(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-16
(45)【発行日】2022-06-24
(54)【発明の名称】電気集塵機
(51)【国際特許分類】
B03C 3/68 20060101AFI20220617BHJP
B03C 3/40 20060101ALI20220617BHJP
【FI】
B03C3/68 Z
B03C3/40 A
(21)【出願番号】P 2019528025
(86)(22)【出願日】2018-01-03
(86)【国際出願番号】 EP2018050093
(87)【国際公開番号】W WO2018137899
(87)【国際公開日】2018-08-02
【審査請求日】2020-12-21
(32)【優先日】2017-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
(73)【特許権者】
【識別番号】519182637
【氏名又は名称】クリーン エアー エンタープライズ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】シンドラー,カスパー
【審査官】寺▲崎▼ 遥
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-044134(JP,A)
【文献】特開平07-108192(JP,A)
【文献】特開平11-267547(JP,A)
【文献】特開2009-274036(JP,A)
【文献】特開2007-225246(JP,A)
【文献】スイス国特許発明第00702993(CH,A5)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B03C 3/00-11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン化段階(3)、コレクタ段階(4)および電源を含む電気集塵機(2)であり、
前記電源は前記イオン化段階(3)を第1高電圧直流で印加するための第1高電圧電源機器(7)および前記コレクタ段階(4)を第2高電圧直流で印加するための第2高電圧電源機器(8)を含み、
前記第1高電圧電源機器(7)が電流センサおよび電圧調整器(11)を含み、
前記電流センサが前記イオン化段階(3)を通って流れるイオン電流を測定し、
前記電圧調整器(11)は測定された前記イオ
ン電流が設定値に達するように前記第1高電圧直流が設定されることを企図し、
前記電気集塵機(2)がアースと接続可能な接続を備え、
前記イオン化段階(3)および前記コレクタ段階(4)が前記アースと接続可能な接続と接続された電極を含み、
前記第1高電圧電源機器(7)および前記第2高電圧電源機器(8)が電源接続(9)からも互いからもガルバニック絶縁され、
前記電流センサが前記アースと接続可能な接続から前記第1高電圧電源機器(7)に導かれる帰還導管中に配置される
ことを特徴とする電気集塵機(2)。
【請求項2】
前記電気集塵機(2)は、制御信号
が印加可能な制御入力を
さらに備え、
前記第1高電圧電源機器(7)がイオ
ン電流を前記制御信号の値に応じて設定する
ように
構成される
ことを特徴とする請求項1に記載の電気集塵機(2)。
【請求項3】
前記第2高電圧電源機器(8)が前記第2高電圧直流を前記制御信号の値に応じて設定する
ように
構成される請求項2に記載の電気集塵機(2)。
【請求項4】
前記第2高電圧電源機器(8)が第2電流センサを含み、
前記電流センサが前記コレクタ段階(4)を通って流れるコレクタ電流を前記アースと接続可能な接続から前記第2高電圧電源機器(8)に導く前記帰還導管の中で測定する
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の電気集塵機(2)。
【請求項5】
測定された前記コレクタ電流が事前に決められた最大電流を超えたとき警告信号またはエラー信号が生成されることを特徴とする請求項4に記載の電気集塵機(2)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建物換気設備の中での使用のために設計された電気集塵機に関する。
【背景技術】
【0002】
電気集塵機は例えばガスまたは空気流の中に含まれる粒子をフィルターで取り除くために使用される。電気集塵機は換気装置、空気調節機器および冷暖房装置に使用されることができるが、空気調節装置業界では普及しなかった。空気調節装置業界、特に建物換気設備ではなおもバックフィルタが使用されている。
【0003】
電気集塵機はコロナ放電および静電界とともに稼働する。それらはイオン化段階およびコレクタ段階並びにそれらの作動のための高電圧電源機器を含む。空気と共に電気集塵機に流入する埃粒子、エアロゾルなどはイオン化段階中で静電気を帯電し、その後コレクタ段階の電極面に排出される。高電圧電源機器はイオン化段階でのコロナ放電の生成のための高電圧直流も、コレクタ段階での強い静電界の生成のためのものより小さい高電圧直流も供給しなければならない。この高電圧直流は典型的に電圧ダブラのカスケードによって生成され、電圧がイオン段階の最後の電圧ダブラの出力およびコレクタ段階の上流電圧ダブラの1つの出力に供給される。コレクタ段階のための高電圧直流はそのためイオン段階のための高電圧直流の半分の大きさかまたはそれよりも小さい。
【0004】
既成の建物換気設備の中での使用のために電気集塵機は様々な要件を満たさなければならない。その中には例えばそれによって電気集塵機がバックフィルタの代わりになることができる所定の寸法、所定の空気体積流量および所定のフィルタ濾過効率がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は建物換気設備のための、規格サイズ(幅/高さ/奥行き)が592mm x 592mm x 300mmであるときの空気体積流量3400m3/時間がフィルタ濾過効率E10に達するべき電気集塵機を開発することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は第1請求項で特徴付けられる。有利な実施形態は従属請求項から明らかになる。
【発明の効果】
【0007】
本発明はそのような電気集塵機の電源および制御エレクトロニクスに関し、それらの構想は以下の知見に基づく:
イオン化段階を通って流れる電流は濾過されるべき粒子のイオン化の信頼性の重要な指標である。印加する高電圧直流にも関わらずイオン化段階を通って電流が流れない、または流れる電流が少なすぎるとき、イオン化は行われないかまたは十分なイオン化が行われない。それは電気集塵機が空気をもはや洗浄しないかまたは十分に洗浄しないと言う結果をもたらす。
3400m3/時間の最大空気体積流量での電気集塵機の作動の場合、コレクタ段階に印加された高電圧直流が5.5~6kVの領域の値に上昇されなければならず、それによって必要なフィルター濾過効率E10が達成されることができる。
コレクタ段階を通って通常、実際には電流は流れず、つまり電流は多くとも数マイクロアンペア範囲にある。しかし高電圧直流がここで存在する電気集塵機の場合、5kVをやや上回る閾値を超えると、電流は増加し比較的速くミリアンペア範囲の値に達する。
そこでイオン化段階のための高電圧直流もコレクタ段階の高電圧直流もタップで下げられる電圧ダブラのカスケードを備えた上述の種類の高圧電源は、コレクタ段階を通って流れる電流がミリアンペア範囲にあるとき、イオン化段階で印加された高電圧直流に対するコントロールを失う。つまりイオン化段階のための高電圧直流はそのときもはや安定的ではない。
【0008】
そのため本発明の特別な課題は、これらの知見を考慮した電気集塵機の作動のためのエネルギー供給および制御エレクトロニクスを開発することにある。そのことから電気集塵機は可能な限り少ないオゾンを生成し少ないエネルギーを消費するべきである。
【0009】
本発明により制御エレクトロニクス、イオン段階およびコレクタ段階のエネルギー供給を主電源から提供される電圧とは別の電圧で行う電源が、イオン化段階に第1高電圧電源機器を供給するための高圧電源およびコレクタ段階に第2高電圧電源機器を供給するための高電圧電源機器を含む。これはコレクタ段階を高電圧直流で作動することを可能にし、そこではイオン化段階の高電圧直流が不安定になることなく電流がミリアンペア範囲で流れることができる。第1高圧電源はさらに電流センサおよび電圧調整器を含み、電流センサはイオン化段階を通って流れるイオン化電流を測定し、電圧調整器は測定されたイオン化電流が設定値に達するように高電圧直流が設定されることを企図する。イオン化段階はこのように電気制御によって作動され、つまりイオン化段階は設定可能な直流によって印加される。
【0010】
さらに電気集塵機は好ましくは接地され、つまりそれはアースと接続可能な接続を備え、イオン化段階およびコレクタ段階はアースと接続可能な接続と接続された電極を含む。
【0011】
そこで制御エレクトロニクスは
a)イオン化段階を通って流れる直流およびコレクタ段階に印加される第2高電圧直流を電気集塵機を通って流れる空気体積流量に応じて設定し、つまり、空気体積流量が減少するとき直流および第2高電圧直流を削減し、あるいは空気体積流量が増大するとき増加し、
b)コレクタ段階を通って流れる直流を監視し、直流が設定された間隔から外れたとき警報信号またはエラー信号を発信する
ために有利に配設される。
【0012】
これら2点の実現は以下を結果として生じる:
a)制御エレクトロニクスが少なくとも1つの制御信号を受け取るための制御入力を含み、イオン化段階のために設定されるべき直流およびコレクタ段階に印加されるべき第2高電圧直流を少なくとも1つの制御信号の値に応じて設定するために配設される。
b)第2高電圧電源機器がコレクタ段階を通って流れる直流を測定する電流センサを含み、制御エレクトロニクスは、直流が予め決められた最低値を下回り、および/または予め決められた最高値を上回るとき警報信号またはエラー信号を発信するために設置される。
【0013】
それによって両直流がいわゆるシャントを使って高電圧電源機器の低電圧側で測定されうるように、両高電圧電源機器が入力側で電源接続(およびそれとともに接地)からも互いからもガルバニック絶縁されている。これはガルバニックアイソレータによって行われる。
【0014】
以下で本発明は実施形態および図を基に詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は第1の実施形態の電気集塵機のエネルギー供給および制御エレクトロニクスのブロック回路図を示す。
【
図2】
図2は第2の実施形態の電気集塵機のエネルギー供給および制御エレクトロニクスのブロック回路図を示す。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0016】
図1は第1の実施形態の電気集塵機2の高電圧段階および制御エレクトロニクス1のエネルギー供給のための本発明の電源のブロック回路図を示す。電気集塵機2はイオン化段階3およびこの例では唯一のコレクタ段階4を含む。電源は好ましくはイオン化段階3およびコレクタ段階4のエネルギー供給のための電源装置およびそれから分離した制御エレクトロニクス1のエネルギー供給のための制御電源を含む。そのため電源は全部で2つの低電圧電源5および6および2つの高電圧電源機器7および8を含む。
【0017】
電源装置は、電源接続9に印加される交流配電電圧を例えば24Vの直流電圧である低電圧直流電圧に変換する第1低電圧電源5並びに、2つのそれに接続した高電圧電源機器7、8を含む。第1高電圧電源機器7はイオン化段階3に第1高電圧直流を供給する役目をし、第2高電圧電源機器8はコレクタ段階4に第2高電圧直流を供給する役目をする。
【0018】
2つの高電圧電源機器7、8は一方で、イオン化段階3およびコレクタ段階4を互いに無関係に作動し、それによって両段階の作動を個々に最適化することを可能にする。特にそれによって、コレクタ電流がミリアンペル範囲で流れるほど高い高電圧直流で、それによってイオン化段階3に印加した高電圧直流が影響を受けることなく、コレクタ段階4を(も)作動することを可能にする。
【0019】
制御電源は第2低電圧電源6を含み、それは電源接続10に印加された電源電圧を同様に例えば12Vの直流電圧である低電圧直流電圧に変換する。
【0020】
制御エレクトロニクス1および電気集塵機2のパワーエレクトロニクスの別々の供給は、例えばLEDのような電気集塵機2の状態についての情報を与える制御エレクトロニクス1の表示部材が、パワーエレクトロニクスが電源システムから分離したときに点灯することも可能にする。電気集塵機2におけるような制御エレクトロニクス1の検査および整備作業は制御エレクトロニクス1の電気供給のスイッチが入っているとき、いつでも使用者への危険なく実施されることができる。
【0021】
電気集塵機2のイオン化段階3およびコレクタ段階4は通常板状の好ましくは接地した電極である電極を含む。2つの低電圧電源5および6はそれぞれ1つのガルバニックアイソレータ14あるいは15を含み、これは出力側を入力側からガルバニック絶縁する。それらは例えばそれらの変圧器がガルバニックアイソレータである変圧器電源である。両高電圧電源機器7、8はそれによって電源接続9あるいは10からガルバニック絶縁する。高電圧電源機器7、8は電圧調整器11あるいは12および第1あるいは第2高電圧直流の生成のための下流電圧増幅器13を含む。電圧増幅器13は例えば電圧ダブラのカスケードから成る。
【0022】
イオン化段階3の作動は好ましくは電気制御で、つまり第1高電圧電源機器7によって生成された第1高電圧直流が、イオン化段階3を通って流れるイオン電流(直流)が事前に決められた値を持つように設定される。さらに第1高電圧電源機器7は、イオン化段階3を通って流れるイオン電流を測定しその出力信号が電圧調整器11に供給される電流センサを含む。電圧調整器11は後続の電圧増幅器13にもたらされる直流電圧を、測定されたイオン電流が設定された値を持つように第1高電圧電源機器が設定されるように調整する。イオン電流は、その中でそれが第1高電圧電源機器7からイオン化段階3のイオン化電極へと流れる導管の中か、またはその中でイオン電流が(電気集塵機2の相応の電極が接地するため)アースから高電圧電源機器7に逆流する帰還導管の中で測定されることができる。イオン化電極が非常に高い数キロボルトの直流電圧で印加されるため、イオン電流の測定は帰還導管中での方が遥かに簡単である。
図1で明白であるように、帰還導管は電気集塵機2の接地された接続から両高電圧電源機器7および8へとまず一緒に後には分岐して延在する。第1高電圧電源機器7へと逆流するイオン電流の測定は帰還導管中の第1高電圧電源機器7の中で分岐後にもたらされるシャント16(オーム抵抗)を使って行われることができる。シャント16で低下する電圧は測定され、電流値として電圧調整器11に供給され、それは測定された電流値を設定された予定値と比較し、そこから後続の電圧増幅器のための制御電圧を成形する。しかしそれには電流回路がイオン電流にとって「浮動」することが必要である。つまりその上を電流がアースからイオン化段階3のイオン化電極へと流れうる別の電流路があってはならない。これは第1高電圧電源機器7が(両低電圧電源5および6の出力が両電源接続9および10からガルバニック絶縁されているため)両電源接続9および10からも第2高電圧電源機器8からもガルバニック絶縁されていることによって達成される。両高電圧電源機器7および8のガルバニック絶縁はガルバニックアイソレータ17によって行われる。
【0023】
電気集塵機2の制御は好ましくは能力に関連して行われる。電気集塵機2は一定の濾過効率、例えば濾過効率E10およびそこで特別な濾過効率がまだ達成される最大空気体積流量に特化される。空気体積流量が少ないほど、空気の流速は小さく、電気集塵機2のイオン化された粒子の滞留時間は長い。コレクタ段階4に印加された第2高電圧直流はコレクタ段階4の中に電力としてイオン化粒子に作用しこれを加速し、それによってイオン化粒子が電極に排出される結果をもたらす電界強度を生成する。イオン化された粒子のコレクタ段階4の中での滞留時間が長いほど、電界強度は弱くそれによって第2高電圧直流も弱くてよい。
【0024】
そのため制御エレクトロニクスは好ましくは、コレクタ段階4に印加されるべき第2高電圧直流を実際の空気体積流量に応じて設定するために配設される。空気体積流量が減少するとき、通常イオン電流も削減されることができる。そのため制御エレクトロニクスは好ましくは、イオン電流を実際の空気体積流量に応じて設定するためにも配設される。この目的のために制御エレクトロニクスは1つのまたは複数の制御信号および手段(ハードウェアおよび/またはソフトウェア)の受け取りのための制御入力を含み、イオン電流および第2高電圧直流を単数または複数の制御信号に応じて設定する。
【0025】
さらに第2高電圧電源機器8は有利に同様にコレクタ段階4を通って流れるコレクタ電流(直流)を測定するシャント18の形の第2電流センサを含み、制御エレクトロニクス1は、測定されたコレクタ電流が予め決められた最大電流を超えたとき警告信号またはエラー信号を表示または送信するために配設される。
【実施例2】
【0026】
図2は第2の実施形態の電気集塵機2の制御エレクトロニクス1の高電圧電源機器7および8のエネルギー供給のための本発明の電源のブロック回路図を示す。電源装置はここではそれぞれ1つのガルバニックアイソレータ14あるいはアイソレータ14Bを含む2つの低電圧電源5および5Bを含む。この実施形態でも高電圧電源機器7および8は電源からも互いからもガルバニック絶縁されている。
【0027】
本発明の実施形態が示され説明されたことにより、本発明の趣旨から逸脱することなく上記に言及され、可能であるより多くの修正が可能であることが専門家には明らかである。従って本発明は特許請求の範囲およびその同等のものによってのみ限定される。