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特許7090248ヘテロコア光ファイバ温度センサの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-16
(45)【発行日】2022-06-24
(54)【発明の名称】ヘテロコア光ファイバ温度センサの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01K 11/32 20210101AFI20220617BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALI20220617BHJP
   G02B 6/02 20060101ALI20220617BHJP
   G02B 6/44 20060101ALI20220617BHJP
   C03C 25/1065 20180101ALI20220617BHJP
   C03C 25/48 20060101ALI20220617BHJP
   C03C 25/46 20060101ALI20220617BHJP
   C03C 25/42 20060101ALI20220617BHJP
   C03C 25/26 20180101ALI20220617BHJP
【FI】
G01K11/32 Z
B82Y40/00
G02B6/02 A
G02B6/02 411
G02B6/44 301A
G02B6/44 301B
G02B6/44 331
C03C25/1065
C03C25/48
C03C25/46
C03C25/42
C03C25/26
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019007239
(22)【出願日】2019-01-18
(65)【公開番号】P2020118460
(43)【公開日】2020-08-06
【審査請求日】2021-07-05
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 ▲1▼平成30年1月26日開催 平成29年度情報システム工学専攻修士論文発表会 東京都八王子市丹木町1丁目236番 学校法人創価大学 ▲2▼平成30年1月19日掲載 https://drive.google.com/file/d/1-6BQ8wZpZMLcfIjTSRIxNSO-stSBrmlF/view
(73)【特許権者】
【識別番号】598123138
【氏名又は名称】学校法人 創価大学
(73)【特許権者】
【識別番号】515117682
【氏名又は名称】株式会社コアシステムジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西山 道子
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 一弘
(72)【発明者】
【氏名】井田 旬一
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 博幸
【審査官】平野 真樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-341475(JP,A)
【文献】国際公開第2009/119796(WO,A1)
【文献】Anuj K. Sharma, B.D. Gupta,Theoretical model of a fiber optic remote sensor based on surface plasmon resonance for temperature detection,Optical Fiber Technology,2006年01月
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 11/32-11/324
B82Y 40/00
G02B 6/02,6/44
C03C 25/00-25/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバのヘテロコア部のクラッド層を被覆する貴金属層と、該貴金属層を被覆する二酸化チタン層とを備えるヘテロコア光ファイバ温度センサの製造方法であって、
該貴金属層の上に該貴金属層を被覆するポリリジン層を形成する工程と、
該ポリリジン層の上に二酸化チタンナノ粒子からなる二酸化チタンナノ粒子被膜を形成する工程と、
該ポリリジン層を形成する工程と該二酸化チタンナノ粒子被膜を形成する工程とを繰り返し、複数の該ポリリジン層と該二酸化チタンナノ粒子被膜とが交互に積層された複合積層体層を形成する工程と、
該複合積層体層が形成された光ファイバを焼成することにより該貴金属層を被覆する二酸化チタン層を形成する工程とを備えることを特徴とするヘテロコア光ファイバ温度センサの製造方法。
【請求項2】
請求項1記載のヘテロコア光ファイバ温度センサの製造方法において、前記二酸化チタンナノ粒子は、5~20nmの範囲の粒子径を備えることを特徴とするヘテロコア光ファイバ温度センサの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のヘテロコア光ファイバ温度センサの製造方法において、前記ポリリジン層を形成する工程は、前記光ファイバを5~20ミリモル/リットルの範囲の濃度を備えるポリリジン溶液に浸漬した後、乾燥して溶媒を除去することにより行うことを特徴とするヘテロコア光ファイバ温度センサの製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載のヘテロコア光ファイバ温度センサの製造方法において、前記二酸化チタンナノ粒子被膜を形成する工程は、前記光ファイバを10~20質量%の範囲の濃度を備える二酸化チタンナノ粒子水分散液に浸漬した後、乾燥することにより行うことを特徴とするヘテロコア光ファイバ温度センサの製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載のヘテロコア光ファイバ温度センサの製造方法において、前記複合積層体層が形成された光ファイバの焼成は、300~600℃の範囲の温度で、1~2時間の範囲の時間行うことを特徴とするヘテロコア光ファイバ温度センサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘテロコア光ファイバ温度センサの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光ファイバのクラッド層が除去されるなどして、コア内伝搬光が光ファイバ外界に漏洩できる構造において、その漏洩光が発生する光ファイバ線路上の表面に金等の貴金属からなる貴金属層を形成し、該貴金属層の上に、二酸化チタン等の外界の温度で鋭敏に屈折率が変化する材料の層を積層した温度センサが知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
前記温度センサによれば、光ファイバの伝搬光がクラッド部あるいは光ファイバ外界に漏洩し、貴金属層との境界面で全反射して生じるエバネッセント波が貴金属層表面の表面プラズモン波と共鳴を起こし表面プラズモン共鳴(SPR)が誘起される。ここで、SPRの共鳴波長は外界の屈折率に依存するので、貴金属層の上に積層された二酸化チタン層の屈折率の温度による変化を共鳴波長の変化として検出することにより、温度を検知することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Anuj K.Sharma., "Theoretical model of a fiber optic remote sensor based on surface plasmon resonance for temperature detection" Optical Fiber Technology, 12(2006), pp.87-100
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1に記載の温度センサでは、二酸化チタン層の屈折率の変化をSPRの共鳴波長により検出するために、該二酸化チタン層がある程度の厚さを備える単層の被膜であることが好ましいとされており、従来、ゾルゲル法又はスパッタリング法により該二酸化チタン層を形成することが検討されている。
【0006】
しかしながら、ゾルゲル法では均一な厚さを備える二酸化チタン層を形成することが難しく、スパッタリング法では装置内を真空にする必要があることから装置が大がかりになる上、生産効率が低く、成膜に時間がかかるという不都合がある。
【0007】
本発明は、かかる不都合を解消して、屈折率の変化をSPRの共鳴波長により検出するために十分な厚さを備える二酸化チタン層を容易に形成することができる伝搬光漏洩を利用したヘテロコア光ファイバ温度センサの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するために、本発明のヘテロコア光ファイバ温度センサの製造方法は、光ファイバのヘテロコア部のクラッド層を被覆する貴金属層と、該貴金属層を被覆する二酸化チタン層とを備えるヘテロコア光ファイバ温度センサの製造方法であって、該貴金属層の上に該貴金属層を被覆するポリリジン層を形成する工程と、該ポリリジン層の上に二酸化チタンナノ粒子からなる二酸化チタンナノ粒子被膜を形成する工程と、該ポリリジン層を形成する工程と該二酸化チタンナノ粒子被膜を形成する工程とを繰り返し、複数の該ポリリジン層と該二酸化チタンナノ粒子被膜とが交互に積層された複合積層体層を形成する工程と、該複合積層体層が形成された光ファイバを焼成することにより該貴金属層を被覆する二酸化チタン層を形成する工程とを備えることを特徴とする。
【0009】
本発明の製造方法によれば、まず、光ファイバのヘテロコア部のクラッド層を被覆する貴金属層の上に該貴金属層を被覆するポリリジン層を形成し、次いで、該ポリリジン層の上に二酸化チタンナノ粒子からなる二酸化チタンナノ粒子被膜を形成する。そして、前記ポリリジン層を形成する工程と前記二酸化チタンナノ粒子被膜を形成する工程とを繰り返し、複数の該ポリリジン層と該二酸化チタンナノ粒子被膜とが交互に積層された複合積層体層を形成する。
【0010】
このとき、前記ポリリジンは正に帯電しており、前記二酸化チタンナノ粒子は負に帯電しているので、該ポリリジンと該二酸化チタンナノ粒子との静電相互作用により、容易に前記複合積層体層を形成することができる。
【0011】
本発明の製造方法では、次に、複合積層体層が形成された光ファイバを焼成する。このようにすると、前記ポリリジンが熱分解されて除去される一方、前記二酸化チタンナノ粒子が焼結されて単層の二酸化チタン層となるので、屈折率の変化をSPRの共鳴波長により検出するために十分な厚さを備える二酸化チタン層を得ることができる。
【0012】
本発明の製造方法では、前記二酸化チタンナノ粒子は、5~20nmの範囲の粒子径を備えるものを用いることができる。
【0013】
また、本発明の製造方法において、前記ポリリジン層を形成する工程は、例えば、前記光ファイバを5~20ミリモル/リットルの範囲の濃度を備えるポリリジン溶液に浸漬した後、乾燥して溶媒を除去することにより行うことができる。
【0014】
また、本発明の製造方法において、前記二酸化チタンナノ粒子被膜を形成する工程は、前記光ファイバを10~20質量%の範囲の濃度を備える二酸化チタンナノ粒子水分散液に浸漬した後、乾燥することにより行うことができる。
【0015】
本発明の製造方法において、前記複合積層体層が形成された光ファイバの焼成は、300~600℃の範囲の温度で、1~2時間の範囲の時間行うことが好ましい。前記焼成は、300℃未満の温度で、1時間未満の時間行うと、ポリリジンが残存し、また二酸化チタンナノ粒子の焼結が十分に行われず二酸化チタン層の強度が低くなるという不都合があり、600℃を超える温度で、2時間を超える時間行うと、光ファイバの強度が保てなくなるという不都合がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明のヘテロコア光ファイバ温度センサの構成を示す説明図。
図2】Aは図1のA部を拡大して示す説明的断面図、Bは図2AのB部の製造方法を拡大して示す説明的断面図。
図3】本発明の製造方法で得られたヘテロコア光ファイバ温度センサにおけるSPRの共鳴波長の温度による変化を示すグラフ。
図4】本発明の製造方法で得られたヘテロコア光ファイバ温度センサにおける温度と光損失との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、添付の図面を参照しながら本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。
【0018】
図1に示すように、本実施形態のヘテロコア光ファイバ温度センサ1は、ヘテロコア部2を備える光ファイバ3からなり、光ファイバ3は一方の端部が光源4に接続され、他方の端部が受光部5に接続されている。また、受光部5は解析部6に接続されている。光源4は光ファイバ2に光を照射し、受光部5は光ファイバ2を介して伝搬された光を検出する。解析部6は、受光部5で検出された光の波長に対する伝搬光強度スペクトル等の解析を行う。
【0019】
ヘテロコア部2は、図2Aに示すように、コア径50μmのマルチモード光ファイバ11の任意の位置に、コア径3μmのシングルモード光ファイバ12を15mmの長さで挿入し、融着したものである。
【0020】
本実施形態のヘテロコア光ファイバ温度センサ1は、ヘテロコア部2の外周のクラッド層13を被覆する貴金属層14と、貴金属層14を被覆する二酸化チタン層15とを備える。
【0021】
次に、本実施形態のヘテロコア光ファイバ温度センサ1の製造方法について説明する。
【0022】
本実施形態の製造方法では、まず、光ファイバ3のヘテロコア部2の外周のクラッド層13を被覆する貴金属層14を形成する。貴金属層14は、例えば、金又は銀からなり、高周波スパッタリング装置を用いて円筒形の光ファイバ3の周囲に均一な厚みで成膜することにより形成することができる。この結果、貴金属層14は、例えば、厚さ25nmの金の薄膜からなる。
【0023】
本実施形態の製造方法では、次に、図2Bに示すように、光ファイバ3の貴金属層14の上にポリリジン層16を形成する。ポリリジン層16は、ヘテロコア部2の外周に貴金属層14を備える光ファイバ3をポリリジン溶液に浸漬し、乾燥させて溶媒を除去することにより形成することができる。
【0024】
ポリリジン((C12O)、モル質量70000~150000)は、L-リジンの低分子天然ホモポリマーであり、細菌による発酵により生産される。前記ポリリジン溶液は、前記ポリリジンを、5~20モル/リットルの範囲の濃度で、溶媒としての純水に溶解したものである。
【0025】
本実施形態の製造方法では、次に、図2Bに示すように、光ファイバ3のポリリジン層16の上に二酸化チタンナノ粒子からなる二酸化チタンナノ粒子被膜17を形成する。二酸化チタンナノ粒子被膜17は、貴金属層14の上にポリリジン層16を備える光ファイバ3を二酸化チタンナノ粒子水分散液に浸漬し、乾燥させることにより形成することができる。
【0026】
前記二酸化チタンナノ粒子水分散液は、5~20nmの範囲の粒子径を備える二酸化チタンナノ粒子を10~20質量%の範囲の濃度で水に分散させたものであり、例えば、テイカ株式会社製微粒子酸化チタン(商品名:TDK-801)を用いることができる。
【0027】
上述のようにすると、前記ポリリジンは正に帯電しており、前記二酸化チタンナノ粒子は負に帯電しているので、該ポリリジンと該二酸化チタンナノ粒子との静電相互作用により、ポリリジン層16と二酸化チタンナノ粒子被膜17とを単位とする複合積層体層18を形成することができる。
【0028】
本実施形態の製造方法では、次に、ポリリジン層16の形成と二酸化チタンナノ粒子被膜17の形成とを相互に繰り返すことにより、複合積層体層18を5~20層、例えば14層積層する。
【0029】
本実施形態の製造方法では、次に、5~20層の複合積層体層18が積層された光ファイバ3を300~600℃の範囲の温度で1~2時間の範囲の時間、例えば、500℃の温度で1時間焼成する。このようにすると、複合積層体層18を構成するポリリジン層15が熱分解されて除去される一方、二酸化チタンナノ粒子被膜17中の前記二酸化チタンナノ粒子が焼結されるので、図2Aに示すように、屈折率の変化をSPRの共鳴波長により検出するために十分な厚さを備える単層の二酸化チタン層15を得ることができる。
【0030】
次に、本実施形態の製造方法により得られたヘテロコア光ファイバ温度センサ1のヘテロコア部2を電気炉内に設置し、電気炉内の温度を100℃から300℃まで50℃毎に変化させて、光源4から400~1800nmの波長の光を光ファイバ3に入射し、受光部5で検出された透過光スペクトルを解析部6で測定した。結果を図3に示す。
【0031】
図3から、温度上昇に伴ってスペクトルが短波長側にシフトし、波長800~1200nmにおいて光強度が減衰することがわかる。
【0032】
次に、波長800~1200nmの100℃における光強度の平均値を基準にした温度に対する光損失の変化を図4に示す。図4から、温度上昇に伴って光損失値が直線的に増加することが明らかであり、本実施形態の製造方法により得られたヘテロコア光ファイバ温度センサ1を温度センサとして用いることができることがわかる。
【符号の説明】
【0033】
1…ヘテロコア光ファイバ温度センサ、 2…ヘテロコア部、 3…光ファイバ、 13…クラッド層、 14…貴金属層、 15…二酸化チタン層、 16…ポリリジン層、 17…二酸化チタンナノ粒子被膜、 18…複合積層体層。
図1
図2
図3
図4