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特許7090271暖房換気及び空気調節システムをクリーニングするための方法及びシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-16
(45)【発行日】2022-06-24
(54)【発明の名称】暖房換気及び空気調節システムをクリーニングするための方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   F28G 9/00 20060101AFI20220617BHJP
【FI】
F28G9/00 M
F28G9/00 N
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2018536094
(86)(22)【出願日】2016-09-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-10-25
(86)【国際出願番号】 US2016054515
(87)【国際公開番号】W WO2017059119
(87)【国際公開日】2017-04-06
【審査請求日】2019-09-10
【審判番号】
【審判請求日】2021-04-27
(31)【優先権主張番号】62/234,405
(32)【優先日】2015-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/280,693
(32)【優先日】2016-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518104625
【氏名又は名称】ブルー ボックス エア、エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100104411
【弁理士】
【氏名又は名称】矢口 太郎
(72)【発明者】
【氏名】メトロパウロス、ジェームズ
【合議体】
【審判長】平城 俊雅
【審判官】松下 聡
【審判官】槙原 進
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-132693(JP,A)
【文献】特開2013-94759(JP,A)
【文献】特開2000-273001(JP,A)
【文献】特開平9-178394(JP,A)
【文献】特開2007-178096(JP,A)
【文献】特開平7-332891(JP,A)
【文献】米国特許第6109359(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28G9/00
F24F3/00,5/00
B08B9/00
B05B1/00
A62C5/00,35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の暖房、換気及び空気調節(HVAC)システムをクリーニングするための方法であって、
クリーニングフォームを作成するために加圧空気、水、および界面活性剤を有する工程と、
ハンドヘルドノズルから前記HVACシステムの1つまたはそれ以上の熱伝達コイルの第一の側面へおよび前記1つまたはそれ以上の熱伝達コイルの間またはその中の複数のスペースの中に前記クリーニングフォームを手動で適用する工程と、
前記HVACシステムのエアハンドラーを作動させる工程であって、前記エアハンドラーは、強制空気を1つまたはそれ以上の熱伝達コイルの間またはその中の前記複数のスペースに通過させ、前記1つまたはそれ以上の熱伝達コイルの第二の側面に向かって、前記クリーニングフォームを前記複数のスペースにわたって押すまたは引くことを生じさせる、前記作動させる工程と、
前記クリーニングフォームが前記複数のスペースに隣接する表面からのデブリを分解および除去する工程と、および
前記クリーニングフォームが除去されたデブリを前記複数のスペースから運び去り、前記1つまたはそれ以上の熱伝達コイルの第二の側面を前記除去された汚れまたはデブリと共に出ていく工程と、
を有する、方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、前記クリーニングフォームは、揮発性有機化合物(VOCs)を有さず、および/または中性pHである方法。
【請求項3】
請求項1記載の方法において、前記クリーニングフォームは、さらに、少なくとも1つの過酸化水素、二酸化塩素、ハロゲン塩、次亜塩素酸塩、有機溶剤、四級アンモニウム化合物、酸、塩基、またはキレート剤を有する方法。
【請求項4】
請求項1記載の方法において、前記クリーニングフォームは、さらに、酵素を有する方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項記載の方法において、前記クリーニングフォームは、前記表面からのバイオフィルムと、前記バイオフィルムに関連する汚れとを分解および除去する方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項記載の方法において、前記クリーニングフォームは、前記表面から、少なくとも1つの細菌、ウィルス、または真菌を殺し、および/または除去する方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項記載の方法において、前記クリーニングフォームは、前記コイルの屈曲性熱伝達フィンを損傷しないことを含む、前記熱伝達コイルを損傷しないように低圧下で注入される方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項記載の方法において、前記クリーニングフォームは、フォーム発生システムによって直ちに産生され、前記フォーム発生システムは、前記水、空気、および界面活性剤を受け取るための1つまたはそれ以上の注入口と、フォーム発生メカニズムと、発生したクリーニングフォームのための排出口と、前記発生したクリーニングフォームを前記ハンドヘルドノズルに伝導するためのホースまたは導管とを含む方法。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項記載の方法において、前記強制空気は、前記クリーニングフォームおよび除去されたデブリの前記複数のスペースを通る移動を補助する方法。
【請求項10】
請求項1記載の方法において、前記エアハンドラーは、前記コイルの側面に空気圧を適用し、かつ空気を押して前記複数のスペースに通過させるブロワーを有する方法。
【請求項11】
請求項1記載の方法において、前記エアハンドラーは、前記コイルの側面に対する空気圧を低下させ、かつ空気を引いて前記複数のスペースに通過させるブロワーを有する方法。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項記載の方法であって、さらに、前記複数のスペースのうち少なくともいくらかを通る前記クリーニングフォームおよび除去されたデブリの移動を補助するために、少なくとも1つの外部空気供給源、外部ファン、加圧空気ライン、または携帯型ブロワーからの空気を前記複数のスペース中に導入する工程を有する方法。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか1項記載の方法であって、
滞留時間と、前記表面への前記クリーニングフォームの接触とを増大させるために、前記複数のスペースに濃厚なクリーニングフォームを最初に適用する工程と、
次いで、前記複数のスペースを通る前記クリーニングフォームおよび除去されたデブリの移動を加速させるために、前記複数のスペースに薄いクリーニングフォームを適用する工程と、を有する方法。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか1項記載の方法において、前記HVACシステムのクリーニングの後に、前記HVACシステムは、減少したエネルギー消費および改善した空気流を伴って作動する方法。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか1項記載の方法であって、さらに、
前記HVACシステムの前記1つまたはそれ以上のコイル内に1つまたはそれ以上の妨害領域を同定する工程と、
前記1つまたはそれ以上の妨害領域に追加のクリーニングフォームを適用する工程と、を有する方法。
【請求項16】
建築物の暖房、換気及び空気調節(HVAC)システムをクリーニングするための方法であって、
フォーム発生システムを使用してクリーニングフォームを産生する工程であって、前記フォーム発生システムは、水、空気、および界面活性剤を受け取るための1つまたはそれ以上の注入口と、フォーム発生メカニズムと、前記発生したクリーニングフォームのための排出口と、前記発生したクリーニングフォームをハンドヘルドノズルに伝導するためのホースまたは導管とを含む、前記産生する工程と、
前記ハンドヘルドノズルから前記HVACシステムの1つまたはそれ以上の熱伝達コイルの第一の側面へおよび1つまたはそれ以上の熱伝達コイルの間またはその中の複数のスペースの中に前記クリーニングフォームを手動で適用する工程と、
前記ハンドヘルドノズルを前記1つまたはそれ以上の熱伝達コイルの少なくとも1つの他の領域に動かし、前記クリーニングフォームを前記少なくとも1つの他の領域に手動で適用する工程と、
前記HVACシステムのエアハンドラーを作動させる工程であって、前記エアハンドラーは、強制空気を前記複数のスペースに通過させ、かつ前記複数のスペースを通る前記クリーニングフォームの移動を補助させる、前記作動させる工程と、
前記クリーニングフォームが前記複数のスペースに隣接する表面からのデブリを分解および除去する工程と、
前記クリーニングフォームが除去されたデブリを前記複数のスペースから運び去る工程と、
を有する、方法。
【請求項17】
請求項16記載の方法において、前記クリーニングフォームは、さらに、少なくとも1つの過酸化水素、二酸化塩素、ハロゲン塩、次亜塩素酸塩、有機溶剤、四級アンモニウム化合物、酸、塩基、またはキレート剤を有する方法。
【請求項18】
請求項17記載の方法において、前記クリーニングフォームは、さらに、酵素を有する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝達コイルを含む暖房換気及び空気調節(HVAC)システムをクリーニングかつ衛生化するための、方法及びシステム方法に関する。
【背景技術】
【0002】
HVACシステムは、一般に、建築物の全エネルギーの50%超を消費する。HVACシステム中の熱伝達コイルは汚染された状態で作動しているために、このエネルギーのおよそ半分が無駄になっていることが推定される。そのような汚染されたコイルは、過剰な機器摩滅、低質な室内空気による人間健康の低下、及び過剰なエネルギー消費などの、HVACシステム内で見つかる多くの操作上の問題の主な原因である。屋外空気汚染、花粉、埃、及びグリースからの炭化水素の蓄積は、コイルファウリングを引き起こす一般的な材料の例である。
【0003】
ファウリングの別の一般的な形態は、コイル内の深部における細菌及び真菌の形成から生じる。この生物学的形態のファウリングは、HVACシステムにとって非常に厄介である。微生物がコイル内の深部で定着すると、微生物はバイオフィルムを形成し始める。バオフィルムは、これらの微生物により排泄される可塑型の膜である。バイオフィルムは非常に伝導性が高く、そのためコイルの金属表面と通過する空気流との間の熱伝達を阻害するようにはたらくため、バイオフィルムはHVACシステムに特に有害である。さらに、バイオフィルムは、埃及び他のファウリングデブリを蓄積させうる粘性の高い表面を有するかもしれず、それにより空気流及びコイルを介する効率的な熱伝達を阻害するようにふるまう。
【0004】
細菌及び真菌がHVACシステム内の深部に定着すると、空気流及び熱伝達の阻害以外の、多くの他の操作上の問題が起こりうる。これらの微生物のコロニーが成長するにつれ、その生物学的活性が開始して有害な悪臭をオフガスし、建築物中の空気供給源が汚い靴下の悪臭または他の種類の不快臭を呈し始める状態である、「Dirty Socks Syndrome」と呼ばれるHVACシステムにおける一般的な問題を発生させる。
【0005】
病院にとっては、HVACコイルの生物学的ファウリングは特に厄介であり、グローバルな医療システムに対する流行性に近いレベルの問題を呈しうる。過去数年においては、ほぼ全ての医療機関内に定着している、Staph、MRSA、及びその他などの抗生物質耐性細菌の、恐ろしい上昇を目にしてきた。今となっては、病気の患者にとって、一病態のための治療を必要として医療機関内に来て、それから病院を訪問している間にかかる別の病気の抗生物質耐性株に感染するようになることは、比較的一般的に起こる事柄となりつつある。広範でありかつ細心の注意をはらっている衛生化及びクリーニングの努力にもかかわらず、医療機関はこれまで、医療機関の運営環境から危険な微生物を排除することができずにいる。この危険な微生物を根絶することができない主な理由は、抗生物質耐性微生物の、医療機関のHVACシステムを介して医療機関中に隠れ、繁栄し、移動する能力ゆえである。具体的には、抗生物質耐性微生物が安全な避難場所を見いだしてきたのはコイル内の深部であり、HVACシステムは、医療機関中を移動するための手段を提供する。
【0006】
大きい医療機関内のHVACシステムの冷却コイルは、深さが6"から4フィートにわたりうる。コイル内のフィン間の間隔は非常に緻密であり、各フィン間には測定値がミリメートル単位にあるスペースが伴う。コイルの目的は限られたスペース内に可能な限り大きい表面積を提供することであり、フィン間のスペースを、空気が通過するのを許容するのみに十分な大きさとする。さらに、大きい機関における冷却コイルは、しばしば高さが15フィートに達してもよく、また空気がコイル中を均一に流れうるように上部が密封されている。このことは、システムの側面または上部からコイルにアクセスする経路がしばしば存在しないことを意味する。その密に詰められたコイルの密度が、液体がコイル内で2インチより大きく移動することを阻害するようにはたらき、このことは、内部コイル表面積の大部分を、クリーニングのためには完全にアクセス不可能にする。
【0007】
その結果、HVAC冷却コイルの内部表面積は、抗生物質耐性の及び他の全ての細菌及び真菌が、医療及び他の機関内に定着かつ繁栄するための理想的な保護領域を提供する。HVACシステムの目的が機関中に空気を循環させることであるため、危険な微生物は、空気流中に運搬され、その機関中に効率的に拡散されうる。医療機関は機関中の全ての露出表面をクリーニングすることにおいて非常に細心の注意を払っているかもしれないが、コイル内の深部を衛生化かつ消毒することができないことは、これらの機関を、露出させ、移動性微生物により課される危険なリスクを完全には鎮静化させられなくする。
【0008】
HVAC産業、ホテル、病院、及び他の機関にわたり用いられる標準的な慣行は、高圧洗浄機を使用してHVACコイルをクリーニングすることである。別の慣行は、高圧洗浄機または携帯型ポンプ噴霧装置により、苛性または酸性が強い溶液をコイル内に注入することである。さらに別の慣行は、コイル内に蒸気を注入することである。これらの慣行は、コイル、とくに6インチよりも深いコイル中に完全に貫通させることにおいては、完全に無効果である。これらのプロセスは、また、バイオフィルムを除去すること、またはコイルの深い内部表面を衛生化かつ消毒することにおいても無効果である。さらに、こらのプロセスの全ては、点検のためエアハンドラーの完全なシャットダウンを要し、また環境にとってしばしば有害であり、浪費的であり、かつ危険である。
【0009】
HVACコイルのクリーニングにおいてはるかに最も一般的に利用される慣行である圧力洗浄は、コイルの外部表面に適用される加圧水流を発生させるために、しばしば1000psigを超える高圧水の使用を要する。しかしながら、密に詰められたコイルは、高圧水の注入によらず、コイル内に約2インチを超えて水が貫通することを妨害するようにはたらく。密に詰められたコイルは、エネルギーを吸収し、加圧水流をそらせる。さらに、水の重量及び重力ゆえ、加圧水流がコイルによる吸収により運動エネルギーを失うと、水は地面方向に縦に自然に落下する。加圧洗浄の別の弱点は、加圧水流の力が、1000+psiにおいては、コイルフィンを素早くかつ容易に曲げうることである。コイル自身は、密に詰められ、アルミニウムまたは銅などの非常に薄く柔らかい材料から作成される。一旦コイルがこのように曲げられ損傷されると、空気流はさらに制限されて不均一になり、エアハンドラーのフロースルー効率をさらに低下させる。さらに、加圧洗浄機は莫大の量の水を使用する。加圧洗浄機は、そのサイズにより、1分あたり6~20ガロンを消費しうる。最小バージョンの1分あたり6ガロンにおいてでは、1時間のコイルのクリーニングは、360ガロンの水の消費となりうる。1つの大きいエアハンドラーのクリーニングの間に、1000ガロンをゆうに超える水を消費することは珍しくない。
【0010】
コイルをクリーニングするための別の技法には、携帯型ポンプ噴霧、及び苛性または酸性コイルクリーナーの直接的な注入が関与する。このプロセスは、一般に、高圧洗浄機と比較してより低い圧力にて実施される。苛性コイルクリーナーを裏付ける概念は、コイル内部のバイオフィルム蓄積を除去することである。不運なことに、バイオフィルムは、苛性、酸性、さらには酸化性の溶液にすら影響されない、可塑型の膜を呈しうる。さらに、苛性溶液は、コイル表面からの金属分子の層と反応してその層を剥ぎうる。このことは非常に有害であり、比較的短い期間の点検時間の間に、しばしばコイルの完全な破壊をもたらす。最後に、コイル内に苛性溶液を注入するポンプ噴霧法は、表面のみ及びひょっとすると深さ数インチのみが実際には貫通される、同じ加圧洗浄の物理的問題を経験する。
【0011】
コイルをクリーニングするために使用される別の技法には、コイルに高温流を注入する工程が関与する。このプロセスにおいては、その高温流がバイオフィルム、細菌、汚れ、及び垢を物理的に分解すること望みつつ、高温流がコイル中に直接注入される。しかしながら、外部コイル表面は注入される流の運動及び熱エネルギーを吸収し、その貫通を数インチのみまでに阻害しうるため、流注入は加圧洗浄に類似する物理的障壁に直面する。さらに、流は外部コイル表面近くの細菌及び真菌のいくらかは殺すかもしれないが、高温は、実際のバイオフィルム層を除去することにおいては、一般的には無効果である。さらに、機関内における多くの物理的な場所における高温流の使用は、非実用的であり、またその過剰な熱ゆえに火災システムを設置しうる。
【0012】
HVACシステムを損傷またはシャットダウンすることなくHVACシステムにおいて見られる冷却コイルをクリーニングかつ衛生化可能であることは、エネルギー消費を顕著に低下させ、CO2アウトプットを低下させ、かつ人間健康を多いに改善するための、これまでにない新しいアプローチを提供する解決策である。今日までに、このプロセスは、市販のエアハンドラーの効率を最大で80%向上させることが示され、それはコイル内の深部に蓄積するファウリングデブリを除去することにより実現されてきた。HVACシステムは、それから、より少ないエネルギー負荷で、エアハンドラー通じて移動する空気の容積を大いに改善することもまたできる。さらに、以下に概要が述べられることになるイノベーションは、適用し取り入れるのが容易である大規模化可能な解決策であり、高価な新しい資本的機器に投資する昼陽性を排除し、またその有益な結果をすぐにもたらす。本イノベーションは、あらゆるサイズまたは種類のHVACシステムにも適用可能であり、またHVACシステムが押すまたは引くタイプのシステムである場合に等しく効果的である、単一プラットフォーム性の解決策である。これは、エアハンドラー内のブロワーが、コイルを通じて空気流の空気を押している、または反対吸引により空気流の空気を引き抜いていることを意味する。さらに、本開示の発明は、冷却コイル内の深部でほぼ完璧な表面積カバー率をもたらすための手段を提供する。その手段は、現在では到達不可能である医療機関内のただ一つの領域(コイル内の深部)を衛生化かつ消毒することにより抗生物質耐性微生物危機を迅速かつ効果的に軽減するために、全てのバオフィルムを除去し、またHVACシステム内の深部でみられるあらゆる細菌、真菌、及び他の微生物を排除し、かつ医療機関に非常に有効で費用効果がある解決策を提供する。最後に本イノベーションは、真に持続可能な解決策である。以下で開示されることになるプロセスは、従来型の高圧洗浄の方法よりもおよそ95%少ない水を使用し、毒性のある、危険な、または損傷を与える化学物質は使用されない。さらに、この解決策は低圧力を使用し、このことは、開示のプロセスがHVACコイルにいかなる損傷を与えることも不可能にさせる。
この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、以下のものがある(国際出願日以降国際段階で引用された文献及び他国に国内移行した際に引用された文献を含む)。
(先行技術文献)
(特許文献)
(特許文献1) 米国特許第5,509,972号明細書
(特許文献2) 米国特許第6,276,459号明細書
(特許文献3) 米国特許第6,027,572号明細書
(特許文献4) 米国特許第7,841,351号明細書
(特許文献5) 米国特許第7,887,639号明細書
(特許文献6) 国際公開第2002/094973号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本明細書においては、コイルを交換する必要性を遅延させるもしくは排除し、かつ/または産業用、市販、及び住宅用のHVACシステムのエネルギー効率及び空気の質を改善する、HVACシステムの熱伝達コイルを効率的にクリーニングするための装置及び方法が開示される。その装置及び方法は、細菌、真菌、及びウィルスのコイルを衛生化し消毒するのを容易にし、コイル内の深部及びエアハンドラーシステムのフィンに蓄積しうる、汚れ、垢、グリース、または他のファウリングデブリを除去可能にする。開示のプロセスは、低圧、中性pH、非腐食性、無臭であってもよく、ごくわずかの水を使用し、かつクリーニングの際にHVACシステムのシャットダウンを要さない。
【0014】
いくらかの実施形態においては、建築物の暖房換気及び空気調節(HVAC)システムをクリーニングするための方法は、(1)HVACシステムの1つまたはそれ以上の熱伝達コイルの間またはそのコイル中の複数のスペース中へとクリーニングフォームを適用する工程;(2)そのクリーニングフォームを、その複数のスペースに通過させ、または通過することを許容する工程;(3)そのクリーニングフォームが、その複数のスペースに隣接する表面からのデブリを分解し除去する工程;並びに(4)そのクリーニングフォームが、その複数のスペースから除去されたデブリを運び去る工程を有する。いくらかの実施形態においては、本方法は、HVACシステムのエアハンドラーを操作する工程をさらに含み、そのエアハンドラーは、1つまたはそれ以上の熱伝達コイルの間またはそのコイル中の複数のスペースに強制空気を通過させ、その強制空気は、その複数のスペースを通るクリーニングフォーム及び除去されたデブリの移動を補助する。
【0015】
いくらかの実施形態においては、建築物の暖房換気及び空気調節(HVAC)システムをクリーニングする際に使用されるクリーニングフォームを産生するための、フォーム発生システムは、以下(1)~(5)を有する:(1)加圧空気を提供する空気ポンプまたは加圧槽;(2)水、加圧空気、及び界面活性剤を受け取るための、1つまたはそれ以上の注入口;(3)水及び界面活性剤を加圧するための1つまたはそれ以上の空気駆動性ポンプであって、その加圧空気により駆動されている1つまたはそれ以上の空気駆動性ポンプ;(4)加圧されたクリーニングフォームを形成するように、加圧空気、水、及び界面活性剤を受け取り混合するためのマニホールド;(5)加圧クリーニングフォームを排出するためのマンニフォールドを伴う、流体連結状態にある排出口。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、HVACシステムの熱交換コイルの前面中に注入されているクリーニングフォームを描写し;
図2図2は、HVACシステムの熱交換コイルの裏面を出ていくクリーニングフォームを描写し;
図3図3は、HVACシステムの熱交換コイルの裏面を出ていくクリーニングフォームを描写し;
図4図4は、クリーニングフォーム発生システムの例を例証し;かつ
図5図5は、図4の携帯型クリーニングフォーム発生システムの内部構成要素を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書においては、HVACシステムの熱伝達コイルをクリーニングするためのプロセスと、コンパクトで使用するのが容易で携帯型のクリーニングフォームを発生させるためのシステムとが開示される。そのシステムは、いくらかの実施形態においては、バイオフィルムを分解し、表面積を衛生化かつ消毒するための、中性pH、無臭、非毒性、無害の製剤を使用する。いくらかの実施形態においては、その方法及びシステムは、コイル間またはコイル内を含むコイルを通ってクリーニングフォームを運搬するのを補助するために、HVACシステムのエアハンドラーを利用しうる。
【0018】
いくらかの実施形態においては、建築物の暖房換気及び空気調節(HVAC)システムをクリーニングするための方法は、(1)HVACシステムの1つまたはそれ以上の熱伝達コイルの間またはそのコイル中の複数のスペース中へとクリーニングフォームを適用する工程;(2)そのクリーニングフォームを、その複数のスペースに通過させるまたは通過することを許容する工程;(3)そのクリーニングフォームを、その複数のスペースに隣接する表面からのデブリを分解し除去する工程;並びに(4)そのクリーニングフォームが、その複数のスペースから除去されたデブリを運び去る工程を有する。
【0019】
いくらかの実施形態においては、建築物の暖房換気及び空気調節(HVAC)システムをクリーニングするための方法は、(1)HVACシステムの1つもしくはそれ以上の熱伝達コイルの間またはそのコイル中の複数のスペース中へとクリーニングフォームを適用する工程;(2)HVACシステムのエアハンドラーを作動させる工程であって、そのエアハンドラーは、強制空気を、その複数のスペースに通過させ、かつその複数のスペースを通るクリーニングフォームの移動を補助させるものである工程;(3)そのクリーニングフォームが、その複数のスペースに隣接する表面からのデブリを分解かつ除去する工程;並びに(4)そのクリーニングフォームが、除去されたデブリをその複数のスペースから運び去る工程を有する。
【0020】
いくらかの実施形態においては、クリーニングフォームは、水、空気、界面活性剤、及び酵素、並びに/または化学物質を有する。水、空気、及び界面活性剤は、混合されるとフォームを発生させる。酵素、及び/または化学物質は、バイオフルム、汚れ、またはバイオフィルムに接着するもしくは結合するデブリを分解かつ除去し、かつ/または細菌、ウィルス、もしくは真菌を含む微生物を殺しかつ除去し、かつHVACコイルを消毒しうる。有利には、クリーニングフォームは、揮発性有機化合物(VOCs)フリーであってもよく、かつ/または中性pHである。クリーニングフォームは、過酸化水素、二酸化塩素、ハロゲン塩、次亜塩素酸塩、有機溶剤、四級アンモニウム化合物、酸、塩基、またはキレート剤のうち少なくとも1つを含みうる。
【0021】
いくらかの実施形態においては、クリーニングフォームは、コイルの屈曲性熱伝達フィンを損傷しないようにを含む、熱伝達コイルを損傷しないように、十分な低圧下で注入されうる。
【0022】
いくらかの実施形態においては、HVACシステムのエアハンドラーを作動する工程は、強制空気を、1つまたはそれ以上の熱伝達コイルの間またはそのコイル中の複数のスペースに通過させ、これにより複数のスペースを通るクリーニングフォーム及びデブリの除去可能部分の移動を補助する。そのエアハンドラーは、空気圧をコイルの側面に適用し、空気を押して複数のスペースを通過させる、ブロワーを有しうる。あるいは、そのエアハンドラーは、空気圧をコイルの側面に適用し、空気を引いて複数のスペースに通過させる、ブロワーを有しうる。
【0023】
エアハンドラーに加え、またはエアハンドラーの代わりに、本方法は、コイルのスペースを通るクリーニングフォームの移動及びデブリの除去を補助するため、外部空気供給源、外部ファン、加圧空気ライン、または携帯型ブロワーのうち少なくとも1つからの空気を、複数のスペース中に導入する工程を要しうる。
【0024】
いくらかの場合には、特定の問題に取り組むため、異なる種類のフォームが順々に使用されうる。例えば、本方法は、滞留時間と表面へのクリーニングフォームの接触とを増大させるために、より濃厚なクリーニングフォームを複数のスペースにまず適用する工程、並びに次いで複数のスペースを通るクリーニングフォーム及び除去されたデブリの移動を加速させるために、より薄いクリーニングフォームを複数のスペースに適用する工程を要しうる。
【0025】
一般に、コイルからデブリを除去する工程は、HVACシステムに、より低いエネルギー消費、及び改善された空気流を伴って作動させる。いくらかの場合においては、本方法は、HVACシステムの1つまたはそれ以上のコイル中の1つまたはそれ以上の妨害領域を同定する工程、及びその1つまたはそれよい多い妨害領域に追加のクリーニングフォームを提供する工程を要しうる。
【0026】
図1~3は、HVACコイルの一方の側へのクリーニングフォームの適用と、フォームがコイル中またはコイル間のスペースを通過した後の、反対側からのフォームの排出とを例証する。HVACコイルをクリーニングするための好ましい製剤は、pH中性、非毒性、無害、かつ無臭である。いくらかの実施形態においては、適用されるフォームは、コイル内に滞留し、かつ、それから自然に分解しあるいはコイルの凝結の自然なプロセスによりシステムから吹き出る。このことは、活性化されたフォームが作用するためにより長い滞留時間を与え、全てのバイオフィルム、汚れ、デブリ、及び微生物を除去するのを助ける。
【0027】
いくらかの実施形態においては、注入されたフォームは、有利には、顕著な悪臭、またはHVACシステム内の空気の臭いの変化を有さない。かくして、HVACシステムは、HVACシステムを止めることなくクリーニングされうる。しかしながら、HVACシステムにおける空気の質または臭いの変化は、非常に敏感な状況である。潜在的なテロリズムの見通しが現実的であり、多くの人、とくに医療機関、高層建築物、及び他の公衆の場所において働く人にとって実現しうる懸念である今となっては、とくにそうである。コイルをクリーニングするための従来型の化学物質は、毒性があり有害な化学物質をしばしば組み込み、非常に顕著な化学物質タイプの悪臭を発生させる。これらの臭いを隠すための芳香の添加でさえ、客に不安をもたらしうる。これは、空気の臭いのあらゆる変化が、なぜ空気の悪臭における顕著な変化が存在するのかを人々が素早く知りたくなるように、容易に検出可能であるからである。これらの理由から、HVACシステム中のコイルをクリーニングするための製剤は、有利には、無臭でありうる。
【0028】
本発明のシステム及び方法は、有利には、コイルをクリーニングするためのたった一つの方法よりも多く、むしろ幅広いクリーニングの解決策及び技法をもって、特定のコイルファウリングの問題に取り組むため能力を提供する。これは、HVACシステム中及びコイル中に見られるファウリングマトリックスが、環境ごとに極端に変化しうるからである。さらに、多くのHVACシステムがきちんとクリーニングされたことがないかもしれないため、HVACシステムは、何年、さもなければ何十年に値するファウリングの除去を要しうる。コイルが直面するファウリングの問題においては、最も一般的な問題は、細菌、真菌、及びバイオフィルムを含む。しかしながら、コイルは、グリース、屋外空気汚染からの炭化水素、埃、垢、及び昆虫落下さえでも、また、ファウリングされうる。異なる問題に別々に取り組むために、クリーニングプロセスがいくつかの異なる製剤を利用することは、珍しくない。そのようなアプローチでは、テクニシャンは、異なる種類のファウリング問題の層を除去することを試みるかもしれない。
【0029】
バイオフィルムを除去するためには、主に二つの技法がある。第一の技法は、プロバイオティックス中に見られるであろう酵素であって、かつバイオフィルムを能動的に食物源へと変換しバイオフィルムを消化する酵素などの、酵素の使用が関与する。このアプローチにおいては、バイオフィルムに取り組むために幅広い酵素が使用されうる。別の一アプローチは塩化ナトリウムの使用であって、塩化ナトリウムは、非常に小さい容積において使用される場合、バイオフィルムマトリックスを小さい粒子へと分解するように能動的に作用する。両アプローチの長所は、中性pHであって、金属表面に対し非反応性であって、かつ無臭であることである。有機物を分解するのを助けるためには、微量の過酸化水素または二酸化塩素などの他の製剤が導入されうる。微生物を衛生化し及び殺すためには、四級アンモニウム化合物もまた使用されうる。例は、塩化ベンズアルコニウム化合物を含む。
【0030】
本提示のプロセスを開示するにあたり、概説するべき主要な構成要素は、どのようにフォームがコイル中へ注入されるかである。これに関しては、フォームがどのように注入されるかのプロセス、フォーム生成構成要素、及びフィーム組成物が開示されることになる。
【0031】
コイルがどのようにクリーニングされるかの技法及びプロセスには、クリーニングフォームを引いてまたは押してのいずれかでコイルを通過させるための手段として、HVACシステム自体のエネルギーを利用する工程が関与しうる。上で以前に開示されるように、現在のクリーニングプロセスの主な弱点には、いかに完全にクリーニング溶液をコイルにわたり注入するかの技法的問題が関与する。コイルの密に詰められた性質、上または側面からコイルの真ん中にアクセスできないこと、これに加え、液体が注入される方向への運動エネルギーの押す力を液体が一旦失うと、重力により液体がコイルの底に落下する自然の傾向ゆえ、コイルに数インチより大きく貫通する手段は、一般的には可能ではなかった。しかしながら、クリーニングフォームは、液体よりも多く空気を有する特性を有し、縦表面にくっつくことができ、バイオフィルム、埃、グリース、及び他のファウリング剤を分解するように作用しうるクリーニング溶液を導入するための理想的な運搬メカニズムを提供する。さらに、クリーニングフォームは、微小な空気の気泡を有し、粒子を集めてその粒子をその気泡マトリックス中に懸濁状態で保持することができるという特有の特性を有する。いかにして氷河が巨大な巨礫を拾い上げてその巨礫を谷下へ移動させて後に堆積させるかに類似して、フォームは、HVACシステムのコイルを通ってなどシステムを通って流れるにあたり、類似の様式で作用する。
【0032】
クリーニングフォームが注入され密に詰められた厚いコイルを通って移動する様式は、いくつかの技法により達成されうる。第一に、非常に濃厚なフォームを直接的にコイル中へと単に注入しうる。そのコイルでは新しいフォームの運動エネルギーがゆっくりと以前のフォームを押してコイルを通過させる。この技法においては、クリーニングフォームがコイル内の及びコイルを通るスペースに隣接する金属表面にくっつくが、フォーム自身の密度がフォーム自身を押してコイルを通過するように、クリーニングフォームを可能な限り濃厚に維持することが望ましいかもしれない。この技法は望ましい結果を達成しうるが、テクニシャンが、フォーム注入システム自体を、フォームを押してコイルを通過させる主な推進力として使用しているならば、比較的ゆっくりのプロセスである。
【0033】
別の一技法は、フォーム注入システムと、1つまたはそれ以上の外部の空気注入空気供給物の使用との組合せを要する。外部の空気注入空気供給源は、空気コンプレッサーまたは外部ブロワーからの加圧空気などであり、その空気コンプレッサーまたは外部ブロワーは、同時にコイル中へと空気を注入しており、空気流を発生させ、その空気流は次いで注入されたフォームを押してコイルを通過させるのを助ける。ここでもこのプロセスは、より大きい容積の空気を添加しコイルを通過させており、このことは次いでそのフォームがコイルを通って移動するのを助ける。
【0034】
さらに別の一技法は、HVACシステム自体の内部ブロワーシステムを、HVACコイルを通るクリーニングフォームの移動を促進する主な駆動力として役立つように利用することである。この技法においては、第一のテクニシャンは、フォーム発生システム(例えば、下に開示のシステム400)に接続されているフォーム噴霧または注入ホースを運搬しながら、アクセスドアによりエアハンドラーに入りうる。第二のテクニシャンは、そのフォーム産生システムを始動させてもよく、またエアハンドラーがオンであり空気を引いている間に、第一テクニシャンはクリーニングフォームをコイル上に均一に適用し始める。テクニシャンがコイルの表面上へとフォームを適用し始めるにつれ、非常にしばしば、コイルのいくらかの領域が迅速にフォームを引き込む一方で他の領域はそうでないことに気づく。このことは、コイル内における妨害領域の存在及び位置の視覚的指示を提供する。
【0035】
妨害は、デブリの極度の蓄積ゆえに、ファウリングが、空気が通過できるとしても非常にわずかな空気しか通過できないようなものである、コイル中の領域を含みうる。妨害領域は、HVACコイルのフロー効率を顕著に低下させ、熱伝達を阻害する。妨害領域が位置する場所にクリーニングフォームが迅速に蓄積する場合、テクニシャンは、次いで、これらの妨害領域に取り組むためいくつかの技法を利用しうる。一つの技法は、フォームを妨害領域の外周方向を標的とし、外側から内側へのアプローチを使用して妨害領域の外縁をゆっくりと分解してなくすことである。第二のアプローチは、妨害領域に非常に濃厚のフォームと非常に薄いまたはスープのようなフォームとの組合せを注入することである。この技法は、しばしば、妨害領域の真ん中において非常に小さい空気チャンネルを開通させ、そのチャンネルは次いで以上のフォームを引く吸引穴を発生させる。このことは、水食に類似のプロセスにより空気ギャップのサイズを増大させ、粒子を移動させてフォームを押してこれらの妨害領域を通過させることを可能にし、これにより妨害領域を開通させる。
【0036】
コイル中にフォームを注入する際、目的は、100%に近い表面積接触を与えることである。テクニシャンがフォームを注入するにあたり、フォームがいかにしてコイルの後端から排出されるかを調べることにより、いかにしてフォームがコイルを通って移動するかを視覚的に見ることが可能である。HVACコイルに入っている及び排出されるフォームの例証については、再度図1~3に対して参照がなされる。ここでもまた、コイルの出口側または裏端を調べることにより、非常に深い妨害領域が位置していうるかを、視覚的に決定することは可能でありうる。例えば、フォームがコイルの前を通って均一に引き込まれているが、裏からは均一には排出されない場合、このことは、深い妨害領域がどこに位置するかに関してテクニシャンに知見を与え、妨害が除去されるまで標的エリアに容易に取り組みうる。
【0037】
図1~3は、低圧下でのクリーニングフォームの移動を示す、コイルクリーニングのデモントレーションビデオからのスクリーンショットである。図1は、コイルの前面に適用されているクリーニングフォームを例証する。クリーニングフォームがコイルを貫通するにあたり、フォームは粒子及びデブリを集めて引き出し、細菌及びバイオフィルムを効果的に除去する。図2及び3は、コイルの裏面から出るフォームを例証する。そのプロセスは、コイルを殺菌し、かつ空気の質も向上させる。そのプロセスは、さらに圧力降下を減少させ、空気流及び熱伝達を増大させ、かつエネルギー消費を低下させる。
【0038】
省エネルギーにおいては、少なくとも2つの様式で改善がみられうる。第一に、細菌、バイオフィルム、汚れ、垢、または他のデブリを除去することにより、そのシステムによって空気流が改善される。このことは、背圧またはコイルを横切る圧力降下(コイルの前後での圧力差)を縮小させる。エアハンドラーの圧力降下の縮小は、空気を引いてコイルを通過させるのに必要であるブロワー上の電力負荷を直接的に縮小させる。最も簡単な言葉で言えば、1%の圧力低下は、1%のブロワーのブレーキ馬力の低下と同等であるべきである。
【0039】
バイオフィルム及び/またはコイルの内表面からの他のファウリング残留物を除去することにより背圧を低下させることに加え、コイルを通過する空気がより迅速により冷たくなるように、コイルによる熱伝達が改善される。このことは、冷却されたウォーターチラーのエネルギー負荷を低下させるのに役立つ。バイオフィルムは空気流を制限することにより冷却能力を低下させ、移動する空気とコイル表面との間の接触面積を縮小させ、断熱材としてはたらく有機物の層を提供する。バイオフィルムを除去することは、空気流、及び移動する空気とコイル表面との間の接触面積を増大させ、かつそれらの断熱効果を軽減する。
【0040】
NevadaのLas Vegasにおける高級ホテルにて、HVACユニットについての実験的デモンストレーションが行われ、ブローワーに対するエネルギー負荷とコイルによる冷却能との両者に低下をもたらした。熱伝達コイルのクリーニングの前におけるエアハンドラーを横切る初期圧力降下は、0.69psiであった。本発明に従いフォームを使用してコイルをクリーニングした後には、エアハンドラーを横切る圧力降下は、0.37psiまで低下し、これは46%の低下である。このこと単独でも、約46%の、エアハンドラーを作動させるのに必要となるエネルギー量の低下をもたらすと予期されるであろう。
【0041】
そのホテルにおける様々な部屋または位置における可変風量Variable Air Volume(VAV)の低下により示されるように、冷却効率も増大した。VAVシステムにおいては、部屋に送達される空気の容積は、的確なレベルの冷却を提供するためにバッフルを開けるまたは閉じることにより、増大させられまたは縮小させられうる。コイルのクリーニングの前に、いくつもの部屋におけるVAVは、完全に開いており、または空気容積容量100%にあった。クリーニングの前は全ての部屋が最大の冷却を要した。このことは、冷却効率が低く、かつHVACシステムが全ての部屋を十分に冷却することが不可能であることを示した。本発明に従いフォームを使用してコイルをクリーニングした後は、殆どの部屋におけるVAVが80~90%低下した。このことは、これらのエリアについて、冷却効率が顕著に増大したことを意味する。例外はカフェキッチンバーであり、それは、ストーブ及びオーブンにより常に温められており、常に最大の冷却を要する。十分に冷却された部屋への冷却空気を制限することにより、より多くの冷却された空気が利用可能となり、キッチンエリアなどのより多くの冷却を要しているエリアに転用されうる。これにより以前は十分に冷却されていなかったエリアをより効率的に冷却する。
【0042】
最後に、HVACクリーニングプロジェクトの合計の水使用量は33ガロンであり、これは、従来型の圧力洗浄法よりも約95%少ない。例えば、標準的な圧力洗浄機は、通常操作の間に1分あたり約6ガロンを使用しうる。これは4時間またはクリーニングのための1440ガロンの水に等しい。
【0043】
開示される方法及びシステムの、クリーニングフォームで高い度合いの表面積カバー率を提供する能力は、病院におけるブドウ球菌及びMRSAなどの抗生剤耐性微生物を減少させるように、コイルを衛生化かつ消毒することを可能にする。病院HVACコイルをクリーニングすることは、エネルギー消費を低下させ、より重要なことには、そのプロセスは、換気システムを介して現在病気及び感染を拡散するコイルを、衛生化かつ消毒することをついに可能にするだろう。微生物が医療機関中を再循環かつ移動することを可能にするのは、コイル、及びそのエアハンフドラーシステムである。今となってはコイルを貫通かつクリーニング及び消毒することが可能となったことにより、病院の空気の質及び健康において非常に大きな改善が達成されうる。フォームは、コイルの表面上に、消毒剤、及び/またはくっつかないコーティングを送達するために、任意で使用されうる。フォームは堆積すると、それ以降細に菌が成長することを防ぎうる。
【0044】
本発明の方法は、様々な異なるクリーニングフォームを使用して実際されうることが、理解されるべきである。いくらかの実施形態においては、建築物の暖房換気及び空気調節(HVAC)システムをクリーニングする際に使用されるクリーニングフォームを産生するためのフォーム発生システムは、(1)加圧空気を提供する、空気ポンプまたは加圧槽;(2)水、その加圧空気、及び界面活性剤を受け取るための、1つまたはそれ以上の注入口;(3)少なくともその界面活性剤を加圧するための1つまたはそれ以上の空気駆動式ポンプであって、その加圧空気により駆動される1つまたはそれ以上の空気駆動式ポンプ;(4)加圧されたクリーニングフォームを形成するために、その加圧空気、水、及び界面活性剤を受け取りかつ混合するためのマニホールド;並びに(5)その加圧されたクリーニングフォームを排出するための、そのマニホールドと流体連結している排出口を有する。以下に続くフォーム発生システムの例の開示は、限定ではなく例として与えられる。
【0045】
図4及び5において例証されるように、フォーム発生システム100の例は、様々な種類及び容積のフォームを発生させるための、コンパクトかつ軽量かつ携帯型のシステムでありうる。そのシステム100は、圧縮空気(表示なし)により駆動されてもよく、空気、水、酵素、及び/または化学物質、並びに界面活性剤をそれぞれ投入するための、水投入ポート102、空気投入ポート104、酵素及び/または化学物質投入ポート106、並びに界面活性剤投入ポート108を含む。投入輸送ライン110、112、114、及び116の各々が、投入ポート102、104、106、及び108とそれぞれ流体連結しており、水、空気、酵素及び/または化学物質、並びに界面活性剤を、さらなる処理のために、システム100中へ輸送する。
【0046】
水バルブ120、空気バルブ122、第一針バルブ124、及び第二針バルブ126は、システム100中への投入成分の流れを制御する。投入成分の比を変更することは、より濃厚なフォーム、より薄いフォーム、よりリッチなフォーム、希釈されたフォーム、粘着性フォーム、流れやすいフォーム、及びそれらの類似物などの異なる種類のクリーニングフォームを生じる。水バルブ120は、マニホールド128へ送達される水の流れ及び圧を制御し、マニホールド128は、クリーニングフォームを作成するために成分が混合される混合槽としてはたらく。空気バルブ122は、マニホールド128中への空気の流れ及び圧を制御する。第一針バルブ124は、マニホールド128中への酵素及び/または化学物質の流れ及び圧を制御し、第二針バルブ126は、マニホールド128中への界面活性剤の流れ及び圧を制御する。バルブ120、122、124、及び126を制御することにより、望ましいちょう度、化学的特性、容積、圧、及びこれらの類似物などの、クリーニングフォームの特性を調節することができる。
【0047】
空気及び水は第一にシステム100中に圧力下で導入されうる一方、酵素、化学物質、及び/または界面活性剤は、ポンプにより1つまたはそれ以上の非加圧槽から引かれ、望ましい圧及び流速にまで加圧されうる。これは、システム100内の1つまたはそれ以上の空気駆動型ポンプを使用して実現されうる。
【0048】
図5に示されるように、第一及び第二補助空気ライン130、132の各々は、それぞれ第一及び第二針バルブ124、126に加圧空気を送達する。第一及び第二空気ポンプ送達ライン134、136は、加圧空気を、それぞれ第一及び第二針バルブ124、126の各々から、それぞれ第一及び第二空気ダイアフラムポンプ138、140の各々へと送達する。第一空気ダイアフラムポンプ138は、マニホールド128中への圧力下での導入のため、酵素及び/または化学物質を含有する液体または溶液に、圧力を適用する。第二空気ダイアフラムポンプ140は、マニホールド128中への圧力下での導入のため、界面活性剤を含有する液体または溶液に、圧力を適用する。第一及び第二圧力ゲージ142、144も提供され、それらは、それぞれ第一及び第二針バルブ124、126と流体連結しており、それぞれ第一及び第二空気ダイアフラムポンプ138、140の各々へと送達される空気圧の大きさを示す。ポンプへの空気圧を制御することは、第一及び第二ダイアフラムポンプ138、140がそのそれぞれの成分をダイアフラム128にポンプする速度を制御する。空気圧を増大させることはポンピングの速度を増大させ、空気圧を低下させることはポンピングの速度を低下させる(例えば、分あたり0.5ガロン(GPM)の流速に対して10psi、0.74GPMの流速に対して20psi)。
【0049】
送達ライン150、152、154、及び156も提供され、これらは、マニホールド128にそれぞれ水、空気、酵素及び/または化学物質、並びに界面活性剤を送達するために使用される。それぞれ送達ライン150、152、154、及び156に沿うチェックバルブ160、162、164、及び166も提供され、これらは、マニホールド128中への投入成分の一方向の流れを提供し、成分及び/またはフォームが送達ライン150、152、154、及び156を通って逆流するのを防止する。圧力下で成分の混合によりマニホールド128中で発生したフォームは、フォーム送達ライン170を通過してフォーム排出口172から排出させられる。ホース及び他の機器(表示なし)は、第二容器174中で運搬され、使用の間はシステム100に取り付けられうる。フォーム送達ホース及びノズル(表示なし)は、HVACシステムの熱伝達コイルへクリーニングフォームを噴霧または注入するために使用されうる。
【0050】
本装置及び方法の望ましい特徴は、非常に濃厚、非常に薄い、及び中間的なちょう度などの、異なる種類のフォームを発生させる能力である。図4及び5に戻り、界面活性剤投入ポート108は、一般に界面活性剤を引くために使用され、また例証される実施形態においては、1/2インチ外径(OD)配管(表示なし)に連結されてもよく、次いでその配管は、手桶、バケツ、またはドラム(表示なし)などの界面活性剤の供給源へと接続されうる。投入ポート106は、コイルをクリーニング、衛生化、及び消毒するのに望ましい活性化学作用を引きこむために使用され、1/2インチOD配管(表示なし)に接続され、次いでその配管が、望ましいクリーニング溶液を含有する手桶、バケツ、またはドラムに接続されうる。また、界面活性剤及びクリーニング溶液は、代わりに、供給源(手桶、バケツ、ドラム)中で予混合されて合わせられ、投入ポート106または108のいずれかの中にそれぞれポンプ138または140により引き入れられてもよい。これは、例えば、現場において容易に入手可能な加圧水供給源が利用できず、投入ポート102に直接的に接続された加圧水を供給する水ホースの代わりに、水を引き入れるためにポンプ138または140のうち1つが必要である場合に、行われうる。
【0051】
例証されるように、投入ポート106及び108の両者は、それぞれ1~100psi圧力ゲージ142、144に接続される。各圧力ゲージ142、144は、それぞれ針バルブ124、126、及びそれぞれ空気ダイアフラムポンプ138、140に接続され、テクニシャンが各単離された空気ダイアフラムポンプ138、140にどれだけの空気圧力が適用されているかを視覚的に決定するのを補助する。
【0052】
例証されるように、システム100の正面コントロールパネル上に印刷されている指示記述を通じて、テクニシャンは、どれだけの圧力が導入されているかによって、各ポートを通る液体の流速を、迅速かつ容易に決定し、制御しうる。例証としては、選択される空気圧において異なる流速を提供するようにシステムが調節されることを念頭におきつつ、10psiの空気圧は、分あたり0.50ガロン(GPM)の流速を生じさせうる。また、20psiの空気圧は、0.74GPMの流速を生じさせうる。この設定は、容量及び混合比の百分率が迅速かつ容易に決定されうるように、テクニシャンがフォーム発生プロセスを非常に正確な設定に調節することを許容する。このことは、正確な容積のクリーニング溶液及び界面活性剤比を含有する、指定されたクリーニングフォームを作成する能力を提供する。施設の内部空気供給源により、または携帯型空気コンプレッサーにより供給されうる加圧空気供給源に空気投入ポート102が接続され、他の望ましい成分が利用可能となると、システム100は作動の準備が整った状態となる。
【0053】
空気バルブ122は、マニホールド128中への空気流を制御する。ここで、空気バルブ122は針バルブであってもよく、マニホールド128は主要混合チャンバーであってもよい。投入ポート102、106、及び108を通る他の成分の流速は、それぞれバルブ120、124、及び126により制御される。マニホールド混合チャンバー128中への加圧空気の調節は、テクニシャンが望まれるフォームの種類を制御することを可能にする。例えば、マニホールド128中により高容量の加圧空気を添加することは、高容積化した濃厚なシェービングクリーム様フォームを発生させる。フォームの濃厚度は、界面活性剤及び水の容積によっても決定され、界面活性剤及び水の容積は、望ましい種類のフォームを発生させる能力に直接的に影響する。例えば、多すぎる水及び少なすぎる界面活性剤は、ほぼエアロゾル化された種類の産物を産生するだろう。多すぎる界面活性剤及び少なすぎる水は、極めて濃厚なフォームを産生するだろう。
【0054】
水投入ポート102は、ガーデンホース様式の接続を含みうる外部水接続を提供する。ポート102に接続する内部ポンプはないかもしれず、そうすると、水流は、ガーデンホース接続に接続される場合などに見られるように外部圧力に依存する。ポート102に入る水の圧力及び容積は、水バルブ120により調節されてもよく、このことは、望ましい種類のフォームを発生させるのをさらに補助するために、テクニシャンが水を増やすまたは減らすことを可能にする。ここで、水バルブ120は、針バルブでもよい。
【0055】
マニホールド128は、フォーム送達ライン170を介してフォーム排出口172に接続する。そのフォーム送達ライン170は、3/4"OD配管であってもよい。排出口ポート172は、ホースバーブ、カムロック接続、または他のホース接続装置を介してホースライン(表示なし)を接続するために、構成されうる。外部ホースは、25フィートなどのあらゆる望ましい長さであってもよい。しかしながら、これは適用ニーズに応じてより長くてもよい。プロジェクトの容積ニーズに応じて、テクニシャンは、1インチ、3/4インチ、1/2インチ、等々のあらゆるサイズのホースを排出口172に接続しうる。一般に、1/2インチのホース接続が、HVACシステムをクリーニングするために使用されうる。いくらかの実施形態においては、外部フォームラインの端に取り付けられる先端部、尖端部、または他の特別な接続部の必要はない。制限的な先端部または接続部は、フォームの流れ、及びシステムの空気ダイアフラムポンプの作動さえも阻害しうるため、必ずしも適用されない。さらに、コイルに対する損傷のリスクを排除するための秘訣は、フォームラインの出口端において流れを制限しないことを要する。フォームがフォームラインを出てコイルに適用される際、より大きい開口部によるエネルギーの散乱は、フォームの適用に有利となるかもしれず、また非常に繊細なコイルを潜在的に損傷しうる接触の加圧ポイントを排除するかもしれない。
【0056】
さらに、前述の内容は、明晰性及び理解の目的のための例証及び実施例としていくらかの詳細を伴って開示されてきたが、本発明の真髄から逸脱することなく多数かつ様々な修正がなされうることが、当業者により理解されるだろう。従って、本明細書において開示される形態は、例証的のみであり、本開示の範囲を制限することを意図せず、むしろ本発明の真の範囲及び真髄を備える全ての修正及び代替物をも包含するべきであることが明確に理解されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5