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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-15
(45)【発行日】2022-06-23
(54)【発明の名称】ガスセンサのセンサ素子
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/416 20060101AFI20220616BHJP
   G01N 27/409 20060101ALI20220616BHJP
   G01N 27/41 20060101ALI20220616BHJP
   G01N 27/419 20060101ALI20220616BHJP
【FI】
G01N27/416 331
G01N27/409 100
G01N27/41 325J
G01N27/419 327J
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021511289
(86)(22)【出願日】2020-03-06
(86)【国際出願番号】 JP2020009578
(87)【国際公開番号】W WO2020203027
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-09-01
(31)【優先権主張番号】P 2019067010
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100134991
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 和樹
(74)【代理人】
【識別番号】100148507
【弁理士】
【氏名又は名称】喜多 弘行
(72)【発明者】
【氏名】大西 諒
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 悠介
(72)【発明者】
【氏名】幸島 康英
(72)【発明者】
【氏名】日野 隆志
【審査官】黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-169324(JP,A)
【文献】特開2012-189579(JP,A)
【文献】特開2020-034443(JP,A)
【文献】特開2020-020738(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/416
G01N 27/409
G01N 27/41
G01N 27/419
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスセンサのセンサ素子であって、
測定対象ガス成分の検知部を備えたセラミックス構造体である素子基体と、
前記素子基体のうち、前記検知部が備わる側の端部から所定範囲の外周部に設けられた多孔質層である先端保護層と、
を備え、
前記先端保護層が、
前記素子基体の2つの主面上のみに設けられてなる第1先端保護層と、
前記端部と、前記第1先端保護層が形成されてなる前記2つの主面を含む前記素子基体の4つの側面とを覆うように設けられてなる第2先端保護層と、
前記第2先端保護層を覆うように設けられてなり、前記第2先端保護層よりも気孔率が小さい第3先端保護層と、
からなり、
前記第2先端保護層が30%~70%の気孔率を有しかつ前記第1先端保護層の厚みの6倍~30倍の厚みに形成されてなり、
前記第3先端保護層が10%~40%の気孔率を有しかつ前記第1先端保護層の厚みの2倍~15倍の厚みに形成されている、
ことを特徴とする、ガスセンサのセンサ素子。
【請求項2】
請求項1に記載のセンサ素子であって、
前記第2先端保護層が50%~70%の気孔率を有する、
ことを特徴とする、ガスセンサのセンサ素子。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のセンサ素子であって、
前記第1先端保護層の厚みが30μm~50μmである、
ことを特徴とする、ガスセンサのセンサ素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスセンサのセンサ素子に関し、特にその表面保護層に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、内燃機関からの排ガスなどの被測定ガス中に含まれる所望ガス成分の濃度を知るためのガスセンサとして、ジルコニア(ZrO)等の酸素イオン伝導性を有する固体電解質からなり、表面や内部にいくつかの電極を備えるセンサ素子を有するものが、広く知られている。係るセンサ素子として、長尺板状の素子形状を有し、かつ、被測定ガスを導入する部分が備わる側の端部に、多孔質体からなる保護層(多孔質保護層)が設けられるものが公知である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
センサ素子の表面に保護層を設けるのは、ガスセンサの使用時におけるセンサ素子の耐被水性を確保するためである。具体的には、センサ素子の表面に付着した水滴からの熱(冷熱)に起因する熱衝撃がセンサ素子に作用して、センサ素子が割れてしまう、被水割れを防止するためである。
【0004】
しかしながら、耐熱衝撃性を向上させる目的でそのような保護層を設けた場合、センサ素子全体として熱容量が増大するとともに、センサ素子に対する拘束力が増加する。これらは、センサ素子の急速昇温性の悪化につながる。また、ガスセンサの使用環境によっては、当該環境において生じる振動が原因で、保護膜がセンサ素子から脱離する可能性があるため、保護層の密着性の担保も必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5344375号公報
【発明の概要】
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、耐被水性と急速昇温性との双方において優れた、ガスセンサのセンサ素子を提供することを目的とする。
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様は、ガスセンサのセンサ素子であって、測定対象ガス成分の検知部を備えたセラミックス構造体である素子基体と、前記素子基体のうち、前記検知部が備わる側の端部から所定範囲の外周部に設けられた多孔質層である先端保護層と、を備え、前記先端保護層が、前記素子基体の2つの主面上のみに設けられてなる第1先端保護層と、前記端部と、前記第1先端保護層が形成されてなる前記2つの主面を含む前記素子基体の4つの側面とを覆うように設けられてなる第2先端保護層と、前記第2先端保護層を覆うように設けられてなり、前記第2先端保護層よりも気孔率が小さい第3先端保護層と、からなり、前記第2先端保護層が30%~70%の気孔率を有しかつ前記第1先端保護層の厚みの6倍~30倍の厚みに形成されてなり、前記第3先端保護層が10%~40%の気孔率を有しかつ前記第1先端保護層の厚みの2倍~15倍の厚みに形成されてなる、ことを特徴とする。
【0008】
本発明の第2の態様は、第1の態様に係るセンサ素子であって、前記第2先端保護層が50%~70%の気孔率を有する、ことを特徴とする。
【0009】
本発明の第3の態様は、第1または第2の態様に係るセンサ素子であって、前記第1先端保護層の厚みが30μm~50μmである、ことを特徴とする。
【0010】
本発明の第1ないし第3の態様によれば、耐被水性と昇温性能の双方において優れた、ガスセンサのセンサ素子が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】センサ素子10の概略的な外観斜視図である。
図2】センサ素子10の長手方向に沿った断面図を含むガスセンサ100の構成の概略図である。
図3】センサ素子10を作製する際の処理の流れを示す図である。
図4】第3先端保護層23の配置態様が図2とは異なるセンサ素子10の要部を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<センサ素子およびガスセンサの概要>
図1は、本発明の実施の形態に係るセンサ素子(ガスセンサ素子)10の概略的な外観斜視図である。また、図2は、センサ素子10の長手方向に沿った断面図を含むガスセンサ100の構成の概略図である。センサ素子10は、被測定ガス中の所定ガス成分を検知しその濃度を測定するガスセンサ100の、主たる構成要素であるセラミックス構造体である。センサ素子10は、いわゆる限界電流型のガスセンサ素子である。
【0013】
ガスセンサ100は、センサ素子10のほか、ポンプセル電源30と、ヒータ電源40と、コントローラ50とを主として備える。
【0014】
図1に示すように、センサ素子10は概略、長尺板状の素子基体1の一方端部側が、多孔質の先端保護層2にて被覆された構成を有する。先端保護層2は、第1先端保護層21、第2先端保護層22、第3先端保護層23の3層で構成される。先端保護層2の詳細については後述する。
【0015】
素子基体1は概略、図2に示すように、長尺板状のセラミックス体101を主たる構造体とするとともに、該セラミックス体101の2つの主面上には主面保護層170を備え、さらに、センサ素子10においては、一先端部側の端面(セラミックス体101の先端面101e)および4つの側面の外側に先端保護層2が設けられてなる。なお、以降においては、センサ素子10(もしくは素子基体1、セラミックス体101)の長手方向における両端面を除く4つの側面を単に、センサ素子10(もしくは素子基体1、セラミックス体101)の側面と称する。
【0016】
セラミックス体101は、酸素イオン伝導性固体電解質であるジルコニア(イットリウム安定化ジルコニア)を主成分とするセラミックスからなる。また、係るセラミックス体101の外部および内部には、センサ素子10の種々の構成要素が設けられてなる。係る構成を有するセラミックス体101は、緻密かつ気密なものである。なお、図2に示すセンサ素子10の構成はあくまで例示であって、センサ素子10の具体的構成はこれに限られるものではない。
【0017】
図2に示すセンサ素子10は、セラミックス体101の内部に第一の内部空室102と第二の内部空室103と第三の内部空室104とを有する、いわゆる直列三室構造型のガスセンサ素子である。すなわち、センサ素子10においては概略、第一の内部空室102が、セラミックス体101の一方端部E1側において外部に対し開口する(厳密には先端保護層2を介して外部と連通する)ガス導入口105と第一の拡散律速部110、第二の拡散律速部120を通じて連通しており、第二の内部空室103が第三の拡散律速部130を通じて第一の内部空室102と連通しており、第三の内部空室104が第四の拡散律速部140を通じて第二の内部空室103と連通している。なお、ガス導入口105から第三の内部空室104に至るまでの経路を、ガス流通部とも称する。本実施の形態に係るセンサ素子10においては、係るガス流通部がセラミックス体101の長手方向に沿って一直線状に設けられてなる。
【0018】
第一の拡散律速部110、第二の拡散律速部120、第三の拡散律速部130、および第四の拡散律速部140はいずれも、図面視上下2つのスリットとして設けられている。第一の拡散律速部110、第二の拡散律速部120、第三の拡散律速部130、および第四の拡散律速部140は、通過する被測定ガスに対して所定の拡散抵抗を付与する。なお、第一の拡散律速部110と第二の拡散律速部120の間には、被測定ガスの脈動を緩衝する効果を有する緩衝空間115が設けられている。
【0019】
また、セラミックス体101の外面には外部ポンプ電極141が備わり、第一の内部空室102には内部ポンプ電極142が備わっている。さらには、第二の内部空室103には補助ポンプ電極143が備わり、第三の内部空室104には、測定対象ガス成分の直接の検知部である測定電極145が備わっている。加えて、セラミックス体101の他方端部E2側には、外部に連通し基準ガスが導入される基準ガス導入口106が備わっており、該基準ガス導入口106内には、基準電極147が設けられている。
【0020】
例えば、係るセンサ素子10の測定対象が被測定ガス中のNOxである場合であれば、以下のようなプロセスによって、被測定ガス中のNOxガス濃度が算出される。
【0021】
まず、第一の内部空室102に導入された被測定ガスは、主ポンプセルP1のポンピング作用(酸素の汲み入れ或いは汲み出し)によって、酸素濃度が略一定に調整されたうえで、第二の内部空室103に導入される。主ポンプセルP1は、外部ポンプ電極141と、内部ポンプ電極142と、両電極の間に存在するセラミックス体101の部分であるセラミックス層101aとによって構成される電気化学的ポンプセルである。第二の内部空室103においては、同じく電気化学的ポンプセルである、補助ポンプセルP2のポンピング作用により、被測定ガス中の酸素が素子外部へと汲み出されて、被測定ガスが十分な低酸素分圧状態とされる。補助ポンプセルP2は、外部ポンプ電極141と、補助ポンプ電極143と、両電極の間に存在するセラミックス体101の部分であるセラミックス層101bとによって構成される。
【0022】
外部ポンプ電極141、内部ポンプ電極142、および補助ポンプ電極143は、多孔質サーメット電極(例えば、Auを1%含むPtとZrOとのサーメット電極)として形成されてなる。なお、被測定ガスに接触する内部ポンプ電極142および補助ポンプ電極143は、被測定ガス中のNOx成分に対する還元能力を弱めた、あるいは、還元能力のない材料を用いて形成される。
【0023】
補助ポンプセルP2によって低酸素分圧状態とされた被測定ガス中のNOxは、第三の内部空室104に導入され、第三の内部空室104に設けられた測定電極145において還元ないし分解される。測定電極145は、第三の内部空室104内の雰囲気中に存在するNOxを還元するNOx還元触媒としても機能する多孔質サーメット電極である。係る還元ないし分解の際には、測定電極145と基準電極147との間の電位差が、一定に保たれている。そして、上述の還元ないし分解によって生じた酸素イオンが、測定用ポンプセルP3によって素子外部へと汲み出される。測定用ポンプセルP3は、外部ポンプ電極141と、測定電極145と、両電極の間に存在するセラミックス体101の部分であるセラミックス層101cとによって構成される。測定用ポンプセルP3は、測定電極145の周囲の雰囲気中におけるNOxの分解によって生じた酸素を汲み出す電気化学的ポンプセルである。
【0024】
主ポンプセルP1、補助ポンプセルP2、および測定用ポンプセルP3におけるポンピング(酸素の汲み入れ或いは汲み出し)は、コントローラ50による制御のもと、ポンプセル電源(可変電源)30によって各ポンプセルに備わる電極の間にポンピングに必要な電圧が印加されることにより、実現される。測定用ポンプセルP3の場合であれば、測定電極145と基準電極147との間の電位差が所定の値に保たれるように、外部ポンプ電極141と測定電極145との間に電圧が印加される。ポンプセル電源30は通常、各ポンプセル毎に設けられる。
【0025】
コントローラ50は、測定用ポンプセルP3により汲み出される酸素の量に応じて測定電極145と外部ポンプ電極141との間を流れるポンプ電流Ip2を検出し、このポンプ電流Ip2の電流値(NOx信号)と、分解されたNOxの濃度との間に線型関係があることに基づいて、被測定ガス中のNOx濃度を算出する。
【0026】
なお、好ましくは、ガスセンサ100は、それぞれのポンプ電極と基準電極147との間の電位差を検知する、図示しない複数の電気化学的センサセルを備えており、コントローラ50による各ポンプセルの制御は、それらのセンサセルの検出信号に基づいて行われる。
【0027】
また、センサ素子10においては、セラミックス体101の内部にヒータ150が埋設されている。ヒータ150は、ガス流通部の図2における図面視下方側において、一方端部E1近傍から少なくとも測定電極145および基準電極147の形成位置までの範囲にわたって設けられる。ヒータ150は、センサ素子10の使用時に、セラミックス体101を構成する固体電解質の酸素イオン伝導性を高めるべく、センサ素子10を加熱することを主たる目的として、設けられてなる。より詳細には、ヒータ150はその周囲を絶縁層151に囲繞される態様にて設けられてなる。
【0028】
ヒータ150は、例えば白金などからなる抵抗発熱体である。ヒータ150は、コントローラ50による制御のもと、ヒータ電源40からの給電により発熱する。
【0029】
本実施の形態に係るセンサ素子10はその使用時、ヒータ150によって、少なくとも第一の内部空室102から第二の内部空室103に至る範囲の温度が500℃以上となるように、加熱される。さらには、ガス導入口105から第三の内部空室104に至るまでのガス流通部全体が500℃以上となるように、加熱される場合もある。これらは、各ポンプセルを構成する固体電解質の酸素イオン伝導性を高め、各ポンプセルの能力が好適に発揮されるようにするためである。係る場合、最も高温となる第一の内部空室102付近の温度は、700℃~800℃程度となる。センサ素子10を駆動する際のヒータ150の設定加熱温度を素子駆動温度とも称する。
【0030】
以降においては、セラミックス体101の2つの主面のうち、図2において図面視上方側に位置する、主に主ポンプセルP1、補助ポンプセルP2、および測定用ポンプセルP3が備わる側の主面(あるいは当該主面が備わるセンサ素子10の外面)をポンプ面と称し、図2において図面視下方に位置する、ヒータ150が備わる側の主面(あるいは当該主面が備わるセンサ素子10の外面)をヒータ面と称することがある。換言すれば、ポンプ面は、ヒータ150よりもガス導入口105、3つの内部空室、および各ポンプセルに近接する側の主面であり、ヒータ面はガス導入口105、3つの内部空室、および各ポンプセルよりもヒータ150に近接する側の主面である。
【0031】
セラミックス体101のそれぞれの主面上の他方端部E2側には、センサ素子10と外部との間の電気的接続を図るための複数の電極端子160が形成されてなる。これらの電極端子160は、セラミックス体101の内部に備わる図示しないリード線を通じて、上述した5つの電極と、ヒータ150の両端と、図示しないヒータ抵抗検出用のリード線と、所定の対応関係にて電気的に接続されている。よって、センサ素子10の各ポンプセルに対するポンプセル電源30から電圧の印加や、ヒータ電源40からの給電によるヒータ150の加熱は、電極端子160を通じてなされる。
【0032】
さらに、センサ素子10においては、セラミックス体101のポンプ面およびヒータ面に、上述した主面保護層170(170a、170b)が備わっている。主面保護層170は、アルミナからなる、厚みが5μm~30μm程度であり、かつ20%~40%程度の気孔率にて気孔が存在する層であり、セラミックス体101の主面(ポンプ面およびヒータ面)や、ポンプ面側に備わる外部ポンプ電極141に対する、異物や被毒物質の付着を防ぐ目的で設けられてなる。それゆえ、ポンプ面側の主面保護層170aは、外部ポンプ電極141を保護するポンプ電極保護層としても機能するものである。
【0033】
なお、本実施の形態において、気孔率は、評価対象物のSEM(走査電子顕微鏡)像に対し公知の画像処理手法(二値化処理など)を適用することで求めるものとする。
【0034】
図2においては、電極端子160の一部を露出させるほかはポンプ面およびヒータ面の略全面にわたって主面保護層170が設けられてなるが、これはあくまで例示であり、図2に示す場合よりも、主面保護層170は、一方端部E1側の外部ポンプ電極141近傍に偏在させて設けられてもよい。
【0035】
<先端保護層の詳細>
センサ素子10においては、上述のような構成を有する素子基体1の一方端部E1から所定範囲の最外周部に、先端保護層2が設けられてなる。
【0036】
先端保護層2を設けるのは、素子基体1のうちガスセンサ100の使用時に高温(最高で700℃~800℃程度)となる部分を囲繞することによって、当該部分における耐被水性を確保し、当該部分が直接に被水することによる局所的な温度低下に起因した熱衝撃により素子基体1にクラック(被水割れ)が生じることを、抑制するためである。
【0037】
加えて、先端保護層2は、センサ素子10の内部にMgなどの被毒物質が入り込むことを防ぐ、耐被毒性の確保のためにも、設けられてなる。
【0038】
一方で、先端保護層2を設けることは、センサ素子10の熱容量を増大させ、かつ、素子基体1に対する拘束力を高めることとなるため、一般論としては、急速昇温性という点からは必ずしも得策ではないことがある。本実施の形態では、係る急速昇温性の確保という点も踏まえ、先端保護層2の構成が定められてなる。
【0039】
具体的には、図2に示すように、本実施の形態に係るセンサ素子10においては、先端保護層2が、第1先端保護層21、第2先端保護層22、第3先端保護層23の3層で構成される。
【0040】
第1先端保護層21は、その上に形成される第2先端保護層22(さらには第3先端保護層23)と素子基体1の間における接着性(密着性)を確保するべく設けられる下地層である。第1先端保護層21は少なくとも、素子基体1のポンプ面側およびヒータ面側の2つの主面上に設けられてなる。すなわち、第1先端保護層21は、ポンプ面側の第1先端保護層21aとヒータ面側の第1先端保護層21bとを備える。
【0041】
ただし、第1先端保護層21は、セラミックス体101の(素子基体1の)先端面101eと、側面には設けられない。これは、密着性を確保しつつも、素子基体1に対する拘束力を小さく、急速昇温性を損なわないようにするためである。
【0042】
第1先端保護層21は、アルミナにて、30%~50%の気孔率を有しかつ30μm~50μmの厚みに形成されてなる。なお、第1先端保護層21は、後述するように、第2先端保護層22および第3先端保護層23とは異なり、素子基体1の作製の過程で素子基体1ともども形成される。
【0043】
第2先端保護層22と第3先端保護層23は、素子基体1の一先端部E1側の先端面101eと4つの側面とを覆うように(素子基体1の一先端部E1側の外周に)、内側から順に設けられてなる。第2先端保護層22のうち、先端面101e側の部分を特に先端部221と称し、ポンプ面側とヒータ面側の部分を特に主面部222と称する。同様に、第3先端保護層23のうち、先端面101e側の部分を特に先端部231と称し、ポンプ面側とヒータ面側の部分を特に主面部232と称する。
【0044】
第2先端保護層22は、アルミナにて、30%~70%の気孔率を有しかつ第1先端保護層21の厚みの6倍~30倍の厚みを有するように、設けられてなる。好ましくは、第2先端保護層22は50%~70%の気孔率を有する。また、第3先端保護層23はアルミナにて、第1先端保護層21の厚みの2倍~15倍の厚みを有し、かつ気孔率が10%~40%なる値であって第2先端保護層22の気孔率よりも小さい値となるように、設けられてなる。これにより、先端保護層2においては、3つの層のなかで最も熱伝導率の小さい第2先端保護層22が、最外側に設けられた、該第2先端保護層22よりも気孔率の小さい第3先端保護層23に、被覆された構成となっている。
【0045】
換言すれば、第2先端保護層22は低熱伝導率の層として設けられることで外部から素子基体1への熱伝導を抑制する機能(断熱効果)を有しており、第3先端保護層23は全体の強度を維持する機能と、内部への水の浸入を抑制する機能とを有してなる。係る構成を有することで、先端保護層2においては、高温状態にあるセンサ素子10の使用時、表面(第3先端保護層23の表面)に水が付着したとしても、内部への浸入は抑制され、付着に伴う急冷に起因した冷熱が、素子基体1へと伝わりにくくなっている。すなわち、先端保護層2は優れた耐熱衝撃性を有してなる。結果として、センサ素子10は、被水割れが起こりにくく、耐被水性に優れたものとなっている。
【0046】
加えて、本実施の形態に係るセンサ素子10においては、第2先端保護層22と第3先端保護層23とを上述した厚みおよび気孔率の範囲をみたすように設けることで、駆動時の昇温性能(急速昇温性能)についても確保される。すなわち、本実施の形態に係るセンサ素子10は、耐熱衝撃性(耐被水性)の具備と昇温性能の確保という、相異なる2つの特徴が、両立したものとなっている。なお、本実施の形態においてセンサ素子10の昇温性能とは、ガスセンサ100の使用を開始するべくセンサ素子10の内部に備わるヒータ150によって先端保護層2を含むセンサ素子10全体の加熱を開始してから、センサ素子10が所定の温度に到達するまでの時間(例えばヒータ150が素子駆動温度に到達するまでの時間)によって評価が可能である。
【0047】
ただし、第2先端保護層22と第3先端保護層23の厚みを過度に大きくしすぎると、昇温時にヒータ150に加わる熱的負荷が大きくなり、その結果として、センサ素子10が割れてしまうおそれが生じるため、好ましくない。係る観点からは、第2先端保護層22の厚みは800μm以下とし、第3先端保護層23の厚みは400μm以下とするのが好ましい。
【0048】
また、第2先端保護層22と第3先端保護層23は、表面に第1先端保護層21が形成された素子基体1に対し、それぞれの構成材料を順次に溶射(プラズマ溶射)することで形成される。これは、素子基体1の作製とともにあらかじめ形成されてなる第1先端保護層21と第2先端保護層22の間にアンカー効果を発現させ、第1先端保護層21に対する(外側に形成される第3先端保護層23も含めた)第2先端保護層22の接着性(密着性)を、確保するためである。これは、換言すれば、第1先端保護層21が第2先端保護層22との間における接着性(密着性)を確保する機能を有しているということを意味する。係る態様にて接着性(密着性)が確保されてなることで、水滴の付着による熱衝撃に起因した、素子基体1からの先端保護層2の剥離が好適に抑制されてなる。
【0049】
なお、図2においては、第2先端保護層22は、第1先端保護層21(21a、21b)の全体を被覆するように設けられるのではなく、第1先端保護層21のうち、センサ素子10の長手方向において一方端部E1側とは反対側の端部を露出させる態様にて、形成される。これは、第1先端保護層21に対する(外側に形成される第3先端保護層23も含めた)第2先端保護層22の接着性(密着性)を、より確実に確保するためである。
【0050】
以上、説明したように、本実施の形態に係るセンサ素子10においては、素子基体1のうちガスセンサ100の使用時に高温となる部分を囲繞する先端保護層2を、第1先端保護層21と第2先端保護層22と第3先端保護層23の3層構造とし、かつ、それぞれを所定の気孔率および厚みにて設けるようにすることによって、第1先端保護層21と第2先端保護層22との接着性(密着性)を確保する機能を有し、第2先端保護層22が外部から素子基体1への熱伝導を抑制する機能を有し、第3先端保護層23が全体の強度を維持する機能と内部への水の浸入を抑制する機能とを有するようにする。これにより、センサ素子10においては、先端保護層の密着性を確保しつつ、耐熱衝撃性と昇温性能の確保との両立が実現される。すなわち、センサ素子10は、耐被水性と昇温性能の双方において、優れたものとなっている。
【0051】
<センサ素子の製造プロセス>
次に、上述のような構成および特徴を有するセンサ素子10を製造するプロセスの一例について説明する。図3は、センサ素子10を作製する際の処理の流れを示す図である。
【0052】
素子基体1の作製に際しては、まず、ジルコニアなどの酸素イオン伝導性固体電解質をセラミックス成分として含み、かつ、パターンが形成されていないグリーンシートであるブランクシート(図示省略)を、複数枚用意する(ステップS1)。
【0053】
ブランクシートには、印刷時や積層時の位置決めに用いる複数のシート穴が設けられている。係るシート穴は、パターン形成に先立つブランクシートの段階で、パンチング装置による打ち抜き処理などで、あらかじめ形成されている。なお、セラミックス体101の対応する部分に内部空間が形成されることになるグリーンシートの場合、該内部空間に対応する貫通部も、同様の打ち抜き処理などによってあらかじめ設けられる。また、それぞれのブランクシートの厚みは、全て同じである必要はなく、最終的に形成される素子基体1におけるそれぞれの対応部分に応じて、厚みが違えられていてもよい。
【0054】
各層に対応したブランクシートが用意できると、それぞれのブランクシートに対してパターン印刷・乾燥処理を行う(ステップS2)。具体的には、各種電極のパターンや、ヒータ150および絶縁層151のパターンや、電極端子160のパターンや、主面保護層170のパターンや、図示を省略している内部配線のパターンなどが、形成される。また、係るパターン印刷のタイミングで、第一の拡散律速部110、第二の拡散律速部120、第三の拡散律速部130、および第四の拡散律速部140を形成するための昇華性材料(消失材)の塗布あるいは配置も併せてなされる。加えて、積層後に最上層および最下層となるブランクシートに対しては、第1先端保護層21(21a、21b)を形成するためのパターンの印刷もなされる(ステップS2a)。
【0055】
各々のパターンの印刷は、それぞれの形成対象に要求される特性に応じて用意したパターン形成用ペーストを、公知のスクリーン印刷技術を利用してブランクシートに塗布することにより行う。例えば、第1先端保護層21の形成に際しては、最終的に得られるセンサ素子10において所望の気孔率および厚みの第1先端保護層21を形成可能なアルミナペーストが用いられる。印刷後の乾燥処理についても、公知の乾燥手段を利用可能である。
【0056】
各ブランクシートに対するパターン印刷が終わると、グリーンシート同士を積層・接着するための接着用ペーストの印刷・乾燥処理を行う(ステップS3)。接着用ペーストの印刷には、公知のスクリーン印刷技術を利用可能であり、印刷後の乾燥処理についても、公知の乾燥手段を利用可能である。
【0057】
続いて、接着剤が塗布されたグリーンシートを所定の順序に積み重ねて、所定の温度・圧力条件を与えることで圧着させ、一の積層体とする圧着処理を行う(ステップS4)。具体的には、図示しない所定の積層治具に積層対象となるグリーンシートをシート穴により位置決めしつつ積み重ねて保持し、公知の油圧プレス機などの積層機によって積層治具ごと加熱・加圧することによって行う。加熱・加圧を行う圧力・温度・時間については、用いる積層機にも依存するものであるが、良好な積層が実現できるよう、適宜の条件が定められればよい。なお、係る態様にて得られた積層体に対し第1先端保護層21を形成するためのパターンの形成がなされる態様であってもよい。
【0058】
上述のようにして積層体が得られると、続いて、係る積層体の複数個所を切断して、それぞれが最終的に個々の素子基体1となる単位体に切り出す(ステップS5)。
【0059】
続いて、得られた単位体を、1300℃~1500℃程度の焼成温度で焼成する(ステップS6)。これにより、両主面に第1先端保護層21を備えた素子基体1が作製される。すなわち、素子基体1は、固体電解質からなるセラミックス体101と、各電極と、主面保護層170とが、第1先端保護層21ともども一体焼成されることによって、生成されるものである。なお、係る態様にて一体焼成がなされることで、素子基体1においては、各電極が十分な密着強度を有するものとなっている。
【0060】
以上の態様にて素子基体1が作製されると、続いて、係る素子基体1に対し、第2先端保護層22と第3先端保護層23の形成が行われる。第2先端保護層22の形成は、あらかじめ用意した第2先端保護層形成用の粉末(アルミナ粉末)を素子基体1における第2先端保護層22の形成対象位置に対し狙いの形成厚みに応じて溶射(ステップS7)した後、係る態様にて塗布膜が形成された素子基体1を焼成する(ステップS8)ことによって行われる。第2先端保護層形成用のアルミナ粉末には、所定の粒度分布を有するアルミナ粉末と造孔材とが所望する気孔率に応じた割合にて含まれており、溶射後に素子基体1を焼成することによって係る造孔材を熱分解させることで、30%~70%という高い気孔率の第2先端保護層22が好適に形成されるようになっている。なお、溶射および焼成には公知の技術を適用可能である。
【0061】
第2先端保護層22が形成されると、続いて、同じくあらかじめ用意した、所定の粒度分布を有するアルミナ粉末が含まれる第3先端保護層形成用の粉末(アルミナ粉末)を、素子基体1における第3先端保護層23の形成対象位置に対し狙いの形成厚みに応じて溶射する(ステップS9)ことにより、所望の気孔率の第3先端保護層23を形成する。第3先端保護層形成用のアルミナ粉末には造孔材は含まれない。係る溶射についても、公知の技術を適用可能である。
【0062】
以上の手順によりセンサ素子10が得られる。得られたセンサ素子10は、所定のハウジングに収容され、ガスセンサ100の本体(図示せず)に組み込まれる。
【0063】
<変形例>
上述の実施の形態においては、3つの内部空室を備えたセンサ素子を対象としているが、センサ素子が3室構造であることは必須ではない。すなわち、センサ素子が、内部空室を2つあるいは1つ備える態様であってもよい。
【0064】
また、図2においては、センサ素子10の第3先端保護層23が、第2先端保護層22の一方端部E1側とは反対側の端部を露出させる態様にて、形成されてなるが、これは必須ではない。図4は、第3先端保護層23の配置態様が図2とは異なるセンサ素子10の要部を示す概略図である。図4においては、第3先端保護層23が、第2先端保護層22の当該端部を覆うように形成されている。
【0065】
また、上述の実施の形態においては、ステップS7における第2先端保護層形成用の粉末の溶射後、ステップS8における焼成を行ったうえで、ステップS9における第3先端保護層形成用の粉末の溶射を行っているが、ステップS8の焼成と、ステップS9の溶射の順序は、入れ替わってもよい。
【0066】
また、上述の実施の形態においては、第2先端保護層22および第3先端保護層23をアルミナにて設けることとし、両層を形成する際の溶射材として、アルミナ粉末を用いているが、これは必須の態様ではない。アルミナに代えて、ジルコニア(ZrO)、スピネル(MgAl)、ムライト(Al13Si)などの金属酸化物を用いて、第2先端保護層22および第3先端保護層23を設ける態様であってもよい。係る場合は、それらの金属酸化物の粉末を溶射材として採用すればよい。
【実施例
【0067】
第1先端保護層(以下、第1層)21、第2先端保護層(以下、第2層)22、および第3先端保護層(以下、第3層)23のそれぞれの狙いの厚み(膜厚)と、第2層22および第3層23の気孔率との組み合わせが相異なる12通りのセンサ素子10(試料No.1~12)を作製し、センサ素子10の耐熱衝撃性と昇温性能の評価と、先端保護層2の(具体的には第2層22および第3層23の)密着性の評価とを行った。第1層21、第2層22、および第3層23はいずれも、アルミナにて構成した。なお、第1層21の気孔率は、30%~50%なる範囲をみたすようにした。
【0068】
また、比較のため、第1層21をポンプ面(P面)またはヒータ面(H面)のみに設けたセンサ素子10(試料No.13~14)と、第1層21を素子基体1の全周に、つまりは、ポンプ面上およびヒータ面上のみならず素子基体1の先端面101e上および側面上にも形成したセンサ素子10(試料No.15)と、第1層21を有さないセンサ素子(試料No.16)とについても、第1層21以外はNo.2のセンサ素子と同じ条件にて作製し、試料No.1~12と同様の評価を行った。なお、No.13およびNo.14のセンサ素子10は、No.2のセンサ素子10のポンプ面側とヒータ面側のそれぞれにおける評価を個別に行うことを意図したものである。
【0069】
耐熱衝撃性の評価は、ヒータ150によってそれぞれのセンサ素子10をおよそ500℃~900℃に加熱した状態で、主ポンプセルP1におけるポンプ電流を測定しつつセンサ素子10のポンプ面側に対し0.1μLずつ水滴を滴下し、測定出力に異常が生じない範囲における最大水量を特定することにより行った。ただし、No.13およびNo.14のセンサ素子においては、第1層21が設けられてなる側の面のみを対象に、評価を行った。
【0070】
係る耐熱衝撃性試験において測定出力に異常が生じるのは、先端保護層2が熱衝撃を受けることによってセンサ素子10に素子割れが生じることによるものと考えられる。
【0071】
また、昇温性能の評価は、室温の状態にあるセンサ素子10の駆動を開始してから、該センサ素子10が素子駆動温度として想定される850℃に到達するまでの時間(昇温時間)にて評価した。なお、センサ素子10の温度は、素子内部の抵抗値から算出した。
【0072】
先端保護層2の密着性は、先端保護層2を固定した状態で素子基体1のみを長手方向に引っ張り、素子基体1を変位させるのに要する力の大きさにより評価した。
【0073】
第1層21、第2層22、および第3層23の膜厚と、第1層21の膜厚を基準としたときの第2層22および第3層23の膜厚比と、素子基体1における第1層21の形成面と、第2層22および第3層23の気孔率と、耐熱衝撃性と昇温性能と密着性の評価結果とを表1に一覧にして示す。
【0074】
【表1】
【0075】
耐熱衝撃性については、測定出力に異常が生じない範囲における最大水量が10μL以上であった場合に、耐熱衝撃性が優れていると判定し、表1において「〇」(丸印)を付している。また、当該最大水量が5μL以上10μL未満であった場合に、一定程度の耐熱衝撃性があると判定し、表1において「△」(三角印)を付している。また、当該最大水量が5μL未満であった場合には、表1において「×」(バツ印)を付している。
【0076】
また、昇温性能については、昇温時間が30秒以下であった場合には昇温性能が優れていると判定し、表1において「〇」(丸印)を付している。また、昇温時間が30秒を超えて50秒以下であった場合には一定程度の昇温性能があると判定し、表1において「△」(三角印)を付している。また、昇温時間が50秒を超えた場合には、表1において「×」(バツ印)を付している。
【0077】
さらに、密着性については、素子基体1を変位させるのに要する力の大きさが100N以上であった場合に、密着性が優れていると判定し、表1において「〇」(丸印)を付している。また、係る力が50N以上100N未満であった場合に、一定程度の密着性があると判定し、表1において「△」(三角印)を付している。また、係る力が50N未満であった場合に表1において「×」(バツ印)を付している。
【0078】
表1に示す結果からは、第1層21を設けなかったNo.16のセンサ素子10を除いては、密着性は確保されていることが確認される。
【0079】
また、第1層21を全周に設けたNo.15においては十分な昇温性能が得られなかったのに対し、第1層21をポンプ面とヒータ面の両方に設けたセンサ素子10のうち、No.1~No.6およびNo.8~No.10のセンサ素子10については、いずれか一方の面にのみ第1層21を設けた、No.13およびNo.14のセンサ素子10ともども、優れた昇温性能が得られた。しかも、No.1、No.2、No.5、No.6、No.9、およびNo.10のセンサ素子10については、耐熱衝撃性についても優れていた。また、No.3およびNo.4のセンサ素子10についても、一定程度の耐熱衝撃性は得られていた。
【0080】
以上の結果は、センサ素子10において、素子基体1の2つの主面上に第1層21を設け、素子基体1の端部と、第1層21が形成されてなる当該2つの主面を含む素子基体1の4つの側面とを覆うように第2層22を設け、係る第2層22を覆うように第3層23を設けるようにし、かつ、第2層22が30%~70%の気孔率と第1層21の厚みの6倍~30倍の厚みとを有し、第3層23が10%~40%の気孔率と第1層21の厚みの2倍~15倍の厚みとを有するようにすることで、先端保護層の密着性が確保されてなり、かつ、耐熱衝撃性と昇温性能とが両立したセンサ素子10が、得られることを示している。
【0081】
特に、第2層22の気孔率が50%~70%である場合には、耐熱衝撃性と昇温性能との双方において優れたセンサ素子10が得られることも、示している。
【0082】
なお、確認的にいえば、表1に示す結果を見る限り、第1層21がポンプ面側とヒータ面側のいずれか一方のみに設けられるNo.13およびNo.14のセンサ素子10においても、耐熱衝撃性と昇温性能との両方において優れているといえる。それゆえ、一見すると、第1層21はポンプ面とヒータ面のいずれか一方側にのみ設けられていれば足りるようにも見受けられる。しかしながら、これらNo.13およびNo.14のセンサ素子10についての耐熱衝撃性の評価はあくまで、第1層21が設けられてなるセンサ素子10の一方主面側のみを対象とするにすぎない。一方で、ガスセンサ100の実際の使用局面において、センサ素子10に対する水滴の付着は、両方の主面に対してランダムに生じ得る。それゆえ、第1層21はポンプ面側とヒータ面側の両方に備わることが好ましい。
図1
図2
図3
図4