(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-16
(45)【発行日】2022-06-24
(54)【発明の名称】非破壊検査装置
(51)【国際特許分類】
G01N 29/04 20060101AFI20220617BHJP
G01N 29/22 20060101ALI20220617BHJP
G01N 29/26 20060101ALI20220617BHJP
【FI】
G01N29/04
G01N29/22
G01N29/26
(21)【出願番号】P 2017081031
(22)【出願日】2017-04-17
【審査請求日】2020-04-17
(73)【特許権者】
【識別番号】513273292
【氏名又は名称】サイトテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097043
【氏名又は名称】浅川 哲
(74)【代理人】
【識別番号】100128071
【氏名又は名称】志村 正樹
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 邦男
【審査官】田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/139930(WO,A1)
【文献】特開2004-205216(JP,A)
【文献】特開2010-236950(JP,A)
【文献】特開2016-211878(JP,A)
【文献】特開2012-168023(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0267688(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00-29/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体と、
前記基体に接続されたアームと、前記アームに保持され、前記アームの作動によって被検査体を叩いて検査する検査部とを備える検査体と、
前記基体を飛行させる回転翼と、
前記被検査体に接触して、前記基体と前記被検査体の距離を所定値に保つ距離保持体と、を有し、
前記アームが前記基体に
サーボモータを介して回動可能に接続された第一アーム部材と、前記検査部を保持するとともに、前記第一アーム部材に
サーボモータを介して回動可能に接続された第二アーム部材とを備え、
前記第二アーム部材の回動に伴って検査部も回動し、検査部が被検査体を叩打する非破壊検査装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記基体に設けられた前記サーボモータに前記第一アーム部材の一端が取り付けられ、前記第一アーム部材の他端に設けられた前記サーボモータに前記第二アーム部材の一端が取り付けられている記載の非破壊検査装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記距離保持体が前記被検査体に接触する少なくとも二つの接触部を備え、
前記二つの接触部の間で前記アームが作動する非破壊検査装置。
【請求項4】
請求項1において、
前記距離保持体が、前記基体に設けられた車軸と、前記車軸の両側に回動自在に設けられた車輪とを備え
、
前記車輪が回転しながら前記被検査体に接触して、前記基体と前記被検査体の距離を所定値に保つ非破壊検査装置。
【請求項5】
請求項1から
4のいずれかにおいて、
前記基体を前記被検査体方向に移動させる補助回転翼をさらに有する非破壊検査装置。
【請求項6】
請求項
5において、
前記補助回転翼が、停止と所定の回転数での回転の二段階の切り替えで作動する非破壊検査装置。
【請求項7】
請求項1から
6のいずれかにおいて、
前記検査部が前記被検査体を叩いたときの衝撃力の時間変化に基づいて前記被検査体の劣化を判定する非破壊検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転翼無人航空機を用いて、建造物の劣化状態を空中で検査する非破壊検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネル、橋梁、ビル等の建造物は、建設後にこれらの構造の劣化を検査し続ける必要がある。見た目では建造物の劣化がわからないため、高所作業車や検査のために設置した足場などを使用して、ハンマー等の検査具で人が建造物を直接叩いて検査するのが一般的である。しかしながら、検査具で人が建造物を直接叩く検査では、高所作業の危険性や足場の設置コスト等が問題となる。また、検査具で人がトンネルの内壁を直接叩く検査では、検査期間中の車両や電車等の通行規制が必要となる。さらに、人が近づけないような場所で、建造物を叩打検査しなければならないこともある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、建造物の高所や人が近づけないような場所にある建造物を、空中で検査できる非破壊検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の非破壊検査装置は、基体と、基体に接続されたアームと、アームに保持され、アームの作動によって被検査体を叩いて検査する検査部とを備える検査体と、基体を飛行させる回転翼と、被検査体に接触して、基体と被検査体の距離を所定値に保つ距離保持体とを有している。本発明の非破壊検査装置において、アームが、基体に回動可能に接続された第一アーム部材と、検査部を保持するとともに、第一アーム部材に対して回動可能に接続された第二アーム部材とを備えることが好ましい。
【0005】
また、本発明の非破壊検査装置において、距離保持体が被検査体に接触する少なくとも二つの接触部を備え、二つの接触部の間でアームが作動することが好ましい。また、本発明の非破壊検査装置において、距離保持体が、基体に設けられた車軸と、車軸の両側に回動自在に設けられた車輪とを備えることが好ましい。また、本発明の非破壊検査装置において、基体を被検査体方向に移動させる補助回転翼をさらに有していてもよい。この補助回転翼は、停止と所定の回転数での回転の二段階の切り替えで作動してもよい。また、本発明の非破壊検査装置において、検査部が被検査体を叩いたときの衝撃力の時間変化に基づいて被検査体の劣化を判定してもよい。
【発明の効果】
【0006】
本発明の非破壊検査装置によれば、被検査体との距離を所定値に保った状態で、検査部で被検査体を叩いて検査できる。このため、人が検査具で建造物を直接叩いたときと同等の精度で、建造物の劣化状態が判定できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施形態に係る非破壊検査装置の斜視図。
【
図2】本発明の実施形態に係る非破壊検査装置を用いた建造物の壁面の検査を説明する側面図。
【
図3】本発明の実施形態に係る非破壊検査装置を用いた建造物の底面の検査を説明する側面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の非破壊検査装置について、実施形態に基づいて、図面を参照しながら説明する。なお、図面は、非破壊検査装置、非破壊検査装置の構成部材、および非破壊検査装置の周辺部材を模式的に表したものであり、これらの実物の寸法および寸法比は、図面上の寸法および寸法比と必ずしも一致していない。なお、重複説明は適宜省略し、同一部材には同一符号を付与することがある。
【0009】
図1は、本発明の実施形態に係る非破壊検査装置10を示している。非破壊検査装置10は、空中で、すなわち地面や床面から離れた空間で、被検査体の劣化状態を非破壊で検査できる。非破壊検査装置10は、基体12と、検査体14と、回転翼16と、距離保持体18を備えている。非破壊検査装置10は、検査体14と距離保持体18を備えるドローンとも言える。
【0010】
基体12は、検査体14を保持している。検査体14は、アーム20と、検査部22を備えている。アーム20は基体12に接続されている。検査部22はアーム20に保持されている。検査部22は、アーム20の作動によって、被検査体を叩いて検査する。検査部22が被検査体を叩いたときの衝撃力変化や、検査部22が被検査体を叩いたときに発生する音等によって、被検査体の劣化状態を判断する。被検査体としては、例えば、トンネル、橋梁、ビル等の建造物のコンクリート部分が挙げられる。本実施形態では、アーム20は、基体12に回動可能に接続された第一アーム部材20aと、第一アーム部材20aに対して回動可能に接続された第二アーム部材20bを備えている。検査部22は第二アーム部材20bに保持されている。
【0011】
より具体的には、基体12に設けられたサーボモータ24に、第一アーム部材20aの一端が取り付けられており、第一アーム部材20aの他端に設けられたサーボモータ26に、第二アーム部材20bの一端が取り付けられている。このため、基体12と第一アーム部材20aの角度、および第一アーム部材20aと第二アーム部材20bの角度が適宜調整できる。したがって、被検査体に対して所望の角度で、例えば垂直で、検査部22が接触するようにできる。また、後述するように、鉛直面だけでなく、水平下面である被検査体の非破壊検査が容易となる。
【0012】
回転翼16は基体12を飛行させる。本実施形態では、4つの回転翼16が設けられているが、回転翼の数量、形状、配置、素材等は特に制限がない。回転翼16は、回転速度、回転面の角度、回転方向等が制御でき、基体12、つまり非破壊検査装置10の飛行方向を調整できる。すなわち、回転翼16によって、非破壊検査装置10は、鉛直上下方向、水平方向、水平に対する斜め上下方向に移動できる。また、回転翼16のそれぞれの回転状態を調整することによって、非破壊検査装置10はホバリングできる。なお、本実施形態では、非破壊検査装置10は補助回転翼28を備えている。補助回転翼28については後述する。
【0013】
距離保持体18は、検査時に被検査体に接触して、基体12と被検査体の距離を所定値に保つ。距離保持体18は、基体12に設けられた車軸40と、車軸40の両側に回動自在に設けられた車輪42,44を備えている。したがって、非破壊検査装置10が被検査体に最も近づいた状態で非破壊検査装置10が多少動いても、車輪42,44が回転しながら基体12と被検査体の距離を一定に保てる。
【0014】
なお、本実施形態の距離保持体18に代えて、被検査体に接触する少なくとも二つの接触部を備え、この二つの接触部の間でアーム20が作動するような距離保持体であってもよい。このような距離保持体としては、例えば、水平面がコ字形状やH字形状となるように棒状部材を組み合わせ、コ字の縦線に相当する棒状部材やH字の横線に相当する棒状部材を基体12に固定したものや、三本の棒状部材の一端を基体12に固定し、他端を斜め三方向に拡げ、これらの他端が三角形の頂点となるように被検査体に接触させるものが挙げられる。
【0015】
検査部22は、ハンマーのような形状を備え、グリップ部分が第二アーム部材20bに保持されている。第二アーム部材20bの回動に伴って検査部22も回動し、検査部22が被検査体を叩打する。検査部22の叩打の結果に応じて、被検査体の劣化を判定する。本実施形態では、検査部22が被検査体を叩いたときの衝撃力の時間変化に基づいて被検査体の劣化を判定する。このため、叩いたときの音によって被検査体の劣化を判定する打音検査と異なり、回転翼16の回転音が激しく発生する環境下でも、被検査体の劣化を正確に判定できる。
【0016】
図2は、非破壊検査装置10を用いて、被検査体である建造物、例えばコンクリート製の橋脚の壁面W(コンクリート面)を検査する方法を示している。この検査方法は以下のように実施される。まず、回転翼16を水平面内で回転させて、鉛直上方に非破壊検査装置10を飛行させる。つぎに、補助回転翼28を鉛直面内で回転して、基体12を壁面Wの方向に移動させ、車輪42と車輪44(不図示)を壁面Wに接触させながら非破壊検査装置10を空中飛行させる。補助回転翼28は、回転翼16の回転開始と同じタイミングで回転開始してもよい。
【0017】
なお、補助回転翼28が設けられていない非破壊検査装置では、水平に対して斜めの面内で回転翼16を回転させることによって、車輪42,44を壁面Wに接触させながら空中飛行できる。しかし、本実施形態では補助回転翼28が設けられているため、回転翼16を水平面内で回転して、主に非破壊検査装置10の鉛直方向の飛行の維持に動力源であるエネルギーを使用できる。そして、回転翼16への供給源と別に設けられた動力源によって、補助回転翼28を鉛直面内で回転させ、車輪42,44の壁面Wへの接触維持を図れる。
【0018】
このように、本実施形態では、別々に設けた回転翼16と補助回転翼28の動力源を効率的に使用できるため、長時間の飛行ができ、被検査体の広範囲の検査が可能となる。さらに、補助回転翼28を、停止と所定の回転数での回転の二段階の切り替えで作動する単純な構造にすれば、エネルギー消費量をより一層抑えられ、被検査体のさらなる広範囲の検査が可能となる。
【0019】
そして、車輪42,44を壁面Wに接触しながら非破壊検査装置10が空中飛行している状態で、第二アーム部材20bを回動させて、加速度計を内蔵している検査部22で壁面Wを複数回、例えば10回叩く。検査部22は、壁面Wを叩いたときの衝撃力の時間変化を記憶している。検査部22の記憶媒体をコンピュータに接続し、この衝撃力の時間変化をコンピュータで処理して、壁面Wの劣化を判定する。例えば、衝撃力の時間変化を示すグラフの波形が左右対称の山型になれば、壁面Wは劣化していないと判定し、不規則な鋸波になれば、その波形に応じて、壁面Wは表面劣化している、または壁面Wに剥離面があると判定する。
【0020】
図3は、非破壊検査装置10を用いて、被検査体である建造物、例えばコンクリート製の橋梁の底面B(コンクリート面)を検査する方法を示している。この検査方法は、以下のように実施される。まず、第一アーム部材20aを回動して鉛直方向にする。つぎに、回転翼16を水平面内で回転させて、鉛直上方に非破壊検査装置10を飛行させ、車輪42と車輪44(不図示)を底面Bに接触させながら非破壊検査装置10を空中飛行させる。なお、補助回転翼28は、常時停止したままである。そして、壁面Wの検査方法と同様にして、車輪42,44を底面Bに接触させながら、第二アーム部材20bを回動させて、検査部22で底面Bを複数回叩き、底面Bの劣化を判定する。
【実施例】
【0021】
図1に示すようなドローン型の非破壊検査装置を用いて、劣化していないコンクリートブロックの壁面を検査部で叩いたときの衝撃力と、検査部であるハンマーユニットのグリップ部を持って、劣化していないコンクリートブロックの壁面をハンマーの打撃面で人手で叩いたときの衝撃力を10回測定した。検査部はコンクリートテスター(日東建設株式会社、CTS-02V4)を使用した。なお、非破壊検査装置を用いた検査では、非破壊検査装置を地上に設置し、車輪をコンクリートブロックの壁面に接触させた状態で検査した。
【0022】
人手で叩いたときの表面強度は40.09~45.40〔N〕で、平均値は42.14〔N〕であった。また、叩いたときに壁面が押されている時間を、壁面が押し戻されている時間で割った数値である表面劣化の指標は、1.16~1.42で、平均値は1.27であった。なお、この指標は0.85~1.25が正常値である。一方、非破壊検査装置を用いたときの表面強度は36.97~49.06〔N〕で、平均値は44.05〔N〕であった。また、表面劣化の指標は、1.09~1.37で、平均値は1.23であった。以上より、非破壊検査装置を用いたときと、人手で叩いたときでは、表面強度と表面劣化の指標に大きな誤差がなかった。非破壊検査装置を用いたときに、距離保持体によって、被検査体と検査部の距離がほぼ一定に保てたからだと考えられる。
【符号の説明】
【0023】
10 非破壊検査装置
12 基体
14 検査体
16 回転翼
18 距離保持体
20 アーム
20a 第一アーム部材
20b 第二アーム部材
22 検査部
24,26 サーボモータ
28 補助回転翼
40 車軸
42,44 車輪