(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-16
(45)【発行日】2022-06-24
(54)【発明の名称】害虫防除用静電場スクリーン
(51)【国際特許分類】
A01M 29/28 20110101AFI20220617BHJP
A01M 1/22 20060101ALI20220617BHJP
A01M 1/24 20060101ALI20220617BHJP
【FI】
A01M29/28
A01M1/22 B
A01M1/24
(21)【出願番号】P 2018010187
(22)【出願日】2018-01-25
【審査請求日】2019-06-14
【審判番号】
【審判請求日】2021-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】594120157
【氏名又は名称】アース環境サービス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】514207083
【氏名又は名称】株式会社園田製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】512224729
【氏名又は名称】地方独立行政法人大阪府立環境農林水産総合研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000125347
【氏名又は名称】学校法人近畿大学
(74)【代理人】
【識別番号】100081558
【氏名又は名称】齋藤 晴男
(74)【代理人】
【識別番号】100154287
【氏名又は名称】齋藤 貴広
(72)【発明者】
【氏名】松田 克礼
(72)【発明者】
【氏名】角谷 晃司
(72)【発明者】
【氏名】野々村 照雄
(72)【発明者】
【氏名】瀧川 義浩
(72)【発明者】
【氏名】豊田 秀吉
(72)【発明者】
【氏名】草刈 眞一
(72)【発明者】
【氏名】岡田 清嗣
(72)【発明者】
【氏名】柴尾 学
(72)【発明者】
【氏名】松本 吉雄
(72)【発明者】
【氏名】美山 和宏
(72)【発明者】
【氏名】園田 隆博
【合議体】
【審判長】森次 顕
【審判官】奈良田 新一
【審判官】土屋 真理子
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-195404(JP,A)
【文献】特開2010-279270(JP,A)
【文献】特開2010-35506(JP,A)
【文献】国際公開第2015/097722(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 1/22,1/24,29/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央ネットとその両側に配置される外側ネットの3枚の同一サイズで同一メッシュのステンレス鋼ネットを、
絶縁フレーム内に、各ネット間に所定の間隔を保持して平行に配列し、前記中央ネットを負に帯電させ、前記各外側ネットを正に帯電させて反対極同士を対向させて成り、
前記中央ネットに対する印加電圧は
10.1kV未満であって、前記中央ネットに対する印加電圧と、その両側に配置される前記各外側ネットに対する印加電圧との差は、各ネット間に強制放電が生じない範囲であり、
前記3枚のネットのメッシュサイズは4メッシュ以上で同一のサイズであり、前記3枚のネット間の間隔は15mm前後であって、
前記ネット間に高い導電率を有する害虫が進入することにより瞬時に発生するアーク放電によって、当該害虫を感電死させることが可能であることを特徴とする害虫防除用静電場スクリーン。
【請求項2】
前記3枚のネットの各ネット間に、電極間距離を維持するための絶縁材製スペーサが挟み込まれる、請求項1に記載の害虫防除用静電場スクリーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、害虫防除用静電場スクリーンに関するものであり、より詳細には、豚舎等の家畜用施設(畜舎)の窓や換気扇などの開口部に用いるのに好適な害虫防除用静静電場スクリーンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
現代の畜舎の設計においては、十分な換気を保証することが必要である。そして、畜舎は、過剰な熱、水蒸気、塵埃、ガス、及び悪臭を除去するように設計し、且つ、空気の均一な配分を行うことが重要である。受動的もしくは自然換気は、建物の開口を通した空気の供給及び除去によって行われる。自然換気は、建物の周りの自然な風の流れ、並びに、建物の内側と外側との間の温度差によって生ずる。強制換気は、ファン、自動温度調整装置、及び空気の吸入口によって生じ、最も一般的には、ファンを用いて建物から外に空気を吹き出させるとともに、新鮮な空気をその反対側から、吸入口を通して吸引することにより行われる。ファンはまた、施設内に設置して空気を循環させ、且つ、換気性状の均一性を向上させるためにも使用できる。
【0003】
しかるに、換気設備が十分な場合には、害虫が畜舎内に導入される可能性がある。家畜生産における深刻な害虫問題は、多岐に亘る。家畜の害虫は、動物の血液、皮膚、及び毛髪を餌とし、害虫のかみ傷は、動物に対して身体的及び精神的な健康問題を引き起こす場合がある。また、家畜における害虫問題に加えて、畜舎から周囲の人間社会への、害虫媒介による病原体の伝染の心配もある。世界の多くの地域では、急速なペースで進行した都会化によって、都市の畜産業が都市居住者に食料を供給しなければならなくなった。したがって、市街地で発生する人畜に共通の伝染病が伝染するおそれは、ますます深刻になってきている。
【0004】
このように、畜舎においては、十分な換気を確保すると共に害虫の進入を防止する対策を施す必要があるが、この2つの要請の間には、換気設備が十分な場合には、害虫が施設内に導入される可能性がある、という裏腹な面があることもあって、従来この2つの要請を同時に満たし得る、豚舎等の家畜施設に設置するのに好適な設備は提案されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、従来、十分な換気を確保すると共に害虫の進入を防止する、という2つの要請を同時に満たし得る、豚舎等の畜舎に設置するのに好適な設備機器は提案されておらず、その出現が切望されていた。本発明はかかる要請に応えるためになされたもので、シンプルな構成で比較的廉価にて供給でき、豚舎等の畜舎の窓等の開口部に設置することで、十分な換気を確保すると共に害虫の進入を防止する機能を発揮する害虫防除用静電場スクリーンを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、電界内で生ずる高エネルギー電子を用いて害虫を殺すことが可能との知見を得、害虫身体の高い導電率により、装置内で瞬時に発生するアーク放電によって害虫のみが感電死するであろうとの仮説の下に、鋭意研究・試験を重ねた結果、本発明を完成させるに至ったものである。
【0008】
即ち、上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、中央ネットとその両側に配置される外側ネットの3枚の同一サイズで同一メッシュのステンレス鋼ネットを、絶縁フレーム内に、各ネット間に所定の間隔を保持して平行に配列し、前記中央ネットを負に帯電させ、前記各外側ネットを正に帯電させて反対極同士を対向させて成り、
前記中央ネットに対する印加電圧は10.1kV未満であって、前記中央ネットに対する印加電圧と、その両側に配置される前記各外側ネットに対する印加電圧との差は、各ネット間に強制放電が生じない範囲であり、前記3枚のネットのメッシュサイズは4メッシュ以上で同一のサイズであり、前記3枚のネット間の間隔は15mm前後であって、
前記ネット間に高い導電率を有する害虫が進入することにより瞬時に発生するアーク放電によって、当該害虫を感電死させることが可能であることを特徴とする害虫防除用静電場スクリーンである。
【0011】
一実施形態においては、前記3枚のネットの各ネット間に、電極間距離を維持するための絶縁材製スペーサが挟み込まれる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る害虫防除用静電気スクリーンは上記のとおりであるので、シンプルな構成で比較的廉価にて供給でき、豚舎等の家畜設備の窓等の開口部に設置することで、十分な換気を確保すると共に害虫の進入を防止し得る効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る害虫防除用静電場スクリーンの概略構成を示す模式図である。
【
図2】本発明に係る害虫防除用静電場スクリーンにおける電界を示す模式図である。
【
図3】本発明に係る害虫防除用静電場スクリーンの作用効果を確認するために行った試験方法を示す図である。
【
図4】本発明に係る害虫防除用静電場スクリーンの作用効果を確認するために行った試験方法を示す図である。
【
図5】異なる3種類の本発明に係る静電場スクリーンの、異なる相対湿度(RH)条件下での印加電圧と、中央ネットからの無声放電によって発生する電流の大きさとの間の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明を実施するための形態につき、添付図面を参照しつつ説明する。
図1に示されるように、本発明に係る害虫防除用静電場スクリーンは、中央ネット1と、その外側に配置される外側ネット2,3の3枚の同一サイズで同一メッシュのステンレス鋼等の金属ネットを、各ネット1~3間に所定の間隔を保持して平行に配列して構成される。そして、中央ネット1は、例えば、最大電流1,000μAのDC電圧発生器4に接続して負に帯電させ、外側ネット2,3は接地線5に接続して、中央ネット1との間の静電誘導により正に帯電させ、反対極同士が対向するように構成したものである。
【0015】
3枚のネット1~3は、例えば、畜舎の窓に設置されることを想定し、十分な通気性を確保するために、4メッシュ以上のメッシュサイズのものとされ、それぞれポリカーボネート等の絶縁フレーム6で取り囲まれる。また、各ネット1~3間にはそれぞれ、電極間距離に対応する厚さのポリプロピレン等の絶縁材製スペーサ7が挟入されて、電極間距離が確保される。電極間距離は、例えば、15mm前後とされる。
【0016】
この構成の場合、中央ネット1と外側ネット2の間においては、中央ネット1側が負に帯電することで、静電誘導によって外側ネット2側が正に帯電するため、両ネット1,2間に電界が形成される。また同様に、中央ネット1と外側ネット3の間においては、中央ネット1側が負に帯電することで、静電誘導によって外側ネット3側が正に帯電し、両ネット1,3間に電界が形成される(
図2参照)。
図2中の矢印は、電流の方向を示す。
【0017】
上述したように、本発明に係る装置は、害虫身体の高い導電率により、装置内で瞬時に発生するアーク放電によって害虫のみが感電死するであろうとの仮説の下に開発されたものである。本発明者らは、この仮説の正しいことを確認し、装置の有効性を判定するために以下のような試験を行い、その試験結果から最も適切な条件を求めることによって、装置の構成の最適化を図ることとした。
【0018】
試験材料
ウイルス病原体のモデル媒介動物として、アカイエカを用いた。アカイエカの成虫は、グロースチャンバー内で、25.0±0.5℃、4,000ルックスで光周期12時間の条件下で飼育した。 そして、以下の実験では、新しく出現したアカイエカの成虫を用いた。アカイエカの成虫の平均的な体寸法(即ち、20匹の成虫における頭から翅先端までの平均長さ)は、5.6±1.3mmであった。
【0019】
試験装置
試験装置として、本発明に従い、3枚の同一サイズで同一メッシュのステンレス鋼ネットを、各ネット1~3間に所定の間隔を保持して平行に配列し、中央ネット1にDC電圧発生器4を接続したものを用意した。この試験装置においては、各接地線5に、中央ネット1への自由電子の移動を測定するための検流計8を接続した(
図1参照)。また、試験装置として、ネットサイズの異なる、即ち、45×45cm(Sスクリーン)、90×90cm(Mスクリーン)、及び180×90cm(Lスクリーン)の3種類の静電気スクリーンを作成した。
【0020】
≪実験1≫
第一の実験では、3種類のスクリーンを1~15kVで帯電させて、中央ネット1から強制放電(アーク放電)を行わせた。また、無声放電(これは、中央ネット1の外側ネット2,3側表面で絶えず発生している)を、強制放電を生じさせない電圧範囲(2.0~10.0kV)で測定した。検流計8により、無声放電及び強制放電の合計として、あるいは、後述する害虫媒介による放電として、電流を測定した。実験は、25℃で、また、異なる相対湿度(RH)条件(30、60、及び90%)下で行った。
【0021】
≪実験2≫
第2の実験では、3種類のスクリーンを異なる電圧(2~10kV)で帯電させて、スクリーンに導入した全ての害虫を感電死させる電圧の範囲と、与えられた電圧における害虫媒介による過渡電流(アーク放電によって生ずる)の大きさとを求めた。試験対象昆虫であるアカイエカは、昆虫吸引器で集め、昆虫吸引器の先端を通して圧縮空気を噴き出させることで、ネット間に吹き込んだ(
図3)。風速は、高感度の風速計を用いて、中央ネット1の表面で測定した。
【0022】
これらの実験では、アカイエカを、風速3-5m(換気良好な豚舎の平均的な空気流速)で吹き込んだ。実験は全て、上記のRH及び温度条件下で行った。検流計8により、害虫媒介による放電を過渡電流として記録した。アカイエカは、電界を通過させた後、その死亡率を評価した。試験した各電圧及びRH条件に対して、20匹の成虫のアカイエカを用いた。実験は、5回繰り返し、データを平均及び標準偏差(SD)として示し、また、処理間の有意差をTukeyの方法を用いて求めた。
【0023】
試験結果及び検討
上記試験装置において、電圧発生器4におけるCockcroft回路で生じた高電圧を用いて中央ネット1を負に帯電させ、外側ネット2,3から放電させることによって両電極を帯電させた。蓄積電気の中央ネット1への流れ(電流)は、電極への印加電圧、電極間距離、及び、両電極間の空気の導電率に左右された。電流は、電圧の増大に比例し、且つ、距離の増大に反比例した。空気の導電率は、空気中の水蒸気の濃度(RH)の変動に応じて変化し、RHが増大するにつれてより高くなる(即ち、電気的な移送量が増大する)。この実験においては、電極間距離を固定し、電圧を効果的に変化させ、異なるRH条件下で、静電気装置によりアカイエカを感電死させた。
【0024】
実験1では、スクリーンに使用したネット1~3の不均一な構造によって中央ネット1から強制放電が生ずる電圧を測定した。強制放電(アーク放電)は、中央ネット1上の突出点で発生した。中央ネット1への印加電圧を上げて行くと、スクリーンは、結果的に、RHの変化にかかわらず、≧10.1kVで強制放電を生じた。この結果、スクリーンは、<10.1kVでは、RHの変化があっても、強制放電を生ずることなしに動作させることができることが分かった。
【0025】
ネット間に生ずる電界においては、中央ネット1の外側ネット2,3側表面から外側ネット2,3に向けて絶えず無声放電が生じた。
図5は、印加電圧と無声放電の発生との間の関係を示す。サイズの異なるいずれのタイプのスクリーンにおいても、この放電によって生ずる電流は、印加電圧の増大に正比例して増大し、その際の印加電圧の範囲は、Sサイズスクリーンでは、6.8~10kV、Mサイズスクリーンでは、4.3~10kV、また、Lサイズスクリーンでは、3.2~10kVであった。電流は、スクリーンのネットサイズの増大につれて増大した。更に、電流は、試験した全てのスクリーンにおいて、RHの増大につれて増大した。
【0026】
本発明に係る静電場スクリーンにおいては、電界内の空気が電離することによってイオン化されるのではないかと考えられたため、イオン検出器による測定を行った。その結果、電界内の空気が、電離によってイオン化されていることが判明した。この電界内のイオン化された空気は、非常にアクティブであり、ウイルスを含む各種の微生物を破壊又は不活性化することができ、且つ、電界を通過する悪臭気体を脱臭することができることも確認された。畜舎において発生する各種の悪臭が深刻な環境問題を引き起こしているが、本発明に係る静電場スクリーンは、この悪臭除去能力により、その悪臭対策にも有効活用できるであろう。
【0027】
続く第2の実験では、中央ネット1から強制放電を生じない各種の電圧を用い、且つ、その容量に従って電気(自由電子)を伝達する導体をスクリーンのネット間の空間内に導入した。上記発明者らの仮説は、この導体材料は、中央ネット1からの電子の一時的な受容体として、また、電極間距離の短縮によって、外側ネット2,3への電子の提供体として働き得る、ということであった。
【0028】
この仮設の妥当性を確認するための試験において、昆虫(アカイエカ)は、格好な生物導体であった(
図4)。即ち、多くの脊椎動物の身体を被覆している外側の保護層である表皮は、その高い導電率によって効率よく帯電されることが知られており、アカイエカの成虫は、この表皮構造を有しているからである。
【0029】
表1は、試験装置に導入された、アカイエカの成虫によって媒介された瞬時過渡電流の大きさを収載したものである。各ネット1~3は、異なる電圧(2~10kV)により、異なるRH条件下で帯電させておいた。アカイエカが一度導入されると、電子が、瞬時的に中央ネット1から外側ネット2,3に移動し、L及びMスクリーンでは3~10kV、Sスクリーンでは4~10kVの電圧範囲内では、アカイエカを介して大地に逃げることになった。この電子移動は、2つの検流計8によって同じ大きさの過渡電流として同時に記録された。しかしながら、電流の大きさは、同じ電圧を加えた場合でも、使用したスクリーン間で顕著に異なっていた。
【0030】
これらの結果は、中央ネット1に蓄積された異なる量の電気(自由電子)が、害虫に向けて放出されたことを示している。電流の増大の大きさは、中央ネット1面積の増大(即ち、中央ネット1の静電容量の増大)に対応する。全てのスクリーンにおいて、電流の大きさは、印加電圧が増大するにつれてより大きくなった。電流がより高くなると、より大きなインパクトが発生し、アカイエカを空中から弾き出した。RH条件は、全てのスクリーンにおいて、昆虫媒介による過渡電流にいかなる有意差も生じなかった。
【0031】
表1はまた、スクリーンに導入されたアカイエカの死亡率を示している。電撃によって全てのアカイエカを殺すことができた最低の電圧は、L、M及びSサイズスクリーンにおいて、それぞれ、4、6、及び8kVであった。これらの電圧では、同様なレベル(約20μA)の昆虫媒介による過渡電流が発生し、昆虫をスクリーンの電界内で効果的に感電死させるには、このレベルの電流が必要であることが分かった。より低い電圧では、中央ネット1における自由電子の蓄積がより少ないため、生じた電撃は、昆虫を殺すのには不十分であった。
【0032】
【0033】
上記試験結果から得られた結果は、本発明者らの期待どおりのものであり、本発明に係る装置は、ウイルスを伝染させるアカイエカが畜舎から逃げ出すのを防止するのに適用可能であることを確証するものであった。本装置はまた、害虫が畜舎に侵入することを防止する、即ち、飼育中の家畜等を各種の害虫から護るのにも効果的であることが明らかである。理論的には、この害虫防除方法は、導電性の表皮層を有する全ての害虫に適用できる。家畜の害虫防除では、外部寄生虫の防除が最も高価で、時間の掛かる作業の1つであり、より暖かい地方では、さまざまなハエが、動物に対する外部寄生虫となっている。
【0034】
本発明に係る装置は、害虫の感電殺能力を備えるだけでなく、開口面積の広いネットを使用することによって、換気のために十分な開口面積を確保し得るものである。ネットのメッシュサイズ(例えば、7.0mm目合)は、従来の織布害虫ネットのそれ(0.8~1.5mm目合)よりもかなり大きなものである。なお、上記実験において本装置を設置したと同じ畜舎の開口に、この従来の織布害虫ネットを設置したところ、当然のことながら、確実に換気効率が低下した。
【0035】
上記試験装置においては、アーク放電及び無声放電の両方において、電流は、印加電圧、RH(無声放電の場合のみ)、及びネットサイズの増大に正比例して増大した。これらの特性は、スクリーンの静電気的性質によるものである。しかしながら、電流の大きさ(20~200μA)は、実用的な観点からは、無視できるものであった。上述したように、電界は、中央ネット1の負電荷と外側ネット2,3の中央ネット1側の正電荷との間に形成され、外側ネット2,3の外側の表面には、電荷が全く無く、ネット表面に安全に手を触れることができた。その他の保護手段としては、電圧発生器4の電気回路に組み込まれた電流制限器(最高制限値は、1000μA)があり、これは、不測の事態によって過大電流が発生した場合、電圧発生器4を自動的にオフにするものである。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明に係る装置は、畜舎における効率的な害虫防除のために使用可能であり、且つ、殺虫剤処理の必要性を排除し得るものである。また、本発明に係る装置はシンプルな構成で、特殊技術を要することなく製作容易で、設置箇所に合わせてサイズ調整することも容易であり、しかも、低い消費電力で動作し、病原体ウイルスを伝染させる可能性のある害虫を電殺することができるものであり、害虫防除のために家畜飼育施設の開口部に設置するのに好適で、殺虫剤処理の必要性を排除し、環境的に管理された家畜施設内で、ウイルスの無い動物を飼育して供給することを可能にするものであって、その産業上の利用可能性は極めて大である。
【符号の説明】
【0037】
1 中央ネット
2,3 外側ネット
4 電圧発生器
5 接地線
6 絶縁フレーム
7 スペーサ
8 検流計