(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-16
(45)【発行日】2022-06-24
(54)【発明の名称】スライダ、ステージ装置、産業機械、及びスライダの反り抑制方法
(51)【国際特許分類】
F16C 32/06 20060101AFI20220617BHJP
B23Q 1/38 20060101ALI20220617BHJP
【FI】
F16C32/06 A
B23Q1/38 Z
(21)【出願番号】P 2018196799
(22)【出願日】2018-10-18
【審査請求日】2021-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】593206986
【氏名又は名称】株式会社関ヶ原製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】北村 圭史
(72)【発明者】
【氏名】松岡 大記
(72)【発明者】
【氏名】荻野 正
(72)【発明者】
【氏名】小林 一三
(72)【発明者】
【氏名】竹内 博之
【審査官】糟谷 瑛
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-127699(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0007234(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 32/00
B23Q 1/00
G03F 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
案内部材に沿って相対的に移動する空気軸受を有する石製のスライダであって、
前記空気軸受の空気軸受面を第1面とし、
前記第1面に対して前記案内部材とは逆の表面である第2面と、
前記第2面に対して空気を供給する空気導入部と、
が設けられているスライダ。
【請求項2】
前記第2面を覆うカバー部材を有する請求項1に記載のスライダ。
【請求項3】
前記カバー部材と前記第2面の間に隙間が形成されており、その隙間に前記空気導入部から供給された空気を溜める部材が設けられている請求項2に記載のスライダ。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のスライダを有するとともに、前記第1面に沿って該スライダを案内する案内部材を有するステージ装置。
【請求項5】
第1スライダと、第1スライダの移動方向とは交差して移動する第2スライダを備えたステージ装置であって、
第1スライダは、請求項3に記載のスライダとし、
第2スライダは、請求項2に記載のカバー部材を有するスライダとし、
請求項2に記載のカバー部材が第1スライダの移動を案内する案内部材とした請求項4に記載のステージ装置。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載のステージ装置を有する産業機械。
【請求項7】
案内部材に沿って相対的に移動する空気軸受を備える石製のスライダの反り抑制方法であって、
前記空気軸受の空気軸受面を第1面とし、前記第1面に対して前記案内部材とは逆の表面を第2面とし、
前記第2面に空気を導入する手段を有して反りを抑制するスライダの反り抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スライダ、ステージ装置、産業機械、及びスライダの反り抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高精度な測定装置、検査装置、工作機械、加工装置、及び半導体製造装置等の産業機械では、測定対象物、検出器、工具、加工対象物等を高精度に移動させて位置決めすることが行われている。このため、上記の移動及び位置決めにおいて、摩擦等の影響を受けないように空気軸受を有するステージ装置が用いられている(特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
空気軸受を有するスライダは、鋳鉄や石製からなり、ブロック状に形成されていることが多い。特に、石製のスライダは、鋳鉄と異なり、さび等の経年変化がほとんどないこと、耐摩耗性が鋳鉄よりも高いこと、傷がついても「かえり」が生じないことから平面度の狂いがほとんどないこと等の利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-120685号公報
【文献】特開平11-294456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、石製のスライダは、平面度が確保されているものの、その表面は微視的に観察すると、細かな凹部を全体にわたって多数有している。この凹部内には、周囲環境により水分が溜まることがある。
【0006】
図18(a)は、スライダ100がレール102上に配置された状態を示している。スライダ100は、内部に空気流路101が形成されている。空気流路101は、スライダ100のレール102に対向する空気軸受面104側に給気孔105が設けられている。空気流路101には、圧縮空気源から圧縮空気(ドライエアー)が供給されており、該圧縮空気は、給気孔105からレール102と空気軸受面104間に給気される。
【0007】
この結果、空気軸受面104は、給気された圧縮空気(ドライエアー)に晒される。なお、空気軸受で使用される圧縮空気は、不純物、水分等が含まれないようにフィルター及びドライヤ等により清浄化されたものであるため、空気軸受面104は乾燥がしやすくなる。
【0008】
すなわち、前記多数の凹部内に水分があった場合、この後の空気軸受面104側の乾燥により収縮し、この収縮によりスライダ100が凹形状に反ることがある(
図18(b)参照)。なお、
図18(a)では、各部材の間隔は実際よりも誇張して間隔を拡げて図示されているとともに
図18(b)では実際よりも分かりやすいように変形を誇張して図示されている。圧縮空気の空気軸受面104とレール102間の軸受隙間は数μm~20μm程度であり、一方、スライダ100の空気軸受面の平面度は、μmオーダであるが、前記凹形状の変形による軸受隙間への悪影響は大きい。このような現象は、スライダ100の長手方向が、レール等の案内部材によりスライダが案内される移動方向と一致している場合は、その変形量は、短手方向よりも大きくなることから、移動時にスライダ100は案内部材と干渉する虞がある。
【0009】
本発明の目的は、上記課題を解決して、反りを抑制することができる石製のスライダ、ステージ装置、産業機械、及びスライダの反り抑制方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記問題点を解決するために、本発明のスライダは、案内部材に沿って相対的に移動する空気軸受を有する石製のスライダであって、前記空気軸受の空気軸受面を第1面とし、前記第1面に対して前記案内部材とは逆の表面である第2面と、前記第2面に対して空気を供給する空気導入部と、が設けられているものである。
【0011】
上記の構成によれば、スライダの第1面(空気軸受面)が、空気軸受で使用される空気により乾燥するが、スライダの第2面が空気導入部から供給された空気により第2面も乾燥させることができ、スライダの反りを抑制する。
【0012】
また、前記第2面を覆うカバー部材を有していてもよい。
上記の構成によれば、第2面とカバー部材の間に空気導入部から空気が供給され、この空気により第2面も乾燥させることができ、スライダの反りを抑制する。
【0013】
また、前記カバー部材と前記第2面の間に隙間が形成されており、その隙間に前記空気導入部から供給された空気を溜める部材が設けられていてもよい。
上記の構成によれば、カバー部材と前記第2面の間の隙間には、空気導入部から供給された空気を溜める部材が設けられていることにより、前記隙間に空気導入部から供給された空気を溜めることができる。この溜められた空気により、第2面も乾燥させることができ、スライダの反りを抑制する。
【0014】
また、本発明のステージ装置は、前記スライダと、前記スライダの前記第1面に沿って該スライダを案内する案内部材を有するものである。
上記の構成によれば、反りが抑制されたスライダを備えたステージ装置とすることが可能となる。
【0015】
また、ステージ装置は、第1スライダと、第1スライダの移動方向とは交差して移動する第2スライダを備えたものであって、第1スライダは、上記記載のスライダとし、第2スライダは、上記記載のカバー部材を有するスライダとし、前記カバー部材が第1スライダの移動を案内する案内部材としたステージ装置としてもよい。
【0016】
上記構成によれば、ステージ装置において、反りが抑制された第1スライダと反りが抑制された第2スライダを備えたステージ装置とすることが可能となる。
本発明の産業機械は、上記のステージ装置を有していることが好ましい。
【0017】
上記構成によれば、反りが抑制されたスライダを備えるステージ装置を有する産業機械となる。
本発明のスライダの反り抑制方法は、案内部材に沿って相対的に移動する空気軸受を備える石製のスライダの反り抑制方法であって、前記空気軸受の空気軸受面を第1面とし、前記第1面に対して前記案内部材とは逆の表面を第2面とし、前記第2面に空気を導入する手段を有して反りを抑制するものである。
【0018】
上記方法によれば、スライダの第1面(空気軸受面)が、空気により乾燥するが、第1面に対して前記案内部材とは逆の表面である第2面を乾燥させることができ、石製のスライダの反りを抑制する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、石製のスライダの反りを抑制することができる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】第1実施形態の産業機械のステージ装置の概略斜視図。
【
図3】覆い部材を省略したY軸スライダの側断面図。
【
図4】カバー部材を透視したときのY軸スライダの概略斜視図。
【
図5】第1実施形態の変形例の産業機械のステージ装置の概略斜視図。
【
図6】第2実施形態の産業機械のステージ装置の概略斜視図。
【
図10】第2実施形態の第1変形例のY軸スライダの断面図。
【
図11】第2実施形態の第2変形例のY軸スライダの断面図。
【
図12】第2実施形態の第3変形例の産業機械のステージ装置の概略斜視図。
【
図13】第3実施形態の三次元形状測定装置の全体構成を示す概略図。
【
図14】第3実施形態の三次元形状測定装置のZ軸ステージ部の構成を示す斜視図。
【
図15】前記Z軸ステージ部の構成を示す縦断面図。
【
図16】Z軸ステージ部においてエアスライダ外枠の一部を取除いた状態の概略構成を示す縦断面図。
【
図18】(a)はスライダが乾燥前の状態の説明図、(b)はスライダが乾燥したときの状態の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した一実施形態を
図1~
図4を参照して説明する。
図1は、産業機械としての検査装置に使用されているステージ装置10が図示されている。ステージ装置10は、検査対象物をX軸方向(第1方向)、及び、水平面において、X軸方向と直交するY軸方向(第1方向に直交する第2方向)に位置決めするものである。前記ステージ装置10は、石盤20と、X軸ガイド30と、X軸スライダ32と、一対のY軸ガイド60A、60Bと、一対のY軸スライダ70A、70Bとを備えている。
【0022】
Y軸ガイド60A、60Bは、石製であって、相互に平行となるようにY軸方向に延出されるとともに石盤20の上面に固定されている。Y軸ガイド60A、60Bは案内部材に相当する。Y軸スライダ70A、70Bは、Y軸ガイド60A、60Bにそれぞれ案内されてY軸方向に移動する。X軸ガイド30は、X軸方向に延出された長尺状の石製であって、断面四角形状をなす部材であり、その両端がY軸スライダ70A、70Bに対して、支柱80A、80Bを介して支持されている。このため、X軸ガイド30及びX軸スライダ32は、Y軸スライダ70A、70BのY軸方向の移動に伴ってY軸方向に移動可能となっている。
【0023】
本実施形態では、X軸スライダ32は、セラミック製であって、周囲環境の湿度によって、反りが生じないものとなっている。
図1に示すように、X軸ガイド30に対してX軸スライダ32は、上部側壁32a、Y軸方向に面する一対の側壁32b、32cにより、横コ字状に形成されており、各側壁には、X軸ガイド30に対してスライド自在に該X軸スライダ32を圧縮空気にて支持する公知の空気軸受(図示しない)がそれぞれ設けられている。なお、前記空気軸受はコンプレッサ等の圧縮空気発生源に接続された空気送出管(ともに図示しない)に接続されており、前記圧縮空気発生源からの清浄化された圧縮空気(以下、単に空気という)が前記空気軸受から、X軸ガイド30の上面、下面及びY軸方向に面する両側面に対して噴出するものである。
【0024】
X軸スライダ32には、図示はしないがX軸方向へ往復移動するための公知の駆動装置が付設されている。このようにして、X軸スライダ32は、前記駆動装置により駆動されるとX軸ガイド30に案内されてX軸方向に移動可能となっている。X軸スライダ32の上面には、図示しないテーブルが固定され、該テーブル上に、検査対象物が載置可能となっている。そして、Y軸スライダ70A、70BをY軸方向に移動させ、X軸スライダ32をX軸方向に移動させることにより、前記テーブルをXY方向に移動させて検査対象物をXY方向に位置決め可能となっている。
【0025】
Y軸ガイド60A、60Bは、石盤20の上面に固定された下部台61、下部台61から上方へ突出されて下部台61よりも幅狭に形成された首部62、及び首部62により支持された頭部63を備えており、下部台61よりも上方の部位は断面T字状に形成されている。
【0026】
図2に示すように、Y軸スライダ70Aは、Y軸ガイド60Aの頭部63の上面に配置される上部ブロック71、上部ブロック71のX方向の両端下面に一体に固定された一対の側部ブロック72、73及び側部ブロック72、73の下部内面に一体に固定された下部ブロック74、75を有している。各ブロック間の連結は、ボルト等により行っている。上部ブロック71は、石製であって、板状に形成されてY方向に延出されている。上部ブロック71は、Y軸ガイド60Aの頭部63上面に対して所定間隔をあけた状態で、平行となるように配置される。すなわち、上部ブロック71は空気軸受が設けられ、その下面を空気軸受面71aとしている。上部ブロック71は、軸受本体に相当する。
【0027】
図3に示すように、空気軸受面71aにはY軸方向に沿って互いに所定の間隔を置いて離間した複数の給気孔71bの列が、幅方向(X軸方向)において2つ設けられている。各列の給気孔71bは、上部ブロック71内において、一端面から他端面へ向かってY軸方向に貫通して形成された空気流路71cに連通されている。空気流路71cの両端のうち、一端は栓部71dにより、閉塞されている。
図3に示すように、空気流路71cの他端の開口は、ニップル51が接続されている。該ニップル51には図示しないコンプレッサ等の圧縮空気発生源に接続された空気送出管に接続されている。前記圧縮空気発生源は、圧縮された空気を発生する。なお、給気孔71bの開口端には、図示はしないが絞りが設けられている。
【0028】
前記給気孔71bの開口端からY軸ガイド60Aの頭部63上面との間に対して前記空気が給気されることにより、空気軸受面71aとY軸ガイド60Aの頭部63上面(対向面)との間に所定間隔の間隙が形成される。空気軸受面71aは、第1面に相当する。
【0029】
側部ブロック72、73は、石製であって、板状に形成されてY方向に延出されている。側部ブロック72、73は、Y軸ガイド60Aの頭部63の幅方向(X軸方向)に向かう側面に対して所定間隔をあけた状態で、平行となるように配置される。すなわち、
図2に示すように、側部ブロック72、73は空気軸受が設けられ、Y軸ガイド60Aに向かう内面を空気軸受面72a、73aとしている。側部ブロック72、73は74、75は軸受本体に相当する。
【0030】
図3に示すように、空気軸受面72a、73aにはY軸方向に沿って互いに所定の間隔を置いて離間した給気孔72b、73bの列が設けられている。給気孔72b、73bは、側部ブロック72、73内において、一端面から他端面へ向かってY軸方向に貫通して形成された空気流路72c、73cに連通されている。
【0031】
図3に示すように、空気流路72c、73cの両端のうち、一端は栓部72d、73dにより、閉塞されている。また、空気流路72c、73cの他端の開口は、ニップル52が接続されている。該ニップル52には図示しない前記圧縮空気発生源に接続された空気送出管に接続されている。なお、給気孔72b、73bの開口端には、図示はしないが絞りが設けられている。
【0032】
前記給気孔72b、73bの開口端からY軸ガイド60Aの頭部63の前記側面との間に対して前記空気が給気されることにより、空気軸受面72a、73aとY軸ガイド60Aの頭部63の前記側面(対向面)との間に所定間隔の間隙が形成される。空気軸受面72a、73aは、第1面に相当する。
【0033】
下部ブロック74、75は、石製であって、直方体状に形成されてY方向に延出されている。下部ブロック74、75は、Y軸ガイド60Aの頭部63の幅方向(X軸方向)に向かう側面に対して所定間隔をあけた状態で、平行となるように配置される。すなわち、
図3に示すように、下部ブロック74、75は軸受本体としており、Y軸ガイド60Aの頭部63の下面に向かう上面を空気軸受面74a、75aとしている。
図3に示すように、空気軸受面74a、75aにはY軸方向に沿って互いに所定の間隔を置いて離間した給気孔74b、75bの列が設けられている。給気孔74b、75bは、下部ブロック74、75内において、一端面から他端面へ向かってY軸方向に貫通して形成された空気流路74c、75cに連通されている。
【0034】
図3に示すように、空気流路74c、75cの両端のうち、一端は栓部74d、75dにより、閉塞されている。また、空気流路74c、75cの他端の開口は、ニップル53が接続されている。該ニップル53には図示しない前記圧縮空気発生源に接続された空気送出管に接続されている。前記圧縮空気発生源は、圧縮された空気を発生する。なお、給気孔74b、75bの開口端には、図示はしないが絞りが設けられている。
【0035】
前記給気孔74b、75bの開口端からY軸ガイド60Aの頭部63の前記下面との間隙に対して前記空気が給気されることにより、空気軸受面74a、75aとY軸ガイド60Aの頭部63の前記下面(対向面)との間に所定間隔の間隙が形成される。空気軸受面74a、75aは、第1面に相当する。
【0036】
図2に示すように、Y軸スライダ70Aにおいて、上部ブロック71、側部ブロック72、73及び下部ブロック74、75の空気軸受面71a、72a、73a、74a、75aとは反対側の上面71e、側面72e、73e及び下面74e、75eは、カバー部材としての覆い部材76~79、83、84、92、93によりそれぞれ覆われている。上面71e、側面72e、73e及び下面74e、75eは、空気軸受面71a、72a、73a、74a、75aとはそれぞれ平行となるように平面となっている。上面71e、側面72e、73e、及び下面74e、75eは、第2面に相当する。
【0037】
図4を参照して、代表的に側部ブロック73の側面73eを覆う覆い部材84について説明する。なお、
図4では、覆い部材84を透視した状態で図示されている。覆い部材84は、側面73eのほぼ全体を覆うとともに、上部ブロック71の一方の側端面を覆う形状、すなわち、長方形状の板材から形成されている。覆い部材84の材質は限定しないが、本実施形態では、ステンレス製としている。覆い部材84と側面73eとの間には、覆い部材84(すなわち、側面73e)の四方周縁に配置された四角形状をなすシール部材85が介在されている。シール部材85は、空気を溜める部材に相当する。
【0038】
図4に示すように本実施形態では、覆い部材84は、外面に固定されたL字状をなす複数の取付ブラケット54が側部ブロック73の上面及び下面に対してボルト等により締付固定されている。なお、
図2では、説明の便宜上、覆い部材84、及び覆い部材84以外の他の覆い部材のY軸スライダ70Aに対して固定するための部材は、省略して図示されている。
【0039】
前記側面73e及び上部ブロック71の一方の側端面と、覆い部材84間は、シール部材85の厚み分の高さを有する隙間、すなわち、乾燥室86が形成されている。
図2に示すように、覆い部材84において、Y軸方向に位置する両端部の上部及び下部には、複数の貫通孔84aが形成されていて、該貫通孔84aにニップル87、88がそれぞれ取付けられている(
図4参照)。複数の貫通孔84aのうち、ニップル87が取付けられる上方の貫通孔84aが空気導入部に相当し、ニップル88が取付けられる下方の貫通孔84aが排出部に相当する。
【0040】
ニップル87は、図示しない前記圧縮空気発生源に接続された空気送出管に接続され、空気を乾燥室86内に導入する。ニップル88は、図示しない空気排出管に接続され、乾燥室86内の空気を外部に排出する。このように乾燥室86に空気を導入して、乾燥室86内に存する側面73eを空気により乾燥させるようにしている。
【0041】
図2に示すように覆い部材83は、覆い部材84と同様の材質であって、覆い部材84と同様の取付方法により側部ブロック72の側面72e及び上部ブロック71の一方の側端面に対してシール部材89を介在して取付け固定されている。そして、図示はしないが、覆い部材83によりシール部材89の厚み分の高さを有する図示しない隙間、すなわち、乾燥室が形成されている。シール部材89は、空気を溜める部材に相当する。
【0042】
覆い部材83において、Y軸方向に位置する両端部の上部には、覆い部材84と同様に図示しない一対の貫通孔及び該貫通孔に取付けられたニップルが取付けられている。一方のニップルは、図示しない前記圧縮空気発生源に接続された空気送出管に接続され、空気を乾燥室内に導入する。他方のニップルは、図示しない空気排出管に接続され、乾燥室内の空気を外部に排出する。空気送出管に連結されたニップルが固定された貫通孔は、空気導入部に相当し、空気排出管に連結されたニップルが固定された貫通孔は、排出部に相当する。
【0043】
このように覆い部材83における乾燥室に空気を導入して、該乾燥室内を乾燥雰囲気にして、側面72eを乾燥させるようにしている。
図2に示すように、覆い部材76、77は、覆い部材84と同様の材質からなる板材で長方形状に形成されており、上部ブロック71の上面71eにおいて、支柱80Aを挟んでY軸方向の一方の端部側と他方の端部側に取付け固定されている。なお、説明の便宜上、
図2では覆い部材76、77の上部ブロック71に対する固定する部材は図示されていないが、ボルト着或いは接着等により行われている。
【0044】
覆い部材76、77は、上部ブロック71の上面71eに対してシール部材90を介して取付け固定され、図示はしないが、シール部材の厚み分の高さを有する図示しない隙間、すなわち、乾燥室が形成されている。シール部材90は、空気を溜める部材に相当する。覆い部材76、77において、X軸方向に位置する両端部の上部には、一対の貫通孔76a、77aがそれぞれ形成され、図示しないニップルが該貫通孔76a、77aに取付けられている。覆い部材76、77において、一方のニップルは、図示しない前記圧縮空気発生源に接続された空気送出管に接続され、空気を乾燥室内に導入する。他方のニップルは、図示しない空気排出管に接続され、乾燥室内の空気を外部に排出する。前記空気送出管に接続された一方のニップルが取付けられた貫通孔76a、77aは空気導入部に相当する。前記空気排出管に接続された他方のニップルが取付けられた貫通孔76a、77aは排出部に相当する。
【0045】
このように覆い部材76、77における乾燥室に空気を導入して、該乾燥室内を乾燥雰囲気にして、上面71eにおいて、支柱80Aを挟むY軸方向の領域を乾燥させるようにしている。
【0046】
図2に示すように、覆い部材78、79は、覆い部材84と同様の材質からなる板材であって、上部ブロック71の上面71eにおいて、支柱80Aを挟んでX軸方向の一方の端部側と他方の端部側に取付け固定されている。なお、説明の便宜上、
図2では覆い部材78、79の上部ブロック71に対する固定する部材は図示されていないが、ボルト着或いは接着等により行われている。
【0047】
覆い部材78、79は、上部ブロック71の上面71eに対していシール部材91を介して取付け固定され、図示はしないが、シール部材の厚み分の高さを有する図示しない乾燥室が形成されている。覆い部材78、79において、Y軸方向に位置する両端部の上部には、一対の貫通孔78a、79aがそれぞれ形成され、図示しないニップルが貫通孔78a、79aに取付けられている。覆い部材78、79において、一方のニップルは、図示しない前記圧縮空気発生源に接続された空気送出管に接続され、空気を乾燥室内に導入する。他方のニップルは、図示しない空気排出管に接続され、乾燥室内の空気を外部に排出する。
【0048】
前記空気送出管に接続された一方のニップルが取付けられた貫通孔78a、79aは空気導入部に相当する。前記空気排出管に接続された他方のニップルが取付けられた貫通孔78a、79aは排出部に相当する。
【0049】
このように覆い部材78、79における乾燥室に空気を導入して、該乾燥室内を乾燥雰囲気にして、上面71eにおいて、支柱80Aを挟むX軸方向の領域を乾燥させるようにしている。
【0050】
図2及び
図4に示すように、覆い部材92、93は、下部ブロック74、75の下面74e、75eの全体に亘って取付け固定されている。なお、説明の便宜上、覆い部材92、93を下部ブロック74、75に対して固定する部材は図示されていないが、覆い部材92、93はボルト着或いは接着等により固定されている。
【0051】
覆い部材92、93は、下部ブロック74、75の下面74e、75eに対してシール部材94、95を介して取付け固定され、図示はしないが、シール部材の厚み分の高さを有する図示しない乾燥室が形成されている。
【0052】
図4に示すように、覆い部材93において、Y軸方向に位置する両端部の上部には、一対の貫通孔93aがそれぞれ形成され、図示しないニップルが該貫通孔93aに取付けられている。また、覆い部材93においても、同様にY軸方向に位置する両端部の上部には、図示はしないが一対の貫通孔がそれぞれ形成され、図示しないニップルが該貫通孔に取付けられている。
【0053】
覆い部材92、93において、一方のニップルは、図示しない前記圧縮空気発生源に接続された空気送出管に接続され、空気を乾燥室内に導入する。他方のニップルは、図示しない空気排出管に接続され、乾燥室内の空気を外部に排出する。空気送出管に連結されたニップルが固定された貫通孔93a等は、空気導入部に相当し、空気排出管に連結されたニップルが固定された貫通孔93aは、排出部に相当する。このように覆い部材92、93における乾燥室に空気を導入して、該乾燥室内を乾燥雰囲気にして、下面74e、75eを乾燥させるようにしている。
【0054】
Y軸スライダ70Bに設けられた覆い部材及び乾燥室については、Y軸スライダ70Aと同一構成のため、同一構成については、Y軸スライダ70Aの構成部材と同一符号を付して、その説明を省略する。
【0055】
Y軸スライダ70A、70Bには、図示はしないがY軸方向へ往復移動するための公知の駆動装置が付設されている。
(第1実施形態の作用)
上記のように構成されたステージ装置10において、Y軸スライダ70A、70Bの作用を説明する。
【0056】
Y軸スライダ70A、70Bは、公知の駆動装置により、Y軸方向に移動する。このとき、各ブロック71、72、73、74、75の空気軸受面71a、72a、73a、74a、75aでは、圧縮空気発生源から供給された空気が、給気孔71b、72b、73b、74b、75bから給気されて、各空気軸受面と該空気軸受面と対向するY軸ガイド60A、60Bの対向面との間に所定間隔の間隙が形成される。一方、各ブロックにおいて、覆い部材76~79、83、84、92、93と、該覆い部材と、該覆い部材と対向する面(上面71e、側面72e、側面73e、下面74e、75e)との間の乾燥室86等内には、同じく圧縮空気発生源から供給された空気が流れる。
【0057】
このため、Y軸スライダ70A、70Bの空気軸受面71a、72a、73a、74a、75aと、該空気軸受面71a、72a、73a、74a、75aの反対側にある乾燥室86等に対向する面、すなわち、第2面である上面71e、側面72e、73e、及び下面74e、75eは、共に空気に晒されて、乾燥する。このため、石製の上部ブロック71、側部ブロック72、73、及び下部ブロック74、75における一方の面側のみが乾燥することによる反りを抑制することができる。
【0058】
本実施形態では、下記の特徴を有する。
(1)本実施形態のY軸スライダ70A、70Bは、Y軸ガイド60A、60B(案内部材)に沿って相対的に移動する空気軸受を有する石製のスライダとしている。そして、Y軸スライダ70A、70Bの空気軸受の該空気軸受面71a、72a、73a、74a、75aを第1面としている。また、第1面に対してY軸ガイド60A、60B(案内部材)とは逆の表面である上面71e、側面72e、73e、及び下面74e、75eを第2面としている。そして、第2面に対して空気を供給する空気導入部が設けられている。
【0059】
この結果、Y軸スライダ70A、70Bの第1面(空気軸受面)が、空気により乾燥するが、各ブロックの上面71e、側面72e、73e、及び下面74e、75e(第2面)間にスライダの第2面が空気が導入されるため、第2面側も乾燥させることができ、スライダの反りを抑制することができる。また、本実施形態では、上面71e、側面72e、73e、及び下面74e、75e(第2面)は、平面としているため、乾燥室を形成するための凹部を設ける必要がない。
【0060】
(2)本実施形態では、Y軸スライダ70A、70Bは、その第2面を覆う覆い部材(カバー部材)76~79、83、84、92、93を有している。
この結果、第2面とカバー部材の間に空気導入部から空気が供給され、この空気により第2面も乾燥させることができ、スライダの反りを抑制できる。
【0061】
(3)本実施形態のY軸スライダ70A、70Bでは、覆う覆い部材(カバー部材)76~79、83、84、92、93と第2面の間に隙間が形成されており、その隙間に空気導入部から供給された空気を溜める部材、すなわちシール部材85、89~91、94、95が設けられている。
【0062】
この結果、前記隙間に空気導入部から供給された空気を溜めることができる。この溜められた空気により、第2面も乾燥させることができ、スライダの反りを抑制する。
(4)本実施形態のステージ装置10は、上記(1)から(3)に記載のスライダを有するとともに、第1面に沿って前記スライダを案内するY軸ガイド60A、60B(案内部材)を有する。この結果、本実施形態のステージ装置10は、上記(1)~(3)の作用効果を享受できる。
【0063】
(5)本実施形態のステージ装置10は、産業機械としての検査装置で使用される。この結果、本実施形態の検査装置は、上記(1)、(2)の作用効果を享受できる。
(6)本実施形態の反り抑制方法は、Y軸スライダ70A、70Bでは、空気を外部へ給気する給気孔71b、72b、73b、74b、75bを有する空気軸受面71a、72a、73a、74a、75aと、給気孔に連通する空気流路71c、72c、73c、74c、75cとを有し、空気流路を経て給気孔から空気が外部へ給気される。
【0064】
また、Y軸スライダ70A、70Bの空気軸受面71a、72a、73a、74a、75aを第1面とし、第1面とは反対側の面を第2面としたとき、第2面は覆い部材(カバー部材)76~79、83、84、92、93にて覆われていて、第2面と該覆い部材間に乾燥室86等が形成されている。そして、乾燥室86等内に空気を通過させることにより、石製のY軸スライダ70A、70Bの反りを抑制する。この結果、本実施形態の方法により、覆い部材と、各ブロックの上面71e、側面72e、73e、及び下面74e、75e(第2面)間に軸受本体の第2面を乾燥する乾燥室86等が設けられているため、第2面側も乾燥させることができ、軸受本体の反りを抑制することができる。
【0065】
(第1実施形態の変形例)
図5を参照して、次に第1実施形態の変形例を説明する。
この変形例では、X軸スライダ32が石製となっており、このX軸スライダ32に、下記の部材が付設されているところが前記実施形態と異なっている。
【0066】
すなわち、上部側壁32a及びY軸方向に面する一対の側壁32b、32cは、覆い部材33、34、35により覆われている。覆い部材33、34、35の材質は限定しないが、本実施形態では、ステンレス製としている。また、図示はしないが、覆い部材33、34、35は、第1実施形態の覆い部材84等と同様に、覆う対象の側壁面との間には、その四方周縁に配置された四角形状をなすシール部材(図示しない)が介在されている。
【0067】
また、覆い部材33、34、35は、覆う対象の側壁面との間には、前記シール部材の厚み分の高さを有する乾燥室(図示しない)が形成されている。また、覆い部材33、34、35には、覆い部材84と同様の複数の貫通孔(図示しない)が設けられるとともに、各貫通孔にはニップル(図示しない)がそれぞれ取付けられている。覆い部材33、34、35において、各覆い部材に設けられた少なくとも一対のニップル(図示しない)のうち、一つは、空気を乾燥室に導入する空気導入部となり、他の一つは乾燥室から空気を排出する排出部としている。
【0068】
上記変形例では、第1実施形態の作用効果に加えて、さらに、石製のX軸スライダ32の反りを抑制することができる。
(第2実施形態)
次に第2実施形態の産業機械としての検査装置を
図6~
図9を参照して説明する。
【0069】
図6は、産業機械としての検査装置に使用されているステージ装置200が図示されている。ステージ装置200は、検査対象物をX軸方向(第2方向)、及び、水平面において、X軸方向と直交するY軸方向(第2方向に直交する第1方向)に位置決めするものである。ステージ装置200は、Y軸ガイドを兼用する石盤210と、Y軸スライダ220と、X軸ガイド240と、X軸スライダ250とを備えている。
【0070】
石盤210は、X軸方向に面する一対のガイド側面211と、水平に形成された上面212を備えている。一対のガイド側面211は、Y軸方向に沿って延びるとともに相互に平行となるようにY軸方向に延出されている。石盤210は、案内部材に相当する。
【0071】
Y軸スライダ220は、一対のガイド側面211にそれぞれ案内されてY軸方向に移動する。X軸ガイド240は、X軸方向に延出された長尺状の石製であって、断面四角形状をなすとともに、平板状に形成されていて、Y軸スライダ220に固定されている。このため、X軸ガイド240及びX軸スライダ250は、Y軸スライダ220のY軸方向の移動に伴ってY軸方向に移動可能となっている。本実施形態では、X軸スライダ250は、セラミック製であって、周囲環境の湿度によって、反りが生じないものとなっている。
【0072】
図6に示すようにX軸スライダ250は、上部側壁250a、Y軸方向に面する一対の側壁250b、250cにより、横コ字状に形成されており、各側壁には、X軸ガイド240に対してスライド自在に該X軸スライダを圧縮空気にて支持する公知の空気軸受(図示しない)がそれぞれ設けられている。X軸スライダ250には、図示はしないがX軸方向へ往復移動するための公知の駆動装置が付設されている。このようにして、X軸スライダ250は、前記駆動装置により駆動されるとX軸ガイド240に案内されてX軸方向に移動可能となっている。
【0073】
X軸スライダ250の上面には、図示しないテーブルが固定され、該テーブル上に、検査対象物が載置可能となっている。そして、Y軸スライダ220をY軸方向に移動させ、X軸スライダ250をX軸方向に移動させることにより、前記テーブルをXY方向に移動させて検査対象物をXY方向に位置決め可能となっている。
図6及び
図7に示すように、Y軸スライダ220は、石盤210の上面212に配置される上部ブロック222、及び上部ブロック222のX方向の両端下面にボルト着等により固定された一対の側部ブロック224、226を有している。
【0074】
上部ブロック222は、石製であって、X方向に延出された板状に形成されていて、相互に平行に形成された上面及び下面を有している。上部ブロック222は、石盤210の上面212に対して所定間隔をあけた状態で、平行となるように配置される。すなわち、上部ブロック222は、空気軸受が設けられ、その下面を空気軸受面222aとしている。上部ブロック222は、軸受本体に相当する。
図7、
図8に示すように、X軸方向に位置する両端の空気軸受面222aには、Y軸方向に沿うように互いに所定の間隔を置いて離間した複数の給気孔222bの一対の列が設けられている。各列の給気孔222bは、上部ブロック222内において、Y軸方向に離間した一側部から他側部へ向かって貫通して形成された空気流路222cに連通されている。空気流路222cのY軸方向に位置する両端は栓部222dにより閉塞されている。
【0075】
空気流路222cは、上部ブロック222のX軸方向において離間した各端面からX軸方向に沿って延出された空気流路222eに連通されている。
図8に示すように、空気流路222eの開口は、ニップル223が接続されている。該ニップル223には図示しないコンプレッサ等の圧縮空気発生源に接続された空気送出管に接続されている。なお、給気孔222bの開口端には、図示はしないが絞りが設けられている。
【0076】
前記給気孔222bの開口端から石盤210の上面212に対して前記空気が外部へ給気されることにより、空気軸受面222aと石盤210の上面212との間に所定間隔の間隙が形成される。空気軸受面222aは、第1面に相当する。
【0077】
上部ブロック222の上面は、X軸方向の両端部は高さが高い領域228(以下、第1領域という)の平面を有しており、両第1領域228間の領域は、高さが低い領域230(以下、第2領域という)の平面となっている。第1領域228と第2領域230との高さは、数mm以下に設定されている。第2領域230の平面は、第2面に相当する。
【0078】
図8、
図9に示すように両第1領域228には、X軸ガイド240のX軸方向に位置する両端部が取付固定されている。第2領域230の平面と、X軸ガイド240との間に形成される間隙は、乾燥室235となっている。また、乾燥室235のY軸方向に面する両側端は開放されて外部空間と連通されている。
【0079】
図7、
図9に示すように、第2領域230には、X軸方向に沿うように互いに所定の間隔を置いて離間した複数の給気孔230aの列が設けられている。各給気孔230aは、上部ブロック222内において、X軸方向に離間した一端面から他端面へ向かって貫通して形成された空気流路230bに連通されている。空気流路230bのX軸方向に位置する両端は栓部230cにより閉塞されている。
図7に示すように空気流路230bは、上部ブロック222のY軸方向に面する一方の側部からY軸方向に沿って延出された空気流路230dに連通されている。空気流路230dの開口は、図示しないニップルが接続されている。該ニップルには図示しないコンプレッサ等の圧縮空気発生源に接続された空気送出管に接続されている。なお、給気孔230aの開口端には、図示はしないが絞りが設けられている。給気孔230aは、空気導入部に相当する。
【0080】
前記給気孔230aの開口端から、乾燥室235内に空気が給気されることにより、乾燥室235に臨む第2領域230の平面は、乾燥可能となっている。また、乾燥室235内に噴出された空気は、乾燥室235のY軸方向に面する両側端が開放されていて開放口235a(
図8,
図9参照)が形成されていることにより、外部空間へ放出される。開放口235aは排出部に相当する。
【0081】
このようにX軸ガイド240はカバー部材として機能している。また、X軸ガイド240は、案内部材に相当する。
図8に示すように側部ブロック224、226は、石製であって、板状に形成されてY方向に延出されている。側部ブロック224、226は、石盤210のガイド側面211に対して所定間隔をあけた状態で、平行となるように配置される。すなわち、
図8、
図9に示すように側部ブロック224、226には、空気軸受が設けられ、石盤210のガイド側面211に向かう内面を空気軸受面224a、226aとしている。
【0082】
図8に示すように、空気軸受面224a、226aにはY軸方向に沿って互いに所定の間隔を置いて離間した給気孔224b、226bの列が設けられている。なお、
図8においては、給気孔224b、226bはそれぞれ1つのみ図示されている。給気孔224b、226bは、側部ブロック224、226内において、Y方向に面する一端面から他端面へ向かってY軸方向に貫通して形成された空気流路224c、226cに連通されている。
【0083】
空気流路224c、226cは、離間した側部ブロック224、226の各端面からX軸方向に沿って延出された空気流路222e、226eに連通されている。空気流路224c、226cの両端は図示しない栓部により、閉塞されている。
図8に示すように、空気流路222eの開口は、ニップル229が接続されている。該ニップル229には図示しないコンプレッサ等の圧縮空気発生源に接続された空気送出管に接続されている。なお、給気孔224b、226bの開口端には、図示はしないが絞りが設けられている。
【0084】
前記給気孔224b、226bの開口端から石盤210の前記ガイド側面211に対して前記空気が外部へ給気されることにより、空気軸受面224a、226aとガイド側面211との間に所定間隔の間隙が形成される。Y軸スライダ220には、図示はしないがY軸方向へ往復移動するための公知の駆動装置が付設されている。
【0085】
(第2実施形態の作用)
上記のように構成されたステージ装置200において、Y軸スライダ220の作用を説明する。
【0086】
Y軸スライダ220は、公知の駆動装置により、Y軸方向に移動する。このとき、各ブロック222、224、226の空気軸受面222a、224a、226aでは、圧縮空気発生源から供給された空気が、給気孔222b、224b、226bから外部へ給気されて、各空気軸受面と該空気軸受面と対向する石盤210の対向面との間に所定間隔の間隙が形成される。
【0087】
一方、上部ブロック222において、カバー部材としてのX軸ガイド240と、該X軸ガイド240と、該X軸ガイド240と対向する上部ブロック222の第2領域230の平面との間の乾燥室235内には、同じく圧縮空気発生源から供給された空気が流れる。このため、第2面である上部ブロック222の上面を構成する第2領域230の平面は、空気に晒されて、乾燥する。このため、石製の上部ブロック222における一方の面側のみが乾燥することによる反りを抑制することができる。
【0088】
本実施形態では、下記の特徴を有する。
(1)本実施形態では、上部ブロック222(軸受本体)の空気軸受面222a(第1面)が、給気孔222bから外部へ給気された空気により乾燥する。しかし、X軸ガイド240(カバー部材)と、上部ブロック222の上面である両第1領域228の平面(第2面)間に上部ブロック222(軸受本体)の第2面を乾燥する乾燥室235が設けられているため、第2面側も乾燥させることができ、軸受本体の反りを抑制することができる。
【0089】
(第2実施形態の第1変形例)
図10に示すように、上部ブロック222の上面全体を段差のない平面とし、その代わりに、X軸ガイド240の下面に段差を設けて、X軸方向に向かう両端部を除いて、断面視した場合、下向きの凹部241を設けてもよい。
図10において、凹部241を除く左右の端部248の下面は、上部ブロック222の上面に取付固定されている。凹部241の深さは、数mm以下に設定されている。ここで、凹部241と、上部ブロック222間に、乾燥室245が形成されている。乾燥室245のY軸方向の両側部は、外部空間に開放されている。
【0090】
(第2実施形態の第2変形例)
第1変形例では、Y軸スライダ220に空気流路230bを設けて、給気孔230aから第2領域230とX軸ガイド240の下面間に圧縮空気(ドライエアー)を給気した。すなわち、Y軸スライダ220の第2領域230を乾燥させるための空気流路230bと給気孔230aをY軸スライダ220自体に設けた構成とした。この空気流路230b及び給気孔230aを省略して、
図11に示す構成に変更してもよい。
【0091】
図11に示すように、X軸ガイド240には、圧縮空気源に接続された空気流路240b及び空気流路240bに連通して凹部241とY軸スライダ220の上面間の間隙に圧縮空気(ドライエアー)を給気する給気孔240aが形成されている。
図11に示すように乾燥室245のY軸方向に面する両側端は開放されて外部空間と連通されている。ここで、凹部241に相対するY軸スライダ220の平面は、第2面に相当する。
【0092】
この変形例では、前記給気孔240aの開口端から、乾燥室245内に圧縮空気が給気されることにより、乾燥室245に臨むY軸スライダ220の平面は、乾燥可能となっている。また、乾燥室245内に噴出された空気は、乾燥室245のY軸方向に面する両側端が開放されている開放口245aを有することにより、外部空間へ放出される。開放口245aは排出部に相当する。
【0093】
(第2実施形態の第3変形例)
図12を参照して、次に第2実施形態の第3変形例を説明する。
この変形例では、X軸スライダ250が石製となっており、このX軸スライダ250に、下記の部材が付設されているところが前記実施形態と異なっている。
【0094】
すなわち、上部側壁250a及びY軸方向に面する一対の側壁250b、250cは、覆い部材251,252、253により覆われている。覆い部材251,252、253の材質は限定しないが、本実施形態では、ステンレス製としている。また、図示はしないが、覆い部材251,252、253は、第1実施形態の覆い部材84等と同様に、覆う対象の側壁面との間には、その四方周縁に配置された四角形状をなすシール部材(図示しない)が介在されている。
【0095】
また、覆い部材251,252、253は、覆う対象の側壁面との間には、前記シール部材の厚み分の高さを有する乾燥室(図示しない)が形成されている。また、覆い部材251,252、253には、覆い部材84と同様の複数の貫通孔(図示しない)が設けられるとともに、各貫通孔にはニップル(図示しない)がそれぞれ取付けられている。覆い部材251,252、253において、各覆い部材に設けられた少なくとも一対のニップル(図示しない)のうち、一つは、空気を乾燥室に導入する空気導入部となり、他の一つは乾燥室から空気を排出する排出部としている。
【0096】
上記変形例では、第2実施形態の作用効果に加えて、さらに、石製のX軸スライダ250の反りを抑制することができる。
(第3実施形態)
図13~
図17を参照して、次に第3実施形態を説明する。
【0097】
第3実施形態は、本発明を三次元形状測定装置300のZ軸ステージ部301をステージ装置として具体化したものである。まず、三次元形状測定装置300の全体構成を
図13に示す。
【0098】
三次元形状測定装置300は、XYステージ302と、Z軸ステージ部301と、制御部500とを備えている。XYステージ302は、定盤310上にXY軸方向に移動可能に配置され、測定物303を載置保持して、測定物303をXY軸方向に移動可能としている。
【0099】
Z軸ステージ部301は、定盤310にZ軸方向すなわち上下方向(鉛直方向)に移動可能に支持され、測定物303の測定面に接触させるプローブ部403を下端に支持して、プローブ部403を上下移動可能としている。
【0100】
図15に示すように、制御部500は、フォーカス光学系404と、XYステージ302(
図13参照)と、Z軸ステージ部301と、He-Neレーザ305となどに接続されて、それぞれの動作制御を行なうことにより、三次元形状測定動作を制御している。なお、
図13において、306はX軸方向ミラーであり、307はY軸方向ミラー、308はX軸測長用レーザ光を示している。
【0101】
XYステージ302によりX軸方向とY軸方向とに測定物303を移動させながら、プローブ部403を測定物303に接触させて、プローブ部403の移動をZ軸ステージ部301に連結された光学系で検出して、測定物303の三次元形状を測定している。
【0102】
三次元形状測定装置300は、測定面をXY方向に動かすXYステージ302とプローブ部403をZ方向に動かすZ軸ステージ部301とにより、測定物303の測定面とプローブ部403の相対位置をXYZ方向に動かすようにしている。
【0103】
Z軸ステージ部301は、
図14~
図17に示すように、エアスライダ外枠401と、エアスライダ中空軸402と、2つの支持アーム405と、2つの駆動部407と、2つの支持部408と、プローブ部403と、フォーカス光学系404となどを備えて構成している。
【0104】
図13、
図14、
図15に示すようにフォーカス光学系404は、He-Neレーザ305を少なくとも有する光学系であり、エアスライダ中空軸402に備えられている。
図15に示すように、フォーカス光学系404は、He-Neレーザ305と、フォーカシング素子450と、コリメーターレンズ451と、ダイクロイックミラー452と、コリメーターレンズ453と、ミラー454とで大略構成されている。フォーカシング素子450とコリメーターレンズ451とダイクロイックミラー452とは、エアスライダ中空軸402の上端に配置されている。コリメーターレンズ453とミラー454とは、エアスライダ中空軸402の下端に配置されている。プローブ部403のマイクロスライダ455で支持されたスタイラス456の上端にミラー454が固定されている。
【0105】
傾き光学系410は、エアスライダ中空軸402に、フォーカス光学系404の光路の空間内に併設するように備えている。傾き光学系410は、傾き光学系用半導体レーザ457と、コリメーターレンズ458と、ミラー459と、偏光ビームスプリッタ460と、1/4波長板461と、ミラー454と、傾き信号調整用ミラー462と、傾き光学系用受光素子463とで構成されている。プローブ部403の鏡筒の中に設置されたマイクロスライダ455が傾いた場合、傾き光学系用半導体レーザ457から出た光が、マイクロスライダ455の上面のミラー454で反射し、傾き光学系用受光素子463で受光する位置が変化する。この変化を検出して傾き補正を行うようにされている。
【0106】
エアスライダ外枠401は、石製であって、断熱性を有していて、上下方向に縦長の矩形枠体形状に形成され(
図17参照)、その内部にエアスライダ中空軸402を上下方向(Z軸方向)に移動可能に支持している。エアスライダ外枠401は、三次元形状測定装置300の定盤310などに固定されている。
【0107】
図15、
図16に示すようにエアスライダ外枠401は、上側に配置された四角枠形状の上部支持部401aと、下側に配置された四角枠形状の下部支持部401bとが一体的に連結された一体構成で構成されている。上部支持部401aと下部支持部401bとの間には、横方向において、2つの支持アーム405が上下移動可能なように隙間401cを設けている。上部支持部401aと下部支持部401bとは、それぞれ、エアスライダ中空軸402に対して上下移動可能に、かつ、上下方向と直交する横方向の移動不可に、非接触で支持する複数の空気軸受351、352、353、354を有する空気軸受部350が設けられている。
【0108】
エアスライダ中空軸402は、Z軸ステージ部301のZ軸駆動軸として機能し、上下方向に縦長の直方体筒形状の部材である。
図17に示すように、空気軸受351、352、353、354は、エアスライダ中空軸402の外表面である前面、後面、右側面及び左側面にそれぞれ対向する前側壁、後側壁、右側壁及び左側壁の各内面側に設けられている。空気軸受351、352、353、354において、エアスライダ中空軸402の外表面である前面、後面及び左右両側面に対して対向する空気軸受面351a、352a、353a、354aには図示はしないが複数の給気孔(すなわち、エア噴出孔)が設けられている。
【0109】
空気軸受351、352、353、354には、第3エア供給源380から圧縮空気が、常時一定圧力で供給され、前記多数の給気孔からエアスライダ中空軸402の外表面である前面、後面、右側面及び左側面に向けて圧縮空気が噴出されている。これにより、エアスライダ外枠401とエアスライダ中空軸402の間に微小間隔のエアギャップ部360(
図16参照)が形成される。エアスライダ中空軸402は、エアスライダ外枠401に対する案内部材に相当する。
【0110】
図14、
図17に示すように、エアスライダ外枠401の4方の外表面、すなわち、エアスライダ中空軸402とは逆の表面は、カバー部材としての覆い部材361,362、363、364により覆われている。覆い部材361,362、363、364の材質は限定しないが、本実施形態では、ステンレス製としている。また、図示はしないが、覆い部材361,362、363、364は、第1実施形態の覆い部材84等と同様に、覆う対象の側壁面との間には、その四方周縁に配置された四角形状をなすシール部材(図示しない)が介在されている。
【0111】
また、覆い部材361,362、363、364は、覆う対象の側壁面との間には、前記シール部材の厚み分の高さを有する乾燥室(図示しない)が形成されている。また、覆い部材361,362、363、364には、第1実施形態の覆い部材84と同様の複数の貫通孔(図示しない)が設けられるとともに、各貫通孔にはニップル(図示しない)がそれぞれ取付けられている。覆い部材361,362、363、364において、各覆い部材に設けられた少なくとも一対のニップル(図示しない)のが取り付けられる貫通孔のうち、一つは、空気を乾燥室に導入する空気導入部となり、他の一つは乾燥室から空気を排出する排出部としている。前記空気導入部には第4エア供給源370(
図16参照)から空気が、常時一定圧力で供給される。
【0112】
エアスライダ中空軸402は、上端にフォーカス光学系404が配置され、下端にプローブ部403が配置されている。エアスライダ中空軸402の中心部には貫通穴406があり、貫通穴406内に、フォーカス光学系404とプローブ部403の上端のミラー454とを結ぶ光路が形成されている。
【0113】
2つの支持アーム405の基端は、エアスライダ中空軸402の、フォーカス光学系404とプローブ部403とエアスライダ中空軸402との3つの部材の合計の重心の位置の高さにそれぞれ固定されている。2つの支持アーム405は、エアスライダ中空軸402の前記重心の位置の高さからエアスライダ中空軸402の横方向に、エアスライダ中空軸402の中心軸CL(
図14参照)に対して対称に直交する方向に両側に突出して固定されている。一対の支持アーム405は、エアスライダ中空軸402の中心軸CLに対して対称形となっている。各支持アーム405は、金属、或いはセラミックなどの剛体で構成されている。
【0114】
一対の駆動部407は、各支持アーム405のエアスライダ中空軸402の近傍の位置に、エアスライダ中空軸402の中心軸CLに対して対称に配置されていて、エアスライダ外枠401に対して2つの支持アーム405を介してエアスライダ中空軸402を軸方向に駆動可能としている。ここでは、各駆動部407は、アクチュエータで構成されている。アクチュエータは、一例として、リニアモータ420で構成されている。
【0115】
図15、
図17に示すように、リニアモータ420は、コイル421と、中央ヨーク422と、外側ヨーク423と、直方体棒状の磁石424とで構成されており、制御部500の制御の下に駆動制御される。
【0116】
コイル421は、各支持アーム405のエアスライダ中空軸402の近傍の位置において、四角枠状に形成されていて、その軸方向の中央部に支持アーム405が連結されている。中央ヨーク422は、直方体棒状に形成され、エアスライダ外枠401に対して上下方向に沿うように固定されている。外側ヨーク423は、直方体状に形成され、中央ヨーク422の前後に、コイル421が自在に上下移動可能な隙間間隔をあけて、エアスライダ外枠401に上下方向沿いに固定されている。磁石424は、エアスライダ外枠401に固定されている。コイル421は、中央ヨーク422の外側に嵌合されて上下方向に自在に移動可能となっている。
【0117】
リニアモータ420は、コイル421に所定の駆動電流が印加されて、固定側の中央ヨーク422に対してエアスライダ中空軸402を上下方向に移動させるようにした、可動コイル方式としている。
【0118】
2つのリニアモータ420は、その2つの駆動軸(コイル421の中心軸)間の中心軸が、エアスライダ中空軸402の重心を通る中心軸に一致するように配置されている。従って、両中心軸間にオフセットが無いため、制御部500で2つのリニアモータ420で同期してエアスライダ中空軸402を上下に駆動させることにより、エアスライダ中空軸402の重心位置の部分を駆動させる構成になっている。このため、エアスライダ中空軸402に回転モーメントが発生しにくくしている。
【0119】
2つの支持部408は、2つの駆動部407からさらに横方向に延びた2つの支持アーム405の先端部分を支持するように対して配置されている。すなわち、各支持部408は、各支持アーム405の駆動部407の近傍でかつエアスライダ中空軸402から離れた位置でかつエアスライダ中空軸402の中心軸CLに対して対称に配置されている。具体的には、各支持部408の中心軸(例えばロッド427aの中心軸)と、各駆動部407の中心軸(例えばコイル421の中心軸)と、エアスライダ中空軸402の中心軸(すなわち、エアスライダ外枠の中心軸)とが一直線上に配置されている。
【0120】
また、各支持部408の中心軸(例えばロッド427aの中心軸)と、各駆動部407の中心軸(例えばコイル421の中心軸)と、エアスライダ中空軸402の中心軸(すなわち、エアスライダ外枠の中心軸)とが互いに平行に配置されている。これにより、エアスライダ中空軸402から見れば、各支持アーム405において、駆動部407の外側に支持部408が配置されている構成となっている。2つの支持部408は、エアスライダ中空軸402とプローブ部403とフォーカス光学系404と2つの駆動部407との自重を、横方向に移動可能に支持している。
【0121】
各支持部408は、2つの支持アーム405に対して上下方向(Z軸方向)と直交する面内での移動及び上下方向(Z軸方向)に対する傾きを許容するすべり支持部である。すなわち、各支持部408は、上下方向(Z軸方向)と直交する直交2軸(X軸方向とY軸方向)とにそれぞれ移動可能かつ傾動可能に、2つの支持アーム405を支持することにより、熱などの影響によりエアスライダ中空軸402に作用する変形力を緩和するようにしている。すなわち、エアスライダ中空軸402から両側に2つの支持アーム405が突出し、各支持アーム405の中間位置に駆動部407を配置した、十字型の構成になっているとともに、2つの支持アーム405の2つの支持部408は、滑り構成になっており、横スライド可能である。そのため、支持アーム405には横方向の力がかからず、支持アーム405を介してエアスライダ中空軸402には、エアスライダ中空軸402を曲げる力は働かない。よって、エアスライダ中空軸402は、上下方向のみに移動することができ、エアスライダ中空軸402の重心回りには回転モーメントがかからず、プローブ部403先端の回転運動を抑制することができる。
【0122】
図15に示すように、各支持部408は、具体的には、各支持アーム405を上下移動可能に支持するエアシリンダ427と、エアパッド428と、球面軸受部429とを備えている。エアシリンダ427のケーシング427cは、三次元形状測定装置300の定盤310などに固定されている。エアシリンダ427のロッド427aの上端には球面軸受部429を介してエアパッド428を連結して固定している。
【0123】
これにより、エアパッド428は、ロッド427aの上端に対して、球面軸受部429でZ軸周りの360度の方向に傾動自在に支持されている。エアパッド428の上面は、支持アーム405の先端の逆L字状の支持受け部405aの平坦面の下面に対向するように配置されている。
【0124】
エアパッド428の上面には、多数のエア噴出孔(図示しない)が形成されている。エアが、第1エア供給源441(
図15参照)からエアパッド428のエア吸入口(図示しない)に、常時一定圧力で供給され、前記多数のエア噴出孔から支持受け部405aの下面に向けてエアが噴出されて、エアパッド428と支持受け部405aの下面との間に微小間隔のエアギャップ部430(
図16参照)を構成している。
【0125】
すなわち、各支持アーム405の先端の支持受け部405aの平坦な下面に対向して、エアパッド428の前記エア噴出孔から噴射される圧縮空気の圧力により、各支持アーム405の先端の支持受け部405aの平坦な下面とエアパッド428との間に、わずかな隙間(エアギャップ部430)をあける。そして、この隙間を介して各支持部408が各支持アーム405を横移動自在に支持している。
【0126】
この結果、エアギャップ部430の水平方向の摺動抵抗は極めて少なく、各支持部408において、各支持アーム405との間に水平方向の力がほとんど発生しないようになっている。エアパッド428と球面軸受部429の台座429aとの間には球面軸受部429の球429bが回動可能に支持されており、エアパッド428に傾きが発生した場合には、その傾きの吸収が可能である。
【0127】
また、エアシリンダ427のロッド427aの下端には、ピストンの一例として機能するエアベアリング427bが固定されている。エアベアリング427bは、エアシリンダ427のケーシング427c内でロッド427aの軸方向に摺動する。このエアベアリング427bとケーシング427cとの間の内部空間427dには、制御部500によって第2エア供給源442からの空気の供給制御及び制御弁443の開閉制御の下に空気が供給されて、一対のエアシリンダ427が駆動され、各ロッド427aを上下移動させて、一対の支持アーム405を所定の高さに維持するように支持している。
【0128】
よって、一対のエアシリンダ427は、ロッド427aのストローク全域で、一対の支持アーム405を一定力で支持するようにしている。ロッド427aは、エアシリンダ427のケーシング427cから上下方向に移動可能な構成であり、エアシリンダ427のケーシング427cとロッド427aとの間はエアギャップで支持されている。このため、ケーシング427cとロッド427aとの間において、上下方向、及び、軸回りの回転方向の摺動抵抗は、極めて小さくなっている。
【0129】
このように、各支持アーム405に対して、各支持部408は最も外側に配置されている。なお、各駆動部407が各支持部408よりも外側に各支持アーム405に配置されているとすると、左右の各駆動部407、例えば、左右のリニアモータ420に推力差がある場合があり、その場合は、エアスライダ中空軸402から左右のリニアモータ420の中心軸までの距離が長いと、曲げモーメントが大きくなる。このため、左右のリニアモータ420の配置位置は、エアスライダ中空軸402に極力近いほうがよい。また、支持部408もエアスライダ中空軸402に近いほうが良い。
【0130】
前記構成によって、制御部500での制御の下に、XYステージ302に載置保持された測定物303に対して、プローブ部403を有するZ軸ステージ部301を接近させた初期位置まで2つの支持部408のエアシリンダ427で移動させたのち、2つの支持部408で、2つの支持アーム405を介してエアスライダ中空軸402を支持する。次いで、プローブ部403が測定物303の測定面に接触して所定の走査速度で走査するように2つの駆動部407のリニアモータ420を制御部500で駆動制御して、測定物303の三次元形状測定を行う。
【0131】
上記三次元形状測定装置のZ軸ステージ部301では、石製のエアスライダ外枠401の空気軸受部350の空気軸受面とは逆側の外表面(すなわち、エアスライダ中空軸402とは逆の表面)は、覆い部材361,362、363、364により覆われて、該覆い部材と前記外表面間の乾燥室内には空気が導入されるようにしている。この結果、石製のエアスライダ外枠401の反りを抑制することができる。
【0132】
なお、本発明の実施形態は前記実施形態及び変形例に限定されるものではなく、下記のように変更してもよい。
・第1実施形態において、下部ブロック74、75、覆い部材92、93、シール部材94、95等を省略してもよい。
【0133】
・第1実施形態において、下部ブロック74、75の空気軸受面74a、75aの乾燥による反りの影響が問題とならない場合には、覆い部材92、93、シール部材94、95等を省略してもよい。
【0134】
・第1実施形態では、覆い部材76~79、83、84、92、93に、乾燥室内に空気を導入する空気導入部及び前記乾燥室から外部へ前記乾燥室内の空気を排出する排出部が設けられていたが、軸受本体に乾燥室内に空気を導入する空気導入部及び乾燥室から外部へ乾燥室内の空気を排出する排出部が設けられていてもよい。
【0135】
・第2実施形態の変形例として、上部ブロック222の両第1領域228とX軸ガイド240との間にシール部材を介在させてもよい。
・上記した
図9の変形例と、第2実施形態を組み合わせて、凹部241と第2領域230の平面間で形成される空隙を乾燥室としてもよい。
【0136】
・産業機械は、検査装置に限定するものではなく、測定装置、工作機械、加工装置、及び半導体製造装置等の他の産業機械に適用できる。
【符号の説明】
【0137】
10…ステージ装置、20…石盤、30…X軸ガイド、
32…X軸スライダ、51、52、53…ニップル、
54…取付ブラケット、60A、60B…Y軸ガイド(案内部材)、
61…下部台、62…首部、63…頭部、
70A、70B…Y軸スライダ、71…上部ブロック、
71a…空気軸受面(第1面)、71b…給気孔、71c…空気流路、
71d…栓部、71e…上面(第2面)、72、73…側部ブロック、
72a、73a…空気軸受面(第1面)、72b、73b…給気孔、
72c、73c…空気流路、72d、73d…栓部、
72e、73e…側面(第2面)、74、75…下部ブロック、
74a、75a…空気軸受面、74b、75b…給気孔、
74c、75c…空気流路、74d、75d…栓部、
74e、75e…下面、76~79…覆い部材(カバー部材)、
76a、77a、78a、79a…貫通孔(空気導入部、排出部)、
76b、78b、79b…開口、80A、80B…支柱、
83、84…覆い部材(カバー部材)、
84a…貫通孔(空気導入部、排出部)、85…シール部材、86…乾燥室、
87、88…ニップル、89…シール部材、90、91…シール部材、
92、93…覆い部材(カバー部材)、
93a…貫通孔(空気導入部、排出部)、94、95…シール部材、
100…スライダ、102…凹部、104…空気軸受面、
200…ステージ装置、210…石盤、211…ガイド側面、
212…上面、220…Y軸スライダ、222…上部ブロック、
222a…空気軸受面(第1面)、222b…給気孔、222c…空気流路、
222d…栓部、222e…空気流路、223…ニップル、
224、226…側部ブロック、228…第1領域、230…第2領域、
230a…給気孔(空気導入部)、230b…空気流路、230c…栓部、
230d…空気流路、235…乾燥室、235a…開放口(排出部)、
240…X軸ガイド(案内部材、カバー部材)、
240a…給気孔、240b…空気流路、241…凹部、245…乾燥室、
245a…開放口、248…端部、350…空気軸受部、
351、352、353、354…空気軸受、
351a、352a、353a、354a…空気軸受面、
361、362、363、364…覆い部材(カバー部材)、
370…第4エア供給源、380…第3エア供給源、
401…エアスライダ外枠、401a…上部支持部、
401b…下部支持部、401c…隙間、
402…エアスライダ中空軸(案内部材)、404…フォーカス光学系、
405…支持アーム、405a…支持受け部、406…貫通穴、
407…駆動部、408…支持部、410…傾き光学系、
420…リニアモータ、421…コイル、422…中央ヨーク、
423…外側ヨーク、424…磁石、427…エアシリンダ、
427a…ロッド、427b…エアベアリング、427c…ケーシング、
427d…内部空間、428…エアパッド、429…球面軸受部、
430…エアギャップ部。