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  • 特許-散布機及び散布機を含む無人飛行体 図1
  • 特許-散布機及び散布機を含む無人飛行体 図2
  • 特許-散布機及び散布機を含む無人飛行体 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-16
(45)【発行日】2022-06-24
(54)【発明の名称】散布機及び散布機を含む無人飛行体
(51)【国際特許分類】
   A01M 7/00 20060101AFI20220617BHJP
   A01C 15/00 20060101ALI20220617BHJP
【FI】
A01M7/00 H
A01C15/00 F
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021083644
(22)【出願日】2021-05-18
【審査請求日】2021-05-25
(31)【優先権主張番号】P 2021069714
(32)【優先日】2021-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518231105
【氏名又は名称】株式会社マゼックス
(74)【代理人】
【識別番号】110001885
【氏名又は名称】特許業務法人IPRコンサルタント
(72)【発明者】
【氏名】松添 俊明
【審査官】小島 洋志
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-049875(JP,A)
【文献】特開2019-170364(JP,A)
【文献】特開2020-146011(JP,A)
【文献】特開2018-130064(JP,A)
【文献】特許第6841545(JP,B1)
【文献】米国特許第04597531(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0173568(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 7/00
A01C 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒状の散布対象を収容する収納部と、
前記収納部から供給された前記散布対象を所定の進行方向に放出するファンと、
を具備する散布機であって、
前記ファンが、
回転軸の周りに回転する回転体と、
前記回転体の前記回転軸及び外縁の間に亘って放射状でかつ略均等な位置関係でそれぞれ形成された、第1の曲率半径で湾曲する第1フィン、前記第1の曲率半径よりも小さい第2の曲率半径で湾曲する第2フィン、及び、略直線状の第3フィンを含む3つのフィンを具備し
前記第1の曲率半径が180~220mmであり、
前記第2の曲率半径が60~100mmであり、
前記第1~第3フィンが、前記収納部から前記回転体上に供給された前記散布対象を前記進行方向に押し出すこと、
を特徴とする散布機。
【請求項2】
前記第1~第3フィンが、前記収納部から前記回転体上に供給された前記散布対象を前記進行方向を中心に60°~80°の範囲に放出すること、
を特徴とする請求項1に記載の散布機。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の散布機を具備する無人飛行体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、散布機及び散布機を含む無人飛行体に関し、特に粒剤・肥料・豆粒などを散布するための散布機及び無人飛行体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1(特開2021-49875号公報)は、円板状の回転板と、回転板上に配置された板状の羽根部から構成される送出部を含む無人機を開示している。
【0003】
特許文献1では、回転板上に肥料が導入されると、回転板の回転によって、肥料は羽根部に接する。回転板がさらに回転すると、肥料は遠心力によって外側に向かうのであるが、周壁部の円弧状部によって、外側への動きが制限されている。回転板がさらに回転し、羽根部が周壁部の直線部に達すると、肥料にかかる遠心力を妨げる構造はなくなるから、肥料は遠心力の方向へ飛び出す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2021-49875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示された羽根部はいずれも直線状に延びているため、散布対象の散布量が進行方向右側(又は左側)に偏り、無人機の進行方向に満遍なく散布対象を散布することができない。
【0006】
よって、本発明は、無人飛行体の進行方向に満遍なく散布対象を散布することができる散布機及びそれを備えた無人飛行体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決すべく、本発明は、
粒状の散布対象を収容する収納部と、
前記収納部から供給された前記散布対象を所定の進行方向に放出するファンと、
を具備する散布機であって、
前記ファンが、
回転軸の周りに回転する回転体と、
前記回転体の前記回転軸及び外縁の間に亘ってそれぞれ形成された、第1の曲率半径で湾曲する第1フィン、前記第1の曲率半径よりも小さい第2の曲率半径で湾曲する第2フィン、及び、略直線状の第3フィンと、を含み、
前記第1~第3フィンが、前記収納部から前記回転体上に供給された前記散布対象を前記進行方向に押し出すこと、
を特徴とする散布機
を提供する。
【0008】
本発明の散布機においては、前記第1の曲率半径が180~220mmであること、が好ましい。
【0009】
また、本発明の散布機においては、前記第2の曲率半径が60~100mmであること、が好ましい。
【0010】
本発明は、上記のいずれかに記載の散布機を具備する無人飛行体をも提供する。
【発明の効果】
【0011】
上記本発明の散布機及び無人飛行体により、無人飛行体の進行方向に満遍なく散布対象を散布することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態に係る無人飛行体1の概略を示す図である。
図2】ファン20の斜視図、上面図、左側面図、正面図及び底面図である。
図3】ファン20の動作を説明するための、ファン20の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明の代表的な実施形態に係る散布機及びこれを含む無人飛行体を説明する。但し、本発明は図示されるものに限られるものではない。また、図面は本発明を概念的に説明するためのものであるから、理解容易のために必要に応じて比や数を誇張又は簡略化して表している場合もある。以下の説明では、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略することもある。
【0014】
また、説明の便宜上、次のとおりXYZ軸を定める。つまり、Z軸を鉛直上向きに定め、X軸を(水平方向に移動する)無人飛行体1の進行方向に定め、Y軸方向をX軸及びZ軸に直交する方向に定める。したがって、X軸方向を前方及び/又は後方ということがあり、Y軸方向を左右方向ということがあるが、本実施形態の無人飛行体1が、前方、後方、右及び左のいずれの方向にも進行(飛行)できることは、言うまでもない。
【0015】
図1に示すように、無人飛行体1は、本体3と、本体3に装着される散布機5を含む。本実施形態では無人飛行体1としてはドローン、とりわけ農業用ドローンを想定しているが、本発明はこれに限られない。
【0016】
散布機5は、肥料・種・豆粒・農薬などの粒状の散布対象(乃至は散布物)51(図3参照)を放出する装置である。なお、ここでいう「粒状」は顆粒状や粉状等も含む概念であり、散布対象51は水分を含んでいてもよい。散布機5は収納部10及びファン20を具備する。以下、散布機5の構成要素を詳細に説明する。
【0017】
収納部10は、散布対象51を収納する容器であり、ファン20に散布対象51を供給する。収納部10は本発明の効果を損なわない範囲で種々の形状及び容量を有していてよい。
【0018】
ファン20は、収納部10から供給された散布対象51を外部に放出する装置であり、とりわけ回転体21並びに第1フィン24、第2フィン25及び第3フィン26を含む(図2(D),(E)参照)。
【0019】
回転体21は、電動モータなどの駆動手段(図示せず)によって回転軸22を中心にして周りに回転する円盤状部材である。回転体21は、供給量調節機構(図示せず)を有する供給路41を介して、収納部10から散布対象51を受ける。なお、回転体21の回転速度は、設定値に固定されていてもよいし、ユーザ操作等に応じて可変でもよい。
【0020】
回転体21上には第1フィン24、第2フィン25及び第3フィン26が設けられている。第1フィン24、第2フィン25及び第3フィン26は、回転体21とは別個の部材で回転体21に取り付けられていてもよく、また、回転体21と一体的に形成(一体成形)されていてもよい。第1フィン24、第2フィン25及び第3フィン26は、回転体21上の散布対象51をX軸方向における前方(より具体的には図3における白抜き矢印の向き)に押し出すための部材である。
【0021】
第1フィン24、第2フィン25及び第3フィン26は、回転体21の回転軸22と外縁23との間に亘って、放射状でかつ略均等な位置関係で配置されている。本実施形態では、第1フィン24、第2フィン25及び第3フィン26は回転軸22から外縁23まで繋がっているが、部分的に途切れていたり高さが異なっていたりしてもよい。
【0022】
図3において白抜き矢印で示すように、第1フィン24は、散布対象51を主に無人飛行体1の進行方向にほぼ沿った方向R1に飛散させる役割を果たす(図3参照)。それゆえに、第1フィン24は所定の(第1の)曲率半径で湾曲している。一例として、第1フィン24の曲率半径は180~220mmであればよく、195~200mmであることが好ましい。
【0023】
第2フィン25は、散布対象51を主に無人飛行体1の進行方向右側R2に飛散させる役割を果たす(図3参照)。それゆえに、第2フィン25は、第1の曲率半径よりも小さい第2の曲率半径で湾曲している。一例として、第2フィン25の曲率半径は60~100mmであればよく、75~80mmであることが好ましい。
【0024】
第3フィン26は、散布対象51を主に無人飛行体1の進行方向左側R3に飛散させる役割を果たす(図3参照)。それゆえに、第3フィン26は、ほぼ直線状に延びる。ただし、第3フィン26は、第1フィン24よりも若干の緩やかに湾曲していてもよく、本発明においては、このような若干の緩やかな湾曲形状も直線状と言ってよい。
【0025】
そして、回転体21の後側には、ガイド31が設けられている(例えば図2((C),(E)参照)。ガイド31は、第1フィン24、第2フィン25及び第3フィン26による散布対象51の散布方向を進行方向から所定の角度範囲に規制する。ここでいう所定の角度範囲としては、例えば30°~40°である。つまり、散布対象51は、進行方向を中心として60°~80°の範囲に放出されることとなる。
【0026】
次いで、無人飛行体1の動作を、特に散布機5の動作を中心に説明する。
無人飛行体1は、飛行中に、前方、後方、右又は左のいずれの向きに進行していても、散布機5から散布対象51を散布することができる。散布対象51の単位時間あたりの散布量は、散布機5(供給路41)において適宜調整される。
【0027】
散布機5において、散布対象51が収納部10から供給路41を介して回転体21に供給されると、散布対象51は、回転体21の遠心力により回転体21の外縁23に向かって移動する。また、散布対象51は、回転する第1フィン24、第2フィン25及び第3フィン26に接触し、回転体21の周方向に押し出される。ただし、散布対象51は、ガイド31に衝突することで回転体21の後方(進行方向の後ろ側)への放出を規制される。このようにして、散布対象51は、無人飛行体1の前方から放出される。
【0028】
このとき、直線状の第3フィン26は、散布対象51を相対的に早くリリースするため、この第3フィン26による散布対象51の分布は進行方向左~中央(つまりR3の範囲)に偏る。
【0029】
逆に、曲率のきつい第2フィン25は、散布対象51を相対的に遅くリリースするため、この第2フィン25による散布対象51の分布は進行方向の中央~右方向(つまりR2の範囲)に偏る。
【0030】
また、緩い曲率の第1フィン24による散布傾向は、第2フィン25及び第3フィン26による散布分布のほぼ中間であり、進行方向の中央付近(つまりR1の範囲)に集まる。
【0031】
したがって、第1フィン24、第2フィン25及び第3フィン26の各々の散布傾向を合算すると、散布対象51は、左右及び中央にバランスよく散布される。この点、全てのフィンを直線状のものにしたり、同じ曲率で湾曲するものにしたりすると、散布の分布が偏り、進行方向正面及び左右の所定の範囲に散布対象をバランスよく散布することができない。
【0032】
以上、本発明の代表的な実施形態について図面を参照しつつ説明してきたが、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載の精神及び教示を逸脱しない範囲でその他の改良例や変形例が存在する。そして、かかる改良例や変形例は全て本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0033】
1 無人飛行体
3 本体
5 散布機
10 収納部
20 ファン
21 回転体
24 第1フィン
25 第2フィン
26 第3フィン
51 散布対象

【要約】
【課題】無人飛行体の進行方向に満遍なく散布対象を散布する。
【解決手段】 粒状の散布対象を収容する収納部と、前記収納部から供給された前記散布対象を所定の進行方向に放出するファンと、を具備する散布機であって、前記ファンが、回転軸の周りに回転する回転体と、前記回転体の前記回転軸及び外縁の間に亘ってそれぞれ形成された、第1の曲率半径で湾曲する第1フィン、前記第1の曲率半径よりも小さい第2の曲率半径で湾曲する第2フィン、及び、略直線状の第3フィンと、を含み、前記第1~第3フィンが、前記収納部から前記回転体上に供給された前記散布対象を前記進行方向に押し出すこと、を特徴とする散布機。
【選択図】図3
図1
図2
図3