(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-16
(45)【発行日】2022-06-24
(54)【発明の名称】チョウザメの性別を同定するための、プライマーセット、キット、ならびにマイクロRNA血清マーカー及びプライマーセットの使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/11 20060101AFI20220617BHJP
C12Q 1/6879 20180101ALI20220617BHJP
C12Q 1/686 20180101ALI20220617BHJP
【FI】
C12N15/11 Z ZNA
C12Q1/6879 Z
C12Q1/686 Z
(21)【出願番号】P 2021027320
(22)【出願日】2021-02-24
【審査請求日】2021-02-24
(31)【優先権主張番号】202010314533.2
(32)【優先日】2020-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】516168849
【氏名又は名称】広東省科学院動物研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】張 秀娟
(72)【発明者】
【氏名】陳 金平
(72)【発明者】
【氏名】呉 文化
(72)【発明者】
【氏名】周 佳濱
(72)【発明者】
【氏名】李 林妙
(72)【発明者】
【氏名】江 海英
【審査官】進士 千尋
(56)【参考文献】
【文献】Comparative Biochemistry and Physiology, Part D, 2016, Vol.18, pp.54-61
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C12Q 1/6879
C12Q 1/686
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロRNA血清マーカーを検出するためのプライマーセットであって、
前記マイクロRNA血清マーカーは、asc-miR-133-3p、asc-miR-133a-3p、asc-miR-130a-3p及びdre-miR-34c
であり、
asc-miR-133-3pの塩基配列が配列番号2に示され、
asc-miR-133a-3pの塩基配列が配列番号3に示され、
asc-miR-130a-3pの塩基配列が配列番号8に示され、
dre-miR-34cの塩基配列が配列番号11に示される、
ことを特徴とするチョウザメの性別を同定するためのマイクロRNA血清マーカーであり、
前記マイクロRNA血清マーカーを検出するための検出プライマーを含み、前記asc-miR-133-3p、asc-miR-133a-3p、asc-miR-130a-3p及びdre-miR-34cの検出プライマーは次の通りである:
前記asc-miR-133-3pのフォワードプライマーが配列番号16に示され、
前記asc-miR-133a-3pのフォワードプライマーが配列番号17に示され、
前記asc-miR-130a-3pのフォワードプライマーが配列番号18に示され、
前記dre-miR-34cのフォワードプライマーが配列番号19に示され、
リバースプライマーがユニバーサルリバースプライマーであり、配列が配列番号20に示される、
ことを特徴とするチョウザメの性別を同定するための検出プライマーセット。
【請求項2】
チョウザメの性別を同定するキットの調製における検出標的として
のマイクロRNA血清マーカーの使用
であって、
前記マイクロRNA血清マーカーは、
asc-miR-133-3p、asc-miR-133a-3p、asc-miR-130a-3p及びdre-miR-34cであり、
asc-miR-133-3pの塩基配列が配列番号2に示され、
asc-miR-133a-3pの塩基配列が配列番号3に示され、
asc-miR-130a-3pの塩基配列が配列番号8に示され、
dre-miR-34cの塩基配列が配列番号11に示される、
ことを特徴とするチョウザメの性別を同定するためのマイクロRNA血清マーカーである、
使用。
【請求項3】
チョウザメの性別を同定するキットの調製における請求項
1に記載の検出プライマーセットの使用。
【請求項4】
チョウザメの性別を同定するためのマイクロRNA血清マーカーの含有量を検出するための試薬を含む、チョウザメの性別を同定するキット
であって、
前記マイクロRNA血清マーカーは、
asc-miR-133-3p、asc-miR-133a-3p、asc-miR-130a-3p及びdre-miR-34cであり、
asc-miR-133-3pの塩基配列が配列番号2に示され、
asc-miR-133a-3pの塩基配列が配列番号3に示され、
asc-miR-130a-3pの塩基配列が配列番号8に示され、
dre-miR-34cの塩基配列が配列番号11に示される、
ことを特徴とするチョウザメの性別を同定するためのマイクロRNA血清マーカーであり、
請求項1に記載の検出プライマーセットを含む、
チョウザメの性別を同定するキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバイオテクノロジーの分野に属し、具体的には、チョウザメの性別を同定するためのマイクロRNA血清マーカー、プライマーセット、キット及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
チョウザメは非常に貴重な魚類で、チョウザメの魚卵から作られたキャビアは、人体の必須アミノ酸、多くの不飽和脂肪酸、ビタミンなどの物質を大量に含み、栄養価値が非常に高く、「黒い黄金」の美称があり、2013年にその国際販売価格は1キログラム当たり800~900ドルに達し、そのため雌性チョウザメは雄性チョウザメより更に高い経済価値を持っている。現在、チョウザメの養殖とキャビアの生産は新興産業として、中国での発展は非常に急速で、初歩的な統計により、中国のチョウザメ商品魚養殖の年間生産量はすでに2万トンを突破し、世界のチョウザメの総生産量の66.17%を占め、養殖の総生産量の72.46%を占め、すでに最大のチョウザメの養殖国と主要なキャビアの輸出国となり、巨大な市場の潜在力を持っている。例えば、アムールチョウザメ(Acipenser schrenckii)は中国黒竜江水系の特有の希少で貴重な大型経済魚類である。アムールチョウザメの人工繁殖は19世紀30年代に始まり、成長速度が速く、抗病力と適応性が高いなどという利点があるため、前世紀90年代以来、チョウザメ養殖産業においてチョウザメの交雑親とキャビアを生産するチョウザメの養殖産業における重要な養殖品種の1つとなっている(Weiら、2011年)。養殖において、早期にアムールチョウザメの性別をスクリーニングすることができれば、雌、雄群体に対して方向性選別育成を行うことができ、より高い経済的効果を得ることができる。しかし、チョウザメの雌雄性個体間には青年期ひいては成人期にも明らかな第二性徴がなく、形態的には雌雄を判別することができず、且つ性成熟時間が長い。雌雄性別に従ってそれぞれ集約化養殖又は一定の性別比率で飼育することができないため、雄性個体を過度に飼育するという資源の浪費をもたらし、養殖コストを増加させ、チョウザメ養殖産業化の急速な発展を阻害している。そのため、チョウザメの性別同定の新技術は現在チョウザメ養殖産業の持続可能化発展の重点注目分野である。
【0003】
マイクロRNA(miRNA)は、長さが22bp前後で、高度に保存されている非コード小分子RNAであり、主に標的遺伝子の3’末端非翻訳領域(3’UTR)との完全又は不完全な対合によって、標的遺伝子を分解し又はその翻訳を抑制し、それにより広範な生命活動過程に関与し、成長、分化、発育、腫瘍発生および配偶子の形成などを含む(Ambros、2004;Ryazanskyら、2014年)。miRNAは血清中に長期間安定的に存在し、RNaseによって分解されにくく、煮沸、繰り返し凍結融解、酸アルカリ環境、長期保存などの極端な条件は、すべて血清miRNAの損失を引き起こさない。さらに重要なのは、最近の研究により、血清中のmiRNA発現スペクトルの変化が腫瘍の組織と密接に関連し、腫瘍の状態を提示することができることが示され、そのため、miRNAは、癌の早期診断、悪性等級分け、個性化診療および予後判断に用いられる有効な腫瘍マーカーの新技術として、重点的に注目され、ひいてはmiRNAを腫瘍治療の標的として、臨床薬品の使用を指導することができる。
【0004】
最近の研究により、性別決定と分化遺伝子を標的とするmiRNAは、動物の雌雄二型性特徴の形成において正確で有効で重要な調節作用を発揮していることが示された(Ryazansky etら、2014年;Fernandez-Perezら、2018年)。例えば、マウスでは、miR-124が精巣分化を制御するSox9遺伝子(SRY-box containing gene 9)は、卵巣細胞の運命を決定する(Realら、2013年);miR-202-5p/3pは、Sox9遺伝子の上流の制御により精巣分化に作用する(Wainwrightら、2013年);miR-19a/b標的性別決定因子Dmrt1(doublesex and Mab-3 related transcription factor 1)は、性逆転に作用する(Liuら、2015年)。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1目的は、チョウザメの性別を同定するためのマイクロRNA血清マーカーを提供することであり、前記マーカーはasc-miR-133-3p、asc-miR-133a-3p、asc-miR-130a-3p及びdre-miR-34cの組み合わせであり、各マイクロRNAの塩基配列は次の通りである:
asc-miR-133-3p:UGGUCCCCUUCAACCAGC(配列番号2)。
asc-miR-133a-3p:UUUGGUCCCCUUCAACCAGCUG(配列番号3)。
asc-miR-130a-3p:CAGUGCAAUAUUAAAAGGGCAU(配列番号8)。
dre-miR-34c:AGGCAGUGCAGUUAGUUGAUUAC(配列番号11)。
【0006】
本発明の第2目的は、前記asc-miR-133-3p、asc-miR-133a-3p、asc-miR-130a-3p及びdre-miR-34cを検出するための検出プライマーを含むチョウザメの性別を同定する検出プライマーセットを提供することである。
好ましくは、前記asc-miR-133-3p、asc-miR-133a-3p、asc-miR-130a-3p及びdre-miR-34cの検出プライマーは次の通りである。
asc-miR-133-3pのフォワードプライマーは配列番号16に示され、
asc-miR-133a-3pのフォワードプライマーは配列番号17に示され、
asc-miR-130a-3pのフォワードプライマーは配列番号18に示され、
dre-miR-34cのフォワードプライマーは配列番号19に示され、
リバースプライマーがユニバーサルリバースプライマーであり、塩基配列が配列番号20に示される。
【0007】
本発明の第3目的は、チョウザメの性別を同定するキットの調製における検出標的としての上記マイクロRNA血清マーカーの使用を提供することである。
【0008】
本発明の第4目的は、チョウザメの性別を同定するキットの調製における上記検出プライマーセットの使用を提供することである。
【0009】
本発明の第5目的は、前記チョウザメの性別を同定するためのマイクロRNA血清マーカーの含有量を検出するための試薬を含むチョウザメの性別を同定するためのキットを提供することである。
【0010】
前記キットは、asc-miR-133-3p、asc-miR-133a-3p、asc-miR-130a-3p及びdre-miR-34cの検出プライマーを含み、具体的には次の通りである。
asc-miR-133-3pのフォワードプライマーは配列番号16に示され、
asc-miR-133a-3pのフォワードプライマーは配列番号17に示され、
asc-miR-130a-3pのフォワードプライマーは配列番号18に示され、
dre-miR-34cのフォワードプライマーは配列番号19に示され、
リバースプライマーはユニバーサルリバースプライマーであり、配列番号が配列番号20に示される。
【0011】
好ましくは、逆転写ステムループプライマーをさらに含み、具体的には次の通りである。
asc-miR-133-3pの逆転写ステムループプライマーは配列番号12に示され、
asc-miR-133a-3pの逆転写ステムループプライマーは配列番号13に示され、
asc-miR-130a-3pの逆転写ステムループプライマーは配列番号14に示され、
dre-miR-34cの逆転写ステムループプライマーは配列番号15に示される。
【0012】
前記キットは、PCR技術で一般的に使用される試薬をさらに含む。
【発明の効果】
【0013】
先行技術と比較すると、本発明の利点は次の通りである。
本発明は、チョウザメの性別を同定するために新規な検出方法を提供する。本発明は、従来技術と比較すると、血漿/血清中の性別に関連する、安定的なマイクロRNAを検出し、定量的検出には、miRNAの定量感度と特異性が非常に高い、リアルタイム定量PCR技術を採用することにより、チョウザメの雌雄性別を効果的に区別することができる。本発明のチョウザメの性別を同定するためのリアルタイム定量PCR miRNA検出キットのチップ法による検出は、その検出率が80%に達し、未知の若齢チョウザメサンプルの雌雄を効果的に区別することができ、当該チョウザメの種類はアムールチョウザメに限定されず、シベリア交雑チョウザメのような他の種類のチョウザメに対しても高い検出率がある。また、本発明によるチョウザメの性別同定は、チョウザメの器官を切断してDNAを取得する必要がなく、チョウザメへのダメージがきわめて低い。本発明の方法は操作が簡単で、再現性が高く、チョウザメの性別を効率的に早期に同定する技術分野における新しい突破口であり、普及と使用に適しており、チョウザメ養殖産業における生産コストが高く、効率が低いなどという産業発展を厳しく制約する問題を根本的に解決する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】蛍光定量PCRによって雌性、雄性アムールチョウザメ血清における36個のmiRNAの発現を検出する。
【
図3】96穴PCRプレート(即ちチョウザメの性別同定の蛍光定量miRNA PCR検出チップ)における検出プライマーの配置である。略称は、それぞれAm133(asc-miR-133-3p)、Am133a(asc-miR-133a-3p)、Am130(asc-miR-130a-3p)、Am34c(dre-miR-34c)、U6(内部参照遺伝子U6)、5S(5S rRNA)の遺伝子を表す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下の実施例は、本発明の更なる説明であり、本発明を限定するものではない。
本発明は、ハイスループット小RNAシーケンシング技術とマイクロRNAチップ技術を利用し、3齢のアムールチョウザメ性腺(精巣と卵巣)の差次的に発現するmiRNAのタイプと発現量をスクリーニングし、その中の36個のmiRNAをスクリーニングしてアムールチョウザメ性別を同定する血清miRNAマーカーに使用し、通常の血清RNA抽出、cDNAの取得及びリアルタイム定量PCRなどの技術集合によって、アムールチョウザメの性別同定のための血清miRNAマーカーの新しい方法を確立し、且つ低年齢チョウザメの中で検証することにより、チョウザメ養殖産業の性別同定の困難度をある程度で解決することができ、チョウザメ養殖産業の持続可能性とグリーンで健康な発展を促進して支援することができる。
【0016】
(実施例1)
1.アムールチョウザメ性腺差異発現miRNAのスクリーニング
|Log2(FC)|>2 (FC、fold change)のアムールチョウザメ性腺差異発現miRNAと性腺特異性保存発現miRNA(dre-miR-34bとdre-miR-34c)を、ファミリー類似性が100%のmiRNAを除去し、36個のmiRNAを保持する。miRNA遺伝子情報リストを表1に示す。
【0017】
【0018】
2.血清の採取
1ロットの3齢アムールチョウザメを取り、その体重、体長、全長を測り、性腺組織のパラフィンスライスを作製した。ヘマトキシリンエオシン染色法で組織観察を行い、性別を正確に判定した。尾部静脈で採血し、1.5mLの無菌EPチューブに入れ、室温で30分間静置し、低温遠心分離機で3500rmpで15分間遠心分離した。分離した血清を収集し、-80℃の冷蔵庫で保存し、最後に性別が決定されたシュチョウザメ30尾(雌性個体15尾と雄性個体15尾)の血清を選択して次のステップに使用する。
【0019】
3.血清miRNAの抽出と逆転写
抽出キット:TIANGEN社のmiRcute血清/血漿miRNA抽出分離キット(DP503)は、試薬説明書に従って操作し、性別が決定されたシュチョウザメ30尾(雌性個体15尾と雄性個体15尾)の血清のmiRNAを抽出し、紫外分光光度計を使用してmiRNAの濃度と純度を検出した。
【0020】
逆転写:統一量に従い、TIANGEN社のmiRcute増強型miRNA cDNAファーストストランド合成キット(KR211)を用いて、上のステップで抽出されたmiRNAの逆転写を行い、逆転写産物を取得した。このステップでは、Aテイリング反応と逆転写反応を統合することで、miRNAのAテイリング産物はすべて更なる逆転写反応を行うことができ、低存在度のmiRNAの検出率を大幅に向上させることができる。
【0021】
4.蛍光定量PCR
上記ステップで得られた逆転写産物をテンプレートとして、上記36個のアムールチョウザメ性腺差異発現miRNA及び内部参照遺伝子U6に対してそれぞれ相対定量PCRを行い、TIANGEN社のmiRcute増強型miRNA蛍光定量検出キット(SYBR Green)(FP411)に従って操作する。miRNAプライマー配列を表2に示す。
【0022】
【0023】
蛍光定量PCR反応条件は次の通りである:95℃15分間;95℃15分間、60℃30秒間、72℃34秒間、5サイクル;94℃20秒間、60℃34秒間、45サイクル;溶解曲線解析。
【0024】
5.結果分析
U6を検出内部参照として、リアルタイム定量PCR結果は2
-ΔΔCT法で分析し、SPSS17.0は2群間の独立サンプルTテスト(independent sample T-test)を使用して分析を行い、差異性顕著意味を統計する(P<0.05)。その結果により、
図1に示すように、asc-miR-107、asc-miR-133-3p、asc-miR-133a-3p、asc-miR-140-3p、asc-let-7g、asc-miR-10-5p、asc-miR-10b-5p、asc-miR-130a-3p、asc-miR-16-5p、asc-miR-223-3p及びdre-miR-34cなどの11個のmiRNAが、雄性アムールチョウザメの血清の中で一致して顕著に上昇することが示された。
【0025】
6.統計法を使用し、上記11個のmiRNAを単独でアムールチョウザメの性別同定の標準とする能力の評価を行い、アムールチョウザメの性別を同定する血清マーカーとしての個別miRNAの感度と特異性、及び対応するROC曲線を検出し、
図2と表3に示す。
【0026】
【0027】
図2と表3から分かるように、各miRNAの診断能力ROC曲線下面積はいずれも0.74以上であり、上記11種類のmiRNAをアムールチョウザメの性別同定に用いることができ、一定の同定意義がある。
【0028】
7.さらに3種類の場合に分けて統計分析を行う:(1)11個のmiRNAを組み合わせる;(2)特異性指数>0.7の6個のmiRNA(asc-miR-133-3p、asc-miR-133a-3p、asc-let-7g、asc-miR-130a-3p、asc-miR-16-5p及びdre-miR-34cを含む)を組み合わせて分析する;(3)特異性指数>0.9の4個のmiRNA(asc-miR-133-3p、asc-miR-133a-3p、asc-miR-130a-3p和dre-miR-34cを含む)を組み合わせて分析し、総合指標の診断能力を評価した。表4に示すように、組み合わせ指標によるアムールチョウザメの性別同定のROC曲線下面積、及びその精度と特異性を検出する。
【0029】
【0030】
表4から分かるように、その中の4個のmiRNA(asc-miR-133-3p、asc-miR-133a-3p、asc-miR-130a-3p及びdre-miR-34cを含む)の組み合わせ検出は最も高い識別効果を有し、その診断能力は、正解率(線下面積)が82.6%で、その識別感度と特異度がそれぞれ80.4%と95.5%であった。
【0031】
8.チョウザメの性別同定のためのリアルタイム定量miRNA PCR検出キットの調製
4個のmiRNA(asc-miR-133-3p、asc-miR-133a-3p、asc-miR-130a-3p及びdre-miR-34cを含む)に用いられる特別で専門的な逆転写ステムループプライマーは次の通りである。
asc-miR-133-3p-F:5’-ACACTCCAGCTGGGTGGTCCCCTTCAACCAGC-3’;
asc-miR-133a-3p-F:5’-ACACTCCAGCTGGGTTTGGTCCCCTTCAACCAGC-3’;
asc-miR-130a-3p-F:5’-ACACTCCAGCTGGGCAGTGCAATATTAAAAGGGC-3’;
dre-miR-34c-F:5’-ACACTCCAGCTGGGAGGCAGTGCAGTTAGTTGAT-3’;
【0032】
チョウザメの性別を同定するリアルタイム定量miRNA PCR検出キットのプライマーペアは、96ウェルPCRプレートにそれぞれ保存されており、プライマーペアの配列は次の通りである。
asc-miR-133-3p-F:5’-ACACTCCAGCTGGGTGGTCCCCTTCAACCAGC-3’;
asc-miR-133a-3p-F:5’-ACACTCCAGCTGGGTTTGGTCCCCTTCAACCAGC-3’;
asc-miR-130a-3p-F:5’-ACACTCCAGCTGGGCAGTGCAATATTAAAAGGGC-3’;
dre-miR-34c-F:5’-ACACTCCAGCTGGGAGGCAGTGCAGTTAGTTGAT-3’;
ユニバーサルリバースプライマー:5’-CTCACAGTACGTTGGTATCCTTGTG-3’。
【0033】
上記の好ましいプライマーペアがそれぞれ96ウェルPCRプレートに保存された配列方式は、
図3に示すように、4個のmiRNA遺伝子は、asc-miR-133-3p(Am133)、asc-miR-133a-3p(Am133a)、asc-miR-130a-3p(Am130)及びdre-miR-34c(Am34c)と略称される。この96ウェルPCRプレート(すなわち、チョウザメの性別を同定するための蛍光定量miRNA PCR検出チップ)を使用してサンプルを検出する時、我々は設定した雌性血清(灰色領域A1-A6)の対照と雄性血清(灰色領域A-A12)の対照の増幅状況に基づいて、被検血清サンプルのmiRNAの発現状況を非常に正確に同時に取得することができ、それにより被検血清サンプルの性別を正確に予測することができる。この96ウェルPCRプレートは、14個のチョウザメ個体、又は7個のチョウザメ個体(1個の個体を同時に2回検出する)又は少なくとも4個のチョウザメ個体(1個の個体を同時に3回検出する)の性別の同時検出に一度に用いられる。
【0034】
各96ウェルPCRプレートのホール中のプライマーペアの総量は、好ましくは1~20×10-12molであり、上下流プライマーペアの量が同じである。好ましくは2-8℃の冷蔵庫で保存される。
キットのその他の内容物は2×SYBR Premix Ex TaqTM、滅菌脱イオン水である。
チョウザメの性別同定のための蛍光定量miRNA PCR検出チップとその他の試薬を封入し、取扱説明書と共にキットに入れ、検出キットを構成する。
【0035】
9.キットの検出検証応用
各1ロットの1齢前後のアムールチョウザメとシベリア交雑チョウザメを選択し、その生体血清採取法は、チョウザメのストレス反応を減少し、生体採血に合わせるために、チョウザメは水から離れた後に速やかに用意した氷に移して3~5分間静置し、5mLの使い捨て無菌注射器(0.6×25TWLB針を使用)を使用し、チョウザメの尾部すなわち排出腔の穴から約0.5-1.0cmのところから30-45角度で針を入れ、尾静脈で1mL採血し、1.5mLの無菌遠心管に入れ、室温で30~60分間静置し、低温遠心機で3500rpmで15分間遠心し、上清液を集め、2mLの冷凍管に入れ、-80℃で冷蔵庫で保存することである。同時に上記ステップ2の方法でチョウザメの性別を検出し、性別分化が完全で且つ性別が決定したチョウザメサンプル(アムールチョウザメの雌雄各10尾とシベリア交雑チョウザメの雌雄各10尾を含む)をスクリーニングし、次に上記ステップ3の方法でmiRNAを抽出し、逆転写キット(Takara社、品番6210A)の説明書の操作方法に従い、4個の特異的逆転写ステムループプライマー(asc-miR-133-3p-RT、asc-miR-133a-3p-F、asc-miR-130a-3p-F、dre-miR-34c-F)を使用し、それぞれ4個のマイクロRNA血清マーカーasc-miR-133-3p、asc-miR-133a-3p、asc-miR-130a-3p、dre-miR-34cのcDNAを取得し、PCR計反応プロセスは、42℃で60分間インキュベートし、72℃で15分間保持し、さらに4℃に下げて-20℃の冷蔵庫に移して保存することである。次に、チョウザメの性別同定のためのリアルタイム定量miRNA PCR検出キット法に従い、20μLの反応系は1.0μLのcDNA、0.5μLのmiRNA特異的プライマーと0.5μLのユニバーサルリバースプライマー及び10μLの2×SYBR Premix Ex TaqTMを含み、残りは蒸留水で補う。PCR反応プログラムは、95℃で2分間で、40サイクル体系(95℃15秒間、60℃30秒間及び72℃30秒間)である。性別二重盲検法で検出する。本発明の上記4個のmiRNAマーカーの相対的なアップダウンレギュレーションと雌雄性血清対照の発現状況に基づいて、未知のチョウザメサンプルの性別を判定する。判定標準は、もし未知のチョウザメ血清サンプルが雌性対照血清の4個のmiRNAマーカーに比べて相対的に顕著にアップレギュレーションし、且つ相対的発現倍数が少なくとも2倍以上であれば、被検チョウザメサンプルが潜在的な雄性であると判定され、そうでなければ、被検チョウザメサンプルが潜在的な雌性であると判定され、最後の統計結果により、本発明のチョウザメの性別同定のためのリアルタイム定量miRNA PCR検出キットのチップ法による検出は、若齢のアムールチョウザメとシベリア交雑チョウザメに対する検出率はいずれも80%に達し、未知の若齢のチョウザメサンプルの雌雄性を効果的に区分することができることが示された。
【0036】
以上は本発明の好ましい実施形態にすぎず、なお、上記好ましい実施形態は本発明に対する制限と見なすべきではなく、本発明の保護範囲は請求項によって限定される範囲に準じるべきである。当業者にとって、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、いくつかの改良及び装飾を行うことができ、これらの改良及び装飾も本発明の保護範囲と見なすべきである。
【0037】
(付記)
(付記1)
チョウザメの性別を同定するためのマイクロRNA血清マーカーであって、前記マーカーはasc-miR-133-3p、asc-miR-133a-3p、asc-miR-130a-3p及びdre-miR-34cであり、
asc-miR-133-3pの塩基配列が配列番号2に示され、
asc-miR-133a-3pの塩基配列が配列番号3に示され、
asc-miR-130a-3pの塩基配列が配列番号8に示され、
dre-miR-34cの塩基配列が配列番号11に示される、
ことを特徴とするチョウザメの性別を同定するためのマイクロRNA血清マーカー。
【0038】
(付記2)
付記1に記載のasc-miR-133-3p、asc-miR-133a-3p、asc-miR-130a-3p及びdre-miR-34cを検出するための検出プライマーを含み、前記asc-miR-133-3p、asc-miR-133a-3p、asc-miR-130a-3p及びdre-miR-34cの検出プライマーは次の通りである:
前記asc-miR-133-3pのフォワードプライマーが配列番号16に示され、
前記asc-miR-133a-3pのフォワードプライマーが配列番号17に示され、
前記asc-miR-130a-3pのフォワードプライマーが配列番号18に示され、
前記dre-miR-34cのフォワードプライマーが配列番号19に示され、
リバースプライマーがユニバーサルリバースプライマーであり、配列が配列番号20に示される、
ことを特徴とするチョウザメの性別を同定するための検出プライマーセット。
【0039】
(付記3)
チョウザメの性別を同定するキットの調製における検出標的としての付記1に記載のマイクロRNA血清マーカーの使用。
【0040】
(付記4)
チョウザメの性別を同定するキットの調製における付記2に記載の検出プライマーセットの使用。
【0041】
(付記5)
付記1に記載のチョウザメの性別を同定するためのマイクロRNA血清マーカーの含有量を検出するための試薬を含む、チョウザメの性別を同定するキット。
【0042】
(付記6)
付記2に記載の検出プライマーセットを含む、
ことを特徴とする付記5に記載のキット。
【0043】
(付記7)
asc-miR-133-3pの逆転写ステムループプライマーが配列番号12に示され、
asc-miR-133a-3pの逆転写ステムループプライマーが配列番号13に示され、
asc-miR-130a-3pの逆転写ステムループプライマーが配列番号14に示され、
dre-miR-34cの逆転写ステムループプライマーが配列番号15に示される、
逆転写ステムループプライマーをさらに含むことを特徴とする付記5又は6に記載のキット。
【配列表】