(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-16
(45)【発行日】2022-06-24
(54)【発明の名称】電気的短絡検出のためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
G01R 31/50 20200101AFI20220617BHJP
B60L 7/02 20060101ALI20220617BHJP
B60L 3/00 20190101ALI20220617BHJP
G01R 31/52 20200101ALI20220617BHJP
G01R 31/56 20200101ALI20220617BHJP
G01R 31/58 20200101ALI20220617BHJP
【FI】
G01R31/50
B60L7/02
B60L3/00 N
G01R31/52
G01R31/56
G01R31/58
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2015202512
(22)【出願日】2015-10-14
【審査請求日】2018-09-13
(32)【優先日】2014-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519123825
【氏名又は名称】トランスポーテーション アイピー ホールディングス,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム・ジェームズ・プレメラニ
(72)【発明者】
【氏名】カリム・ユンシ
(72)【発明者】
【氏名】ブレット・デュウェイン・ウォーデン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・クラハン
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・カレン
(72)【発明者】
【氏名】アジス・クッタナイール・クマール
【審査官】山崎 仁之
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-215339(JP,A)
【文献】米国特許第06349248(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0013232(US,A1)
【文献】特開2004-142726(JP,A)
【文献】特表2014-515490(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/50-74
B60L 7/02
B60L 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気システムであって
、
印加電圧と伝導電圧から電気システムの抵抗変化信号を得る
ための処理アセンブリを含み、前記
伝導電圧は当該電気システムの1つ以上の抵抗素子を通して伝導される電圧
であり、
前記処理アセンブリは、前記抵抗変化信号の1つである比率偏差信号を式1によって算出し、
【数1】
ここで、RatioDeviation(t)は、
前記比率偏差信号を表し、Vgrid(t)は当該電気システムの伝導電圧を表し、Vbase(t)は印加電圧もしくはベース電圧、または6もしくは別の数などの定数で割られた印加電圧を表し、
式1の項
【数2】
は式1の項
【数3】
の低域通過フィルタリングを表し、
前記
処理アセンブリは、前記
比率変化信号に基づいて短絡イベントを特定する
ように構成されてなる、ことを特徴とする
電気システム。
【請求項2】
前記印加電圧が車両の発電制動中に前記車両のトラクションモータによって生成され、前記1つ以上の抵抗素子が発電制動グリッドの1つ以上の抵抗器を含む、請求項
1に記載の
電気システム。
【請求項3】
前記
電気システムが発電制動グリッドである、請求項1に記載の電気システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記述される発明主題についての実施形態は、電力抵抗器のような、電子システムの電気的短絡の検出に関する。
【背景技術】
【0002】
既知の電子システムには、電流を抵抗器に伝導し、電流を放散させるものがある。例えば、いくつかの車両は、発電制動中または回生制動中にモータによって生成された電力を受け取る伝導リボンを有するグリッドを含む。この電力はモータによって生成され、車両の動きを遅くしたり停めたりするように作用する。電力は、車両の発電制動システムから熱として放散されるために、グリッドに伝導される。
【0003】
グリッドは、1つ以上の一連の抵抗器から形成され得る。これらの抵抗器は、相互に比較的近接して配置されている伝導プレート中に実装され得る。時間の経過とともに、グリッドへの損傷、標準的な損耗または他の理由により、抵抗器の互いの相対位置が変化し始める可能性がある。もし、抵抗器が(例えば振動または他の動きにより)互いに接触すると、抵抗器間における内部の電気的短絡が発生する可能性がある。この短絡は、グリッドを傷つけたり、発電制動システムを傷つけたり、およびそれ以外にも、車両の作動に悪影響を及ぼす可能性がある。
【発明の概要】
【0004】
1つの実施形態では、(例えば電気システムにおける短絡を検出するための)方法は、電気システムの1つ以上の抵抗素子を通して伝導される電流の特性を測定する工程を含む。電流は、印加電圧として電源から電気システムに供給される。当該方法はまた、1つ以上の抵抗素子の1つ以上の電気抵抗の変化を表す抵抗変化信号を判定する工程を含む。抵抗変化信号は、測定される電流の特性と、測定される電流の特性または電源によって供給される印加電圧の1つ以上の、ローパスフィルタ処理後の値との差に、少なくとも部分的に基づき得る。当該方法はまた、抵抗変化信号に少なくとも部分的に基づいて、短絡イベントを特定する工程を含み得る。
【0005】
別の実施形態では、システム(例えば検出システム)は、感知装置および処理アセンブリを含む。感知装置は、電気システムの1つ以上の抵抗素子を通って伝導される電流の特性を測定するように構成される。電流は、印加電圧として電源から電気システムに供給され得る。処理アセンブリは、1つ以上の抵抗素子の1つ以上の電気抵抗の変化を表す抵抗変化信号を判定するように構成され得る。抵抗変化信号は、測定される電流の特性と、測定される電流の特性または電源によって供給される印加電圧の1つ以上の、ローパスフィルタ処理後の値との差に、少なくとも部分的に基づき得る。処理アセンブリは、抵抗変化信号に少なくとも部分的に基づいて、短絡イベントを特定するように構成され得る。
【図面の簡単な説明】
【0006】
ここで、添付の図面を簡単に参照する。
【
図1】
1つの実施形態における動力システムを図示する。
【
図2】
図1に示される動力システムの電気システム、および1つの実施形態における電気的短絡検出システムの概略図を図示する。
【
図3】
図1に示される電気システムおよび図2に示される検出システムの、1つの実施形態についての回路図である。そして、
【
図4】
短絡イベントを検出するための方法の、1つの実施形態についてのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書に記述される発明主題についての1つ以上の実施形態は、電子システムにおける電気的短絡を検出する。1つの態様では、本明細書に記述されるシステムおよび方法は、鉄道車両や他のオフハイウェイ車両(OHV)のような車両の、発電制動グリッド(DBG)における電気的短絡を検出するために使用され得る。しかし、すべての実施形態がDBGまたは鉄道車両に限定されるわけでは無い。1つ以上の実施形態が、非車両システムおよび、鉄道車両またはOHV以外の車両システムを含む、その他のシステムにおける短絡を検出するために使用され得る。
【0008】
DBGの作動中に、DBGの伝導プレートが電気的短絡を起こし、DBGの電流が、プレートによって形成される電気抵抗の少なくとも一部を迂回する場合がある。プレートは、例えば、電流によって生じた熱をプレート周りの空気に放散させる送風機(例えばファン)が作り出す空気の流れによって動揺が加えられると、短絡を起こすことがある。しかし、プレートはまた、DBGの熱サイクルによる短絡を起こす可能性もあり、それは金属元素の歪みおよび/または転移を生じさせ得る。これらの短絡は、2つ以上のプレート間に、局所的なホットスポットを形成し、それが最終的に、火花、溶解、アーク放電およびDBGの故障につながる可能性がある。
【0009】
DBGの故障を防ぐために、本明細書に記述されるシステムと方法は、電気的短絡の早期検出を提供し得る。短絡を早期に検出することによって、予防的な点検保守を整備することが可能となり、それによりDBGまたは他の電気システムのより深刻な損傷および/またはダウンタイムを回避することができる。
【0010】
図1は、1つの実施形態における動力システム(100)を図示する。動力システム(100)は機関車として示されているが、代替として車両でない別タイプのシステムまたは別タイプの車両であっても良い。システム(100)は、例えば発電制動作動中に電力を生成するトラクションモータなどの電源(102)を含む。代替として、電源(102)は、オルタネータ、ジェネレータ、バッテリーまたは他の電力源を表し得る。電源(102)は電流を生成し、その電流は電気システム(104)に伝導される。電気システム(104)は、電力抵抗器などの1つ以上の抵抗素子を含む。これらの抵抗素子は、電源(102)からの電流を熱に変換する。熱は例えば送風機(例えばファン)によって、動力システム(100)から放散され得る。図示されている実施形態では、電源(102)は、電動システム(100)の発電制動中に電流を生成するトラクションモータを含み得る。電気システム(104)は、電力を熱に変換して放散させるDBGを含み得る。
【0011】
図2は、1つの実施形態における電気システム(104)および電気的短絡検出システム(200)(図2では「検出システム」)の概略図を図示する。システム(104)は、導通状態で相互に直列接続されるいくつかの電気的抵抗素子(202)を含む。図示されている実施形態では、抵抗素子(202)は、直交する2方向がそれらに直交する第3の方向よりも長い外形を有する、伝導性のある二次元ボディなどの、伝導プレートである。代替として、抵抗素子(202)は他タイプの抵抗器であり得る。システム(104)の作動中に、電源(102)からの電力が抵抗素子(202)を通って伝導される。抵抗素子(202)は、電気システム(104)を通る電流の流れを減少させ、電力を熱に変換する。1つの例として、車両の発電制動中に、車両のトラクションモータによって生成された電力が抵抗素子(202)(例えばDBG)へ伝導され、熱として放散される事が可能である。
【0012】
抵抗素子(202)は、比較的近い間隔で配置され得る。作動中、抵抗素子(202)は、送風機によって生成された空気の流れにより互いの相対位置が変化する、および/または、抵抗素子(202)へと伝導される電力によって生成される熱のために曲がる、あるいは変形する可能性がある。この位置変化および/または変形によって、抵抗素子(202)は相互に接触して電気的短絡を起こす可能性がある。短絡は動力システム(100)を傷付ける、および/または、動力システム(100)の作動を制限する可能性がある。
【0013】
検出システム(200)は、1箇所以上で電気システム(104)と導通接続され、電気システム(104)を通って伝導される電流の電気的特性をモニタする。検出システム(200)は、電気システム(104)の電気抵抗の変化を経時的にモニタし、これらの変化に基づいて電気的短絡を検出する。例えば、抵抗素子(202)が互いに接触していない間は、抵抗素子(202)を通って伝導される電圧および/または電流は、電源(102)によって生成される電圧に比例し得る。電源(102)によって生成され電気システム(104)に伝導される電圧および/または電流は、抵抗素子(202)に印加される電圧または電流であることから、印加電圧(V
dc
)または印加電流と呼ぶ事ができる。抵抗素子(202)を通って伝導される電圧および/または電流(本明細書では伝導電圧または伝導電流と呼ばれる)は、1つ以上の比例定数で印加電圧および/または印加電流に比例し得る。例えば、伝導電圧と比例定数の積は入力電圧に等しい、および/または、伝導電流と、同じかまたは別の比例定数の積は入力電圧に等しい。比例定数は、経時的に、同一または実質上同一である。
【0014】
しかしながら、抵抗素子(202)の2つ以上が少なくとも瞬間的に互いに接触し電気的短絡を引き起こす場合は、比例定数が急激に変化する可能性がある。したがって、伝導電圧および/または伝導電流の比率における急激な変化は、電気的短絡を意味し得る。検出システム(200)は、電気的短絡が電気システム(104)および/または動力システム(100)の作動に損傷を与える前に素早く短絡を特定するために、伝導電圧や伝導電流の変化、および/または、これらの電圧および/または電流の比率の変化をモニタする。
【0015】
図3は、電気システム(104)および検出システム(200)についての、1つの実施形態の回路図である。様々な抵抗素子群(202)が互いに並列接続され、それら抵抗素子群の中の抵抗素子(202)は互いに直列接続されている。例えば、「1」「2」および「3」とラベルされている抵抗素子(202)は第1群において互いに直列接続され、「4」「5」および「6」とラベルされている抵抗素子(202)は第2群において互いに直列接続され、「7」「8」および「9」とラベルされている抵抗素子(202)は第3群において互いに直列接続され、そして、「10」「11」および「12」とラベルされている抵抗素子(202)は第4群において互いに直列接続され、第1群、第2群、第3群および第4群は互いに並列であり得る。スイッチ(304)を各群の抵抗素子(202)の反対側に配置し、どの抵抗素子(202)が電源(102)からの印加電流を受け取るかを制御する事が可能である。
【0016】
検出システム(200)は、抵抗素子(202)と伝導接続する感知装置(300)を含む。感知装置(300)は、電源(102)によって電気システム(104)へと供給される電流の特性を測定する1つ以上のデバイスパを表す。例えば、感知装置(300)は、伝導電圧および/または伝導電流を測定できる。例えば、感知装置(300)は、1つ以上の電圧計および/または電流計(302)(図3の「VAM」)、高電圧フィルタ(306)(図3の「High V」)、および/または低電圧フィルタ(308)(図3の「Low V」)を含み得る。電圧・電流計(302)および/またはフィルタ(306、308)は、図3に示される位置および/またはその他の位置にある抵抗素子(202)間の電圧、および/または、2つ以上の抵抗素子(202)との間の電圧低下を測定することができる。代替として、感知装置(300)は、抵抗素子(202)の間を伝導される、および/または、抵抗素子(202)を通って伝導される、電圧および/または電流を測定する別タイプのセンサを含み得る。
【0017】
検出システム(200)はまた、感知装置(300)と作動可能に接続される処理アセンブリ(310)を含み得る。例えば、処理アセンブリ(310)および感知装置(300)は、1つ以上の有線および/または無線接続によって接続することができる。処理アセンブリ(310)は、1つ以上のプロセッサ(312)(図3の「Processing」、例えば、マイクロプロセッサ、コントローラ、またはその他の電気的なロジックベースのデバイス)を含む、および/または、それらと接続する、ハードウェア回路および/または電気回路を含む。この回路は、入力/出力モジュール(314)(図3の「I/O」)および入力/出力ボード(316)(図3の「CIO」)を含むことができる。入力/出力モジュール(314)は、オペレータに提示するための出力される信号(例えば、検出された短絡をオペレータに警告するために、ディスプレイデバイスに伝達される信号)を生成する1つ以上のプロセッサを含む、および/または、それらと接続する、ハードウェア回路および/または電気回路を表し得る。入力/出力ボード(316)は、ディスプレイデバイスまたはその他の出力デバイスに信号を伝達するための、1つ以上のプロセッサを含む、および/または、それらと接続する、ハードウェア回路および/または電気回路を表し得る。随意に、入力/出力ボード(316)は、1つ以上のその他のデバイスからの信号入力、例えば電源(102)によって生成され電気システム(104)に伝導される印加電圧を表す信号など、を受け取ることが可能である。
【0018】
図4は、短絡イベントを検出するための方法(400)の、1つの実施形態に関するフローチャートである。方法(400)は、1つの実施形態において、検出システム(300)によって実施され得る。(402)で、伝導電圧および伝導電流は、感知装置(300)によって測定される。(404)で、電源(102)によって電気システム(104)に供給される印加電圧および/または印加電流が判定される。例えば、感知装置(300)は電気システム(104)と1箇所以上で接続され、電源(102)からの印加電圧を測定する。
【0019】
(406)で、測定電圧および/または測定電流(例えば、伝導電圧および/または伝導電流)と、印加電圧および/または印加電流に対する測定電圧および/または測定電流とのフィルタ処理後の比率との差、が計算される。これらの差は抵抗変化信号と呼ばれ得る。
【0020】
処理アセンブリ(310)は、伝導電圧および/または伝導電流の比率を計算し、電気システム(104)の比例定数を決定することができる。例えば、処理アセンブリ(310)は、第2と第3の抵抗素子(202)(図3の素子「2」と「3」)の間で測定された伝導電圧を、第5と第6の抵抗素子(202)(図3の素子「5」と「6」)の間、第8と第9の抵抗素子(202)(図3の素子「8」と「9」)の間、第10と第11の抵抗素子(202)(図3の素子「10」と「11」)の間、あるいは抵抗素子(202)の別の対の間、で測定された伝導電圧で除する。電気システム(104)に関するさらなる比例定数を計算するために、さらなる比率が測定され得る。
【0021】
正常作動(例えば短絡がない場合)中には、比例定数は同一または実質上同一である(ある指定された閾値、例えば、1%、3%、5%あるいは別の値で変化しない)。しかしながら、経時的には、抵抗素子(202)によって提供される抵抗は、時間についてゆっくりと変化し得る。その結果、比例定数は時間についてゆっくり変化し得る。比例定数は抵抗変化信号と呼ぶことができる。正常状態(例えば短絡がない場合)では、比例定数の変化は、単にノイズが含まれ得るだけで、比例定数の実際の変化ではない。短絡は、2つ以上の抵抗素子(202)間の接触イベント中に生じ得る。そのような接触イベントでは、抵抗変化信号はノイズを上回って上昇し、短絡を表わすことができる。
【0022】
1つの実施形態では、処理アセンブリ(310)は、印加電圧および伝導電圧から抵抗変化信号を計算することができる。代替として、抵抗変化信号は、印加電流および伝導電流から計算することができる。本明細書における記述は、電圧から抵抗変化信号を計算することに焦点を置いているが、すべての実施形態が電圧の使用に限定されるわけではない。
【0023】
処理アセンブリ(310)によって計算され得る抵抗変化信号の1つの例は、比偏差信号である。1つの実施形態では、処理アッセンブリ(310)は、以下のように比偏差信号を計算する:
(等式1)
この時、RatioDeviation(t)は比偏差信号を表し、
V
grid
(t)
は電気システム(104)またはグリッドの電圧(例えば伝導電圧)を表し、
V
base
(t)
は印加電圧またはベース電圧、あるいは印加電圧を6や他の数字のような定数で割ったものを表し、そして
は
のローパスフィルタ処理を表す。
の値をローパスフィルタ処理することにより、
の変化で、指定された時間に満たない短かい時間内に発生したものは不要とすることができる。
例えば、100ミリ秒内、50ミリ秒内、0.1秒内または他の時間内で開始および終了する
の増加または減少は無視することができ、一方で、指定される時間より長く継続する
の増加または減少は、
の値として使用される。
【0024】
の値は、比偏差信号のためのベースラインまたは期待値として使用できる。比例定数が著しく変化しない時間内では、
の値と
の値は近い数値で、結果として、比偏差信号は小さめまたはゼロとなる。しかし、比例定数が著しく変化する時間内では、
の値と
の値は離れた数値で、結果として、比偏差信号は大きめになる。
【0025】
処理アセンブリ(310)によって計算され得る抵抗変化信号の別の例は、電圧偏差信号である。1つの実施形態では、処理アセンブリ(310)は、以下のように電圧偏差信号を計算する:
(等式2)
この時、VoltageDeviation(t)は電圧偏差信号を表す。
【0026】
処理アセンブリ(310)によって計算され得る抵抗変化信号の別の例は、以下のような偏差平方信号である:
(等式3)
この時、
は偏差平方信号を表し、
は
のローパスフィルタ処理を表し、そして
は
のローパスフィルタ処理を表す。
【0027】
(408)で、測定電圧および/または測定電流(例えば、伝導電圧および/または伝導電流)と、印加電圧および/または印加電流に対する、測定電圧および/または測定電流のフィルタ処理後の比率との差が、短絡イベントを示唆するか否かについて判定を行う。例えば、処理アセンブリ(310)は、短絡イベントを特定するために抵抗変化信号を調べることができる。
【0028】
上に記術される比偏差信号(RatioDeviation(t))に関し、短絡イベントは、閾値(K)を超過する比偏差信号の絶対値に対応して特定され得る。閾値は選択可能で、それにより検出システム(200)の感度が変わる。例えば、検出システム(200)は、閾値(K)が小さめだと短絡に対する感度は高めであるが短絡イベント誤認の可能性も高く、閾値(K)が大きめだと短絡に対する感度は低めであるが短絡イベント誤認の可能性が低くなる。
【0029】
上に記述される電圧偏差信号(VoltageDeviation(t))に関しては、短絡イベントは電圧偏差信号の値をモニタしている処理アセンブリ(312)によって特定することが可能である。例えば、短絡イベントは、閾値(K)とV
base
(t)の積を超過する電圧偏差信号の絶対値に対応して特定され得る。
【0030】
上に記述される偏差平方信号(VoltageSquaredDeviation(t))に関しては、短絡イベントは偏差平方信号の値をモニタしている処理アセンブリ(312)によって特定することが可能である。例えば、短絡イベントは、閾値(K)、V
base
(t)と〈V
base
(t)〉の積を超過する偏差平方信号の絶対値に対応して特定され得る。
【0031】
短絡イベントが検出されると、方法(400)のフローは(410)に進むことができる。さもなければ、方法(400)のフローは、電気システム(104)を追加的にモニタするために、(402)へ戻ることができる。(410)で、短絡イベントの累計値が変更される。例えば、抵抗変化信号が短絡を示すたびに短絡イベントが発生したと判定するのとは対照的に、処理アセンブリ(310)は、短絡イベントの回数、持続時間、および/またはエネルギーに基づいて、値を変化させる累積値をトラックすることができる。
【0032】
1例として、処理アセンブリ(310)は、短絡イベントの合計数として、短絡イベントの累積値を計算することができる。そのような累積値の値の増加は、短絡イベントの深刻度の増加を示し得る。
【0033】
別の例として、処理アセンブリ(310)は、短絡イベントの合計持続時間としての累計値を計算することができる。例えば、抵抗変化信号が上に記述の1つ以上の閾値を超過している合計持続時間は、累計値として計算され得る。もし、ある短絡イベントが1秒間続き、その後に0.5秒間の短絡イベントとさらに別の2秒間の短絡イベントが続く場合、短絡イベントの合計持続時間は3、5となり得る。合計持続時間の増加は、より短い合計持続時間に比して、抵抗素子(202)への損傷の増加を意味し得る。合計持続時間は、動力システム(100)が開始位置から目標位置へ移動した後などに、0にリセットすることができる。
【0034】
別の例として、処理アセンブリ(310)は、短絡イベントのエネルギーとしての累積値を計算することができる。例えば、処理アセンブリ(310)は、短絡イベント検出中の偏差平方信号の時間積分として、累積値を計算することができる。この累積値は、短絡イベントが発生している、抵抗素子(202)間の接触点へと向かう熱エネルギーまたは熱量を示し得る、および/または、それらの量に比例し得る。
【0035】
(412)で、電気システム(104)が損傷している(したがって、短絡イベントを起こしている)ことを累積値が示しているか否かについて、判定がなされる。1つの実施形態では、処理アセンブリ(310)は、累積値の1つ以上と、関連する指定される閾値とを比較することができる。累積値が閾値を越える場合、処理アセンブリ(310)は、電気システム(104)が破損しているらしいと判定することができる。その結果、フローは(414)へと続き得る。そうでない場合は、方法(400)のフローは(402)へ戻り得る。
【0036】
(414)で、警告信号が生成される。この警告信号は、処理アセンブリ(310)によって生成され、動力システム(100)のオペレータに提示され得る。警告信号はオペレータに対し、電気システム(104)が剥離などの損傷の初期段階にあることを示し得る。1つの態様において、累積値は、損傷の異なるレベルを表すいくつかの異なる閾値(例えば、様々な剥離段階)と比較され得る。閾値は、電気システム(104)を、上記量を測定しながら破壊状態までテストし、その間に、工学的判断に基づき閾値を設定することを通して、決定され得る。警告信号は、動力システム(100)の作動を制御するために使用され得る。例えば、警告信号は、電力出力を低下させるために動力システム(100)を無効にする、または、それ以外では、電気システム(104)へのさらなる損傷を防ぐために動力システム(100)の作動を減じることができる。
【0037】
方法(400)は、動力システム(100)の作動中に1回以上繰り返され得る。例えば、方法(400)のフローは、電気システム(104)の追加的なモニタリングのために(402)へ戻り得る。
【0038】
1つの実施形態において、(例えば、電気システムにおける短絡検出のための)方法は、電気システムの1つ以上の抵抗素子を通して伝導される、電流の特性を測定する工程を含む。電流は、印加電圧として電源から電気システムに供給される。方法はさらに、1つ以上の抵抗素子の1つ以上の電気抵抗の変化を表す抵抗変化信号を判定する工程を含む。抵抗変化信号は、測定される電流の特性と、測定される電流の特性または電源によって供給される印加電圧の1つ以上の、ローパスフィルタ処理後の値との差に、少なくとも部分的に基づき得る。方法はさらに、抵抗変化信号に少なくとも部分的に基づいて、短絡イベントを特定する工程を含み得る。
【0039】
1つの態様では、印加電圧は、車両の発電制動中に車両のトラクションモータによって生成されることが可能であり、1つ以上の抵抗素子は、発電制動グリッドの1つ以上の抵抗器を含むことが可能であり、および/または、伝導電圧は、1つ以上の抵抗器にわたる電圧低下を含むことが可能である。
【0040】
1つの態様では、抵抗変化信号は、短絡イベントによる1つ以上の抵抗素子内の熱の増加によって引き起こされる、1つ以上の電気抵抗の変化を表し得る。
【0041】
1つの態様では、測定される電流の特性は、抵抗素子の少なくとも1つにわたる電圧低下を含み得る。
【0042】
1つの態様では、抵抗変化信号は、抵抗素子の少なくとも1つにわたる電圧低下の印加電圧に対する比率と、抵抗素子の少なくとも1つにわたる電圧低下の印加電圧に対する比率のローパスフィルタ処理後の値との差、を表し得る。
【0043】
1つの態様では、短絡イベントは、指定される0以外の閾値を超過する抵抗変化信号の絶対値に対応して特定され得る。
【0044】
1つの態様では、抵抗変化信号は、抵抗素子の少なくとも1つにわたる電圧低下と、印加電圧および抵抗素子の少なくとも1つにわたる電圧低下の印加電圧に対する比率のローパスフィルタ処理後の値の積との差、を表し得る。
【0045】
1つの態様では、短絡イベントは、印加電圧および指定される0以外の閾値の積を超過する、抵抗変化信号の絶対値に対応して特定され得る。
【0046】
1つの態様では、抵抗変化信号は、抵抗素子の少なくとも1つにわたる電圧低下および印加電圧のローパスフィルタ処理後の値の第1の積と、印加電圧および抵抗素子の少なくとも1つにわたる電圧低下のローパスフィルタ処理後の値の第2の積との差、を表し得る。
【0047】
1つの態様では、短絡イベントは、印加電圧、少なくとも1つの抵抗素子にわたる電圧低下および指定される0以外の閾値の積を超過する、抵抗変化信号の絶対値に対応して特定され得る。
【0048】
1つの態様では、方法はさらに、短絡イベントが特定される回数をモニタする工程、および、指定される0以外の閾値を超過して短絡イベントが特定される回数に対応する、電気システムへの損傷を表す警告信号を生成する工程を含み得る。
【0049】
1つの態様では、方法はさらに、短絡イベントの合持続時間をモニタする工程、および、指定される0以外の閾値を超過する合計持続時間に対応する、電気システムへの損傷を表す警告信号を生成する工程を含み得る。
【0050】
1つの態様では、方法はさらに、抵抗変化信号の時間積分をモニタする工程、および、指定される0以外の閾値を超過する時間積分に対応する、電気システムへの損傷を表す警告信号代表を生成する工程を含み得る。
【0051】
1つの態様では、方法はさらに、短絡イベントの特定に少なくとも部分的に基づいて、警告信号を生成する過程を含み得る。警告信号は、電気システムを含む動力システムのオペレータに、電気システムへの損傷を示すことができる。
【0052】
別の実施形態では、システム(例えば、検出システム)は、感知装置および処理アセンブリを含む。感知装置は、電気システムの1つ以上の抵抗素子を通して伝導される電流の特性を測定するように構成される。電流は、印加電圧として電源から電気システムに供給され得る。処理アセンブリは、1つ以上の抵抗素子の、1つ以上の電気抵抗の変化を表す抵抗変化信号を判定するように構成され得る。抵抗変化信号は、測定される電流の特性と、測定される電流の特性または電源によって供給される印加電圧の1つ以上の、ローパスフィルタ処理後の値との差に、少なくとも部分的に基づき得る。処理アセンブリはさらに、抵抗変化信号に少なくとも部分的に基づいて、短絡イベントを特定するように構成され得る。
【0053】
1つの態様では、印加電圧は、車両の発電制動中に車両のトラクションモータによって生成されることが可能で、1つ以上の抵抗素子は、発電制動グリッドの1つ以上の抵抗器を含むことが可能で、また、伝導電圧は、1つ以上の抵抗にわたる電圧低下を含むことが可能である。
【0054】
1つの態様では、抵抗変化信号は、短絡イベントによる、1つ以上の抵抗素子における熱の増加によって引き起こされる、1つ以上の電気抵抗の変化を表わすことができる。
【0055】
1つの態様では、測定される電流の特性は、抵抗素子の少なくとも1つにわたる電圧低下を含み得る。
【0056】
1つの態様では、抵抗変化信号は、抵抗素子の少なくとも1つにわたる電圧低下の印加電圧に対する比率と、抵抗素子の少なくとも1つにわたる電圧低下の印加電圧に対する比率のローパスフィルタ処理後の値との差、を表すことができる。
【0057】
1つの態様では、処理アセンブリは、指定される0以外の閾値を超過する抵抗変化信号の絶対値に対応して、短絡イベントを特定するように構成され得る。
【0058】
1つの態様では、抵抗変化信号は、抵抗素子の少なくとも1つにわたる電圧低下と、印加電圧および抵抗素子の少なくとも1つにわたる電圧低下の印加電圧に対する比率のローパスフィルタ処理後の値の積との差、を表わすことができる。
【0059】
1つの態様では、処理アセンブリは、印加電圧および指定される0以外の閾値の積を超過する抵抗変化信号の絶対値に対応する短絡イベントを特定するように構成され得る。
【0060】
1つの態様では、抵抗変化信号は、少なくとも1つの抵抗素子および印加電圧のローパスフィルタ処理後の値の第1の積と、印加電圧および少なくとも1つの抵抗素子にわたる電圧低下のローパスフィルタ処理後の値の第2の積との差、を表すことができる。
【0061】
1つの態様では、処理アセンブリは、印加電圧、少なくとも1つの抵抗素子にわたる電圧低下および指定される0以外の閾値の積を超過する抵抗変化信号の絶対値に対応して、短絡イベントを特定するように構成され得る。
【0062】
1つの態様では、処理アセンブリは、短絡イベントが特定される回数をモニタし、指定される0以外の閾値を超過する短絡イベントが特定される回数に対応する、電気システムへの損傷を表す警戒信号を生成するように、構成され得る。
【0063】
1つの態様では、処理アセンブリは、短絡イベントの合計持続時間をモニタし、指定される0以外の閾値を超過する合計持続時間に対応する、電気システムへの損傷を表す警戒信号を生成するように、構成され得る。
【0064】
1つの態様では、処理アセンブリは、抵抗変化信号の時間積分をモニタし、指定される0以外の閾値を超過する時間積分に対応する、電気システムへの損傷を表す警告信号を生成するように、構成され得る。
【0065】
1つの態様では、処理アセンブリは、短絡イベントの特定に少なくとも部分的に基づいて、警告信号を生成するように構成され得る。警告信号は、電気システムを含む動力システムのオペレータに、電気システムへの損傷を示すことができる。
【0066】
上の記述は説明的なものであり、限定的なものではないと意図されている旨を理解されたい。例えば、上に記述の実施形態(および/またはその態様)は、相互に組み合わされた状態で使用され得る。加えて、本発明の範囲から逸脱することなく、本発明主題の教示に対して、特定の状況または素材を採用するために、多くの修正を行うことができる。本明細書に記述の素材の寸法および種類は、発明主題のパラメータを定義するように意図されているが、それらは決して限定的なものではなく、典型的な実施形態である。上記の記述を見直せば、当業者には他の多くの実施形態は明らかであろう。したがって、本発明主題の範囲は、添付の特許請求の範囲を参照して、特許請求の範囲が享受する等価物の全範囲とともに、決定されるべきである。添付の特許請求の範囲において、用語「含んでいる(including)」および「そこで(in which)」はそれぞれ、「含んでいる(comprising)」および「そこで(wherein)」の平易な英語の同義語として使用される。また、以下の特許請求の範囲において、用語「第1の」、「第2の」および「第3の」等は、単にラベルとして使用され、それらの目的物に数値的要件を課すことを意図していない。さらに、以下の特許請求の範囲の制限は、「手段プラス機能」の形式で書かれてはおらず、そのような請求項の範囲の限定が、 明示的に“~のための手段(means for)”という句を使用しその後に機能に関する説明が続き、その後にさらなる構造を伴わない限り、または、その後にさらなる構造を伴うまでは、35U.S.C.§112(f)に基づいて解釈されることを意図していない。
【0067】
この書面による記述では、例を使用して本発明主題のいくつかの実施形態を開示し、また、当業者が本発明主題の実施形態を実践することを可能にし、任意のデバイスまたはシステムの作成と使用、および、包含される方法の実施を含む。本発明主題の特許可能な範囲は特許請求の範囲によって定義され、当業者が考えつく他の例を含むことができる。そのような他の例は、それらが特許請求の範囲の文字言語と異ならない構造的要素を有する場合、または、それらが特許請求の範囲の文字言語と実質的に異なることの無い構造的要素の等価性を含む場合、特許請求の範囲の範囲内にあるものと意図される。
【0068】
本発明主題の特定の実施形態に関する前述の記述説明は、添付の図面と併せて読むとより良く理解されるであろう。図が様々な実施形態の機能ブロックについての略図を示している範囲において、機能ブロックは必ずしも、ハードウェア回路間に区切りがあることを示すものではない。したがって、例えば、1つ以上の機能ブロック(例えば、プロセッサまたはメモリ)を、単一のハードウェア(例えば、汎用メッセージプロセッサ、マイクロコントローラ、ランダムアクセスメモリ、ハードディスク等)に実装できる。同様に、プログラムは、独立型プログラムであったり、オペレーティングシステムにサブルーチンとして組み込まれていたり、インストールされたソフトウェアパッケージの機能であることが可能である。様々な実施形態は、図面に示される配置および手段に限定されない。
【0069】
本明細書で使用される場合、単数で列挙され、「1つの(a)」または「1つの(an)」という単語が前に置かれる要素または工程は、そうでない旨が明示的に述べられない限り、複数の当該要素または工程を除外しないと理解されるべきである。さらに、本発明主題の「1つの実施形態(one embodiment)」への言及は、同様に挙げられている特徴を含む、追加の実施形態の存在を排除すると解釈されることを意図していない。その上、そうでない旨が明示的に述べられていない限り、特定の特性を有する1つの要素または複数の要素を「含んでいる(comprising)」または「含んでいる(including)」または「有している(having)」実施形態は、当該特性を有さない追加的要素を含み得る。