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特許7090343治療活性ペイロードの標的化送達のための送達システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-16
(45)【発行日】2022-06-24
(54)【発明の名称】治療活性ペイロードの標的化送達のための送達システム
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/68 20170101AFI20220617BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20220617BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20220617BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20220617BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220617BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20220617BHJP
   A61K 47/64 20170101ALI20220617BHJP
   A61K 31/713 20060101ALI20220617BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220617BHJP
   A61K 31/5377 20060101ALI20220617BHJP
   A61K 31/517 20060101ALI20220617BHJP
   A61K 31/506 20060101ALI20220617BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220617BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20220617BHJP
   A61K 38/02 20060101ALI20220617BHJP
【FI】
A61K47/68 ZNA
A61P3/06
A61P31/12
A61P25/00
A61P35/00
A61P35/04
A61K47/64
A61K31/713
A61P43/00 121
A61K31/5377
A61K31/517
A61K31/506
A61K39/395 N
A61K47/36
A61K38/02
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019522933
(86)(22)【出願日】2017-10-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-01-30
(86)【国際出願番号】 EP2017077559
(87)【国際公開番号】W WO2018078076
(87)【国際公開日】2018-05-03
【審査請求日】2020-10-15
(31)【優先権主張番号】16196144.6
(32)【優先日】2016-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516355139
【氏名又は名称】テクニスチェ ユニベルシタト ドレスデン
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】アキム テッメ
【審査官】松本 淳
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-512696(JP,A)
【文献】特表2003-523771(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0274658(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0142811(US,A1)
【文献】特開2004-125785(JP,A)
【文献】特表2016-512241(JP,A)
【文献】国際公開第1992/022332(WO,A1)
【文献】J. Biol. Chem. (2010), 285 (1),p.713-722
【文献】AIChE J. (2014), 60 (4), p.1245-1252
【文献】Mol. Pharmaceutics (2013), 10,p.4666-4675
【文献】HOBEL S,MALTOSE- AND MALTOTRIOSE-MODIFIED, HYPERBRANCHED POLY(ETHYLENE IMINE)S (OM-PEIS): 以下備考,JOURNAL OF CONTROLLED RELEASE,NL,ELSEVIER,2011年01月20日,VOL:149, NR:2,PAGE(S):146 - 158,http://dx.doi.org/10.1016/j.jconrel.2010.10.008,PHYSICOCHEMICAL AND BIOLOGICAL PROPERTIES OF DNA AND SIRNA COMPLEXES
【文献】Adv. Drug Deliv. Rev. (2007), 59 (2-3),p.141-152
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 47/00-47/69
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療活性ペイロードの標的化送達のための送達システムであって:
・アビジン、ニュートラビジン、又はストレプトアビジンからなるアビジンコア;
・抗体単鎖可変断片(scFv)からなる群から選択される少なくとも1つの標的化分子;並びに
・タンパク質、ペプチド、及び治療活性核酸からなる群から選択される少なくとも1つの治療活性ペイロードを含み、
・該少なくとも1つの標的化分子及び該少なくとも1つの治療活性ペイロードが、該アビジンコアと結合しており;
・該抗体単鎖可変断片が、以下の構造を有するコンストラクト中に含まれており:
抗体単鎖可変断片―ビオチン化アクセプターペプチド(BAP);又は
抗体単鎖可変断片―リンカー―BAP;かつ
・このコンストラクトが、BAPでモノビオチン化されており
該BAPが、
【化1】
(ここで、X 1 =任意のアミノ酸;及び
X 2 =L、V、I、W、F、又はYを除く任意のアミノ酸である);
【化2】
からなる群から選択される、前記送達システム。
【請求項2】
a. 1つの抗体単鎖可変断片及び3つの治療活性核酸、又は
b. 2つの抗体単鎖可変断片及び2つの治療活性核酸、又は
c. 3つの抗体単鎖可変断片及び1つの治療活性核酸、
を含む、請求項1記載の送達システム。
【請求項3】
前記抗体単鎖可変断片が、scFv(AM1)(配列番号:1)、scFv(h-AM-1)(配列番号:2)、及びscFv(MR1.1)(配列番号:3又は配列番号:4)から選択される、請求項1又は2記載の送達システム。
【請求項4】
前記リンカーペプチドが:
・2つのアミノ酸、例えばGS;
・6つのアミノ酸;及び
・10個のアミノ酸、例えば
【化3】
のアミノ酸配列を有するc-mycタグ
からなる群から選択される、請求項1~3のいずれか1項記載の送達システム。
【請求項5】
前記治療活性ペイロードが、CpGオリゴヌクレオチド、ssDNA、dsDNA、ssRNA、又はdsRNA、好ましくはdsRNAからなる群から選択される治療活性核酸である、請求項1~4のいずれか1項記載の送達システム。
【請求項6】
前記治療活性ペイロード、好ましくは治療活性核酸が、ビオチン化されている、請求項1~5のいずれか1項記載の送達システム。
【請求項7】
前記治療活性核酸が、グリコデンドリマーを含む担体中に含まれているsiRNAである、請求項1~6のいずれか1項記載の送達システム。
【請求項8】
前記グリコデンドリマーが、トランスフェクション不能なヌクレオチド担体であり、該グリコデンドリマーが、siRNAと複合体形成する際に1つのビオチン分子を含む、好適にはmal19-PPIに基づくマルトース-ポリプロピレン-イミン(mal-PPI)デンドリマーを含む、請求項7記載の送達システム。
【請求項9】
少なくとも1つの抗体単鎖断片を介して、癌細胞の細胞膜に又はその中に特異的に発現する表面抗原と結合する、請求項1~8のいずれか1項記載の送達システム。
【請求項10】
a) scFv-BAP-ビオチンコンジュゲートを調製する工程;
b) 該scFv-BAP-ビオチンコンジュゲートをアビジン、ニュートラビジン、又はストレプトアビジンからなる前記アビジンコアとともにインキュベートする工程であって、scFv-BAP-アビジン又はscFv-BAP-ニュートラビジン又はscFv-BAP-ストレプトアビジン複合体が形成される、前記工程;及び
c) 治療活性核酸-ビオチンコンジュゲートを加え、かつ該scFv-BAP-アビジン又はscFv-BAP-ニュートラビジン又はscFv-BAP-ストレプトアビジン複合体をビオチン化治療活性核酸とともにインキュベートする工程;及び
d) 該ビオチン化治療活性核酸を該scFv-BAP-アビジン又はscFv-BAP-ニュートラビジン又はscFv-BAP-ストレプトアビジン複合体のアビジン、ニュートラビジン、又はストレプトアビジンと結合させることにより、前記送達システムを形成させる工程、を含む請求項1~9のいずれか1項記載の送達システムの組立て方法。
【請求項11】
前記治療活性成分がsiRNAであり、かつ該siRNAを予め形成されたscFv-BAP-アビジン/ニュートラビジン/ストレプトアビジン複合体とコンジュゲートさせる、請求項1~9のいずれか1項記載の送達システムの組立て方法であって:
a) マルトース-PPI-ビオチンコンジュゲートを調製する工程;
b) 該マルトース-PPI-ビオチンコンジュゲートを該scFv-BAP-アビジン又はscFv-BAP-ニュートラビジン又はscFv-BAP-ストレプトアビジン複合体とともにインキュベートする工程であって、該マルトース-PPIが陽イオン電荷を有する、前記工程;
c) 該マルトース-PPI-ビオチン複合体を該scFv-BAP-アビジン又はscFv-BAP-ニュートラビジン又はscFv-BAP-ストレプトアビジン複合体のアビジン、ニュートラビジン、又はストレプトアビジンと結合させる工程;
d) 別個に、マルトース-PPIをsiRNAとともにインキュベートする工程であって、弱い陰イオン電荷を有するマルトース-PPI-siRNAデンドリマーが形成される、前記工程;
e) 工程c)から得られる複合体を工程d)の該マルトース-PPI-siRNAデンドリマーとともにインキュベートする工程;及び
f) アビジン/ニュートラビジンコアと結合したscFv-BAP,マルトース-PPI-ビオチン/マルトース-PPI-siRNAデンドリマーを含む、腫瘍標的化多要素集合体を形成させる工程、を含む、前記方法。
【請求項12】
・チロシンキナーゼ阻害剤又はモノクローナル抗体;
・ゲフィチニブ、エルロチニブ、アファチニブ、及びオシメルチニブ及びセツキシマブ;並びに
・CimaVax-EGF
から選択されるEGF受容体阻害剤を任意にさらに含む、請求項1~9のいずれか1項記載の送達システムを含む医薬組成物。
【請求項13】
家族性高コレステロール血症などの代謝性疾患、ウイルス感染症、及び多形神経膠芽腫(GBM)のような原発性腫瘍又は転移性癌などの増殖性疾患の治療における使用のための請求項1~9のいずれか1項記載の送達システム又は請求項1~10のいずれか1項記載の送達システムを含む医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、一般に分子生物学及び治療法の分野に関する。より具体的には、本発明は受容体仲介型エンドサイトーシスによって真核生物細胞にRNAオリゴヌクレオチド、DNAオリゴヌクレオチド、及びタンパク質を含むモノビオチン化治療薬及びモノビオチン化診断用分子の選択的送達のための新規標的化生物コンジュゲートに関する。本発明は一般に、モノビオチン化ペイロード、例えば治療活性核酸にコンジュゲートされたアビジン又はニュートラビジンからなるコア、好ましくは抗体単鎖可変断片である少なくとも1つの抗体を含む診断用又は治療用分子の標的化送達のためのシステムに関する。本発明はさらに前記送達システムの組立て及び家族性高コレステロール血症などの代謝性疾患、ウイルス感染症、及び多形神経膠芽腫(GBM)のような原発性腫瘍又は転移性癌などの増殖性疾患の治療における前記送達システムの使用方法を提供する。
【0002】
(関連技術の説明)
現在、治療用又は診断用分子(「ペイロード」)の真核生物細胞への送達のための標的化生物コンジュゲート、例えば免疫コンジュゲートを作製するための最も一般的な機構は、標的化装置をペイロードに安定に結合させるための化学修飾及び化学的カップリング反応を含む。しかし、標的化デバイスのペイロードとの化学結合を使用する場合、いくつかの問題点がある。第1に、そのようなコンジュゲートの作製は時間がかかり、比較的多くの量の物質を必要とする。第2に、化学修飾は標的化装置(細胞結合成分;すなわちリガンド、抗体、抗体誘導体)の結合親和性に影響を及ぼし得るものであり、標的細胞への再方向づけが不十分となる。第3に、標的化装置はペイロードの立体障害をもたらし、従ってその生物活性を制限し得る。第4に、標的化装置へのカップリング反応に先行するペイロードの非方向づけ化学修飾は、その生物学的活性に影響を及ぼし得る。第5に、手間のかかるカップリング手順を、新たな個別の標的化装置ごとに構築しなければならない。
【0003】
化学的カップリングの代替法は、安定な非共有結合を可能とする本発明のモジュール式システムの使用である。構成要素には、(i) ビオチン化標的化装置、及び(ii) (iii) ストレプトアビジン及びアビジン等のビオチン-ビオチン結合コアエレメントによって組立てることができるビオチン化ペイロードがある。構成要素が凝集する傾向があるために超高分子量高分子は不活性となり、そのようなシステムは現在のところ開発に成功していない。
【0004】
先行技術は、全ての構成要素がモジュールを基礎としてビオチン-アビジン相互作用によって排他的に組立てられ、標的化生物コンジュゲートの非存在下では不完全である。本発明は当該技術分野におけるこの長年の要望及び願望をかなえるものである。
【背景技術】
【0005】
(発明の背景)
腫瘍を治療するための有望なアプローチは、血管新生、転移、生存、抗アポトーシス、及び化学療法への抵抗性に関与する遺伝子のsiRNA仲介性サイレンシング(RNAi)である(総説についてはAshiharaらの文献[7]を参照されたい)。RNAiは多細胞生物間で保存された生物学的プロセスであり、ここで二本鎖RNA(dsRNA)は酵素ダイサーによっておよそ21~23 bpの二本鎖断片(低分子干渉RNA、siRNA)[2、3]へとプロセシングされる。いわゆるガイド鎖は続いて複合タンパク質「RNA誘導性サイレンシング複合体」(RISC)へと組み込まれ、RISCはmRNAを相同性について走査し、配列特異的結合に際して複合体中に組み込まれた酵素の活性を通して標的mRNAの破壊を促進する[4-6]。特異的な細胞mRNAの破壊は、化学合成され、RNAi経路に入るsiRNA分子の外因性の送達によって得ることもできる[5]。siRNA分子は血清ヌクレアーゼによる分解を受けやすく、そのサイズ及び正味の電荷が負であることのために膜を容易には横断することができず、腎排出を受けるため、siRNAの半減期を増加させ、細胞取り込みを可能にするためのいくつかの担体システムが確立された[8-10]。大部分の抗腫瘍siRNAは標的細胞を特異的に阻害するように設計されているが、siRNA担体システムの正常組織に対する非特異的かつ細胞傷害性ですらある作用は、軽視することができない。従って、標的外の器官への望まないsiRNA作用以外に、siRNAナノ担体の健常組織への非特異的な「ナノ毒性」を、RNAi治療において考慮しなくてはならない(総説[11]を参照されたい)。また、RNAiの性質が一過性であることは、治療のために頻繁な反復全身投与が必須であることを暗示し、累積される毒性のリスクが増加すると予想される[12]ため、このことは特に当てはまる。望まないオフターゲット効果を回避する1つのアプローチは、標的化装置、例えば標的細胞と特異的に結合する抗体及び細胞表面受容体のリガンドの導入であり、それにより標的化送達の概念がもたらされる。しかしながら、これには最適な標的化装置、それらの結合活性を保持するような様式でのそれらのsiRNA-担体複合体とのカップリング、及び標的以外の細胞による非特異的な取り込みを回避するさらなる修飾の同定が要求される。
【0006】
腫瘍及び転移性疾患を治療するためのさらなる有望なアプローチは、二本鎖(ds)RNA、一本鎖(ss)RNA、及び非メチル化CpG-ジヌクレオチドを含むDNA-オリゴヌクレオチド(ODN)(CpG-ODN)などの危険モチーフを使用して、腫瘍及び腫瘍細胞中に細胞内パターン認識受容体(PRR)、例えばToll様受容体(TLR)3、7、8、及び9並びにレチノイン酸誘導遺伝子(retinoic acid-induced gene)(RIG)I様受容体ファミリーのメンバーの活性化を介した炎症反応を誘導することである。dsRNA、ssRNA、及びCpG-ODNなどのオリゴヌクレオチドはそのサイズ及び正味の電荷が負であることのために膜を横断することができないことは、統一的に知られている。従って、同種の細胞内PRRの活性化は生じない。治療用RNA分子に対するポリマー又は陽イオンで被覆した担体システムにより、腫瘍細胞における非特異的取り込みが可能となる。しかし、その特異性の欠如から、同時に健常細胞も傷害され得る(オフターゲット効果)。
【0007】
治療用及び診断用薬剤の真核生物細胞への標的化輸送又は送達は、細胞表面抗原と結合した後に特異的に内在化される抗体、抗体誘導体、アプタマー、又はリガンドなどの標的化装置の使用によって達成され得る。しかしながら、薬剤を標的化装置に高い安定性でカップリングさせる必要がある。最新の先行技術によれば、短鎖RNA及びDNAオリゴヌクレオチドは生化学反応により抗体などの標的化装置のシステイン残基と共有結合によって結合され得る。この方法の欠点は、カップリングにより抗体の結合特性に悪影響を及ぼし得ることである[2]。いくつかの適用について、特にsiRNA療法についてまた、特定の環境にある、例えば標的細胞に内在化された後の活性成分が、真核生物細胞中で抗体又はリガンドから放出されて、その活性を顕にするためにエンドソーム膜を横断することができることが重要である。
【0008】
融合型マイコバクテリウム・ゼノピ(Mycobacterium xenopi)GyrAインテインによって抗体の遊離チオエステル基をCpG-ODNと化学的カップリングさせることを含む変法が、Barbutoらの文献、2013 [54]に記載されている。ここで、システイン修飾ssDNA(5'-システイン-poly dA)を相補的なpoly dT-ssDNAとアニーリングさせたものは、抗体のC末端に特異的に結合した。抗体の結合特性は維持されたものの、それにもかかわらずこのアプローチは不利であることが証明された。それは、抗体調製の間にインテインのランダムな切断が観察され、それにより生産物の有効性が低下したためである。さらに、短いdsDNAオリゴマー(20 bp)のみが化学的にカップリングできた。この短いdA:dT dsDNAを伸長させておよそ250 bpの長さにすることは、組換え大腸菌(E. coli)クレノウDNA依存性DNAポリメラーゼの追加的使用によってのみ達成できた。しかし、このシステムを長鎖dsRNA分子の抗体とのカップリングに使用することはできない。現在の技術を用いてはdsRNAを伸長させることはできないためである[3]。また、このシステムはsiRNAの送達に好適でない。それは、エンドソームからの脱出の機構が提供されておらず、最も可能性の高いものとして、免疫コンジュゲートの抗体比率が高くなると、RISCのアクセスが、従ってその触媒活性が阻害されるためである。
【0009】
治療用分子の方向づけられていない化学的カップリングの有害作用を阻止するさらなる発展が、ペイロードを正確に化学的カップリングさせるために抗体の定常領域へのシステイン残基の部位特異的導入を使用する、THIOMABアプローチによって提供された[55][56]。しかし、システイン残基を導入するための部位指定突然変異誘発及び反応性チオールの選択のためのファージELISA(PHESELECTOR)法[57]を使用する候補のスクリーニングは、技術的難度が高くかつ労力を要し、個々の抗体ごとに新たに実施しなければならない。さらに、THIOMAB-siRNAコンジュゲートは標的mRNAのノックダウン効率の制限を示し、これはTHIOMAB-siRNAのエンドソーム脱出が効率的でないためである可能性が最も高く、同時に免疫コンジュゲートの抗体比率によって仲介される立体障害に起因してRISCのsiRNAへのアクセスが制限されることに関連し得る[57]。
【0010】
鋳型方向づけ共有結合複合体形成(Template-directed covalent conjugation)は、ポリヒスチジンタグを含む抗体又はリガンドにオリゴヌクレオチドを共有結合カップリングさせるための別の代替法である。この方法では、トリス(NTA)基を含むガイドDNAオリゴを使用してニッケル(II)イオンの存在下で非共有結合的に組換え抗体の金属結合部位と結合させる。NHS-エステル基を含む相補的DNAオリゴヌクレオチドを使用してガイド鎖にアニーリングさせ、その後抗体上の近傍のリシンと共有結合的に反応させる。しかし、この方法は技術的難度が高くかつ労力を要し、各々の単一抗体について検証しなければならない。さらに、抗体の他のリシン残基がNHS-エステル基と反応するおそれがあり、それにより抗体-DNAコンジュゲートの結合及び親和性が影響され得る[58]。
【0011】
siRNA、及び一般に負に荷電したオリゴヌクレオチドの標的化送達のための代替法は、細胞表面受容体内在化抗体と融合され、又は化学的にカップリングされた陽イオン性タンパク質プロタミン(魚精子由来オリゴヌクレオチド担体分子)を含む。化学的カップリングについて、プロタミンは例えば二重特異性架橋剤スルホ-SMCC(スルホスクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシラート)を使用して化学的に活性化させ、その後システイン残基を介して抗体と化学的にカップリングさせて、siRNAを運搬する[59]。同時にこの方法は抗体の結合特性における有害作用をもたらす望まない化学反応を引き起こし得るものであり、従って各々の個々の抗体のどれかについて検査しなくてはならない(must be tested which each individual antibody)。注目すべきことに、プロタミンは単独で非特異的エンドサイトーシス取り込みにより細胞膜を横断する固有の能力を有しており[60][61]、従って抗体-プロタミンsiRNA担体のオフターゲット効果は完全には除外できない。さらに、プロタミンは魚にアレルギーのある患者、プロタミンを含むインスリン調製物を使用する糖尿病患者、及び精管切除術を受けた、又は生殖能力のない男性においてアレルギー反応を引き起こすことが報告されている[62][63]。これらは0.28%~6%の範囲の割合で発生する[63][64]。
【発明の概要】
【0012】
(発明の説明)
(定義)
本明細書で使用する表現「細胞」、「細胞株」、及び「細胞培養物」は、互換的に使用され、そのような呼称は全て子孫細胞を含む。従って、単語「形質転換体」及び「形質転換細胞」は初代対象細胞及び伝達の回数にかかわらず該細胞に由来する培養物を含む。また、全ての子孫細胞は故意又は偶発的な突然変異のためにDNA内容が正確に同じでなくともよいことは理解されよう。最初の形質転換細胞をスクリーニングした際に同じ機能又は生物活性を有する突然変異体子孫細胞を含める。異なる呼称を意図する場合、このことは文脈から明らかとなろう。
【0013】
本明細書で使用する用語「ポリペプチド」、「ペプチド」、及び「タンパク質」は互換性があり、ペプチド結合によって結合されたアミノ酸から構成される生体分子を意味するものとして定義される。
【0014】
本明細書でペプチド又はアミノ酸配列に言及する場合、各アミノ酸残基は以下の慣習的リストに従いアミノ酸の慣用名に対応している一文字表記又は三文字表記で表す。
【表1】
【0015】
本明細書で使用する用語「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「該」は、「1以上」を意味するものとして定義され、文脈が不適切でない限り複数を含む。
【0016】
本明細書で使用する用語「対象」は、治療、観察、又は実験の対象となった動物、好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトを指す。
【0017】
本明細書で使用される用語「治療有効量」は、研究者、獣医師、医師、又は他の臨床家によって追求される、組織系、動物、又はヒトの、処置される疾患又は障害の症状の緩和を含む生物学的又は医学的反応を誘発する活性化合物又は医薬物質の量を意味する。
【0018】
本明細書で使用する用語「医薬として許容し得る」は、ヒト及び獣医学分野での使用の両方を包含する:例えば用語「医薬として許容し得る」は、獣医学的に許容し得る化合物又はヒト医学及び健康管理に許容し得る化合物を包含する。
【0019】
単鎖可変断片(scFv)は正確には抗体の断片ではなく10~約25アミノ酸の短いリンカーペプチドで連結された免疫グロブリンの重鎖(VH)及び軽鎖(VL)の可変領域の融合タンパク質である。リンカーは通常可撓性を高めるためにグリシンを、並びに溶解性を高めるためにセリン又はスレオニンを豊富に含み、VHのN末端をVLのC末端に、又はその逆にして接続させることができる。このタンパク質は定常領域の除去及びリンカーの導入にもかかわらず、元の免疫グロブリンの特異性を保持する。二価(Divalent)(又は二価(bivalent))単鎖可変断片(di-scFv、bi-scFv)を、2つのscFvを連結することによって操作することができる。これは、2つのVH領域及び2つのVL領域を含む単一ペプチド鎖を作製し、直列のscFvを生じることによって行うことができる。scFvの総説については、「モノクローナル抗体の薬理学(The Pharmacology of Monoclonal Antibodies)」, vol. 113、Rosenburg及びMoore編、Springer-Verlag, New York, pp. 269-315 (1994)中のPluckthunの文献を参照されたい。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(発明の詳細な説明)
本発明は、モノビオチン化細胞結合構成要素、四量体ビオチン結合要素、及び治療及び診断目的のモノビオチン化ペイロードを含むビオチン-ビオチン結合要素の複合体形成により排他的に組み立てられた新規標的化生物コンジュゲートのモジュール式設計及び組立てを提供する。本発明によるモノビオチン化治療用分子及びモノビオチン化診断用分子には、RNA分子、DNA分子、及びタンパク質がある。
【0021】
低分子干渉siRNAに基づく治療薬は、現在のところ治療法のない疾患、例えば多形神経膠芽腫(GBM)のような原発性腫瘍又は転移性癌を治療する大きな潜在性を提供する。しかしながら、様々な非ウイルス担体システムを使用してsiRNAを広く適用することは、非特異的毒性又は免疫原性副作用、siRNAを負荷されたナノ粒子の標的外の器官への望まない送達又は急速な腎排出による乏しい薬物動態特性、並びに標的細胞への内在化の効率が高くないことによって妨げられている。
【0022】
従って、従来技術の欠点を克服することができる核酸ベースの治療薬の標的化送達のための送達システムを提供することは、本発明の格別な目的である。本発明は、治療薬、診断薬、抗体、抗体誘導体、及びリガンドを担体分子を用いて又は用いずに、安定にカップリングさせることを可能とすることとなる。本発明はさらに、免疫コンジュゲートの組立てのための複雑なカップリング化学の代替となる。この目的で、モノビオチン化抗体の単鎖断片(scFv)を、四量体ビオチン結合タンパク質、例えばアビジン、ニュートラビジン、又はストレプトアビジンを介して治療薬又は診断薬とコンジュゲートする。そのため、創出された生産物をさらに「ビオチンベース免疫コンジュゲート」(BIC)と命名する。
【0023】
さらに、本発明によって使用され得る考えられる治療薬又は診断薬は、RNA及びDNA分子から選択される。特にCpG-オリゴヌクレオチド及び一本鎖(ss)及び二本鎖(ds)RNA、最後のものは40~50 bpヌクレオチド長を上回るものを使用して、いわゆる「パターン認識受容体」(Toll様受容体(TLR)、「レチノイン酸誘導遺伝子I」(RIG 1)様受容体、及びNOD様受容体)を介して標的細胞における炎症反応及び細胞アポトーシスを誘発するために使用することができる。治療用分子は受容体、例えば細胞のエンドソーム中にあるTLRと結合するように、例えばエンドサイトーシスの過程により、標的細胞によって取り込まれることが保証されなくてはならない。真核生物細胞によるRNA又はDNA分子の取り込みは、これらの分子の細胞膜を通じた拡散を妨げる強い陰イオン電荷のために制限される。治療用dsRNA又はDNA分子のためのポリマー又は陽イオン荷電担体システムは既に記載されている。しかしながら、これらの担体システムは腫瘍細胞並びに健常体細胞のいずれにおいても非特異的取り込みをもたらす。従って、活性化合物又は担体システムの使用は正常細胞又は組織に傷害をもたらし得る(オフターゲット効果)。本発明のビオチンベースの免疫コンジュゲートは特定の表面タンパク質を発現する細胞内にdsRNA、ssRNA、及びDNA分子を選択的に輸送することを可能とするが、この表面タンパク質の発現がない細胞への非特異的取り込みは妨げられる。本発明のビオチンベースの免疫コンジュゲートは、活性成分としてTLRアゴニストを含むことができ、特定の腫瘍に限定された炎症反応を誘発し得る一方、個々の表面タンパク質を発現しない健常組織は傷害しない。
【0024】
モノビオチン化標的化装置、すなわちモノビオチン化scFvとの複合体形成により、本発明はまた、他の治療用又は診断用活性化合物を、特定の表面抗原を発現する真核生物細胞に特異的に輸送するために使用することができる。
【0025】
他の治療用又は診断用活性成分の例は:
・「低分子干渉RNA」(siRNA);
・マイクロRNA(miRNA);
・非コードRNA(ncRNA);
・野生型遺伝子又は毒素遺伝子治療のためのcDNA又はmRNA;及び
・細胞の遺伝子操作のためのcDNA又はmRNA(例えば、CRISPR/CAS、DNAリコンビナーゼ又はトランスポザーゼ)であり、ここで各成分はトランスフェクション不能なビオチン化オリゴヌクレオチド担体と任意に複合体を形成させることができる。
【0026】
また、本発明は例えば:抗原提示細胞(APC)又は樹状細胞(DC)を活性化させる「パターン認識受容体」に対するモノビオチン化アゴニストと組み合わせたモノビオチン化された病原体由来タンパク質又はペプチド/腫瘍関連抗原による、病原体又は腫瘍に対するワクチン接種のために使用することができる。
【0027】
本発明は請求項1による送達システムを提供する。より具体的には、本発明は治療活性ペイロードの標的化送達のためのモジュール式送達システムであって:
―アビジンコア;
―少なくとも1つの標的化分子、例えば天然又は人工タンパク質-リガンド、アプタマー、又は抗体単鎖可変断片;
―タンパク質、ペプチド、又は治療活性核酸からなる群から選択される少なくとも1つの治療活性ペイロード、を含み、前記標的化分子及び前記治療活性ペイロードが、アビジンコアと結合している、前記システムを提供する。
【0028】
アビジンは鳥類、爬虫類、及び両性類の卵管中で生産される四量体ビオチン結合タンパク質であり、それらの卵の白身に沈着する。四量体タンパク質は4つの同一のサブユニット(ホモ四量体)を含み、そのそれぞれがビオチン(ビタミンB7、ビタミンH)と高度の親和性及び特異性で結合することができる。アビジンの解離定数はKD≒10~15Mであると測定され、公知の非共有結合の中で最も強力な結合となっている。その四量体形態において、アビジンのサイズは66~69 kDaであると見積もられている。分子量の10%は4~5つのマンノース及び3つのN-アセチルグルコサミン残基から構成される糖質の含有量に帰着される。アビジンの糖質部分には構造及び組成において類似している少なくとも3つの特有のオリゴ糖構造型が含まれる。
【0029】
ストレプトアビジンはビオチン親和性が等しく結合部位が非常に類似している緩やかに関連しているタンパク質であり、ストレプトマイセス種のある系統の細菌によって生産される。ストレプトアビジンは抗生物質としての様式で競合する細菌の増殖を阻害する機能を果たすと考えられている。
【0030】
非グリコシル化形態のアビジンが利用可能であり、いわゆるニュートラビジンとして知られている。
【0031】
アビジンコアは好適にはアジビン(adivin)、その非グリコシル化形態ニュートラビジン、又はストレプトアビジンからなる。より好ましくは、アビジンコアはアビジン又はニュートラビジンからなる。最も好ましくは、本発明の送達システムのアビジンコアは、1分子のアビジン又は1分子のニュートラビジンからなる。
【0032】
アビジン、ニュートラビジン、又はストレプトアビジン分子は、本発明の送達システムのコアを形成するが、最大4つのビオチン分子又は各々1つのビオチンを提示する他の分子と結合し得る。
【0033】
一実施態様において、本発明の送達システムは、少なくとも1つの標的化分子、例えば抗体の単鎖可変断片(scFv)、好ましくは1、2、又は3つの標的化分子、例えば各々ビオチン化アクセプターペプチド(BAP)に融合された単鎖可変断片を含む。
【0034】
これらの標的化分子、特にこれらの抗体単鎖可変断片(scFv)は、特定の癌細胞に特異的に発現する細胞表面受容体タンパク質との結合に寄与する。そのような細胞表面受容体タンパク質は、例えば前立腺幹細胞抗原(PSCA)又は上皮増殖因子受容体(EGFR)のファミリー又は本発明の目的を果たすのに好適な任意の他の好適な細胞表面タンパク質又はペプチドである。言い換えれば、抗体単鎖可変断片の選択は、特定の癌のための本発明の送達システムの特異性を決定する。PSCAと、又はEGFRvIIIと呼ばれる変異型EGF-受容体と結合する単鎖可変断片は、本発明に従い好ましい。
【0035】
前立腺幹細胞抗原(PSCA)は、ヒトにおいてPSCA遺伝子によってコードされるタンパク質である。この遺伝子は、グリコシルホスファチジルイノシトールによって係留された細胞膜糖タンパク質をコードする。PSCA遺伝子は、大半の前立腺癌(PCa)、PCa転移において上方調節されて、また多形神経膠芽腫並びに膀胱及び膵臓の癌において検出される[65]。
【0036】
上皮増殖因子受容体バリアントIII(EGFRvIII)、上皮増殖因子受容体(EGFR)で最も一般的な腫瘍形成性アイソフォーム。EGFRvIIIは、小細胞肺癌、乳癌、前立腺癌表面に[26、27]、及び30~40%の悪性神経膠腫において[28、29]、特異的に発現する。構造的に、EGFRvIIIは、アミノ酸6~273のインフレーム欠失を示し、その結果グリシンが付加され、エキソン2~7が喪失している。従って、このバリアントは、その外部ドメインの大部分を欠いているが、融合位置で新エピトープを含む。
【0037】
本発明の送達システムは好ましくは少なくとも2つ、最も好ましくは2つの抗体単鎖可変断片(scFv)を含み、該scFvは少なくとも2つの抗原結合部位となる。これらの少なくとも2つの抗原結合部位は、少なくとも2つの受容体、例えば細胞内在化を改善する癌細胞表面上のPSCA又はEGFRvIIIを架橋することによるクラスター形成効果及びエンドサイトーシスを誘導するために行う。
【0038】
好ましい実施態様において、本発明による送達システムで使用する単鎖抗体は、7F5に由来するscFv(AM1)(配列番号:1)[34]、scFv(h-AM-1)(配列番号:2)、及びscFv(MR1.1)(配列番号:3又は配列番号:4)から選択される。この点に関してはまた、本発明は、誘導元のマウスscFv(AM1)(配列番号:1)より100倍優れたPSCAとの親和性(KD値)を示すことが実証されたヒト化scFv(h-AM1)(配列番号:2)を提供する。
【0039】
ビオチン及びストレプトアビジン又はアビジン間の結合は、知られている中で最も強い非共有結合生物学的相互作用のうちの1つである。(ストレプト)アビジン-ビオチン相互作用は、生物学研究及びバイオテクノロジーにおいて数十年の間広く使われている。従って、ビオチンによる精製されたタンパク質の標識は、タンパク質捕捉、固定化及び機能化、並びに分子の多量体化又は架橋を達成する強力な方法である。化学的ビオチン化は不良な機能を有し得る不均一な産物を生成することが多い。従って、酵素によるビオチン化、例えば大腸菌ビオチンリガーゼ(BirA)は、ビオチンのBAPへの共有結合的結合において高度に特異的であり、その結果高収量で均一な産物を得る。BAPは、都合よく標的タンパク質のN末端、C末端、又は露出したループに遺伝学的に付加することができる。抗体単鎖可変断片のC末端へのBAPの付加は、本発明に従い好ましい。
【0040】
本発明の好適なBAPは、大腸菌ビオチン・リガーゼ(BirA)による酵素的ビオチン化に好適なタンパク質ドメイン及びペプチドから選択される。ビオチン化のための1つの好適なアミノ酸配列は、プロピオニバクテリウム・シャーマニイ(Propionibacterium shermanii)トランスカルボキシラーゼ(PSTCD-BAP)の1.3Sサブユニットのビオチン受容ドメイン
【化1】
、並びに全てのビオチン依存的な酵素、例えばアセチルCoAカルボキシラーゼ、ピルビン酸カルボキシラーゼ、プロピオニル-CoAカルボキシラーゼ、メチルクロトニル-CoAカルボキシラーゼ、ゲラニル-CoAカルボキシラーゼ、オキサロ酢酸デカルボキシラーゼ、メチルマロニル-CoAデカルボキシラーゼ、トランスカルボキシラーゼ、及び尿素アミドリアーゼに存在する;並びに「cd06850」配列クラスター(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/Structure/cdd/cddsrv.cgi?uid=cd06850)
【化2】
に存在するビオチンドメイン又はビオチンカルボキシルキャリアタンパク質(BCCP)ドメインのビオチン受容ドメインを含む。好適なBAPペプチドは例えば13のアミノ酸ペプチドであり、該アミノ酸ペプチドはBirAの最小の基質ペプチド
【化3】
(X1=任意のアミノ酸;及び
X2=L、V、I、W、F、又はY以外の任意のアミノ酸)を含む。
【0041】
より好ましくは、好適なBAPは、ビオチン化の割合を向上させるためにさらに最適化されたアミノ酸配列を含み、AviTagと呼ばれ、アミノ酸配列:
【化4】
を有するBAPをもたらす。AviTagは、標的タンパク質のN又はC末端で機能する。さらに好ましくは、BAPはBioTag
【化5】
と呼ばれる15残基の高度の近縁体でもよい。別の好適なBAP、BLRP(ビオチンリガーゼ認識ペプチド)は、AviTagのコアを含み、23アミノ酸残基:
【化6】
からなる。また、Bio-タグと呼ばれる別の好適なBAPは、AviTagのコアを含んで、23アミノ酸:
【化7】
から成る[66]。別の好適なBAPは15のアミノ酸残基「BirA基質ペプチド」(BSP)であり、アミノ酸配列:
【化8】
を有する。
【0042】
さらなる実施態様において、BAP及び抗体単鎖可変断片の間にある程度の可撓性を加えるために、リンカーペプチドを抗体単鎖可変断片及びBAPの間に付加する。例えば、可撓性の高い2アミノ酸残基GSリンカーは、BAP及び抗体単鎖可変断片又は任意の他の周囲のペプチドタグ若しくはドメインの間に付加することができる。可能性は低いがN-末端又はC-末端BAPを有するコンストラクトがビオチン化されることができず、又は低い量のタンパク質を得る事態においては、リンカーペプチドを最大6アミノ残基へと伸長させることができる。本発明による好ましいリンカーペプチドは、c-mycタグを含み、本質的にそれからなり、又はそれからなるリンカーペプチドである。c-mycタグはc-myc遺伝子産物に由来する、組換えDNA技術を使用してタンパク質に付加することができるポリペプチドタンパク質タグである。最も好ましくは、前記c-mycタグは:
【化9】
のアミノ酸配列を有する。
【0043】
さらに好ましい実施態様においてまた、本発明の標的化送達システムにおいて使用する標的化分子は、アプタマーとすることができる。アプタマーは、特定の標的分子と結合するオリゴヌクレオチド又はペプチド分子である。アプタマーは通常大きなランダム配列プールからそれらを選択することによって創出されるが、天然のアプタマーもリボスイッチにおいて存在する。アプタマーは、基礎研究及び臨床目的の両方で高分子薬物として使用することができる。アプタマーは、リボザイムと組合わせてそれらの標的分子の存在下で自己切断することができる。これらの化合物分子はさらなる研究、産業、及び臨床応用性を有する。より具体的には、アプタマーは:
・DNA又はRNA又はXNAアプタマー。これらはオリゴヌクレオチド(通常、短)鎖からなる;
・ペプチドアプタマー。これらはタンパク質スキャフォールドの両端に結合された1つ(以上の)単鎖可変ペプチドドメインからなる、
として分類することができる。
【0044】
本発明の送達システムに含める治療活性核酸は、一本鎖DNA(ssDNA)、二本鎖DNA(dsDNA)、一本鎖RNA(ssRNA)、又は二本鎖RNA(dsRNA)、特にそれぞれ40 bp及びntを上回る長さのそれらの任意のものとすることができる。好ましくは、本発明の送達システムに含める治療活性核酸はdsRNAであり、最も好ましくは少なくとも40 bpを含むdsRNAである。
【0045】
より好ましくは、dsRNAは少なくとも40、好ましくはそれ以上のヌクレオチド塩基対(bp)を含むdsRNAである。このことは、そのようなdsRNAが、標的細胞、例えば腫瘍細胞へと選択的に送達され、かつ内在化された後に、2つの標的受容体と結合する(すなわち、2つの受容体を架橋する)ことができ、ここで前記標的受容体は腫瘍細胞において炎症及びそれに続くアポトーシスを引き起こすという利点を有する。
【0046】
さらに好ましくは、本発明の送達システムに含めるdsRNAは、TLR3リガンドとし得る。好適なTLR3リガンドは、例えばポリアデニル酸-ポリウリジル酸(poly(A:U);Invivogen, CAS登録番号24936-38-7)、ポリイノシン酸-ポリシチジル酸(poly(I:C);Invivogen, CAS登録番号31852-29-6)、poly ICLC(CAS登録番号59789-29-6)、及びpoly(I:C12U)(CAS登録番号38640-92-5)である。
【0047】
ポリアデニル酸-ポリウリジル酸(poly(A:U))はTLR3を介してのみシグナルを送る合成二本鎖RNA分子である。TLR3によるpoly(A:U)の認識により、樹状細胞及びTリンパ球の活性化が誘発される。poly(A:U)の強力なアジュバント活性は、TLR3を発現する乳癌の治療に利用されている。
【0048】
ポリイノシン酸-ポリシチジル酸(poly(I:C))は、ウイルス感染と関連付けられる分子パターンである二本鎖RNA(dsRNA)の合成類似体である。天然及び合成dsRNAはいずれもI型インターフェロン(IFN)及び他のサイトカインの生産を誘発することが公知である。poly(I:C)はToll様受容体3(TLR3)によって認識される。poly(I:C)を認識すると、TLR3はIFN-βを誘導するアダプタータンパク質Toll-IL-1受容体(TIR)ドメイン含有アダプター(TRIF、またTICAM-1としても知られる)を通じて、転写調節因子であるインターフェロン調節因子3(IRF3)を活性化させる。IRF3の活性化により、I型IFN、特にIFN-βが生産される。第2の経路は、TNF受容体関連因子6(TRAF6)又は受容体相互作用タンパク質1(RIP1)の動員と、それに続く転写調節因子NF-κB及びAP-1の活性化を伴う。この経路の活性化は、炎症性サイトカイン及びケモカイン、例えばTNF-α、IL-6、及びCXCL10の生産の誘因となる。また、poly(I:C)は細胞質RNAヘリカーゼであるレチノイン酸誘導タンパク質I(RIG-I)及び黒色腫分化関連遺伝子5(MDA-5)によって認識される。
【0049】
poly ICLCは免疫刺激物質である。poly ICLCはカルボキシメチルセルロース、ポリイノシン酸-ポリシチジル酸、及びポリ-L-リシン二本鎖RNAからなる。poly ICLCは、Toll様受容体3のリガンドである。
【0050】
IFNの誘導物質として、poly(I:C12U)は強力な抗ウイルス及び免疫調節特性を有する。この合成dsRNAポリマーは、ポリリボイノシン(poly I)の一方の鎖と、それにハイブリダイズしたRNAの重合結合において統計的に13番目のモノマーごとにウリジン残基を含むポリリボシトシン(poly C12U)の相補鎖とからなる。ウリジンの導入は、イノシンとの鎖会合に関与する水素結合が利用できない部位を提供する。この特定の構成はpoly(I:C12U)中に熱力学的に不安定な位置を提供し、それによりエンドリボ核酸分解酵素によって触媒される加水分解のための開始部位が提示される。その誘導元dsRNAであるpoly(I:C)と比較したpoly(I:C12U)の毒性の欠如は、この単一の修飾と関連している。
【0051】
最も好ましい実施態様において、本発明の送達システムにおいて使用するdsRNAは、RIBOXXOL(登録商標)(RIBBOX、CAS登録番号63231-63-0)である。RIBOXXOL(登録商標)は2つのToll様受容体3(TLR3)受容体と結合することができる独特なTLR3リガンドである。TLR3はほとんどの真核生物細胞のエンドソームに存在する。TLR3のシグナル伝達は40 bp超の長さのdsRNAによって誘発される。dsRNAを通じたTLR3経路の誘発により、樹状細胞のIL-1β、1L-12、及びI型IFNの生産が誘導され、抗原のクロスプレゼンテーション及びMHCクラスIの発現が向上する。RIBOXXOL(登録商標)はTh1(細胞性)免疫反応、NK細胞によるIFN-γの生産を促進し、かつ単球を活性化させる。RIBOXXOL(登録商標)は非常によく定義された化学構造、長さ(50 bp)、及び分子量、優れた溶解性及び血清中安定性を有し、エンドソームTLR3を特異的に標的化することにより用量依存的な様式でDCを活性化させることができる。
【0052】
さらに最も好ましい実施態様において、本発明の送達システムに含めるdsRNAは、siRNAである。
【0053】
RNAiを誘導する物質である低分子干渉RNA(siRNA)は、約20~30ヌクレオチドからなる短鎖RNA二重螺旋鎖を指す。siRNAの細胞への導入により、その塩基配列がsiRNAに相補的なmRNAを標的化することが可能となり、それにより遺伝子発現が抑制される。従って、siRNAは、その疾患に対する治療効果、簡便な調製、及び高い標的選択性のために標的となる生命プロセスを制御することが可能な効率的な手段として関心を集めている。
【0054】
現在、癌、ウイルス感染性疾患、自己免疫性疾患、及び神経変性疾患は、siRNAの使用によって治療される疾患として研究されており、加齢黄斑変性(ベバシラニブ;Opko Health社、Miami, Fla., USA; 臨床第III相)及び呼吸器合抱体ウイルス感染症(ALN-RSV01;Alnylam, Cambridge, Mass., USA; 臨床第II相)の治療薬としてのsiRNAの潜在性が、それらの臨床試験として報告されている[67]。さらに、ヒト癌治療におけるsiRNAの送達システムが、それらの標的(CALAA-01; Calando Pharmaceuticals, Pasadena, Calif., USA; 臨床第I相)[68]としてトランスフェリンを有するシクロデキストリンベースのナノ粒子ポリマーを使用することにより可能となることが報告された。
【0055】
さらなる実施態様において、治療活性核酸、特に本発明で使用するdsRNAは、本発明の送達システムのアビジンコアとコンジュゲートさせるためにビオチン化されている。従って、最も好ましくは、治療活性核酸はビオチン化ポリアデニル酸-ポリウリジル酸(poly(A:U));ビオチン化ポリイノシン酸-ポリシチジル酸(poly(I:C));ビオチン化poly ICLC、ビオチン化poly(I:C12U)、RIBOXXOL(登録商標)-ビオチン又はビオチン化siRNAからなる群から選択される。
【0056】
さらなる実施態様において、本発明の送達システムの前記治療活性核酸は、siRNA担体と複合体形成したsiRNAである。siRNAはその低い安定性のためにインビボにおいて短時間で分解され、その陰イオン性により同じ負電荷を有する細胞膜を容易に浸透することが妨げられ、細胞内への透過性は低い。本発明のsiRNA担体はこれらの欠点を克服し、siRNAの効率的な細胞内送達をもたらすことができる。siRNAを負荷されたこれらの担体は分解酵素に対する抵抗性を有し、生体中を長時間循環し、臨床上利用可能な注入経路を介して標的細胞に到達し、後期エンドソーム/リソソームにおける細胞への受容体仲介型取込み後のいわゆるプロトンスポンジ効果を介したエンドソームからのsiRNAペイロードの効果的な放出が可能となる。
【0057】
好ましくは、本発明のsiRNA担体は表面修飾を受けるとその非特異的取り込みにより真核生物細胞に進入する能力が失われる非ウイルス担体である。例えばポリ(アミドアミン)(PAMAM)及びポリ‐(プロピレンイミン)(PPI)デンドリマーを含むそのようなトランスフェクション不能非ウイルス担体は、一般に互換性がある。デンドリマーは三次元形態を有する反復的に枝分かれした単分散高分子からなる[76]。デンドリマーの表面及びコアのアミノ基は負に荷電したsiRNAと静電相互作用することができ、「デンドリプレックス」と呼ばれる凝縮されたナノサイズの粒子の形成をもたらす。そのようなデンドリマーの表面を修飾することができる。PEG又はマルトースを用いた表面修飾によるデンドリマーの調整(tuning)により分子間凝集が低下し、網状内皮系との相互作用を防ぐ親水性シェルをもたらし、細胞取り込みが低下し、従って血流中のその半減期が高まる。デンドリマー及びsiRNAのモル比を調整することにより、100~150 nmの範囲の直径を有し、腎排出を回避するデンドリプレックスを生成することが可能となる。興味深いことに、末梢アミノ基のマルトース修飾による表面電荷の遮蔽は、インビボでのPPIグリコデンドリマーの生体適合性を大きく高めることが示されている[20、21]。
【0058】
より好ましくは、本発明のsiRNA担体は、マルトースユニットにより修飾された、最も好ましくは24マルトースユニットにより修飾されてmal19-PPIをもたらす第4世代ポリプロピレンイミン(PPI)デンドリマーを含む複合体を含む。驚くべきことに、マルトースを有する陽イオン性PPIの表面被覆率(surface coverage)をより高くすると、負に荷電した細胞表面との静電相互作用が減少するためにトランスフェクション不能なmal-PPI-siRNAデンドリプレックスがもたらされることが見出された。さらに驚くべきことに、これらのトランスフェクション不能なデンドリプレックスは受容体仲介型エンドサイトーシスのみによって治療用siRNAを送達するための、腫瘍特異的抗体とコンジュゲートすることによる標的化送達戦略に好適であった。治療用siRNA標的化を含むmal-PPI-siRNAデンドリプレックス、例えば
・BIRC5/サバイビンmRNA
【化10】
・SOX2 mRNA
【化11】
・AURKB/Aurora Bキナーゼ
【化12】
・内部セントロメアタンパク質(INCENP)
【化13】
は、本発明の目的に好適である。
【0059】
従って、最も好ましい実施態様において、本発明の送達システムにおけるsiRNA担体として使用するデンドリプレックスは、mal19-PPIグリコデンドリマー及び所望のsiRNAからなる。例えば、最も高度に枝分かれしたmal90-PPIは、siRNAとデンドリプレックスを形成する能力を完全に喪失しており、一方mal7-PPI、mal19-PPI、及びmal33-PPI高分子は負に荷電したsiRNAとデンドリプレックスを形成する能力を保持している。mal19-PPIは特に有利であるが、それはこのデンドリマーが非常に高いデンドリマー対siRNA質量比(90:1)である程度のノックダウン効率を仲介することがなお可能であり、mal19-PPI中の残存するプロトン化され得る(protonable)アミノ基がsiRNAのエンドソームからの放出を可能にすることが示唆されたためである。
【0060】
細胞傷害性及び非特異的トランスフェクション効率を回避するため、質量比を10:1以下にすること(0.4 μM mal19-PPI及び11.4:1以下のPPI/siRNAのモル比に相当する)により、試験した細胞の生存性に影響を及ぼさずにトランスフェクション不能siRNA担体の基準を満たすものとなった。従って、本発明の一実施態様において、10:1以下の質量比を含むデンドリプレックスを提供する(0.4 μM mal19-PPI及び11.4:1以下のPPI/siRNAのモル比に相当する)。より好ましくは、5:1のモルPPI/siRNA比を有するmal19-PPIデンドリプレックスが提供され、それはこれらのデンドリプレックスにおけるその複合体からの効率的な細胞内siRNAの放出を保証するためである。
【0061】
本発明の送達システムの組成物の好ましい例は、以下の通りである:
i) 核酸ベースの治療薬の標的化送達のための送達システムであって:
・アビジン、ニュートラビジン、又はストレプトアビジンからなるアビジンコア;
・天然又は人工のタンパク質リガンド、アプタマー、又は抗体単鎖可変断片(scFv)からなる群から選択される少なくとも1つの標的化分子、
・少なくとも1つの治療活性核酸、を含み、前記少なくとも1つの標的化分子及び前記少なくとも1つの治療活性核酸は、アビジンコアと結合している、前記送達システム。
ii) 核酸ベースの治療薬の標的化送達のための送達システムであって、
・アビジン、ニュートラビジン、又はストレプトアビジンからなるアビジンコア;
・標的化分子としての少なくとも1つの抗体単鎖可変断片(scFv);
・CpGオリゴヌクレオチド、ssDNA、dsDNA、ssRNA、又はdsRNAからなる群から選択される少なくとも1つの治療活性核酸、を含み、前記少なくとも1つの標的化分子及び前記少なくとも1つの治療活性核酸は、アビジンコアと結合している、前記送達システム。
iii) 核酸ベースの治療薬の標的化送達のための送達システムであって:
・アビジン、ニュートラビジン、又はストレプトアビジンからなるアビジンコア;
・標的化分子としての少なくとも1つの抗体単鎖可変断片(scFV)―リンカー―BAP
・CpGオリゴヌクレオチド、ssDNA、dsDNA、ssRNA、又はdsRNAからなる群から選択される少なくとも1つの治療活性核酸、を含み、前記少なくとも1つの標的化分子及び前記少なくとも1つの治療活性核酸がアビジンコアと結合している、前記送達システム。
iv) 核酸ベースの治療薬の標的化送達のための送達システムであって:
・アビジン、ニュートラビジン、又はストレプトアビジンからなるアビジンコア;
・標的化分子としての少なくとも1つの抗体単鎖可変断片(scFV)―リンカーペプチド―BAPであって:
前記抗体単鎖可変断片(scFV)がscFv(h-AM-1)(配列番号:2)及びscFv(MR1.1)(配列番号:3又は配列番号:4)から選択され、
前記BAPが
【化14】
(X1=任意のアミノ酸;及び
X2=L、V、I、W、F、又はYを除く任意のアミノ酸である)
【化15】
からなる群から選択され;かつ前記リンカーペプチドが
○2つのアミノ酸、例えばGS;
○6つのアミノ酸;及び
○10個のアミノ酸、例えば
【化16】
のアミノ酸配列を有するc-mycタグからなる群から選択される、前記少なくとも1つの抗体単鎖可変断片(scFV)―リンカーペプチド―BAP;
・RIBOXXOL(登録商標)及びsiRNAからなる群から選択される少なくとも1つの治療活性核酸、を含み、前記少なくとも1つの標的化分子及び前記少なくとも1つの治療活性核酸がアビジンコアと結合する、前記送達システム。
v) 核酸ベースの治療薬の標的化送達のための送達システムであって:
・アビジン又はニュートラビジンからなるアビジンコア;
・標的化分子としての少なくとも1つの抗体単鎖可変断片(scFV)―リンカーペプチド―BAPであって:
前記少なくとも1つの抗体単鎖可変断片(scFV)がscFv(h-AM-1)(配列番号:2)及びscFv(MR1.1)(配列番号:3又は配列番号:4)から選択され、前記BAPが
【化17】
から選択され、かつ前記リンカーペプチドが
【化18】
のアミノ酸配列を有するc-mycタグである、前記少なくとも1つの抗体単鎖可変断片(scFV)―リンカーペプチド―BAP;
・RIBOXXOL(登録商標)及びsiRNAからなる群から選択される少なくとも1つの治療活性核酸、を含み、前記少なくとも1つの標的化分子及び前記少なくとも1つの治療活性核酸がアビジンコアと結合する、前記送達システム。
vi) 核酸ベースの治療薬の標的化送達のための送達システムであって:
・アビジン又はニュートラビジンからなるアビジンコア;
・標的化分子としての少なくとも1つの抗体単鎖可変断片(scFV)―リンカーペプチド―BAPであって:
前記少なくとも1つの抗体単鎖可変断片(scFV)がscFv(h-AM-1)(配列番号:2)及びscFv(MR1.1)(配列番号:3又は配列番号:4)から選択され、前記BAPが
【化19】
から選択され、
前記リンカーペプチドが
【化20】
のアミノ酸配列を有するc-mycタグである、前記少なくとも1つの抗体単鎖可変断片(scFV)―リンカーペプチド―BAP;
・RIBOXXOL(登録商標)及びsiRNAからなる群から選択される少なくとも1つの治療活性核酸、を含み、前記少なくとも1つの標的化分子及び前記少なくとも1つの治療活性核酸がアビジンコアと結合している、前記送達システム。
vii) 核酸ベースの治療薬の標的化送達のための送達システムであって:
・アビジンコアとしてのニュートラビジン;
・標的化分子としての少なくとも1つのscFv(h-AM-1)(配列番号:2)抗体単鎖可変断片(scFV)―リンカーペプチド―BAPであって、前記BAPが
【化21】
であり、かつ前記リンカーペプチドが
【化22】
のアミノ酸配列を有するc-mycタグである、前記少なくとも1つのscFv(h-AM-1)(配列番号:2)抗体単鎖可変断片(scFV)―リンカーペプチド―BAP;
・治療活性核酸としての少なくとも1つの分子RIBOXXOL(登録商標)、を含み、前記少なくとも1つの標的化分子及び前記少なくとも1つの治療活性核酸が、アビジンコアと結合している、前記送達システム。
viii) 核酸ベースの治療薬の標的化送達のための送達システムであって:
・アビジンコアとしてのニュートラビジン;
・標的化分子としての少なくとも1つのscFv(MR1.1)(配列番号:3又は配列番号:4)抗体単鎖可変断片(scFV)―リンカーペプチド―BAPであって、
前記BAPが
【化23】
であり、かつ前記リンカーペプチドが、
【化24】
のアミノ酸配列を有するc-mycタグである、前記少なくとも1つのscFv(MR1.1)(配列番号:3又は配列番号:4)抗体単鎖可変断片(scFV)―リンカーペプチド―BAP;
・治療活性核酸としての少なくとも1つの分子RIBOXXOL(登録商標)、を含み、前記少なくとも1つの標的化分子及び前記少なくとも1つの治療活性核酸が、アビジンコアと結合している、前記送達システム。
ix) 核酸ベースの治療薬の標的化送達のための送達システムであって:
・アビジンコアとしてのニュートラビジン;
・標的化分子としての少なくとも1つのscFv(h-AM-1)(配列番号:2)抗体単鎖可変断片(scFV)―リンカーペプチド―BAPであって:
前記BAPが
【化25】
であり、かつ前記リンカーペプチドが
【化26】
のアミノ酸配列を有するc-mycタグである、前記少なくとも1つのscFV(h-AM-1)(配列番号:2)抗体単鎖可変断片(scFV)―リンカーペプチド―BAP;
・治療活性核酸としての少なくとも1つの分子RIBOXXOL(登録商標)を含み、前記少なくとも1つの標的化分子及び前記少なくとも1つの治療活性核酸がアビジンコアと結合している、前記送達システム。
x) 核酸ベースの治療薬の標的化送達のための送達システムであって:
・アビジンコアとしてのニュートラビジン;
・標的化分子としての少なくとも1つのscFv(MR1.1)(配列番号:3又は配列番号:4)抗体単鎖可変断片(scFV)―リンカーペプチド―BAPであって、前記BAPが
【化27】
であり、;かつ前記リンカーペプチドが
【化28】
のアミノ酸配列を有するc-mycタグである、前記少なくとも1つのscFv(MR1.1)(配列番号:3又は配列番号:4)抗体単鎖可変断片(scFV)―リンカーペプチド―BAP;
・治療活性核酸としての少なくとも1つの分子RIBOXXOL(登録商標)、を含み、前記少なくとも1つの標的化分子及び前記少なくとも1つの治療活性核酸がアビジンコアと結合している、前記送達システム。
xi) 核酸ベースの治療薬の標的化送達のための送達システムであって:
・アビジンコアとしてのニュートラビジン;
・標的化分子としての少なくとも1つのscFv(h-AM-1)(配列番号:2)抗体単鎖可変断片(scFV)―リンカーペプチド―BAPであって、前記BAPが
【化29】
であり;かつリンカーペプチドが、
【化30】
のアミノ酸配列を有するc-mycタグである、前記少なくとも1つのscFv(h-AM-1)(配列番号:2)抗体単鎖可変断片(scFV)―リンカーペプチド―BAP;
・治療活性核酸としての少なくとも1つのsiRNA、を含み、前記少なくとも1つの標的化分子及び前記少なくとも1つの治療活性核酸がアビジンコアと結合している、前記送達システム。
xii) 核酸ベースの治療薬の標的化送達のための送達システムであって:
・アビジンコアとしてのニュートラビジン;
・標的化分子としての少なくとも1つのscFv(MR1.1)(配列番号:3又は配列番号:4)抗体単鎖可変断片(scFV)―リンカーペプチド―BAPであって、前記BAPが
【化31】
であり、;かつ前記リンカーペプチドが
【化32】
のアミノ酸配列を有するc-mycタグである、前記少なくとも1つの前記scFv(MR1.1)(配列番号:3又は配列番号:4)抗体単鎖可変断片(scFV)―リンカーペプチド―BAP;
・治療活性核酸としての少なくとも1つのsiRNA、を含み、前記少なくとも1つの標的化分子及び前記少なくとも1つの治療活性核酸がアビジンコアと結合している、前記送達システム。
xiii) 核酸ベースの治療薬の標的化送達のための送達システムであって:
・アビジンコアとしてのニュートラビジン;
・標的化分子としての少なくとも1つのscFv(h-AM-1)(配列番号:2)抗体単鎖可変断片(scFV)―リンカーペプチド―BAPであって、前記BAPが
【化33】
であり;かつ前記リンカーペプチドが、
【化34】
のアミノ酸配列を有するc-mycタグである、前記少なくとも1つのscFv(h-AM-1)(配列番号:2)抗体単鎖可変断片(scFV)―リンカーペプチド―BAP;
・治療活性核酸としての少なくとも1つのsiRNA、を含み、前記少なくとも1つの標的化分子及び前記少なくとも1つの治療活性核酸がアビジンコアと結合している、前記送達システム。
xiv) 核酸ベースの治療薬の標的化送達のための送達システムであって:
・アビジンコアとしてのニュートラビジン;
・標的化分子としての少なくとも1つのscFv(MR1.1)(配列番号:3又は配列番号:4)抗体単鎖可変断片(scFV)―リンカーペプチド―BAPであって、前記BAPが
【化35】
であり、;かつ前記リンカーペプチドが
【化36】
のアミノ酸配列を有するc-mycタグである、前記少なくとも1つのscFv(MR1.1)(配列番号:3又は配列番号:4)抗体単鎖可変断片(scFV)―リンカーペプチド―BAP;
・治療活性核酸としての少なくとも1つのsiRNA、を含み、前記少なくとも1つの標的化分子及び前記少なくとも1つの治療活性核酸がアビジンコアと結合している、前記送達システム。
【0062】
項目xi)~xiv)の複合体において、前記siRNAは好ましくはmal-PPI-siRNAデンドリプレックス中で、最も好ましくはmal19-PPIグリコデンドリマー中で複合体形成している。
【0063】
さらに最も好ましくは、項目xi)~xiv)の複合体に含まれるsiRNAは、
【化37】
から選択される。
【0064】
本発明のさらに好ましい実施態様において、項目i)~xiv)のうちのいずれか1つ記載の送達システムは、
a) 1つの抗体単鎖可変断片及び3つの治療活性核酸、又は
b) 2つの抗体単鎖可変断片及び2つの治療活性核酸、又は
c) 3つの抗体単鎖可変断片及び1つの治療活性核酸、を含む。
【0065】
さらに好ましくは、項目i)~xiv)のいずれか1つ記載の送達システムは、上記構成要素a)、b)、及びc)の混合物を含んでもよく、ここで構成要素b)は前記混合物中で統計学的に主要な存在比率(main share)を形成する。
【0066】
さらなる実施態様において、本発明は:
a) scFv-BAP-ビオチンコンジュゲートを調製する工程;
b) scFv-BAP-ビオチンコンジュゲートをアビジン、ニュートラビジン、又はストレプトアビジンからなるアビジンコアとともにインキュベートする工程であって、scFv-BAP-アビジン又はscFv-BAP-ニュートラビジン又はscFv-BAP-ストレプトアビジン複合体が形成される、前記工程;
c) 治療活性核酸-ビオチンコンジュゲートを加え、scFv-BAP-アビジン又はscFv-BAP-ニュートラビジン又はscFv-BAP-ストレプトアビジン複合体をビオチン化治療活性核酸とともにインキュベートする工程;及び
d) ビオチン化治療活性核酸のscFv-BAP-アビジン又はscFv-BAP-ニュートラビジン又はscFv-BAP-ストレプトアビジン複合体のアビジン、ニュートラビジン、又はストレプトアビジンとの結合による、送達システムの形成、を含む本発明の送達システムの組立て方法を提供する。
【0067】
方法工程a)~d)の順番は一般に交換可能である。しかしながら、方法工程a)~d)は上記の順番で実施することが本発明に従って好ましい。
【0068】
上記送達システムについて記載された利点及び有利な実施態様は、上記事項を参照するように送達システムの組立て方法に等しく適用される。
【0069】
生体分子、例えば本発明の抗体単鎖断片及び治療活性核酸の部位特異的モノビオチン化は、任意の従来法によって実施することができる。
【0070】
ビオチン化はタンパク質及び他の高分子にビオチンを結合させるプロセスである。ビオチン化試薬は第一級アミン、スルフヒドリル、カルボキシル、及び糖質を含む特定の官能基又は残基を標的化するために利用可能である。紫外(UV)光への曝露に際して非特異的に反応する光反応性ビオチン化合物も利用可能であり、これを用いることによりビオチン化可能な分子の範囲が広くなる。異なる官能基特異性を有する様々なビオチン化試薬は、標的高分子を不活性化させない試薬を選択することを可能とするため、きわめて有用である。官能基特異性に加え、細胞の内部又は外部の異なる微小環境に対するビオチン化に焦点を当てた異なる溶解特性を有するビオチン化試薬が利用可能である。切断可能な、又は可逆的なビオチン化試薬を用いると、ビオチン結合タンパク質からビオチン化分子を特異的に溶出させることが可能となる。これらの試薬の多様性はアビジン-ビオチン化学のための適用の範囲を実質的に拡大させる。ビオチン及びアビジンの間の結合形成は非常に速く、いったん形成されると極限的pH、温度、有機溶媒、及び他の変性剤による影響を受けない。ビオチン化は最も一般的には化学的手段を通じて実施されるが、酵素的方法も利用可能である。
【0071】
本発明による抗体単鎖断片のビオチン化については、インビトロ及びインビボの両方で実施可能な酵素的アプローチが好ましい。特に、細菌ビオチンリガーゼ及び外因的に発現された対象タンパク質を共発現させる酵素的方法、及び発現させたタンパク質をビオチンアクセプターペプチドを保持するように改変し、化学的方法よりも均一なビオチン化(部位特異的ビオチン化)を提供する酵素的方法が好ましい。最も好ましくは、本発明では酵素的天然機構、すなわち大腸菌の酵素BirAを使用して、正確なビオチン修飾を達成する。BirAの天然の基質はビオチンカルボキシルキャリアタンパク質(BCCP)であり、少なくとも75残基を標的タンパク質に融合させることを必要とする。しかしながら、ファージディスプレイ選択によりAviTag(ビオチンアクセプターペプチド、BAPとしても知られる)の開発が可能となり、これはBirAの基質としてBCCPよりも優れているが、わずか15アミノ酸の長さであるため、タンパク質の部位特異的酵素的ビオチン化を受けやすい部位の範囲を伸長させる。大腸菌酵素BirAリガーゼの基質である他のBAPは:
【化38】
(X1=任意のアミノ酸;及び
X2=L、V、I、W、F、又はYを除く任意のアミノ酸である);
【化39】
からなる群から選択される。
【0072】
大腸菌ビオチン・リガーゼ(BirA)を用いた酵素的ビオチン化はビオチンをBAPに共有結合により結合させる際に高度に特異的となり、均一な産物を高収量で得る。BAPは、都合よく標的タンパク質のN末端、C末端、又は露出したループに遺伝学的に付加することができる。BirAは、哺乳動物及び無脊椎システムのサイトゾル、分泌経路中で、及び細胞表面で基質ペプチドを特異的にビオチン化することができる。精製タンパク質のビオチン化は、生化学及び細胞生物学の広範囲にわたる領域において適用されている。BirAによる標識の重要な進歩は、電子顕微鏡検査のためのその使用である。大腸菌又は他の種由来のビオチンリガーゼはペプチドタグに可逆的ストレプトアビジン結合のためのデスチオビオチン又は生物直交反応(bio-orthogonal reaction)のための官能基:ケト、アジド、及びアルキン基を含む類似体を含む、ビオチン類似体を連結することもできる。ストレプトアビジンの操作は、制御原子価(例えば一価のストレプトアビジン、mSA)を有する特定のバリアントにおいてBirA標識の有用性を拡張する際に重要であり、ビオチンコンジュゲートの組立ての正確な制御を可能にする。
【0073】
本発明の治療活性核酸、好ましくはdsRNAのビオチン化は、任意の従来の方法を使用して実施することができる。この場合、dsRNAの化学的末端モノビオチン化が好ましい。
【0074】
本発明の好ましい実施態様において、本発明の送達システムの組立ては、モル比scFv:アビジン:dsRNAが2:1:2で起こる(ここで、scFv及びdsRNAがビオチン化されている)。
【0075】
さらに好ましい実施態様では、本発明の送達システムに含まれる治療活性核酸は、RIBOXXOL(登録商標)又はsiRNAである。
【0076】
治療活性核酸がsiRNAである場合、本発明の送達システムの組立て方法は、好ましくは
a) マルトース-PPI-ビオチンコンジュゲートを調製する工程;
b) 該マルトース-PPI-ビオチンコンジュゲートを該scFv-BAP-アビジン又はscFv-BAP-ニュートラビジン又はscFv-BAP-ストレプトアビジン複合体とともにインキュベートする工程であって、該マルトース-PPIが陽イオン電荷を有する、前記工程;
c) 該マルトース-PPI-ビオチン複合体を該scFv-BAP-アビジン又はscFv-BAP-ニュートラビジン又はscFv-BAP-ストレプトアビジン複合体のアビジン、ニュートラビジン、又はストレプトアビジンと結合させる工程;
d) 別個に、マルトース-PPIをsiRNAとともにインキュベートする工程であって、弱い陰イオン電荷を有するマルトース-PPI-siRNAデンドリプレックスが形成される、前記工程;
e) 工程c)から得られる複合体を工程d)の該マルトース-PPI-siRNAデンドリマーとともにインキュベートする工程;及び
f) イオン相互作用によってアビジン/ニュートラビジンコアと結合したscFv-BAP,マルトース-PPI-ビオチン/マルトース-PPI-siRNAデンドリマーを含む、腫瘍に標的化させた多要素集合体(polyplexes)を形成させる工程、を含む。
【0077】
工程a)~f)の順序は一般に、交換可能である。しかしながら、本発明に従い、工程a)~f)を上記の順序で実施するのが好ましい。
【0078】
工程f)の腫瘍を標的とする多要素集合体は、治療活性核酸がsiRNAによって代表される本発明による送達システムの実施態様を表す。工程f)の多要素集合体の形成は、好適にはイオン相互作用によって起こる。
【0079】
ビオチン化されたscFv-BAP及びmal19-PPI-ビオチンは、1:1~4:1の化学量論量で、好ましくは2:1の化学量論量で、アビジンとの安定複合体を形成する。
【0080】
先に本発明の送達システムについて論じたように、マルトース-PPIは、好ましくはmal19-PPIである。さらに好ましくは、最終的な多要素集合体におけるscFv-BAP:アビジン又はニュートラビジン又はストレプトアビジン:mal19-PPI-ビオチン:mal19-PPI :siRNAのモル比は、2:1:1:4:1である。
【0081】
本発明はさらに本発明の方法によって得ることができる核酸ベースの治療薬の標的化送達のための送達システムに関する。
【0082】
核酸ベースの治療薬の標的化送達のための送達システムは、少なくとも1つの医薬として許容し得る担体又は希釈剤と一緒に医薬組成物にさらに含むことができる。
【0083】
医薬組成物は、従来技術、例えば「レミントン:薬学の科学と実践(The Science and Practice of Pharmacy)」、第21版, Gennaro, 編, Mack Publishing Co., Easton, PA, 2005において開示される技術に従って、医薬として許容し得る担体又は希釈剤並びに任意の他の公知の補助剤及び賦形剤を用いて製剤化することができる。
【0084】
医薬として許容し得る担体又は希釈剤並びに任意の他の公知の補助剤及び賦形剤は、選択された本発明の送達システム及び選択された投与様式に対し好適なものとするべきである。医薬組成物の担体及び他の成分の適合性は、抗原結合に際する本発明の選択された送達システム又は医薬組成物の所望の生物学的特性への重大な負の影響の欠如(例えば、実質的な影響より小さい(10%以下の相対的阻害、5%以下の相対的な阻害など))に基づいて決定する。
【0085】
本発明の医薬組成物は、医薬組成物に含めるのに好適な希釈剤、充填材、塩、緩衝剤、界面活性剤(例えば、非イオン性界面活性剤、例えばTween-20又はTween-80 )、安定化剤(例えば、糖又はタンパク質を離れたアミノ酸)、保存料、組織定着剤、可溶化剤及び/又は他の材料を含むこともできる。
【0086】
本発明の医薬組成物の活性成分の実際の投薬レベルは、特定の患者、組成物及び投与様式に対する所望の治療反応を成し遂げるのに効果的である活性成分の量を得るように変更することができる。選択された投薬レベルは利用される本発明の特定の組成物又はそのアミドの活性を含む様々な薬物動態因子、投与経路、投与時間、利用される特定の送達システムの排出速度、治療の継続時間、利用されている特定の組成物と併用される他の薬物、化合物及び/又は材料、治療を受ける患者の年齢、性別、体重、状態、全身の健康及び過去の病歴、医学分野で周知の同様の因子に応じて決定する。
【0087】
医薬組成物は、任意の好適な経路及び様式によって投与することができる。インビボ及びインビトロでの本発明の送達システムの好適な投与経路は、当技術分野で周知であり、当業者によって選択され得る。
【0088】
一実施態様において、本発明の医薬組成物は、非経口的に投与する。
【0089】
本明細書で使用する語句「非経口投与」及び「非経口的に投与されて」は、通常注射による腸内及び外用投与以外の投与様式を意味し、表皮、静脈内、筋肉内、動脈内、クモ膜下腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、腱内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、クモ膜下、脊椎内、頭蓋内、胸腔内、硬膜外及び胸骨内の注射及び輸液を含む。
【0090】
一実施態様において、本発明の医薬組成物は、静脈内若しくは皮下注射又は輸液によって投与される。
【0091】
医薬として許容し得る担体は本発明の送達システムと生理的に適合する任意かつ全ての好適な溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤、酸化防止剤及び吸収遅延剤などを含む。
【0092】
本発明の医薬組成物において利用され得る好適な水性及び非水性担体の例は、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、エタノール、ブドウ糖、多価アルコール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)並びにそれらの好適な混合物、植物油、例えばオリーブ油、トウモロコシ油、落花生油、綿実油、及びゴマ油、カルボキシメチルセルロースコロイド溶液、トラガカントゴム、及び注射可能有機エステル、例えばオレイン酸エチル、並びに/又はさまざまな緩衝剤を含む。他の担体は、医薬分野において周知である。
【0093】
医薬として許容し得る担体は、無菌の注射可能な溶液又は分散液の即座の調製のための無菌水性溶液又は分散液及び無菌の粉末を含む。医薬活性物質のためのそのような媒体及び作用剤の使用は、当技術分野において公知である。任意の従来の媒体又は作用剤が作用中の送達システムと適合しない場合を除く限りにおいて、本発明の医薬組成物においてそれらを使用することが意図される。
【0094】
適当な流動性は、例えば、コーティング材料(例えばレシチン)を使用することにより、分散液の場合必要な粒径を維持することにより、及び界面活性剤を使用することにより、維持することができる。
【0095】
本発明の医薬組成物は、医薬として許容し得る酸化防止剤、例えば(1) 水溶性酸化防止剤、例えばアスコルビン酸、システイン塩酸塩、亜硫酸水素ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなど;(2) 脂溶性酸化防止剤、例えばパルミチン酸アスコルビル、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、α-トコフェロールなど;及び(3) 金属キレート剤、例えばクエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸なども含み得る。
【0096】
本発明の医薬組成物は、等張化剤、例えば糖、多価アルコール、例えばマンニトール、ソルビトール、グリセロール、または塩化ナトリウムを組成物に含むこともできる。
【0097】
本発明の医薬組成物は医薬組成物の有効期間又は有効性を強化することができる、選択する投与経路に適当な1以上の補助剤、例えば保存料、湿潤剤、乳化剤、分散剤、保存料又は緩衝剤 を含むこともできる。本発明の送達システム、例えばインプラント、経皮パッチ及びマイクロカプセルに入れられた送達システムを含む制御放出製剤は、送達システムを急速な放出から保護する担体を用いて調製することができる。そのような担体はゼラチン、モノステアリン酸グリセリル、ジステアリン酸グリセリル、生物分解性、生体適合性のポリマー(例えばエチレン酢酸ビニル)、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸を単独で若しくはワックスと合わせたもの、又は当技術分野で周知の他の材料を含み得る。そのような製剤の調製のための方法は、当業者に一般に公知である。例えば「持続制御放出薬物送達システム(Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems)」、J. R. Robinson編, Marcel Dekker, Inc., New York, 1978を参照されたい。
【0098】
一実施態様において、本発明の抗体は、インビボでの適切な分配を保証するように製剤化することができる。非経口投与のための医薬として許容し得る担体は、無菌の注射可能な溶液又は分散液の即座の調製のための無菌水性溶液又は分散液及び無菌の粉末を含む。医薬活性物質のためのそのような媒体及び作用剤の使用は、当該技術分野で公知である。任意の従来の媒体又は作用剤が送達システムと適合しない場合を除く限りにおいて、本発明の医薬組成物におけるその使用を意図する。
【0099】
注射用医薬組成物は、典型的に無菌かつ製造及び保存の条件下で安定でなくてはならない。組成物は、高い薬物濃度に好適な溶液、ミクロエマルジョン、リポソーム又は他の秩序立った構造として製剤化されることができる。担体は、例えば水、エタノール、多価アルコール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、及びポリエチレングリコールなど)、並びにそれらの好適な混合物、植物油、例えばオリーブ油、並びに注射可能有機エステル、例えばオレイン酸エチルを含む水性又は非水性溶媒又は分散媒でもよい。適切な流動性は、例えば、コーティング、例えばレシチンを使用すること、分散の場合必要な粒径を維持すること、及び界面活性剤を使用することにより、維持することができる。多くの場合に、等張化剤(例えば、糖、多価アルコール、例えばグリセロール、マンニトール、ソルビトール、又は塩化ナトリウムを組成物中に含むことが、好ましい。注射可能な組成物の長期にわたる吸収は、吸収を遅延させる作用剤、例えば、モノステアリン酸塩及びゼラチンを組成物に含むことによってもたらされ得る。無菌の注射可能な溶液は送達システムを1又は組合せの成分、例えば上で列挙される成分を含む必要な量の適切な溶媒中に組み込み、続いて必要に応じて滅菌微量濾過を行うことよって調製することができる。通常、分散液は、送達システムを基礎分散媒及び例えば上で列挙される成分のうちの必要な他の成分を含む無菌ビヒクルに組み込むことによって調製する。無菌の注射可能な溶液の調製のための無菌粉末の場合、調製方法の例は、真空乾燥及び凍結乾燥(freeze-drying)(凍結乾燥(lyophilization))によりその事前に滅菌濾過された溶液から活性成分+任意の添加された所望の成分の粉末を得ることである。
【0100】
無菌の注射可能な溶液は必要な量の送達システムを上で列挙される1又は組合せの成分を含む適切な溶媒中に組み込み、続いて必要に応じて滅菌微量濾過を行うことよって調製することができる。通常、分散液は、送達システムを基礎分散媒及び上で列挙される成分のうちの必要な他の成分を含む無菌ビヒクルに組み込むことによって調製する。無菌の注射可能な溶液の調製のための無菌粉末の場合、調製方法の例は、真空乾燥及び凍結乾燥(凍結乾燥)によりその事前に滅菌濾過された溶液から活性成分+任意の添加された所望の成分の粉末を得ることである。
【0101】
治療の上記方法の投薬レジメンおよび使用は、最適所望の反応(例えば、治療反応)を提供するために調整される。治療状況の緊急性によって示される通り、例えば、単一のボーラスを投与することができ、いくつかの分割した用量を経時的に投与することができ、又は用量を比例して低下させたり、若しくは増加させたりすることができる。非経口組成物は、投与を容易にし、かつ投薬を均質に行うための単位剤形で製剤化することができる。本明細書で使用する「単位剤形」は、治療すべき対象への単位投薬量として適している物理的に別々の単位を指す;各単位は、必要な医薬担体に関連して所望の治療効果を発生するために算出された、所定量の送達システムを含む。本発明の単位剤形の仕様は、(a) 送達システムに特有の特性及び達成すべき特定の治療効果、並びに(b) そのような治療用送達システムの調剤分野に固有の個体の感受性に関する制限によって要求され、かつ直接的に依存する。
【0102】
本発明の送達システムのための有効な投薬量及び投薬レジメンは、治療すべき疾患又は状態に依存して、当業者によって決定することができる。本発明の抗体の治療有効量のための例示的、非限定的な範囲は、約0.1~10mg/kg/体重、例えば約0.1~5mg/kg/体重、例えば約0.1~2mg/kg/体重、例えば約0.1~1mg/kg/体重、例えば約0.15、約0.2、約0.5、約1、約1.5又は約2mg/kg/体重とする。
【0103】
当該技術分野の通常の知識を有する医師又は獣医師は、必要とされる医薬組成物の有効量を容易に決定し、処方することができる。例えば、医師又は獣医師は、所望の効果が達成されるまで、所望の治療効果を達成し、段階的に投薬量を増加させるために必要とされるレベルより低いレベルの医薬組成物において利用される標的化生物コンジュゲートの用量で開始することができる。一般に、本発明の組成物の好適な一日用量は、治療効果を発生するのに効果的な最も低い用量である送達システムの量である。そのような有効用量は、一般に上記の因子に依存する。投与は例えば静脈内、筋肉内、腹腔内、又は皮下とすることができ、例えば標的部位の近傍に投与することができる。所望の場合、医薬組成物の有効な一日用量は、任意に単位剤形において、1日を通じて、適当な間隔で別個に投与する2つ、3つ、4つ、5つ、6つ又はそれ以上の副用量(sub-doses)として投与することができる。本発明の送達システムは単独で投与することができるのに対し、送達システムは上記医薬組成物として投与することが、好ましい。
【0104】
治療用であるsiRNAは、研究目的又は細胞の変化をもたらすために送達することができる。siRNAのインビボ送達は、研究試薬のために、及び様々な治療、診断、標的検証、ゲノム発見、遺伝子工学及び薬ゲノム適用に有用である。本明細書において、腫瘍細胞の内在性遺伝子発現の阻害をもたらすsiRNA送達を開示する。ポリヌクレオチドの送達後に測定したレポーター(マーカー)遺伝子の発現レベルは、他のポリヌクレオチドの送達後、遺伝子発現が同程度のレベルとなることの合理的な予想を示す。当業者が有益であると考える治療のレベルは、疾患ごとに異なる。送達ポリマーの量(用量)及び投与することとなるsiRNA-コンジュゲートは、経験的に決定することができる。ここで、遺伝子発現の有効なノックダウンは、ビオチン-免疫コンジュゲートの製剤化において行う0.8~10mg/kg体重を使用して達成することができる。
【0105】
本明細書で使用するインビボとは、生物体内で起こること、より具体的には部分的又は死んでいる多細胞生物の組織とは対照的に、全ての生きている多細胞生物(動物)の、例えば哺乳動物の生きている組織の内部又は表面で実施されるプロセスを意味する。
【0106】
核酸ベースの治療薬の標的化送達のための送達システム及び本発明の医薬組成物は、特に増殖性疾患の治療に有用である。従って、本発明では、増殖性疾患の治療において使用するための本明細書に記載の核酸ベースの治療薬及び/又は医薬組成物の標的化送達のための送達システムを提供する。
【0107】
さらなる実施態様において、本発明は、それを必要とする対象に本明細書に記載の核酸ベースの治療薬及び/又は医薬組成物の標的化送達のための治療上有効な用量の送達システムの投与を含む増殖性疾患の治療方法に関する。
【0108】
なおさらなる実施態様において、本発明は、増殖性疾患の治療のための薬剤の調製のための核酸ベースの治療薬及び/又は医薬組成物の標的化送達のための送達システムの使用に関する。
【0109】
前記増殖性疾患は、例えば多形神経膠芽腫(GBM)のような原発性腫瘍又は転移性癌である。
【0110】
より好ましい実施態様では、前記増殖性疾患は、小細胞肺癌、小細胞腎癌、乳癌、前立腺癌、膀胱癌、及び悪性神経膠腫から選択される。
【0111】
さらに好ましい実施態様では、核酸ベースの治療薬の標的化送達のための送達システム及び/又は医薬組成物は、他の抗腫瘍薬物を用いる併用療法において使用する。好ましい他の抗腫瘍薬物は、EGF受容体阻害剤、例えば細胞増殖を減速させ、又は停止させるチロシンキナーゼ阻害剤又はモノクローナル抗体である。本発明の併用療法に使用する好適なチロシンキナーゼ阻害剤は、例えば肺癌の治療のためのゲフィチニブ、エルロチニブ、アファチニブ、及びオシメルチニブ、並びに大腸癌の治療のためのセツキシマブから選択される。
【0112】
本発明の併用療法に使用する好適なモノクローナル抗体は、例えばCimaVax-EGF、EGFRの主要リガンドであるEGF自体に対する抗体を生産するEGFを標的化する活性ワクチンであり、それによって、増殖刺激のEGFR依存的な癌を排除する。
【0113】
さらなる好適な他の抗腫瘍薬物は、TLR3アンタゴニストである。
【0114】
(発明を実施するための最良の形態)
従来技術のこれらの障壁を克服するために、治療用siRNA分子の標的化送達のために単鎖抗体断片(scFv)により導かれる多要素集合体システムが、トランスフェクション不能なマルトース修飾第4世代ポリ-プロピレン-イミン-ビオチン(mal-PPI-ビオチン)をベースとして開発された。新エピトープEGFRvIIIを発現している腫瘍細胞への選択的なsiRNA送達のために、scFv(MR1.1)を、新規なカップリング戦略によって利用し、コンジュゲートした。より具体的には、ビオチン化アクセプターペプチド(BAP)配列と融合する改変scFv(MR1.1)が機能的なモノビオチン化scFvに至っているビオチンリガーゼBirA発現293T細胞において生産できることができることが示された。多要素集合体形成は定義された化学量論量でscFv-BAP生体分子をニュートラビジン及びモノビオチン化mal19-ビオチンと順次複合体形成させ、同時に望まない架橋を回避することによって達成された。非特異的な対照scFv-BAPにコンジュゲートされた多要素集合体と比較して、生成された腫瘍特異的多要素集合体は、EGFRvIII陽性の標的細胞と結合して、選択的受容体仲介型エンドサイトーシスによってのみsiRNAを送達することができた。これらの結果は、そうでなければ内在化されない多要素集合体の受容体仲介型取り込みが、癌のsiRNA療法を改善する有望な手段であり、タンパク質リガンドのナノ粒子との定義された高親和性のカップリングのための新規な戦略を導入することを示唆する。
【0115】
他の樹枝状糖ポリマー[23-25]のインビトロトランスフェクション効率と比較すると、マルトースを有する陽イオン性PPIのより大きな表面範囲がトランスフェクション不能のデンドリプレックスをもたらすことが判明した。
【0116】
これらのトランスフェクション不能なデンドリプレックスは、受容体仲介型エンドサイトーシスのみによって治療用siRNAを送達するために腫瘍特異的抗体をコンジュゲートすることによって、標的化送達戦略に好適であることがさらに示され得る。
【0117】
この戦略の概念の立証のために標的化可能な受容体モデルとして、上皮増殖因子受容体バリアントIII(EGFRvIII)陽性の腫瘍細胞に焦点を当てた。そうでなければナノ粒子の完全性に負に影響を及ぼし得るリガンドのサイズを減らすために、完全抗体よりもむしろ単鎖抗体断片を選択した。単鎖可変断片(single chain fragment variable)(scFv)MR1.1は、この新エピトープに高い親和性で結合して、野生型EGFRと交差反応せず、腫瘍における優れた保持を示した[30、31]。
【0118】
リガンドを正しく配向し、その活性を保持するナノ粒子とカップリングさせることはもう1つの重大な問題であるので、新規なモジュール式ビオチン-アビジン-複合体形成システムも開発された。このため、組換えモノビオチン化MR1.1 (scFv(MR1.1)-BAPと呼ぶ)を利用した。この特異的モノビオチン化により、定義された化学量論量を有する多要素集合体を生成することが可能となった。scFvによって仲介されるそうでなければトランスフェクション不能であった第4世代マルトース修飾PPI/siRNAデンドリプレックスのEGFRvIII陽性の腫瘍細胞に対する再方向づけ(図1)のほか、細胞内在化を改善するための癌細胞の表面上の少なくとも2つの受容体を架橋することによって「クラスター形成効果」及びエンドサイトーシスを誘導するために、少なくとも2つの抗原-結合部位を提供した。これはビオチン-アビジン複合体形成システムを使用しているsiRNAの腫瘍細胞特異的な送達の第1の例であり、当該システムはそのモジュール式の組成から、さらに他のリガンド又はscFvのために利用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0119】
(図面の説明)
以下の図は、さまざまな本発明の態様を例示するために提供する。そのためには、図のいくつかは、概略図面を含んで、必ずしも縮尺通りに描画されるというわけではない。
【0120】
図1】受容体仲介型エンドサイトーシスによってペイロードを細胞のエンドソーム区画に送達するビオチン免疫コンジュゲートである本発明の概略図を示す。ペイロードは、エンドソームのパターン認識受容体(PRR)を活性化させるために使用することができる。免疫コンジュゲートは、異なるペイロード、例えば治療活性のあるdsRNAであるRIBOXXOL(登録商標)を含むことができる。免疫コンジュゲートは、腫瘍細胞の表面上の受容体(PSCA、EGFRvIII)と結合する。表面分子の架橋は、免疫コンジュゲートの膜を含む小胞(エンドソーム)中への内在化(エンドサイトーシス)をもたらす。Toll様受容体3(TLR3)を発現する他のエンドソームとの融合後、免疫コンジュゲートは、TLR3と結合し、従って細胞炎症性反応を活性化させ、かつ/又はアポトーシスを誘導する。
図2】ペイロード、例えばsiRNA又はDNAを受容体仲介型エンドサイトーシスによって細胞の細胞質区画へと送達することを可能にする担体分子を含む免疫コンジュゲートの概略図を示す。担体は、後期エンドソーム/リソソームの酸性化に応じて、「プロトンスポンジ」効果を仲介し、ペイロードを細胞の細胞質に放出する。
図3】ビオチン化mal19-PPIが4:1の化学量論量のアビジンと結合することを示しているHABAアッセイを示す。
図4】293T細胞表面の漸増濃度のmal7-PPI、mal19-PPI、mal33-PPI及びmal90-PPIによる細胞傷害性効果を示す。
図5】デンドリプレックスをもたらすマルトース修飾PPIのsiRNAとの複合体形成を示す。図5aは、異なるマルトース修飾PPI-G4分子を有するsiRNAの複合体形成を示すアガロースゲル保持アッセイを図示する。複合体を形成していないsiRNAを、対照として使用した(C)。図5bは、Cy3標識siRNAの漸増量のデンドリマーとの結合を示す蛍光分極分析を示す。
図6】PPI-G4のマルトース遮蔽を増加させることにより、なおsiRNAを放出することができるトランスフェクション不能なmal19-PPI/siRNA及びmal33-siRNAデンドリプレックスがもたらされることを実証する。図6aは、異なるmal-PPI/siRNA比率で調製される様々なデンドリプレックスのノックダウン効率を示す。図6bは、siRNAをmal19-PPI/siRNAデンドリプレックスから放出することができることを実証するヘパリン-放出アッセイを示す。
図7】コドン最適化されたhuBirAコンストラクトの概略図を示し、293ThuBirA細胞のこのビオチン-リガーゼの発現を実証する。
図8】精製された単鎖抗体断片scFv(AM1)(配列番号:1)、scFv(h-AM1)(配列番号:2)、scFv(MR1.1)を示すクマシー染色した15% SDS-PAGEミニゲルを示す。これらはプロピオニバクテリウム・シャーマニイトランスカルボキシラーゼ(PSTCD)-BAP(P-BAPと命名する)(配列番号:3)又はBio-タグから誘導したBAP(配列番号:4)を含む。
図9】マウスscFv(AM1)-BAP(配列番号:1)及びヒト化scFv(h-AM1)-BAP(配列番号:2)のKD値の計算値を示す。誘導元のマウスscFvと比較すると、ヒト化scFvはPSCAへの親和性の向上を示す。
図10】抗体によって架橋した後のPSCA及びEGFRvIII受容体の内在化を示す。
図11】scFv(MR1.1)-P-BAP(配列番号:3)の部位特異的なビオチン化、そのEGFRとの結合、及びその4:1の化学量論量のアビジンとの複合体形成を示す。
図12】モノビオチン化されたscFv (h-AM1)-BAP(配列番号:2)及びscFv(MR1.1)-BAP(配列番号:4)分子が安定に4:1の化学量論量のアビジンと結合することを示す。
図13】siRNAを含む多要素集合体アセンブリ及び原子間力顕微鏡検査を使用した多要素集合体の分析のためのプロトコルを示す。スキームは、構成要素の定義された化学量論量での、多要素集合体生成の連続した工程を示す。多要素集合体の完全性及びサイズは、原子間力顕微鏡検査を使用して調査した。アセンブリ後24時間での多要素集合体のAFM分析を図示する。
図14】scFv(MR1.1)-P-BAP(配列番号: 4)多要素集合体を使用した、siRNAのEGFRvIII陽性細胞への標的化送達を示す。
図15】293TEGFRvIII/siLuc細胞を標的とした、EGFRvIII特異的多要素集合体を使用しているノックダウン実験を示す(a)。当該ノックダウン実験はフィリピンIIIを使用したカベオラ仲介型エンドサイトーシスを遮断することによって阻害することができる(b)。
図16】本発明の送達システムのdsRNAを含むアセンブリ及び原子間力顕微鏡検査を使用した複合体の分析のためのプロトコルを示す。スキームは、構成要素の定義された化学量論量での、複雑な生成の連続した工程を示す。最終的な複合体中でのscFv-(h-AM1)-BAP(配列番号: 4)、アビジン、RIBOXXOL(登録商標)-ビオチンのモル比は、2:1:2である。多要素集合体の完全性及びサイズは、原子間力顕微鏡検査を使用して調査した。
図17】scFv(h-AM1)-BAP(配列番号: 2)及びTL3アゴニスト(RIBOXXOL(登録商標))を含んでいるPSCA特異的ビオチン-免疫コンジュゲートの受容体仲介型エンドサイトーシスを実証する。
図18】scFv(h-AM1)-BAP(配列番号: 2)及びRIBOXXOL(登録商標)を含むBICを使用した、PSCSA陽性細胞におけるTLR3アゴニストの標的化送達、及びNFκBの活性化、及びアポトーシスの誘導を示す。
図19】scFv(MR1.1)-BAP(配列番号: 4)及びRIBOXXOL(登録商標)を含むBICを使用した、EGFRvIII陽性細胞におけるTLR3アゴニストの標的化送達及びNFkappaBの活性化を示す。
図20】huBirAビオチンリガーゼのヌクレオチド配列(配列番号: 26)及びアミノ酸配列(配列番号: 27)を示す。
図21】scFv(AM1)-P-BAPのアミノ酸配列(配列番号: 1)及びヒト化scFv(h-AM1)-BAPのアミノ酸配列(配列番号: 2)を示す。重鎖可変部及び軽鎖可変部の相補性決定領域は、ボックスでマーキングしてある。
図22】scFv(MR1.1)-P-BAP(配列番号: 3)及びscFv(MR1.1)-BAP(配列番号: 4)のアミノ酸配列を示す。
【実施例
【0121】
(本発明の実施例)
(実施例1)
(マルトース修飾PPI及びモノビオチン化されたmal19-PPI分子の合成)
四ホウ酸ナトリウム十水和物、ベンゾトリアゾール-1-イル-オキシ-トリス-(ジメチルアミノ)-ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(BOP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)及び塩化ナトリウム(NaCl)は、Sigma Aldrichから購入した。塩酸(Tritisol(登録商標))は、Merck KGaAから購入した。α-ビオチン-ω-(プロピオン酸)ドデカエ(dodecae)(エチレングリコール)(PEG12B)は、Iris Biotech社から得た。トリエチルアミン(NEt3) (D-(+)-マルトース一水和物、ボラン-ピリジン錯体) (THF中8M)(BH3・Pyr)は、Flukaから購入した。第4世代ポリ(プロピレンイミン)(PPI-G4、7168 g/mol)デンドリマーは、DAB-Am64としてSyMO-Chem(Eindhoven, Netherlands)によって供給された。
【0122】
100 mg PPI-G4、13 mgビオチン-PEG12-COOH(PEG12B、844.0 g/mol)、31 mgのBOP、442.28 g/mol、及び19 μlトリエチルアミン(Et3N、0.73 g/mL、101.19 g/mol)をDMSO(10 mL)中に取った。溶液を、2日間にわたり室温で撹拌した。粗生成物は、2日間にわたる脱イオン水中での透析によって精製した。凍結乾燥により、黄色がかった粘性物質を、得た。
生成物は、固体として定量的に産生された。マルトース修飾第4世代PPIの合成は文献に記載の通り実施した[72]。 PPI-G4のマルトース修飾及びビオチン化PPI-G4デンドリマーについては、それぞれマルトース一水和物(360.31 g/mol)及びボラン-ピリジン錯体(BH3×Pyr、8M)を、ホウ酸ナトリウム緩衝液(25 ml、0.1 M)中に取った。mal7-PPIの合成については、100 mgのPPI-G4、64,6 mgマルトース一水和物、及び20 μl BH3×Pyr、mal19-PPIの合成については、129,1 mgマルトース一水和物、及び50 μl BH3×Pyr、mal33-PPIの合成については、100 mgのPPI-G4、258.3 mgのマルトース一水和物、及び90 μl BH3×Pyr、並びにmal90-PPIの合成については、 112 mgのPPI-G4、6,457 mgのマルトース一水和物、及び2.24 mlのBH3×Pyrを使用した。溶液は、7日間にわたり50℃で撹拌した。粗生成物は、不純物の捕捉を確実にするために、4日間にわたる脱イオン水を用いた透析によって、二回精製した。凍結乾燥により固体生成物を得た。マルトシル化の程度は、過去に記載されている1H NMRアプローチによって確認した[72]。
【0123】
mal19-PPI分子当たりのPEG12-Biotinリガンドの数の決定は、4'-ヒドロキシアゾベンゼン-2-カルボン酸(HABA)置換アッセイによって測定した。連続的に、漸増モル比でmal19-PPI-ビオチンを、50 μl PBS (Thermo Fisher Scientific社、Waltham、USA)中の3.68mM HABA (Thermo Fisher Scientific社、Waltham、USA)及び25 μgアビジン(Sigma-Aldrich)を含むHABA/アビジン溶液に加えた。ほぼ30分の各インキュベーションサイクルの後、値が少なくとも15秒一定のままとなるまで、500 nmでの吸光度を測定した(Synergy 2(商標)、BioTek、Winooski、USA)。非ビオチン化mal19-PPIを、陰性対照として含めた。図3は、ビオチン化mal19-PPIが安定して完全な4:1の化学量論量のアビジンと結合することを示す。
【0124】
(実施例2)
(マルトース修飾PPIの毒性)
特に癌治療のためのsiRNA担体として反復して陽イオン性PPIデンドリマーを適用する場合、それらの毒性は1つの主要な問題である。従って、漸増濃度のmal7-PPI、mal19-PPI、3mal-33PPI又はmal90-PPIとともにインキュベートした 293T細胞の細胞生存度を調べた。2×104 293T細胞を96ウェルプレートに播種し、70%コンフルエントとなるまで補充されたDMEM中で増殖させ、その後様々な濃度のmal7-PPI、mal19-PPI、mal33-PPI、及びmal90-PPIを加えた。24時間後、アラマーブル―溶液(Thermo Fisher Scientific社、Waltham、USA)をアッセイのすべてのウェルに加え(200 μl培地 当たり20 μl)、プレートをさらに5時間インキュベートした。陽性対照として、細胞を、5% Triton X-100(Sigma-Aldrich)によって溶解した。未処理の細胞を、陰性対照として含めた。その後、還元されたAlamarBlueの蛍光強度は、蛍光イメージングシステム(Synergy 2(商標)、BioTek、Winooski、USA)及び560EX nm/590EM nmフィルタ設定を使用して測定した。細胞表面のPPI-グリコデンドリマーの細胞毒性を未処理の対照に対して正規化した。当該対照を100%生存度に設定した。図4は、周縁第一級アミノ表面基にマルトースユニットを枝状に連結させることによる遮蔽の程度がより高いPPI-G4グリコデンドリマーの細胞毒性が減少したことを実証する。mal7-PPI及びmal19-PPIについて算出したLD50値は、それぞれ3 μM及び1.6 μMであった。mal90-PPI及びmal33-PPIデンドリマーは、80 μMの濃度でさえ、無毒であった。
【0125】
(実施例3)
(蛍光分極及びアガロースゲルシフトアッセイを使用したデンドリプレックス形成の分析)
mal-PPI/siRNAデンドリプレックスは、複合体形成緩衝液(10mM Hepes(PAA、Dartmouth、USA) 、150mM NaCl (pH 7.4; Merck KGaA、Darmstadt、Germany)中に適当な量のmal-PPIを1 μg siRNAを含む溶液に加えることにより、様々なモル比(1:1~40:1)で調製した。
30分のインキュベーションの後、確立したデンドリプレックスを、6×ローディング緩衝液(Thermo Fisher Scientific社、Waltham、USA)を含む3%アガロースゲルに装荷した。
混合物は0.5×TAE(トリス(Carl Roth GmbH & Co. KG、Karlsruhe、Germany)/酢酸/EDTA(Merck KGaA、Darmstadt、Germany))緩衝液中、200Vで30分間分離した。siRNAバンドは紫外線(UV)イメージングシステム(AlphaImager(登録商標)、Alphainnotech、San Leandro、USA)を使用して可視化した。
【0126】
図5aは、ホタルルシフェラーゼ(siLuc3; 配列番号:28)(Eurofins MWG Biotech)に特異的なsiRNAの様々なパーセンテージの表面アミンのマルトース修飾により修飾されたPPI分子との複合体形成を示す。複合体を形成していないsiRNAを、対照(C)として使用した。siRNAは、臭化エチジウムによって可視化された。mal7-PPI、mal19-PPI、及びmal33-PPIとの複合体形成に成功すると、それらの負電荷が中和され、ゲル中へのそれらの移動が防止されたが、mal90-PPIは完全に、siRNAとの結合能を失った。
【0127】
mal-PPIのCy3標識siLuc3 siRNA(MW 13,916、Eurofins MWG Biotech)とのデンドリプレックスを形成する能力も、蛍光分極(FP)を使用して評価した。簡潔に説明すると、0.8 μg siRNAが10mM HEPES pH 7.4によって緩衝した20 μlの150mMのNaCl中に溶解し、optiPlate黒色96ウェルプレート(PerkinElmer Technologies、Walluf、Germany)において播種し、その後Synergy 2(商標)システムで570 nmでのFPを測定した。非標識siLuc3は、対照(ブランク)としての役割を果たした。続いて、siRNAを上述の緩衝液に溶解した20 μlマルトース修飾PPIと混合し、デンドリマーを図5bに図示するsiRNA比率にした。室温での30分のインキュベーションの後、サンプルのFPをSynergy 2(商標)プレートリーダーを使用して、再び測定した。ΔFP値は、式:
ΔFP =(FP1-ブランク1)-(FP0-ブランク0)
(式中、FP0はsiLuc3-Cy3のFP値であり、かつFP1はマルトース修飾PPIデンドリマーと混合した後に得たFP値である)によって算出した。図5bは、Cy3標識siRNAの漸増量のmal7-PPI、mal-19-PPI、及びmal-33-PPIデンドリマーとの結合を実証する蛍光分極分析を示す。ここでも、mal90-PPIはsiRNAを結合することに完全に失敗した。デンドリプレックスとの複合体形成は、mal7-PPI、mal19-PPI、及びmal33-PPIについてのPPI/siRNA比率が等モルとなるときにはすでに開始し、ゼロとして設定するCy3標識siRNA単独と比較して、ΔFP値は初め減少した。
【0128】
(実施例4)
(マルトース修飾PPIのsiRNAトランスフェクション効率)
受容体仲介型エンドサイトーシスのみによる腫瘍細胞に対する選択的なsiRNAの送達のためのマルトース修飾PPI担体の開発のため、マルトース置換による表面アミンの遮蔽の増加により、生体適合性の向上[25]の他に、残存するプロトン化され得るアミン基を介したsiRNAのデンドリプレックスへの複合体形成がなお可能となり、同時に正味の陽イオン電荷の損失がmal-PPI/siRNAデンドリプレックスの非特異的な取り込みを妨害するはずであるとの仮説が立てられた。続く標的化装置、例えば腫瘍特異的scFv分子のアビジン-ビオチン複合体形成を介したマルトース修飾PPI-(モノ)ビオチンとのカップリングにより、同族の細胞受容体を発現する腫瘍細胞にのみsiRNAが取り込まれることが可能となるはずである(図2を参照されたい)。mal7-PPI、mal19-PPI、及びmal33-PPIデンドリマーを用いたトランスフェクション実験について、920 μlのD10培地(10% v/v熱非働化FBS(Gibco) 、 10mM HEPES(Gibco) 、100 U ml-1ペニシリン、及び0.1mg ml-1ストレプトマイシン(Gibco)を補充したDMEM培地)中の7×104個の293TEGFRvIII/c-Luc細胞)を12ウェルプレートに三連で播種した。複合体形成について、0.8 μg Luc3-siRNA(siLuc3:
【化40】
MW 13,300、Eurofins MWG Biotech、Ebersbach、Germany) を、10mM HEPES(pH 7.4)によって緩衝された40 μl 150mM NaCl溶液に溶解させ、PPI/siLuc3質量比を5:1、20:1、90:1、及び180:1としてmal-PPI(2倍量の蒸留水中の10mg/mlのストック溶液、同緩衝液で40 μlに調整されている)と混合した。mal-PPIの非特異的な毒性に対するルシフェラーゼノックダウン効率を正規化するため、赤色蛍光タンパク質1(siRFP1、
【化41】
Eurofins MWG Biotech)に特異的な対照siRNAを使用して、相当する複合体を発生させた。ボルテックスした後に、混合物を細胞のトランスフェクションの前に、室温で30分間インキュベートした。siRNA送達のための陽性対照として、供給元(Polyplus-トランスフェクションSA、Illkirch-Graffenstaden、France)のプロトコルに従い、Interferin(商標)トランスフェクション試薬を使用して細胞にそれぞれ、0.8 μg siLuc3及びsiRFP1をトランスフェクションした。
【0129】
製造業者のプロトコルに従って、Promega(Mannheim、Germany)から入手したルシフェラーゼアッセイキットを使用して、細胞培養培地を事前に交換することなくトランスフェクション開始から72時間後に、全ての試料のルシフェラーゼ活性を測定した。簡潔に説明すると、培地を吸引し、細胞を100μl 溶解緩衝液中で溶解させた。溶解物をPBS中で20倍希釈し、10 μlの分量を96ウェルプレートに移した。化学発光は、ウェルに25 μlの基質を加える自動ディスペンサを使用するSynergy 2(商標)システムにより即時に決定された。異なるデンドリプレックス及び多要素集合体の特異的ルシフェラーゼノックダウン効率は、式:
ノックダウン効率(%) = 100-RLUsiLuc3/RLUsiRFP1 × 100
を使用しているそれらの対応するsiRFP処理対照に対して正規化した。
【0130】
図6aは、さまざまなデンドリプレックスのノックダウン効率が異なるmal-PPI/siRNA比率で準備されることを示す。mal-PPIのマルトースグラフトの増加は、293TEGFRvIII/cLuc標的細胞のトランスフェクション効率の減少と相関していることを実証する。最も優れたノックダウン効率は、mal7-PPIを使用したデンドリプレックスにより得た。しかしながら、使用した10:1~90:1の質量比は、それぞれトランスフェクション物の1.47 μM~13.2 μMのmal7-PPI量を構成し、重度の細胞毒性を伴っていた。トランスフェクション溶液中の180:1の質量比は(26 μM 7mal-PPIに換算される(translating))、完全な細胞死をもたらした。デンドリマー対siRNA質量比を180:1としてmal19-PPIを使用するときに(9.1 μM mal19-PPIに相当する)、同じ効果が観察された。mal33-PPIを使用する場合、siRNAトランスフェクションより、使用した最も高いデンドリマー対siRNAの質量比180:1(トランスフェクションアッセイにおいて3.3 μM mal33-PPIを構成する)でさえ、RNAi効果はごくわずかなものであることが明らかとなった。重要なことに、293TEGFRvIII/cLuc細胞への細胞傷害性効果は観察されず、これは図3において図示するmal33-PPIデンドリマーの細胞傷害性プロファイルに一致する。
【0131】
siRNAの送達のための免疫コンジュゲートの開発に向けて、mal19-PPIはデンドリマー対siRNA質量比(90:1)で若干のノックダウン効率を仲介することが依然としてできるため、このデンドリマーを選択した。その結果、mal19-PPIの残存するプロトン化され得るアミン基がエンドソームからのsiRNAの放出を可能とすることが実証された。siRNAをmal19-PPIデンドリプレックスから放出することができ、このことは図6bにおいて図示される。5:1及び10:1の質量比を有するmal19-PPI/siRNAデンドリプレックスは、室温で15分間低分子ヘパリンと競合させると、siRNAを放出することが実証される。免疫コンジュゲートの開発のために、5:1(siRNAトランスフェクションのための0.4 μM未満のmal19-PPI)のPPI/siRNAのモル比を含むmal19-PPI siRNAデンドリプレックスを選択した。それは、この分子比が細胞の生存度に影響を及ぼさず、トランスフェクション不能なsiRNA担体の基準を満たしたためである。
【0132】
(実施例5)
(ビオチン化タンパク質の生産のための293TBirA細胞株の生成)
ビオチン化scFvの生産のために、293ThuBirAプロデューサ細胞株は、コドン最適化されたビオチンリガーゼの形質導入によって生成した。コドン最適化されたN末端Igκリーダーペプチド及びC末端VSV-G-タグを含むビオチンリガーゼBirAのヌクレオチド配列を化学合成した(Eurofins MWG Operon Germany、Ebersberg、Germany)。コドン最適化されたN末端Igκリーダーペプチド及びC末端VSV-タグを含むビオチンリガーゼhuBirAのアミノ酸配列は、配列番号:30の配列からなる。形質導入された細胞をハイグロマイシンBによって選択し、加湿インキュベータ内で37℃、5% CO2の下D10培地又は100 μM N-(+)ビオチニル-6-アミノヘキサン酸(C6-ビオチン、Sigma-Aldrich、St. Louis、USA)をさらに含むD10培地中で維持した。図7は、huBirA導入遺伝子の概略図を表し、かつモノクローナル抗VSV-G(Sigma)を使用したウェスタンブロット分析を示し、293TBirA細胞においてVSV-Gエピトープタグ付加ビオチンリガーゼが発現していることを実証している。huBirAビオチンリガーゼは分泌経路中に分泌されるため、主に細胞培養上清(SN)に見出される。
【0133】
(実施例6)
(組換えscFvの生産及びビオチンアクセプターペプチドを含むビオチン化scFv)
プロピオニバクテリウム・シャーマニイトランスカルボキシラーゼ由来のビオチンアクセプターペプチド(P-BAPと呼ぶ)のDNA配列は、Pin Point XA-1プラスミド(Promega)から誘導され、プライマー
【化42】
を使用したPCRによって増幅した。ApaI制限を使用することにより、PCR生成物をSecTag2B-scFv(AM1)[34]にライゲーションし、前立腺特異的幹細胞抗原(PSCA)に特異的な単鎖抗体断片AM1を含む真核生物発現ベクターpSecTag2B-scFv(AM1)-P-BAPを生成した。EGFRvIII特異的scFv(MR1.1)[31]のヌクレオチド配列を、化学合成した(Eurofins MWG Operon Germany、Ebersberg、Germany)。Bgl II-scFv(AM1)-HindIII MR1.1-断片は、HindIII/BamHI制限及びライゲーションを使用したpSecTag2B-scFv(AM1)-P-BAPのscFv(AM1)に置き換わり、その結果pSecTag2B-scFv(MR1.1)-P-BAPを得た。scFv(MR1.1)-BAPのヌクレオチド配列は、BioTag
【化43】
に由来する、23のアミノ酸BAPを含み、かつN末端でIgκリーダー配列と、C末端でc-Myc-タグ及びHis6と融合しており、これを化学合成し(Eurofins MWG Operon Germany、Ebersberg、Germany)、適当なAgeI及びNotI制限部位を使用してpHATtrick-puroベクターにライゲーションして、結果としてpHATtrick-scFv-(MR1.1)BAP-puroRを得た。ヒト化h-AM1を、ヒトIg生殖系列遺伝子のフレームワーク領域にマウスAM1の相補性決定領域(CDR)を移植することによって、インシリコで設計した。マウスAM1のCDRは、Northらの文献[73]に記載されたアルゴリズムを使用して特定され、ヒト生殖系列遺伝子のIgBLASTアラインメントを使用した移植に好適なIg生殖系列遺伝子を特定するために使用した[74][75]。scFv(AM1)可変軽鎖CDRを、IGKV1-39*01生殖系列遺伝子に移植した。AM1 VHのC末端に好適なフレームワーク領域が特定されなかったので、可変重鎖はIGHV3-23*03生殖系列遺伝子にCDR1及びCDR2を移植することによって部分的にヒト化するのみとした。追加工程において、部分的ヒト化AM1重鎖を、IGHV1-NL1*01生殖系列遺伝子に移植して、その結果IGHV3-23*03及びIGHV3-23*03に由来するフレームワーク領域を含む完全ヒト化AM1可変重鎖を得た。N末端でIgκリーダー配列と、並びにC末端でc-Myc-タグ、Bio-タグ、及びHis6と融合している完全ヒト化PSCA特異的scFv(h-AM1)のヌクレオチド配列を化学合成し(Eurofins MWG Operon Germany、Ebersberg、Germany)、AgeI及びNotI制限部位を介してpHATtrick-puroにライゲーションして、結果としてpHATtrick-scFv(AM1)-BAP-puroRを得た。
【0134】
組換えscFv、scFv-P-BAP、及びscFv-BAPを、それぞれ一過的にトランスフェクションした293T及び293ThuBirAプロデューサ細胞において発現させた。細胞培養上清を集めた後に、組換え単鎖抗体は、Ni-NTAアフィニティクロマトグラフィーキット(Qiagen、Hilden、Germany)を使用して精製した。scFv-BAPは、製造業者のプロトコルに従って単量体アビジンカラム(Thermo Fisher Scientific、Rockford、USA)を備えるアビジン-ビオチンアフィニティクロマトグラフィーシステムを使用して、さらに精製した。カラムに結合したscFvを、350mMイミダゾール及び150mM NaClを含むPBS又は2 mMのD-ビオチンを含む溶離緩衝液によって溶出した。溶出されたタンパク質について、PBSに対する透析を2時間にわたり2回、24時間にわたり1回行い、4℃で一晩置いた。組換えタンパク質を一定分量に小分けして、使用まで-80℃で保存した。組換えタンパク質は、SDS-PAGEを使用して分析した。図8は、プロピオニバクテリウム・シャーマニイトランスカルボキシラーゼ(PSTCD)-BAP(P-BAPと命名する)又はBio-タグ(BAPと命名する)を含む精製組換え単鎖抗体断片scFv(AM1)、scFv(h-AM1)、scFv(MR1.1)を示すクマシー染色した15% SDS-PAGEミニゲルを示す。BAPはscFvのC末端でモノビオチン化されることができ、このことは免疫コンジュゲートを組み立てるための正確な化学量論量にとってきわめて重要である。
【0135】
(実施例7)
(ヒト化scFv(AM1)の結合親和性)
結合親和性を決定するために、マウスscFv(AM1)及びヒト化scFv(h-AM1)を、293TPSCA細胞とともに漸減濃度でインキュベートした。抗myc-PE-二次抗体による検出の後、MFIをMACSQuant Cytometer(Miltenyi Biotech)及びFlowJoソフトウェアを使用して決定し、かつKd値はPRISMソフトウエアプログラムによって算出した。図9は、KD値算出のためのグラフを表す。
【0136】
(実施例8)
(PSCA及びEGFRvIII受容体内在化)
EGFRvIII及びPSCA内在化の研究のために、293TEGFRvIII及び293TPSCA細胞は、それぞれ、トリプシン/EDTA溶液(Sigma/Aldrich)によって、慎重に剥離した。1mg/mlのBSA/PBS中での繰返し洗浄の後、2x105細胞に、新鮮な培地を供給して、96穴丸底のウェル中に播種した。受容体の架橋は、同族の受容体に特異的な1 μgの誘導元のscFvとともに4℃で1時間インキュベートし、続いてPBSによる徹底的な洗浄、及び0.5 μgのビオチン標識抗myc抗体(Miltenyi Biotech)による4℃で10分間の処理、続くPBSによる徹底的な洗浄、及び新鮮な培地の供給を行うことにより達成した。受容体の一価の結合を達成するために、293TEGFRvIII及び293TPSCA細胞をそれぞれscFv(MR1.1)及びscFv(AM1)のみとともに4℃で1時間インキュベートし、続いてPBSによる徹底的な洗浄及び新鮮な培地の供給を行った。37℃、加湿CO2インキュベータ中での2h、4h、8h、24h、及び48h後の架橋された受容体のための抗ビオチン-PE抗体(Miltenyi Biotech)を利用したインキュベーション、並びに受容体の一価の結合を有する細胞のための4℃で10分間のビオチン化抗myc抗体でのインキュベーションとそれに続く4℃、10分間の抗ビオチン-PE抗体染色の後に、EGFRvIIIの表面発現をモニタリングした。すべての得られたデータは、FlowJoソフトウェアバージョン7.6.5(TreeStar社、Ashland、USA)によって分析した。図10は、受容体架橋によるPSCA及びEGFRvIIIの内在化のFACS分析の結果を示す。図10aは、293TPSCA細胞表面のPSCAの架橋の効果を示す。図10bは、293TEGFRvIII細胞表面のEGFRvIIIの架橋の効果を示す。驚くべきことに、表面受容体のscFv(h-AM1)+抗myc抗体及びscFv(MR1.1)+抗myc抗体との架橋により、それぞれ時間依存的なPSCA及びEGFRvIIIの内在化がもたらされる一方、scFvによる一価の結合は両方の実験において受容体内在化をほとんど誘導しない。
【0137】
(実施例9)
(scFv-BAPの部位特異的なビオチン化)
scFv(MR1.1)-P-BAPの同族の表面受容体の異所的な発現を有するEGFRvIII-293T標的細胞との結合を調べるために、それぞれ、2×105個の細胞を、1 μgの組換えscFv及びscFv-P-BAPとともにインキュベートした。結合した抗体は、抗myc/FITC抗体を使用してそれらのmycエピトープを介して、又は抗ビオチン/PE抗体(1:10; Miltenyi Biotec、Bergisch Gladbach、Germany)を使用してそれらのビオチン残基を介して検出した。二次抗体のみを用いて染色した細胞を、対照として含めた。追加の陰性対照として、異所的に発現された表面受容体を認識しなかったscFv(AM1)及びscFv(AM1)-P-BAPによる細胞の染色を含めた。少なくとも10,000個の染色した細胞は、フローサイトメトリー(MACSQuant、Miltenyi Biotec、Bergisch Gladbach、Germany)で測定して、FlowJoソフトウェアバージョン7.6.5(TreeStar社、Ashland、USA)によって分析した。
【0138】
図11は、組換えビオチン化scFv-(MR1.1)-P-BAPがEGFRvIII陽性の293TEGFRvIII細胞と結合することを示す。図11aは、scFv-(MR1.1)P-BAP、scFv(MR1.1)、scFv(AM1)及びscFv(AM1)-P-BAPで染色された293TEGFRvIII細胞のフローサイトメトリー分析を示す。この場合、AM1-抗体は、陰性対照としての役割を果たした。scFvの、及びscFv-P-BAPの結合は、二次抗myc-PE(上段及び中段のグラフの灰色のヒストグラム)によって可視化した。scFv-(MR1.1)BAPのビオチン化を確認するために、ビオチン-PE抗体を用いた追加の染色を実施した(下段のグラフの灰色のヒストグラム )。空白のヒストグラムは、二次抗体又はIgG-PEアイソタイプ対照のみを使用した対照染色を表す。図11bは、scFv(MR1.1)-P-BAP及びscFv(AM1)-P-BAPのウェスタンブロット分析を示す。組換えタンパク質は、SDS-PAGEを使用して分離し、誘導元の単鎖抗体は対照としての役割を果たした。ブロットを続いて剥がし、ビオチン抗体を用いた再探索を行った。scFv-P-BAPのみがビオチンによって修飾されているため、ビオチン抗体によって検出した。
【0139】
(実施例10)
(scFv-P-BAP及びscFv-BAPのアビジンとの複合体形成)
組換えビオチン化単鎖抗体の複合体形成は、ウェスタンブロット実験において調べた。このため、10.7 pmolの組換えscFv-P-BAP及びscFv-BAPは漸減量のアビジン分子(21.4 pmol~1.35 pmolの範囲にわたる)を用いて室温で30分間インキュベートした。これは、scFv(MR1.1)-P-BAPについて図11cに、scFv(MR1.1)-BAP及びscFv(h-AM1)-BAPについて図12に図示するように、2:1~1:8の範囲の様々なモル比のscFv(MR1.1)-BAP:アビジンを構成した。アビジン/scFv-BAP複合体は、非還元SDS-PAGEに付した。Westran PVDF膜(Whatman社、Dassel、Germany)の上のタンパク質転写の後、タンパク質がモノクローナルマウスc-myc特異的抗体(1:5,000、Invitrogen、Carlsbad、USA)及びHRP標識ウサギ抗マウス二次抗体(1:1,000; Dako、Glostrup、Denmark)によって、及び膜を色抜きした後にHRPコンジュゲートビオチン特異的抗体(1:8,000; Sigma-Aldrich、St. Louis、USA)によって検出した。膜は、Luminata Classico Western HRP基質(Merck Millipore、Darmstadt、Germany)及びイメージングシステムLAS3000(FujiFilm Europe、Dusseldorf、Germany)を使用して可視化し、文書化した。
【0140】
図11cは、scFv(MR1.1)-P-BAPのアビジンとの安定な複合体形成を実証するウェスタンブロット分析を示す。一定数のscFv(MR1.1)-P-BAPを漸減モル比のアビジンとともにインキュベートすると、scFv(MR1.1)-P-BAPのアビジンに対する比として1:1、2:1、4:1、及び8:1を得た。 scFv(MR1.1)-P-BAP及びscFv(MR1.1)-P-BAP-複合体は、myc抗体及び二次HRP結合抗マウス抗体を使用して検出した。その後、膜を色抜きし、HRP結合ビオチン抗体によって再探索した。全てのビオチン化scF(MR1.1)-P-BAP分子は、1:1~4:1のモル比でアビジンと効率的にコンジュゲートされた。予想通りに、scFv(MR1.1)-BAPのアビジンに対する8:1という高いモル比を用いると、外見上遊離scFv(MR1.1)分子の特徴を得た。
【0141】
図12は、モノビオチン化scFv (h-AM1)-BAP及びscFv(MR1.1)-BAP分子が安定してほぼ完全な化学量論量のアビジンと結合することを示す。アビジンを漸増モル比のscFv (h-AM1)-BAPとコンジュゲートして、ウェスタンブロットにおいて分析した。免疫コンジュゲートされた及び遊離のscFv-BAP分子を抗myc-又は抗ビオチン抗体によって検出した。図12aは、示されている漸減モル比のアビジンとともにインキュベートした一定数のscFv(MR1.1)-BAPを示す。図12bは、示されている漸減モル比のアビジンとともにインキュベートした一定数のscFv(h-AM1)-BAPを示す。アビジン/scFv(MR1.1)-BAP及びアビジン/scFv(MR1.1)-P-BAP-複合体を、myc抗体及びHRP結合抗マウス二次抗体を使用して検出した。膜を色抜きし、HRP結合ビオチン抗体によって再探索した。
【0142】
(実施例11)
(腫瘍特異的多要素集合体の構築及びサイズによる特性評価)
デンドリプレックスを、mal19-PPIをsiRNAと複合体形成緩衝液中4:1のモル比で4、1時間混合することにより生成させた。並行して、scFv(MR1.1)-P-BAP及びscFv(AM1)-P-BAPを、それぞれ2:1のモル比で含む1×複合体形成緩衝液中30分間、室温で、ニュートラビジン(Thermo Fisher Scientific社、Waltham、USA)を用いることにより、mal19-PPI-ビオチンとコンジュゲートさせた。図13に図示するように、scFv-P-BAP-アビジンコンジュゲートを、1:1のモル比のmal19-PPI-ビオチンとともに30分間、室温でインキュベートした。ニュートラビジンの残る結合に使われていないビオチン結合部位を室温で5分間0.3 mMのD-ビオチンにより飽和させた後、コンジュゲートを予め形成させたデンドリプレックスと混合し、多要素集合体を生成させた。結果として得たscFv-P-BAPのPPI-グリコデンドリマー及びsiRNAに対するモル比は2:5:1であった。多要素集合体のサイズ及び安定性は、インサイチュ原子間力顕微鏡検査によって分析した。このAFMのため、Siウェーハを、多要素集合体を吸着させる親水性表面を得るために、O2-プラズマで処理した。流体中のAFM測定(上記の通りに1 mlの溶液として製造した多要素集合体を使用する)は、Dimension ICON(Bruker-Nano、Santa Barbara、CA)による、ピークフォースタッピングモードで実施した。公称ばね定数が0.7 N/mかつ先端半径が5 nmである窒化ケイ素センサSCANASYST-FLUID+(Bruker-Nano)を、測定に使用した。粒径分布は、ソフトウェアNanoScope Analysis(Bruker-Nano)によって算出した。図13は凝集効果の欠如及び多要素集合体が製造から24時間後も依然として安定であることを実証する。多要素集合体の直径は110~444 nmの範囲に見いだされた。算出された複合体の平均径は150 nmである。
【0143】
(実施例12)
(EGFRvIII特異的多要素集合体の受容体仲介型エンドサイトーシス)
siRNA取り込みを可視化するために、2×105個の293TEGFRvIII及び293T野生型細胞を、Cyanin3 (Cy3)-標識多要素集合体とともに3時間培養した。その後、細胞を0.1% ヘパリン/PBS(Sigma-Aldrich Chemie社、St. Louis、USA)で洗浄し、フローサイトメトリー(MACSQuant)によって測定した。
【0144】
共焦点レーザー走査顕微鏡検査のため、カバーグラス表面で増殖させた6×105個の293TEGFRvIII細胞を、それぞれCy3標識scFv(MR1.1)-P-BAP-及びscFv-(AM1)P-BAP-多要素集合体とともにインキュベートした。24時間後、細胞膜及び核は、Texas Red(登録商標)-Xコンジュゲート-コムギ胚芽レクチン(WGA)及びHoechst(Invitrogen、Waltham、USA)を用い、製造業者のプロトコルに従って染色した。その後、スライドに1滴の標本化媒体(Vector Laboratories、CA、USA)中でカバーグラスを載せ、共焦点レーザー走査顕微鏡(LSM 510 Meta、Leica、Wetzlar、Germany)によって調べた。
【0145】
図14は、scFv(MR1.1)-P-BAPによって導かれる多要素集合体のEGFRvIII陽性細胞への標的化送達を示す。図14aはCy3標識siRNAを含むscFv(MR1.1)-P-BAPによって導かれる多要素集合体(暗いヒストグラム)で3時間処理した293TEGFRvIII(上段のヒストグラム)及び293Tの野生型細胞(下段のヒストグラム)を示す。対照として、Cy3標識siRNAを含み、かつscFv(AM1)-P-BAPとコンジュゲートされた非特異的多要素集合体を利用した(空白のヒストグラム)。内在化されたCy3標識siRNAは、フローサイトメトリーで測定した。293TEGFRvIII細胞は、scFv(MR1.1)-P-BAPを含む多要素集合体のみを内在化した。EGFRvIIIを欠いている293Tの野生型細胞は、Cy3シグナルを示さなかった。図14bは、scFv(MR1.1)-P-BAPを含む多要素集合体又はscFv(AM1)-P-BAPを含む陰性対照多要素集合体により24時間処理した293TEGFRvIII細胞の共焦点レーザー走査分析を示す。siRNAのCy3-シグナル(矢印を参照)は、EGFRvIII特異的なscFv(MR1.1)-P-BAP多要素集合体で処理される293TEGFRvIII細胞においてのみ見られる。差込み図は、細胞内部のCy3標識siRNAの拡大図を示す。
【0146】
(実施例13)
(EGFRvIII特異的多要素集合体を使用するEGFRvIII陽性細胞へのsiRNAの標的化送達)
EGFRvIII陽性細胞におけるscFv-P-BAPによって導かれた多要素集合体の特異的ノックダウンを評価するために、2×104の293TEGFRvIII/c-Luc細胞を、96ウェルプレートに三連で播種し、70%コンフルエントになるまで補充されたDMEM 200μl中で増殖させた。ルシフェラーゼ活性の決定の前に、様々なEGFRvIII特異的scFv(MR1.1)-p-BAPを含む多要素集合体又は結合しないscFv(AM1)-P-BAP-多要素集合体とともに、細胞を72hインキュベートした。RNAi陽性対照として、トランスフェクション試薬Interferin(登録商標)を使用して、細胞にsiLuc3をトランスフェクションした。内在化の経路を調べるために、エンドサイトーシス阻害剤である0.6 μg/mlフィリピンIII及び6 μg/mlクロルプロマジン(両方ともSigma Aldrich)を、細胞へのトランスフェクションの4時間前に追加した。非特異的な毒性(すなわちエンドサイトーシス阻害剤による)に対するルシフェラーゼノックダウン効率の正規化するために、赤色蛍光タンパク質に特異的な対照siRNA(siRFP1)を使用して比較用の複合体を生成させた。すべての試料のルシフェラーゼ活性は、上記の通りに細胞培養培地を事前に交換することなくトランスフェクションの開始から72時間後に測定した。多要素集合体の特異的ルシフェラーゼノックダウン効率は、式:
ノックダウン効率(%) = 100-RLUsiLuc3/RLUsiRFP1×100
を使用してそれらの対応するsiRFP処理対照に対して正規化した。図15aは、EGFRvIII特異的多要素集合体の受容体仲介型エンドサイトーシスによる293TEGFRvIII/cLuc細胞におけるルシフェラーゼのノックダウンを実証し、一方で293TEGFRvIII/cLuc細胞表面に存在しないPSCAを標的化している多要素集合体は効果を有さない。さらに、図15bは、EGFRvIII特異的多要素集合体の送達が主にFilipin IIIによって阻害されるEGRvIIIのカベオラ仲介型エンドサイトーシスを通じて仲介されることを実証する。
【0147】
(実施例14)
(dsRNA-送達及びサイズによる特性評価のための腫瘍特異的免疫コンジュゲートの構築)
TLR3アゴニストRiboxxol(登録商標)を含むBICは、室温で30分間PBS中2:1のモル比でモノビオチン化scFv-BAPを四量体ニュートラビジン分子と混合することにより生成させた。続いて室温で30分間1:2のモル比で、scFv-BAP-ニュートラビジンコンジュゲートに、Riboxxol(登録商標)を負荷した。ニュートラビジンのあらゆる残る結合に使われていないビオチン結合部位は、室温で5分間0.3 mM D-ビオチンによってブロッキングした。結果として得たニュートラビジン及びTLR3アゴニストに対するscFv-P-BAPのモル比は、2:1:2であった。多要素集合体のサイズ及び安定性は、インサイチュ原子間力顕微鏡検査によって分析した。このAFMのため、Siウェーハを、多要素集合体を吸着させる親水性表面を得るために、O2-プラズマで処理した。AFM測定は、実施例11に記載の通りに実施した。図16は進行中の凝集効果の不存在を実証し、ビオチン-免疫コンジュゲートは製造から24時間後も安定なままだった。TLR3アゴニストを含むBICの直径は、およそ42 nmの範囲に見出された。
【0148】
(実施例15)
(TL3アゴニスト(dsRNA)の標的化送達のためのPSCA特異的免疫コンジュゲートの受容体仲介型エンドサイトーシスの分析)
PSCA受容体仲介型エンドサイトーシスを介したRIBOXXOL(登録商標)取り込みを実証するために、RIBOXXOL(登録商標)dsRNAを1:2のモル比のmal20-PPI-FITCで標識した。実験のため、カバーグラス表面で増殖させた6×105個の293TPSCA細胞を、内在化されたBICを可視化するために、加湿CO2インキュベータ中37℃でRIBOXXOL(登録商標)及びscFv(h-AM1)-BAPを含むFITC標識BICで処理した。対照として、293TPSCA細胞をRIBOXXOL(登録商標)及び293TPSCA細胞と結合しないscFv(MR1.1)-BAPを含むFITC標識BICで処理した。24時間後、細胞膜及び核は、コムギ胚芽レクチン(WGA)のTexas Red(登録商標)-Xコンジュゲート及びHoechst(Invitrogen、Waltham、USA)を用い、製造業者のプロトコルに従って染色した。その後、スライドに1滴の標本化媒体(Vector Laboratories、CA、USA)中でカバーグラスを載せ、共焦点レーザー走査顕微鏡(LSM 510 Meta、Leica、Wetzlar、Germany)によって調べた。
【0149】
図17は、scFv(h-AM1)-BAPによって導かれるRIBOXXOL(登録商標)を含むBICの、293TPSCA細胞への標的化送達を示す。RIBOXXOL(登録商標)に対するFITC-シグナル (矢印を参照)は、scFv(h-AM1)-BAPを含む免疫コンジュゲートで処理した293TPSCA細胞においてのみ見られ、一方EGFRvIII特異的免疫コンジュゲートで処理される細胞においてFITC標識RIBOXXOL(登録商標)のシグナルは検出されない。
【0150】
(実施例16)
(TLR3アゴニストの標的化送達及びNFκBの活性化及びPSCSA陽性細胞におけるアポトーシスの誘導)
BIC送達システムの使用によるTLR3アゴニストRiboxxol(登録商標)のPSCA陽性細胞のエンドソーム区画への標的送達並びに結果として生じるNFκBの活性化及びアポトーシスの誘導を、293T-BlueTLR3/PSCAレポーター細胞を使用して調べた。200 μl HEKBlue検出培地中の50,000個の293T-BlueTLR3/PSCA細胞を96ウェルプレートに播種し、漸増濃度のRIBOXXOL(登録商標)及びscFv(h-AM1)-BAPを含むBICで処理し、又はPSCA陽性の標的細胞と結合するはずのないRiboxxol(登録商標)及びscFv(MR1.1)-BAPを含むBICで処理した。レポーターSEAPの分泌の誘導、すなわちHEKBlue培地中でのその酵素活性を、24時間後にELISAリーダーにおいて655 nmで測定した。内在化の経路を調べるために、エンドサイトーシス阻害剤である0.6 μg/mlフィリピンIII及び6 μg/mlクロルプロマジン(両方ともSigma Aldrich)を、細胞へのトランスフェクションの4時間前に追加した。分析のために比較実験を実施し、細胞死をアネキシンV及びヨウ化プロピジウム標識細胞のFACS支援測定によって調べた。図18aに図示するように、RIBOXXOL(登録商標)を含む抗PSCA免疫コンジュゲートによる293T-BlueTLR3/PSCA細胞の処理により、驚くべきことに細胞炎症の誘導(NF-κBの活性化)に至った。活性化のプラトーには、抗PSCA免疫コンジュゲートの濃度25 nMで到達する。選択的な抗PSCA免疫コンジュゲートのIC50値は、12.5 nMである。それらのscFv部分で293T-BlueTLR/PSCA細胞と結合することができない抗EGFRvIII免疫コンジュゲートは、弱い免疫反応を引き起こすのみであることに留意されたい。これはおそらくTLR3-アゴニストを含む免疫コンジュゲートの細胞膜に局在するTLR3との相互作用によるものであろう。図18bは、フィリピンIII及びクロルプロマジンによるエンドサイトーシスの阻害を示す。0.3 μg/mlフィリピンIII(カベオラ仲介型エンドサイトーシスを阻害する)により、レポーターSEAPの誘導がわずかに弱まり、31 μg/mlクロルプロマジンにより、クラスリン仲介型エンドサイトーシスが効果的に阻害された。図18cは、アネキシンV-FITC/ヨウ化プロピジウムで染色された細胞のFACS支援分析によって得られた定量的結果である、アポトーシス誘導の結果を示す。処理細胞のアポトーシスレベルは、処理群における誘導アポトーシスレベルから基礎アポトーシスレベルを減算することによって、未処理の293T-BlueTLR3/PSCA細胞に対して正規化した。抗PSCA免疫コンジュゲートによる処理は、アポトーシス又は死細胞の顕著な増加をもたらす。驚くべきことに、抗EGFRvIII免疫コンジュゲートはアポトーシスを誘発せず、「オフターゲット」効果を除外することができる。
【0151】
(実施例17)
(TLR3アゴニストの標的化送達及びEGFRvIII陽性細胞におけるNFκBの活性化)
BIC送達システムの使用によるTLR3アゴニストRiboxxol(登録商標)のエンドソーム区画への標的送達及び結果としてのNFκBの活性化も、標的細胞株として293T-BlueTLR3/EGFRvIIIを使用して、実証した。実験は、実施例16に記載の通りに実施した。実験設定の唯一の違いは、RIBOXXOL(登録商標)及びscFv(MR1,1)-BAPを含むEGFRvIII特異的BICの標的として、293T-BlueTLR3/EGFRvIII及び誘導元の293TBlueTLR3細胞株を使用したことであった。その逆に、scFv(h-AM1)-BAPは、293T-BlueTLR3/EGFRvIII及び293TBlueTLR3細胞と結合し得ない陰性対照としての役割を果たした。
【0152】
図19aに図示するように、RIBOXXOL(登録商標)を含む抗EGFRvIII免疫コンジュゲートによる293T-BlueTLR3/EGFRvIII細胞の処理は、NF-κBの活性化をもたらした一方、RIBOXXOL(登録商標)及びscFv(h-AM1)を含むBICはほとんどNFκBを活性化させなかった。活性化のプラトーには、抗PSCA免疫コンジュゲートの濃度22 Mで到達する。選択的な抗PSCA免疫コンジュゲートのIC50値は、およそ10 nMである。図19bはRIBOXXOL(登録商標)を含む抗EGFRvIII BIC並びに抗PSCA BICは誘導元の293TTLR3細胞と結合し得ず、NFκBを活性化させなかったことを実証する。
【0153】
(参考文献)
【化44】
本件出願は、以下の態様の発明を提供する。
(態様1)
治療活性ペイロードの標的化送達のための送達システムであって:
・アビジン、ニュートラビジン、又はストレプトアビジンからなるアビジンコア;
・抗体単鎖可変断片(scFv)及びアプタマーからなる群から選択される少なくとも1つの標的化分子;並びに
・タンパク質、ペプチド、及び治療活性核酸からなる群から選択される少なくとも1つの治療活性ペイロードを含み、
・該少なくとも1つの標的化分子及び該少なくとも1つの治療活性ペイロードが、該アビジンコアと結合しており;
・該抗体単鎖可変断片が、以下の構造を有するコンストラクト中に含まれており:
抗体単鎖可変断片―BAP;又は
抗体単鎖可変断片―リンカー―BAP;かつ
・このコンストラクトが、BAPでモノビオチン化されている、前記送達システム。
(態様2)
a. 1つの抗体単鎖可変断片及び3つの治療活性核酸、又は
b. 2つの抗体単鎖可変断片及び2つの治療活性核酸、又は
c. 3つの抗体単鎖可変断片及び1つの治療活性核酸、
を含む、態様1記載の送達システム。
(態様3)
前記抗体単鎖可変断片が、scFv(AM1)(配列番号:1)、scFv(h-AM-1)(配列番号:2)、及びscFv(MR1.1)(配列番号:3又は配列番号:4)から選択される、態様1又は2記載の送達システム。
(態様4)
前記BAPが、
(化1)
(ここで、X 1 =任意のアミノ酸;及び
X 2 =L、V、I、W、F、又はYを除く任意のアミノ酸である);
(化2)
からなる群から選択される、態様1~3のいずれか1項記載の送達システム。
(態様5)
前記リンカーペプチドが:
・2つのアミノ酸、例えばGS;
・6つのアミノ酸;及び
・10個のアミノ酸、例えば
(化3)
のアミノ酸配列を有するc-mycタグ
からなる群から選択される、態様1~4のいずれか1項記載の送達システム。
(態様6)
前記治療活性ペイロードが、CpGオリゴヌクレオチド、ssDNA、dsDNA、ssRNA、又はdsRNA、好ましくはdsRNAからなる群から選択される治療活性核酸、態様1~5のいずれか1項記載の送達システム。
(態様7)
前記治療活性ペイロード、好ましくは治療活性核酸が、ビオチン化されている、態様1~6のいずれか1項記載の送達システム。
(態様8)
前記治療活性核酸が、グリコデンドリマーを含む担体中に含まれているsiRNAである、態様1~7のいずれか1項記載の送達システム。
(態様9)
前記グリコデンドリマーが、トランスフェクション不能なヌクレオチド担体であり、該グリコデンドリマーが、siRNAと複合体形成する際に1つのビオチン分子を含む、好適にはmal19-PPIに基づくマルトース-ポリプロピレン-イミン(mal-PPI)デンドリマーを含む、態様8記載の送達システム。
(態様10)
少なくとも1つの抗体単鎖断片を介して、癌細胞の細胞膜に又はその中に特異的に発現する表面抗原と結合する、態様1~9のいずれか1項記載の送達システム。
(態様11)
a) scFv-BAP-ビオチンコンジュゲートを調製する工程;
b) 該scFv-BAP-ビオチンコンジュゲートをアビジン、ニュートラビジン、又はストレプトアビジンからなる前記アビジンコアとともにインキュベートする工程であって、scFv-BAP-アビジン又はscFv-BAP-ニュートラビジン又はscFv-BAP-ストレプトアビジン複合体が形成される、前記工程;及び
c) 治療活性核酸-ビオチンコンジュゲートを加え、かつ該scFv-BAP-アビジン又はscFv-BAP-ニュートラビジン又はscFv-BAP-ストレプトアビジン複合体をビオチン化治療活性核酸とともにインキュベートする工程;及び
d) 該ビオチン化治療活性核酸を該scFv-BAP-アビジン又はscFv-BAP-ニュートラビジン又はscFv-BAP-ストレプトアビジン複合体のアビジン、ニュートラビジン、又はストレプトアビジンと結合させることにより、前記送達システムを形成させる工程、を含む態様1~10のいずれか1項記載の送達システムの組立て方法。
(態様12)
前記治療活性成分がsiRNAであり、かつ該siRNAを予め形成されたscFv-BAP-アビジン/ニュートラビジン/ストレプトアビジン複合体とコンジュゲートさせる、態様11記載の方法であって:
a) マルトース-PPI-ビオチンコンジュゲートを調製する工程;
b) 該マルトース-PPI-ビオチンコンジュゲートを該scFv-BAP-アビジン又はscFv-BAP-ニュートラビジン又はscFv-BAP-ストレプトアビジン複合体とともにインキュベートする工程であって、該マルトース-PPIが陽イオン電荷を有する、前記工程;
c) 該マルトース-PPI-ビオチン複合体を該scFv-BAP-アビジン又はscFv-BAP-ニュートラビジン又はscFv-BAP-ストレプトアビジン複合体のアビジン、ニュートラビジン、又はストレプトアビジンと結合させる工程;
d) 別個に、マルトース-PPIをsiRNAとともにインキュベートする工程であって、弱い陰イオン電荷を有するマルトース-PPI-siRNAデンドリマーが形成される、前記工程;
e) 工程c)から得られる複合体を工程d)の該マルトース-PPI-siRNAデンドリマーとともにインキュベートする工程;及び
f) アビジン/ニュートラビジンコアと結合したscFv-BAP,マルトース-PPI-ビオチン/マルトース-PPI-siRNAデンドリマーを含む、腫瘍標的化多要素集合体を形成させる工程、を含む、前記方法。
(態様13)
・チロシンキナーゼ阻害剤又はモノクローナル抗体;
・ゲフィチニブ、エルロチニブ、アファチニブ、及びオシメルチニブ及びセツキシマブ;並びに
・CimaVax-EGF
から選択されるEGF受容体阻害剤を任意にさらに含む、態様1~10のいずれか1項記載の送達システムを含む医薬組成物。
(態様14)
家族性高コレステロール血症などの代謝性疾患、ウイルス感染症、及び多形神経膠芽腫(GBM)のような原発性腫瘍又は転移性癌などの増殖性疾患の治療における使用のための態様1~10のいずれか1項記載の送達システム又は態様1~10のいずれか1項記載の送達システムを含む医薬組成物。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図17
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【配列表】
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