(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-16
(45)【発行日】2022-06-24
(54)【発明の名称】車両前部構造
(51)【国際特許分類】
B62D 25/20 20060101AFI20220617BHJP
B60K 11/04 20060101ALI20220617BHJP
B60K 13/04 20060101ALI20220617BHJP
【FI】
B62D25/20 N
B60K11/04 L
B60K11/04 H
B60K13/04 A
(21)【出願番号】P 2018056472
(22)【出願日】2018-03-23
【審査請求日】2021-02-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】小林 竜也
【審査官】長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】実開昭60-023423(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2016/0361991(US,A1)
【文献】特開2017-203396(JP,A)
【文献】国際公開第2012/111908(WO,A1)
【文献】実開昭64-013227(JP,U)
【文献】特開平09-193839(JP,A)
【文献】特開2015-054588(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/20
B60K 11/04
B60K 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の底面を構成してエンジン下部の一部又は全部を覆うアンダカバーを備えた車両前部構造であって、
前記アンダカバーは、車両前後方向に並ぶ第1の開口部及び第2の開口部を有し、
前記第1の開口部は、車両前後方向において開口中央がエンジンの前方に配置されたラジエータファンよりも後方に位置し、
前記第2の開口部よりも車両前後方向の長さが小さく形成され、
前記第2の開口部は、前記第1の開口部よりも後方
であって、前記車両が所定速度で走行した際に、前記第1の開口部から排出される空気により、車両前方から後方へ流れる気流が剥離されて形成される負圧領域の範囲内に配置され、且つ車両前後方向においてエンジンルーム内の発熱部と同位置又はそれよりも後方に位置することを特徴とする車両前部構造。
【請求項2】
前記第1の開口部を開閉可能な蓋部と、
エンジンルーム内の所定の対象物の温度を検出する検出手段と、
該検出手段による検出温度が所定の温度以上の場合に前記蓋部を開放し、所定の温度未満の場合に前記蓋部を閉塞する制御部と、
を備え
、
前記第2の開口部は、常時開放していることを特徴とする請求項1に記載の車両前部構造。
【請求項3】
前記蓋部は、前記エンジンルーム側に開放移動する、又は前記アンダカバーの表面に沿ってスライドして開放移動することを特徴とする請求項2に記載の車両前部構造。
【請求項4】
車幅方向において、前記第2の開口部の両端は、前記第1の開口部の車幅方向両端に挟まれた範囲内に位置することを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の車両前部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両前部構造に関し、特に、車両の底面を構成してエンジン下部の一部又は全部を覆うアンダカバーを備えた車両前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の前方部分には、底面を構成するアンダカバーが設けられており、アンダカバーによってエンジン等の車両構成部品を下方から覆うことにより、車両底面の凹凸をなくし、車両走行時に車体下部を流れる空気流の抵抗を低減して空力性能を向上させている。
【0003】
しかしながら、アンダカバーによりエンジンルームの下面を閉鎖してしまうと、エンジンや排気管等から発生する熱によってエンジンルーム内に熱気がこもり、周辺部品の温度が上昇してしまうという問題がある。
【0004】
空力性能を向上させつつ、エンジンルーム内の熱気の問題を解決するための構造として、特許文献1には、アンダカバーに関する車両下部構造が開示されている。この車両下部構造は、車両前部のエンジンルームを車両下方側から覆う第1のアンダカバーと、第1のアンダカバーの車両後方側に設けられた第2のアンダカバーとを有し、第1のアンダカバーと第2のアンダカバーの間には、エンジンルームと車両床下とを連通する開口を有する排気部が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の車両下部構造では、走行時に、第1のアンダカバー及び第2のアンダカバーの下面に沿って車両前方から後方へ気流を流して空力性能を高めることができるとともに、排気部からエンジンルーム内の熱気を排出することができる。これにより、排気部を有していないものに比して、エンジン周辺部品の温度上昇を抑えることができる。
【0007】
しかしながら、第1のアンダカバーによって整流された気流によって排気部の開口が塞がれてしまうことから、エンジンルーム内の熱気を十分に排出することができないという問題があり、空力性能を確保しながらより効果的に熱気を排出できる構造が求められていた。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、車両の空力性能の低下を抑えながら、エンジンルーム内の熱気を効果的に排出可能な車両前部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の一実施形態は、車両の底面を構成してエンジン下部の一部又は全部を覆うアンダカバーを備えた車両前部構造であって、前記アンダカバーは、車両前後方向に並ぶ第1の開口部及び第2の開口部を有し、前記第1の開口部は、車両前後方向において開口中央がエンジンの前方に配置されたラジエータファンよりも後方に位置し、前記第2の開口部よりも車両前後方向の長さが小さく形成され、前記第2の開口部は、前記第1の開口部よりも後方であって、前記車両が所定速度で走行した際に、前記第1の開口部から排出される空気により、車両前方から後方へ流れる気流が剥離されて形成される負圧領域の範囲内に配置され、且つ車両前後方向においてエンジンルーム内の発熱部と同位置又はそれよりも後方に位置することを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、ラジエータファンを通ってエンジンルーム内に導入された空気をアンダカバーの第1の開口部からアンダカバーの下面側へ排出することができる。第1の開口部から排出される気流によって、走行時にアンダカバーの下面に沿って流れる気流が剥離し、その結果、第1の開口部の後方側に位置する第2の開口部の下方側には、剥離による負圧領域が形成される。これにより、第2の開口部からアンダカバー外部へ排出される空気量を増加させることができ、エンジンルーム内の発熱部を通過した熱気を車両前後方向において発熱部と同位置又はそれよりも後方に位置する第2の開口部から十分に排出することが可能となる。
【0011】
また、本発明の一実施形態は、前記車両前部構造において、前記第1の開口部を開閉可能な蓋部と、エンジンルーム内の所定の対象物の温度を検出する検出手段と、該検出手段による検出温度が所定の温度以上の場合に前記蓋部を開放し、所定の温度未満の場合に前記蓋部を閉塞する制御部と、を備え、前記第2の開口部は、常時開放していることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、エンジンルーム内の所定の対象物の温度が所定の温度未満であってエンジン周辺部品の温度上昇が抑えられている場合に、第1の開口部を閉塞してアンダカバーに沿って車両床下を流れる気流の剥離をなくし、車両の空力性能を向上させることができる。また、エンジンルーム内の所定の対象物の温度が所定の温度以上であってエンジンルーム内の熱気の排出が必要とされる場合に、第1の開口部を開放して第2の開口部から排出される空気量を増加し、エンジンルーム内の熱気のこもりを防止することができる。
【0013】
また、本発明の一実施形態は、前記車両前部構造において、前記蓋部は、前記エンジンルーム側に開放移動する、又は前記アンダカバーの表面に沿ってスライドして開放移動することを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、開放状態にある蓋部によって車両床下を流れる気流が乱れることを防止することができるため、空力性能を維持することができる。
【0015】
また、本発明の一実施形態は、前記車両前部構造において、車幅方向において、前記第2の開口部の両端は、前記第1の開口部の車幅方向両端に挟まれた範囲内に位置することを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、第2の開口部の全域を第1の開口部の負圧領域内に位置させて、第2の開口部からの熱気の排出効率を高めることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る車両前部構造によれば、車両の空力性能の維持しながら、エンジンルーム内の熱気のこもりを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1の実施の形態である車両前部構造を示す車両前部の断面図。
【
図3】第2の開口部の変形例を示す
図2と同様の底面図。
【
図4】第1の開口部及び第2の開口部の変形例を示す底面図。
【
図5】本発明の第2の実施の形態である車両前部構造の要部を示す断面図。
【
図6】第2の実施の形態の車両前部構造の制御機構の構成説明図。
【
図7】制御部による制御手順を示すフローチャート図。
【
図8】蓋部の変形例を示す車両前部構造の要部断面図。
【
図9】従来のアンダカバーを説明する
図1と同様の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態である車両前部構造を示す、車両前部の車幅方向中央部における断面図であり、
図2は、車両前部の底面図である。本発明に係る車両前部構造10は自動車等の車両に適用される。
【0020】
図2に示すように、車両の車体前部には、エンジンEGが搭載されるエンジンルーム11が設けられている。エンジンルーム11の上部は、開閉自在なパネル状のフロントフード12で閉塞されており、エンジンルーム11の前部には、ラジエータユニット20が配設され、その前方には空調装置の熱交換器を構成するコンデンサ24が配設される。エンジンルーム11の下部には、エンジンEGの一部又は全部を覆って車両の底面を形成するアンダカバー30が配設される。また、エンジンルーム11の後方には、図示していないトーボードを介してキャビンが設けられる。
【0021】
ラジエータユニット20は、ラジエータ21と、ラジエータ21の後方に配置されるラジエータファン22とを備える。ラジエータ21は、エンジンEG内を循環するエンジン用冷却水の放熱を行い、ラジエータファン22は、回転によって空気流を生じさせ、外気を積極的にエンジンルーム内へ取り込むことができる。
【0022】
ラジエータユニット20及びコンデンサ24は、車体に取付けられたラジエータパネル28に固定される。ラジエータパネル28は、車幅方向の両側部が、車体の車幅方向両端部に配設されて車両前後方向に延びる一対のフロントサイドフレーム(図示せず)に固定されている。
【0023】
車両の前端部(すなわち、コンデンサ24及びラジエータユニット20の前方)には、フロントグリル14と、バンパフェイス16とが設けられる。
【0024】
フロントグリル14は、上下方向においてフード12とバンパフェイス16との間に配置された外装部材であり、空気をエンジンルーム11内に導入するためのグリル開口15を有する。
【0025】
バンパフェイス16は、車体前端部に設けられる外装部材であって、例えばPP等の樹脂材料によって形成されており、バンパ本体部17と、バンパ本体部17の下方に位置するエアダム部18とを備える。バンパ本体部17及びエアダム部18は、それぞれ、車幅方向に延設された板状部材で形成され、車両後方側が開口した略U字状の縦断面を有する。また、バンパ本体部17とエアダム部18との間には、外気導入口19が形成されている。
【0026】
アンダカバー30は、車両の底面を形成する板状部材であり、エンジンルーム11に配設されたエンジンEG等のパワーユニットの底面を保護するとともに、車両下部を通過する走行風を整流する機能を有する。アンダカバー30の前端は、バンパフェイス16の底部後端に固定され、アンダカバー30の後部の車幅方向両側は、図示していないエンジンマウントクロスメンバ等に固定されている。本実施の形態では
図2に示すように、車両前端部から左右の前輪45,46の位置までアンダカバー30が延びている。
【0027】
アンダカバー30は、エンジンルーム11と車外とを連通する第1の開口部32及び第2の開口部34を有する。各開口部32,34は車両前後方向に並んで形成され、第2開口部34は第1の開口部32よりも車両後方に位置している。
【0028】
第1の開口部32は、ラジエータファン22を通ってエンジンルーム11内に導入された空気をアンダカバー30の外部へ排出するための排出口であり、車両前後方向において開口中央32aがラジエータファン22よりも後方に位置している。
【0029】
第2の開口部34は、開口の一部が、車両前後方向においてエンジンルーム11内の発熱部と同位置又はそれよりも後方に位置するように形成される。ここで、発熱部とは、エンジンEGの駆動にともなって高温になる部位であり、本実施の形態では一例として、排気管40を発熱部として記載している。なお、第2の開口部34の車両前後方向における開口中央34aが発熱部と同位置又はそれよりも後方に位置することが好ましく、本実施の形態では、第2の開口部34の開口前端34bが排気管40と重なり、開口中央34aが排気管40の後方に位置している。
【0030】
第1の開口部32は、車両前後方向において第2の開口部34と近接する位置に形成される。具体的には、車両が所定速度で走行した際に、第1の開口部32から排出される空気により、車両床下(すなわち、アンダカバー30の下面)に沿って車両前方から後方へ流れる気流が剥離されて形成される負圧領域NPの範囲内に第2の開口部34が位置するように形成される。なお、
図2に示す例では、各開口部32,34が略矩形状に形成されているが、開口部32,34の形状はこれに限られず、楕円形状やその他の多角形状等、適宜設定することが可能である。
【0031】
本実施の形態では、第1の開口部32の車両前後方向の幅W1が、第2の開口部34の車両前後方向の幅W2よりも小さく設定されている。また、第1の開口部32と第2の開口部34とは、車幅方向の左右両端の位置がほぼ等しく、車幅方向の長さL1,L2がほぼ等しくなるように設定されている。
【0032】
次に、第1の実施の形態の作用及び効果について説明する。
【0033】
上述した車両前部構造10を備えた車両では、
図1に示すように、グリル開口15及び外気導入口19を通って車内に導入された空気が、
図1のドットの矢印で示すように、ラジエータファン22によってエンジンルーム11内へ拡散され、その一部が第1の開口部32から車外へ排出される。走行時にアンダカバー30の下面30aに沿って車両前方から後方へ流れる気流は、第1の開口部32からの排出される空気によって下面30aから剥離し、アンダカバー30と車両後方へ流れる気流との間に負圧領域NP(
図1で破線で囲む領域)が形成される。第2の開口部43の下方側に、この負圧領域NPが形成されることで、エンジンルーム11内の空気は第2の開口部34からアンダカバー30外部へ積極的に排出される。これにより、
図1の塗り潰し矢印で示すように、排気管40を通過して高温になった空気を第2の開口部34から車外へ十分に排出し、エンジンルーム11内の熱気のこもりを防止することができる。なお、第2の開口部34は、少なくとも一部が第1の開口部32による負圧領域NP内にあればよいが、本実施の形態のように、車幅方向において、第2の開口部34の両端を第1の開口部34の車幅方向両端に挟まれた範囲内に位置させることで、第2開口部34のほぼ全域を負圧領域NP内にすることができる。
【0034】
図9(a)及び(b)は、それぞれ、従来の車両前部構造を説明する図である。
図9(a)に示す車両前部構造100のように、アンダカバー130が開口部を有していないものでは、エンジンルーム11内の熱気が排出されずに内部にこもり、周辺部品の温度が上昇してしまう。また、
図9(b)に示す車両前部構造200のように、アンダカバー230において、車両前後方向で発熱部の近傍にのみ開口部234を設けている場合、開口部234から熱気の排出が行われるものの、車両走行時には、車両床下を流れる気流によって開口部234が塞がれてしまい、エンジンルーム11内の熱気を十分に排出することができなくなる。特に、車両の高速走行時には、床下を流れる気流がエアカーテンとなって開口部234が閉鎖されてしまい、エンジンルーム11内に熱気がこもってしまう。
【0035】
これに対し、本実施の形態の車両前部構造10では、上述したように車両走行時に第1の開口部32によって車両床下に負圧領域Pが形成されることで、第2の開口部34からの熱気の排出を促し、エンジンルーム11内に熱気がこもることを防止することができる。
【0036】
(変形例1)
図3は、第2の開口部34の変形例を示す
図2と同様の底面図である。本変形例の第2の開口部34は、車幅方向の長さL2が第1の開口部32の長さL1よりも短く、車幅方向において、第2の開口部34の両端34b,34cが第1の開口部32の両端32b,32cよりも内側に位置している。本変形例では、
図7においてドットで示す第1の開口部32による負圧領域NP内に第2の開口部34の全域が確実に入るようにして、第2の開口部からの熱気の排出効率を高めることができる。
【0037】
(変形例2)
図4は、第1の開口部32及び第2の開口部34の他の変形例を示す
図2と同様の底面図である。本変形例では、第1の開口部32及び第2の開口部34が、それぞれ、車幅方向に並ぶ複数の開口によって構成されている。図示例ではそれぞれ3つの開口で構成しているが、開口の数はこれに限られない。第2の開口部34を構成する複数の開口部34-1,34-2,34-3は、エンジンルーム11内の排気管40やその他の発熱部の位置に対応して設けられ、各開口部34-1,34-2,34-3が負圧領域NP内に位置するように、第1の開口部32を構成する複数の開口部32-1,32-2,32-3が設けられる。本変形例では、負圧領域NPの範囲を低減して空力性能を向上させたり、所定の発熱部を効果的に冷却したりすることができる。なお、第1の開口部32及び第2の開口部34のうち、いずれか一方のみを複数の開口部で構成してもよい。
【0038】
(第2の実施の形態)
次に、
図5-
図7を用いて本発明の第2の実施の形態の車両前部構造60を説明する。なお、各図において、第1の実施の形態と同様の要素には、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0039】
本実施の形態の車両前部構造10では、アンダカバー30が、第1の開口部32を開閉可能な蓋部50を備える。また、車両前部構造10は、蓋部50を駆動して開方向又は閉方向へ移動させるアクチュエータ52と、エンジンルーム11内の所定の対象物の温度を検出する温度センサ(検出手段)54と、制御部であるECU(電子制御ユニット)56とを備える。なお、
図5では、アクチュエータ52、温度センサ54及びECU56の記載を省略している。
【0040】
蓋部50は、第1の開口部32を閉塞可能な形状及び大きさを有する平板状であって、本実施の形態では略矩形状に形成されており、第1の開口部32の縁部に設けられた軸部材51に蓋部50の一側部が取り付けられ、軸部材51を中心に回動可能に構成されている。また、蓋部50は、アクチュエータ52の駆動力により、第1の開口部32を閉塞する閉塞位置と、エンジンルーム11側へ回動して第1の開口部32を開放にする開放位置との間で移動可能に構成されている。なお、
図5では蓋部50の閉塞位置を仮想線で示し、開放位置を実線で示している。
【0041】
温度センサ54は、エンジンルーム11において熱気がこもる状態であるか否かを直接的又は間接的に検知するために、エンジンルーム11における所定の対象物の温度、例えば、エンジンルーム11の内部温度、エンジン用冷却水の温度、又は、エンジンルーム11内の任意の部品の温度等を検出するものである。本実施の形態の温度センサ54は、エンジンルーム11に配設され、エンジンルーム11の内部温度を検出する。
【0042】
ECU50は、例えばCPU等の情報処理手段、RAMやROM等の記憶手段、入出力インターフェイス等を有して構成される。ECU50は、アクチュエータ52及び温度センサ54と接続されており、アクチュエータ52からの検知信号やアクチュエータ52に対する指示信号に基づいて蓋部50の開閉状態を識別可能であり、温度センサ54の検出結果に基づいて、アクチュエータ52を作動させて蓋部50を開放位置又は閉塞位置へ移動させる。
【0043】
ECU50には、蓋部50の開閉制御の基準となる所定の温度閾値が設定されている。本実施の形態では、開放状態にある蓋部50を閉塞状態へ切り替える閾値となる第1温度Tcloseと、閉塞状態にある蓋部50を解放状態に切り替える閾値となる第2温度Topenとが設定されている。また、第1温度Tcloseは第2温度Topenよりも高い温度に設定されている。
【0044】
次に、
図7のフローチャートを参照して、車両前部構造10のECU50による第1の開口部32の開閉動作について説明する。
【0045】
まず、ECU50は、アクチュエータ52からの検知信号に基づき、第1の開口部32が開放状態であるか閉塞状態であるかを判定する(ステップS11)。
【0046】
第1の開口部32が開放状態である場合(ステップS11:Yes)、ECU50は温度センサ54の検出結果に基づき、エンジンルーム11内の温度Tが、第1温度Tclose未満であるか否かを判定する(ステップS12)。
【0047】
検出された温度Tが第1温度Tclose未満である場合(ステップS12:Yes)、アクチュエータ52を作動させ蓋部50を閉塞位置へ移動させて第1の開口部32を閉塞し(ステップS13)、制御処理をリターンする。
【0048】
ステップS12において温度Tが第1温度Tclose以上である場合(ステップS12:No)、ステップS11に戻り、以降の処理を順次実行する。
【0049】
一方、ステップS11において、第1の開口部32が閉塞状態である場合(ステップS11:No)、ECU50は温度センサ54の検出結果に基づき、エンジンルーム11内の温度Tが、第2温度Topen以上であるか否かを判定する(ステップS14)。
【0050】
検出された温度Tが第2温度Topen以上である場合(ステップS14:Yes)、アクチュエータ52を作動させ蓋部50を開放位置へ移動させて第1の開口部32を開放し(ステップS15)、制御処理をリターンする。
【0051】
ステップS14において温度Tが第2温度Topen未満である場合(ステップS14:No)、ステップS11に戻り、以降の処理を順次実行する。
【0052】
なお、上述した制御は、車両の走行・停止に関わらず行われるが、これに代えて、車両停止時に第1の開口部32を開放し、車両走行時に
図7に示す開閉制御を行う構成としてもよい。
【0053】
上述した車両前部構造10では、第1の開口部32が開放位置にあり、温度センサ54が検出したエンジンルーム11の温度Tが所定の第1温度Tclose未満である場合、すなわち、エンジンルーム11内の温度Tが比較的低く、エンジン周辺部品の温度上昇が抑えられる場合に、第1の開口部32を閉塞することで、走行時にアンダカバー30に沿って車両床下を流れる気流の剥離をなくし、車両の空力性能を高めることができる。
【0054】
また、第1の開口部32が開放位置にあり、温度センサ54が検出したエンジンルーム11の温度Tが所定の第1温度Tclose以上である場合、すなわち、エンジンルーム11内の温度Tが比較的高く、エンジン周辺部品の温度上昇が懸念される場合に、第1の開口部32の開放状態を維持して第2の開口部34からの排気を促し、熱気のこもりを防止することができる。
【0055】
また、第1の開口部32が閉塞位置にあり、温度センサ54が検出したエンジンルーム11の温度Tが所定の第2温度Topen未満である場合、すなわち、エンジン周辺部品の温度上昇が抑えられる場合に、第1の開口部32の閉塞状態を維持して、車両の空力性能を高めることができる。
【0056】
また、第1の開口部32が閉塞位置にあり、温度センサ54が検出したエンジンルーム11の温度Tが所定の第2温度Topen以上である場合、すなわち、エンジン周辺部品の温度上昇が懸念される場合に、第1の開口部32を開放して第2の開口部34からの排気を促し、排気管40の冷却効果を高めて熱気のこもりを防止することができる。
【0057】
なお、第2の開口部34には蓋部を設けることなく、開放状態を維持することで、常時、エンジンルーム11内の熱気を第2の開口部34から排出可能にし、エンジン周辺部品を適切に冷却できるようにしている。
【0058】
(変形例3)
図8は、蓋部50の変形例を示す要部断面図である。本変形例の蓋部50は、アクチュエータ52の駆動力により、アンダカバー30の表面に沿ってスライド移動して、第1の開口部32を開放状態又は閉塞状態にする。図示例では、アンダカバー30の上面に沿って車両前後方向へスライド移動するものを示しているが、アンダカバー30の下面に沿ってスライド移動する構成や、車幅方向にスライド移動する構成であってもよい。このように、蓋部50をアンダカバー30の表面に沿ってスライド移動させる構成とすることで、エンジンルーム11内の気流及び車両床下を流れる気流が、蓋部50によってその流れを阻害されることを抑制することができる。
【0059】
なお、本発明は上述した実施の形態や変形例に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、変形例1又は変形例2に示す第1の開口部32に対して、第2の実施の形態や変形例3に示す蓋部50を設けてもよい。変形例2のように第1の開口部32が複数の開口部32-1,32-2,32-3から構成される場合、各開口部32-1,32-2,32-3毎に蓋部50を設けてもよいし、全ての開口部32-1,32-2,32-3を一つの蓋部50で閉塞する構成であってもよい。
【符号の説明】
【0060】
10 車両前部構造
11 エンジンルーム
14 フロントバンパ
16 上部外気導入口
18 下部外気導入口
20 ラジエータユニット
21 ラジエータ
22 ラジエータファン
30 アンダカバー
32 第1の開口部
34 第2の開口部
40 排気管(発熱部)
50 蓋部
54 温度センサ(検出手段)
56 ECU(制御部)
EG エンジン
NP 負圧領域