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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-16
(45)【発行日】2022-06-24
(54)【発明の名称】電池内蔵継手
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/56 20060101AFI20220617BHJP
   A61F 2/72 20060101ALI20220617BHJP
   H01M 50/20 20210101ALI20220617BHJP
【FI】
A61F2/56
A61F2/72
H01M50/20
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2018138584
(22)【出願日】2018-07-24
(65)【公開番号】P2020014597
(43)【公開日】2020-01-30
【審査請求日】2021-06-23
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 I.ウェブサイト (ウェブサイト1:資料1) 掲載日 2017年12月18日 アドレス http://amaz-tech.co.jp/2017?post_type=info http://amaz-tech.co.jp/info/171218 https://docs.google.com/viewerng/viewer?url=http://amaz-tech.co.jp/ wordpress/wp-content/uploads/2017/12/%EF%BC%AE%EF%BC%B2%EF%BC%88%E7%AD%8B%E9%9B%BB%E7%BE%A9%E6%89%8B%E7%94%A8%E5%B0%8F%E5%9E%8B%E5%86%86%E7%AD%92%E5%BD%A2%E9%9B%BB%E6%B1%A0-01.pdf&hl=ja (ウェブサイト2:資料3) 掲載日 2017年12月25日 アドレス http://www.toyal co.jp/whatsnews/171225_02.html (ウェブサイト3:資料9) 掲載日 2018年6月15日 アドレス 兵庫県社会福祉事業団 福祉のまちづくり研究所 福祉のまちづくり研究所報告集 http://www.assistech.hwc.or.jp/kenkyu/pdf/research/2017/2017-4.pdf II.展示会 (展示会1:資料2) 展示会名 シーズ・ニーズマッチング交流会2017 大阪開催 開催日 2017年12月19日および20日 (展示会2:資料8) 展示会名 シーズ・ニーズマッチング交流会2017 東京開催 開催日 2018年2月20日および21日 III.新聞 (新聞1:資料4) 発行日 2017年12月26日 刊行物 日刊鉄鋼新聞 (新聞2:資料5) 発行日 2018年1月5日 刊行物 軽金属通信 (新聞3:資料6) 発行日 2018年1月11日 刊行物 日刊軽金属 IV.雑誌 (雑誌1:資料7) 発行日 2018年2月15日 刊行物 アルトピア 2月号
(73)【特許権者】
【識別番号】510215709
【氏名又は名称】Amaz技術コンサルティング合同会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000181826
【氏名又は名称】社会福祉法人兵庫県社会福祉事業団
(73)【特許権者】
【識別番号】399054321
【氏名又は名称】東洋アルミニウム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(72)【発明者】
【氏名】雨堤 徹
(72)【発明者】
【氏名】陳 隆明
(72)【発明者】
【氏名】本田 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】高見 響
(72)【発明者】
【氏名】中山 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】井上 英俊
(72)【発明者】
【氏名】大橋 寛之
【審査官】沼田 規好
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0326677(US,A1)
【文献】特表2001-520915(JP,A)
【文献】米国特許第04521924(US,A)
【文献】特開2005-000389(JP,A)
【文献】特表2017-512521(JP,A)
【文献】特開2016-054915(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/56
A61F 2/72
H01M 50/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体の欠損部分に装着させることが可能なソケットに付属して、
電気的に駆動させることが可能な義肢本体に対して前記ソケットを接続するための電池内蔵継手であって、
底壁と、底壁の周縁から立ち上がる周壁とを有し、前記底壁と周壁により区画される収納空間に前記義肢本体を駆動させるためのモーターの電源となる電池を収納可能な筒形の容器と、
前記容器の開口を閉塞する蓋と、
前記容器または蓋の外面に連設され、前記義肢本体に係合可能な係合部と、を備える電池内蔵継手。
【請求項2】
前記ソケットの人体の欠損部分への装着時に、体幹に近い側を近位とし体幹から遠い側を遠位とした場合に、
前記容器は、前記ソケットの遠位に付属している、請求項1に記載の電池内蔵継手。
【請求項3】
前記容器の内部に収納された、前記モーターを制御可能な制御回路と、
前記容器または蓋の外面に設けられた、前記モーターの制御用信号線を接続可能な制御端子と、をさらに備える請求項1または2に記載の電池内蔵継手。
【請求項4】
前記電池は、充電池であり、
前記容器の内部に収納された、前記電池を充電可能な充電回路と、
前記容器または蓋の外面に設けられた、前記電池の充電端子と、をさらに備える請求項1から3のいずれかに記載の電池内蔵継手。
【請求項5】
前記容器の内部に収納された、前記義肢本体を駆動させながら前記電池を充電する際にその電池を劣化から保護する、保護回路をさらに備える請求項4に記載の電池内蔵継手。
【請求項6】
前記ソケットは、筋電センサーが付属し、
前記義肢本体は、前記筋電センサーからの信号に基づき動作制御されるようになっており、
前記容器の内部に収納された、前記モーター用と前記筋電センサー用の異なる電圧を出力できる、変圧回路をさらに備える請求項1から5のいずれかに記載の電池内蔵継手。
【請求項7】
前記モーターは前記ソケットに内蔵され、
前記容器および蓋は、
前記モーターの駆動力を前記義肢本体に伝達する伝達部材を挿通させるための、前記容器の筒軸方向に貫通する貫通孔を有する請求項1から6のいずれかに記載の電池内蔵継手。
【請求項8】
前記電池は、複数が前記容器内に収納されており、
直列に接続されている請求項1から7のいずれかに記載の電池内蔵継手。
【請求項9】
前記容器および蓋の材質は、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス、マグネシウム、マグネシウム合金および樹脂からなる群より選択される請求項1から8のいずれかに記載の電池内蔵継手。
【請求項10】
前記係合部は、前記義肢本体とバヨネット結合可能なバヨネット爪またはバヨネット溝である請求項1から9のいずれかに記載の電池内蔵継手。
【請求項11】
前記義肢本体は、義手本体であり、
前記電池内蔵継手は、前記義手本体の手首部に結合されるものであり、
前記容器の周壁は、略円筒形であり、その筒軸が前記底壁に対して垂直である請求項1から10のいずれかに記載の電池内蔵継手。
【請求項12】
電気的に駆動させることが可能な義肢本体と、
人体の欠損部分に装着されるソケットと、
前記ソケットまたは義肢本体に内蔵されて前記義肢本体を駆動させることが可能なモーターと、
前記ソケットに付属して、前記ソケットを前記義肢本体に対して接続する請求項1から11のいずれかに記載の電池内蔵継手と、を備える電動義肢。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池内蔵継手およびこれを用いた電動義肢に関する。
【背景技術】
【0002】
図7および図8に示すような、筋電義手20が知られている。図示のように、従来の筋電義手20は、腕の欠損部分Eに装着されるソケット21と、義指22aを有して開閉可能な義手本体22と、を備える。
ソケット21の先端部には、継手(リストメタル)23が付属しており、この継手23を介して、ソケット21と義手本体22の手首部22bとは結合されている。継手23は、金属の塊からなる中実構造をしている。
ソケット21には、モーター24および筋電センサー(筋電位検出用センサー)25が内蔵されている。モーター24の回転軸に接続された直動機構26は継手23を貫通して義手本体22に接続されており、このモーター24の駆動により、義手本体22の義指22aの開閉動作が行われるようになっている。
筋電センサー25は、腕の断端における筋肉の動きを検知できるようになっており、筋電センサー25から出力された信号はソケット21に内蔵された制御回路27に入力され、この信号に基づいて制御回路27はモーター24の駆動を制御する。
筋電義手20には、図中鎖線で示すように、人間の手を模した装飾用のグローブ28が被せられている。
【0003】
このような筋電義手等の電動義手には、モーター24や筋電センサー25を駆動させるための電池を搭載する必要があるが、従来の電動義手用の電池は、義手の前腕部側面のひじに近い位置に搭載するのが一般的であった。
これは、義手の装着者にとって、重量の大きな電池の位置が指先側よりもひじ側にあるほうが、電池の重みに由来する重量感が幾分でも軽減されるからであり、またひじを屈伸する際のモーメントの影響も小さくなるからである。
【0004】
そこで、図7のように、従来の筋電義手では、そのソケット側面のひじ近傍箇所に外方に突出する電池ボックス29を設けられているのが一般的であった(特許文献1の図3および図4の符号101も併せて参照のこと。なお、同特許文献1はロボットアームに関するものであり、電動義手に関するものではないが、電動義手においても電池ボックスの配置を同様としたものが見受けられる。)。
ここでモーターと筋電センサーとは駆動電圧が異なるため、個別に電池ボックス29を設けている。
これは、筋電義手等の電動義手では、そのひじ近傍箇所のソケット内部に、電池を収納するスペースを設けることが困難であり、とくに短断端(欠損ないし切断部分が短い状態)の場合には、義手自体の寸法が小さく、電池ボックスを設置するスペースがほとんど存在しないため、電池はいわば外付けするほかない、と考えられてきたからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許第9579218号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、このように電動義手の前腕部側面から突出する電池ボックスが存在すると、人体の前腕部や非電動の電池を必要としないタイプの義手とは、外観が著しく異なるため、不自然に見える問題があった。
【0007】
また、そのような突出した電池ボックスが邪魔になって電動義手の可動範囲を制約してしまうおそれがあるため、電池ボックスの位置が電動義手の動きを阻害しないように、患者の体形に応じて、義肢装具士が電池ボックスの設置位置等を個別に決定する必要があった。
ここで、電池ボックスの設置位置に関しては、装着時および電池の交換や充電を行う際に装着者の負担にならない位置にする必要がある。
このような設置位置の決定等には熟練を要するし、手間がかかって作製数に限界があるため、義手の円滑供給の面でも好ましくなかった。
【0008】
上述のように電動義手の内部にスペースを見つけることは困難であり、また義手の動きに制約が出ないように留意する必要もあるが、仮に電池を内蔵できるようになれば、外観の不自然さも解消するし、電池ボックスの設置に当たっての手間等も解消される。
このような問題は、電動義足等、電動義手以外の電動義肢においても異なるところがない。
【0009】
そこで本発明の解決すべき課題は、電動義肢について、電池を内蔵できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した課題を解決するため、発明にかかる電池内蔵継手について、人体の欠損部分の代替として残存部に装着させることが可能なソケットに付属して、電気的に駆動させることが可能な義肢本体に対して前記ソケットを接続するための継手を、底壁と、底壁の周縁から立ち上がる周壁とを有し、前記底壁と周壁により区画される収納空間に前記義肢本体を駆動させるためのモーターの電源となる電池を収納可能な筒形の容器と、前記容器の開口を閉塞する蓋と、前記容器または蓋の外面に連設され、前記義肢本体に係合可能な係合部と、を備える電池内蔵継手としたのである。
【0011】
従来は、義肢本体のソケットに付属する継手(リストメタル)を、中実構造(金属の塊)としていたものを、容器状にして内部に電池を収納できるように構成して電池ボックスとしても兼用できるようにしたため、電動義肢に電池が内蔵されることになる。
したがって、電池ボックスが電動義肢の側面に突出することがなく、また、患者の断端の形状に応じて個別に電池ボックスを設置する手間も省かれる。
【0012】
発明にかかる電池内蔵継手において、前記ソケットの人体の欠損部分への装着時に、体幹に近い側を近位とし体幹から遠い側を遠位とした場合に、前記容器は、前記ソケットの遠位に付属しているのが好ましい。
このように電池内蔵継手が、ソケットの人体の欠損部分に装着される近位の側から離れた位置に付属するように構成すると、ソケットの近位の側に、人体の欠損部分に装着できるような十分なスペースを自然に確保することができる。このため、装着スペースを無理に確保しようとして、ソケットが不自然な形状となってしまうことが防止される。
【0013】
発明にかかる電池内蔵継手において、前記容器の内部に収納された、前記モーターを制御可能な制御回路と、前記容器または蓋の外面に設けられた、前記モーターの制御用信号線を接続可能な制御端子と、をさらに備えるのが好ましい。
このように構成すると、制御回路も継手に内蔵されることになるため、制御回路を収納するスペースを別途設ける必要がなくなる。
【0014】
発明にかかる電池内蔵継手において、前記電池は、充電池(二次電池)であり、前記容器の内部に収納された、前記電池を充電可能な充電回路と、前記容器または蓋の外面に設けられた、前記電池の充電端子と、をさらに備えるのが好ましい。
このように構成すると、一次電池を用いる場合と異なり、電池交換の手間、頻度が低減され、また充電回路も継手に内蔵されることになるため、充電回路を収納するスペースを別途設ける必要がなくなる。
さらに、前記容器の内部に収納された、前記義肢本体を駆動させながら前記電池を充電する際に電池を劣化から保護する、保護回路をさらに備えるのがより好ましい。
このように構成すると、電池切れしそうになっても、充電しながら電動義肢を継続して使用することができる。
【0015】
発明にかかる電池内蔵継手において、前記ソケットは、筋電センサーが付属し、前記義肢本体は、前記筋電センサーからの信号に基づき動作制御されるようになっており、前記容器の内部に収納された、前記モーター用と前記筋電センサー用の異なる電圧を出力できる、変圧回路をさらに備えるのが好ましい。
このように構成すると、電池内蔵継手を筋電センサー用の電源としても兼用することができるため、筋電義肢において筋電センサー用の電源をモーター用の電源とは別に設ける必要がなくなる。
【0016】
発明にかかる電池内蔵継手において、前記モーターは前記ソケットに内蔵され、前記容器および蓋は、前記モーターの駆動力を前記義肢本体に伝達する伝達部材を挿通させるための、前記容器の筒軸方向に貫通する貫通孔を有する構成を採用することができる。
モーターがソケットに内蔵されている場合、モーターの駆動力の義肢本体への伝達経路上に電池内蔵継手が位置し、この電池内蔵継手を避けて伝達部材を設けると、電動義肢の一部が人体の対応する箇所の形状に比べて太くなる等して不自然になる。
電池内蔵継手に貫通孔を設け、この貫通孔に伝達部材を挿通させることで電動義肢を自然な形状とすることができる。
【0017】
発明にかかる電池内蔵継手において、前記電池は、複数が前記容器内に収納されており、直列に接続されているのが好ましい。
このように構成すると、高い電源電圧が得られるため、より駆動力の高いモーターを採用する事ができ、電動義肢の動きのスピードを人間の動きのスピードに近づかせることができる。
【0018】
発明にかかる電池内蔵継手において、前記容器および蓋の材質は、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス、マグネシウム、マグネシウム合金および樹脂からなる群より選択されるのが好ましい。
このように容器等を比較的軽量な金属や樹脂から構成すると、電動義肢全体としての軽量化が図られる。先天的に腕が欠損している電動義手の使用者の場合、腕の筋肉が未発達であり、筋力が不足している場合が多く、可能な限り電動義手を軽量化する必要がある。このため、軽量化すると使用者の負担が軽減される。
また、発明にかかる電池内蔵継手において、前記容器および蓋の材質は、ステンレスとするのが好ましい。
このように容器等を高強度かつ高耐食性のステンレスから構成すると、容器等の壁を薄くすることができるため、容器内に電池や回路を搭載するための空間を増やすことが可能となる。
【0019】
発明にかかる電池内蔵継手において、前記係合部は、前記義肢本体とバヨネット結合可能なバヨネット爪またはバヨネット溝であるのが好ましい。
このようにバヨネット式の結合構造を採用すると、義肢本体とソケットとの着脱が容易になる。また、ねじ式等と異なり、結合時に端子の接続線が捻じれるなどして電気的な接続に悪影響を与えてしまったり、使用時に結合構造に緩みが生じることも防止することができる。
【0020】
発明にかかる電池内蔵継手において、前記義肢本体は、義手本体であり、前記電池内蔵継手は、前記義手本体の手首部に結合されるものであり、前記容器の周壁は、略円筒形であり、その筒軸が前記底壁に対して垂直であるのが好ましい。
このように構成すると、電動義手の手首部が人間の手首に近い円筒形状となるため、見た目が不自然にならない。
【0021】
上記した課題を解決するため、発明にかかる電動義肢を、電気的に駆動させることが可能な義肢本体と、人体の欠損部分に装着されるソケットと、前記ソケットまたは義肢本体に内蔵されて前記義肢本体を駆動させることが可能なモーターと、前記ソケットの先端部に付属して前記ソケットを前記義肢本体に結合する、発明にかかる電池内蔵継手と、を備えるものとしたのである。
【発明の効果】
【0022】
発明にかかる電動義肢および電池内蔵継手を以上のように構成したので、電池を電動義肢に内蔵することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施形態の電動義手の全体概略図
図2】実施形態の電動義手のブロック図
図3】実施形態の電動義手の要部斜視図
図4】実施形態の電池内蔵継手の縦断面図
図5】実施形態の電池内蔵継手の分解斜視図
図6】他の実施形態の電池内蔵継手の斜視図
図7】従来の電動義手の全体概略図
図8】従来の電動義手のブロック図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。
図1から図5に示す実施形態の筋電義手100は、腕の残存部に装着して、その断端の筋肉を動かす事によって発生する筋電位に応じて、動作をおこなうものである。
【0025】
図1および図2のように、実施形態の筋電義手100は、ソケット110と、義手本体120とを備える。ソケット110は、略ドーム型をしており、その凹面の側を腕の欠損部分Eに被せて装着することが可能となっている。義手本体120は、5本の義指121を有してこれらを同期してまたは個別に開閉操作できるようになっている。
これらソケット110と義手本体120の基本的構造については、従来の筋電義手と同様である(たとえば、本出願人の一部が出願人となった、特開2016-54915号公報を参照のこと)。
【0026】
図1および図2のように、ソケット110の先端部(体幹に近い側を近位とし体幹から遠い側を遠位とした場合の遠位に相当する)には、実施形態の電池内蔵継手130が付属しており、この電池内蔵継手130を介して、ソケット110と義手本体120の手首部122とは結合されている。
ソケット110には、モーター140および筋電センサー150が内蔵されている。モーター140の回転軸に接続されたシャフト状の直動機構160は義手本体120に接続されており、このモーター140の駆動により、義手本体120の義指121の開閉動作が行われるようになっている。
筋電センサー150は、腕の断端における筋電位を検知できるようになっており、腕の断端の適宜位置に対向するように、ソケット110内に複数が内蔵されている。筋電センサー150から出力された信号に基づいて、モーター140の駆動が制御される。
実施形態の筋電義手100には、図1中鎖線で示すように、人間の手を模した装飾用のグローブ170が被せられている。
【0027】
図2から図5のように、実施形態の電池内蔵継手130は、容器131と、蓋132と、電池133と、制御回路134と、充電回路135を有する。
【0028】
図3および図4のように、容器131は、円盤形の底壁131aと、底壁131aの周縁から立ち上がる円筒形の周壁131bを有し、上方に開口している。底壁131aと周壁131bにより円柱形の収納空間が区画されている。周壁131bの筒軸は、底壁131aに対してほぼ垂直となっている。
収納空間の中心には、底壁131aから周壁131bと同じ高さに立ち上がる円柱形のボス131cが設けられている。このボス131cには、その軸心部を貫通する貫通孔131dが設けられている。
周壁131bの開口縁には、その周方向に等間隔に並列するねじ孔131eが設けられている。
【0029】
図3および図4のように、蓋132は、全体が円板形をなしており、その外周壁には充電端子132aが設けられ、その上面には制御端子132bを有する。
また、その蓋132の円板の中心には貫通孔131dと同径の貫通孔132cが設けられ、この貫通孔132cを中心として周方向に等間隔に並列するねじ孔132dが設けられている。
容器131と蓋132とは、容器131の開口に蓋を被せた状態で、ねじ孔131eとねじ孔132dとを合致させ、ねじ132fをねじ込むことで結合される。これにより、容器131の開口は蓋132で閉鎖されることになる。この状態で、貫通孔131dと貫通孔132cとは合致している。
【0030】
図1および図5のように、モーター140の回転軸に接続されたシャフト状の直動機構160は、貫通孔131d、132cを挿通している。すなわち、直動機構160は、電池内蔵継手130を貫通している。
さらに、蓋132の上面からは、ねじ孔132dとは位相がずれた状態で周方向に等間隔に並列するバヨネット爪132eが突出している。
図5のように、義手本体120の手首部122には、周方向に等間隔に並列するL字型のバヨネット溝122aが設けられている。
ソケット110を義手本体120に結合する際には、図5(a)から(b)のように、各バヨネット爪132eを各バヨネット溝122aに電池内蔵継手130の軸方向から挿入し、次いで電池内蔵継手130の周方向に回転させる。結合を解除する際には、逆の動作、すなわち図5(b)から(a)のように、逆向きに回転させた後、バヨネット爪132eをバヨネット溝122aから抜き取ればよい。
【0031】
容器131および蓋132の材質は特に限定されないが、軽量であるものとして、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金および樹脂の単体または複合体が好ましい。また、強度が高いものとして、ステンレスとすることもできる。容器131および蓋132の材質は同じであることが好ましいが、異なっていてもよい。
容器131および蓋132が金属製である場合には、防食処理をしてもよい。防食処理を施すことにより、筋電義手の使用者の汗によって電池内蔵継手130が腐食することが防止される。また、撥水処理を施して汗の付着を防止することもできる。
樹脂製のものとしては、ポリエチレンテレフタラート(PET)やポリプロピレン(PP)などの防湿性の良好な素材が好ましい。また、パリレンコーティングなどの防湿効果の高いコーティングをおこなうこともできる。
容器131と蓋132は、内部に汗が含浸しないように防水構造になっていることが好ましい。
【0032】
図2および図3のように、電池133は、円柱形の蓄電池であって容器131の収納空間に複数が収納されている。このような電池133としてはリチウムイオン電池セルが例示できる。電池133は、容器131に対して垂直になるように収納されている。すなわち、収納された状態で各電池133の軸心と、容器131の軸心とは平行になっている。
電池133は、容器131の周方向に並列しており、容器の131の内部において直列に接続されている。図2のように、電池133には、変圧回路が付属しており、これにより、筋電センサー用とモーター用の二種類の異なる出力電圧を提供できるようになっている。変圧回路の回路構成としては、公知の回路構成を採用することができる。
【0033】
図2および図3のように、制御回路134および充電回路135は、容器131の収納空間において、周壁131bと電池133との隙間にそれぞれ収納されている。制御回路134は、蓋132の制御端子132bおよび電池133に、充電回路135は、蓋132の充電端子132aおよび電池133に、それぞれ導電線で接続されている。制御回路134と充電回路135の回路構成としては、公知の回路構成を採用することができる。
また図2のように、制御回路134は、制御端子132bを通じてソケット110内のモーター140に導電線で接続されている。
筋電センサー150は、図2中実線で示すように、電池133に導電線で接続され、かつ図2中鎖線で示すように制御回路134に信号線で接続され、制御回路134は筋電センサー150からの信号に基づいて、モーター140の回転を制御できるようになっている。
図2のように、充電回路135には、保護回路が付属しており、充電端子132aを通じて電池133に充電がおこなわれる際に電池133が劣化しないようになっている。充電端子132aの種類は特に限定されないが、USB端子が汎用性が高く、市販のモバイルバッテリーなども接続することができるため好ましい。
制御回路134に関しては、筋電センサーからの信号を処理する回路と、信号を元にモーター駆動を制御する回路があり、小型軽量のために一体型とするのが好ましい。しかし、複雑な処理を要するために回路が大きくなる場合は制御回路を筋電センサーの信号を処理する制御回路とモーター制御回路をそれぞれ別にして、継手内に収納してもよいし、一方を継手外に設置してもよい。
【0034】
実施形態の筋電義手100および電池内蔵継手130の構成は以上のようであり、いま腕の断端の筋肉の動きを筋電センサー150が検知すると、その検知信号は制御回路134に出力され、この信号に基づいて制御回路134はモーター140を回転制御し、これにより義手本体120の開閉動作がおこなわれることになる。
電池133を継手に内蔵したため、別途電池ボックスを設ける必要がなく、電池ボックスの設置により筋電義手100の外観が不自然になることや、その設置に手間がかかることが防止される。
【0035】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲内およびこれと均等の意味でのすべての修正と変形を含む。
【0036】
実施形態では、電動義手の一例として筋電義手を挙げたが、これに限定されず筋電義手以外の電動義手にも本発明を適用することができる。
また、電動義足等、電動義手以外の電動義肢にも本発明を適用することができる。
【0037】
電池内蔵継手130は、モーター140や筋電センサー150を駆動させるための電池133を内蔵可能である限りにおいて、形状ないし構造は実施形態に限定されない。
実施形態では、容器131を円筒形としているが、図6のように、長円筒形としてもよい。また、角筒形としてもよい。容器131の底壁131aと周壁131bとは、別体に形成したものを結合してもよい。容器131の外周には、他の部品と係合させる等の目的に応じて、ノッチや切欠きを設けてもよい。
実施形態では、容器131と蓋132をねじを用いて結合しているが、結合の態様はこれに限定されない。たとえば、蓋132の内周壁と容器131の開口の外周壁にそれぞれネジ山を形成し、直接結合してもよい。また、図6のように、容器131の開口縁に円柱状の嵌合片131fを設け、蓋132の周縁部に半円筒状の嵌合片132gを設け、これら嵌合片131f、132gのはめ合いにより、結合できるようにしてもよい。
また、容器131と蓋132とは別体でなくともよく、図6のように、ヒンジ結合されて、蓋132を回動させることで、容器131の開口の開放状態と閉鎖状態を切り替え可能としてもよい。
【0038】
実施形態では、直動機構160を挿通させるための貫通孔を電池内蔵継手130に設けているが、図6のように、貫通孔を省略することもできる。
モーター140の駆動力を義手本体120に伝達する伝達部材を義手本体120の側に設けている場合には、駆動力の伝達経路上に電池内蔵継手130が存在しないため、貫通孔を設ける必要はないし、伝達経路上に電池内蔵継手130が存在する場合にも、迂回して伝達部材を配置することができる。
また、貫通孔を設ける場合その貫通孔には、伝達部材以外の部材、たとえば導電線や信号線やワイヤーを挿通させることもできる。
【0039】
実施形態では、電池内蔵継手130にバヨネット爪を設け、義手本体120にバヨネット溝を設けることで両者をバヨネット結合しているが、電池内蔵継手130にバヨネット溝を設け、義手本体120にバヨネット爪を設けてもよい。
また、電池内蔵継手130と義手本体120の結合の態様はバヨネット結合に限定されず、たとえば、ねじ結合することもできる。
【0040】
電池133の収納の態様も実施形態に限定されず、図6のように、容器131に対して水平に、すなわち、電池133の軸心と容器131の軸心とが垂直をなす状態で収納されていてもよい。また、容器131に対して斜めに、すなわち電池133の軸心が容器131の軸心に対して傾斜した状態で収納されていてもよい。
電池133の数も実施形態に限定されないが、義手本体120を人間の手に開閉速度に近い速度で動作させるには、一般に10V以上の電圧が必要となるため、3個以上を直列に接続するのが好ましい。
実施形態では、すべての電池133を直列に接続しているが、一部を並列に接続してもよい。
電池内蔵継手130全体の軽量化を図るために、一部の電池133を中空円筒形のダミー電池に置き換えてもよい。
実施形態では電池133を円柱形のものとしたが、形状はこれに限定されず、たとえば図6のように、角柱形としてもよい。
【0041】
実施形態では、制御回路134および充電回路135を電池内蔵継手130に収納しているが、ソケット110の内部等、電池内蔵継手130の外部に配置してもよい。充電回路135に付属する保護回路は、省略することもできる。
また、制御回路134および充電回路135を電池内蔵継手130に収納する場合でも、その収納の態様は実施形態に限定されず、たとえば、蓋132と電池133の端面との隙間や容器131の底壁131aと電池133の端面との隙間に収納してもよい。
【符号の説明】
【0042】
20 従来の筋電義手
21 ソケット
22 義手本体
22a 義指
22b 手首部
23 継手
24 モーター
25 筋電センサー
26 直動機構
27 制御回路
28 グローブ
29 電池ボックス
100 実施形態の筋電義手
110 ソケット
120 義手本体
121 義指
122 手首部
122a バヨネット溝
130 実施形態の電池内蔵継手
131 容器
131a 底壁
131b 周壁
131c ボス
131d 貫通孔
131e ねじ孔
131f 嵌合片
132 蓋
132a 充電端子
132b 制御端子
132c 貫通孔
132d ねじ孔
132e バヨネット爪
132f ねじ
132g 嵌合片
133 電池
134 制御回路
135 充電回路
140 モーター
150 筋電センサー
160 直動機構
170 グローブ
E 腕の欠損部分
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8