(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-16
(45)【発行日】2022-06-24
(54)【発明の名称】温度調整装置、駆動装置、遺伝子増幅システム、遺伝子増幅方法、及び遺伝子増幅プログラム
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20220617BHJP
C12Q 1/6844 20180101ALI20220617BHJP
【FI】
C12M1/00 A
C12Q1/6844 Z
(21)【出願番号】P 2022004729
(22)【出願日】2022-01-14
【審査請求日】2022-01-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515177608
【氏名又は名称】ヨダカ技研株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】503359821
【氏名又は名称】国立研究開発法人理化学研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100190274
【氏名又は名称】山下 滋之
(72)【発明者】
【氏名】平藤 衛
(72)【発明者】
【氏名】富永 一郎
(72)【発明者】
【氏名】城口 克之
【審査官】佐久 敬
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-507849(JP,A)
【文献】特開2020-89375(JP,A)
【文献】国際公開第2017/122333(WO,A1)
【文献】特開2016-168018(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107574120(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104164363(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M
C12Q
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
PCRチューブ内のサンプルの温度を調整する温度調整装置であって、
PCRチューブが差し込まれる挿入穴が設けられ、前記サンプルを第1温度まで加熱する第1ブロック部材と、
PCRチューブが差し込まれる挿入穴が設けられ、前記サンプルを前記第1温度よりも差分温度だけ低い第2温度まで加熱する第2ブロック部材と、
板状のペルチェ素子からなり、一方の面が前記第1ブロック部材に接続されると共に他方の面が前記第2ブロック部材に接続され、前記第1ブロック部材及び前記第2ブロック部材を加熱する主加熱部材と、を有する、温度調整装置。
【請求項2】
前記第1ブロック部材の前記主加熱部材とは反対側の面に接続されたヒートシンクと、該ヒートシンクに並設されたファンと、を有する、請求項1に記載の温度調整装置。
【請求項3】
板状のペルチェ素子からなり、一方の面が前記第1ブロック部材の前記主加熱部材とは反対側の面に接続された第1調整部材を有する、請求項1に記載の温度調整装置。
【請求項4】
前記第1調整部材の前記第1ブロック部材とは反対側の面に接続されたヒートシンクと、該ヒートシンクに並設されたファンと、をさらに有する、請求項3に記載の温度調整装置。
【請求項5】
板状のペルチェ素子からなり、一方の面が前記第2ブロック部材の前記主加熱部材とは反対側の面に接続された第2調整部材を有する、請求項1~4の何れか一項に記載の温度調整装置。
【請求項6】
前記第2調整部材の前記第2ブロック部材とは反対側の面に接続されたヒートシンクと、該ヒートシンクに並設されたファンと、を有する、請求項5に記載の温度調整装置。
【請求項7】
前記第2ブロック部材の前記主加熱部材とは反対側の面に接続されたヒートシンクと、該ヒートシンクに並設されたファンと、を有する、請求項1~4の何れか一項に記載の温度調整装置。
【請求項8】
PCRチューブ内のサンプルの温度を調整する温度調整装置であって、
PCRチューブが差し込まれる挿入穴が設けられ、前記サンプルを第1温度まで加熱する第1ブロック部材と、
PCRチューブが差し込まれる挿入穴が設けられ、前記サンプルを前記第1温度よりも差分温度だけ低い第2温度まで加熱する第2ブロック部材と、
板状のヒータからなり、一方の面が前記第1ブロック部材に接続されると共に他方の面が前記第2ブロック部材に接続され、前記第1ブロック部材及び前記第2ブロック部材を加熱する主加熱部材と、
前記第1ブロック部材の加熱用の高温側調整部材と、を有する、温度調整装置。
【請求項9】
前記第2ブロック部材の前記主加熱部材とは反対側の面に接続されたヒートシンクと、該ヒートシンクに並設されたファンと、を有する、請求項8に記載の温度調整装置。
【請求項10】
板状のペルチェ素子からなり、一方の面が前記第2ブロック部材の前記主加熱部材とは反対側の面に接続された第2調整部材を有する、請求項8に記載の温度調整装置。
【請求項11】
前記第2調整部材の前記第2ブロック部材とは反対側の面に接続されたヒートシンクと、該ヒートシンクに並設されたファンと、をさらに有する、請求項10に記載の温度調整装置。
【請求項12】
前記高温側調整部材は、
板状のペルチェ素子からなり、一方の面が前記第1ブロック部材の前記主加熱部材とは反対側の面に接続された第1調整部材を有する、請求項8~11の何れか一項に記載の温度調整装置。
【請求項13】
前記高温側調整部材は、
前記第1調整部材の前記第1ブロック部材とは反対側の面に接続されたヒートシンクと、該ヒートシンクに並設されたファンと、をさらに有する、請求項12に記載の温度調整装置。
【請求項14】
前記高温側調整部材は、
前記第1ブロック部材の前記主加熱部材とは反対側の面に接続されたヒータである、請求項8~11の何れか一項に記載の温度調整装置。
【請求項15】
前記第1ブロック部材の側面のうちの1つ又は底面に設けられ、前記第1ブロック部材からの放熱を促す高温側放熱部材を有する、請求項1~14の何れか一項に記載の温度調整装置。
【請求項16】
前記第2ブロック部材の側面のうちの1つ又は底面に設けられ、前記第2ブロック部材からの放熱を促す低温側放熱部材を有する、請求項1~15の何れか一項に記載の温度調整装置。
【請求項17】
前記第1ブロック部材の挿入穴に差し込まれるPCRチューブの底部の温度を測定する第1温度測定部と、
前記第2ブロック部材の挿入穴に差し込まれるPCRチューブの底部の温度を測定する第2温度測定部と、をさらに有する、請求項1~16の何れか一項に記載の温度調整装置。
【請求項18】
請求項1~17の何れか一項に記載の温度調整装置と、
請求項1~17の何れか一項に記載の温度調整装置における各挿入穴にPCRチューブを差し込むための駆動装置と、を有
し、
前記駆動装置は、
PCRチューブを保持するアーム部材と、
前記アーム部材を上下方向に移動させる上下移動機構部と、
前記アーム部材を水平方向に移動させる水平移動機構部と、を有する、遺伝子増幅システム。
【請求項19】
請求項17に記載の温度調整装置と、
前記第1温度測定部及び前記第2温度測定部において測定された各温度をもとに、前記第1ブロック部材及び前記第2ブロック部材の温度を制御する制御装置と、を有する遺伝子増幅システム。
【請求項20】
請求項1~17の何れか一項に記載の温度調整装置における各挿入穴にPCRチューブを差し込むための駆動装置を制御する制御装置が、
前記第1ブロック部材の挿入穴にPCRチューブが差し込まれた状態を高温保持時間が経過するまで維持する解離工程と、前記第2ブロック部材の挿入穴にPCRチューブが差し込まれた状態を低温保持時間が経過するまで維持する伸長工程と、を含むサイクル処理を、規定回数に到達するまで繰り返し行う、遺伝子増幅方法。
【請求項21】
請求項1~17の何れか一項に記載の温度調整装置における各挿入穴にPCRチューブを差し込むための駆動装置を制御する制御装置に搭載されたコンピュータを、
前記第1ブロック部材の挿入穴にPCRチューブが差し込まれた状態を高温保持時間が経過するまで維持した後、前記第2ブロック部材の挿入穴にPCRチューブが差し込まれた状態を低温保持時間が経過するまで維持するサイクル処理を、規定回数に到達するまで繰り返し行う駆動処理手段、として機能させるための、遺伝子増幅プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PCRチューブを用いて行う遺伝子増幅に係る温度調整装置、駆動装置、遺伝子増幅システム、遺伝子増幅方法、及び遺伝子増幅プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
PCR(Polymerase Chain Reaction:ポリメラーゼ連鎖反応)は、変性、アニーリング、エクステンションの3つの工程からなるサーマルサイクルを複数回繰り返し、標的となるDNAの正確なコピーを指数関数的に増幅する技術である。ここで、変性とは、2本鎖DNAテンプレートを加熱してDNA鎖を分離させる工程である。アニーリングとは、プライマーと呼ばれる短い断片を、標的となるDNAの隣接領域に結合させる工程である。エクステンションとは、DNAの伸長反応のことであり、具体的には、DNAポリメラーゼが、各プライマーを起点に3′末方向にテンプレートの相補鎖を合成する工程である。
【0003】
PCRは、1983年に発想され、これに関係する装置や試薬類の開発は、1990年初頭に始まり、先進国の研究市場に広がっていった。PCRは、現在の生命科学分野の研究、及び遺伝子診断において、最も活用されている技術の1つである。
【0004】
従来法のPCRのサーマルサイクルでは、サンプルを3つの温度に変化させる必要があったが、酵素開発の発展により、サンプルを2つの温度に変化させるだけで、有用な増幅反応が得られるようになっている。
【0005】
サンプルの温度を変化させて増幅反応を得る装置としては、サーマルサイクラー(Thermal cycler)が知られている(例えば、特許文献1参照)。サーマルサイクラーは、サンプルの入った容器にペルチェ素子を隣接させ、ペルチェ素子の温度を変化させることにより、サンプルに対するサーマルサイクルの処理を実現するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ペルチェ素子の性能向上が近年頭打ちとなっているため、サーマルサイクラーによるPCRの高速化は困難な状況にある。それにもかかわらず、新型コロナウイルスは、世界各国でいまだに猛威を振るっており、特に発展途上国では、衛生状況が要因となり、マラリア、デング熱、ジカ熱、エボラ出血熱、ラッサ熱など、様々な感染症がはびこっている。したがって、PCRの高速化に対するニーズは世界各国において益々高まっており、PCRの迅速化に貢献するデバイスや手法などが望まれている。
【0008】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたものであり、遺伝子の増幅処理を迅速に行うための温度調整装置、駆動装置、遺伝子増幅システム、遺伝子増幅方法、及び遺伝子増幅プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る温度調整装置は、PCRチューブ内のサンプルの温度を調整する温度調整装置であって、PCRチューブが差し込まれる挿入穴が設けられ、サンプルを第1温度まで加熱する第1ブロック部材と、PCRチューブが差し込まれる挿入穴が設けられ、サンプルを第1温度よりも差分温度だけ低い第2温度まで加熱する第2ブロック部材と、板状のペルチェ素子からなり、一方の面が第1ブロック部材に接続されると共に他方の面が第2ブロック部材に接続され、第1ブロック部材及び第2ブロック部材を加熱する主加熱部材と、を有するものである。
【0010】
本発明の一態様に係る温度調整装置は、PCRチューブ内のサンプルの温度を調整する温度調整装置であって、PCRチューブが差し込まれる挿入穴が設けられ、サンプルを第1温度まで加熱する第1ブロック部材と、PCRチューブが差し込まれる挿入穴1hが設けられ、サンプルを第1温度よりも差分温度だけ低い第2温度まで加熱する第2ブロック部材と、板状のヒータからなり、一方の面が第1ブロック部材に接続されると共に他方の面が第2ブロック部材に接続され、第1ブロック部材及び第2ブロック部材を加熱する主加熱部材と、第1ブロック部材の加熱用の高温側調整部材と、を有するものである。
【0011】
本発明の一態様に係る駆動装置は、上記の温度調整装置における各挿入穴にPCRチューブを差し込むための駆動装置であって、PCRチューブを保持するアーム部材と、アーム部材を上下方向に移動させる上下移動機構部と、アーム部材を水平方向に移動させる水平移動機構部と、を有するものである。
【0012】
本発明の一態様に係る遺伝子増幅システムは、上記の温度調整装置と、上記の駆動装置と、を有するものである。
本発明の一態様に係る遺伝子増幅システムは、上記の駆動装置と、上下移動機構部及び水平移動機構部の動作を制御する管理装置と、を有するものである。
本発明の一態様に係る遺伝子増幅システムは、第1ブロック部材の挿入穴に差し込まれるPCRチューブの底部の温度を測定する第1温度測定部と、第2ブロック部材の挿入穴に差し込まれるPCRチューブの底部の温度を測定する第2温度測定部と、を備えた上記の温度調整装置と、第1温度測定部及び第2温度測定部において測定された各温度をもとに、第1ブロック部材及び第2ブロック部材の温度を制御する管理装置と、有するものである。
【0013】
本発明の一態様に係る遺伝子増幅方法は、上記の駆動装置を制御する管理装置が、第1ブロック部材の挿入穴にPCRチューブが差し込まれた状態を高温保持時間が経過するまで維持するDNA解離工程と、第2ブロック部材の挿入穴にPCRチューブが差し込まれた状態を低温保持時間が経過するまで維持するDNA伸長工程と、を含むサイクル処理を、規定回数に到達するまで繰り返し行うものである。
【0014】
本発明の一態様に係る遺伝子増幅プログラムは、上記の駆動装置を制御する管理装置に搭載されたコンピュータを、第1ブロック部材の挿入穴にPCRチューブが差し込まれた状態を高温保持時間が経過するまで維持した後、第2ブロック部材の挿入穴にPCRチューブが差し込まれた状態を低温保持時間が経過するまで維持するサイクル処理を、規定回数に到達するまで繰り返し行う駆動処理手段、として機能させるためのものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、PCRチューブ内のサンプルを加熱する第1ブロック部材と、該サンプルを第1ブロック部材よりも差分温度だけ低い温度に加熱する第2ブロック部材と、第1ブロック部材と第2ブロック部材との間に設けられた主加熱部材と、を有している。よって、第1ブロック部材と第2ブロック部材とをそれぞれ、遺伝子の増幅に適した2つの温度に精度よく調整することができるため、PCRチューブを第1ブロック部材の挿入穴と第2ブロック部材の挿入穴とに交互に挿し込むことにより、迅速に遺伝子を増幅させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る遺伝子増幅システムの全体的な構成を例示した概要図である。
【
図2】
図1の温度調整装置及びその周辺の構成を例示した説明図である。
【
図3】本発明の実施の形態1に係る温度調整装置を概略的に例示した説明図である。
【
図4】
図1の制御装置の機能的な構成を例示したブロック図である。
【
図5】
図4の制御装置による温度調整処理の動作の流れを例示したフローチャートである。
【
図6】本発明の実施の形態1に係る遺伝子増幅方法のうち、駆動装置に関する動作の流れを例示したフローチャートである。
【
図7】本発明の実施の形態1の変形例1Aに係る温度調整装置を概略的に例示した説明図である。
【
図8】本発明の実施の形態1の変形例1Bに係る温度調整装置を概略的に例示した説明図である。
【
図9】本発明の実施の形態1の変形例1Cに係る温度調整装置を概略的に例示した説明図である。
【
図10】本発明の実施の形態1の変形例1Dに係る温度調整装置を概略的に例示した説明図である。
【
図11】本発明の実施の形態1の変形例1Eに係る温度調整装置を概略的に例示した説明図である。
【
図12】本発明の実施の形態2に係る温度調整装置を概略的に例示した説明図である。
【
図13】本発明の実施の形態2の変形例2Aに係る温度調整装置を概略的に例示した説明図である。
【
図14】本発明の実施の形態2の変形例2Bに係る温度調整装置を概略的に例示した説明図である。
【
図15】本発明の実施の形態2の変形例2Cに係る温度調整装置を概略的に例示した説明図である。
【
図16】本発明の実施例1の増幅実験1に係る電気泳動データの一例を示すグラフである。
【
図17】本発明の実施例1の増幅実験2に係る電気泳動データの一例を示すグラフである。
【
図18】本発明の実施例に係る温度調整装置の温度変化の一例を示すグラフである。
【
図19】本発明の実施例に係る温度調整装置の温度変化の他の例を示すグラフである。
【
図20】本発明の実施例2に係る電気泳動データの一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
実施の形態1.
図1~
図3を参照して、本発明の実施の形態1における遺伝子増幅システムの全体的な構成例について説明する。
図1に示すように、遺伝子増幅システム100は、温度調整装置10と、管理装置20と、駆動装置30と、を有している。
図1~
図3では、管理装置20における表示部24側を前側とした上で、左右方向をx軸方向、前後方向をy軸方向、上下方向をz軸方向と定義している。また、
図3では、熱の移動を白抜き矢印で例示している。以下の各図においても同様である。
【0018】
遺伝子増幅システム100は、容器状に形成された1又は複数のPCRチューブ5と、PCRチューブ5を支持するPCRキャップ6と、を有していてもよい。以降では、PCRチューブのことを「チューブ」ともいい、PCRキャップのことを「キャップ」ともいう。各図に示すチューブ5は、下方に向かって細くなるように形成されている。チューブ5としては、例えば、容量が200μLのものを用いることができる。キャップ6は、チューブ5が挿入される支持穴6hを有している。
図1及び
図2では、キャップ6に4つの支持穴6hが設けられ、支持穴6hの各々にチューブ5が挿入された例を示している。
【0019】
管理装置20は、直方体状の筐体21と、筐体21の上面に設けられたプレート部材22と、操作ボタン等を含んで構成された操作部23と、例えば液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)からなり、種々の情報を表示する表示部24と、を有している。プレート部材22は、例えばアルミニウムにより形成され、筐体21の放熱用に設けられている。また、管理装置20は、筐体21の内部に、制御装置25と、電源装置80と、を有している。電源装置80は、遺伝子増幅システム100の各装置(例えば、温度調整装置、管理装置、及び駆動装置)に電源を供給するものである。
【0020】
制御装置25は、遺伝子増幅システム100の温度調整装置10及び駆動装置30を制御し管理するコントローラである。制御装置25は、ユーザの指示や設定の内容に応じて、表示部24に種々の情報を表示させる。また、制御装置25は、駆動装置30の動作を制御する。さらに、制御装置25は、温度調整装置10における第1ブロック部材11の温度及び第2ブロック部材12の温度を制御する。
【0021】
駆動装置30は、上下移動機構部40と、水平移動機構部50と、アーム部材60と、を有している。上下移動機構部40には、ラックアンドピニオン方式が採用されている。すなわち、上下移動機構部40は、外郭をなす箱状の上下ハウジング41と、電動機である第1モータ42と、第1モータ42の軸に固定された第1ピニオン43と、板状又は棒状に形成された第1ラック44と、を有している。第1ラック44は、側面に歯車を有しており、その歯車が第1ピニオン43の歯車と噛み合うように、上下方向に沿って配設されている。かかる構成により、上下移動機構部40は、第1モータ42が駆動すると、第1ピニオン43が回転し、これに連動して第1ラック44が上下方向に移動する。第1モータ42、第1ピニオン43、及び第1ラック44の一部は、上下ハウジング41内に配置されている。第1ラック44は、上下ハウジング41の上部の穴を貫通するように配置されており、上端部が水平移動機構部50の水平ハウジング51に固定されている。
【0022】
水平移動機構部50にも、ラックアンドピニオン方式が採用されている。すなわち、水平移動機構部50は、外郭をなす箱状の水平ハウジング51と、電動機である第2モータ52と、第2モータ52の軸に固定された第2ピニオン53と、板状又は棒状に形成された第2ラック54と、を有している。第2ラック54は、側面に歯車を有しており、その歯車が第2ピニオン53の歯車と噛み合うように、左右方向に沿って配設される。かかる構成により、第2モータ52が駆動すると、第2ピニオン53が回転し、これに連動して第2ラック54が左右方向に移動する。第2モータ52、第2ピニオン53、及び第2ラック54の一部は、水平ハウジング51内に配置されている。第2ラック54は、両端部がそれぞれ、水平ハウジング51の側壁上部における対向する位置に設けられた2つの穴を貫通するように配置されており、一端部がアーム部材60のアーム部61に固定されている。
【0023】
アーム部材60は、アーム部61と、ヒータハウジング62と、ホールド部63と、上部ヒータ64と、を有している。ヒータハウジング62は、アーム部61に連結された板状の部材である。ホールド部63は、ヒータハウジング62に設けられ、キャップ6を介してチューブ5を保持するものである。上部ヒータ64は、ヒータハウジング62に設けられており、チューブ5の上部にあるキャップ6に熱をかけるものである。上部ヒータ64は、キャップ6を高温にすることで、チューブ5内のサンプルの蒸発を防ぐように機能する。ここで、サンプルとは、増幅したい遺伝子、試薬、及びプライマーを含む試料のことである。より具体的に、サンプルは、(1)増幅ターゲットとなるDNAテンプレート、(2)プライマー断片フォワードとリバース、(3)耐熱性DNAポリメラーゼ、(4)DNAを構成する4種のヌクレオチド、(5)バッファー(+水)(+塩)を含む。
【0024】
このように、駆動装置30は、上下移動機構部40と水平移動機構部50とアーム部材60とが連結しているため、上下移動機構部40の動作によりチューブ5の上下方向の高速移動が可能となり、水平移動機構部50の動作によりチューブ5の左右方向の高速移動が可能となる。
【0025】
温度調整装置10は、チューブ5内のサンプルの温度を調整するものである。本実施の形態1における温度調整装置10は、第1ブロック部材11と、第2ブロック部材12と、主加熱部材13と、を有している。第1ブロック部材11及び第2ブロック部材は、チューブ5の差し込みが可能なチャンバー構造を有している。すなわち、第1ブロック部材11は、チューブ5が差し込まれる挿入穴1hが設けられ、サンプルを第1温度T1まで加熱するものである。第2ブロック部材12は、チューブ5が差し込まれる挿入穴1hが設けられ、サンプルを第1温度T1よりも差分温度だけ低い第2温度T2まで加熱するものである。
【0026】
第1温度T1は、サーマルサイクルにおける第1ブロック部材11の設定温度である。第1温度T1は、例えば94℃に設定され、適宜変更することができる。第1温度T1は、92℃以上99℃以下の範囲内に設定するとよい。第2温度T2は、サーマルサイクルにおける第2ブロック部材12の設定温度である。第2温度T2は、例えば65℃あるいは62℃に設定され、適宜変更することができる。第2温度T2は、55℃以上75℃以下の範囲内に設定するとよい。例えば、第1温度T1が95℃に設定され、第2温度T2が65℃に設定された場合、差分温度は30℃となる。第1ブロック部材11及び第2ブロック部材は、例えばアルミニウムにより形成される。
【0027】
図2に示すように、第1ブロック部材11の前面には、温度測定用の測定穴7hが設けられており、第2ブロック部材12の前面には、温度測定用の測定穴8hが設けられている。
図3に示すように、温度調整装置10は、例えば熱電対からなる第1温度測定部3a及び第2温度測定部3bを有している。第1温度測定部3aは、測定穴7hに差し込まれ、第2温度測定部3bは、測定穴8hに差し込まれている。測定穴7hは、第1温度測定部3aが差し込まれた状態で封止され、測定穴8hは、第2温度測定部3bが差し込まれた状態で封止されている。
【0028】
第1温度測定部3a及び第2温度測定部3bは、それぞれ、先端が各ブロック部材の挿入穴1hの底部近傍に配置される。よって、第1温度測定部3a及び第2温度測定部3bのそれぞれの先端は、チューブ5内のサンプルの中心部近傍に配置される。つまり、第1温度測定部3aは、第1ブロック部材11の挿入穴1hに差し込まれるチューブ5の底部の温度を測定するものである。第2温度測定部3bは、第2ブロック部材12の挿入穴1hに差し込まれるチューブ5の底部の温度を測定するものである。第1温度測定部3aは、測定した温度の情報である第1温度データを制御装置25へ送信する。第2温度測定部3bは、測定した温度の情報である第2温度データを制御装置25へ送信する。
【0029】
本実施の形態1における主加熱部材13は、板状のペルチェ素子により構成されている。ペルチェ素子からは、2本の電線(図示せず)が延びており、制御装置25に接続されている。ペルチェ素子は、電圧を上げることにより、両側面間の温度差が大きくなり、最大温度差は60℃程度である。
【0030】
主加熱部材13は、一方の面が第1ブロック部材11に接続されると共に他方の面が第2ブロック部材12に接続され、第1ブロック部材11及び第2ブロック部材12を加熱するものである。すなわち、主加熱部材13は、第1ブロック部材11と第2ブロック部材12との間に設けられている。例えば、主加熱部材13の両側面は、例えば熱伝導グリースなどを介して第1ブロック部材11と第2ブロック部材12とに当接している。他の部材同士の接続関係も同様である。
【0031】
温度調整装置10は、第1ブロック部材11の温度調整用の高温側調整部材14を有している。本実施の形態1における高温側調整部材14は、第1ブロック部材11の主加熱部材13とは反対側の面に接続されたヒートシンク4aと、ヒートシンク4aに並設されたファン4bと、により構成されている。ファン4bは、回転することにより、ヒートシンク4aからの放熱を促進する。すなわち、高温側調整部材14は、第1ブロック部材11の熱を放出するように作用する。ファン4bと制御装置25とは、制御線により接続されている。
【0032】
温度調整装置10は、第2ブロック部材12の温度調整用の低温側調整部材15を有している。本実施の形態1の低温側調整部材15は、第2調整部材15Aと、ヒートシンク5aと、ファン5bと、を有している。第2調整部材15Aは、板状のペルチェ素子からなり、一方の面が第2ブロック部材12の主加熱部材13とは反対側の面に接続されている。ヒートシンク5aは、第2調整部材15Aの第2ブロック部材12とは反対側の面に接続されている。ファン5bは、ヒートシンク5aに並設されており、回転することで、ヒートシンク5aからの放熱を促進する。ファン5bと制御装置25とは、制御線により接続されている。
【0033】
次に、
図4を参照して、
図1の制御装置25の機能的な構成例について説明する。制御装置25は、通信部26と、制御部27と、記憶部28と、を有している。通信部26は、外部機器との間で制御部27が有線又は無線により通信を行うためのインタフェースである。なお、
図4では、外部機器として、第1温度測定部3a、第2温度測定部3b、主加熱部材13、高温側調整部材14、低温側調整部材15、操作部23、及び表示部24、上下移動機構部40、水平移動機構部50、及び上部ヒータ64を例示している。なお、高温側放熱部材16及び低温側放熱部材17は、後述する各変形例で説明する外部機器である。
【0034】
記憶部28には、遺伝子増幅プログラム28pなどの制御部27の動作プログラムの他、種々の情報が記憶される。記憶部28には、例えば、第1温度T1、第2温度T2、規定回数、高温保持時間、及び低温保持時間などの情報が記憶される。規定回数は、サーマルサイクルにおけるサイクル数のことであり、テンプレートのサンプル濃度に応じて、例えば25~40の範囲で設定され、適宜変更することができる。以降では、規定回数のサーマルサイクル全体を「温度サイクル」ともいう。高温保持時間は、温度サイクルの1サイクルにおいて、第1ブロック部材11にチューブ5を入れておく時間のことであり、低温保持時間は、温度サイクルの1サイクルにおいて、第2ブロック部材12にチューブ5を入れておく時間のことである。
【0035】
記憶部28には、第1温度データと第2温度データとの組み合わせと、各アクチュエータ(本実施の形態1では、主加熱部材13、高温側調整部材14、及び低温側調整部材15)の制御内容とを関連づけた温度調整テーブルが格納されていてもよい。後述する各変形例及び実施の形態2についても同様である。各記憶部28は、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、SSD(Solid State Drive)、又はHDD(Hard Disk Drive)などにより構成される。
【0036】
制御部27は、情報処理手段27aと、出力処理手段27bと、温度処理手段27cと、駆動処理手段27dと、を有している。ここで、操作部23は、ユーザによる入力操作を受け付け、受け付けた操作の内容に応じた操作信号を制御部27へ出力する。情報処理手段27aは、操作部23からの操作信号に応じた処理を実行する機能を有している。情報処理手段27aは、ユーザによる操作に応じて、又は予め設定されたタイミングで、出力処理手段27b、温度処理手段27c、及び駆動処理手段27dに動作指令を送信する。
【0037】
例えば、情報処理手段27aは、操作部23からの操作信号などに応じて、出力処理手段27bへ出力指令を出力する。出力処理手段27bは、情報処理手段27aからの出力指令などに基づき、表示部24に情報を表示させ、又は表示部24に表示させている情報を変更する。また、情報処理手段28aは、第1温度測定部3aにおいて測定された温度の情報である第1温度データと、第2温度測定部3bにおいて測定された温度の情報である第2温度データとを取得し、記憶部28に記憶させる機能を有している。
【0038】
温度処理手段27cは、第1温度データ及び第2温度データをもとに、第1ブロック部材11が第1温度T1で且つ第2ブロック部材12が第2温度T2である状態を維持するよう、主加熱部材13、高温側調整部材14、及び低温側調整部材15を制御する。温度処理手段27cは、第1ブロック部材11及び第2ブロック部材12を各設定温度まで上昇させる初期加熱処理では、第1温度データが第1温度T1となり、第2温度データが第2温度T2となるまで、主加熱部材13、高温側調整部材14、及び低温側調整部材15を適宜制御する。温度処理手段27cは、サンプル内の遺伝子を増幅させる遺伝子増幅処理の間、第1温度データ及び第2温度データに基づくフィードバック制御を実行する。
【0039】
例えば、温度処理手段27cは、第1温度T1が95℃設定の場合、第1温度T1が95℃未満のときに主加熱部材13をONの状態にし、第1温度T1が95℃以上のときに主加熱部材13をOFFの状態にしてもよい。同様に、温度処理手段27cは、第2温度T2が65℃設定の場合、第2温度T2が65℃未満のときに第2調整部材15AをONの状態にし、第2温度T2が65℃以上のときに第2調整部材15AをOFFの状態にしてもよい。
【0040】
記憶部28には、第1温度T1及び第2温度T2の他に、第1下限係数α、第1上限係数β、第2下限係数γ、及び第2上限係数δを記憶させておいてもよい。そして、温度処理手段27cは、第1温度データが第1温度T1より第1下限係数αを減じた温度から第1温度T1に第1上限係数βを加えた温度までの第1範囲(T1-α≦第1温度データ≦T1+β)に収まり、かつ第2温度データが第2温度T2より第2下限係数γを減じた温度から第2温度T2に第2上限係数δを加えた温度までの第2範囲(T2-γ≦第2温度データ≦T2+δ)に収まるように制御してもよい。第1下限係数αと第1上限係数βとは、等しくてもよく、異なっていてもよい。第2下限係数γと第2上限係数δとは、等しくてもよく、異なっていてもよい。
【0041】
温度処理手段27cは、温度調整装置10に対する初期加熱処理が完了したタイミングで、第1ブロック部材11及び第2ブロック部材12がそれぞれの設定温度に到達した旨の到達信号を出力処理手段27bへ出力してもよい。そして、出力処理手段27bは、温度処理手段27cからの到達信号に応じて、表示部24に初期加熱処理が完了したことを示す情報を表示させてもよい。ここで、管理装置20は、スピーカを含み、音又は音声を出力する報知部や、LED(light emitting diode)などの光源を含む発光部を有していてもよい。この場合、出力処理手段27bは、温度処理手段27cからの到達信号に応じて、報知部からビープ音などのアラートや初期加熱処理が完了した旨の音声を出力させてもよく、発光部を発光させてもよい。
【0042】
駆動処理手段27dは、情報処理手段27a又は温度処理手段27cからの動作指令などに応じて、上下移動機構部40及び水平移動機構部50の駆動を制御する。駆動処理手段27dは、遺伝子増幅処理の際、第1モータ42を駆動させることにより、第1ラック44及び水平移動機構部50を介して、アーム部材60を上下に移動させる。これにより、駆動処理手段27dは、第1ブロック部材11の挿入穴1hあるいは第2ブロック部材12の挿入穴1hにチューブ5を差し込み、又は各挿入穴1hからチューブ5を抜き出すことができる。
【0043】
また、駆動処理手段27dは、遺伝子増幅処理の際、第2モータ52を駆動させることにより、第2ラック54を介して、アーム部材60を水平方向、すなわち第1ブロック部材11と第2ブロック部材12とが並ぶ方向に移動させる。これにより、駆動処理手段27dは、チューブ5を、第1ブロック部材11の真上の位置と、第2ブロック部材12の真上の位置とに、適宜移動させることができる。ここで、温度処理手段27cは、温度調整装置10に対する初期加熱処理が完了したタイミングで、駆動処理手段27dへ到達信号を出力してもよい。この場合、駆動処理手段27dは、温度処理手段27cからの到達信号に応じて、駆動装置30の制御を開始してもよい。
【0044】
制御部27は、CPU(Central Processing Unit)又はGPU(Graphics Processing Unit)などの演算装置と、こうした演算装置と協働して上記又は下記の各種機能を実現させる遺伝子増幅プログラム28pとにより構成することができる。すなわち、遺伝子増幅プログラム28pは、制御装置25に搭載されたコンピュータを、情報処理手段27a、出力処理手段27b、温度処理手段27c、及び駆動処理手段27dとして機能させるためのソフトウェアである。一例として、遺伝子増幅プログラム28pは、駆動装置30を制御する制御装置25に搭載されたコンピュータを、第1ブロック部材11の挿入穴1hにチューブ5が差し込まれた状態を高温保持時間が経過するまで維持した後、第2ブロック部材12の挿入穴1hにチューブ5が差し込まれた状態を低温保持時間が経過するまで維持するサイクル処理を、規定回数に到達するまで繰り返し行う駆動処理手段27dとして機能させる。
【0045】
次に、
図5のフローチャートを参照して、本実施の形態1の遺伝子増幅方法における温度調整処理の一例について説明する。まず、スイッチなどにより電源が投入されると、制御装置25が立ち上がり、制御部27の出力処理手段27bは、サーマルサイクルに係る各設定値の設定用画面を表示部24に表示させる。ユーザは、操作部23等を介して各設定値の設定処理を行う。サーマルサイクルに係る各設定値には、高温側の温度である第1温度T1、高温側でチューブ5を保持する時間である高温保持時間、低温側の温度である第2温度T2、低温側でチューブ5を保持する時間である高温保持時間、及び規定回数などがある。もっとも、各設定値として事前に設定されているデータを用いる場合、当該設定処理は省略することができる。
【0046】
ユーザが操作部23等を介して遺伝子増幅処理の開始を指示すると、制御部27の温度処理手段27cは、温度調整装置10の加熱処理を開始する。本実施の形態1において、温度処理手段27cは、主加熱部材13及び第2調整部材15Aを発熱させると共に、ファン4b及びファン5bを駆動させる(ステップS101)。
【0047】
温度処理手段27cは、例えば所定の時間が経過した後、第1温度データ及び第2温度データを取得し(ステップS102)、それぞれが各設定温度に到達したか否かを判定する(ステップS103)。温度処理手段27cは、各温度データが対応する設定温度に到達していなければ(ステップS103/No)、一定時間の経過を待って、各温度データを取得するステップS102へ移行する。一方、温度処理手段27cは、各温度データが対応する設定温度に到達していれば(ステップS103/Yes)、到達信号を駆動処理手段27dへ出力する。これにより、駆動処理手段27dは、サーマルサイクルに係る駆動装置30の制御を開始する(ステップS104)。
【0048】
温度処理手段27cは、各温度データが対応する設定温度に到達していた場合(ステップS103/Yes)、到達信号を出力処理手段27bにだけ出力してもよい。この場合、駆動処理手段27dは、例えば表示部24を視認したユーザの操作などに応じて、サーマルサイクルに係る駆動装置30の制御を開始することになる。なお、ステップS101~S103の一連の処理は、初期加熱処理に相当する。すなわち、温度処理手段27cは、第1ブロック部材11及び第2ブロック部材12の温度を放熱させながら上昇させていくことで、各々が設定温度になるよう調整する。
【0049】
温度処理手段27cは、初期加熱処理が終了してからも、各ブロック部材が設定温度又はその近傍の温度である状態を維持させるべく、第1温度測定部3a及び第2温度測定部3bからの各温度データに基づくフィードバック制御を行う。すなわち、温度処理手段27cは、予め設定された待ち時間が経過するまで待機し(ステップS105/No)、待ち時間が経過したとき(ステップS105/Yes)、第1温度データ及び第2温度データを取得する(ステップS106)。そして、温度処理手段27cは、各温度データをもとに温度調整処理を行う。すなわち、例えば温度処理手段27cは、各温度データを温度調整テーブルに照らして各アクチュエータの制御を実行する(ステップS107)。
【0050】
温度処理手段27cは、停止信号を入力するまでの間(ステップS108/No)、ステップS105~S107のフィードバック制御を繰り返し実行する。温度処理手段27cは、停止信号を入力すると(ステップS108/Yes)、各アクチュエータに対する動作制御を終了する。なお、停止信号は、ユーザの操作に応じて情報処理手段27aから、あるいは遺伝子増幅処理が終了したタイミングで駆動処理手段27dから出力される(ステップS109)。
【0051】
次に、
図6のフローチャートを参照して、制御装置25による駆動装置30を用いた遺伝子増幅方法に係る動作例について説明する。サンプルは、
図6に示す遺伝子増幅処理を行う前まで4℃程度で保存しておくことが望ましいが、室温で保存しておいても特段の問題ない。ここでは、チューブ5が第1ブロック部材11における挿入穴1hの真上に配置されている状態を初期状態として説明する。
【0052】
まず、遺伝子増幅方法は、端的にいうと、駆動装置30を制御する制御装置25が、第1ブロック部材11の挿入穴1hにチューブ5が差し込まれた状態を高温保持時間が経過するまで維持するDNA解離工程と、第2ブロック部材12の挿入穴1hにチューブ5が差し込まれた状態を低温保持時間が経過するまで維持するDNA伸長工程と、を含むサイクル処理を、規定回数に到達するまで繰り返し行う手法である。
【0053】
すなわち、駆動処理手段27dは、温度処理手段27cからの到達信号、あるいはユーザの操作に応じた情報処理手段27aからの開始指令に応じて、上下移動機構部40を駆動させて第1ブロック部材11にチューブ5を差し込む(ステップS201)。そして、駆動処理手段27dは、チューブ5内のサンプルに対し前処理を施す。
【0054】
より具体的に、駆動処理手段27dは、サンプル内に含まれる遺伝子がDNAであれば、前処理として、チューブ5を第1ブロック部材11に差し込んだ状態を初期時間の間維持する。初期時間は、例えば5秒~20秒に設定され、適宜変更することができる。初期時間は、15秒に設定するの望ましい。サーマルサイクルに初期時間を設けることにより、遺伝子の解離処理の確実性を高めることができる。
【0055】
一方、サンプル内に含まれる遺伝子がRNAであれば、RNAをDNAにする逆転写反応を起こさせる必要がある。そのため、駆動処理手段27dは、例えば温度処理手段27cと連携して、第2ブロック部材12の温度を逆転写温度に調整し、チューブ5を第2ブロック部材12の挿入穴1hに差し込んで5分程度維持する。逆転写温度は45℃程度に設定される。その後、サンプル内に含まれる遺伝子がDNAである場合と同様に、チューブ5を第1ブロック部材11に差し込んだ状態を初期時間の間維持する。
【0056】
もっとも、逆転写反応用の挿入穴1hを有するブロック部材を別途用意する等により、チューブ5内のRNAに逆転写反応を温度調整装置10の外部で起こさせてもよい。また、チューブ5内のRNAに逆転写反応を起こさせる処理は、ユーザが事前に行ってもよい。制御部27が自動的に行う場合、遺伝子がDNAであるかRNAであるかの情報は、記憶部28等に予め設定される(ステップS202)。
【0057】
駆動処理手段27dは、初期時間が経過すると、高温保持時間が経過するまで待機する(ステップS203/No)。高温保持時間は、例えば5秒~20秒に設定され、適宜変更することができる。高温保持時間は、10秒に設定するの望ましい。駆動処理手段27dは、高温保持時間が経過すると(ステップS203/Yes)、上下移動機構部40を駆動させ、第1ブロック部材11からチューブ5を抜き出す(ステップS204)。もっとも、駆動処理手段27dは、初期時間と高温保持時間との合計時間の計時を行ってもよい。
【0058】
次いで、駆動処理手段27dは、水平移動機構部50を駆動させ、第2ブロック部材12の上部へチューブ5を移動させる(ステップS205)。そして、駆動処理手段27dは、上下移動機構部40を駆動させ、第2ブロック部材12にチューブ5を差し込む(ステップS206)。
【0059】
駆動処理手段27dは、低温保持時間が経過するまで待機する(ステップS207/No)。低温保持時間は、例えば10秒~30秒に設定され、適宜変更することができる。低温保持時間は、15秒に設定するの望ましい。駆動処理手段27dは、低温保持時間が経過すると(ステップS207/Yes)、カウント数Nに1を加算する。なお、カウント数Nの初期値は1である(ステップS208)。そして、駆動処理手段27dは、カウント数Nが規定回数に到達しているか否かを判定する(ステップS209)。
【0060】
駆動処理手段27dは、カウント数Nが規定回数に到達していなければ(ステップS209/No)、上下移動機構部40を駆動させ、第2ブロック部材12からチューブ5を抜き出す(ステップS210)。次いで、駆動処理手段27dは、水平移動機構部50を駆動させ、第1ブロック部材11の上部へチューブ5を移動させる(ステップS211)。そして、駆動処理手段27dは、上下移動機構部40を駆動させ、第1ブロック部材11にチューブ5を差し込み(ステップS212)、ステップS203の処理へ移行する。
【0061】
一方、駆動処理手段27dは、カウント数Nが規定回数に到達していれば(ステップS209/Yes)、伸長補強処理を行う。すなわち、駆動処理手段27dは、チューブ5を第2ブロック部材12に差し込んだ状態を補強時間の間維持する。補強時間は例えば10秒以内に設定され、適宜変更することができる。これにより、プライマーの伸長が不足していた場合でも、これを補うことができるため、遺伝子をより確実に増幅させることができる。
【0062】
ここで、伸長補強処理は、例えば72℃程度に設定される補強温度により行ってもよい。この場合、駆動処理手段27dは、例えば温度処理手段27cと連携して、第2ブロック部材12の温度を補強温度に調整してもよい。あるいは、駆動処理手段27dは、例えば温度処理手段27cと連携して、第1ブロック部材11の温度を補強温度に調整し、チューブ5を第1ブロック部材11の挿入穴1hに移動させることにより、サイクル処理で伸び切っていなかったDNAの伸長反応を促進してもよい。補強温度による伸長補強処理は、30秒から60秒程度行うとよい(ステップS213)。
【0063】
続いて、駆動処理手段27dは、上下移動機構部40を駆動させ、第2ブロック部材12からチューブ5を抜き出す(ステップS214)。その際、駆動処理手段27dは、サイクル処理の終了を示す終了信号を出力処理手段27b及び温度処理手段27cのうちの少なくとも一方に出力するとよい(ステップS215)。なお、ステップS203は「DNA解離工程」に相当し、ステップS204~S206は「第1移動工程」に相当し、ステップS207は「DNA伸長工程」に相当し、ステップS210~S212は「第2移動工程」に相当する。
【0064】
上記のとおり、遺伝子増幅システム100では、上下移動機構部40及び水平移動機構部50の駆動により、チューブ5が第1ブロック部材11の挿入穴1hに差し込まれる。これにより、チューブ5内のサンプルに熱がかかり、該サンプルの温度が迅速に第1温度まで到達し、チューブ5内では遺伝子のディネーチャー(水素結合の解離:2本鎖→1本鎖)が起こる。
【0065】
また、遺伝子増幅システム100では、チューブ5が第1ブロック部材11の挿入穴1hに差し込まれた状態で高温保持時間が経過すると、Z軸→X軸→Z軸という順番で各軸に沿ってアーム部材60が動き、チューブ5は第2ブロック部材12の挿入穴1hに差し込まれる。チューブ5内のサンプルは、第2ブロック部材12内で放熱して迅速に第2温度に到達し、サンプル内では遺伝子のアニーリングとエクステンションが起こる。
【0066】
さらに、遺伝子増幅システム100では、チューブ5が第2ブロック部材12の挿入穴1hに差し込まれた状態で低温保持時間が経過すると、Z軸→X軸→Z軸という順番で各軸に沿ってアーム部材60が動き、チューブ5は第1ブロック部材11の挿入穴1hに差し込まれる。すなわち、遺伝子増幅システム100は、第1ブロック部材11での遺伝子の変性と、第2ブロック部材12での遺伝子のアニーリング及びエクステンションとを組み合わせたサーマルサイクルを規定回数だけ繰り返すことにより、サンプル内の遺伝子を増幅させる。
【0067】
以上のように、本実施の形態1における温度調整装置10は、チューブ5内のサンプルを加熱する第1ブロック部材11と、該サンプルを第1ブロック部材よりも差分温度だけ低い温度に加熱する第2ブロック部材12と、を有している。また、温度調整装置10は、ペルチェ素子からなり、第1ブロック部材と第2ブロック部材との間に設けられた主加熱部材13を有している。そして、温度調整装置10は、第2ブロック部材12の温度調整用の低温側調整部材15を有している。したがって、第1ブロック部材11と第2ブロック部材12とをそれぞれ、遺伝子の増幅に適した2つの温度に精度よく調整することができるため、チューブ5を第1ブロック部材11の挿入穴1hと第2ブロック部材12の挿入穴1hとに交互に挿し込むことにより、迅速な遺伝子増幅を実現することができる。
【0068】
ところで、従来のサーマルサイクラーは、ペルチェ素子を用いて30℃~40℃程度異なる温度環境を順次作り出すように構成されており、つまり、単体のペルチェ素子により温度の上昇と下降とを繰り返すことにより、サンプル内のDNAの増殖を行うようになっている。すなわち、サーマルサイクラーは、ペルチェ素子を2つの温度に繰り返し変化させる必要があり、その分タイムロスが発生するため、遺伝子増幅処理の迅速化が図れない状況にあった。この点、本実施の形態1における温度調整装置10は、2つの温度帯のブロック部材を個別に有することから、サイクル処理の間において、各ブロック部材の温度を変化させる必要がないため、遺伝子増幅処理の迅速化を図ることができる。
【0069】
また、本実施の形態1における低温側調整部材15は、板状のペルチェ素子からなり、一方の面が第2ブロック部材12の主加熱部材13とは反対側の面に接続された第2調整部材15Aを有している。よって、第2調整部材15Aにより、第2ブロック部材12の加熱と放熱との双方を行うことができるため、第2調整部材15Aの温度調整を精度よく行うことができる。さらに、低温側調整部材15は、第2調整部材15Aの第2ブロック部材12とは反対側の面に接続されたヒートシンク5aと、ヒートシンク5aに並設されたファン5bと、を有している。よって、第2調整部材15Aによる第2ブロック部材12の加熱を促進することができる。
【0070】
なお、低温側調整部材15は、ヒートシンク5a及びファン5bを有しない構成としてもよい。ただし、ヒートシンク5a及びファン5bは温度調整装置10の過度な温度上昇を回避する意味でも、第2ブロック部材12側からの放熱が可能な構成として有用である。以下の各例においても同様である。また、温度調整装置10は、低温側調整部材15を有しなくてもよいが、各ブロック部材の温度調整の精度向上の観点などから、低温側調整部材15を設けた方がよい。後述する各変形例においても同様である。
【0071】
また、温度調整装置10は、高温側調整部材14として、第1ブロック部材11の主加熱部材13とは反対側の面に接続されたヒートシンク4aと、ヒートシンク4aに並設されたファン4bと、を有している。よって、第1ブロック部材11に適宜放熱させることができるため、温度調整装置10における熱暴走を抑制すると共に、第1ブロック部材11の温度調整の精度を高めることができる。温度調整装置10は、高温側調整部材14を設けずに構成してもよい。ただし、主加熱部材13及び第2調整部材15Aの発熱に起因した熱暴走を抑制する観点から、高温側調整部材14を設けた方がよい。
【0072】
さらに、温度調整装置10は、第1ブロック部材11の挿入穴1h内のチューブ5の底部の温度を測定する第1温度測定部3aと、第2ブロック部材12の挿入穴1h内のチューブ5の底部の温度を測定する第2温度測定部3bと、有している。よって、挿入穴1hに差し込まれたチューブ5内のサンプルの温度を精度よく測定することができるため、初期加熱処理及び各ブロック部材の温度のフィードバック制御などを精度よく行うことができる。
【0073】
本実施の形態1の駆動装置30は、チューブ5を保持するアーム部材60と、アーム部材60を上下方向に移動させる上下移動機構部40と、アーム部材60を水平方向に移動させる水平移動機構部50と、を有している。よって、アーム部材60に取り付けられるチューブ5を、高速に且つ精度よく上下左右に移動させることができる。遺伝子増幅システム100は、駆動装置30と、上下移動機構部40及び水平移動機構部50の動作を制御する制御装置25と、により構成してもよく、かかる構成によれば、駆動装置30の自動制御が可能となる。遺伝子増幅システム100は、温度調整装置10と、第1温度測定部3a及び第2温度測定部3bにおいて測定された各温度をもとに、第1ブロック部材11及び第2ブロック部材12の温度を制御する制御装置25と、により構成してもよい。かかる構成によれば、温度調整装置10の温度調整の自動化が可能となる。
【0074】
<変形例1A>
図7を参照して、本実施の形態1の変形例1Aに係る温度調整装置10の構成例について説明する。
図3と同等の構成部材については同一の符号を用いて説明は省略する。本変形例1Aの温度調整装置10は、高温側放熱部材16と、低温側放熱部材17と、を有している。そして、本変形例1Aの制御部27における温度処理手段27cは、高温側放熱部材16及び低温側放熱部材17の動作を制御する機能を有している。
【0075】
高温側放熱部材16は、第1ブロック部材11の側面のうちの1つ又は底面に設けられ、第1ブロック部材11からの放熱を促すものである。
図7では、第1ブロック部材11の底面に高温側放熱部材16が設けられた例を示している。本変形例1Aの高温側放熱部材16は、第1ブロック部材11の側面のうちの1つ又は底面に接続されたヒートシンク4aと、該ヒートシンク6aに並設されたファン6bと、を有している。
【0076】
低温側放熱部材17は、第2ブロック部材12の側面のうちの1つ又は底面に設けられ、第2ブロック部材12からの放熱を促すものである。
図7では、第2ブロック部材12の底面に低温側放熱部材17が設けられた例を示している。本変形例1Aの低温側放熱部材17は、第2ブロック部材12の側面のうちの1つ又は底面に接続されたヒートシンク7aと、該ヒートシンク7aに並設されたファン7bと、を有している。
【0077】
本変形例1Aの温度調整装置10によれば、高温側放熱部材16及び低温側放熱部材17を有していることから、これらを第1ブロック部材11及び第2ブロック部材12の温度に応じて制御し、各ブロック部材から適宜放熱させることができる。これにより、熱暴走を精度よく抑制することができるため、各ブロック部材が設定温度になっている状態をより安定的に維持することができる。なお、本変形例1Aの温度調整装置10は、高温側放熱部材16及び低温側放熱部材17のうちの何れか一方を有するように構成してもよい。温度調整装置10が高温側放熱部材16を有する場合は、第1ブロック部材11からの放熱を促進することができ、温度調整装置10が低温側放熱部材17を有する場合は、第2ブロック部材12からの放熱を促進することができる。
【0078】
<変形例1B>
図8を参照して、本実施の形態1の変形例1Bに係る温度調整装置10の構成例について説明する。
図3と同等又は同位置の構成部材については同一の符号を用いて重複する説明は省略する。本変形例1Aの高温側調整部材14は、第1調整部材14Aと、ヒートシンク4aと、該ヒートシンク4aに並設されたファン4bと、を有している。第1調整部材14Aは、板状のペルチェ素子からなり、一方の面が第1ブロック部材11の主加熱部材13とは反対側の面に接続されている。ヒートシンク4aは、第1調整部材14Aの第1ブロック部材11とは反対側の面に接続されている。ファン4bは、ヒートシンク4aに並設されており、回転することで、ヒートシンク4aからの放熱を促進する。
【0079】
本変形例1Bの温度調整装置10によれば、第1調整部材14Aにより、第1ブロック部材11からの放熱だけでなく、第1ブロック部材11の加熱も行うことができる。よって、第1ブロック部材11に対する温度制御の柔軟性が高まるため、各ブロック部材の温度制御をより精度よく行うことができる。
【0080】
なお、高温側調整部材14は、ヒートシンク4a及びファン4bを有しない構成としてもよい。ただし、ヒートシンク4a及びファン4bは、温度調整装置10の過度な温度上昇を回避する意味でも、第1ブロック部材11側からの放熱が可能な構成として有用である。以下の各例においても同様である。本変形例1Bの温度調整装置10には、前述した変形例1Aの構成を適用することができる。すなわち、本変形例1Bの温度調整装置10は、高温側放熱部材16及び低温側放熱部材17のうちの少なくとも一方を有するように構成してもよい。
【0081】
<変形例1C>
図9を参照して、本実施の形態1の変形例1Cに係る温度調整装置10の構成例について説明する。
図3及び
図8と同等又は同位置の構成部材については同一の符号を用いて重複する説明は省略する。本変形例1Cの高温側調整部材14は、第1ブロック部材11の主加熱部材13とは反対側の面に接続された板状のヒータにより構成されている。そして、本変形例1Cの温度調整装置10は、第1ブロック部材11に接続された高温側放熱部材16を有している。
【0082】
本変形例1Cの温度調整装置10によれば、板状のヒータからなる高温側調整部材14により、第1ブロック部材11の温度を上昇させることができる。すなわち、高温側調整部材14は、主加熱部材13による第1ブロック部材11の加熱を補助するために機能し、主加熱部材13の負担を軽減することができる。また、温度調整装置10は、高温側放熱部材16を有するため、主加熱部材13及び高温側調整部材14等の発熱に起因した熱暴走を抑制することができる。なお、温度調整装置10は、高温側放熱部材16を設けずに構成してもよいが、熱暴走抑制の観点からは、高温側放熱部材16を設けた方がよい。本変形例1Cの温度調整装置10は、変形例1Aと同様、低温側放熱部材17を有していてもよい。
【0083】
<変形例1D>
図10を参照して、本実施の形態1の変形例1Dに係る温度調整装置10の構成例について説明する。
図3、
図8、及び
図9と同等又は同位置の構成部材については同一の符号を用いて重複する説明は省略する。本変形例1Dの低温側調整部材15は、第2ブロック部材12の主加熱部材13とは反対側の面に接続された板状のヒータにより構成されている。そして、本変形例1Dの温度調整装置10は、第2ブロック部材12に接続された低温側放熱部材17を有している。
【0084】
本変形例1Dの温度調整装置10によれば、板状のヒータからなる低温側調整部材15により、第2ブロック部材12の温度を上昇させることができる。すなわち、低温側調整部材15は、主加熱部材13による第2ブロック部材12の加熱を補助するように機能する。また、温度調整装置10は、低温側放熱部材17を有するため、主加熱部材13及び低温側調整部材15等の発熱に起因した熱暴走を抑制することができる。なお、温度調整装置10は、低温側放熱部材17を設けずに構成してもよいが、熱暴走抑制の観点からは、低温側放熱部材17を設けた方がよい。本変形例1Dの温度調整装置10は、変形例1Aと同様、高温側放熱部材16を有していてもよい。本変形例1Dの温度調整装置10には、変形例1B又は変形例1Cの構成を適用することもできる。
【0085】
<変形例1E>
図11を参照して、本実施の形態1の変形例1Eに係る温度調整装置10の構成例について説明する。
図3及び
図8~
図10と同等又は同位置の構成部材については同一の符号を用いて重複する説明は省略する。本変形例1Eの低温側調整部材15は、第2調整部材15Aを有さず、ヒートシンク5aとファン5bとにより構成されている。すなわち、低温側調整部材15は、第2ブロック部材12の主加熱部材13とは反対側の面に接続されたヒートシンク5aと、該ヒートシンク5aに並設されたファン5bと、を有している。
【0086】
本変形例1Eの温度調整装置10によれば、第1ブロック部材11の加熱と第2ブロック部材12の加熱とを主加熱部材13で賄う必要があるが、第2ブロック部材12からの放熱性が高まるため、熱暴走抑制の観点からは有用である。本変形例1Eの温度調整装置10は、変形例1Aと同様、高温側放熱部材16及び低温側放熱部材17のうちの少なくとも一方を有するように構成してもよい。本変形例1Dの温度調整装置10には、変形例1B又は変形例1Cの構成を適用することもできる。
【0087】
実施の形態2.
図12を参照して、本実施の形態2に係る温度調整装置10の構成例について説明する。上述した実施の形態1と同等又は同位置の構成部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。本実施の形態2における温度調整装置10は、主加熱部材13が板状のヒータにより構成されている点に特徴がある。遺伝子増幅システム100の全体的な構成、すなわち管理装置20及び駆動装置30などの構成は、実施の形態1と同様であるため、重複する説明は省略する。
【0088】
主加熱部材13は、一方の面が第1ブロック部材11に接続されると共に他方の面が第2ブロック部材12に接続され、第1ブロック部材11及び第2ブロック部材12を加熱するものである。すなわち、主加熱部材13は、第1ブロック部材11と第2ブロック部材12との間に設けられている。例えば、主加熱部材13の両側面は、例えば熱伝導グリースなどを介して第1ブロック部材11と第2ブロック部材12とに当接している。
【0089】
本実施の形態2における温度調整装置10は、第1ブロック部材11の加熱用の高温側調整部材14を有している。本実施の形態2における高温側調整部材14は、第1調整部材14Aと、ヒートシンク4aと、ファン4bと、を有している。また、温度調整装置10は、第1ブロック部材11に接続された高温側放熱部材16を有している。
【0090】
以上のように、本実施の形態2における温度調整装置10は、チューブ5内のサンプルを加熱する第1ブロック部材11と、該サンプルを第1ブロック部材よりも差分温度だけ低い温度に加熱する第2ブロック部材12と、を有している。また、温度調整装置10は、ヒータからなり、第1ブロック部材と第2ブロック部材との間に設けられた主加熱部材13を有している。そして、温度調整装置10は、第1ブロック部材11の加熱用である高温側調整部材14を有している。したがって、第1ブロック部材11と第2ブロック部材12とをそれぞれ、遺伝子の増幅に適した2つの温度に精度よく調整することができるため、チューブ5を第1ブロック部材11の挿入穴1hと第2ブロック部材12の挿入穴1hとに交互に挿し込むことにより、迅速な遺伝子増幅を実現することができる。
【0091】
また、温度調整装置10は、第1ブロック部材11に接続された高温側放熱部材16を有していることから、第1ブロック部材11からの放熱を促進することができるため、温度調整装置10における熱暴走を抑制することができる。温度調整装置10は、高温側放熱部材16を設けずに構成してもよいが、主加熱部材13及び第1調整部材14Aの発熱に起因した熱暴走を抑制する観点からは、高温側放熱部材16を設けた方がよい。また、温度調整装置10は、低温側調整部材15を設けずに構成してもよいが、熱暴走抑制の観点からは、低温側調整部材15を設けた方がよい。温度調整装置10は、第2ブロック部材12に接続される低温側放熱部材17を有していてもよい。本実施の形態2の温度調整装置10には、変形例1Cの構成を適用し、高温側調整部材14として、第1調整部材14A、ヒートシンク4a、及びファン4bの代わりに、板状のヒータを設けてもよい。他の構成・代替構成、及び他の効果などは、実施の形態1と同様である。
【0092】
<変形例2A>
図13を参照して、本実施の形態2の変形例2Aに係る温度調整装置10の構成例について説明する。
図3及び
図7~
図12と同等又は同配置の構成部材については同一の符号を用いて説明は省略する。
【0093】
本変形例2Aの温度調整装置10は、板状のペルチェ素子からなる第2調整部材15Aと、ヒートシンク5aと、ファン5bと、を備えた低温側調整部材15を有している。そのため、温度調整装置10は、第2調整部材15Aによって、第2ブロック部材12からの放熱だけでなく、第1ブロック部材11の加熱も行うことができる。よって、第2ブロック部材12に対する温度制御の柔軟性が高まるため、各ブロック部材の温度制御をより精度よく行うことができる。
【0094】
また、温度調整装置10は、第2ブロック部材12に接続される低温側放熱部材17を有している。よって、第2ブロック部材12からの放熱を促進することができるため、温度調整装置10における熱暴走を抑制することができる。温度調整装置10は、高温側放熱部材16及び低温側放熱部材17を設けずに構成してもよいが、熱暴走抑制の観点からは、高温側放熱部材16と低温側放熱部材17との双方、あるいは高温側放熱部材16及び低温側放熱部材17のうちの少なくとも一方を設けた方がよい。
【0095】
<変形例2B>
図14を参照して、本実施の形態2の変形例2Bに係る温度調整装置10の構成例について説明する。
図3及び
図7~
図13と同等又は同配置の構成部材については同一の符号を用いて説明は省略する。
【0096】
本変形例2Bの低温側調整部材15は、第2ブロック部材12の主加熱部材13とは反対側の面に接続された板状のヒータにより構成されている。本変形例2Bの温度調整装置10によれば、板状のヒータからなる低温側調整部材15により、第2ブロック部材12の温度を上昇させることができる。温度調整装置10は、高温側放熱部材16及び低温側放熱部材17を設けずに構成してもよいが、高温側放熱部材16及び低温側放熱部材17のうちの少なくとも一方は設けた方がよい。温度調整装置10は、高温側放熱部材16と低温側放熱部材17との双方を設けた方が、より好適に熱暴走を抑制することができる。
【0097】
<変形例2C>
図15を参照して、本実施の形態2の変形例2Cに係る温度調整装置10の構成例について説明する。
図3及び
図7~
図14と同等又は同配置の構成部材については同一の符号を用いて説明は省略する。本変形例2Cの高温側調整部材14は、第1ブロック部材11の主加熱部材13とは反対側の面に接続された板状のヒータにより構成されている。そして、本変形例1Cの温度調整装置10は、第1ブロック部材11に接続された高温側放熱部材16を有している。
【0098】
本変形例2Cの温度調整装置10によれば、板状のヒータからなる高温側調整部材14により、第1ブロック部材11の温度を上昇させることができる。すなわち、高温側調整部材14は、主加熱部材13による第1ブロック部材11の加熱を補足するために機能する。また、温度調整装置10は、高温側放熱部材16を有するため、主加熱部材13及び高温側調整部材14等の発熱に起因した熱暴走を抑制することができる。
【0099】
なお、温度調整装置10は、高温側放熱部材16を設けずに構成してもよいが、熱暴走抑制の観点からは、高温側放熱部材16を設けた方がよい。もっとも、本変形例2Cの温度調整装置10は、熱暴走抑制の観点から、さらに低温側放熱部材17を設けてもよい。本変形例2Cの温度調整装置10には、変形例2Bの構成を適用し、低温側調整部材15として板状のヒータを設けてもよいが、かかる構成を採る場合は特に、熱暴走抑制の観点から低温側放熱部材17を設ける方が好ましい。
【0100】
実施例1.
本実施例1では、開発した装置(実施の形態1における温度調整装置10:
図3参照)を用いて行った遺伝子増幅処理の条件及び得られた結果等の一例を示す。
【0101】
〔テンプレート・試薬・プライマー〕
1:Template
ERCC RNA Spike-In Mixes(Cat:4456740/Ambion)のID1配列の一部とID25配列の一部から
cDNAを作り、PCR増幅し、カラム精製(DNA Clean & Concentrator Kit-25, with Capped
Column/Ca:D4034/ZymoResearch)を行ったものを使用した。ここでは、ID1由来のものを
Template1、ID25由来のものをTemplate25と記す。
2:試薬&Primer
PCR Enzyme:SeqAmp DNA Polymerase/Cat:638504/Clontech
Mineral Oil : Mineral oil / M5310-100ML / SIGMA
Template1 Fw Primer : 5’- GCATTTTGAAAATTCTATGGAAGAGCTAGCATC
Template1 Rv Primer:5’- CATCATTAAAGATGAGGAGATCAGCTTCAAGCTCTT
Template25 Fw Primer:5’- CTGGAGATTGTCTCGTACGGTTAAGAG
Template25 Rv Primer:5’- CCTGTGTTATTGCAGCGTCTCGATT
【0102】
上記のようなサンプルにより、Template1から185bp, Template25から204bpのDNAを増幅した(下記参照)
〔増幅実験1〕
表1~表3には、増幅実験1につき、開発した装置を用いて温度サイクルを実施し、Template1, Template25を増幅した際の条件などを示す。
【0103】
【0104】
【0105】
(1)0.2mltube(容量0.2mlのチューブ5)にPCRmixを20μl添加した(表2参照)。
(2)その上からMineral oilを静かにのせた(表1参照)。
(3)開発した装置を用いて温度サイクルを実施した(表3参照)。
【0106】
【0107】
なお、本実験の温度サイクルでは、予め65℃に温めた水を2~3cycleごとに保温ブロック(第1ブロック部材11及び第2ブロック部材12)に加えた。
(4)温度サイクル後の溶液5μlを用いて電気泳動を実施した。
【0108】
<電気泳動データ>
図16に、上記(4)で得られた電気泳動データを示す。
以下は、
図16についての説明である。
【0109】
1, 2, 3: Condition No.に相当する。
開発した装置による温度サイクル後、5μl流した。
Posi-1 : Template1を既存市販のサーマルサイクラーにより増幅したものを 1/100希釈して5μl流した。
Posi-25 : Template25 を既存市販のサーマルサイクラーにより増幅したものを1/40希釈して5μl流した。
L: 50bpマーカー(MWD50、日本ジェネティクス)、1.5μl流した。
【0110】
〔増幅実験2〕
表4、表5、及び表3には、増幅実験2につき、開発した装置を用いて温度サイクルを実施し、Template1, Template25を増幅した際の条件などの一例を示す。
【0111】
【0112】
【0113】
(1)0.2mltube(容量0.2mlのチューブ5)にPCRmixを20μl添加した(表5参照)。
(2)その上からMineral oilを静かにのせた(表4参照)。
(3)開発した装置を用いて温度サイクルを実施した(表3参照)。
【0114】
温度サイクルについては、表3と同様であるため、図示は省略する。
本実験の温度サイクルにおいても、予め65℃に温めた水を2~3cycleごとに保温ブロック(第1ブロック部材11及び第2ブロック部材12)に加えた。
(4)そして、温度サイクル後の溶液5μlを用いて電気泳動を実施した。
【0115】
<電気泳動データ>
図17に、上記(4)で得られた電気泳動データを示す。
以下は、
図17についての説明である。
【0116】
1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8: Condition No.に相当する。
開発した装置による温度サイクル後、5μl流した。
Posi-25 : Template25を市販のサーマルサイクラーにより増幅したものを1/40希釈して5μl流した。
Posi-1 : Template1を既存市販のサーマルサイクラーにより増幅したものを1/100希釈して5μl流した。
Nega-25:ConditionNo.5のPCRmix20μlを温度サイクルにかけず、室温に15分程度静置したものを5μl流した。
Nega-1:Condition No.6のPCRmix20μlを温度サイクルにかけず、室温に15分程度静置したものを5μl流した。
L: 50bpマーカー(MWD50、日本ジェネティクス)、1.5μl流した。
【0117】
〔測定方法〕
開発した装置による温度サイクル中の0.2mltube(容量0.2mlのチューブ5)内の温度を測定した。
温度測定装置:熱電対データロガー:TC-08 Data Logger / Cat:TC-08 / Pico Technology
【0118】
<測定方法>
(1)0.2mltube(容量0.2mlのチューブ5) に超純水 20μlを入れた。
(2)熱電対の先端が溶液の中央部分にくるように設置した。
(3)開発した装置の温度サイクル中に温度を測定した。
<条件設定>
(1)第1温度:96℃
(2)第2温度:68℃
(3)Reaction time:15秒
(4)Cycle number(規定回数):26
【0119】
測定結果は、
図18及び
図19に示す通りである。
図18及び
図19では、時間(分:秒)を横軸にとり、温度(℃)を縦軸にとっている。
図18には、熱伝導をよくするため、第1ブロック部材11及び第2ブロック部材12に水を5回~6回継ぎ足しながら入れてチューブ5内の温度を測定した結果を示す。
図19には、第1ブロック部材11及び第2ブロック部材12に水を入れずにチューブ5内の温度を測定した結果を示す。
【0120】
比較例.
市販のサーマルサイクラーを用いて温度サイクルを実施し、Template1, Template25を増幅した際の条件などの一例を示す。使用した市販の機器は「ProFlex PCR システム, 3x32-Well/4484073/ThermoFisherScientific」である。
【0121】
【0122】
(1)0.2mltube(容量0.2mlのチューブ5)にPCRmixを20μl添加した(表6参照)。
(2)市販のサーマルサイクラーを用いて温度サイクルを実施した(表7参照)。
【0123】
【0124】
実施例2.
本実施例2では、開発した装置(実施の形態1における温度調整装置10:
図3参照)により、ウイルス配列を用いて行った実験について例示する。
【0125】
〔テンプレート・試薬・プライマー〕
1:RNA Template
国立感染症研究所「病原体検出マニュアル 2019-nCoV Ver.2.9.1」に記載のリアルタイ
ムPCR検査において使用可能な新型コロナウイルス検出用Positive Control RNA Mix
(2019-nCoV)(Cat:XA0142/Takara)を使用した。新型コロナウイルス配列(MN908947.1)
をもとに合成された2種類のRNAが各1×107 copies/μlの濃度で含まれている。
ここではそれぞれのRNA配列をN配列(358base)およびN2配列(337base)と記す。
2:試薬&Primer
RT Enzyme:SuperScriptIV Reverse Transcript/Cat:18090010/ThermoFisherScientific
PCR Enzyme:SeqAmp DNA Polymerase/Cat:638504/Clontech
10mM dNTPs : Deoxynucleotide(dNTP) Solution Mix/Cat:N0447S/NEB
RNase Inhibitor : RNasin Plus RNase Inhibitor/Cat:N2611/Promega
Mineral Oil : Mineral oil / M5310-100ML / SIGMA
【0126】
【0127】
【0128】
PCR用プライマー(Fw, Rv)は、国立感染症研究所「病原体検出マニュアル 2019-nCoV Ver.2.9.1」に記載の配列を使用した。
RT用プライマー(RT)は、ウイルスゲノム配列(MN908947.3)をもとに、Primer 3 software (ver. 0.4.0; https://bioinfo.ut.ee/primer3-0.4.0/)を用いて設計した。
Positionはウイルスゲノム配列(MN908947.3)における位置を示す。
【0129】
〔cDNAの作製〕
上記1に記載のPositive Control RNA Mixを用い、SuperScript IV Reverse TranscriptaseによりRT-PCRを行い、RNA template_N とRNA template_N2からcDNAを作製した。下記に詳細な作製方法を示す。使用した市販の機器は「ProFlex PCR システム, 3x32-Well/4484073/ThermoFisherScientific」である。
【0130】
【0131】
【0132】
【0133】
【0134】
【0135】
【0136】
温度サイクル実施後、カラム精製(DNA Clean & Concentrator Kit-25, with Capped Column/Ca:D4034/ZymoResearch)したものを、下記のPCR増幅のDNA Template(DNA Template_N, DNA Template_N2)として使用した。
これにより、新型コロナウイルスのゲノム配列から128 bpと158 bpのDNAを増幅した(下記)。
【0137】
〔増幅実験〕
表16、表17、及び表18には、本実施例2の増幅実験につき、開発した装置を用いて温度サイクルを実施し、Template1, Template25を増幅した際の条件などの一例を示す。
【0138】
【0139】
【0140】
(1)0.2mltube(容量0.2mlのチューブ5)にPCRmixを20μl添加した(表17参照)
(2)その上からMineral Oilを静かにのせた(表16参照)。
(3)開発した装置を用いて温度サイクルを実施した(表18参照)。
【0141】
【0142】
なお、本実験の温度サイクルでは、予め65℃に温めた水を2~3cycleごとに保温ブロック(第1ブロック部材11及び第2ブロック部材12)に加えた。
(4)そして、温度サイクル後の溶液5μlを用いて電気泳動を実施した。
【0143】
<電気泳動データ>
図20に、上記(4)で得られた電気泳動データを示す。
以下は、
図20についての説明である。
【0144】
1, 2, 3, 4 : Condition No.に相当する。開発した装置による温度サイクル後、5μl流した。
Nega-N2:ConditionNo.1のPCRmix 20μlを温度サイクルにかけず、氷上に15分程度静置したものを5μl流した。
Nega-N:Condition No.4のPCRmix 20μlを温度サイクルにかけず、氷上に15分程度静置したものを5μl流した。
Posi-N2 : DNA Template_N2を1/4希釈して5μl流した。
Posi-N : DNA Template_Nを1/4希釈して5μl流した。
L: 50bpマーカー(MWD50、日本ジェネティクス)、1.5μl流した。
図20に示した電気泳動のパターンにより、目的とする遺伝子の特異的な増幅が見られる。
【0145】
上述した各実施の形態は、温度調整装置、駆動装置、遺伝子増幅システム、遺伝子増幅方法、及び遺伝子増幅プログラムにおける具体例であり、本発明の技術的範囲は、これらの態様に限定されるものではない。例えば、第1ブロック部材11及び第2ブロック部材12は、3つ以下又は5つ以上の挿入穴1hを有する構成としてもよい。また、温度調整装置10を複数並べると共に、アーム部材60を、1又は複数のチューブ5を複数列搭載可能に構成し、複数列のチューブ5内のサンプルの温度サイクルを同時に実現する構成を採ってもよい。
【0146】
各実施の形態では、ラックアンドピニオン方式の上下移動機構部40及び水平移動機構部50を例示したが、これに限定されない。例えば、上下移動機構部40及び水平移動機構部50は、ステッピングモータとボールねじを一体化させたリニアアクチュエータを含む構成としてもよい。ただし、上下移動機構部40及び水平移動機構部50は、ラックアンドピニオン方式を採用した方が、部品点数を減らすことができ、高速化しやすいという利点がある。
【0147】
各実施の形態では、水平移動機構部50が、チューブ5を左右方向に移動させる左右移動機構として機能する例を示したが、これに限定されない。水平移動機構部50は、左右移動機構と共に、チューブ5を前後方向に移動させる前後移動機構を有していてもよい。この場合、制御部27は、左右移動機構と共に、前後移動機構の動作を制御するように構成するとよい。高温側放熱部材16は、第1ブロック部材11における複数の面に設けられてもよい。低温側放熱部材17は、第2ブロック部材12における複数の面に設けられてもよい。
【0148】
上記では、第1温度測定部3a及び第2温度測定部3bとして熱電対を例示したが、これに限らず、第1温度測定部3a及び第2温度測定部3bは、サーミスタを含む温度測定手段など、他の温度センサにより構成してもよい。
図1等では、操作部23と表示部24とが別体となっている例を示したが、これに限定されない。操作部23と表示部24とは、一体的に構成されたタッチパネルであってもよい。制御装置25は、筐体21の外部に配置されたPC(Personal Computer)等であってもよい。ここで、PCには、ノートPC及びデスクトップ型PCの他、スマートフォンやタブレット端末などのモバイル端末も含まれる。この場合、操作部23及び表示部24の代わりに、PCの入力装置及び表示装置を用いてもよい。
【符号の説明】
【0149】
1h 挿入穴、3a 第1温度測定部、3b 第2温度測定部、4a、5a、6a、7a ヒートシンク、4b、5b、6b、7b ファン、5 PCRチューブ(チューブ)、6 PCRキャップ(キャップ)、6h 支持穴、7h、8h 測定穴、10 温度調整装置、11 第1ブロック部材、12 第2ブロック部材、13 主加熱部材、14 高温側調整部材、14A 第1調整部材、15 低温側調整部材、15A 第2調整部材、16 高温側放熱部材、17 低温側放熱部材、20 管理装置、21 筐体、22 プレート部材、23 操作部、24 表示部、25 制御装置、26 通信部、27 制御部、27a 情報処理手段、27b 出力処理手段、27c 温度処理手段、27d 駆動処理手段、28 記憶部、28a 情報処理手段、28p 遺伝子増幅プログラム、30 駆動装置、40 上下移動機構部、41 上下ハウジング、42 第1モータ、43 第1ピニオン、44 第1ラック、50 水平移動機構部、51 水平ハウジング、52 第2モータ、53 第2ピニオン、54 第2ラック、60 アーム部材、61 アーム部、62 ヒータハウジング、63 ホールド部、64 上部ヒータ、80 電源装置、100 遺伝子増幅システム、N カウント数、T1 第1温度、T2 第2温度、α 第1下限係数、β 第1上限係数、γ 第2下限係数、δ 第2上限係数。
【要約】
【課題】迅速に遺伝子を増幅させるための温度調整装置、駆動装置、遺伝子増幅システム、遺伝子増幅方法、及び遺伝子増幅プログラムを提供すること。
【解決手段】PCRチューブ内のサンプルの温度を調整する温度調整装置。温度調整装置は、サンプルを第1温度まで加熱する第1ブロック部材と、サンプルを第2温度まで加熱する第2ブロック部材と、を有している。また、温度調整装置は、板状のペルチェ素子からなり、第1ブロック部材及び第2ブロック部材を加熱する主加熱部材を有している。
【選択図】
図2