配合して使用する方式で製紙され、前記液状ナノ粘土、植物抽出物及び栄養物質は、予め混合し、植物抽出物及び栄養物質が液状ナノ粘土に含浸して分散され、前記純粋パルプ100重量部に対して、再生パルプ70~110重量部、液状ナノ粘土20~40重量部、木綿綿30~50重量部、植物抽出液5~12重量部、海藻類4~7重量部を混合して製紙されることを特徴とする土壌被覆シートである。
【0010】
一方、前記栄養物質は、純粋パルプ100重量部に対して、酵素ステビア0.5~3重量部、大豆タンパク0.5~3重量部、カゼイン0.5~3重量部、魚粉0.5~3重量部から構成されることが好ましく、また、前記土壌被覆シートは、製造過程でしわを形成する加工過程を含むことが好ましい。
【0011】
なお、本発明は、農地保護及び農地への栄養分の供給のための農地保護土壌被覆シートの製造方法であって、1)純粋パルプ、再生パルプ、液状ナノ粘土、木綿綿、植物抽出液、海藻類、栄養物質を準備する段階;、2)純粋パルプ100重量部を基準とし、液状ナノ粘土20~40重量部と植物抽出液5~12重量部、栄養物質2~12重量部を準備し、液状ナノ粘土、植物抽出液、栄養物質を混合し、植物抽出液と栄養物質を液状ナノ粘土に含浸させる段階;、3)純粋パルプ100重量部に対して、再生パルプ70~110重量部、木綿綿30~50重量部、海藻類4~7重量部、前記2)段階の物質を配合し、製紙過程の原料として使用する段階;を含むことを特徴とする、土壌被覆シートの製造方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、非常に優れたマルチシートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施例に係る土壌被覆シートの原料を配合した状態を示す写真である。
【
図2】本発明の一実施例に係る土壌被覆シートの原料の粒子状態を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、農地保護及び農地への栄養分の供給のための農地保護土壌被覆シートの製造方法に関する。本発明者の既存の方式は、紙材質の母材に機能性物質をコーティングする方式を使用していたが、通気性が悪いために適度の水分保持などが困難であり、二酸化炭素の含有量を上げるなどの結果により、土壌における微生物の活動と土壌の正常な構造形成に悪影響を及ぼし、却って作物の生育を阻害することがあった。
【0015】
本発明では、本発明者が従来発明した方式を相当部分借用している。しかしながら、問題点の認識と問題解決方式においては発想の転換が行わており、そのための最適化の過程は格段に異なっている。
【0016】
本発明者は、コーティング方式を使用してはならないと判断した。パルプを用いて紙を製造する過程中に、機能性物質が配合されるようにする方式を採択し、基本的に通気性を備えるようにした。この方式を採択する場合、機能性物質の量を増やすと地力が弱くなる問題が発生し得るが、これを解決しなければならない。本発明では、純粋パルプと再生パルプを共に使用し、より環境にやさしくかつ経済性をも考慮すると同時に、木綿綿、そして液状ナノ粘土を使用し、機能性物質を含有しつつも、地力を保持できるようにした。木綿綿の代わりに綿繊維を使用してもよいが、木綿綿を使用すると、被覆シートの保温性をより改善でき、吸湿性もより向上させることができる。木綿綿は、繊維粒子が天然の撚りを有するので、外部の多湿な環境では湿気を吸収しているが、日光では、吸収した湿気を放出しながら外形を復元する力があり、湿気の量を適切に調節することに効果的である。よって、土壌における微生物の適切な活動と土壌の好ましい構造形成により好ましいものと判断されている。
【0017】
パルプは、木材やその他の繊維植物から機械的、化学的又はその中間方法により得られるセルロース繊維の集合体のことをいう。原料により分類することもあり、製造法により分類することもある。本発明に係る純粋パルプは、様々なものが選択されてよいが、好ましくはクラフトパルプが選択されてよい。クラフトパルプは、ほとんどの木を材料とすることができ、針葉樹種は繊維の長さが長いため、闊葉樹種で製造したものに比べては引裂強度が高い。マルチシートの場合、引裂強度がある程度確保されてこそ除草機能を達成しやすい点から、針葉樹種のパルプがより好ましい。
【0018】
古紙から再生パルプを製造する工程は、いくつかの短所を有しているが、代表的なものが脱墨工程と強度低下の問題である。脱墨工程とは、古紙のインクを除去する工程である。インクは、一般に、顔料、展色剤(Vehicle)及び補助剤を含むが、顔料はインクの色を表す物質であって、有機顔料、無機顔料、体質顔料などがある。展色剤(Vehicle)はワニスの成分であって、流動性と乾燥性を付与し、顔料と同様にインクの大部分を占めており、塗料中で顔料を分散して固着させる役割を果たす。また、補助剤は、顔料と展色剤の機能を補助する成分であって、印刷適性、乾燥性、色相調整などのために少量添加される物質である。上記のように、種々の重合体成分が複合的に作用して製造されたインクを紙から除去することは、古紙を再生パルプに製造する過程で解決しがたい問題の一つである。古紙の脱墨工程で発生する繊維質の破損は、製造された再生紙の強度低下の現象を招き得る。再生紙の強度は、繊維自体の強度と繊維間の結合により左右されるが、繊維自体の強度は再生によっても殆ど変わらないが、繊維間の結合は、繊維が硬直し、膨潤性及び柔軟性が低下するなどの劣化現象によりかなり減少する。特に、再生回数が増加すると、引張強度、密度、伸び率、耐折度、破裂強度が低下し、引張強度と硬さが上昇する。
【0019】
本発明では、純粋パルプ100重量部に対して、再生パルプ70~110重量部を使用する。再生パルプを使用しすぎると、繊維間の結合力の問題が増加し得る。再生パルプの使用は、環境を考慮する側面と共にマルチシートの用途で使用される場合の経済性も考慮したものであり、且つ、適切な時期にマルチシートの分解を可能にするためのものである。概ね純粋パルプと再生パルプの使用量が類似する範囲で使用される場合、マルチシートの用途では好ましい物性を示すことが把握された。
【0020】
本発明では、木綿綿を使用する。木綿綿の代わりに綿繊維を使用してもよく、前述したように、被覆シートの物性と機能的な面から選択されることもあるが、綿繊維を使用する場合には、綿織物を解いて使用しなければならず、製紙工程における原料の均一性を阻害することがある。木綿綿の場合、製紙後の被服シートがよりなめらかで且つ品質の均一度に優れると思われる。本発明において、木綿綿は、純粋パルプ100重量部を基準とし、30~50重量部が使用されるが、比較的少なくない量である。木綿綿や綿繊維は、配合方式を採択し、農地保護被覆シートを作る場合の強度などを補強することが主な目的であるが、木綿綿を使用すると、被覆シートの通気性又は透水性が多少向上し、被覆シートの分解時期をより操り上げることができる。作物の種類によっては、微小に被覆シートの分解時期を調節しなければならない場合があり、これを考慮して木綿綿を使用する側面がある。木綿綿を選択すると、このような側面があるため、綿繊維を使用する場合と比べて、再生パルプの使用量を多少減らし、木綿綿の使用量を多少増やすことによって、このような機能をよりサポートすることができる。
【0021】
本発明では、マルチシートを製造するために使用される全ての物質を共に配合して使用するため、マルチシートの製造時に使用されるパルプと機能性物質とが互いに高相溶性でよく付着し、安定した強度が維持される必要があり、これに役立つものも木綿綿である。木綿綿も綿繊維に比べて活性化可能なヒドロキシ基がより多いため、水によりよく膨潤し、パルプの間に適切な位置を占めて繊維間の結合を助ける。また、パルプに比べて摩耗強度が優れているため丈夫であり、耐薬品性も有するため製紙過程を経る中でもこのような特性を維持できる。木綿綿が少なすぎても多すぎても、前記の機能を達成するための適切な範囲から外れることがある。
【0022】
本発明において木綿綿を使用する場合、エンボス加工されていることがより好ましい。エンボス加工は、互いに強く結合している繊維を機械的に破壊する過程として説明され得る。ローラーにより1次的に製紙された後に、2次的にエンボス成形されたエンボスローラーに通して、これを形成できる。エンボス加工を行うプロセスを通じて被服シートがよりなめらかになり、単位面積当たりの表面積が広くなりながら吸収力もさらに補強される。柔軟性と伸縮性が増加することは勿論のことである。マルチシートが使用される現場での設置過程、そして外部環境それ自体と外部環境の変化過程において、マルチシートの伸縮性は非常に大きいメリットとなる。
【0023】
本発明では、液状ナノ粘土が使用される。本発明に係る液状ナノ粘土の使用目的は、混合される物質間の相溶性を高めるだけでなく、添加される機能性物質が安定して含浸できるようにするためであり、また適当な強度を有すると共に適当な時期に分解されるようにするためである。
【0024】
本発明に使用される粘土の原材料は、天然のベントナイト、ヘキトライトなどの水膨潤性に優れた粘土であり、スメクタイト群の層状粘土である。スメクタイト系列の粘土は、他の種類の粘土と比べて高い陽イオン交換能力及び溶媒中の層間膨潤特性を有している。ナノ粘土の形成方式は、様々なものが開発されている。粘土を水和させた後、解膠剤(peptizer)を用いて粘土のカードハウス構造(house of cards structure)を形成し、このとき、粒子間の間隔は数百ナノメートルに達するし、せん断力(shear rate)によってゾル(sol)とゲル(gel)への変動が可能な揺変性(thixotropy)を有するし、挿入可能な物質の範囲が広まるし、貯蔵安全性が非常に改善されるだけでなく工程が減り、水溶液状の状態で存在するという特徴がある。前記カードハウス構造とは、粘土が配列されて四角形の格子を連続的になす形のことをいい、格子が配列されている格子空間に或る物質を入れることのできる構造のことを指す。このような段階を、水膨潤性粘土の水和と陽イオン交換を通じた粘土の剥離及び解膠剤(かいこうざい)による粘土のカードハウス構造形成の解膠段階といえる。十分な層間構造を有する液状ナノ粘土に関しては、様々な技術が開発されて商品化されている。ナノ粘土、界面活性剤、解膠剤、水が混合されている状態であって、水が最も多い部分を占めており、ナノ粘土は5~15重量%程度を占めている。商品化された製品は、水が85重量%、ナノ粘土は10重量%の割合の範囲を示し、本発明では、かかる範囲のナノ粘土の層間構造が活性化された液状のものを液状ナノ粘土と命名する。
【0025】
本発明における液状ナノ粘土は、純粋パルプ100重量部を基準とし、20~40重量部が使用される。液状ナノ粘土は、後に添加される植物抽出液やその他の機能性物質などを含浸する役割を果たす。液状ナノ粘土も同様、マルチシートの製作工程における様々な混合物と共に混合されて均一に分散されるため、マルチシートの均一性に良い影響を及ぼす。また、液状ナノ粘土は、プレスで圧搾脱水する過程、ドライ過程などの製紙工程で初期の強度を付与する役割を果たし得るので、製紙過程がより簡素化し得る。液状ナノ粘土の含量は、使用される植物抽出液などを考慮し、マルチシートとしての強度などを考慮して、適宜選択されてよい。液状ナノ粘土の使用量が少なすぎると、前述した役割を果たすには不十分であり、液状ナノ粘土の価格が他の原料に比べて安くないため、必要以上に使用する必要はなく、却って過量使用すると、担体としての役割ではなくナノ粘土間の結合の性格が強くなり、分解を遅延させることもあるだろう。
【0026】
植物抽出液は、本発明者の従前の発明と同様に、甘草、黄耆(おうぎ)、川▲きゅう▼(くさかんむりに弓)、ケンポナシの抽出物を用いる。溶媒を使用して抽出するが、熱水抽出又は炭素水1~4の低価アルコールを使用して抽出する。但し、従来の発明では、液状の塗工液の溶媒の役割も兼ねていたため、非常に多量の水を使用したが、本発明では漢方薬材の重量の20倍程度(エタノールなどを使用する場合には、10倍のエタノールで抽出した後、濾過後に減圧乾燥し、エタノールを全て飛ばす場合、漢方薬材の重量の約10%程度の固相の濃縮物質を得ることができ、使用時にはこれに水を添加し、希釈して使用する。)の水を使用して熱水抽出し、これを濾過し、減圧状態で乾燥して本来の漢方薬材の重さの10倍程度に濃縮したものを使用(本発明において、植物抽出液とはこれを意味する。)する。この植物抽出液は、作物の生理活性を助ける役割を担う。甘草は薬用植物であって、根に甘みがあることから甘味料、漢方薬材として使用される。このような甘草の抽出物は、水に溶けやすく、甘味度が砂糖の約200倍であり、熱に安定している。甘草抽出物は、甘草又は同属植物の根及び茎を抽出して濃縮したものであって、甘味の主成分は白色又は無色の結晶性粉末であるグリシルリジン酸である。黄耆は、薬草として裁培し、漢方では秋に採取して蘆頭と細根を除去し、天日干ししたものを漢方薬材の黄耆といい、強壮、脂汗、利尿、消腫などに効能があり、身体虚弱、疲労倦怠、気血虚脱、脱肛、子宮脱、内臓下垂、冷や汗、末梢神経などに処方するものと知られている。川▲きゅう▼は、セリ科に属する多年生草本で、漢方薬材として古くから使用されながら、人体への安全性が立証された薬材である。漢方では、根茎を鎮静、鎮痛、強壮に効能があり、頭痛、貧血症、婦人病などに使用している。ケンポナシの場合、多くの研究結果が報告されている。葉と果柄部位のアルコール分解能、肝臓解毒作用を証明する研究が多く、抽出物中に坑菌活性を有する成分が様々あることが確認されている。前記の漢方薬材は、茎、根、実又は葉を使用するが、好ましくは、漢方薬材として一部加工されたものを用いることが便利である。
【0027】
本発明において、栄養供給物質として必要に応じて様々なものが使用されてよい。酵素ステビアが使用されてよいが、酵素ステビアは、濃縮液形態と粉末形態で市販されている。タンパク質の供給源としては、大豆から脂質を除去した後にタンパク質を分離精製した大豆タンパクも使用されてよく、その他、カゼイン、魚粉なども使用されてよい。
【0028】
本発明では、純粋パルプ100重量部を基準とし、液状ナノ粘土20~40重量部、植物抽出液5~12重量部、酵素ステビア0.5~3重量部、大豆タンパク0.5~3重量部、カゼイン0.5~3重量部、魚粉0.5~3重量部を使用し、栄養物質を構成する。勿論、用途に合う他の成分も追加されてよい。酵素ステビア、大豆タンパク、カゼイン、魚粉は、本発明者が相当期間にわたって使用してきた材料であって、多くの経験から体得した効果的な物質である。従来は前記成分を塗工液の一部として使用したが、本発明では、製紙過程での混合物として共に使用される。前記範囲は、塗工液としてではなく、混合物として使用されるとき、マルチシートにおける成分含量を考慮して選択されたものである。
【0029】
液状ナノ粘土は、ナノ粘土が水に分散されている形態であり、ナノ粘土の層間構造に物質を含浸できる構造である。液状ナノ粘土と植物抽出液とを混合し、これに酵素ステビア、大豆タンパク、カゼイン、魚粉を混合し、十分にミキシングし、各成分がナノ粘土と共に含浸しながら均一に分散されるようにすべきである。このように分散されたものを、製紙工程でパルプと共に混合する。
【0030】
本発明では、海藻類成分、より具体的には天草を加工して抽出したゼリー状の成分を追加する。天草は、海藻類の加工で相当の部分を占めるので、本発明における海藻類成分は、天草の加工形態である心太を意味するものではあるが、これに準ずるものも含み得るので、海藻類と表現した。一方、このような形態のものを寒天ともいうが、中性多糖類であるアガロース及び酸性多糖類であるアガロペクチンが主な成分である。本発明において、このような海藻類成分を添加する理由は、微生物による分解を遅らせるためである。環境にやさしく、生分解可能なマルチシート形態の場合、物理的、化学的強度に加え、微生物による分解に対する問題も解決しなければならない。海藻類成分がマルチシートに分散して混合される場合、微生物による分解に非常に安定したものとなる。勿論、物理的、化学的分解が始まると、微生物による分解もさらに促進され、結果的に全体的な分解が行われるが、初期に微生物による分解が直に促進される場合、マルチシートとしての初期機能が達成し難くなるためである。本発明では、純粋パルプ100重量部を基準とし、海藻類4~7重量部程度が好ましい。少なすぎると前記機能を達成しがたく、多すぎると初期以後の分解が遅れてしまう問題が発生し得る。
【0031】
<実施例>
【0032】
純粋パルプ100重量部を基準とし、再生パルプ90重量部、液状ナノ粘土30重量部、木綿綿35重量部、植物抽出液(甘草、黄耆、川▲きゅう▼、ケンポナシの熱水抽出後の濃縮液を意味)7重量部、海藻類(天草)5重量部、酵素ステビア1.5重量部、大豆タンパク1.5重量部、カゼイン1.5重量部、魚粉1.5重量部から構成し、マルチシートを製造した(実施例1)。
【0033】
前記マルチシートの製造過程において、エンボスを形成する加工過程を含む形態でもマルチシートを製造した(実施例2)。
【0034】
<比較例1>
前記実施例で木綿綿を含まない形態で製造しており、エンボス加工は行っていない。
【0035】
<比較例2>
実施例の成分に基づき、本人の登録特許第10-1169556号の方法を活用し、塗工液を作ってコーティングする方式でマルチシートを製造した。エンボス加工は行っていない。
【0036】
<比較例3>
純粋パルプ100重量部を基準とし、再生パルプ100重量部、液状ナノ粘土30重量部、綿繊維25重量部、植物抽出液(甘草、黄耆、川▲きゅう▼、ケンポナシの熱水抽出後の濃縮液を意味)7重量部、海藻類(天草)5重量部、酵素ステビア1.5重量部、大豆タンパク1.5重量部、カゼイン1.5重量部、魚粉1.5重量部から構成し、マルチシートを製造した。
【0037】
<実験の結果>
実施例と比較例を畑に設置し、相当期間にわたって外部環境にそのまま露出させながら、引張強度、破裂強度、毀損程度、透水性などを調べた。
【0038】
実施例1、2に対比すると、比較例1は、引張強度、破裂強度が相対的に劣っており、透水性(又は通気性)も多少劣っていることが見られた。実施例2は、実施例1に対比すると、相対的に透水性に優れていることが見られた。任意に外力を加える場合にも、実施例2は実施例1に比べて、毀損されておらず、品質に優れていると判断した。
【0039】
実施例に対比して、比較例2は、透水性が最も悪く、比較例3は透水性が悪くはないが、実施例1、2の方がより透水性に優れていた。被覆シートの分解速度は、比較例1が最も速い分解速度を示し、実施例1、2と比較例3と対比すると、実施例の分解速度が相対的に多少速い結果を示した。
【0040】
要するに、コーティング方式は、透水性又は通気性がよくないため好ましくなく、配合方式は、透水性又は通気性に優れているが、但し、多少の強度低下と速い分解速度のため木綿綿を追加する必要があり、エンボス加工する方がより好ましいことが分かった。
【要約】
【課題】雑草の成長を抑制し作物の成長時には生分解される農地保護被覆シートを提供する。
【解決手段】
純粋パルプ、再生パルプ、液状ナノ粘土、木綿綿、植物抽出液、海藻類、栄養物質を原料物質として配合して用いる方式で製紙され、液状ナノ粘土、植物抽出物液及び栄養物質は、予め混合し、前記植物抽出液及び栄養物質が液状ナノ粘土に含浸して分散されている。この植物抽出液は、甘草、黄耆、川▲きゅう▼、ケンポナシの熱水抽出後の濃縮液からなり、前記海藻類は天草であり、前記栄養物質は酵素ステビア、大豆タンパク、カゼイン及び魚粉からなる。純粋パルプ100重量部に対して、再生パルプ70~110重量部、液状ナノ粘土20~40重量部、木綿綿30~50重量部、植物抽出液5~12重量部、天草4~7重量部、酵素ステビア0.5~3重量部、大豆タンパク0.5~3重量部、カゼイン0.5~3重量部、魚粉0.5~3重量部を混合して製紙される。
【選択図】
図1