(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-16
(45)【発行日】2022-06-24
(54)【発明の名称】1隻または複数隻のタグボートを操作する方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
B63B 35/66 20060101AFI20220617BHJP
B63B 49/00 20060101ALI20220617BHJP
H04Q 9/00 20060101ALI20220617BHJP
【FI】
B63B35/66
B63B49/00 Z
H04Q9/00 301Z
(21)【出願番号】P 2018551947
(86)(22)【出願日】2017-03-30
(86)【国際出願番号】 EP2017057553
(87)【国際公開番号】W WO2017167882
(87)【国際公開日】2017-10-05
【審査請求日】2020-03-25
(32)【優先日】2016-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(73)【特許権者】
【識別番号】520164563
【氏名又は名称】スバイツァー アー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】バングスランド,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ハンセン,ラスムス コベルー
【審査官】結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/023080(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0034642(KR,A)
【文献】国際公開第2015/114079(WO,A1)
【文献】韓国登録特許第10-0702448(KR,B1)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0059206(KR,A)
【文献】米国特許第6269763(US,B1)
【文献】“REVOLUTIONARY RAMORA BRINGS TELE-OPERATED CAPABILITY TO SHIP HANDLING”,The Tugs Towing & Offshore Newsletter,Towingline,2015年09月27日,16th Volume, No.77,p.2-3
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 35/66,21/56,49/00,
H04Q 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶(1)の操縦を支援するためのシステムであって、
前記船舶(1)の操縦を支援する少なくとも1隻のタグボート(2)
と、遠隔制御ユニットと、を備え、
前記タグボートは、
一端が当該タグボートに取り付けられた曳航索であって、当該曳航索の別の端が前記船舶に取り付け可能である曳航索と、
曳航索力センサと、
を有し、
前記遠隔制御ユニットは、前記曳航索力センサからのセンサデータに従って、前記少なくとも1隻のタグボート(2)から離れた位置から前記少なくとも1隻のタグボートの操作を無線で制御するように構成さ
れ、
前記遠隔制御ユニットは、前記船舶(1)の船体(3)に対するベクトルの形で推力コマンドを前記少なくとも1隻のタグボート(2)に無線で送信するように構成され、
前記タグボート(2)は、前記曳航
索に必要な張力をかけて、前記遠隔制御ユニットから無線で受信された前記推力コマンドを実行するように構成される、システム。
【請求項2】
前記遠隔制御ユニットは、前記少なくとも1隻のタグボートに対して、前記船舶を追尾するようにとの指示を送信するように構成され、
前記タグボートは、前記船舶を追尾するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記少なくとも1隻のタグボートは、
前記遠隔制御ユニットから受信された指示を無線で受信するように構成された通信装置と、
前記通信装置によって受信された指示を実行するように構成されたコントローラと
を備える、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記遠隔制御ユニットは、パイロットまたは他の人間のオペレータからの入力を受信するように構成されたユーザインターフェースを備える、請求項1~3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記少なくとも1隻のタグボートは、前記曳航索力センサ及び位置センサを含む複数のセンサを備え、
前記コントローラ及び前記通信装置は、前記複数のセンサから前記遠隔制御ユニットに情報を無線で送信するように構成される、請求項3に記載のシステム。
【請求項6】
前記遠隔制御ユニットは、搭載されたまたは関連付けられた位置センサまたは位置ビーコンを備える、請求項1~5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記少なくとも1隻のタグボートには、前記搭載されたまたは関連付けられた位置センサまたは前記位置ビーコンの位置を確認するためのセンサが設けられる、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記曳航索力センサは、前記少なくとも1隻のタグボートが前記少なくとも1隻のタグボートの船首を使って前記曳航索または前記船舶に加える引張力の大きさおよび/または方向を検知するように構成され、
前記遠隔制御ユニットは、前記パイロットまたは人間のオペレータに、前記曳航索力センサによって検知された前記引張力の大きさおよび/または方向を伝えるように構成される、請求項4に記載のシステム。
【請求項9】
船舶の操縦を支援する方法であって、
一端がタグボートに取り付けられ且つ別の端が前記船舶に取り付けられた曳航索と、曳航索力センサと、を有するタグボート(2)を、遠隔位置か
ら無線で制御するこ
とと、
前記曳航索力センサからのセンサデータに従って、前記遠隔位置の遠隔制御ユニットから前記タグボートに、前記船舶(1)の船体(3)に対するベクトルの形で推力コマンドを送信することと、
前記タグボート(2)で前記推力コマンドを受信することと、
前記遠隔位置から前記タグボートによって受信された前記推力コマンドに従って、前記タグボート上のコントローラを使用して、前記曳航
索に必要な張力をかけて、前記船舶の船体に対して所定の大きさおよび方向の推力を加えることによって、前記タグボートで前記推力コマンドを実行することと
を含む、方法。
【請求項10】
前記遠隔位置から前記タグボートに、船舶を追尾するコマンドを出すことと、
前記タグボートが前記遠隔位置から受信された指示に従って前記船舶を追尾することとをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記曳航索力センサを含む前記タグボート(2)上のセンサから前記遠隔位置の受信者にセンサデータを無線で送信することをさらに含む、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記遠隔位置のユーザインターフェースを介して、前記タグボートによって無線で送信された前記センサデータを再生することをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
船舶の操縦を支援するための遠隔制御されたタグボートであって、
一端が当該遠隔制御されたタグボートに取り付けられた曳航索であって、当該曳航索の別の端が前記船舶に取り付け可能である曳航索と、
曳航索力センサと、
前記船舶の船体に対するベクトルの形で推力コマンドを遠隔制御ユニットから無線で受信するように構成された通信装置と、
前記曳航索力センサからのセンサデータに基づいて、前記曳航
索に必要な張力をかけて、前記遠隔制御されたタグボートに対して前記推力コマンドを実行するように構成されたコントローラと、
を備えた、遠隔制御されたタグボート。
【請求項14】
少なくとも位置センサを含む複数のセンサをさらに備え、
前記コントローラ及び前記通信装置は、前記複数のセンサから前記遠隔制御ユニットに情報を無線で送信するように構成される、請求項13に記載の遠隔制御されたタグボート。
【請求項15】
前記曳航索力センサは、前記遠隔制御されたタグボートが前記遠隔制御されたタグボートの船首を使って前記曳航索または前記船舶に加える引張力の大きさおよび/または方向を検知するように構成されている、請求項13又は14に記載の遠隔制御されたタグボート。
【請求項16】
船舶の操縦を支援するための少なくとも1隻のタグボートを制御するための遠隔制御ユニットであって、
前記少なくとも1隻のタグボートが、
一端が当該タグボートに取り付けられた曳航索であって、当該曳航索の別の端が前記船舶に取り付け可能である曳航索と、
曳航索力センサと、を備え、
前記遠隔制御ユニットが、
前記曳航索力センサから、前記曳航索における力を示すセンサデータを受信するように構成された無線通信装置を備え、
前記無線通信装置は、前記曳航
索に必要な張力をかけて、前記少なくとも一隻のタグボートを制御するために、前記船舶の船体に対するベクトルの形で推力コマンドを前記少なくとも1隻のタグボートに無線で送信するように構成されている、遠隔制御ユニット。
【請求項17】
前記遠隔制御ユニットは、前記少なくとも1隻のタグボートに対して、前記船舶を追尾するようにとの指示を送信するように構成されている、請求項16に記載の遠隔制御ユニット。
【請求項18】
パイロットまたは他の人間のオペレータからの入力を受信するように構成されたユーザインターフェースを備える、請求項16又は17に記載の遠隔制御ユニット。
【請求項19】
前記遠隔制御ユニットは、少なくとも位置センサを含む、前記少なくとも1隻のタグボートの複数のセンサから情報を無線で受信するように構成されている、請求項16から18のいずれか一項に記載の遠隔制御ユニット。
【請求項20】
搭載されたまたは関連付けられた位置センサまたは位置ビーコンを備える、請求項16から19のいずれか一項に記載の遠隔制御ユニット。
【請求項21】
前記曳航索力センサは、前記少なくとも1隻のタグボートが前記少なくとも1隻のタグボートの船首を使って前記曳航索または前記船舶に加える引張力の大きさおよび/または方向を検知するように構成され、
前記遠隔制御ユニットは
、パイロットまたは人間のオペレータに、前記曳航索力センサによって検知された前記引張力の大きさおよび/または方向を伝えるように構成される、請求項16から20のいずれか一項に記載の遠隔制御ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、1隻または複数隻のタグボート、特に、例えば、無人操縦で、任意で部分的に自律動作のタグボートのような被遠隔制御タグボートを操作する方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、入港、接岸、離岸、および出港する貨物船のような船舶を支援するための支援操作は、従来方式では、0~8人の熟練船員のような多数の他の乗組員によって支援される船長によって操作される有人タグボートによって行われる。船舶は、一般的には、港湾環境の制約内では、自力で操縦することができないので、この支援が必要である。1隻または複数隻のタグボートは、タグボート上のウィンチを被支援船舶上のキャプスタンまたはボラードに接続する曳航索を使用して船舶を曳航するのに使用される。船舶上の接続点は、船尾の近くまたは船首の近くに位置し得るが、船尾と船首との間のどの場所にも位置し得る。さらに、1隻または複数隻のタグボートは、必要に応じて、船舶を押すのに使用され得る。この点に関して、タグボートの船首は、支援すべき船舶(以降、「被支援船舶」と呼ぶ)の船体上のストロングポイント(押し位置)に係合する。通常、船体上のストロングポイントには、タグボートの乗組員がストロングポイントの位置を識別することができるように、大きな文字TUGが印されている。
【0003】
一般に、タグボートは、水空間、港湾、入り江、可航水路、湖、および河川において運航するボートであり、タグボートの目的は、タグボートのエンジンおよび推進器を使用して、タグボートから曳航/支援すべき船舶に力学的エネルギーを伝達することである。タグボートは、強力なディーゼル電気駆動装置またはディーゼル駆動装置を装備することによりタグボートの作業に適応され、大きな引張力/押す力(ボラードプル)を発生させるために、極めて高い出力対トン数比を有する。
【0004】
タグボートの出力は、一般的には、エンジンの馬力およびタグボートの総ボラードプルで表される。コンテナ船等を曳航するために使用される2000年代~2010年代の最大商業港タグボートは、約60~65トンのボラードプルを有するものであった。これは、「標準」タグボートより15トン大きいと考えられる。
【0005】
タグボートは、非常に操縦しやすく、操縦性および安全性を向上させるために様々な推進システムが開発されてきた。ほとんどのタグボートは、プロペラ駆動型である。kW/hp当たりの推進力を増すために、コルトノズルが追加されている。ノズルラダーを使用すると、従来のラダーを使用する必要がなくなる。タグボートには、一般的には、いわゆるZドライブまたは(アジマススラスタ)が設けられており、これは、360°回転することができるポッドであり、推力方向の急速な変化を可能にする。
【0006】
追加として、または代替として、タグボートには、専用舶用推進システムであるサイクロイドドライブとしても周知のフォイト・シュナイダー・プロペラ(VSP)が設けられている。VSPは、非常に操縦しやすく、ほとんど瞬時に推力の方向を変えることができる。VSPは、タグボートで広く使用されている。垂直ブレード(水中翼の形状)の円形配列は、垂直軸を中心として回転する円板から、ボートの底の外に突出している。各々のブレードは、垂直軸を中心として回転し得る。内歯車は、円板の回転と同期してブレードの迎え角を変化させるので、各々のブレードは、ヘリコプタのコレクティブピッチコントロールおよび周期と非常に似た形で、任意の方向に推力を生成し得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
タグボート運航、すなわち、船舶支援操作の運用コストは、乗組員に対する費用が大きな割合を占める。したがって、タグボート操作の費用を低減することが求められる。
【0008】
本発明の目的は、上記の問題を克服する、または少なくとも低減するシステムを提供することである。
【0009】
上述の目的および他の目的は、独立請求項の特徴によって達成される。さらなる実装形態は、従属請求項、説明および図面から明らかである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の態様によれば、船舶の操縦を支援するためのシステムであって、前記船舶の操縦を支援するのに適した少なくとも1隻のタグボートであって、少なくとも40トンのボラードプルを発生させることができるように構成されたタグボートと、前記少なくとも1隻のタグボートから離れた位置から前記少なくとも1隻のタグボートの操作を無線で制御するように構成された遠隔制御ユニットであって、被支援船舶の船体に対するベクトルの形で推力コマンドを前記少なくとも1隻のタグボートに無線で送信するように構成された遠隔制御ユニットとを備え、前記タグボートは、推力コマンドの大きさが40トン以上である場合も、前記遠隔制御ユニットから無線で受信された推力コマンドを実行するように構成される、システムが提供される。
【0011】
被遠隔制御タグボートおよび遠隔制御ユニットを配備することによって、乗組員が乗船せずにタグボートを操作することができ、ひいては、コストを削減し、タグボートにおける乗組員の収容施設および設備の必要性をなくすことができる。
【0012】
第1の態様の第1の可能な実施形態では、遠隔制御ユニットは、少なくとも1隻のタグボートに対して、被支援船舶を追尾するようにとの指示を送信するように構成され、タグボートは、好ましくは自律的に、さらに好ましくは被支援船舶と一定の距離を置いて、被支援船舶を追尾するように構成される。
【0013】
第1の態様の第2の可能な実施形態では、制御ユニットは、パイロットまたは他の人間のオペレータがタグボートに対する指示を入力して送信することができるように構成される。
【0014】
第1の態様の第3の可能な実施形態では、少なくとも1隻のタグボートは、遠隔制御ユニットから受信された指示を無線で受信するように構成された通信装置と、通信装置によって受信された指示を実行するように構成されたコントローラとを備える。
【0015】
第1の態様の第4の可能な実施形態では、遠隔制御ユニットは、パイロットまたは他の人間のオペレータからの入力を受信するように構成されたユーザインターフェースを備え、ユーザインターフェースは、好ましくは、タッチスクリーンを含む。
【0016】
第1の態様の第5の可能な実施形態では、遠隔制御ユニットは、無線送受信器を備える。
【0017】
第1の態様の第6の可能な実施形態では、タグボートは、少なくとも位置センサを含む複数のセンサを備え、制御通信装置は、複数のセンサから遠隔制御ユニットに情報を無線で送信するように構成される。
【0018】
第1の態様の第7の可能な実施形態では、遠隔制御ユニットは、タグボートに搭載されているセンサからの情報を再生するように構成される。
【0019】
第1の態様の第8の可能な実施形態では、遠隔制御ユニットは、パイロットまたは他の人間のオペレータが被支援船舶に乗船して携行するのに適した携帯型制御ユニットである。
【0020】
第1の態様の第9の可能な実施形態では、遠隔制御ユニットは、搭載された、または関連付けられた位置センサまたは位置ビーコンを備える。
【0021】
第1の態様の第10の可能な実施形態では、タグボートには、位置センサまたは位置ビーコンの位置を確認するためのセンサが設けられる。
【0022】
第1の態様の第11の可能な実施形態では、タグボートには、タグボートがタグボートの船首を使って曳航索または被支援船舶に加えるボラードプルの強さおよび/または方向を示すセンサが設けられ、遠隔制御ユニットは、パイロットまたは人間のオペレータにセンサによって検知されたボラードプルの強さおよび/または方向を伝えるように構成される。
【0023】
第1の態様の第12の可能な実施形態では、タグボートは無人タグボートである。
【0024】
第2の態様によれば、船舶の操縦を支援する方法であって、少なくとも1隻のタグボートを遠隔位置から遠隔制御することを含み、遠隔位置は、好ましくは、被支援船舶上の位置である。
【0025】
第2の態様の第1の可能な実施形態では、該方法は、少なくとも1隻のタグボートを遠隔位置から無線で制御することであって、前記タグボートは少なくとも40トンのボラードプルを発生させることができるように構成され、前記遠隔位置は、好ましくは被支援船舶上の位置である、ことと、前記遠隔位置の遠隔制御ユニットから前記タグボートに被支援船舶の船体に対するベクトルの形で推力コマンドを送信することと、前記タグボート上で前記推力コマンドを受信することと、前記遠隔位置からタグボートによって受信された推力コマンドに従って、推力コマンドの大きさが40トン以上の場合でも、被支援船舶の船体に対して所定の大きさおよび方向の推力を加えることによって、前記タグボート上のコントローラを使用する前記タグボートによって前記推力コマンドを実行することとを含む。
【0026】
第2の態様の第2の可能な実施形態では、該方法は、遠隔位置からタグボートに指示および/または制御信号を無線で送信することと、タグボート上の受信器で指示および/または制御信号を受信することとを含む。
【0027】
第2の態様の第3の可能な実施形態では、該方法は、タグボート上のセンサから遠隔位置の受信者にセンサデータを無線で送信することを含む。
【0028】
第2の態様の第4の可能な実施形態では、該方法は、遠隔位置のユーザインターフェースを介して、タグボートによって無線で送信されたセンサデータを再生することを含む。
【0029】
第2の態様の第5の可能な実施形態では、タグボートには、測位システムが設けられ、測位システムによってタグボートの位置を遠隔位置に無線で送信ことを含む。
【0030】
第2の態様の第6の可能な実施形態では、該方法は、被支援船舶が被支援船舶の場所、好ましくは被支援船舶上の特定の場所をタグボートに無線で送信することを含む。
【0031】
第2の態様の第7の可能な実施形態では、該方法は、曳航索によってタグボートを被支援船舶に接続することを含む。
【0032】
第2の態様の第8の可能な実施形態では、タグボートは無人タグボートである。
【0033】
本発明の上記の態様および他の態様は、以下に説明する実施形態から明らかになるであろう。
【0034】
本開示の以下の詳細な説明部分において、図面に示された実施形態例を参照しながら、本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】支援操作の間の被支援船舶および複数のタグボートの側面図である。
【
図2】支援操作の間の
図1の被支援船舶および複数のタグボートの上面図であり、1隻の追加のタグボートが被支援船舶の横側に位置する状態を示した図である。
【
図3】支援操作の間の
図1の被支援船舶および複数のタグボートの上面図であり、2隻の追加のタグボートが被支援船舶の横側に位置する状態を示した図である。
【
図4】システム内にパイロット用の遠隔制御ユニット、制御センター用の遠隔制御ユニットおよび各々のタグボート用の制御ユニットを有するシステムの系統図である。
【
図5】クレーンアームが休止位置にあるタグボートの側面図である。
【
図6】曳航索を保持する上昇位置にある
図5のタグボートの側面図である。
【
図7】クレーンが休止位置にある
図5のタグボートの上面図である。
【
図9】クレーンが受取人に曳航索を渡す動作位置にある
図5のタグボートの上面図である。
【
図10】
図5のタグボートの操作を制御するためのシステムのブロック図である。
【
図15】堅硬なアイスプライスを有する曳航索の上面図である。
【
図16】柔軟なアイスプライスを有する曳航索の上面図である。
【
図17】クレーンアーム用の支持部を有するガイドビットの斜視図である。
【
図18】
図5のタグボートを操作する方法を示したフローチャートである。
【
図19】
図5のタグボートを操作する方法を示したフローチャートである。
【
図20】
図5のタグボートを操作する方法を示したフローチャートである。
【
図21】
図5のタグボートを操作する方法を示したフローチャートである。
【
図22】
図5のタグボートを操作する方法を示したフローチャートである。
【
図23】
図5のタグボートを操作する方法を示したフローチャートである。
【
図24】
図5のタグボートを操作する方法を示したフローチャートである。
【
図25】
図5のタグボートを操作する方法を示したフローチャートである。
【
図28】パイロット用の携帯型制御ユニットの上面図である。
【
図30】
図28の携帯型制御ユニットのタッチスクリーンのスクリーンショットである。
【
図31】
図28の携帯型制御ユニットのタッチスクリーンのスクリーンショットである。
【
図32】電気接続部が短いクレーンを有するボートの上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1は、支援操作の間の被支援船舶1および複数のタグボート2の側面図である。
図2は、同じ船舶1または別の船舶1であり得る被支援船舶1の上面図であり、1隻の追加のタグボートが被支援船舶1の側面を押している状態を示した図である。
図3は、被支援船舶1の別の上面図であり、2隻のタグボートが被支援船舶1の側面から引っ張っている状態を示した図である。支援操作に関与するタグボート2の数は、被支援船舶1のサイズ、自力で操縦するための被支援船舶1の積載力、および個々のタグボート2によってもたらされ得る引張力(ボラードプル)に依存する。一般的には、タグボート2は、少なくとも40トン、好ましくは少なくとも50トン、さらに好ましくは少なくとも60トンのボラードプルを発生させることができる。被支援船舶1は、例えば、貨物船のような支援を必要とする任意のタイプの船舶1であり得、
図1ではコンテナ船が例として示されている。この例は、船尾6のより近くに排ガス用の煙突4および船首7のより近くにブリッジ5を有するように設計された、いわゆるツインアイランド方式のコンテナ船を示している。コンテナ8は、甲板上に積み上げられた状態で示されており、通常は、甲板の下にも積み込まれる。船体3の側面には、船体3を押すタグボート2によって係合されるのに適した船体上の位置を示すために、「TUG」という文字で印されたストロングポイント9が設けられている。
【0037】
船舶1には、曳航索10を取り付けるために、船舶の側面に沿っていくつかの位置にボラードおよびキャプスタンが設けられる。一般的には、ボラードおよびキャプスタンは、船尾6の近くおよび船首7の近くに、船体3の側面に沿って等間隔に設けられる。曳航索10は、実際の要求に応じて、船舶1の適切な位置に取り付けられる。したがって、曳航索10の一端は船舶1に取り付けられ、曳航索10の他端はタグボート2に取り付けられる。
【0038】
支援操作時には、パイロットは被支援船舶1に乗船し、パイロットはタグボート2の推力動作の制御を担当する。従来の手順では、パイロットは、無線通信を介して個々のタグボートの船長に推力コマンドを出すことになる。
【0039】
本発明の実施形態は、好ましくは無人であり、好ましくは部分的に遠隔制御であり、好ましくは部分的に自律的に動作するタグボート2に関する。タグボート2は、好ましくは、(無線で)受信した指示に応答して部分的に自律的に動作することができ、部分的に直接(無線)遠隔制御下で動作することができる。
【0040】
図4は、タグボート2を制御するためのシステムを示す系統図である。各々のタグボート2には、無線通信手段を装備した電子制御ユニット50が設けられる。関与するタグボート2の数は、1~nの番号で図示されているように、変化し得る。無線通信手段を有するシステムコントローラ250は制御センター200に設けられ、無線通信手段を有するリモートコントローラ150は、例えば、被支援船舶1上のパイロットに提供される。タグボート2は、プログラムされた指示に基づいて自律的に動作し、制御センター200のシステムコントローラ250からの指示に基づいて半自律的に動作し、またはパイロットによって操作される遠隔制御ユニット150からの指示に基づいて直接遠隔制御で動作する。
【0041】
システムコントローラ250は、例えば、陸上の制御センター200に配置され、通常は、タグボート2を視認できる状態にない。システムコントローラ250は、船隊または複数のタグボート2を制御する。システムコントローラ250は、どのタグボート2を作業に送るかを決定し、係船位置から動員位置まで、および動員位置から係船位置までタグボート2のナビゲートを指示する。したがって、システムコントローラ250は、特定の位置までナビゲートするようにタグボート2に対して指示するのに使用され、一実施形態では、タグボート2は、指示を受信した後、自律的に特定の位置までナビゲートする。タグボート2が動員位置に到着すると、タグボート2の制御は、遠隔制御ユニット150を使用するパイロットに引き継がれる。遠隔制御ユニット150は、船舶1の操縦を支援しながらタグボート2を制御するのに使用される。遠隔制御ユニット150は、パイロットによって操作され、パイロットは、一般的には、船舶1の操縦を支援するのに使用されるタグボート2を視認できる状態にある。
【0042】
遠隔制御センター200または遠隔制御ユニット150に信号を送信するクレーン上のカメラにより、遠隔制御センター200のオペレータまたは遠隔制御ユニット150を使用するパイロットの操作が可能になる。
【0043】
図5~
図9は、船舶1の操縦を支援するのに使用され得るタグボート2の一実施形態例である。タグボート2は、スケグ24が設けられた船体23を備える。船体23は、船尾26から船首27まで延在する。船体23には、周方向フェンダ29が設けられる。
【0044】
1つまたは2つのアジマススラスタ28(ノズルドライブ)の形状の1つまたは2つの推進器は、船尾26の近くに設けられ(他の位置も可能である)、任意の所望の方向(水平方向)の推力を発生させる。アジマススラスタ28は、推力(例えば、少なくとも40トンのボラードプル)を発生させるために、内燃機関(ディーゼルエンジン)またはディーゼル電気駆動装置または電気駆動モータに接続される。燃料タンクおよび/またはバッテリも船体23内に収容される。
【0045】
タグボート2には、動力ウィンチ21(この実施形態では、2つの動力ウィンチが1つのシャフト上に並んで設けられる)を収容し、レーダアンテナ31および無線通信用の他のアンテナが設けられたレーダマスト30を支承する上部構造体25が設けられる。上部構造体25はさらに、クレーン22および2つのLIDARセンサ17を支持する。
【0046】
クレーン22は、少なくとも部分的に動力ウィンチ21に巻き上げられる曳航索10を操作するために、すなわち、曳航索10の自由端を持ち上げて曳航索10を被支援船舶1の甲板上の熟練船員または他の乗組員に渡すために使用される。クレーン22の別の役割は、係留ロープを掴んで、タグボート2が接岸したときに陸への電気接続を行うことである。
【0047】
1つの曳航索10は、動力ウィンチ21から、上部構造体25の前方に位置するビット11の開口部まで延在し開口部を通過する。動力ウィンチ21は、好ましくは、ダブルウィンチであり、別の曳航索10(
図7)は、動力ウィンチ21から延在し上部構造体25の後方に位置するビット12の開口部を通過する。
【0048】
ビット11、12は、曳航索10を案内して、正確に曳航索10の巻き上げおよび読み出しを行うために、確実に曳航索10が動力ウィンチ21に対して直角を成すようにする。曳航索10の自由端は、クレーン22の自由端の把持具によって保持される。いわゆる、もやい綱13は、曳航索10の自由端に取り付けられる。もやい綱13は、乗組員によって扱われ、被支援船舶1内の索道器を通過して被支援船舶1上のキャプスタンまで延びることができる軽い紐である。その後、キャプスタンを作動させることにより、重い曳航索10が索道器を通って船舶1の甲板まで引っ張られ得る。
【0049】
上部構造体25は、レーダアンテナ31が設けられたレーダマスト30を支承する。さらに、レーダマスト30には、無線通信のための他のアンテナが設けられる。
【0050】
上部構造体25はさらに、クレーン22を支承する機能を果たす。この実施形態では、クレーン22は、ナックルブームクレーンであるが、任意の他の適切なタイプのクレーンまたはロボットアームを使用することも可能である。一実施形態では、クレーンアームには、放水銃(図示せず)が設けられる、または少なくとも放水銃をクレーンアームに固定する手段が設けられる。
【0051】
タグボート2上のクレーン22、動力ウィンチ21および他の機器は、油圧駆動式であり得る。この点に関して、タグボート2には、電子制御ユニット50の制御下で上記の消耗部品に対して加圧油圧作動液を供給する油圧ポンプまたはポンプ場が設けられる。
【0052】
クレーン22は、好ましくは環状ベース部材35によって、タグボート2の垂直軸を中心として上部構造体25から枢動可能に吊り下げられる。クレーンアームの内側部分32の近位端は、ベース部材35にヒンジ連結され、内側部分32の遠位端は、ヒンジ34によってクレーンアームの外側部分33にヒンジ連結される。クレーンアームの外側部分33は、クレーンの届く範囲を広げるために伸縮自在である。
【0053】
第1の油圧シリンダ36の近位端は、ベース部材35にヒンジ連結され、その遠位端は、外側部分33にヒンジ連結される。第1の油圧シリンダ36は、クレーンアームの上げ下げに使用され得る。クレーンアームは、
図5では下降した休止位置にある状態で示されており、
図6では上昇位置にある状態で示されているが、クレーン22は
図6に示されているよりも高く上昇され得ることは理解されよう。第2の油圧シリンダ37は、伸縮自在の外側部分33の長さを調節するために、外側部分33に沿って延在する。クレーンアームは、
図9では、外側部分が伸長位置にある状態で示されている。
【0054】
治具42は、クレーンアームの自由遠位端に設けられる。一実施形態では、治具42は、把持具であるが、治具42は、交換可能な治具であり、ニーズに応じて異なる目的の治具、例えば、放水銃または電気コネクタ、フック、サーチライトのような治具に交換され得ることは理解されよう。この点に関して、タグボート2には、クレーンアームの自由遠位端に嵌合され得る治具アセンブリが設けられる。治具アセンブリは、タグボート2上のクレーン22の自由端が到達し得る位置に格納されるので、クレーンアームの自由端の端部の治具は、人間のオペレータが現実に存在しなくても変更可能である。
【0055】
クレーンアームには、クレーンアームの位置を示すセンサ(図示せず)が設けられる。一実施形態では、クレーンアームには、クレーンアームに作用する力/負荷を決定するためのセンサ(図示せず)が設けられる。
【0056】
タグボート2には、クレーンアームが作動していないときにクレーンアームが載置され得る、すなわち、クレーンアームのパーツ位置を提供するためのクレーンアーム用の支持体38が設けられる。一実施形態では、支持体38は、前甲板上のビット11の一体部品であり、好ましくは、ヨークの形状を有する。タグボートには、前甲板上の1つの支持体38および後甲板上の1つの支持体39の2つの支持体が設けられ得るので、クレーンアームは、前方位置または後方位置の部品であり得る。支持体39は、好ましくは、ビット12の一体部品であり、ヨークのような形状である。支持体38、39は、クレーンアームの位置を調整するための基準点としての機能を果たす。一実施形態では、電子制御ユニット50は、支持体38または支持体39において規則的な時間間隔でクレーンアームを再補正するように構成される。
【0057】
一実施形態では、曳航索10の自由遠位端には、アイスプライス14が設けられる。曳航索10は、好ましくは、強く、浮くのに十分に軽い合成材料で作られる。このようなタイプの曳航索は、市販されている。ブッシング15は、アイスプライス14に近い位置で曳航索10の周囲に設けられる。ブッシング15およびその機能について、さらに詳細に後述する。
【0058】
図9では、クレーンは、伸長位置のクレーンアームの伸縮自在外側部分33で曳航索10の自由端を保持した状態で示されている。これは、被支援船舶1上の熟練船員に曳航索10の自由端を渡すのに適した位置である。
【0059】
図10は、タグボート2上の制御システムおよび設備のブロック図である。電子制御ユニット50は、測位システム(GPS)、モーションセンサ(または加速力を検知することができる動き参照センサ)、マイクロホンまたはマイクロホン装置、カメラ装置(好ましくはデジタルビデオカメラ)、RADAR31、LIDAR(レーザスキャナ)、ノズル角検出器、第1のRFIDリーダ、第2のRFIDリーダ、および曳航索力センサ、好ましくは、指向性力センサ、クレーン位置センサ、クレーン力センサを含むセンサアレイに接続される。電子制御ユニットはさらに、無線通信装置54、動力ウィンチ21、ノズルドライブ28を駆動するエンジンまたは駆動モータ、ノズルドライブ28(指向性制御角度センサ)、動き補正ユニットおよび把持具42を含むクレーン22に接続される。曳航索力センサは、動力ウィンチ21上のトルクセンサと各々のビット11、12の歪みゲージまたは同様の力測定装置との組み合わせであり得るので、電子制御ユニット50には、曳航索10に加わる引張力の大きさおよび曳航索10によって加えられる引張力の方向が伝えられる。
【0060】
一実施形態では、タグボート2には、好ましくはタグボート2の周囲領域全体を見渡せるように水平面において360°の視界を有する、光学センサ装置またはデジタルカメラ装置が設けられる。カメラ装置は、スペクトルの可視部内および/またはスペクトルの可視部の外側で動作し得る。電子制御ユニット50は、一実施形態では、カメラ装置の信号を制御センター200または遠隔制御ユニット150に無線で送信するように構成される。
【0061】
電子制御ユニット50には、ナビゲーションモジュール、衝突防止モジュールおよび画像認識モジュールが設けられ、これらについては、以下により詳細に説明する。
【0062】
図26および
図27に示されている制御センター200には、例えば、タグボート2上の通信装置54によって送信されたカメラ装置からの信号、および、言うまでもなく、通信装置54によって送信された任意の他の情報を受信するために、通信装置254が設けられる。制御センター200には、表示画面272であって、好ましくはリアルタイムで、さらに好ましくはリアルタイムでかつ表示画面272を360°の円形配列にして、制御センター内の人間のオペレータにカメラ装置の信号を表示するための表示画面272が設けられる。本発明の実施形態では、8つの表示画面272が円形配列で設けられているが、円形配列で8つより少ない数の表示画面を使用することもでき、また円形配列で8つより多い数の表示画面を使用することもできることは理解されよう。さらに、1つの全周囲にわたる表示画面を提供するために、代わりにプロジェクタなどが使用され得る。
【0063】
一実施形態では、例えば、タグボート2の針路における音の発生源(距離ならびに方向)および障害物に関する情報の両方に対して、拡張現実が表示画面277上に重ねられる。
【0064】
タグボート2には、音響センサ、好ましくは水平面において360°の領域の音を捕らえる指向性音響センサ装置が設けられる。一実施形態では、電子制御ユニット50は、指向性音響センサ装置からの信号を制御センター200または遠隔制御ユニット150に送信するように構成される。制御センター200内の電子制御ユニット250は、例えば、拡張現実によって、計器または表示画面上で、検出された音の発生源の方向および位置に関する情報を表示するように構成される。
【0065】
制御センター200には、好ましくはリアルタイムで、さらに好ましくはリアルタイムでかつ空間的に、制御センター200内の人間のオペレータに、無線通信装置254を介して受信した光学センサ装置の信号を再生するために、トランスデューサ(ラウドスピーカ)274が設けられる。その結果、人間のオペレータは、検出された音の発生源の方向の印象を受け取る。
【0066】
さらに、制御センター200には、オペレータがタグボート2の操作を制御するための指示またはコマンドを入力できるようにする少なくとも1つの制御コンソール280が設けられる。制御コンソール280、無線通信装置254、ラウドスピーカ274および表示画面272は全て、電子制御ユニット250に接続される。電子制御ユニット250は、人間のオペレータから制御コンソール280を介して指示およびコマンドを受信し、これらの指示/コマンドを関与しているタグボート2に無線で送信するように構成される。電子制御ユニット250はさらに、表示画面272上に、ラウドスピーカ274を介して、および制御コンソール280内の計器および/またはディスプレイ上に、タグボートから受信した情報を再生するように構成される。
【0067】
タグボート2上の測位システムは、一実施形態では、衛星型測位システム(例えば、GPS)であり、タグボート2は、一実施形態では、測位システムによって決定されたタグボートの地理的位置を制御センター200および/または遠隔制御ユニット150に無線で送信するように構成される。
【0068】
一実施形態では、電子制御ユニット50は、タグボート2を自律的に接岸させるように構成される。この点に関して、電子制御ユニット50は、係船場所または船体23の過負荷を回避するために、少なくとも1隻のタグボート2の付近の環境に的確に反応するように構成される。電子制御ユニットは、特に、加速度情報およびジャーク(加速度の変化、すなわち、時間に対する加速度の導関数)を含む動き参照センサからの信号を使用する。
【0069】
一実施形態では、遠隔位置の制御センター200から少なくとも1隻のタグボート2を制御する方法は、タグボート2を配備することと、遠隔位置の制御センター200を配設することと、遠隔位置の制御センター200から少なくとも1隻のタグボート2に指示を無線で送信することと、タグボート2上で指示を無線で受信することと、タグボート2によって指示を実行することとを含む。
【0070】
一実施形態では、指示を無線で送信することは、特定の位置まで航行するようにとの指示をタグボート2に送信することと、タグボート2が指示を受信することと、タグボート2が特定の位置まで航行することとを含む。一実施形態では、該方法はさらに、好ましくはタグボート2が自律的に現在位置から特定の位置までナビゲートすることを含む、タグボート2が自律的に現在位置から特定の位置まで航行することを含む。
【0071】
一実施形態では、指示を無線で送信することは、一定の距離を置いて被支援船舶1、好ましくは曳航索10に張力をかけずに曳航索10によってタグボート2に接続された被支援船舶を追尾するようにとの指示をタグボート2に送信することを含む。
【0072】
一実施形態では、該方法は、遠隔制御ユニット150から少なくとも1隻のタグボート2に、タグボート2に接続された曳航索10の自由端を被支援船舶1上の受取人、特に、被支援船舶1上の特定の位置にいる受取人に渡すようにとの指示を送信することと、タグボート2が被支援船舶1の甲板上の乗組員に曳航索10の自由端を渡すためにクレーン22を使用して受取人に曳航索10の自由端を渡すこととを含む。
【0073】
一実施形態では、該方法は、遠隔制御ユニット、例えば、パイロットによって操作される被支援船舶1上の携帯型遠隔制御ユニット150からタグボート2に、曳航索10を巻き上げる、または繰り出すようにとの指示を送信することと、タグボート10が動力ウィンチ21の作動によって曳航索10を繰り出すために巻き上げることとを含む。
【0074】
一実施形態では、該方法は、遠隔制御ユニット、例えば、パイロットによって操作される被支援船舶上の携帯型遠隔制御ユニット150から、被支援船舶1に対して所定の大きさおよび方向の推力を加えるためにタグボート2に対する所定の大きさおよび方向の推力コマンドのための指示を送信することと、タグボート2が被支援船舶1に指示された大きさおよび方向の推力を加えることとを含む。
【0075】
一実施形態では、該方法は、遠隔制御ユニット、例えば、パイロットによって操作される被支援船舶1上の携帯型遠隔制御ユニット150から、推力位置および任意で最適な推力角度のための指示を送信することと、タグボート2が指示された推力位置および最適な推力角度まで移動することとを含む。
【0076】
第1のRFIDリーダは、ビット11、12の各々に関連付けられ、第2のRFIDリーダは、クレーン22の自由端に関連付けられる。通信装置54により、電子制御ユニット50は情報を送受信することができる。
【0077】
電子制御ユニット50は、動力ウィンチ21の動作、エンジン/駆動モータの動作(動力)、およびノズルドライブ28の動作(角度)を制御するように構成される。電子制御ユニット50はさらに、クレーン22の動作および把持具(グリッパ)42の動作を制御するように構成される。
【0078】
一実施形態では、カメラ、RADARならびにLIDAR、測位システム、利用可能であればソーナーからの信号は、通信装置54を介して制御センター200内の制御ユニット250またはパイロットの携帯型遠隔制御ユニット150に送信される。
【0079】
クレーン22は、タグボート2の中央に取り付けられるので、前甲板および後甲板において曳航索10を操作することができる。さらに、中央位置に配置することにより、クレーン22は、接岸した状態で、また被支援船舶1上の熟練船員または他の乗組員に曳航索10を渡すときに、側面を超えることができる。
【0080】
電子制御ユニット50は、クレーン上の位置センサおよびモーションセンサおよび/またはタグボートの動き参照ユニットに応答して、またクレーン上のRFIDリーダに応答して、クレーンの動作を制御するように構成される。
【0081】
一実施形態では、クレーン22には、動き補正ユニットが設けられる。一実施形態では、動き補正ユニットには、少なくとも2つの直交軸を中心として枢動し得る要素が設けられ、動き補正ユニットは、少なくとも2つの直交軸を中心として制御可能に要素を枢動させるためのアクチュエータを備える。一実施形態では、クレーン22は、動き補正プラットフォーム上に配置される。すなわち、動き補正ユニットは、動き補正プラットフォームによって形成される。動き補正プラットフォームは、電子制御ユニット50の制御の周囲でプラットフォームを支持する3つ以上の線形アクチュエータを備え得る。別の実施形態では、クレーン22の自由端の動きは、クレーン22のアクチュエータを使用することによって補正される。すなわち、動き補正ユニットは、クレーン22のアクチュエータによって形成される。一実施形態では、タグボート2の船首揺れは、クレーン22の回転によって少なくとも部分的に補正され、前後上下の揺れは、少なくとも部分的にクレーンアームの上げ下げおよび/または伸長収縮によって補正される。
【0082】
モーションセンサ(動き参照ユニット)は、電子制御ユニット50に、タグボート2の動き、例えば、縦揺れ、横揺れおよび船首揺れ、より好ましくは、縦揺れ、横揺れ、船首揺れ、上下揺れ、前後揺れおよび左右揺れを含む動きを伝える。電子制御ユニット50は、クレーンアームの自由端の実質的にグローバル座標系に対する自由な動きを維持するために、タグボート2の移動を補正するように構成される。あるいは、電子制御ユニット50は、被支援船舶1上に搭載されているモーションセンサおよび/または位置センサの情報を受信し得、クレーンアームの自由端の被支援船舶1に対する実質的に自由な動きを維持し得る。一実施形態では、電子制御ユニット50は、タグボート2の実際の航行速度を無視するように構成される。すなわち、タグボートの航行速度によって生じる動きは、補正の際に考慮されない。したがって、クレーンアームの自由端は、タグボート2が被支援船舶1を追尾している間は安定し得る。タグボート2の動きを補正することによって、またはクレーンアームの自由端の被支援船舶1に対する自由な動きを維持することによって、クレーンアームが被支援船舶1の甲板上の乗組員に曳航索10を渡すときに、被支援船舶1の甲板上の乗組員がクレーンアームに取り付けられている曳航索10またはもやい綱13をずっと掴みやすくなる、または捕まえやすくなる。電子制御ユニット50は、陸への電気的接続を確立するときに、クレーンアームの自由端の動きを補正するように構成される。したがって、電子制御ユニット50は、有益な状況において、タグボートの動きによってもたらされるクレーンの自由端の動きを最小限に抑えるように構成される。クレーン22がビット11またはビット12におけるホームポジション(格納位置)から曳航索10の自由端を集めるのに使用されるとき、電子制御ユニット50は、参照用にタグボート2自身の座標系を使用する。電子制御ユニット50は、支持体38または支持体39上の休止位置を使用してクレーンアームの自由端の位置を再補正するように構成される。
【0083】
電子制御ユニット50には、電子制御ユニット52がタグボート2を自律的に現在位置から受信指示位置まで、例えば、支援を必要としている船舶1の近くの位置までナビゲートすることを可能にするナビゲーションモジュールが設けられる。ナビゲーションモジュールは、タグボート2の安全なナビゲートに必要な海図を含み、タグボート2用のナビゲーションシステムを形成する。ナビゲーションモジュールにより、電子制御ユニット50は、タグボート2を係船位置から目標位置まで、例えば、動員位置まで、すなわち、船舶1の操縦を支援するようにタグボート2を配備すべき位置まで、ナビゲートすることができる。さらに、ナビゲーションモジュールにより、電子制御ユニットは、動員位置から係船位置まで戻るようにタグボートをナビゲートすることができる。したがって、電子制御ユニット50は、無線通信装置54を介して指示を受信した時に、タグボート2を係船位置から動員位置まで、および動員位置から係船位置まで自律的に航行させる。タグボート2の針路における障害物との衝突は、電子制御ユニットが衝突防止モジュールを配備することによって回避される。これに関して、以下でさらに詳細に説明する。衝突防止ユニットの支援によって、電子制御ユニット50は、別の船舶、陸地、橋杙または浅海域のような物体との衝突を回避するために、必要に応じて回避行動を取る。
【0084】
ナビゲーションシステムは、好ましくは、COLREG条約の意図の範囲内の全てのシナリオにおいてタグボート2を操縦するように構成された自律ナビゲーションシステムである。COLREG条約に準拠したアルゴリズムは、電子制御ユニット50内に記憶されるので、電子制御ユニット50は、全てのシナリオにおいて安全にナビゲートするために、必要な針路修正を行うことができる。
【0085】
衝突防止モジュールは、例えば、COLREG(海上における衝突の予防のための国際規約に関する条約、1972)のような衝突予防に関する規制情報を含み、規則に従った回避行動を取る。衝突防止モジュールは、電子制御ユニット2がいつどの回避行動を取るべきかを決定するのを可能にする。
【0086】
さらに、電子制御ユニット50には、電子制御ユニット50が船体3の側面のストロングポイントおよび被支援船舶1を示す画像を認識できるようにする画像認識モジュールが設けられる。一実施形態では、電子制御ユニットは、画像認識モジュールの助けを借りて、甲板上の乗組員、すなわち、曳航索10を受け取る準備ができた被支援船舶を認識することができる。
【0087】
図11および
図12は、把持具42の第1の実施形態の2つの側面をより詳細に示した図である。把持具42は、ヒンジピン78で互いに枢動可能に接続された2つのミラー対称部品71を備える。線ばね75は、2つの部品71を一緒に付勢する。2つの部品71の一端は、曳航索10を係合する、または曳航索10上のブッシング15を受容するためのV字形凹部を形成する。V字形凹部79の表面が曳航索10またはブッシング15と接触することで、洗濯ばさみが物干しロープに対して付勢される形と同じように、線ばね75の力に逆らって2つの部品71が互いに離れてヒンジピン78を中心として枢動するように付勢力が生じる。把持具42が曳航索10またはブッシング15を挟んだときに、曳航索10またはブッシング15は、
図11に示されているように、各々の部品71の2つの半円筒状凹部によって形成された実質的に円筒状凹部72内に受容される。実質的に円筒状凹部72のV字形凹部79に最も近い部分は、線ばね75の力に逆らって円筒状凹部72から曳航索10を引き抜きやすくする実質的にV字形の断面を成すような形状にされる。
【0088】
2つの部品71のヒンジピン7を中心とした枢動運動は、電磁制御式、空気圧制御式、または油圧制御式の係止ピン73の作用によって防止され得る。電気式、空気圧式、または油圧式のアクチュエータ74は、係止ピン73が2つの部品71間の円筒状凹部77まで前進しない後退位置と、係止ピンが円筒状凹部77まで前進する前進位置(
図12)との間で係止ピン73の位置を制御する。凹部77は、部品71間の円筒状凹部72と反対側のヒンジピン78の側に配置される。係止ピン72は、凹部77まで前進すると、部品71が互いに離れることを防止するので、大きな力が曳航索10に加えられた場合でも曳航索10は実質的に円筒状凹部72内で保持され得る。
【0089】
図13および
図14は、把持具42の第2の実施形態を示しており、ばねを設ける必要がなく、ヒンジピン78を中心とした2つの部品71の運動は1つまたは2つのダブルの空気圧シリンダまたは油圧シリンダ80の作用によって制御されるという点を除けば、第1の実施形態と同様である。凹部72は、把持具42が能動的に開くことができるため、ばねの力に逆らって曳航索を引き抜く必要がないので、円筒状であり得る。1つまたは2つの空気圧シリンダまたは油圧シリンダ80は、部品71の上方(
図13および
図14の向きで示されている上方の)先端間に延在し、把持具を開くために引張力を加えて曳航索10を受容または解放し、把持具42を閉じるために押す力を加えて、円筒状凹部72内の曳航索10の有無に関係なく把持具42を閉じた状態で維持する。空気圧シリンダまたは油圧シリンダ80の動作は、電子制御ユニット50によって制御される。
【0090】
ヒンジピン78は、把持具42から、クレーンの自由端から把持具42を吊り下げる働きをするヨーク84の対向するアーム内の凹部まで延在する。第1の実施形態の把持具42は、同様にヨークによってクレーンの自由端から吊り下げられ得る。
【0091】
図15は、曳航索10の一実施形態の遠位部分を示す。曳航索10の自由遠位端には、堅硬なアイスプライス14が設けられる。堅硬なアイスプライスは、エンドストップを形成する。構造上の剛性を付与するために、軽金属または頑丈な弾性プラスチックのリング42がアイの中に配置される。堅硬なアイスプライス14によって形成されたエンドストップは、ビット11、12内の開口部18(
図17)を通過することができないような大きさおよび形状であるので、堅硬なアイスプライス14はエンドストップを形成する。このことにより、動力ウィンチ21は、エンドストップがビット11、12に突き当たるまで完全に曳航索10を巻き上げることができる。
【0092】
一実施形態では、動力ウィンチ21には、電子制御ユニット50に結合される回転位置センサ(図示せず)が設けられ、回転位置センサによって、電子制御ユニット50に、繰り出される曳航索10の長さがおおまかに知らされる。
【0093】
一実施形態では、動力ウィンチ21には、力またはトルクセンサが設けられ、電子制御ユニット50は、力またはトルクセンサからの信号を使用して、巻き上げのときに曳航索に加えられる力を制限するように構成される。電子制御ユニット50は、好ましくは、エンドストップに向かって牽引するときに動力ウィンチ21によって曳航索10に加えられる力を制限するように構成される。
【0094】
電子制御ユニット50が動力ウィンチ21に曳航索10を巻き上げるように指示したときに、曳航索10がホームポジション(部品位置)にあるため、動力ウィンチ21上の力センサからの信号の急増が電子制御ユニット50に曳航索10の巻き上げを停止するように伝える。
【0095】
一実施形態では、曳航索10は、その自由端に、または自由端の近くに、第1のRFIDタグ90が設けられる。第1のRFIDタグは、好ましくは、パッシブRFID90タグ90である。タグボート2には、一実施形態では、第1のRFIDリーダ、好ましくは、アクティブRFIDリーダが設けられ、第1のRFIDリーダは、曳航索10の自由端がビット11またはビット12のごく近くにあるときに、すなわち、ホームポジションまたは部品位置にあるときに、RFIDリーダが第1のRFIDタグ90を検出するように配置される。好ましくは、各々のビット11、12の近くに1つずつ、2つの第1のRFIDリーダが設けられる。第1のRFIDタグ90は、好ましくは、パッシブタグであり、第1のRFIDリーダは、好ましくは、アクティブRFIDリーダである。
【0096】
第1のRFIDタグ90は、一実施形態では、堅硬なアイスプライス14内または堅硬なアイスプライス14の位置に設けられる。別の実施形態では、第1のRFIDタグ90は、エンドストップ15の位置に設けられる。
【0097】
第1のRFIDリーダは、エンドストップ15または堅硬なアイスプライス14がビット11またはビット12のごく近くにあるときに、RFIDリーダが第1のRFIDタグ90を検出するように配置される。
【0098】
電子制御ユニット50は、第1のRFIDリーダに結合され、電子制御ユニット50は、巻き上げ動作の間に、第1のRFIDリーダがビット11またはビット12における第1のRFIDタグ90の存在を検出したときに、動力ウィンチ21の動作を終了させるように構成される。
【0099】
一実施形態では、クレーン22には、第2のRFIDリーダ、好ましくはアクティブRFIDリーダが設けられる。第2のRFIDリーダは、把持具42のごく近くに配置されているので、第2のRFIDリーダは、把持具がアイスプライス14の位置またはアイスプライス14の近くで曳航索を掴むのに適切な位置にあるときに、第1のRFIDタグを検出する。したがって、電子制御ユニット50に、把持具42が曳航索10の自由端の近くにある時点が伝えられる。
【0100】
一実施形態では、曳航索10には、曳航索10の長さに沿って、間隔を置いて、好ましくは、規則的な距離間隔を置いて、複数のRFIDタグ90が設けられる。第1のRFIDリーダは、曳航索10の巻き上げまたは繰り出しの間に、複数のRFIDタグのうちのRFIDタグ90がビット11、12内の開口部18(
図17)を通過したときにRFIDタグ90を記録するように配置される。各々のRFID90は、個々の情報を記憶し得るので、試験制御ユニット50は、特定のRFIDタグ90が第1のRFIDリーダを通過したときに、どのくらいの時系列リンクが巻き上げまたは繰り出しを行ったかを正確に判断することができる。したがって、有能な電子制御ユニット50は、第1のRFIDリーダからの信号を使用して、繰り出される曳航索10の長さを非常に正確に制御するように構成され、曳航索10の破損または曳航索10の張力不足による動力ウィンチ21とビット11またはビット12との間の曳航索10の積み重なりのようなエラーを判断することができる。
【0101】
別の実施形態では、曳航索10には、曳航索10の長さに沿って間隔を置いて、好ましくは規則的な距離間隔を置いて配置された複数の光学タグが設けられ、動力ウィンチ21の位置、ビット11、12の位置、または動力ウィンチ21とビット11、12との間で電子制御ユニット50に接続された光学リーダが、繰り出される曳航索10の長さを決定するために光学タグを検出する。
【0102】
図16は、柔軟なアイスプライス14を有する曳航索10の別の実施形態を示す。好ましくは軽金属または頑丈な弾性プラスチックで形成されたブッシング15は、曳航索10に配置され、柔軟なアイスプライス14の近くで曳航索10に固定される。したがって、曳航索10は、ブッシング15を通って延在する。ブッシング15は、柔軟なアイスプライス14に最も近い端部にフランジが設けられ、その反対側の端部にエンドストップ17が設けられる。ブッシング15の主要延長部は、把持具42(
図16には破線で示されている)の把持対象としての機能を果たす。ブッシング15の主要延長部の長さは、把持具42がブッシング15の周囲を掴むことができるのに十分な長さである。エンドストップ17は、ビット11、12内の対応円錐座19に係合するための係合面としての機能を果たす円錐台を備える(
図16および
図17)。ビット11、12内の開口部18は、曳航索10が通過することができる大きさであるが、エンドストップ17が開口部18を通過することができないほどの小さい直径を有する。
図16に示されているように、動力ウィンチ21が曳航索10を引いて巻き上げるときに、エンドストップ17はビット11、12および円錐座表面19と当接し、動力ウィンチ21によって維持される曳航索10の張力により、確実にブッシング15が常にビット11、12から同じ方向に延在するようになる。したがって、曳航索10が完全に巻き上げられたときに、ブッシング15の位置および向きがわかり、常に同じである。このことにより、把持具42はブッシング15の正確な位置を認識するので、大幅に把持具42でブッシング15を掴みやすくなる。
【0103】
支持体38は、好ましくは、ビット11、12の一体部品であり、クレーンアームを支持体38の中心に向けて案内するための2つの先細案内部43を形成する2つの羽根部44で形成されたヨーク形状支持部を備える。ヨークの支持面は、好ましくは、休止(格納)位置で支持面に載置されるクレーンアームの角度と一致するように傾斜している。
【0104】
一実施形態では、電子制御ユニット50に、クレーンアームの操作によって任意の位置からビット11、12に近い第1の参照位置まで把持具42を移動させる指示が出される。電子制御ユニット50に、把持具52が第1の参照位置に到達したときに曳航索10を掴むように把持具を作動させる指示が出される。さらに、電子制御ユニット50に、クレーンアームの自由端の把持具42を第1の参照位置から指示位置まで移動させる指示が出され、指示位置は、好ましくは、遠隔送信器(例えば、パイロットの遠隔制御ユニット150)から通信装置54によって無線で受信される位置である。電子制御ユニット50はさらに、クレーンアームが所望の位置に向けて曳航索の自由端を移動させるのと同時に、曳航索10を繰り出すように構成される。したがって、クレーン22が曳航索10の自由端を格納位置から所望位置まで移動させる間、曳航索10上で一定の張力が維持され得る。
【0105】
電子制御ユニット50は、把持具42が指示位置に到達したときに、および/または把持具42を停止させる/開くためにタグボート2上の投薬装置54が遠隔送信器から確認を受信したときに、すなわち、被支援船舶1の甲板上の乗組員が曳航索10を受け取ったときに、曳航索10を解放するために把持具42を停止させる/開くように構成される。パイロットの遠隔制御ユニット150には、把持具42が曳航索を解放することができるように、曳航索10が渡されたことを示す入力手段が設けられる。あるいは、乗組員は、曳航索10が受け取られたとの肯定応答を送信するために、自分用の携帯型無線通信ユニットを有し得る。
【0106】
一実施形態では、タグボート2には、タグボートに対する座標系においてクレーンまたはロボットアームを補正するための第2の基準点が設けられ、第2の基準点は、支持体38または支持体39のようなタグボート上に設けられた固定構造物であり得る。電子制御ユニット50は、所定の時間間隔で第2の基準点においてクレーン22を再補正するように構成される。
【0107】
電子制御ユニット50は、通信装置54を介して指示を受信したときに、すなわち、曳航索10が受け取られて被支援船舶1から解放されたときに、動力ウィンチ21を作動させることによって曳航索10を巻き上げるように構成される。曳航索10を巻き上げるようにとの指示は、例えば、支援操作が完了し、システム船舶1上の乗組員がシステム船舶1上のボラードまたはキャプスタンから曳航索10を取り外したとパイロットが判断したときに、遠隔制御ユニット150から出され得る。関与している乗組員がタグボート2に、曳航索10が被支援船舶1から解放され、タグボート2によって巻き上げられ得ることを無線で通信することができるように、被支援船舶1の甲板上で曳航索10を操作する乗組員によって、追加の遠隔制御ユニット(図示せず)が携行される場合がある。甲板上で曳航索を操作する乗組員が使用するためのこの追加の遠隔制御ユニットは、一実施形態では、ビーコンXと併用される。
【0108】
電子制御ユニット50は、巻き上げ操作の間、動力ウィンチ21上の回転位置センサからの信号を使用して、利用可能で有れば、第1のRFIDリーダまたは光学リーダからの信号を使用して、繰り出される曳航索10の長さを追跡する。
【0109】
電子制御ユニット50は、ロケーション装置54を介して指示を受信したときに、動力ウィンチ21を作動させることによって曳航索10を繰り出すように構成されるので、タグボート2は、被支援船舶1から最適な距離にある最適な所望の推力位置を推測することができる。曳航索10を繰り出すようにとの指示は、パイロットの遠隔制御ユニット150によって出され得る。
【0110】
一実施形態では、クレーンアームには、デジタルカメラが設けられ、画像認識ユニットは、被支援船舶1の船体上の図形模様を認識する、または被支援船舶1の甲板上の乗組員を認識する、または被支援船舶1上の索道器を認識する、または入渠位置もしくは係船位置を認識するように構成される。一実施形態では、カメラからの信号は、通信装置54を介して遠隔位置の受信者(例えば、制御センター200)に無線で送信される。
【0111】
一実施形態では、タグボート2には、被支援船舶1上のビーコンX(
図3)の位置を検出するためのセンサ(図示せず)が設けられる。被支援船舶1上のビーコンXは、GPSビーコン、レーダービーコン、または被支援船舶1の位置を容易にかつ正確に決定することができる他の適切なビーコンであり得る。ビーコンXは、一実施形態では、曳航索10を受け取るべき被支援船舶1に乗船している乗組員によって携行される。したがって、電子制御ユニット50には、曳航索10が被支援船舶1に渡すべき正確な位置が伝えられる。ビーコンXは、1つまたは複数のビーコンXおよび遠隔制御ユニット150を含むパッケージの一部であり得る。このパッケージは、パイロットによって被支援船舶1に乗船した状態で携行される。パイロットは、遠隔制御ユニットを操作し、パイロットは、曳航索(単数または複数)10を受け取るべき個々の乗組員に単数または複数のビーコンXを配布する。一実施形態では、タグボート2には、曳航索10を受け取る準備ができている乗組員の正確な位置で曳航索10を渡しやすくするために、ビーコンXの有無および正確な位置を検出するための専用のセンサが設けられる。
【0112】
一実施形態では、電子制御ユニット50は、交換可能な治具を選択するようにとの指示を受信したときに、治具アセンブリから交換可能な治具を選択するように構成される。一実施形態では、交換可能な治具を選択するようにとの指示は、クレーン22によって実行される作業に関連する特定の交換可能な治具を選択するための情報を含む。交換可能な治具を選択するようにとの指示は、自律的動作の一部として電子制御センター200から、またはパイロットの遠隔制御ユニット150のような遠隔送信者から出され得る。
【0113】
一実施形態では、遠隔制御ユニット150は、パイロットが遠隔制御ユニット150のユーザインターフェースを介して遠隔制御ユニット150に指示を入力することによって、少なくとも1隻のタグボート2から遠い位置から、例えば、システム船舶1から、少なくとも1隻のタグボート2の動作を無線で制御するように構成される。
【0114】
遠隔制御ユニット150は、少なくとも1隻のタグボート2に推力コマンドを無線で送信するように構成される。電子制御ユニット50は、遠隔制御ユニット150から無線で受信した推力コマンドを実行するために、タグボート2の推進器を制御するように構成される。一実施形態では、推力コマンドは、加えるべき推力の大きさおよび方向を示すベクトルを含む。
【0115】
推力コマンドは、一実施形態では、被支援船舶1の船体3に対するベクトルとして実行される。一実施形態では、電子制御ユニット50は、無効コマンド、すなわち、関与する船舶間の衝突をもたらすコマンドをブロックするように構成される。
【0116】
一実施形態では、遠隔制御ユニット150は、少なくとも1隻のタグボート2に対して、被支援船舶1を追尾するようにとの指示を送信するように構成される。電子制御ユニット50は、受信した指示を実行するために、被支援船舶1と一定の距離を置いて被支援船舶1を自律的に追尾するようにタグボート2を制御するように構成される。被支援船舶1を追尾するようにとの指示は、被支援船舶1を追尾する操作の間に曳航索10に必要な張力に関する指示を含む。
【0117】
一実施形態では、護衛(追尾モード)のときに、タグボートの所望の位置は、被支援船舶1上の基準点からの相対ベクトルとして、または被支援船舶1の近くの任意の点として定義される。
【0118】
電子制御ユニット50は、一実施形態では、遠隔制御ユニット150にセンサデータを送信するように構成され、遠隔制御ユニット150は、情報を受信してパイロットに受信した情報を提示するように構成される。したがって、パイロットには、例えば、タグボート2の正確な位置、加えられる推力の量ならびに推力の方向、および曳航索10の張力が伝えられ得る。
【0119】
図28~
図31は、遠隔制御ユニット150およびその動作を示す。一実施形態では、遠隔制御ユニット150は、タッチスクリーン172付き携帯型タブレットコンピュータ150である。タブレットコンピュータ150は、無線通信装置154、バッテリ電源ユニット、位置センサ(GPS)、およびタッチスクリーン172に結合された電子制御ユニット155を備える。
【0120】
一実施形態では、遠隔制御ユニット150は、タグボート2が被支援船舶1の位置を識別することができるように、すなわち、タグボート2が被支援船舶1の近くの動員位置に到達しやすくなるように、遠隔制御ユニット150の(GPS)位置をタグボート2に送信するように構成される。
【0121】
電子制御ユニット155は、表示画面上に船体の輪郭の形で被支援船舶1を表示すると共に、
図28に示されているように、航跡図に被支援船舶1に接続されたタグボート2(TUG1、TUG2、・・・TUGn)の位置を表示するように構成される。被支援船舶1の所望の係留位置は、例として、係留位置が破線で示された船舶1の輪郭で示されている。パイロットは、タッチスクリーンを使用して被支援船舶1を拡大表示して、曳航索10が取り付けられる被支援船舶1上の位置を選択することができる。可能な取付位置は、
図30のスクリーンショットに示されているように、被支援船舶1の輪郭内の破線円で示されている。パイロットは、タッチスクリーン172を使用して接続位置を変更することができ、パイロットは、関与しているタグボート2に指示を送信するためにタッチスクリーン172上のタグボート2の1つを選択することができる。パイロットは、関与しているタグボート2をタッチスクリーン上の別の位置に移動させることによって、タグボート2の所望の位置を変更することができる。
【0122】
図31は、特定のタグボート2が選択されたときのタッチスクリーン172上の情報を示したスクリーンショットである。実線ベクトルは、関与しているタグボート2(この特許のケースではTUG1)によって加えられた現在の推力の大きさおよび方向を示している。示されている現在の推力の大きさおよび方向は、(もしあれば)直近で出された推力指示に従う、またはタグボート2上のセンサによって検出された曳航索10上の力の大きさおよび/または方向に従うものであり得る。
【0123】
パイロットは、タッチスクリーン172を使用することによって、
図31に破線ベクトルで示されるように、新しい推力の大きさおよび方向を示すことができる。パイロットは、タッチスクリーン172上に「変更を実行する」と表示された仮想ボタンを押すことによって、関与しているタグボート2に対する新しい推力指示の変更および送信を実行することができる。
【0124】
タグボート2上の通信装置54が遠隔制御ユニット150から新しい推力コマンドを受信したときに、電子制御ユニット50は、推力コマンドに応答してエンジン/モータおよびアジマススラスタ28を制御して、被支援船舶1に対してある大きさおよび方向の推力を加える。
【0125】
遠隔制御ユニット150はさらに、タグボート2に対して被支援船舶を追尾するコマンドを出すためにパイロットによって使用され得る。無線通信装置54によって被支援船舶を追尾する指示を受信することに応答して、電子制御ユニット50は、指示に基づいてエンジンおよびアジマススラスタ(ノズルドライブ)28を操作する。したがって、電子制御ユニット50は、タグボート2に一定の距離を置いて被支援船舶1を追尾させる、さらに好ましくは、電子制御ユニット50は、タグボート2に一定の距離を置いて、かつ被支援船舶1に対する一定の相対位置で、被支援船舶1を追尾させる。
【0126】
遠隔制御ユニット150には、一実施形態では、タグボート2上のマイクロホン(装置)によって拾われた音を再生する、またはパイロットがタグボート2から受信する必要のある他の情報を再生するためのラウドスピーカが設けられる。
【0127】
一実施形態では、タグボート2には、スプレッダバー111(
図32)を使用してタグボート22を陸110上のボラード112に固定する自動係留システムが設けられる。クレーン22は、スプレッダバー110を操作する、すなわち、タグボート上またはタグボートの位置からボラード112の後ろ(タグボート2から見て後ろ)の位置までスプレッダバーを移動させるのに使用される。係留索は、スプレッダバー111の各々の端部に取り付けられ、係留索は、好ましくは、1つまたは複数の小型動力ウィンチ(図示せず)を含む自動張力付与システムを介して、タグボート2に固定される。
図18は、タグボート2を自動的に係留および解放する方法の一実施形態を示す。タグボート2が接岸状態にあるとき、タグボート2は、通信装置54を介して任務命令を受信し、電子制御ユニット50は、任務目的を処理して航路を計画する。次に、電子制御ユニット50は、何らかのシステムエラーまたは近くの障害物が存在するかどうかを確認して、何らかのシステムエラーまたは近くの障害物が存在する場合、電子制御ユニット50は、接岸状態で留まることを決定し、通信装置54を介して制御センター200にその問題を報告して、プロセスが終了する。何らかのシステムエラーまたは近くの障害物が存在しない場合、電子制御ユニット50は、自動係留システムを作動させて、陸からタグボートを解放する。次に、任務が実行され、電子制御ユニットは、任務が完了したかどうかを確認する。任務が完了した場合、電子制御ユニット50は、帰りの航路を計画して実行することによって係船場所まで戻るようにタグボート2を制御する。係船場所の近くでは、電子制御ユニットは、状況を認識するために利用可能なセンサ信号を使用して、タグボートを接岸させるように慎重に操縦する。その際に、電子制御ユニット50は、自動係留システムを作動させてタグボート2を陸に繋ぎ、プロセスはブロック「接岸」に戻る。
【0128】
図19は、タグボート2が待機位置にある状態で開始され、その後、通信装置54を介して命令を受信するタグボート2の操作方法を示すフローチャートである。電子制御ユニット50は、任務目的を処理し、航路を計画して実行する。衝突防止システムによって障害物が検出された場合、以下でさらに詳細に説明するように、電子制御ユニット50は、必要に応じて回避行動を取って新しい航路を計画する。タグボート2が被支援船舶1に近くに到着すると、タグボート2は被支援船舶1上のパイロットからの新しい指示/コマンドを待つ。
【0129】
図20は、被支援船舶1の近くにいる状態で、曳航索10に張力をかけて被支援船舶1を追尾する指示を受信するタグボート2の操作方法を示すフローチャートである。次のステップで、電子制御ユニット50は、利用可能なセンサ情報を使用して、曳航索10上の張力が規定範囲内にあることを確認する。張力が規定範囲内である場合、電子制御ユニットは、タグボート2が、一定の距離を置いて、曳航索10に必要な張力がかけられた状態で被支援船舶1を追尾するように制御を続ける。張力が最小閾値未満である場合、電子制御ユニット50は、曳航索10上の張力を増加させるためにタグボート2の操作を制御する。曳航索10上の張力が最高閾値を超える場合、電子制御ユニット50は、曳航索10上の張力を減少させるためにタグボート2の操作を制御する。曳航索10の張力変更は、例えば、エンジン/モータがアジマススラスタ28に送る動力を変化させることによって達成される。
【0130】
図21は、被支援船舶1の近くの待機位置にいる状態で、曳航索10を被支援船舶上の特定の位置に渡すようにとの指示を受信するタグボート2の操作方法を示すフローチャートである。この点に関して、電子制御ユニット50は、例えば、曳航索10を受け取る準備ができている被支援船舶1の甲板上の乗組員を識別するために、ビーコンXを使用して、またはカメラおよび画像処理ソフトウェアを使用して、被支援船舶1上の受渡地点を識別する。次に、電子制御ユニット50は、タグボート2を所定位置へと、すなわち、識別された受渡地点の近くまで航行させるようにタグボート2を制御する。次に、電子制御ユニット50は、クレーンアームを伸長するための基準が満たされていることを確認する。クレーンアームを伸長するための基準が満たされていない場合、電子制御ユニット50は、タグボートの位置を調整する、またはクレーン22の安定性(動き補正)を調整する。クレーンアームを伸長するための基準が満たされている場合、電子制御ユニット50は、タグボートの位置を維持し、クレーン操作を開始および/または継続して、安全基準が範囲外であるかどうかを確認する。安全基準が範囲外である場合、クレーン操作は終了する。次に、タグボート2ならびに/もしくはクレーン22の位置が調整され、クレーン2の安定性が調整される、およびまたは安全基準を満たすために他の基準が調整される。安全基準が範囲内である場合、曳航索10が受け取られたという肯定応答を通信装置54が被支援船舶1から受信するまで、クレーン操作は継続される。この肯定応答が受信されなかった場合、クレーン操作は継続される。肯定応答が受信されると、クレーン操作は終了し、クレーンは収縮されて、
図5に示されている休止位置で格納される。
【0131】
図22に示されているように、電子制御ユニット50は、曳航索10が渡されたとの肯定応答を受信した後、曳航索10を繰り出しながらタグボート2と被支援船舶1との間の距離を調整する。このプロセスは、必要な距離に達するまで継続される。必要な距離に達すると、プロセスは、被支援船舶1からの推力コマンドを待つプロセスに移る。
【0132】
図24は、推力コマンドが受信されるときのプロセスを示す。タグボートは、曳航索10が被支援船舶1に接続された状態で待機位置にある。電子制御ユニットは、電子制御ユニット150から通信装置54を介してパイロットによって出された推力コマンドを受信する。推力コマンドは、加える必要のある推力の大きさおよび方向を示す推力ベクトルを含む。一実施形態では、推力コマンドはさらに、推力位置、すなわち、推力コマンドを実行すべき被支援船舶1に対する位置を含み得、推力コマンドはさらに、推力角度を含み得る。あるいは、電子制御ユニットは、最適な推力角度を決定するように構成され得る。電子制御ユニット50は、推力コマンドを受信したときに、タグボート2を推力位置まで移動させるように制御する。次に、電子制御ユニット50は、タグボート2が推力位置および角度に達したことを確認する。タグボート2が推力位置に達していない場合、電子制御ユニットは、タグボート2の位置を調整して、最適な推力角度まで船体を回転させる。タグボート2が推力位置および角度に達したときに、電子制御ユニット50は、曳航索10が必要な張力に達するまで、曳航索10に加わる推力を徐々に増大させる。その際に、電子制御ユニット50は、曳航索10上の必要な張力を維持して、被支援船舶1から(遠隔制御ユニット150から)次のコマンドを待つと同時に、曳航索10上の張力を維持するために推力調整が必要であるかどうかを判断する。新しい推力コマンドが遠隔制御ユニット150から受信された場合、電子制御ユニットは、タグボート2の位置を調整して、最適な推力角度まで船体を回転させる。次に、プロセスは、ボックス「推力位置に達したか?」まで戻り、プロセスは繰り返される。推力コマンドが受信されない場合、電子制御ユニットは、推力任務が完了したかどうかを確認する。推力任務が完了していない場合、プロセスはボックス「被支援船舶からコマンドを待つ。推力調整が必要か?」に戻る。推力任務が完了した場合、プロセスはボックス「待機位置に移動する」に戻る。
【0133】
図24のプロセスは、被支援船舶の船体3上のストロングポイント9をタグボート2の船首27と係合させることで推力がタグボート2によって加えられることを除いて、実際には
図25のプロセスと同じである。説明したように、電子制御ユニット50は、船体3上の印を識別するためのカメラおよび画像認識ソフトウェアを使用してストロングポイント9を識別する。
図24のプロセスでは、必要な推力が加えられたこと確認するために曳航索10上の張力を使用することができない。その代わりに、電子制御ユニットは、タグボート2のルックアップテーブルまたは数学モデルを使用して、被支援船舶1の船体3に加えられる推力の必要量および方向を達成するように推進器を制御する。
【0134】
図25は、推力任務が完了したときに曳航索10を解放するプロセスを示す。電子制御ユニット50は、曳航索10が被支援船舶1から解放されたとの肯定応答の受信を待つ。この際に、制御ユニット50は、曳航索10を巻き上げるように動力ウィンチ21を作動させる。電子制御ユニット50は、巻き上げの間に、上述したように、曳航索50が完全に巻き上げられたかどうか、および曳航索10の自由端が格納位置にあることを確認する。曳航索10が完全に巻き上げられていない場合、巻き上げプロセスは継続される。曳航索10が完全に巻き上げられると、電子制御ユニット50は、遠隔制御ユニット150を介して被支援船舶1から、または制御センター200から次のコマンドを待つ。
【0135】
図32は、陸110に係留されたタグボート2(クレーン22またはロボットアームが設けられた任意の他のタイプのボートであり得る)を示す。スプレッダバー111に接続された係留索は、ボート2を陸110に固定するのに使用される。クレーン22は、この実施形態では、ボート2が係留されたときに陸110への接続を確立するように構成される。陸110への接続は、電気的なデータ接続および/または電力接続であり得る。電子制御ユニット50は、クレーン22を使用して、陸への電気的接続を確立するように構成される。電子制御ユニット50は、ボート2が係留されたときに、このプロセスを自律的に実行するようにプログラムされ得、電子制御ユニット50はさらに、ボートが離岸しつつあるときに電気的接続を切断するように構成される。電子制御ユニット50は、接続を確立するためにコネクタを陸上の接続点と接続するように構成される。一実施形態では、コネクタは、誘導接続を確立するためにコイル95で形成される。陸110上の接続相手は、陸(岸壁など)上の対応電極99のコイルである。コイル95には、電極99に適合するサイズおよび形状の開口部が設けられる。コイル95には、把持要素97が取り付けられる。把持要素97は、ブッシング15と同様または同一の形状およびサイズを有する。したがって、把持要素97は把持具42と合致し、そのことにより、コイル95を把持具42で操作することができる。コイル95には、ボート2上に設けられたケーブルリール98まで延在する電力ケーブル96が取り付けられ、ケーブルリール98は、ボート2の電気系統に接続される。コイル95は、使用されていないときは、
図31の破線で示されているように、クレーン22によってボート2の甲板上の単純電極91の上に配置される。
【0136】
電子制御ユニット50は、把持具42および把持要素97を使用してコイル95をボート2の甲板から持ち上げて、陸上の電極99に向けて電極99の上までコイル95を移動させるように構成される。したがって、誘導電気的接続は、電力および/またはデータを送信するのに使用され得る陸で確立される。
【0137】
電子制御ユニット50は、ボートが係留された状態で電気的接続を維持するように構成されるので、例えば、ボート2に搭載されているバッテリを充電することができ、ボート2に搭載されている電気機器に電力を供給することができる。電子制御ユニット50は、コネクタ95がコイル99の形態の接続点に接続された状態で陸に対するボート2の移動を調節するために、クレーン22アームを自由に移動させることができる。
【0138】
電子制御ユニット50は、ボート2が離岸しなければならない、例えば、作業を開始しなければならないときに、電気的接続を切断するように構成される。電子制御ユニット50は、把持具42を使用して把持要素97を掴み、岸壁のコイル付き電極99からコイル95を持ち上げて、甲板上の電極91に向けて電極91の上までコイル95を移動させるように構成される。
【0139】
一実施形態では、ケーブルリール98は、弾性手段または他の適切な手段を使用して、電力ケーブル96上の所定量の張力を維持しながら電力ケーブル96の巻き上げおよび繰り出しを自動的に行う。
【0140】
一実施形態では、タグボート2は、曳航索10上の過負荷による転覆または沈没を自動的に防止するように構成される。この点に関して、タグボート2には、曳航索10がタグボート2に及ぼす引張力の大きさおよび方向を検知するように構成されたセンサ装置が設けられる。このセンサ装置は、動力ウィンチ21に加わるトルクを決定する動力ウィンチ21上のセンサと、特にタグボート2に曳航索が及ぼす力の方向を決定するのに役立つビット11、12における歪みゲージなどとの組み合わせであり得る。さらに、タグボート2には、タグボートの向きを検知するように構成されたセンサ装置が設けられる。この目的のために、モーションセンサ(エモーション参照ユニット)が使用され得る。電子制御ユニット50は、上記センサの信号を受信し、電子制御ユニット50に、推進器によって生成された推力の大きさおよび方向が伝えられる。電子制御ユニット50は、検知された推力の大きさならび方向、検知された引張力の大きさならびに方向、および検知されたタグボートの向きに基づいて、タグボート2が安全閾値を超えているかどうかを判断する。安全閾値は、タグボート2の水平線に対する最大傾きを含み得る。
【0141】
一実施形態では、安全閾値を超えていると電子制御ユニット50が判断した場合に、電子制御ユニット50は、推力の大きさを低減し、および/または推力の方向を変更する。好ましくは、電子制御ユニットは、通信装置54を介して、この推力の大きさの低減およびまたは推力の方向の変更を制御センター200または遠隔制御センター150に無線で伝える。
【0142】
一実施形態では、タグボート2には、電子制御ユニット50からのコマンドに応答して、タグボート2を曳航索10から切り離す装置が設けられ、好ましくは、該装置は、曳航索10を切断する器具を備える。切断することによってタグボート2を曳航索10から切り離す装置は、好ましくは、曳航索10を切断するために、ナイフもしくは斧など、または一般にポリマー系の曳航索10に熱を加える要素を含む。
【0143】
電子制御ユニット50は、好ましくは、タグボート2が第1の安全閾値より高い第2の安全閾値を超えたと電子制御ユニット50が判断したときに、曳航索10を切断するように構成される。一実施形態では、第1の安全閾値ならびに第2の安全閾値はタグボートが転覆するリスクであり、および/または第1の安全閾値ならびに第2の安全閾値はタグボートが沈没するリスクである。
【0144】
一実施形態では、電子制御ユニット50は、タグボート2の挙動をシミュレートするコンピュータモデルに基づいて、タグボート2が転覆または沈没するリスクを判断するように構成される。この点に関して、電子制御ユニット50には、推力、曳航索の力ならびに方向、および任意で波に反応したタグボート2の挙動をシミュレートするタグボート2の数学モデルが設けられ得る。
【0145】
したがって、一実施形態では、電子制御ユニット50は、タグボート2の推進器によって生成された推力の大きさおよび方向を決定し、曳航索10によってタグボート1に加えられた引張力の大きさおよび方向を決定し、タグボート2の向きを決定し、推力の大きさおよび方向と、引張力の大きさおよび方向と、タグボート2の向きとの組み合わせが安全閾値を超えているかどうかを判断する。電子制御ユニット50はさらに、タグボート2が安全閾値を超えるのを防止するために、推力の大きさおよび/または方向を調整するように構成され得る。電子制御ユニットはさらに、安全閾値を超えたときに曳航索10を切断するように構成され得る。
【0146】
一実施形態では、ボートまたは船舶(任意のタイプのボートまたは船であり得、タグボート2である必要はない)には、例えば、他のボートまたは船舶のような障害物との衝突を回避するように乗組員を支援し得る衝突防止システムが設けられる。一実施形態では、ボートまたは船舶は、第1のリスクレベルを超えた場合に乗組員に警告を発するように構成され、一実施形態では、ボートまたは船舶はさらに、第1のリスクレベルより高い第2のリスクレベルを超えたときに乗組員が回避行動を取った場合に回避行動を取るように構成される。さらに、衝突防止システムは、自律的動作するボートまたは船舶で使用され得、この場合、衝突防止システムは、第1のリスクレベルを超えたときに遠隔の受信者に無線で送信される警告を発し、第2のリスクレベルを超えたときにナビゲーションシステムが回避行動を取る。
図33は、衝突防止システムの機能を示すために図上でシナリオを示す。
【0147】
図33に示されているように、衝突防止システム(電子制御ユニット50の一体部品であり得る)は、ボート2の周囲の第1の衝突ゾーン80を指定し、さらにボート2の周囲の第2の衝突ゾーン81を指定しており、第2の衝突ゾーン81は第1の衝突ゾーン80を取り囲む。第1の衝突ゾーン80の形状およびサイズと、第2の衝突ゾーン81の形状およびサイズは、ボートまたは船舶2の速度および船首方向に依存する。ボートまたは船舶2の速度および船首方向は、ベクトル82で示されている。
【0148】
第1の衝突ゾーン80および第2の衝突ゾーン81は、ボートまたは船舶の船首方向に向かってより大きく、ボートまたは船舶2の速度が増すにつれて少なくとも船首方向に向かってより大きくなり、好ましくは、さらに船首方向の横断方向に向かってわずかに大きくなる。
【0149】
図33に示されているように、衝突防止システムは、例えば、RADAR、LIDAR、およびカメラのようなボート2上のセンサを使用して複数の障害物を検出している。この例では、検出された障害物は、プレジャーボート(ヨット)85、漁船87、貨物船86、および島88を含む。しかしながら、これは、可能性のある障害物の種類の単なる例に過ぎず、他の障害物の種類も検出可能であることは理解されよう。
【0150】
衝突防止システムは、カテゴリを各々の検出された障害物に割り当てるように構成される。カテゴリの例は、例えば、水上乗り物、固定構造物、浅海域、陸であり、カテゴリは、好ましくは、ボート、船舶を含む水上乗り物の複数のカテゴリを含み、前記ボートの複数のカテゴリは、さらに好ましくは、漁船、タグボート、スピードボート、ヨットおよび帆走ヨットを含み、前記船舶のカテゴリは、貨物船、海軍船艇、クルーズ船およびフェリーを含む。しかしながら、このリストは単なる例に過ぎず、このリストは網羅的リストでないことは理解されよう。
【0151】
各々のカテゴリには、例えば、好ましくは(利用可能であれば)検出障害物のナビゲーション計画に対する、また(利用可能であれば)検出障害物の数学モデルを使用した、検出障害物の位置変更、針路変更および/または速度変更の可能性に関する情報が関連付けられている。各々のカテゴリには、好ましくは検出障害物の検出された速度および船首方向(検出されれば)に対して、第1の衝突ゾーンならびに第2の衝突ゾーンの形状およびサイズに関する情報が関連付けられている場合もある。
【0152】
一実施形態では、ナビゲーションシステムは、検出障害物の針路を追跡するように構成される。一実施形態では、ナビゲーションシステムは、好ましくは障害物が配置されているカテゴリに基づいて、検出障害物の針路および/または速度の変更の可能性を決定するように構成される。
【0153】
ナビゲーションシステムは、決定されたカテゴリおよび検出障害物の速度に基づいて、各々の検出障害物の周囲の衝突ゾーン83を決定する。
【0154】
図33の例では、ボート2は、計画航路78を有する。この航路78を取った場合、ナビゲーションシステムは、しばらくしてプレジャーボート85の衝突ゾーン83がボートの第2の衝突ゾーン82と重なることを検出する。その際に、衝突防止システムは、遠隔制御センター200および/または遠隔制御ユニット150に警告を無線で送信する。ボート2は、遠隔制御センター200および/または遠隔制御ユニット150から無線指示を受信しなければ、計画された針路78を進む。このような航路変更の無線指示が受信されなければ、衝突防止システムは、しばらくして、プレジャーボート85の衝突ゾーン83がボート2の第1の衝突ゾーン80と重なることを検出し、その際に、衝突防止システムは、好ましくはCOLREGに従って、確実にボート2が安全距離を置いてプレジャーボート85の後ろを通過する新しい航路79を進むことで、回避行動を取る。回避行動を決定するために、衝突防止システムは、好ましくは(入手可能であれば)ボートまたは船舶2の数学モデルを使用して、ボートまたは船舶2の航行制限を考慮に入れる。
【0155】
同時に、衝突防止システムは、好ましくは標準海事VHF通信(例えば、緊急安全メッセージに使用されるチャンネル16)のようなVHF通信を使用して、好ましくは、例えば、「IMO標準海事航海用語集」のような国際基準ルートに従って、ルート変更を放送する。 両方の船舶が同じ衝突防止システムを有する場合には、データ交換に標準通信プロトコルが使用される。
【0156】
一実施形態では、携帯型制御ユニット150は、被支援船舶から従来型のタグボートへの従来のVHF通信を向上させるのに使用され得る。該システムは、パイロットが動的な位置決め方式でタグボート2および被支援船舶1を含むシステム全体を制御するようにとのコマンドを出すことができるように構成される。正式な制御ユニット150上のインターフェースは、DP操作を支援し、(被支援船舶1の)船長およびパイロットが利用できる位置データを強化するために、追加のセンサを含み得る。
【0157】
一実施形態では、タグボート2には、自動アンカリングシステム(図示せず)が設けられる。自動アンカリングシステムには、安全機能が付与され得、電子制御ユニット50は、一実施形態では、セーフフォールバック(例えば、欠陥モードがこの動作を支援する)として、自動アンカリングシステムを始動させるように構成され得る。
【0158】
一実施形態では、タグボート2は、完全な無人水上艇(USV)である。すなわち、タグボート2は、乗組員が乗船せずに操作され得、場合によっては、遠隔制御センサ200または遠隔制御ユニット150のような遠隔制御ステーションからの指示によって支援され得るように自動化される。遠隔制御ステーションの設備が整っているため、1人のオペレータが全ての作業シナリオにおいてタグボート2を安全に操縦する、または監視することができる。オペレータは、制御ステーションからタグボート2の周囲の操作領域を360°見渡すことができ、好ましくは、同時に360°の領域の音を捕らえることができる。
【0159】
通信は、高い信頼性および迅速かつ効果的な通信のための帯域幅を提供する。一実施形態では、通信システムは、複数の異なる通信チャネルを利用するトポロジを使用することによって、それ自体が冗長システムになる。二次的なフォールバックオプションとして、衛星型通信システムが設けられる。
【0160】
ボート、タグボート、船舶、および方法の好適な実施形態をこれらが展開されている環境に関して説明したが、これらは本発明の原理を説明する例に過ぎない。さまざまな実施形態の要素は、他の種類の要素と組み合わせてこれらの要素の利益を享受するために他の種類の要素の各々に組み込まれてよく、実施形態におけるさまざまな有益な特徴は、単独で、または互いに組み合わせて採用されてよい。1つのコントローラまたは制御ユニットは、複数のコントローラまたは複数の制御ユニットの組み合わせで形成されてよい。本発明の精神および添付の特許請求の範囲から逸脱せずに、他の実施形態および構成が考案されてよい。特許請求の範囲において、用語「備える」は、他の要素またはステップを除外するものではなく、不定冠詞「a」または「an」は、複数を除外するものではない。特定の手段が互いに異なる独立請求項の中で述べられているということだけでは、利点をもたらすためにこれらの手段の組み合わせを使用することができないということを示さない。