(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-15
(45)【発行日】2022-06-23
(54)【発明の名称】ダイバーのための水中スクータ
(51)【国際特許分類】
A63B 35/12 20060101AFI20220616BHJP
B63C 11/02 20060101ALI20220616BHJP
【FI】
A63B35/12
B63C11/02
(21)【出願番号】P 2021507796
(86)(22)【出願日】2019-08-05
(86)【国際出願番号】 SI2019050014
(87)【国際公開番号】W WO2020036540
(87)【国際公開日】2020-02-20
【審査請求日】2021-03-31
(32)【優先日】2018-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SI
(73)【特許権者】
【識別番号】521061575
【氏名又は名称】オシアナス ポドヴォドナ フォトグラフィ アンドレイ ボイエ エス ピー
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ボイエ アンドレイ
(72)【発明者】
【氏名】クン ロベルト
【審査官】槙 俊秋
(56)【参考文献】
【文献】特公昭49-030070(JP,B1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0111445(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0056613(US,A1)
【文献】米国特許第05365868(US,A)
【文献】米国特許第07270074(US,B1)
【文献】西独国特許出願公開第03815825(DE,A)
【文献】中国実用新案第2913179(CN,Y)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 35/12
B63C 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイバーのために水中
用のスクータであって、前記スクータは、スキューバダイビン
グタンク(JE)に取り付けられるようにアレンジされ、
前記スクータは、
モータとプロペラ
(SK.09)とヒンジとを含むスラスタ(SK)と、
前記スキューバダイビングタンク(JE)に取り付けられるように配置されたヒンジ付きの交換可能な電池パック(BA)であって、前記スラスタ(SK)が移動可能に取り付けられている交換可能な電池パック(BA)と、
前記スラスタ(SK)とケーブルで接続されたコマンドジョイスティック(UP)と、
を備え、
前記モータは、前記交換可能な電池パック(BA)によって駆動され、
前記コマンドジョイスティック(UP)は、前記ダイバーによって把持されるか、前記ダイバーのダイビングスーツに取り付けられるように適合され、
前記スクータは2つの位置、すなわち、前記スラスタ(SK)が、前記スキューバダイビングタンク(JE)の半径方向において、前記スキューバダイビングタンク(JE)の上にある作動位置と、前記スラスタ(SK)が、前記スキューバダイビングタンク(JE)の軸方向において、前記スキューバダイビングタンク(JE)の下に配置される非作動位置とを有し、
前記非作動位置は、前記プロペラ
(SK.09)が前記コマンドジョイスティック(UP)を用いた起動時に水を押し始める際の前記プロペラ
(SK.09)の動きによって前記作動位置が達成されるように前記コマンドジョイスティック(UP)を用いて変更することができ、
前記作動位置は、好ましくは溝と係合するピンまたはボールねじの形態をとるロック機構を用いてロックされる、
ことを特徴とする、ダイバーのための水中
用のスクータ。
【請求項2】
請求項1に記載のダイバーのための水中
用のスクータであって、前記スラスタ(SK)は、プロペラ回転によって生じる前記スラスタの押圧力のみによって、前記ヒンジを中心に前記非作動位置から前記作動位置に移動し、逆もまた同様であることを特徴とする、ダイバーのための水中
用のスクータ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のダイバーのための水中
用のスクータであって、コマンドジョイスティック(UP)が2つの動作モードを有し、前記スクータは、プッシュボタン(UP.11)を押したままにするか、またはプッシュボタン(UP.16)を交互に押すことによって、前記スクータをオンに切り替えるかまたはオフに切り替えるように制御されることを特徴とする、ダイバーのための水中
用のスクータ。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のダイバーのための水中
用のスクータであって、前記交換可能な電池パック(BA)は、底部レベルにおいて前記スキューバダイビングタンク(JE)の周りに配置され、それによって、デバイスの外側に追加のケーブルを伴うことなく、コンタクトヒン
ジの回転部分
(SK.32)およびコンタクトヒンジの固定部分(BA.20)においてスラスタ(SK)および交換可能な電池パック(BA)の接続が可能にされることを特徴とする、ダイバーのための水中
用のスクータ。
【請求項5】
請求項
4に記載のダイバーのための水中
用のスクータであって、コンタクト導体と、ヒンジ(SK.32)と、前記スラスタ(SK)および前記交換可能な電池パック(BA)を接続する電池コネクタ(BA.20)とを備える前記コンタクトヒンジは、前記スラスタ(SK)と前記交換可能な電池パック(BA)との間の電気接続間で、両方の位置、すなわち非作動位置および作動位置間の両方向において、その横軸を中心とした前記スラスタ(SK)の回転を提供するように設計されることを特徴とする、ダイバーのための水中
用のスクータ。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のダイバーのための水中
用のスクータであって、安全機構が更に提供され、前記安全機構は、前記交換可能な電池パック(BA)上のばねボール(BA.19)、ロック部分(BA.18)、2つのねじ(BA.17)、2つの安全ねじ(BA.15)、およびボールを有する2つのばねプランジャ(BA.16)を有するクイックリリースピンと、前記スラスタ(SK)上に2つのボルト締めされた孔およびねじ(SK.19)を有するボルト板(SK.20)とを備え、前記安全機構は、例えば、輸送中、倉庫内に格納中、またはダイビング前の準備中、前記スクータを非作動位置に維持すること、ならびに、前記ばねボール(BA.19)を有する前記クイックリリースピンはダイビング前に除去されなくてはならないことを特徴とする、ダイバーのための水中
用のスクータ。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載のダイバーのための水中
用のスクータであって、前記スクータは、安全性の理由でホルダ(SK.30)内に2つのステンレスコンタクトが挿入され、モータコントローラの電子回路に接続されて初めて水中で動作することができ、水は、前記ステンレスコンタクト間の電気回路を確立し、これにより前
記スクータが動作することを可能にすることを特徴とする、ダイバーのための水中
用のスクータ。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載のダイバーのための水中
用のスクータであって、前記スクータにはロック機構が更に設けられ、前記ロック機構は、好ましくは、ピンまたはボールねじが前記電池パック(BA)のアダプタホルダ(BA.25)内に設けられた溝にかみ合う際に前記スラスタ(SK)の位置をロックするために適切に成形された前記ピンまたはボールねじであること、および、前記ピンまたはボールねじ間の接続は、コマンドジョイスティック(UP)上の「非作動化」ボタンの選択時に、前記モータが反対方向に回転を開始し、それによって前記ピンまたはボールねじを前記溝から離れるように押し進めるときに、解放することができることを特徴とする、ダイバーのための水中
用のスクータ。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載のダイバーのための水中
用のスクータであって、前記スクータには、交換可能な傾斜板(BA.21)が更に設けられ、前記交換可能な傾斜板(BA.21)は、前記作動位置において、前記スクータの駆動部、すなわちスラスタ(SK)と、各ダイバーの前記スキューバダイビングタンク(JE)との間の適切な横方向の角度を確実にすることを特徴とする、ダイバーのための水中
用のスクータ。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載のダイバーのための水中
用のスクータであって、前記スクータは、様々な高さ、圧縮空気の量および容量を有する直径203mmの標準的なスキューバダイビングタンク、様々な高さ、圧縮空気の量および容量を有する直径171mmの標準的なスキューバダイビングタンクと共に用いることができ、後者の場合、前記交換可能な電池パック(BA)と前記スキューバダイビングタンク(JE)との間にアダプタリング(BA.01)が配置されることを特徴とする、ダイバーのための水中
用のスクータ。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載のダイバーのための水中
用のスクータであって、適切な充電器を用いて前記交換可能な電池パック(BA)を充電するためのコネクタアダプタとして、コンタクトクランプ(KS)が更に設けられることを特徴とする、ダイバーのための水中
用のスクータ。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載のダイバーのための水中
用のスクータであって、前記スラスタ(SK)は、ステータ(SK.18)を有するブラシレス電気モータを備え、前記ステータ(SK.18)の外周に銅コイル(SK.17)が設けられる一方、前記ステータ(SK.18)の内部には、磁石(SK.15)を有するローターリング(SK.16)が設置され、前記磁石(SK.15)は、ピンおよび/または適切な接着
剤の固定要素を用いて前記ローターリング(SK.16)に固定され、工業用プラスチックから作製された前記プロペラ(SK.09)は、アルミニウムリング(SK.12)を介してねじ(SK.08)およびナット(SK.13)を用いて前記ローターリング(SK.16)に固定され、セラミックベアリング(SK.10)が、ベアリング配置を確実にし、ステンレス鋼から作製された車軸(SK.11)が前記プロペラ(SK.09)の中心孔内に配置されること、および、外側アルミニウムリング(SK.21)が、アルミニウムから作製された保護カバー(SK.06およびSK.22)と固定されることを特徴とする、ダイバーのための水中
用のスクータ。
【請求項13】
請求項
12に記載のダイバーのための水中
用のスクータであって、前記ステータ(SK.18)および前記ローターリング(SK.16)は、変圧器板金から作製された適切な鉄薄板を含むこと、ならびに、前記ステータ(SK.18)は、エポキシ粉末コーティングで保護することができ、前記ローターリング(SK.16)は、腐食を防ぐために、適切な厚みを有する同じコーティングで保護することができることを特徴とする、ダイバーのための水中
用のスクータ。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載のダイバーのための水中
用のスクータであって、前記電池パック(BA)は、電池パックカバー(BA.04)と、電池パック底部(BA.12)と、任意のタイプの電池、好ましくはニッケル水素またはリチウムイオン電池と、前記交換可能な電池パック(BA)のハウジングを封止するためのゴムOリング(BA.05、BA.06、BA.09、BA.10)と、アルミニウムから作製され、ダイビング用スキューバダイビングタンクの重量に耐えるためにねじ(BA.13)で前記電池パック底部(BA.12)に固定された耐荷重リング(BA.11)とを有するハウジングを備え、前記ハウジングは、電池パックの内側リング(BA.07)と、電池パックの外側リング(BA.08)と、前記電池パック底部(BA.12)と、前記電池パックカバー(BA.04)とを備え、アルミニウムまたは工業用プラスチックから作製することができることを特徴とする、ダイバーのための水中
用のスクータ。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項に記載のダイバーのための水中
用のスクータであって、コマンドジョイスティック(UP)は、3つのプッシュボタン(UP.11、UP.15、UP.16)と、前記スクータの速度を制御するための回転ノブ(UP.28)と、ポテンショメータ(UP.19)と、前記コマンドジョイスティック(UP)が防水であることを確保するための円錐型のゴムワッシャー(UP.02)およびゴムリング(UP.04、UP.07、UP.13、UP.18、UP.20、UP.24、UP.25)とを備えることを特徴とする、ダイバーのための水中
用のスクータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中で生存または作業するための機器の分野、より詳細には、ダイビング機器、特にダイバーのための水中推進車両の分野に属する。本発明の目的は、ダイバーのための水中スクータである。
【背景技術】
【0002】
ダイビング中、ダイバーは、自身のスキューバダイビングタンクに格納された限られた空気の備蓄に依存する。空気消費量が少なくなると、より長いおよび/またははるかに安全なダイビングが可能になる。空気消費量は、水中におけるダイバーの活動および/または予測不可能な水中の流れ、深さ、視界の悪さ、低い水温等の状況に依拠する。ダイバーの水中の活動の中でも、脚およびフィンを用いた泳ぎが空気消費量に対する主要な寄与となる。空気消費量を低減するために、ダイバーを前方に押すデバイスが数十年前に発明された。このデバイスは、水中推進車両または水中スクータと呼ばれ、より長く、より安全なダイビングを可能にする。
【0003】
しかしながら、水中スクータは、その機能性にもかかわらず、大型であり、大きな格納空間を必要とし、その上、ダイバーは少なくとも片方の手でスクータを把持および/または管理する必要がさらにあるため、より使いやすくなる余地がある。本発明によって解決される技術的問題は、水面下でダイビング方向のより安全でより容易な管理および操縦を可能にするスクータの構築である。更に、改善されたスクータは、ダイバーのボート上の格納場所を低減するべきである。本発明の目的は、より安全で、より快適で、より長いダイビング、および結果としてより少ない空気消費量を確保することである。
【0004】
最新技術
ダイバーのために現時点で利用可能な水中スクータは、以下の主な手法のうちの1つを用いる。
【0005】
1.ダイバーは、両手で(場合によっては片手のみで)水中スクータを自身の手に把持する。水中スクータはダイバーを前方に押す。そのような手法の例は、リンクhttps://www.suex.it/において開示されている。そのようなデバイスは、使いにくく、巨大で、重く、多くの場合に電池パックを交換することが可能でない。充電時間は通例、2つ以上の連続したダイビング間の時間間隔よりもはるかに長いため、そのようなデバイスを同じ日の多くの連続したダイビングにおいて用いることが可能でない。そのようなデバイスの別の問題は、ダイビングクルーザまたはボート上での格納場所である。ダイビングクルーザまたはボート上の利用可能な格納空間は限られており、したがって、そのような水中スクータを、ダイビングクルーザまたはボート上のより多くのダイバーによって使用できる見込みがない。通例、ダイビングクルーザの定員は最大20人のダイバーであり、ダイビングボートの定員は最大10人のダイバーである。
【0006】
2.同様の解決策は、https://seabob.com/modelle-ausstattung/に示されている。ここでも、ダイバーは、両手で水中スクータを自身の手に把持し、デバイスがダイバーを前方に押す。このデバイスは、段落1で述べた解決策よりも更により使いにくく、巨大で、重く、このため、更により多くの格納空間を必要とする。そのようなデバイスは、充電に関する上述した問題も有する。
【0007】
3.異なる手法は、ダイバーの脚に沿って水中スクータを設置し、電池パックをダイバーの腰の周りに設置するというものである。例は、http://www.patriot3.com/maritimeproducts/p3m_jetbootsに見ることができる。これらのデバイスは、主に、軍事ダイバーによって用いられ、この理由により、商業ダイバーには適していない。
【0008】
4.別の可能な手法は、http://pegasusthruster.com/に示されているように、ダイバーの背中に配置されたダイバーのスキューバダイビングタンクと併せて水中スクータを設置するというものである。このデバイスは、人間の様々な身体部分、例えば肩または頭の僅かな動きで水中のダイビングを操縦するという意味で画期的である。スクータを管理するために、ダイバーは、手にコマンドスティックを把持し、コマンドスティックは、ケーブルによってスクータに接続される。交換可能な電池パックの使用は、このデバイスで利用可能である。そのような手法は、1日の中でより多くの連続したダイビングにおいてスクータを用いることを可能にする。しかしながら、この手法でさえ、以下のような多くの問題が解決されていないままである。
【0009】
a.スラスタの底部、すなわちプロペラは、常にスキューバダイビングタンクの底部の下に配置され、このため、ダイバーは、ダイビングの準備をしているとき、すなわちスキューバ用救命胴衣をスキューバダイビングタンクおよび水中スクータと共に自身の背中に乗せるときに、自身でこの水中スクータを設置することができない。ダイバーはまず、スキューバ用救命胴衣をスキューバダイビングタンクと共に自身の背中に乗せ、その後、水中にジャンプする前に、水中スクータをスキューバダイビングタンク上に設置する第三者の支援が必要である。同じ理由から、ダイバーは、水中から水面に戻るときに第三者からの支援を必要とする。第三者が水中スクータをスキューバダイビングタンクから取り外して初めて、ダイバーはスキューバダイビングタンクと共にスキューバ用救命胴衣を背中から安全な方式で取り除くことができる。
【0010】
b.この水中スクータを、ダイビングクルーザおよび/またはダイビングボート上にこの目的で設計されたスキューバダイビングタンクのためのラック内にスキューバダイビングタンクと共に格納することは不可能である。連続的に、この水中スクータは、別個に格納されなくてはならず、このため追加の場所が必要とされる。上述したように、格納空間は、ダイビングクルーザおよび/またはダイビングボート上で非常に限られている。
【0011】
c.物理法則に起因して、この水中スクータのストラップの設置は単純に見えるが、実際はそうではない。すなわち、各ダイバーは、厳密にどこに、すなわちスキューバダイビングタンクのどの高さにストラップを設置しなくてはならないかを自身で明らかにしなくてはならない。厳密な高さはダイバーの身長に依拠する。ストラップが適切な高さに設置されていない場合、ダイバーはダイビング中に一定の深さを維持するのに問題を有することになる。おそらく、ダイバーは深く押し下げられるか、または水面に押し上げられることになる。この問題の具体的な説明は、http://wetpixel.com/forums/index.php?showtopic=58399に記載されている。
【0012】
d.ダイバーの手に把持されるコマンドスティックは、水中スクータの速度を線形におよび/または段階的に調整可能にしない(注記:調整可能な速度は、ポイント1において述べた何らかの他の水中スクータにおいて利用可能である)。
【0013】
e.ダイバーの手に把持されるコマンドスティックは、異なる動作モードを可能にせず、すなわち、メインボタンを永続的に押下した状態(有効化されている)で運転するか、またはメインボタンを永続的に押下していない状態(有効化されていない)で運転する。第2のオプションは、電子回路によって、自動車産業において「クルーズ制御」として既知のものと同じ機能を可能にするように制御することができる。
【0014】
f.ダイバーの手に把持されたコマンドスティックは、交換可能な電池パックの残存容量、例えばLEDインジケータを制御することを可能にしない。このため、ダイバーは、交換可能な電池パックにおけるエネルギーの欠如に起因して水中スクータがいつ運転を止めることになるかがわからない。この問題の具体的な説明は、このウェブリンク、http://wetpixel.com/forums/index.php?showtopic=58399の段落「Dislikes」における項5に記載されている。
【0015】
ポイント4において記載されているデバイスは、以下の文献、米国特許出願公開第2008/0072812A1号、米国特許出願公開第2009/0056613A1号、米国特許第7270074B2号、米国特許第7654215号および米国特許第7654215B2号に開示されたものである。その不利な点は、ポイント4.a~4.fにおいて列挙されている。本発明は、前記デバイスの全ての上述した欠点および不利点を解決する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の本質は、水中スクータがスキューバダイビングタンクの底部に装着されることにある。底部において、水中スクータは多くの空間を消費せず、ダイバーの動きを損なわない。前記スクータは、ヒンジを用いてエアタンクの底部に可動に設置された、プロペラを有するモータと、ダイバーによって把持されるか、ダイビングスーツに取り付けられる制御ユニットとを備え、制御ユニットはケーブルを用いてスクータに接続される。スクータは2つの位置、すなわち、1つの作動位置と、1つの非作動位置とを有し、後者は、非使用時にダイビングタンクの下にある。作動位置は、プロペラが制御ユニットを用いた起動時に水を押し始める際の前記プロペラの動きによって達成される。スキューバダイビングタンクの上の位置に達すると、スクータはダイバーの移動を可能にする。作動位置は、好ましくは溝と係合するピンまたはボールねじの形態をとるロック機構を用いてロックされる。
【0017】
本発明による水中スクータは、水面下の計画された方向における単純化されたダイビング操縦の問題を解決する。スクータの設置および使用は単純であり、このため、各ダイバーによる使用に適している。例えばコンパクトな設計およびハンズフリー動作としての特異性に起因して、この水中スクータは、特に以下のダイバーグループによる使用に適している。
- ダイビングクルーザまたはボート上の全てのダイバー。なぜなら、デバイスのスラスタ(SK)がスキューバダイビングタンクの下に配置され、交換可能な電池パック(BA)が、運転中でないときにスキューバダイビングタンクの周りに配置されることに起因して、デバイスが格納のための追加の場所を必要としないためである。
- 可能な限り迅速に救助活動中に遭難者を見つけなくてはならず、活動中に両手を使える必要がある救助ダイバー。
- 下半身不随であり、ダイビング中に手のみを用いることができ、脚およびフィンを用いることができない、障害を持ったダイバー。本特許の目的であるこのデバイスを用いるとき、障害を持ったダイバーは、他のダイバーと同等である。
- ダイビングのための健康状態は良好であるが、例えば水中の強い流れが生じている間、集中的に泳ぐのに十分適していない高齢のダイバー。
- ビデオおよび/または写真機材を手に掴むために両手を使える必要がある水中ビデオ撮影家および写真撮影家。
- 水中で様々な困難な作業を行う全ての他のダイバー、例えば水中考古学者。
【0018】
本発明は、可能な実施形態および図面に基づいて更に詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】非作動または格納段階中のスキューバダイビングタンクに設置された水中スクータを示す図である。
【
図2】作動段階中のスキューバダイビングタンクに設置された水中スクータを示す図である。
【
図3】スラスタ(SK)の長手方向セクションを示す図である。
【
図4】交換可能な電池パック(BA)の長手方向セクションを示す図である。
【
図5】コマンドジョイスティック(UP)の長手方向セクションを示す図である。
【
図6】コンタクトクランプ(KS)の長手方向セクションを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
水中スクータは、スラスタ(SK)と、交換可能な電池パック(BA)と、接続ケーブル(PK)と、コマンドジョイスティック(UP)とを備える。
図01は、非作動位置、すなわち、非使用位置(垂直配置)にあるスキューバダイビングタンク(JE)に装着された水中スクータを示し、
図02は、使用中の作動位置にあるスキューバダイビングタンク(JE)に装着された水中スクータを示す。プロペラの押圧力F2によって、その作用方向において、使用中の作動位置へのスラスタ(SK)の動き/回転R1が確実にされる一方で、反対方向における押圧力により、非作動位置、すなわち非使用位置への動き/回転R2が確実にされる。使用中の作動位置におけるスラスタ(SK)のエンジン回転と共に、結果として、ねじ軸においてまたは力の矢印F1に沿って押圧力が生じる。ダイバーの軸の外側にあるスラスタ位置に起因して、デバイスが、スキューバダイビングタンク(JE)軸またはダイバーの軸と平行な力の矢印F2’の方向にダイバーを押している。スキューバダイビングタンク(JE)は、標準的なダイビング機器の一部である。スキューバダイビングタンク(JE)は、スキューバダイビングジャケットである/その一部である1つまたは2つのストラップで固定される。スキューバダイビングジャケットも、標準的なダイビング機器の一部である。
【0021】
スラスタ(SK)
スラスタ(SK)の全ての構成要素が
図03に示されている。ブラシレス電気モータはステータ(SK.18)を有し、ステータ(SK.18)の外周に銅コイル(SK.17)が設けられる一方、ステータ(SK.18)の内部には、磁石(SK.15)を有するローターリング(SK.16)が設置される。このタイプのブラシレス電気モータは「アウトランナー」として知られ、多くの異なる用途において用いられる。ローターリング(SK.16)の内側にプロペラ(SK.09)が設けられる。市場で入手可能な2つの異なる解決策が存在する。
・ 軸方向の解決策。ここで、プロペラは回転を確実にする車軸を中央に有する。そのような解決策の例は、このウェブリンク、http://www.tsltechnology.com/marine/thrusters.htmにおいて入手可能である。
・ 非軸方向の解決策。ここで、プロペラは中央に車軸を有さず、代わりに、プロペラブレードがローターの内周に固定される。そのような解決策の例は、このウェブリンク、https://www.copenhagensubsea.com/vlにおいて開示されている。
【0022】
水中スクータにおいて用いられるブラシレス電気モータにおいて、軸方向の解決策が用いられる。
【0023】
ステータ(SK.18)およびローターリング(SK.16)は、変圧器板金から作製された適切な鉄薄板を含む。腐食を防ぐために、ステータ(SK.18)はエポキシ粉末コーティングで保護することができ、ローターリング(SK.16)は、適切な厚みを有する同じコーティングで保護することができる。ピンおよび/または適切な接着剤等の固定要素を用いて磁石(SK.15)がローターリング(SK.16)に固定される。工業用プラスチックから作製されたプロペラ(SK.09)は、アルミニウムリング(SK.12)を介してねじ(SK.08)およびナット(SK.13)を用いてローターリング(SK.16)に固定される。セラミックベアリング(SK.10)が、ベアリング配置を確実にする。ステンレス鋼から作製された車軸(SK.11)がプロペラ(SK.09)の中心孔内に配置される。いかなる外側の衝撃からもモータを保護する外側アルミニウムリング(SK.21)は、アルミニウムから作製された保護カバー(SK.06およびSK.22)に固着する。
【0024】
より多くの水を吸引することによってプロペラの効率を増大させるために適切な外形を有し、工業用プラスチックから作製されたダクト(SK.02)が、ねじ(SK.01)を用いて保護カバー(SK.06)に固定される。軸アセンブリの強固な一体化は、車軸(SK.11)の軸に沿ったセラミックベアリング(SK.10)の移動を阻止する2つのスナップリング(SK.05)を用いて確保することができる。アルミニウムリング(SK.04)は、ねじ(SK.03)を介して車軸(SK.11)と固定される。保護カバー(SK.06およびSK.22)は、工業用プラスチックから作製されたホルダ(SK.30)上にねじ(SK.07)を用いて固定される。プロペラ、電気ブラシレスモータ、および外側のアルミニウムリング(SK.21)の複合体全体が、2つのねじ(SK.24)を介してホルダ(SK.30)に固定される。
【0025】
アルミニウムホルダカバー(SK.27)は、2つのねじ(SK.24)によってホルダ(SK.30)と固定される。工業用プラスチックから作製されたコンタクトヒンジ(SK.32)は、2つのねじ(SK.31)によってホルダ(SK.30)と固定される。2つの真鍮リング(SK.36)が外側からヒンジ孔に挿入される。2つの真鍮導体(SK.35)が、底部からコンタクトヒンジ(SK.32)孔に挿入され、真鍮リング(SK.36)を用いてねじ留めされる。2つのコンタクト真鍮ディスク(SK.44およびSK.45)が、プラスチック絶縁スリーブ(SK.42)、2つのOリング(SK.43)および真鍮導体(SK.41)と共にコンタクトヒンジ(SK.32)の内側から挿入される。コンタクトヒンジ(SK.32)孔の外側から、2つのOリング(SK.38およびSK.39)を有するプラスチックノブ(SK.37)が挿入され、ねじ(SK.40)のねじ留めによって真鍮導体(SK.41)と接続される。
【0026】
真鍮リング(SK.36)は2つの機能を有する。第1の機能は、コンタクトヒンジ(SK.32)の内側から挿入されたプラスチック絶縁スリーブ(SK.42)を用いて真鍮導体(SK.41)をブロックすることであり、これに起因して、ユーザは、コンタクトヒンジ孔(SK.32)からプラスチックノブ(SK.37)のねじ留めを完全に外すことが決してできない。
【0027】
真鍮リング(SK.36)の第2の機能は、ユーザが交換可能な電池パック(BA)を有するスラスタ(SK)を設置しており、このためプラスチックノブ(SK.37)を時計回りにねじ留めしているときに、真鍮導体(SK.41)とのコンタクトを提供することである。特定のポイントで、真鍮導体(SK.41)のより広い部分が真鍮リング(SK.36)と固着する。ここで、一方の側において真鍮リング(SK.36)と、真鍮導体(SK.41)と、真鍮コンタクトディスク(SK.44またはSK.45)との間に電気コンタクトが確立され、他方の側で、電池パックコネクタ(BA.20)におけるばねコンタクトが確立される。説明された設置方法は、ユーザが、最後までコンタクト導体のねじ留めを外す(引き出す)ことができず、このため、交換可能な電池パック(BA)とのスラスタ(SK)の誤った設置を防ぐことを確保する。
【0028】
接続ケーブル(PK)は、ホルダ(SK.30)上の孔を介して挿入され、モータコントローラの電子回路と接続され、モータコントローラは、内部ワイヤを用いて真鍮導体(SK.35)に接続される。真鍮導体は、防水であり、Oリング(SK.34)およびプラスチック絶縁スリーブ(SK.33)を用いて保護される。銅ステータコイル(SK.17)をブラシレス直流モータ(BLDC)のモータコントローラの電子回路と接続するワイヤは、ホルダ(SK.30)および外側アルミニウムリング(SK.21)における専用の孔を介して挿入される。
【0029】
デバイスをオンに切り替えるときに回転を停止させ、これによりスラスタ(SK)をコンタクトヒンジ(SK.32)を中心に非作動位置から作動位置に回すときのストロークを吸収するための衝撃吸収ゴムが電池パック(BA)上に設けられる。結果として、衝撃吸収ゴムは、交換可能な傾斜板(BA.21)の上面とのホルダカバー(SK.27)の上面の固着がぎくしゃくすることを防止する。ねじを有する中心孔を介して下側からホルダ(SK.30)にねじ(SK.29)を用いて固定された油圧緩衝装置(SK.25)を用いて代替的な解決策を実施することができる。これらの機能は、デバイスをオンに切り替えるときに回転を停止させ、これによりスラスタ(SK)をコンタクトヒンジ(SK.32)を中心に非作動位置から作動位置に回すときのストロークを吸収するためのものである。結果として、これらは、交換可能な傾斜板(BA.21)の上面とのホルダカバー(SK.27)の上面の固着がぎくしゃくすることを防止する。
【0030】
磁石(SK.26)がホルダカバー(SK.27)の底部から溝に挿入される。この磁石(SK.26)の機能は、交換可能な電池パック(BA)内に設置された対向する磁石(BA.23)を引き付け、これによりスラスタ(SK)の作動位置における不動性を可能にすることである。
【0031】
位置をロックするために、前記磁石の代わりに、適切な形状のピンまたはボールねじを用いることができる。なぜなら、ピンまたはボールねじは、電池パックのアダプタホルダ(BA.25)内に設けられた溝にかみ合うためである。ピンまたはボールねじ間の接続は、コマンドジョイスティック(UP)上の「非作動化」ボタンの選択時に解放することができる。ここで、モータは、反対方向に回転を開始し、それによってピンまたはボールねじを前記溝から離れるように押し進める。
【0032】
2つの孔を有するロック板(SK.20)は、2つのねじ(SK.19)を用いて外側アルミニウムリング(SK.21)に固定される。大きい方の孔は、スラスタ(SK)がその非作動位置から動かされることを防ぐばねボール(BA.19)を有するクイックリリースピンを対象とする。ばねボール(BA.19)を有するクイックリリースピンは、ロック部分(BA.18)における孔を介して挿入される。ばねプランジャ(BA.16)のボールは、ロック板(SK.20)の小さい方の孔に詰まる。ばねボール(BA.19)を有するクイックリリースピンが除去され、デバイスがオンに切り替えられるとき、プロペラ(SK.09)の回転の結果としての接線力がばねプランジャ(BA.16)の両方のボールを内側に押す。結果として、ロックアセンブリが解放され、スラスタ(SK)はその位置を非作動位置から作動位置に変更することができる。
【0033】
コンタクトクレードルは、スラスタ(SK)の一部である。各コンタクトクレードルは、真鍮コンタクトディスク(SK.44またはSK.45)と、2つのOリング(SK.43)と、プラスチック絶縁スリーブ(SK.42)と、真鍮導体(SK.41)と、ねじ(SK.40)と、2つのOリング(SK.38およびSK.39)を有するプラスチックノブ(SK.37)とを含む。両方のコンタクトクレードルは、真鍮コンタクトディスク(SK.44またはSK.45)の直径においてのみ異なり、全ての他の部分は同一である。これらは両方が同じ機能、すなわちスラスタ(SK)と交換可能な電池パック(BA)との間にコンタクトを確立する機能も有する。真鍮コンタクトディスク(SK.44またはSK.45)の異なる直径は、スラスタ(SK)および交換可能な電池パック(BA)の誤った設置を防止する。更に、コンタクトクランプ(KS)を、このため充電器を、交換可能な電池パック(BA)に誤って設置することは不可能である。
【0034】
水中スクータは水中でのみ動作することができる。安全性の理由から、ホルダ(SK.30)に挿入され、モータコントローラの電子回路と接続された2つのステンレスコンタクトが存在する。ダイバーが水中にジャンプすると、その導電性に起因して、ステンレスコンタクトとモータコントローラの主電子回路との間の電気回路が確立され、これによって、水中スクータの動作が可能になる。水面上にある間、コマンドジョイスティック(UP)上のいかなるボタンの押下も何ら影響を有しない。水面上の試験の目的で、上述したステンレスコンタクトは一時的にショートカット接続と接続され得る。そのような解決策の主な理由は、子供または大人が誰でも意図せずに水中スクータを作動させることを防止することである。
【0035】
デバイスをスキューバダイビングタンク(JE)に設置する前に、真鍮コンタクトディスク(SK.44またはSK.45)が、交換可能な電池パック(BA)の電池パックコネクタ(BA.20)の一部であるばねコンタクトおよび真鍮リング(SK.36)と固着するまでコンタクトクレードルをねじ留めすることが必要である。真鍮導体(SK.41)は、真鍮コンタクトディスク(SK.44またはSK.45)および真鍮リング(SK.36)との電気コンタクトを提供する。ゴムOリング(SK.43、SK.39、SK.38)は、コンタクトクレードルの防水を確実にする。プラスチックノブ(SK.37)は、スキューバダイビングタンク(JE)への/からの水中スクータの組付け(分解)前/後のスラスタ(SK)への/からの交換可能な電池パック(BA)設置(取り外し)を可能にする。
【0036】
交換可能な電池パック(BA)
アダプタリング(BA.01)は、工業用プラスチックから作製され、ダイバーが標準的な直径171mmを有するスキューバダイビングタンクを用いるときに用いられる。ダイバーが、標準的な直径203mmを有するスキューバダイビングタンクを用いるとき、アダプタリング(BA.01)は必要とされない。アダプタリング(BA.01)は、その水平方向の孔と、電池パックカバー(BA.04)上の水平方向の孔とを通じて、3つのねじ(BA.03)を用いて装着される。電池パックカバー(BA.04)および電池パック底部(BA.12)は、ねじ(BA.02およびBA.14)を用いて固定される。交換可能な電池パック(BA)は、任意のタイプの電池から構築することができるが、最も適切な電池は、ニッケル水素またはリチウムイオン電池である。ゴムOリング(BA.05、BA.06、BA.09、BA.10)が交換可能な電池パック(BA)のハウジングを封止する。
【0037】
電池パックの内側リング(BA.07)と、電池パックの外側リング(BA.08)と、電池パック底部(BA.12)と、電池パックカバー(BA.04)とは、交換可能な電池パック(BA)のハウジングの構成要素部品である。これらは、アルミニウムまたは工業用プラスチックから作製することができる。耐荷重リング(BA.11)は、ダイビング用スキューバダイビングタンクの重量に耐え、このため、アルミニウムから作製されなくてはならず、ねじ(BA.13)を用いて電池パック底部(BA.12)に固定される。
【0038】
ロック部分(BA.18)は、ねじ(BA.17)を用いて電池パック底部(BA.12)に固定される。ロック部分(BA.18)の下側の孔に、ボールを有する2つのばねプランジャ(BA.16)が挿入される。これらの2つのボールは、スラスタ(SK)および交換可能な電池パック(BA)が非作動位置で接続されるときに、ロック板(SK.20)の小さい方の孔に詰まる。保護ねじ(BA.15)は、ボールを有するばねプランジャ(BA.16)をブロックし、これにより、ばねプランジャがデバイスの動作によって生じる潜在的な振動に起因して移動しないことを確保する。デバイスが動作モードにないとき、ばねボール(BA.19)を有するクイックリリースピンがロック部分(BA.18)の上側の孔に挿入される。
【0039】
アダプタホルダ(BA.25)は、2つのねじ(BA.27)およびナット(BA.22)を用いて電池パックの外側リング(BA.08)に固定される。交換可能な傾斜板(BA.21)は、2つのねじを用いてアダプタホルダ(BA.25)に固定され、ここに磁石(BA.23)が挿入される。傾斜板(BA.21)もスラスタの一部とすることができる。この磁石(BA.23)の機能は、スラスタ(SK)内に設置された対向する磁石(SK.26)を引き付け、これによりスラスタ(SK)の作動位置における不動性を可能にすることである。
【0040】
交換可能な傾斜板(BA.21)は、スラスタ(SK)の主軸と、水中をダイビング中のダイバーの身体軸との間の適切な傾斜を確保する。適切な傾斜により、ダイバーの身体軸に沿った線形運動が可能になる。上述した軸が平行である場合、流体力学の物理法則に起因して、ダイバーの横軸にわたるトルクが生じることになる。結果として、ダイバーは、自身の横軸を中心に僅かに回転することになる。トルクは、押圧力とダイバーの流体力学的抵抗力とのベクトル積である。ダイバーの身長の大幅な違いに起因して、セット内に、異なる傾斜を有する5つの傾斜アダプタ板(BA.21)が存在する。ダイバーは、自身の身長およびダイビングスタイルに依拠して適切な交換可能な傾斜板(BA.21)を設置しなくてはならない。
【0041】
2つのワイヤ(
図04には示されていない)が、交換可能な電池パック(BA)内の電池(
図04には示されていない)を電池パックコネクタ(BA.20)における2つのばねコンタクトと接続する。ワイヤは、アダプタホルダ(BA.25)および電池パックコネクタ(BA.20)のチャネルに挿入される。
【0042】
電池パックコネクタ(BA.20)は、2つのねじ(BA.26)を用いてアダプタホルダ(BA.25)に固定される。ばねコンタクト(
図04では見えない)が電池パックコネクタ(BA.20)に挿入される。これらは共に、コンタクトクランプ(KS)またはスラスタ(SK)が交換可能な電池パック(BA)に誤って接続されることを防止するために、異なる直径を有する。ばねコンタクトは、コンタクトクレードルの一部である真鍮コンタクトディスク(SK.44およびSK.45)との導電性接続を確実にする。これらのコンタクトクレードルは、設置段階中、ヒンジ(SK.32)に沿ったねじ留め(ねじ外し)に伴って内側または外側に動かされる。
【0043】
コマンドジョイスティック(UP)
接続ケーブル(PK)を介してスラスタ(SK)と接続されるコマンドジョイスティックは、ダイビング中にダイバーの手に把持されるように意図される。コマンドジョイスティックは、ダイバーがスクータを制御すること、すなわち、プッシュボタン(UP.11)を押すことによってオンに切り替えることを可能にする。結果として、スラスタ(SK)はスキューバダイビングタンク(JE)の下の非作動位置から、スキューバダイビングタンク(JE)の上の作動位置まで回転する。同じプッシュボタン(UP.11)は、ダイバーが動作モードのデバイスと共にダイビングすることを意図するときに、プッシュボタン(UP.11)を長押しすることのみによってデバイスが機能することを可能にするようにデバイスを管理するのに用いられる。ダイバーがプッシュボタン(UP.11)を解放すると、デバイスは運転を停止する。ボタン(UP.16)を連続押しすることによって、ダイバーは、デバイスをオンまたはオフに切り替え、これにより別の動作モードを選択することが可能である。このモードにおいて、デバイスは、ボタンを永続的に押すことなく運転している。
【0044】
ボタン(UP.15)を押すことによって、スラスタ(SK)は、スキューバダイビングタンク(JE)の上の作動位置から、スキューバダイビングタンク(JE)の下の非作動位置に回転する。スラスタが非作動位置に入ると、ばねプランジャ(BA.16)のボールがロック板(SK.20)の小さい方の孔に詰まる。
【0045】
回転ノブ(UP.28)を回転させることによって、ダイバーは、両方の動作モードにおいて速度を調整することが可能である。組立て部分(UP.26)における溝、およびボールを有するばねプランジャ(UP.29)は、6つのステップ、すなわちゼロ速度位置(デバイスが運転していない)および5つの異なる運転速度のための5つの位置を可能にする。ステップは、組立て部分(UP.21)上にマーキングされる。速度は、実際は線形に調整されるが、6つのステップにより、ダイバーがより容易にダイビング速度を制御することが可能になる。ボールを有するばねプランジャ(UP.29)がいずれの溝にも嵌まらないとき、そのばねは圧縮され、6つの孔のうちのいずれかに嵌まるとき、そのばねは解放され、回転ノブ(UP.28)はこの位置で停止する。ボールを有するばねプランジャ(UP.29)の上の回転ノブ(UP.28)に白いマークが存在し、これは、ダイバーに、選択された速度に関する情報を与える。デバイスを組み立てるとき、この白いマークは、回転ノブ(UP.28)に貼り付けられる。回転ノブ(UP.28)は、ねじ(UP.27)を用いてポテンショメータ軸(UP.19)に固定される。
【0046】
円錐型のゴムワッシャー(UP.02)およびゴムOリング(UP.04、UP.07、UP.13、UP.18、UP.20、UP.24、UP.25)は、コマンドジョイスティック(UP)の防水を確実にする。組立て部分(UP.21およびUP.26)は、ねじ(UP.21)を用いて固定される。ポテンショメータ(UP.19)は、ナット(UP.22)を用いて組立て部分(UP.21)に固定される。電子回路(UP.09)は、ポテンショメータ(UP.19)を制御する。交換可能な電池パック(BA)の容量に関する情報を提供する光導体(UP.17)は、コマンドジョイスティックハウジング(UP.10)に挿入される。
【0047】
プッシュボタン(UP.11、UP.15、UP.16)がクレードル(UP.14)にねじ留めされる。解放されたばね(UP.12)は、プッシュボタン(UP.11、UP.15、UP.16)が、押されていないときに上側の位置にあることを確実にする。これらのプッシュボタンを押すことにより、ばねは圧縮され、クレードル(UP.14)が電子回路(UP.09)上のスイッチを押す。
【0048】
安全コード(UP.08)は、ダイバーの手首の周りに配置されるように意図され、ダイバーがコマンドジョイスティックを手に把持しない場合であっても、ダイバーがコマンドジョイスティックを紛失する可能性がないことを確実にする。例えばダイバーのマスクの交換、他のダイバーの支援、水中写真またはビデオの撮影、任意の他の水中活動等の何らかの理由に起因する場合、安全コード(UP.08)は、ダイバーが、運転モードにあるかまたは停止モードにあるかにかかわらず、任意の時点においてコマンドジョイスティック(UP)を解放することができることを確実にする。
【0049】
コマンドジョイスティックハウジングの下側カバー(UP.05)、および真鍮ケーブルスリーブ(UP.03)は、ナット(UP.06)を用いて固定される。後者は、真鍮ケーブルナット(UP.01)を用いてねじ留めされる。コマンドジョイスティックハウジング(UP.10)は、ねじを用いて、コマンドジョイスティックハウジングの下側カバー(UP.05)、およびコマンドジョイスティックハウジングの上側カバー(UP.21)と固定される。組立て部分(UP.01、UP.03、UP.06)は、真鍮から作製され、ニッケルコーティングで保護される。組立て部分(UP.05、UP.10、UP.11、UP.15、UP.16、UP.21、UP.26、UP.28、UP.30)は、アルミニウムまたは工業用プラスチックから作製される。クレードル(UP.14)、ばね(UP.12)、およびボールを有するばねプランジャ(UP.27)は、ステンレス鋼から作製される。光導体は、透明なアクリルガラスから作製される。
【0050】
コンタクトクランプ(KS)
コンタクトクランプ(KS)は水中でダイバーによって用いられるデバイスの構成要素でないにもかかわらず、市場で入手可能な充電器の標準的なコネクタと、交換可能な電池パック(BA)の充電コネクタとの間のアダプタとして必要とされる場合がある。コネクタ(KS.01)は、2線ケーブル(KS.02)を用いて、コンタクトクランプ部分(KS.04)内の専用孔に設置されたグロメット(KS.03)を介して接続される適切な標準的なコネクタである。コンタクトクランプ部分(KS.04)は、2つのねじ(KS.12)を用いてコンタクトクランプ部分(KS.14)と固定される。導体(KS.11)はコンタクトクランプ部分(KS.04、KS.10、KS.14、KS.15、KS.18)に挿入され、真鍮コンタクト(KS.16およびKS.17)と接続される。後者は、コンタクトクランプ部分(KS.15およびKS.18)にねじ留めされる。真鍮コンタクト(KS.16およびKS.17)の直径は、交換可能な電池パック(BA)への誤った設置を防ぐために異なっている。コンタクトクランプ部分(KS.7、KS.10およびKS.14)は、2つのねじ(KS.05)を用いて固定される。ねじ(KS.05)と併せてコンタクトクランプ部分(KS.07)の孔に挿入される2つのばね(KS.06)が存在する。コンタクトクランプ(KS)が閉じるとき、ばね(KS.06)は解放される(コンタクトクランプ(KS)が使用されていないとき、または交換可能な電池パック(BA)のコネクタに設置されているとき)。コンタクトクランプを交換可能な電池パック(BA)に/から組み付けるまたは分解するとき、コンタクトクランプ部分(KS.10)を引き出すことが必要である。この場合、ばね(KS.06)は収縮し、圧力下にある。交換可能な電池パック(BA)への/からのコンタクトクランプ(KS)の組付け(分解)が行われるとき、ばね(KS.06)は再び解放され、コンタクトクランプ部分(KS.10)をその元の位置に押し戻す。コンタクトクランプ部分(KS.04、KS.07、KS.09、KS.10、KS.14、KS.15、KS.18)は、電流を伝導しない工業用プラスチックから作製される。