(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-16
(45)【発行日】2022-06-24
(54)【発明の名称】繊維強化熱可塑性複合材料、繊維強化熱可塑性樹脂組成物、及びそれらの成形品
(51)【国際特許分類】
C08J 5/04 20060101AFI20220617BHJP
C08L 67/00 20060101ALI20220617BHJP
C08K 7/02 20060101ALI20220617BHJP
【FI】
C08J5/04 CFD
C08L67/00
C08K7/02
(21)【出願番号】P 2018013397
(22)【出願日】2018-01-30
【審査請求日】2020-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000219266
【氏名又は名称】東レ・デュポン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115440
【氏名又は名称】中山 光子
(72)【発明者】
【氏名】平井 陽
(72)【発明者】
【氏名】宮内 理治
【審査官】大▲わき▼ 弘子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-256267(JP,A)
【文献】特開2000-212336(JP,A)
【文献】特開2007-038609(JP,A)
【文献】特開2004-231796(JP,A)
【文献】特開2017-165905(JP,A)
【文献】特開2011-178870(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B11/16、15/08-15/14、C08J5/04-5/10、5/24、
C08K3/00-13/08、C08L1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アラミド繊維の短繊維(ただし、パルプを除く)と、
引張試験における破断伸び(ISO527準拠)が200%以上である、ポリエステル系熱可塑性エラストマ
ーとからなり、
ISO527に準拠した引張試験における応力-ひずみ曲線(S-Sカーブ)が、
(a)上降伏点を有する場合には該上降伏点での応力、
(b)明確な上降伏点を示さず降伏後も応力が増加を示す場合には40%ひずみ時の応力、
を降伏強さとしたとき、
その降伏強さが、その母材となる
ポリエステル系熱可塑性エラストマーの降伏強さ
(ISO527準拠)の1.3倍以上であり、その引張破断伸びが200%以上であることを特徴とする繊維強化熱可塑性
複合材料。
【請求項2】
ISO527に準拠した引張試験における引張降伏強さが、10MPa以上である、請求項1に記載の繊維強化熱可塑性複合材料。
【請求項3】
短繊維の、繊維強化熱可塑性複合材料中における含有量が、1~40質量%である、請求項1又は2に記載の繊維強化熱可塑性複合材料。
【請求項4】
アラミド繊維が、エポキシ基含有化合物を繊維骨格内に含浸させたポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維である、請求項1~
3のいずれかに記載の繊維強化熱可塑性複合材料。
【請求項5】
短繊維の平均繊維長が5mm以下である、請求項1~
4のいずれかに記載の繊維強化熱可塑性複合材料。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれかに記載の繊維強化熱可塑性複合材料を成形してなる成形品。
【請求項7】
熱可塑性樹脂に、請求項1~
5のいずれかに記載の繊維強化熱可塑性複合材料を配合した、短繊維量が1~30質量%である繊維強化熱可塑性樹脂組成物。
【請求項8】
熱可塑性樹脂が、熱可塑性エラストマー樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、ポリオキシメチレン樹脂、ナイロン樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルエーテルテルケトン樹脂、ポリエーテルケトンケトン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、アイオノマー樹脂及びこれらのアロイ系樹脂から選ばれる少なくとも一つである、請求項
7に記載の繊維強化熱可塑性樹脂組成物。
【請求項9】
さらに添加剤を含み、該添加剤が、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、核剤、可塑剤、着色防止剤、艶消し剤、抗菌剤、消臭剤、難燃剤、帯電防止剤、離型剤、充填剤、顔料及び染料から選ばれる少なくとも一つである、請求項
7または8に記載の繊維強化熱可塑性樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機繊維の短繊維と、熱可塑性樹脂とからなる、繊維強化熱可塑性複合材料に関する。詳細には成形用材料として好適な繊維強化熱可塑性複合材料に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴム、プラスチック、あるいは、ゴムとプラスチックの中間的な性質をもつ熱可塑性エラストマーに短繊維を補強材として配合し、複合化することが古くから行われている(例えば、非特許文献1)。
【0003】
短繊維としては、ポリエステル、ポリアミド、アラミド等の合成繊維、ガラス繊維、炭素繊維等の無機繊維等が用いられている。
【0004】
例えば、特許文献1には、スチレン系熱可塑性エラストマーとアイオノマーの混合樹脂100重量部と、ケブラーパルプ(アラミド短繊維を細かく裁断して短繊維としたもの)5~10重量部と、顔料6重量部とを配合したカバー用組成物を、二軸混練押出機で押出し、該組成物を用いて半球殻状のハーフシェルを射出成形してゴルフボールを作製したことが開示されている。
【0005】
特許文献2には、熱可塑性材料(ポリエステル系熱可塑性エラストマー樹脂、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー樹脂あるいはポリプロピレン樹脂)と、使用済みアラミド製手袋から回収したアラミド短繊維とを、アラミド短繊維含有量が10~20重量%になるよう溶融混練して押出し、押出した組成物を射出成形して留め具を作製したことが開示されている。
【0006】
短繊維を補強材として使用した複合材料は、長繊維で補強した複合材料ほど強度は高くないが、弾性率や繊維の配向等のコントロールが可能で異方性複合材料が容易に得られ、加工面でもオープンロール、バンバリーミキサー、押出機等の汎用ゴム加工機で容易に成形加工できるため、金型設計が極めて容易になるという利点がある。しかし、熱可塑性材料と短繊維を混練する際に短繊維が切断されることで補強効果が低下する傾向が認められるため、より補強効果の高い熱可塑性の複合材料が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2002-136618号公報(実施例、表1等)
【文献】特開2004-346954号公報(実施例1等)
【非特許文献】
【0008】
【文献】長谷朝博、山口幸一:日本ゴム協会誌 vol69 p615(1996)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、熱可塑性材料に対する補強効果が高い、繊維強化熱可塑性複合材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明は以下の通りである。
【0011】
(1)アラミド繊維の短繊維(ただし、パルプを除く)と、
引張試験における破断伸び(ISO527準拠)が200%以上である、ポリエステル系熱可塑性エラストマーとからなり、
ISO527に準拠した引張試験における応力-ひずみ曲線(S-Sカーブ)が、
(a)上降伏点を有する場合には該上降伏点での応力、
(b)明確な上降伏点を示さず降伏後も応力が増加を示す場合には40%ひずみ時の応力、
を降伏強さとしたとき、
その降伏強さが、その母材となるポリエステル系熱可塑性エラストマーの降伏強さ(ISO527準拠)の1.3倍以上であり、その引張破断伸びが200%以上であることを特徴とする繊維強化熱可塑性複合材料。
(2)ISO527に準拠した引張試験における引張降伏強さが、10MPa以上である、前記(1)に記載の繊維強化熱可塑性複合材料。
(3)短繊維の、繊維強化熱可塑性複合材料中における含有量が、1~40質量%である、前記(1)又は(2)に記載の繊維強化熱可塑性複合材料。
(4)アラミド繊維が、エポキシ基含有化合物を繊維骨格内に含浸させたポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維である、前記(1)~(3)のいずれかに記載の繊維強化熱可塑性複合材料。
(5)短繊維の平均繊維長が5mm以下である、前記(1)~(4)のいずれかに記載の繊維強化熱可塑性複合材料。
(6)前記(1)~(5)のいずれかに記載の繊維強化熱可塑性複合材料を成形してなる成形品。
(7)熱可塑性樹脂に、前記(1)~(5)のいずれかに記載の繊維強化熱可塑性複合材料を配合した、短繊維量が1~30質量%である繊維強化熱可塑性樹脂組成物。
(8)熱可塑性樹脂が、熱可塑性エラストマー樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、ポリオキシメチレン樹脂、ナイロン樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルエーテルテルケトン樹脂、ポリエーテルケトンケトン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、アイオノマー樹脂及びこれらのアロイ系樹脂から選ばれる少なくとも一つである、前記(7)に記載の繊維強化熱可塑性樹脂組成物。
(9)さらに添加剤を含み、該添加剤が、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、核剤、可塑剤、着色防止剤、艶消し剤、抗菌剤、消臭剤、難燃剤、帯電防止剤、離型剤、充填剤、顔料及び染料から選ばれる少なくとも一つである、前記(7)または(8)に記載の繊維強化熱可塑性樹脂組成物。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、機械特性に優れる、熱可塑性の繊維強化複合材料を提供することができる。当該繊維強化熱可塑性複合材料は、特に、引張降伏強さに優れているため、荷重に対する変形に耐えることができる。また、曲げ弾性率に優れているため、クッション性が良好である。
本発明の成形用繊維強化熱可塑性複合材料は、そのままで、必要に応じ添加剤を配合して、あるいは他の熱可塑性樹脂等に配合して成形材料として用いることができるほか、繊維強化熱可塑性樹脂組成物のマスターバッチとして用いることもできる。
【0013】
本発明の繊維強化熱可塑性複合材料及び繊維強化熱可塑性樹脂組成物を成形してなる成形品は、高い引張降伏強さや引張弾性率が求められる各種用途、例えば、自動車用タイヤ、自動二輪車用タイヤ、航空機用タイヤ、自動車内装部品、電化製品の筐体、事務用品、日用品、薬剤充填用容器、冷凍容器、包装容器等として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る繊維強化熱可塑性複合材料は、有機繊維の短繊維と、熱可塑性材料とから構成される。
【0015】
本発明において、熱可塑性材料は、繊維強化熱可塑性複合材料の母材となる。熱可塑性材料の引張試験における破断伸びは200%以上であることが好ましい。これにより、繊維強化後の複合材料の引張伸びが降伏点以降まで維持され、良好な引張降伏強さを発現することができ、荷重に対する変形に耐えることが可能となる。母材となる熱可塑性材料の引張試験における破断伸びは、より好ましくは300%以上、さらに好ましくは400%以上である。前記熱可塑性材料の破断伸びは、JIS K7113:1995に準拠して測定される値である。
【0016】
前記熱可塑性材料としては、熱可塑性樹脂や熱可塑性エラストマー等を用いることができる。熱可塑性材料としては、特に制限されるものではなく、例えば、ポリエチレン樹脂、エチレン-プロピレン共重合樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂等の熱可塑性樹脂;ポリオレフィン系、ポリエステル系等の熱可塑性エラストマー;又はこれらの共重合体樹脂や変性樹脂等、さらにはこれらの樹脂の中から選ばれる1種又は2種以上を組合せた熱可塑性樹脂組成物を用いることができる。
【0017】
前記熱可塑性材料の中でも、各種加工方式を採用できる点、繰り返し変形に対する耐久性に優れている点で、熱可塑性エラストマーであることが好ましい。
【0018】
ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-オクテン等のα-オレフィンから選ばれる2種以上のモノマーの共重合体が挙げられ、これらの共重合体のうち1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いても良い。例えば、エチレン-プロピレン共重合体(EPR)、エチレン-1-ブテン共重合体(EBR)、エチレン-1-ペンテン共重合体、エチレン-1-オクテン共重合体(EOR)、プロピレン-1-ブテン共重合体(PBR)、プロピレン-1-ペンテン共重合体、プロピレン-1-オクテン共重合体(POR)等が挙げられる。
【0019】
熱可塑性エラストマーの中でも、結晶性のポリマー鎖(ハードセグメント)と非晶性のポリマー鎖(ソフトセグメント)からなり、常温のみならず、高温時の機械的性質(耐荷重性が大きい、強靭、屈曲疲労抵抗が大きい)、可撓性、弾性に優れることから、ポリエステル系の熱可塑性エラストマーが好ましい。
【0020】
ポリエステル系のエラストマーとしては、結晶性芳香族ポリエステル単位からなるハードセグメント(a1)と、脂肪族ポリエーテル単位及び/又は脂肪族ポリエステル単位からなるソフトセグメント(a2)とから構成される、ブロック共重合体が挙げられる。
【0021】
ハードセグメント(a1)は、好ましくは、芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体と、ジオール又はそのエステル形成性誘導体から形成される。
芳香族ジカルボン酸の具体例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、ナフタレン-2,7-ジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、ジフェニル-4,4’-ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸、5-スルホイソフタル酸、及び3-スルホイソフタル酸ナトリウム等が挙げられる。
【0022】
上記の酸成分は2種以上使用することが好ましく、例えば、テレフタル酸とイソフタル酸、テレフタル酸とドデカンジオン酸、テレフタル酸とダイマー酸等の組み合わせが挙げられる。酸成分を2種以上使用することで、ハードセグメントの結晶化度を下げることができ、柔軟性を付与することも可能で、かつ他の熱可塑性樹脂との熱接着性、溶融混合性も向上する。
【0023】
ジオールの具体例としては、分子量400以下のジオール、例えば1,4-ブタンジオール、エチレングリコール、トリメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、デカメチレングリコール等の脂肪族ジオール、1,1-シクロヘキサンジメタノール、1,4-ジシクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール等の脂環族ジオール、及びキシリレングリコール、ビス(p-ヒドロキシ)ジフェニル、ビス(p-ヒドロキシ)ジフェニルプロパン、2,2’-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホン、1,1-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン、4,4’-ジヒドロキシ-p-ターフェニル、及び4,4’-ジヒドロキシ-p-クオーターフェニル等の芳香族ジオールが好ましい。かかるジオールは、エステル形成性誘導体、例えばアセチル体、アルカリ金属塩などの形でも用いることができる。
【0024】
ポリエステルブロック共重合体のハードセグメント(a1)は、好ましくは、テレフタル酸及び/又はジメチルテレフタレートと1,4-ブタンジオールから誘導されるポリブチレンテレフタレート単位と、イソフタル酸及び/又はジメチルイソフタレートと1,4-ブタンジオールから誘導されるポリブチレンイソフタレート単位とからなる。
【0025】
ポリエステルブロック共重合体のハードセグメント(a1)は、より好ましくは、テレフタル酸及び/又はジメチルテレフタレートと、イソフタル酸及び/又はジメチルイソフタレートと、1,4-ブタンジオールとから誘導されるポリブチレンテレフタレート/イソフタレート単位とからなる。
【0026】
ポリエステルブロック共重合体のソフトセグメント(a2)は、脂肪族ポリエーテル単位及び/又は脂肪族ポリエステル単位から構成される。
構成単位である脂肪族ポリエーテルとしては、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンオキシド)グリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドの共重合体、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加重合体、エチレンオキシドとテトラヒドロフランの共重合体グリコールなどが挙げられる。
また、構成単位である脂肪族ポリエステルとしては、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリエナントラクトン、ポリカプリロラクトン、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンアジペートなどが挙げられる。
これらの脂肪族ポリエーテル及び/又は脂肪族ポリエステルのなかで、得られるポリエステルブロック共重合体の弾性特性からは、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加物、エチレンオキシドとテトラヒドロフランの共重合体グリコール、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリブチレンアジペート、及びポリエチレンアジペートなどの使用が好ましい。これらの中でも、特にポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加物、及びエチレンオキシドとテトラヒドロフランの共重合体グリコールが好ましい。
また、これらのソフトセグメントの数平均分子量としては、共重合された状態において300~6,000程度であることが好ましい。
【0027】
ポリエステルブロック共重合体の融点は210℃未満であることが好ましく、より好ましくは200℃未満、さらに好ましくは190℃未満であることが、繊維強化熱可塑性複合材料を加工する上でエネルギーコストの観点より望ましい。
ここで、融点とは、示差走査熱量測定において、重合を完了したポリマーを室温から20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm1)の観測後、Tm1+20℃の温度で5分間保持した後、20℃/分の降温条件で室温まで一旦冷却した後、再度20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm2)と定義する。
【0028】
ポリエステルブロック共重合体のソフトセグメント(a2)の共重合量は、ハードセグメント(a1)とソフトセグメント(a2)の合計を100質量%としたとき、通常、5~80質量%、好ましくは10~75質量%である。5%未満であるとポリエステルブロック共重合体の引張破断時の伸びが低下し、所望の機械的特性を得ることができない。一方、80%を超える場合には結晶性が悪くなり、成形時の冷却時間が長くなる(サイクル時間が長くなる)ため好ましくない。
【0029】
ポリエステルブロック共重合体は、公知の方法で製造することができる。その具体例としては、例えば、ジカルボン酸の低級アルコールジエステル、過剰量の低分子量グリコール及び低融点重合体セグメント成分を触媒の存在下エステル交換反応せしめ、得られる反応生成物を重縮合する方法、及び、ジカルボン酸と過剰量のグリコール及び低融点重合体セグメント成分を触媒の存在下エステル化反応せしめ、得られる反応生成物を重縮合する方法等をとることができる。この中でも、ジカルボン酸の低級アルコールジエステル、過剰量の低分子量グリコール及び低融点重合体セグメント成分を、触媒の存在下エステル交換反応せしめ、得られる反応生成物を重縮合する方法が好ましい。
【0030】
ポリエステル系熱可塑性エラストマーは、酸化防止剤0.01~5.0質量部を含有することが好ましい。酸化防止剤としては、芳香族アミン系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、リン系酸化防止剤からなる群より選ばれた1種、又は2種以上が挙げられ、中でも芳香族アミン系酸化防止剤が好適に使用される。
【0031】
本発明の繊維強化熱可塑性複合材料を構成する有機繊維としては、引張強度が高く熱可塑性材料に対する補強効果に優れている点より、原糸の特性として、JIS L1013 8.5に準拠して測定される引張強さが、18cN/dtex以上の高強力有機繊維が好ましい。前記の引張強さは、より好ましくは20cN/dtex以上、さらに好ましくは21cN/dtex以上である。
【0032】
このような有機繊維としては、例えば、アラミド繊維(全芳香族ポリアミド繊維)、全芳香族ポリエステル繊維、ポリパラフェニレンベンゾオキサゾール繊維、ポリケトン繊維、セルロースナノファイバー等が挙げられる。これらの有機繊維の中でもアラミド繊維が好ましい。
【0033】
本発明において、アラミド繊維とは、繊維を形成するポリマーの繰り返し単位中に、通常置換されていてもよい二価の芳香族基を少なくとも一個有する繊維であって、アミド結合を少なくとも一個有する繊維であれば特に限定はなく、全芳香族ポリアミド繊維、又はアラミド繊維と称されるものであって良く、「置換されていてもよい二価の芳香族基」とは、同一又は異なる1以上の置換基を有していてもよい二価の芳香族基を意味する。
【0034】
アラミド繊維としては、パラ系アラミド繊維、メタ系アラミド繊維等を挙げることができるが、引張強さに優れているパラ系アラミド繊維が好ましい。具体的には、パラ系アラミド繊維として、例えば、ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維(米国デュポン社、東レ・デュポン(株)製、商品名「Kevlar」(登録商標))、コポリパラフェニレン-3,4’-オキシジフェニレンテレフタルアミド繊維(帝人(株)製、商品名「テクノーラ」(登録商標))等を挙げることができる。これらのパラ系アラミド繊維の中でも、ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維が特に好ましい。
【0035】
本発明では、あらかじめエポキシ基含有化合物を繊維骨格内に浸透させたアラミド繊維を用いることもできる。
【0036】
エポキシ基含有化合物は、アラミド繊維の水分率を0%に換算した繊維質量に対して、0.1~10.0質量%、好ましくは0.2~2.0質量%含浸・浸透させるのが良い。また、エポキシ基含有化合物をより均一に含浸・浸透させるために、水や溶剤などで希釈して付与しても良い。あるいは、アラミド繊維に一般的に用いられる油剤とともに付与しても良い。具体的な油剤としては、例えば、炭素数18以下の低分子量脂肪酸エステル、ポリエーテル、鉱物油などが挙げられる。
【0037】
エポキシ基含有化合物としては、例えば、グリセロール、ソルビトール、ポリグリセロールなどの多価アルコールのグリシジルエーテル化合物から選ばれる1種又は2種以上の混合物が好ましい。具体的には、グリセロールジグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル等が挙げられる。またこれらのエポキシ化合物を硬化させるため、公知の硬化剤とともに用いても差し支えない。硬化剤としてはアミンが好ましく、特に三級アミンが好ましく、例えば、ジメチルオクチルアミン、ジメチルデシルアミン、ジメチルラウリルアミン、脂肪族一級アミンにエチレンオキサイドを付加した長鎖アルキルポリオキシエチレン型三級アミン等が挙げられる。
【0038】
エポキシ基含有化合物をアラミド繊維に付与する方法は、特に限定されず、従来公知の任意の方法が採用されてよく、浸漬給油法、スプレー給油法、ローラー給油法、計量ポンプを用いたガイド給油法等が挙げられる。
【0039】
本発明の繊維強化熱可塑性複合材料を構成する有機繊維の単糸繊度は、特に限定されるものではなく、好ましくは0.5~30dtex、より好ましくは0.5~10dtex、さらに好ましくは1~5dtexの範囲である。0.5dtex以上であれば、製糸技術上の困難性を伴うことなく補強効果がある繊維を得ることが可能となり、30dtex以下であれば短繊維を均一に熱可塑性材料中へ分散させることが可能となる。
【0040】
有機繊維の短繊維は、有機繊維の長繊維束を、ギロチン方式、ロータリーカッター方式等の公知の手段で所定の長さにカットしたものが用いられる。前記の長繊維束としては、短繊維の、熱可塑性材料との混練中におけるフィブリル化や切断を抑制する観点より、集束剤を用いて集束させた繊維集束体が好適に用いられる。集束剤としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテル樹脂、ビニルエステル樹脂、(メタ)アクリレート樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。
【0041】
繊維集束体を構成する繊維の単糸本数は、好ましくは、100本~3,000本である。単糸本数が100本以上あれば集束処理を施す際に断糸する恐れがない。また、単糸本数が3,000本以下であれば単糸が重なり合うことによる集束剤の付着性が、著しく悪化することがない。
【0042】
集束剤の付着量は、繊維束の全重量に対して、1~15質量%が好ましく、2.5~15質量%がより好ましい。集束剤付着量が1質量%未満の場合は、集束剤の効果が不十分となるため熱可塑性材料中で短繊維が切断し易くなり、15質量%を超える場合は、製造上の困難性が伴う。
【0043】
短繊維の平均繊維長は、熱可塑性材料と混練する際の短繊維同士の絡み合いや、剪断による短繊維の切断を防止し、良好な補強効果を発現させることができる点、及び、熱可塑性材料中での短繊維分散性が良好となる点より、5mm以下であることが好ましい。より好ましくは3mm以下、さらに好ましくは1~3mmとすることが望ましい。平均繊維長は、カットした長繊維束をランダムに100本採取してその繊維長を測定した時の平均値である。
【0044】
短繊維を、母材とする熱可塑性材料と混練することにより、本発明の繊維強化熱可塑性複合材料を調製することができる。短繊維と熱可塑性材料との混練に際しては、短繊維を押出機に供給し、熱可塑性材料と混練してペレット化し、ペレットにすることが好ましい。
【0045】
こうして得られる繊維強化熱可塑性複合材料を、射出成形、押出成形、熱成形、ブロー成形等の公知の成形法により成形することにより、任意の形状の成形品を提供することができる。
【0046】
繊維強化熱可塑性複合材料を調製するに当たっては、組成物の総重量に対して、短繊維を1~40質量%配合することが好ましく、より好ましくは2~30質量%、さらに好ましくは3~25質量%、特に好ましくは3~10質量%である。短繊維を1質量%以上配合することにより、当該複合材料の引張降伏強さが向上し、結果として、成形品の機械特性向上効果が顕著に発現する。また、短繊維が40質量%を超えると、それ以上の著しい向上効果が得られないと共に、ペレット製造時の工程安定性が低下し、ペレットの繊維含有量が斑になり、成形品の品質安定性が悪化する恐れがある。
【0047】
本発明の繊維強化熱可塑性複合材料は、当該複合材料の降伏強さ(YS)が、母材となる熱可塑性材料の降伏強さ(Y0)の1.3倍以上であることを特徴とする。本発明では、YSとY0の比(YS/Y0)を「降伏強さ比」と定義する。前記の降伏強さ比は、より好ましくは1.8倍以上であり、さらに好ましくは2.0倍以上であることが望ましい。降伏強さ比が高くなるほど、対荷重変形性に優れる材料となり得る。
【0048】
本発明において降伏強さは、ISO527に準拠した引張試験における応力-ひずみ曲線(S-Sカーブ)が、(a)上降伏点を有する場合には、該上降伏点での応力を降伏強さ、(b)明確な上降伏点を示さず降伏後も応力が増加を示す場合には、40%ひずみ時の応力を降伏強さ、とする。降伏強さを前記のように定義した理由は、母材となる熱可塑性材料単独の場合には応力-ひずみ曲線が明確な上降伏点を示さないことがあるからである。
【0049】
本発明の繊維強化熱可塑性複合材料では、該複合材を引張試験に供した時の応力-ひずみ曲線において、応力が歪とともに急激に低下する現象が起こり、降伏点(上降伏点)を有する。降伏した後でも破断は生じず、応力は増加もしくはほぼ一定値で推移する特性を有することにより、荷重に対する変形に耐える複合材料となり得る。
【0050】
また、本発明の繊維強化熱可塑性複合材料は、ISO527に準拠した引張試験における破断伸びが200%以上である。かかる特性を有することにより、耐疲労性、耐久性に優れる複合材料となり得る。
【0051】
また、本発明の繊維強化熱可塑性複合材料をマスターバッチとして用い、あるいは、熱可塑性樹脂に繊維強化熱可塑性複合材料を配合して、好ましくは短繊維含有量が1~30質量%の繊維強化熱可塑性樹脂組成物とする。得られた繊維強化熱可塑性樹脂組成物を射出成形、押出成形、熱成形、ブロー成形、発泡成形等の公知の成形法により成形することにより、任意の形状の成形品を提供することができる。繊維強化熱可塑性樹脂組成物中の短繊維含有量は、より好ましくは2~30質量%、さらに好ましくは3~25質量%、特に好ましくは3~10質量%である。短繊維含有量は、1質量%以上であれば補強機能を発揮することができ、30質量%以下であれば伸び率が成形品の品質が著しく悪化する恐れがない。
【0052】
熱可塑性樹脂に繊維強化熱可塑性樹脂複合材を配合する場合は、ブレンダー、ヘンシェルミキサー等の公知の混合装置を用いることができる。
【0053】
熱可塑性樹脂としては、特に制限はないが、繊維強化熱可塑性複合材料との親和性の観点から、熱可塑性エラストマー樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、ポリオキシメチレン樹脂、ナイロン樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルエーテルテルケトン樹脂、ポリエーテルケトンケトン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、アイオノマー樹脂及びこれらのアロイ系樹脂から選ばれる少なくとも一つであることが好ましい。
【0054】
上記の繊維強化熱可塑性樹脂組成物には、必要に応じ添加剤を配合することができる。添加剤としては、例えば、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、核剤、可塑剤、着色防止剤、艶消し剤、抗菌剤、消臭剤、難燃剤、帯電防止剤、離型剤、充填剤、顔料及び染料等が挙げられ、これらの添加剤から選ばれる少なくとも一つを配合することができる。これらの配合量は通常用いられる量でよい。
【実施例】
【0055】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。また、以下の実施例等において、特に言及する場合を除き、「質量%」は「%」と略記する。なお、実施例中に記載の評価方法は以下の通りである。
【0056】
[水分率]
JIS K7251に準拠し、試料約10gの質量を測定し、B法の手順に従い試料中の水分質量を測定する。水分率は、[試料中の水分質量]/[試料質量]で得られる。
【0057】
[MFR]
ISO1183に準拠し、メルトインデクサーを用いて繊維強化熱可塑性複合材料のペレットを200℃もしくは230℃で1分間予備加熱し、予備加熱と同じ温度、荷重2160gのMFRを測定した。
【0058】
[引張試験]
実施例及び比較例のペレットを、100℃で3時間熱風乾燥させた後、射出成形機(住友重機械工業社製、SE50DUZ)を用いて、ISO527-2記載の1A形の成形片(4mm厚さ)を成形した。シリンダ温度は200℃(但し、比較例1、2は230℃)、金型温度は40℃にて実施した。
得られたISO引張り試験片(4mm厚)を用いて、ISO527-1及びISO527-2に準拠し、インストロン型引張試験機(島津製作所社製、オートグラフ)を用いて、23℃、チャック間隔50mm、引張速度50mm/minの条件で引張試験を実施し、上降伏点(明確な降伏を示さない場合には40%ひずみ時)の応力(降伏強さ)(単位:MPa)、降伏伸び(単位:%)、破断伸び(単位:%)、弾性率(単位:MPa)を測定した。(ただし、破断伸びの測定限界値は260%)
【0059】
[曲げ試験]
上記の方法で得られたISO引張り試験片(4mm厚)を用いて、ISO178に準拠し、23℃の温度で、曲げ強度(単位:MPa)及び曲げ弾性率(単位:MPa)を測定した。
【0060】
[シャルピー衝撃強度]
上記の方法で得られたISO引張り試験片を用い、ISO179-1及びISO179-2に準拠し、23℃の温度で、ノッチ付きシャルピー衝撃強度(単位:kJ/m2)を測定した。
【0061】
[密度]
上記の方法で得られたISO引張り試験片を用い、23℃の恒温室に24時間静置させた後、ISO1183に準拠し、アルキメデス法により、密度を測定した。
【0062】
(短繊維調製例1)
公知の方法で得られたポリパラフェニレンテレフタルアミド(PPTA)繊維(単位繊度:1.7dtex、総繊度:3,300dtex)をボビンから巻出し、ウレタン系繊維集束剤を、水分率0重量%換算としたときの繊維に対し2.5質量%付与し乾燥したものを、カッターで目標値:3.0mmになるように連続的に切断し、短繊維を得た。
【0063】
(実施例1)
調製例1で得たアラミド短繊維3質量部、ポリエステル系熱可塑性エラストマー(東レ・デュポン社製、“ハイトレル”4057N、融点(DSC法):163℃、ビカット軟化点(JIS K7206 A法):111℃)97質量部を、単軸(30mmφ)押出機にて、シリンダ温度:190℃、スクリュウ回転数:100rpm、吐出量:約12kg/hrで押出し、繊維強化熱可塑性樹脂複合材のペレットを作製した。
【0064】
(実施例2)
調製例1で得たアラミド短繊維5質量部、ポリエステル系熱可塑性エラストマー(東レ・デュポン社製、“ハイトレル”4057N)95質量部を用いた以外は、実施例1と同様の方法でペレットを作製した。
【0065】
(実施例3)
調製例1で得たアラミド短繊維10質量部、ポリエステル系熱可塑性エラストマー(東レ・デュポン社製、“ハイトレル”4057N)90質量部を用いた以外は、実施例1と同様の方法でペレットを作製した。
【0066】
(実施例4)
調製例1で得たアラミド短繊維1質量部、ポリエステル系熱可塑性エラストマー(東レ・デュポン社製、“ハイトレル”4057N)99質量部を用いた以外は、実施例1と同様の方法でペレットを作製した。
【0067】
(比較例1)
市販のガラス短繊維(繊維長:3mm)5質量部、ポリエステル系熱可塑性エラストマー(東レ・デュポン社製、“ハイトレル”5557、融点(DSC法):208℃、ビカット軟化点(JIS K7206 A法):188℃)95質量部を用いた以外は、実施例1と同様の方法でペレットを作製した。
【0068】
(比較例2)
調製例2で得たガラス短繊維10質量部、ポリエステル系熱可塑性エラストマー(東レ・デュポン社製、“ハイトレル”6347、融点(DSC法):215℃、ビカット軟化点(JIS K7206 A法):201℃)90質量部を用いた以外は、実施例1と同様の方法でペレットを作製した。
【0069】
(対照例1~3)
短繊維を配合せずに、実施例1~4、比較例1及び比較例2で用いたポリエステル系熱可塑性エラストマーのみを用い、それぞれ実施例1及び比較例1、2と同様の条件にてペレットを作製した。
【0070】
実施例及び比較例で得た繊維強化熱可塑性複合材料(実施例1~4、比較例1~2)、ならびに、母材となる熱可塑性樹脂(対照例1~3)について、流動性、機械特性を評価した。
対照例(短繊維無添加)の材料に対する、各例で得られた複合材の降伏強さの比を、降伏強さ比とした。
【0071】
評価結果を表1に示す。なお、実施例3は参照例である。
【0072】
【0073】
表1の結果から、熱可塑性エラストマーにアラミド短繊維を配合した繊維強化熱可塑性複合材料は、短繊維を配合していない非強化複合材に比べて、降伏強さに優れていた。
熱可塑性エラストマーにガラス短繊維を配合した繊維強化熱可塑性複合材料は、アラミド繊維強化複合材と同程度の降伏強さを発揮させるためには配合量を増やす必要があり、配合量増加に伴って高密度化(高重量化)するだけでなく、衝撃強さの点でもアラミド繊維強化複合材料より劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明の繊維強化熱可塑性複合材料は、荷重に対する変形に耐えることができることより、高荷重がかかるタイヤの材料、自動車内装部品、事務用品、日用品、電化製品、薬剤充填用の医療用機器、冷凍容器などの材料として、幅広く利用可能である。