(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-16
(45)【発行日】2022-06-24
(54)【発明の名称】メルカプトを末端基とするベースポリマー/エポキシ組成物をベースとする封止用コンパウンド及び光潜在性触媒による硬化方法
(51)【国際特許分類】
C09K 3/10 20060101AFI20220617BHJP
C08G 59/66 20060101ALI20220617BHJP
C08G 59/68 20060101ALI20220617BHJP
【FI】
C09K3/10 F
C09K3/10 L
C09K3/10 Z
C08G59/66
C08G59/68
(21)【出願番号】P 2017561033
(86)(22)【出願日】2016-02-12
(86)【国際出願番号】 EP2016053006
(87)【国際公開番号】W WO2016128548
(87)【国際公開日】2016-08-18
【審査請求日】2019-02-08
【審判番号】
【審判請求日】2020-10-16
(31)【優先権主張番号】102015202619.1
(32)【優先日】2015-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】517284496
【氏名又は名称】ケメタル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】ボンス,ペーター
(72)【発明者】
【氏名】ライヒェルト,スヴェトラナ
(72)【発明者】
【氏名】ジーフェルス,ビョルン
(72)【発明者】
【氏名】クラレフ,ミロスラフ
【合議体】
【審判長】蔵野 雅昭
【審判官】瀬下 浩一
【審判官】門前 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-502826(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/10- 3/12
B05D 1/00- 7/26
C08G 59/00 - 59/72
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
C09J 1/00- 5/10
C09J 9/00-201/10
C09K 3/10- 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材のコーティング用
及び/又は封止用
のコンパウンドであって、
主に未硬化のベース材料と少なくとも1種のエポキシ組成物を含有する硬化剤との混合物から構成され、
ベース材料が、ポリエーテル、ポリチオエーテル、ポリチオエーテルスルフィド、ポリスルフィド、これらのコポリマー及び/又はこれらの混合物をベースとする、メルカプトを末端基とするベースポリマーを含有し、
ベース材料、硬化剤又は両方が、立体障害性の窒素含有有機塩基をベースとする少なくとも1種の光開始剤を含有し、
高エネルギー性化学線の効果により、少なくとも1種の光開始剤が、
該光開始剤に由来する、窒素含有有機塩基をベースとする分子当たり少なくとも1個のラジカルを開裂し、
該ラジカルから共役酸のpKa値が6~30の範囲である窒素含有有機塩基が形成され、これがベース材料の硬化用の活性触媒として作用する
もので、且つ
前記少なくとも1種の光開始剤が、光潜在性の1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノン-5-エン(DBN)、光潜在性の1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)、光潜在性のTMG(テトラメチルグアニジン)及び/又は光潜在性のトリエチレンジアミン(1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン)であることを特徴とす
る、コンパウンド。
【請求項2】
前記少なくとも1種の光開始剤が、立体障害性DBNであることを特徴とする請求項1に記載のコンパウンド。
【請求項3】
DIN65262-1に準拠して、高エネルギー性化学線照射開始後に0.01~10分の範囲のタックフリータイムを有することを特徴とする、請求項1
又は2に記載
のコンパウンド。
【請求項4】
前記ベース材料が、分子の端にそれぞれ1個のメルカプト基を保有する、少なくとも1種の液体ポリ
チオエーテル組成物を本質的にベースとし、
液体ポリチオエーテル組成物のポリチオエーテルは任意に、分子内に約50mol%までのジスルフィド基を含有する(ポリチオエーテルスルフィド)ことを特徴とする、請求項1
~3の何れか1項に記載
のコンパウンド。
【請求項5】
前記ベース材料が、少なくとも1種の液体ポリチオエーテル組成物に加えて、少なくとも1種のジスルフィド含有組成物をベース材料の80質量%までの割合で含有することを特徴とする、請求項
4に記載
のコンパウンド。
【請求項6】
前記ベースポリマーが、メルカプトを末端基とするポリスルフィドポリマー及び/又はメルカプトを末端基とするポリチオエーテル及び/又はメルカプトを末端基とするポリチオエーテルスルフィドを含み、一方では、2500~6000g/molの範囲の分子量を有する長鎖ポリマー、他方では、500~2500g/molの範囲の分子量を有する短鎖ポリマーを含有し、長鎖ポリマーの短鎖ポリマーに対する比が、25:1~0.5:1の範囲にあることを特徴とする、請求項1から
5のいずれか一項に記載
のコンパウンド。
【請求項7】
前記ベースポリマーが、合計ベースポリマーに対して0.5~10質量%、0.8~8質量%又は1.2~7質量%の範囲の、反応性SH基に関連するメルカプタンの割合、1~50質量%、5~45質量%又は12~36質量%の範囲の合計イオウ含有量、及び分子当たり1.5~2.5又は1.9~2.2の範囲のメルカプト基の反応性末端基の平均官能価を含有することを特徴とする、請求項1から
6のいずれか一項に記載
のコンパウンド。
【請求項8】
前記少なくとも1種のエポキシ組成物が、エポキシノボラック樹脂、ビスフェノールAエポキシ樹脂及び/又はビスフェノールFエポキシ樹脂をベースとすることを特徴とする、請求項1から
7のいずれか一項に記載
のコンパウンド。
【請求項9】
前記少なくとも1種のエポキシ組成物が、170~200g/eqの範囲のエポキシ当量を有するビスフェノールAエポキシ樹脂をベースとし、150~180g/eqの範囲のエポキシ当量を有するビスフェノールF樹脂をベースとし、かつ/又は160~220g/eqの範囲のエポキシ当量を有するエポキシノボラック樹脂をベースとすることを特徴とする、請求項
8に記載
のコンパウンド。
【請求項10】
前記少なくとも1種のエポキシ組成物が、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、2-エチル-ヘキシル-グリシジルエーテル、及び/又は1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(反応性希釈溶剤)を含有することを特徴とする、請求項1から
9のいずれか一項に記載
のコンパウンド。
【請求項11】
メルカプトを末端基とするベースポリマーの合計含有量に対して、1モルの反応性SH基に対して1.05~2の範囲のモル過剰のエポキシ組成物が存在することを特徴とする、請求項1から
10のいずれか一項に記載
のコンパウンド。
【請求項12】
ベース材料の硬化用の活性触媒として作用する、窒素含有有機塩基の共役酸のpKa値が、7~28の範囲にあることを特徴とする、請求項1から
11のいずれか一項に記載
のコンパウンド。
【請求項13】
深部硬化のために、追加の遊離触媒を含有することを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載
のコンパウンド。
【請求項14】
前記遊離触媒が、1,4-ジメチルピペラジン、N-メチルモルホリン、2,2’-ジモルホリノジエチルエーテル、トリス-(ジメチルアミノメチル-フェノール)、トリエチレンジアミン及び/又はTMGであることを特徴とする、請求項
13に記載
のコンパウンド。
【請求項15】
コンパウンドの吸収波長(複数可)を特異的な手段で設定するために、光増感剤を含有することを特徴とする、請求項1から
14のいずれか一項に記載
のコンパウンド。
【請求項16】
コンパウンドを用いた基材のコーティング方法であって、基材に、請求項1から
15のいずれか一項に記載
のコンパウンドをコーティングし
、前記コンパウンドに高エネルギー性化学線を照射し、次に
前記コンパウンドを硬化させることを特徴とする、方法。
【請求項17】
前記高エネルギー性化学線が、315~600nmの範囲の波長を有することを特徴とする、請求項
16に記載の方法。
【請求項18】
硬化が、室温又は10~40℃の範囲の温度で実施されることを特徴とする、請求項
16又は
17に記載の方法。
【請求項19】
請求項1から
15のいずれか一項に記載
のコンパウンドを用いて封止される構成部分を含む、航空機。
【請求項20】
航空宇宙機、自動車及び鉄道車両の建造及び整備用、造船業、機械産業、土木建築産業、並びに電気及び電子部門のための注型用樹脂又は注型樹脂の製造のための、請求項1から
15のいずれか一項に記載
のコンパウンドを使用する方法。
【請求項21】
自動車産業、鉄道車両建造部門、造船業、航空機の建造又は宇宙機産業などの輸送業における、機械部門における、土木建築産業における、又は家具の製造用の、請求項
16から
18のいずれか一項に記載の方法を使用する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メルカプトを末端基とするベースポリマー/エポキシ組成物をベースとする封止用コンパウンド、並びに光潜在性触媒による、このような封止用コンパウンドの基材上での硬化方法について述べる。詳細には、これにより、金属基材又はコーティングされた金属基材、並びに他の材料群の基材がコーティングされ得る。封止用コンパウンドは、(建築)要素の接続及び/又は接着用、並びに(建築)要素の空洞及び/又は空間の封止及び/又は充填用にも使用される。
【0002】
本発明は、ベース材料及び硬化剤からなる2成分系について述べる。
【背景技術】
【0003】
以下において、用語「(未硬化)ベース材料」は、まだ硬化剤と混合されていない混合物を定義するために使用される。
【0004】
反対に、用語「封止用コンパウンド」は、一方では、ベース材料と硬化剤との混合物で、硬化剤と混合した後の、未硬化又は既に硬化された形態で、使用のため、すなわち詳細には基材のコーティング用に製造されるものを表すが、また他方では、基材上などのベース材料と硬化剤との硬化された混合物を表す。
【0005】
ベース材料及び封止用コンパウンドは、広範囲の用途に使用される。それらは航空宇宙産業部門に際立って関連するが、また、より大量のベース材料及び封止用コンパウンドに起因して、陸上車両などの場合には、高速硬化に特別な注意を集中しなければならない。これらは、詳細には、建築要素の封止、例えば飛行機の部分などの既存構造への金属シートの接続用に、及び/又は例えば穴の区域、金属要素の腐食保護層が損傷しているか又は除去されている場所の腐食保護用に使用される。これらはまた、例えば、輸送後に常置の支持接続要素が設置されなければならない、取り付けられる構造体の輸送中に、一時的に支える機能も発揮し得る。
【0006】
航空宇宙機の製造及び整備用に、基礎化合物及び封止用コンパウンドに関して特定の必要条件が設定されている:優先的に、燃料タンクの封止、腐食保護、空気力学的平滑化及び与圧胴体の封止、広範囲の温度における弾性、例えば燃料、圧媒液体、凝縮水、及び不凍液などの様々な媒体に対する耐性、並びに様々な基材上での良好な封止及び接着力の効果が設定されている。
【0007】
現在使用されている封止用コンパウンド、詳細には長い加工時間を伴うものは、完全硬化のために非常に長い時間を必要とするため、封止用コンパウンドを用いる多数の接続部位を有する航空宇宙機の製造及び整備は、これまで非常に負担が大きかった。
【0008】
公知の封止用コンパウンド並びに加工方法及び硬化方法における欠陥は、所望の程度まで硬化を促進するために、与えられた必要な加工時間で、十分な触媒が封止用コンパウンドに導入され得ないということである。これは、詳細には長い加工時間を伴い、その相当する長い硬化時間に起因して、封止用コンパウンドがプロセスの速度を落とす。しかしながら、迅速な全固化が、長い加工時間を伴う封止用コンパウンドに必要とされる。
【0009】
メルカプトを末端基とするベースポリマーを含有する、30分の加工時間を伴う現在使用されている高速硬化封止用コンパウンドは、約180分以内でショアA硬度30を達成する。この必要条件は、特定の組成物の封止用コンパウンドを用いてのみ実現される。
【0010】
また、2成分及び好ましくは室温硬化の封止用コンパウンドにおいて、タックフリー状態に達するための時間及び全固化時間は、加工時間より著しく長いという問題もある-表1を参照のこと。したがって、従来のコーティング方法は、生産において極度に長いサイクル時間により影響を受けることが多い-表2を参照のこと。
【0011】
特定の程度の硬化を有するために使用される基準は、ISO7619-1又はISO868(デュロメータ法)により定義される、ショアA硬度30に到達するための時間であると考えられ得る。その上、封止用コンパウンド表面での硬化開始の目安として、タックフリータイムが非常に重要である。したがって、加工時間は、可能な限り長くなければならず、かつタックフリータイム及び全固化時間は極度に短くなければならない。これらのパラメータについて、一般に、加工時間は基本として設定され、一方、タックフリータイム及び全固化時間は本質的に封止用コンパウンドのタイプにより決定される。表1は、封止用コンパウンドの硬化にとって重要な時間パラメータを示す。表2は、本発明と比較した、現況技術のメルカプトを末端基とするベースポリマーを有する封止用コンパウンドの硬化のための典型的な時間の概要を提供する。
【0012】
【0013】
【0014】
その上、通例、平坦形態で又はビーズとして、ボルト、リベット又は他の建築要素のコーティング用に使用され、30分の建築時間を伴う、タイプA及びBの従来の封止用コンパウンドは、典型的にはタックフリーになるために1.5~5時間、及び典型的にはショアA硬度30に到達するために2.5~8時間を必要とする。中間層化合物(クラスC)の場合では、圧搾された物質がUV光を用いて硬化され得る。
【0015】
本発明について、必要とされる時間は、十分に長い加工時間を伴い、かなり短いタックフリータイム及びかなり短い全固化時間に起因して著しく低減され得る。このようにして、封止用コンパウンドを用いてコーティングされた構成部分の更なる使用のためのサイクル時間は、徹底的に低減され得る。
【0016】
メルカプトを末端基とするベースポリマーをベースとする、従来の高価値の2成分封止用コンパウンドに伴う問題は、高速の全硬化及び短いタックフリータイムを得るために、相対的に高含有量の遊離触媒が必要とされることである。封止用コンパウンドの加工時間は、タックフリータイムの低減に比例して、強度に低減される。
【0017】
硬化中に、より低速硬化の封止用コンパウンドの機械的耐荷重性を判断するために使用される基準は、引張抵抗及び剪断抵抗と並んで又はその代わりに、封止用コンパウンドが、例えば、もはや塑性変形可能性を持たず、かつ輸送中に塗抹しない、少なくとも35又は実に30のみのショアA硬度であることが多い。完全硬化した封止用コンパウンドの典型的なショアA硬度は、45+/-10に等しいことが多い。
【0018】
DE10108136A1は、長い加工時間を伴う高速硬化封止用コンパウンドを記載している。ここで、高速硬化を活性化するために、温度、IR-照射線又は機械的力が使用され、同様に加工時間を可能な限り長く保持するために、カプセル化又は非活性化の触媒が使用される。
【0019】
US3,645,816は、例えばポリスルフィド封止用コンパウンドを使用することによる液体タンク内の漏えい封止の方法を記載しており、硬化を迅速化するために、特に高速のタックフリータイム及び硬化を得る目的で、封止用コンパウンドの60~65℃の温度での加熱が推奨されるが、しかしながらこれは、特定の封止用コンパウンドを用いて使用され得るのみである。しかしながら、大きいか又は到達しがたい基材の加熱は、非常に困難である。
【0020】
US2013/0137817A1は、ポリスルフィドをベースとするキュア オン デマンドの封止用コンパウンドを記載している。そこでは、60~120℃で2時間まで放出/活性化されるブロック硬化剤が使用される。この高活性化温度及び長い活性化時間は、航空機産業で使用される大部分の基材(例えば、アルミニウム合金)に関して、その高熱膨張係数に起因する欠陥である。
【0021】
イオウ含有ポリマーを持たず、かつ燃料、圧媒液、凝縮水、及び不凍液のような異なる媒体に対する高耐性などの航空機封止用コンパウンドの特に高い利用価値のある特性を示さない、UV硬化性の1成分又は2成分の室温硬化性コーティングは、公知である。これらは、一般に、光開始剤の存在下でラジカル発生剤としてラジカル的に重合し、硬化し得る、二重結合を有するアクリレート-プレポリマーを有するUV-硬化混合物をベースとする。しかしながら、UV照射線を用いないで、これらの封止用コンパウンドにおいて、完全な硬化は達成されない。
【0022】
ベース材料及び封止用コンパウンドの開発において追求されてきたが徒労に終わった目標は、室温又は室温よりほんのわずか高い温度で、例えば、少なくとも0.5時間、少なくとも1時間又は実に約2時間の加工時間を可能にし、この時間の倍数である全固化のための硬化時間を必要としないベース及び封止用コンパウンドの提供である。成功することなく長い間追求されてきた同様の目標は、オンデマンド型の硬化を開始するベース材料及び封止用コンパウンドの提供である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【文献】DE10108136A1
【文献】US3,645,816
【文献】US2013/0137817A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
本目的は、ベース材料及び封止用コンパウンド、並びに、メルカプトを末端基とするポリマーを有する本封止用コンパウンドを用いた基材のコーティング方法を提案することであり、該方法では長い加工時間を確保する一方で、可能な最短の硬化時間を達成する。航空宇宙産業部門における使用に関して、封止用コンパウンドは、可能であれば、この目的のために使用される従来の封止用コンパウンドと同一の高品質特性を達成しなければならない。これらの特性として、室温、60℃及び100℃での耐燃料油性、圧媒液、凝縮水、及び不凍液などの異なる媒体に対する高耐性、高耐熱性、低温での高可撓性、気候因子に対する高耐性、異なる基材上での剥離に対する高耐性、高破断伸び及び高引張り耐性が挙げられる。
【0025】
その上、本目的は、詳細には航空機産業に対して、可能であれば、その硬化が「オンデマンド型」で活性化されるベース材料及び封止用コンパウンドを提案することである。指令を欠く場合では、封止用コンパウンドが、より低速でさえも依然として完全に硬化する場合もまた利点である。
【課題を解決するための手段】
【0026】
今回、オンデマンド型で硬化し得るベース材料及び封止用コンパウンドを生成することが可能であることが見出された。高エネルギー性化学線を用いた照射後、非常に短いタックフリータイムを有し、およそ加工時間の桁である全固化時間を有し得る(表2を参照のこと)ベース材料及び封止用コンパウンドを生成することが可能であり、その結果、航空機の建造において、より短い待機時間及びサイクル時間が達成され得て、したがって生産性が向上され得ることもまた見出された。これらのベース材料及び封止用コンパウンドは、航空宇宙産業部門用の従来のベース材料及び封止用コンパウンドとおよそ同一の高品質特性、詳細には高耐燃料油性、並びに高弾性を有することもまた見出された。
【0027】
その上、本発明の封止用コンパウンド系は、照射領域ではない、いわゆる「影領域」における硬化が、後硬化と同様に達成され得て、その結果、短い照射時間及び/又は封止用コンパウンド適用領域にわたる不完全な照射にもかかわらず、完全な硬化が達成され得るという利点を有する。
【0028】
本発明の方法は、封止用コンパウンドの硬化はオンデマンド型で遂行され、封止用コンパウンドのタックフリー表面が、照射開始から15分未満のタックフリータイムで達成されるような高速を伴うことを特徴とする。封止用コンパウンドの硬化開始は、好ましい実施形態では、高エネルギー性化学線照射の開始と同時に起きる。タックフリータイムは、10分未満、5分未満、3分未満又は10秒未満が好ましい。全固化時間は、層厚さに応じて、1~1,000分の間、好ましくは10~360分の間、詳細には20~90分に達成される。
【0029】
したがって、本発明のベース材料及び封止用コンパウンドは、特に飛行機に適しており、相対的に長い加工時間を伴い、促進された硬化が後で起きる一方、より強力な硬化がオンデマンドで起こる新しいタイプの封止用コンパウンドと言ってもよい。実際、これらの材料は、タックフリー状態を達成するのが特に速い。
【0030】
本目的は、主に未硬化のベース材料、すなわち、2500Pa・s未満の粘度を有するベース材料と少なくとも1種のエポキシ組成物を含有する硬化剤との混合物を含有する、基材のコーティング用の封止用コンパウンドを用いて達成され、ベース材料は、ポリエーテル、ポリチオエーテル、ポリチオエーテルスルフィド、ポリスルフィド、これらのコポリマー及び/又はこれらの混合物をベースとするメルカプトを末端基とするベースポリマーを含有し、ベース材料、硬化剤又は両方は、立体障害性の窒素含有有機塩基をベースとする少なくとも1種の光開始剤を含有し、高エネルギー性化学線の効果により、少なくとも1種の光開始剤は、窒素含有有機塩基をベースとする分子当たり少なくとも1個のラジカルを開裂し、それから共役酸のpKa値が6~30の範囲である窒素含有有機塩基が形成され、これがベース材料の硬化用の活性触媒として作用する。
【0031】
ベース材料の硬化用の活性触媒として作用する、窒素含有有機塩基の共役酸のpKa値は、好ましくは7~28、更に好ましくは8~26の範囲、特に好ましくは9~20の範囲及び最も好ましくは10~15の範囲にある。
【0032】
立体障害性の窒素含有有機塩基をベースとする少なくとも1種の光開始剤は、立体障害性第三級アミン、立体障害性アミジン及び/又は立体障害性グアニジンであることが好ましい。少なくとも1種の光開始剤は、高エネルギー性化学線が照射された時にそれに対応して、第三級アミン、アミジン及び/又はグアニジンをベースとする分子当たり少なくとも1個のラジカルを開裂する。
【0033】
本発明は、上述の封止用コンパウンドを用いた基材のコーティング方法であって、基材に封止用コンパウンドをコーティングし、封止用コンパウンドに高エネルギー性化学線を照射し、次に封止用コンパウンドを硬化させる、方法にも言及する。
【0034】
封止用コンパウンドを用いた、要素の結合方法、要素の空洞及び/又は空間の封止及び/又は充填方法、並びに硬化された封止用コンパウンドの生成についても述べることができる。要素とは、詳細には建築要素である。
【0035】
ベース材料及び封止用コンパウンドの粘度は、好適な装置により基材上に同一に注入することが可能なように低くてもよい。
【0036】
本発明の光開始剤を活性化するために、又は触媒としてそのように形成された触媒の使用のために、温度上昇は必要とされないが、UV光などの高エネルギー性化学線のみが必要とされる。
【0037】
本発明の別の利点は、硬化が、10~40又は15~30℃の範囲の温度などの室温又は室温よりほんのわずか高い温度で影響され得ることである。
【0038】
高エネルギー性化学線の場合では、本発明による少なくとも1種の光開始剤は、窒素含有有機塩基をベースとする分子当たり少なくとも1個のラジカルを開裂させ得て、これは詳細には、例えば第三級アミンの場合にはH-吸収、及び/又は例えばアミジンの場合にはH-放散により活性化され、硬化用触媒として特に作用し得る。本明細書では、光開始剤は、高エネルギー性化学線照射の場合には、第三級アミン、アミジン及び/又はグアニジンを放出し、かつ/又は形成し、放出され、かつ/又は形成されたアミン、アミジン又はグアニジンが、メルカプトを末端基とするベースポリマーとエポキシ-ベースの硬化剤との反応を触媒することが好ましい。光開始剤は、封止用コンパウンドが高エネルギー性化学線に曝される場合、エポキシ組成物とメルカプタンとの反応を活性化し、かつ/又は促進することが特に好ましい。
【0039】
ここで、エポキシ硬化が選択される場合、かつ光開始剤が、高エネルギー性化学線において、第三級アミン及び/又はアミジン及び/又はグアニジンをベースとする分子当たり少なくとも1個のラジカルを放出し、好ましくは本発明の封止用コンパウンドの全組成物に対して0.05~5質量%の範囲若しくは0.1~4質量%の範囲若しくは1~3質量%の範囲の比率の第三級アミン及び/若しくはアミジン及び/若しくはグアニジン組成物を、又は100gのベース材料当たり0.2~23mmolの範囲若しくは0.45~18.3mmolの範囲若しくは4.5~14mmolの範囲の第三級アミン及び/若しくはグアニジン組成物を形成するような量で添加される場合、高い利用価値のある特性を有する、高速の、かつオンデマンド型硬化の封止用コンパウンドが、メルカプトを末端基とするベースポリマー及び適当な添加剤から生成され得ることも見出された。この第三級アミン又はアミジン又はグアニジンの比率は、触媒として、封止用コンパウンドの約7mmの厚さの層、ビーズ又はバルジを硬化させるのに明らかに十分である。
【0040】
エネルギー性化学線が、封止用コンパウンド及び/又は既に硬化している封止用コンパウンドに作用する時、少なくとも1種の光開始剤が、開裂しながら、第三級アミン及び/又はアミジン及び/又はグアニジンをベースとする分子当たり少なくとも1個のラジカルを放出する。光開始剤は、通例のように、アクリレート及びメタ-アクリレートなどのラジカル硬化用に使用されるのではなく、エポキシ組成物と、ポリマー及び/又はコポリマーから選択されるメルカプトを末端基とする「ベースポリマー」との重付加の形態で、化学反応を活性化するために使用される。実際、現況技術のアクリレート及びメタ-アクリレート並びに他の有機ポリマー系は、本出願のメルカプトを末端基とするベースポリマーでは通例見られない複数の二重結合を有する。その上、(メタ)アクリレートのラジカル硬化では、ベンゾイルラジカルが主要に又はそれのみが必要とされるが、一方、メルカプトを末端基とするベースポリマーの硬化では、第三級アミンラジカルから形成された第三級アミン又はアミジンラジカルから形成されたアミジン又はグアニジンラジカルから形成されたグアニジンが必要とされ、ベンゾイルラジカルは本発明の方法では必要とされない。
【0041】
メルカプトを末端基とするベースポリマーは、現況技術の方法では、本出願者が知る限りでは、例えば(メタ)アクリレートをベースとするものなどの二重結合を有する組成物又は基の割合を伴わないで、光開始剤を用いてラジカル重合され得ない。しかしながら、本発明のベース材料又は封止用コンパウンドのこのような二重結合の比率は加えられることはなく、その結果、本出願者によれば、それに対応して、ラジカル硬化は起こり得ない。
【0042】
現況技術の多くのUV硬化コーティングの化学的組成物はアクリレートをベースとしており、UV光を用いた照射により、詳細には光開始剤の存在下で、その架橋が活性化される。しかしながら、より厚い層の場合では、UV光はこのようなコーティングを部分的にのみ透過し得て、その結果、例えば200μm超の厚さの層の硬化は、実際面では達成され得ない。
【0043】
反対に、本発明は、本反応の触媒として明らかに作用する第三級アミン及び/又はアミジン及び/又はグアニジンの存在下での、エポキシ基とメルカプト基との化学反応の使用に基づいている。本明細書では、光開始剤により放出され、次に触媒活性のアミン及び/又はアミジン及び/又はグアニジンに変換されたアミン又はアミジン又はグアニジンは、封止用コンパウンドを通してより長い距離にわたり明らかに分布され得るため、200μmよりかなり厚い封止用コンパウンドの層もまた反応させ、例えば約7mmの層厚さを硬化することが可能である。その上、好ましくは共役酸のpKa値が6~30の範囲である窒素含有遊離有機塩基、特に好ましくは遊離第三級アミン及び/又は遊離アミジン及び/又は遊離グアニジンである、追加の遊離触媒を使用することにより、従来の封止用コンパウンドにおけるように、高速の深部硬化が起こり得る。
【0044】
本明細書では、「深部硬化」とは、UV光を用いた直接照射によりUV硬化封止用コンパウンドの表面では活性化されないが、封止用コンパウンド表面の数ミリメートル下で開始する硬化反応を意味する。深部硬化は、充填剤及び他の添加剤の選択に依存し、とりわけ、封止用コンパウンドの色に影響を与える。標準的には、表面硬化は2mmの深さまで起こり、そのすぐ下で、深部硬化が混用され、達成される。
【0045】
この深さでは、直接UV光は照射され得ないため、この深部硬化を援助する追加の遊離触媒が使用される。遊離触媒の選択に応じて、加工時間及び全固化時間は、用途に適合され得る。
【0046】
本発明では、化学的硬化が提供され、本発明の光開始剤は、その本来の機能を奪われ、通例、アミン及び/又はアミジン及び/又はグアニジンのラジカルの放出並びに第三級アミン又はアミジン又はグアニジンをベースとする触媒の形成のためにのみ使用されるが、その本来使用される意味での光開始剤として使用されない。
【0047】
熱は、外部から化学系に全く又はほとんど供給されず、一方、封止用コンパウンドは、エネルギー性化学線の影響する時から、10~40℃又は15~30℃の温度範囲で、主に又は完全に硬化することが好ましい。本発明の方法では、40℃を超える温度が供給されるか又はごくまれに発生する。本発明の方法の利点は、高温が必要とされないことである。その上、80℃を超える温度は、熱伸びに起因して構成部分に任意にひずみを起こし得て、そのためアルミニウム合金及び繊維複合材物質などの隣接する構成部分の質を低下させる。40℃超又は実に60℃超の加熱は、一般に、もしあるとしたら、化学線及び任意の発熱化学反応によってのみ得られ、通例、1~15分間のみである。硬化は、10~40℃、15~30℃の範囲の温度で起きることが好ましく、特定の場合では、実に0.1~15分間のみの時間に40℃を超えて50℃までの温度が使用される。特に好ましい硬化は、全時間に15~30℃の範囲で起きる。硬化は、大部分の時間又は全時間に30℃未満の温度で起きることが特に好ましい。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本発明のベース材料及び封止用コンパウンドは、少なくとも1種の第三級アミン基及び/又はアミジン基及び/又はグアニジン基をベースとする組成物であり、立体障害性である、少なくとも1種の光開始剤を有することが好ましい。本発明の光開始剤は、異なる構造を有してもよい。
【0049】
硬化がイソシアネート又はビニル化合物により得られる周知の封止用コンパウンド系とは異なり、新しく記載される系は、アセトフェノン、1-ヒドロキシシクロ-ヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1フェニルプロパン-1-オン、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィン-オキシド、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチル-ベンジル)-1-(4-モルホリン-4-イル-フェニル)-ブタン-1-オン)、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン-1などの触媒で機能しない。
【0050】
これらの触媒は、非常に弱い塩基である。したがって、本発明の光開始剤は、光潜在性の強塩基性窒素組成物である。放出される窒素含有有機塩基の共役酸のpKa値は、対応して、6~30、好ましくは7~28、更に好ましくは8~26、特に好ましくは9~20及び最も好ましくは10~15である。光開始剤は、立体障害性のアミン及び/又はアミジン及び/又はグアニジンをベースとするものから選択されることが好ましく、高エネルギー性化学線に曝される時、第三級アミン及び/又はアミジン及び/又はグアニジンを放出し、かつ/又は形成する。好ましい光開始剤は、高エネルギー性化学線に曝される時、1個、2個又は3個の第三級アミンラジカル又はアミジンラジカル又はグアニジンラジカルを開裂し、かつ/又は分子当たり1個、2個又は3個の第三級アミン基又はアミジン基又はグアニジン基と、少なくとも1つの結合を形成するものである。
【0051】
任意に、本発明の光開始剤は、活性触媒が放出されるか又は形成される潜在性触媒である。しかしながら、このような光開始剤は、高エネルギー性化学線照射の前に、非常に低い触媒効果を任意に有し得る。
【0052】
本発明の光開始剤は、アミジン及び/又は第三級アミン及び/又はグアニジンの部類に関連することが好ましい。実際、このような光開始剤の化学的構造は、高エネルギー性化学線照射後に、アミジンラジカル及び/又はアミンラジカル及び/又はグアニジンラジカルの放出並びにアミジン及び/又は第三級アミン及び/又はグアニジンの形成を可能にし、メルカプトを末端基とするポリマーとエポキシベースの硬化剤との反応を開始させ、かつ/又は促進する。このようにして、両方の成分の混合後の本発明の封止用コンパウンドの加工時間は、高エネルギー性化学線を用いる照射が起こらない限り、15分~4時間、好ましくは20分~2時間又は30分~1時間の範囲の時間が高頻度で保証される。封止用コンパウンドは、生成時間中並びに封止用コンパウンド及びそれらの開始材料の保管中に、強力な硬化は開始しないという点において、未硬化混合物である。
【0053】
ベース材料又は封止用コンパウンドが高エネルギー性化学線に曝される時、これは、「オンデマンド型」硬化、特に高速の表面硬化を起こし、それはタックフリータイム、及び高速の全固化により示される。本明細書では、最初に外面にタックフリー層が形成され、続いて高速の深部硬化が起きる。この場合では、層厚さに応じて、タックフリータイムとして0.01~5分の範囲及び全固化の場合に1~1,000分の時間が達成される。照射された1mmの厚さを有する封止用コンパウンドに関して、タックフリータイムに対して0~5分及び全固化に対して1~30分の範囲の時間が達成されることが多い。この場合では、照射された4mmの厚さを有する封止用コンパウンドに関して、タックフリータイムに対して0~5分及び全固化に対して10~120分の範囲の時間が得られる。詳細には、照射された7mmの厚さを有する封止用コンパウンドに関して、タックフリータイムに対して0~5分及び全固化に対して20~240分の範囲の時間が達成されることが多い。
【0054】
光開始剤は、ベース材料及び/又は硬化剤の成分として含有され得る。したがって、光開始剤はまた、使用のために製造される封止用コンパウンドの一部でもある。光開始剤は、触媒として作用する第三級アミン及び/又はアミジン及び/又はグアニジンを提供する潜在性触媒として使用されることが好ましい。
【0055】
特定の好ましい実施形態に基づいて、少なくとも1種の光開始剤は、立体障害性アミジンをベースとする組成物、好ましくは光潜在性の1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU;式Iを参照のこと)及び/又は1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノン-5-エン(DBN;式IIを参照のこと)である。立体障害性組成物として、遊離アミジン中で二結合されている窒素原子は、置換基Rを保有する。この置換基Rは、異なる構造を有し得る。例えば、置換基Rは、アルキル基又はフェニル基を含有し得る。短鎖又は長鎖、分岐又は直鎖を有する異なる有機残基の組み合わせは、置換基R内で提供され得る。
【0056】
【0057】
立体障害性組成物が、高エネルギー性化学線に曝される場合、アミジンラジカル及び置換基Rからなるラジカルに解離する。アミジンラジカルは、H原子を吸収し、反応性アミジンに変換する。
【0058】
立体障害性第三級アミンをベースとする光開始剤を使用することもまた好ましい。好適な立体障害性アミンは、例えば、トリエチレンジアミン(1,4-ジアザビシクロ[2.2.2.]オクタン)をベースとし得る。
【0059】
立体障害性グアニジンをベースとする光開始剤を使用することもまた好ましい。好適な立体障害性グアニジンは、例えば、ブロック光潜在性TMG(テトラメチルグアニジン)をベースとし得る。
【0060】
UV光を用いた照射後、放出された第三級アミン及びアミジン及びグアニジンの両方は強塩基であり、これらの共役酸のpKa値は、6~30、好ましくは7~28、より好ましくは8~26、特に好ましくは9~20及び最も好ましくは10~15であることが非常に重要である。UV光を用いた照射前、対応する立体障害性組成物のpKa値は著しく低く、好ましくは9.5未満である。
【0061】
これによって、第三級アミン、アミジン及びグアニジンは、触媒として使用され、一方で、メルカプトを末端基とするポリマー系中に放出された置換基は、好影響をもたらすこともないが、通例、妨害することはない。ラジカル中の水素の吸収は、例えば、存在するポリマー及び/又はそこにある他の有機組成物の水素基から起こり得る。形成される第三級アミン又はアミジン又はグアニジンは、通例、光開始剤より高い塩基性度を有し、明らかに触媒として作用する。光開始剤の塩基性度に対して、新しく形成された第三級アミン及び/又はアミジン及び/又はグアニジンのより高い塩基性度は、それぞれの共役酸のpKa値を介して基本的に測定可能である。より高い塩基性度は、メルカプタンとエポキシ組成物との反応が促進され、封止用コンパウンドが特に速く硬化するという利点及び/又は効果を有する。
【0062】
最後に引用する光開始剤は、現況技術においてアクリレートベースのUV硬化性コーティングに使用される。驚いたことに、本発明では、封止用コンパウンドがUV光などの高エネルギー性化学線に曝される時、これらの光開始剤もまた、エポキシ組成物とメルカプタンとの反応を開始させ、かつ/又は促進させる。相対的に少量の第三級アミンラジカル及び/又はアミジンラジカルを放出する光開始剤が、ベース材料の硬化のための触媒活性を有する十分な量の第三級アミン又はアミジンの組成物を提供したことは驚くべきことであった。
【0063】
光開始剤は、任意にベンゾフェノン及び/又はチオキサントンなどの少なくとも1種の光増感剤の存在下で、詳細には光潜在性DBN及び/又は光潜在性DBUである。これらの光潜在性塩基は、多くの他の光開始剤より著しく強い塩基を放出し、したがって、メルカプタン基とエポキシ基との反応の特に効果的な触媒作用を引き起こす。
【0064】
光開始剤が、少なくとも1種の光潜在性の、すなわち、立体障害性の第三級アミン及び/又はアミジン及び/又はグアニジン、好ましくはDBN及び/又はDBU、並びに少なくとも1種の非光潜在性の、すなわち、遊離の第三級アミン及び/又はアミジン及び/又はグアニジン、好ましくはN-メチルモルホリン、1,4-ジメチルピペラジン、2,2’-ジモルホリノジエチルエーテル、トリス-(ジメチルアミノメチルフェノール)、トリエチレンジアミン及び/又はTMG、特に好ましくはトリエチレンジアミン及び/又はTMGの組み合わせとして提供される時、封止用コンパウンドの特に効果的な深部硬化もまた達成される。
【0065】
その上、光増感剤もまた使用されてもよい。基本的に、この場合は、使用される照射線の所望の波長領域、詳細にはUV-A領域に吸収スペクトルをシフトさせる任意の光増感剤が使用されてもよい。実際、UV-A領域は、より大きい層厚さに対して特に有用であり、UV-A照射線はオゾン形成を起こさない。光開始剤と対照的に、光増感剤は、吸収スペクトルを、例えば、200~280nmのUV-C及び280~315nmのUV-BのUV領域内の短波から、315~380nmを有するUV-AのUV範囲内の長波へシフトさせる。
【0066】
したがって、光増感剤と光開始剤の混合物もまた、少なくとも1種の光増感剤によりベース材料及び封止用コンパウンドの吸収波長(複数可)を特異的に設定するために、有利に使用され得る。使用される光増感剤は、それぞれの用途に好適な手段で吸収波長の設定を援助するけれども、第三級アミン並びにアミジン又はグアニジンを放出しないものが好ましい。例として、例えば、ベンゾフェノン及びイソプロピルチオキサントンITXから選択される少なくとも1種の光増感剤と、トリエチレンジアミンなどの立体障害性第三級アミンをベースとした、並びに/又はTMGなどの立体障害性グアニジンをベースとした、並びに/又はDBN及び/若しくはDBUなどの立体障害性アミジンをベースとした少なくとも1種の光開始剤とから選択される混合物がある。
【0067】
硬化は、メルカプト基とエポキシ基との化学反応により起こり、少なくとも1種のヒドロキシチオエーテル、ヒドロキシチオエーテルスルフィド及び/又はヒドロキシスルフィドが形成される。光開始剤からのラジカルの開裂に起因して、立体障害は取り除かれる。第三級アミンの場合のH-吸収、又はアミジンの場合の放散によってのみ、ラジカルは、より高い塩基性度を有しもはや立体障害性ではない触媒を形成する。
【0068】
本発明の方法では、光開始剤により、ラジカルUV硬化の場合のようなラジカル放出は使用されないが、ラジカルの形成に付随され得るアミン及び/又はアミジン及び/又はグアニジンの形成のみ使用され、これを用いないと硬化プロセスに何の効果ももたらさない。放出された第三級アミン又はアミジン又はグアニジンのラジカルは、特定の手段を取る必要はなく、水素の吸収又は放散により、これらから第三級アミン又はアミジン又はグアニジンを形成し、これらはこの場合には化学的硬化中に、エポキシ基とメルカプト基との化学反応の触媒的開始及び/又は触媒的促進に使用される。形成された第三級アミン又はアミジン又はグアニジンは、ベース材料及び硬化剤の成分間の反応を開始し、かつ/又はこれを促進する。それは明らかに、より低い温度及びより高い温度で、少なくとも1種のエポキシ組成物を用いた硬化用の触媒として、基本的に機能し得る。光開始剤は、この場合に、潜在性触媒として作用すると思われる。光開始剤からの、アミン又はアミジン又はグアニジンのラジカルの開裂後、アミン又はアミジン又はグアニジンの結合の形成後、及び硬化プロセスの触媒作用の後もまた、アミン又はアミジン又はグアニジンは、依然として遊離しており、高エネルギー性化学線照射の終結後に触媒し続け、その結果、通例、触媒的後硬化さえ起きる。触媒的後硬化では、封止用コンパウンドの硬化は、高エネルギー性照射の終結後さえ継続する。これは、アクリレートベースの組成物を用いた硬化に対して、明らかに特別のことである。
【0069】
高エネルギー性化学線の作用に起因して、ベースポリマーと硬化剤との化学反応は、潜在性触媒により、開始され、かつ/又は促進される。したがって、オンデマンド型の硬化の開始が可能である。UV照射線などの高エネルギー性化学線照射を通して、指令が出される。このようにして、硬化開始の瞬間を設定し、硬化を開始することが可能である。
【0070】
UV照射などの化学線照射は、1秒を超え6時間まで本質的に持続し得る。それは、層厚さ及び/又は照射線源に基づいて、1秒~15分の間起こることが好ましく、本質的に、より長い照射時間もまた使用され得る。少なくとも1J/cm2のUV照射線量が使用される場合、通例、5秒~2分の範囲の化学線照射は十分である。365nmの波長を供給するUV-LEDランプを用いて作業する場合、0.05~1.5W/cm2の強度を用いると、1~20J/cm2の照射線量が好ましく、一方、0.2~1.2W/cm2の強度を用いると、3~16J/cm2の照射線量が好ましい。395nmの波長を供給するUV-LEDランプを用いて作業する場合、0.05~1.5W/cm2の強度を用いると、3~20J/cm2の照射線量が好ましく、一方、詳細には0.1~1.2W/cm2の強度を用いると、6~17J/cm2の照射線量が好ましい。様々な波長のスペクトルを有する水銀蒸気ランプを使用する場合、0.10~1.5W/cm2の強度を用いると、1~25J/cm2の照射線量が好ましく、一方、詳細には0.20~1.0W/cm2の強度を用いると、4~20J/cm2の照射線量が好ましい。
【0071】
以下の表3は、使用した波長、照射線強度及び照射線量の間の前述の関係を再度提供する。
【0072】
【0073】
多くの実施形態では、照射後に、高エネルギー性化学線を用いた前照射を用いることもなく、数時間又は数日間を超えて持続することが多い触媒的後硬化が起きる。触媒的後硬化は、特定の実施形態では、追加の非立体障害性触媒により、亢進し得る。したがって、この触媒的後硬化は、活性触媒がどこでどの程度形成されたかに関係なく、使用される封止用コンパウンドが、詳細には照射線により到達することが困難であるか又は不可能である場所に、常に高質に到達することを保証する。
【0074】
高エネルギー性化学線は、詳細にはUV照射線であり得るか、又は代替として、電子線でもあり得る。これらの照射線タイプは、光開始剤の活性化に必要とされるエネルギー範囲、詳細にはUVC、UVA及び/又はUV/VIS照射線を有するUV光を含むため、成功を収めてきた。この目的を達成するための、例えば、好ましくは400W超の電力を有する少なくとも1種の強力UV照射体、120W未満の電力を有する少なくとも1種の低電力UV照射体、及び/又は少なくとも1種のUV-LED、UV照射線用の少なくとも1種の蛍光照射体などの少なくとも1種のUV照射体、及び/又は少なくとも1種の電子線照射体。UV-A領域を考える場合、オゾンは形成されず、その上、約2~7mmなどのより厚い層の硬化が実行可能である。
【0075】
簡潔化のために、このような波長に限定することなく、以下にUV光又はUV照射線のみが述べられる。しかし、実際には、UV光が使用されることが好ましい。
【0076】
高エネルギー性化学線照射を用いないで、かつこの触媒反応を用いることのない従来の封止用コンパウンドとは対照的に、本発明の反応は、著しく促進される。高エネルギー性照射線による反応の開始は、非常に高速で、場合によっては数秒持続する、表面硬化により認識され得る。反応の促進は、促進された全固化により認識され得る。
【0077】
本発明の方法では、封止用コンパウンドは、高エネルギー性化学線の開始後5~600分に測定して、少なくとも10のショアA硬度及び/又は高エネルギー性化学線照射の開始後2週間に測定して、30~60の範囲のショアA硬度を有し得る。硬度の著しい増加は、全固化を完全にする後硬化に起因して起こる。光開始剤及び遊離第三級アミン又は遊離アミジン又は遊離グアニジンの含有量に応じて、速度は制御され得る:この含有量が多くなるほど、硬化は速くなる。
【0078】
驚いたことに、見出された封止用コンパウンド系を用いて、より厚い層の硬化も可能である。実際、エポキシ-メルカプタン反応は、非常に少量の触媒、詳細には第三級アミン及び/又はアミジン及び/又はグアニジンにより強力に促進され、その結果、低量のエネルギー性化学線でさえ、アミン又はアミジン又はグアニジンのラジカルの放出、並びに対応するアミン、アミジン又はグアニジンのトレースの形成に十分である。
【0079】
これによって、ベース材料(複数可)の化学的組成物、並びに硬化封止用コンパウンドの化学的組成物は、UV光などのエネルギー性化学線が低減された程度までのみ吸収されるような手段で選択され得る。通例、ベース材料又は封止用コンパウンドの主要成分は、エネルギー性化学線に対して透過性である。詳細には、充填剤の場合には、それらが選択された照射線に対して良好な透過性を持つことに、好ましくは注意を払わなければならない。電子線は、通例、ベース材料又は封止用コンパウンドの材料を通って、UV光よりかなり容易に透過する。したがって、充填剤及び他の添加剤を材料の1つに添加する時に、それらは、選択されたタイプのUV光をほとんど若しくは全く吸収しないか、又はUV光をほとんど若しくは全く吸収しないものが選択され、その結果、それによって硬化が開始されなければならない、選択されたタイプの照射線に対して可能な限り透過性であるようにすることが好ましい。それらは、UV光スペクトル又は照射に使用されるUV光の範囲で全く吸収しないか、又は低吸収性を有することが好ましい。充填剤は、通例、より良好な機械的特性を達成するために、封止用コンパウンドに添加される。詳細には、炭酸カルシウム及びガラス又はプラスチックの微視的中空球をベースとする充填剤は、必要であれば、照射線に対するそれらの透過性に関して調べるべきである。
【0080】
したがって、使用されるエネルギー性化学線の範囲で、明瞭な吸収又はベース材料のイオウ含有ポリマーの吸収を明瞭に超える吸収を示す、充填剤などの物質は何も添加されないか、又は1質量%までのみ又は5質量%までのみの物質が、ベース材料及び硬化剤に添加されることが好ましい。
【0081】
本発明の更に重要な利点は、硬化開始後に、UV光による照射を用いないでも、1~21日後などの、長時間後のみであるが、確かで完全な硬化が得られることである。これは、封止用コンパウンドが、構成部分の間の空洞及び/又は隙間に導入され、かつ/又は任意の他の手段で、例えばUV光を遮断するような用途に対して重要である。詳細には、航空機の製造において、各用途に対して、硬化剤と共に導入されたベース材料全体の、場合によっては完全な硬化が得られることが重要である。
【0082】
本発明のベース材料又は封止用コンパウンドは、ポリエーテル、ポリチオエーテル、ポリスルフィド、これらのコポリマー及び/又はこれらの混合物をベースとする、少なくとも1種のイオウを含有する、メルカプトを末端基とするベースポリマーを含有する。
【0083】
末端メルカプト基を有するポリチオエーテルをベースとするベース材料、及び場合によっては末端メルカプト基を有するポリスルフィドが、特に好ましい。
【0084】
好ましい実施形態に基づいて、ベース材料は、分子の端にそれぞれメルカプト基を保有する、少なくとも1種の液体ポリチオエーテル組成物を本質的にベースとする。ポリチオエーテルは、詳細には、場合によっては分子内に約50mol%までのジスルフィド基を含有してもよい。ここで、これらはポリチオエーテルスルフィドとも呼ばれ得る。この種の好ましい化合物は、WO2015/014876A2に記載されており、以下の構造を有する。
【0085】
【0086】
x=1.0~1.5
R=-(CH2)p-O-(CH2)q-O-(CH2)r-、R基の0~20%は分岐のアルカンジイル又はアレーンジイル基も保有し得る。
n=1~60
q、p、r=1~10
【0087】
更に好ましい実施形態に基づいて、ベース材料中に、少なくとも1種の液体ポリチオエーテル化合物に加えて、少なくとも1種のポリスルフィドなどの少なくとも1種のジスルフィド含有化合物が、ベース材料に対する割合で80質量%まで含有される。
【0088】
メルカプトを末端基とするポリチオエーテルポリマー及び/又はポリチオエーテルスルフィドポリマーは、これを用いて生成される本発明のベース材料及び封止用コンパウンドの組成物に適用され、詳細には500~6000g/molの範囲の分子量を有し、特に好ましくは900~5000g/molの範囲の分子量を有する液体ポリマーが好ましい。これらのメルカプトを末端基とするポリチオエーテルポリマー及び/又はポリチオエーテルスルフィドポリマーは、1個又は複数個の分岐の分子であってもよい。
【0089】
メルカプトを末端基とするポリスルフィドポリマーとして、これを用いて生成される本発明のベース材料及び封止用コンパウンドの組成物に使用され、好ましくは、詳細にはThioplast(登録商標)G131などの2500~6000g/molの範囲の分子量を有する長鎖ポリマーが使用され、Thioplast(登録商標)G10、Thioplast(登録商標)G12、Thiokol(登録商標)LP32及び/又はThiokol(登録商標)LP12などの3300~5000g/molの範囲の分子量を有するものが特に好ましい。また、これらのメルカプトを末端基とするポリスルフィドポリマーは、1個又は複数個の分岐の分子であってもよい。
【0090】
メルカプトを末端基とするポリスルフィドポリマーとして、これを用いて生成される本発明のベース材料、封止用コンパウンド及び封止用コンパウンドの組成物内で、任意に追加的に、Thiokol(登録商標)LP3、Thioplast(登録商標)G4、Thioplast(登録商標)G22又はThioplast(登録商標)G44などの、詳細には500~2500g/molの範囲、特に好ましくは700~2000g/molの範囲、及び最も好ましくは800~1200g/molの範囲の分子量を有する短鎖ポリマーが使用される。
【0091】
好ましい実施形態では、メルカプトを末端基とするポリスルフィドポリマー及び/又はメルカプトを末端基とするポリチオエーテル及び/又はメルカプトを末端基とするポリチオエーテルスルフィドとして、これを用いて生成される本発明のベース材料、封止用コンパウンド及び封止用コンパウンドの組成物内で、好ましくは、一方では、詳細には2500~6000g/molの範囲、特に好ましくは3300~5000g/molの範囲の分子量を有する長鎖ポリマー、他方では、詳細には500~2500g/molの範囲、特に好ましくは800~1500g/molの範囲の分子量を有する短鎖ポリマーが使用され、長鎖ポリマーの短鎖ポリマーに対する比は、25:1~0.5:1、20:1~2:1又は14:1~8:1の範囲にあることが好ましい。
【0092】
メルカプトを末端基とするポリエーテルポリマーは、これを用いて得られる本発明のベース材料及び封止用コンパウンドの組成物内で、好ましくは詳細には100~7000g/mol又は500~6000g/molの範囲の分子量を有し、特に好ましくは1000~3000g/molの範囲の分子量を有する液体ポリマーであり、対応して、それを用いて生成される封止用コンパウンド内にも存在する。
【0093】
分子量は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)を通して、ポリスチレン標準及び/又はポリエチレン標準に対して決定され得る。本明細書では、ポリマー標本の分子は、多孔性物質で充填されている複数の連続カラム内で、それらの分子量に基づいて分離され、例えば屈折率検出器、粘度検出器及び/又は光散乱検出器により同定される。THF(テトラヒドロフラン)が、例えば移動相として使用され得る。
【0094】
しかしながら、分子量はまた、NMR分光分析法(核磁気共鳴分光法)を通して決定されてもよい。
【0095】
イオウ含有ベースポリマーは、全ベースポリマーに対して0.5~10質量%、0.8~8質量%又は1.2~7質量%の範囲の、反応性SH基を表すメルカプタン含有量を有することが好ましい。
【0096】
ポリマーのメルカプタン含有量は、ヨウ素溶液を用いたSHを末端基とするポリマーの直接滴定によって決定され得る。この目的を達成するために、ポリマーを、40体積%のピリジン及び60体積%のベンゼンからなる溶媒混合物に溶解し、ベンゼンヨウ素溶液を用いて、薄黄色の呈色が残るまで撹拌して滴定する。
【0097】
イオウ含有ベースポリマーは、1~50質量%、5~45質量%又は12~36質量%の範囲の合計イオウ含有量を有することが好ましい。
【0098】
イオウ含有ベースポリマーは、分子当たり1.5~2.5又は1.9~2.2の範囲の、メルカプト基の反応性末端基としての平均官能価を有することが好ましい。
【0099】
官能価は、分子当たりのメルカプト基の平均数を表す。官能価は、分子量の当量に対する比として算出され、NMRにより決定され得る。
【0100】
イオウ含有ベースポリマーは、AITM 1-0003 Airbus Industrie Test Method、1995年6月に準拠して測定された、-80~-30℃又は-60~-40℃の範囲の平均ガラス転移温度Tgを有することが好ましい。
【0101】
イオウ含有量の増加は、耐燃料油性を改善する。ベースポリマー及び/又は基礎組成物としてベースポリマーを含有するそれぞれの組成物及び/又は封止用コンパウンドは、メルカプトを末端基とするポリマー/コポリマーに加えて、任意に、0又は0.001~10又は0.01~5質量%のそれらのオリゴマー、詳細には短鎖有機スルフィドから及び/又は短鎖有機チオエーテルから選択されるものも含有してもよい。これらの短鎖分子は、ベースポリマーの架橋及び/又は粘度変化に寄与し得る。
【0102】
本発明の組成物は、硬化剤が依然として混合されることになっているベース材料か、又はベース材料が硬化剤と混合されている1成分系封止用コンパウンドのいずれかであり、1成分系組成物は、長期の保管時間に備えて凍結され得ることが好ましい。封止用コンパウンド系又は組成物の主要成分は、未硬化のベース材料及びエポキシベースの硬化剤からなる少なくとも2種の成分系、並びに1成分系封止用コンパウンド又は混合によりこれらを用いて生成される封止用コンパウンドである。全てのベース材料又は封止材化合物は、少なくとも1種類のメルカプトを末端基とするベースポリマーを含有する。これらは、それぞれ、ポリスルフィドをベースとする少なくとも1種のメルカプトを末端基とするベースポリマー、ポリチオエーテルをベースとする、メルカプトを末端基とするポリマー及び/又はポリスルフィド及びポリチオエーテルをベースとする、1種のメルカプトを末端基とするベースポリマーを含有することが好ましく、ポリマー混合物及び/又はブロックコポリマーなどのコポリマーとして存在してもよい。封止用コンパウンド系、未硬化のベース材料、硬化剤及び/又は封止用コンパウンドは、それ/それらは、第三級アミン及び/又はアミジン及び/又はグアニジンを放出し、かつ/又は形成する少なくとも1種の光開始剤を含有し、放出され、かつ/又は形成されたアミン又はアミジン又はグアニジンは、少なくとも1種のエポキシ化合物を含有する硬化剤を用いた硬化を触媒することを特徴とする。
【0103】
ベース材料及び/又は封止用コンパウンドは、以下を含有しないことが好ましい:
-(メタ)アクリレートベースの化合物/ポリマー、
-金属ベースの触媒、
-全ての更なる種類のポリエン、例えばビニルシラン、アクリルシラン及びメタクリルシランなどのシランを除外して二重結合を有する有機ポリマー及び有機コポリマー
-ビニル含有ポリマー/コポリマー、
-5質量%超のシラン/シロキサンを末端基とするベースポリマー、
-例えばTiO2などの、UV光吸収顔料などのUV光の強度吸収材料。
【0104】
本実施形態に基づいて、ベース材料及び/又は封止用コンパウンドは、全ての又はいくつかの上述の内容物及び添加剤を含有しなくてもよい。
【0105】
この新しい封止用コンパウンド系内の硬化剤は、共硬化が必要とされない場合、エポキシベースで、通例、マンガン-酸化物、無機及び有機の過酸化物、ビニル化合物並びにイソシアネートを含有しない。これはまた、詳細には、少なくとも1種のエポキシ化合物が硬化試薬として使用される時にのみ当てはまる。共硬化の場合では、しかしながら、同時に、酸化マンガン、無機及び有機の過酸化物、ビニル化合物並びにイソシアネートから選択される少なくとも更に1種のこれらの硬化試薬が、少なくとも1種のエポキシ化合物と共に使用される場合、詳細にはエポキシとイソシアネートとの、又はエポキシと酸化マンガンとの同時使用による場合、合理的であり得る。エポキシ化合物は、硬化剤に唯一添加されることが好ましい。したがって、封止用コンパウンドの硬化は、少なくとも1種のエポキシベースの化合物を用いて起きる。
【0106】
以下において、少なくとも1種のエポキシベースの化合物は、それがモノマー、オリゴマー、ポリマー及び/又はコポリマーを表してもそうでなくても、部分的に区別されず、「エポキシ化合物」として表される。本出願の意味において、用語「エポキシ化合物」は、それぞれ、単官能性及び/又は多官能性であり、モノマー、オリゴマー、及び/又はポリマーをベースとする、少なくとも1種の脂肪族、及び/又は芳香族のエポキシ化合物を表す。これによって、少なくとも1種のこのようなエポキシベースの化合物は、この群から選択される。用語「エポキシ化合物」はまた、一般のエポキシ基も含む。
【0107】
全てのこれらのエポキシ化合物は、全て液体であるため、互いに混合可能であることが好ましい。これらのエポキシ樹脂の中に、室温で固体でもあり、融解し得て、液体エポキシ樹脂及び/又は試薬希釈溶剤に「溶解」され得る、固体のエポキシ樹脂が存在する。エポキシは、反応相手として、詳細にはベースポリマーのメルカプト基に対して使用される。エポキシ化合物又は化合物(複数)の選択を通して、封止用コンパウンドの硬化条件及び機械的特性が著しく影響を受ける。
【0108】
硬化剤は、少なくとも1種のエポキシベースの化合物を含有する。エポキシ化合物は、硬化剤として使用される。硬化剤は、5~100、30~98、40~95、50~90質量%、60~85又は70~80質量%の範囲のエポキシベースの化合物の合計含有量を有する少なくとも1種のエポキシ化合物を含有することが好ましい。本明細書では、所望の量のエポキシ化合物全体を、エポキシを末端基とする化合物の形態で適用することが可能である。
【0109】
本明細書では、エポキシ化合物のエポキシ基は、メルカプト基、詳細にはベースポリマーのメルカプト基と化学的に反応し、任意にまた、メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのメルカプタンベースの少数の他の化合物と化学的に反応する。このような化合物は、機械的特性及び接着力を調整するために、詳細には、基礎物質又は封止用コンパウンドに0.1~5質量%の量で添加され得る。
【0110】
エポキシ化合物の官能価は、一般に2~5の範囲であり得るが、通例、異なる官能価の混合物が存在する。少なくとも1種のエポキシとして使用される硬化剤の官能価は、平均して2.0~3.0又は2.2~2.8の範囲になることが好ましい。エポキシ化合物は、少なくとも1種の脂肪族及び/又は芳香族のエポキシ化合物であり、それぞれが独立して、平均して分子当たり2~3のエポキシ基であることが好ましい。
【0111】
エポキシ化合物は、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル及び脂肪族ポリグリコール及び/又はヒダントインエポキシ誘導体の形態で、硬化剤に添加されることが特に好ましい。また、エポキシを末端基とするポリチオエーテル若しくはポリチオエーテルスルフィド及び/又はエポキシ化ポリスルフィドが添加されてもよい。特に好ましいのはまた、少なくとも1種のエポキシノボラック樹脂、好ましくは架橋エポキシノボラック樹脂である。エポキシ化合物が、上述の部類のいくつか、例えばビスフェノールA/Fエポキシ樹脂又はビスフェノールFノボラック樹脂をベースとすることも可能である。いわゆる試薬希釈液(エポキシを末端基とする、単官能性及び/又は多官能性の)は、例えば粘度及び可撓性を調整するために、任意の上述のエポキシ樹脂と組み合わせられ得る。試薬希釈液の例は、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、2-エチル-ヘキシル-グリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテルである。一般に、全てのエポキシ樹脂は、所望の特性プロファイルに応じて互いに組み合わせられ、メルカプトを末端基とするベースポリマーに対する硬化剤として使用され得る。
【0112】
好ましい実施形態では、硬化剤は、化学的基本として、少なくとも1種のエポキシを末端基とするポリスルフィドポリマー及び/又はポリチオエーテルポリマー及び/又はポリチオエーテルスルフィドポリマーを含み、末端メルカプト基を伴わず、硬化剤として役だち、ベースポリマーとしては役だたない。このポリマーは、詳細には200~800g/eqの範囲のエポキシ当量を有する、液体又は高度に粘稠性のポリマーとして存在することが好ましい。
【0113】
この場合は、驚いたことに、詳細には、DEN431、DEN438、DEN439などのエポキシノボラック樹脂をベースとする、及び/又はDER354、DER331などのビスフェノールAエポキシ樹脂及び/又はビスフェノールFエポキシ樹脂をベースとするエポキシ化合物は、それぞれ本発明による光開始剤と組み合わせて、詳細には、UV光によるメルカプトを末端基とするポリマーの硬化に特に好適であることが見出された。
【0114】
硬化剤として使用されるエポキシ化合物のエポキシ当量は、好ましくは120~700g/eqの範囲、特に好ましくは140~400g/eqの範囲、及び最も好ましくは170~250g/eqの範囲にある。末端メルカプト基を伴わない、エポキシを末端基とするポリスルフィドポリマー及び/又はポリチオエーテルポリマー及び/又はポリチオエーテルスルフィドポリマーは、詳細には200~800g/eqの範囲のエポキシ当量を有する。
【0115】
最も特に好ましいのは、170~200g/eqの範囲のエポキシ当量を有するビスフェノールAエポキシ樹脂をベースとするエポキシ化合物、150~180g/eqの範囲のエポキシ当量を有するビスフェノールF樹脂をベースとするエポキシ化合物、及び160~220g/eqの範囲のエポキシ当量を有するエポキシノボラック樹脂をベースとするエポキシ化合物である。しかしながら、所望の特性及び具体的な用途に応じて、全てのエポキシ樹脂が使用され得る。
【0116】
以下のエポキシ化合物が、特に好ましい:
1)DEN354(Olin Epoxy)などのビスフェノールFエポキシ樹脂
2)DER336、DER331(Olin Epoxy)などのビスフェノールA樹脂
3)DER351、DER324、DER335(Olin Epoxy)などのビスフェノールA/Fエポキシ樹脂
4)DEN431、DEN438、DEN439(Olin Epoxy)などのエポキシノボラック樹脂
5)Thioplast EPS25(Akzo Nobel)などの、ポリスルフィド及び/又はポリチオエーテルをベースとするエポキシを末端基とするプレポリマー
及び
6)1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル(DER731;Olin Epoxy)、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(DER734;Olin Epoxy)、2-エチルヘキシルジグリシジルエーテル(DER728;Olin Epoxy)、C12~C14グリシジルエーテル(DER721 Olin Epoxy)などの、アルコール/グリコールをベースとするエポキシを末端基とする反応性希釈剤。
【0117】
本明細書では、エポキシを末端基とする化合物を使用する時、1モルの反応性SH基と比較して、エポキシ化合物の1.05~2の範囲のモル過剰が、メルカプトを末端基とするベースポリマーの合計含有量に対して添加されることが重要であり得る。
【0118】
エポキシ化合物は、120~700g/eqの範囲、140~400g/eq又は160~250g/eqの範囲のエポキシ当量を有し得る。
【0119】
ベース材料のベースポリマー及び硬化剤の全てのエポキシベースの化合物の全成分は、室温で液体であり、高粘稠性の液体/ペーストであり、かつ/又は有機溶媒に溶解する材料であることが好ましい。これは、これらの成分の均質な混和性を改善する。
【0120】
シランなどの添加剤は、硬化剤に添加され得る。しかしながら、硬化剤は、水素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水素化ビスフェノールAジグリシジルエーテルオリゴマー、水素化ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水素化ビスフェノールFジグリシジルエーテルオリゴマー及び3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキシルカルボキシレートなどの任意の脂環式エポキシ樹脂を含有しないことが好ましい。硬化剤は、水を含有しない又は実質的に含有しなくてもよい。硬化剤は、可塑剤を含有しないことが多い。
【0121】
ベース材料及び/又は封止用コンパウンドは、光増感剤、充填剤、軽充填剤、チキソトロープ剤、可塑剤、接着促進剤、老化阻害剤、難燃剤、架橋剤、樹脂及び有機溶媒からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤を含有することが好ましい。
【0122】
エポキシ化合物とベースポリマーのメルカプト基との反応のため、ヒドロキシチオエーテル及び/又はヒドロキシチオエーテルスルフィド及び/又はヒドロキシスルフィドをベースとするネットワークが形成され、これが硬化封止用コンパウンドを形成する。
【0123】
本目的はまた、封止用コンパウンド系及び/又はイオウ含有ポリマーをベースとする未硬化の基礎組成物と封止用コンパウンドの製造及び硬化のための少なくとも1種のエポキシ化合物を含有する硬化剤とからなる封止用コンパウンドにより達成され、未硬化のベース材料は、ポリエーテル、ポリチオエーテル、ポリスルフィド、ポリチオエーテルスルフィド、これらのコポリマー及び/又はこれらの混合物をベースとする1種のメルカプトを末端基とするポリマーを含有し、未硬化ベース材料、硬化剤又は両方は、高エネルギー性化学線への曝露時に活性化され得て、アミン及び/又はアミジン及び/又はグアニジンのラジカルを放出し得て、アミン又はアミジン又はグアニジン化合物を形成した後、硬化用触媒として作用し得えるか又は作用する光開始剤を含有し、共に封止用コンパウンドを形成するベース材料及び硬化剤の混合物は、高エネルギー性化学線の適用、アミン及び/若しくはアミジン及び/若しくはグアニジンのラジカルの放出、並びに/又はアミン及び/若しくはアミジン及び/若しくはアミジン化合物の形成から開始し、硬化し得て、これは硬化の開始に伴い封止用コンパウンドとして定義される。封止用コンパウンド系は、未硬化のベース材料、硬化剤及び封止用コンパウンドからなる系を定義する。したがって、封止用コンパウンド系の組成物、特性、方法及び効果は、未硬化のベース材料、硬化剤及び封止用コンパウンドにおけるものと同一であり、したがって、それらの更なる記載は省略される。
【0124】
本目的はまた、詳細には指令による硬化(「オンデマンド型」)の、イオウ含有ポリマーをベースとする封止用コンパウンドを生成するための未硬化のベース材料により達成され、未硬化のベース材料は、ポリエーテル、ポリチオエーテル、ポリチオスルフィド、ポリスルフィド、これらのコポリマー及び/又はこれらの混合物をベースとするメルカプトを末端基とするベースポリマー、並びに光開始剤を含有し、かつ光開始剤は、高エネルギー性化学線の適用時に、アミン及び/又はアミジン及び/又はグアニジンのラジカルの放出後、メルカプトを末端基とするベースポリマーとエポキシベースの硬化剤との反応を触媒する、第三級アミン又はアミジン又はグアニジン化合物の形態の触媒を形成するために、活性化されることを特徴とする。
【0125】
オンデマンド型の硬化用に製造される未硬化の封止用コンパウンドは、未硬化のベース材料と少なくとも1種のエポキシ化合物を含有する硬化剤との混合物を含有し、ベース材料は、高エネルギー性化学線の適用時に活性化され得て、アミン及び/又はアミジン及び/又はグアニジンのラジカルを放出し得て、これらはアミン、アミジン又はグアニジン化合物の形成後、硬化用の触媒として作用する光開始剤を含有し、かつベース材料は、高エネルギー性化学線の適用、アミン及び/又はアミジン及び/又はグアニジンのラジカルの放出、並びにアミン、アミジン又はグアニジン化合物の形成を開始した後、硬化することを特徴とする。高エネルギー性化学線の適用に続いて、封止用コンパウンドの硬化は促進される。
【0126】
本目的はまた、イオウ含有ポリマーをベースとする封止用コンパウンドの製造のための硬化剤により達成され、硬化剤は、少なくとも1種のエポキシ化合物、並びに少なくとも1種の光開始剤を含有し、かつ少なくとも1種の光開始剤は、高エネルギー性化学線の適用時に活性化され得て、メルカプトを末端基とするベースポリマーとエポキシ化合物を含有する硬化剤との硬化用の触媒として作用し得て、かつ/又は作用する、アミン及び/又はアミジン及び/又はグアニジンを放出し、かつ/又は形成し得ることを特徴とする。
【0127】
本発明の封止用コンパウンド系において、本発明の封止用コンパウンドでは、未硬化の封止用コンパウンドの硬化は、高エネルギー性化学線を用いた照射により開始され、かつ/又は促進される。
【0128】
本目的はまた、1)ポリチオエーテル、2)ポリスルフィド、3)ポリチオエーテルスルフィド、4)ポリチオエーテル及び/若しくはポリスルフィドの割合を伴うコポリマー並びに/又は5)これらの混合物をベースとする骨格を有するイオウ含有ポリマーを含有する硬化剤を用いて達成され、これらのポリマーは、エポキシを末端基とする。
【0129】
本目的はまた、本発明の封止用コンパウンド系及び/又は封止用コンパウンド及び/又は方法を使用することにより、コーティングされ、かつ/又は封止される構成部分を含む航空機により達成される。
【0130】
本発明のベース材料及び/又は封止用コンパウンドは、必要であれば、少なくともそれぞれ1種の以下の添加剤を追加的に含有し得る:
光増感剤及び/又は光開始剤の混合物は、封止用コンパウンドの吸収波長(複数可)を特異的に調整するために有利に使用される。光増感剤は、化学系(立体障害性の第三級アミン及び/又はアミジン及び/又はグアニジン)の吸収端及び/又は吸収範囲をシフトさせ得る。
【0131】
充填剤、詳細にはタルクなどのケイ酸マグネシウム水和物をベースとするもの、Al(OH)3などのアルミニウムをベースとするもの、長石、石英粉末をベースとするもの、並びに/又はケイ酸カルシウム及び/若しくはケイ酸アルミニウムをベースとするもの、特に好ましくは主に1~20μmの範囲の粒径を有する少なくとも1種の充填剤。充填剤の添加は、機械的特性の改善を促進する。UV照射に好適な充填剤は、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、石英及び/又はアルミニウム三水和物などのアルミニウム水酸化物であると判明している。本発明のベース材料及び封止用コンパウンドに対して好適ではないものは、CaCO3、TiO2、カーボンブラック及び/又はBaSO4をベースとする充填剤並びに著しい鉄含有量及び/又は他の重金属含有量を有する充填剤である。
【0132】
詳細にはポリウレタンをベースとし、そのコポリマー、ポリアミドワックス及び/又はポリオレフィンワックスを含む軽充填剤。軽量充填剤はまた、密度を減少させる。あるいは、又は追加的に、中空の充填本体もまた使用され得る。
【0133】
詳細には長石、シリカ、海泡石及び/又はベントナイトをベースとするチキソトロープ剤。チキソトロープ剤は、封止用コンパウンドを堅固に適用する目的で、レオロジー特性を適合させるため、詳細にはチキソトロピー性挙動を達成するために使用される。
【0134】
詳細にはアジペート、ベンゾエート、シトレート、フタレート、及び/又はテルフェニルをベースとする可塑剤。可塑剤は、封止用コンパウンドを可撓性にするために使用される。可塑剤は、しばしば省略されてもよい。可撓化のために、エポキシを末端基とする反応性希釈剤も使用され得る。
【0135】
詳細にはフェノール樹脂、レゾール、並びに/又はメルカプトプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピル、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロイルオキシメチルトリメトキシシラン及び/若しくは(メタクリロキシメチル)メチルジメトキシシランなどの有機官能性アルコキシシランをベースとするものなど、並びに/又はビス-シリル-シランなどのシラン/シラノール/シロキサン-ここでは簡潔に「シラン」とする-をベースとする接着促進剤。接着剤は、封止用コンパウンドと基材との接着力を改善するために、接着促進剤として使用される。グリシドキシプロピルトリメトキシシラン及びグリシドキシプロピルなどのエポキシ基を保有する接着促進剤が使用される場合、これらは硬化剤成分中で使用されなければならず、そうでなければ、ベースポリマーのSH基とエポキシとの早期反応が起きるからである。
【0136】
老化防止剤は、詳細には、立体障害性フェノールをベースとし、フェニレンアミンをベースとするもの、及び/又は立体障害性アミンをベースとする光安定剤などのいわゆるヒンダードアミン光安定剤(HALS)として、例えば、4,6-ビス(ドデシルチオメチル)-o-クレゾール、エチレン-ビス(オキシエチレン)ビス-(3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート、チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリトリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)及び/又はN-イソポピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミンなどのフェニレンアミンが使用される。老化防止剤は、老化プロセスの結果、ポリマーベース材料中に形成されたラジカル及び/又は他の開裂生成物を捕獲するために使用され、封止用コンパウンドの黄変又は脆性の増加などの老化を遅延させるか又は妨げることに寄与する。
【0137】
詳細には、好ましくは機械的特性の更なる改善に寄与する(SH-末端)メルカプタン(例えば、Bruno Bock/THIOCURE(登録商標)によるメルカプト-カルボン酸の誘導体)をベースとする架橋剤。
【0138】
詳細には、リン酸エステルをベースとするもの、アンモニウムポリホスフェートをベースとするもの、メラミンをベースとするもの、水酸化アルミニウムをベースとするもの及び/又は水酸化マグネシウムをベースとする、難燃剤。難燃剤は、封止用コンパウンドの燃焼開始の遅延、燃焼の自発的停止及び/又は煙の放出の低減などの封止用コンパウンドの耐火性を改善するために使用される。
【0139】
並びに/又は、詳細には酢酸エチル及び/若しくはモノプロピレングリコールモノメチル-エーテルなどのエステル及び/若しくはエーテルをベースとする少なくとも1種の有機溶媒。これらは、場合によっては、液体又は粘稠性の混合物の均質化を容易にする。しかしながら、ほとんどの場合、溶媒は省略され得る。
【0140】
好ましくは、本発明のベース材料の組成物は以下を含有する:
30~98質量%の範囲、好ましくは40~95質量%、45~90質量%、50~85質量%、55~80質量%の範囲、又は60~75質量%の範囲の少なくとも1種のメルカプトを末端基とするポリマー/コポリマーの含有量を有し、任意に、ベースポリマーの0又は0.001~10質量%を構成し得る、0又は0.001~20質量%の範囲のモノマー及び/又はオリゴマーの含有量を含む、ベースポリマー;
任意に、0質量%又は0.1~30質量%、2~20質量%、5~15質量%又は6~10質量%の範囲の合計含有量を有する少なくとも1種の可塑剤。
【0141】
任意に、少なくとも1種の充填剤は、0質量%又は0.1~50質量%、2~40質量%、5~30質量%、10~20質量%又は6~15質量%の範囲の合計含有量で存在する。
【0142】
任意に、0質量%又は0.1~30質量%、3~25質量%、5~20質量%又は8~15質量%の範囲の合計含有量を有する少なくとも1種の軽充填剤。
【0143】
任意に、0質量%又は0.01~30質量%、0.01~10質量%、0.2~25質量%、0.5~20質量%、1~15質量%、0.5~8質量%又は1.5~5質量%の範囲の合計含有量を有し、原則的に、10質量%より高い量さえ可能である少なくとも1種のチキソトロープ剤であって、特に該チキソトロープ剤がまた充填剤としても役だち、高エネルギー性化学線に対して十分に透過性である時、この場合に、その含有量に関して、それは単にチキソトロープ剤として考えられる。
【0144】
任意に、0質量%又は0.05~5質量%、又は0.1~4質量%、又は0.3~3質量%、又は0.6~2質量%の合計含有量を有し、第三級アミン及び/又はアミジン及び/又はグアニジンをベースとするラジカルを放出し得る少なくとも1種の光開始剤。
【0145】
任意に、0質量%又は0.05~5質量%、0.1~4質量%、又は0.3~3質量%又は0.6~2質量%の範囲の合計含有量を有し、封止用コンパウンド配合物の吸収スペクトルをシフトし得る少なくとも1種の光増感剤。
【0146】
任意に、0質量%又は0.1~10質量%、0.3~8質量%、0.6~6質量%、又は1~5質量%、2~4質量%又は1.5~3質量%の範囲の合計含有量を有する少なくとも1種の接着促進剤。
【0147】
任意に、0質量%又は0.5~2.5質量%又は0.5~1.5質量%の範囲の合計含有量を有する少なくとも1種の老化防止剤。
【0148】
任意に、0質量%又は0.5~40質量%又は0.5~10質量%の範囲の合計含有量を有する少なくとも1種の難燃剤。
【0149】
任意に、0質量%又は0.1~10質量%、又は0.5~6質量%の範囲の合計含有量を有し、詳細には、好ましくは機械的特性の改善を促進するメルカプタン(Bruno Bock/THIOCURE(登録商標)によるメルカプトカルボン酸の誘導体など)をベースとする少なくとも1種の架橋剤。
【0150】
並びに任意に、0質量%又は0.1~15質量%又は2~10質量%の範囲の合計含有量を有し、エステル及び/又はエーテルをベースとする少なくとも1種の有機溶媒。
【0151】
ベース材料の均質混合物は、例えば真空溶解機を使用することにより達成され得る。
【0152】
好ましくは、本発明による硬化剤は以下を含有する:
20~100、30~98、40~95、50~90質量%、60~85又は70~80質量%の範囲の合計含有量を有する少なくとも1種のエポキシ化合物。
【0153】
任意に、0質量%又は1~90質量%の範囲、2~50質量%の範囲、又は3~20質量%の範囲の合計含有量を有し、第三級アミン及び/又はアミジン及び/又はグアニジンをベースとするラジカルを放出し得る少なくとも1種の光開始剤。
【0154】
任意に、0質量%又は1~90質量%の範囲、又は2~50質量%の範囲又は3~20質量%の範囲の合計含有量を有する少なくとも1種の光増感剤。
【0155】
任意に、0質量%又は0.01~10質量%又は0.5~5質量%の範囲の合計含有量を有する少なくとも1種のチキソトロープ剤。加えて、硬化剤が焼成シリカに基づくものなどのチキソトロープ剤も含有する場合、これは硬化剤の流動特性を調節するための特に便利な手段であることが判明しているため、有利でもあり得る。
【0156】
並びに任意に、0質量%又は0.1~15質量%又は2~10質量%の範囲の合計含有量を有し、エステル及び/又はエーテルをベースとする少なくとも1種の有機溶媒。
【0157】
硬化剤の均質混合物は、例えば真空溶解機を使用することにより達成され得る。
【0158】
好ましくは、本発明の封止用コンパウンドの組成物は以下を含有する:
エポキシ化合物ベースの硬化剤との架橋反応の前に、20~97質量%の範囲、好ましくは40~95質量%、45~90質量%、50~85質量%、55~80質量%の範囲、又は60~75質量%の範囲の少なくとも1種のメルカプトを末端基とするポリマーの含有量を有する少なくとも1種のベースポリマー。
【0159】
エポキシ化合物ベースの硬化剤との架橋反応の後に、20~97質量%の範囲、好ましくは40~95質量%、45~90質量%、50~85質量%、55~80質量%の範囲、又は60~75質量%の範囲の含有量を有し、これはエポキシとの架橋反応の後に、ヒドロキシチオエーテル、ヒドロキシスルフィド及び/又はヒドロキシチオエーテルスルフィドをベースとするポリマー/コポリマーである、少なくとも1種のベースポリマー。
【0160】
0.05~5質量%、0.1~4質量%、0.3~3質量%の範囲、又は0.6~2質量%の範囲で、第三級アミン及び/又はアミジン及び/又はグアニジンをベースとするラジカルを放出することができ、並びに/又はラジカル及び/若しくはその後しばらくしてラジカルから化合物が形成される、0質量%又は0.05~5質量%、0.1~4質量%、0.3~3質量%又は0.6~2質量%の範囲の合計含有量を有する、少なくとも1種の光開始剤。
【0161】
任意に、0質量%又は0.05~5質量%、0.1~4質量%、0.3~3質量%又は0.6~2質量%の範囲の合計含有量を有する少なくとも1種の光増感剤。
【0162】
1~40、3~30、5~25、7~20質量%、8~18又は9~16質量%の範囲の合計含有量を有する少なくとも1種のエポキシ化合物。
【0163】
任意に、0質量%又は0.1~50質量%、2~40質量%、5~30質量%、10~20質量%又は6~15質量%の範囲の合計含有量を有する少なくとも1種の充填剤。
【0164】
任意に、0質量%又は0.1~30質量%、3~25質量%、5~20質量%又は8~15質量%の範囲の合計含有量を有する少なくとも1種の軽充填剤。
【0165】
任意に、0質量%又は0.01~30質量%、0.01~10質量%、0.2~25質量%、0.5~20質量%、1~15質量%、0.5~8質量%又は1.5~5質量%の範囲の合計含有量を有し、原則的に、10質量%より大きい含有量が可能である少なくとも1種のチキソトロープ剤であって、特に該チキソトロープ剤がまた充填剤の特性を有し、高エネルギー性化学線に対して十分に透過性である場合、この場合、その含有量に関して、それは単にチキソトロープ剤として考えられる。
【0166】
任意に、0質量%又は0.1~30質量%、2~20質量%、5~15質量%又は6~10質量%の範囲の合計含有量を有する少なくとも1種の可塑剤。
【0167】
任意に、0質量%又は0.1~10質量%、0.3~8質量%、0.6~6質量%、1~5質量%、2~4質量%又は1.5~3質量%の範囲の合計含有量を有する少なくとも1種の接着促進剤。
【0168】
任意に、0質量%又は0.5~2.5質量%又は0.5~1.5質量%の範囲の合計含有量を有する少なくとも1種の老化防止剤。
【0169】
並びに任意に、0質量%又は0.1~15質量%又は2~10質量%の範囲の合計含有量を有し、エステル及び/又はエーテルをベースとする少なくとも1種の有機溶媒。
【0170】
封止用コンパウンドの均質混合物は、例えばTechkit カートリッジミキサー又は静的ミキサー(「並列」又は「大容量ミキサー」)を使用することにより、達成され得る。
【0171】
メルカプトを末端基とするベースポリマーの、硬化剤中のエポキシベースの化合物に対する質量比は、それぞれの組成物の更なる化合物の含有量を考慮することなく、好ましくは100:3~100:50の範囲、より好ましくは100:4~100:25、100:5~100:15又は100:6~100:12の範囲にある。
【0172】
硬化のために、本発明の封止用コンパウンド系内のベース材料及び硬化剤は、硬化剤のエポキシ基が、ベース材料(ベースポリマー)のメルカプト基に対して超化学量論的量で存在するような手段で混合される。この場合、過剰のエポキシ基は、好ましくは1~80mol%、特に好ましくは5~50mol%及び更に特に好ましくは10~30mol%である。
【0173】
ベース材料の、エポキシベースの硬化剤に対する質量比は、それぞれの組成物の更なる化合物の含有量を考慮して、好ましくは100:3~100:30の範囲、より好ましくは100:4~100:25、100:5~100:15又は100:6~100:12の範囲にある。
【0174】
ベース材料の、エポキシベースの硬化剤に対する分子量比は、それぞれの組成物の更なる含有量を考慮して、好ましくは0.6:1~5:1の範囲、より好ましくは0.8:1~4:1、0.9:1~3:1又は1:1~2:1の範囲にある。
【0175】
メルカプトを末端基とするベースポリマーの、光開始剤に対する質量比は、それぞれの組成物の他の含有量を考慮することなく、好ましくは100:0.1~100:5の範囲、より好ましくは100:0.5~100:4、100:0.8~100:3又は100:1~100:2の範囲にある。
【0176】
メルカプト基の、エポキシ基に対する分子量比は、それぞれの組成物の他の含有量及び基を考慮に入れることなく、好ましくは1:0.8~1:2の範囲、より好ましくは1:0.9~1:1.5、1:0.95~1:1.3又は1:0.98~1:1.2の範囲である。
【0177】
本発明の封止用コンパウンド及び本発明の封止用コンパウンド系は、ポリエーテル、ポリチオエーテル、ポリチオエーテルスルフィド、ポリスルフィド、これらのコポリマー及び/又は混合物をベースとするメルカプトを末端基とするベースポリマー、立体障害性第三級アミン及び/又は立体障害性アミジン及び/又は立体障害性グアニジンをベースとする少なくとも1種の光開始剤並びに少なくとも1種のエポキシ化合物並びに任意に少なくとも1種の添加剤を含むことが好ましい。少なくとも1種の添加剤は、光増感剤、充填剤、軽充填剤、チキソトロープ剤、可塑剤、接着促進剤、老化防止剤、難燃剤、架橋剤、樹脂及び有機溶媒からなる群から選択される少なくとも1種であり得ることが好ましい。充填剤として、水和ケイ酸マグネシウム、アルミニウム三水和物などのアルミニウム含有ケイ酸アルミニウム及び/又はカルシウムが含有されることが好ましい。これらの主成分の一部、及び任意にこれらの添加剤の一部もまた、ベース材料中に及び/又は硬化剤中に含まれ得る。
【0178】
本発明の化合物は、好ましくは以下の特性を有する:
本発明のベース材料及び封止用コンパウンドは、通例、以下の特性の全てではないとしても、大部分を有する:
本発明のベース材料及び封止用コンパウンドの動的粘度は、DIN65262-1に準拠して、Brookfield粘度計を用いて、23℃で、スピンドル7を用いて、2~10rpmで測定して、1~2500Pa・sの間、又は10~1800Pa・sの間であることが好ましい。
【0179】
UV照射は、層厚さ及び/又はUV源に応じて、1秒~5分、好ましくは5秒~3分、又は10秒~1分の時間にわたり実施されることが好ましい。DIN65262-1に準拠して決定された封止用コンパウンドのタックフリータイムは、1秒~10分の範囲であることが好ましく、詳細には層厚さに応じて、UV照射後に0.3~5分又は1~3分の範囲であることが多い。
【0180】
DIN65262-1に準拠して決定された未硬化の封止用コンパウンドの加工時間は、0.5~24時間の範囲であることが好ましく、その中でも照射されるベース材料の光開始剤量に応じて、0.5~6、又は0.5~2時間の範囲であることが特に好ましい。
【0181】
本発明のプロセスにより生成される封止用コンパウンドは、特に光開始剤濃度にも応じて、DIN65262-1に準拠して、高エネルギー性化学線の後に0.05~10分の範囲のタックフリータイムを有する/有したことが好ましい。
【0182】
ISO7619-1に準拠して決定された、全固化時間又はショアA硬度30に到達する時間は、本発明による封止用コンパウンド中で、その中でも光開始剤量及び/又は層厚さに応じて、1~960分の範囲、好ましくは5~300分の範囲、より好ましくは10~90分の範囲にあることが好ましい。
【0183】
ISO2781に準拠して決定された、本発明によるベース材料及び封止用コンパウンドの密度は、0.9~1.6g/cm3の範囲、しばしば1.0~1.5g/cm3の範囲であることが好ましい。
【0184】
本発明による封止用コンパウンドは、ISO7619-1に準拠して決定され、23±2℃で、かつ50±5%の相対湿度の空気中で保管され、UV照射後2週間に測定して、20~80の範囲、特に好ましくは30~60の範囲、特に好ましくは40~55の範囲のショアA硬度を有することが好ましい。
【0185】
ISO37に準拠して決定され、23±2℃で、50±5%の相対湿度の空気中で保管された時、UV照射後2週間に測定された、本発明による封止材料の破断点伸びは、好ましくは100~1000%の範囲、より好ましくは200~800%又は300~600%の範囲である。
【0186】
ISO37に準拠して決定され、Jet A1燃料タイプの燃料保管で、60℃で168時間後に測定された、本発明による封止材料の破断点伸びは、好ましくは100~800%の範囲、特に好ましくは200~600%又は300~500%の範囲である。
【0187】
ISO37に準拠して決定され、Jet A1燃料タイプの燃料保管で、100℃で300時間後に測定された、本発明による封止材料の破断点伸びは、好ましくは100~700%の範囲、特に好ましくは200~600%又は300~500%の範囲である。
【0188】
ISO37に準拠して決定され、水中浸漬により35℃で1000時間後に測定された、本発明による封止材料の破断点伸びは、好ましくは100~700%の範囲、特に好ましくは200~500%又は250~350%の範囲である。
【0189】
アルミニウム合金2024T3上で、DIN65262-1に準拠して決定された、本発明の封止用コンパウンドの耐剥離性は、好ましくは60~350N/25mmの範囲、より好ましくは100~250N/25mm又は150~200N/25mmの範囲である。
【0190】
ペイント上、例えば、エポキシベースコート37035A(Akzo Nobel Aerospace Coatings)などの溶媒含有ベースコート上、Seevenax(登録商標)313-01及びSeevenax(登録商標)313-02(Mankiewicz)などのエポキシをベースとするものなどの水性下塗り塗料上、Seevenax(登録商標)311-03(Mankiewicz)などの水性エポキシ上塗り塗料などの仕上げ塗料、Finish F70-A(Mapaero)上、及び/又はAerodur(登録商標)C21-100(Akzo Nobel)及びALEXIT(登録商標)406-22(Mankiewicz)などのポリウレタンをベースとする溶媒ベースの上塗り塗料上の、DIN65262-1に準拠して決定された、封止組成物の耐剥離性は、好ましくは50~350N/25mmの範囲、好ましくは100~300N/25mm又は150~200N/25mmの範囲である。
【0191】
ISO37に準拠して決定され、23±2℃で、50±5%の相対湿度の空気中で保管された時、UV照射後2週間に測定された、本発明による封止材料の引張抵抗は、好ましくは0.5~3.8MPaの範囲、特に好ましくは1~3.5MPa又は1.8~3.0MPaの範囲である。
【0192】
ISO37に準拠して決定され、Jet A1燃料タイプの燃料保管の場合、60℃で168時間後に測定された、本発明の封止用コンパウンドの引張抵抗は、0.5~3.5MPaの範囲、特に好ましくは1~3.0又は1.5~2.8MPaの範囲にある。
【0193】
ISO37に準拠して決定され、Jet A1燃料タイプの燃料保管の場合、100℃で300時間後に測定された、本発明の封止用コンパウンドの引張抵抗は、好ましくは0.5~3.5MPaの範囲、特に好ましくは1~3.0MPa又は1.2~2.8MPaの範囲である。
【0194】
ISO37に準拠して決定され、水中浸漬により35℃で1000時間後に測定された、本発明による封止用コンパウンドの引張抵抗は、好ましくは0.5~3.5MPaの範囲、特に好ましくは1~3.0MPa又は1.5~2.7MPaの範囲である。
【0195】
本発明の封止用コンパウンド系及び/又は本発明による封止用コンパウンドは、高エネルギー性化学線照射後5~600分に測定して少なくとも10のショアA硬度、及び高エネルギー性化学線後2週間に測定して30~60の範囲のショアA硬度を有することが好ましい。
【0196】
並びに/又は本発明の封止用コンパウンドの低温可撓性は、封止用コンパウンドを、詳細にはフィルムの形態で、高エネルギー性化学線照射後、2週間、23±2℃の周囲温度及び50±5%の相対湿度で保管し、次にこれらを-55±2℃の温度までしばらくの間冷却し、この低温でこれらを30°の角度で曲げ、次にこれらを室温で目視により検査して欠陥を検出することにより、内部試験プロトコルに準拠して決定される。これによって、本発明の化合物は、低温で曲げたことにより起きた亀裂及び他の欠陥がないことを示すことが好ましい。
【0197】
本発明の封止用コンパウンド系及び/又は本発明による封止用コンパウンドは、完全な硬化の後、以下の特性を有することが好ましい:
-55±2℃の温度で、30°の角度で曲げることによる低温可撓性の決定で起こり得る、封止用コンパウンド中の亀裂又は他の異常がないこと、
60℃の温度で168時間の燃料保管後、100℃の温度で300時間の燃料保管後、かつ35℃の温度で1000時間の水中保管後の、0.5~3.8MPaの範囲の引張抵抗、
60℃の温度で168時間の燃料保管後、100℃の温度で300時間の燃料保管後、かつ35℃の温度で1000時間の水中保管後の、100~800%の範囲の破断点伸び及び/又は、
1.00~1.50g/cm3の範囲の密度。
【0198】
本発明の封止用コンパウンド系及び/又は本発明による封止用コンパウンドは、完全な硬化の後、以下の特性を有することが好ましい:
0.5~3.5MPaの範囲の引張り強度、
100~900%の範囲の破断点伸び及び/又は
50~300N/25mmの範囲の耐剥離性。
【0199】
耐剥離性は、詳細には、アルミニウム若しくはアルミニウム合金、チタン若しくはチタン合金、ステンレス鋼、炭素繊維強化プラスチックCFRPなどの複合材料の基材上で、並びに/又は例えば、少なくとも溶媒含有又は水性の下塗り及び/若しくは上塗り、詳細には、エポキシ、ポリエステル、又はポリウレタン塗装をベースとするものを用いた塗装基材上で決定される。
【0200】
追加の驚くべき利点を以下に列記する:
第三級アミン及び/又はアミジン及び/又はグアニジンを放出する光開始剤はまた、驚いたことに、エネルギー性化学線照射時に、例えば本発明による封止用コンパウンド混合物がUV光に曝露された時に、エポキシ化合物とメルカプタンとの反応を開始し、かつ/又は促進する。
【0201】
少量のみの第三級アミンラジカル、アミジンラジカル及び/又はグアニジンラジカルを放出する光開始剤が、ベース材料の硬化用に十分な量の触媒活性を提供することは驚くべきことであった。
【0202】
多くの場合において、封止用コンパウンド中の0.1質量%などの少量の光開始剤が、隠れた部位、切込み及び穴を触媒的に活性化するのに既に十分であることは驚くべきことであった。
【0203】
本発明の封止材料系を用いて、より大きい層厚さ、例えば約7mmの層厚さの硬化と、これらの層厚さの硬化促進の両方が達成されることは驚くべきことであった。
【0204】
明らかに、このような非常に高速の表面硬化及び長期加工の封止用コンパウンドが記載されるのは初めてのことである。
【0205】
明らかに、このような非常に高速の表面硬化及び指令型(「オンデマンド型」)硬化封止用コンパウンドさえ記載されるのは初めてのことである。
【0206】
驚いたことに、所与の加工時間で、現況技術に対して、極度に短いタックフリータイム及びまた非常に短い全固化時間が達成される。
【0207】
驚いたことに、本発明の封止用コンパウンドは、硬化を開始するために、非常に低線量のUV照射線、すなわち、約1J/cm2からのUV線量を必要とすることが多いことが確定された。
【0208】
本発明の方法では、封止用コンパウンドの0.1~0.5μmなどの特に薄い層、及び3~7mmの非常に厚い層さえ両方とも、UV光で硬化され、およそ0.1~7mmの範囲で、硬化され得る。封止用コンパウンドは、平坦又はビーズ様に適用され得る。
【0209】
本発明のコーティング方法は、航空機産業に特に好適であるが、また高速の全固化及びその中でも、封止用コンパウンドの相対的に長い加工時間を有する非常に高速の表面の硬化が必要とされ、かつ/又は有利であるところではどこでも使用され得る。
【0210】
本発明のコーティング方法は、タンク並びに、給油所及び化学プラントにおける舗装面などの封止される区域などの建築要素の封止用、金属シート、フィルム及び他の基材などの上に重なる建築要素の接続用、空洞及び空間の充填用、詳細には金属素材及び炭素繊維強化又はガラス繊維強化のプラスチック材料などの複合材のコーティング用、空気力学的平滑化及び封止用、並びに穴のある区域、例えば、金属要素の腐食保護層が損傷しているか又は除去されている場所の腐食保護用に特に好適である。それはまた、例えば輸送中の支持機能も有し得る。
【0211】
本発明の方法は、自動車産業、鉄道部門、造船業、航空機産業、又は宇宙機建造などの輸送業における使用、機械産業、土木工学における使用、又は家具の製造用に特に好適である。
【0212】
本発明の封止用コンパウンド系、本発明のベース材料、本発明の硬化剤及び/又は本発明の封止用コンパウンドは、詳細には、航空機及び宇宙船、自動車及び鉄道車両の建造及び整備用、造船業、機械産業、土木工学、例えば給油所及び化学プラントにおける床版の封止用、並びに電気及び電子部門のための注型用樹脂又は注型用樹脂の製造のための使用に好適である。
【実施例】
【0213】
実施例及び比較例
本発明の目的は、例示的実施形態により、以下に説明される。
【0214】
本発明の封止用コンパウンドのための一般的製造及び試験規定:
本発明の基礎組成物は、最初に、Thiokol(登録商標)LP12、Thioplast(登録商標)G10及び/又はThioplast(登録商標)G131などのポリスルフィドポリマー、及び/又はポリチオエーテルポリマー及び/又はポリチオエーテルスルフィドポリマー及び/又はポリエーテルポリマー、ヒンダード第三級アミン及び/又はアミジン及び/又はグアニジンをベースとする少なくとも1種の光開始剤、ベンゾフェノン及び/又はイソプロピルをベースとする少なくとも1種の光増感剤、海泡石をベースとするなどのチキソトロープ剤、及びフェノール樹脂をベースとするか又は有機官能性アルコキシシランをベースとするなどの接着促進剤を、10分間、50mbar未満の真空下で、かつ冷却水を用いたプラネタリー溶解機の冷却下で、約2000rpmの速度で、混合することにより製造された。続いて、ケイ酸マグネシウム水和物、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、ポリアミド及び/又はポリエチレンワックスをベースとするものなどの残りの充填剤、及びリン酸エステルをベースとするものなどの抗酸化剤を、更に10~20分間、50mbar未満の真空下で、プラネタリー溶解機により添加し、約2000rpmの速度で分散させた。ポリスルフィド、ポリチオエーテル、ポリチオエーテルスルフィド、ポリエーテルコポリマー及びこれらのコポリマーは、常にメルカプトを末端基とするものであった。
【0215】
ベース材料の良好な分散のために、詳細には、組成物、レオロジー特性及び器具装置に応じて、1800~2200rpmの速度範囲及び30~40分の時間が好適である。
【0216】
本発明による硬化剤は、エポキシ化合物と、ヒュームドシリカAerosil(登録商標)R202をベースとするチキソトロープ剤とを、50mbar未満の真空下で、プラネタリー溶解機を約2000rpmの速度で使用して混合することにより製造された。
【0217】
構造部品の圧縮、充填及び/又はコーティングのために、並びに試験片の製造のために、ベース材料及び硬化剤を、100:5~100:7の比で混合し、次に高エネルギー性化学線により活性化した。本発明の封止用コンパウンドは、高エネルギー性化学線を用いることなしでさえ硬化され、層厚さに応じて、0.2~6mmの範囲の層厚さで24~168時間の範囲の硬化時間が必要であった。
【0218】
ISO7619-1に準拠して決定されたショアA硬度、ISO37に準拠して決定された引張り強度及び伸びなどの封止用コンパウンドの機械的特性は、封止用コンパウンドを23℃の周囲空気温度及び50%の相対湿度で空気中で7日間保管した後に決定された。ベース材料と硬化剤との混合後、硬化剤を空気中に封止用コンパウンドを基材上の状態で、封止用コンパウンドを直ちに基材上に塗布し、次に直ちに高エネルギー性化学線で照射した。そこから、それを空気中で保管した。
【0219】
封止用コンパウンドを活性化するために、標準的には、FeドープのHgランプを備えるUV表面照射体を400Wの電力で使用した。本明細書では、化学線で活性化されるコーティングの硬化用に、紫外発光ダイオード及び蛍光ランプを含む全ての市販のUV光源、又は電子ビーム源が好適である。封止用コンパウンドは、UVA及び/又はUV/VISなどの315~600nmの範囲の波長で硬化され得る。
【0220】
本発明の実施例の表4に列記する配合物は、3種の異なる光開始剤の、未硬化のベース材料の加工特性に対する、かつ硬化封止用コンパウンドに対する、並びに封止用コンパウンドの機械的特性に対する影響を決定するために、製造された。本発明の基礎組成物及び硬化剤組成物は、処方に基づいて、全ての他の例のように製造された。両方の部分的混合物は、100:5の質量比で均質に混合され、アルミニウム合金のシート上に2mmの層厚さで、ミキサーカートリッジから押出により、約23℃で塗布され、続いて、FeドープのUV表面照射体を用いて、300~600nmの範囲の波長で、約10J/cm2のUV線量、かつ0.3W/cm2のUV強度で、10cmの距離で40秒間にわたり照射された。ここで、硬化性コーティングは、60℃に達しなかったがわずかに加温された。
【0221】
続いて、硬化された封止用コンパウンドは、試験用金型から取り外され、硬度、伸び及び引張り強度などの機械的特性が決定される前に、7日間、23±2℃、50±5%の相対湿度の空気中で保管された。空気中での保管後、続いて様々な他の媒質中での保管が行われ、以下の表7を参照されたい。
【0222】
光開始剤1として、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチル-ベンジル)-1-(4-モルホリン-4-イル-フェニル)-ブタン-1-オンが使用された。光開始剤2として、2-ベンジル-2-ジメチル-アミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン-1が使用された。光開始剤3として、立体障害性DBNが使用された。追加の触媒として、トリエチレンジアミンが使用された。硬化剤として、180~195g/eqのエポキシ当量及び10~15Pa・sの粘度を有するビスフェノールAエポキシ樹脂(Epikote828又はDER331として入手可能)と、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテルをベースとする反応性希釈剤との混合物が使用された。ビスフェノールAエポキシ樹脂と反応性希釈剤との混合比は、4:1であった。実施例の測定された特性は、以下の表5に列挙される。
【0223】
比較例1(CE1)は、光開始剤を含有せず、個々の光開始剤の影響をより良く比較するために製造された。比較例2及び3(CE2及びCE3)は、光開始剤として、立体障害性の第三級アミンを含有するが、しかしながらこれはUV光を用いた活性化後、塩基性度が低すぎるため、硬化反応を開始し、かつ/又は促進することができない。したがって、ここでVB1と比較して、利点は見られない。驚いたことに、実施例1(B1)は、立体障害性DBNの使用に起因して、著しく促進された反応を示す。したがって、立体障害性DBNは、SH-基とエポキシ基との反応を触媒するのに十分な高塩基性度を有すると考えられる。
【0224】
【0225】
【0226】
以下の実施例2(B2)及び比較例4(VB4)では、本発明の配合物と、従来の市販のマンガン-二酸化物硬化封止用コンパウンドMC-780B-1/2が比較される。B2は、1回目はUV光により活性化され、2回目はUV光により活性化されない。表6は、これらの配合物の組成を示す。表7は、これらの封止用コンパウンドの特性を示す。両方の封止用コンパウンドは、同一の加工時間を有することが明瞭に見られる。驚いたことに、本発明の封止用コンパウンドは、UV光により事前に活性化された場合、MC-780B-1/2に対して、ショアA30の初期硬度同様に、かなり短い時間でタックフリー状態に到達する。UV光により事前に活性化されていない場合、封止用コンパウンドは、かなり長い時間後ではあるが、その目標特性に依然として到達する。本発明の封止用コンパウンドは、驚いたことに様々な媒体での保管及び35℃の水又は60℃若しくは100℃の燃料に保管された場合などのより高温に保管された後でさえも、良好な機械的特性を有する。
【0227】
【0228】
【0229】
配合物中に追加の立体障害性でない触媒を用いることなく、本発明の封止用コンパウンドを使用することも可能であり、実施例6及び7(B3及びB4)を参照されたい。表8は、これらの実施例の組成を示し、表9は測定された特性を示す。封止用コンパウンドの硬化速度は、追加の非立体障害性触媒を用いないと、かなり遅いことが明瞭に見られる。
【0230】
一般に、例えば、168時間後及び100℃で測定された60℃における燃料、並びに1000時間後に測定された35℃における防水性、圧媒液、凝縮水、及び不凍液に対する耐性などの様々な媒体に対する高耐性、高耐熱性、低温での高可撓性、気象因子に対する高耐性、異なる基材上での高剥離耐性、高破断点伸び及び高引張り強度などの従来の航空機封止用コンパウンドの高い利用価値のある特性は、かなり短い硬化にもかかわらず、実質的に又は完全に達成され得る。
【0231】
【0232】